【ハイスコアガール】小春「自転車二人乗り」back

【ハイスコアガール】小春「自転車二人乗り」


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※公道で自転車を二人乗りするのは、本当はダメです。
※ただし例外もあります。詳しくはお住まいの自治体へ。
2: 以下、
――路上
小春「え…?」
小春(今、誰か…)
小春(私を呼んだ?)
小春(でも、周りに誰もいない)
小春(気のせいかな)
小春(でもはっきり聞こえた。私の名前を呼ぶ声)
小春(しかも……その声)
小春(矢口くん)
小春(矢口くんの声みたいだった……)
小春(矢口くんが“お?い、日高?”って……)
小春(矢口くんが近くにいるの?)
小春(もし、そうなら…)
小春(嫌だなぁ……)
小春(今、配達中なのに……)
----------------------------------------------------------------------------
3: 以下、
小春(こんなとこ見られたくない)
小春(配達用の自転車に乗ってるとこなんて)
小春(こんな大きくてゴツゴツしてて、カッコ悪い自転車)
小春(こんなのに乗ってるとこなんて……)
小春(……とにかく)
小春(とにかく気にしないで、早く配達しちゃおう)
小春(早くお店の手伝いを済ませちゃおう)
小春(この角を、曲がって…)
小春(ここだ。この家)
キーッ キキッ
小春(相変わらずうるさいブレーキの音)
小春(お父さん、まだ手入れしてないんだな)
小春(もうかなりボロだしなぁ。この配達用の自転車)
小春(こんな自転車に乗ってるのなんて、ますます見られたくない)
ピンポーン
主婦『はーい』
小春「こんにちはー。日高商店でーす」
主婦『あ、はーい』
小春「毎度さまでーす。お酒持って来ましたー」
主婦『ちょっと待ってねー』
ガチャ
主婦「こんにちは。いつもご苦労さま、小春ちゃん」
4: 以下、
小春「いえいえ。でも今も、いつもどおり…」
主婦「何?」
小春「お勝手じゃなくて玄関へ来ちゃいましたけど、よかったんですか?」
主婦「うちはその方が逆に都合がいいのよ。勝手口は人に見せられないほど散らかっててねえ」
小春「そうなんですか。じゃあここに品物、持って来ます。……よいしょ、っと」
主婦「すごいわねえ、何回見ても」
小春「何がですか?」
主婦「こんな可愛い女子高生がたくさん瓶ビールの入ったケース持ち上げるなんて」
小春「“可愛い”なんて……。それにもうこんなの、慣れてますから」
主婦「いつも思うんだけど、重くないの?」
小春「もちろん重いです。でもこれ持って長い距離を歩いたりするわけじゃないですし」
主婦「それもそうね」
小春「ちょっとコツを掴めば、私みたいな女の子にもできるんです」
主婦「コツって、さっき腰を少しクイッとしたこと? 重量挙げの選手みたいだったわね」
小春(こんなの、もっと矢口くんに見られたくない)
主婦「じゃ、そこに置いてくれる?」
小春「ここですね。よっ、と…。じゃあこれにハンコかサイン、お願いします」
主婦「はい、これでいい?」
小春「ありがとうございます。空き瓶とケースは…」
主婦「分かってる。月末にお父さんかお母さんが車で取りに来て、その時、一緒に代金ね」
小春「はい、お願いします。それじゃ、毎度ありがとうございましたー」
主婦「はーい。小春ちゃんご苦労さまー」
小春「失礼しまーす」
5: 以下、
小春(さぁ配達終了)
小春(早くうちへ帰ろっと)
キ?コ キ?コ
小春「あれっ?」
小春(ブレーキだけじゃなくペダルも音がするようになっちゃった)
小春(もういろんな所に無理が来ちゃってるんだ)
小春(お父さん、きちんと手入れするか、新しいの買えばいいのに……)
キ?コ キ?コ
小春(……え?)
小春(また誰か私の名前を…?)
ハルオ「日高?」
6: 以下、
小春「げっ…」
小春(気のせいじゃなかった)
小春(やっぱり矢口くんだ)
小春(どうしてこんな場所にいるのよ)
小春(私たちの住んでる近所からは少し離れてるのに)
キ?コ キ?コ
小春(こんなとこ見られたくない)
小春(ブレーキもペダルも音立てるような自転車に乗ってるとこなんて)
ハルオ「日高!」
小春「きゃっ」
キキーッ!
7: 以下、
ハルオ「よう日高」
小春「矢口くん…!」
ハルオ「おう」
小春「もう! 危ないでしょ!」
ハルオ「はぁ? ちゃんと曲がり角の向こうから声かけただろ」
小春「ほとんど出会い頭だったじゃない!」
ハルオ「お前の進行方向を読んで先回りしたんだ。ダンジョン突破の経験の応用だな」
小春「まったくもう……轢くところだった!」
ハルオ「でも少しの間、姿を見失っちまったが何やってたんだ?」
小春「それより矢口くん、もしかしてちょっと前にも私を呼んだ?」
ハルオ「ああ。日高がチャリ乗ってるの見かけてな」
小春「どうしてこんな場所にいるの?」
ハルオ「いたら変か? この辺りに最近できたゲーセンの様子を見に来たんだ」
小春「でも、私たちが住んでる近所から少し離れてるし…」
ハルオ「おい日高。お前、この業界が絶えず進化してるのを忘れたわけじゃあるめぇ」
小春「……」
ハルオ「新しい動向を常に気にしてねーと」
小春「……」
ハルオ「今回の新ゲーセンはなかなかグッとくる所だったぜ。日高も今度行ってみっか?」
小春「うん…今度ね。じゃあ私はこれで…」
ハルオ「おっと。待てよ日高」
8: 以下、
キキッ
小春「…何?」
ハルオ「お前、今、急いでるか?」
小春「……」
ハルオ「どうした?」
小春「別にそうじゃないけど……」
ハルオ「大体お前こそ、こんな所で何してんだ?」
小春「……見れば」
ハルオ「へ?」
小春「見れば分かるでしょ」
ハルオ「“見れば”?」
小春「……」
ハルオ「おっ、何だそのチャリ? すっげーゴツいな! 女が乗る物とはとても思えねぇ!」
小春(だから見られたくなかったのよ…!)
ハルオ「日高はエプロンしてるし……?」
小春「……」
ハルオ「あ、そうか! 家の手伝いか」
小春「やっと分かった? お酒の配達。これは配達用の自転車なの」
9: 以下、
ハルオ「そういえば少し前に見た時は、後ろの荷台に何か乗っけてたな。ビールケースだったのか」
小春「この近くにあるお客さんの家へ、品物を届けに来てたの」
ハルオ「ふーん」
小春「それが終わって今、こうして矢口くんと会ったのよ」
ハルオ「宮尾が前に言ってたぜ」
小春「宮尾君? 何?」
ハルオ「“日高は自分の家の店をほとんど毎日手伝ってるそうだ。偉いな”って」
小春「偉くなんかないよ。うちは手伝いしないと、お小遣いをもらえないシステムなの」
ハルオ「あ、そうなんか」
小春「矢口くんだってバイトしてるでしょ。それと同じだよ」
ハルオ「そういうもんか」
小春「そういうもんだよ」
ハルオ「ま、それはそれとして…」
小春「何?」
ハルオ「乗せてけや、日高」
10: 以下、
小春(……)
小春(私、今……)
小春(一瞬で、すごくいろんなこと考えた……)
ハルオ「……」
小春「……」
ハルオ「日高?」
小春「えっ? う、うん……」
ハルオ「店の手伝いが終わって、これから帰るんだろ?」
小春「うん……」
ハルオ「俺も家へ帰るから、行く方角が同じだ。乗せてけや、日高」
小春「……矢口くん」
ハルオ「ああ」
小春「まず…」
ハルオ「まず?」
小春「別にそれは、構わないけど…」
ハルオ「そうか! ありがてぇ。じゃあ…」
小春「ちょっ、何してるの!? 待ってよ!」
ハルオ「どうした?」
小春「つっ…次に!」
ハルオ「次?」
小春「何で矢口くんが後ろに乗ろうとするのよ!!」
11: 以下、
ハルオ「あ? だってコレは日高のチャリじゃねーか」
小春「……」
ハルオ「漕ぐのはお前の方が慣れてるに決まってんだろ」
小春(何なの、この人……)
小春(女の子に漕がせて、自分はシレッと後ろに座ってるつもりなの?)
小春(男の子が前に乗って漕いで、女の子は後ろなのが当たり前なのに)
小春(こんなの当然よ。常識よ。法律でそう決めてもいいくらいよ。違反した男は捕まって罰金よ)
ハルオ「違うか? 日高」
小春「駄目。矢口くんが漕いで」
ハルオ「……」
小春「矢口くんが前」
ハルオ「……」
小春「これが、乗せてあげる条件」
ハルオ「……分かったよ」
小春「その次に…」
ハルオ「何なんだよ、さっきから“まず”とか“次に”とか」
12: 以下、
小春「……」
ハルオ「どうして黙るんだよ」
小春「それは……」
ハルオ「俺にもっと注文があるなら早く言えや」
小春「それは……こんな自転車でいいの?」
ハルオ「“こんな”? どういう意味だ?」
小春「だって、こんな……」
ハルオ「……」
小春「大きくてゴツゴツしてて、カッコ悪い自転車……」
ハルオ「はぁ? 言ってる意味が分かんねぇ」
小春「……」
ハルオ「自転車は自転車だろ。ただの乗り物じゃねーか」
小春「……」
ハルオ「乗れれば十分だぜ。それ以外に必要なことなんてあるか?」
小春「それはまぁ……そうだけど」
ハルオ「にしても、見れば見るほどゴツいチャリだなコレ」
小春「……」
ハルオ「荷台やスタンドなんてメチャクチャ頑丈そうだ。それに、余分な飾りみてぇな物が全然ねーし」
小春「……実用車っていうんだよ」
13: 以下、
ハルオ「“実用”か。まさに働くチャリだな。ある意味カッケーな」
小春「……」
ハルオ「じゃ、降りろ日高。俺が漕いでやっからよ」
小春「うん……」
ハルオ「どれどれ…おっ、このサドルやハンドル、硬ぇけどそれが逆にいい感じじゃねーか」
小春「……」
ハルオ「さすが実用に徹したチャリだぜ。コレに乗れる機会って、実は貴重なのかもしれねぇな」
小春(……)
小春(自転車、二人乗り……)
小春(矢口くんと……)
小春(矢口くんと、二人乗り……)
小春(その、せっかくの機会なのに……)
小春(何で自転車がコレなんだろう……)
小春(何で自転車が、うちの配達用の物なんだろう……)
14: 以下、
ハルオ「じゃあ乗れ日高」
小春「うん……」
ハルオ「お前、後ろへどう座る?」
小春「え? 横座りかな…こういうふうに」
ハルオ「あ、駄目だ。逆にしろ」
小春「逆?」
ハルオ「座る向きを逆にしろ」
小春「?」
ハルオ「俺は止まる時に大抵、右足を地面に着くんだ」
小春「あ、そうか。自転車はそっちへ傾くから…」
ハルオ「お前は右側が背中の方へならないようにしろ。危ないからな」
小春(何よ、この人……)
小春(どうしてこんな、意外と優しいのよ……)
小春(紳士ぶっちゃって……)
小春(何よもう……こんな優しくされたら、私…)
ハルオ「ん? おい日高?」
小春「何…?」
ハルオ「お前、何だか急に顔が赤くなった気がするけど、大丈夫か?」
小春「えっ。だ、大丈夫だよ。多分……」
15: 以下、
ハルオ「行くぞ。ちゃんとチャリのどっかへ掴まってろよ」
小春「うん」
キ?コ キ?コ
ハルオ「何だオイ、すげぇ音立ててるな」
小春「もう何年も使ってる物だからね……」
ハルオ「大丈夫かコレ?」
小春「多分……」
ハルオ「“多分”ばっかだな」
キ?コ キ?コ
小春(あ?あ……)
小春(もっと可愛い自転車だったら良かったのに……)
小春(せめて、ただの普通の自転車だったら……)
小春(こんな、漕ぐたびに音がするような物じゃなくて……)
キ?コ キ?コ
16: 以下、
ハルオ「うーん……ペダルが思ったより固い感じで、重いぜ」
小春「……」
ハルオ「日高」
小春「何?」
ハルオ「やっぱお前が漕いだ方が良かったんじゃねーか?」
小春「今さら何言ってるのよ」
ハルオ「それなら、日高」
小春「何?」
ハルオ「お前、急いでないって言ったよな」
小春「うん」
ハルオ「俺もこれから、特に用事があるわけじゃねぇ」
小春「うん」
ハルオ「ゆっくり行かせてもらうぜ。いいだろ?」
小春「うん。いいよ……」
キ?コ キ?コ
小春(……)
小春(こんな自転車だけど…)
小春(私はこの自転車に感謝しなくちゃ、なのかな……)
17: 以下、
小春(矢口くん、ゆっくり行くって言ってる)
小春(こんな自転車だから…)
小春(私たち、ゆっくり行く……)
小春(私たちはその間、ずっと二人乗り)
小春(この自転車だから…)
小春(ゆっくり、ずっと二人乗り……)
小春(私はこの自転車に感謝しなくちゃ、なのかも……)
キ?コ キ?コ
小春(…)チラ
小春(矢口くんの、背中……)
小春(矢口くんの背中が…)
小春(こんな近くに……)
18: 以下、
小春(私は…)
小春(ずっとこの背中を見続けてきた気がする)
小春(ゲームをしてる矢口くんの、背中を……)
キ?コ キ?コ
小春(ゲームをしてる矢口くん)
小春(私は、それを後ろで見てるのが好きだった)
小春(自分もいつの間にか、ゲームをするようになったけど…)
小春(矢口くんに負けないくらい、強くなったけど…)
小春(やっぱり私は、後ろで見てるのが好きだった)
キ?コ キ?コ
19: 以下、
小春(矢口くんの背中越しに、画面を見てた)
小春(でも同時に、矢口くんの背中を見てた気がする)
小春(この背中を見続けて…)
小春(私もゲームをやり始めて、強くなって…)
小春(そして、矢口くんをどんどん好きになっていった……)
小春(その背中が……)
小春(こんな近くに……)
小春(……)
小春(抱き着いちゃいたい……)
20: 以下、
小春(…って、バカ。何考えてるのよ私)
小春(まだ付き合ってないのに…)
小春(そんなことしたら、馴れ馴れしい、いやらしい女って思われるだけじゃない)
小春(ちょっと待って…)
小春(今も私、何考えた?)
小春(“まだ付き合ってない”?)
小春(じゃあいつかは付き合えるってこと?)
小春(どうしてそんなこと言えるの? そんな保証がどこにあるの?)
小春(でも……でも、男女が自転車二人乗りしてるんだし…)
小春(付き合ってないんだから、抱き着くのは少しやり過ぎかもしれないけど…)
小春(体へ手を回すくらいはいいんじゃない?)
小春(だってそうしないと危ないでしょ?)
小春(万が一のときに危ないでしょ? ね?)
小春(ちょっと…私って今、一体誰と会話してるの?)
小春(あぁもう、いろんなこと考え過ぎて頭がおかしくなってる……私のバカ!)
キ?コ キ?コ
21: 以下、
小春(でもやっぱり漕ぐ人に掴まってた方が、万が一のときに安心なはず)
小春(うん、どう考えてもそうよ。これは安全のためなの)
小春(決していやらしい意味なんかじゃないんだから)
小春(ちゃんとした理由があるのよ)
小春(だから、体に手を回すくらいならいいはず)
小春(でも、いきなりそんなことしたら…)
小春(矢口くんがびっくりしちゃうから…)
小春(そーっと……)スッ
ハルオ「ン゛ッ」
キキーッ!
22: 以下、
小春「きゃっ、危ない!」
ハルオ「……」
小春「何よ矢口くん!」
ハルオ「……」
小春「急に止まったら危ないよ!!」
ハルオ「危ねーのはテメェだ! 日高!」
小春「え…?」
ハルオ「うぅ……」
小春「……」
ハルオ「まだ感触が少し残ってるぜ……」
小春「何? どうしたの?」
ハルオ「まったく……いきなり人の体に触るんじゃねーよ」
小春「……」
ハルオ「俺って腰、弱いんだよ」
小春「腰? 弱い?」
ハルオ「そうだよ。だから…」
小春「腰って……ここ?」ツン
ハルオ「アヒィ」
23: 以下、
小春「あ、変な声出た」
ハルオ「やめなさいよ! マジで…」
小春「…」ツン
ハルオ「ウヒィ」
小春「…」ツンツン
ハルオ「アヒィ ウヒィ」
小春「わぁ…面白ーい! 触ったのと同じ回数、変な声が出る!」
ハルオ「いい加減にしろ!! 人の体で遊びくさって!!」
24: 以下、
小春「だって、漕ぐ人の体に掴まってた方が安全かな、って…」
ハルオ「チャリに掴まってればいいだろーが。掴まるのが人かチャリかで大した違いがあるかよ」
小春「……」
ハルオ「とにかく腰はやめてくれよな、腰は」
小春「……」
ハルオ「じゃあ再スタートだ。行くぜ」
キ?コ キ?コ
小春(あ?あ……)
小春(残念……)
小春(せっかく、矢口くんの体に手を回せる機会だったのに……)
小春(もし、そうできたら…)
小春(矢口くんへ思いっ切り自分の体をぴったりさせて…)
小春(顔を、背中へ押し付けちゃおうと思ってたのに……)
キ?コ キ?コ
25: 以下、
ハルオ「おっ……周りがだんだん見慣れた風景になってきたな」
小春「……」
ハルオ「俺たちの住む近所が近いぜ、日高」
小春(……)
小春(二人乗りが…)
小春(もうすぐ、終わっちゃう……)
キ?コ キ?コ
ハルオ「なぁ日高」
小春「うん」
ハルオ「お前、いいのか?」
小春「何が?」
ハルオ「俺たちこのまま、二人乗りしてて」
小春「……」
ハルオ「近所の誰かに見られるかもしれねぇぜ?」
小春「……そんなの」
ハルオ「……」
小春「そんなの別に、私は全然気にしないけど……」
ハルオ「俺みたいなアホと二人乗りしてるのを、誰かに見られるかもしれねぇぜ?」
26: 以下、
小春「だから、そんなの別に……じゃ、じゃあ逆に、矢口くんはどうなの…?」
ハルオ「俺?」
小春「わ、私みたいな女の子と、二人乗りで…」
ハルオ「……」
小春「矢口くんはどうなの…?」
ハルオ「……」
小春「それに…」
ハルオ「それに?」
小春「お、重かったんじゃないの? 私……」
ハルオ「……」
小春「それなのに一生懸命、漕いでくれて……」
ハルオ「へー」
小春「何…?」
ハルオ「お前は、一応気を使ったりするんだな」
小春「…!」ピク
27: 以下、
ハルオ「大丈夫だ」
小春「……」
ハルオ「重くなんかねぇぜ」
小春「……」
ハルオ「俺がさっき“重い”って言ったこと気にしてんのか? もしそうなら悪かったな」
小春「……」
ハルオ「重いのはお前じゃねぇ。このチャリのペダルが固くて重いんだ。お前じゃねぇ」
キ?コ キ?コ
28: 以下、
小春「矢口くん」
ハルオ「ああ」
小春「さっき“お前は一応気を使ったりするんだな”って言ったけど…」
ハルオ「ああ。それが何だ?」
小春「お前“は”って、どういうこと?」
ハルオ「ん?」
小春「気を使わなかった人がいたってこと? 前に誰か、別の人がいたってこと?」
ハルオ「うっ……」
キ?コ キ?コ
小春「気を使って“私って重くない?”って訊いたりしない…」
ハルオ「……」
小春「そういう別の人が、前にいたってこと?」
ハルオ「な、何だよいきなり……」
キ?コ キ?コ
29: 以下、
小春「矢口くん。前に、誰かと二人乗りしたことあるの?」
ハルオ「……」
小春「自転車の二人乗り。したことあるの?」
ハルオ「そ、それは……」
小春「……」
ハルオ「…………………………あるに決まってんだろ」
小春「どうして答えるまでそんなに時間が掛かるの?」
ハルオ「つ、つまんねーこと気にすんなよ……」
小春「誰と二人乗りしたの?」
ハルオ「小学校とかガキの頃の、ダチだよ……」
小春「男の子?」
ハルオ「当たり前だろ……ツルんで遊びに行く時に……」
小春「じゃあ女の子は?」
ハルオ「……」
キ?コ キ?コ
30: 以下、
小春「矢口くん?」
ハルオ「急にどうしたんだよ、日高……]
小春「私は別にどうもしないけど?」
ハルオ「……」
小春「答えて、矢口くん」
ハルオ「お前、何だかいつもと雰囲気違うぞ……」
小春「いいから答えて」
ハルオ「……」
小春「矢口くん?」
ハルオ「……」
キ?コ キ?コ
31: 以下、
小春(まただ……)
小春(また静かになっちゃった)
小春(普段はあんなにお喋りなくせに…)
小春(何だか歯切れが悪くなって、話をそらそうとしたりして…)
小春(また静かになっちゃった)
小春(あの人のことになると、いつもそう)
小春(大野さん……)
小春(大野さんのことになると、いつもこんなふうに静かになっちゃう)
小春(だから…)
小春(二人乗りした相手、大野さんに決まってる)
キ?コ キ?コ
32: 以下、
小春(いつ大野さんと、自転車二人乗りしたんだろ)
小春(二人乗りして、どこへ行ったんだろ)
小春(そこで、二人で何したんだろ)
小春(……)
小春(……ムカつく)
小春(何でこんなムカつく男を、好きになっちゃったんだろう……)
小春(何でこんなムカつく男を、大好きなんだろう……)
小春(こんなに、大好きなのに…)
小春(こんなに、背中が近くにあるのに…)
小春(何で、どうにもならないんだろう……)
小春(ムカつく……)
小春(ムカつくから…)
小春(もう一回、この腰へ触っちゃえ!)
小春(ていうかもう、つねっちゃえ!!)ギュッ
ハルオ「アヒィー!」
33: 以下、
――日高商店前
小春「お店の所まで来てもらっちゃって、ごめんね」
ハルオ「いいってことよ」
小春「矢口くんに送ってもらうみたいになっちゃった」
ハルオ「気にすんなって。こっちはチャリに乗せてもらったんだしな」
小春「何だか楽しかった。矢口くんの意外な弱点も分かったし♪」
ハルオ「テメェ……もうあんなこと二度とすんじゃねーぞ」
小春「エヘヘ、冗談だよ」
ハルオ「じゃあな日高」
小春「今日はありがとう、矢口くん」
ハルオ「俺もありがとな、日高」
小春「じゃあね。気をつけて」
ハルオ「ああ」
小春(……)
小春(矢口くんと……)
小春(矢口くんと、自転車二人乗り……)
小春(その時に、自転車がコレ……)
小春(自転車が、うちの配達用の物……)
小春(でも、コレで良かった)
小春(この自転車だったから、私たち、ゆっくり二人乗りできた)
34: 以下、
小春(大野さんのことはちょっと引っかかるけど…)
小春(私だって今日、矢口くんと二人乗りできた)
小春(だからこれで、おあいこ)
小春(大野さんとおあいこ)
小春(私はこの自転車を、もっと大事にしてあげなくちゃいけないのかも)
小春(お父さんへ頼りっ切りにしないで…)
小春(私がコレを大事にして、手入れしてあげなくちゃ)
小春(だって、これからも配達で乗ることになるんだから)
小春(お父さん任せにしないで…)
小春(私がこの自転車を大切にしてあげるんだ)
小春(これからもよろしくね、配達用の自転車)
小春(そして、矢口くんと二人乗りさせてくれた自転車)

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美琴「……レベル5になった時の話ねえ………どうだったかしら」御坂美琴のレベル5に至る努力の経緯
上条「食蜂って可愛いよな」御坂「え?」ストレートに上食。読めて良かった
一方通行「もっと面白い事してモリモリ盛り上がろォぜ」こんなキャラが強い作者は初めて見た
美琴「週末は アイツの部屋で しっぽりと」超かみことを見てみんなで悶えましょう
ミサカ「たまにはMNWを使って親孝行しようぜ」御坂美琴のDNAは究極に可愛くて凄い
番外個体「  」番外通行SSの原点かな?
佐天「対象のアナルを敏感にする能力か……」ス、スタイリッシュアクションだった!
麦野「どうにかして浜面と付き合いたい」レベル5で楽しくやっていく
ミサカ「俺らのこと見分けつく奴なんていんの?」蒼の伝道師によるドタバタラブコメディ
一方通行「あァ!? 意味分からねェことほざいてンじゃねェ!!」黄泉川ァアアアアアアアアアア!!
さやか「さやかちゃんイージーモード」オナ禁中のリビドーで書かれた傑作
まどかパパ「百合少女はいいものだ……」君の心は百合ントロピーを凌駕した!
澪「徘徊後ティータイム」静かな夜の雰囲気が癖になるよね
とある暗部の軽音少女(バンドガールズ)【禁書×けいおん!】舞台は禁書、主役は放課後ティータイム
ルカ子「きょ、凶真さん……白いおしっこが出たんです」岡部「」これは無理だろ(抗う事が)
岡部「フゥーハッハッハッハ!」 しんのすけ「わっはっはっはっは!」ゲェーッハッハッハッハ!
紅莉栖「とある助手の1日ヽ(*゚д゚)ノ 」全編AAで構成。か、可愛い……
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」SUGEEEEEEEEEEEEEEEEE!!
遊星「またD-ホイールでオナニーしてしまった」……サティスファクション!!
遊星「どんなカードにも使い方はあるんだ」龍亞「本当に?」パワーカードだけがデュエルじゃないさ
ヲタ「初音ミクを嫁にしてみた」ただでさえ天使のミクが感情という翼を
アカギ「ククク・・・残念、きあいパンチだ」小僧・・・!
クラウド「……臭かったんだ」ライトニングさんのことかああああ!!
ハーマイオニー「大理石で柔道はマジやばい」ビターンビターン!wwwww
僧侶「ひのきのぼう……?」話題作
勇者「旅の間の性欲処理ってどうしたらいいんだろ……」いつまでも 使える 読めるSS
肛門「あの子だけずるい・・・・・・・・・・」まさにVIPの天才って感じだった
男「男同士の語らいでもしようじゃないか」女「何故私とするのだ」壁ドンが木霊するSS
ゾンビ「おおおおお・・・お?あれ?アレ?人間いなくね?」読み返したくなるほどの良作
犬「やべえwwwwwwなにあいつwwww」ライオン「……」面白いしかっこいいし可愛いし!
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