列車で中国横断して中央アジアまで行ってきたで!3back

列車で中国横断して中央アジアまで行ってきたで!3


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2019年の話や
ワイは冒険家やっとるんやけど、海外の辺境地で起こった事とかを画像や動画交えながら語っていくやで
スレ立ては1年ぶりなんやけど、中央アジアのキルギスでのこの話は、これで最後や
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1 :
ちなみに今は次の冒険やるために北欧フィンランドのヘルシンキにおるで
歩道もぜんぶ凍っとって、街はこんな感じや
あとダイマやけど、もしワイの活動を応援して下さる方いらっしゃったら、本やグッズを買ってもらえるとめちゃくちゃ助かるで
本(新潮社)
https://www.amazon.co.jp/dp/410353611X/
グッズ(今まで旅してきた動物たちのパーカーとか)
https://suzuri.jp/RealRPGCaravan
Twitter:https://twitter.com/GoHarumaRPG
ちな、前スレはスレタイでぐぐってくれれば出てくるで
【前回までの】
・列車で中国横断して中央アジアまで行ってきたで!
・列車で中国横断して中央アジアまで行ってきたで!2
2 :
日本は深夜やぞ
12 :
>>2
せやな、自差は7時間や
3 :
なっつ久しぶりやな
12 :
>>3
久しぶりー!
5 :
面白そう 
7 :
テレビ出た人?
12 :
>>7
せやで
よう覚えとるな
13 :
春間豪太郎?
43 :
ロバと1000キロも歩いたんやな
よくぞ
54 :
>>43
根性はいろんなことを可能にするんや!
今回(リアルタイム)も雪に埋もれた道を500kmくらい歩いて、北極圏で暮らす人々やトナカイに会いに行く予定やで!
16 :
おんJ民ってたまにすごい奴いるよな
21 :
あらすじ
数年前にイヌワシや狼と一緒に廃倉庫で暮らしてる男の家で居候しとったことがあるんやけど、彼に久しぶりに会いに行ってみたで
けど仕事でおらんかったし彼の母親はかなりの日本人嫌いで暴力的やったから、彼が帰って来るまでうまい事隠れて母親をやり過ごそうとしているところや
以下、猛虎弁での長文はくどすぎるから標準語になるけど、すまん
2年前、居候してイヌワシやオオカミたちと暮らしていた廃倉庫の前で、建物の影に隠れて老婆に見つからないよう息を殺す
老婆に見つかれば何かしらの暴行を受けるかもしれない
廃倉庫前にいるはずの獰猛な大型犬にも気をつけないといけない
犬は繋がれているだろうだけどかなり力が強かったから、あまり怒らせると繋いでいる杭か犬小屋を壊してこちらへ危害を加えるかもしれない
廃倉庫の住人アマンの許可はもう得ているから、老婆や大型犬に気付かれないように中に入れれば朝まで凌ぐことができるだろうけど、入り口は老婆の家のすぐ近くなので老婆たちが食事している今行くとバレてしまう
気温は氷点下に近くて、満月が辺りを照らす中、50mくらい離れた茂みの暗がりからは放牧中の馬が草を食べる音がしていた
あまり長くこのままでいると体が冷えて、いざというときに素早く動けなくなる
もう少しだけ様子を見てからできるだけタイミングよく強行するしかないかもしれない…
…と、考えていると、老婆の家から懐中電灯の明かりが一つ出てきて、何かを探すように辺りを照らし始めた
…え、
こっち来てるじゃん!!!
31 :
懐中電灯の主は、あちこち照らしながらも廃倉庫の方へ向かっているようだ
このままだとすぐに見つかる!
そう思って、音を立てないように気をつけながら背の低い塀を越えて廃倉庫の裏へ回った
角からそっと表を覗いていると、懐中電灯の明かりは廃倉庫前を何度か照らした後、老婆の家へと帰っていった
アマンの母親(老婆)か父親だろう
たぶん、さっきおれが廃倉庫の近くで暮らす人たちと話をしたから、それでおれが来ているのが伝わってしまったんだろう
見つかったらどうなっていたんだろう…
ほっとしながら空を見上げると、満月とたくさんの星が輝いていて綺麗だった
老婆や大型犬を警戒する緊張感と凍えるような寒さが相まって、普段の何倍も美しく煌めいて見える
やっぱりおれは、その日の寝床もままならないような生活をし続けるのが幸せらしい
そんな風に確信しながら、探しに来たということは夕食は終わったんだろうし今老婆はベッドメイクをしているはず…と考えて倉庫への侵入を決行することにした
老婆たちが寝静まってからだと却って倉庫前の茂みを移動する音が目立ってしまうからバレる確率が高まるし、今しかない
そっと廃倉庫の入り口へ近づいていく
が、すぐに匂いで大型犬にバレてしまったらしく、犬がこちらへ向けて大きな声で吠え始めた!
とはいえ、幸い大型犬はさっきから何度か他の犬の遠吠えに反応して吠えていたから、しばらくは老婆も不審に思わないだろう
(大型犬ってのはコイツや。攻撃的やし、人の頭より大きい肉塊をバリバリ食うところを何度も見てるからなかなかおっかないで)
犬の吠える声に紛れながら小走りで廃倉庫の入り口へ行って、扉をとめている金具を外して中へそっと入る
35 :
廃倉庫は扉含めて2年前から変わっていないみたいだ
扉の隙間から指を出して、金具を動かしてもとの状態に戻しておく
ちょっと時間はかかったけど、元通り外から金具でとめたようになっているはずだ
倉庫へ入ってからは大型犬も吠えるのを止めていたから、後は奥にあるアマンの秘密基地で明かりをつけずに朝まで凌げばステージクリアだ
2年前と違って倉庫の中には鶏と七面鳥が何匹かいるようだったけど、もう寝ているから問題なさそうだった
奥へ進んでアマンの秘密基地へ入ってみたものの、寝床の簡易テントと電熱ストーブ以外はほとんど何もものがなく、かなり殺風景な部屋になっていた
アマンは「暖かくしていて良い」と言ってくれていたから、2年前と同じように、電熱ストーブから伸びているむき出しの導線2本を同じくむき出しのコンセントの金属穴に突っ込んでストーブを起動させる
この程度の明かりなら外へは漏れないから老婆にバレることもない
部屋全体を暖めるだけの熱は無いにしても、手をかざせば寒さを凌ぐことはできそうだった
この状態で朝まで凌がないといけないという謎の状況に対して謎の満足感を覚えながら、アマンはいつ頃帰ってくるだろうかと考える
今の所アマンからの連絡は無いから、もしかすると明日の昼頃になるかもしれない
キルギスの一般的な飼育法がなされていると仮定すると、明日の早朝にはアマンの父親が七面鳥たちを放牧しに廃倉庫にやってくるだろうから、その時が一番危険だ
父親はそこまで反日という感じでも無かったし、2年前は出会ってすぐ羊の解体を手伝って何なら少し仲良くなっていたくらいだから、見逃してくれる可能性は高い
…老婆におれがいると話してしまったら、老婆がシャベルを両手に突撃してくるかもしれないけど…
不安は色々とありながらも、少なくとも早朝までは安全が保証されていそうだから、明日のアマンとの再会に備えて軽く睡眠をとることにした
電熱ストーブを消して、簡易テントに入って入眠
https://youtu.be/ZizE9hnvFQ8
25 :
はえ?すっごい
なんで母親は日本人嫌いなんや?
32 :
>25
ワイも後になって知ったことで、詳しく書くとまずいんやけど、あの村では当時日本人が人間関係でやらかして問題を起こしたんや
当事者は追放というかその村を去ることになったんやが、日本人は信用できんという考えが一部の村人に根付いてしまったようや
そのアマンの母親はその一件に深くかかわっとっていわば被害者のような立場やったから、なおさらやな
44 :
次の日の朝、起きてアマンに連絡してみる
…つながらない
やっぱりここへ来るまでのどこか途中の町で寝ているんだろう
諦めてトイレへ行こうと廃倉庫の裏口へ行こうとした所、入り口が空いていて七面鳥たちがいなくなっているのに気付いた
やっぱりアマンの父親が早朝やってきて扉を開け放ったんだろう
おれが寝ていた秘密基地はそこからさらに2部屋ほど奥にあるから気付かれずに済んだらしい
音を立てないように気を着けながら裏口へ走って、用を足して(キルギスのトイレは基本的に屋外にある)また秘密基地に引きこもる
これで一先ず、老婆には存在をバレずにアマンに会えそうだ!
そして昼過ぎ、アマンが帰宅
腕にはイヌワシが乗っている
おれ
「おぉ!アマン!!!
元気?」
アマン
「Go!
元気元気!」
アマンはそう言ってイヌワシを廃倉庫の中へ放ち、おれとハグをして挨拶をした
おれ
「こいつは?
アイマック…?」
アイマックというのは以前アマンが飼っていたイヌワシだけど、おれが覚えているアイマックよりも顔が細い気がする
アマン
「あぁ、そいつは新しいイヌワシのアウグル
山で捕まえて来たんだ!」
おれ
「さすがだな…笑」
アマンに連れられて外に出ると、昨日の大型犬が友好的な挨拶をしてきてくれた
47 :
>>44箱を破壊しそうやな
53 :
>>47
そのうち壊れるやろなぁ…
壊れるのが今でなくて良かったで…
51 :
そしてアマンと一緒におれがシロと出会った裏庭に行くと、2年前にいた2匹よりも体の大きいオオカミが1匹、隅に繋がれた状態でウロウロと素早く動き回っていた
こいつも山で捕まえたとのことだ
相変わらずアマンは、イヌワシにしてもオオカミにしても、獰猛な野生動物に対して逞し過ぎる男だ
いつか機会があったら、アマンが捕獲するところを間近で見て勉強して、おれもやってみたい
アマンやイヌワシ、狼たちがひっそり暮らしてる廃倉庫はこんな感じ
52 :
そしてその後はアマンの新居で食事をすることに
新居の庭には既にアイマックがいて、アマンに対して甲高い声で鳴き餌をねだっているようだった
2年前はアマンの妻子はナリンで暮らしていたから、アイマックの世話の為に半ば別居状態だったけど、今ではうまく折り合いがついてこのアリシュ村の家でアイマックと共に暮らせているらしい
食事中、アマンはおれの冒険について「凄いだろ?」と熱心に娘さんに説明していたけど、当の娘さんは苦笑いだ
おれ
「それにしてもアイマックは相変わらずだな!
強いし、美しい!」
アマン
「だろ!
…って、おい!」
おれの意見に対して「どこが?」と顔をしかめた娘さんを、アマンがたしなめる
どうやらこの娘さんは男のロマンってものがイマイチ分かっていないらしい
アマンと一緒に暮らすことで少しずつ変わっていくに違いないから、今後に期待だ
59 :
さて、アマンに別れを告げて、今度はコチコルというキルギス中部にある町へ
ビシュケクに来てからこれまで中々時間が作れず遅くなってしまったけど、2年前1000km以上の道のりを一緒に旅した馬の相棒、セキルの近況を確かめることにしよう
乗り合いタクシーを最寄り地点で降りて、30分ほど歩いて2年前にセキルを売ったコワンの家へ
60 :
家へ到着するも、どうやらコワンは奥さんと共に町へ行っているらしく、羊を見失ったというアルセン、エッセンと先に合流することになった
アルセンはロバに乗って移動している
2年前は長女のアッデリーナと2人がかりでも馬を動かせていなかったけど、今ではロバに乗れるようになったらしい
※gifアニメ
60 :
…といっても、降りて手綱を引いている時なんかは時々ロバに反抗されていたから、ロバからもまだ認められていないようだった
コワンが帰ってくるまで時間があったから、エッセンとそこに居合わせた男と一緒に日が暮れるまで羊の群れを探すことになった
結局暗くなっても羊は見つけられなかったけど、どうやら別行動で探していたアルセンが見つけたらしく、無事に羊たちは家へ戻ることができたようだ
62 :
そして夕方、コワンと奥さん、そしてアッデリーナが帰宅
長女のアッデリーナは背が伸びて少しだけ大人びている
コワン
「Go!
元気か?
よく来た!お茶にしよう!」
おれ
「元気だよ
コワンも変わらず元気そうだね」
コワン
「この家には何日くらいいたい?」
おれ
「いや、元気にやってるか気になって寄っただけだから明日にはトロク村に向けて帰るよ
今晩泊めてもらえると非常に助かるんだけど…」
コワン
「もちろんだ
こんな真っ暗なんだから泊まる場所なんて他にないからな!笑」
コワンは2年前より少し陽気になった気がする
何か良いことが重なったんだろうか?
コワン
「あと、Go、『マキシムス(セキルの元の名前)はどこ?』って知りたいんだろ?」
おれ
「あ…それも知りたいな」
2年前、コワンがセキルを買い戻した時は長期的に飼う予定だったみたいだけど、その後野犬に背中を咬まれて怪我をして以来鞍がつけられなく(?)なったらしく、売りに出す可能性も出てきていたので気になっていた
帰国直前にセキルを見たときには傷はもう治っていたから、鞍を着けられないなんてことは無いはずなのでよく分からないけど、コワンのプライド的に背中に傷のある馬に乗りたくないだけかもしれない
63 :
コワン
「マキシムスな、半年前に遊牧民に売ってしまったよ
今は1年中山奥の草原を移動して暮らしてるだろう」
あぁ、少し来るのが遅かったらしい
おれ
「いまの飼い主の方の電話番号分かる…?」
コワン
「電話どころか電気も無い放牧地だから番号は無いよ」
どうやらセキルは遊牧民の手に渡ってしまっているようだ
その後、いまセキルが遊牧されているであろう範囲をコワンから教えてもらいはしたものの、半径何十kmもの範囲でかなり広いようだった
本気で探したとしても1、2週間程度では飼い主に会えないだろうし、運良く飼い主の友人に会えたとしてもセキルの居場所はわからないだろう
今回の滞在中にセキルに会うのは難しそうだ
まあ、車が苦手なセキルのことだから、車が立ち入れない山奥での生活を楽しんでいるに違いない
町で暮らす人よりも遊牧民の方が馬を大切にする傾向がある(移動手段が馬しか無いから)し、これまで以上に大切に扱われているに違いない
https://youtu.be/idZRWo11D6s
64 :
寝る直前、スマホを見るとアイベックからのビデオ通話の不在着信が4件来ていたので折り返すことにした
どのみち明日会えるんだけど、昨日も「寝る場所はちゃんとあるの?」というチャットが来ていた(廃倉庫で老婆に怯えながら寝ることになったとはさすがに言えないから大丈夫だとだけ返事した)し、意外にもアイベックはおれを心配しているのかもしれない
アイベックと特に中身のないビデオ通話をして、その後就寝
翌日、朝7時、コワンの家を出発してコチコルの中心地へ向かう
実はおれは、これから標高3,000mのところにある雪に閉ざされた湖へ行こうとしていた
人間の足ではかなり厳しいので、馬に乗っていく予定だ
悪友のアイベックと一緒に行くことになっているので、アイベックの馬の装備などもある程度しっかりしたものにした方が良い
この日は週に1回のマルバザール(動物市場)がある日だから、ソンクル湖に挑む為の蹄鉄を仕入れることができるはずだ
マルバザールは朝8時頃から始まり、羊や馬、馬具や綱などの動物に関わる物の他に衣服や装飾品、家具なんかも売りに出される
しばらく動物たちを眺めたり飼い主の人と雑談をしたりしつつ、トロク村から乗り合いタクシーで来たアイベック、チョルポンおばさんと合流して蹄鉄を購入
蹄鉄を嵌めるのはアイベックの馬だから、サイズの合ったものを買うためにアイベックが選ばないといけない
65 :
その後、チョルポンおばさんの誕生日が迫っていたから、街の電気屋さんで誕生日プレゼントを買うことにした
2年前からあの家ではチョルポンおばさんが洗濯物を手洗いしていて大変そうだったから、9000円くらいの2槽式洗濯機をプレゼントすることにした
カメルーンで一人暮らしをしていた時はおれも洗濯物を手洗いしていたから、大変なのはよく分かる
本当は海外で知り合った人に高価なものをプレゼントするのは良くない(金目当ての付き合いになってしまって関係が崩れる恐れがある)けど、
チョルポンおばさんやアイダール、アイベックはおれの帰国後も時々チャットを送ってくれていてもう2年以上の付き合いではあるし、誕生日に何かあげた所で崩れるほどの関係でも無いはずだ
今回の居候中も滞在費などは一切払っていないから、
(日本では考えにくいことだけど、関係の深い人浅い人、様々な人が他人の家で食事をしていったりしばらく滞在したりすることのある文化に対してそれをすると、こちらの価値観を押し付けた形になるし、寧ろ良い関係にはなれないだろうから)
これまでの感謝を込めてのプレゼントでもあった
チョルポンおばさん
「Go、本当にありがとうね
これで毎日の家事がずっと楽になるわ!」
2年前はちょうど長男のアイダールが家を出て首都で働き始めた時期で、その後アイダールからの仕送りで冷蔵庫、テレビを買うことができたようだったから、今回おれが洗濯機を買ったことで昭和の三種の神器が揃ったことになる
ちなみにコイチュビットおじさんの家では寝る時とか誰も見ていない時でもテレビのMVチャンネルがつけっぱなしになっていたりするし、昼間やっているドラマや映画を見るのがチョルポンおばさんの日々の楽しみのようだから、テレビはかなり重宝されているみたいだ
チョルポンおばさんは掃除や食器洗いなんかを一通り済ませてから毎日のようにトルコ映画やドラマを観ていて、意外な展開になると「あらっ!」とリアクションを取って楽しそうに過ごしている
まあ、ドラマも映画も基本ロシア語吹き替えだから(ニュースやバラエティはキルギス語が多い気がする)、最大限楽しめているのはロシア語を流暢に話せるチョルポンおばさんだけかもしれない
https://youtu.be/ufFpUkjra4I
66 :
さて、帰宅後、なんとアイベックの馬がいなくなっていることが発覚
今頃はどこかの草原を駆け回っているのかもしれない
アイベック
「ダメだ、どっかいっちゃった
明日探すよ」
おれ
「えぇ、天気的に明日ソンクル湖へ向けて出発するのが良いんじゃなかったっけ?」
アイベック
「まあそうなんだけど、明日の朝探せば大丈夫だよ、多分」
蹄鉄も着けないといけないし、明日朝見つかったとして間に合うんだろうか…
コイチュビットおじさん
「Go!
洗濯機、ほんとにありがとうね!!
さぁ、これを飲みなさい」
コイチュビットおじさんは感謝を込めてウォッカを3杯連続でイッキさせてくれた
酒でほとんど酔わない体質だし正直わざわざイッキしなくても…とは思ったけど、おじさんなりの感謝のようだったから、ありがたくイッキさせてもらうことにした
コイチュビットおじさん
「そういえば今日、アメリカ人の登山家2人組が雪山装備と馬でソンクル湖へ行ったけど、雪が多くて行けずに諦めて帰ってきたらしいよ
もうソンクル湖には行けないんじゃないか?」
チョルポンおばさん
「ほら、Go、やっぱり無理なのよ
寒いし危ないから止めておいたら?」
67 :
おれ
「えぇ…
まぁ、無理だったら諦めて帰ってくるよ
無茶はしない」
おれがそう言うと、隣に座っていたアイベックがチョルポンおばさんたちから見えないようにおれの足をつつき、ウィンクをした
なんだこいつ、気持ち悪いな…
…と思いつつ、何となくアイベックの言わんとすることは分かった
どうやら「大丈夫だ」と言いたいようだ
多分チョルポンおばさんたちとは意見が対立するから表立っては言わないことにしたんだろう
その後、チョルポンおばさんたちが一瞬席を外した隙にアイベックはこちらを向いて、ニヤッと笑って小声でこう言った
「アメリカ人が無理だったって?
馬の乗り方しらないだけでしょ
俺とGoなら行けるよ! 行こう!!」
かくして、おれのソンクル湖へ行く計画は実行に移されることになった
さぁ、(アイベックの馬が見つかれば) いよいよ明日出発だ!
9 :
ほげー
ワイも10年くらい前に中央アジア行ったわ
トルクメニスタン行けなかったけど
17 :
>>9
トルクメニスタンは難易度高いな
19 :
>>17
アフガニスタンは行けた?
ホログでビザ取れなくなってからクッソ難易度上がったって聞いたけど
24 :
>>19
いや、行ったことないなぁ
国境付近でがっつり拘束されそうやし、なかなか厳しそうやなぁ…
29 :
>>24
ビザさえあればウズベキスタンの入出国よりゆるいで
22 :
ウズベキスタンに仕事で1年半住んでた
32 :
>>22
おー、えぇな!
ドローン持ち込み禁止でさえなければぜひ行ってみたいんやけどな…
26 :
ネット通じにくい地域ってどれくらいあるんや?
33 :
>>26
体感やけど、村でもなんでも、人が百人以上の規模で住んでるところは基本通じるな
山道とか村と村の間とかは通じひんことが多い
2 :■忍【LV1,しょうにん,1N】 22/02/23(水)21:19:53 ID:Fh22
つづきからぼちぼち書いてくで
長文は猛虎弁やとくどいから標準語にするわ
出発の朝、7時
おれ
「アイベック! 起きなくて良いのか?」
アイベック
「まだ寝る…」
アイベックはいつも通り二度寝を始めた
2年前も含め、母親に起こされるまでにアイベックが自発的に起きるのを見たことがないからこれは多分仕方のないことだ
朝8時半
チョルポンおばさん
「アイベック! 起きなさい!」
そして9時
アイベックが遂に布団から脱出し、紅茶を飲んでから馬を探しに出かけた
…と、思ったらものの15分程で戻ってきて、焦ったようすでおれに手伝うよう言ってきた
アイベック
「Go! 馬が見つかった!
追い込むの手伝ってくれ!」
外へ出ると、馬の群れと、馬に乗ってそれを追いかけるアイベックの友達の姿があった
群れの中には、少し小柄で俊敏な見覚えのある馬がいた
アイベックの馬だ
どうやらアイベックの馬は昨日から他の馬たちと一緒に群となって放牧を楽しんでいたらしい
アイベックが柵に覆われた家畜用スペースへ走っていって扉を開ける
おれは馬たちが反対方向へ逃げないようアイベックの友達と協力する役割らしかったから、友達との位置関係を考えつつ馬を追い込む
結果、ほとんど時間をかけずにアイベックの馬を柵の中へ閉じ込める事ができた
他の馬たちは皆外へ逃されたけど、たぶんまた飼い主が捕まえる時は同じようなことをしないといけないはずだ
アイベックは、不機嫌そうに鳴いたり鼻を鳴らしたりするアイベックの馬にじりじりと近づいてノトと呼ばれる馬具(馬を引いたりどこかへ繋いだりするのに必要な物。乗る時にはこれに加えて、馬に咥えさせるジュゴンという物が必要)を顔に被せ、捕獲は完了した
※gifアニメ
3 :
ちなみに2年前もそうだったけど、アイベックの馬は気性が荒く扱いにくい馬だ
小さい頃から遊牧生活をしていて動物の扱いが巧いアイベックだからこそ扱えているんだろう
アイベック
「よぉし捕まえた!
早く蹄鉄を着けにないと!
Goの乗る馬もそこで待ってるはずだから行こう!」
そんな訳で、蹄鉄技師兼馬貸しのいる村の外れへ向かっていると、ビンと尖った耳に白い毛をしたメス犬が、アイベックの友達の馬に寄り添うように歩いてきた
尻尾には黒いラインが1本だけ入っている
こいつは…!!
シロ…
の娘だ…!!
5 :
シロというのは、むかしおれが一緒に野宿旅をしていた仲間の犬だ
簡単に説明すると狼のえさにされる恐れのあった状況だったので引き取り、里親を探しながら野宿旅をしていた
最終的にはここトロク村で、おばさん一家が育ててくれることになった
実は、シロについてはトロク村に到着した時にこんなやりとりがあった
******************************************************
おれ
「おばさん、シロは、どこにいるの…?」
チョルポンおばさん
「実は…シロはついこの前死んでしまったの
病気じゃないから寿命だと思うわ
娘犬と孫犬は少し離れた所にある友達の家で大切に育てているから、アイベックが帰ってきたら一緒に会いに行けるわ」
おれ
「孫犬?
この前の写真だとまだ小さかったし、そもそもあの仔犬は雄犬じゃないの?」
チョルポンおばさん
「あぁ、違うわ、連絡してなかったけど、Goが日本へ帰ってすぐにシロは仔犬を産んだのよ
そのメスの仔犬と、仔犬が産んだ犬が、この前送った写真の犬たちよ」
チョルポンおばさんによると、シロは今年の8月ごろに死んでしまったらしい
元々海外の野良犬は平均寿命が2?5年程度だという話は耳にしていたから、出会った時点で成犬でその後は外で比較的自由に暮らしていたシロが、2年たった今も生きているというのはかなり幸運なことだと思っていた
シロに会えると思ってここまでやってきたのでにわかには信じられないけど、少し来るのが遅かった…らしい
7 :
トロク村の人々は基本的にロシア語が話せず、比較的ハイスペックでロシア語が話せるチョルポンおばさんですら、キルギス語と混ぜた片言のロシア語を使っていた
なので、「シロ 子ども」というボイスチャットと共に送られて来た写真を見て、話し言葉なので「シロと子どもよ」という意味だと勘違いしてしまっていた
実際は「シロの子どもたちよ」と送りたかったんだろうけど、複数形や所有格の語尾変化などはチョルポンおばさんは全く知らないようなので、そのようなボイスチャットになり誤解が起きてしまった
確かに毛並みは少し違っていたけど生え変わったものと思っていたし、顔は送られてきた画像だけでは判別がつかなかった
そもそもトロク村には白い犬が元々いなかったから、まさか帰国直後にシロが出産したとは思っていなかったので状況的に他ならぬシロだとしか思えなかった
おれ
「シロの娘と孫には…会えるんだな?」
チョルポンおばさん
「えぇ、大事に育てられているわ」
今はそこに縋るしかない
シロのことはできれば信じたくないしどうしようもなく残念だけど、子孫を残せていたというのは不幸中の幸いだ
この国の厳しい環境では生まれてすぐに死んでしまうことも少なくないだろうし、シロだけでなく子孫まで保護されているというなら、それはいい意味で想定外のことだ
******************************************************
さて、目の前の白い犬については、アイベックに確認するまでもない
シロの姿に瓜二つで、尻尾の特徴まで一致している
2年前にシロがトロク村に来た時には、白い犬はシロしかおらず同種の犬もいなかったから、この犬には間違いなくシロの遺伝子が入っている
おれ
「アイベック、この子、友達が飼ってるのか?」
アイベック
「そうだよ!
シロの娘だよ!」
どうやら、生前シロは牧羊犬として有能だということが証明されていたから、出産の時は仔犬を欲しがる村人がたくさんいたらしい
お陰で現在、シロの娘はトロク村で暮らす人の家で大切に飼われているようだった
https://youtu.be/ob2E-ZU-Vcc
10 :
ちなみに、シロと瓜二つの娘犬だったけど、唯一違ったのは目の色だった
少し明るい茶色の獰猛そうな目をしていて、近寄ってくるオス犬に対しては噛みつきそうな勢いで吠えて追い払っていた
なんだかんだ若くて元気なオス犬に対してはされるがままになっていたシロに比べると、喧嘩っ早い性格なのかもしれない
さて、アイベックの馬に蹄鉄を着けている間、おれは相棒とする馬を2頭の中から選ぶ事になった
白い馬と茶色い馬がいて、共に少し大きめの馬だった
以前ヘルスチェックをやりながら馬と1000km以上冒険しているから、馬の目利きはある程度できる
軽く跨ったり撫でたりしてみたところ、両方とも大人しく扱いやすい馬のようだったけど、筋肉の着き方と毛並みの良さ、そして腸が活発に動いていたということで、茶色い馬を相棒にすることになった
体の構造上吐くことができない馬にとって腸閉塞は最悪死にも至る一大事で、2年前は毎日聴診器で相棒の馬セキルの腸の蠕動運動の音を聞いていたからその経験が役立った
茶色い馬は足が1本だけ白かったから、アクウッ(白足)を言いやすくして「アクー」と呼ぶことにした
さぁ、いよいよ出発だ!
11 :
一旦家へ戻って下着を重ね着して、雪山の厳しい寒さに備える
アイベック
「Go!
リュック貸してくれ!」
おれ
「え?
一個も持ってなかったっけ?
そもそもおれもリュックとバックパックしか無いけど」
アイベック
「うーん、分厚い服は馬にくくればいいけど…他にも色々ありそうだしバックパックも使おうよ」
おれ
「…というか、あれ?
昨日食料積んでいくって言ってたよな?
大量に卵茹でたじゃん!卵が無い!
あれどこいったの?」
アイベック
「いや昨日みんなで全部食べちゃったし」
アイベックもおれも村で手に入る最も栄養価が高い食材は卵だと思ったから、非常食としてパンとゆで卵を持っていこうという話になっていたはずだ
おれ
「なんで!?
残しとかないと持っていけないじゃん
せっかく昨日たくさん買ったのに!」
おれがそう言うと、アイベックはいやいや…と呆れたような表情になった
アイベック
「いや、昨日茹でた卵はGoがほとんど食べちゃってたし…」
おれ
「」
…そうだ!
そういえば昨日は大好物のゆで卵がたくさん目の前にあったから、無意識に7、8個食べてしまっていた気がする
おれ
「…
もっかい買って茹でよう!!」
12 :
まぁ今回は予定通りに行けば携行食は必要ないスケジュールなんだけど、プチ冒険とか関係なくゆで卵は食べたい
とにかく卵を買ってきて急いで茹でてからリュックに詰め込み、出発
ちなみに今回はテントは不要だ
ここから目的地のソンクル湖までは48kmくらいだけど、ちょうど中間地点の辺りにコイチュビットおじさんの同級生、タランおじさんとグルジャンおばさんの家があるらしく、1日目、2日目共にそこに泊まる予定だからだ
2日目は朝早く出て昼過ぎにソンクル湖に到着して、少し休んでから下山してタランおじさんの家を目指すことになっている
非常時を考えて寝袋(1つしかないから実質アイベック用)だけでも持っていこうかとアイベックと相談したけど、結局パッキングの最中かさばるから止めておこうという話になったから持っていかないことになった
今回、非常時はおれがアイベックを守らないといけないだろう
村を出て丘を越え、少しでもショートカットできるよう車道から外れた荒れ地を馬で進んでいく
2年前の馬旅でも散々世話になったけど、キルギスの山道では車道の他に「家畜用の道」というのが無数にあって、最適なものを選ぶことでより安全により早く進むことができる
分かりにくい場所もあるけど、遠くから見ると丘の傾斜に沿って幅40cmくらいの草が少ない筋(=多くの家畜が過去に通ってきた道)ができているから、慣れていればすぐに見つけられる
たぶん昨日断念したというアメリカ人たちは車道しか通っていなかったから進めなくなってしまったんだろうけど、車道と家畜用の道の中からより雪の少ない安全な道を選んでいけばきっとソンクル湖に辿り着けるはずだ
今回の相棒、アクーはとても良い馬のようで、出発してすぐにおれを乗り手と認めてくれたらしく指示をよく聞くようになった
地形に合わせて常歩(なみあし)と歩(はやあし)と組み合わせて安全にゆっくり進む
常歩というのは2、3本の足を常に地面に着けた状態でゆっくりと進む歩き方のことで、歩は全ての足を同時に一瞬地面から離しながら弾むように進む歩きのことだ
ちなみに日本では歩に対してはタイミングよく乗り手が立ったり座ったりするテクニックがあるようだけど、こちらでは見かけない
歩は上下に小刻みに揺れるから乗り手の負担が一番大きい歩法ではあるけど、慣れれば1時間以上座ったままでも気にならなくなる
おれもアイベックも座ったまま時々「チョ」(進め)と指示を出して馬の度をコントロールしていた
15 :
さて、10kmほど進んだ所で、小さな集落に行き当たった
家のそばの牧場から、馬に乗った青年がこちらへやって来る
アイベック
「友達だ」
その青年のそばには、耳がピンと尖っていて尻尾に黒いラインの入った白いオス犬がいる
シロ…よりは小柄だけど、凄くよく似ている
おれ
「アイベック…?
あの犬は…?」
アイベック
「シロの息子だよ
この集落でも欲しいって人がいたから
シロが産んだ5匹の仔犬のうちの一匹だね」
なんと、シロは生前5匹もの犬を産んでいたらしく、その仔犬たちはトロク村やその近辺 (とはいえここは10kmも離れた集落だ) の村人たちの間で飼育されているようだった
…なんだ、シロの遺伝子はあちこちで引き継がれてるんじゃないか!
その、シロと同じ特徴を持ったオスの成犬を見て、おれは自然と笑みがこぼれた
この前シロが死んだと聞いた時は地獄に突き落とされたかのような辛い気分を味わったものだけど、このシロに似ている犬を見ているとその悲しい気持ちがふわっと消えていくような気がした
たった数年で死んでしまうというのは、いくら野良犬に近い暮らしだっったとはいえ人間の感覚ではあまりに短く思えるけど、その数年で孫世代まで繁栄することができたと言うなら、
今後もシロの子孫はトロク村の周りで生きるに違いないし、シロがおれと出会ってトロク村で暮らすことになったことには意味があったに違いない
今後、シロの子孫は大切に扱われることで幸せになれるだろうし、牧羊犬が手に入って村人たちはより快適に暮らすことができるだろう
シロはもういない
でも、シロの子孫がシロに代わってトロク村で繁栄している
もうそれだけで、おれは大満足だった
https://youtu.be/WdV_7cZ4Emg
20 :
さて、予定よりずいぶん早く、まだ明るい時間帯にタランおじさんの家に到着した
ちなみにタランおじさんはこの前葬式の時にトロク村に来ていたから面識がある
タランおじさん
「おぉ! Go! アイベック!
元気か? よく来たな!」
タランおじさんは前に会った時と同じくニコニコしながら力強い調子で迎えてくれた
どうやらタランおじさんは歯がほとんどないようだから、もしかするとそれで語気が強くなっているのかもしれないけど、笑顔ではあるから歓迎してくれてはいるはずだ
ちなみにタランおじさんの家は電話が繋がらない地域だから事前連絡はできていなかったけど、それでもおじさんは「よく来た!」と家で紅茶を振る舞ってくれた
アイベック
「グルジャンおばさんは?」
タランおじさん
「グルジャンは今日は町に行ってるからおらん!
今日泊まってくのか? メシはパンと紅茶しかないぞ!」
アイベック
「あー…
それは…良くないな…」
おれ
「アイベック、トロク村からここまで17kmしか無いから明日ソンクル湖まで行って帰ってくるなら60kmくらい移動しないといけないぞ
もう少し進んでおいた方が良いんじゃないか?」
アイベック
「あー、そうなんだ
タランおじさんの家からソンクル湖まで10kmくらいだと思ってた
まあ明日は朝5時に起きて出発するから大丈夫だよ
でも、そうだね、ここから馬で30分くらいのところに俺の友達がいるからそこに行こうか」
21 :
タランおじさん
「気をつけろよ
明日は夜大雪かもしれんからな!」
という訳でアイベックの友達のビリンベックの家へ…行ったものの、ビリンベックは町でウォッカを飲み過ぎで潰れてしまっているらしく、結局家にいたビリンベックの親戚の方々に迎えられ、そのまま家で寝ることになった
ちなみにアイベック主導で布団を敷いたところ、何故か2人の布団をぴったりくっつけてその境目が開くようになっている布団が完成した
…いや、これ夫婦用の敷き方なんじゃ…
思ったけど言わないことにした
ちなみにキルギスでは、少なくとも男は服を着たまま寝るのは不潔だと考えられているので、パン一で寝るのがデフォルトだ
寒い時期でもそうだから、おれとアイベックは服を脱ぎ、お互いの体温が伝わるくらい近い距離で眠りに就くことになった…
(2人ともノンケやから何も起きなかったで!)
22 :
翌日
朝5時
アイベックのスマホのアラームが鳴り響く
おれ
「アイベック、起きなくて良いのか?
間に合わなくなるぞ」
アイベック
「ぁ…
あと1じかん…」
ここで無理に起こすとキレるのは知っているからどうしようもない
まぁ、距離的にあと1時間くらいならギリギリ大丈夫だろう
そして6時
15分毎に鳴るスヌーズを全て止めつつ眠り続けるアイベックに声をかける
おれ
「アイベック、起きよう」
アイベック
「ぅー…
あと3時間くらい…」
おれ
「いや起きろよ」
さすがに間に合わなくなるからアイベックの布団をめくることにした
アイベック
「なぁーにするんだよ!」
アイベックが半ば寝ぼけながら抗議をする
いや5時に目覚ましかけたのアイベックだろ…
起きろや…
…という訳で、アイベックを半ば無理やり起こし、馬たちに馬具を着けていつでも出発できる状態にしてから紅茶を飲む
23 :
居間には、まだ酔っている状態のビリンベックが帰ってきていた
本人曰く23歳らしいけど、かなり童顔だ
もしかするとアイベックと同じくらいの年齢なのかもしれない
ビリンベック
「日本人、ごぉぉぉ!!
まだ独身なのかぁ?
早く結婚しないとなぁ!?」
おれ
「まだする気ないなぁ
ビリンベックは独身?
いつ結婚するの?」
ビリンベック
「独身だし彼女もいないけど結婚するー!
今日っ!!」
おれ
「おめでとう笑」
完全に酔ってるからだろうけど、誘拐婚だとあり得る話だから、冗談でもヒヤッとする発言だ
その後すぐにビリンベックは寝てしまったから、おれとアイベックは荷物をまとめてすぐに出発することにした
出発してすぐにところどころに雪が見られるようになり、車道が雪で埋まっている所もあった
標高はおよそ2300m
動物たちもこの辺りが高度的に限界のようでヤクの群れを見て以来は動物を全く見かけなくなった
できるだけ雪の少ない家畜用の道を選んで馬と息を合わせながら進んでいく
24 :
途中、崖のようになっているところでは馬から降りて、アイベックと一緒に手綱を引きながらゆっくりと進んだ
崖っぷちで足場は雪に覆われているし、左側の崖下へ落ちないように気をつけつつ右上に積もった大量の雪にも注意しないといけない
アイベック
「Go、できるだけ音を立てないようにね
雪崩になるかもしれないから」
アイベックは声を殺しながらそう言った
おれ
「そうだな…
こんな所で雪崩に遭ったらぜったい死ぬからな」
アイベック
「まぁアッラー(神)がいれば大丈夫だから、俺がGoの分までお祈りしておくよ
『アッラーの他に神は無く、ムハンマドはアッラーの使徒』」
そう言ってアイベックはモスクなどでお祈りをする際の言葉を呟き始めた
おれ
「ありがとう、助かるよ
きっと大丈夫だよ、アッラーが望むなら」
こうして雪だらけの崖っぷちを越え、動物たちの掘った穴が雪で覆われてトラップ化している雪原を越え、昼過ぎ、おれとアイベックはソンクル湖へ到着することができた
25 :
標高3016m
ソンクル湖の周りだけは雪がなく、2年前と同じように透明度の高い水色の綺麗な湖だった
おれ
「うぉぉぉ!!
よっし!
ソンクル湖だ!
安全に下山しないといけないから30分くらいしかいられないだろうけど、最高だな!
ほんと綺麗だなぁ…アイべッ……ク…?」
ソンクル湖に感動しながらアイベックの方へ振り向くと、そこには明らかに体調が悪そうで小刻みに震えるアイベックの姿があった
唇は青く、顔色も土っぽくて明らかに異常だ
アイベック
「そう…だね…」
おれ
「アイベック、どうした!?」
アイベック
「大丈夫…
だけど、少し寝ないと…
昨日2時間しか寝て無くて、もう限界…」
アイベックはそう言って馬を降り、ソンクル湖の湖畔で横になって動かなくなった
アイベック曰く、昨日はほとんど寝れなかったらしい
昨日の夜中いびきをかいていたから2時間ってことはないだろうけど、少なくとも今現在体調が悪いのは間違いなさそうだ
とはいえ、今からここで1?2時間ほど寝てしまうと日没までに人里へ戻れなくなる
ここから20kmに家は無く、雪山で野宿することになった場合、最悪死ぬ可能性も出てくる
アイベックが寝坊なのは毎日のことだったから気付けなかった
32 :
つづき
今動けるおれが何とかしないといけない!
最悪の場合(日没までに下山できないこと)を考えた時、水はあるし、メタルマッチ(マグネシウム製の高性能な火打ち石のようなもの)があるから火も起こせるし食料も多少はある…となると、足りないのは寒さを凌げる安全な家だ
実は、さっきソンクル湖へ来た時から少し離れたところに「ここにあるはずの無いもの」を見かけていて気になっていた
ボウズイ、円形の移動式住居だ
通常ボウズイはシーズンが終わるとバラして車で家まで運ぶはずだから、人も動物もいないこんな場所にあるのは明らかにおかしい
誰かが住んでいる可能性は十分にあるし、寝床や食料、情報などで力を貸してくれるかもしれない
おれ
「アイベック、おれは今からあのボウズイに行こうと思うけど、誰が住んでいるか分かるか?」
アイベック
「分からない…
今は誰もいないはずなのに…おかしいね
良くない奴らが住んでるのかも…
行くなら、本当に気をつけて」
おれ
「分かった!」
アイベックの言う通り、小さい頃からソンクル湖で何度も放牧を手伝っていたアイベックが住人を特定できないというのはかなり不自然だ
ならず者が住んでいる可能性は十分にあるし、そう簡単に協力してくれないかもしれない
2年前に廃車両で暮らすならず者に一時監禁されたのと同様に、そう簡単に戻れなくなるリスクもある
…とはいっても、倒れてしまっているアイベックを前に、おれができることはこの位しか無く、現状最善の選択ではありそうだ
面倒なことになった時に馬を掴まれると不利になるから、おれは馬をアイベックの傍に繋いだままにして、徒歩でボウズイへと向かうことにした
おれは、改めて気を引き締めて緊張しつつ、一歩一歩、その不気味なボウズイへと歩いていった
https://youtu.be/WtWcqRZo0eE
35 :
さて、ボウズイにたどり着いたものの、そこには誰もいなかった
少し離れているところにあるボウズイも訪ねてみたがそこももぬけの殻で、どうやら撤収せずそのまま放置されているボウズイのようだった
仕方なくアイベックの元へ戻ると、アイベックが少しだけ元気になったようで、体を起こして馬に乗ろうとしているところだった
アイベック
「Go、少し良くなったよ。行こう」
アイベックに促され、俺もアクーにまたがって出発
正直なところ、ここから帰っても日没までにふもとまで戻るのは無理だろう…と思っていたけど、
馬たちが全力疾走で何十分も走ってくれるという奇跡が起きたので、休憩を挟みながらすごいさで雪原を越え丘を越え、ふもとへ向かうことができた
どうやら馬たちもこのままではまずい(寒い)というのが分かっているようで、さらに2頭いたおかげで互いが互いを追いかけるような形でどんどんスピードを上げて疾走してくれた
アイベックはかなり馬に乗りなれているので、馬に揺られながら時折目を瞑って休んでいるようだった
https://youtu.be/x3vvu6jcJMA
36 :
さて、その後も馬たちは好調に走ってくれて、夕方、今朝出発した家へ帰還することができた
ここで泊まることも可能だったけどまだ少し明るかったので、アイベックと相談の上でさらに下山してタランおじさんの家を目指すことになった
そして、日没直前に到着し、グルジャンおばさんの美味しいご飯をいただき、その次の日、おれとアイベックは無事にトロク村に戻ることができた
https://youtu.be/tmKX6UdOHV8
28 :
こんな標高高いとこにこんな湖あるんか
めっちゃ綺麗わね
29 :
>>28
せやねん、めちゃくちゃ綺麗なんや
30 :
ちょっとソンクル湖近辺の写真貼ってくわ
31 :
38 :
さて、次は最後の仲間、白羊のサナを探しに行くことにした
サナは現在トロク村ではなくタランおじさんのところにいるようだ
タランおじさんは繁殖も兼ねた育て屋のような仕事をしていて、5月から11月までコイチュビットおじさんの羊を預かっているらしい
ヒッチハイクでタランおじさんの家へ
到着してグルジャンおばさんに状況を聞くと、タランおじさんは放牧をしに出掛けているらしく、夕方まで帰って来ないようだった
近くでやっていた建築系の仕事を手伝おうかと思ったけど、悪い奴がいてそいつがしつこく「白羊は死んだんだよ笑」と根拠なく言ってきて面倒だったので、手伝うのを止めて家へ戻ることに
後で知ったことだけど、その悪い奴はタランおじさんの同級生で、酒に酔って喧嘩したときにタランおじさんを殴りつけて総入れ歯にしたらしい
まだ46歳なのに、タランおじさんはかなり可哀相だ
さて、まだまだタランおじさんは帰って来ないので、羊たちの背中のマークを教えてもらい一人で探しに行くことにした
羊の気持ちになって歩きつつ新しい糞を追いかける
発見
近くで見ないと確定できないけど、サナっぽい羊もいた
しかし、羊たちはかなり警戒心が強いようで、近寄ることができなかったのでひとまず家へ戻ることにした
まだ昼過ぎながら家ではタランおじさんやその友達たちが休憩がてら宴会を始めていたので、ウォッカをいただきつつタランおじさんから羊たちの話を聞いてみる
タランおじさんが現在預かっているのは、全部で260匹の大きな群れらしい
あと2時間ほどでタランおじさんも探しに行くとのことだったので、少し待ってから、酔って足元のおぼつかないタランおじさんと一緒に捜索開始
群れ自体はすぐに見つかり、家の羊スペースへ誘導
羊たちを柵の内側に入れてから、サナを探す
雪が降り始めたのでかなり寒い
しかし、そこにはサナの姿はなかった
39 :
どうやら20匹ほど羊が足りず240匹しかいないらしい
近隣の羊飼いの方が「今日は別の群れ少しが混ざっている」と言っていたらしいので、そこに残りの羊たちがいるんじゃないかと考え探しに行く
雪の中、タランおじさんと馬に二人乗りして急いで羊飼いの家へ
もう日没時間だから、早くしないとすぐに真っ暗になってしまう
そして…!
おれは、サナに会うことができた!!!
結局、おれが一人で探しに行った時に見つけた群れの中にサナはいたようだ
背中に緑色の点が塗られている
今日の昼の時点で別の群れに紛れてしまっていたんだろう
羊飼いの方も別の群れだと認識していたようだし殺されることは無いだろうけど、それにしてもヒヤヒヤした
今日はもう暗いので、サナは明日元の群れへ戻されるらしい
羊飼いの方とまた飲み直すようすのタランおじさんはその場に残り、おれはタランおじさんの馬で家へ
家へ入ると、犬の赤ちゃんが玄関でクンクンと甲高く鳴いていた
この子は昼間は外にいたけど、これだけ寒いと死んでしまうかもしれないから屋内に入れたらしい
おそらく牛や羊を追い立てる為の牧羊犬として育てる予定みたいだ
もう真っ暗で車は皆無だったからヒッチハイクはできず、翌日トロク村へ帰ることになり、タランおじさんの家で皆でウォッカをイッキして就寝
多分、昼間の悪い奴主導でおれを潰そうとしてたらしくて、何故かおれだけ量が多かったけど、ウォッカ瓶が2本空いて無くなったので強制的に終了
小さいグラスになみなみと注がれたウォッカを3分程のインターバルでほぼ連続で5杯イッキしたけど、このぐらいでは潰れない体質で良かった
そういえば2年前と違って最近はトロク村でも知り合いが増え、毎日のようにあちこちの家でウォッカを何杯もイッキしている
コイチュビットおじさんを始めとするトロク村の皆により深く受け入れられたということだろうから、凄く嬉しい
https://youtu.be/wiomZDoRwGI
41 :
キルギス滞在最終日は、前々から仲良くしていたナルギザという名の大学生の女の子とデートをすることになった
ショッピングモールにいってお土産のハチミツを選んだり、バスで急な滝があるスポットまで行ってバンジージャンプをしたりした
「次はいつ来るの?」というナルギザの問いに「うーん、できるだけ早く来たいけど、どうだろ…」と答えると、「そういうことが聞きたいんじゃない」と言われてしまった
薄々わかるけど、なかなか返答が難しい質問だ
夜、ナルギザの家に戻るとパーティが開かれていたので、色々な質問に答えたり、ウォッカをイッキしたりした
最後はやはり親友のアイダールと寝たかったので、ナルギザとはこれでお別れだ
別れ際、ナルギザは両手を広げるポーズをしてきたので、長めのハグをして、タクシーでアイダールの家へ
そして次の日、おれは飛行機に乗り、日本へと帰って行った
…さあ、日本へ帰ったらすぐにまた飛行機に乗って、チュニジアへ向かわないといけない
サハラ砂漠とアラブ人、ラクダたちを相手に、自分の存在や人生に決着をつける冒険を、始めるんだ!!
【おわり】
https://youtu.be/PyD8h1x8bO4
42 :
今回の話はここまでや!
日記を元に書いとるし、いまも北欧で次の冒険の直前準備しとるからかなり雑な文章ですまんけど、雰囲気だけでも感じ取ってもらえれば…
なんか質問とか感想とかあったら、書き込んでくれると嬉しいで!
69 :
はえ?フィンランドか、オーロラ見えたりするんやろか
44 :
せやで!
今回はオーロラ観るのも目的の一つや!!
27 :
>>1
表紙の帽子の名前はなんぞや?
36 :
>>27
すまん見落としとった
カルパックっていうて、キルギス人の民族的な帽子やで
現地に馴染んだほうが安全に野宿旅できるから、ワイは基本的にできるだけ現地人に近い恰好をするようにしとるんや
37 :
>>36
サンガツ
たどたどしくても現地の言葉使うのは親近感出るからええしな
それに通じるか
言語は旅する前に習得するん?
39 :
>>37
基本的にはそうしとるけど、中々時間取れなくてギリギリになることも多いわ…
今回も結局到着してからフィンランド語の勉強頑張っとる
28 :
司馬遼太郎とか堺屋太一の紀行文ぐらいおもろいなら読みたい
33 :

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