海未「なるほど。これが“朝ちゅん”ですか」back

海未「なるほど。これが“朝ちゅん”ですか」


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1:
<チュン チュン
ことり「いや、ちがうと思うよ・・・」
海未「?」
ことり「えぇとね、朝ちゅんっていうのは、その、・・・ね?
 あいしあう二人が、らぶらぶして、そのまま二人で朝を、」
海未「それならなおさら合ってるじゃないですか。
 お泊まりの朝に、小鳥の鳴き声を聞くのでしょう?」
ことり「ことりたち、そんないやらしいことしてませんっ!!」
海未「あっ・・・“ことり”というのは鳥の小鳥のことであって、
 “鳴き声”というのも別にそのっ・・・あのっ」///
ことり「それは分かってるよおっ!!」///
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2:
ことり「もうっ、海未ちゃんそんな言葉どこで聞いたの・・・」
海未「昨日、ここにお泊まりすると話してたら、『花陽が」
ことり「あの花陽ちゃんが?! 予想外すぎるよっ!」
海未「・・・朝ちゅんなんて、似合わないわね』という話になって絵里が、」
ことり「と思ったら結構予想通りだったかも・・・」
海未「『ねえ希、朝ちゅんって何なの?』と希に聞いてたんです」
ことり「絵里ちゃんごめんなさぁい!!」
海未「でもなぜか教えてくれなかったので、まあ、穂乃果に」
ことり「うそっ!? それ一番予想外だよ!ちょっとショックかもっ!」
3:
海未「『二人で早起きして鳥の声を聞くの、マンガで見たもん』と」
ことり「穂乃果ちゃん・・・理解してるのかなぁ・・・」
海未「古文にもありましたね。百人一首でしたか、
 鳥の鳴き声が聞こえたら、別れの時間だから悲しい、と」
ことり「あー。一年の時に習ったよねっ」
海未「・・・そういえばことり、」
ことり「ううん、今日は夕方までは大丈夫だよ?」
海未「そうですか、安心しました」
ことり「もうっ、こんな時間に海未ちゃん帰したりしないよぉ」ぎゅー
海未「・・・ふふっ」ぎゅっ
4:
ことり「・・・」
海未「・・・」
ことり「・・・このままだと、もう一眠りしちゃいそうだね」
海未「そうですね・・・そうしますか?」
ことり「うーん・・・せっかくだし、早起きして朝ごはんを・・・ああっ!」
海未「えっ?」
ことり「あのね、いまうち、牛乳切らしちゃってたの・・・」
海未「・・・それなら。今から、買いに行ってみませんか?」
5:
ことり「海未ちゃん、まだ四時半だよ?」
海未「だからこそ、です。
 たまにはこんな時間にお出かけするのも、いいものですよ」
ことり「そっか・・・考えてもみなかった」
海未「私、明け方の感じが好きなんですよ。
 走り込みや道場の掃除などの合間に肌で感じる、
 透明で、まっさらな空気が」
ことり「そうなんだぁ・・・なんとなく、わかるかも」
海未「あっでも、今の時間ではコンビニしか開いてないですね」
ことり「大丈夫! ことりも海未ちゃんと行ってみたい!」
海未「では、早いうちに支度して出かけましょうか」ニコッ
ことり「うんっ!」
6:
 ◆ ◆ ◆
ことり「・・・まだ、暗いね」
海未「そうですね。車の音も聞こえません」
ことり「しんみりしてきちゃう。冬の朝みたいだね」
海未「もう十一月ですし、最近はとみに冷えてきましたね」
ことり「十一月かあ・・・今年ももう終わっちゃうね」
海未「中間試験も終わりましたし、時の流れるさを感じますね」
ことり「・・・穂乃果ちゃん、お勉強大変だったよね。こんな時間まで・・・」
海未「嫌な事件でしたね、あれは・・・」
ことり「あはは・・・」
7:
ことり「人、いないねぇ」
海未「もう少し早いと新聞配達のバイクが通ったりもするんです」
ことり「そんなに早いんだ・・・あ、でもそうだったっけ。こないだの衣装の時」
海未「ああ、あれですか。そんなに夜更けまで掛かったんですか?」
ことり「次の日が休みだと、つい、ね」
海未「まったく、身体は大切にしてくださいよ?」
ことり「ごめんね。ありがと」
海未「・・・ふふっ」
8:
ことり「?」
海未「いえ、なんだか・・・家族みたいだなあって」
ことり「もー、そこは夫婦って言ってよぉ」ツン
海未「そうですね。・・・あなたっ」
ことり「へ?!」//
海未「さ、行きましょう」クスクス
ことり「わわ、・・・もう、海未ちゃんのくせにっ」//
9:
海未「さあ、着きましたよ・・・って、あれ?」
 《テナント募集中》
ことり「そこねぇ、こないだ閉店しちゃったよ?」
海未「そうですか、早いものですね・・・高校入学した時でしょう?」
ことり「そうだね、春のパン祭りだからって、穂乃果ちゃんに」
海未「ふふ、今年も私たちもポイント集めに駆り出されましたよね」
ことり「来年も、・・・って閉まっちゃったんだよね」
10:
海未「角地で駐車場に入れづらいと閉店しやすいんでしょうか・・・
 って、どうしましょう?」
ことり「あ、そうだった。・・・じゃあ、海未ちゃん家のほうのセブンにしない?」
海未「ここからだと、ちょっと遠くないですか?」
ことり「おしゃべりしてればすぐだよ。
 それに・・・ちょっと、行ってみたくなったの」
海未「そうですか・・・では、向かいましょうか」
ことり「うんっ」
11:
海未「・・・・」てくてく
ことり「・・・・」てくてく
海未「あの」
ことり「ねえ」
海未「あ、先にどうぞっ」//
ことり「海未ちゃんからどうぞっ」//
海未「やっ、その、別に大した話題ではないのでっ!」
ことり「ことりの方がどうでもいいよっ!!」
海未「・・・・ふふっ」
ことり「・・・えへへっ」
12:
海未「それで、どうしたんですか?」
ことり「ええとね、・・・ふたりきりなんだなぁ、って」
海未「・・・そうですね」
ことり「・・・海未ちゃんが言ってたの、わかったかもっ」
海未「・・・」
ことり「わらわないでね。・・・世界を、ふたりじめしたみたいだなぁって」
海未「・・・ふふっ」
ことり「もうっ! わらわないでって、」
海未「すみません。・・・ちょうど、同じようなことを、思ったんです」
ことり「!・・・そっか、えへ」
13:
海未「・・・」
ことり「・・・海未ちゃんの、番だよ?」
海未「・・・そこの中央分離帯、あるでしょう?」ひそひそ
ことり「うん。・・・って、どうしたの?」
海未「いえ。・・・眠っている街を起こしてしまいそうな、そんな気がして」
ことり「そっかぁ・・・それなら、ことりも静かにお話します」くすっ
海未「ふふっ・・・覚えてますか?
 いつかの初詣の帰り道に、だれもいないからって道路の真ん中で、」
ことり「・・・そうだっ」パッ たったったっ
海未「あ、・・・ちょっ、危ないです!」たったっ
14:
海未「ことりーっ!」
ことり「ねえっ、海未ちゃあん!」くるんっ
海未「車がっ、」キョロキョロ
海未「・・・・来そうにないです、けど」
ことり「海未ちゃーんっ! ことりのこと、見えてるー?」ひらひら
海未「見えてますっ、ことりしか見えてません!」
ことり「えっ・・・///」
16:
海未「だから、その・・・ああもうっ!」たったったっ
 ぎゅうっ
ことり「あ・・・っ!」
海未「・・・心配かけないでください、もうっ」
ことり「ごめんね、つい・・・・ううん、ありがと、うみちゃん」
海未「もう、・・・っ、ちょっと急ぎますよっ!」///
ことり「あ・・・うんっ」
たったったっ
17:
 ◆ ◆ ◆
ピンポーン
ッシャーセー
ことり「・・・まぶしっ」
海未「外がほの暗かったからですからね」
ことり「そうだね、じゃあカゴを・・・あっ」
海未「・・・」
ことり「・・・」
海未「・・・手、はずしますか」
ことり「・・・そ、そうだねっ」
18:
ことり「あ、ねえ海未ちゃんみて、このチョコパン新商品だって!」
海未「いいですね。穂乃果がよろこびそうです」
ことり「先に買ってふたりで試してみよっか?」
海未「そしたらまた、穂乃果にいろいろ言われてしまいますよ・・・」
ことり「もうっ、お泊まりもデートも穂乃果ちゃんにはいまさらだよっ」
海未「からかわれる身にもなってください!最近は絵里にまで・・・」
ことり「えへへっ、海未ちゃんは人気者さんだもんねぇ」
海未「うぅ・・・っそれより牛乳、牛乳以外に買うものはありますか?」
19:
ことり「うーん、おやつはあるし、海未ちゃんはなにかある?」
海未「朝食は一緒に作りますから、なにか軽いものでも・・・」
ことり「そうだねっ、じゃああずき杏仁なんてどうかなっ?
 セブンのおいしいんだよっ」
海未「そうなんですか・・・では、試してみましょうか。あとは・・・」
ことり「ええと、そうだなぁ・・・」じーっ
海未「・・・烏龍茶ですか?」
ことり「あっいいの、重たくなっちゃうからっ」
海未「なに言ってるんですか、これぐらい平気ですよ?」
ことり「・・・じゃあ、一緒に持とうよ」
海未「・・・ありがとうございます」
20:
アリアトーッシター
てくてくてく
ことり「意外と買っちゃったねぇ」
海未「そうですね・・・ことり。ホットレモン、どうぞ」
ことり「ありがとう・・・んくっ、・・・うん。あったまるね」
海未「ごくっ・・・そうですね。持ってるだけでもぽかぽかします」
ことり「そうだねぇ。少しすっぱくて、・・・ほんと、ぽかぽかする」
海未「・・・これから、もっと寒くなるんでしょうね」
ことり「そうだね。・・・そしたらまた、こうやって暖まるのかなぁ」
海未「それは・・・なんだか楽しみですね」
ことり「ふふっ」
21:
海未「・・・車の通りが多くなってきました。首都高の方からでしょうか」
ことり「都道だもんね。セブンにも、配送のトラックが停まってたし」
海未「こんな時間にもお仕事している方がたくさんいるんですよね。
 本当に、頭が下がる思いです」
ことり「おかげでお買い物できたんだもんねっ」
海未「・・・空の色も、薄くなってきましたね」
ことり「もう、おはようの時間になるね」
海未「・・・」
ことり「・・・」
22:
海未「・・・」
ことり「・・・どうしたの」
海未「・・・すみません。なんだか、ちょっと」
ことり「・・・・」ぎゅっ
海未「・・・・なんだか急に、さみしくなってしまったんです」
ことり「ことりはここにいるよ?」
海未「はい。でも・・・こうやって、人通りが増えてくると、」
ことり「・・・・ふたりきりじゃ、いられないんだよね」
海未「はい・・・二人だけの世界なんて、ほんとはありえないんですよね」
ことり「・・・・海未ちゃんは、さみしがりやさんだもんね」
23:
海未「・・・・ごめんなさい」
ことり「・・・・でもね、」
海未「・・・・」
ことり「・・・・私は、海未ちゃんのこと、一番大事だって思ってるよ」
海未「・・・・」
ことり「・・・こころのなかでなら、いつだって、
 ふたりきりの世界、作れるんじゃないかな」
ことり「家族にだって、・・・きっと、なれるよ」
海未「・・・・っ」
ことり「ね?・・・・・そうだっ いいこと考えちゃいました」
海未「?」
31:
ことり「今だけは、・・・ううん、今日だけは、」
ことり「そうだっ。海未ちゃん、ことりのおうちのカギ貸して」
海未「?・・・はい」
ことり「・・・ことり、家に先に行って、」
ことり「ううん、・・・・先に帰って待ってるねっ」
 たったったっ
海未「あっ・・・・」
海未「・・・いけませんね。こんな話を、してしまって」
25:
ガチャ
海未「ことり?」
ことり「・・・・おかえりなさい。あなた♪」
海未「・・・ぷふっ、なんですかそれ」
ことり「海未ちゃんのお嫁さん」
海未「そのために帰ったんですか・・・」
ことり「だって、決めたんだもん。海未ちゃんの家族になるって」
26:
海未「あ・・・・」
ことり「・・・海未ちゃん、言ってたもんね。家族みたいだ、って」
海未「・・・・」
ことり「だから、・・・『ただいま』って言って。ことりのために」
海未「・・・・ありがとう、ございますっ・・・」
ことり「・・・ね?」
27:
海未「・・・ただいま戻りました、ことり」 にこっ
ことり「うん、・・・おかえり、海未ちゃんっ!」
 ちゅっ
28:
海未「ふあ・・・・や、やりすぎですっ!」
ことり「海未ちゃん、“朝ちゅー”だよっ!」
海未「なっ・・・!」///
ことり「ねえ海未ちゃん、お嫁さんっぽくない?って待ってえっ!」
海未「もうっ、知りません!、牛乳しまってきます!」
ことり「・・・あははっ、まだまだ先は遠いかなぁ」
おわり。
29:
あまあぁぁい!
乙!
3

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