女騎士「閉じ込められてしまった」オーク「そうだな」back

女騎士「閉じ込められてしまった」オーク「そうだな」


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1:
女騎士「最悪だ……何故このような者と私がこんなところで生き埋めに……」ブツブツ
オーク「それはこちらの台詞だ」
オーク「それにこうなった原因を作ったのはそちらだろう」
女騎士「むっ……」
3:
女騎士「はあ、どうしてこんなことに――」
?数時間前?
女騎士「よぉし皆の衆、ようやく憎きオークの根城を特定したぞ!」
女騎士「あの古びた坑道がアジトだ、総員叩けぇ!」
うおおおおおおおお!
女騎士「私が先陣を切る! 奴らはゲリラ戦術を得意とするからな、魔法使いは炎弾掃射で伏兵を薙ぎ払え!」
副隊長「お待ちください女騎士隊長! この鉱山自体が古く、地盤が緩くなっております」
副隊長「ここは慎重に……」
女騎士「足踏みをして奴らに逃げられてしまっては元も子もない!」
女騎士「時には危険を乗り越える勇も必要! 進め!」
うおおおおおおお!
5:
オーク「それで案の定暴れすぎて落盤したと」
女騎士「ぐぬぬ……」
オーク「はあ……まあ起きたことはもういい、とにかく今を生きるために動くぞ」
オーク「食料は問題ない、この坑道には元々食用となる茸が自生している、それを食いつなげばいい」
オーク「水もある、ここは近くに水脈があるからな……天井から水が滴り落ちているだろう」
女騎士「それよりももっと大きな問題があるだろう!」
オーク「……なんだ」
女騎士「殺しあうべき敵が目の前にいる状況でおちおちサバイバルなどできるか!」
6:
ザッザッ
女騎士「いいか、この線より先は私の領域だ、この境界を侵せば直ぐ様切り捨てるからな!」
オーク「ああ」
女騎士「オークなどというのは性欲の塊だからな! 何をされるかわからん!」
オーク「そいつはあんまりな言われようだな」
オーク「俺達オークには決まった繁殖期が在り決まった相手と子を造る」
オーク「年中発情している人間のほうがよっぽどいかがわしいと思うがね」
女騎士「そ、そうなのか……」
7:
女騎士「そうだとしても! 我々は敵同士! いつ寝首を掻かれるかも――」
オーク「それもないな」
女騎士「えっ」
オーク「これだけ暗く狭い空間に独りでいればそれだけで発狂してしまうだろう」
オーク「強靭な精神を持っていてももって半月」
オーク「それまでに外に出られる可能性は限りなく低い……」
オーク「そういった意味ではお前には生きていてもらわなくては困る」
女騎士「え……しかし私はお前たちを何匹も殺して……」
オーク「それが戦争というものだろう? たとえ女子供といえどそこが戦場であれば殺されても文句は言えない」
オーク「そもそも俺達オークは感情では戦わない」
オーク「純粋に生きるために戦い、殺し、死ぬ」
オーク「それだけだ」
女騎士「へえ……」
9:
オーク「どうした、少し残念そうに見えるが」
女騎士「いや、オークとはもっと野蛮なものと思っていたから……」
女騎士「想像よりもまともだと、今まで私達がオークと戦ってきた大義がわからなくなってしまう気がしてな」
オーク「ふん、俺にはその”大義”とやらがそもそもわからん」
オーク「戦いに生存以外の何を求めるというんだ」
女騎士「大義なき戦いなどただの胡乱な殺戮ではないか」
オーク「大義そのものが胡乱な言い訳にしか思えないがな……」
10:
女騎士「まあ、なんだ、それよりももしお前に私を殺すつもりがないとしてもその逆はありえないとは言い切れないぞ」
オーク「お前が俺を殺すかもしれない、と」
女騎士「ああ、貴様らオークは辺境で行った蛮行は私の耳にも届いている」
女騎士「正直、お前らの姿を見るだけで腸が煮えくり返る思いだ」
オーク「……別に構わんさ」
オーク「お前が俺を殺そうとすれば俺はそれに応戦するのみ」
オーク「それでも負けるようであれば俺はその程度の戦士だったということだ」
オーク「煮るなり焼くなり好きにすればいい……」
女騎士「……どこまでも無感情なやつだな」
オーク「それがオークというものだ」
11:
オーク「それに、条件は俺もお前も同じだ」
オーク「暗闇の中孤独で気が触れたければ俺を殺せ」
女騎士「くっ……事実上の停戦、というわけか」
オーク「そうなるな、だが不可侵領域を取り決めるのは悪くない案だ」
オーク「最低限の干渉以外は不要、俺達は元々敵同士で――」
オーク「――絶対に分かり合えないのだから」
女騎士「……本当にそうなのだろうか?」
12:
女騎士「ふう、しかしどうにか外にでる方法はないものか……」
女騎士「見たところ土砂崩れで道が塞がれているようだが」コンコン
女騎士「剣で掘り進めたりとかできないかな?」サクッ
オーク「おい!」
女騎士「ひぃ! な、なんだ藪から棒に!」ビクッ
オーク「おかしな気を起こすなよ、さっきも言ったようにこの近くには水脈もある上に地盤が脆い」
オーク「先はこうして閉じ込められるだけで済んだが」
オーク「もう一度落盤を起こしてみろ、次は助かる保証はないぞ」
女騎士「は、はいぃ……」ビクビク
13:
ピチョン……ピチョン……
女騎士「なあオークよ」
オーク「なんだ」
女騎士「その……ちょっと寒くないか?」
オーク「そうか? 俺は特にそうは感じないが」
女騎士「貴様はその厚い脂肪があるからそう感じるだけであろう!」フルフル
オーク「その露出の多い鎧のほうが問題だと思うんだがな……」
15:
オーク「仕方ない、ちょっと待て」ドッコイショ
女騎士「な、な、ちょっと待て! 貴様まさか『こういう時は肌と肌で温め合うのが一番だ』などという理屈を持ち出し私の初めてを――」
オーク「……何を言っているんだ、お前は」
オーク「ブツブツ……はっ!」ボッ
ボボボ
女騎士「おお、火炎魔法か……温かい」ヌクヌク
オーク「こいつは実際に何かを燃やしているわけではないからあまりは持たんぞ」
17:
女騎士「あったかあったか……ん? しかし何故オークである貴様が魔法を?」
オーク「まあ、色々とな」
女騎士「なんだ、含みを持たせた言い方だな」
オーク「聞かないほうが賢明だ」
女騎士「何っ! どういうことだ吐け! 吐け!」ガシッブンブン
オーク「わかったから剣を振り回すな……実は攻めこんできた魔法使いを捕獲して拷問したことがあってな」
女騎士「…………」
オーク「……だから言わんこっちゃない」
18:
オーク「それが戦争というものだ、正当化するつもりもないが、許してもらおうとも思わん」
女騎士「……今のところは不問にしておいてやる」
女騎士「オークに人道を問う事自体、不毛ではあるからな」
オーク「ああ、むしろそのおかげで熱源と光源を――」
女騎士「黙れ」
オーク「……ああ」
19:
?一日経過?
女騎士「……おいオーク」
オーク「……なんだ」
女騎士「ちょっと火を消して向こうを向いて目を塞ぎ耳を塞ぎ鼻を塞げ」
オーク「オークの手は二本なんだぞ、知っていたか?」
女騎士「いいから早くしろ、殺されたいのかっ……!」プルプル
オーク「なんだなんだ、俺も理由もなく敵に背を向けられるほど――」
女騎士「いいからっ……早くっ……!」モジモジ
オーク「……催したのか」
女騎士「言うなあ!」
20:
オーク「大か小か」
女騎士「掘り下げるなあ!」プルプル
オーク「いや、これは重要なことだ」
オーク「糞便は乾燥させると燃料になるからな」
オーク「どちらにしろ用をたすならまず穴を掘れ」
オーク「そのまま垂れ流すと不潔で感染症の原因にもなり危険だ、何より臭く精神衛生上よろしくない」
オーク「済ませたらその穴は――」
女騎士「わかった! わかったから! もう限界だから!」
24:
女騎士「はぁ?」ショオオオ
オーク「…………」
女騎士「なんだ、そんなにジロジロと見るな、よもや貴様――」ショオオ
オーク「お前は家畜の排泄光景を眺めて興奮するクチか?」
女騎士「んなっ! 排泄光景では流石に興奮しない! そこまで変態ではない!」
オーク「ならばいい、つまりはそういうことだ」
オーク(……排泄光景”では”?)
女騎士「屈辱だ……」ショオオ
25:
女騎士「ふぅ……」プルルッ
オーク「水だ、紙の代わりに使え」ポイッ
女騎士「む、なんだその気遣いは、気色が悪いぞ」
オーク「……勘違いするな、尿が付着したままだと汚いし何より臭い」
女騎士「わかったわかった、どこまでも合理的な奴め」ゴクゴク
女騎士「意外と綺麗好きなんだな?」
オーク「オークは鼻が利くからな、それだけ敏感なだけだ、わかったらさっさと穴を埋めろ」
26:
?三日経過?
女騎士「なあオーク」キノコモグモグ
オーク「……意外と口数が多いなお前は、おかげで退屈しない」
女騎士「そうだろう、隊の中でも私といると話題が尽きないと専ら評判でな」
オーク「おまけに皮肉も通じないと来た」ボソッ
女騎士「なにか言ったか?」
オーク「いいや」
28:
女騎士「いい加減退屈だ、お前の話でも聞かせてくれ」
オーク「……俺はごくごく平凡な戦士だ、面白い話ではないぞ」
女騎士「構わん、オークというだけで私にとっては非日常的で不条理だ」
オーク「……そうだな、そもそも俺は戦士になりたくなかった、更に言えば雄として生まれてきたくはなかった」
女騎士「ええっ! お前まさかソッチ系?」
オーク「早とちりをするな、まずオークというのはな……」
29:
オーク「俺達オークはまず雄と雌で完全に役割を分けられる」
オーク「雄は群れの外で働き、雌は群れの中で働く」
オーク「雄が食料や資源を採り、加工やらはすべて雌が行う、といったところだ」
オーク「そして雄は生まれた群れと生まれ持った能力によって”狩人”と”戦士”のどちらかに分けられる」
オーク「資源が豊富な森に拠点を構える群れでは狩りを生業とする狩人が多く育成され」
オーク「逆に貧しい群れでは略奪や戦争を生業とする戦士が育てられる」
オーク「俺の群れは残念ながら後者でな」
オーク「有無を言わせず戦士に仕立てあげられた」
30:
オーク「だが俺は学んだりものを作ったりといった事のほうに向いていてな」
オーク「正直雌たちの仕事のほうが楽しそうでならないんだ」
オーク「魔法の理解も俺以外の戦士は誰一人しようとしなかったくらいだしな」
オーク「だから女だてらに剣を握り戦士として生きるお前は多少なりとも羨ましい」
女騎士「貴様らオークにも色々と苦労があるのだな……」
女騎士「しかしそこまでしてやりたいのであれば群れの中の仕事をすればいいのではないか?」
女騎士「男だから、女だからと言って仕事を無理やり分けるのはよろしくないと思うぞ」
オーク「……いや、そうもいかないだろう」
オーク「これはオークに古くから伝わる伝統である上に、自分でもよくわかっているんだ」
オーク「この体制が一番効率がいい、とな」
オーク「生存するのに最適の形を崩してまで個人の意志を貫くことはしない、それがオークだ」
女騎士「そうか? 個人の意志は尊重すべきだろう」
オーク「それがオークと人間の違いだ、生きるためには感情的ではいけない、合理的でなくてはならない」
34:
女騎士「……世知辛いな」
オーク「そうでもない、望んだわけではないがこれでも戦士としての誇りを持っている」
オーク「戦場で散るのも悪くはないさ」
女騎士「なあオーク」
オーク「なんだ」
女騎士「もしここから出られたら、私達の、人間の帝国に来てみないか?」
オーク「なんだと?」
女騎士「オークの前例はないがある程度魔物が共存していないこともないし、何より帝都には自由がある」
女騎士「学問を修めるもよし、技術を身につけるもよし、誰にも文句は言われない……どうだ」
オーク「……悪いが、お断りだな」
35:
女騎士「なっ!」
オーク「人間の学問には常に”道徳”や”倫理”なんてものがつきものなのだろう?」
オーク「俺達にはそれがない、必要ないんだ」
オーク「俺が必要としているのは道徳にも倫理にも縛られない実学だ」
オーク「それは人間の書物に頼らなくとも経験で培うことが出来る」
女騎士「…………」
36:
オーク「それに言っただろう、腐っても俺には戦士としての誇りがある」
オーク「俺がいなくなったら誰が群れを守る? 誰が家族を守る?」
オーク「俺が戦わなければ他の戦士が戦い死ぬ、もしかしたら全滅するかもしれない」
オーク「それだけは駄目だ」
オーク「オークは感情では戦わない、死んだ仲間に興味もなければそれを殺した相手にも興味はない」
オーク「その代わり生きている仲間は何があっても守りぬく、仲間のためならばどのような汚いこともしよう、それが戦士の誇りであり、俺の生きる意味だ」
オーク「それを捨ててしまったら、俺は生きていけない」
女騎士「なるほどな、それが貴様らの掲げる義か」
39:
オーク「言っただろう、そんな胡乱なものではないさ、言うなれば本能だ」
女騎士「そう、か……」
女騎士「わかった、ならばここから出ることが出来たならばまた、私達は敵同士となるな」
オーク「ああ、そうなるな」
40:
女騎士「ふふふ、そうなると剣を交わらせるのが俄然楽しみなってきたな」
オーク「俺はお前の顔を見るのももうウンザリなのだが……」
女騎士「そういうな、王立派遣部隊の隊長の首級を取れたならば貴様にとっても誉であろう」
女騎士「まあ私はオークなぞに負けんがな」フンス
オーク「どうでもいいが、こんなアホが隊長でよく保つな、その王立派遣部隊も」
女騎士「なにか言ったか!」
オーク「いいや」
41:
?一週間経過?
女騎士「はぁ、茸は食べ飽きた……最近便秘気味だし……」モグモグショオオオ
オーク(人間のことはよくわからないが……一週間でこうも恥じらいが消え去るものなのだろうか)
女騎士「肉食べたいなートンカツー」ショオオオ
オーク「贅沢を言うな、というか俺の前でよくトンカツとか言えるな」
オーク「食料があるだけでも有難いと――!」クンクン
オーク「動くな!」
女騎士「へっ!? 動くなと言われても今私ものすごく恥ずかしいポーズ――」
オーク「静かにしろ」ノシノシ
女騎士「こっち来んなあ!」
オーク「ふんっ!」ガシッ
女騎士「ひぃ!」
42:
蛇「」ジタバタ
オーク「喜べ蛇だ、恐らく俺達と一緒に閉じ込められていたんだろう、蒲焼きにすると美味いぞ」
女騎士「びっくりするからそういうのは前もって言ってくれ!」
オーク「早く穴を埋めろ、飯が不味くなる」
女騎士「ぐぬぬ」
43:
オーク「さて卸すか」サッサッ
女騎士「おお、見事なナイフさばき」
オーク「野営もするしこれくらい普通だろう」
女騎士「私はどうも苦手でな……」
オーク「何? 人間の戦士は遠征などはしないのか?」
女騎士「するが……そういうのは料理が得意な兵士に任せているからな」
オーク「よくそれでいままで生き残ってこれたものだ」
女騎士「五月蝿い! 人には向き不向きがあるのだ!」
オーク「わかったわかった、ほら食え」
女騎士「もぐもぐ」
47:
?二週間経過?
オーク「ふんっふんっ!」グッグッ
女騎士「んっ、くっ……あっ!」ハァハァ
オーク「どうした、もう音を上げたのか?」グリングリン
女騎士「あっ、ひっ、いぎぃ……ま、まだまだ……負け、ない……!」
オーク「ならばあと百回は追加だな」ギシギシギシッ
女騎士「や、あ、お腹がっ、んほおおおおおおおっ!」ビクンビクン
49:
オーク「まったく、ひねりクランチ程度で腹を攣るとは……」
女騎士「ひぃ……ひぃ……」
オーク「『身体が鈍ってはいけない、筋トレだ!』と言い出したのはお前だろうに」
女騎士「ぜぇ……ぜぇ……水……」
オーク「本当によく生き延びてきたなそれで」
女騎士「いいんだ、私は本番強いタイプなんだ……!」グビグビゲホッ
51:
オーク「だが、いい運動にはなったな」
女騎士「プロテイン……」
オーク「……そういえば、お前の生い立ちを聞いていなかったな」
女騎士「む、珍しいな貴様から話を振るとは」
オーク「ああ、あのヘタレっぷりを見ているとお前が戦士というのは何かの間違いではないのかという気がしてな」
女騎士「失敬な……これでも一兵卒からの叩き上げだぞ」
オーク「ほう」
52:
女騎士「生まれは田舎村で家が牧場をやっていてな」
女騎士「逃げた牛をとっ捕まえたり暴れる豚を屠殺したりしていたから足腰は強い方だったぞ」
女騎士「だからといってそのときから騎士になるつもりではなかったが」
女騎士「きっかけがあったんだ、ある夜、私は夢を見た」
54:
女騎士「見知らぬ場所で見知らぬ人たちが殺しあう夢だ」
女騎士「戦火に包まれるそこで行われていたのは殺戮ではなかった」
女騎士「純粋な殺し合いだったよ」
女騎士「肌の色、眼の色、果ては魔物まで入り乱れて殺し、奪い、そして死んでいった」
女騎士「それはそれは空恐ろしかった、そしてその夢から目覚めた時に悟ったよ、これは神の啓示なんだ、と」
女騎士「戦争を止め、世界を一つにしろという、お告げなんだ、と」
55:
オーク「……ちょっと待て、それじゃあお前は夢だの神だの啓示だのなんていう形も正体もわからないもののために戦っているのか?」
女騎士「ああ、闘争の終焉と世界平和、それが私の掲げる大儀だ」
女騎士「――それこそ、お前たちには理解できないたぐいのものだろうが」
オーク「まったくだな、世界平和、その意味をわかっているのか?」
オーク「それは、お前たち自身だけでなく敵も味方も含めて救うということだぞ?」
女騎士「ああ、そうだ」
オーク「馬鹿げている、お前がやろうとしているのは家畜の命を重んじて断食をするようなものだ」
女騎士「自分でもわかっているさ、それが理想論だということぐらい」
女騎士「それでも、無駄な血を流さないためなら、戦う価値はある」
オーク「…………」
56:
オーク「まあ、とやかく言うつもりはないがな」
オーク「そもそも俺達はわかりあえない、それはハナからわかりきっていたことだ」
女騎士「そう、だな」
オーク「しかしそれではお前の異常な強さの説明にはならないと思うんだが」
女騎士「ああ、それはな」
女騎士「単純な話だ、私には神の加護がついている」
オーク「……は?」
女騎士「何故かは知らないが窮地に追い込まれると不思議とパワーが湧いたりひらめきが生まれたりするんだ」
女騎士「だからこうして落盤から生き延びたのもただの偶然ではないと私は思っているぞ」
オーク「……やはり人間はよくわからないな」
女騎士「それにいい部下がいるんだ、副隊長と言ってな、雑用はだいたい彼が――」
オーク「! ちょっと待て!」
57:
女騎士「なんだ、また蛇か?」
オーク「違う! イタチだ!」ダッ
女騎士「おお、では今日の夕飯はイタチの蒲焼き――」
オーク「そういうことじゃない!」
女騎士「?」
58:
オーク「思えば先週の蛇も奇妙だと思っていたんだ……おかしいとは思わないか?」
オーク「お前はともかく鼻の利く俺が二週間もこのイタチに気づかず生活していたことに」
女騎士「あっ!」
オーク「これだけ密閉されていた空間で酸素が薄くならなかったのも合点がいく……どこかに抜け穴がある!」
女騎士「そ、それじゃあ――」
オーク「出られるかもしれない、ここから……!」
イタチ「キュキュ」ササッ
オーク「ここだ!」
59:
女騎士「岩陰で隠れていたのか……! うむ、入口は狭いが人一人なら抜けられそうだ!」
オーク「――!」
女騎士「ははっ! やった、やっと外に出られるぞ!」
女騎士「よし、待っていろオーク、今私が応援を呼んできてやる!」
オーク「……ない」
女騎士「うん? どうしたんだオーク――」
カキィン!
女騎士「!?」
60:
オーク「それは、させられないな」
女騎士「お、おい何の冗談だ、目がマジだぞ……」
オーク「外に出られるのはお前一人、つまり俺はここに取り残されてしまう」
オーク「もしお前が俺を見捨てれば俺はここで野垂れ死ぬことになる」
女騎士「何を言ってるんだ……? 安心しろ、私はちゃんと――!」
オーク「信用ならん、俺とお前は停戦中とはいえ敵同士だからな」
オーク「それに例えお前が増援を呼んだところでそれは人間だろう」
オーク「人間が俺をどう扱うかなんて想像に難くない」
女騎士「それは私が説得して……」
オーク「真っ先に俺達を殺そうと斬り込んできたお前の言葉を信じられると?」
女騎士「うっ……」
61:
女騎士「だが私達は二週間も一緒にいた仲だろう!」
女騎士「私はお前とは戦場で決着をつけようと考えている! だからそんな卑劣な手には出ない、騎士の誇りにかけて約束しよう!」
オーク「関係ないな、この二週間は互いに利害が一致していたから半ば協力していただけにすぎない」
オーク「状況が変われば、俺達の関係も変わる……元々危ういバランスの上で成り立っていたんだ」
女騎士「そん、な……」
62:
女騎士「何故だ……何故そうも簡単に……!」
オーク「知れたこと、これが最も生存率の高い選択だった、それだけのことだ」
オーク「言っただろう、俺がもし死んだら誰が群れを守る、誰が俺の家族を守る」
オーク「俺はここで死ぬ訳にはいかない」
女騎士「くっ……」
オーク「戦場で決着を、と言ったな、ならば剣を取れ女騎士、ここが戦場だ」
オーク「先の一撃で殺さなかったのは好敵手へのせめてもの情け、ここからは正真正銘、真剣勝負……覚悟はいいか」
64:
女騎士「どうしても……戦わなくてはいけないのか……」
オーク「ああ」
女騎士「どうしても……私達は、私とお前は、わかりあえないというのか……」
オーク「……ああ、そんなこと、初めからわかっていたことだろう」
女騎士「……私も」
女騎士「私も、こんなところで死ぬ訳にはいかない」
女騎士「罪もなく殺される人々、暴力に怯える子どもたち……私はそんな人々を救わなくてはならない」
女騎士「だからっ……! 私も死ぬ訳にはいかないっ……!」シャキン
66:
オーク「なるほど、オーラが先とは段違いだ、存外、神の加護なんてものはあるのかもしれないな」
女騎士「もし……もしも私が人間ではなく、お前がオークではなかったら……」
オーク「ああ、こんなことにはならなかっただろうな」
女騎士「……何か言い遺すことはないか」
オーク「誇りある戦士に遺す言葉は無用、それに――遺言を考えるべきはお前のほうだぞ、女騎士……!」
ザッ……グッ……
女騎士オーク「「はァッ!」」ダッ!
ギィン――!
68:
ザァァァァァ……
「…………」フラッ
バタッ
「お、おいあんた大丈夫か? しっかりしろ!」
「ひでえ怪我だ……ってこれ騎士団の鎧か!」
「とにかく近くの村まで――」
70:
?暫くして?
カツ、カツ
女騎士「ふう」ギシッ
副隊長「おはようございます、お早い復帰ですね隊長」
女騎士「うむ、私だけ悠長に寝ているわけにはいかないからな」
副隊長「それでは早ですが陛下から任が下っておりますので」
女騎士「読み上げてくれ」
副隊長「キャラバンの通り道付近にオークの群れが移住してきたらしく安全のために対処せよとのことです」
女騎士「殺せ」
副隊長「えっ」
女騎士「討伐部隊を編成して派遣するするんだ」
副隊長「し、しかし……」
71:
副隊長「そのオークらから直接被害を受けたわけではなく、更にオークは比較的知能の高い種族なので和平を申し込んだほうが……」
女騎士「駄目だ――あいつらとは分かり合えないんだ、絶対に」
副隊長「……変わってしまいましたね、隊長」
副隊長「あの二週間の間に何かあったのですか?」
女騎士「ああ、私はあそこで一匹のオークと出会った」
女騎士「そして思い知らされたんだ、人間とオークの決定的な価値観の違いを」
女騎士「僅かな、ほんの僅かな違い、溝、すれ違いでも、互いに牙を剥く理由には十分すぎる」
女騎士「オークとの和平は不可能だよ、武力を示して、反抗するようならば殺す」
女騎士「それが一番、いや、それしかない」
女騎士「戦って死ぬのならば彼らも、戦士たちも本望だろう」
副隊長「――らしくないですよ」
女騎士「何?」
副隊長「らしくないって言ってるんです!」
女騎士「ひぇ!?」ビクッ
72:
副隊長「そんな小難しいことをごちゃごちゃと考えるタイプじゃないでしょうあなたは!」
副隊長「そもそも考えられる脳ミソでもなし! 実はショート寸前じゃないんですか!?」
女騎士「ひ、ひどい!」
副隊長「あれこれ考える前に信念のために頭から突っ込む! それが女騎士隊長のアイデンティティでしょう!」
副隊長「その頭は何のためにあるんです!? 考えるため? 否! 頭突するためでしょう!」
女騎士「えええっ!?」ガーン
74:
副隊長「だから隊長は変なことを考えなくていいんですよ、そういうことは僕らの仕事ですから」
副隊長「闘争の終焉、世界平和が目標でしょう? アタマ空っぽじゃなきゃそんな理想追ってられないですよ」
女騎士「褒められてるんだか馬鹿にされてるんだか……」
副隊長「だから隊長はいつもどおりでいてください」
副隊長「どうせ、また頭が回らなくて失敗したんでしょう?」
女騎士「うっ……」
副隊長「聞かせてくださいよ、何があったか」
女騎士「……もしも私が……」ギリッ
女騎士「もしも私がもっと賢ければ、オークを救えたのだろうか……?」グスッボロボロ
76:
副隊長「……そんなことがあったんですか」
女騎士「ああ、結局私はあいつを殺して一人で助かったんだ……」
副隊長「はあ、まあ話を聞く限りでは――」
副隊長「ただ単に隊長が勝手に”オークとはわかりあえない”と思い込んでるだけですね」
女騎士「えっ!?」
副隊長「いいですか隊長」
81:
副隊長「そのオークは賢かったようですから本気で生き残りたかったら色々と手段を講じることが出来たはずです」
副隊長「それこそ油断全開の隊長を後ろからぶっ刺すのなんてスライム狩りより簡単ですし」
副隊長「隊長を騙して仲間のオークを呼ばせることも出来た」
女騎士「どれだけ私はお前にナメられているんだ」
副隊長「それこそオークは生きるためなら手段を選ばない種族ですから」
副隊長「それでもリスクの高い一騎打ちになんて打って出た、その意味がわかりますか?」
女騎士「ま、まさか……」
副隊長「彼は最初からあなたを生かすつもりだったんでしょうね」
82:
女騎士「だ、だったらどうして一騎打ちなんか!」
女騎士「私を助けるつもりならそのまま逃がせば良かったじゃないか!」
副隊長「……本気で言ってます? それ」
女騎士「えっ」
副隊長「そのオークが言ってたんでしょう、隊長のことを”好敵手”だと」
副隊長「そして彼は自分が助からないことも察していた」
副隊長「死ぬのであれば自分が認めた者に倒されたいと願うのは、戦いに身を投じる者として当然の感覚だと思いますけどね、僕は」
女騎士「そんな、そんな……!」
83:
女騎士「じゃあオークの戦士の誇りはどうなる!?」
女騎士「あいつは言っていたぞ、『自分がいなくなったら誰が家族を守る』と!」
副隊長「……彼にはもう、守るものなんてなかったんです」
女騎士「え……?」
副隊長「あの討伐作戦で落盤に巻き込まれたのはオークの一集落と先陣切って突っ込んでいった隊長一人」
副隊長「そしてあの場から生還したのは人間オークを含めて隊長だけだったんですよ」
女騎士「……っ!」
85:
副隊長「それだけではない、人間であるあなたがオークと二週間もひとところにいたとあればあらぬ疑いがかけられると考えたのでしょう」
副隊長「オークを殺して生き延びたという事実を、あなたのために作る必要があった」
女騎士「じゃあ、なんだ……あいつは、あのオークは、家族を殺した私を助け、あまつさえ好敵手と認めたのか?」フルフル
副隊長「ええ、全てを赦し、全てを賭けて隊長を救ったんでしょう」
副隊長「それだけ、隊長のことを、認めていたんでしょうね」
86:
女騎士「うぇっ、ぐすっ……それなのに私は……私は――!」
女騎士「そんなオークをっ、殺めてっ、わかりあえないなどと――うわああああああ!」
副隊長「……隊長、今は過ぎたことを悔いている場合ではありません」
副隊長「今を生きるために動くべきです」ペラッ
副隊長「さて、再度確認します、通商陸路付近に移住してきたオークの対処はどうしますか?」
女騎士「うっ、ひっく、和平だああぁぁぁ!」
女騎士「一滴も血を流さず何とかしてやるぞおおおお!」
副隊長「それでこそ隊長です」ニコッ
87:
副隊長「あ、でも隊長が口出すとこんがらがるんで黙って仁王立ちしていてくださいね」
副隊長「隊長は戦闘以外はダメなんですから」
女騎士「最後まで私の扱いひどくない!?」

91:
途中突っ込まれてましたがオークは人間よりも大きいという設定でやっていたので
抜け穴は女騎士しか使えません
9

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これが男の料理・・・なのか?

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