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曜「よーちゃんはね ××ちゃんっていうんだほんとはね」


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曜「よーちゃんはね♪ ようちゃんっていうんだほんとはね♪」
曜「だけどちっちゃいからじぶんのことよーちゃんってよぶんだよ♪」
曜「おかしいな♪ よーちゃん♪」
梨子「曜ちゃん、おはよう。相変わらず朝早いね」
曜「おはよう! ごめんね、一緒に登校できなくて」
梨子「気にしないで。……それで、またその歌? 曜ちゃん、その歌好きだね」
曜「自分でもわからないんだけど、つい口ずさんじゃうんだよね」
梨子「ふふっ。でも、わたしもその歌好きよ。なんだかかわいくて」
曜「そう?」
3:
梨子「そういえば宿題のことなんだけど、ひとつだけわからない問題があったの。曜ちゃん、全部解けた?」
曜「もちろん! 完璧であります!」
梨子「そうだよね。曜ちゃんだもん。教えてもらってもいいかな?」
曜「いいよ! もっておいでよ!」
梨子「うん。ありがとう」
梨子「なるほど。ここでその公式を使うのね」
曜「そうそう。少しひらめきが必要な問題だね」
梨子「わたし、そういうの弱いなぁ……」
曜「慣れてきたらぱっと分かるし、そうなると気持ちいいよ」
梨子「わたしもがんばるね。曜ちゃん、ありがとう」
曜「うん!」
5:
梨子「はぁ……。長距離走いやだなぁ」
曜「そう? 走るのって気持ちいいじゃん」
梨子「曜ちゃんは運動できるから。わたし、長距離は苦手なの」
曜「じゃあ一緒に走ろうよ。少しペース落とすからさ」
梨子「いいよ。そんなの曜ちゃんに悪いし。それに……」
曜「それに?」
梨子「そういうのって途中で置いてけぼりにされちゃいそうだし」
曜「そ、そんなことしないよ!」
梨子「ふふっ、冗談よ。曜ちゃん優しいもん。……だけど、本当に一人でだいじょうぶだから、気にしないで」
曜「梨子ちゃんがそう言うなら……」
梨子「曜ちゃんもがんばってね」
曜「うん!」
6:
曜「梨子ちゃん頑張ったね! 先生もほめてたよ! 前よりもタイムが縮んだって!」
梨子「ありがとう。ダンスの練習のおかげかなぁ。……そういう曜ちゃんだってクラスで一番だったじゃない」
曜「えへへ。まあ鍛えてるからね」
梨子「飛び込みって持久力っていうより瞬発力って感じだけど」
曜「もちろんそうだけど、持久力も大事だよ。それに、よーちゃん水泳もやってるからね」
梨子「ぷっ……!」
曜「え? いきなりどうしたの?」
梨子「ご、ごめんなさい。自分のことよーちゃんって言うの、まだ慣れなくって」
曜「あっ、またよーちゃんって言っちゃってた? 恥ずかしいなぁ……」
梨子「でも、とってもかわいいわよ。わたし、その呼び方も好き」
曜「いやだよぉ。なんかちっちゃい子みたいじゃん。気を付けようっと」
梨子「うふふ。……じゃあ放課後までもうひと頑張りだね」
曜「うん! 全前進ヨーソロー!」
8:
放課後
ダイヤ「はい! ワンツー! ワンツー! ……梨子さん! ワンテンポ遅れていますわよ! それから果南さんはワンテンポはやいですわ!」
梨子「は、はい!」
果南「はーい!」
ダイヤ「ラスト3回! ワンツー! ワンツー! ワンツー! ……はい。お疲れさまでした。今日の練習はここまでですわ」
梨子「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
曜「梨子ちゃんだいじょうぶ? はい、飲み物!」
梨子「はぁっ……はぁっ……ありがと……」
梨子「んくっ……んくっ……んくっ……」
果南「ダイヤも鬼教官だよね。まあ頑張らなきゃってのは分かるけどさ」
ダイヤ「果南さん? 聞こえていますわよ?」
果南「いやー! ダイヤはしっかりしてるし、かわいいし、やっぱりAqoursのリーダーは違うなぁ!」
ダイヤ「まったく……。調子がいいんですから」
9:
梨子「それにしても、曜ちゃんも果南さんもすごいのね。あれだけ練習したのに息も切れないなんて」
曜「さっきも言ったけど、鍛えてるからね!」
果南「でも、曜ってさ、ちっちゃいころは運動からっきしだっだんだよ」
梨子「えっ!? ほんとですか!?」
曜「ちょ、ちょっと果南ちゃん!?」
果南「いいじゃん。隠すことでもないでしょ。わたしとかけっこしてもいつも負けちゃってさ、大声で泣きだしちゃうの」
曜「も、もう! 恥ずかしいから言わないで!」
梨子「へぇ、そうだったんだ。なんだか意外ね」
果南「小学2年生くらいの頃だったかな。急に飛び込みをするなんて言い出してさ、その頃からどんどん運動が得意になっていったんだよ」
梨子「曜ちゃん、すごい!」 
10:
果南「でも、それからもわたしにかけっこで勝ったことないんだよねぇ」
曜「なっ! きょ、今日こそ勝てるよ!」
果南「おっ! 言ったね! なんなら今から勝負する?」
曜「望むところだよ!」
梨子「ちょ、ちょっと、今からはやめた方が……」
果南「だってさ。どうする? やめる?」
曜「やめない! 女に二言はないんだから!」
果南「よし! じゃああっちの端っこまで! 準備はいい?」
曜「いいよ!」
果南「3、2、1、……スタート!」
梨子「あっ」
ダイヤ「果南さん! 曜さん! 何をやっているのですか!」
13:
帰り道
曜「はぁ……、怒られちゃったなぁ」
梨子「屋上でかけっこはさすがに怒られるわよ」
曜「しかも果南ちゃんには勝てなかったし」
梨子「でも、本当に驚いた。曜ちゃんが昔は運動苦手だったなんて」
曜「あれは果南ちゃんが大げさなんだよ。小学校の低学年なんて運動できるもできないもないでしょ? だから飛び込みを始めたのと身体の成長がちょうど重なっただけだよ」
梨子「そう言われれば……そうなのかな?」
曜「ほら、チカちゃんも言ってるよ。『ヨウチャンノイウトオリダヨ』」
梨子「相変わらず上手ね。腹話術。そのお人形も手作りなんでしょ?」
曜「そうだよ。ねっ、チカちゃん。『ウン。ドウセナラモウスコシカワイクツクッテホシカッタケド』」
梨子「くすっ。今のままでも十分可愛いわよ」
曜「『ホントウニ? アリガトウリコチャン。リコチャンダイスキ』」
梨子「ありがと、チカちゃん」
14:
曜「もう家に着いちゃった。お喋りしてるとあっという間だね」
梨子「そうね」
曜「あとで遊びに行ってもいい?」
梨子「ええ、いいわよ」
曜「こういうときに家が隣同士だと得だよね。梨子ちゃんが引っ越してきてくれてよかったよ」
梨子「わたしも、ここに引っ越してきてよかったわ」
曜「えへへ、じゃあまたあとで!」
梨子「うん!」
…………
曜の部屋
曜「ふぅ……。結局、今日も夜遅くまで遊んじゃったよ」
曜「『リコチャンバッカリズルイ。ワタシトモアソンデ』」
曜「……なーんちゃって」
曜「じゃあ、今から行くからね」
曜「待っててね、ちかちゃん」
曜「おやすみなさい」
16:
千歌「よーちゃん! いらっしゃい!」
曜「ちかちゃん! お邪魔します!」
千歌「だからお邪魔しますはおかしいってば! ここはよーちゃんの夢の中なんだから!」
曜「でも、ちかちゃんは本物なんでしょ?」
千歌「本物っていうか……、まあ、半分くらい?」
曜「だったらいいじゃん! ここはちかちゃんの場所だよ」
千歌「そうかなぁ……」
曜「それより聞いてよ! 今日も梨子ちゃんと遊んだんだ!」
千歌「ほう! 何をして遊んだの?」
曜「今日は人生ゲームだよ! 梨子ちゃんが強くってさぁ!」
千歌「じんせいゲーム? おもしろいの?」
曜「おもしろいよ! ちかちゃん、今から一緒にやる?」
千歌「二人でやってもおもしろいの? このまえのババぬきみたいにならない?」
曜「大丈夫だよ!」
千歌「だったらやる!」
17:
千歌「じゃあ、作るからよーちゃん頭に思い浮かべて!」
曜「おっけー! んーと……、こんな感じ、かな?」
千歌「むむむむむ……、えいっ!」
曜「そうそう! これだよ!」
千歌「よし! やろうか! ちなみにどんなゲームなの?」
曜「人生を体験するゲームかな。この前すごろくっていうゲームやったでしょ? ルールはあれと似たような感じかな。勉強して、就職して、結婚して、出産して、っていうことを経験しながら、お金を稼いでいくゲームだよ」
千歌「…………」
曜「……あっ」
千歌「……それはちょっとやりたくないかな」
曜「……ちかちゃん、ごめんね」
千歌「ううん。ちかのわがままだから、よーちゃんが謝ることなんてないよ」
曜「……それでも、ごめん」
千歌「いいってば! こっちこそごめんね! なんか変な空気にしちゃって! さぁ、何か別のことをして遊ぼうよ!」
曜「……うん」
18:
曜「……はぁ」
梨子「曜ちゃん、おはよう」
曜「……おはよう」
梨子「元気ないね。だいじょうぶ?」
曜「友達と、ちょっとね」
梨子「喧嘩しちゃったの?」
曜「喧嘩っていうか、わたしが一方的に落ち込んでる感じかな。ちょっと失言しちゃってさ」
梨子「ふーん。その子が気にしてないなら曜ちゃんも気にしなくていいんじゃない?」
曜「そんなことできないよ!」
梨子「えっ!? ご、ごめんなさい」
曜「あっ、……こ、こっちこそごめんね、大きな声出しちゃって」
梨子「大切なお友達なのね」
曜「……うん」
20:
放課後
果南「梨子ちゃん、今日の動きよかったよ」
梨子「ほんとですか? ありがとうございます、果南さん」
果南「だから敬語じゃなくていいってば」
梨子「あっ、ごめんなさい。年上の人と話すのってまだ慣れなくて」
果南「まあ、梨子ちゃんが喋りやすい方でいいけど。で、曜のやつどうしたの? なんかずっと元気ないけど」
梨子「大切なお友達と喧嘩しちゃったらしいです」
果南「……あぁ、そういうこと」
梨子「曜ちゃん、お友達多そうですからね」
果南「いや、そういうことじゃないんだけどね」
梨子「え?」
果南「うーん……、まあ、曜がそこまで言ったんだったら教えてもいいかな。これからもそういうことありそうだし」
梨子「……どういうことですか?」
果南「梨子ちゃん、練習終わったあと少し時間ある?」
梨子「は、はい」
果南「だったら、そのあと少し屋上に残っててくれないかな? その時に話すから」
梨子「分かりました」
21:
曜「ぶーぶー! なんで果南ちゃんと梨子ちゃんだけで練習するのさ! わたしだって一緒に練習したい!」
果南「だから言ったでしょ。梨子ちゃん、少しでも曜の動きに近づけるように練習したいんだって。そこにアンタがいたんじゃ差が縮まらないじゃん」
曜「まあそうだけどさぁ……」
梨子「曜ちゃん、ごめんね。帰ったら遊びに行くから」
曜「……分かったよ。絶対だからね! じゃあ、またあとで! 果南ちゃん、またあした!」
果南「うん! バイバイ!」
22:
果南「……さてと。それで、曜のお友達の話だったね。まあ、もったいぶっておいてあれなんだけどさ、わたしも詳しくは知らないんだ。だから知っていることだけ話すね」
梨子「お願いします」
果南「梨子ちゃんさ、あの子の持ってる腹話術の人形知ってるよね?」
梨子「はい。たしかチカちゃんでしたっけ? 曜ちゃんの手作りなんですよね」
果南「うん。あれが曜の友達だよ。曜の友達の、チカちゃん」
梨子「……え?」
果南「まあ、正確に言うと逆なんだけどね。そのチカちゃんって子が夢の中に出て来るらしいんだ。それで、その子の人形を作ったみたい」
梨子「…………」
果南「曜がチカちゃんのことを話してくれたのは小学校を卒業した頃だったかな。物心ついた頃からずっと夢の中でおしゃべりしてたらしいよ」
梨子「……そのチカちゃんって子、本当にいるんですか?」
果南「いないと思う。わたし、小学校の頃からあの子と一緒でさ、だけど、そんな子のこと聞いたことないもん。こんな狭いところだし、同じ小学校の子ってほとんどが顔見知りになっちゃうんだよね」
23:
果南「わたしも少し調べたんだけどさ、イマジナリーフレンドっていうみたい。空想の友人を作り上げちゃうこと。小さい子ならよくあるみたいだけどね」
梨子「聞いたことはあります」
果南「で、曜の場合はそれが消えずにずっと残っちゃったみたいだね。……わたしが知ってることはそれくらいかな。びっくりした?」
梨子「……はい。少し驚きました」
果南「あはは。まあそうだよね」
梨子「でも、わたしも少し身に覚えがあります。東京にいた頃、どうしてもピアノが弾けなかったとき、もう一人のわたしに相談してみることがありました。もちろん、小さい頃の話ですけど」
果南「へぇ。そうなんだ」
梨子「それに、曜ちゃんは曜ちゃんですから。わたしの一番のお友達であることに変わりはありません」
果南「……うん! やっぱり私の目に狂いはなかったよ!」
梨子「え?」
24:
果南「梨子ちゃん、これからもあの子のことよろしくね。学年が違うと、どうしても一緒にいられないこともあるからさ」
梨子「そ、そんな! むしろ私がお世話してもらってるくらいで……」
果南「ふふっ。……それと、この話は秘密にしておいてね。心無いこと言う人もいるからさ」
梨子「分かりました。誰にも話しません」
果南「よし! じゃあ帰ろっか! のど渇いてない? 飲み物くらい奢るよ」
梨子「あっ、大丈夫です。すぐに帰りますから」
果南「梨子ちゃーん? こういうときは奢られとくもんだよ。ほら!」
梨子「えっ? わたし、曜ちゃんと約束が……」
果南「わたしに強引に連れていかれたっていえばいいよ! 梨子ちゃん、お酒は得意?」
梨子「ま、まだ未成年です!」
果南「あはは! ジョーク、ジョーク! さぁ! しゅぱーつ!」
梨子「ちょ、ちょっと!? だ、だれかたすけてぇ?!」
25:
曜の部屋
曜「はぁ……、結局、梨子ちゃん遊びに来なかったなぁ。やっぱり、変なこと言っちゃったし、嫌われちゃったのかなぁ」
曜「ちかちゃんにどうやって謝るかも思いつかないし」
曜「『ダイジョウブダヨ。ハヤクワタシトアソボウヨ。モウキニシテナイヨ』」
曜「なーんて。……だといいんだけどなぁ」
ピピピピピ
曜「ん? あっ! 梨子ちゃんだ!」
曜「もしもし?」
梨子『曜ちゃん? ごめんなさい。今日遊びに行けなくて』
曜「……うん。だ、だいじょうぶ! 気にしてないよ!」
梨子『その、あの後ね、果南さんに連れていかれて、どうしても帰れなくって……』
曜「え? そ、そうだったの? じゃあ、よーちゃんのこと嫌いになったわけじゃないの?」
梨子「……わたしが曜ちゃんのこと嫌いになるはずないじゃない」
曜『はぁ?。ならよかったよ?』
27:
梨子『それでね、けんかしちゃったお友達のことなんだけど……』
曜「あっ、そのことは……」
梨子『プレゼントをあげるっていうのはどうかな?』
曜「……プレゼント?」
29:
梨子『その子が好きなものをプレゼントするの。そうしたら仲直りできるんじゃないかな?』
曜「……梨子ちゃん、それすごくいいよ!」
梨子『ほんと?』
曜「うん! ありがとう!」
梨子『ふふっ。ならよかった。……じゃあ、おやすみなさい』
曜「おやすみ! またあしたね!」
31: 1です 規制されたのでIDかわりました(庭)@\(^o^)/ 2017/02/12(日) 20:46:55.54 ID:qUEYGoaI.net
千歌「やっほー! よーちゃんいらっしゃい!」
曜「ちかちゃん、これ!」
千歌「わっ! なにこれ!?」
曜「みかんっていう果物だよ! ちかちゃん、これ好きでしょ!」
千歌「えっ? ちかに?」
曜「うん! ……その、きのうのお詫びにと思って」
千歌「よーちゃん……」
曜「ほら、食べて食べて!」
千歌「うん! ありがとう! いただきまーす!」
曜「ちょ、ちょっと! ちかちゃんあせりすぎだよ! 皮くらいむかないと!」
千歌「あ! そうだよね! むきむきっと……はむっ」
曜「どう?」
千歌「ん!? すごい! とってもあまくておいしい!」
曜「でしょ! よかったぁ!」
32:
曜「やっぱり、梨子ちゃんに相談して正解だったなぁ」
千歌「ん? 梨子ちゃんってよーちゃんのともだちの?」
曜「うん。実は梨子ちゃんから教えてもらったんだ。仲直りしたいならプレゼントをあげたらどうかなって」
千歌「え? っていうことは梨子ちゃんにちかのこと話したの?」
曜「ちかちゃんの名前は出してないけれど、友達と喧嘩したってことは話したよ」
千歌「そうなんだ。……珍しいね。よーちゃんがそんなこと人に話すなんて。昔、果南ちゃんに話して以来じゃない?」
曜「うん。梨子ちゃんだったらいいかなと思って。それに、具体的なことは隠したままだし」
千歌「……ふーん。まぁ、よーちゃんがいいならいいんだけど」
曜「で、今日は何して遊ぼう?」
千歌「そうだなぁ。今日は梨子ちゃんの話が聞きたいな」
曜「え? どうして?」
千歌「曜ちゃんがそんなに信用してるなら、きっといい子なんだろうなぁと思って」
曜「うん! 優しくて、かわいくて、とってもいい子だよ! じゃあ、今日は梨子ちゃんの話をするね!」
千歌「よろしく!」
曜「じゃあ、引っ越してきた時のことから話そうかな。梨子ちゃんが引っ越してきたのは今年の春でね、それで……」
33:
曜「よーちゃんはね♪ ようちゃんっていうんだほんとはね♪」
梨子「おはよう、曜ちゃん」
曜「おはよう!」
梨子「前から気になっていたんだけど、よーちゃんとようちゃんって似てるわよね。よーちゃんって言えるなら、ようちゃんって言えるんじゃないかしら」
曜「たしかに……、そんなこと考えたこともなかったなぁ。梨子ちゃん鋭いね!」
梨子「ふふっ。……それで、仲直りできた?」
曜「ばっちり! 梨子ちゃん、本当にありがとう!」
梨子「ならよかった。やっぱり、曜ちゃんは笑っているのが一番だから」
曜「えへへ、そうかなぁ」
梨子「うん!」
35:
放課後
曜「はい、梨子ちゃんお疲れさま!」
梨子「ありがとう。……んくっ……んくっ……ふぅ」
曜「今日こそ一緒に遊ぼうよ!」
梨子「そうね。何して遊ぶ?」
曜「昨日、果南ちゃんと一緒にどこに行ったの?」
梨子「うーん……、居酒屋? みたいなところかな」
曜「あぁ……あそこね。あそこもおいしいんだけど、女子高生が行くところじゃないよね」
梨子「う、うん。まあそうね」
曜「じゃあさ、今日は喫茶店でおしゃべりしようよ! 女子高生らしく!」
梨子「いいよ」
果南「面白そうな話してるね」
曜「わっ! 果南ちゃん!」
果南「梨子ちゃん、昨日は付き合ってくれてありがとね」
梨子「は、はい」
36:
鞠莉「ちょっとちょっとぉ! 果南、いつのまにそんなに梨子ちゃんと仲良くなったのぉ!?」
果南「部活動では後輩との関係づくりが大切だからね」
曜「今から喫茶店でもいこうかなって話をしてたんだ」
果南「喫茶店かぁ。まあ、たまにはそれもいいかもね。一緒に行ってもいい?」
鞠莉「果南だけズルーい! わたしもいいでしょ? 梨子ちゃんとラブな関係になりたいの!」
曜「梨子ちゃん、どうする?」
梨子「わたしは別にいいよ」
鞠莉「やったぁ! ほら! ダイヤもくるー!?」
ダイヤ「申し訳ありませんが家の方で所用がありますので。お断りさせていただきますわ」
果南「一年生組も帰っちゃったみたいだね。じゃあ、四人で行こうか」
鞠莉「よーし! レッツゴー!」
37:
喫茶店
鞠莉「それでね、果南ったらわたしをおいて先に行っちゃうんだから! 走る前は、一緒に走ろうね、なんて言ってたのに!」
果南「だから、あれはマリが遅すぎたから……」
鞠莉「果南がはやすぎるのよ!」
曜「あははは!」
鞠莉「そっちは長距離走終わったの? 曜ちゃんなんかとってもはやーいイメージだけれど」
梨子「曜ちゃんはクラスで一番でした」
鞠莉「オー! それはとってもシャイニーね!」
曜「でも、梨子ちゃんだって、タイムが縮まったって先生にほめられてたんだよ」
果南「ほんと? すごいじゃん、梨子ちゃん」
梨子「えへへ、たまたまですよ」
鞠莉「ノー! 長距離走に偶然なし! って言葉もあるくらいなんだから!」
梨子「本当ですか?」
鞠莉「イエス! わたしが作ったんだけどね!」
梨子「は、ははは……」
果南「マリ、そろそろ時間じゃない?」
鞠莉「えっ、もう!? はぁ、楽しい時間はあっという間ね! それじゃあまた明日! チャオー!」
39:
果南「梨子ちゃん、だいじょうぶ?」
梨子「は、はい。じっくり話したのははじめてですけど、台風みたいな人ですね」
曜「台風かぁ。……言えてるかも」
果南「いい子なんだけどね。梨子ちゃんの前だからちょっと浮かれてたんだと思う」
梨子「そうなんですか?」
果南「仲良くなって梨子ちゃんの胸を揉んでやるんだって息巻いてたから」
梨子「……冗談ですよね?」
果南「ははっ! ……でさ」
梨子「えっ!? 冗談だよね!?」
果南「まあ梨子ちゃんの想像にまかせるよ。でさ、曜」
曜「ん? なに?」
果南「チカちゃんのこと、梨子ちゃんに言ったから」
梨子「!?」
40:
曜「あっ……、あぁ、人形のこと? それならもう……」
果南「違う違う。夢の中のチカちゃんのこと」
曜「……えっ?」
梨子「ちょ、ちょっと! 果南さん!?」
果南「いいでしょ? 曜だってチカちゃんと喧嘩したこと、梨子ちゃんに話したんでしょ? だったら遅かれ早かれ話すつもりだったんじゃないの?」
曜「…………」
果南「それにさ、現に梨子ちゃんは何とも思わないってさ。今日一緒に過ごしてみて、何か違和感あった?」
曜「……ううん」
果南「でしょ? やっぱりこそこそするのって性に合わないからさ、曜にも言っておこうと思って」
曜「…………」
42:
梨子「あ、あのね、わたし、」
曜「……梨子ちゃん、わたしのこと、おかしいって思う?」
梨子「っ!」
曜「自分でも、分からなくなることがあるんだ。たしかに、わたしの中にちかちゃんはいる。わたしはちかちゃんと一緒に育ってきた。だけど、100パーセント絶対にかって聞かれたら、胸を張って答えられない。そんなのおかしいって思うわたしも……」
梨子「そんなことない!」
曜「!?」
梨子「曜ちゃんがいるっていうなら、絶対にいる! わたしは曜ちゃんを信じてる!」
曜「……梨子ちゃん」
梨子「それに、昨日も言ったでしょ! わたしが曜ちゃんを嫌いになるなんてこと、絶対にない! わたしは曜ちゃんが大好きだから!」
果南「ちょ、ちょっと!///」
梨子「え?」
店員「あ、あの、お客様?」
曜「……///」
梨子「あっ……/// ち、ちがっ……/// これは、そのっ……///」
梨子「ご、ごめんなさい……///」
43:
帰り道
果南「もう、あの店行けないね」
曜「そうだね」
梨子「本当にごめんなさい……/// わたし、どうかしてて……///」
果南「まあ、梨子ちゃんの気持ちは伝わったよね。よかったじゃん、曜」
曜「う、うん……///」
梨子「曜ちゃん! ちがうの! あれは言葉のあやというか……」
曜「……え?」
梨子「い、いや、だからといって嘘でもないというか、なんというか……///」
果南「……さてと、あとは若い二人に任せましょうかね」
曜「か、果南ちゃん!?」
果南「へへへ。じゃあね、二人とも、お幸せに?!」
曜「あっ、行っちゃった」
曜・梨子「…………」
曜「じ、じゃあ帰ろっか……///」
梨子「そ、そうね……///」
44:
梨子「それじゃあね、曜ちゃん」
曜「うん。……あの、ありがとう。梨子ちゃんに話すことができてすっきりしたよ」
梨子「ううん。また、なにかあったら言ってね。わたしでよかったら相談に乗るから」
曜「うん! またあした!」
45:
千歌「よーちゃん! いらっしゃ……」
曜「ちかちゃん! 聞いてよ!」
千歌「わわっ、どうしたの?」
曜「わたし、梨子ちゃんに全部言っちゃった!」
千歌「あっ、そうなんだ」
曜「……あれ? 驚かないの?」
千歌「まあ昨日の様子だとそんな気がしたからね。で、どうだった?」
曜「そ、それは……///」
千歌「え? なんで赤くなるの?」
曜「その、よーちゃんを信じてくれるって。嫌いになんかならないって。……だ、大好きだって///」
千歌「……ほほーう」
曜「な、なに!? ほほーうって!」
千歌「いや、よーちゃんにも春が来たんだなぁと思って」
曜「べ、べつにそういうわけじゃ……///」
千歌「どう? これを機に前を向いてみるっていうのは」
曜「……え?」
46:
千歌「ほら、よーちゃんだって分かってるでしょ? ちかとお別れしろとまでは言わないからさ、とりあえず名前だけでも戻してみるっていうのはどうかな?」
曜「ちかちゃん、何を言ってるの?」
千歌「……よーちゃん聞いて。このままじゃだめなんだよ。よく分かんないわたしなんかよりもさ、梨子ちゃんの方がきっとよーちゃんを幸せにしてくれるよ」
曜「ごめん、何を言ってるのか分かんないよ」
千歌「だからさ! ちかちゃん! わたしなんかにとらわれないで……」
曜「わたしはよーちゃんだよ! ちかちゃんはちかちゃんでしょ!?」
千歌「ちかちゃん……」
曜「何を、言ってるの……?」
千歌「……ごめんね。なんでもないよ」
曜「うん。……それで、今日は何をして遊ぼうかな?」
千歌「……よーちゃんの好きなものでいいよ」
曜「分かった! じゃあね……」
千歌「…………」
47:
梨子「曜ちゃん、おはよう!」
曜「……おはよう」
梨子「あれ、どうしたの? また喧嘩?」
曜「ううん。違うよ。……ねぇ、梨子ちゃん、この人形の名前覚えてる?」
梨子「うん。チカちゃんでしょ?」
曜「じゃあわたしは?」
梨子「曜ちゃん?」
曜「だよね」
梨子「どうしちゃったの? 本当に大丈夫?」
曜「うん! ごめんね、変なこと聞いて! 昨日の宿題は?」
梨子「全部解けたよ」
曜「そう? ならよかったよ!」
梨子「うん」
梨子「……?」
48:
放課後
梨子「今日は飛び込みだったよね」
曜「うん。みんなによろしくって言っておいて」
梨子「分かったよ。じゃあね。頑張って」
曜「了解であります!」
梨子「……さて、ここ数日遊んでばっかりだったし、帰ったら勉強でもしようかな」
49:
梨子の部屋
梨子「ふぅ、こんなものかな」
梨子「曜ちゃんから連絡来なかったな」
梨子「きっと疲れてるんだよね」
梨子「一応、お疲れさまって送っておこうっと」ピッピッ
梨子「ふぁーぁ……、ちょっと早いけど寝ようかな」
梨子「おやすみなさい」
50:
コンコンコン
梨子「んん……」
コンコンコン
梨子「んぅっ……?」
コンコンコン
梨子「こんなじかんになによぉ……」
ゴンゴンゴン!
梨子「ひっ……! な、なに? 窓の方から……」
??? ゴンゴンゴン
梨子「べ、ベランダにだれかいる!?」
梨子「あれ、でもあのシルエットは……」
51:
曜「ごめんね、こんな夜中に」
梨子「もうっ! びっくりしたんだから!」
曜「どうしても梨子ちゃんに聞いてほしいことがあったんだ」
梨子「そうなの? チカちゃんのこと?」
曜「うん。実はわたし、チカちゃんの他にも3人のお友達がいるんだ」
梨子「……はい?」
曜「それでね、一人目はデカちゃんっていうすっごく大きな巨人でね、二人目は……」
梨子「ちょ、ちょっと待って! 曜ちゃん、何の冗談?」
曜「え? う、うそじゃないよ。二人目はチビちゃんっていう小人が……」
梨子「……曜ちゃん?」
曜「あう……その……」
梨子「あれ? ……あなた、本当に曜ちゃん?」
曜「え!?」
52:
梨子「い、いえ、ごめんなさい。変なこと言って。自分でも何を言ってるんだか……」
曜「いや、いいよ。というか、当たりだし」
梨子「……え?」
曜「でも、まさか見抜かれるとは思ってなかったなぁ。少し梨子ちゃんのことを試してみようかなって思っただけなのに」
梨子「……曜ちゃん?」
曜「はじめまして。わたし、曜といいます」
梨子「……知ってるけど?」
曜「あっ、そうだったね。じゃあこう言えばいいのかな」
曜「はじめまして。わたし、ちかといいます」
梨子「……あなた、何を言っているの?」
曜「まあびっくりするのも無理ないよね。わたしも外の世界に出てきたの、はじめてだからさ」
梨子「…………」
53:
曜「順番に説明するね。まず、あなたの知っているよーちゃんから、ちかのことは聞いたんだよね? 夢の中に出て来るって」
梨子「ええ」
曜「わたしはその子。今はよーちゃんの身体を使わせてもらってるんだ」
梨子「……?」
曜「つまり、身体はよーちゃんだけど、精神はわたし、ちかのものっていえば分かるかな?」
梨子「二重人格ってこと?」
曜「ん? ごめんね、その言葉は聞いたことないや。わたし、夢の中でよーちゃんに教えてもらったことしか知らないんだ」
梨子「…………」
54:
曜「それでね、わたしが出てきた理由なんだけど、それは梨子ちゃんに一つ頼みごとをしたかったからなんだ」
梨子「……わたしに?」
曜「どうかよーちゃんに、あの子に、前を向いて進むよう言ってあげてほしい。そして、できることならあの子を支えてあげてほしい」
梨子「……支える?」
曜「うん。あの子と結婚してほしい。それで、じんせいっていうのかな? その最後まで一緒にいてあげてほしい」
梨子「えっ!?/// な、なにを言ってるの!?///」
曜「あれ、何かおかしかったかな? あの子に大好きって言ったって聞いたけど」
梨子「そ、それは……///」
曜「とにかく、それが無理なら前を向いて進むようにとだけでも言ってあげてほしいの

梨子「……ごめんなさい。分からないことが多すぎるから何とも言えないの。わたしから質問してもいい?」
曜「いいよ。答えられることならなんだって答えるよ」
55:
梨子「あなた、ちかちゃんはいったい何者なの?」
曜「わたしはあの子と一緒に産まれるはずだった双子の一人。つまり、あの子のお姉ちゃんかな」
梨子「……お姉ちゃん?」
曜「ほんとはわたしとあの子は双子で産まれてくるはずだったの。だけど、わたしは産まれる直前に死んじゃった。そして、あの子の中で一緒に成長してきた」
梨子「……どういうこと?」
曜「分かんない。どうしてこんなことになったんだろうね。わたしも知りたいよ。……あっ、あとひとつだけ。本当はわたしが曜であの子が千歌。つまり、あの子は自分自身が曜であると思い込んでいるんだ」
梨子「……え?」
曜「小学校に上がる少し前のことだったかな。あの子、急にわたしの真似をし始めたんだ。それまではあの子が千歌で、わたしが曜だった。だけど、それからはわたしがちかで、あの子はようになった」
梨子「曜ちゃんの本当の名前は、ちかってこと……?」
曜「生まれた時の名前という意味なら、そうだよ」
梨子「そんな……」
56:
曜「他に質問は?」
梨子「……ごめんなさい。頭が追い付かないの」
曜「そう? じゃあ今日はこのくらいにしておこうかな」
曜「もう一回念を押しておくと、あの子が前を向いて歩いていけるように手助けをしてほしい。もう死んじゃったわたしのことばかり気にかけている今の状況は、やっぱり普通じゃないからね」
曜「そして、できることならその後もあの子の支えになってあげてほしい。これが、わたしのお願い」
梨子「そんなの、わたしにはとても……」
曜「これはお願いだから。別に梨子ちゃんが嫌だというならそれでもいいんだよ。でも、わたしはそれがあの子にとって一番幸せなことだと信じてる」
梨子「…………」
57:
曜「さて、そろそろ帰ることにするよ。わたしがここにいるってことは、あの子は今も一人で夢をみているだろうからね。もし、明日、不安そうにしていたら、梨子ちゃんが元気づけてあげてね」
梨子「……うん」
曜「それじゃあ、今度はいつ会えるか分からないけれど……、あ、最後に一つだけ」
梨子「……?」
曜「今までわたしは一度も外の世界に出たことがないって言ったよね。それはあの子のわたしに対する執着が強すぎたから。今はそれが少し弱まっているから外に出てこられたの。どうしてだと思う?」
梨子「……分からない」
曜「梨子ちゃんを想う気持ちが強くなっているからだよ」
梨子「えっ?」
曜「案外、両思いなんじゃないかな。……それじゃあバイバイ」
58:
梨子母「いつまで寝てるの! 起きなさい!」
梨子「……はぁい!」
梨子「結局、ぜんぜん眠れなかったなぁ……」
梨子「昨日のことって、現実、だよね」
梨子「曜ちゃんが、曜ちゃんじゃなくて、本当の名前はちかちゃん」
梨子「はぁ、わけわかんないよ……」
『案外、両想いなんじゃないかな』
梨子「……///」
梨子「違う違う! そんなことじゃなくて!」
梨子「…………」
梨子「……よし、決めた」
59:
梨子「おはよう、曜ちゃん」
曜「おはよう!」
梨子「昨日は喧嘩しなかった?」
曜「え? チカちゃんのこと? しなかったよ。なんで?」
梨子「ううん、仲良しならいいの」
曜「そう? 変な梨子ちゃん」
梨子「そういえば、明日って部活動ないんだったよね」
曜「そうだよ。ダイヤさん、というか黒澤家が用事って言ってたよね」
梨子「飛び込みは?」
曜「別に行くつもりはないけど」
梨子「それなら、わたしと一緒にお出かけとかどうかな?」
曜「えっ? それって、その……///」
梨子「ち、違うの!/// 最近お家でばかり遊んでたから、たまには外で遊ぼうかなと思って」
曜「あ、ああ! そうだよね! いいよ! 梨子ちゃんの好きなところに行こうよ!」
梨子「うん! じゃあ、考えとくね!」
61:
放課後
果南「梨子ちゃん、聞いたよ。明日、曜をデートに誘ったんだって?」
梨子「なっ/// ち、違います!/// 遊びに誘っただけです!」
果南「照れなくてもいいじゃん。わたしは応援してるよ」
梨子「も、もうっ! だからそんなんじゃ……」
果南「はい、それで、これあげる」
梨子「……なんですかこれ? 地図?」
果南「うん! わたしが発見した絶景スポットだよ! 梨子ちゃんにも見てもらいたくてさ!」
梨子「絶景スポット?」
果南「特に夕日が差し込む時がきれいなんだ。曜と遊んだ帰りにでも見てみるといいよ」
梨子「分かりました。ありがとうございます」
果南「いいって、いいって。その代わり、帰ってきたら詳しく聞かせてね」
梨子「は、はい」
63:
梨子の部屋
梨子「勢いで誘っちゃったなぁ……」
梨子「で、でも、休日に友達同士で出かけるなんてよくあることだよね!」
梨子「…………」
梨子「曜ちゃんと二人きりでデート……///」
梨子「……っっっ??///」ゴロゴロ
梨子(あれから少し考えたけれど、結局、気にしないことにした)
梨子(何を言われようと、曜ちゃんは曜ちゃんだ)
梨子(頼まれたことだって簡単にいえば曜ちゃんと仲良くしてってことだと思った)
梨子(つまり、今までと何も変わらない)
梨子(…………)
64:
梨子(本当に?)
梨子(わたし、ほんとの曜ちゃんのこと何も知らないのに?)
梨子(そんなわたしが、曜ちゃんのことを好きになる資格があるの?)
梨子「…………」
梨子「……そろそろ寝なくちゃ」
梨子「おやすみなさい」
65:
曜「ち、ちかちゃん! 梨子ちゃんからデートに誘われちゃった!」
千歌「ほんと!? よかったね! よーちゃん!」
曜「ど、どうしよう、わたし、デートなんてしたことないよ!」
千歌「そんな緊張しなくてもさ、普通にしてればいいんじゃないかな」
曜「そ、そう?」
千歌「うん! 梨子ちゃんだって、いつものよーちゃんが好きなんだと思うよ」
曜「す、好きだなんて……///」
千歌「……本当によかったね、よーちゃん」
曜「うん! 次に来たときにデートのこと、いっぱい話すから、楽しみにしててね!」
千歌「もちろん!」
66:
梨子「……早く来すぎちゃったかな」
曜「梨子ちゃん! ごめんね、待たせちゃった?」
梨子「ううん。私も今来たところ」
曜・梨子「…………」
曜「その、り、梨子ちゃんの私服、か、かわいいね///」
梨子「あ、ありがとう/// 曜ちゃんの服も、その、とっても似合ってる///」
曜「そ、そう?///」
曜・梨子「……///」
梨子「じ、じゃあ、行きましょうか」
曜「そ、そうだね!」
67:
曜「わあっ……おもしろい顔だね!」
梨子「ダイオウグソクムシって言うんだって。……ちょっとこわいかも」
曜「そう? わたしはかわいいと思うけどなぁ」
梨子「あっ! わたし、この子がかわいいと思う!」
曜「どれどれ? ……え?」
梨子「メンダコだって。すごくやわらかそう!」
曜「かわいい……かなぁ……」
梨子「えー! かわいいよぉ!」
曜「あっ! あの子、かわいい!」
梨子「ちょっと曜ちゃん!? 置いてかないでよぉ!」
68:
梨子「ん! このお刺身すごくおいしい!」
曜「でしょ! このお店、穴場なんだ!」
梨子「よく考えてみたら、曜ちゃんの方がこの辺詳しいんだよね」
曜「でも、こんなに楽しいのは梨子ちゃんと一緒だからだよ!」
梨子「そ、そう? わたしも、曜ちゃんと一緒だと、とても楽しいよ」
曜「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいな」
梨子「じゃあ、ご飯食べたら次の場所に行こう! まだまだ見たいところがたくさんあるの!」
曜「うん!」
69:
梨子「なんだか、いつもの階段を歩いて登るのって新鮮だね」
曜「いつもは練習に必死でまわりの景色なんか見えないよね」
梨子「……わたし、こういう緑に囲まれたところってちょっと新鮮だな」
曜「東京にはないの?」
梨子「うーん、ないこともないんだけど、作られた感じと言うか、自然って感じはしないかなぁ」
曜「ふーん。わたしにしてみたらビルに囲まれたところの方がよっぽど新鮮だけどね」
梨子「ビルに囲まれててもつまらないじゃない? こんなにさわやかな気持ちにはなれないよ」
曜「えー? わたしはわくわくするけどなぁ」
梨子「ふふっ、そういうものなのかな。……じゃあ、せっかくだしお参りして行こうか」
曜「そうだね!」
70:
曜「梨子ちゃんはなんてお願いしたの?」
梨子「あら、こういうのは人に話したら叶わないっていうじゃない?」
曜「そう? わたしのお願いはむしろ話した方が叶うような気がするけどなぁ」
梨子「そうなの? じゃあ教えて」
曜「梨子ちゃんと、これからも仲良くできますように」
梨子「……曜ちゃん」
曜「えへへ。なんだか照れるなぁ」
梨子「…………」
曜「梨子ちゃん?」
梨子「……ううん。わたしも嬉しいよ」
曜「……? じゃあ、そろそろ降りよっか」
梨子「……うん」
71:
曜「そろそろ陽も沈みそうだね。見て回れるところもあと一つくらいかなぁ」
梨子「うーん、考えてたところはだいたい行っちゃったし……あっ、そうだ!」
曜「どうしたの?」
梨子「そういえば果南さんに教えてもらった場所があるんだった。絶景スポットだって言ってたよ」
曜「へぇ、どこだろう」
梨子「地図を見ると、海岸沿いの岩場みたい。ちょうど夕方だし、最後にそこに行ってみましょうか」
曜「うん!」
72:
曜「なんかすごいところに来ちゃったね」
梨子「果南さん、こんなところにいつも来てるのかな」
曜「目的地は近いの?」
梨子「えーっと、あの洞窟みたい」
曜「じゃあもう少しだね」
73:
梨子「ふぅ……ふぅ……、どう、曜ちゃん、なにかあった?」
曜「…………」
梨子「曜ちゃん? どうし……」
梨子「これ……」
曜「……すごい。洞窟の屋根が星空みたい」
梨子「……きれい」
曜「細かい穴から光が漏れ出してるんだね」
梨子「……果南さん、すごいところ知ってるね」
曜「うん。さすがだよ、……あれ? 梨子ちゃん、その地図見せて」
梨子「うん、いいよ」
曜「これ、光に透かすとなにか書いてあるよ」
梨子「本当? なんて書いてあるの?」
曜「えーっとね、ぼうしのしたをみろ、だって」
梨子「帽子? あっ! あそこに落ちてる」
曜「ほんとだ。何があるんだろうね」
75:
梨子「じゃあ、拾ってみるね。えいっ!」
曜「あっ……」
梨子「光が、ここだけ、ハートの形になってる……?」
曜「…………」
梨子「も、もう! 果南さんったら! ねぇ、曜ちゃん?」
曜「…………」
梨子「曜ちゃん?」
曜「……わたしも、梨子ちゃんのこと好きだよ」
梨子「えっ?/// い、いきなりなにを……///」
曜「この前の喫茶店での返事、してなかったなと思って」
梨子「……曜ちゃん?」
曜「あの、よ、よーちゃんじゃだめかな?」
梨子「…………」
曜「梨子ちゃんを幸せにするなんて、胸を張って言えないけれど、わたし、梨子ちゃんといっしょならとっても幸せになれる気がするんだ」
梨子「…………」
曜「だから、その、もしよかったら、わたしと……」
梨子「…………」
曜「……梨子ちゃん?」
76:
梨子「…………」
曜「……泣いてるの?」
梨子「……ぐすっ」
曜「ご、ごめんね? 突然こんなこと言われても……」
梨子「違うの」
曜「え?」
梨子「……わたしも曜ちゃんのこと大好きだよ。今だって、すっごく嬉しい」
曜「だったら……」
梨子「でも、だめなの。わたし、曜ちゃんのこと全然知らなかった。なんにも知らなかったの。そんな私が、曜ちゃんを好きになる、資格なんて……」
曜「……梨子ちゃん?」
梨子「ごめんなさい」
曜「あっ、梨子ちゃん! 待ってよ!」
曜「梨子ちゃん……」
77:
梨子「……なんで、逃げちゃったんだろう」
梨子「曜ちゃんの気持ちを受け入れることも拒んで」
梨子「曜ちゃんに本当のことを聞いてみる勇気もなくて」
梨子「……わたし、最低だ」
梨子「わたしなんか、曜ちゃんの隣にいる、資格は……」
果南「あっ! 梨子ちゃーん!」
梨子「果南、さん……?」
果南「曜とのデートは……ってどうしたの!? 目が真っ赤だよ!?」
梨子「果南さん、わたし、わたしは……」
果南「……梨子ちゃん?」
梨子「……わ、わたしなんか、だめだめで、最低で、それで……!」
果南「…………」ギュッ
梨子「んっ……!?」
果南「何があったか分からないけど、つらかったんだね。……もう曜ちゃんはいないよ?」
梨子「…………」
果南「……よしよし」ナデナデ
梨子「……うぇぇ……うああぁん……! ……うう……ひっく……うあああぁぁ……!」
79:
果南「少し落ち着いた?」
梨子「……はい。みっともないところ見せてしまって、ごめんなさい」
果南「みっともなくなんかないよ。それに、わたしと梨子ちゃんの仲じゃない」
梨子「……はい」
果南「それで、何があったの? 話せることだけでいいから話してみなよ」
梨子「……分かりました」
梨子(それからわたしは全てを話した)
梨子(一昨日の夜、ちかちゃんが部屋にやってきたこと)
梨子(そこで、わたしはちかちゃんにお願いをされたこと)
梨子(そして、曜ちゃんが本当は曜ちゃんじゃなかったこと)
梨子(……わたしが、最低だということ)
80:
果南「だいたい分かったよ。正直に言うと、ちょっと、というか、すごくびっくりしたけど、でも、今の梨子ちゃんを見ればそれが真実だってことは分かるよ」
梨子「わたしは、どうすればいいんでしょうか……」
果南「それは私が決めることじゃない。だけど、ひとつだけいい?」
梨子「……はい」
果南「そのちかって子がなんと言おうとさ、わたし、曜は曜だと思うよ」
梨子「……それは、曜ちゃんが自分を偽っていることも含めて、それが曜ちゃんだということですか?」
果南「違うよ。そもそも自分を偽ってなんかいない。曜はずっと曜のままだと思う」
梨子「……え?」
81:
果南「人が他人に成り替わるってさ、そんなに簡単なことなのかな。ましてや、ある日突然真似をしはじめたなんて」
梨子「そんなこと言ったって……」
果南「なにより、わたしがいっしょに過ごしてきた曜はずっと曜だったよ。その人格がぶれてるなんてこと、一度も感じたことない」
梨子「……それじゃあ、ちかちゃんが嘘をついているということですか? そんな風には見えませんでしたけど」
果南「それは……分かんないけどさ……」
梨子「…………」
果南「…………」
果南「だったらさ、直接聞いてみたらどうかな?」
梨子「曜ちゃんにですか? それができるのならこんなことには……」
果南「ちがうちがう」
梨子「……え?」
果南「曜ちゃんのお母さんにだよ」
82:
梨子(果南さんは準備ができたらわたしの家に来ると言った)
梨子(何の準備なのかはわからなかった)
曜「おはよう!」
梨子「……うん」
曜「あのさ、昨日の……」
梨子「ごめんなさい、曜ちゃん」
曜「……うん、ごめん」
梨子(わたしは曜ちゃんの顔を見ることができなかった)
梨子(見たら涙がこぼれてしまいそうだったから)
梨子(最初は話しかけてくれた曜ちゃんも、1日もすればわたしに話しかけることはなくなった)
梨子(曜ちゃんを無視し続けるのは胸が痛かった。曜ちゃんが話しかけてくれないのはもっと痛かった)
梨子(そして3日が経った)
83:
果南「梨子ちゃん、お待たせ」
梨子「……果南さん?」
果南「ごめんね、3日も待たせて。曜ちゃんのお母さん、普段は東京にいてね。曜に内緒でこっちに呼ぶのに3日かかっちゃった」
梨子「わたしのために、そこまで……」
果南「まあ、曜のためでもあるわけだし。……それで、わたしが曜を連れだすからさ、その間に話しておいでよ」
梨子「……分かりました」
84:
梨子「曜ちゃんの悲鳴が聞こえる。果南さんが成功したのかな」
梨子「……曜ちゃん、ごめんなさい」
ピーンポーン
梨子「…………」
曜母「はいはーい」ガラッ
梨子「……え?」
曜母「あら、あなた梨子ちゃんでしょう?」
梨子「…………」
曜母「どうしたの?」
梨子「……いえ、そうです。わたし、桜内梨子といいます」
曜母「うん。わたしが曜の母親です。とりあえず、中に入ってね」
梨子「はい。お邪魔します」
85:
曜母「果南ちゃんから話は聞いているわ。家の曜と仲良くしてくれてありがとう」
梨子「いえ、そんな」
曜母「それで、何か聞きたいことがあるとか」
梨子「…………」
曜母「……あなたは曜のことをどこまで知っているの?」
梨子「そ、それは」
曜母「教えて」
梨子「…………」
曜母「だいじょうぶよ。怒ったりしないから」
梨子「……曜ちゃんは、ちかちゃんと夢の中で毎晩会っていると聞きました。いつも持っているお人形がその子だとか」
曜母「うん。それから?」
梨子「曜ちゃんは実は双子で、一人は産まれる前に死んでしまった。曜ちゃんの産まれたときの名前はちかといって、小学校に入る前に……曜ちゃんになった」
曜母「……驚いた。それは曜でさえ知らないはずよ。あなた、そんなこと誰から聞いたの?」
梨子「…………」
86:
梨子「わたしの言ったことは、真実なんですか?」
曜母「……? ええ。曜は双子で、産まれた時は千歌という名前だった。小学校に入る前に、曜と言う名前に改名した」
梨子「……そう、なんですか」
曜母「ど、どうしたの? 顔色が悪いわよ。だいじょうぶ?」
梨子「……それじゃあ、やっぱり、曜ちゃんは、本当は、ちかちゃん、なんだ……」
曜母「うん?」
梨子「わたし、曜ちゃんのこと、何も知らないんだ、ぜんぶ、ぜんぶ、本当の曜ちゃんじゃ、なかったんだ……」
曜母「ちょ、ちょっと、落ち着いて! 何を聞いたのか知らないけれど、曜は曜よ。他の誰でもないわ」
梨子「……どういうことですか?」
曜母「なんだか話が噛みあわないね。ね、梨子ちゃん、もう少し詳しく教えてくれる?」
梨子「……曜ちゃんの本当の名前はちかちゃんで、幼稚園の頃から死んでしまった曜のふりをするようになったんじゃないんですか?」
曜母「え? 何を言ってるの? 曜が改名したのは、産まれてからあの子の本当の名前が曜だと分かったからよ」
梨子「……え?」
87:
曜母「出産のときにね、お医者さんが曜と千歌を間違えたの。産まれたのは千歌で曜が死んでしまったのだと思っていたけれど、本当は逆だった。つまり、産まれたのは曜の方だった」
曜母「そのことをあとから聞かされたんだけど、赤ちゃんだった曜は既に自分の名前を千歌であると思い込んでいたの」
曜母「だから、きちんと意思の疎通ができるようになってから、そのことを話してどちらの名前がいいか本人に選んでもらうことにしたのよ」
曜母「もちろん、双子で産まれてきたんだってことは内緒にしたんだけどね」
曜母「そして、あの子は曜という名前を選んだ」
梨子「そんな、そんなことって……」
曜母「信じられない? だったらこの歌は知ってる? ――よーちゃんはね♪ ようちゃんっていうんだほんとはね♪」
梨子「あっ、その歌……!」
曜母「曜がよく歌っているでしょ? この歌は最初こんな歌詞だったの。――ちかちゃんはね♪ ようちゃんっていうんだほんとはね♪」
梨子「……!」
88:
曜母「もうあなたの名前は曜なんだから、外で千歌という名前を口に出すと変に思われるよって言ったら、あの子、歌詞を変えたみたいだけれど」
梨子「…………」
曜母「これですっきりした?」
梨子「わたしは……わたしはなんて勘違いを……」
曜母「……ねぇ、あなた、曜のこと好きなんでしょ?」
梨子「えっ……///」
曜母「わたしはね、女同士はダメ! なんてこと言うつもりはないの。……曜のこと、よろしくね」
梨子「……わたしは」
ガラッ タダイマー
曜母「あら、この声……」
梨子「……お母さん、ありがとうございます」
曜母「うん、行っておいで」
90:
曜「まったく、果南ちゃんったらむりやり……」
梨子「曜ちゃん!」
曜「あれ、梨子ちゃん? なんでわたしの家に……」
梨子「……」ギュッ
曜「わっ!///」
梨子「ごめんなさい……! わたし、曜ちゃんのこと疑ってた……! 曜ちゃんが、曜ちゃんなんだってこと、信じてあげられなかった……!」
曜「えっ/// な、なんのこと?///」
梨子「ごめんなさい……! ごめんなさい……! ごめんなさい……!」
曜「よ、よく分かんないけどさ、ごめんもなにも、わたしが梨子ちゃんのこと嫌いになるわけないよ。だからそんなこと言わないで」
梨子「……曜ちゃん」
曜「あっ、また泣いてる。梨子ちゃん、意外と泣き虫だね」フキフキ
梨子「んっ……」
92:
曜「前に言ってくれたよね。わたしは笑っているのが一番だって。わたしも、梨子ちゃんは笑っているのが一番だと思うよ。だって、わたしはそんな梨子ちゃんを、す、好きになったんだからさ……///」
梨子「曜ちゃん!!!」ギュウ
曜「……なぁに?」
梨子「すき! すき! わたし、ようちゃんがすき!」
曜「うん。よーちゃんも好きだよ」
梨子「ようちゃんとずっといっしょにいたい! ようちゃんとずっといっしょがいい!」
曜「よーちゃんも、梨子ちゃんとずっと一緒がいいな」
梨子「ようちゃん! ようちゃん! ようちゃん!」
曜「うん。よーちゃんはここにいるよ。ずっと。ずぅーっと」
113:
曜「それでね、梨子ちゃんと服を買いに行ったんだけどさ、梨子ちゃんなにを着ても似合うんだ!」
千歌「うん」
曜「今度、コスプレもしてほしいなあ……、な、なんて言ったらひかれるかな?」
千歌「そんなことないと思うよ。きっと梨子ちゃんなら付き合ってくれるんじゃないかなぁ」
曜「そうかな!? たしかに、梨子ちゃん優しいからなぁ! ……でもなぁ、コスプレはなぁ……」
千歌「そんなに気になるんなら聞いてきてあげようか?」
曜「……え? ちかちゃんがそんな冗談いうなんて珍しいね」
千歌「…………」
曜「あっ! そろそろかな! じゃあね、ちかちゃん! また明日!」
千歌「うん。バイバイ」
116:
バスの中
曜「梨子ちゃん、だいじょうぶ?」
梨子「う、うん。正直にいうと、少しだけ眠いかな」
曜「別に登校時間までわたしに合わせなくてもいいのに」
梨子「だって、少しでも長く曜ちゃんと一緒にいたいんだもん」
曜「そ、それを言われると、参っちゃうなぁ……///」
梨子「曜ちゃん、そう言われるために毎朝同じ質問してるでしょ?」
曜「えっ!? そ、そ、そんなことないよ!」
梨子「ほんと、分かりやすいなぁ、曜ちゃんは」
曜「……そんなこと言うなら、お母さんの前でわたしに抱きついた話しようかなぁ」
梨子「なっ……!///」
曜「わたしのこと、すき、すき、って何回も……」
梨子「わー!/// わー!///」
曜「梨子ちゃん、ここ、バスの中だよ?」
梨子「あっ、ご、ごめんなさい///」
曜「あはは!」
梨子「曜ちゃん、ズルいよ……」
曜「ごめんごめん! 照れてる梨子ちゃんがかわいくって」
梨子「もう……/// 曜ちゃんのばか……///」
117:
梨子「降りるのは次ね。ボタンはっと……」
花丸・ルビィ「…………」
梨子「……えっ?」
曜「あっ、花丸ちゃん、ルビィちゃんおはよう!」
花丸「お、おはようございます……ずら」
ルビィ「ぉはようこざいます……」
梨子「い、いつからいたの?」
花丸「梨子ちゃんだいじょうぶってとこから……///」
ルビィ「ぅゅ……ぅゅ……///」
梨子「……どうしてこんな時間に?」
花丸「たまには朝、練習してみようかなって思った……ずら」
ルビィ「ぅゅゅ……///」
梨子「…………」
花丸・ルビィ「…………///」
118:
教室
梨子「後輩の前で……あんな……あんなことを……」
曜「まあ、いいじゃん。わたしたちが付き合ってるって、みんな知ってるし」
梨子「そういう問題じゃないの! あぁ、今日の部活動どうしよう……」
曜「考えすぎだと思うけどなぁ」
放課後
曜「じゃあ、屋上行こっか」
梨子「……そうね」
曜「まだ、気にしてるの?」
梨子「……ううん。いく」
119:
曜「みんな、こん……」
善子「あっ! 地獄の業火よりもお熱い二人がやってきたようね!」
梨子「えっ?」
鞠莉「オーウ! わたしより先に梨子ちゃんとラブラブな関係になっちゃうなんて、曜ちゃんズルーい!」
曜「えっ?」
果南「花丸ちゃんとルビィちゃんから聞いたよ?……! バスの中で痴話げんかしてたんだって?」
梨子「えっ? えっ?」
花丸「ご、ごめんなさい、つい口を滑らせて……」
ルビィ「ぅゅ……ルビィもごめんなさい……」
ダイヤ「御二方、恋愛は個人の自由ですが、公共の場でそのような行為は慎んだ方がよいと思いますわ」
曜「あ、あはは……、なんかすごいことになってるね」
梨子「い、いやあぁぁぁ……!!!///」
120:
梨子の部屋
梨子「はぁ……、恥ずかしかったよぉ……///」
梨子「わたし、ダメだなぁ……、すっかり舞い上がっちゃってるよ……」
梨子「……そういえば、あれからちかちゃん来ないなぁ」
梨子「ちかちゃん、本当のこと知らなかったのかな」
梨子「…………」
梨子「考えても仕方ないよね。寝よう」
…………
コンコンコン
梨子「んん……」
コンコンコン
梨子「んぅっ……?」
コンコンコン
梨子「こんなじかんになによぉ……」
梨子「ってあれ……? こんなこと前にもあったような……」
ゴンゴンゴン!
梨子「……ちかちゃん?」
121:
曜「梨子ちゃん、久しぶり!」
梨子「……ちかちゃんだよね?」
曜「うん! 今日はお礼を言いに来たの! 本当にありがとう! おかげでよーちゃんは毎日とっても嬉しそうだよ!」
梨子「うん」
曜「あれれ? どうしたの? もっとキャー、そんなー! みたいな反応を期待してたのに」
梨子「……ねぇ、ちかちゃん。前に会ったとき、曜ちゃんとちかちゃんは入れ替わってるんだって言ってたよね」
曜「うん」
梨子「それって、どうしてそう思ったの?」
曜「え? だから言ったじゃん。千歌ちゃんが突然、わたしはようだって言い出したんだって。それで、わたしのことをちかって呼ぶようになったの」
梨子「だったら、その前はどうして自分の名前を曜だと思っていたの?」
曜「わたしの心の中にね、ぼんやりとだけど、誰かがわたしのことを曜って呼びかけているイメージが浮かぶんだ。とっても必死な声だった。きっとお母さんだと思う。だから、わたしは曜なんだって思った」
梨子「……そういうことだったの」
曜「……?」
122:
梨子「実はね、わたし、あなたたちのお母さんに会ったの」
曜「そうなの? わたしはあの子が持ってきてくれた写真でしか見たことがないんだ。わたしそっくりだよね。って言っても、梨子ちゃんには分からないだろうけど」
梨子「ううん、分かるよ。わたしもびっくりしたもん」
曜「……?」
梨子「それでね、今からお母さんに聞いたことを話すね」
曜「わたしに? それをわたしが聞いて、なにか意味があるの?」
梨子「いいから」
曜「う、うん」
123:
曜「……それ、ほんと?」
梨子「うん。だから、あなたがちかちゃん、曜ちゃんは曜ちゃんだったの」
曜「そうだったんだ。てっきりわたし、曜ちゃんがおかしくなっちゃったんだと思ってたよ……」
曜「あっ! でも、だったらわたし、梨子ちゃんに嘘ついちゃったってことになるね。ごめんね」
梨子「……うん。でも、それを信じちゃったわたしも悪いんだから、いいよ」
曜「ふへぇ?、そうだったのかぁ。わたし、ちかって名前だったんだぁ」
曜「あれ? でも、あんまり違和感ないなぁ。今までも、よーちゃんの前ではちかって言ってたし、そもそもよーちゃん以外の人と話すことなんてなかったし」
梨子「……ふふっ」
曜「どうしたの?」
梨子「なんか、そういう素直なところとか、曜ちゃんにそっくりだなぁと思って」
曜「そ、そんなこと言われたのはじめてだよ」
梨子「そうでしょうね」
曜「……えへへ、なんでか分からないけど、嬉しいなぁ」
124:
梨子「……ねぇ、ずっと気になっていたんだけどね、ちかちゃんのお願いががもしも叶ったら、ちかちゃん、どうするの?」
曜「……どうするんだろ? よーちゃんの中にずっといるわけにもいかないし、空から二人のことを見守ろうかな。それでさ、あんまりえっちなことしそうになったらね、わたしが止めに入るの!」
梨子「そ、そんなことしません!///」
曜「……なんてね。本当は分かってるんでしょ?」
梨子「……ちかちゃん」
曜「それじゃあね。梨子ちゃん、本当にありがとう」
梨子「もう帰っちゃうの?」
曜「あんまりいるとさ、ね? バイバイ」
梨子「……またいつでも遊びに来ていいからね」
曜「……うん」
梨子「…………」
曜「……あっ、そうそう!」
梨子「えっ?」
曜「忘れるところだったよ! 梨子ちゃんさ、コスプレは好き?」
梨子「……はい?」
125:
曜「…………」
千歌「よーちゃん!」
曜「あっ、ちかちゃん! もう、心配したんだから」
千歌「えへへ、ごめんね」
曜「前にもこんなことあったよね。どこに隠れていたの?」
千歌「……よーちゃん、怒らない?」
曜「……? 怒らないよ」
千歌「実はね、梨子ちゃんと会いに行ってたんだ」
曜「またまた! それで、ほんとは?」
千歌「ほんとなんだ」
曜「……え?」
126:
曜「……わたしの身体を使って?」
千歌「うん。勝手に使っちゃってごめんね」
曜「……ちかちゃん」
千歌「う、うん」
曜「そんなことができるようになったの!? すごいね!」
千歌「……へ?」
曜「ちかちゃんも成長してるんだねぇ。……それで、どんなお話したの?」
千歌「……へへっ、よーちゃんならそうだよね」
曜「……?」
千歌「言ったじゃん! コスプレの話、聞いてくるって! 梨子ちゃん、どんなコスプレでも大歓迎だってさ!」
曜「えっ……」
曜「ええっ!?///」
127:
梨子「今日は花丸ちゃんもルビィちゃんもいないわよね?」
曜「いないみたいだね」
曜「……ねぇ、梨子ちゃん」
梨子「なに?」
曜「昨日、ちかちゃんが梨子ちゃんに会いに行ったんだって?」
梨子「……うん。ちかちゃんから聞いたんだ」
曜「やっぱりほんとだったんだ。わたしも、こんなことはじめてだからびっくりしたよ」
梨子「……ちかちゃん、なにか言ってた?」
曜「えーとね、身体を勝手に使ってごめんなさいとか、よーちゃんのことちかちゃんだと思っててごめんなさいとか。二つ目のはよく分からなかったけど」
梨子「……そう」
128:
曜「あ、あとね……///」
梨子「……?」
曜「梨子ちゃん、どんなコスプレでも大歓迎だって。ほんと……?///」
梨子「え!? な、なんで!? わたし、別にそんな趣味はないって言ったよ!?」
曜「あっ、そうなんだ……。じゃあ、ちかちゃん、わたしに気を使ってくれたのかなぁ。ごめんね、変なこと聞いて」シュン
梨子「うっ……、ま、まあ、曜ちゃんがどうしてもって言うんだったら? 付き合ってもいいけど?///」
曜「ほんと!? やったぁ! じゃあ、今日、練習終わったら家に来てね!」
梨子「え? う、うん」
129:
曜の部屋
曜「いらっしゃい!」
梨子「これ、全部衣装なの……?」
曜「うん! えっとね、梨子ちゃんに似合いそうなのは、やっぱりナース服かなぁ……、あっ、でも、警察服も捨てがたいなぁ……」
梨子「ほ、ほどほどにしてね」
曜「すごい! 梨子ちゃんかっこいい!」
梨子「これ、何の服なの?」
曜「セーラー服だよ! もともとは水兵さんの服なんだ!」
梨子「へぇ」
曜「敬礼してよ敬礼! こうやって、ポーズとってさ!」
梨子「こ、こう?」
曜「そう! 梨子ちゃんすごくいいよ! ヨーソロー!!!」
梨子「よ、よーそろー……」
曜「梨子ちゃんかわいい!」
梨子「あ、ありがとう」
曜「やっぱり巫女服は王道だよね! 梨子ちゃんの髪、少し赤みがかってるからいいよね! 巫女服の白とのコントラストがさぁ!」
梨子「そ、そうね」
曜「梨子ちゃん、今度のお正月、巫女さんのバイトしたらどう!? わたし、紹介しようか!?」
梨子「か、考えとくね」
曜「うん!」
130:
曜「次はね……」
梨子「よ、曜ちゃん、少し休ませてもらってもいいかな? ちょっと疲れちゃった」
曜「あっ、そうだよね。ごめんね」
梨子「ううん。……でも、曜ちゃんにこんな趣味があったのね」
曜「そうなんだ。やっぱり、変かな?」
梨子「そんなことないよ。いつもよりテンションの高い曜ちゃんも、かわいかった」
曜「えへへ、梨子ちゃんならそう言ってくれると思ってたよ」
梨子「ふふっ」
梨子「ねぇ、曜ちゃんってさ、ちかちゃんのことどう思ってるの?」
曜「ちかちゃん? うーん、友達っていうのも違うんだよね。やっぱり家族かなぁ。私たち、姉妹だし」
梨子「あれ? 知ってたんだ」
曜「いや、お母さんを見て気付かない方がおかしいよ」
梨子「あっ、それもそうね。……でも、曜ちゃんのお母さん、曜ちゃんはそのこと知らないって思ってるみたいよ」
曜「だって言ってないし。お母さんがそれを隠そうとしてるの、なんとなく分かったから」
梨子「そうだったんだ」
131:
梨子「ねぇ、もしもちかちゃんが消えちゃったらどうする?」
曜「そんなこと考えたくもないけど、……すごく悲しくて、寂しくて、おかしくなっちゃうかな」
梨子「……そうだよね。家族だもん」
曜「なんでそんなこと聞くの? ちかちゃんに何か言われた?」
梨子「う、ううん。何でもないの。ごめんね、変なこと聞いて」
曜「……うん」
梨子「…………」
曜「……よし!」
梨子「……え?」
曜「続き、しよっか! まだまだ梨子ちゃんに着てもらいたい服があるんだ!」
梨子「まだするの!?」
曜「もちろん! さっ、はやく!」
梨子「はぁ……、もう少しだけだからね」
曜「了解であります!」
132:
千歌「よーちゃん! コスプレ、どうだった!?」
曜「さいっこうに楽しかったよ! 梨子ちゃん、かわいかったなぁ……!」
千歌「……やっぱり付き合ってあげたんだ」
曜「え?」
千歌「ううん! なんでもない! さて、今日は何して遊ぶ!?」
曜「うーん、どうしよっかなぁ」
千歌「ふんふんふふん♪ ふんふふんふふんふふん♪」
曜「…………」
曜「……ねぇ、ちかちゃん」
千歌「ん? なあに?」
曜「ちかちゃん、いなくなったりしないよね?」
千歌「今までずっといっしょだったんだよ? いなくなっちゃうわけないじゃん!」
曜「……そうだよね」
千歌「うん! ……それで、何したいか思いついた?」
曜「……あれなんかどうかな! ほら、前に……」
133:
梨子の部屋
梨子「はぁ、疲れたよぉ……」
梨子「でも、曜ちゃんが嬉しそうだったしいいよね」
梨子「…………」
梨子「……家族、か」
梨子(たしかにちかちゃんの言うことも分かる)
梨子(だけど、本当にこのままでいいの?)
梨子(このまま……ちかちゃんが……)
梨子「……おやすみなさい」
134:
放課後 喫茶店
鞠莉「それでね、ダイヤったらそれを見て大声を挙げたの! ルビィちゃんみたいに、ピギィ! って!」
花丸「へぇ?、ダイヤさんがそんな声を出すなんて、全然想像できないずら」
ルビィ「お姉ちゃん、家ではけっこう悲鳴をあげること、あるよ。わたしがお姉ちゃんのプリンを食べちゃったときとか」
善子「それ、完全にルビィのせいじゃない」
ルビィ「え? そうかなぁ……」
梨子「…………」
鞠莉「梨子ちゃーん! 元気がない! もっとトークしましょう!」
梨子「あっ、はい」
鞠莉「なぁに? また喧嘩?」
梨子「いえ、そういうわけじゃ……」
135:
花丸「梨子ちゃんと曜ちゃん、すごく仲良しなのに、それでも喧嘩することあるんですか?」
鞠莉「仲良しだからこそ、喧嘩することもあるのよ! 例えば、曜ちゃんが他の女の子といちゃいちゃしてて、嫉妬ファイヤー! しちゃうとか!」
善子「そうね。一説によると、ルシファーは人間に嫉妬して神様と喧嘩したなんていわれているわ。そして堕天したの。――このわたしのようにね!」
花丸「はいはい。分かったよ、善子ちゃん」
善子「だから善子言うな!」
ルビィ「……大人の世界だよぉ」
梨子「ちょ、ちょっと! 本当に喧嘩したわけじゃないんですって! ……曜ちゃんのことっていうのはその通りなんですけど」
鞠莉「お付き合いしてるんだったら面と向かって話しちゃえばいいじゃない! そうすればオールオッケーよ!」
花丸「たしかに、鞠莉さんの言うことも一理あるずら」
梨子「……やっぱりそれが一番なのかなぁ」
136:
ダイヤ「ルビィ! 帰りますわよ!」
ルビィ「あっ、お姉ちゃん! それじゃあ、ルビィ帰るね。みんな、ばいばい!」
花丸「ばいばい!」
善子「またあしたね」
梨子「…………」
梨子「……ごめんなさい! わたしもこれで!」
鞠莉「梨子ちゃんも帰っちゃうの!?」
梨子「ちょっと用事ができたので! それじゃあさようなら」タッタッタッ
鞠莉「あーあ、行っちゃった」
137:
梨子「ルビィちゃん! ダイヤさん!」
ダイヤ「あら、梨子さん」
ルビィ「どうしたんですか? ルビィ、なにか忘れ物しました?」
梨子「その、二人に聞いてみたいことがあって……」
ダイヤ「わたくしたちに?」
梨子「わたし、一人っ子なので分からないんですけど、……姉妹がいるってどういう感じなんですか?」
ダイヤ「……いきなりな質問ですわね」
梨子「ご、ごめんなさい」
ダイヤ「そうですわね。……ルビィはわたくしの命、いえ、それ以上の存在ですわ。この子の命か、わたくしの命かと聞かれたならば、わたくしは喜んで死を受け入れます」
ルビィ「お、お姉ちゃんが死んじゃったらいやだよ!」
ダイヤ「もしも、の話ですわ。わたくしはずっとルビィと一緒ですわよ」
ルビィ「うん!」
梨子「……ありがとうございます」
ダイヤ「え? もうよろしいのですか?」
梨子「はい! とても参考になりました!」
ダイヤ「……そうですか。それでは、また明日お会いしましょう」
ルビィ「梨子ちゃん! ばいばい!」
梨子「はい! さようなら!」
138:
梨子の部屋
曜「梨子ちゃん来たよ!」
梨子「曜ちゃん、ごめんね。飛び込みの練習で疲れてるのに」
曜「いいよいいよ! それで、話したいことってなに?」
梨子「ちかちゃんのことなの」
曜「ちかちゃん?」
梨子「このままだと、きっと近いうちにちかちゃんはいなくなっちゃうと思うの」
曜「……え?」
…………
梨子「……ということなの。ちかちゃんは、自分がいなくなることで曜ちゃんが前に進めるんだって思ってる」
曜「そういうことだったんだ……。たしかに、この頃、様子が少し変だと思ってた」
梨子「曜ちゃん、いやだよね?」
曜「当たり前だよ! そんなの、考えられないよ!」
梨子「うん。わたしも、ちかちゃんには消えてほしくない。話したのはほんの少しの時間だけれど、そう思ってる。だから、今晩ちかちゃんに会ったら聞いてもらえないかな。ちかちゃんがいなくならなくてもすむ方法はないのかって」
曜「わかった。聞いてみるよ」
梨子「わたしも、できることなら何でも協力するから」
曜「うん。ありがとう」
139:
千歌「やっほー! よーちゃん、いらっ……」
曜「ちかちゃん、いなくなっちゃいやだ」
千歌「……え?」
曜「わたしに黙って消えちゃうなんて、そんなの絶対にいやだ」
千歌「……よーちゃん、何のこと?」
曜「梨子ちゃんから全部聞いたよ。わたしのためにいなくなろうとしてるって」
千歌「……そう。梨子ちゃん、話したんだ」
曜「どうして? どうしてずっとここにいちゃだめなの?」
千歌「このままじゃ、曜ちゃんが前に進めないからだよ」
曜「そんなことない! 今だって少しづつだけど、わたしは前に進んでる!」
千歌「うん。だから、わたしは外に出ることができたんだよ」
曜「……え?」
千歌「梨子ちゃんと出会って、よーちゃんは前に進みはじめてる。だから、わたしに頼りっきりのよーちゃんじゃなくなった。それで、わたしもここを離れることができたの」
千歌「少し考えたんだけどね、わたしがここにいるのはよーちゃんがそう願ったからなんだと思うんだ。一人で外の世界に産まれるのは寂しい。だからわたしも一緒に。よーちゃんは無意識にそう願ったんじゃないかなぁ」
曜「……わたしが?」
140:
千歌「よーちゃん、トランプを思い浮かべてよ」
曜「え? いまはそんな話を……」
千歌「いいから!」
曜「……うん。んーっと」
千歌「むむむむっ……えいっ!」
曜「あれっ? 真っ白な紙だよ?」
千歌「今のわたしには、それが限界なの。自分でも分かるんだ。もう、そんなに長くは持たないって」
曜「そ、そんな!」
千歌「だから、ね? 仕方のないことなんだよ」
141:
曜「……そんなの認めない。今までずっと一緒だったんだよ? だったら、これからも一緒にいられる方法があるはずだよ!」
千歌「ないよ」
曜「必ずあるよ! あきらめないで探せばきっと見つかるよ!」
千歌「だからないんだってば」
曜「なんで!? なんでそんなこというの!? ちかちゃんは消えちゃってもいいの!?」
千歌「…………」
曜「これまで、いっしょに遊んで、楽しかったのはよーちゃんだけ!? よーちゃんと一緒にいたくないの!?」
千歌「一緒にいたいに決まってるじゃん!!!」
曜「っ……! だ、だったら……」
千歌「だったらなに!? よーちゃんに梨子ちゃんのことは忘れろって、ずっとわたしだけを見ててって、そう言えっていうの!?」 
千歌「これからも、よーちゃんが誰かを好きになるたびに、その人じゃなくてわたしを見て、そうじゃないとわたし消えちゃうよ、って言えっていうの!?」
曜「……それは」
千歌「そんなの、言えるわけ、ないよ。わたしが消えちゃうより、よっぽどつらい」
千歌「だから、これでいいんだよ。……これが一番なんだよ」
曜「…………」
142:
梨子「曜ちゃん? まだ出発しないのかなぁ? もうバス出ちゃうのに」
曜「…………」ガチャッ
梨子「あっ、おはよう、曜ちゃん。遅かったね」
曜「……うん」
梨子「昨日、どうだった? ちかちゃん、なんて言ってた?」
曜「……わたし、どうすればいいんだろう」
梨子「……え?」
曜「わ、わたし……ど、どうすれば……」
梨子「曜ちゃん!?」
曜「うわああぁぁぁん! 梨子ちゃんと離れ離れになっちゃうのも、ちかちゃんが消えちゃうのも、どっちもいやだよおおぉぉぉ!!!」
梨子「ちょ、ちょっと、落ち着いて! ねっ! ほら、とりあえずわたしの部屋いこっ! ねっ!」
曜「うええぇぇぇん!」
143:
梨子の部屋
梨子「……そう、わたしのことを忘れちゃえば、ちかちゃんは消えないんだ」
曜「そんなの絶対にいやだ! よーちゃんは梨子ちゃんとずっと一緒にいるって約束したもん!」
梨子「わたしだっていやだよ、そんなの。……でも、このままだとちかちゃんは消えちゃう」
曜「……う、うぇ」
梨子「ほら、泣かないの」
曜「ちかちゃんが消えちゃうのもいやだよぉ……」
梨子「何か方法がないか考えようよ」
曜「……え? い、今から? 学校はどうするの?」
梨子「それどころじゃないでしょ。わたしも協力するから」
曜「……梨子ちゃぁぁ」
梨子「だから泣かないの! もう、曜ちゃんの方がよっぽど泣き虫じゃない……」
144:
曜「わたしが、梨子ちゃんのこともちかちゃんのこともどっちも大切にするっていうのはダメかな?」
梨子「それで解決できるんだったら、ちかちゃんもここまでしないと思うけれど」
曜「だよねぇ……」
梨子「曜ちゃんの代わりに、曜ちゃんのお母さんにちかちゃんを愛してもらうっていうのはどうかな?」
曜「ちかちゃんがいるのはわたしの思いが原因らしいから、それは意味がないんじゃないかな」
梨子「そうよね……」
…………
梨子「あっ! だったらちかちゃんをわたしの心に移しちゃうとかどうかな? わたしも、ちかちゃんのこと好きだし」
曜「……梨子ちゃん、少し休もうか」
梨子「そ、そうね。変なこと言ってごめんなさい」
曜「……やっぱり、無理なのかなぁ」
梨子「諦めちゃダメよ! きっといい方法が見つかるわ!」
曜「……うん、ありがとう」
145:
梨子「…………」
曜「梨子ちゃん?」
梨子「……はっ! ね、寝てないよ。今、考えてるところだから」
曜「そろそろ帰るよ」
梨子「ほ、本当にだいじょうぶよ! わたし、まだ……!」
曜「いまはこれ以上考えても思いつかないよ。それに、今日、明日で消えちゃうってわけじゃないんだからさ」
梨子「……分かったわ」
曜「じゃあ、今まで考えたの、今日の夜にちかちゃんに聞いてみるね。付き合ってくれてありがとう、梨子ちゃん」
梨子「わたし、また考えておくからね」
曜「うん」
148:
曜「……っていう案なんだけど、どうかな?」
千歌「……まぁ、無理だと思うけど」
曜「だよねぇ……」
千歌「よーちゃん、本当にもういいんだよ。わたし、自分でも納得したから」
曜「やだ! よーちゃんは納得してないの!」
千歌「……よーちゃん」
曜「次の案はこれ! 梨子ちゃんの中にちかちゃんを移しちゃう!」
千歌「それ、梨子ちゃんにいい迷惑だよね」
曜「うっ……まぁ確かに」
千歌「たぶん、移ろうと思えば移れると思うよ」
曜「えっ!?」
千歌「まぁ、そんなことしたってよーちゃんの思いがないから、一瞬で消えちゃうだろうけどね」
曜「……そっか」
千歌「ごめんね、期待させちゃって」
曜「ううん。……じゃあ次! 次はね……」
149:
梨子「おはよう、曜ちゃん」
曜「……おはよう」
梨子「やっぱりダメだった?」
曜「うん。ごめんね。せっかく考えてくれたのに」
梨子「いいの。……今日も学校休んじゃう?」
曜「さすがに二日続けてはまずいと思うよ」
梨子「そうだね、じゃあ行こうか」
バスの中
曜「あっ、でもさ、」
梨子「ん?」
曜「梨子ちゃんの身体にちかちゃんを移すってやつ。あれはいい線いってたかも」
梨子「えっ? あれが?」
曜「うん。移ることはできるらしいよ。そこにわたしの思いがないと、消えちゃうらしいけど」
梨子「……そっか」
曜「わたしの他にわたしの思いをもってる人なんて、いるはずないもんね」
梨子「……そうよね」
150:
放課後
果南「梨子ちゃーん?」
梨子「か、果南さん?」
果南「曜と仲がいいのは嬉しいけど、練習をサボっていちゃいちゃするのはよくないよ?」
梨子「い、いちゃいちゃなんてしてません!/// 真面目な話をしてたんです!」
果南「あっ、そうなんだ。てっきり、曜と一日中いいことしてたのかと思ったよ」
梨子「も、もう!/// からかわないでください!///」
果南「あはは、ごめんね! でも、そんな暗い顔してちゃダメだよ。わたし、二人には笑っててほしいんだからさ」
梨子「……果南さん」
果南「で、ダイヤにだけは謝っときなよ。けっこう心配してたから」
梨子「分かりました。……ありがとうございます」
果南「いいって、いいって!」
151:
曜の部屋
曜「梨子ちゃん、ほんとに大丈夫?」
梨子「だいじょうぶ! いま、わたしやる気なの! 明日は休日だし、徹夜してもいいよ!」
曜「う、うん。じゃあ考えよっか」
…………
曜「思いつかないね……」
梨子「やる気が出たからっていいアイデアが出てくるわけじゃないよね」
曜「はぁ……、チカちゃん、どうしたらいいのかなぁ」
曜「『ワタシハコレデマンゾクナンダヨ。ヨーチャンガシアワセナラソレデイイヨ』」
曜「う、うぇぇ……」
梨子「ちょ、ちょっと! 自分で言っておいて泣かないで!」
曜「う、うん。……ぐすん」
梨子「でも、チカちゃんってきっとちかちゃんとそっくりなんだろうね。わたし、会ったことないけど、なんとなくちかちゃんの姿、想像できるもん」
曜「そうかな。……そういえばちかちゃんにこの人形見せたことないなぁ。ちかちゃん、なんて言うのかなぁ」
梨子「……え?」
152:
曜「どしたの?」
梨子「ま、待って、なにか思い浮かびそう」
曜「ほんと!?」
梨子「……ねえ、曜ちゃん、その人形、ちかちゃんに見せたことないんだよね?」
曜「うん」
梨子「この間、わたしがちかちゃんにプレゼントを送ったらって言ったことあったよね? 曜ちゃんって夢の中に何か持っていけるの?」
曜「持っていきたいものに手を触れたまま寝ると、夢の世界にそれを持っていけるんだ」
梨子「みかんをプレゼントしたって言ってたわよね? 向こうでみかんを食べちゃうとどうなるの?」
曜「残ったままだよ。だから何回でも食べられてお得なんだよね」
梨子「だったら無理なのかな……、いや、でも、ちかちゃんがこっちの世界に……」
曜「梨子ちゃん?」
梨子「……ねえ、曜ちゃん」
曜「ん?」
梨子「こんな方法どうかな?」
153:
千歌「やっほー! よーちゃん!」
曜「…………」
千歌「よーちゃん?」
曜「ちかちゃん、わたしの身体を使って梨子ちゃんのところに行ってくれる? もしかしたら、これからもずっと一緒にいられるかもしれない」
千歌「……え?」
曜「でも、失敗するかもしれない。だから、するかしないかはちかちゃんが決めて」
千歌「…………」
曜「詳しいことは梨子ちゃんから聞いてほしい」
千歌「……分かったよ。よく分かんないけど、行くだけなら行ってみるよ」
曜「……」タッタッタッ
千歌「ん? なに、よーちゃ……」
曜「……」ギュッ
千歌「わっ!」
154:
千歌「なに? どしたの?」
曜「もしも……」
千歌「ん?」
曜「もしも失敗して消えちゃっても、わたし、一人でがんばるから」
千歌「……!」
曜「もし、ちかちゃんがいなくなっちゃっても、もう大丈夫だから。わたし、絶対に幸せになるから」
千歌「……よーちゃん」
曜「だから、心配しないで。……ちかちゃん、今までほんとにありがとう」
千歌「……うん」
曜「じ、じゃあ行って」クルッ
千歌「…………」
曜「ほ、ほら……り、りこちゃんが、ま……まってるからさ」
千歌「……ありがとう。よーちゃん」
155:
梨子の部屋
梨子「…………」
コンコンコン
梨子「……!」
曜「梨子ちゃん、久しぶり」
梨子「ちかちゃん、遅かったね。曜ちゃん、眠れなかったのかな」
曜「…………」
梨子「あれ、ちかちゃん、目が……」
曜「えっ!? ま、またよーちゃんが寝る前に泣いちゃったのかなぁ! よーちゃん泣き虫だもんなぁ!」
梨子「……そうかもね」
曜「そ、それで、なに? 詳しいことは梨子ちゃんから聞けって言われたんだけど」
梨子「これ見て」
曜「それって……わたし? 梨子ちゃんが作ったの?」
梨子「違うよ。曜ちゃんが作ったの」
曜「へぇ……、よくできてるなぁ。そっくりだよ」
梨子「これにちかちゃんが移ることってできないかな」
曜「……え?」
156:
梨子「ちかちゃん、移れるのは人間だけ? モノに移ることはできないの?」
曜「そんなことないよ。……でも、すぐに消えちゃうと思う」
梨子「曜ちゃんの思いがないと、そこに留まることができないんだよね」
曜「なんだ、知ってるんじゃん」
梨子「この人形にはね、曜ちゃんの思いがつまっているの。それも、小さい頃からのちかちゃんへの思いが、ずーっと」
曜「……どういうこと?」
梨子「この人形はね、小さい頃の曜ちゃんが、夢の中だけじゃなくて、こっちの世界でもちかちゃんに会いたくて作ったものなんだって。だから、その思いはとっても強いはず」
曜「…………」
梨子「どうかな? 試してみる価値はあると思うんだけど」
曜「……なるほどね。たしかに可能性はあると思うよ。だけど、失敗する可能性はそれと比べるまでもないくらい大きいね」
梨子「……やっぱり、そうよね」
曜「だからやってみるよ」
梨子「……え?」
曜「よーちゃんがね、わたしがいなくても大丈夫だって言ったんだ」
梨子「…………」
曜「あのよーちゃんがだよ? 涙一つ見せずに、そう言ったんだ。……その覚悟を、わたしは無駄にしたくない」
曜「それに、もともと消えるつもりだったからね。少しでも可能性があるんだったら、わたしもそれにかけてみるよ」
梨子「……ちかちゃん」
157:
梨子「じゃあ、準備はいい?」
曜「うん。そっちもお願いね。わたしが抜けた後、きっとよーちゃんが倒れちゃうから、しっかり支えてあげてね」
梨子「もちろん」
曜「……じゃあ、するね」
梨子「……明日は」
曜「……?」
梨子「明日は三人で遊びに行きましょうね」
曜「……そしたら、よーちゃんといちゃいちゃできなくなっちゃうかもよ」
梨子「うーん、……まぁ、ちかちゃんならいいかな」
曜「ふふっ。……じゃあ行ってくるね」
梨子「うん。……待ってるよ」
158:
梨子「曜ちゃん、泣き止んだ?」
曜「……うん」
梨子「まったく、びっくりしてお母さんが起きてきちゃったじゃない」
曜「……だってぇ」
梨子「まぁ、曜ちゃんの気持ちも分かるけどね」
曜「……うん」
梨子「これから、夢の中では一人だけど、大丈夫?」
曜「……梨子ちゃんが添い寝してくれるから」
梨子「これからずっとってわけにもいかないでしょ。ちゃんと一人でも寝られるようにならなくちゃ」
曜「そんなこと言って、梨子ちゃんも本当は嬉しいんでしょ?」
梨子「……ばれちゃってたか」
曜「えへへ」
梨子「曜ちゃん……」
曜「梨子ちゃん……」
チカ「あ、あの、わたしもいるんですけどぉ……?」
159:
梨子「言ったじゃない。ちかちゃんになら見られてもいいかなって」
チカ「あ、あれそういう意味だったんだ」
曜「わたしはもうちかちゃんに隠すことなんてないし」
チカ「うん、まぁ、そうだね」
梨子「曜ちゃん……」
曜「梨子ちゃん……」
チカ「あっ、続けるんだ」
梨子「これからも、ずっと一緒だよ」
曜「うん。梨子ちゃん、だいすき」
梨子「わたしも、曜ちゃんのこと、だいすき」
曜・梨子「……えへへ」
160:

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