番長「SOS団?」 【後半】back

番長「SOS団?」 【後半】


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2:
>自分のことより園生さんのことを聞きたい。
森「特に面白味はありませんよ? 休日に図書館にいるような人間ですから」
>そんなことを言っては、ここにいるほとんどの人が面白みがないことになってしまうが……。
>ん……休日?
森「ふふ、これは失言でしたね」
>わざわざ休日に出てきてもらったのだろうか。改めて申し訳なくなる……。
森「いえ、休日というのは本業の方です。機関の活動の方ではありません」
>本業?
森「ええ、古泉が学生をしているように、他の機関メンバーも表の顔を持っていますから」
森「休日といったのは、その本業の方です」
>なるほど……。
森「そもそも機関への出勤と言いましょうか、活動と言いましょうか。
 これは不定期ですし、それにほとんどボランティアのようなものですから」
>たしかに神人を倒して利益が出るわけではないだろう……。
森「ですからむしろ、休日で助かったくらいですよ。
 ですが、気を使ったくださってありがとうございます」
>園生さんはたおやかに笑っている……。
503:
森「……古泉の言うとおり話していて楽しい、いえ話しやすい方というのは確かですね」
>そうだろうか。
森「ええ、話さなくていいことまで話してしまいそうです」
森「……そういえば本業と機関のメンバー以外と話をするというのも久しぶりですね」
>忙しいのだろうか。
森「忙しい……そうかもしれません。
 閉鎖空間の発生率は下がってはいますがなくなってはいませんし」
森「無ければ無いで、機関での会議もありますから」
森「友人とどこかへ出かけるということも、久しくしておりませんね」
>園生さんはどこか物悲しそうだ。
>たまには、思い切り何か吐き出してしまうことも必要だ。
>自分でよければいくらでも園生さんの話を聞くと伝えた。
森「もしかして口説いているのでしょうか?」
>そんなつもりは……。
森「ふふ、冗談です。
 ですがあまり大人をからかうものじゃありませんよ?」
森「……すこし、心が揺らいでしまいました。
 そのようなこと、本業でも機関でも言われたことはありませんでしたので」
507:
森「ですが、そうですね。少し雑談でもしましょうか」
>しばらく森さんと他愛無い話をしてすごした。
……

森「……さて、そろそろ失礼させていただきます」
>何かあったのだろうか。
森「いえ、そうではありませんが。ほら、あちらに」
>森さんが指さす先には有希がいた。
森「あなたのお連れの方をお待たせするわけにはいきませんから」
>20分ほど話していたようだ。
森「このことは機関へ報告させていただきます」
>……! なにか粗相をしてしまったのだろうか。
森「……報告内容は、そうですね。古泉の報告と同様の印象であり、
 古泉の近くに置いておいても危害を加えるおそれのない人物である、といったところでしょうか、ふふ」
>園生さんは、いたずらっぽく笑っている。
>園生さんを通じて一樹とさらに仲良くなれそうだ……。
森「楽しかったです、それでは」
>園生さんは、颯爽と去っていった。
509:
長門「……」
>有希はもう本はいいのか?
長門「いい」
>だがまだ時間は余っている……。
>どうしようか。
長門「あなたと話がしたい」
>なにかあったのだろうか。
長門「異変は特にない」
>……?
長門「話して」
>特に報告することはないと思うのだが……。
長門「……」
>……雑談をしたいということだろうか。
長門「そう」
>有希から雑談をしたいと持ち掛けられたのは初めてだ。
510:
>改めてしてと言われると、困ってしまう……。
>有希は普段何の本を読んでいるのだろうか。
長門「ジャンルはあなた達がSFと呼んでいるものが多い」
>SF……真の宇宙人である有希からしたら、滑稽なものでは……?
長門「人類が未知へのイメージをどのように持っているかを知ることができる」
>SFしか読まないのだろうか。
長門「特定人物の軌跡を追ったものなども読んでいる」
>……ノンフィクションのことなのだろうか。
>どちらにしても有希は堅い本が好きなようだ。
長門「あなたの世界にも、ある?」
>SFやノンフィクションは確かにあった。
>こちらの世界でも本は普遍的なジャンルに分けられるらしい。
長門「どのようなものがあったか教えてほしい」
>読めば勇気が湧いてくる漢の世界シリーズ、とある先生を追いつづけたノンフィクション弱虫先生シリーズはすべて読破した。
>それと自分がよく読んでいたのは、入門書のTHEシリーズ、子供向けの本魔女探偵ラブリーンなど……。
>どれを話そう……。
長門「どれもこの世界にないもの」
長門「教えてほしい」
>有希としばらく本の話をして過ごした。
>有希とまた少し仲良くなれたようだ……。
511:
>そろそろ1時間が経つ。戻ろう。
長門「そう」
>有希と一緒に、駅前へ戻っていった。
……

――駅前。
>少し遅れてしまったようだ。
>しかし誰もいない。
長門「……」
>置いていかれてしまったのだろうか。
ハルヒ「ごっめーん! おまたせっ!」
>ハルヒだ。
>後ろにはキョン、一樹、みくるも一緒のようだ。
ハルヒ「うん! それじゃあ行くわよ!」
>……? もう報告はいらないのだろうか。
>ハルヒはずんずん進んでいってしまった。
512:
古泉「すみません、もう少しお付き合いしていただいてよろしいですか?」
>構わないが……どこに行くのだろう。
キョン「ついていきゃ嫌でもわかるさ」
みくる「ふふっ、楽しみにしてくださいね」
>……?
ハルヒ「こらーっ! 何してるの!」
古泉「我々も行きましょう」
>ハルヒについていくことにした。
……

>この坂道に来たということは……。もしかして北高へ向かっているのだろうか。
キョン「ま、そりゃわかるわな」
古泉「そういうことです」
>しかし日曜日に学校は開いているのだろうか。
キョン「ああ。部活やっているところもあるしな」
古泉「番長氏の通っていた学校は開いていなかったのですか?」
>ああ。日曜日には正門は完全に閉められてしまっていたと伝えた。
513:
古泉「ふむ。部活動が盛んな学校というわけではないようですね」
>部活は確かに強豪の部はほとんどなかったように記憶している。
キョン「しかし、1日3度もこの坂道を上ることになるとはな……」
>3度……?
キョン「あー気にすんな」
ハルヒ「男どもー! 遅いわよ!」
古泉「涼宮さんもああいっておられます。僕たちも少し歩を進めましょう」
>ハルヒの歩くスピードがいため、女性陣とこちらでかなり差が出てきてしまった。
>少し駆け足で、坂を上っていく。
ハルヒ「目的地はもうすぐそこよ!」
>ハルヒは、一段と張り切っているようだ。
……

――北高前。
ハルヒ「さあ、ここが今日の活動の最終地点よ!」
>また、校内で不思議探しをするのだろうか。
514:
ハルヒ「……そうね。キョン!」
キョン「なんだ。そんな大声出さんでも聞いてる」
ハルヒ「キョンは番長くんと一緒に校内ちょっと探してきて!」
キョン「……はいはい」
ハルヒ「あとのみんなはあたしについてきて」
古泉「かしこまりました」
みくる「はぁい」
長門「……」
ハルヒ「じゃあ、いったん解散!」
>ハルヒは、校舎へと消えてしまった。
キョン「さて、どこで暇つぶししようかね」
>探索しなくてよいのだろうか。
キョン「真面目か」
>キョンは苦笑いをしている。
キョン「いいんだよ、ただの時間稼ぎなんだから」
>そうか。
515:
キョン「ま、空でも眺めて待ってりゃいいだろ」
>遠くから運動部の掛け声や吹奏楽部の演奏の音が聞こえてくる。
キョン「……なあ」
>どうした?
キョン「今日は朝比奈さんと長門と何をやっていたんだ?」
>気になるのか?
キョン「い、いや。なんとなく聞いただけで気になら――」
キョン「……いや、素直に言う。気になる」
>そうか。
キョン「その微笑ましい目で俺を見るのはやめてくれ。
 で、何してたんだ?」
>特に何もしていない。
>みくるとは公園で雑談をしていただけだし、有希とは図書館のロビーで雑談していただけだ。
キョン「そうか……」
>変わったことといえば、一樹の所属する機関のメンバーと知り合いになれたことだろうか。
キョン「……!」
516:
キョン「そのメンバーって誰だ?」
>森園生さんだと伝えた。
キョン「森さんか……」
>少し雑談をした程度だ。
キョン「森さんと雑談か……俺はしたことないんだけどな。
 メイド服のイメージしかねぇや」
>メイド服?
キョン「いや、気にするな。はじめて出会ったとき来ていたってだけだ。
 それにしてもホントスゴイな、番長は」
>何がだろうか。
キョン「いや……俺だってSOS団と関わってから、人脈というか知り合いというか」
キョン「普通じゃない奴らと知り合いになってきたつもりなんだがな」
キョン「だがそれも、短いながら俺の高校生活のほとんどを使って知り合ってきたんだぜ」
キョン「それを番長は1週間足らずで、追いつこうとしている」
>……前も言ったように、自分とキョンとでは絆の強さが違うと伝えた。
キョン「わかってる。分かってるつもりなんだがな。それでも焦っちまうんだよ」
キョン「俺の居場所がなくなっちまうんじゃないかって」
キョン「俺の代役なんて、ほとんど番長ですんじまう気がして」
>キョンは悩んでいるようだ。
キョン「ま、こんなこと番長に言ってもしょうがないんだけどな」
519:
>そもそも自分を買いかぶりすぎだと伝えた。
キョン「そんなことはないさ。前にも言ったが番長は男から見ても魅力的だ」
キョン「その証拠に、朝比奈さんも長門も気を許している」
>そうなのか?
キョン「ああ。客観的立場にいるからな、よくわかるさ」
>ならば、自分も客観的に伝えよう。
>それに、みくると有希は自分に気を許しているというが、キョンに対しては信頼を置いていることがわかる。
>それだけではない。一樹もキョンのことを信頼していることが分かる。
>そして何よりも感じるのはハルヒからだ。
キョン「ハルヒ……?」
>自分に初めて会いに来たときも、初めてのSOS団での活動でも、今日の探索でも。
>ハルヒはキョンに対して誰よりも、有希よりもみくるよりも一樹よりも、当然自分よりも。
>この中にいる誰よりもキョンのことを信頼している。
>だからこそ、自分にキョンを付けたのではないだろうか。
キョン「そう……なのか」
>それに……キョンと一緒にいるハルヒはなによりも楽しそうだ。
キョン「ハルヒが……」
>ああ、そうだ。自分では絶対にしない表情をしている。自信を持て。
523:
キョン「自信か……」
>ハルヒだけじゃない、他のメンバーもキョンと話すときは楽しそうだ。
キョン「そうか……」
>……吹っ切ることに時間はかかるかもしれない。だけど徐々に気づいていけばいい。
>キョンがSOS団で自分なんかよりもよっぽど大きな存在なんだと。
>自分が気づいているんだ。キョンが気づけないはずはないからな。
キョン「……」
>キョンはじっと空を眺めている。
キョン「……なあ、番長」
>なんだろう。
キョン「本当に、俺と歳1つしか違わないのか?」
>老けて見えるのだろうか……。
キョン「違う違う。来年の今頃になっても番長みたいにはなれないだろうって思ってな。
 俺はまだまだガキみたいだ。それならガキはガキらしくあがいてみようって思う」
キョン「俺自身が納得できるまで、な」
キョン「ありがとな……番長に話してちょっとすっきりしたよ」
>自分のことが原因で悩んでいるのに、自分に話してしまうあたりもキョンらしくていいと思う。
キョン「はは、そうかい。負けないからな、番長」
>キョンは、すっきりと笑っている。
>また少しキョンと少し仲良くなれたようだ。
525:
キョン「そろそろいいだろ、行くか」
>行くってどこに?
キョン「決まってるだろ、部室さ」
>部室……?
……

――文芸部部室前。
コンコン
キョン「入っていいか?」
ハルヒ『ナイスタイミングよ、キョン!』
>中にはハルヒがいいるようだ。
キョン「さ、番長。ドアを開けて入ってくれ」
>……? とりあえず言われた通りに入ることにしよう。
ガチャ
パンパンパンパンッ!!
>!?
526:
ハルヒ「番長くん! SOS団入団おめでとうっ!」
みくる「おめでとうございますぅ?」
古泉「おめでとうございます」
キョン「おめでとさん」
>いったいこれは……?
ハルヒ「パーティよパーティ!」
ハルヒ「あたしずっと考えていたのよね。何かお返しできないかなって。
 番長くんから面白い話をあれだけもらっておいて
 この学校で面白いことなんて何にも起こらないんじゃ申し訳ないからね」
キョン「つまり僕たちから番長氏への恩返しをしたいわけです」
>特に何もしていないのだが……。
キョン「いいんだよ、素直に受け取っておけ。
 それに、ハルヒがただ単に騒ぎたいってだけでもあるだろうしな」
ハルヒ「ちょっとキョン、何言ってるの」
キョン「……ハルヒが、楽しそうな顔ねぇ」
>キョンはハルヒの顔をじっと見つめている。
ハルヒ「な、何よ急に見つめないでよ」
キョン「あ、ああ。すまん」
>……微笑ましい。
529:
ハルヒ「ご、ごほん。大変だったんだからね、番長くんに内緒で準備するの。
 感謝しなさい!」
>ああ、ありがとう。
>テーブルの上には、鍋一式が揃えられていた。
ハルヒ「みんなで楽しむにはちょっと早いかもしれないけどこれが一番いいと思ってね。
 それに、ここじゃろくな料理もできないし」
ハルヒ「でも、せめて出汁はあたしが作ったわ」
>おいしそうだ。
ハルヒ「はい、それじゃ席ついて、始めるわよ! 番長くんはここ座って」
>ハルヒの号令で鍋パーティが始まった。
……

>みんなと談笑しつつ鍋をすっかり食べきった。
>非常においしかったとハルヒに伝えた。
ハルヒ「ん、口に合ったならよかったわ」
古泉「非常に美味でした」
ハルヒ「ふっふっふ、これで終わりだと思ったら大間違いよ!」
530:
ハルヒ「みくるちゃん! あれだして!」
みくる「はぁい」
>みくるが冷蔵庫から、恭しく何かの箱を取り出した。
ハルヒ「さ、番長くん、開けていいわよ」
>箱を開けると……なんとイチゴの乗ったホールケーキだ!
>中央にはチョコレートで『welcome to SOS団!』と書かれている。
>それにこれは、砂糖菓子だろうか。SOS団員をかたどった可愛らしいミニチュア人形があった。
ハルヒ「午前中に、みくるちゃんと有希とあたしで作ったのよ」
みくる「がんばりましたぁ」
ハルヒ「その人形は、有希が作ってくれたの。
 ダメ元でできる? って聞いたらできるって言っていたから任せたんだけど」
ハルヒ「あたしとみくるちゃんがスポンジにクリームを塗ってる間に出来上がってたわ。
 意外な才能よね。ギターといい有希は手先が器用なのかしら」
>特に疑問に思っていることはないようだ……。
キョン「やれやれ……」
ハルヒ「さ、切り分けるわよ! みくるちゃん、紅茶かコーヒー用意してもらえる?
 あたしは紅茶ね」
みくる「はぁい」
533:
みくる「番長くんは何にしますか?」
>コーヒーを頼む。
みくる「はぁい」
ハルヒ「あら、コーヒー派?」
>堂島さん……叔父さんがよくコーヒーを淹れてくれたのでその名残だ。
ハルヒ「へぇ」
みくる「涼宮さん、紅茶です」
ハルヒ「ん、ありがと」
>ハルヒによって切り分けられたケーキが手元にやってきた。
>なかなか大きい。
ハルヒ「遠慮せずたっぷり食べてよね、番長くん」
>ありがとう。
みくる「はい、番長くん、コーヒーです」
>みくるもありがとう。
>さっそく食べてみよう。
>……! これはトロけるうまさだ!
ハルヒ「当然じゃないっ! SOS団の美少女3人が手ずから作ったケーキなんだから!」
534:
>自分たちの世界の美少女達の料理の腕を思い出して少し胃が痛くなった……。
……

>SOS団のみんなと楽しい時間を過ごした。
>みんなと少し、仲良くなれたようだ。
>それにしても、料理といい部室の装飾といい、時間がかかったのではないだろうか。
ハルヒ「午後の探索の時間全部これにあてたからね。
 本当は街の面白いところを紹介してあげたかったんだけど、思いつかないからパーティにしたの」
キョン「俺はハルヒの家までケーキ取りいかされたりして大変だったぜ……」
ハルヒ「雑用なんだから働いて当然でしょ?」
古泉「装飾は、番長氏が朝比奈さんや長門さんと出かけている間に全員でやったんですよ」
ハルヒ「それにしても、もし番長くんと探索班一緒になったらってドキドキしちゃったわ」
キョン「あのくじ引き無計画だったのか……」
ハルヒ「ま、何とかなったんだから問題ないでしょ」
>本当にありがとう。楽しい時間を過ごさせてもらっていると伝えた。
ハルヒ「番長くんは、素直に感情表現というか自分の感想いうわね。
 どこかのキョンとは大違い」
キョン「……キョンは、俺だけだと思うが」
ハルヒ「さ、これで番長くんも正式な団員よ!
 ってことで、連絡先交換しましょ、ケータイくらい持ってるわよね」
キョン「まだ正式な団員じゃなかったのか」
ハルヒ「試用期間よ試用期間」
>さっそく一樹が渡してくれた携帯が役に立ちそうだ。
536:
>みんなと連絡先を交換した。
ハルヒ「随分、シンプルな携帯使っているのね」
古泉「……」
ハルヒ「意外というか、もっと高校生っぽいもの持っていてもよさそうなのに。
 それに、真新しいし。番長くんが前の学校で友達いないってことはないわよね」
ハルヒ「何もしなくても人が寄ってきそうだもの」
古泉「……いささか、経費を削減しすぎましたか」
ハルヒ「うん? 何か言った古泉くん」
古泉「いえ、なんでもありません」
>一樹も少し困っているようだ。
>実は緊急の代用品であることを伝えた。
ハルヒ「そうなんだ」
>実は本来使っていた携帯が壊れてしまって、今はこれを使っている。
>これがそうだとみせた。
ハルヒ「見たことないデザインね、珍しいもの?」
>両親が海外に勤務しているので、海外産の携帯電話だと伝えた。
ハルヒ「なるほどねぇ……」
ハルヒ「ね、ちょっと見せてもらって構わない?」
>構わない。ハルヒに電話を渡した。
537:
>ハルヒは自分の携帯を操作しているようだ。
>キョンとみくるも隣から覗き込んでいる。
>一樹が寄ってきた。
古泉「フォローありがとうございます。少し安いものをお渡ししすぎましたね」
>いろいろしてくれているんだ。これくらい構わない。
古泉「しかし、いいのですか? いろいろのぞかれてしまいますよ?」
>やましいことは特にない。
ハルヒ「ふぅん、番長くんあまりメールはしないのね」
>基本的に要件は電話で済ませている。
ハルヒ「着信履歴覗いちゃおーっと」
キョン「番長、こんなこと言っているがいいのか?」
>ああ、構わない。
ハルヒ「えっと、なになに。
 里中千枝、一条康、花村陽介、久慈川りせ、天城雪子、海老原あい……」
みくる「女の子からの着信が多いですねぇ……」
キョン「やっぱり番長は敵だ」
>なぜか視線が痛い……。
538:
ハルヒ「そんなことないみたいよ。
 巽完二、白鐘直斗、長瀬大輔、小西尚紀、松永綾音、小沢結実……とこんな感じね」
古泉「半々といったところですね」
みくる「男女分け隔てなく仲良かったんですね」
キョン「そうか……悪かったな」
>直斗が女の子であることは黙っておいた方がいいだろう……。
ハルヒ「番長くんありがと。返すわね」
>ハルヒから携帯電話を受け取った。
ハルヒ「じゃあ、今日はこれくらいで解散にしましょ。片付けもしなくちゃいけないしね」
>外はすっかり夕暮れ時だ。
ハルヒ「……はあ。これだけいい夕日じゃ、明日も晴れそうね」
キョン「晴れることはいいことじゃないか」
ハルヒ「何言ってるのキョン。マヨナカテレビ試すんだから雨が降ってもらわなきゃ困るの!」
キョン「まだ言ってるのか……それにそもそもセキュリティをだな――」
ハルヒ「ふっふっふ。セキュリティの突破方法なら考えたわ」
キョン「なんだと……」
>! 本当だろうか。
539:
ハルヒ「そもそも、突破なんて大層なことじゃなかったのよ」
>どういうことだろう。
ハルヒ「あたしはまず、どうやって突破するかに当たって、
 セキュリティがどこに設置されているか調べたの」
ハルヒ「そしたら拍子抜けよ。どうやら引っ掛かると警備会社へ連絡が行くタイプのセキュリティシステムなんだけど。
 正面玄関、裏口、職員室前、各昇降口、事務室前、この部室棟正面口。これだけよ、これだけ。調べながら不安になっちゃったわ」
キョン「十分じゃないか」
ハルヒ「はあ、きっと教育委員会もキョンみたいな呑気な人たちなのね」
キョン「……そりゃどーも」
ハルヒ「いいかしら。監視カメラがあるならともかく、そんなもの北高にないことは分かっているわよね」
ハルヒ「正門を乗り越えても外にいる限り校舎の周りはフリーなの。
 こんな安っぽい侵入劇なんてみたことないわ」
>ハルヒはやれやれといった様子だ。
ハルヒ「そこまでは問題なく侵入できる。次に校舎に侵入するわけね。
 さっき言ったところにしか設置されていないってことは、それ以外のところから入ってもわからないってこと」
キョン「それは、そうだろうな」
ハルヒ「つまり、窓にちょっと細工して見回りの後に開けられるようにすれば、簡単に侵入できちゃうわけ」
ハルヒ「つまりザルなのよ、北高のセキュリティは」
>ハルヒは心底呆れているようだ。
542:
キョン「で、その窓に細工とやらはどうするんだ」
ハルヒ「これも簡単よ。
 まず最後の見回りの時間になったら、事務員さんが校内の戸締りの確認と見回りをするわよね」
キョン「するだろうな」
ハルヒ「当然事務員さんが歩き回っているんだから、まだそのときはセキュリティはかかっていないわ」
ハルヒ「事務室は1階にある。それなら見回りは1階から行われるはずよね」
古泉「ええ、僕ならそうしますね」
ハルヒ「1階の見回りが終わった後で、外から窓でも叩いて事務員さんに声をかけるの。
 例えばそうね。『忘れ物をしたから校舎に入りたい』とかなんとか言ってね」
ハルヒ「昇降口を開けてもらって、校舎に入る」
キョン「おいおい、そのときに窓を開けろというんじゃないだろうな」
ハルヒ「そんなことムリに決まってるじゃない。
 ちゃんと生徒が出ていくかどうか、おかしなことをしないかの確認も含めて、
 事務員さんは教室までぴったりついてくるでしょ」
キョン「なら、どうするんだ」
ハルヒ「それを逆手に取るのよ。
 事務員さんがついていっている間にもう一人が校内に侵入して、
 既に見回りが終わった窓の鍵を開けておくの。事務室から一番遠い窓をね」
ハルヒ「そして、事務員さんが戻ってくる前に、侵入した方は出ておく」
ハルヒ「これで、終わりよ。あとは入るだけ」
キョン「そんなに簡単に行くもんかね……」
ハルヒ「見回りが終わった後なら、バレる確率はぐっと下がるわ。
  何せ往復して2度確認してるんだからね。まさか開いてるとは思わないわよ」
>ハルヒの眼は自信と確信に満ち溢れている。
キョン「やれやれ、なら俺は雨の日が来ないことを祈るとするよ」
543:
ハルヒ「ま、あとは雨の日に決行するだけね」
ハルヒ「じゃあ、今はこれをぱぱっと片しちゃいましょ」
ハルヒ「あ、みくるちゃん。番長くんにもらったこのカード。
 そこのホワイトボードのところにでも磁石で貼っておいて」
みくる「わかりましたぁ」
>ハルヒは本気でマヨナカテレビを試してみるようだ。
>何も起こらなければいいが……。
>その日は片付けをして解散した。
……

――自室。
>1日中歩き回っていたので、疲れている……。
>寝てしまおうか……。
pipipipi
>メールだ。
ハルヒ『今日はご苦労さま! 楽しんでもらえたようでなにより!
 期待の新人なんだから、これからもがんばってよね!』
>ハルヒは団員として認めてくれているようだ。改めて今日のお礼のメールを打っておいた。
544:
pipipipi
>またもメールだ。
みくる『今日はお疲れ様でした。楽しんでもらえたかな?
 また明日学校で。身体を十分休めてください、それではおやすみなさい』
>みくるはどうやら気遣ってくれているようだ。気遣ってくれてありがとうと返信をしておいた。
pipipipi
>今度はキョンからだ。
キョン『今日はすまんかった。でも話を聞いてくれて随分すっきりした。
 ありがとな』
>キョンから感謝されているようだ。気にするなと返信をした。
>……明日に備えて今日はもう寝よう。
……

――翌日、2年某教室。
みくる「おはようございます、番長くん」
>おはよう。
みくる「よく眠れましたか?」
>ああ、心地よい疲れでよく眠ることができたと伝えた。
みくる「ふふ、それならよかったです」
555:
鶴屋「おっはよー、番長くんみっくるー!」
みくる「あ、鶴屋さん。おはようございます」
鶴屋「昨日パーティやったんだってねっ!」
みくる「あれぇ? 何で知ってるんですか?」
鶴屋「登校途中にキョンくんに会ってねっ。雑談がてら教えてもらったにょろ」
>朝から鶴屋さんはハイテンションだ。
鶴屋「そーんな楽しそうな集まりなら、あたしも呼んでもらいたかったっさ!」
みくる「あっ、ご、ごめんなさい」
鶴屋「にゃははっ、冗談冗談っ! 番長くんも楽しめたっかなっ?」
>ああ。楽しい時間だった。
鶴屋「そっかそっか、それならよかったよっ!」
>鶴屋さんは嬉しそうだ。
鶴屋「うーん、でもそんなに楽しそうな集まりなら、やっぱり呼んでほしかったなっ。
 ハルにゃんの鍋もケーキもあったって聞いたけど、おいしそうっ!」
>鶴屋さんは天真爛漫に笑っている。
>いつか鶴屋さんとも一緒に食事をしてみたい。楽しそうだ
鶴屋「おっ、言ったな番長くんっ! じゃあ、今日の昼休みはあたしと一緒にお昼御飯だっ!」
みくる「あ、じゃあ、あたしも一緒にお邪魔していいかな」
>昼休みは、鶴屋さんとみくると昼食をとることになった。
556:
――昼休み、中庭。
>鶴屋さんとみくると中庭のベンチにやってきた。
>所々でレジャーシートなどを引いて昼食をとっている生徒も散見できる。
鶴屋「らっきーらっきー、ベンチ空いてるねっ」
鶴屋「番長くんは、ここだねっ」
>鶴屋さんはベンチの一番端に座り、
 その隣をポンポンと叩いて自分にそこに座るように促している。
鶴屋「はいはいっ、座った座ったっ」
>大人しく鶴屋さんの隣に座ることにした。
みくる「あ、じゃあ、あたしはここに」
>……鶴屋さんとみくるに挟まれる形になってしまった。
>3人とも弁当だ。
>今日は……黄金の茶巾寿司、ほうれん草の胡麻和え、鶏の竜田揚げを弁当として持ってきた。
鶴屋「番長くんのお家は、ずいぶんシブイお弁当なんだねぇ……」
>鶴屋さんは、まじまじと自分の弁当を眺めている。
>これは自分が作ったと伝えた。
557:
鶴屋「へぇっ! すっごいねぇっ!」
みくる「あ、ごめんなさい、ちょっと飲み物買ってきますね」
>みくるは席を外して自販機へ向かったようだ。
鶴屋「みっくるー! 急ぐと転ぶよー!」
みくる「あうっ!」
>……鶴屋さんの予言通り、転んだようだ。
鶴屋「やー、それにしても番長くんお料理もできるんだっ」
>たしなむ程度だ。
鶴屋「ふぅん……」
>鶴屋さんはじっと、こちらを見つめてくる。
>何か顔についているだろうか……。
鶴屋「あ、ごめんごめんっ。そういうんじゃないっさ!」
鶴屋「ただね……」
鶴屋「番長くん、ただモノじゃないなぁって。みくると似たような感じを受けるんだなっ」
>……!
558:
鶴屋「お、その顔は図星かなっ」
>いったいどういう……?
鶴屋「にゃははっ、そんな顔してちゃカッコイイお顔が台無しっさ!
 別に何するとか、誰かなに話すとかもするつもりはないからっ」
>鶴屋さんはけらけらと無邪気に笑っている。
鶴屋「もっと言えば、SOS団のみんなからは、ハルにゃんからも、一樹くんからも、
 長門っちからも似たような感じをビシビシ受けてるからねっ」
鶴屋「なーんも感じないのはキョンくんくらいっさ」
鶴屋「と言っても、なんか違うって程度で何が違うとかよくわかんないんだけどねっ!」
>……すごいな、鶴屋さんは。
鶴屋「あ、でも、こういうの話を、なんか違うって感じてる人にしたのって番長くんが初めてだっ。
 言っても大丈夫っていうか、何話しても大丈夫っていうか」
鶴屋「番長くんなら受け入れてくれる感じするからかなっ」
>そうか。多分だが、他の人には話さない方がいいと思う。きっと困った顔をする。
鶴屋「大丈夫大丈夫っ。もともと話す気がなかったけど、番長くんの顔見てたらこう、いいかなって!
 きっと話すとしてもキョンくんくらいなもんっさ」
>そうしてやってくれ。
560:
みくる「おまたせしましたぁ」
>みくるが手にお茶を持って戻ってきた。
鶴屋「おっそいよみくるー! さ、食べよ食べよっ」
>鶴屋さんは何事もなかったかのようにお弁当に向き直っていた。
みくる「いただきます」
>3人で手を合わせて食べ始めた。
みくる「番長くんが作ったんですか、これ」
>ああ。
鶴屋「あれっ、みくる、番長くんが料理するって知ってるんだねっ」
みくる「う、うん」
鶴屋「どれどれ、どんな腕前か見せてもらうよっ!」
>鶴屋さんは横からほうれん草のゴマ和えをつまんできた。
鶴屋「んー! おいしいっ! きっといいお嫁さんになるよ、番長くん」
>おいしいと言ってもらえれば光栄だ。
みくる「番長くん、やっぱりお料理上手ですね」
>みくるもよければどうだ?
562:
みくる「あ、ありがとうございます」
鶴屋「ま、あたしのも遠慮なく食べてよっ! おかずの交換会だっ!」
みくる「あ、そういうことでしたらあたしのもどうぞ」
>3人でたのしく昼食をとった。
>2人とまた少し仲良くなれたようだ。
……

――放課後、文芸部部室。
みくる「こんにちはぁ」
>部室には有希が読書をしているだけのようだ。
長門「……」
>有希はこちらは一瞥するとまた読書に戻ってしまった。
みくる「んしょ」
>……着替えるようだ。また外に出ていよう。
……

>再び部室に戻ってきたときには、みくるはエプロンドレスのメイド姿に様変わりしていた。
みくる「お茶、いれますね」
>ありがとう。
563:
>ページをめくる音と、こぽこぽという音共に緑茶の芳香が部屋に充満してきた。
>有希が、部室の隅で読書をし、みくるがエプロンドレスでお茶を淹れている。
>……なじみの光景となりつつあるが、よくない兆候だ。
>元の世界へ帰る意識が薄れていくということに繋がるかもしれない。
>この世界へ迷い込んでからもう1週間になる。
>いまだに帰還のメドは立っていない……。
>ちゃんと帰るという意思を持たなければ。
>しかし、考えたところで手がかりは何もない……。
みくる「はい、お茶です。どうしたんですか? 難しい顔をして。
 あ、長門さん、こちらにお茶置いておきますね」
長門「わかった」
みくる「……! はい」
>みくるがお茶を置きながら、自分の正面へ座る。
みくる「それで、どうしたんですか?」
>どうやったら帰ることができるのか考えていたと伝えた。
みくる「そっか、そうですよね……」
564:
みくる「そっか、番長くん、いつか帰っちゃうんですよね……」
>それはみくるも同じことだろう?
みくる「うん、そうですけど……少なくともあたしが北高を卒業するまでは
 みんなここにいると思っていて」
みくる「それに、番長くん、すっかりこっちの世界に馴染んでいるから、
 すぐ近くに別れがあるんだってこと忘れちゃってました」
みくる「もし番長くんが帰っちゃったら、って考えると今から寂しくなっちゃいますね」
みくる「ふふ、そんなこと言われても困っちゃいますよね。忘れてください」
>そう言いながらクピクピと自分で入れたお茶を飲んでいた。
>ただ、いつ帰ることができるか全く見当がついていない。
>もしかしたらみくるよりも長く、こちらにいることになるかもしれない。
みくる「そう、なんですかぁ……」
長門「……」
>みくるは、どんな表情をしていいかわからないようだ。
>そう。いつ帰ることができるかわからないのだ……。
565:
みくる「……もし、ですよ? もし今すぐ帰ることができるなら帰りますか?」
>……どういう意味だろう。
みくる「ふふ、ちょっと意地悪な質問です」
みくる「あ、もちろん。今すぐ帰りたいと思っていても、止めません。
 番長くんには番長くんの世界がある。帰りたいと思うのは当然です」
みくる「でも、今すぐ帰りたいって思っていないのなら。まだこの世界で楽しんでいたいというのなら。
 少しでも番長くんが、ここで快適に過ごせるように支えます」
みくる「それに……もっと番長くんと思い出を作っておきたいですから」
みくる「別れのときに、後悔しないように」
みくる「それはきっと、みんなもおもっていると思います」
みくる「ね、長門さん」
>本から目をあげ、有希はこちらを見つめてくる。
長門「わたしも同意する」
>それだけ言うと、また読書に戻ってしまったようだ。
>今すぐ戻れたら、か。どうなのだろう……。
ガチャッ
キョン「うぃっす」
古泉「こんにちは」
566:
みくる「あ、こんにちはぁ」
>みくるはそう言って、2人のお茶を淹れるために席を立ってしまった。
>質問の回答は、保留になってしまったようだ。
>八十稲羽にいたころの面々が思い浮かぶ。
>しかし、同時にSOS団の面々の顔も浮かぶ。
>……今は考えても仕方がない。
キョン「ハルヒのやつは、掃除当番だからもうしばらくしたら来ると思うぞ」
古泉「では一局いかがですか?」
キョン「すまんが、オセロくらい単純なものだと助かる」
古泉「それでも構いませんが……番長氏もいることです、ポーカーなど如何でしょう?」
キョン「俺は構わんが……番長はどうだ?」
>それで構わない。
古泉「では、ルールはテキサスホールデムポーカーに準拠しましょう」
キョン「ビリは1位のやつにジュースおごりな」
古泉「ええ、いいですよ。それくらいの張り合いがないとおもしろくないですものね」
>負けるわけにはいかない……!
……

>一樹たちとポーカーで楽しんだ。
567:
古泉「ふう、僕の負けですね」
>一樹は、それほど強くないようだ。
古泉「下手の横好きというやつですよ。
 こういうボードゲームに関してはだいたいどれも好きです」
>反対にキョンは激運の持ち主のようだ。
キョン「何故かしらんが古泉との勝負には負ける気がしないんでね」
>2番手に甘んじてしまった……。
古泉「まあ、こういうのは運ですから」
キョン「へっ、こういうゲームでなら番長にも勝てるわけだ」
>キョンは得意げだ。
ガチャッ
ハルヒ「待たせたわねっ! 今日は反省会よ、反省会!」
>ハルヒは来た早々、そう高らかに今日の活動内容を宣言した。
570:
キョン「反省会?」
ハルヒ「そうよ、反省会!
 昨日は成功したからいいものの、いつSOS団に『サプライズをしてほしい』
 なんて依頼が来てもおかしくはないわ!」
ハルヒ「だからこそ、昨日の至らなかった点を次への糧にするのよ!」
キョン「……そもそもそんな依頼が来るかどうかってのを議論すべきじゃないのかね」
ハルヒ「来なくてもよ。このSOS団のメンバーで余興のひとつもできないでどうするの!」
ハルヒ「番長くんも気づいた点があったらバシバシ言ってちょうだい」
>わかった。
ハルヒ「ん! 余計な遠慮はいらないわ! 率直に素直に言ってよね」
ハルヒ「みくるちゃん、書記っ!」
みくる「はぁい」
>みくるはホワイトボードに書かれたあった文字を消して
 新たに「反省会」とまるい文字で書きだした。
ハルヒ「はい、何かある人!」
>昨日のことを思い返してみる……。
ハルヒ「何かあれば忌憚なく言っていいわよ」
572:
古泉「では、よろしいでしょうか」
ハルヒ「はい、古泉くん!」
古泉「あえて進言するのでしたら、当日の班分けでしょうか」
>みくるは「古泉くん」と書いてその下に発言を書き取っている。
古泉「あのときは涼宮さんと番長氏が、偶然別れたのでよかったですが、
 もし組分けされてしまっていたら、作業は困難を極めていたかもしれません」
ハルヒ「そうね、あたしもそこは反省材料だと思っていたわ。
 ちゃんと、次からはそこまで考えて計画しないとね」
キョン「次もサプライズパーテイするつもりか……」
古泉「僕からは以上です」
ハルヒ「ありがと古泉くん。他の人は何かある?」
ハルヒ「有希とかなにかある?」
長門「楽しかった」
ハルヒ「……」
長門「……」
>妙な沈黙が生まれてしまった。
キョン「……あー、それだけか?」
長門「そう」
ハルヒ「ま、楽しんでもらえたのならそれでいいわ。じゃあ、次、何かある人」
574:
>みくるは有希の発言も丁寧に書き取っているようだ。
みくる「あ、じゃあ、いいですかぁ?」
ハルヒ「そういう積極性は評価に値するわよっ」
みくる「番長くんを、みんなと離した時なんですけど……」
ハルヒ「みくるちゃんと有希だったわよね」
長門「そう」
みくる「そのときに、急にどこ行くかってなったら全然思い浮かばなくって」
みくる「待ち時間も番長くんに楽しんでもらえたらなぁって、思いました」
ハルヒ「そうね、そういう細かいところのケアも必要よね。
 余興は、細かいところまで行き届いてこそだわ」
ハルヒ「ありがと、みくるちゃん」
みくる「はぁい、んと」
>自分の発言も細かに書き取っているようだ。
ハルヒ「はい、次キョン」
キョン「な、俺かよ」
ハルヒ「そりゃそうよ、あとはアンタと番長くんなんだから」
575:
キョン「あー……そうだな。できる限り前日より前に俺らにも教えてもらえると助かる」
キョン「当日言われても、俺たちがまず驚くからな。ハルヒは別に俺らをサプライズしたいわけじゃないだろ?」
ハルヒ「当り前じゃない」
キョン「なら、朝比奈さんも言っていた通り、俺らも事前準備をしておいた方が
 余興としては完成度の高いものになると思うわけだ」
ハルヒ「……!」
キョン「……どうしたんだ、そんな面食らった顔して」
ハルヒ「キョンからそんなまともな意見が出てくるとは思わなかったわ」
キョン「ま、一団員の意見として受け取っておいてくれ」
>みくるは同じように書き取っている。
ハルヒ「で、最後なんだけど、番長くん」
>なんだろうか。
ハルヒ「受けた側として、どうだったか聞かせてほしいの。
 今後にフィードバックしていくんだからお世辞なんかいらないわ」
>ハルヒはじっとこちらを見つめている。
578:
>率直でいいんだな?
ハルヒ「え、ええ」
>では言わせてもらう。率直な感――。
ハルヒ「ま、待って。ちょっと深呼吸するから。すぅーはー……」
キョン「……ガラでもない」
ハルヒ「うっさいキョン。い、いいわ。言ってちょうだい」
>率直な感想を言わせてもらえれば。
ハルヒ「(ゴクリ……)」
>すごく楽しかったし、嬉しかった。
ハルヒ「! ほ、本当かしら?」
>ああ。何かしてくれるという行為はそれだけで嬉しいものだと伝えた。
>それに、お世辞でもなんでもなく、料理はおいしかったし、終始楽しく過ごせた。
>特に料理がおいしいことは重要だ。ああ、必須事項だ。
キョン「……何か料理で嫌なことがあったのか番長は」
ハルヒ「そ、そう」
>ハルヒはまんざらでもなさそうだ。
>ただ一つ言うとするならば。
ハルヒ「うん?」
>有希はともかく、みくるは確かにどこへ行くか困っていたようだ。
ハルヒ「……なるほどね」
583:
>自分がいえることはこれくらいだと伝えた。
ハルヒ「他にない? キョンが余興やるべきだったとかなんとか」
キョン「何で俺ピンポイントなんだよ」
>あればより楽しかったかもしれないが、十分楽しかった。
>ちらりとホワイトボードを見るとみくるは「番長くん、楽しかった。キョンくん余興」とかき取っている。
ハルヒ「ふんふん、参考意見にさせてもらうわ」
キョン「俺にやらせる気だろう。絶対なにかやらせる気だろう」
ハルヒ「今決めたわ。来年のクリスマスにトナカイのかぶりものつけて一発芸やってもらうからね」
キョン「……おい」
古泉「よかったではないですか」
>頑張れ。
キョン「お前ら他人事だと思ってな……」
ハルヒ「ま、キョンのことはどうでもいいわ」
ハルヒ「そうね……総括としては事前準備をしっかりするべき、ってところかしらね」
キョン「ああ、そうだな。ハルヒの頭の中で完結していても構わんが、それをアウトプットしてくれ」
ハルヒ「そうね、団員からの貴重な意見だからこれからに活かしていきましょ」
>ハルヒは満足そうだ。
584:
ハルヒ「じゃあ、反省会はこれで終わりでいいわ、あたしはちょっと作業するから」
ハルヒ「みくるちゃんもありがとうね」
みくる「はぁい。お茶のおかわりご用意しますね」
ハルヒ「ん、ありがと」
>そういって、団長席に座り、何か書き始めたようだ。
キョン「やれやれ」
>……?
キョン「ああ、終わりだよ。何しててもいいぞ」
>そうなのか?
キョン「ハルヒもあんなんだからな」
>ハルヒは集中していて、こちらの会話も気にしていないようだ。
キョン「ま、帰るのは長門が本を閉じたらだな。
 それがSOS団の決まりってわけじゃないんだが習わしみたいなもんだ」
>なるほど。
>有希の読書はまだ終わりそうにない。
古泉「では、また1戦いかがですか? 負けっぱなしというのも性に合わないので」
キョン「ああ、いいぜ」
585:
>キョンと一樹はポーカーをやるようだ。
>有希は読書をしている。
>みくるは、お茶の準備をしている。
>ハルヒは何やら書きまとめている。
>特に皆何かをしているわけではないが、心が安らぐ空間だ。
>だが、いずれここから離れなければならない日が必ず来る。
キョン「番長もやるか? ポーカー」
>どうしようか……。
古泉「……どうかなされました?」
>いや、少し校内を見て回ってきたいと伝えた。
キョン「うん?」
>少し、考え事をしたい。
古泉「……ええ、いいのではないですか? 歩きながらの方が捗るといいますし」
キョン「そうかい。……何かあったら言ってくれ。力不足かもしれんがな」
>ありがとう。
>荷物は置いたまま、部室から出ていった。
586:
――部室棟廊下。
>そろそろ、腰を据えて考えなければならない。
>どうすれば戻れるのだろう。
>気づいたら、あの場所にいた。
>何か直前に兆候があったのかもしれないが、どうしても思い出せない。記憶に霧がかかっているかのようだ。
>誰かに聞こうとしても、誰も答えられないだろう。
>唯一の共通点であるテレビの中の世界でさえも、手掛かりはない。
>せめて、イゴールやマーガレットに会えたら。ベルベットルームへ行けたら何か変わるかもしれない。
>だが、ベルベットルームへの扉は見つけることができない……。
>八方ふさがりとはよく言ったものだ。一体、どうすればいい……?
>時間だけが、過ぎていく……。
587:
――中庭。
>外の風は気持ちがいい。
>昼休みに昼食をとったベンチに座ることにした。
>……とりあえず現状整理をしてみたものの、帰還するためのヒントは得られそうになかった。
>風も太陽も、自分たちの世界と変わらないようだ。
>気持ちがいい。
>……このまま寝てしまいそうだ。
>……。
>……。
……

>ん……少し寝てしまっていたようだ。
>太陽もほとんど沈みかかっており、紺色の空と橙色の空が半分ずつ分かれていた。
>……しまった。荷物は部室に置いたままだ。
>みんなに迷惑をかけているかもしれない。急いで部室に戻ろう。
588:
ガチャッ
――文芸部部室。
ハルヒ「あ、戻ってきたわね」
>部室にはハルヒしかいないようだ。
ハルヒ「他のみんなは帰したわ。あんまり遅くなっても悪いしね」
>待っていてくれたのだろうか……すまない。
ハルヒ「いいのよ、こういうのも団長の仕事だしね」
ハルヒ「ところで、なにしてたの?」
>中庭のベンチでいつの間にか眠ってしまっていたことを伝えた。
ハルヒ「番長くんも疲れていたってところかしら。
 ……それはそうよね、まだ学校も3日目だもの。疲れない方がおかしいわ」
ハルヒ「すっかり馴染んでいたから、そんな気がしなかったのよね」
>ハルヒは何かを噛みしめるように頷いている。
ハルヒ「うん。じゃあ、帰りましょ」
>帰り支度をして、ハルヒと一緒に部室を出た。
>外はすっかり、暗くなっている。
589:
――帰り道。
>遅くまでやっていたであろう部活終わりの生徒がちらほらと下校している。
>そういえばハルヒと2人きりになるのは初めてだ。
ハルヒ「そうだったかしら」
>ああ。はじめて会ったときもキョンと2人だったし、その後はSOS団のみんなと一緒のときだけだ。
ハルヒ「……そうね。確かに2人きりになるのは初めてだわ」
ハルヒ「というか、キョン以外で2人きりって久しぶりかも」
>そうなのか?
ハルヒ「まあいつもみんなが周りにいるからね。
 2人きりって言っても、キョンが同じクラスだから不可抗力的になってるだけなんだけど」
>そう言いつつも、不満そうな顔はしていない。
>そういえば、改めてお礼を言おう。歓迎会ありがとう。
ハルヒ「いいのよ、団員のことを気遣うのは当然なんだから」
ハルヒ「でも番長くんももうちょっと早く来てくれれば、文化祭とか一緒に楽しめたのにそこは残念ね。
 番長くんがいればもっと映画にも広がりがでたんだけど」
ハルヒ「例えば、異世界からやってきたいろんなパワーを使い分ける超助っ人キャラとかね」
>……思わずハルヒを見つめてしまった。
590:
ハルヒ「ん、どしたの? 顔に何かついてる?」
>いや、そういうことじゃない。どんな映画なのだろうと思っただけだと伝えた。
ハルヒ「そっか、そうよね。まだ見てなかったわよね。
 明日にでも見せてあげるから安心して」
ハルヒ「超監督涼宮ハルヒさまの処女作なんだから、見ておいて損はないわよ」
>自信満々に言い切った。
ハルヒ「文化祭当日は満員御礼だったわ。
 そのほとんどが男だったのはちょっと納得いかなかったけどね」
ハルヒ「ね、番長くんの高校はどんな文化祭だったの?」
>文化祭……合コン喫茶とミス?コンのことが頭をよぎる……。
ハルヒ「あははっ、なにそれ! 番長くんの女装ねぇ。
 みてみたいわ! 写真とかないの?」
>メイクを終えた後に千枝や雪子に面白がってとられた写真が
 メールで送りつけられていたはずだ。
>ハルヒにスケバンに扮した自分の写真を見せた。
ハルヒ「ぷっ、あははっ! なにこれっ! 全然似合ってないっ!
 な、なんでスケバンなのよっ! もっとクールな女装かと思ったわっ! あははっ!」
>ハルヒはおなかを抱えて笑っている……。
591:
ハルヒ「あー、でも女装か。考えなかったわ」
ハルヒ「キョンはともかく古泉くんはいい顔してるんだから、女装しても様になりそうね……」
>ハルヒは真剣に考えているようだ。
>すまん一樹。もし女装させられそうになったら自分の責任だろう……。
ハルヒ「女装もアイディアのひとつね、もらっておくわ」
>そういえば北高ではミスコンなどはなかったのだろうか。SOS団の女性団員が出れば入賞は固そうだが。
ハルヒ「さあ、あったのかしら。それにあったとしても出るつもりはないわ。
 ウチの団員は見世物なんかじゃないんだから。でもみくるちゃんならかなりいいところまでは行きそうよね」
>そこはかとない矛盾を感じるがそっとしておこう……。
ハルヒ「見世物って言っても、バンドは楽しかったわ。緊急の代役だったんだけど。
 有希ったらギターできるのよ。機会があれば今度見せてもらうといいわ、きっとビックリするから」
>そういえばそんなこと言っていた。
ハルヒ「お菓子作りもできるし、なんか不思議な子よね」
>ハルヒはしみじみと言っている。
ハルヒ「あ、お菓子で思い出したんだけど、番長くん料理上手なんですって?
 みくるちゃんが褒めていたわ、何でも自前のお弁当のおかずをもらったって」
>たしなむ程度だ。
592:
ハルヒ「一応あたしも料理には自信があるのよ」
>確かに鍋はおいしかったと伝えた。
ハルヒ「鍋なんかじゃ、料理の腕はわからないわよ」
ハルヒ「そうね、いつか番長くんと料理対決なんて企画も面白いかもしれないわ」
>ぜひそれはやってみたい。
ハルヒ「ふふ、番長くんなら乗ってくれると思ったわ」
ハルヒ「なら、その前哨戦として、明日昼食会なんてどうかしら」
ハルヒ「明日の昼は部室集合、それでそれぞれのお弁当の品評会をしてもらうの。
 あたしから団員に連絡しておくわよ」
>楽しそうだ、ぜひ受けてたとう。
ハルヒ「ん、番長くんはノリがいいわね!」
ハルヒ「見てなさいっ、完膚なきまでに叩きのめしてあげるから」
>望むところだ、かかってこい。
ハルヒ「ぷ、ふふ。なんてね。お互い、いいもの作ってきましょ」
>ああ。
ハルヒ「じゃあ、こうしちゃいられないわ! 買い出しに行かなくちゃ」
ハルヒ「また明日ね、番長くん。あたしも番長くんのお弁当楽しみにしておくからっ!」
>そういって、ハルヒは駆けていってしまった。
593:
>自分も一度帰って、買い物へ出かけよう。
……

――マンション前。
古泉「お帰りなさいませ、番長氏」
>こんなところでどうしたのだろう。
古泉「番長氏の帰りを待っていたのですよ」
>自分の?
古泉「ええ。何か思いつめていた顔をしていらっしゃりましたから」
>そうか。心配かけた。
古泉「僕でよければお話を聞きますが」
>どうやったら帰れるのだろうと漠然と考えていただけだから大丈夫だと伝えた。
古泉「そうですか……ゆっくりとはいかないかもしれませんが探していきましょう。
 せめて番長氏がここにいる間は不自由させないつもりですから」
>……どうして一樹は、そこまでしてくれるのだろう。
古泉「特に困っている方を助けるのに理由はないですよ」
古泉「強いて言うならそうですね。
 僕があなたを気に入っているからだということではダメでしょうか」
>……。
595:
古泉「あなたが来てからは涼宮さんは今まで以上に楽しそうです」
>そうか。それで一樹の負担が減るのなら、いいことだ。
古泉「それだけではありません、森さんも言っておられましたが、あなたと話すことは楽しいのです。
 そしてそれは僕も例外ではない」
古泉「僕があなたを気にかけるのは、それだけです。他意はありません」
>……いつか一樹にも恩返しをしないといけないな。
古泉「ふふ、なら、待っていますよ。期待しておきましょう」
古泉「しかし、部室を出ていったときからすると多少顔が晴れ晴れとしていますね。
 何かありましたか?」
>明日の昼にハルヒと弁当対決をすることになったと伝えた。
古泉「それは、素晴らしいですね。SOS団内でも1、2を争うお二人のお弁当ですか」
>すぐにハルヒから連絡が来ると思うが、一樹も楽しみにしていてくれ。
古泉「ええ。それはもう」
>この後その弁当の買い出しに行くついでに夕飯の買い出しにもいくが、
 今日も一緒に夕飯はどうだろう。
古泉「断る理由がありません。僕も荷物を持つのを手伝いますよ」
>ありがたい。一樹と一緒にスーパーへ買い出しに行くことにした。
607:
――スーパー。
古泉「番長氏、夕飯はともかくとして、持って行くものは決めておられるのですか?」
>まだ決めていないと伝えた。
古泉「番長氏は、何を作ってもよいとは思いますが、学校へ持参する弁当となると話は別ですね。
 汁物は厳しいでしょうし……」
>安心しろ。
古泉「?」
>自分は肉じゃがからカレー、ビシソワーズまで弁当にする男だ。
古泉「……! さすがですね。返す言葉もありません」
>しかし、対決となると、考えなければなるまい。
古泉「涼宮さんは、こういうイベントごとには全力で力を出してくるでしょうね」
>品評会と言っていた。できればみんなで楽しめるものが望ましいが……。
古泉「ですが気負う必要はないと思いますよ」
古泉「いつもの番長氏の料理をだせば、それで十分かと思います」
>そうか……。
>ありがとう一樹。
古泉「いえ。お力になれたのでしたら幸いです」
609:
>――にしようと思う。
古泉「ふむ、意外というか、なるほど。面白いかもしれません」
>もちろん付け合せは作るが、メインはこれで行こうと思う。
古泉「番長氏がそれで行くというのでしたらいいのではないでしょうか」
>では、あとは夕飯用の材料を買って帰ろう。
古泉「ええ」
……

>一樹と夕食を楽しんだ。
古泉「大変に美味でした。何かお手伝いすることがあればしますが」
>大丈夫だ。
古泉「そうですか。では、僕はこれで失礼します。明日楽しみにしておりますよ」
>一樹は帰っていったようだ。
>さあ、明日の仕込みをしよう。
>楽しんでもらえるように、頑張ろう。
610:
……

――翌日、2年某教室、昼休み。
>さあ、部室へ行こう。
みくる「行きますか?」
鶴屋「ふっふっふー」
>どうしたんだろう。
鶴屋「今から番長くんがしようとしていることを当ててみよっか」
鶴屋「ずばりっ、今からお弁当対決だねっ?」
>みくるから、聞いたのだろうか……。
鶴屋「にゃははっ、全く驚かないんだねっ」
鶴屋「でもみくるから聞いたってのはハズレっ。
 あたしも御呼ばれしているんっさ」
>鶴屋さんも?
鶴屋「そそっ! あたしも審査員のひとりってわけっ!
 楽しみにしてるからねっ!」
みくる「ふふ、あたしも楽しみです」
611:
――文芸部部室。
ハルヒ「来たわねっ、番長くん」
キョン「よ」
古泉「お待ちしておりました」
長門「……」
>1年達は全員集合しているようだ。
>机の上にはすでに、重箱の1段目ほどもある大きめの弁当箱が置かれていた。
鶴屋「やーやーみなさんっ!」
みくる「こんにちはぁ」
ハルヒ「さあ、番長くんっ! お弁当を出してちょうだい!」
>ハルヒにも負けず劣らずの大きさの包みを出した。
ハルヒ「……!」
キョン「……一応俺は弁当持ってきているんだがな」
古泉「僕はこちらを期待して持ってきておりませんので、ご安心ください」
みくる「あ、あたしも一口貰う程度なのかなって思って、持ってきちゃいましたぁ」
616:
キョン「まあ、長門がいるから大丈夫だろう」
長門「任せて」
ハルヒ「有希を残飯ががりみたいに扱わないのっ」
キョン「す、すまん」
ハルヒ「いいわ、その減らず口も食べてからにしてもらいましょ」
>ああ。
ハルヒ「いい、みんな。見た目もそうだけどなによりも味だからね!
 いかにおいしく感じられたかよ!」
古泉「了解しました」
みくる「はぁい」
鶴屋「りょーかいっ!」
キョン「わかったよ」
ハルヒ「じゃあ、行くわよ、番長くん、一斉に開けるわよ」
>ああ。
ハルヒ「せぇーの、オープン!」
パカッ
古泉「おや」
鶴屋「あははっ、すっごいねぇ、2人とも!」
みくる「あれ?」
キョン「これは」
ハルヒ「これって……!」
>……!
617:
>こちらが用意したのは、おにぎりだ。
>みんなで楽しく食べられるものを考えた結果これに行きついた。
>そしてハルヒが用意したのは――。
ハルヒ「番長くんも、おにぎりにしたの?」
>なんと、ハルヒも一緒のものを作ってきていた。
キョン「示し合わせたのか?」
ハルヒ「そんなわけないじゃない」
>完全に偶然だ。
>2つの弁当箱には、いくつかの付け合わせと一緒に、
 おにぎりが所狭しと並べられていた。
古泉「付け合せも一緒に作ってくるあたりも、共通しておられますね」
>ハルヒは完全に面食らっているようだ。
ハルヒ「……でもさすがに、中の具まで一緒ってことはないわよね」
>自分は天ムス、牛しぐれ、野沢菜とじゃこ、梅の4種類だ。
>付け合せには出し巻き卵と浅漬けの漬物だ。
ハルヒ「なるほどね。
 あたしは、肉巻きおにぎり、豚の角煮、焼きたらこ、シャケね」
ハルヒ「付け合せは、卵焼きとウィンナー、それとたくあんね」
古泉「ふふ、具こそ違えど、傾向はそっくりですね」
621:
みくる「そういえば、そうですねぇ」
キョン「ハルヒの方が若干濃い味の具材が多目か」
ハルヒ「男子がいっぱい食べると思ってね」
ハルヒ「でもまさか、番長くんまでこれで来るとは思わなかったわ……」
鶴屋「反対に番長くんはさっぱりと味の濃いものが半々だねっ!」
>女性陣と男性陣の比率を考えたらこうなったと伝えた。
ハルヒ「何で番長くんはおにぎりにしたの?」
>みんなで楽しく、を考えたらおにぎりが一番ふさわしい気がした。
>それに多彩な味を楽しませることができるのがおにぎりだ。
ハルヒ「……! 同じこと考えてたのね」
ハルヒ「でも勝負は別よ! さあ、みんな食べてちょうだい!」
>遠慮なく食べてくれ。
みくる「はぁい」
鶴屋「んじゃー、ハルにゃんのからいただこっかな!」
ハルヒ「忘れちゃダメよ、勝負なんだからね!」
622:
古泉「では、僕は番長氏の方からいただきます」
キョン「俺は、肉巻きおにぎりもらうかな」
長門「……」
>有希は座っていたところから一番近い自分のものをとったようだ。
みくる「あむっ」
ハルヒ「……」
>ハルヒも自分もかたずをのんで見守っている。
みくる「涼宮さん、すっごくおいしいです! これ!」
鶴屋「やっるね! 塩加減も、握り方も抜群だっ」
ハルヒ「よっし、まずは一歩リードね!」
古泉「こちらも素晴らしいですよ。
 手に持った時点ではしっかりと形作られているにもかかわらず、
 口に入れた瞬間にはふっくらとした食感と共に、ほろほろとほどけますね」
長門「おいしい」
>こちらも負けていない!
キョン「ん、料理に関しては、さすがの一言だな。うまいな、これ」
623:
ハルヒ「……あたしも、番長くんのいっこもらおっかな」
鶴屋「んー! 番長くんのもおいっしいね!」
>鶴屋さんは早々に2つ目に移っているようだ。
長門「……」
>有希も黙々と食べている。
ハルヒ「……!」
>どうだ?
ハルヒ「ホントおいしいわ……」
古泉「涼宮さんのおにぎりも大変おいしいですね」
>他の団員達も、2つ目に移っているようだ。
みくる「み、皆さん早いですねぇ……」
>ゆっくり食べればいい。
ハルヒ「そうよ、急ぐ必要はないんだから」
>自分もハルヒの作ったおにぎりをもらってみよう。
>……!
>確かにかなりおいしい。味付けも握り具合も抜群だ……!
625:
キョン「俺個人的には、この卵焼きがお気に入りだな」
古泉「ええ、僕もそう思います。おにぎりも甲乙つけがたいですが
 こちらの卵焼き、出し巻き卵はなお素晴らしいです」
キョン「ただ一つ気が付いちまったんだが……」
ハルヒ「なによ」
>言ってくれ。
キョン「いや、なんつーかな。確かにおにぎりに合うんだけどよ。
 番長の出し巻き卵は、ハルヒのおにぎりと一緒に食べたほうがうまいし、
 ハルヒの卵焼きは、番長のおにぎりと一緒に喰った方がうまいんだよ」
鶴屋「あ、それあたしも思ったっさ!
 ハルにゃんのおにぎりは塩味に寄ってるから甘めの番長くんのがあうし、
 番長くんのおにぎりは具にしっかり味がついてるから、この素朴なハルにゃんのが合うんだよねっ」
古泉「むぐ……確かに、そうですね。鶴屋さんのおっしゃったとおりです」
みくる「わぁ、ほんとですね」
ハルヒ「え」
>本当だ……付け合せを逆にした方が美味しい……。
古泉「ふむ、これは困りましたね」
>どうしたのだろう。
626:
古泉「いえ、今回の料理対決ですが……」
古泉「おにぎり自体はどれもおいしく甲乙つけがたいものですし。
 付け合せも含めて料理でしょうから、付け合せで判断しようとしたのですが、それも難しい。
 料理にあっていないわけではありませんが、入れ替えたほうがしっくりくる」
古泉「どちらにしようかと迷っていたわけです」
古泉「僕は許されるのであれば、お二人の合作が一番おいしかったと、投票したいところですね」
>そうか……。
みくる「あ、あたしもそれ賛成です」
ハルヒ「でも勝負は勝負よっ!」
キョン「おい、ハルヒ。そこまで意固地になってやることでもないだろう。
 どちらもうまかったで、いいじゃないか」
ハルヒ「勝負は読んで字の如く、引き分けはないのよっ!」
>有希はどうだ?
長門「どちらも、おいしい」
ハルヒ「有希まで……」
>どうしたのもか……。
628:
鶴屋「ね、ハルにゃん」
ハルヒ「ん、どうしたの」
鶴屋「判定基準って、いかに美味しく感じたか、だよねっ?」
ハルヒ「ええ、そうね」
鶴屋「それなら、やっぱりあたしも古泉くんの言うとおり、2人の合作が一番だと思うなっ!」
ハルヒ「でもっ」
鶴屋「きっとハルにゃんも番長くんも、どっちかが違うもの作ってきたら
 こんなにおいしくならなかったと思うんだっ」
鶴屋「2人がみんなのこと考えて、おにぎりってチョイスをして、
 みんなにおいしく食べてもらおうって、付け合せて作って」
鶴屋「みんなでわいわい言いながら食べてさっ。
 その相乗効果は計り知れないんじゃないっかなっ」
鶴屋「"いかにおいしく感じたか"に照らし合わせれば、2人とも負けで、2人とも勝ちってところっ。
 個人個人では、合作に負けてるし、合作ならそれぞれ作ったモノに勝っているのさっ!」
鶴屋「もちろん、引き分けじゃないにょろよ? ちゃんと"勝ち負け"で分けたんだからねっ」
鶴屋「これでどうっかなー?」
>鶴屋さんは屈託なく笑っている。
>自分はそれで構わないが……。
629:
ハルヒ「う、うーん、そうねぇ……」
キョン「それにな、ハルヒ」
ハルヒ「な、なによ」
キョン「引き下がれとは言わんが、お前がこのままだだをこねてたら負けると思うぞ」
ハルヒ「どうしてよ」
キョン「判定基準は"おいしく感じられた方"なんだろ?
 俺は食べる場の雰囲気ってのも大事だと思うんだがな」
ハルヒ「そ、それはそうだけど」
>ハルヒに視線が注がれる。
ハルヒ「う……」
ハルヒ「……わかった、わかったわよ」
ハルヒ「それで手打ちにしましょ」
鶴屋「おっけーおっけー! さっすがハルにゃんだねっ」
古泉「では、どちらも勝ち、どちらも負けということで」
みくる「な、なんだか疲れちゃいましたぁ」
ハルヒ「ごめんね、みくるちゃん」
キョン「やけに素直だな」
ハルヒ「確かに番長くんのおいしかったからね。
 正直負けたとも思ったもの」
>それはこちらも同じだ。ハルヒのおにぎりも相当においしかった。
ハルヒ「ふふ、やっぱりいずれ決着をつけないとね。それまで勝負はお預けよ」
>ああ。料理のいいライバルになれそうだ。
>がっしりと、ハルヒと固い握手をした。
>ハルヒとの間に絆の芽生えを感じる……。
>ハルヒと少し仲良くなれたようだ。
630:
ハルヒ「さ、あとは普通に楽しみましょ、番長くん。もらっていい?」
>自分もハルヒのものをいただこう。
ハルヒ「んー! 悔しいけどやっぱおいしいっ!」
キョン「やれやれ、鶴屋さんの屁理屈に助けられましたよ」
鶴屋「ひっどいなぁ、キョンくんってばっ。頭脳的プレーと言ってほしいねっ」
キョン「や、すんません」
鶴屋「なぁんてねっ! 冗談っさ!」
キョン「でも助けられたのは本当っす。ありがとうございました」
鶴屋「ほらほら、そんなことはいいからっ、無くなっちゃうよっ」
キョン「いや、俺は自分の弁当あるんでこれくらいにしておきます。
 名残惜しいですけど、せっかくつくてもらって残したらお袋に悪いですし」
鶴屋「うんうんっ! いい心がけだねっ!」
ハルヒ「ほうひょー、ひゃんとはべなさいひょねー」
キョン「ちゃんと食べなさいって言いたいことは分かったから、
 口に物を詰めて喋らんでいい」
古泉「では、彼の分は僕がいただきましょうか」
キョン「そうしてくれ」
長門「……」
>有希はずっと黙々と食べすすめていたようだ……。
640:
……

キーコーンカーンコーン……
鶴屋「ありゃ、昼休み終わっちゃうねっ」
>自分たちが持ってきた分はすっかりなくなっていた。
みくる「おいしかったです、ありがとうございました。涼宮さん、番長くん」
>ぽんっ、と手を合わせながらみくるは首をかしげている。
古泉「ええ、大変満足でした」
ハルヒ「はい、お粗末様。これだけきれいに食べてもらえれば、
 作ってきた甲斐があるってものね」
>そうだな。
鶴屋「じゃあ、今度は、おべんとじゃないバッチバチの料理対決だねっ!」
キョン「鶴屋さん……煽らないでやってください」
ハルヒ「当然でしょ、ね、番長くん?」
>ああ、それもいいが。
ハルヒ「いいけど?」
>ハルヒと本気で合作を作ってみたいと伝えた。
ハルヒ「……!」
642:
>ハルヒとならいきっといいものを作ることができる。
キョン「ああ、それはいいな」
古泉「お二人でしたら、素晴らしいものが出来上がりそうですね」
ハルヒ「そっか……合作ね……」
>何かハルヒは考え込んでいるようだ。
キョン「さ、今は教室戻るぞ。次の授業が始まっちまう」
鶴屋「じゃあ、みくる、番長くんもどろっか!」
みくる「はぁい」
古泉「久しぶりに満足のいく昼食でした」
>みんな満足そうだ……。
>みんなとまた少し仲良くなれたようだ……。
……

>1年生たちに別れを告げ、鶴屋さんとみくると一緒に教室へ戻ることにした。
646:
――放課後、文芸部部室。
ハルヒ「明後日よ!」
>ハルヒは、全員が集まるや否や高らかに宣言した。
キョン「何が明後日なんだ」
ハルヒ「雨よ、雨! 決まってるじゃない!」
キョン「ああ……」
ハルヒ「インターネットで調べたわ!」
キョン「調べるも何も、大手検索サイトに載ってるだけだろうに……」
ハルヒ「しかも、その日を逃したらしばらく夜まで続く雨は降らないわ」
キョン「本当に侵入する気か?」
ハルヒ「今更何を言ってるの」
古泉「いいではないですか。夜の学校、人けのない廊下、わくわくしませんか?」
キョン「せん。俺にホラー趣味はないんでね」
みくる「こ、怖そうですねぇ……」
古泉「夜の学校に忍び込むのも青春の1ページになると思いますよ」
キョン「そんな湿っぽい青春は勘弁してくれ」
647:
>しかし、マヨナカテレビは深夜0時でなければならない。
>家を抜けられるのだろうか?
ハルヒ「そうね……みんなは大丈夫かしら」
古泉「僕は問題ありません」
長門「問題ない」
ハルヒ「そういえば、有希は1人暮らしだったわね」
長門「そう」
みくる「だ、大丈夫ですけど、学校に入るのがちょ、ちょっと怖いです」
ハルヒ「そ、それならよかったわ」
キョン「何がいいんだ、何が」
ハルヒ「よし、これでみんな来られるわね!」
キョン「俺に確認は無しかよ……」
ハルヒ「キョンは、妹ちゃんに見つからないようにくること、いいわねっ」
キョン「そんな心配せんでも、深夜たいならもう寝てるだろうよ」
>キョンには妹がいるらしい……。
649:
キョン「ん、ああ」
>ふと、菜々子を思い出した。
キョン「なんだ、番長兄妹がいたのか?」
>いや、おじさんのところにいた従姉妹のことを思い出していたと伝えた。
>菜々子……元気にしているだろうか……。
ハルヒ「ま、そういうことだから、また雨の日に確認するからね!」
キョン「侵入がばれてオオゴトにならないことだけ祈っておかないとな……」
古泉ふふ、ヘタしたら僕たち停学かもしれませんからね」
キョン「いい笑顔でいうな」
みくる「え、えぇっ、そ、そうなんですかぁ……?」
ハルヒ「見つからなきゃいいのよ見つからなきゃ」
>なかなか危ない橋を渡るのが好きなようだ。
>キョンが有希に何か耳うちをしている……。
キョン「できる限り痕跡を消すこと頼んでいいか?」
長門「わかった」
>なにを話しているのだろうか……。
653:
キョン「ん、ああ。嫌なら嫌って言っていいんだぞって言ったんだけどな。
 やっぱり問題ないって返されちまったよ」
>そうか。
ハルヒ「いい、明後日ね」
ハルヒ「じゃあ、あたしはもう一度校内の見回りに行ってくるわ!
 警備の見落としがあったらマズイからね」
キョン「じゃあ、今日は解散かい?」
ハルヒ「何言ってるの。キョンは一緒についてくるっ」
キョン「なんで俺だけ……」
ハルヒ「みんなでぞろぞろと行ったら目立つでしょ?」
キョン「……だったら俺じゃなくてもいいだろうに。
 それに助手なら古泉や番長当たりの方が優秀だと思うぞ」
古泉「ふふ」
>以前一樹が言っていた、きっと『心にもないことを言うクセ』だろう……。
ハルヒ「そんなこと分かってるわよ。でも言ったでしょ、目立つって」
ハルヒ「古泉くんは顔広いから、いろんな人に知られているでしょうし、
 番長くんは見ての通りバッチリ目立つわ。それにみくるちゃんも可愛いから目立っちゃうでしょ」
キョン「……長門は?」
ハルヒ「確かに有希はかわいい顔してても、目立たないタイプだけど。
 でも有希は読書してるから邪魔しちゃ悪いじゃない」
ハルヒ「だから、一番暇そうで目立たないキョンが適任なのよ!
 あくまでこれは警備を潜り抜けるための調査なんだからね!」
>どうやらハルヒは大泥棒の気分のようだ。
654:
>ハルヒとキョンは、部室から出ていってしまった……。
古泉「さて、涼宮さんと彼が戻ってくるまでの間暇になってしまいましたね」
みくる「あ、お茶のおかわり今淹れますよ」
古泉「特にすることもありませんし、ボードゲームでもいかがですか?」
>ああ、せっかく覚えたのだからやってみたい。
>できれば、そうだな。4人でできるものがいい。
古泉「4人ですか?」
>ああ、せっかく4人いるんだ。もちろん将棋やチェスも構わないが、楽しくやれた方がいいだろう?
>もちろん、みくると有希がよければだが。
みくる「あ、あたしですか? ええ、いいですけど……」
パタン
長門「構わない」
みくる「あ、お茶です、どうぞ」
>ありがとう。
古泉「ありがとうございます。
 ふむ、4人でやりつつ運もある程度絡むようなものがいいですね」
>運?
古泉「ええ、効率重視のゲームでは長門さんに勝てる見込みはありませんから。
 この時代のスパコンすべて使っても勝てないですよ」
>なるほど。
655:
>ではどんなゲームがいいだろう。
古泉「シンプルなものの方がいいですね。
 朝比奈さんはルールから覚えなければなりませんから」
古泉「未来までつたわりつづけているゲームがあれば別ですが……」
みくる「え、えーと、この時代のボードゲームっていうと確かえっと。
 す、双六くらいならわかります……」
古泉「……なるほど。ではそれに近しいものから選びましょう」
>人生ゲームかモノポリーあたりが分かりやすいだろうか。
古泉「個人的には、モノポリーの方が戦略性があって好ましいですね」
みくる「ものぽりー? 独占?」
>簡単に言えば、双六をしながらゲーム内の資金を相手に使わせきった者が勝つゲームだ。
みくる「へぇぇ、なるほどぉ……」
古泉「シンプルなゲームですから一度やってみればわかるでしょう」
>有希もそれでいいか?
>……すでにルールブックを読んでいるようだ。
長門「構わない」
>ハルヒとキョンが戻ってくるまでモノポリーで遊ぶことにした。
656:
……

古泉「……というのが一連の流れです。よろしいでしょうか」
みくる「はぁい。難しいですねぇ……」
>大丈夫だ。すぐ慣れる。
>有希は大丈夫か?
長門「問題ない」
古泉「では、今回は僕がゲームマスターも兼任しますね。
 本来なら誰かひとりが破産してもゲームは続きますが、
 今回に限り誰かが破産したらその時点でゲーム終了としましょう。時間もありませんしね」
>ああ、それでいい。
古泉「では、始めましょう」
……

657:
みくる「あ、はい。この土地買いますね」
古泉「ふふ、なかなかいい買い物だと思いますよ」
>ここは……。
長門「わたしに100ドルの支払い」
古泉「あなたは反対に不調のようですね」
……

>なんと自分が破産してしまったようだ。
古泉「では、この時点の総資産で順位を決定しましょう。
 ……といっても集計する必要ありませんけどね」
>有希が強すぎた……。
長門「情報操作はしていない」
古泉「ええ、わかっていますよ。2番目は朝比奈さんですね」
みくる「え、えっ、2番なんですかぁ?」
古泉「ええ、そして僕が3番です」
>なぜか知らないが連続で有希の土地に止り続けてしまった……。
659:
>もう一度やろう。このままでは終われない。
古泉「ええ、いいですよ」
長門「構わない」
みくる「あ、はぁい。これ、やり方が分かると楽しいですね」
古泉「ふふ」
>どうした?
古泉「いえ、まさかこのメンバーでボードゲームを囲むとは思っていなかったもので」
>そうなのか?
古泉「ええ、ボードゲームをやるのは彼とだけでしたし、
 彼も彼で、あなたのようにみんなとやろうという提案はしてきませんでしたから」
古泉「もちろん彼なりに、長門さんの邪魔をしてはいけないなど考えもあってでしょうけどね」
古泉「では、次のゲームに移りましょうか。ゲームマスターとして、準備しましょう」
みくる「あ、じゃあそのあいだにお茶淹れますね」
>有希はこんなところでも強いな。
長門「そう」
>次は負けないからな。
長門「そう」
長門「でも、わたしも簡単には負けない」
>……! ああ!
660:
みくる「はい、みなさんお茶です」
古泉「ありがとうございます。とりあえずセッティングは終わりました」
みくる「それにしても、涼宮さんたち、戻ってきませんね」
>自分が早々に破産したため30分程度で終わったが、確かに戻ってきていない。
古泉「ふふ」
>一樹は意味ありげに笑っている……。
古泉「いえ、なんでもありませんよ。
 ですが、このことに関してはあまり深入りしない方がいいかと思います」
古泉「彼自身、涼宮さん自身の問題になるでしょうからね。
 首を突っ込むのは野暮というものですよ」
みくる「そうなんですか?」
長門「……」
>察しておこう……。
古泉「では、2戦目です。始めましょう」
……

661:
>今度は2位になることができた。
>しかし……。
古泉「また、長門さんが1位ですね」
長門「そう」
>有希が強すぎる……。
みくる「あ、あたしは3番なんですかね……?」
古泉「ええ、僕がビリですよ。
 番長氏と長門さんのマスになぜか延々と繰り返し止まってしまいましたね」
みくる「それにしても、戻ってきませんねぇ」
>1時間ほど経っただろうか。
>そろそろ日が落ちかけていた。
古泉「ふむ……」
バンッ!
>突然扉が開いた。
ハルヒ「おっまたせー! ごっめんね、待たせちゃった?」
キョン「悪いな」
古泉「噂をすれば何とやらですね」
662:
>やけに時間がかかったな。
ハルヒ「ふっふっふ、あたし気づいちゃったのよ」
キョン「気づいたのは俺だけどな……」
古泉「何をでしょうか」
ハルヒ「もし侵入に成功しても、視聴覚室に入れないってことよ!」
古泉「視聴覚室は施錠されていましたね」
ハルヒ「そう。もし侵入しても、職員室にセキュリティがかかっている以上
 鍵は持ち出せないわ」
みくる「あ、そうですね。じゃあ、どうするんですか?」
ハルヒ「ふっふっふ、そこでこれの出番よ!」
>ハルヒが出したのは鍵のようだ。
古泉「鍵、ですか」
ハルヒ「そう、合鍵っ! 本物のカギを借りて、合鍵を作りに行ってたのよ」
ハルヒ「鍵屋さんに行って、家の合鍵なんですけど、って言ったら簡単に作ってもらえたわ」
キョン「作りに行ったのは俺だがな」
ハルヒ「この頭脳プレーによって最後の扉も開かれたわっ!
 あとは時が来るのを待つだけよ」
663:
>オリジナルのカギは返したのか?
ハルヒ「ええ。これで証拠は何も残っていないわ!」
キョン「鍵屋の親父の指紋は残っていると思うがな」
ハルヒ「さ、この鍵が実際使えるかどうか試してみましょ」
みくる「視聴覚室にいくんですか?」
ハルヒ「そうよっ、じゃあみんないくわよっ!」
>ハルヒの号令で、部室を後にした。
……

――視聴覚室。
>作った合鍵は、しっかりと使えたようだ。
>有希は何もしていなかったのだろうか……。
長門「なにもしていない」
>なるほど。確かに使えるようだ。
キョン「使えなきゃ俺の800円が無駄になる」
古泉「入ってきたはいいんですけど、何かするんですか?」
664:
キョン「やることないなら戻ろうぜ」
ハルヒ「有希、入口の鍵かけておいてちょうだい。あとカーテンも」
長門「(コクッ)」
キョン「お、おい。何する気だ?」
ハルヒ「決まってるじゃない。上映会よ上映会」
>上映会?
ハルヒ「ほら、番長くん昨日いったでしょ? 『明日には見せてあげるからって』」
>確かに言っていた。
ハルヒ「あたしは約束を守る女だからねっ」
キョン「お前は見せびらかしたいだけだろう……」
>文化祭のときに作った映画のことだろうか。
みくる「ひぇっ! あ、あれを見せるんですかぁ……」
ハルヒ「そうね、それそれ。チラシにも少しのせておいたんだけど、覚えているかしら」
ハルヒ「なんとなんと、主演はみくるちゃんなの! 画は映えてるわよ!」
キョン「画だけはな……あのろくでもないシロモノを見せるのか……」
ハルヒ「ろくでもないって何よ。あたしの脚本に間違いはなかったわ」
古泉「それにあなたはいいではないですか。カメラ担当だったのですから」
>ここまでいわれる作品とは一体どんな作品なのだろう……。
665:
ハルヒ「じゃあ、準備して! キョン、スクリーン!」
キョン「はいよ」
みくる「ううううう……」
キョン「すみません、朝比奈さん」
ハルヒ「古泉くんは、これセットして、プロジェクターお願いね」
古泉「了解しました」
みくる「ば、番長くん! み、見ても嫌いにならないでくださいね!」
>鬼気迫るものを感じる。
>……ああ。分かった。
みくる「お、お願いしますぅ……!」
ハルヒ「有希はみくるちゃん大人しくさせといて!」
長門「わかった」
みくる「ひっ」
長門「座るべき」
みくる「あ、は、はいぃ……」ストン
長門「……」ストン
>有希とみくるは並んで座っている。
みくる「……」
長門「……」
>ただ座るように促しただけのようだ……。
667:
ハルヒ「さ、準備は整ったわ、始めるわよ」
>有希の隣にはハルヒが座った。
キョン「男どもは後ろで、みますかね」
>ハルヒ達の後ろの席に、キョンと一樹に挟まれるように座った。
キョン「番長に見せるための上映会だからな。一番いい席は譲ってやるぜ」
>ああ、ありがとう。
キョン「お、おう」
古泉「さあ、始まりますよ」
ジィー……
>プロジェクターの音が妙に大きく聞こえる……。
>SOS団のロゴマークが映し出された。
『み、ミ、みらくるッ、みっくるんるん、みんみんみらくるっみっくるんるん』
>朝比奈ミクルの冒険 Episode00のタイトル画面と共に
 みくるが歌っているであろうオリジナルソングが流れてきた。
みくる「あぅぅぅ……」
>後ろから見ても顔が真っ赤になっているであろうことが分かる。
キョン「温かい目で見てやってくれ……」
668:
『勇気を出して?♪』
>有希は衣装を見る限りはまり役だ。一樹は……そのままの人柄が役なのだろうか。
『オシャマナキューピーッド?♪』
>ここまでのOPを見る限り商店街の紹介映画なのだろうか……?
>しかし、いくら役とはいえバニーガールのまま商店街を闊歩するとは、
 みくるは自分以上の勇気の持ち主かもしれない。
『カモンレッツダンスベイビ?♪』
>鶴屋さんも出ているようだ。
『恋のマジカルみっくるんるん?ah?♪』
>なかなか衝撃的なオープニングだ……。
>溢れる伝達力で感想文が書けそうだ。
キョン「20分程度の映像作品だ。我慢してくれ」
ハルヒ「キョンうっさいわよ!」
>期待は膨らむばかりだ。
キョン「期待に添える映像作品であることを願ってるよ……」
670:
『彼女の名は、朝比奈ミクル――』
>キョンのナレーションで始まるようだ。
>キョンは非常に声色を作っているようだ……。
『未来から来た戦うウエイトレスなのである』
>衝撃的な設定だ。
『一玉半額サービスなのでぇーす!』
>演技というより、やけっぱちの絶叫に聞こえる……。
『ミクルちゃんせいがでるね』
『あはい、頑張ってます!』
>商店街の人に比べれば、みくるの演技は圧倒的にうまいようだ。
>みくるの胸揺れをとりたいがためだけのカットが続いている……。
>やはり商店街の紹介映画なのだろうか……。
>一樹が登場し、有希が登場していく。
『イツキは超能力者なのである』
『ユキは悪い魔法使いなのである、しかも宇宙人』
>またしても衝撃的な設定だ。
672:
『本作の演出方針を大体察していただければはなはだ幸いである』
>脚本にないオリジナルのナレーションだろう。キョンも苦労しているようだ……。
『イツキ君をあなたのおもじ通りにはさめしゃせせせぇん! あたしが守って見せまーしゅ!』
>全力で噛んでいるが、気にしないのか、脚本通りなのか。
>ミステリアスな作品だ。
『ミクルビーム!』
『カットカット! ちょっと有希――』
>監督まで登場してきた。
>メタ表現を批判する表現なのだろうか……。
キョン「あー、何を考えているかわからんから表情から察するが、
 そこまで深い意味はない」
>そうなのか……。
キョン「強いて言うならテープの都合だ」
>なるほど……。
>一樹と有希も物語に絡みだし、物語がおおきく動き出しそうだ。
673:
『それっぽいなんやかんやがあったあとに――』
>……大きく動きすぎて頭がついていっていないようだ。
『ふっふっふ』
>鶴屋さんの登場だ。残りの2人は……知らない男子だ。
キョン「あー、あの2人は俺のクラスメイトだ」
>なるほど。
>やけに空へのパンが多い。
『――物語は半分へ達する』
>半分……どのようにまとまるのだろう。
>ロケ場所はどこなのだろう。豪華な家だ。
ハルヒ「あ、これね、鶴屋さんの家なの。豪華よね」
『――鍵そのものに効力はない』
>なんだか急に一樹の演技がうまくなっているのは気のせいだろうか。
『さて、ストーリーを追う気も失せてきたと思うが――』
>この幼い女の子は誰なのだろう。
古泉「あれが、彼の妹さんですよ」
>菜々子をメインにした映画もいいかもしれない……戻ったら真面目に検討してみよう。
>有希がラブレターを入れたり、お弁当に誘っていたり、ある種レアなシーンだ。
>なかなか面白い。
674:
『やっとクライマックスである』
>クライマックスシーンをお知らせしてくれるとは親切な映画だ。
>VFXを駆使して戦闘シーンが演出されている。
『絶体絶命だ! どうなるミクル!』
>キョンのナレーションにも力がこもっている。終わりが近いのだろう。
『考えることは無かろう。その少年の意思を奪ってしまえばよい。
  ――バッ! シャベルナシャミセンッ!』
『今のは腹話術』
>有希がフォローしているということは、本当に喋っているのだろうか……。
……

『最後もパンアップかよ』
『この物語はフィクションであり――』
>エンドロールが流れ出した。
ハルヒ「どうだった? 番長くんっ!」
>ハルヒが感想を求めて爛漫の笑顔を向けている。
681:
>なんて答えればいいだろう。
キョン「率直な感想でいいんだぞ」
>アバンギャルドな作品で楽しめたと伝えた。
>特に配役は的確だ。
ハルヒ「うんうんっ。分かる人には分かるのよっ」
キョン「ムリに褒めなくていいんだぞ」
>そうか……では。
>以前の学校で演劇部に所属していたこともある自分からすれば、発声を指導したい。
キョン「そこかよ!?」
ハルヒ「あーそうよね、演技に関してはみんな素人だったもの。改善点はあるわよね」
>特に一樹にはスパルタで指導したい。
古泉「僕ですか」
>上手いときとのムラがありすぎると伝えた。
ハルヒ「くあー! やっぱり番長くんはもっと早めに来るべきだったのよっ」
ハルヒ「ミクルとユキ両方に言いよって、イツキに恋しているという自覚を持たせる異世界人役とかね!」
>昨日言っていたことと少し変わっている……。
キョン「……俺は何も言わんぞ」
古泉「おやおや」
長門「……」
みくる「えっ、えっ」
682:
ハルヒ「演劇部に入っていたなら、演技指導も頼みたかったし」
ハルヒ「でもこれで、次の文化祭が楽しみになったわ」
キョン「次も映画撮る気かよ!」
ハルヒ「さあ、まだ決めてないわ。でも新戦力が加わったSOS団にできないことはないのよっ!」
>ハルヒは意気込んでいる。
ハルヒ「ん、それじゃ戻りましょ」
古泉「ええ、長居して教諭に見つかったら合鍵をとられてしまうかもしれませんしね」
ハルヒ「はい、撤収作業!」
>ハルヒの掛け声と共に撤収作業が行われ、部室へと戻っていった。
……

――文芸部部室。
>ハルヒは、やることがあるといい、早々に部室を飛び出していってしまった。
キョン「ほとんど何もしてないにもかかわらず、なんだこの疲れは……
 番長も疲れたんじゃないのか? あんな映画みせられて……」
>なかなか楽しい映画だったと伝えた。
みくる「き、嫌いにならないでくださいね」
685:
>なるはずがない。
みくる「ほっ」
>しかし、みくるの影の言っていた気持ちも少しわかるかもしれない……。
みくる「あはは……」
古泉「朝比奈さんの影?」
>ああ、街での不思議探索の前日にな。
キョン「なんだ、古泉にも話していなかったのか」
>話す機会もなかったし、なにより。
みくる「あうぅ……」
>積極的に話すことでもないだろうと思って。
キョン「それはそうか」
古泉「なるほど」
古泉「朝比奈さんもご自身と向き合うことはお疲れになったことでしょう。
 ああ、もちろんお話にならなくて結構です。聞かれなくないことでしょうしね」
みくる「そう……ですね」
みくる「暴走させちゃいましたし……」
686:
古泉「暴走ですか」
>自分がついていながら不甲斐ない……。
キョン「ま、暴走しても長門の影ほど苦戦はしなかっただろ?」
>そんなことはない。短時間転移での攻撃は厄介だった。
キョン「たんじ……なんだって?」
長門「極めて近未来に転移することで消失出現を行っていた」
>ショートワープみたいなものだ。
>有希がいなければ勝てたか怪しかった。
キョン「そうなのか」
古泉「つまり、朝比奈さんの特性を映した攻撃をしてきたわけですか」
みくる「で、でもあたしそんなことできないですよ……?」
>影は、否定されることでより力を付けた存在になると伝えた。
古泉「なるほど……」
キョン「そういえば長門の影も情報操作だかなんだかしてきたな」
長門「そう」
687:
古泉「さて、影の話はこれくらいにしましょう」
キョン「そうだな、帰るか」
みくる「そうですね」
>各々帰り支度を始めた。
>……ふとした疑問なのだが、ハルヒの用事とはなんだろう。
キョン「さあな。家庭教師のバイトか家の飯の準備でもあるんだろうよ」
>そうなのか。
古泉「知りたいのでしたらお教えしましょうか?」
>……そうか、一樹の所属している機関からも観察対象なのだったな。
古泉「ええ。ですがプライベートにまで土足ではいることはしませんよ。
 我々は涼宮さんに万が一のことがあったら困るので、大まかな行動を追っているにすぎません」
>有希は……というより情報統合思念体は聞く必要もなく監視していそうだ。
長門「涼宮ハルヒは常に情報統合思念体により観察されている」
>だろうな……。
>ハルヒも知らないところで苦労人だ。
キョン「……まあ、知らぬが仏じゃないが知らせるなんて馬鹿な考えを持っていたらやめとけ。
 そんなことハルヒが知った日には、古泉が過労死することは請け合いだ」
>それぞれ事情があるんだろう。口出しするつもりはない。
>ただ、自分がハルヒの立場なら、と考えてしまっただけだ。
古泉「……」
長門「……」
みくる「……」
688:
>そんな顔をされると困る。
古泉「いえ、僕も影が出た身ですのでね。理解はできるのです。
 隠しておきたいこともあるにもかかわらず観察されていると考えると、もちろん不愉快ですね」
古泉「ですが、こればかりは割り切るしかありません。ご理解いただけると幸いです」
>ああ。趣味でそのようなことをしているわけではないことは、分かっている。
>今すぐやめろなんて言うつもりは毛頭ないことを伝えた。
>変なことを言ってすまなかった。
古泉「いえ、大丈夫ですよ。むしろありがとうございますといったところでしょうか。
 このことに疑問を持たなくなったら人として、何かを踏み外している気がしますから」
みくる「涼宮さんもあたしたちと同じ女の子ですから、見られたくないことくらいありますよね」
>一樹とみくるは自分で言った言葉を噛みしめているようだ。
長門「観察の中断を行うことはできない」
>そう言うつもりは全くない。
>ただ、ときどきハルヒの気持ちを考えてやるだけで違うと思う。
長門「そう」
キョン「ま、番長みたいに思ってくれる奴がいるだけで、だいぶ違う気がするぜ。
 ハルヒの知るところではないのは残念だがな」
689:
>キョンは有希の影のときといい時々恥ずかしい台詞を言うんだな。
キョン「おい、せっかくフォローしてやったんだぞ」
>ああ、わかっている。ありがとう。感謝している。
キョン「……そうやって、下級生にも素直に言うところが番長のいいところだよな」
>褒めても特に何も出ないぞ?
キョン「わかってるよ」
>さあ、帰ろう。
……

――帰り道。
キョン「そういえば、このメンバーで帰るのは2度目か」
古泉「以前食事会をしたとき以来ですか」
みくる「そういえば涼宮さんがいないのに、みんなで帰るのって
 あまりありませんでしたよね?」
キョン「そういやそうっすね」
>そうなのか。
690:
キョン「まあ、ハルヒが中心になって動いている団体だからな。
 そのハルヒがいなけりゃ、それぞれの仕事があるんだろうしな。しかたねぇさ」
>なるほど。
古泉「ですが、今はこうやって一緒に帰っている。
 これも、番長氏が来てからの変化かもしれません」
みくる「ふふ、そうですね」
>それなら、こちらに来た意味があるというものだ。
キョン「……食事会で思い出したから、一応確認しておくが、
 また長門と2人で食事なんてことはないよな?」
>あのときは、一樹が近くにいなかったから不可抗力的に2人になっただけだ。
古泉「何の話ですか?」
>事の経緯を一樹に説明した。
古泉「ふふ、なるほど」
キョン「こっちをみるな」
古泉「いえ、そのようなつもりはなかったのですが。すみません」
>そう言いつつも一樹は笑みを浮かべている……。
長門「今日もあなたの家で食事会?」
>有希はこちらを見つめてくる。
>どうしようか……。
692:
古泉「……今日は遠慮しておいて方がいいかもしれませんね。
 毎度大量の料理を作らせるの悪いですし」
長門「そう……」
>いや、それは構わないのだが……。
>一樹に相談しなければなるまい。
古泉「? 僕がどうかしましたか?」
>何度も作っているため、思った以上に食費がかかっている。
>一樹の機関への負担的にまずいのではないだろう。
>資金的に許すのであれば作ることは構わないと伝えた。
古泉「ああ、そのことでしたら大丈夫ですよ。
 特に高級食材を使った料理というわけでもありませんし、誤差の範囲です」
>問題はないのだろうか。
古泉「ええ、全く」
>では、今日も腕を振るうとしよう。
みくる「あ、それならお手伝いします!」
古泉「僕は断る理由がありませんから、今日もお相伴にあずからせていただきますよ」
長門「食事会?」
>ああ。
キョン「……で、全員行くのな」
>キョンはどうする?
キョン「……お袋に電話してくる」
>今日も騒がしい食事会になりそうだ。
693:
……

――自宅。
>皆をリビングに案内してくつろぐように促した。
>今日は……あったかおでんを作ることにした。
>ダイコンの染みは甘くなるかもしれないが、みんなで楽しむにはこれがいいだろう。
みくる「あ、お手伝いしますね」
長門「手伝う」
>女性陣が手伝いを申し出てくれた。
>有希はできるのだろうか……?
長門「何をするか指示してもらえればできる」
>さすがだ。
古泉「僕らは足手まといになるのが目に見えていますので、
 こちらでくつろがせていただきます」
キョン「俺もそうするよ」
>ああ。これ以上はキッチンに入れない。
694:
>みくる、ダイコンの皮剥きをお願いする。
みくる「はい、やっておきますね」
長門「わたしは何をすればいい?」
>有希は、そうだな。こんにゃくと卵の下ゆでを頼む。
長門「わかった」
>さて、自分は米とぎをしつつ出汁を作ろう。
>みくる、ダイコンが終わったら練り物を切っておいてもらうと助かる。
みくる「ふふ、はぁい」
――

古泉「いいチームワークですね」
キョン「前も思ったんだが、やけに調理器具が充実しているな」
古泉「番長氏が自炊するとおっしゃったので、
 当初予定していなかったのですが一式そろえたのですよ」
キョン「なるほどな」
古泉「ですが、ここまでフル活用されるとは思っていませんでしたけどね」
695:
……

>よし、あとは煮込むだけだ。
>2人のおかげで1時間もかからず下準備が終わった。
>ありがとう。
長門「そう」
みくる「いえいえ、あたしはこれくらいしかできませんから」
>では、向こうで雑談して待っていよう。
――

キョン「終わりか?」
>ああ。あとは少し煮込むだけだ。
>ただ染みこむまでの時間が足りないので、圧力鍋とはいえダイコンは期待しないでくれ。
長門「情報操作により、一定部分のみの時間進行を早めることは可能」
キョン「だそうだが?」
>料理に情報操作は何か違う気がするから遠慮しておこう……。
キョン「ま、そうだよな。というわけだ、長門」
長門「そう」
長門「……わたし自身もそれは望んでいない。
 あなたの料理が食べたい」
キョン「……!」
>ああ、ゆっくり待とう。
707:
キョン「待つといえば、俺とハルヒが部室から出払っているときなにしてたんだ?」
古泉「ああ、モノポリーですよ。2回しかやれませんでしたけどね」
>有希が強すぎた。
キョン「長門もやってたのか」
長門「そう」
古泉「情報操作はしていませんでしたけど、それでも強烈な強さでしたね」
キョン「てことは朝比奈さんも?」
みくる「はい」
キョン「未来にもモノポリーあるんですか?」
みくる「ごめんなさい、禁則事項なんです。
 でも、あたしは知りませんでした」
>みくるが知らないだけなのか、はたまた無くなっているのか。
キョン「禁則……そりゃそうすよね」
みくる「でもルールを覚えたら、面白いゲームでした」
キョン「朝比奈さんとゲームとか羨ましいぞ」
>いつでもできるだろうに。
708:
古泉「では、今からやりましょうか?」
>今から?
古泉「ええ、まだ出来上がるまで時間がありますし。
 自室から持ってきますよ」
バタン
>一樹は部屋から出ていった。
>……一樹はどれほどアナログゲームを持っているのだろう。
キョン「部室にあるゲームはほぼ古泉だしな」
>!? あれが全部?
キョン「ああ。精々コンピ研の作ったPCゲームくらいじゃねぇか?
 古泉が持ってきていないゲームなんて」
>アナログゲームフリークなのだろうか。
キョン「さあな。ただの暇つぶしでもってきていたらそうなっているだけだと俺は思うが」
>……こちらの世界にTVゲームは存在しているのだろうか?
キョン「あるに決まってる。ゲーセンだってあるさ」
>……ゲームセンター。そういえば八十稲羽にはなかった。
709:
キョン「ゲーセンがないのか」
みくる「へぇぇ……」
>みくるも何の気なしに相槌を打っているが、未来にもゲームセンターがあるのか気になるところだ。
キョン「そうだな……なんていうか、俺らの感覚でいうとゲーセンがないのは田舎に感じるのだが」
>キョンは、ここも大概田舎だがと加えた。
>自分のいた世界でも八十稲羽は十分田舎に分類されていた。
>駅前に何もないからな。
キョン「はは、そりゃたしかに田舎だ」
みくる「駅前に何もないって、あるんですねぇ……」
>みくるはその事実に驚愕しているようだ。
>未来では、どの駅周辺もすべてある程度発展しているのだろうか。
>そもそも駅があるのかどうかも分からないが。
ピーンポーン
>一樹だろう。
ガチャッ
古泉「お待たせしました」
キョン「おう」
710:
古泉「せっかくですから、こちらを持ってきました」
>一樹が持ってきたのは、なんと部室でもやったモノポリーだ。
みくる「え、これって部室にあった……?」
キョン「古泉、お前はアナログゲームで保存用、観賞用、布教用と持っているクチなのか?」
古泉「違いますよ。アナログゲームもいくつかバージョンがあることはご存知ですか?
 そのうちのひとつです。ですが基本ルールは全く変わりませんからご安心ください」
>おそらくみくるに対する配慮だろう。
古泉「ちなみにこちらは、この時代の最新版です。
 コマも様変わりしていますし、部室でやったモノとは違った楽しみができると思いますよ」
みくる「へぇ、そうなんですかぁ」
>一樹は、なぜかみくるの方を見ながら話している。
キョン「そういや番長の世界にもモノポリーあるんだな」
>ああ。特に詳しくマスを見たことはないが基本は一緒だと思うと伝えた。
古泉「そういえばそうですね」
キョン「ま、そういう雑談はやりながらでもできるだろ。始めようぜ」
古泉「では、僭越ながら僕がゲームマスターを務めさせていただきますよ」
711:
……

長門「そこはわたしの土地」
キョン「げっ」
>相変わらず有希は尋常ではない強さだ……。
キョン「あー……長門に負けているのはまだ納得いくんだが」
>現在の順位は、有希、みくる、キョン、自分、一樹だ。
>しかし、有希以外は団子状態だ。有希の独り勝ちと言っていいだろう。
キョン「朝比奈さんにまで負けているとは……」
みくる「ふふっ、ビギナーズラックですね」
キョン「なあ、少し話は戻るんだが」
>キョンが有希に支払いをしながら、こちらに視線を向ける。
キョン「番長の世界のこと話してくれよ」
古泉「番長氏の世界のことですか?」
キョン「ああ、古泉がとりに行ってる間に少し話してたんだよ」
古泉「そういえば、不思議系のお話しかしたことありませんでしたね」
712:
みくる「あ、あたしも気になります。あ、ここホテルに変えますね」
>みくるも順調のようだ。
長門「わたしも興味がある」
>どこまで話しただろうか。
キョン「ゲーセンがなかったってところまでだな」
古泉「番長氏の世界ではゲームセンターがないのですか?」
>一樹は驚いた表情をしている。
>ゲームセンター自体はある。八十稲羽にないだけだ。
キョン「ああ、そうか。すまん」
古泉「やはり文明レベルは同様なんでしょうね」
>だと思う。
長門「文明レベルに差異がみられないこと以上に
 言語に差異がみられないことは驚愕すべきこと」
>有希は自分のコマを進めながら抑揚のない声で言う。
>全く気にしていなかった。確かにその通りだ。
キョン「そういや今更だが日本語通じるんだな」
みくる「あっ、そうですね」
>一応自分の住んでいるところも日本だからな。
古泉「ものすごい偶然……と言いたいところですが
 涼宮さんに呼び寄せられたのなら必然と考えるべきなんでしょうね」
キョン「異世界からの来訪ってだけでとんでもないことだからな」
キョン「しかし、もう一つの日本か」
714:
古泉「しかし、貨幣には差異があるようですし、不思議なものです」
>確かに自分のところではYENだった。
古泉「ですがたとえ貨幣が同一のものであっても、この世界では存在しないものです。
 偽造通貨の扱いになってしまうでしょうね」
キョン「まあ、そうだな」
古泉「文化文明の間違い探しをすることも楽しいかもしれませんね」
長門「そこもわたしの土地」
古泉「ふむ、少額で済んだので良しとしましょう」
>間違い探しといっても、特に思い当たらない。
古泉「何でもいいのですよ。例えば……税制の違いですとか」
キョン「話題が固い」
>確かに。
古泉「おや、そうですか。僕としては異世界の政治システムに興味があったのです」
みくる「ふふ、正直あたしもちょっと興味があります。でも今する話でもないですね」
>みくるもみらいの職業柄なのだろうか、気になるようだ。
キョン「朝比奈さんまで……って、げっ」
>キョン、そこは自分の土地だ。
715:
>みくるもみらいの職業柄なのだろうか、気になるようだ
未来での職業柄、ね
716:
>キョンと順位が入れ替わったようだ。
キョン「もっと軽い話題にしようぜ。番長の学校で何が流行っていたとか」
古泉「確かに、人が違うのですから流行も違うのでしょう」
>流行か……何かあっただろうか。
キョン「最初に断わっておくが、SOS団にこっちの流行について詳しいやつはいないからな」
>ああ、わかった。
有希「そこはわたしの土地」
>有希の所有している土地に止ってしまったようだ……。
>高額を支払うことになった。
キョン「はは、これでまた逆転だな」
古泉「支払いで、思い出したのですがドルは存在するのですか?」
>ああ、存在する。
古泉「本当に不思議ですね。外見や服装に違和感はなし、言語は同じ。
 しかし同じようなモノが存在しているかと思えば、ここのように全く存在しない土地もある。
 何が違ってこのような変化が起きるのか興味は尽きません」
みくる「そうですねぇ……ひぇっ」
長門「そこはわたしの土地」
古泉「おやおや……」
717:
キョン「流行の話はどこへ行ったんだ」
>そうだったな。
>自分も流行に敏感なほうではないが、りせは流行していたといってもいいだろう。
みくる「りせ?」
>ああ、アイドルだ。
>八十稲羽の出身で、そして八十神高校に転校してきたので周囲は浮かれていたように思う。
>そのときはアイドル業は休業していたのだが。
キョン「はー、アイドルねぇ」
古泉「はて、どこかで……」
長門「彼の携帯端末に久慈川りせという名が登録されていたことを記憶している」
古泉「ああ、それです」
キョン「なんだ? りせってそっちの世界じゃ普通の名前なのか?」
>いや、珍しいと思う。
キョン「へ? ってことは、まさか――」
>ある事件がきっかけで知り合いになったと伝えた。
719:
キョン「アイドルと知り合いだと……?」
古泉「番長氏の世界とこの世界でのアイドルに認識の差異がなければ、すごいことですね」
>認識は同じで問題はない。CMなどで活躍していた。
キョン「CMに出るレベルのアイドルって相当すごかないか?」
>その当時の売出し中の人気アイドルだったように認識している。
キョン「一応確認しておくが、女なんだよな?」
>ああ。
キョン「古泉、機関にアイドルいないのか」
古泉「残念ながら」
みくる「やっぱり、番長くんお友達多かったんですねぇ」
古泉「僕としては、ある事件の方が気になりますね」
>そういえば話す機会がなく話していなかった。
古泉「お話しいただいても?」
>一樹はコマを動かしながら聞いてくる。
>話すのは構わないが……。
長門「そこはわたしの土地」
古泉「……破産してしまいました。僕の負けですね」
キョン「あ、古泉っ。なに勝手に破産してやがる!」
>有希の圧勝だ。
720:
>順位は、有希、みくる、キョン、自分、一樹となった。
キョン「これから巻き返すつもりだったんだが……長門強すぎるぞ」
長門「そう」
>いつか有希を打ち倒したい。
長門「待ってる」
古泉「さて、番長氏の話も気になりますが、
 僕が破産してゲームも終わったことですし、そろそろ食事にしませんか?」
みくる「そうですね、時間もちょうどいいですし」
>ああ、そうしよう。
キョン「……まさかとは思うが、時間を調節してわざと負けたってことはないだろうな」
古泉「ふふ、そんな器用な真似はできませんよ。
 純粋に僕の負けです」
>一樹は極めて自然に嘘を吐くことがある。
>もしキョンの言う通りならば、まるでカジノのディーラーだ。
>……以前森さんが、「本業」と言っていた。今は学生だが一樹の本業はもしかしたら――。
古泉「番長氏が何を思っているかは分かりませんが、一応買いかぶりだと言っておきましょう」
古泉「ただ今僕の一番の興味は、ゲームの勝敗よりも番長氏の料理であることは確かですけどね、ふふ」
>確かに余計な詮索はするべきではないことだ。
>食事にしよう。
722:
みくる「じゃあ、ご飯よそいますね」
>鍋敷きの上におでんの入った鍋を置いた。
古泉「いい匂いです」
キョン「旨そうだ」
みくる「はぁい、ご飯です。おまたせしました」
>ありがとう。
>食べようか。
みくる「いただきまぁす」
>各々自由に鍋からとって食べてくれ。
キョン「長門、なにか喰いたいモンあるか?」
>キョンは有希に取り分けてあげるようだ。
長門「あなたに任せる」
古泉「番長氏が危惧していたダイコンも十分染みていておいしいですよ」
>それならよかった。
みくる「んー! 牛すじって初めて食べましたけど、美味しいんですねぇ」
キョン「ほらよ、長門」
長門「ありがとう」
キョン「さて、俺はっと……」
>各々楽しんでいるようでよかった。
723:
>自分も食べよう。昆布あたりから食べようか……。
みくる「このおでんのお出汁おいしいですねぇ」
キョン「さすが番長といったところか。
 正直プロでもないのにハルヒと料理で張れるやつが現れるとは思わなかったよ」
>そこまで評価してもらえるならうれしい限りだ。
古泉「番長氏、先ほどのお話の続きを聞かせていただいて構いませんか?」
>一樹が、受け皿の中で卵を崩しながら聞いてくる。
古泉「ん、玉子も美味です」
>ああ、事件の話か。
古泉「そうですね」
>話してもいいのだが……食事時にする話だろうか。
古泉「それでしたら、ひと段落してからで構いません。
 この味を落とすようなことはしたくありませんからね」
キョン「同感だ」
みくる「そうですね」
長門「……」
>有希はおでん鍋を見つめている。
キョン「またお任せでいいならとるぞ」
長門「お願いする」
>キョンは有希のことをよく見ているようだ。
724:
……

みくる「ふぅっ、お腹いっぱいです。ごちそうさまでした」
>ぽんっ、とみくるは顔の前で両手を合わせている。
古泉「僕も十分堪能させていただきました」
キョン「俺もだ」
長門「……」
>有希はまだ食べているようだ。
>有希が食べ終わったら話をしよう。
長門「わたしのことは気にせず話しても構わない。
 周囲の状況によって味覚に変化は起こらない」
キョン「長門がこういっているんだ、別にいいと思うぞ」
>いいのか?
長門「いい」
>……そうか。
>では話そう。これはテレビに入ることにも関わるのだが――。
726:
>一樹たちに、八十稲羽で起こった一連の事件の流れを話した。
>ことの発端の連続殺人事件、自らの影に殺されてしまった人達、連続誘拐事件、現実世界へ溢れだした霧。
>その途中、テレビに入れられた被害者を救っていくうちに繋がった仲間たちのこと。
>そして被害者の内の1人がりせだったというわけだ。
キョン「……ムナクソ悪くなる話だな」
みくる「ひどい……」
古泉「食事のときにしなくて正解でしたね」
長門「……」
>有希はまだ黙々と食べている。
古泉「ところで犯人は捕まったのでしょうか?」
>ああ。テレビの中へ人を突き落した犯人は捕まえたし、現実世界を霧に閉ざしていたモノも倒した。
みくる「ほっ、よかったです」
キョン「話を聞く限りだが、仲がいいんだな。その"自称特別捜査隊"ってのは」
>掛け替えのない大切な仲間たちだ。
キョン「まあ、それなら納得だ。
 スタート地点がアイドルとファンじゃなくて被害者と救助者の関係だったわけだな」
>そもそもりせをアイドルとしてみるようなことはあまりなかった。
キョン「近くにいるから、そう思うんじゃないのか?」
729:
>りせはアイドルである作られた自分のことで悩んでいた。
古泉「だから、アイドル扱いはしなかったということですか?」
>いやアイドルの顔も普段の顔も、どんな時でもりせは、りせだ。
>テレビや雑誌の仕事をしているりせを見る時ならば、アイドルとしてみるだろう。
>だが自分と話をしている、その目の前にいるりせは、1人の女の子、ただの久慈川りせだ。
>目の前にいるりせは、偶像でもなんでもない。
>それをアイドルとしてみることは、友人ではないし、仲間ではない。
>自分は、そう思うと伝えた。
キョン「なるほどな」
みくる「ふふ、番長くんらしいです」
古泉「僕の考えもまだまだ浅薄ですね」
古泉「……本当の自分、ですか」
>一樹?
古泉「いえ、なんでもありません。
 自分も真面目な転校生というキャラクターを作っていたなということを思い出していただけです」
>真面目なのは根がそうだからじゃないのか?
古泉「ふふ、さて、どうでしょうね?」
>一樹は意味ありげに笑っている。
731:
キョン「ま、そこに関しては聞くだけ無駄だ」
古泉「ふふ、そういうことです」
長門「ごちそうさま」
>おでんはすっかりなくなってしまったようだ。
キョン「旨かったか?」
長門「おいしかった」
>片づけは後にしよう。腹が膨れて動く気になれない……。
>とりあえずテーブルの上だけ片づけておいた。
古泉「時間がおありでしたら、もう一度勝負しませんか?」
古泉「個人的に番長氏の世界のことももっと聞きたいというのもありますが」
キョン「……もう1回くらいなら時間あるか」
みくる「あたしは、大丈夫ですよ」
長門「構わない」
長門「わたしも彼の世界の話には興味がある」
古泉「決まりですね」
732:
……

>モノポリーをしながら自分の世界やテレビの中の世界、ペルソナのことについて話をした。
古泉「以前から気になっていたのですが」
>なんだろうか。
古泉「番長氏のペルソナのひとつにイザナギがあったように記憶しています」
>イザナギは自分が最初に手に入れたペルソナだ。
古泉「そのこと自体に疑問はないのですが、ただ名前が気になりましてね」
>名前?
古泉「こちらにもあるのですよ、日本の神話にイザナギとイザナミの話が」
>自分たちの世界にもある。以前修学旅行で聞かされた話をした。
古泉「! 驚きました。まったく同じ話ですよ」
みくる「あ、それならあたしも知ってます」
古泉「ここも共通している。それもほとんど違いは見受けられない」
古泉「ますます不思議ですね。
 パラレルワールドではなく、根源から違った世界なのかと思っていたら日本語が通じたりこのような共通点もある。
 ですが、根幹を同じくする時間軸から派生したパラレルワールドであるならば長門さんが認識できてもおかしくはない」
長門「彼の存在はここでしか確認されていない」
古泉「ふう、まったく僕には理解が及びません」
>確かに不思議だ。
734:
……

みくる「破産しちゃいましたぁ……」
古泉「では、ゲーム終了ですね」
>順位は、有希、キョン、自分、一樹、みくるとなった。
>やはり有希が断トツだ。
キョン「さて、そろそろ暇する。
 これ以上遅くなったらお袋に叱られそうなんでな」
古泉「では、僕たちも帰りましょうか」
みくる「あっ、洗いもの……」
長門「手伝う?」
>構わない。今日は自分一人でやっておく。
>みくると有希はキョンと一樹に送ってもらうといい。
長門「そう」
みくる「そう、ですかぁ……ごめんなさい」
キョン「ああ、そうか。よくよく考えたら毎度悪いな」
>気にするな。
古泉「今日は、ですか。ふふっ」
>一樹は何やら気づいたような笑みを浮かべている。
735:
古泉「いえ、僕たちは僕たちの任務を行いますよ」
キョン「ああ、送り届けるのは任された」
古泉「ま、長門さんを襲うような輩は、そのあとどうなるかわかりませんけどね」
キョン「……敵性と判断された輩には同情しておくさ」
古泉「では、帰りましょうか。番長氏、今日もありがとうございました」
キョン「明日部室でな」
みくる「じゃあ、また明日ですね。
 洗い物ごめんなさい、お願いします」
長門「また」
>ああ、また明日。
バタン
>静かな部屋に戻ってしまった。
>……。
>また明日、か。
>いつになったら帰れるのだろう。
>元の世界のみんなは元気だろうか……。
>不安だけが募る……。
743:
――翌日、通学路。
>曇り空だ。ハルヒがいっていたように明日には雨が降りそうだ。
キョン「よす」
>おはよう。
キョン「昨日は、そのまま帰っちまって悪かったな」
>気にするな。それよりちゃんと送り届けただろうか。
キョン「ああ、大丈夫。朝比奈さんも長門もちゃんと送り届けたさ」
キョン「……その帰り道に話してたんだけどな。
 番長の世界の友人の話を、全然していなかったから聞いておきたかったって」
>りせくらいしか話していなかったか。
キョン「ああ。アイドルと知り合いなんだ。面白いやつもいるだろうしな」
>面白いやつ……。
キョン「古泉は、この世界との違いを見つけるのに有効だとかなんとか言っていたが」
キョン「俺……と朝比奈さんもか。単純に興味がある」
>特に隠しているわけでもないから今話そうか?
キョン「いや、他の奴らが揃っているときにしてくれ」
744:
>そうか。
キョン「おう」
キョン「……」
>何かものすごく気になる顔をしている気がするが。
キョン「……アイドルと知り合いとかどんな交友関係してるんだと思ってな」
>あくまで知り合ったのは偶然だ。
>基本的に普通の人たちばかりだと伝えた。
キョン「そんなもんか」
>直斗とクマだけは少し特殊かもしれないが……。
キョン「特殊?」
>それもあとで揃ったときに話そう。
キョン「そうかい。楽しみに待っとくよ」
>キョンと雑談しながら登校した。
……

746:
――2年某教室。
みくる「おはようございます、番長くん」
鶴屋「おっはよーう!」
>みくると鶴屋さんだ。登校が早い。
鶴屋「聞いた、聞いたよ、番長くぅーん」
>なんだか鶴屋さんは悪い顔をしている。
みくる「つ、鶴屋さん……」
>反対にみくるは申し訳なさそうだ。
鶴屋「昨日、みくるが番長くんのお家で食事したんだって?」
>ああ。
鶴屋「みくるにオイタしてないよね……?」
>鶴屋さんの顔が怖い。
みくる「ば、番長くんはそんなことする人じゃありません」
>そもそもハルヒ以外のSOS団員全員居た食事会だ。
鶴屋「なぁんだ、ごめんごめんっ!
 番長くんちで食事したって聞いたから、ついつい2人きりだったのかと思って先走っちゃったっさ!」
>みくる、話すときは正確に情報を伝えてもらうと助かる。
みくる「あ、あはは……ごめんなさい」
鶴屋「実は、そんなんじゃないかなって思ってたけどねっ」
みくる「鶴屋さぁん……」
>鶴屋さんはカラカラと笑っている。
>鶴屋さんはさっきみたいな顔をしているよりそうやって笑っている方がいい。
鶴屋「お、そっかなー! じゃあ、番長くんがそう言うならそうしよっか!」
>ニッ、っとこちらに笑顔を向けてくる。
748:
>そっちの方がずっと可愛いと思う。
鶴屋「や、やっだなぁ。何いきなり番長くん言ってるのっ!」
>素直な意見だ。
みくる「あたしも鶴屋さんは笑っている方がいいと思いますよ?」
鶴屋「あっはは、そんなこと言われたのはじめてだから、
 ちょぉっと動揺しちゃったじゃないかっ」
>鶴屋さんは少し照れているようだ。
鶴屋「って、そうそう。言いたいことはそんなことじゃないっさ!」
>なんだろうか。
鶴屋「ズバッと提案なんだけど、今日、あたしの家に来ないっかな?」
>鶴屋さんの家?
鶴屋「そうそうっ! 今日親もいないから騒いでも平気なんだっ」
>……?
みくる「つ、鶴屋さん、ちゃんと言わないと」
鶴屋「あ、あっはは。まだ、動揺してるのかなっ」
鶴屋「あたしの家でぜひぜひ料理を作ってくれないかなって!」
751:
鶴屋「もちろん、SOS団のみんなも一緒にねっ」
鶴屋「ハルにゃんと番長くんのドキドキ料理対決その2っ! ってところ!」
>何とも早い再戦だ。
鶴屋「対戦っていっても、ただの食事会になるんだろうけどねっ」
>ハルヒがいいなら自分は構わないが。
鶴屋「さっすが番長くんっ! 材料費はあたしがお金出すからさっ」
>材料費は自分も出そう。
>……一応一樹に相談しておこう。
みくる「じゃあ、あたしがみなさんに連絡しておきますね」
>みくるは携帯電話を出して、メールを打っているようだ。
鶴屋「昼休みにSOS団の部室に集合して相談ってことでいいっかな?」
>構わない。
みくる「わかりましたぁ」
鶴屋「よろしくっ!」
>ハルヒの料理が食べられるなら自分も楽しみだ。
752:
――昼休み、文芸部部室。
>SOS団団員が集まっていた。
鶴屋「やーやー、おっまたせっ!」
みくる「こんにちはぁ」
ハルヒ「珍しいわね、鶴屋さんが集合かけるなんて」
キョン「なんかあったんすか?」
鶴屋「ふっふっふー、起こるとしたらこれからっさ!」
キョン「これから?」
鶴屋「本日我が家で開催っ!」
鶴屋「ハルにゃんと番長くんのドキドキ料理対決その2っ!」
鶴屋「かっこ予定かっことじっ!」
>ハルヒさえよければ、鶴屋さん家で一緒に料理をして食事会をしようということだ。
ハルヒ「なんだ、そんなこと?」 
鶴屋「ハルにゃんどうかなっ」
ハルヒ「もちろんいいに決まってるじゃない!
 楽しそうだわっ! それに何より番長くんの本気は見てみたいし」
鶴屋「んーっ、決定っ!」
755:
ハルヒ「もちろん、SOS団員は強制参加だからね」
古泉「かしこまりました」
キョン「ああ、これくらい平和だと助かる」
みくる「はぁい」
ハルヒ「有希もよ? いい?」
長門「わかった」
ハルヒ「決まりねっ」
ハルヒ「でもいいの? この人数だと結構うるさくなると思うけど」
鶴屋「あははっ、親はいないから安心していいよっ」
ハルヒ「そう、ならいいわね」
>この人数だと近隣に迷惑をかける可能性もあるかもしれないな。
キョン「あー、安心しろ。近所迷惑的な意味では何にも問題ないぞ」
>……?
キョン「ほら、映画の豪邸が鶴屋さんの家だって説明はしただろ?」
>ああ。
キョン「その豪邸に見合った土地の広さだ。
 隣家に騒音をお届けしたいなら庭先でカラオケくらいしないとムリだろうよ」
>そうなのか……。
756:
ごめん、ハルヒの鶴屋さんへの呼び方鶴屋さんじゃなくて鶴ちゃんだったわ
脳内補完よろしく
757:
ハルヒ「鶴ちゃんのお家が問題ないなら、障害はオールクリアよ!」
鶴屋「食材費とかは、誘った手前あたしが持つからっ。
 普段買えないような食材もバンバン買っちゃっていいからねっ」
>やはり自分たちも出した方がいいのではないだろうか。
>一樹にアイコンタクトを送ってみる。
古泉「……番長氏は自分もお金を出すべきなのか迷っているようですよ?」
鶴屋「だから大丈夫だって!」
キョン「あー、俺も確かに金銭面的なことでおんぶにだっこはどうかと思うが
 今回ばかりは甘えていいと思うぞ」
キョン「もし、鶴屋邸を見て度肝抜かれなかったらそんときゃ払えばいいさ」
鶴屋「ただ古いだけの家っさ」
キョン「いやー、あれをただの古い家というのはちょっとムチャがあると思いますよ」
鶴屋「ま、とにかくっ。あたしが資金面的に遠慮されたくないってことっ。
 それにあたしも払ってもらって遠慮して食べたくないからねぇ」
鶴屋「あたしが遠慮なく食べたいってことで納得してよっ」
鶴屋「というわけで、お金と食材調達のことはあたしに任せて、番長くんとハルにゃんは料理を任される。
 これで対等っ、適材適所、オールオッケー、万事解決っ!」
鶴屋「あっ、でも技能の対価を払うってわけじゃないからねっ。
 そんなこと言っても2人ともお金をもらう様なことじゃない、って言いそうだからっ」
>……どうやら見透かされているようだ。
783:
ハルヒ「ま、今回は番長くんと一緒にお言葉に甘えましょ」
鶴屋「うんうんっ、それでいいっさ!」
>過度に期待されても困るが、できる限り自分のできることをしよう。
古泉「決定ですね」
みくる「わぁ、楽しみです」
キョン「晩飯ってことでいいんだよな?」
ハルヒ「そうね、それに足る量くらいは作れるかしら」
>自分とハルヒの2人ならそれくらいは容易いだろう。
ハルヒ「でも重要なのは量じゃないわ。質よ」
>みんなが満足できるものを作ろう。
鶴屋「じゃ、放課後まででいいから、欲しい食材あったら考えといてっ」
鶴屋「あたしがばばっと食材そろえるからさっ」
>考えておこう。
ハルヒ「よーし、番長くん。昨日付かなかった決着つけるわよ」
>望むところだ。
797:
鶴屋「じゃあ、学校終わったらあたしの家ち直行してくれればいいからねっ」
ハルヒ「わかったわ」
ハルヒ「番長くんは鶴ちゃんちわからないでしょうから、部室に集合……しなくてもいいわね。
  みくるちゃん、番長くんを案内してあげて」
みくる「あ、はい」
鶴屋「みくるよろしくっ! あたしは学校終わったら一足先に帰って準備するからさっ」
キョン「部室に集合しないのか?」
ハルヒ「勝負する相手とのんびり一緒に行くって締まらないにもほどがあるじゃない」
ハルヒ「そうね、有希とあたしとキョンは一緒に行きましょ。
 古泉くんはみくるちゃんと一緒に番長くんを鶴ちゃんの家まで案内してあげて」
古泉「ええ、拝命させていただきます」
キョン「古泉、その役割変わってやろうか?」
古泉「僕は構いませんが」
ハルヒ「キョンはこっち!」
キョン「なんでだ」
ハルヒ「キョンをみくるちゃんと一緒にしたらデレデレしちゃって
 勝負の雰囲気も台無しになるからよ」
キョン「……そんなことないさ」
鶴屋「あっはははっ!」
ハルヒ「とにかく、班分けに異議は認めないから」
キョン「ぐぅ」
>鶴屋さんはケラケラと笑っている。
800:
ハルヒ「じゃあ、鶴ちゃん他に何かいうことある?」
鶴屋「大丈夫っ!」
ハルヒ「そ、ならお昼ご飯にしましょか」
>そう言って、ハルヒは自分の弁当を出した。
みくる「はぁい」
古泉「そうですね」
鶴屋「またこのメンバーでお昼御飯だねっ」
>皆もそれぞれ弁当を出す。
キョン「おい、なんでみんな弁当持ってるんだ」
ハルヒ「なんでってなにがよ? ここで集合で話し合いになるかもしれないんだったら
 それくらいの機転は当然じゃないかしら」
古泉「ええ、僕はそう推察しました」
みくる「あ、あたしと鶴屋さんと番長くんはそのまま食べていこうって話で」
鶴屋「ありゃ、ごめんねっ。ちゃんというべきだったね」
キョン「いや、謝らないでください。大丈夫す」
801:
長門「……」 コト
キョン「長門まで弁当持ってんのか……」
ハルヒ「で、どうするの? 教室で食べるの? それともとってくる?」
キョン「……とってくる」
ハルヒ「それなら早くしてよね、もうあんまり時間ないんだから」
キョン「わかってるよ」
ハルヒ「はい、ダッシュ!」
>パン、とハルヒが手を叩くとキョンは部室から飛び出していった。
ハルヒ「ったく」
>そう言いつつも、ハルヒはちゃんとキョンを待つようだ。
>それに倣って誰も弁当に箸をつけていない。
>ちなみに一樹と有希の弁当はたいして手間も変わらないので自分が作っている。
>最初は一樹に資金を工面してもらっている恩もあるので一樹の分も作ろうかと提案した。
>そのときに『長門さんの分もご一緒に作ってあげてはいかがですか?』とは一樹の弁だ。
802:
>朝のホームルーム前に一樹と有希には渡しておいた。
>本来なら有希は食べる必要はないのだろう。
>確認もとらずに作ってしまったが、有希は無言で受け取ってくれた。
>そのとき有希の教室がざわついたが、そっとしておいた。
>一樹がこちらにウィンクしているがこれもそっとしておこう……。
ガチャッ
キョン「っはぁっ……ま、待たせたな」
ハルヒ「さだけは合格点ね」
キョン「そりゃどうも」
ハルヒ「別に褒めてるわけじゃないのよ?
 機転を利かせて持ってこなかった時点失格なんだからね」
キョン「へいへい、それはいいから喰おうぜ」
ハルヒ「そうね、キョンにお説教なんてお昼休みが無駄になっちゃう」
長門「……」
>有希は既に黙々と食べている。
ハルヒ「じゃ、食べましょ」
みくる「いただきまぁす」
>それを皮切りに皆各々食べ始めたようだ。
805:
>今日の弁当は……肉じゃがときんぴらゴボウをメインに据えている。
>基本的に有希と一樹のものと変わらないのだが、有希や一樹のこともあり弁当は若干彩りに気を使った。
>有希自身は気にしないだろうが、女の子が茶色一色というのも華が欠けるだろうと思い、ささやかながら玉子焼きとトマトを添えた。
>もちろん一樹のものにも入っている。
>誰とどこで食べるのかわからなかったが、一樹のハンサム顔で茶色一色の弁当というのもちぐはぐな印象を受けてしまうだろう。
>ただ、このメンバーで食べることになるのであれば正直いらない配慮だったかもしれない。
>それよりもキョンとみくるはともかく、ハルヒや鶴屋さんに同じ弁当だということに気付かれないかが心配だ。
ハルヒ「そういえば、本当に誰も鶴ちゃんちには誰もいないの?」
鶴屋「大丈夫っさ! 心配しなくてもっ」
ハルヒ「ううん、そうじゃないわ。誰かいらっしゃるなら、ついでに振る舞おうと思ってね」
鶴屋「おぉー、素晴らしい気概だねっ。でも残念ながらだぁれもいないんだなっ、これがっ」
キョン「前から気になっていたんですが、あれだけの屋敷なんですからメイドとかいたりするんですか?」
鶴屋「あははっ、あの純和風家屋にメイドなんて似合わないよっ。
 大正時代の貴族じゃないんだからさっ」
キョン「……それもそうですね」
鶴屋「でも、家政婦さんは時々来るっかな。お掃除とか家事全般やってもらってるんだっ。
 広いと掃除も大変でねっ」
キョン「ああ、使用人みたいな――」
ハルヒ「なんかキョン時代の認識がずれてるんじゃない?」
>どうやら雑談に忙しく、気付いていないようだ。
>……しかし、話を聞けば聞くほどに、鶴屋邸は想像以上にすごいところらしい。
807:
古泉「先ほど彼もおっしゃっていましたが、見て驚かないということはないでしょう」
>自分の表情から察したのか、一樹が話しかけてきた。
古泉「言い方は悪いですが、このような県立高校にいらっしゃるのは不釣合いのようにも思えます」
>そこまでなのか。
古泉「ええ」
みくる「そういえば、あたし、鶴屋さんのお家に行ってお風呂借りたあたりは憶えているんですけど、
 そのあとがちょっとぼんやりしてるんですよねぇ」
みくる「記憶がないってわけじゃないんですけど、はっきり思い出せないというかなんていうか」
>みくるは不思議そうな顔をしている。
>なにかあったのか?
古泉「……まあ、映画撮影をしている間にもいろいろあったということですよ」
>どうやら、あまり掘り返さない方がいい話題らしい。
ハルヒ「ふう、ごちそうさま。ちょっとあたしお茶買ってくるわね」
みくる「あ、それでしたら淹れますよ?」
ハルヒ「ううん、いいわ。今は冷茶が飲みたい気分だから」
>そう言ってハルヒは部室から出ていってしまった。
808:
キョン「寒いんだからわざわざ冷茶なんぞ買わんでも
 朝比奈さんの淹れてくれたお茶の方がよっぽどいいだろうに」
みくる「ふふ、ありがとう。キョンくん。
 せっかくなら皆さんお茶お飲みになりますか?」
鶴屋「頼んだよ、みっくるー」
古泉「是非もないですね」
キョン「お願いします」
みくる「番長くんは?」
>よろしく頼む。
みくる「ふふ、はぁい」
>有希には確認をとっていないがきっと出すつもりなんだろう。
>その有希はといえば相変わらず黙々と食べていた。
鶴屋「ねぇねぇ、ところで番長くんっ」
>なんだろうか。
鶴屋「古泉くんと長門っちと番長くんのお弁当、どう見ても一緒なんだけどどうしたのかなっと思って」
>……どうやら鶴屋さんは気づいていたらしい。
809:
キョン「んー、ああ。本当だな」
>なんと言おうか……。
古泉「僕がいつもコンビニ弁当や菓子パン、購買で買ったものを昼食として食べているという話をしましてね」
古泉「そうしたら、番長氏が打診してくださったのですよ。自分が作ろうか、とね」
>どうやら一樹が弁明するらしい。
古泉「そのときちょうど長門さんも近くにおりまして、長門さんの昼食も僕と同じようなものだ、というのです」
古泉「番長氏は、2人分も3人分も変わらないと仰ったのでそのお言葉に甘えたのです」
鶴屋「そうなの? 長門っち」
長門「そう」
>一樹が言ったことは、半分本当で半分嘘だ。
>一樹に弁当を作ろうかという提案をしたのは、昨日一樹とキョンがみくると有希を送り届けた後の電話でだ。
>それに有希に確認などとっていないし、一樹の普段の昼食の話もしていない。
>この点については一樹の織り交ぜた嘘ということになる。
>ただ、あまり意味のあるような嘘には思えない。
>しかし一樹にお金について借りがあり、その恩返しの一環であること、
>その上有希へ確認をとらずに弁当を持って行った、と言って新たな弁明と無用な混乱を生むくらいならこの方がいいのだろう。
>有希も同調しているのがその証拠だ。
キョン「へぇ、番長は面倒見がいいと思っていたがそこまでとはな」
鶴屋「なるほどね、羨ましいっ。長門っち、古泉くんっ」
みくる「ほんとですね。はい、みなさんお茶です」
>みくるは1人1人にお茶を渡していった。
810:
みくる「はい、長門さん。ここにお茶置いておきますね」
長門「感謝する」
みくる「ふふ、はぁい」
ガチャッ
>ハルヒが戻ってきた。
>くぴくぴとペットボトルからお茶を飲みつつ、もといた場所へ戻っていった。
ハルヒ「あら、みんなはあったかいお茶?」
キョン「冬で朝比奈さんのお茶が一番うまいときに冷茶飲むハルヒの方が俺にはわからんね」
ハルヒ「仕方ないじゃない。冷たいお茶が飲みたくなったんだから」
長門「……」
>有希はすっかり食べ終わり、弁当のふたを閉じてみくるの出したお茶を飲んでいる。
>自分もハルヒに一樹と同じ弁当だと気付かれる前に食べてしまおう。
>鶴屋さんが話してしまったら仕方ないが。
ハルヒ「さあ、腹ごしらえもしたし、午後の時間は料理対決のメニューでも考えていようかしら」
キョン「楽しみにしてるぜ。もちろん番長もな」
>ああ。
>みんなと楽しく昼食をとった。
>みんなとまた少し仲良くなれたようだ。
816:
――2年某教室、午後。
教師「えー、このベクトルが――」
>数学の授業が淡々と進められていく。
>そういえば、この世界でも授業の内容は大きく変わらない。
>教育内容、そして進度まで、さほど変わらないというのも不思議なことだ。
>数学から鑑みるに、物理法則もやはりあまり変わらないのだろう。
>歴史の授業を受けてみれば、何か違いがあるのかもしれない。
>しかし、残念ながら選択は地理だ。
教師「おーい、聞いているか?」
>考え事をしていたことで、気を抜いていたようだ。
教師「だが、まあ。確かに、疲れるだろう。
 では、区切りもいいので、少し息抜きに雑談だ」
教師「さて、図形を板書したついでだ。図形についての話をしよう」
教師「正多面体は5種類しかない。
 正4面体、正6面体、正8面体、正12面体、正20面体だ」
教師「正6面体、つまり立方体は頂点の数が8つだ。正12面体は頂点の数は20だ」
教師「そこでクイズ。さて、正20面体の頂点の数はいくつだ?」
>どうやら、自分に訊いているようだ。
817:
>正20面体の頂点の数は……12だ。
教師「お、よく知っていたな。正解だ」
教師「そう、正20面体の12。面が多いからと言って頂点の数が多くはならない。
 こういうのも図形の面白いところだな」
教師「ちなみに、正8面体も頂点の数は6つと少ないんだ」
>答えは正解だったようだ……。
みくる「ふふ、すごいですね」
鶴屋「お、やるねっ」
>すこし、みくると鶴屋さんの評価が上がったようだ。
……

――放課後。
鶴屋「じゃあ、あたしは一足先に帰るからっ。
 みくるよろしくねっ」
みくる「はぁい」
>鶴屋さんは、駆け足で教室をでていった。
>自分たちも一樹のところへ行こう。
821:
――鶴屋邸へ向かう道中。
古泉「もう作るものは決められましたか?」
>まだ決めていない。食材を見て判断しようと思う。
古泉「そうですか。涼宮さんは、終業のベルがなったとほぼ同時に
 それは楽しそうに廊下を走っておられました」
古泉「授業中ずっと考えていたのでしょうね。
 油断していると負けてしまうかもしれませんよ?」
>気を付けよう。
>授業といえば、自分たちの世界と教育課程も授業内容もほとんど同じであることを伝えた。
>普通に馴染んでいたために今まで気が付かなかったが、これはなかなかに珍しいのではないだろうか。
古泉「確かに……それは興味深いですね」
みくる「そういえば、不思議ですね」
古泉「ええ。文明レベルが同じということは、物理や数学、化学、
 いわゆる物理法則や化学法則に関しては、ほとんど一緒、もしくは完全に同一であるということは予測がつきます」
古泉「しかし、人が生み出す教育は別です。人が違えば、その方法論も変わってくる」
古泉「事実、教育というのは僕たちの世界だけで見ても国が違うだけでも大きく異なります」
古泉「それが同じ日本とはいえ、異世界との間で教育のシステムが似通うとは……」
古泉「僕は研究者ではないですが、この現象がなぜ起こるのか考察して
 論文にまとめたいと思うほど興味が刺激されていますよ」
>どうやら、一樹の興味を十二分に刺激したようだ。
822:
>そういえば、みくるはこの時代の教育を受けてどのような感想を抱くのだろうか。
古泉「そういえば、聞いたことありませんね」
みくる「ええっと……どこまでいえるのかな……」
古泉「禁則でしたら禁則で構いませんよ?」
みくる「そ、そうですね。たぶん未来の教育システムに関しては禁則に引っ掛かると思うんです」
みくる「でも、単元名や講義名なら大丈夫なのかな……?」
みくる「未来では義務教育課程の後期には時間平面理論を習います」
古泉「ほお……」
>かなりの基礎過程なのだろうか。
みくる「そうですね」
みくる「時間移動にはいろいろな制限や法律があるんですけど
 こっちでいう遠足……になるのかな、引率者と一緒に体験時間移動というものもあります。
 あ、いえ、職業体験になるのかな、うーん……」
>みくるは唸りながら黙ってしまった。
823:
古泉「朝比奈さん?」
みくる「ご、ごめんなさい。え、えっと。
 とにかく、時間平面理論の学習は教育の中でもそこそこの割合を占めています」
みくる「ただ、本当に自由に、というか制限をある程度外されて
 時間移動が許可されている人って本当に少ないんですよ。少なからず時代に影響を与えてしまいますから」
>みくるは、そのうちの1人……ということなのだろうか。
みくる「それに、なんて言ったらいいのかな」
みくる「たぶん禁則に引っ掛かってしまうので、うまく言えないんですけど……」
みくる「あたし、この時代の船が浮力で浮かんでいるって、
 キョンくんに言われるまで気が付かなくって……」
みくる「そこから察してもらえれば、嬉しいです」
古泉「ふむ。身近に浮力を使うものがないのでしょうか。
 ただ、相当に科学が発展しているのであろうことはうかがえますね」
>未来の船は浮力を使わないで浮かんでいるのか、もしくは船というものがなくなっているのか。
>いや、みくるは船の存在自体は知っていた。おそらく浮力を使わない船があるのだろう。
>なんにせよ、一樹がいったように、この世界より大きく発展していることは間違いなさそうだ。
830:
古泉「察するに、新理論や新法則が発見され、そちらに重きが置かれたため、淘汰とまではいかないのでしょうが
 表面的な部分だけしか触れられない、埃をかぶってしまった分野はありそうですね」
古泉「浮力自体は知っておられたようですから、学習内容の中にあるのでしょう。
 しかし浮力を含めて、未来では実用的ではない物理現象は身近にはなくなっている、といったところでしょうか」
古泉「もっというのでしたら、学者でもない限り、現在主となっている法則を詳しく理解しておられる方はおられないのでしょう」
古泉「それはこの時代でも言えることですがね」
みくる「ふふ。これだけの話で、そこまで推論を立てられるのはすごいです」
古泉「いえ、単純に僕は朝比奈さんを評価しているので、この推論に行きついただけですよ」
みくる「ふぇ、あたしをですか?」
古泉「浮力はともかく、朝比奈さんはこの時代をよく学習してきておられる」
>どういうことなのだろうか。
古泉「浮力による船が一般常識ではない未来です。
 たとえば、浮力に頼らない船が明日完成したとしましょう」
古泉「その船が一般常識として浸透し、
 浮力による船が忘れ去られるようになるには、少なくとも30年以上はかかるでしょう」
古泉「そして時間平面理論が提唱、実用化までされ、それに関する法まで整備されていることを考えれば、
 朝比奈さんがいた時代というのはさらに未来であるということは想像に難くありません」
831:
古泉「そうですね。朝比奈さんが50年後の未来から来たと仮定しましょう」
古泉「番長氏、想像してみてください。
 今から僕たちが急に50年前に飛ばされたとしてその時代の道具を使いこなせると思いますか?」
>……! それは……できないだろう。
古泉「今から50年前というのは、この日本で電話がようやく一般家庭に置かれるようになった時代です」
古泉「この時代の娯楽も朝比奈さんにとっては面白くはないでしょう。
 道具に関しては不便の一言に尽きると思います」
>たしかに、今の自分たちが50年前のテレビ番組を見て面白いとは思えないことと同じようなものだろう。
みくる「そ、そんなこと……」
古泉「ふふ、いいんですよ。卑屈になって言っているわけではないのですから。
 実際朝比奈さんからすればこの時代の携帯電話は、僕らが黒電話でしか通信手段がないこと以上に不便のはずです」
古泉「服装や調理器具やこの時代での筆記用具、ポッド、携帯電話などの現代用具の使い方。
 言語体系も多少変化をしているでしょう」
 
古泉「しかし朝比奈さんの振る舞いは、僕たち現代人と遜色がないのです。禁則事項はありますがね」
古泉「それも50年というのは僕の単なる仮定に過ぎない。
 もしかしたら100年以上先の未来かもしれません」
>自分の世界で100年前といえば、大正時代だ。
>……絶対にみくると同じように振る舞える自信はない。
古泉「ですが僕たちが見ている限りですが、不便そうな顔も見せていない」
古泉「これは驚嘆すべきことなのです」
古泉「その朝比奈さんが『浮力での船を知らない』となるのでしたら、あのような推論に至るのは、僕としては当然なわけですよ」
835:
古泉「と、少し喋りすぎましたね」
>正直、みくるの評価が今まで以上に上がっていく。
古泉「でしょう?」
みくる「か、買いかぶりですよっ!」
>みくるはどこか恥ずかしそうだ。
みくる「それに、何年後から来たとかそういうことはお話しできませんし……」
古泉「いえ、構いません。お聞きしても無駄だということは分かっていますし、
 なによりこの時代の授業の感想を聞く、という点から大きく外れてしまいました」
>そういえばそうだった。
みくる「え、えっと。そうですね。
 さっきも言ったように浮力がそういうような時代で、さらに時間平面理論に多く時間が割り当てられます。
 ですから、あたしの時代では深くやらないようなこともやっていて、この時代の授業や学問はなかなか新鮮で楽しいです」
みくる「こ、こんなところで大丈夫ですか……?」
>ああ。ありがとう。
古泉「ええ、現代人として、未来人の朝比奈さんが退屈でないなら幸いですね」
みくる「あ、あたし、そんなに偉くないですからっ」
>両手を胸の前で振って否定している。
836:
>ふと、みくるの影がいっていたことを思い出した。
>『だからわたしは、ここにただいるだけの存在、そうよね?』
>このただいるだけというのがどれほどすごいことなのか、みくるは分かっていないのだろう。
>未来人であることを悟られず、不自然な振る舞いをせず、圧倒的不便な環境にもかかわらず順応し適応する。
>きっと、おそらく。これはみくるにしかできないことだ。
みくる「そ、そんなじっと見つめないでください……は、恥ずかしいです……」
>みくるは、すごいな。
古泉「ええ、本当に」
古泉「(ですから油断もできないのですが。これは言わないでおきましょう)」
古泉「(できれば、思想が違うとはいえ朝比奈さんの一派とは――いえ。
 朝比奈さんとは敵対したくないものです。このままずっと、ね)」
みくる「あうぅ……」
>どうしていいかわからず、顔を赤くしてうつむいてしまった。
古泉「ふう、余計なお喋りでしたね。鶴屋さんの邸宅へ急ぎましょうか」
みくる「そ、そうですね! ちょっとのんびり歩いちゃいましたね」
>3人で雑談をしつつ鶴屋邸へ向かった。
852:
――鶴屋邸前。
>長々と塀の周りを歩き、現在は門の前についている。
>なんだこの大きさは。
>純和風家屋、と鶴屋さんが言っていたが、これはもはや門構えからして武家屋敷といった方がいいだろう。
>確かにこれならば、庭先にでカラオケでもしない限り隣家に騒音どころか声すら届かないだろう。
古泉「やはり何度見ても大きいですね」
>門は開かれているものの、勝手にはいっていいものなのだろうか。
みくる「あ、それでしたら鶴屋さんに聞いてみますね」
>みくるは携帯電話で鶴屋さんに連絡を取っているようだ。
>しかし、門から家までが遠い。
>60、70メートルほどあるのだろうか。
みくる「はぁい」
>電話は終わったようだ。
みくる「勝手に入ってきていいそうですよ。玄関で待っているそうです」
古泉「では、玄関まで行きましょうか」
853:
――鶴屋邸。
ガラッ
みくる「こんにちはぁ」
古泉「お邪魔します」
鶴屋「きたねっ!」
>鶴屋さんは、私服に着替えている。
>和装でもしているのかと思えば、かなりカジュアルな格好だ。
鶴屋「お、その顔。和装でも期待してたっかなっ」
>……敵わないな。この人には。
古泉「ふふ」
鶴屋「ま、そんなことはいいからさっ。ささ、あがってよっ。
 靴とか適当でいいからねっ」
鶴屋「あたしの部屋こっちだからっ」
>鶴屋さんに連れられて部屋に通された。
>純和風の部屋だ。女子高生らしさはまるでないと言えるだろう。
鶴屋「ちょっとくつろいでてよっ。もうちょっと用意してるからさっ」
857:
>そういえばハルヒ達はどうしたのだろう。
鶴屋「まだ来てないけど、ハルにゃんたちのほうが先に出たのかなっ?」
古泉「ええ。彼のネクタイを引っ張っておられましたよ」
みくる「どこか用事でもあるんでしょうか?」
古泉「いえ……部室でもおっしゃられていましたが、道中鉢合せをすることを嫌ったのでしょう」
古泉「そして、真打ちは遅れて登場する、といったところでしょうか。どこかで時間をつぶしているんだと思います」
古泉「単なる僕の勘なので外れていると思いますがね」
>でも、ハルヒなら考えそうだ。
鶴屋「あははっ、ハルにゃんらしいねっ」
鶴屋「じゃ、ちょろっとのんびりしててっ」
>鶴屋さんは、ぱたぱたと部屋から出ていってしまった。
みくる「用事って何でしょうね?」
古泉「お二人が調理するのですから、その調理器具のセッティングでしょうか。
 僕にはそれくらいしか予想がつきません」
みくる「あ、なるほど……」
>何を作るかだけでも考えておこう。
858:
みくる「ふふ、楽しみです」
>料理といえば、未来の料理はどのようなものだろう。
みくる「ふふ、ごめんなさい。基本的に未来のことは禁則事項なんです」
>なるほど……。
>そういえば先ほどの時間平面理論などは大丈夫なのだろうか。未来の料理よりよっぽど機密にしなければならないと思うのだが。
みくる「時間平面理論やTPDDは、この時代の人が名前だけ知っても利用できないので
 詳しい内容にまで言及しなければ話せるだけなんです」
みくる「それと……あたしがこの時代で接触しなければいけなかった人物、つまりキョンくんですね。
 そのキョンくんにあたしの身分を明かすため、調査に必要なために制限が外されているだけで
 本来はこれを話すこともも禁則事項です」
古泉「おや、初耳ですね」
みくる「古泉くんは、話していなくてもわかっていそうですけどね、うふ」
古泉「ふふ」
>そうなのか。
みくる「でも、そうですね。未来の料理より番長くんや涼宮さんの料理の方があたしは好きですよ」
古泉「それはなによりです」
みくる「あたしが、話せることは、普遍的なことばかりですね。海があるとか山があるとか。
 それだけなんです、ごめんなさい」
>みくるが謝ることじゃない。
859:
>ただ、自分の世界ではないとはいえ未来のことを訊いてみたいとは思う。
みくる「あ、確かに。異世界人の番長くんにならもし話をしてもあまり未来に影響は与えないのかな……?」
>いや、前にも言った通り自分がいつ帰ることができるかは分からない。
>みくるが帰還するより長い期間こちらにいるかもしれない。
みくる「そっか、そうですね。その場合番長くんにその気がなくても無意識に歴史を改変してしまう可能性がありますね……」
>ああ。それにみくるのように本来あるべき未来をしらないから、修正することもできない。
>……そうか。未来人の職業のひとつが分かった気がする。
古泉「どうしたのですか?」
>いや、未来人の職業について考えていただけだ。
みくる「……?」
>未来における職業のひとつに現状を維持する警察のような職業があるのではないだろうか。
>そうしなければ、悪意をもって時間転移してきたものによって、未来人たちにとっての『現在』を都合よく書きかえられてしまう。
>おそらく、未来では『現在を時の流れのままに維持しなければならない』という法律でもあるのだろう。
みくる「!」
古泉「ええ、それは僕も思っていました。
 ただ未来に関する法律を考察したこともあるのですが、あまりにもややこしいので棚上げしていました」
862:
>ややこしいとは?
古泉「では、少し前提を」
古泉「僕も『機関』に所属している身ですのでね、涼宮さんを取り巻く環境は調査していることはお話いたしましたよね?」
>ああ。
古泉「朝比奈さんもご存じではあるかと思いますが、未来人の一派は朝比奈さんの所属する組織だけではないのです。
 いえ、もしかしたら、同じ組織の別の思想対立かもしれませんが」
>一樹は、みくるに視線を送る。
みくる「ごめんなさい、お話しできません」
古泉「ふふ。ええ、わかっております」
古泉「ちなみに、その数ある派閥のなかでも涼宮さんに直接接触できたのは朝比奈さんだけです。たとえ偶然であってもね
 それもあって、僕は朝比奈さんを評価しているのです」
古泉「……話を戻しましょう。もちろんその未来人の一派の中には、
 口に出すのも憚られるような血みどろの抗争を巻き起こしてまで行動をする、といったかなりの過激派もいるのです」
古泉「もちろん、朝比奈さんの所属してるところは違いますがね」
みくる「……」
古泉「現状、そのような水際で止めている状態が続いています。
 ですから、少しでも戦況を有利に進めるために未来人に関する考察はかなりの段階まで行われているのです」
みくる「そう、なんですか……」
863:
古泉「様々なことを考えましたよ。未来人の航時条件、時間転移時にこちらへ持ち込めるもの、各派閥の思想――」
古泉「そのときに未来での法律のことも考えたのですが、どうしても矛盾点が出てしまう」
>矛盾……?
古泉「ええ。番長氏の言うように『現状を維持する』という法律があるとしましょう。
 それならば、過去への航時を全面的に禁止すればよいのです」
>……確かに。
古泉「ええ、そうなんです。たとえ歴史を改変してしまう犯罪者がいたとしても、そこだけ取り除けばよい」
古泉「ですが、そうしていない。朝比奈さんがここにいらっしゃいますからね」
みくる「き、禁則事項です」
みくる「あれ、禁則……? あ、そうか。この場合はいともいいえとも言えないみたいです……」
>なるほど。どうやら自動でフィルターがかかるようだ。
古泉「では別方向からアプローチしてみます。
 未来人が過去――僕たちでいう現在に介入しなければ、現状――僕たちでいう未来へと導けないとしましょう。
 『現状へ向かわせるために改変を行わなければならない』という法律があったとします」
古泉「ですがその場合、過去が改変された時点で未来は書き変わり、修正を行うという未来さえも掻き消えてしまう」
>いわゆる、タイムパラドクスというやつか。
古泉「ええ、そうなんです」
古泉「それに『現状』をどうやって認識しているのかも気になります。書き換えられると違和感を感じるのでしょうか?
 知らず知らずのうちに過去を改変されていたとしたのなら、認識も修正されてしまい現状も何もあったものではありません」
古泉「たとえ、未来人が介入することが規定事項であったとしても、何をもって"既定"と表現しているかもわかりません」
みくる「……」
古泉「なにか、過去の書き換えを認識する概念的な発明があるのかもしれませんが」
みくる「ごめんなさい、禁則事項なんです」
古泉「とのことです」
古泉「僕にはさっぱりわかりません。そう言ったわけで未来人の法律については棚上げをしていたのです」
>一樹は肩をすくませている。
876:
みくる「……」
>みくる?
みくる「え、あ、はいっ。な、なんですか?」
>いつになく真剣な顔をしていた。
みくる「あ、あはは……」
古泉「朝比奈さんは不思議に思っているのでしょう。
 なぜ、機関に所属している僕がこのような話を未来人である朝比奈さんの前でいうのか、とね」
みくる「……! え、ええ」
>そういえば、有希が言っていた。未来人と一樹の機関との間には相容れない思想があると。
古泉「警戒しなくてもいいですよ。
 ここで不毛な空中戦などするつもりは毛頭ないですから」
古泉「端的に言ってしまえば朝比奈さんの一派とは、敵対をしたくないから、ですかね」
みくる「……え?」
古泉「本来ならば、過激派との抗争については、それ以外の未来人との協力関係を取り付けるのが一番なのです。
 ですが、未来人――この場合は未来の組織のことを指します。と僕たち現代人では、どうあがいてもお互いに思想を理解することはできないでしょう」
みくる「……現代人ではなく、機関では、じゃないんですか?」
877:
古泉「ええ、そう受け取ってもらっても構いません。ですが、他の組織も同じようなことを思っているはずですよ」
>一樹たちの組織以外もどうやら暗躍しているようだ。
古泉「個人間での相互理解は未来人と現代人であっても突き詰めていけば可能なのでしょう。
 ですが――相手が組織となるとそれは難しい。それが、特定の思想の元で結成されている組織なら尚更ね」
古泉「ですから僕は敵対ではなく、できれば共闘関係を築きたいのですよ。
 敵の敵は味方、という理論ですね」
古泉「それに過激派との抗争を水際で止めているといったように、今の段階で他の組織まで相手にしたくはない。
 あぁ、余裕がないというわけではないのでご安心を。この平穏な日常を僕は満喫したい、それだけです」
古泉「もちろん、僕自身、朝比奈さんと敵対したくないという側面も持っていますがね」
>一樹は柔和に微笑んでいる。
古泉「朝比奈さんの所属する組織は、未来人の一派の中でも静観を基本とするかなりの穏健派であることは判っています」
古泉「そして僕たち機関も基本は静観をいう方向でまとまっている。
 もちろん、この世界のあり方についての考察はかなり方向が違いますがね」
みくる「……そう、ですか」
古泉「同盟を結ぼうという話ではありません。このような非公式な場でする話でもないですからね。
 朝比奈さんと敵対したくないという僕なりのアピールです」
みくる「それで、情報を開示したということですか?」
古泉「ええ、その通りです」
みくる「あたしは、何もしゃべることができませんよ?」
古泉「それもわかっています」
みくる「そうですか……」
879:
古泉「なにも堅苦しく考えることはありません。交渉では全くないのですから。
 ただ、僕個人の考えとして、知っておいて欲しかったから話したまでです」
古泉「機関の意思とは関係ありません」
みくる「……」
古泉「……不安でしたら、もう少しお話しましょう。
 打算的な部分がないといえば嘘になりますね」
古泉「いつか、こうやって話したことが何かしらの切り札になる、そう考えている部分もあります」
みくる「そんな――」
>みくる、今は話を聞いてあげよう。
みくる「は、はい……」
古泉「ありがとうございます。
 ですが、僕はそれ以上に今を楽しみたいのですよ」
古泉「彼がいて、涼宮さんがいて、長門さんがいて、番長氏がいて、朝比奈さんがいるこの環境をね」
古泉「僕は、これでも結構平凡な一高校生としての高校生活を楽しんでいるのです。職務上ここにいることに限らずに、です。
 そして、それが続けばいいと願っている」
古泉「当然機関としての仕事上、朝比奈さんを含むすべての未来人に注意を払わなければなりません。
 ですが、僕としては『古泉一樹』と『朝比奈みくる』という、ただの個人的な人間関係を続けたい。
 たとえ涼宮さんを取り巻く虚飾的な人間関係であってもね。そこから生まれる何かがあってもいいのではないでしょうか」
みくる「……」
古泉「もしかしたら朝比奈さんを籠絡し、未来へ組織のスパイに仕立て上げようとしている、と思われるかもしれません」
古泉「しかし、禁則としてフィルターがかかってしまう未来人からの情報を得ることは非常に困難です。
 情報を得たはいいが、通達できないとなればあまりにも不確実すぎる密偵となってしまうでしょう。それでは意味がない」
古泉「ですから、その可能性も排除していただいて構いません」
古泉「もっと端的に言ってしまえば、朝比奈さんと不穏な腹の探り合いはしたくないというのが本音ですね、ふふ」
880:
>そんなことしてたのか、2人とも。
古泉「ええ、まあ」
みくる「うぅ……」
>みくるは、気まずそうだ。
>というか、自分にこんなことを聞かせて大丈夫なのだろうか。
古泉「ご心配なく。知ったからといって消されるなんてことはありませんから」
古泉「それに、番長氏はこの世界の住人ではありません。何らかの組織にも所属していません。
 そして、外部に漏らすことも考えられません。ある意味最も安全な人物ですからね。大丈夫ですよ」
>そうか。それならばいいが。
みくる「あ、あのっ!」
古泉「はい」
みくる「あの、その……さっきも言った通りあたしはなにも情報を渡せません」
古泉「ええ」
みくる「それに、あたしは何度も言っているように、一調査員であってほとんど権限はありません。
 さっき古泉くんがいった切り札になるようなことも多分ありません」
古泉「ええ。もともと万が一くらいの可能性しか感じていませんでしたから問題ありません」
みくる「あたしも、ううん。あたしが所属している組織も古泉くんと一緒で、
 今の時代の機関を含むあらゆる組織の動向から眼を離すことはできません」
古泉「もちろん想定内です」
みくる「それでも、いいんですか……?
 古泉くんがしてくれた話に、情報に対して何の見返りも渡せませんよ……?」
古泉「ええ、それで構いません。
 僕としては、ただの人間関係――友人関係を続けることに意義があるのですから」
881:
古泉「……この街へきた当初の僕ならば、こんなことは思わなかったでしょう」
古泉「ふふ、不思議なものです。共に過ごした時間、というわけでもないのですが。
 苦難を共にしたことは事実でしょうし、何より――」
古泉「長門さんにも、言われてしまいました。『朝比奈みくると仲良くしてあげてほしい』とね」
みくる「ふぇ? な、長門さんですか?」
>有希が?
古泉「ええ。昨日長門さんを送り届けたときですね」
>そういえば……有希はみくるの影がいっていたこと聞いていた。だからだろう。
古泉「僕もさすがに目を丸くしましたよ。
 番長氏はまだわからないかもしれませんが、朝比奈さんならわかるでしょう。
 あの長門さんが、こんなことを言うなんて前代未聞です」
みくる「え、ええ……」
古泉「ですから僕も聞き返しました。そうしなければ何かよくないことが起こるのか、とね」
古泉「長門さんの解答は『違う』の一言だけでした。ですが、僕も察しましたよ。
 あの長門さんが情報統合思念体としてではなく『長門有希』として朝比奈さんを慮っていると」
古泉「それもあって、こういった運びとなったわけです」
古泉「……ふう、正直ここまでいうつもりはなかったのですがね。
 よい機会でしたので、こうして話させていただきました」
882:
みくる「あの、その……あたしも、これからよろしくお願いします」
みくる「古泉くんと、ただの朝比奈みくるとして仲良くしていきたい、です」
>みくるは、正座で三つ指をついて礼をしている。
古泉「ええ、改めてよろしくお願いします」
>一樹も同じように返す。
古泉「ですが、お互いに関係はなにも変わりませんね。
 監視というかお互いに調査はやめないですから」
みくる「ですが、心の持ちようは随分違うと思います」
古泉「ええ、そうかもしれません」
>一樹とみくるの間に新たな絆の芽生えを感じる……。
みくる「ふふ」
古泉「ふふっ」
>……しかしなんだか見合いをする二人の仲人のようになってしまった。
>しかし、そんな話をここでしていいのだろうか。
古泉「ええ、まあ。この鶴屋邸はほぼ絶対と言っていいでしょう。
 外部からの通信機を用いた盗聴は不可能ですから」
>そうなのか。というかなぜ一樹がそんなことを知っているのだろうか。
883:
古泉「すみません。これはあまり人前で話すことでは是とされません。
 特に、この屋敷内では。お許しを」
古泉「ですが、ただ知っている、とだけ」
>ああ。わかった。
古泉「ありがとうございます」
古泉「……番長氏が」
>なんだろうか。
古泉「いえ、もし番長氏が来なかったらこのようなことになっていないと思いましてね」
みくる「それは、そうですねぇ」
>……? 特に何もしていないが。
古泉「そんなことはありません。
 番長氏が来てからというもののSOS団内の人間模様は少なからず変化しています」
古泉「番長氏の言葉を借りるのでしたら『絆が強まっている』というべきでしょうか」
>絆が強まっているのは自分も感じると伝えた。
みくる「ふふ。番長くんがそういうならそうなんでしょうね」
古泉「……涼宮さんが望んでいたことは、これかもしれませんね」
884:
>どうした?
古泉「ずっと、なぜ番長氏が呼ばれたのか考えていたのですよ」
みくる「……?」
古泉「僕ははじめ、『何か面白い能力を持った異世界人に会いたい』だけだと思っていました」
>そうじゃないのか?
古泉「いえ、それならば入学式の当日や僕が転校してきた時期に同じくして呼ばれているでしょうし、
 何よりも番長氏でなくともよいのです。お話を伺う限り、ペルソナ能力が使えるのは番長氏だけではないのでしょう?」
みくる「そういえば……そうですね」
古泉「ですが、涼宮さんは今、このタイミングで番長氏をここへ呼びました」
古泉「それはなぜか」
>分かったのか?
古泉「ええ。といっても仮説の域をでませんが」
みくる「どういうことなんですか?」
古泉「番長氏には以前にもお話したと思いますが、
 涼宮さんは『今』が容易く崩れてしまうのではないかと危惧しています」
古泉「それは、朝比奈さんが僕たちより一足先に卒業してしまうことや、
 誰かが突然転校してしまうことだってあり得るかもしれない、と考えているのではないかと思います」
古泉「実際、涼宮さんと彼のクラスでは突然カナダへ留学してしまった方がいますからね。
 涼宮さんはその可能性を身近に感じているわけです」
>なるほど、そうなのか。
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