勇者「ここで死ぬ訳にはいかない……」back

勇者「ここで死ぬ訳にはいかない……」


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1:
勇者「とは言え参ったね……薬草も魔力も尽きて」
勇者「町まではまだまだ距離がある」
勇者「う?ん、そろそろ一人旅に限界を感じるなぁ」
勇者「まずへ目先の生存という目標を頑張らないとか」
2:
魔物「ゲゲ!」
勇者「キノコ型の魔物か……」
勇者(こいつらの胞子は危険だが……一体なら先制を取って)
勇者「よっと」ザシュ
魔物「ゲーー!」
勇者「ま、単体ならこんな所か」
魔物B「ゲゲ……」モファ
勇者「胞子……?しま、挟げ、きか……」ドサ
4:
勇者「……っ!」ガバ
男「お、目が覚めたか」
勇者「私は助かった、のか?」キョロキョロ
男「助かったのではない。助けたのだ」
勇者「……かたじけない」
男「一人旅であれは流石に愚かだぞ。疲弊していた、ではいい訳にもならない」
勇者「……返す言葉もない」
男「仲間はいないのか?」
6:
勇者「できるだけ仲間と共に旅をするのを避けたいんだ」
男「訳ありってやつか。まあいい、俺は戦士だ。お前は?」
勇者「私は勇者だ」
戦士「勇者……その鎧の紋章、まさかヒドラを一人で倒した大男の子供か!」
勇者「……間違いなく、その人の子だ」
戦士「父親譲りの豪傑な大男だとばかり思っていたが……こんな華奢な奴とはなぁ」
7:
戦士「……魔法とか使えるのか?」
勇者「簡単な魔法なら使えるが、やはり本職には何歩も引くところだよ」
戦士(華奢とは言え、それなりの大きさの剣を普通に振り回していたな……)
戦士(身体は鍛えている、ここまで一人旅できる腕はある。初級ではあるが魔法も使える……何より)
勇者「……どうかしたか?」
戦士「よし、勇者。これからよろしく頼む」
勇者「待て、いきなり何の話だ」
8:
戦士「共に旅をするという話以外に、これからよろしく頼むことがあるか」
勇者「……さっきの私の話を聞いていたよな?」
戦士「これから先、一人じゃもっときつくなるぞ」
戦士「それを踏まえて特訓か?そんな悠長な事でいいのか?」
勇者「確かにそうだが……それと君が仲間になる事にどう繋がるんだ」
戦士「訳ありだが、それだって命あってのもの種だ。手早く戦力を増したいならこれしかないだろう」
9:
戦士「それともなんだ、無償で命を助けるような奴は下心があるってか?」
勇者「そういう訳ではないが、君はそこまで苦しい旅をしているようには見えない」
勇者「無理なく一人旅ができるのなら、私と仲間になる事のメリットがあるのだろうかと思うと……」
戦士「……簡単な事だ。お前はここから西の町から来たんだろ?」
勇者「それがどうかしたのか?」
戦士「……カジノがあっただろ?」
勇者「ああ……まさか所持金全部」
戦士「はは……ここらへんの宿ってなんで高騰してるんだろうな」
10:
勇者「私は戦力を。君は路銀を。ギブアンドテイクと言いたい訳か」
戦士「雇えとは言わない。以後の宿代と、今後得る報酬の三割程度で構わない」
勇者(……確かに山分けでないなら、宿代を出しても利があるな)
勇者「初めから譲歩しているとはな」
戦士「文無しだから必死なのさ……二割だと装備が買えん。頼む」
11:
勇者「一つ約束してくれ」
勇者「私の所持金を掠め取るようなマネはしないでもらいたい」
戦士「お前……俺が盗んでまで、博打をすると思っているのか」
勇者「いや、話を聞く限りでは不安が」
戦士「安心しろ、もう全力で博打をする事は無い。だから、見捨てないでくれ……」
勇者(頼もしそうなのに、何でこの話なると小さく見えるのだろうか)
12:
勇者「朝になった事だし出発するか」
戦士「おうよ」
勇者「……訳を聞こうとはしないのだな」
戦士「仲間と旅をってやつか?お前が今の状態を認めてくれているなら構わない」
戦士「だが、無理をしているのだったら言ってくれ。防具の一つでも売って凌げば、何とか持ち直せるからな」
勇者「……」
勇者「いや、お前なら信頼できそうだ。これからもよろしく頼む」
戦士(……裏切られて疑心暗鬼、とかか?)
13:
魔物の群れが現れた!
戦士は魔物の群れに飛び掛った!
魔物A「ゲゲ ギャ」
戦士は魔物Aの喉を切り裂いた!
魔物B「ゲッゲ ッギ」
戦士は魔物Bを両断した!
魔物C「ギギー!」
魔物Cは逃げ出した!
が、回り込まれた!
戦士は魔物Cの首を刎ねた!
勇者達は魔物の群れを倒した!
勇者(どっちが魔物だか……)
14:
戦士「到着!」
勇者「ここは活気があるようだね」
戦士「この辺りは城が近い分、安全なのかもしれないな」
勇者「確かに……辺境ほど町というより、村や集落になる傾向があるからなぁ」
戦士「とりあえず宿でもとろうぜ。久々のベッドでゆっくりしたいんだ」
勇者「……宿をとる前にすったのか」
15:
勇者「一部屋でいいか?」
戦士「お前……野郎同士で部屋を分けるメリットはないだろ」
勇者「もしかしたら君が、誰かと同じ部屋じゃ眠れないかもしれないじゃないか」
戦士「そんな繊細な奴は、魔物の返り血を浴びたまま町に入ったりはしない」
勇者「君はある意味で勇者だよね」
16:
戦士「一旦解散か?」
勇者「私はそれで構わないけど、この町に別行動するほどの……まさか賭博!」
戦士「ちがーう。少し素振りをしてこようと思ったんだよ」
勇者「成る程、そういう事なら付き合させて貰うよ」
勇者「君からはいろいろと教わる事も多そうだしね」
戦士「それはいいが独学だからまともに教えられないぞ?」
勇者「ならば見て盗むさ」
戦士「はは、そりゃあいい。頑張って盗めよ」
18:
勇者「はあっ!はあっ!」
戦士「まさか、打ち込みまでやるとは。流石に息が上がるな」
勇者「……でも、まだ、余裕、そうだな」
戦士「これでも、走りこみとかしているからな」
勇者「私よりも、重装備なのにか……そうか、普段から身を重くして鍛えれば」
戦士「それは戦闘の時に危険過ぎはしないか?」
19:
戦士「それに、女みたいな細い身体でそこまで剣を振れるし、技量もあるんだ。大したものだと思っているぞ」
勇者「魔王を倒す為に戦っているんだ。大したもの程度では……もっと、強くならねば」
戦士「そう背負い込むな。剣なら俺も貸してやる。だからもっと余裕を持て」
勇者「ありがとう……恩に着るよ」
戦士「早すぎるぞ、ちゃんと生きて役目を果たしてから感謝してくれ」
20:
戦士「無理をしても、明日に響くだろう。この辺にしておくか」
勇者「そうさせてもらうよ……。私は汗を流してくるが、夕食はどっかの食堂でも行くか?」
戦士「そのつもりだ。そうだな、俺が先にどっか店を見つけておくぜ」
勇者「ああ、頼んだよ」
勇者(まさか返り血の事を……いやいや、流石に鎧くらい脱いでいくだろう)
21:
勇者「何で自警団に捕まっているのかね?」
戦士「まさか不審者に見間違われるとは何たる不服」
自警団「ほ、本当に勇者様のお連れの方なのですか?」
勇者「あー……うん、見た目は賊っぽいけども私の仲間なんだ」
自警団「し、失礼致しました!勇者様の……」
勇者「いや、彼にも……彼だけに非があるから気にしなくていいよ」
戦士「フォローすらないのか」
22:
戦士「全く酷い目に合った」
勇者「然るべき対処をとっていただけだと思うけども」
戦士「さっきから思っていたが……お前結構酷い奴だな」
勇者「そうかな?」
戦士「絶対に友達少ないだろ」
勇者「君は君で失礼な奴だな」
23:
……
勇者「今日も野宿か……」
戦士「そりゃあ、町から町まで距離があるからな」
勇者「そして不味い携帯食料か……」
戦士「乾し肉もないからなぁ。まあ粘土みたくて不味いが、食えるだけましってものだ……お、小鹿」
勇者「……」ギラ
戦士(っ、狩人の目だ!)
24:
戦士「まるで農場だな……」
勇者「まさかここまで野菜が自生しているとは……」
戦士「こりゃ小鹿の肉で野菜炒めにでもするか」
勇者「それはそれで……お、これってキクラゲじゃないか?!」
戦士「……卵はないが、具だけ中華丼でも作るか」
勇者「時折、君は剣より包丁のが似合うのが何とも言えないな」
26:
……
戦士(この剣いいな)
戦士(……全額はたいても足りないな)
戦士(今の装備を売っても無理か。どうしたものか)
勇者「君は……一体何をしているんだ?」
戦士「穴掘ったら金でも出てこないかと思ったが、難しいものだな」
27:
勇者「時折君は馬鹿なのでは、と不安になるよ」
戦士「他に手があったら、そっちを試しているさ」
勇者「うん?ああ、金が足りないという事か」
戦士「この剣を売っても買えんからなぁ」
勇者「今気づいたが……剣と言っても本当に金属を剣の形しただけの代物じゃないか」
戦士「手に馴染む重さだから今まで使っていたんだ。ここの店に丁度いいのがあったんだ」
勇者「よし、足りない分は私が払おう」
戦士「いいのか……?」
勇者「命を助けられた借りもあるからな」
勇者(鉄の塊から鋼の剣を持つ事で、どれほどの戦果を上げる事やら)ドキドキ
28:
魔物が群れがあらわr
戦士「はあ!」
勇者達は魔物の群れを倒した!
戦士「いい切れ味だ。しばらくはよろしく頼むぞ、相棒」
勇者「君が伝説の武具を使ったら、山をも切り倒しかねないと思う」
戦士「恐ろしいか?」
勇者「見てみたい」
戦士「いや……そういう期待をされても困るからやめてくれ」
29:
勇者「このキノコ食えると思うか……?」
戦士「初めて見るな……傘の先だけかじって毒見しようか」
戦士「……」
勇者「……」
戦士「問題なさそうだな」
勇者「あまり味はないけど、保存食が尽きた今は贅沢いえないからね」
戦士「ぐ……悔しい、でも」ビクンビクン
勇者「身体が痺れ……」ビクビク
30:
勇者「どうするんだ……こんな山奥で遭難と」
戦士「蛇が多いのは助かるが、確かに不味い状況だな」
戦士「一先ず、この山の頂を目指そう。そこから周囲を確認して進路を決めよう」
勇者「ど、毒蛇かっ……」ビクンビクン
戦士「だ、誰が毒なんかに……身体さえ動けば」ビクビク
31:
勇者「今日はここらで野宿だな」
戦士「おー、川も近いし魚でも釣ってくるか」
勇者「へえ、上手いのか?」
戦士「まあ、見てろ。俺の釣り針にかからない魚など……っ!そら、一匹目だ!」
戦士は魚を釣り上げた!
恐ろしい力を持った相手だ……
HPと攻撃力と防御力に優れている
勇者「っひ!!」
戦士「に、逃げ、ぎゃあああああああ!!」
32:
勇者「うわ……ベニテングダケの群生地か」
戦士「いや傘面に白いいぼがないし、裏側は黄色だ……こいつはタマゴダケだな」
勇者「タマゴダケ?」
戦士「ベニテングダケの仲間だが、こいつは食用にできる代物だ」
戦士「こいつがまたいいダシを出すんだ。今日は魚とキノコのスープだな」
勇者「メニューは嬉しいが……君が本当に戦士なのか疑ってしまう」
33:
戦士「うおおお……湖だ」
勇者「……猛暑続きに町も川も無かったからね」
戦士「おっしゃ、俺先に入るから見張りよろしく」
勇者「君は遠慮というものがないな」
戦士「木陰でも汗ばむと思うのだが……先に行きたいのか?」
勇者「君は時折、分かり辛い気遣いをするよね」
35:
戦士「あ?さっぱりした」
勇者「うわ、びしょ濡れじゃないか。鎧姿のまま入ったのか?」
戦士「そんな馬鹿な事をするか。鎧も軽く洗ったんだ。内側は拭いてある」
戦士「これなら気化熱でしばらく冷えていて気持ちがいい」
勇者「何だろう、少し君が哀れに感じてしまうよ」
戦士「思うんだが、お前は歯に衣着せずにずけずけと言うよな」
38:
勇者「あ?冷たくて気持ちいい……」
勇者「戦士じゃないけど私も鎧を洗っておくか」
勇者「うっ……流石に臭いがきついな」
勇者「……」
勇者「よし……うっ、水で洗った程度じゃ落ちないか」
39:
勇者「ふぅ……うわあ!」バシャ
勇者「ああ……なんだ、魚が身体に当たったのか。まぬけな奴だなぁ」
勇者「それで大声出した私もまぬ……っ!」
戦士「大丈……」ッゴ
勇者「……」
勇者「不味いなぁ、鞘で殴りつけてしまった言い訳……考えておかないと」
40:
戦士「……あ?俺は何時の間に寝たんだ?」
勇者「大丈夫か?」
戦士「ああ……そうか、お前の悲鳴が聞こえて駆けつけたが、敵襲を受けたみたいだな」
勇者「……」
戦士「どうやら助けられたようだな。面目ない、感謝する」
勇者「いや……こちらこそかたじけない」
戦士「何でお前が?」
42:
……
戦士「よっしゃー!町だー!」
勇者「到着したのはいいんだが、何やら様子がおかしいな」
戦士「何というか暗いな。魔物の脅威にされされているとか?」
勇者「気になるな……少し調べてみるか」
43:
勇者「盗賊……」
戦士「魔物が闊歩する時代だというのに、浅ましいというべきか逞しいというべきか」
勇者「前者に決まっているだろう」
戦士「だが、逞しい事には変わらないだろうな。どうする、賊狩りでもするか?」
勇者「そうだね……悪事を行う以上、それを止めるのも勇者の役目なのだろうね」
戦士「……お前、本当にあの豪傑大男の子供なのだろうか」
勇者「時々思うんだ……どうして母はあの人と結婚したんだろうって」
戦士「お前、実の父親に対してなんと……」
44:
盗賊A「ヒャッハー!ここは通さねぇぜ!」
盗賊B「親分に会いたけりゃ、俺達を倒すんだな、ヒャッハー!」
盗賊C「俺達がお前らを倒しちまうんだがな、ヒャッハー!」
勇者「……本当に人を相手にしなくちゃいけないのか」
戦士「そうか、お前はまだ……よし、援護に回れ」
勇者「一人で三人を相手にする気か」
盗賊「ヒャッハー!何をごちゃごちゃといtt」
戦士は剣を鞘に収め、一刀の元に薙ぎ払った!
盗賊達に3453のダメージ!盗賊達は即死した!
勇者「……」
戦士「これが人の死だ。よおく目に焼き付けておけ。こっからは地道に倒していくしかないんだ」
戦士「ずっと援護していろ、だなんて甘い事は言わんからな?」
46:
親分「勇者ぁ……よくも子分達を可愛がってくれたなぁ」
勇者「……」攻撃割合二割
戦士「……」攻撃割合八割
親分「てめぇが殺した連中の仇、取らせてもらうぜぇ!」
勇者「……」殺害率一割
戦士「……」殺害率二割
47:
親分「勇者ぁ……よくも子分達を可愛がってくれたなぁ」
勇者「……」攻撃割合二割
戦士「……」攻撃割合八割
親分「てめぇが殺した連中の仇、取らせてもらうぜぇ!」
勇者「……」殺害率一割
戦士「……」殺害率九割
親分「」
戦士(……こいつもエグイ斬り方するな)
勇者「実質ほんの数人を正面から斬っただけだけど」
戦士「大方俺が仕留めたからな」
勇者「うん、それでも何というか」
勇者「人殺すのって、魔物を相手にするより楽だよね」
戦士「早まるな!そっちの方面に落ちてはいかん!」
49:
戦士「にしてもお前なら、もっと良心を痛めるかと思ったんだがな」
勇者「君はそれを見越しておいて、私にやらせたのか?」
戦士「賊を許さんとするなら何れは通る道。今のうちに経験しておく方がいいと思ったんだ」
戦士「で、ダークサイド以外に何か感想は?」
勇者「……何というか、どっちも命なんだなぁと思った」
勇者「全て生命は平等とまでは言わないけど、人だろうと魔物だろうと殺すのって本当に変わらないな」
勇者「それに魔物より弱いし、人を殺すのって本当に楽でいいね」
戦士「いい話っぽかったのにそっちに持っていくな」
55:
……
戦士「……」
勇者「どうかしたか?」
戦士「いやさ、こいつらは何で相手との力量の差を汲み取れないんだろうな、と思ってな」
勇者「……考える知能がないから、だろうか?」
戦士「どうなんだろうな。もっとましな判断ができれば、こいつらにも違う人生があっただろうにな」
勇者「……」
56:
戦士「ごちそーさん、と」
勇者「君が仲間になってからは、野外での食事が豪華になったものだ」
戦士「そりゃどーも」
勇者「思ったのだが、君はどういう経緯で旅をしているんだい?」
戦士「剣しか知らない俺に、働き口が無かっただけさ」
勇者(これだけ料理の腕があるのに?)
戦士「……人の理由なのに、不満そうだな」
勇者「いや、何でもない」
57:
勇者「町に着いたね……」
戦士「ああ、そうだが……わざわざ言う事か?」
勇者「……何が?」
戦士「いや……何でもない」
勇者「宿、取ってくるか……」
戦士(何か会話が成り立たんな)
58:
勇者「あー……ベッドはいいものだ」
戦士「そりゃあ野宿に比べれば……お前もう寝るのか?」
勇者「そうする……」
戦士(一日も欠かさずに素振りしてた奴がもう寝るのか?)
戦士「いやいや、さっきといい明らかおかしいだろ……おまっ、凄い熱じゃないか!」
勇者「これが意外と居心地がいいんだ。まるで浮いて……」
戦士「こいつが原因だったか」
59:
勇者「スー……スー……」
戦士「全く、無茶をする奴だ」
戦士「こりゃ、数日は様子見ないとだな」
戦士「羽を伸ばしたい所だが看病してやらんとだな」
60:
戦士「げっ、凄い寝汗だな。放って置くわけにはいかないな……」
戦士「替えの寝巻きと拭く物……うお、シーツまで濡れてやがる」
戦士「……くそ、今日は雑魚寝か」
戦士「全く、無理をしなければここまで悪化しなかっただろうに」
戦士「この借りは後で返してもらうからな」
61:
勇者「……んん?」
戦士「……ああ……起きたか……」
勇者「あれ、私は?まさか一晩中看ていてくれたのか?」
戦士「……具合、良さそうだな……おやすみ」
勇者「ああ、かたじけない。助かったよ」
戦士「スー……スー……」
勇者「そうかぁ、君には本当にすまない事を……寝巻きが、違う?」
62:
戦士「ふああ……よく寝た」
勇者「すまなかったな」
戦士「それは構わん。だがな……まさかお前が女だったとは」
勇者「隠していてすまなかった」
戦士「それも構わんさ。ただ、一人旅の理由が何となく分かったよ」
勇者「うーん……少し違うとは思うがね」
戦士「?」
63:
勇者「何て事はないよ。元々、私は何人かの仲間と共に旅を始めたんだ」
勇者「故郷を出てしばらく、人気の無い山の中で野宿した時の事だ」
勇者「私は仲間達に組み伏せられたんだ……何て事のないよくある話さ」
戦士「そうか……」
勇者「不幸か幸いか、三対一で勝ち誇った瞬間の隙を突いたら何とかなったんだ」
戦士「逃げ延びたのか」
勇者「気づいたら皆殺しにしていた」
戦士「え……そっち?」
64:
戦士「待て、賊と戦った時はあんなに狼狽していたのにか」
勇者「冷静に相手する事がなかったからな」
戦士「お前という奴は……いや、そこまで重症という訳でもないのならいいさ」
勇者「まだ未遂で済んだからな。私が女だと分かった途端、心配してくれているのか?」
戦士「性別関係無しに看病してやったの誰だったかなぁ」
勇者「……かたじけない」
65:
勇者「あっけらかんと話しているが……その、当然見たんだよな?」
戦士「今更その追及か」
勇者「いや、確かめる必要ないんだが……確認しないと落ち着かなくてな」
戦士「すまないとは思ったが、着替えさせる時に舐める様に見させて頂いた」
勇者「な、舐める様に?!」
戦士「あと汗を拭く時に、つい触覚にて確認してしまった」
勇者「しょっ、何処だ、何処をだ!」
戦士「良かったな、もっと発育が良かったら流石に隠せないからな」
勇者「……たたっ斬っていいか?」
66:
戦士「というかあれだ、俺はお前を襲う奴に思われていたのか」
勇者「いや、それはない」
勇者「ただ変に気を遣われるのも嫌だったのでな」
勇者「君は優しいからなぁ」
戦士「そういう理由なら納得しておくか」
勇者「それと、君は女性には気がなさそうだしな」
戦士「……俺は、そっちに見えるのか」
勇者「あ、いや、剣の道にしか興味が無い、的な意味だったのだが……」
68:
戦士「俺は適当に買出ししてくるからお前は寝ていろ」
勇者「え?」
戦士「え?じゃないだろ、まだ熱もあるんだ、ゆっくり寝ていろ」
勇者「だが……いや、そうさせてもらおう」
戦士「珍しく素直だな?まだ熱が高いのか?」
勇者「折角一晩中看病してもらったんだ。完治するまでは甘えさせてもらう事にしたよ」
69:
戦士「戻ったぞ」
勇者「朝のうちに買出しに行って、何で夕方にボロボロになって帰ってくるんだい?」
戦士「近くに洞窟があったから少し探索してきた」
戦士「何時でも逃げられるようにしていたから、あんまし深くは潜れなかったが、ほれ」
勇者「これは、ロザリオか」
戦士「装飾品の装備が無かったろ。雀の涙程度だが、それで守備力を底上げしとけ」
勇者(すまん、戦士。女だと分かった途端プレゼントか、と蔑んでしまったよ)
70:
戦士「ここらへんの魔物も粗方片付いたな」
勇者「これで枕を高くして野宿できるな」
戦士「肉も手に入ったし早焼くか」
勇者「じゃあ私は寝床を作っておくよ」
戦士「頼んだ。ん、あれはキノコか」
勇者「あの形、ツキヨダケだな」
戦士「……全く発光していないな。ムキタケか」
勇者「……」
戦士「こいつはツルっとした食感がいいんだ。よし肉と一緒に炒めるか」
勇者「最近思ったが、君はキノコ博士だな」
戦士「いや……この間毒に当たったと思うんだが」
71:
魔物の群れが現れた!
魔物の先制攻撃!
戦士「っくそ!」
戦士は勇者の前に立ちはだかった!
戦士は魔物の群れの攻撃を全て受け止めた!
戦士「っち……覚悟しろ!」
戦士は魔物の群れを次々と切り裂いていった!
勇者(先制を全てカウンターで……)
72:
戦士「ふはははは、大漁大漁」
勇者「こっちも野草が沢山採れたよ」
戦士「お、香草もあるな。魚の香草焼きか……今晩はこいつで決まりだな」
勇者「ハツタケも見つかったから、吸い物ができそうだ」
戦士「よっしゃ、任せろ」
勇者「野宿なのにこのメニュー……毎度の事ながら、君と共に旅をして本当に良かったよ」
戦士「……そう言われると喜んでいいのか微妙だな」
73:
勇者「流石城下町、宿屋も大きいね」
戦士「考えてみたら、こんなにでかい所は初めてかもしれん」
勇者「ほほう、それでは意外と楽しみで」
戦士「悔しいがわくわくしている自分がいる」
勇者「何というか君からは時折、童心が垣間見えるから想像が容易いよ」
74:
勇者「部屋はどうする?」
戦士「……」
戦士(どっちだ……部屋を分けるか、今まで通り同じ部屋か。勇者はどちらを望んでいる……?)
勇者『ただ、変に気を遣われるのも嫌だったのでな』
戦士「っ!一部屋で!」
勇者「じ、自信満々に言われると不安なんだが」
77:
勇者「……」ジー
戦士「不満そうだな」
勇者「やはり気を遣わせてしまった、と思うとな」
戦士「確かにそうだが、お前を思いやっての事ではない」
戦士「あの二択において、お前の視点ならどちらが正解か、それを出しただけだ」
勇者「だが、余計な事を考えさせてしまった」
戦士「だが、答えは正解だったろう?ほれどうだ、正解だろ、ん?」
勇者「そ、そんなに嬉しいのか?」
78:
勇者「まあ……正解だよ。ありがとう。内心、部屋を分けられるのでは、と思っていたよ」
戦士「気を遣われたくないと言ったり、不安になったりと忙しないな」
勇者「否定はしないが、仕方が無い。はっきり区別されてしまったらショックだからな」
戦士「……待て。納得しかけたが、普通は部屋一緒とかありえないと思うところでは?」
80:
戦士「ふあ……お前が先に起きているとは珍しいな」
勇者「ちょっと用事があるからな。そうだ、言いそびれていたが、しばらくはこの町に滞在するからな」
戦士「滞在とは更に珍しいな。ここに特別な物があったか?」
勇者「巨大な図書館があるんだ。私達二人で魔物を倒す事はできても、魔王を倒せるかは分からない」
勇者「だからここで、少し情報収集をしようと思うんだ」
勇者「魔王以外の事でも役立つ本が盛りだくさんだからな。薬草の調合とか覚えておけば、さぞ便利だろう」
82:
戦士「うお……」
勇者「おお……」
戦士「凄い書物の数だ。これだけの紙を作るには山の一つでも減るくらいではないか?」
勇者「うん、下手をすれば二つも三つも消費するほどの量だ。これはいくら調べてもきりが無いな」
戦士「まずは魔王の事から調べていくか」
勇者「そうだね、三十分後にそこの机で見つけた書物で勉強会でもしようか」
83:
戦士「……」ペラ
勇者「……」ペラ
戦士「これは……中々興味深い話だぞ」
勇者「お、どれどれ」
戦士「初代魔王が現れた時、当然だが勇者の称号も無く、勇敢な戦士達が挑んでいったそうだが」
戦士「尽く破れ、最終的に魔術師達により、初代魔王は封印されたそうだ」
勇者「へえ……その都度討伐されていたのかと思ったけども、そんな決着もあったのか」
戦士「みたいだな。魔王が封印されている間は魔物達も消滅。要は一時的に魔王が滅んだ状態になるわけだな」
勇者「ふむふむ……ん、五十年後に封印が解けて初代魔王が復活しているのか」
戦士「その頃には、戦士達の熟練度も上がり、見事初代魔王を討ち取ったようだな」
84:
勇者「それなら不利だと感じたら、一旦魔王を封印して体勢を立て直し」
勇者「軍隊と共に総攻撃、という手も取れるのか」
戦士「……それは、それだけの術が使える者がいる事が前提なんだが」
勇者「そもそもそんな術が使える者が今現在いるかどうかも……」
戦士「だろうな……封印自体は何度か試されているな」
勇者「他にも屈強の魔王がいたのか?」
戦士「魔王を倒しても違う魔王が新たに現れる法則を調べていたようだな……」
戦士「封印している間は、別の魔王は現れない。永遠に封印できれば……面白い仮説だな」
85:
勇者「でも、成功はしなかった」
戦士「正確には封印し続ける事が出来なかったようだな。見ろ、百年以上封印した記録がある」
戦士「魔王出現までの最長が六十年という記録から見るに、これだけでも相当な功績だな」
勇者「思うんだが、魔王は何故不規則に復活しているのだろうなぁ」
戦士「さあな。魔王の能力に関係しているんだろうか」
勇者「え……?」
戦士「見る限りでは……戦士型、魔法型、両立した万能、これは……姿が魔物のような万能型か?」
勇者「他の三体は人型か」
86:
戦士「入れ替わり立ち代り現れているが……規則性がありそうで分からないな」
勇者「それだけでも十分参考になるよ。復活するにせよ、相手が魔法特化でなければこちらにも分があるわけだ」
戦士「まあそうだが……できれば封印して滅ぼせればベストなんだが」
勇者「ちらっと読んだが、封印した時の魔王像を破壊したら解けるのだろう?だったら耐久性を考えていくと、解けない封印は無理ではなかろうか?」
戦士「風化等による、自然的な崩壊は問題ないのかもしれないとは書かれているな。野晒しにでもしたのだろうか」
勇者「人からも野生動物からも……自然現象以外の干渉を受けないようにすればいいのか」
勇者「どう考えても、かなり難しいような……」
87:
勇者「……」
戦士「青い顔をしてどうした?」
勇者「魔王は、第二形態というものがあるらしい」
戦士「みたいだな」
勇者「見ろこの挿絵を。飛龍や大猿に巨大な獅子に……規格外過ぎるぞ」
戦士「それでも今までの勇者達は倒してきたんだ。どうにかなるだろ」
勇者「流石にそれは楽観しすぎだろう……何か対策を講じねば」
88:
勇者「ご馳走様でした」
戦士「いやぁ、食った食った」
勇者「普段頭を使わない分、疲れてしまったよ」
戦士「全くだ。だが、一日だけでもかなりの収穫になったな」
勇者「ああ、今まで食べていた野草が、あれほどの薬効を持つとはな」
戦士「だな。服用じゃ効果はないみただがな、ははははは」
勇者「ははははは」
戦士「はぁ……勿体ねぇ」
勇者「はぁ……勿体無い」
89:
……
勇者の攻撃!魔物Aの喉を切り裂いた!
魔物Bはいきり立って勇者に襲い掛かった!
戦士は勇者の盾になった!
戦士に50のダメージ!
戦士はカウンターを放った!
魔物Bに352のダメージを与えた!
魔物Bは息絶えた!
戦士「大丈夫か?」
勇者「それはこちらの台詞だが……君は卑怯だ」
戦士「何で貶されているんだ、俺」
90:
戦士「秋っていいよな……」
勇者「急にどうしたんだい」
戦士「いやさ、キノコとか木の実とか実りが多くてさ、食料に困らないじゃないか」
勇者「そうだね。栗とか栄養価の高い物も得られるしね」
戦士「何より、天然のナメコ汁をこうして啜っている訳で」
勇者「そうだね、天然のナメコは美味しいね。でも三日続けてはどうかと思うよ」
戦士「うおおおおおお、肉がねええええええ」
勇者「収穫はあっても収獲が空振りは痛いよね」
91:
勇者「うわ、戦士見て!何あれ!白いボンボンが木に生っているよ!」
戦士「っ!ヤマブシタケだ!自生している物を見るのは俺も初めてだ。採るぞ!」
勇者「おお……キノコで興奮している戦士を見るのは初めてだ」
戦士「良いキノコなんだよ!生薬としても使え、免疫力増加、喘息アトピー等のアレルギーにも効くと言われる、万能キノコだ!」
戦士「何より、中華スープにするとと美味い!」
勇者「戦士が料理人の目をしているっ」
92:
戦士「……」ジャアジャアーー
勇者「……」
戦士「……」ジャアーージュワーーーー
勇者「……」
戦士「……」ッジャッジャッジャアーーーー
勇者「いくら食材が沢山採れたからって、宿屋のキッチンで料理するのはどうかと思う」
戦士「その料理に期待している奴が何を言う」ジャアーーー
94:
勇者「ふう……今日も疲れたね」
戦士「剣の腕も上がったもんだな」
勇者「時間さえあれば君と稽古しているからね」
勇者「見直したかい?」
戦士「女性相手にそんな見直し方をしていいものやら」
95:
勇者「私はそれでも構わんよ」
戦士「え?」
勇者「共に旅をして、すっかり慣れてしまっていて私も気づかなかった」
勇者「君は中々、私の好みに当たる人物だよ」
戦士「へえ……は?」
96:
勇者「ああ、そうだ。君は宿を取る時、さっさと道具屋に行ったからな」
勇者「すまんが、空いている所がシングル一部屋のみだったのだ」
戦士「何?おわっ、本当に一つしかねぇ!」
戦士「ああ、でもソファーがあるじゃないか。大きい宿屋で良かった……」
勇者「ふふ……」
勇者「わざわざ、何故このタイミングで言ったと思う?」
戦士「はっ!」
97:
戦士「だが、力に差がある以上こちらに分があるぞ」
戦士「例えベッドに引きずり込まれようとも」
勇者「せいっ」ドサ
戦士「力で解いてソファーに、戻……お前、何時から関節固められるようになったんだ」
勇者「ふふ……過去の一件以来、対人における体術も身に着けておいたのさ」
98:
戦士「うおおお、離せ!てか、こんな事に寝技かける女性などいないぞ!」
勇者「恐らく私だけだろうね。でも全然気にしないよ」
戦士「そこはできれば気にして欲しいんだが」
勇者「私としては形振りを構う気はないんだ」
勇者「それだけ君の事が欲しいのだよ」
戦士「お前……そんな奴だったっけか?」
99:
勇者「見ての通り私は勇者だ。皆は勇者として称え慕ってくれる」
勇者「大した偉業もない私をだ。そんな自分に回りは敬意を持って接してくれる」
勇者「だから、私を本当に理解しようとしてくれる者はいなかったよ……」
勇者「でも君は違った。勇者だから、とかそんなものを抜きにして対等な立場で接してくれた」
勇者「それに何度も君には助けられた。殺されると思った瞬間、本当に素晴らしいタイミングで援護に入ってくれる」
勇者「自分が傷つくのなんてお構い無しにだ」
勇者「だから君に惚れてしまったのだろう」
戦士「割かしいい話じゃないか」
戦士「組み伏せられた上での話しでなければ」
100:
戦士「事情は分かった。だから、いい加減離れてくれ」
勇者「まあ……君ならそれで逃げ出すような事はないとは思うが」
戦士「思うが?」
勇者「御互い金属でなく、布で身を纏った状態で抱きついていられる喜びが、私の力を緩めさせてくれないのでな」
戦士「……分かった、正面から抱きつき直していいから解いてくれ。いてぇよ」
101:
勇者「ふふ……」ギュ
戦士「……」
勇者「どうかしたか?」
戦士「いや、本当に抱きつき直すとは思わなかった」
勇者「自分から言った事だと思うのだが……嫌だったか?」
戦士「何というか、もう少し恥じらいくらい……いや、どう考えても無かったか」
102:
勇者「そうだ、背を向けてくれないか?」
戦士「こうか?不用意に背を向けてから言う言葉じゃないが、何をするつもりだ」
勇者「さっきと同じで抱きつくだけだ」
勇者「やはり君の背は大きいなぁ……ずっとこうしてみたかったのだよ」
戦士「……念願叶って嬉しいか?」
勇者「とっても……」
103:
勇者「おっと忘れていた」
戦士「この期に及んで、何を忘れたと」
勇者「君の気持ちを聞いていないではないか」
戦士「そういえばさっきから抱きつかれっぱなしだったな」
勇者「君は私の事をどう思っている?」
104:
戦士「正直に言って分からん」
勇者「そうか……」
戦士「ほんの少し前までは男だと思っていたしな」
勇者「……そうか」
戦士「だが、好きっちゃあ好きだな。まだ異性として、と問われた分からんだけだ」
勇者「希望をもっていいのか」
戦士「もってもいいが、もう少し淑やかになってくれないか?」
105:
勇者「お早う、珍しく起きるのが遅いな」
戦士「……」
勇者「どうかしたのか?」
戦士「いや……何故、お前に抱きつかれた状態で目覚めたのだろうか、と悩んでいた」
106:
勇者「とりあえず、私の意見としては」
勇者「お前の意思を尊重せず、ベッタベタくっつこうかと思う」
戦士「淑やかさはどこいった」
勇者「幼少の頃から父に剣を教わっていた私にそんな物は無い」
戦士「口調だけならそう感じなくもないのだがなぁ……」
107:
戦士「とりあえずお前の考えは分かった。俺は今までどおりに接する」
勇者「今までどおりか……」
戦士「あからさまがっかりされてもな」
勇者「君なら『お前が女だと知ってからは俺も……』ぐらい言ってくれるだろうと踏んでいたからな」
戦士「何だその希望的観、希望的観測か?いや、既に妄想だ」
108:
勇者「それでも私はべたべた行くからな、覚悟しろ」
戦士「……場の勢いで間違いを犯さないよう気をつけないといけないな」
勇者「私的には間違いでは無いからどんとこい」
戦士「いかねぇよ」
勇者「ならば私からどんといこう」
戦士「こなくていい」
109:
勇者「やたらと肉食型の魔物が多いな」
戦士「当分、食料に困らないな」
勇者「して、本日のメニューは?」
戦士「野菜もキノコも取れなかったからな。ただの焼肉と携帯食だ」
勇者「豪華なのだか質素なのだか」
戦士「感覚が麻痺しているようだが……肉が食えるだけ豪華だと思うべきだ」
110:
勇者「ふう……これで、町の被害もなくなるな」
中ボス「」
戦士「……そうだな」
勇者「どうかしたのか?」
戦士「いや……何でこいつらは、食った殺したしかできないのだろうかと思ってな」
勇者「共存、か」
戦士「難しいものだな……」
111:
……
男「おや……?つかぬ事をお伺いしますが、勇者様ではないでしょうか?」
勇者「ああ、その通りだよ……顔を見ただけで判断できるほど、私は有名になったのだろうか」
男「いやいや、それはもう世界を救う者たる気質が出ておられたので……」ジー
勇者「そう見つめられると反応に困ってしまうな」
男「おっと失礼。ところで、もう一つつかぬ事をお伺いしますが、もしや二人旅で?」
113:
勇者「中々いい仲間に逢えなくてな。未だに仲間は彼だけだ」
男「へぇ?、そうでしたか」ニタニタ
戦士「……」
男「もしよろしければ、自分をお供にさせていただけないだろうか?」
勇者「貴方が、ですが?」
121:
男「こう見えても剣には自信があるんですよ?どうでしょうか?二本より三本剣があった方が安全ではないでしょうか?」
戦士「お前、剣以外に何が出来る?」
男「え……?」
戦士「魔法とか、その他特技はないのかって聞いているんだ」
男「いやぁお恥ずかしいながら、その類は全く……ですが、剣にかけてならそうは後れを取りませんよ」
戦士「ほう……遅れをとらないとな」チャキ
122:
戦士「なら試してやろう。今のところ、それほど剣が必要と言うわけではない」
男「へ……?」
戦士「峰打ちで落とすくらいで掛かって来い。俺もその気で行く」
男「え、いや……」
勇者(殺気だってるなぁ)
戦士「どうした掛かって来ないのであればこちらから……行くぞ!」
男「ひ、ひぃ!し、失礼しました!」
123:
勇者「あんな事をしなくても断ったものを」
戦士「ああいうのは気に食わん」
勇者「本当にそれだけかい?」
戦士「お前をああいう者に触らせたくない」
勇者「おお……ここに来てついに告」
戦士「同性、異性以前に、お前はもう俺にとって大切な人なんだよ」
勇者「ああ……そういう臭くて恥ずかしい台詞を堂々と言える君が好きで堪らないよ」
戦士「おい、それ馬鹿にしてるだろ」
124:
勇者「だが、中々格好よかったぞ」ベター
戦士「昼間の事か?」
勇者「きっと私でなくても惚れていただろう。憎いぞこの、何人泣かせてきたんだい?」
戦士「そうか?まあ……あまり親しい者はいなかったんだよな」
戦士「というより、理解者が少なかったな」
勇者「そうか……それは、寂しくはなかったか?」
戦士「寂しくない、と言えば嘘になる。が、今はお前がいるからな」ポン
勇者「そうか……それはよかった。今のを告白と見ていいのだな」
戦士「構わんよ」
勇者「……そうか、それは残念、待て、今何と!」
126:
勇者「お、おおお前、いいんだな、本当だな、これからは正真正銘の恋人として体当たりするからな?」
戦士「だから構わんと」
勇者「……やったあ!」
戦士「今までも共に旅をしていたんだぞ。そんなに嬉しいか?」
勇者「当たり前じゃないか、君に私という異性を認められたようなものだぞ!……それにしても何故急に?」
戦士「正直に言うと不甲斐無い話ではあるが、さっきの一件でな。お前を他の男に触れさせたくなかったのだ」
戦士「気づかないうちに、俺もこいつに惹かれているんだな、と思ったよ」
127:
勇者「本当に君はさらっと言うね」
戦士「本当の事だから仕方が無い」
勇者「偽らないそんな君が大好きだ」
戦士「俺も裏のないお前が大好きだ」
勇者「……あれ、もしかして私達は似たもの同士か?」
戦士「気づかなかったが、互いの意見を統合するとそうなるな……」
128:
勇者「おはよう!戦士!」
戦士「ああ……おはよう」
勇者「ふ、ふふふふ、おはよう!戦士!」ギュウ
戦士「……上機嫌だな」
勇者「当然だ!心身共に結ばれたのだからな!」
戦士「気持ちは分からんでもないが、浮かれすぎではないか?」
勇者「ふふふふふ、今の私は無敵だぞ。どんなに言われようとも気にはしまいぞ」
戦士「……まあ、幸せだからいいか」
129:
勇者「ここからはすぐに城下町に入るね」
戦士「あまり距離はないようだな」
勇者「すぐにまた宿屋に泊まれるという事だ」
戦士「……お前」
戦士(だが、この近くは確か)
勇者「……神妙な顔をしてどうかしたのか?」
戦士「いや、何でもない」
131:
勇者「魔物と戦争……?」
兵士「はい、ここは鉱山も多い所為か、魔物が軍隊を成して襲撃してくるんです」
兵士「今回ばかりは危険かもしれません。今までの倍の数が進行しているとの報告がありました」
勇者「迎え討たないのか?」
兵士「相手の数が多すぎますゆえ……罠を張り巡らし、水際防衛線を行う作戦となっています」
戦士「確かにここの森で罠を張るのはいいが、水際では取れる手が少なくなるぞ」
兵士「分かっています。ですがこちらの地の利を最大限に生かさなければ、勝ち得ないのです」
勇者「どうにかして、協力したいが多勢に無勢か……」
132:
戦士「すまないが、しばらく別行動をとらせてもらってもいいか?」
勇者「一人で敵を蹴散らしに行くつもりか?」
戦士「……あまりしたくはないが、魔神のような化け物を一体だけ召喚できるんだ」
戦士「ただ、巨大過ぎるが故に、敵しかいない状況でないと味方を巻き込んでしまう」
戦士「今回はその条件がクリアできる」
戦士「悪いとは思うが、一人で行かせて欲しい。分かってくれ」
134:
戦士『今のうちに俺は行ってくる。夜になったら召喚を始めるから、誰も近づけさせるなよ』
勇者「とは言われたものの、やはり心配だ……」
勇者「彼に限って何かあるとは思わないが……ああ、どうするべきだ、追ったら追ったで怒られるだろうし」
勇者「そもそも、彼は一体どんな者を召喚するつもり……なんだ?!」
森の方から木々が薙ぎ倒される音と、地響きの様な音が伝わった。
勇者「何て巨大な……召喚に成功したのか」
火の手が上がり、戦士の言葉どおり巨大な人型の魔神が照らされていた。
135:
魔神が剣を振るう度に、土煙と木々が闇夜に舞い上がる。
勇者「何という巨大な剣だ……あれでは魔物の軍隊も一溜まりも無いだろう」
勇者「あの灯りは……魔法での攻撃を受けているのか?」
勇者「……」
勇者「戦士、すまないがやはりこんな所で待ってはいられないよ!」
136:
勇者「随分と静かになったな。間に合わなかったか」
勇者(何て惨状だ……先ほどまで青々とした森だとは誰が思うだろうか)
勇者(あれだけの召喚なのに、巨大な魔方陣も見当たらない。戦士、何処に行ったんだ)
勇者「頼む、姿を見せてくれ……」
137:
勇者「魔神が最後にいたのは、この辺りだったはず……戦士!」
戦士「……来たのか」
勇者「傷だらけじゃないか。回復魔法をかけるから待っていろ!」
戦士「すまん」
勇者「……」
戦士「……」
勇者「魔法による傷……やはり、あの巨人は君なんだね」
戦士「……ああ」
139:
勇者「私だって前々から魔族や魔物のについては調べている……」
勇者「あの姿にあれだけの力……君が魔王だったんだね」
戦士「気づいていたのか……?」
勇者「まさか。でも、巨人と化したあの姿を見れば分かるさ」
勇者「少し前に、魔王の事だって調べたわけだからね」
140:
戦士「今なら容易く討てるぞ」
勇者「それよりも聞かせて欲しい事がたくさんある」
勇者「君は一体何を成そうとしているんだ?何故、魔物の軍隊を蹴散らした?」
勇者「何故……私なんかと共にいるんだ」
戦士「言っておくが、筋書きなんてものは無いからな……」
142:
戦士「我々魔王は複数存在する。それが図書館でもあった、戦士型や魔法型だ」
戦士「転生が不規則に見えてはいるが、個々の周期で転生するようになっているんだ」
戦士「前世の記憶は無いが、目覚めたばかりの魔王に過去の魔王や前世の話等をしてくれる魔族達がいる」
戦士「早い話、新生魔王の教育係だ」
戦士「色々な事を聞かされたが……正直、もううんざりなんだよ」
戦士「何回も生まれ変わって、人より短い時間の中で破壊の限りを尽くし、討伐される人生なんぞ」
143:
戦士「確かにこの思いも一度死んでしまえば、水に流れて消えてゆく」
戦士「だが、俺はそんな結末を迎えるつもりは無い。生きて、人間との共存を果たそうとした」
勇者「では、あの魔物の軍隊は?」
戦士「勢力を持つ者達は異を唱え、俺の元から去っていった。事、下級の魔物に関しては、俺の意向すら知りもしない」
戦士「だから、こちらに来て魔物を狩ってみたんだが……やはり何も変わらないな」
145:
戦士「お前と旅をすれば何か見つけられるかも、と思ったが」
戦士「世の中、そうは甘くないな」
勇者「これからどうするつもりなのだ?」
戦士「お前が愛しいのは変わらない。だから、何としてでも争いを止めるつもりだ」
戦士「が、方法がなぁ。一先ず、城に帰ってみようと思う」
勇者「私はどすればいい。さらっと言われた言葉に喜ぶべきか、魔王城突入に驚くべきか」
戦士「この期に及んで……いや、お前らしいか」
146:
勇者「魔王城の正確な位置は?」
戦士「この森を更に西に抜けていった先だ」
戦士「恐らく野良ではなく、正式な征服派との戦闘になっていくだろう」
戦士「一旦南の国に行って、装備を整えてから向かおうと思うが、それで構わないか?」
勇者「南の国……ああ、そうしてくれ」
147:
……
戦士「北から掘り出した鉱物が集まるだけあって、巨大な鍛冶場が目立つな」
勇者「ここにはない武具は存在しない、とまで言われているからな」
勇者「すまんが、一旦城の方に行ってきてもいいか?」
戦士「城に?一体何をするつもりだ」
勇者「少々知人がいてな。挨拶をしてきたいのだ」
149:
勇者「王妃様、お久しゅうございます」
王妃「おお、そなたか。本当に久しぶりだ。もう四年は会っていないものか」
勇者「過ぎてく間は短く、振り返ってみれば長い時間です」
王妃「全く以ってその通りだ。私のように、老いていくだけの身には、もっと遅く過ぎてほしいものよ」
戦士「もっと厳かかと思ったが、意外と軽快な人だな……」ボソボソ
王妃「ふふ、元はただの農家の娘、王の目に映らなければただの女であるからな」
戦士「なっ」
勇者「王妃は地獄耳を表したような人であるからね。耳打ちする必要は無いよ」
150:
王妃「ところで、その男は初めて見るが、もしやそなたと契りあった仲か」
勇者「まあ……似たような所ですね」ニヤニヤ
王妃「あいも変わらず嘘をつけない性格の様で安心したよ」
戦士「お前、元からこんな性格だったのか」
勇者「決してそんな事は無いぞ」ニヤニヤ
戦士「頬、緩みっぱなしだぞ……」
151:
王妃「して、そなた等は何用でここまで来たのだ?」
勇者「これから魔王城に向かうにあたり、近くを通る故に立ち寄らせて頂きました」
王妃「魔王城……そうか、あの方はやはり」
勇者「……はい」
戦士「何の話だ?」
勇者「あ、話していなかったか。私の父は道中で命を落としたのだ。だから私が旅に出ているのだ」
勇者「王妃は昔、父に助けられた事があってな。それ以来よくしてもらっているのだよ」
戦士「……そういう事だったか」
153:
王妃「しかも二人だけで行くとは……いや、そちらの戦士も魔法が使えるからいいのか」
勇者「え?」
戦士「げ……魔力を感じ取れるとれるのか」
王妃「もしや、魔法も使えないのにこれほどの魔力があるのか?そなた、何者ぞ?」
戦士「……」
勇者「戦士、言っても構わないだろうか?」
戦士「お前が信頼している相手なら……それにこの状況じゃ、言い訳も思いつかない」
155:
……
王妃「何と……そなたが魔王と」
王妃「ただの青年にしか見えぬがのう……」
戦士「人の姿が取れる魔王は皆、こんなものさ」
王妃「本当に共存を望んでおるのか?」
戦士「その為に、俺は今こちらで旅をしている」
王妃「そうか、そうだな。恐ろしいほどの愚問であったな、すまない」
王妃「だが……魔王にこのような善良な者がいようとは誰も思うまい」
戦士「……善良?」
156:
戦士「どういう意味でその言葉を言ったかは知らんが、それは俺を貶している様にしか聞こえんな」
王妃「え……?」
戦士「俺は魔王だ。全ての魔物、魔族を統括し、彼らにとっての平和を目指す者だ」
戦士「だが、俺は無下に繰り返されるこの歴史に終止符を打ちたい。それが配下の者の平和に繋がるかどうかを別としてだ」
戦士「そして多くの者は、俺の元から去っていった。魔物魔族を統べる者だというのにだ」
戦士「それでも尚、あんたは俺を善良と呼ぶか?それは、お前達人間にとって都合のいい存在と言いたいのかっ!」
勇者「言いすぎだ!落ち着け!」
王妃「……」
158:
勇者「いきなりどうしたんだ、君らしくないぞ?」
戦士「……柄にも無くすまない。王妃も、俺の言葉は子供の喚きぐらい思ってくれ」
王妃「いや……私も思慮のない言葉ですまなかった。そなたは……常に自分の配下を手にかけているのだったな」
王妃「構わないのであれば、旅に出る経緯を話して欲しい。そなたを知る事が、今私にできる唯一の罪滅ぼしよ」
戦士「大した理由などない。俺の意思に反対する魔族魔物が多すぎてどうにもならないから、討伐という形で変えようと試みただけだ」
戦士「結果はこれだ……何も変わらないし、何も変えられなかった」
勇者「……」
159:
勇者「……正直、私も軽率だったところがある。すまなかった」
戦士「何の話だ?」
勇者「君が自分の部下を殺めているという事実を理解していなかった事だ」
戦士「それに対して、どうこう言ってこないのだから別に構わんよ」
戦士「そんな事より、これからは征服派の領域だ。気を引き締めていくぞ」
勇者「問題ない。君と一緒ならどんな困難だって乗り越えられるぞ」
162:
……
戦士「一旦休んでから城に向かってもいいんだぞ」
勇者「城なら、もっとゆっくり休めるのだろう?」
戦士「そりゃあ休めるが……憔悴しきった顔でそう言われてもな。負ぶって行こうか?」
勇者「う、嬉しいが申し訳ないし……うう」
戦士「元はといえば、部下を掌握できなくて生まれた激戦区だ」
戦士「これぐらいしても、申し訳ない思いでいっぱいだ」
163:
門番「来たか、勇者よ!此処から先は一歩も……ま、魔王様?!」
戦士「務めご苦労」
門番「こ、こちらこそ失礼致しました!誰か、魔王様の帰還を知らせてくれ!!」
勇者「やはり……魔王なんだな」
戦士「正直、そんな貫禄も無いが……こうして着いて来てくれる部下達には本当に感謝している」
164:
戦士「散々考えてはきたが、まずはお前達の意見が聞きたい」
側近「主だった反対派を叩く他無いかと思われます」
側近「一度派閥をリセットし、共存派の兵士を育て、各地に派遣させて下級の魔物達を従えるべきかと」
家臣「私は反対派を魔力による束縛する案を推します。まだ実験段階にも入れていませんが」
家臣「これが成功すれば血の一滴を流す事無く、反対派を従える事ができましょう」
側近「何を悠長な事を言っているのですか!それに、それでは生ける者の尊厳をどう考えるおつもりで!」
家臣「野蛮に殺すだけの案である貴方が何を言います!だいたい、討伐をなさるのは魔王様ですぞ!そのような役目を押し付ける思考、考えられませぬ!」
勇者「魔族達も大変なんだなぁ」
戦士「……はあ」
165:
勇者「散々考えた結果、君が出した答えはどうなんだね?」
戦士「……非常に言いにくい答えだ。特にお前には」
勇者「……?」
戦士「俺が出せた答えは……共存自体は可能だ」
勇者「おお」
戦士「可能なのだが、とてつもなく多くの血が流れる事になる。側近の言ったとおり悠長な話だ」
勇者「……そうか」
戦士「であるからにだ……俺は共存を諦めようと思う」
167:
戦士「それほどの命を土台にして、俺は生き残りたくはない」
勇者「……認めたくは無いが、お前のいう事にも一理が無いわけでもない」
側近「それでは今まで信じてきた者達は……」
戦士「だからと言って征服する気も無い」
家臣「一種の鎖国に近い身の振り方をすると?」
戦士「それでは人間達がいきり立って襲い掛かってくるだろうし、征服派も城を攻めてくるだろう」
戦士「どっか別の世界に移住して平和に暮らせりゃベストなんだがなぁ」
169:
戦士「で、少し城の書庫で調べたが、俺なりにだせる最善策であり、魔王失格な判断がやっとでてきた」
側近「……我々は、魔王様のお言葉であれば、例え皆地獄に落ちる事となろうとも従います」
家臣「その通りです。今、城に残っている者は、魔王様に命を預けた者。どんな顛末であろうとついて行きますゆえ」
勇者「戦士、君は一体何を思いついたんだ?」
戦士「……」
戦士「すまないが征服派を含めて皆、俺と共に地獄へ落ちてくれ」
170:
側近「……かしこりまりました」
家臣「……仰せのままに」
勇者「待て、どういう事だ?何をするつもりだ!」
戦士「城に残っている術士達で俺を封印させると共に、この地そのものを封印する」
戦士「可能であれば、外の世界よりも早く時間が流れるよう設定もしたいが、難しいだろうな」
家臣「外界との関係を一切絶つ事ができればそこまで難しいものではないでしょう」
勇者「待て待て、勝手に話を進めるな!」
勇者「お前は……自殺すると言っているようなものだぞ!」
171:
戦士「ただの自殺ではない。魔物魔族の恒久的な封印だ」
勇者「だが……私はどうしたらいい、そんな平和欲しくはない!」
勇者「そんなものを望んでいない。お前と共に生きられさえすれば……」
戦士「俺もそう願っている。だが無理なんだ」
戦士「下級の魔物ですら人々に危害を加える今、側近にしても家臣にしても」
戦士「どちらの案も悠長過ぎる。事、下級の者に関しては各地で勝手に増えていくんだ」
172:
勇者「それだけなら今までどおりじゃないか」
戦士「さっき報告があったんだ。なあ」
側近「はい、偵察部隊によれば、征服派が人間に対する総攻撃を計画しているとの事です」
側近「それも、一ヵ月後を目途に行うようです」
勇者「たった……一ヵ月後に?」
戦士「流石に一月のうちに掃討するのは無理だし、当然各地の下級の魔物も攻撃に乗じるだろう」
戦士「だから全ての魔族魔物の消滅の一手でないと駄目なんだよ」
173:
勇者「っ多少の被害は目を瞑れば!」
戦士「人間の被害と征服派を皆殺しをしてまで生き残る気はないと言ったはずだ」
戦士「勇者。俺が見ることの無い未来を見守ってくれ」
勇者「……」
戦士「そして、俺なんかよりもっといい人を見つけて、幸せに暮らしてくれ」
勇者「君は……本当に嘘をつかないな。少しくらい優しい嘘を言ってくれてもいいというのに」
177:
勇者「君の言い分は分かったよ。理解もできる。でも全てを賛同するつもりは無い」
勇者「この敷地内を魔法で隔離すると言っていたが、私だけは入れるようにして欲しい」
戦士「俺達がいなくなったら、自害するつもりじゃないだろうな」
勇者「君は復活する気がないのだろう。ならばせめて、最後の時くらい君の傍で眠りにつきたいだけだ」
勇者「というよりも、封印を解くつもりか、とは思わないのだな」
戦士「お前がそんな愚かな奴じゃない事くらい知っているさ」
178:
勇者「嬉しい言葉だが……素直に喜べないな」
勇者「だが、今はそんな事を言っている場合ではないな」
勇者「何時、封印するつもりなんだ?」
戦士「準備が整い次第だな。後どれくらいかかりそうだ?」
家臣「勇者様の条件も取り入れますと準備に十日、実行するのにあたっては二日ほどで」
戦士「最後の二日は俺も身動きが取れなくなるのだろうから、余命は十日間か」
勇者「たったの十日か……」
180:
戦士(後十二日か……それで全てが終わる)
戦士(勇者を一人残して、か)
勇者「酷い顔だな……」
戦士「もう賽は投げられたが、やはりお前を残してしまう事に後悔があるな」
勇者「全く、君は本当に酷い人だ」
勇者「でも、残る方と逝く方……どちらの方が辛いものなのだろうか」
戦士「残る方だろ……死んでしまえばそこで終わる。喜びも悲しみも、一切がなくなるんだ」
181:
戦士「……何をしているんだ?」
勇者「たまには料理をね」
勇者「君にはご馳走されてばかりだったからな」
戦士「……」
勇者「……私の手料理は食べたくない、か?」
戦士「喉から手が出るほど食べたい。が、何でお前はそこまでできて、淑やかさを欠く言動がでるのだろうか」
183:
勇者「綺麗な丘だな」
戦士「俺のお気に入りだ。手入れの一つしていない、草花の力だけで群生している所だ」
勇者「これで魔王城か……」
戦士「笑ってしまうだろう?」
勇者「いや……君が魔王としてどう立ち振る舞うか、それをよく現した風景じゃないか」
戦士「平和、か。だが、その為にはかつての部下を殺めなければならない。皮肉な話だ」
184:
勇者(魔法が使える人達は慌しいな……)
勇者(それに引き換え、兵士達は暇そうだなぁ……)
勇者(にしても、これから消滅するというのに、皆未練がないものだろうか?)
戦士「こんな所で何をしてるんだ?」
勇者「忙しそうだから、ここでぼーっとしていたのだが……皆、普通そうだな」
戦士「何がだ?」
勇者「これから死ぬんだぞ……もっとこう、後悔とかが無いのだろうか」
186:
戦士「俺に付いて来た時点で、征服派に殺される覚悟を持っていたんだとよ」
勇者「そうなのか?」
戦士「全く肝の据わった連中だ。俺がこの判断をする事さえ、予測していた者がいるぐらいだ」
戦士「それに、魔族、魔物である以上消滅から逃げられない」
戦士「皆で死ぬならまだいいか、と納得しているらしい」
勇者「それは、諦めを受け入れたというか……良い事なのだろうか?」
187:
勇者「いよいよ明日か」
戦士「そうだな……」
勇者「今日くらい、ずっと傍にいさせてもらうよ」
戦士「打ち合わせは済んでいる。心配しなくても今日は一緒だ」
戦士「旅をしていた時のようにな」
188:
……
家臣「準備の方は整いました。いつでも行えます」
戦士「よし……始めるか」
勇者「君は、怖くないのか?」
勇者「これから死ぬのだぞ?」
戦士「生きていてもどの道殺される身であるからな……」
戦士「だが、お前と会えなくなるのは恐ろしい話だな」
勇者「だったら何故……」
戦士「やはり終わらしたいんだ」
190:
戦士「血生臭くてどうしようもなくて、決して価値があるように思えないこの魔王達の人生を」
戦士「いや、価値は個々の水準があるから一概には言えないな。だが、建設的な話でないのは確かだ」
戦士「こんなしょうも無い歴史、もう終わらせないといけないんだ」
勇者「やはり、どうあっても折れてくれそうに無いな」
戦士「すまんな」
193:
家臣「魔王様、そろそろ……」
戦士「おっと、待たせたな」
勇者「あ……待って」
戦士「……?」
勇者「……」ギュ
戦士「……」
戦士「……」ギュ
195:
……
ガイド「こうして、魔王を封印した石像がこちらになります」
観光客「人の形も留めていないなぁ」
観光客「本当、ただの石だよな。がっかりだなぁ」
ガイド「ええ……これだけ風化したからこそ、この城の封印も解けて、こうして私達が近づく事ができるのです」
ガイド「それは同時に、もう二度とこの戦士である魔王が復活しないという意味でもあるのです……」
観光客「でもこれだと、それっぽい石を奉っているだけの御伽噺でも通っちゃうよな」
観光客「そりゃ、魔物なんていた証拠は残っちゃあいないし、何百年前の話だよ、てな」
観光客「だけど童話的にしか知らなかったが、詳しく知ると悲しいお話だな……おや?」
ガイド「どうかしましたか?」
観光客「ここに何か彫って……へ……平和を……と戦士……」
「平和を願う勇者と戦士、ここに眠る」
 勇者「ここで死ぬ訳にはいかない……」 完
196:
世界はついに本当の平和を迎えたのか・・・
面白かった!乙!!!!
198:
乙おつ
20

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