八幡「ガン見ゆいゆいの瞬き」 結衣「あたしたちの内緒の、あまーい秘密」back

八幡「ガン見ゆいゆいの瞬き」 結衣「あたしたちの内緒の、あまーい秘密」


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1:
初投稿です。
友達が誕生日なので、書いてみます。
受験生の隣で書くのむず痒いけど、やれと言うので。頑張ります。
今日の夜中までには終わらせる予定。
腐女子のあなたに捧ぐ、誕生日に何ら関係のないSS。
注)ホモ以外は帰って。どうぞ。
遊びながら更新。
あと、内容考えながら書くので更新ちょっとおそいかも
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454397284
2:
うちの学校でイケメンといえば、まずあたしの友達の一人である葉山隼人くんが一番に名前に挙がると思う。
目に留まる明るい髪色に芸能人みたいにはっきりした目元、通った鼻筋。にっこりと笑えば女子はみんなくらっとくるそうだ。
うちのママは古めかしい言葉を使って隼人くんの写真を見て甘いマスクだと評した。それはまあ、間違ってないと思うし、あたしだって隼人くんは格好いいと思う。
女子力男子って言葉があるこのご時世、男子なのにーなんて言ったらおかしいかもだけど。それでも男子のくせに余計な気を遣っているおかげで、隼人くんは肌だってその髪だってもしかしたらあたし以上に綺麗なんじゃないかって思うくらいいつも綺麗だ。
スタイルも女のあたしが羨むくらい抜群で。しかも性格までいいなんて。
つまり女の子にモテるというのも訳ないのだ。
なんでも、バレンタインにチョコを両手に抱えきれないほど貰ったとかなんとか。
小さい頃から知っているらしいゆきのんから言わせれば「彼の容姿も性格も見飽きてしまえば苛つくだけよ」とのことだし、普段から毎日一緒にいるあたしにとっても「いいなあ」と彼に恋い焦がれる友達にいくら言われたって、特別な想いはまったく起きないんだけど。
3:
 対して、もう一人のイケメンであるヒッキーは奉仕部にいる時は色々お話ししてくれるのに、人と群れたがらない所為で、クラスではとにかく無口で不愛想だ。
 いつも一人で机に伏せっているか、さいちゃんに「結婚しよう」って言って困らせてるか。厨二とお喋りしてるか、川崎さんに小町ちゃんの自慢話してるか……あれっ、なんか結構喋ってたかも……。
 ヒッキーは、みんなが口を揃えて否定するけど顔は整ってると思うし、真っ黒な髪も瞳も吸い込まれちゃいそうなくらい綺麗で、あたし的には、十分他の女の子から持て囃されていい容姿であるのには間違いないと思う。うん。ちょっと目がアレだけど、そこはほら、あれだよあれ。愛でカバー?
 それなのに隼人くんみたいにちやほやされてないのは、目だけの所為じゃなくて、やはり彼の性格が故なんだと思う。
 基本的に一人を好み、人の輪に入るのが苦手なヒッキー。
 しかしその性格も手伝ってか、いい印象しかない隼人くんと同級生で今年何かと問題を起こした彼は、よく隼人くんとの比較対象に持ち出される。そのため、学校内でヒッキーの名前は本人が思っている以上に有名だったりする。
4:
 そんな対照的な二人とこの一年同じクラスで過ごしてきたあたし、由比ヶ浜結衣は、二人と違って普通の女子高生なのだ。
 年上の先輩にきゅんとしたことはないし、年下にぐっときたこともないけど。それでも同じ学年の、しかも同じクラスの男の子に密かに好意を寄せたりしている。
 あっでもヒッキーに告白したし、できたらオッケー貰って付き合って、一緒に恋に落ちたいなーとか夢見てた、そんなただの純粋な女の子。
 ただ人と違う所があるとすれば、一点。
 それは学内で正反対の意味で有名な二人の友達であり、二人のちょっとした秘密を知っている唯一の人間であるということだ。
5:
****
 あたしが彼らの秘密を知ったのは、恥ずかしながらつい最近のこと。
 いくら同級生の友達とは言っても、あたしはあくまで女子だから。優美子たちと遊びに行くときに隼人くんがいる、奉仕部でいるときにヒッキーがいるということはあっても、男の子の家に直接訪ねるような機会はなかなかなかった。
 だけど、担任の先生からの頼み事を断りきれず、たった一回だけ隼人くんの家にお邪魔することがあったのだ。
 これは、そんなときのこと。
7:
「……隼人くーん? いるのー…?」
 早帰りの日かつ定期テスト一週間前の関係で、午前中で授業が終わり部活動も禁止の日に、隼人くんにどうしても今日中に渡さなくてはならない書類を渡しそびれた先生が、あたしに渡して来て欲しいとの旨で話しかけてきた。
 この日は優美子たちとは帰らず、奉仕部部室に忘れ物を取りに寄った帰りだったので、あたしとしては珍しく一人の時間だった。
 そんな状態で先生に頼み事をされて、このあたしが断れるはずもなく。住所をメモした紙をまるで闇取引でもしているかように、握手をする素振りをしながら手渡された。
 その住所の家の前で、インターホンを押す前に隼人くんのお母さんに出会い、家の中にまで入れて貰えてしまった。忙しい人のようで、隼人くんの部屋の位置だけ口頭で説明してから、そのまま再度仕事に向かっていった。
 あまりにもシンとした空気に思わず留守かと思いきや、玄関にローファーが綺麗に揃えて並べられていたので、隼人くんは部屋にいるのだろうと思ったあたしは書類の入ったスクールバッグを両手で握り締めながら、なるべく音を立てないように廊下を進んでいく。
9:
 
 階段を上がろうとしたところで、隼人くんの好きなロックバンドの曲がかすかに聞こえてきた。どうやら彼は自室に篭っているらしい。
 呼びかけにも応じてくれなかったのは、このせいで聞こえなかったからなんだ。あたしは勝手に自己完結して階段を上っていった。
 廊下の奥、右端の部屋が隼人くんの部屋らしい。彼のお母さんから聞いていた通りみたいだ。その部屋に近づくにつれて、少し開いたドアの隙間から音楽がはっきりと流れてくる。
 でも、なにもこんなに音量を出さなくても。ちょっと近所迷惑じゃない。
 開口一番、あまりの大音量にそう怒鳴り付けてみようと決めたあたしが、部屋の前で聞いたのは……ふざけて友達と見た動画でしか聞いたことのないあの甲高くて、艶っぽい声。
 「…っあ! んぁ………」
 「!?」
 ドアに掛けようとした指先を、思わず引っ込めて唇に当てる。
 ……隼人くん、ナニやってるの!?
 顔がぽっと熱くなるのを感じて、あたしは驚きと好奇心で高鳴る胸を抑えた。
 こんな真昼間から一体どこの女の子を連れ込んで、事に至っているというのか。
 隼人くんは確かにそれはそれはモテるけど、これまで彼女を作ることは一切なかった。いろはちゃんや優美子のこともフッたくらいだし。
 以前何故かと聞いたときは「結衣も頑張れよ」なんて自分のことを励まされて、結局上手く言い逃れされてしまった。
 隼人くんの周りには、いつだって沢山の人がいた。その人達の調和をいつも願ってて。
 だから、みんなに気を遣ってるのかなんて思っていたけど、いつの間にこんなことに。
 毎日顔を見ている友達の“そういうこと”を目の当たりにするのは気が引けるようで、それでも知らされずにいたのは何だか寂しかった。
 ちょっとだけなら覗き見も許されていいはず、と意を決したあたしはそーっとその隙間に近づいた。
10:
 「……な、気持ちいい?」
 まず視界に入ったのは隼人くんだった。
 心底優しい顔をして笑い、その額にはうっすら汗が滲んでいる。
 彼がいるのはベッドではなく床に敷かれたカーペットの上だ。
 と言っても、上半身が肌けた彼の下には誰かが寝ていた。
 ちょうど入り口付近の本棚に邪魔されてその顔は見えないけど、お腹の辺りが見えている。
 線は細くないし、女の子にしてはちょっとがっちりし過ぎてるように見えなくもないけど。
 誰なんだろ。あたしの知ってる子かな。
 懸命に組み敷かれている子の顔を見ようと、隙間にこれでもかと顔を寄せたときだった。
 「ま、……ッはやと!」
 「待たないよ。こっちも限界なんだ。なあ、挿れるよ? ……八幡」
 !?!?!?
 ……聞こえた名前に、悲鳴を上げそうになった。
 八幡? 今、八幡って言ったの?
 「い、ぁっ…、あ……あぅっ、……んっ……そっ、こ…!」
 「っ!」
 斜めの角度から見えたのは、顔を紅くさせて喘ぐヒッキーの姿だった。
 見間違いなんかしない。するはずがない。
 
 
 だって、だってヒッキーはあたしの、……大切な……
11:
 辿った目線の場所には女の子にあるはずのものがなくて、平らな身体にちらほら赤い跡が散らばっている。
 隼人くんが絶妙の位置にいるために肝心な所は見えてないけど、ヒッキーはもう既に下も履いておらず全裸のようだ。
 脱ぎ捨てられた制服がベッドに引っ掛かっているのがこちらから窺えた。
 初めてみる友達の表情。
 初めてみる、好きな人の表情。
 いやそれより、二人がしている事に、あまりのショックに涙が溢れた。
 けれど驚きすぎて、嗚咽は声にもならなかった。
 そんな私を他所に、幸せそうにヒッキーの体を弄る隼人くんと、与えられる快感に酔い切ったヒッキー。
 こんなに男くさい隼人くんを見たことはないし、ヒッキーの艶めかしいところも見たことはなかった。
 ヒッキーから聞こえる甘ったるい声は、まるで女の子みたいだ。
 実際それがヒッキーだと気付くまで女の子のものだと思ってた。
 一体、どうして? 二人いつからそんな関係になっているのだろう。
 本来なら隼人くんに組み敷かれているのは女の子のはずで。
 それで……それで、隼人くんのポジションにヒッキーがいて、その下で幸せな快感に喘いでいるのは、あたしであって欲しいと。願っていたのに……
 男女の情事でさえ生で見たことがないというのに、男同士のそれを見ることになるとは。
 しかも、よりによって。自分が結ばれることをずっと夢見てきた人の……
 「何だ、じゃあ一回イっとくか? 八幡はいつもこういうときだけは素直だからなっ!」
 「ちがっ……はっ、……んあぁ!」
 
 くちゅくちゅと、淫らな音がする。
 見ちゃいけない。聞いちゃいけない。もう何で自分がこんな所にいるのかも忘れてしまった。もう何も見なかったことにして立ち去らなきゃ。
 分かっているのに、身体は思った通りに動かない。引きつけられる。単なる好奇心? そうかもしれない。
 二人の表情から、行為から目が離せない。自分の知らない所で知らないことをしている二人。
 仲間はずれにされたような気がしたけど、彼らが持つ秘密はあたしにとって大層魅力的に映ったのだろう。
 
 「っ、ぁ! あっ…――ッ………!!!」
 「っ……かわいい」
 一際大きく喘いだヒッキーが身体を撓らせる。
 それに隼人くんは満足したような表情を浮かべた。
 こんなに狭い視界からしか覗けないからどうなっているかなんて詳しく見ることはできないけど、大体のことは想像できた。
 ほんとうに全く、なんていうことをしているの!
 あたしは今にも発狂しそうな気持ちをどうにか理性で抑えて、二人の顔が見えるベストポジションに物音を立てないようにとそっと腰を下ろした。
 …ッジュ…
 いつの間にか下着が濡れていた。
 軽快な音楽とは裏腹、熱に犯されて、とにかくえっちな雰囲気。
 
 いつしか瞬きすることも忘れて見入っていた。
 魅せ付けられる何かがそこにはあった。
 
 「八幡、挿れっからな」
 「は……っう、ん………!」
 軽く頷いたヒッキーの髪を、隼人くんは微笑みながら撫でる。
 ああ、こんな表情、憧れてる子たちに見せたらきっと大騒ぎになっちゃうんだろうな。
 
 ……なんであの子達じゃないんだろ。なんでヒッキーなのかな。
 なんて思うのも束の間、ぐちゅっと粘着性の強い水音が大きく聞こえてヒッキーの声が部屋に響いた。
12:
 「あっ、………あーーっ………! ん、あぁ!」
 「っ八幡のナカ、あっつ……」
 ヒッキーに隼人くんが覆いかぶさっているので、もうヒッキーの顔は見えなかった。
 だけど隼人くんの背中に回された手がぎゅっと懸命に彼に抱き付いているのが健気で、あたしは第三者なのに、なんて可愛いんだろうと思ってしまう。
 「は……っはやと!」
 「ん? ……なに?」
 「う、っぁ……っもっと、奥……ッ!」
 強請る声は、ミルクたっぷりのチョコレートみたいに、あまい。
 思わずあたしもどきりとしてしまうくらいに。
 「は……っ、いいけど、ご褒美くれよな?」
 「……? あっ……な、に?」
 「ちゃんと、言って。“いつもの”」
 隼人くんの横顔は悪戯好きな子どものようだった。
 にやりと緩む口元は意外と頑固で、望みを叶えられるまで要求を止めない。
 「……っあ! ……っ、ぁ…ッ」
 「恥ずかしいってか?……何を今更。こんなにやらしく俺の咥えて、さっ!」
 「!! んぁっ………あ、はやと!」
 「ここ、好きだろ? ……もっと強く突き上げて欲しかったら、言ってよ」
 ほら、今だって。
 優しい口調で。ヒッキーのこと手玉に取って遊んでる。
 だけど憎たらしいほどの表情でさえ、このイケメンに掛かれば魔法のように様になって見えてしまう。
 艶美な、誘惑。
 「……はや、と……ッ!」
 「っ……ん?」
 「あ………ッぁ、………っす、“好き”……っ!」
 乱れた息遣いと共に、小さく聞こえた声。
 それは、溶けてしまいそうなくらいの熱を帯びて。
 「……っよく出来ました」
 「! あっ……! く、……あぁ…ッ!」
 「お望み通りにしてやるよ……っ」
 爽やかに笑った隼人くんがヒッキーの腰を強く掴んで、その律動を激しくさせた。
 比例するように隼人くんの背中のヒッキーの手は爪を立ててしがみつき、声を上げる。
 痛ましげに残る赤い傷はその淫猥な空気にとても同化していて、あたしは直視できないと思うのにやはりどうしても目が離せなかった。
 「や……ッあ! ………ぁっ、ああ! …は……っ」
 「八幡……っ、気持ち、いい?」
 「っ……う、ん! あっ………きもちい、い…ッ」
 「そっか。俺も」
 私がよく知っているはずの二人の知らない顔、知らない声、知らない行為。
 ……おかしいな。さっきまでの嫌悪や驚きよりも何よりもこんな感情が先に出ているなんて。
 もっと見たい、もっと知りたい、二人の秘密を。
13:
 「可愛いな、八幡」
 「……あ、あぅ……ッ! ……は、あ! ……ぁ…っ!」
 「俺もな、お前のこと、大好きだ」
 隼人くんがヒッキーの耳元で囁くように言った甘美な言葉の後、びくんとヒッキーの体が震えた。そして。
 「っ!! あ、ああーーーーーっ……!!!」
 「……くっ」
 ヒッキーの声が高く上がるのと共に、ちょうど腹部の辺りで白い飛沫が散るのが見えた。
 さすがの私もそれには視線をさっと宙へ逸らせる。
 それと同時に急に正常な思考が働いてきて、今まで自分のしていた覗き見という一歩間違えれば犯罪まがいの行動に、はっと我に返る思いがした。
 ああもう。人様の情事にこんなに見入っちゃうって……私はなんて変態なんだろう。
 そう思うのに、湧き出た好奇心は未だ私を悪戯に動かす。
 ちらりと這わせた視線の先に見える、二人。
 「……っはぁ………、あ」
 「可愛いなお前、ほんと。……てかごめん。 中に出しちまった」
 そう言って優しい仕草で隼人くんはヒッキーに口付ける。
 二人分の荒い息遣いが響く部屋。
 BGMは多分、とうに二人には聞こえていないのだと思う。
 ちゅっと音を出してヒッキーの頬や額にもキスを降らせる隼人くんはひどく物柔らかだ。
 「別に、いいって。……後処理すりゃいいだけだろ」
 「俺も手伝うよ」
 「……いやだ」
 さっきまでの艶めかしさとはまた別の、甘酸っぱい雰囲気を醸し出すヒッキーと隼人くん。
 またこれも見たことのない二人の一面だ。
 ああでも、いつもの二人ってどんな感じだったっけ。確か、会話しているどころか一緒にいることも少なくて。でもたまに一緒に話しているとき、ヒッキーがいつも気まずそうにしてる。
 でも姫菜曰く、だけど見ている者に、何かを感じさせる二人。
 そうだ、そんな感じだった。
 まさかそんな中に、こんな恋慕を秘めていたなんて。
 ごくりと呑み込んだ生唾に、息を潜めて二人の次の行動を見ようとした、その、とき。
14:
 ……ピリリリリリリリリリ!!!!
 「!?」
 「!?!?!?!?」
 突然鳴りだした機械音。
 発信源はあたしのポケット。制服のポケットに入れた携帯だった。
15:
 やばっ! 慌ててスカートに手を突っ込み、電源ボタンを押した。
 うるさい音は消えたけど、代わりに気まずい沈黙が広がる。
 ちょうど上手いこと、CDのトラックが最後だったらしい。
 おかげでしーんと静まった室内。
 やばい、これはやばい。冷や汗が伝った。
 恐る恐る見上げた隙間越しに、唖然とした顔の二人と目が合う。
 「や、やっはろ?…」
 無理に作った笑顔は、自分でも分かるくらい思いっきり、引きつっていた。
 「え、ま……結衣、いつから!?」
 「えーっと……」
 どこからどう見ても焦った様子の隼人くんは、口をパクパクさせてあたしを見ている。
 半裸の姿でそうされると凄くシュールだったけど、そう思うよりもあたしは隼人くんと同じくらい焦りを感じていた。
 ええと、これはなんと言うべきか。
 『別に何も見てないしッ!』? それとも『あっ、二人で昼寝? 試験前に余裕だねぇ』……いやいや、どう考えても無理がある。
 言い訳を必死に考える中で垣間見たヒッキーは、ショックのせいで言葉が出ないらしかった。
 そりゃそうよね、女の子に自分のセックス見られて。しかも自分が受けっていう。
 「あー、その……ごめんね。結構見てた、かも」
 「……」
 「あ、あのねヒッキー。あのね、違うのッ。悪気があったわけじゃないの!聞いて!えっと、ほら、」
 気が付くと、必死に言い訳してる自分がいた。
 考えは纏まらないのに、口だけはいつもの倍で動かして。ヒッキーに嫌われたくない一心で、自分の保身に走って。一番傷ついてるのはヒッキーなのに。
 分かってはいても、それでも涙が流れてしまう自分が凄く嫌で。
 「……由比ヶ浜」
 「ひっ、ぁ、ぁ……」
 さっきの情事の中とは異なった、奉仕部にいる時ともまた違う、低い声であたしを呼ぶヒッキー。
 ああ、終わっちゃった。怒られるんだろうなと咄嗟に思ったあたしは身構えて「はい……」と返事をした。
 でも。
 「あー……まあ、お前の言い分は分かった。だから……とりあえず、恥ずかしいから、外、出て」
 「へっ?」
 「着替えたいし……その、色々、しなきゃいけないから」
 ヒッキーはそう言うと、ぽっと頬を赤く染めてあたしからあえて目を逸らすように反対側を向いた。
 言われたあたしはというと、怒られると思った拍子の予想外の言葉に数秒固まった。
 だけど、だけど。
 「……っヒッキー!!!!」
 「!?!?」
 「ヒッキー、ヒッキー、ヒッキー!!! ヒッキー大好きっ!!!」
 「んなっ、結衣!! 八幡から離れろ!!」
 ああ、もう何だろう。
 隼人くんを押し退けてヒッキーをぎゅーっと抱き締めれば、何だか一層の愛しさが胸一杯に溢れてきた。
 あわあわとあたしの腕の中でもがくヒッキーが可愛すぎて言葉にならない。
 「おい結衣!服! 精液が制服に付いてるって!」
 隣で隼人くんが、さっきよりも焦った声で騒ぎながらあたしを引き剥がそうとしてきたけど、もうそれどころじゃない。
 隼人くんの馬鹿みたいな叫び声が響く中、あたしは自分の中に生まれた新たな感情を、ヒッキーを抱き締めることで発散させていた。
 ――そんなわけで、二人がひっそりと隠し持っていた秘密はその日以降、『あたし達の秘密』となったのだ。
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