【ミリマス】湖上【あんゆり】back

【ミリマス】湖上【あんゆり】


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1:
ミリマス、七尾百合子と望月杏奈のSSです。
百合SSにつき、苦手な方は回れ右を推奨いたします。
何か気づいた点などありましたら、指摘していただけると幸いです。
2:
 その詩を読んだ時、私の全身にまるで電流が走ったようでした。
 その詩に描かれた情景はあまりに美しく、そして魅惑的で、私を瞬く間に妄想の世界へと飛ばしてしまいました。
 登場人物の男女を自分たちに置き換えて、その美しい詩の世界を漕いでいく。
 その船の上で向かい合い、微笑みながら語り合うのは……私にとっては、ただ一人しか思いつきませんでした。
 はっ、と気づいた時にはかなりの時間が経っていたみたいで、お昼過ぎくらいに入ったはずの図書館は、夕暮れの閉館間近になっていました。
 私は慌てて手元の詩集をカウンターに持って行って貸し出し手続きを済ませ、家路につきます。
 家に着くまでの間も、家についてからも、気づけば私はただただ、さっきの妄想を実現するべく行動を起こしていました。
3:
「杏奈ちゃん、明日って何か予定ある?」
 図書館から詩集を借り、家でも事務所でもその詩集を繰り返し読み耽る日々が数日続いた頃、私は事務所で杏奈ちゃんにそう声をかける。
 事務所とは言うが、正確には元会議室の休憩所。今この部屋には私と杏奈ちゃんしかいないし、プロデューサーさん達はドアの向こうだ。
「明日……ううん、ちょうどゲームもメンテの日だし……なにもない、よ?」
 私の言葉の意図を図りかねているのか、少し首を傾げながらもそう答える杏奈ちゃん。
 私の鼓動が早いのはそんな杏奈ちゃんを見たからなのか、単にこれから言おうとしてる言葉に緊張しているのか、自分ではわからなかった。
「じゃ、じゃあ一緒に行きたいところがあるんだけど、いいかな?」
「いい、よ……どこで、待ち合わせ……する?」
「○○駅に、夕方の五時くらいとか、大丈夫?」
「いい、けど……夜のお出かけ……なの?」
「あ、うん。ちょっと見たいものがあって」
「……わかった。百合子さんと夜のお出かけ……楽しみ」
 そう言ってふにゃりとほほ笑む杏奈ちゃんに、私の鼓動はさらに早くなってしまう。
 たかだか遊びのお誘いにこんな一喜一憂して、受けてもらえて嬉しくなって、私は本当に杏奈ちゃんのことが好きなんだな、と改めて実感した。
4:
 次の日、私は自分が言った通り駅にいた。ただし、時間は夕方五時どころか、現在三時五十分。明らかに早すぎである。
 もちろん、理由はある。不測の事態に備えて待ち合わせには早めに行くのが鉄則だとか、誘った手前万が一にも遅れるわけにはいかないとか。
 でも結局のところ、楽しみすぎて居てもたってもいられなくなった、というのが本音だ。
 家にいてもそわそわと部屋の中を歩き回ったり、今日行く予定の場所をひたすら確認したり、既に決めたはずの服にあっちのほうがよかったかな、と悩んだり……そのままでは出かける前に気疲れしてしまいそうだった。
 しかしさすがに一時間以上外で待っているのもそれはそれで疲れてしまう。
 どこか近くの喫茶店にでも入って時間をつぶそうか、と思って当たりを見回していると。
「百合子……さん?」
「え?」
 なんて予想外な一言が、小さな声のはずなのにやけに鮮明に聞こえた。
 声のほうを振り向けば、そこにはいつもより少しおめかしした杏奈ちゃんの姿。
「あ、杏奈ちゃん!? こんな早くどうしたの!?」
「百合子さん、も……人のこと、言えない…と、思う」
「うっ……」
 至極正当な反論を受けて、二の句が告げない。
 それ以上言い返せないまま杏奈ちゃんのほうを見れば、いつも来ているウサミミパーカではなく、白いワンピース姿が目に飛び込んでくる。
 いつもと違った雰囲気の、でも杏奈ちゃんにすごく似合っているその服装に、つい目を奪われてしまう。
5:
 そこまで考えていたわけではないけれど、今日私はジーンズを履いてきたから、役柄的には私が男役で杏奈ちゃんが女役。もっと言えば、私が彼氏役で杏奈ちゃんが彼女役。
 ああ、やっぱりまずは服装を褒めたほうがいいのかな、それとも、杏奈ちゃん自身を褒めた方が……。
「百合子さん……戻って、きて」
「はっ!」
 服の裾を杏奈ちゃんにクイクイと引っ張られた感覚で、現実世界に帰還する。
 危ない危ない、あのままだと人前でしてはいけない顔になるまでもぐっていくところだった。
「ご、ごめん! 私また飛んじゃってた」
「慣れてる、から……大丈夫」
 慣れてると言わせてしまうのはとても複雑で。
 迷惑をかけてしまっているな、と思う反面、慣れてしまうほどの時間を一緒に過ごしているということが、すごく嬉しい。
 人生、というと大げさだけど、杏奈ちゃんの時間の中に、ちゃんと私がいるんだ、と実感できる気がして。
「今日は…どこに行く、の?」
「あ、えっと、ここからバスで一時間ちょっとのところにあるぷっぷか湖なんだけど」
「湖……」
 何か考え込むような素振りを見せる杏奈ちゃん。
 もしかして、嫌だったのだろうか。元々インドア派の杏奈ちゃんを湖に誘うのは正直、一つの賭けではあったのだけれど……いざそれで不興を買うかもしれない、という場になると、とても怖い。
6:
「あ、大丈夫…だよ。意外、だった……だけ」
 もしかして顔に出ていたのだろうか、杏奈ちゃんがそういって私の方をみて笑う。
 その笑顔はいつもどおりの笑顔で、その言葉が嘘じゃないってことはすぐに分かった。
「ならよかった! じゃ、じゃあちょっと早いけど、バス乗っちゃおうか」
 それでもその笑顔を見ていると顔が赤くなりそうで、私はごまかすように杏奈ちゃんを連れてバス停へと向かう
 いつも通りの笑顔のはずなのにこんなにドキドキするのは、私がこれを、デートだと意識しているせいなのだろうか。
 結果として、早くでて良かったのかも知れない、と湖に着いたときにまず思った。
 途中の道で事故があったみたいで、バスが遅れたのだ。しかも山道に入っていたから迂回路もなく立ち往生。
 杏奈ちゃんとおしゃべりしていたから時間がかかるのは苦じゃなかったけど、これがもし予定通りの出発だったらと思うと、幸運だったと思う。
「わあ……!」
 湖を目にしてすぐ、杏奈ちゃんが声を上げた。
 無理もない、私だってさっきから目を奪われていて言葉が出ないのだから。
 湖に着いたときにはすでに夕暮れ。山に沈んでいく夕日は時間と共に赤味を帯びて、山も湖面も同じく染め上げていく。
 穏やかな湖面がキラキラと夕日を反射して、それはまるで大きな鏡を使った芸術品のようで。
 私と杏奈ちゃんはしばらくの間、赤い世界の中でその景色を堪能していた。
「すごかった……ね」
「うん、すごく綺麗だった!」
 夕日がだんだんと山の向こうへと沈んでいった頃、私と杏奈ちゃんは我に帰った。
 私が妄想の世界へ飛んでしまうことは日常茶飯事だけど、杏奈ちゃんと一緒に我を忘れて時間を過ごす、なんて貴重な体験ができたのは素直に嬉しい。
 しかし、今日はこの景色が目当てでこの湖へ来たのではない。
 むしろこんな綺麗な景色が見られるなんて知らなかった。
7:
「杏奈ちゃん、ボートに乗ろう!」
 そう、今日の目的は、ボートなのである。
 いきなりボートに乗るなんて言い出して、不思議がられるかな、と思ったけど、杏奈ちゃんはむしろノリノリだった。
 さっきの風景を見てテンションが上がっているのかもしれない。もちろん、ONモードとは比較するまでもないけれど。
 貸しボートを借りて、湖へと漕ぎ出す。
 うまく漕げるか不安だったけど、なんとかスムーズに漕げているみたいだ。
 湖の岸を離れ頃には、少しばかり早く顔を出した月が、空にぽっかりと浮かんでいた。
 そよそよと心地よい風が吹いて、ひたひたと波の音がかすかに聞こえる。
「今日はいきなりこんなとこまで連れ出して、ごめんね」
「ううん……すごく、綺麗だったし…楽しかった、よ」
 漕ぐのを止めてそう話しかけると、杏奈ちゃんはそう言って本当に楽しそうに笑った。
 ゲームをしているとき以外で、OFFモードの杏奈ちゃんにこんな顔をさせたことに、嬉しさと誇らしさと、少しの優越感を覚える。
 それは、杏奈ちゃんをこんなに楽しませられるのは私なんだ、という、誰に向けるでもない微かな独占欲。
 ボートのオールから滴った水滴の音が、一瞬の会話の途切れ間をつないでくれる。
 それはなぜか、とても近しいもののように聞こえた。
「杏奈ちゃん?」
 気づくといつの間にか、杏奈ちゃんがスマホを取り出して何か操作をしている。
 なにかゲームのことでも調べているのだろうか、と考えて、今のこの時間に集中して欲しかったな、とも思ってしまう。
 そこまで杏奈ちゃんのことを束縛する権利などないというのに、この湖上の暗闇が、そんな気持ちを掻き立てるのだろうか。
8:
「『ポッカリ月が出ましたら、舟を浮かべて出掛けましょう』」
「!!?」
 不意に杏奈ちゃんが発した言葉。というよりも、朗読といったほうがいいだろうか。
 それは聞き間違えるはずもない、ここ数日読みふけっていた詩の、一節。
「合って、た……?」
「な……なんで…?」
 どこか得意げな表情でこちらを見る杏奈ちゃんに、私はろくな言葉を返すことができない。
 当たり前だ。私しか知らないはずの詩、私しか知らないはずの、自己満足の計画。それが、見透かされていたなんて。
「百合子さんが…読んでた、から……調べてみた、の」
 確かにここ数日私はその詩集ばかりを読んでいたけれど。
 それだけでその詩集について調べてくれるほどに、私のことを見ていたんだ、という嬉しさがこみ上げてくる。
 しかし、この詩を読んだということは、私が何を望んで今日杏奈ちゃんを連れ出したのか、というのもばれてしまう。
9:
「え、っと……き、綺麗な詩だよね! 追体験も堪能したし、そろそろもど」
「『月は聞き耳立てるでしょう、すこしは降りても来るでしょう』」
 私の誤魔化しの言葉をさえぎって、さっきの部分より少し後の部分を、杏奈ちゃんが読み上げる。
 それは私にとって核心の部分。杏奈ちゃんには、知られたくなかった部分。
 私がそれを望んでいると知ったら、嫌われてしまいそうで、怖かった部分。
「百合子、さん」
「っ」
 朗読ではなく杏奈ちゃんの声で呼びかけられて、身がすくむ。
 拒絶の言葉を、想起してしまうから。
「月……頭の上、だよ?」
「えっ?」
 そう言われて顔を上げて、初めて、杏奈ちゃんが微笑んでいるのが見えた。
 スマホの画面光に照らされて、赤くなっている顔と、白いワンピースが見える。
 そこでふと思い出す。
 今日は私が彼氏役で、杏奈ちゃんが彼女役、と妄想してしまったことを。
 であるならば、ここは私が勇気を出さないといけないところなのだろう。
 いつも王子様を夢見る私だけれど、今だけは私が、杏奈ちゃんの王子様にならなきゃいけないんだ。
 杏奈ちゃんの肩にそっと手を添えると、微笑んだまま杏奈ちゃんが目を閉じる。
 ドキドキとうるさい心臓を叱り付けて、少しずつ顔を近づけていく。唇が、近づいていく。
 杏奈ちゃんがさっき読んだ続きを思い浮かべながら、私はその距離を、ゼロにした。
『われら接唇(くちづけ)する時に 月は頭上にあるでしょう。』
10:
以上になります。
前作(【ミリマス】月夜の浜辺【奈緒】)
と同じく詩をモチーフにさせていただきました。
今回は中原中也作『湖上』。
短い作品でありますが、お読みいただきありがとうございました。
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