ショタ魔王「おねーさんって弱いんだね」女勇者「なんですって!」back

ショタ魔王「おねーさんって弱いんだね」女勇者「なんですって!」


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魔王城──
女勇者(ついにここまで来たわ……!)チャキッ
女勇者(この扉の向こうに、魔王がいるはず!)
女勇者(魔族の長である魔王を倒せば、配下である魔族もその力の大半を失う!)
女勇者(つまり、人間の勝利が決定的になる!)
女勇者(この戦い……絶対負けるわけにはいかないわ!)
女勇者「魔王、いざ勝負!」
バァンッ!
女勇者は勢いよく、扉を蹴破った。
2: 以下、
魔王の部屋──
魔王「やぁ、いらっしゃい」
女勇者「え……?」
魔王「待ってたよ、おねーさん」
女勇者(ウソ……こんな少年が魔王だっていうの……!?)
女勇者(いえ、油断大敵! きっと見た目だけで──)
魔王「あ、もしかしておねーさん、ボクが子供だからって驚いてるでしょ」
魔王「一応いっとくとね、ボク本当に子供だよ」
魔王「多分、年齢だってお姉さんよりかなり下だと思う」
女勇者(変身していたり、ウソをついてるようには見えない……)
3: 以下、
女勇者「どうして? どうして、あなたみたいな子供が魔王なの……?」
魔王「実はね、一週間前まではお父さんが魔王をやってたの」
魔王「だけどお父さん病気で死んじゃったから、ボクが魔王になったんだ」
女勇者「そ、そうだったの……」
魔王「おねーさん、『こんな子供と戦うために来たわけじゃないのに』って顔してるね」
女勇者「!」ギクッ
魔王「だけど安心していいよ、おねーさんは無駄足じゃないから」
4: 以下、
魔王「だってボク、お父さんの遺志を継ぐつもりだし」
女勇者「!」
魔王「ここでボクを倒さないと、おねーさんの家族や仲間、みんな死んじゃうよ?」
魔王「だから、かかっておいでよ!」
女勇者(そうだ……私の戦いには人類の運命がかかっている!)
女勇者(相手が子供だからって、今さら退くわけにはいかない!)
女勇者「じゃあ……いくわよ!」
魔王「うん!」ワクワク…
女勇者「たあっ!」
シュバァッ!
女勇者は魔王の脳天めがけ、剣を振り下ろした。
5: 以下、
スカッ!
女勇者「!?」
女勇者「消え……た……!?」
魔王「おねーさん、おねーさん」
女勇者「!」ビクッ
魔王「こっちこっち、後ろだよ?」
女勇者「くっ!」クルッ
女勇者(完全に後ろを取られてた……! この私が……!?)
女勇者(今の動き……まったく見えなかったわ……!)
6: 以下、
女勇者(今度はちゃんと狙う……!)チャキッ
女勇者「たあっ!」ブンッ
魔王「よっと」ヒョイッ
女勇者「でやっ!」シュッ
魔王「ほいっ」ヒョイッ
女勇者「だああっ!」ブオンッ
魔王「うわっと」ヒョイッ
女勇者の剣は空を切るばかりで、まったく当たらない。
女勇者(くっ、なんてすばやさ……!)ハァハァ…
魔王「おねーさん、息上がってるけど、だいじょーぶ? 少し休む?」
女勇者「へ、平気よ!」
女勇者(私は風よりいといわれる魔物だって倒してきた……!)
女勇者(なのに、この子のスピードはあの魔物と比べても遥かに上だわ……!)
7: 以下、
魔王「んじゃーさボク、動かないであげるよ!」
女勇者「!」
女勇者「いっとくけど、本当に斬るわよ……!」
魔王「もっちろん!」
魔王「むしろ、最後のチャンスだってぐらいの気合でかかってきてよ!」
女勇者「分かったわ……」
女勇者(動かないって分かってる相手を斬るのは気がひけるけど、非情にならなきゃ!)
魔王「さ、いつでもいいよ!」
女勇者「でぇやぁぁぁっ!」
ブンッ!
8: 以下、
キィンッ!
女勇者「…………!?」ググッ…
女勇者の剣は、魔王の皮膚で止まっていた。
女勇者(ウソ、刃が通らない!)ググッ…
女勇者(人間の子供みたいな華奢な体で、そこまでの硬度だというの!?)ググッ…
魔王「ボクね、魔力がお父さんよりずっと強いみたいでさ」
魔王「生まれつき、薄い魔力シールドがずっとボクを守ってるんだ」
女勇者(ウソ……父親より上ですって……!?)
女勇者(彼の父、つまり先代魔王だってとてつもない強さだったはずなのに……!)
魔王「だから今ぐらいの一撃じゃ、ボクにかすり傷だってつけられないよ」
魔王「遠慮せず本気できてよ、おねーさん」
女勇者「……分かったわ」チャキッ
9: 以下、
女勇者(全力を出す!)キッ
魔王「おねーさん、いい表情するね! かっこいいよ!」
女勇者(私の全魔力を剣に込める!)ブゥゥン…
女勇者(鋼鉄のゴーレムでさえ一刀両断にした一撃で、この子を倒す!)ブゥゥン…
女勇者の剣が神々しい光を帯びる。
魔王「おお?、かっこいい!」ワクワク…
女勇者「あなたは魔王になったばかりの子供で、恨みがあるわけじゃない……」ブゥゥン…
女勇者「だけど、今からあなたを斬るわ」ブゥゥン…
魔王「さ、かかってきてよ!」ワクワク…
女勇者「だああああっ!」
ビュオアッ!
10: 以下、
キィンッ!
女勇者最大の一撃は、指一本で受け止められていた。
女勇者「ウ、ウソ……」
魔王「ねぇ」
女勇者「!」ビクッ
魔王「これがおねーさんの本気? だとしたら、ボクが思ってた以上に──」
魔王「おねーさんって弱いんだね」クスッ
女勇者「なんですって!」
女勇者(私が弱い……!? そんなはずない!)
女勇者(私は女ながら勇者の血を引き、男たちにも、魔族にも一度も負けなかった!)
女勇者「まだよ! 私は──“勇者”はこんなものじゃないわ!」
女勇者「うわぁぁぁぁぁっ!」
魔王「…………」クスッ
11: 以下、
女勇者「だああっ!」
キンッ!
女勇者「でりゃあああっ!」
キィンッ!
女勇者「はああああっ!」
ギンッ!
女勇者の剣は幾度となく、魔王の体にヒットするが──
魔王「おねーさん、ごめん」
魔王「痛くもかゆくもないや」
女勇者「…………!」
女勇者(そんな……私の全力が……!?)
12: 以下、
女勇者「あ……ああっ……!」ガタガタ…
魔王「どしたの、おねーさん? もしかして、武者震いってやつ?」クスッ
女勇者「ああ……!」ガタガタ…
魔王「じゃ、そろそろボクから攻撃させてもらうね」
女勇者「ひっ……」ゾクッ…
女勇者は生まれてはじめて心の底から震えあがった……。
真の恐怖と決定的な挫折に……。
女勇者「あ……う……」ガチガチ…
恐ろしさと絶望に涙すら流した。
これも初めてのことだった……。
13: 以下、
魔王が攻撃態勢に入る。
女勇者「ひ……ひぃ……」ガタガタ…
魔王「そう怯えないでよ、本気なんか出さないから」
ベチッ!
女勇者「あぁうっ……!」ヨロッ…
バシッ!
女勇者「うあっ……!」ドザッ…
女勇者(全身をえぐられるような痛み……! つ、強すぎる……!)ピクピク…
魔王「えぇ?? もう終わりなの? まだたった二発だよ?」
魔王「ほら立って立って」グイッ
女勇者「うっ……うっ……」グシュッ…
魔王「おねーさん、勇者なんだから泣いちゃダメだよ?」
魔王「ほら、どんどんいくよ!」
バシッ! ペチッ! ペチンッ!
14: 以下、
女勇者「う、ぐぐ……」ピク…ピク…
魔王「おねーさん、生きてるー?」
女勇者「う、あ……」ピク…ピク…
魔王「アハハ、ピクピクしてる」
女勇者「…………」グシュッ…
魔王「…………」
魔王「泣かないで、おねーさん」
魔王「ボクの攻撃はおねーさんにまったくダメージを与えてないからさ」
女勇者「え……?」
15: 以下、
魔王「だって今までのボクの攻撃は」
魔王「派手におねーさんをふっ飛ばしたりしたけど」
魔王「おねーさんの体には傷一つつけてないから」
女勇者「ど、どういうこと……!?」
魔王「よーするに、おねーさんが“ものすごい攻撃をされてる”と錯覚しちゃうような」
魔王「“なんでもない攻撃”をしてたってわけ」
魔王「試しにおねーさん、手足を動かしてみなよ。普通に動くでしょ?」
女勇者(う、動く……)クイクイッ
魔王「へへっ、すごいでしょ!」
魔王「もしボクがちゃんと攻撃したら、多分おねーさん死んじゃってたもんね」
女勇者「…………」
16: 以下、
女勇者「な、なんで……!」
女勇者「なんでこんなことするの!?」
魔王「え……」ビクッ…
女勇者「あなたは私よりずっと強い……いえ、世界中のだれより強いかもしれない!」
女勇者「だからって、こんな風に人を弄んで楽しい!?」
魔王「お、おねーさん……ボクは──」
女勇者「もういいわ、早く殺してよ!」
女勇者「私を殺して、人間も滅ぼして、ずうっと命を弄び続けるがいいわ!」
女勇者「魔王らしくね!」
魔王「あ……」
17: 以下、
魔王「ごっ……ごめんなさいっ!」ペコッ…
女勇者「え……?」
魔王「ボク、お父さんより強いからお父さんにずっと閉じ込められてて……」
魔王(っていってもその気になればいつでも出られたんだけど……)
魔王「だけどお父さん死んじゃって、ボク魔王にされちゃって」
魔王「ホントはイヤなのに……断れなくって……」
魔王「それにおねーさんは魔王を倒すために来てるわけだから」
魔王「それを無駄にしちゃいけないと思って……」
魔王「あ、あと……人間に会うの初めてだからワクワクしてて……」
魔王「えぇと、えぇと、うまく説明できないんだけど」
魔王「と、とにかくっ……ごめんなさいっ!」
女勇者「…………」
18: 以下、
女勇者「ようするに」
女勇者「あなたは本当は魔王になんかなりたくなかったけど」
女勇者「魔族の期待は裏切れないし、魔王を倒しにくる私の冒険を無駄にしたくもない」
女勇者「それに長年の監禁生活で退屈してたし、人間と会うのも初めてだった」
女勇者「だから“勇者”である私と“戦い”という形で遊ぼうと考えた」
女勇者「……で、はしゃぎすぎたあなたに怒った私に謝ったってとこかしら?」
魔王「うん、そうそう! さっすがおねーさん! 分かりやすい!」
女勇者「はぁ……」
魔王「ごめんね、おねーさん」
魔王「おねーさんのリアクションが面白くて、ついやりすぎちゃって……」
女勇者(面白くてって……)
女勇者「いいわよもう、許してあげる」
魔王「あ、ありがとう!」
19: 以下、
女勇者「う?ん……じゃあ私、どうしたらいいんだろ」
女勇者「あなたを倒すのは不可能だし、あなただって死にたくないでしょ?」
魔王「ボ、ボク……がんばって魔族のみんなを説得するよ!」
魔王「人間たちの世界を攻めちゃダメだって!」
魔王「だから……おねーさんはもう帰っていいよ! ボク絶対やるから!」
魔王「約束する!」
女勇者「……ねぇ」
魔王「なに?」
女勇者「遊んであげよっか?」
魔王「え……」
20: 以下、
女勇者「本当は戦いなんかじゃなく、私と遊びたかったんでしょう?」
女勇者「まさか、魔族の王が部下に遊んでもらうわけにもいかないだろうしね」
魔王「う、うん!」
女勇者「じゃあ何をしたいの? 何でもいいわよ」
魔王「じゃ、じゃあね……鬼ごっことかかけっことかやりたい!」
女勇者(ゲ……どっちも私のスピードじゃ、勝負にならないわね)
女勇者「まいっか、やりましょう。まずは鬼ごっこからね」
魔王「ありがとう!」
二人は広い室内をたっぷり走り回ることになった。
21: 以下、
女勇者「ふうっ、すっかり汗かいちゃった」
魔王「じゃあさ、お風呂入ってくれば?」
魔王「いっとくけど、魔王専用のお風呂は広いからね」
魔王「おねーさん、きっとビックリするよ!」
女勇者「う?ん……」
女勇者(お風呂には入りたいけど、敵地で無防備になるわけだし、ちょっと不安かも)
女勇者「ねえ、案内と護衛をかねて、あなたも一緒に入ってよ」
魔王「え!?」ドキッ
魔王「ダ、ダメだよ! 男と女はいっしょにお風呂入っちゃダメなんだよ!」
女勇者「なにいってんの、子供のくせに」
女勇者「さ、入りましょ」
魔王「うう……」
22: 以下、
魔王の浴室──
女勇者「へえ、立派なお風呂ね。いうだけのことはあるわ」
魔王(お、おねーさん……)チラッ
魔王(おっぱい大きいなぁ……)
魔王(お母さん生きてたら……こんな感じだったのかなぁ……)
女勇者「じゃあ、体洗ってあげるわ。こっち来なさいよ」
魔王「え、いいよ! ボク、自分で洗えるよ!」
女勇者「だけど、ずっと閉じ込められてたんでしょう?」
女勇者「私がキレイに洗ってあげるから……ね?」
魔王「う、うん」
23: 以下、
女勇者「ほら、前を隠さないの! 洗えないでしょ!」
魔王「ここはいいよぉ!」
女勇者「ダメよ、ちゃんと洗わなきゃ」ゴシゴシ…
魔王「あっ!」ビクッ
女勇者「!」
魔王(ダ、ダメだ……我慢してたのにおねーさん見てたらどんどん……)ムクムク…
魔王(どんどんおっきくなっちゃう……恥ずかしい……)ムクムク…
女勇者「…………」クスッ
女勇者「我慢しなくていいのに」ゴシゴシ…
魔王「あ、あっ……!」ビクッ
24: 以下、
女勇者「ふふ……大丈夫よ。怖いことなんて、なぁんにもないんだから」
女勇者「心配しないで」ゴシゴシ…
魔王「あ、ああっ、あっ……」
女勇者「はいっ」ゴシッ…
魔王「!」ブルッ…
魔王「あっ! うああっ……! ──あっ!」ビュルビュルッ
魔王「ああっ! うっ!」ビュルビュルッ
魔王「おねーさん、かけちゃってごめ……ああっ!」ビュルルッ
魔王「うあっ! あうぁっ!」ビュルルッ
魔王「あっ、ああっ、あっ……」ビクッビクッ
魔王「ハァ……ハァ……」ビクッ… ビクッ…
女勇者「どう、スッキリしたでしょ?」
魔王「うん……スッキリした」モジモジ…
女勇者(ふふっ、本当に子供なのね。強さは私よりずっと上なのに)
女勇者(でも──)
25: 以下、
女勇者「ねえあなた今、魔力シールドってやつが解けちゃってない?」
魔王「あ、ホントだ……!」
女勇者「もしかして、気を許した相手には無効だったりする?」
魔王「今までお父さんにすら気を許したことなかったから……」
魔王「そうなのかも、しれない……」
女勇者「つまり今のあなたなら、私でも簡単に倒せちゃうわけだ」クスッ
魔王「あ……」ビクッ
女勇者「──ってもちろん、そんなことしないけどね」
女勇者「ところであなた」
女勇者「さっきから私の胸をチラチラ見てるけど、どうせならさわってみたら?」
魔王「ダメだよ、そんなの!」
女勇者「遠慮しないの、子供なんだから」ギュッ…
魔王「ああっ……」ギュゥゥ…
女勇者の乳房に、魔王の顔がうずめられる。
26: 以下、
魔王(おっきくて、やわらくて、あったかい……)フカフカ…
魔王(おねーさん、ずるいよこんなの……)
魔王(あ、おねーさんの鼓動を感じる……)
魔王(トクントクンって、優しいリズムで鳴ってる……子守唄みたいだ)
魔王(このまますやすや眠るのもいいし、もっとおねーさんに遊ばれちゃうのもいい)
魔王(どっちにしろ、ボクはもうおねーさんに勝てないんだ)
魔王(だって……)
魔王(“気持ちいい”は“強い”より、ずっとずっとすごいことなんだもん……)
          おわり
27: ◆pwkWzqf4Ms 2014/07/08(火) 01:46:15 ID:hspuazaU
おしまい
29: 以下、

30: 以下、
興味深い
31: 以下、

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