うしおとセイバー【前半】back

うしおとセイバー【前半】


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スピードイーターのエピソード、アニメですっ飛ばされたのは本当に惜しいよな
149: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 21:23:56.07 ID:NYL2IYmQ0
あれ見たかったですよねぇ、麻子がヒロインやってるエピソード少ないから余計にそう感じる
150: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 21:27:10.25 ID:NYL2IYmQ0
・間桐邸
凛「さすがに家に居るわけないか」
とら「ちっ、馬乗りのニオイもしやがれねえな」
凛「二手に別れた蒼月君たちも気になるわ。もう行きましょ、とら」
とら「ますたーよ。ここはあの女の家なんだろ。会わなくていいのかよ」
凛「桜のこと? いいのよ、別に」
とら「わしには関係ねえからいいけどよ。ますたーとあの女は同じニオイがするのよ」
とら「おめえらは」
凛「それ以上はやめて。とら」
とら「……なら、もう行くぜ」
凛(……桜……)
151: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 21:33:54.99 ID:NYL2IYmQ0
・高層ビル前
うしお「セイバー。どうだい?」
セイバー「いえ、魔力は感じません」
うしお「ここも違うかァ」
うしお「ごめんよセイバー。オレが魔術師だったら手伝えるのによ……」
セイバー「ウシオ、それは気にしないで下さい」
セイバー「しかし、そうですね。少し休憩しましょう」
うしお「えっ……?」
152: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 21:41:39.20 ID:NYL2IYmQ0
・公園
うしお「この魚肉ソーセージうめえなァ」
セイバー「……ウシオ、私は貴方に謝らなければいけません」
うしお「えっ?」
セイバー「リンに、ウシオの旅を記録したモノを見せてもらいました」
うしお「オレの? あぁっ、守矢さんのビデオか!!」
セイバー「しかしリンは、その、機械というのが苦手なようで……」
セイバー「最終的にはアサコとマユコに手伝ってもらっていましたが……」
うしお「あ、あぁ、確か遠坂先輩はそうだったよな……」
うしお「しっかし、あれ恥ずかしいんだよなァ。でも、それがどうしたんだい?」
セイバー「それで、よかったらウシオから直接旅の事を聞かせてもらえませんか?」
うしお「セイバーが聞いても面白い話なんてあるかなァ」
セイバー「聞きたいのです!! お願いします、ウシオ!!」
うしお「わ、分かったよ。ど、どうしたんだセイバー」
セイバー「いえ、それは、別に……」
セイバー(……私は知りたい。なぜアナタが私を召喚出来たのか……)
153: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 21:50:49.71 ID:NYL2IYmQ0
うしお「それで、オレとアイツの旅は終わりさ」
セイバー(……そうして、ウシオとトラはこの国を救ったのですね)
セイバー(アナタたちと私は違う……)
セイバー(何故なら、私は国を救ってなどいないのだから……)
セイバー(しかしそれなら尚更、ウシオが私を召喚出来た理由がない……)
うしお「いけねーっ!! 話し込んでたら暗くなっちまった!!」
セイバー「すみませんウシオ。リンたちも気になります。行きましょう」
ドクンッ
うしお「っっ!? セイバー、今の感覚……!!」
セイバー「結界……。しかしこれは誘いですね……」
うしお「それでも、行くしかねえさっ!!」
セイバー「そうですね。ウシオ、魔力を辿ります。注意して下さい」
うしお「あぁ……!!」
154: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 22:00:07.88 ID:NYL2IYmQ0
・高層ビル前
セイバー「ウシオ!!」
うしお「うわっ!? またあの針か、ってことは……!!」
ライダー「フフ……」
うしお「ビ、ビルの壁に……!?」
ライダー「ついてこれますか、セイバー」
セイバー「追います。ウシオはここに居て下さい」
うしお「頼んだセイバー!!」
凛「蒼月君!! 今の、ライダーね。私たちもライダーを追ってたのよ」
うしお「遠坂先輩。あぁ、セイバーとビルの屋上へ飛んで行ったよ」
凛「とら。先に行ってセイバーのサポートを」
とら「なぁんでわしが剣使いの手伝いなんか……」
凛「いいから行けーーーー!!!!」
うしお「いいから行けーーーーっ!!!!」
とら「は、はいーーっ!!」
155: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 22:09:57.15 ID:NYL2IYmQ0
・高層ビル屋上
セイバー「神代のモノを持ち出すとは随分と業が深いようですね。ライダー!!」
ライダー「私は貴方たちの敵だった者に過ぎない」
ライダー「故に私が操るのは貴方たちが駆逐してきた可哀想な子たちだけよ」
セイバー「なるほど。歪んでいるとは思いましたが英霊ではなく悪鬼の類でしたか」
ライダー「言ってくれますね。私の宝具であの獣のサーヴァントを手懐ければ貴方なんて……」
セイバー「トラを……?」
セイバー「フッ……」
ライダー「セイバー。何が可笑しいのです」
セイバー「面白いことを言いますね。ライダー」
ライダー「なに……」
セイバー「あの『雷獣』を手懐け乗りこなすと?」
セイバー「それは貴方には無理だろう。『ライダー』?」
ライダー「っっ……!!」
ライダー「セイバー……!!」
156: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 22:26:37.29 ID:NYL2IYmQ0
とら「……なんじゃありゃ。馬乗りが羽の生えた白い馬に乗っとるかよ。初めて見たぜ」
ライダー「現れましたか、獣のサーヴァント」
とら「剣使い、なーにやっとる。馬乗りなんかに手こずっとんのかよ」
セイバー「トラ、ウシオたちは?」
とら「知るかよ。多分えらべったーとかいうやつで来るんだろ」
セイバー「なるほど、分かりました。出来れば二人が来る前に決着をつけたいところですが」
ライダー「到着した貴方たちのマスターには、消える二体のサーヴァントを見せてあげます」
ライダー「何故なら、貴方たちでは私の子に触れる事も出来ないのだから!!」
157: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 22:30:05.47 ID:NYL2IYmQ0
とら「へっ、馬乗りが粋がるか。よーし……」
とら「剣使いっ、乗れっ!!」
セイバー「トラ、何を……?」
とら「勝負しようじゃねえか、あの馬乗りの羽の生えた白い馬とよ」
セイバー「わ、私に、貴方に乗れと……?」
とら「乗らねーんならわしだけで行くわい」
セイバー「行きます!!」
セイバー「……ライダーにああ言った後に貴方に乗ることになるとは……」
とら「ああ? 何の話だよ?」
セイバー「いえ、こちらの話です。行きましょうトラ、私たちとライダーとの勝負です!!」
とら「へっ、振り落とされんなよ剣使いっ!!」
158: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 22:36:34.57 ID:NYL2IYmQ0
うしお「セイバー!!」
凛「とら!!」
慎二「ハッハハハ!! アッハハハ!!」
慎二「見たか蒼月、遠坂!! あれが僕とお前たちとの力の差だ!!」
凛「慎二……!!」
慎二「空の上ならライダーが有利なんだよォ!!」
慎二「即席でコンビを組んだサーヴァントどもが、僕のライダーと宝具に勝てるわけがない!!」
うしお「セイバー……とら……!!」
慎二「お前たちもサーヴァントもこれで終わりだな!!」
慎二「苦しまないように一瞬で殺してやるよ!! やれライダー、手足一本残すなよ!!」
159: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 22:47:01.47 ID:NYL2IYmQ0
・高層ビル上空
ライダー「さ比べは同等ですか。やりますね、獣のサーヴァント」
とら「おめえもな、馬乗り。その乗りモンなかなかえじゃねえか」
慎二「やれライダー、手足一本残すなよ!!」
ライダー「……どうやら余興はここまでのようね」
ライダー「私の真の宝具は強力で、使えばどうしても人目につく……」
ライダー「けれど、この雲の上なら覗き見される恐れはない」
セイバー「それが貴様の宝具か、ライダー!!」
ライダー「えぇ、この子は優し過ぎて戦いには向いていない」
ライダー「こんな物でも使わないと、その気になってくれないのよ」
ライダー「消えなさい!! セイバー!! 雷獣!!」
とら「馬乗りがつけあがりおって」
セイバー「…………」
セイバー「トラ、私の魔力は残り少ない。そこで貴方の力を貸して欲しい」
とら「何だァ? ……へっ、面白えじゃねえか。ドジるなよ剣使い!!」
160: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 22:54:15.59 ID:NYL2IYmQ0
セイバー「風よ……!!」
とら 「雷よ……!!」
とら「こいつの『剣』に落ちやがれええええ!!!!」
セイバー「こ、これが……!!」
セイバー(これがトラの雷……。凄い、これならば……!!)
セイバー「ライダー、この雲の上なら人目につかないと言ったな……」
セイバー「同感だ。ここならば地上を焼き払う憂いもない!!」
とら「黄金の剣、か」
ライダー「騎英の手綱(ベルレフォーン)!!!!」
セイバー「約束された勝利の雷剣(エクスカリバー)!!!!」
161: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 23:00:03.65 ID:NYL2IYmQ0
・間桐邸
桜「ライダー……」
162: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 23:08:22.11 ID:NYL2IYmQ0
・高層ビル屋上
凛「雨雲を、二つの金色が裂いていく……」
慎二「うひゃぁ!! 令呪が、令呪が燃えちまう!!」
凛「慎二……!!」
慎二「ひ、い、うぁ、あああああ!!」
うしお「間桐先輩が逃げる……!! 待てぇぇーー!!」
163: ◆I4R7vnLM4w 2016/10/24(月) 23:11:31.51 ID:NYL2IYmQ0
・高層ビル前
慎二「はぁ、はぁ、はぁ……」
慎二「!?」
??「…………」
慎二「な、なんだよお前!! 邪魔なんだよ!!」
??「『黄金の剣』に『黄金の獣』か」
慎二「ど、どけよぉ!!」グサッ
慎二「あ? あ……ぁ……」
??「『黄金』に相応しい英霊は我だけよ。フフ、ハァーハッハッハッ!!」
166: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 12:58:06.24 ID:7BTo5MIr0
【第十三話 冬の城へ 】
167: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 13:06:03.03 ID:7BTo5MIr0
・蒼月家、庭
とら「は? わしに乗りたい?」
真由子「とらちゃん、セイバーさんを乗せて飛んだって聞いたよ?!」
とら「それがなんだよ」
真由子「次は私だよ??!!」
とら「なんでそうなるっ!?」
凛「いいじゃない、とら。井上さんには学校の結界でお世話になったんだし」
とら「おめえら、そもそも妖と人間ってのはな……」
凛「令呪に告げる、聖杯の規律に従い……」
とら「こっ、こら!! 馬鹿かっ!! んなことで令呪を使うんじゃねえ!!」
凛「ふふ、分かればよろしい」
とら「ちっくしょ?。もう好きなだけ乗りな」
真由子「やった??!!」
168: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 13:12:03.27 ID:7BTo5MIr0
セイバー「ト、トラ……」
とら「ああ? なんだよ?」
セイバー「いや、その……」
とら「今わしはこの女の乗り物やるので忙しいのよ。何か用か?」
セイバー「その、実は私は、昔ライオンを飼っていてことがあって……」
とら「何の話だよ……」
セイバー「その、良かったら、また私も……」
凛「あら蒼月君。散歩にでも行くの?」
うしお「……遠坂先輩。あぁ、ちょっと出て来るよ」
セイバー「ウシオ、私も」
凛「いいわセイバー。今は一人にしてあげましょう」
セイバー「リン、ですが……」
凛「これは聖杯戦争なのよ。ああいう事だってあるわ」
セイバー「はい、そうですね」
169: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 13:22:01.13 ID:7BTo5MIr0
・ブランコのある公園
イリヤ「家に居ないと思ったらこんな所に。こんにちは、ウシオ」
うしお「イリヤ……」
イリヤ「浮かない顔してるけど、何かあったの?」
うしお「い、いや、何でもないさ。さーてと、そろそろ帰らないとなァ」
イリヤ「ライダーのマスターを倒したヤツの事を考えてたんでしょ」
うしお「あぁ、オレたちが救急車を呼んだりして命は助かったみたいだけどよ……」
うしお「ってイリヤ、なんでそれを!?」
イリヤ「フフ……」
うしお「……うっ、あぁ……」
イリヤ「あ、もう金縛りになったんだ。ウシオったら『護り』も何もないんだもの」
イリヤ「こんなに簡単に捕まっちゃうなんて、カワイイなぁ」
うしお「イ、リヤ……!!」
イリヤ「オヤスミナサイ……ウシオ……」
うしお「ッ……!!」
170: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 13:30:17.87 ID:7BTo5MIr0
うしお「やめろよ、こんなこと……!!」
イリヤ「へぇ、このぐらいの魔術なら精神のほうは耐えれるんだ」
うしお「カラダが動かねえ……。朏(みかづき)の陣をかけられたときみてえだ……」
イリヤ「無駄よ。魔術師じゃないウシオにそれは解除出来ないわ」
うしお「イリヤ、オレをどうする気だよ……?」
イリヤ「フフ、前にも言ったでしょ? 私のお城にウシオを招待するの」
うしお「城……。そうか、確か国道の向こうとか言ってたっけ……」
うしお(そこに行けば、イリヤにマスターをやらせてるヤツに会えるんじゃ……)
うしお「イリヤ、魔術を解いてくれ」
イリヤ「ウシオは面白いことを言うね。そう言われて解除するはずが」
うしお「イリヤの城へ行く」
イリヤ「えっ……」
うしお「いや頼むぜ、イリヤの城へ行かせてくれ」
171: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 13:39:27.40 ID:7BTo5MIr0
・蒼月家、居間
凛「……はぁ。蒼月君、帰りが遅いと思ったら……」
凛「キリオ君、その話は本当なのよね?」
キリオ「うん。銀色の髪の女の子と国道のほうへ歩いていったよ」
凛「ありがと。キリオ君が見かけたことを言いに来てくれなかったら大変なことになってたわ」
凛「セイバー、どう?」
セイバー「はい。まだ無事である事は感じ取れますがとても遠い。おそらく敵の手中に」
凛「そう……。蒼月君を一人にした私の責任ね……」
セイバー「いえ、ウシオに無理にでも付いていくべきでした。私の責任です」
とら「んなこたァどうでもいいのよ。あのクソうし、が馬鹿なだけよ」
凛「と、とら!? 今なんて言ったのよ!?」
とら「なんだァますたー? わしは剣使いの主が馬鹿と言ったのよ」
凛「そ、そう……」
凛(まさか記憶が……。いや、召喚を失敗してるのよ、そんなことは……)
セイバー「リン、トラ。同盟の盟約が続いているのなら、お願いがあります」
172: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 13:49:52.51 ID:7BTo5MIr0
・アインツベルン城、大広間
うしお「うへー、森の中にこんな城が本当にあるなんてよ……」
イリヤ「ようこそ、ウシオ。私のお城へ」
??「イリヤ、どいて」
うしお「なっ……!?」
ドゴォッ!!
イリヤ「……リズ、どういうこと?」
リズ「そいつ危ない、お断り」
イリヤ「はぁ……。まぁいいわ、ウシオを捕らえるつもりだったのは確かだしね」
うしお「お前がイリヤにマスターをやらせてるのか……!?」
リズ「……? 違うよ」
うしお「ち、違うのか、そうかよ……」
リズ「お前、多分強い。さっきのも避けた」
うしお「さすがにオレだってよ、こんなことになるかもって思ってたさ!!」
リズ「私に惚れるなよ、べいびー」
173: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 14:03:52.17 ID:7BTo5MIr0
うしお「はぁはぁ……」
リズ「避けるの、上手いね」
うしお「前と違って傷がすぐに治るワケじゃないからよ」
リズ「……?」
リズ「でも、それなら……。ちょっと本気、出す」
うしお(あの槍みたいなのをなんとかしないと近づくことも出来ねえか……)
リズ「ぐるぐる、飛んでけー」
うしお「うわっ!? 槍を投げてきた!?」
リズ「しまった。これも避けられた、大問題」
うしお「よーし、こっちもこれを使わせてもらうよ……!!」
うしお「オレだって『槍』の扱い方は自信あるんだぜ!!」
うしお「って、なんだこれぇ!? も、持ち上がらねえ、こんなのを振り回してたのか!?」
??「そこまでです」
174: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 14:21:35.63 ID:7BTo5MIr0
リズ「セラ……」
セラ「カヅチ」
華鎚「…………」
うしお「ぐああああああああああ!!!!」
セラ「お嬢さまのためとはいえ無理をしましたね」
リズ「ちょっと、疲れた。あんまり無理すると、中がいろいろ壊れちゃう」
うしお「…………」
セラ「この方が、あの方の息子……」
セラ「どうでしたか、試したのでしょう?」
リズ「うん。あの人と同じ、優しい」
セラ「そうですか。いえ、そうでしょうね」
リズ「今度一緒に、イノシシ狩りに行きたい」
セラ「それは……」
175: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 14:48:01.93 ID:7BTo5MIr0
・イリヤの部屋
うしお「……う……こ、ここは……?」
イリヤ「あ、やっと起きたんだ。声ぐらい出せるよね」
うしお「イリヤ!? ここはどこなんだ!?」
イリヤ「ここは私の部屋。誰も助けになんて来れないし邪魔は入らないわ」
うしお「何を、する気だよ……」
イリヤ「私がウシオを守ってあげるわ」
うしお「えっ……」
イリヤ「本当は、前からウシオのことは知ってたの」
うしお「オレを……?」
イリヤ「前に住んでたお城には、バルトアンデルスって妖怪が住んでたわ」
うしお「バルトアンデルス……ああ!!」
うしお「ハマーに捕まってた妖怪!! 麻子のトモダチ!!」
176: ◆I4R7vnLM4w 2016/11/13(日) 15:02:24.56 ID:7BTo5MIr0
うしお(確か麻子が、バルはヨーロッパの古城に住む妖怪って言ってたな……)
イリヤ「そのお城で私にはその妖怪しかいなかった。他には何も残ってなかったの」
イリヤ「でも隠れて会っていたらアインツベルンに見つかって、ハマー機関に連れて行かれたわ」
うしお「ハマー機関……。そうか、博士たちが……」
イリヤ「私が吹雪の森で狼に襲われたときも、私はバルを呼び続けた。それぐらいは信頼してたのよ?」
イリヤ「でも助けに来るわけもなく、私を救ってくれたのはバーサーカーだったけどね」
うしお「あのサーヴァントか……」
イリヤ「この国に来る前に少しだけ、あの妖怪に会ったわ」
イリヤ「お爺様の厳しい監視を抜けて、ほんの少しだけ話したの」
うしお(……お爺様……? そいつがイリヤにマスターを……?)
イリヤ「私のことを助けられなくてゴメンって言ってた、何のことか分からなかったけど」
イリヤ「それから、日本に行くならウシオという『すごい』人間がいるから、もしかしたら、って……」
うしお(バル……)
イリヤ「他にも何か言ってた気がするけど、まぁいいわ。それより……」
イリヤ「あの妖怪の言ったとおり、確かにウシオは他のマスターと違って面白いわ」
イリヤ「だから私が守ってあげるの」
イリヤ「そして最後の最後で、殺してあげる」
うしお「イリヤ……!!」
182: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 20:12:42.42 ID:9OjUoUeX0
【第十四話 妖怪の果て 】
183: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 20:19:07.21 ID:9OjUoUeX0
・アインツベルン城周辺
凛「アインツベルン城……。ここで間違いないのよね?」
セイバー「はい」
とら「チッ、華鎚どもが巡回してやがるか」
セイバー「たとえ何が待っていようと関係ありません。サーヴァントにとってマスターは」
凛「待って。とらは姿を消して、セイバーも気配を」
イリヤ「…………」
凛(イリヤスフィール……)
イリヤ「ん? 気のせい、かな。フフ」
セイバー(ウシオ、どうか無事で……)
184: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 20:28:05.01 ID:9OjUoUeX0
・イリヤの部屋
うしお「イリヤはどっか行っちまった……」
うしお「きっと遠坂先輩たちのところだ、早く知らせないと……!!」
うしお「ぐおおおお!! ぬああああ!!」
うしお「ダ、ダメだァ……。魔術の解除なんて出来ねえよォ」
バタン!!
セイバー「動くな!!」
うしお「うわっ!?」
セイバー「ウシオ!!」
うしお「セイバー!!」
凛「思ったよりは元気そうね」
とら「みてえだな」
185: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 20:33:08.04 ID:9OjUoUeX0
うしお「遠坂先輩たちまで、どうしてここに……」
セイバー「私が助けを頼んだのです。ウシオが敵に拉致されたようだったので」
うしお「拉致?」
うしお「い、いやぁ、実はオレのほうからココに来たっていうか、なんていうか……」
セイバー「大丈夫ですウシオ。その事でしたら後で私からお話があります」
凛「もちろん私からもあるから、覚悟しといてよね蒼月君」
うしお「うへぇ、あっしが悪かった……」
とら「ぷぷぷ」
凛「とにかく今は、イリヤスフィールに見つかる前に早く逃げるわよ」
186: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 20:49:55.56 ID:9OjUoUeX0
・大広間
とら「おいっ、剣使い見てみろ!! スゴイのがあるぞ!!」
セイバー「トラ、シャンデリアは返したほうが……」
うしお「ひゃー、ここだけでオレの部屋の何倍あるのか分かんねえぜ」
凛「…………」
うしお「遠坂先輩、どうしたんだい?」
凛「あっさりしすぎよ。ここまで上手く行き過ぎてる」
うしお「えっ……」
??「なぁんだ、もう帰っちゃうの? せっかく来たのに残念ね」
うしお「イリヤ……!!」
凛「イリヤ、スフィール……。そう、なるほどね」
凛「蒼月君で誘き寄せて、本命は私たちってことか」
イリヤ「ウシオが自分からここに来るって言ったのは想定外だったけどね。言ったでしょ、リン」
イリヤ「リンのサーヴァントにはアインツベルンが対策してるって。それがここよ」
凛「まさか……。この城や森そのものがアインツベルンのためのフィールド……!?」
とら「けけっ、どおりで息苦しいと思ったぜ」
187: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 21:01:47.79 ID:9OjUoUeX0
凛「まんまと誘い込まれたってことか」
うしお「遠坂先輩、オレのせいで……」
凛「気にしないで。迂闊だったのは私も同じよ。それより……」
うしお「あぁ、この森から脱出するんだ……!!」
イリヤ「帰らせるつもりなんてないわ」
イリヤ「だって、私はこの城の主なんだからお持て成しをしなきゃ、お客様に」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
セイバー「バーサーカー……!!」
イリヤ「フフ」
とら「……チッ、そういうことかよ」
188: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 21:12:46.78 ID:9OjUoUeX0
凛「この城の内部で戦うのは危険よ。どんな仕掛けがあるか分からないわ」
凛「とら。今はとにかく逃げて、外でバーサーカーを迎え撃つわよ」
とら「逃げる? このわしが?」
とら「なァんでわしが逃げないといけないのよ」
凛「ちょ、ちょっと何言って」
とら「逃げたきゃおめえらで逃げな。こいつァわしの獲物よ」
セイバー「トラ、それなら私たちでバーサーカーの相手を」
とら「剣使い、おめえもなんか勘違いしとるようだな」
とら「わしの獲物を横取りするならおめえが先に相手になるかよ?」
セイバー「トラ、なぜ……」
凛「アンタねぇ、イリヤスフィールは結界を操る妖怪を使役してるのよ!?」
凛「今は見当たらないけど、ソイツらが出てきたらどうすんのよ!!」
とら「相変わらず『ますたー』はやかましいな」
189: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 21:20:15.99 ID:9OjUoUeX0
うしお「…………」
うしお「分かったよ。遠坂先輩のサーヴァント」
とら「なんだァ?」
うしお「何があるのかは知らねえよ。でも、何かあるんだろ?」
とら「へっ……」
とら「剣使いの主にしちゃ分かってるじゃねえか」
うしお「お前とは、付き合い長いからな」
とら「??」
190: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 21:27:45.66 ID:9OjUoUeX0
うしお「行こう!! セイバー、遠坂先輩!!」
凛「あ、蒼月君!?」
セイバー「いいのですかウシオ。しんがりが必要なのは理解出来ますが」
うしお「あぁ、それにとらも俺たちを守りながらじゃ戦おうにも戦えねえよ」
うしお「とらならすぐに飛んで追いつくさ。今はここから逃げよう」
セイバー「なるほど、分かりました。トラ、ご武運を」
凛「ちょ、ちょっと、勝手に話を……。あーー、もうっ!!」
凛「このバカとらーーっ!! アンタは私のサーヴァント!!」
凛「勝手に負けたりなんかしたら許さないわよ!!」
とら「本当にやかましい『ますたー』だぜ」
とら「いいからとっとと行きな」
とら「りん」
191: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 21:37:29.38 ID:9OjUoUeX0
とら「おめえ、わざとアイツらを逃がしたな。なんでだ?」
イリヤ「どうせリンたちは森から出ることなんて出来ないもの」
イリヤ「それよりここで一体のお前を確実に殺すわ」
とら「けっ、この城全体を華鎚どもが結界張ってやがんのか」
とら「確かに、これじゃ飛んで逃げることも城から出ることも出来ねえな」
イリヤ「お前のことをアインツベルンが調べたのよ」
イリヤ「過去に中国の符咒士との戦いで、この結界の使い方でかなり追い詰められてるって」
とら「昔のことは知らねえよ。で、本命はりんでも剣使いでもなく、わしかよ」
イリヤ「当然でしょ?」
イリヤ「私のバーサーカー『ヘラクレス』の相手になるヤツなんて、お前以外にいないんだもの」
イリヤ「セイバーなんて後でどうとでもするわ。お前を確実に殺した後でね」
192: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 21:47:22.27 ID:9OjUoUeX0
とら「けけけ」
イリヤ「何よ……。何がおかしいのよ……」
とら「笑わせるぜ。わしをここに閉じ込めたら、おのれらは勝てるのかよ?」
イリヤ「……っ」
とら「この、わしによ!!」
イリヤ「バーサーカー!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
イリヤ「カヅチ!!」
華鎚「……!!」
華鎚「……!!」
とら「けけっ、来いよ。木っ端微塵にしてやるから……」
とら「やーっと、楽しめそうだぜ!!!!」
193: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 22:05:23.68 ID:9OjUoUeX0
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
とら「やりやがるな!! 退屈しねえや!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
とら「しかしよォ、おめえは正気のほうがつえーんだろうな」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
とら「残念だぜ!!」
194: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 22:09:54.15 ID:9OjUoUeX0
・アインツベルンの森
凛「くっ、令呪が、熱い……」
うしお「遠坂先輩!?」
セイバー「まさか、トラが……」
凛「とらはそう簡単にやられるようなヤツじゃないわ」
凛「そうでしょ、蒼月君?」
うしお「あぁ……!!」
195: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 22:18:46.83 ID:9OjUoUeX0
・大広間
イリヤ「なんで……なんで死なないのよ……」
イリヤ「結界に縛られて、身動き一つ出来ずにバーサーカーに攻撃されてるのに……」
とら「けけっ」
イリヤ「……コイツどこかおかしいわ。油断なく躊躇いなく、殺しなさい!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
とら「くくっ」
イリヤ「まさか、バーサーカーと同じ宝具を……」
とら「宝具だァ? くく、はーっはっはっはっ!!」
イリヤ「なっ!?」
とら「死なねーんだよ。それが妖(バケモノ)!!!!」
196: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 22:31:25.51 ID:9OjUoUeX0
イリヤ「妖怪のサーヴァント、ここまでなんて……」
とら「…………」
イリヤ「手を抜いたワケじゃないでしょうね、バーサーカー」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
イリヤ「カヅチ。そのまま結界でコイツを捕まえてなさい」
華鎚「…………」
華鎚「…………」
イリヤ「マスターのリンさえ殺せばコイツだって死ぬはず……」
イリヤ「早く傷を治しなさい。今すぐリンたちを殺しに行くわよ」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
とら(……ちっ、潮時か……)
197: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/03(土) 22:52:07.08 ID:9OjUoUeX0
とら(力が入らねえ……)
とら(存在を維持する力ぐらいしか、わしの中にりんの魔力は残ってねえか……)
とら(……でもまぁ、時間は稼いだか……)
とら(この森から脱出さえ出来れば、りん、おめえなら何とか出来るだろ)
とら(わしが消えても剣使いと再契約すりゃ、あのガキどもにも負けねえだろうしな)
とら(ここで、おしめえ、か……)
とら(聖杯戦争の残りのヤツらがどんな敵か知らねえが、おまえならやっつけられる……)
とら(そうだよなァ?)
とら(うしお……)
201: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 13:32:28.43 ID:lkCiBrHG0
【第十五話 追撃の交差『十二の試練』 】
202: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 13:37:08.83 ID:lkCiBrHG0
・アインツベルンの森
セイバー「ウシオ、リン、止まってください」
うしお「セイバー? どうしたんだ?」
セイバー「二人とも隠れて。あれを」
リズ「…………」
セラ「…………」
うしお「あの二人は……!!」
凛「知ってるの蒼月君?」
うしお「あぁ、イリヤの仲間さ。ちょっと戦ったけどよ、かなり強いぜ」
凛「そう……。向こうも簡単には逃がしてくれないか……」
セイバー「強行突破しますか?」
凛「いえ、まだここはアインツベルンの森よ。どんな仕掛けや罠があるか分からないわ」
うしお「もう少しで国道に出るのに……。でも遠坂先輩、どうするんだい?」
凛「そうね。遠回りになるけどアレを使いましょうか」
203: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 13:47:56.66 ID:lkCiBrHG0
・廃墟
うしお「ここは……?」
凛「私たちが来るときはとらの背中に乗って来たんだけど、そのときに上空から見つけたのよ」
うしお「そうか。上から見れば森に何があるか分かるもんね」
セイバー「そのときのトラの背中はモフモフでとても気持ちよく」
うしお「セ、セイバー?」
セイバー「あっ、いえ、何でもありません」
凛「とにかく、陽も落ちて暗くなってきたわ」
うしお「ホントだ。もう外は暗いや」
凛「夜の森は危険よ。この廃墟で敵をやり過ごしましょ」
セイバー「それには賛成です。夜は闇討ちの可能性もある、そうしましょう」
うしお「おーし、分かったぜ」
204: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 14:00:30.66 ID:lkCiBrHG0
ぐぅ??
凛「ちょっと蒼月君、さすがに緊張感なさ過ぎるんじゃない?」
うしお「オ、オレじゃねえよーーっ!!」
セイバー「……すみません、私です」
凛「あ、セ、セイバーだったんだ……」
セイバー「何か食べる物があればいいのですが」
うしお「食い物かァ……。あっ、これがあったんだ!!」
がさごそ、ころん
凛「……それは?」
うしお「遠野で妖怪の長から貰った『減らないオムスビ』さ。食べてもなくならないんだ」
凛「減らないって、どういうことよ……」
セイバー「確かに、もぐもぐ、これは凄い。食べると、もぐもぐ、既に次のモノが用意してある」
うしお「セイバー、ゆっくり食っても大丈夫さ」
凛「……蒼月君。これがとんでもないモノだって、分かってる?」
うしお「えっ? あぁもちろんさ。コヅカイがピンチのときは助かるんだぜ?」
うしお「今月も金欠でさ、これを持ち歩いて腹が減ったときに食うつもりだったんだ」
うしお「持っててよかったぜ」
凛「…………」
凛「はぁ……」
凛「協会の奴らが知ったら『魔法の数』が変わってるところだわ」
205: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 14:10:23.01 ID:lkCiBrHG0
うしお「この建物って誰かのアトリエだったのかな……?」
凛「えっ? 蒼月君。それは分からないけど、どうして?」
うしお「いや、地面に画材道具が散らばってるから、そう思っただけさ」
凛「言われてみれば確かにそうね。まぁ、この荒れ具合から何年も前でしょうけど」
セイバー「ウシオは自身も絵を描くので気になったのでしょう」
うしお「あぁ、ってセイバーなんでオレが絵を描くこと知ってんだ!?」
セイバー「知ってるもなにも、ウシオの部屋は絵を描く道具で溢れているではないですか」
うしお「あ、そういやそうか」
凛「それに居間には描きかけの絵だって置いてあるじゃない」
凛「えっと、なんだっけ、溶けかけた虎?」
うしお「ありゃ藤村先生の肖像だよっ!!」
206: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 14:19:35.82 ID:lkCiBrHG0
うしお「あーあ、誰もオレの芸術的センスを分かってくれねーんだもんなァ」
うしお「あ、そうだ!!」
うしお「いつかセイバーを描かせてくれよ!!」
セイバー「私を、ですか……?」
凛「蒼月君。セイバーは英霊なのよ? この意味忘れてない?」
うしお「分かってるよ遠坂先輩。セイバーは有名な英雄だってことだろ?」
うしお「きっとスゲェ画家たちが、もう描いてるだろうさ」
セイバー「確かに、全く経験がないワケではないですが……」
うしお「それでも描きたいんだセイバー、頼むよ!!」
凛「ふふ、絵のことになると夢中ね。蒼月君」
うしお「あったりめえよ!!」
うしお「この聖杯戦争が終わったあとでもいいからさ。セイバーを描かせてくれよ!!」
セイバー「……聖杯戦争が、終わったあと……。いえ、それは……」
うしお「オレがセイバーをモデルにするなんて、つけあがってるのは分かってる」
うしお「でもよ、あの日、蔵の地下で出会ったときにも思ったんだ」
うしお「笑ってるセイバーを、描いてみたいって!!」
セイバー「ウシオ……」
207: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 14:25:26.27 ID:lkCiBrHG0
凛「蒼月君。まさかとは思うけど……」
凛「セイバーを描きたいって……。ヌ、ヌヌ、ヌードじゃないわよね!?」
うしお「な、な、なに言ってるんだ遠坂先輩!?」
うしお「んなワケないだろォ!?」
セイバー「……分かりました、ウシオ」
セイバー「聖杯戦争で勝利に導くのがサーヴァントの務め」
セイバー「約束しましょう。必ずマスターには絵を描いてもらいます」
うしお「セイバー……。あぁ、頼んだぜ」
208: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 14:46:21.47 ID:lkCiBrHG0
うしお「……ん、いけね寝ちまった」
セイバー「ウシオ、起きましたか。身体は大丈夫ですか?」
うしお「あぁ大丈夫だぜ。おっ、もう外は明るくなりはじめてるんだな」
凛「蒼月君、おはよう」
うしお「おはようって遠坂先輩、もしかして全く寝てないのかい?」
凛「セイバーに見張ってもらって私も少しは仮眠をとったわよ」
うしお「そうか。よーし、それじゃ」
凛「待って蒼月君。落ち着いて聞いてね」
うしお「えっ?」
凛「今この付近でイリヤスフィールとバーサーカーが私たちを捜索してるわ」
うしお「そんな!? それじゃ、とらは……!!」
凛「大丈夫よ。私ととらの令呪の繋がりは切れてない。多分、城で華鎚の結界に捕まってるんだわ」
凛「あの馬鹿、大口を叩いたわりにはまんまとイリヤスフィールに捕まったのよ」
209: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 14:53:27.77 ID:lkCiBrHG0
うしお「とらが捕まった、か。なんとかしねえと……」
セイバー「しかし、これは好機かもしれません」
うしお「好機? どういうことだい?」
セイバー「トラと戦い終わった直後のバーサーカーです」
セイバー「あのトラのことですから、必ず相手には痛手を負わせているでしょう」
凛「そしてイリヤスフィールは、とら捕縛のためにかなりの魔力と多数の華鎚を使ってるはずだわ」
うしお「そうか、今ならオレたちだけでもバーサーカーを倒せる……!?」
凛「そういうこと」
セイバー「はじめからトラの『狙い』はこれだったのかもしれませんね」
凛「どうだか。アイツのことだから本当にバーサーカーと『タイマン』やりたかっただけでしょ?」
うしお「はは、確かに」
セイバー「ですがこの好機は逃せません。ウシオ、私たちもバーサーカーと……」
うしお「あぁ、タイマンさ!!」
210: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 15:01:54.85 ID:lkCiBrHG0
凛「作戦はこうよ」
凛「蒼月君とセイバーで、バーサーカーの注意を引き付けてもらうわ」
凛「そこに私が背後からの奇襲。とっておきの宝石魔術で終わらせる。どう?」
セイバー「いいと思います。単純ではありますが、それ故に効果的です」
うしお「よーし、分かったぜ!!」
凛(本当のとっておきは、とらの身につけてる宝石だけど。今は手持ちの宝石でやるしかないわね)
うしお「それじゃ行こうか」
凛「ちょっと待って。蒼月君、これを」
うしお「これは、槍……」
凛「私が魔術で作った槍よ。あのバーサーカーと対峙するのに得物がないのは困るでしょ?」
凛「一応、蒼月君の『あの槍』に似せて作ったんだけど、ちゃんと使えそうかしら……」
うしお「あぁもちろんさ。この槍があるならオレは負けないぜ。ありがとう遠坂先輩」
凛「も、もう。でも当然それはあの槍と違って何の力もない槍だから、油断しないでね」
うしお「分かったよ。よーし、それじゃ行こう!!」
211: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 15:20:14.42 ID:lkCiBrHG0
・アインツベルンの森
イリヤ「見?つけた♪」
うしお「イリヤ……」
セイバー「…………」
イリヤ「……意外ね。最後まで逃げ回ると思った。それにウシオ、リンはどうしたの?」
うしお「あっ、ありゃ、えーと、遠坂先輩は、森で、はぐれた、かな?」
凛(……蒼月君、ウソがヘタすぎるわ……)
イリヤ「……そう。ならリンはあとで探して殺してやるわ」
うしお「待ってくれよイリヤ。この戦いはどうしても止めることは出来ねえのか?」
イリヤ「出来ないよ。お爺様の言いつけだもの」
うしお「そうか。やっぱりそのお爺様ってヤツに言われてやってんだな」
イリヤ「そうよ。バーサーカーがいる限り、私はアインツベルンのマスターなの」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
セイバー「アインツベルン……」
イリヤ「他のマスターを全員殺して、聖杯を持ち帰らないといけないんだから……!!」
212: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 15:25:31.69 ID:lkCiBrHG0
うしお「オレはそのアインツベルンも聖杯もよく知らねえさ。でもよ、こんな殺し合いはいけねえよ」
うしお「あの公園で美味そうにクリームパンを食ってたイリヤが、好きでこんなことしてるとも思えねえ」
うしお「もしよ、バーサーカーを倒してイリヤをマスターからやめさせれば、少しはマシになるなら」
うしお「オレは戦うさ。何度だってイリヤのために立つ。立って戦う!!」
イリヤ「な、何を言って……。私のため……?」
イリヤ「そう言って私を騙して、バーサーカーを倒して聖杯を手に入れるつもり?」
イリヤ「もういい、いらない。ウシオもバルと同じだわ」
イリヤ「私を救ってくれるのはアインツベルンとバーサーカーだけ!!」
イリヤ「遊びはこれまで。みんな殺しちゃえ!! バーサーカー!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「来る……!!」
213: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 15:36:19.23 ID:lkCiBrHG0
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「バーサーカー、東の妖の一鬼なみの巨体にこのスピード……!!」
うしお「これなら、どうだっ!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「だ、駄目か……。オレの槍の攻撃ははじかれる……!!」
イリヤ「無駄よ。普通の人間の攻撃なんてバーサーカーに通じるはずないもの」
イリヤ「やっちゃえ、バーサーカー!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「ぐはっ……」
セイバー「ウシオ!!」
イリヤ「これで終わりだよ、お兄ちゃん!!」
凛「終わるのはそっちよ、イリヤスフィール!!」
214: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 15:42:07.99 ID:lkCiBrHG0
イリヤ「リン……!?」
うしお「遠坂先輩……!!」
凛「獲ったァ!!」
セイバー「見事ですリン。背後から魔術は完全に入りました、今のは防ぎようがない」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
凛「ウ、ウソ……。確かに、首を吹き飛ばしたはずなのに……!?」
イリヤ「そういう作戦だったんだ。見直したわリン。まさか一度だけでもバーサーカーを殺すなんてね」
うしお「どうなってんだ、バーサーカーは倒したんじゃ……!?」
イリヤ「残念ねウシオ。教えてあげる、ソイツは『十二回』殺されないと死ねない身体なのよ」
セイバー「まさか、バーサーカーの宝具は……!!」
凛「命のストック……『蘇生魔術の重ね掛け』……!?」
うしお「そ、そんな……!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
凛「がはっ……」
イリヤ「確かに終わるのはリンのほうが先だったようね」
イリヤ「バーサーカー!! ソイツ潰しちゃえーーっ!!」
215: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 15:51:12.48 ID:lkCiBrHG0
とら「……ここは、りんの家か。りんと初めて会った場所かよ」
凛「とらァ!!」
とら「りん!?」
凛「アンタこんなところで何してんのよっ!!」
とら「おめえこそ何しに来たんだよ!! 今おめえは逃げるので忙しーいんだろ!?」
凛「ええ、ちょうど今バーサーカーに握り潰されるところよ」
とら「なにやってんだよ!! あのクソ『うしお』なら何とか出来るだろ!!」
凛「とら、記憶が戻ったんだ」
とら「ああ? あぁ、それがどうかしたかよ」
凛「よかった、本当に」
とら「ちっ、なにがでえい。りん、おめえの単純な魔力不足のせいなんだぜ?」
凛「アンタみたいな規格外の英霊を召還する魔力なんて誰も持ってないわよっ!!」
216: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 16:08:53.91 ID:lkCiBrHG0
凛「一つだけ、分からないことがあるわ」
とら「なんだよ?」
凛「私はセイバーを召喚するつもりだった。色々うっかりしてて失敗したけどね」
凛「それで召喚されたのはアンタだった。それだけは不可思議よ」
とら「そんなことかよ。わしはこの土地に五百年はりつけになってた。あの忌々しい槍にな」
とら「この土地に縁のある英霊ってことだ。他のヤツよりは召喚しやすいだろうぜ」
凛「それはそうかもしれないけど、本当にそれだけかしら?」
とら「他になにがあるってんだよ」
凛「マスターが召喚出来るサーヴァントは、そのマスターに似るっていうわ」
凛「私とアンタ、どこか似てるのかもね」
とら「くだらん。わしはそんなもん信じんぞ」
凛「そう? 気に入った相手に素直になれないところとか似てると思うけど」
とら「ふん。おめえにしては阿呆なこと言うよな、りん」
217: ◆I4R7vnLM4w 2016/12/23(金) 16:30:01.99 ID:lkCiBrHG0
とら「話は終わりかよ。りん、わしはもう店じまいだ」
とら「なァんで最期の最期で記憶が完全に戻ったのか知らねえが、もうしめえよ」
凛「は? とら、アンタなに言ってんのよ」
とら「もうわしの中におめえの魔力は残っちゃいねーよ。体が動きゃしねーんだ」
凛「はぁ……。本当にとっておきの宝石を使うことになるとはねぇ」
とら「おい聞いとんのか、りん!!」
凛「アンタの耳につけてるそれ」
とら「ああ? おい、なんだこれ、いつのまにこんなもんつけやがった!!」
凛「そのペンダントは『父さんの形見』で、私の一番とっておきの宝石よ」
とら「まさかおめえ、それをわしに……」
凛「とら、アンタは『私の』サーヴァントなのよ」
凛「だから私が危なくなったときに発動するように仕掛けておいたの」
凛「だって、アンタは私を聖杯戦争で勝たせてくれるんでしょ?」
凛「約束、守ってもらうわよ」
とら「……!?」
とら「傷が、治って……」
凛(……早く助けに来なさいよね、とら……)
とら「へっ……。約束は、守るさ」
222: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 20:18:41.94 ID:gNeUeXmH0
【第十六話】
223: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 20:24:35.45 ID:gNeUeXmH0
凛「あ……ぁ……っ……」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
セイバー「リン!! 今助けます!!」
リズ「イリヤの、邪魔、させない」
セラ「ここは通しません」
セイバー「お前たち……!!」
うしお「遠坂先輩!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「離せよォ!! 遠坂先輩を離せええーーっ!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「ぐはっ……。あ、あぁ、槍が砕けて……そんな……」
イリヤ「バーサーカー!! 早くやりなさい!!」
ドオオオオン!!!!
セイバー「!? 今の音は……」
イリヤ「な、なに……? 城のほうから……?」
224: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 20:30:20.29 ID:gNeUeXmH0
キィィィィン
リズ「この、音……」
セラ「何かが近づいて……」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
イリヤ「なに、なんなの……?」
「雄ぉ鳴ぉ雄ぉ鳴ぉ雄ぉ鳴ぉ雄ぉ!!!!!!」
ドオオオオン!!!!
「まーったく、『わし』がいなきゃこのザマかよ」
うしお「と、とらァ!!」
とら「あいそがつきるぜ。いや、あいそなんざとっくにつかしてたか」
とら「忘れるぐらいによ」
225: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 20:37:17.28 ID:gNeUeXmH0
うしお「と、とら……まさか……」
とら「なにやってやがる、このうすらバカちびが」
うしお「!?」
とら「しけた面してんじゃねーぞ!!」
とら「うしお!!!!」
うしお「な、なんでぇ……」
うしお「おめえこそ、オレのこと忘れやがって……」
とら「ああ!? おめえのアホ面がおかしくて思い出しちまったよ!!」
うしお「なにをォ!!」
うしお「とらァ!!!!」
とら「タコが!! りんを助ける気ねーのか!?」
うしお「分かってらァ!!」
とら「ドジるなよ!! うしお!!」
うしお「こっちのセリフだい!! とら!!」
226: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 20:55:47.45 ID:gNeUeXmH0
イリヤ「う、うそよ……」
イリヤ「カヅチ四体の結界で縛っていたのに……。どうやって……」
うしお「バーサーカー!! こっちだ!! オレはこっちにいるぞ!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
とら「前っから思ってたけど下手だよなァ、うしお」
うしお「悪かったな、とら!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
セイバー「ウシオもトラも動きが違う……。これは……」
凛(……二体で最強。ほんと貴方たちって……)
とら「おらよォ!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
とら「わしの『ますたー』は返してもらうぞ」
凛「かはっ、はぁ、はぁ……。お、遅いのよ、とらっ!!」
とら「へっ、その調子なら大丈夫そうだな。りん」
227: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 21:14:49.07 ID:gNeUeXmH0
イリヤ「ありえない。ありえないわ、こんなこと……」
イリヤ「もう、いい。もう知らないんだから……」
リズ「イリヤ……?」
イリヤ「どうなったって、もう知らない……!!」
イリヤ「カヅチ!!」
華鎚「……!!」華鎚「……!!」
華鎚「……!!」華鎚「……!!」
華鎚「……!!」華鎚「……!!」
とら「ちぃっ、まだこんなに華鎚どもがいやがったかよ!!」
うしお「とら!!」
リズ「それ駄目、イリヤ……」
セイバー「なに……?」
セラ「いけない、いけません!!」
セラ「森に配置していた全てのカヅチに同時に命令するなどと……」
セラ「ここは城の補助も何もない場所、そんなことをすれば……!!」
228: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 21:27:47.20 ID:gNeUeXmH0
イリヤ「ウシオ、リン。これで私の勝ちよ」
イリヤ「もう、完全に……貴方たちの、負、け……」ドサッ
うしお「イリヤ!?」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
セイバー「バーサーカーが暴走を……!!」
うしお「これは、どうなってんだ!?」
凛「はぁ、はぁ……。魔力の限界、ね……」
うしお「えっ!? 遠坂先輩、それって」
凛「イリヤスフィールの魔力量が、華鎚に命令するために使った分量で限界だったのよ」
セイバー「しかし、こんな行き成り?」
凛「当然といえば当然よ。自分の使い魔でもない、ましてや『妖怪』を使役出来てたほうがおかしいのよ」
凛「そこはさすがのアインツベルンってとこね。腹立たしいけど」
凛「でもイリヤスフィールには、もうバーサーカーの理性を保つ魔力がないんだわ」
229: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 21:44:12.63 ID:gNeUeXmH0
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
リズ「バーサーカー、駄目……」
セラ「こんなこと、これでは……」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
凛「どうにかするしかないわね……。とらは動ける?」
とら「ぐっ、駄目そうだ。華鎚のクソはあのガキの最後の命令を聞いてやがるのよ」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
イリヤ「…………」
うしお「!?」
うしお「まさか、バーサーカーはイリヤまで……!?」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「イリヤーーーーっ!!!!」
イリヤ「…………」
うしお「はぁはぁ、間に合った……。でも、このままじゃ……」
230: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 21:50:40.31 ID:gNeUeXmH0
凛「とらは結界で動けないし、どうしたら……」
とら「いや、わしに出来ることはまだあるぜ。りん、準備しな」
凛「えっ?」
とら「おいうしお!! よく聞きな!!」
うしお「とらっ!?」
とら「わしにもな、剣使いと同じように『宝具』があるのよ」
うしお「宝具……とらに……?」
とら「それを使えば、おめえは昔みたいに戦えるはずだぜ」
うしお「それって、まさか……」
とら「あーあ、忌々しい」
とら「なぁんでこんなモンが、わしの宝具か」
うしお「あ、あぁ…………」
とら「この 『 獣 の 槍 』 がよォ」
231: ◆I4R7vnLM4w 2017/01/24(火) 21:52:28.24 ID:gNeUeXmH0
【第十六話 宝具『獣の槍』 】
237: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 20:30:19.91 ID:IImsifJB0
うしお「行っくぞォーーっ!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
凛「これがとらの宝具、使用者の魂を糧にあらゆる妖怪を討ち滅ぼす退魔の霊槍……」
凛「『獣の槍』!!!!」
うしお「どうだァーー!!」
セイバー「ウシオの髪が伸びて……。いや、それよりあの身体能力は……!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
セイバー「す、凄い……。あのバーサーカーを圧倒している……!?」
凛「アンタの宝具、本来はマスターのステータスをランクアップするモノなんでしょうね」
とら「その通りよ。りん、おめえも使えばあれぐらい動けるだろうぜ」
凛「それは無理でしょうね」
とら「あ?」
うしお「おおおおおおおお!!!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
凛「あんなこと、私には出来ないもの」
とら「へっ……。あの槍を使ってるアイツは、妖(バケモノ)よ」
238: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 20:40:11.97 ID:IImsifJB0
『……我らは心の内に在る……』
『……耳を澄ませば聞こえます。彼の声が……』
うしお(あぁ分かってるさ。ギリョウさん、ジエメイさん)
うしお「聞こえたよバーサーカー。この『獣の槍』を通してお前の声が!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
(……少年よ。私を倒してくれ……)
リズ「バーサーカーの、声……」
セラ「何を言って……」
凛「獣の槍は意志ある妖器物……。その獣の槍がバーサーカーの心を読み取った……!?」
とら「けけけ」
セイバー「まさか、それがトラの宝具の『真の能力』……?」
とら「さーて、どうだかね」
239: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 20:49:26.73 ID:IImsifJB0
うしお「バーサーカー!! バーサーカー!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
(……無駄だ。最早呼び掛けてどうにかなる段階ではない)
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
(あの少女が膨大な魔力で『狂化』を抑えてくれていたが、それが完全に解けている)
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
(逆に、使い魔に送り続けていた魔力が行き場をなくして私の『狂化』に流れているようだ)
うしお「そんな…………。どうにかならねえのか!?」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
(……頼む。私を倒してくれ……)
うしお「……他に方法はねえのかよ。バーサーカー!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
(……時間がない。このまま『狂化』が進めば少女の魔力、いや、生命力を全て吸い取ってしまう)
うしお「バカヤロォ……」
うしお「そんなこと言われたらオレは……オレはよォ!!」
240: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 21:02:32.45 ID:IImsifJB0
リズ「バーサーカーと、会話してる」
セラ「分かるのですか?」
リズ「分からない。でも、あの槍を見てたら」
セラ「そんなはずは……。ですが、私も……」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「バーサーカー、すまねぇ…………」
うしお「これで…………終わりだァーーっ!!」ガクッ
うしお「なっ!? 槍が急に重くなった!?」
セイバー「ウシオ、どうしたのです……!!」
241: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 21:12:23.84 ID:IImsifJB0
とら「どうなっとる!? わしの宝具の制限時間はまだだぞ!!」
凛「何か理由が……」
とら「力が足りねえのか!? りん魔力だ!! 魔力をもっとわしに送れ!!」
凛「やってるわよっ、でも私の魔力だって限界なのよ……!?」
とら「ちぃっ、準備運動なしの宝具発動はしくじったかよ……!!」
凛「不味いわね……。もう宝石も残ってないわ……」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「ぐっ、赤い布をグルグルに巻かれたときみてえだ……」
ガシッ
リズ「足りないなら、魔力、送る」
セラ「私たちの中の魔力など微々たるモノですが、多少は軽くなるはずです」
うしお「お前ら、なんで……」
リズ「イリヤと、バーサーカーのため。バーサーカー、倒されること、望んでる」
セラ「このままではお嬢さまが危険なのは確かです。お嬢さまのためなら私たちは……」
うしお「……よおおおおし!!」
242: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 21:22:28.56 ID:IImsifJB0
セイバー「……そういえばトラ、私は『雷剣』の借りを返していませんでしたね」
とら「ああ!? おめえ何の話だ、今はそれどころじゃ」
セイバー「貴方と私の宝具の『相性』は悪くないという話です」
とら「だからそれが……。へっ……なーるほど。その手が、あったかい!!」
リズ「そろそろ限界、でも」
セラ「ええ、まだまだこれからです……!!」
うしお「くっそォ、持ち上げるだけで精一杯なんてよォ……!!」
セイバー「ウシオ!!」ガシッ
うしお「セ、セイバー!?」
セイバー「これがトラの宝具『獣の槍』……。ウシオ、私に任せて下さい」
うしお「セイバー、何をする気なんだ……!?」
セイバー「風王結界(インビジブル・エア)の応用技を使います」
うしお「えっ!?」
243: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 21:29:04.49 ID:IImsifJB0
うしお「それってセイバーの剣を視えなくしてるってやつじゃ……」
セイバー「はい、そうです。ウシオ、今この槍は持ち上げて戦うことが出来ないのですよね?」
うしお「あ、あぁ、その通りだぜセイバー」
セイバー「ならば持って戦う必要などありません。この場から風の力で槍を撃ち出します」
リズ「え」
セラ「え」
うしお「ええーーっ!?」
凛「ほ、本気なのよね……!?」
とら「りん!! わしらは宝具の維持に集中すんだよ!!」
凛「分かってるわよっ」
とら「へっ、相変わらず剣使いは面白えことを考えやがるぜ」
244: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 21:47:34.95 ID:IImsifJB0
セイバー「ウシオ、この作戦は私たちがミスをすれば終わりです」
うしお「ああ」
セイバー「目標への狙い。少しでも外せばバーサーカーは倒せず、この槍を失います」
リズ「凄い、作戦」
セラ「む、無謀すぎます。私たちの中で唯一バーサーカーに有効な槍をそんなことに……」
セイバー「では他に違う作戦があると?」
セラ「それは……」
うしお「いや、その方法でやろう」
うしお「もし違う作戦があっても時間がねえ。時間をかけただけイリヤの魔力が吸われちまう」
セイバー「はい、その通りです」
リズ「二人は、もしかして、イリヤのために」
セラ「こんな無茶なことをしようというのですか……」
245: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 22:00:01.53 ID:IImsifJB0
セイバー「……落ち着いていますね、ウシオ」
うしお「えっ、そうかい?」
セイバー「はい。私は貴方の年齢の倍はする騎士を多く知っていますが、その者たちと同じ『場慣れ』を感じます」
うしお「そ、そんなことはねえと思うけどよ」
うしお「アイツとの旅でこういう一か八かなんて場面は何度もあった、ただそれだけさ」
セイバー「なるほど。理解出来ました」
うしお「でもオレが冷静な理由は違うぜ」
セイバー「……と、言うと……?」
うしお「セイバーが『任せてくれ』って言ったんだぜ。それなら」
うしお「なにも怖かねえさ」
セイバー「貴方は……全く……。ええ、もちろんです」
うしお「なら、やろうぜ。セイバー!!」
セイバー「はい、マスター!!」
246: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 22:23:52.69 ID:IImsifJB0
とら「宝具の発動時間の限界も近えな……。正真正銘一発勝負よォ……!!」
凛「バーサーカーが立ち上がるわよ!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
セラ「まだ、なのですか……。もう私たちも……」
リズ「限界かも」
うしお「そろそろオレの腕も……。セイバー!!」
セイバー「まだです。まだ、もう少し……!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
セイバー「そうだ、それでいいバーサーカー」
セイバー「貴方の『狂化』は強い、いや、強まっているからこそか」
セイバー「本能的に、この場にある自身を脅かす最大の得物を標的にする」
セイバー「だがそれはこちらにとっても、好都合だ」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
うしお「バーサーカーが、来る…………!!!!」
247: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 22:34:54.28 ID:IImsifJB0
セイバー「ウシオ!!」
うしお「ああ……!!」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
セイバー「やああああ!!!!」
凛「セイバーの髪が、伸びていく……」
とら「へっ、剣使いが槍を使うかよ」
リズ「なに、これ。今までこんなこと、なかった」
セラ「バーサーカーの感情が、流れてくる……」
バーサーカー「■■■■■■■■■■」
(…………今だ…………!!!!)
セイバー「風よ、荒れ狂え……!!」
セイバー「はああああ!!!!」
うしお「うおおおお!!!!」
うしお「いっけええぇぇーーーー!!!!」
獣槍『風王鉄槌』!!!!
(スピアオブザビースト・ストライクエア)
248: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 23:11:23.64 ID:IImsifJB0
バーサーカー「……これが、お前の宝具か。雷獣よ」
とら「認めたくはねえがな」
バーサーカー「珍しいものだな、自身の宝具を好まない英霊か」
とら「どんな宝具を渡されても、わしはやりたいようにやるだけよ。だが」
とら「『憎しみはなんにも実らせねえ』。それが『わしの宝具』だからよ」
バーサーカー「そういうことか雷獣よ。前言を撤回しよう」
とら「けっ」
バーサーカー「見事だった騎士王」
セイバー「いえ、私だけの力ではありません」
バーサーカー「一つ尋ねたいことがある」
セイバー「何でしょうバーサーカー」
バーサーカー「暴走した我を狙うより、倒れたマスターを狙うほうが効率的だったはずだ、何故だ」
セイバー「それは……」
セイバー(あんなことがあっても、出来るはずがない。彼女は、アイリスフィールの……)
セイバー「……そんなことはウシオが許しません」
セイバー「マスターの意思を尊重するのもサーヴァントの務めです」
バーサーカー「なるほど、これが騎士王か」
249: ◆I4R7vnLM4w 2017/02/06(月) 23:15:36.18 ID:IImsifJB0
バーサーカー「少年よ。我の声に耳を傾けてくれたこと、感謝する」
うしお「バーサーカー、すまねえ……」
バーサーカー「謝ることはない。これは我が望んだことだ」
うしお「でもよ……!!」
バーサーカー「我を止めるには、この方法しかなかったのだ」
うしお「バーサーカー……」
サァァァァ
バーサーカー「時間か。少年よ、もしバルトアンデルスに会ったら伝えてくれないか」
うしお「バルに……?」
バーサーカー「約束は果たしたと。それとお前の言うとおり、この国に来てよかった、と」
うしお「バーサーカー……。あぁ、分かったぜ」
イリヤ「んん…………バーサー、カー…………?」
バーサーカー「それから、その少女を、頼む……」
うしお「あったりまえだろ!!」
バーサーカー「お前は……優しいのだな……。少女と、同じ、だ……」
うしお「バーサーカー……」
254: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 14:45:39.82 ID:mB8ADYa/0
【第十七話 魔女の宴への招待状 】
255: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 14:51:14.22 ID:mB8ADYa/0
・潮の部屋
麻子「うしおーーっ!! もう昼よ起きんかーーい!!」
うしお「う、ん……麻子、か……?」
麻子「学校が警察の調査で休校中だからっていいかげんに……ん?」
ゴソゴソ
麻子「…………」
ガバッ
イリヤ「うーん、うるさいなぁ」
麻子「なっ……」
リズ「おはよ」
セラ「おはようございます」
麻子「え……えぇぇーーっ!?」
256: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 14:59:49.89 ID:mB8ADYa/0
・蒼月家居間
麻子「うしお!! ちゃんと説明しなさいよ!!」
うしお「い、いや、だからよォ」
セイバー「アサコ。気持ちは分かりますが落ち着いて下さい」
麻子「セイバーさんは納得してるんですか!?」
セイバー「……確かにウシオはどうかしています。イリヤスフィールを保護するなどと」
うしお「そんなにおかしいかい?」
セイバー「はい、聖杯戦争を理解していない思われても仕方ないでしょう」
うしお「そ、そこまでかよ。俺だって分かってるさ」
うしお「イリヤが俺や遠坂先輩の令呪を奪ってサーヴァントと再契約するかもって話だろ?」
セイバー「その通りです」
イリヤ「再契約なんてしないわ。私はバーサーカー以外と契約なんてする気ないもの」
セイバー「その言葉を、信じろと?」
イリヤ「別にセイバーに信じてもらえなくてもいいわ」
うしお「イリヤは俺たちを襲ったりしないさ。それをやろうと思えば今朝だって出来たはずだしな」
セイバー「それは……」
うしお「ずっと隣の部屋で待機してたセイバーもそれは知ってるだろ?」
セイバー「……気付いていましたか」
うしお「屋根にとらもいたしな。そっちは遠坂先輩の指示だろうけど」
257: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 15:06:21.67 ID:mB8ADYa/0
麻子「セイバーさん、私が言ってるのはイリヤちゃんのことじゃないわ」
イリヤ「イ、イリヤちゃん……」
セイバー「アサコ、違うのですか?」
麻子「私が心配してるのはセラさんとリズさんよ!!」
リズ「わたし、たち?」
セラ「どういうことでしょうか?」
麻子(セイバーさんと遠坂先輩と桜先輩で既にスゴイコトになってるのに……)
麻子(これ以上うしおの周りに美人を増やすわけには……なんとかしないと……)
麻子「その、コイツは人使い荒くて大変だからやめたほうが、なんて……」
麻子「た、例えば絵の練習に協力してくれ、とか」
リズ「それぐらいなら」
セラ「気にはしませんが」
麻子「い、いい、いやらしいポーズを要求したり……!!」
うしお「な、なに言ってんだ麻子っ!?」
リズ「うわー」
セラ「それは……」
イリヤ「お兄ちゃん……」
うしお「そ、そんなことするかい!! オレはゲージュツを志す男だぞ!!」
258: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 15:13:11.03 ID:mB8ADYa/0
凛「ふぁ、おはよう。ごめん桜、牛乳飲ませて」
桜「遠坂先輩、もうお昼ですよ……」
凛「いいじゃない。一番の強敵を倒したんだからだらけもするわよ」
凛「……それで、これはなんの騒ぎ?」
とら「おめえならこうなることは分かってただろうがよ」
とら「それで、りん、あれはいいのかよ?」
凛「いいワケはないのよねぇ。あのアインツベルンだし、何回も殺されかけてるし」
とら「だったら」
凛「待って。蒼月君に考えがあるらしいからそれを聞きましょ」
とら「けっ、あの馬鹿うしおに考えなんてあるのかね」
凛「それより、アンタはどうしたのよ……?」
とら「ああ? こいつか?」
真由子「とらちゃんだぁ、本当に本当のとらちゃんだぁ」
とら「おいマユコ!! おめえいい加減離れろ!!」
真由子「あはっ……。今とらちゃんがマユコって言った……」
真由子「もう一回とらちゃん、もう一回言ってっ!!」
とら「……りん、おめえはわしのますたーだろ。なんとかしろォ!!」
凛「朝からずっと?」
桜「はい、まぁ」
259: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 15:19:43.60 ID:mB8ADYa/0
凛「蒼月君がイリヤスフィールを保護したいっていうのは分かったわ」
凛「本来そういうのは教会の監督役の仕事なんだけど、まぁいいでしょ」
うしお「あぁ遠坂先輩。イリヤたちも次に行く当てがないっていうしよ」
イリヤ「お爺様の言いつけを破ったんだもの。行く場所なんてどこにもないわ」
リズ「あとは、処理されるだけ」
麻子「処理って、そんな……」
とら「あのでけえ城に戻りゃいいじゃねえかよ」
イリヤ「聖杯戦争に負けた私たちが? お城に戻った瞬間ドッカーン大爆発よ」
真由子「じょ、冗談、だよね……?」
セラ「いえ、可能性がゼロとは言い切れませんね」
凛「とりあえず分かったわ。それじゃ次は蒼月君の考えを聞きましょ」
うしお「オレは、イリヤたちとも協力出来ないかと思ってよ」
イリヤ「えっ……?」
うしお「この聖杯戦争を終わらせるためにオレは戦ってるんだ」
うしお「イリヤはすげえ魔力を持ってる、リズさんもセラさんも強いよな」
うしお「そんな強い人たちと仲良くしたらよ、こんな戦争すぐに終わりに出来るぜ」
リズ「強い……?」
セラ「私たちが……強い……」
260: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 15:29:42.97 ID:mB8ADYa/0
キリオ「うしお兄ちゃん、行ってきたよ」
うしお「お、すまねえなキリオ。こんなお使いみたいなこと頼んでよ」
キリオ「ううん、これは僕のことでもあるから」
真由子「キリオくん、今朝からどこに行ってたの?」
キリオ「ただいま真由子姉ちゃん。光覇明宗の総本山に行ってたんだ」
イリヤ「コウハ、メイシュウ……?」
キリオ「そう。僕はその光覇明宗で獣の槍伝承者候補の一人だったんだ」
キリオ「でも今はそこでホムンクルスの研究をしてる」
セラ「ホムンクルスの、研究……」
キリオ「今も『囁く者達の家』に残るホムンクルスのために何か出来ないかと思って」
キリオ「僕は『九印』に何も恩返し出来なかったから」
真由子「キリオくん…………」
キリオ「九印なら、合理的じゃない、とか言いそうだけどね」
真由子「ううん、九印くんもきっと喜ぶよ」
261: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 15:43:51.41 ID:mB8ADYa/0
うしお「イリヤたちには、キリオのその研究を手伝ってやってほしいんだ」
セラ「ホムンクルスの研究……。そういうことですか……」
セラ「お嬢様や我々を実験材料にすることで保護すると」
キリオ「ち、違……!!」
リズ「セラ、それ違う」
セラ「何が違いますか、お嬢様にそんなことをさせるぐらいなら私は死を選びます」
イリヤ「落ち着きなさい」
セラ「ですが……!!」
うしお「いや、セラさんのその話が聞けてよかったぜ。本当にイリヤが心配なんだな」
セラ「な……」
うしお「そんなセラさんたちだからこそ、歓迎してもらえると思うぜ!!」
凛「……なるほどね。だから光覇明宗か」
桜「遠坂先輩……?」
凛「キリオ君の研究を手伝うということは、光覇明宗に協力するということ」
凛「それはイリヤスフィールたちが光覇明宗の一員になるってことよ」
凛「ホムンクルスの研究って名目ならイリヤスフィールたちは適任だしね」
凛「そして、いくらアインツベルンでもこの国の組織『光覇明宗』に手出しは出来ない」
真由子「あっ……」
麻子「それなら……」
凛「考えたわね蒼月君」
262: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 15:48:44.73 ID:mB8ADYa/0
イリヤ「ウシオ……。私たちは、助かる、の……?」
イリヤ「もう、痛いことはないの? お爺様に殺されないの……?」
リズ「イリヤ…………」
セラ「お嬢様…………」
うしお「あぁ、オレたちがイリヤを守るさ」
うしお「どんなでっけえ目標があったって、どんなエライヤツにだろうが……」
うしお「使い捨てられていい奴なんざ、この世にゼッテェいねえんだ」
麻子「うしお……」
イリヤ「その、あの、なんて言えばいいか分からないわ……」
イリヤ「感謝を……言いたいのに……」
うしお「お礼ならいらねえさ。もし誰かに言いたいならキリオに言ってくれ」
うしお「光覇明宗にかけ合ってくれたのはキリオだからよ」
イリヤ「キ、リオ……?」
キリオ「えっ……」
イリヤ「キリオ、ありがとう」
キリオ「う、うん……」
真由子「あれキリオくん、顔が赤いよ?」
キリオ「そ、そんなことないよ真由子姉ちゃん」
263: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 16:16:08.91 ID:mB8ADYa/0
セラ「なぜ貴方は私たちにそこまでするのですか? 何か理由が?」
うしお「理由なんてねえさ。そうだなァ、バーサーカーに頼まれたからじゃダメかい?」
リズ「バーサーカー」
うしお「それにキリオの研究を手伝ってやってほしいってのは本当さ」
セラ「研究を……?」
うしお「その、囁く者達の家のときに知ったんだけどよ」
うしお「ホムンクルスは、短命なんだろ……?」
セラ「はい、そうです」
セイバー(……アイリスフィールも言っていた……。短い命だからこそと……)
うしお「もしキリオの研究が進んで、イリヤたちが少しでもうめーモンが食えたらいいなァってよ」
セラ「貴方は、本当にお嬢様のために……」
うしお「あっ、そうだ!!」
うしお「リズさんもセラさんもクリームパン食ったことあるかい!?」
リズ「え……」
セラ「いえ……」
うしお「それなら今度食ってみようぜ。イリヤもうめーって言ったんだ」
うしお「うめーんだぜー、クリームパン!!」
リズ「うん」
セラ「わ、分かりました」
264: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 16:20:36.51 ID:mB8ADYa/0
とら「へっ、見ねえあいだにモノを考えるようになったかよ」
うしお「もうオレもチューボーじゃなくコーコーセーだからな」
とら「けっーけけ!! おいりん聞いたか、馬鹿が調子に乗りおったぞ!!」
うしお「なにをーーっ!! とらァーー!!」
凛「ちょ、ちょっと、わかった、わかったから外でやってよっ」
キリオ「そうだ。うしお兄ちゃん、総本山に行ったときに少し気になることがあったんだ」
うしお「総本山で?」
キリオ「紫暮様に今回のアインツベルンの話をしたら……」
紫暮『大丈夫だキリオ。ずっと前から準備はしていた』
キリオ「そう言ってたんだ」
うしお「親父が準備? どういうことだ?」
キリオ「僕にも分からない」
うしお「うーん……?」
265: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 16:26:57.07 ID:mB8ADYa/0
セイバー「……ウシオ」
うしお「やっぱり、セイバーは納得出来ねえか」
セイバー「いえ、そうではありません」
セイバー「私からも、その……。感謝します、ウシオ」
うしお「えっ、なんでセイバーが礼を言うんだい?」
セイバー「それは……」
セイバー(アイリスフィールの代わりに? いや、私はそんな立場の者ではない)
セイバー(私は何を考えてるんだ……)
セイバー(前回の聖杯戦争の最後、聖杯を手に入れるあと一歩のところで聖杯は破壊された)
セイバー(あの『前回のマスター』の令呪で私が破壊した。そのとき、私は誓ったはずだ)
セイバー(次の聖杯戦争は騎士道も何もかも捨て、全てを排除して勝ち残ると)
セイバー(それなのに、どうして……)
セイバー(ウシオやトラたちに出会って、私のなかで何かが変わったというのか……)
セイバー(そんなはずは……)
うしお「セイバー?」
セイバー「なんでも、ありません」
266: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 16:40:40.85 ID:mB8ADYa/0
うしお「柳洞寺にキャスターがいて、マスターは柳洞寺に住んでる葛木先生……!?」
凛「ええ。私とイリヤスフィールの情報から言って、その可能性が高い」
イリヤ「ウシオたちに協力すると決めたんだから、情報を出し惜しむつもりはないわ」
うしお「イリヤ……。サンキューな」
うしお「でも、それでなんで柳洞寺にキャスターで葛木先生がマスターになるんだ?」
凛「説明するわ。蒼月君はちょっと前から起こってるガス漏れ事件は知ってる?」
うしお「あぁ知ってるぜ。よく厚池たちが話題にしてるよ」
麻子「そうそう、この前ウチにもガス会社の検査が来たのよね」
桜「中村さんのところは中華料理店ですものね」
イリヤ「そのガス漏れ事件はキャスターの仕業よ」
うしお「えっ!?」
凛「正確にはガス漏れ事件に見せかけて人間の魔力、生命力を集めてるのよ」
イリヤ「魔力には流れがある。流れを辿ればどこに行き着くか分かるの」
うしお「それが柳洞寺……」
凛「そう。そしてあんな遠距離でそんな芸当が出来るのはキャスタークラスだけ」
セイバー「リン、それではアサシン陣営とキャスター陣営は組んでいると?」
凛「そういうことになるわね」
凛「山門はアサシンが守って、キャスターは力を蓄える。敵ながら上手いことやってるわ」
とら「けっ、術使いらしいチマチマしたやり方よォ」
267: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 16:59:26.43 ID:mB8ADYa/0
うしお「柳洞寺にキャスターがいるのは分かったけどよ、葛木先生がマスターっていうのは?」
凛「実は、そっちはまだ確証があるワケじゃないんだけど」
イリヤ「ウシオ、キャスターは魔力集めを深夜にしか行っていないの」
うしお「そりゃガス漏れ事件が真っ昼間に起これば大事件になるからじゃ」
とら「あーあ、ちったぁ考えるようになったかと思えばこれだぜ」
うしお「な、なにをとらァ!!」
凛「キャスターは昼間は他にやることがあるのよ」
うしお「やること……?」
セイバー「なるほど。サーヴァントにとって一番やるべきこと」
うしお「あっ、そうか!! マスターの護衛!!」
凛「そういうこと。マスターだからって急に学校に来なくなれば怪しまれるわ、ということは」
うしお「昼間の葛木先生にはキャスターがついてるはず!!」
凛「そう。柳洞寺には他にも知り合いがいるんだけどそっちはもう調べたわ」
凛「あとは怪しいのは葛木先生だけなの」
セイバー「それでは柳洞寺の陣営を攻めるのですか?」
うしお「あぁ、ガス漏れ事件の話を聞いちゃ黙ってられねえよ」
凛「ええ。とにかく明日の放課後、葛木先生の後を追ってみましょう」
268: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 17:05:46.66 ID:mB8ADYa/0
・柳洞寺付近道路
葛木「…………」
うしお「なぁ遠坂先輩。本当に葛木先生がマスターなのかな?」
凛「蒼月君、今それを確かめようと……。追うわよ」
うしお「オレにはどうにも葛木先生がガス漏れ事件を起こしてるようには思えねえんだ」
セイバー「ウシオはその教師と面識が?」
うしお「いや、無口な先生だからあんまり話したことはないんだけどよ」
凛「確かに蒼月君は葛木先生みたいなタイプより、藤村先生みたいなタイプのほうが気が合いそうよね」
うしお「そりゃね」
凛「まぁ蒼月君の言いたいことは分かるわよ。葛木先生は上級生の評判も悪くないもの」
うしお「そうなのかい?」
凛「ええ。っと、この先はもう柳洞寺まで一本道か。仕掛けるなら今だけど……」
葛木「……そろそろ頃合か」
269: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 17:11:07.73 ID:mB8ADYa/0
葛木「いるのは分かっている。出て来たらどうだ」
凛(……気付かれてた!?)
うしお「葛木先生……」
葛木「蒼月と遠坂か」
??「忠告したはずですよ宗一郎様。このようなことがあるから貴方は柳洞寺に留まるべきだと」
葛木「そうでもない。実際に獲物が釣れた」
キャスター「それは確かにそうですね」
凛「アンタがキャスターね……」
セイバー「ウシオ、リン。下がってください」
凛「トラ、出番よ」
とら「術使いが相手じゃ楽しめそうにねえな」
270: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 17:20:53.62 ID:mB8ADYa/0
うしお「セイバーもとらも待ってくれよ。オレは葛木先生に聞きたいことがあるんだ」
葛木「なんだ蒼月」
うしお「葛木先生はキャスターがガス漏れ事件で人間から魔力を奪ってるのを知らないんじゃないのかい?」
葛木「キャスターが……。そうか」
葛木「蒼月、それでその質問の出所はなんだ。疑問には理由があるはずだ」
うしお「だってよ、もし葛木先生が知ってるならそんなことさせないんじゃないかと思ってさ」
葛木「させない?」
うしお「あぁ、そんな悪いことは葛木先生なら止めさせるだろ?」
葛木「…………」
葛木「それは、悪いことなのか?」
うしお「えっ……?」
葛木「蒼月の言うとおり、善悪でいうのなら悪だろう」
葛木「だが、そのガス漏れ事件で何人死のうと私には関係ない。キャスターを止めるつもりもない」
うしお「な、なに言って……」
葛木「例外は存在する。私は蒼月が出会ってきた人間や妖怪とは違うということだ」
うしお「そんな……」
セイバー「その教師はウシオが思っていた人柄ではないようですね」
271: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 18:13:58.30 ID:mB8ADYa/0
とら「ゴチャゴチャうるせえーよ」
とら「誰が死のうが気にしねえなら、おめえがここで死んでも気にしねえだろ」
キャスター「噂の妖怪のサーヴァントね。お手並み拝見といったところかしら」
葛木「妖怪、か……。私がいた組織は退魔の関係ではなかったが」
葛木「キャスター。拳に対妖怪用の補助を頼む」
キャスター「はい、宗一郎様」
凛「まさか戦うつもり……?」
凛「こっちは近接最強のセイバークラスと完全復活したとらがいるのよ」
凛「いくらキャスターがガス漏れ事件で魔力を蓄えてても勝負になるわけ……」
葛木「遠坂、例外は常に存在する。このようにな」
とら「ぐはっ!!」
うしお「とらっ!?」
葛木「有効のようだな」
凛「な、なに今の……。全く見えなかった……」
セイバー「なにか特殊な格闘術……。ただの人間ではない……!!」
とら「……ちっ、わしとしたことが油断したかよ。しかし勝負はまだついてねーぞ」
葛木「そのようだ。だが」
とら「力が抜けてく……。てめえ、何しやがったァ!?」
葛木「キャスターの補助も効果的のようだ。今からお前は殴られた場所から力が流れ出るぞ」
とら「なっ、なにィ??っ!?」
272: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 18:23:09.72 ID:mB8ADYa/0
うしお「あの葛木先生が、とらと互角に殴り合ってる……!?」
凛「こんな、バカなことが……」
葛木「言ったはずだ蒼月、遠坂。例外は常に存在すると」
葛木「私のように前に出るしか能のないマスターもいるということだ」
とら「へっ、そうかよ!! そいつァ楽しみが増えたぜ!!」
セイバー「あの男の相手はトラがやる。ならばキャスター、貴様の相手は私だ!!」
キャスター「お待ちなさいセイバー」
キャスター「ねぇ、坊やに現代の魔術師さん。野蛮な殺し合いはやめて私たちと手を組まない?」
セイバー「世迷言を……!!」
うしお「手を組むって、どういう意味だよ?」
キャスター「フフ、私はもう聖杯の仕組みを把握しているの」
キャスター「協力するなら貴方たちにも聖杯の恩恵を分けてあげてもいいわ」
凛「へぇ、それは結構な話ね。それで、どうやって聖杯を手に入れるっていうの?」
キャスター「まず、すでにこの土地は聖杯をおろすにたる霊脈を備えているのよ」
273: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 18:31:55.70 ID:mB8ADYa/0
キャスター「坊やは不思議に思ったことはないかしら?」
キャスター「この土地に大きな寺院が二つあることに」
うしお「ウチの芙玄院と、柳洞寺のことかよ?」
凛「そんなの、この国にはいくらでもあるわよ」
キャスター「いいえ、特殊な使命を持つ寺院がこんな近くに二つあるのは異例よ」
凛「特殊な使命? 蒼月君のところはとらや槍のことだろうけど……」
うしお「そういえば昔オヤジが、槍のありがたあい話をするときに言ってた」
うしお「ウチは槍と妖怪を監視する使命があるけど、柳洞寺も同じような使命があるって」
キャスター「それが霊脈の監視よ。あの伝説の槍や妖怪と同等の使命ということ」
キャスター「それぐらいこの霊地は質の高い霊脈を備えている」
うしお「そういうことか……。それでそのすげえ霊脈を使ってどうするんだ?」
キャスター「質の高い霊脈があるなら、あとは聖杯召喚の器と大量の魔力さえあれば聖杯は手に入るのよ」
凛「……そう、大量の魔力ね。キャスター、それに必要な生贄はどの位いるのかしらね?」
うしお「いけ、にえ……?」
キャスター「そうねぇ。『器の魔術師』と町の人間『全て』といったところかしら」
274: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 18:37:29.59 ID:mB8ADYa/0
うしお「生贄に町の人間って、そんなことさせるかよォ!!」
キャスター「残念ねぇ。手を組めると思ったのに」
凛「しらじらしいわねキャスター。そんなつもり最初からないでしょ」
キャスター「あら、その口ぶりだとお嬢さんも聖杯の仕組みは分かってたようね」
凛「まぁね。それで大量の魔力を取り込む器の魔術師は誰がやるのかしら?」
キャスター「そうね。器には優秀な魔術回路を持つ魔術師が適任よ」
キャスター「お嬢さんのような、ね」
うしお「遠坂先輩を生贄の魔術師に……!?」
凛「そういうことだろうと思ったわ、何が手を組むよ」
キャスター「フフ、察しが良くて助かるわ」
うしお「キャスター、そんなことやらせねえぜ……!!」
うしお「遠坂先輩や町の人間を生贄にするなんてこと、絶対に……!!」
凛「蒼月君……」
キャスター「勇ましいわね、セイバーのマスター」
キャスター「でもいいわ。お嬢さん以外にも一人、この町には相応しい魔術師がいるのだから……」
葛木「…………」
うしお「き、消えた……!?」
とら「ちぃっ!! 待ちやがれェ!!」
275: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 18:41:20.05 ID:mB8ADYa/0
うしお「相応しい魔術師って……」
凛「この町にいる優秀な魔術回路を持つ魔術師っていったら……」
うしお「まさか、イリヤ!?」
凛「考えられるわね……」
うしお「今オレの家にはイリヤたちだけだ!!」
うしお「キリオは真由子の家にいるはず、今キャスターに襲われたら……」
凛「不味い……。蒼月君、急いで戻るわよ!!」
凛「とら!!」
とら「あのヤロウ、きっちり借りは返してやる。おめえらさっさと乗れェ!!」
うしお「セイバー!!」
セイバー「はい、急ぎましょう!!」
276: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 21:10:10.55 ID:mB8ADYa/0
・蒼月家居間
うしお「イリヤーーっ!!」
リズ「どうした、ウシオ」
セラ「ウシオ様、そんなに慌ててなにかあったのですか?」
うしお「リズさんセラさん!! イリヤは!?」
セラ「お嬢様でしたら、そちらに」
イリヤ「あっ、ウシオ。さっきマユコとキリオがハンバーガーっていうのを置いていったわよ」
うしお「イリヤ……無事、なのか……?」
イリヤ「えっ、なに?」
セイバー「これはどういうことでしょう?」
うしお「い、いや、俺にもサッパリ……」
凛「まさか…………」
とら「おいりん!! 術使いの主もおらんぞ!!」
凛「イリヤ……桜は、桜はどこにいるの!?」
イリヤ「サクラ? サクラなら夕食の準備とかいって台所にこもってるわよ」
凛「っ……!!」
うしお「遠坂先輩!?」
277: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 21:21:43.37 ID:mB8ADYa/0
・蒼月家台所
凛「桜っ!!」
桜「と、遠坂先輩……?」
凛「桜……」
桜「どうかしたんですか?」
凛「はぁ……。なんだ、ただの脅し」
グサッ
桜「では、ないわよねぇ?」
凛「ぐ、はぁ……。そ、その声……キャスター……!!」
桜「抜かったわね現代の魔術師さん」
凛「その短剣は……!?」
桜「これは魔術契約を解除する我が宝具『破戒すべき全ての符』(ルールブレイカー)」
凛「ルール、ブレイカー……」
桜「完全な契約解除は無理だったけど、お嬢さんの魔力供給を一時的に止めさせてもらったわ」
278: ◆I4R7vnLM4w 2017/03/09(木) 21:35:21.26 ID:mB8ADYa/0
桜「キャスターの私が気付いていないとでも思っていたのかしら?」
桜「規格外の妖怪のサーヴァントの維持、それに加えてセイバーにも魔力を供給している」
桜「セイバーのマスターは魔術師ではないから魔力供給が出来ないですものねぇ」
凛「それは……」
桜「現代の魔術師にしてはよく頑張ってるわよ。でも供給が途切れればそれは崩壊してしまう」
桜「これでセイバーも妖怪のサーヴァントも宝具は使えず、戦闘で傷ついても回復出来ない」
うしお「遠坂先輩!!」
セイバー「これは……!?」
とら「りん、おめえその怪我!!」
凛「桜が、キャスターに操られて……」
うしお「なんだってっ!?」
桜「セイバーのマスター。この娘は、聖杯を呼ぶ生贄に貰っていくわ」
桜「フフ、取り返したければ私の神殿にいらっしゃい」
とら「神殿だとォ!? そこにてめえもあの男もいやがんのかァ!!」
桜「ええ。もっとも、セイバーも貴方もまともに戦える状態ではないでしょうがね」
とら「ああ!? なに言って」
桜「今に分かるわよ。それじゃあね、お嬢さんたち」
凛「ま、待ちなさい、キャスター……!!」
うしお「キャスター、桜姉ちゃんを返せよォ!! 桜姉ちゃぁぁん!!」
281: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 21:22:51.48 ID:qB3iXBS30
【第十八話 決戦、暁に縁消え果てず 】
282: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 21:30:49.27 ID:qB3iXBS30
・柳洞寺山門前階段
セイバー「ウシオ、イリヤたちは大丈夫でしょうか?」
うしお「キリオに来てもらったし照道さんにも残ってもらったから大丈夫さ」
凛「キャスターの言ってた神殿……。ここ以外には考えられないわよね」
とら「ああ、術使いの主もいるはずよォ」
セイバー「それにしてもリン、キャスターは何故サクラを攫ったのでしょう?」
凛「それは……」
うしお「そうだよな。間桐先輩のときに聞いたけど間桐の家にはほとんど魔術師の力は残ってないんだろ?」
とら「…………」
凛「……魔術回路は残っているのよ」
凛「あの子だって、魔術師の家系なんだから……」
うしお「なるほどな、そういうものなのかい」
セイバー「それではキャスターは、そのサクラの魔術回路を使って器の魔術師にしようと?」
凛「そうでしょうね」
うしお「魔術師だろうがなんだろうが桜姉ちゃんを生贄になんかさせねえよ!!」
凛「ええ、もちろんよ蒼月君。ぼやぼやしてる時間はないわよ!!」
283: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 21:33:55.18 ID:qB3iXBS30
・柳洞寺山門
うしお「柳洞寺、あんまり夜に来たことねえから不思議な感じだ」
凛「……待って蒼月君」
うしお「遠坂先輩、柳洞寺はこっちだぜ?」
凛「向こうから魔力を感じるわ」
セイバー「確かに。キャスターの罠でしょうか?」
凛「罠でも行くしかない、時間がないもの。こっちよ」
284: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 21:38:27.47 ID:qB3iXBS30
うしお「ここかい? オレにはただの山肌にしか見えないけどよ」
とら「いいから馬鹿はりんのやることを見てりゃいいのよ」
うしお「なにィ!? とらァ!!」
凛「……!!」
うしお「や、山肌が洞窟の入り口に!?」
セイバー「キャスターの魔術ですね。隠していたのでしょう」
うしお「魔術ってスゲェんだな……」
とら「いろんな妖の術を見てきたお前がそんなことを言うかね」
うしお「それとこれとは別だぜ、とら。人間がこんなこと出来るってのはスゲェのよ」
とら「はー、そんなもんかよ」
凛「さ、行くわよ」
285: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 21:53:00.34 ID:qB3iXBS30
・柳洞寺地下神殿
うしお「山の中に、こんなデケェ神殿が……!?」
凛「呆れたわ。古代の魔術師はやりたい放題ね」
セイバー「これがキャスターの神殿……」
とら「けけっ、こんだけ広けりゃ戦うのに不満はねーよ。楽しくやれそうだぜ」
セイバー「ウシオ、得物はそれでいいのですか?」
うしお「ああ、イリヤが魔術で作ってくれたこの槍があれば十分さ」
うしお「リズさんがハルバードを貸してくれるって言ったんだけど、あれは重すぎて使えねえしな」
凛「……来たわね」
骸骨騎士「アァァ」
骸骨騎士「ウゥゥ」
うしお「いつの間にか囲まれてる……。こいつらもキャスターの!?」
セイバー「はい、魔術で動いてるようです」
とら「術使いがァ、こんなので時間稼ぎが出来ると思っとるのかよ」
凛「とら、蹴散らして!!」
とら「へっ、雑魚に用はないんだよォ!!」
286: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 22:00:47.57 ID:qB3iXBS30
骸骨騎士「…………」
骸骨騎士「…………」
とら「こんなもんかよ」
うしお「ふぅ……。遠坂先輩は!?」
凛「私は大丈夫よ。それよりセイバーはどう?」
うしお「そうか、セイバーは魔力供給が……。セイバー!!」
セイバー「私も問題ありません」
うしお「そ、そうなのか?」
セイバー「ウシオはなにか思い過ごしをしているようですね」
うしお「えっ、でもキャスターのルールブレイカーで……」
セイバー「確かに今の私はリンに定期的に貰っていた魔力だけで戦っています」
セイバー「ですがそれでも、今の戦闘程度で私が傷つくことや消耗することはありません」
セイバー「私はセイバー。三騎士の一角、剣士の英霊です」
セイバー「宝具がなくても他のサーヴァントに遅れを取る事はない」
??「さすがは最優のサーヴァント、といったところかな」
287: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 22:12:28.25 ID:qB3iXBS30
うしお「誰だ……!?」
セイバー「貴様は……」
アサシン「そう身構えなくてもよい。不意討ちなどという無粋な真似はせん」
セイバー「アサシン……!!」
とら「おめえ、サムライ野郎がなんでここに!?」
アサシン「セイバーも長飛丸もなにを驚いている」
アサシン「私が門番だとお前たちは承知しているはずだが」
凛「そう。やっぱりキャスター陣営とアサシン陣営は組んでたか……」
うしお「アサシンのサーヴァントって、佐々木小次郎なんだよな……?」
アサシン「いかにも、私が佐々木小次郎だが」
うしお「うへー、ほ、本物かよ……」
凛「蒼月君、聖杯戦争でその反応今更過ぎない?」
うしお「だってよ遠坂先輩、あの佐々木小次郎だぜ!?」
アサシン「少年よ、私はそこまで有名なのか」
うしお「そりゃ誰だって知ってるさ、勉強が得意じゃないオレだって知ってるよ!!」
アサシン「そうか……」
セイバー「アサシン……?」
288: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 22:17:23.09 ID:qB3iXBS30
うしお「敵同士じゃなかったらサインを貰って握手したいぐらいだけどよ、今は!!」
凛「そんな時間はないのよね……!!」
アサシン「時間が惜しいのは私も同じだ、手合わせの時間が減っては意味がない」
うしお「それならアサシンのマスターも隠れてないで出てきたらどうだ!!」
凛「無駄よ蒼月君。この場に現れないということはアサシンのマスターは隠れながら援護する気だわ」
アサシン「私のマスター?」
アサシン「フッ、なにか勘違いをしているようだな」
セイバー「勘違い……?」
アサシン「私のマスターはお前たちがキャスターと呼んでいる女狐よ」
うしお「なっ、どういう意味だ!?」
アサシン「私はサーヴァントに召喚されたサーヴァント、ということだ」
凛「なるほどね……。キャスターだって魔術師だもの、サーヴァントを召喚する権利はあるってことか」
とら「へっ、術使いのくせに面白えことするじゃねえか」
凛「この神殿と同じで、この聖杯戦争でもやりたい放題じゃないキャスターのやつ」
アサシン「そのキャスターが小娘を連れて、先程この先に進んでいったぞ」
アサシン「あの女狐のことだ。また悪巧みを考えているのだろうな」
アサシン「だが私には関係のないこと。さぁ、進むがいい」
うしお「えっ!?」
289: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 22:54:33.58 ID:qB3iXBS30
セイバー「どういうつもりだアサシン……!!」
うしお「そ、そんな罠に引っかかるかよ!! 落とし穴でもあるんだろ!!」
アサシン「罠などない、進めば分かる」
凛「なら、なんで……」
アサシン「キャスターに召喚されたからといって、私と女狐が同じ思惑ではないということだ」
アサシン「私は門番を任された者。通す者も通さない者も、私が決める」
アサシン「そして、戦う相手もな」
セイバー「アサシン……。分かりました。決着をつけましょう」
とら「待ちな剣使い。おめえは前にサムライ野郎とやっただろうが」
セイバー「トラ、私とアサシンの決着をつけさせないつもりか?」
とら「あの馬鹿うしおの面倒は誰が見る、わしはやだね。それによ」
アサシン「…………」
セイバー「……なるほど、そういうことですか。ここは譲ります、トラ」
アサシン「時間がないのだろう、進まなくていいのか?」
うしお「遠坂先輩、行こう!!」
凛「ええ、行きましょう。とら、任せたわよ!!」
セイバー「アサシン、次に対峙するときは必ず決着をつけましょう」
セイバー「この剣に誓って、約束します」
アサシン「楽しみにしているぞ、セイバー」
290: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 23:01:43.87 ID:qB3iXBS30
とら「おめえ、始めから剣使いは行かせるつもりだったろ」
アサシン「さて、なんのことかな」
とら「とぼけるんじゃねえ。わしにだけ殺気を放ちやがってよ、剣使いも気づいてたぜ」
アサシン「フッ、そうであろうな」
アサシン「確かにセイバーとの立ち合いは極上だが、私は言ったはずだぞ長飛丸」
アサシン「この夢か現か分からぬ聖杯戦争、ここで私が望むは物の怪斬りのみ」
とら「へっ、そうかよ。いいぜ、相手になってやる。おめえにも借りはあるからな」
とら「だがこの先に借りがあるヤツが他にもいるのよ。あんまり遊んだりは出来ねえぜ」
アサシン「それは有難い。サーヴァントに召喚された身、おそらく朝まで保つまいからな」
アサシン「もはやセイバーにも会うことはないだろう」
とら「おめえ……」
アサシン「それに私はどうしてもお前に確かめたいことがある。ゆえに……」
とら「いいぜェ、なんでも答えてやるよ。わしをブッ倒せれたらなァ!!!!」
アサシン「望むところ……。参る……!!!!」
291: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/07(金) 23:53:36.96 ID:qB3iXBS30
うしお「とら、負けんなよ……!!」
セイバー「大丈夫です。確かにアサシンは強い、ですがトラなら」
凛「先が見えてきたわよ!!」
うしお「ここは……」
凛「かなり広いわね……」
うしお「!? 遠坂先輩っ!!」
凛「えっ?」
ドンッ
葛木「防がれたか。蒼月、奇襲には慣れているようだな」
うしお「葛木先生……!!」
葛木「いや、魑魅魍魎と戦ってきた蒼月ならこの程度の奇襲は予測出来るか」
セイバー(……やはりこの男はキャスターより危険だ。初見とはいえ強さが未知数……)
セイバー(トラと互角に殴りあった事といい、ウシオやリンに任せるわけには……)
292: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/08(土) 00:01:27.13 ID:mqRI4eum0
葛木「…………」
セイバー「ウシオ、リン、先へ。この男は私に任せてください」
うしお「セイバー!?」
セイバー「サクラが心配です。私のことは気にせず先へ」
凛「桜……。セイバー、頼んだわ」
うしお「遠坂先輩!? 行っちまった……」
セイバー「ウシオ、キャスターは魔術師としては破格かもしれません」
セイバー「ですがリンも優秀な魔術師です」
うしお「分かってるさ。遠坂先輩がキャスターに負けるかよ!!」
うしお「オレもいるしな!!」
セイバー「はい、ウシオとリンなら必ずキャスターに勝てます。行ってください」
うしお「ああ、セイバー。ここは頼んだぜ!!」
293: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/08(土) 00:45:42.65 ID:mqRI4eum0
・地下神殿最深部
桜「…………」
凛「桜っ!!」
うしお「桜姉ちゃん!!」
桜「…………」
うしお「桜姉ちゃん、オレたちの声が聞こえないのか!?」
凛「キャスターに何かやられたわね……」
??「フフ……」
凛「キャスター!! 出て来なさい、そこにいるんでしょ!!」
キャスター「ようこそ我が神殿へ、お嬢さんたち。歓迎するわよ」
うしお「キャスター、桜姉ちゃんの魔術回路で器の魔術師にするつもりなんだろ!?」
キャスター「えぇ、そうよ」
うしお「そんなことはさせねえよ!! 無関係な桜姉ちゃんを巻き込みやがって……!!」
キャスター「無関係? 桜さんが? いいえ、そんなことはないわよねぇ?」
凛「…………」
うしお「えっ?」
294: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/08(土) 00:55:21.77 ID:mqRI4eum0
キャスター「今も昔も、ずっとお待ちかねよ。桜さんはお嬢さんを」
凛「どうやら、私たちのことは全部お見通しのようね」
キャスター「えぇ、桜さんの頭の中を覗かせてもらいましたから」
キャスター「それに聖杯戦争の参加者の経歴を調べるのは当然でしょう?」
凛「そうね……」
うしお「なんだ、なんの話を……」
キャスター「フフ、聖杯召喚までにはまだ時間があるわ」
キャスター「余興として、坊やに魔術師の家系の話を聞かせてあげましょう」
凛「キャスター……!!」
キャスター「本当に魔術師とは不遇なもの、不幸なことなどいくらでもあるものよ」
キャスター「例えば、姉妹の縁が引き裂かれることも、ね」
凛「……っ!!」
うしお「し、まい……?」
298: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/11(火) 23:17:07.18 ID:RR8B4w1j0
とら「やるなァ、サムライ!!」
アサシン「見せ所よな……!!」
とら「けけっ、おめえ歯ごたえあるぜ。サムライ、いや、コジロウとかいったかよ」
アサシン「それは偽りの名だ」
とら「ああ? 偽り?」
アサシン「いかにも。この世界に佐々木小次郎という人物が実在した証拠はない」
とら「どういう意味だよ?」
アサシン「人々が過去を捏造し記憶だけで剣豪とされた人物、それが佐々木小次郎だ」
とら「聞いたことあるぜ。おめえ、架空の英霊ってやつか」
アサシン「そう。この私の記憶も技も、全て人々が創り上げたものかもしれん」
アサシン「ゆえに、私はお前と戦いたかった」
とら「なに……?」
アサシン「昔話『雷の舞』で長飛丸を倒す『雷の物の怪』とな」
とら「けっ、はじめからそいつが偽者だって知ってたのか」
アサシン「ああ、私のいた地方に残る有名な伝承なのでな」
とら「名が売れるのも考えモンだぜ。わしも、おめえもな」
アサシン「フッ……。だからこそ、私もお前のように自分が本物だと示す舞を」
アサシン「舞ってみせようぞ……!!!!」
とら「やってみなァーー!!!!」
299: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/11(火) 23:27:39.08 ID:RR8B4w1j0
葛木「……これがセイバーか。長期戦になればこちらが不利だな」
セイバー「キャスターのマスター、貴方はここで倒れろ」
葛木「そのつもりはない。しかしその勇ましさ、蒼月のサーヴァントだと納得がいく」
セイバー「なに……?」
葛木「セイバー、お前はどこまで蒼月のことを知っている?」
セイバー「我がマスターを? 何が言いたい?」
葛木「二年前、この国は『強大な妖怪』に襲われた。それを倒し、この国を救ったのが蒼月だ」
セイバー「知っている。ウシオとトラ、それに人間と妖怪が手を組み戦ったと」
葛木「私も、そのとき戦った多くの人間のうちの一人だ」
セイバー「なんだと、貴様が……?」
葛木「私は暗殺の技能を持った朽ち果てた殺人鬼だ」
葛木「いつ死んでもいいが、いきなり現れた妖怪などという存在に殺されるつもりはない」
セイバー「なるほど、自身を守るためだけに戦ったか」
葛木「いや、私の周囲でも『黒炎』と呼ばれる妖怪の手下が人々を襲っていた」
葛木「私はその黒炎を倒していった」
セイバー「それはおかしいな。貴様は他者がいくら死んでも関係ないと言ったはずだが?」
葛木「その通りだ。だが、私の生活に支障が出るほどの損害を黙ってみているつもりもない」
300: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/11(火) 23:39:06.39 ID:RR8B4w1j0
葛木「私は周囲から感謝された。しかし私は誰かのために戦ったわけではない」
葛木「私は自身のためだけに戦ったはずだ。だが不思議だ、失ったなにかが戻ったような気がした」
セイバー「…………」
葛木「蒼月のあの戦いを見て、この国中の人々が恐怖を忘れたように私も何かを感じたのか」
葛木「その答えを探している」
葛木「それからして、柳洞寺の前で倒れていた女を助けた」
セイバー「倒れていた女? そうか、それがキャスターか」
葛木「蒼月の強さは誰かのためになることらしい。私には分からないが、それを真似てみた」
葛木「ただの真似だが、もう始めたことだ。途中で止めることは出来ない」
セイバー「それが貴様の戦う理由、いや、望みか。しかし、なぜ貴様は私にそんな話をする?」
葛木「お前の戦う理由が気になっただけだ、セイバー」
セイバー「なに?」
葛木「あの蒼月のサーヴァントなら、それ相応の戦う理由、望みがあるのではないのか?」
セイバー「それは……。私は、私の望みは……」
セイバー(……私は偽りの王。私の戦いは全て無駄だったのだ……)
セイバー(王の選定をやり直し、過去を変え、『王国の救済』を成し遂げる……)
セイバー(それが私の戦う理由、私の望み……。聖杯に願う、奇跡……)
セイバー「私の望みは……!!!!」
301: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 00:04:13.61 ID:f9d2oEFZ0
キャスター「……そうして、姉妹は魔術師の家同士の協約により引き裂かれた」
キャスター「これで、その二人の物語は終わりよ。坊や」
うしお「そんな……。遠坂先輩と桜姉ちゃんが、姉妹……」
凛「…………」
キャスター「そのお姉さんが今更、妹を助けに来たというのかしらねぇ?」
凛「……ええ、そうよ。桜を器の魔術師なんかにはさせないわ、絶対に」
キャスター「そう、いいわよ。それなら機会をあげましょう」
うしお「なにっ!?」
キャスター「もうすぐ聖杯は召喚される。最後のチャンスをあげましょう」
キャスター「桜さんの洗脳を解いてみなさい。私の魔術が解ければ桜さんは器として機能しないわ」
キャスター「さぁ、精一杯足掻きなさい」
桜「…………」
凛「桜っ!! 桜、私の声が聞こえないの!?」
うしお「桜姉ちゃん!! 目を覚ましてくれ!!」
キャスター「フフ、引き裂かれたモノは戻りはしないのよ」
302: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 00:18:51.11 ID:f9d2oEFZ0
凛「桜っ!! 桜ーーっ!!」
桜「…………」
凛「なんとかしてキャスターの魔術を解析して……。そんな時間なんて……」
桜「…………」
うしお「桜姉ちゃん、オレは魔術師の家の協約とかは分からねえよ」
うしお「でも、いきなり仲の良い姉ちゃんと離ればなれになるなんてつらかったよなあ」
凛「蒼月君……」
うしお「でもよ、遠坂先輩は桜姉ちゃんを忘れたりなんてしてないぜ」
うしお「その証拠によ、遠坂先輩は桜姉ちゃんを助けに来たんだ」
桜「…………」
凛「桜……。駄目なの……」
うしお「まだだ、まだ……!!」
凛「蒼月君、その手にあるのは宝具『獣の槍』じゃないのよ……」
凛「バーサーカーのときみたいに心に語りかけるなんてことは出来ないわ……」
キャスター「残念、どうやら時間切れ。そろそろ聖杯召喚のようね」
304: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 00:32:20.20 ID:f9d2oEFZ0
桜「…………」
凛「桜……」
凛(……魔術師にとって一番大切なのは命じゃない。守らなくちゃいけないのは魂の尊厳……)
凛(アンタも魔術師の家に生まれたんだから、分かるわよね)
凛(大勢の生贄の器にされるぐらいなら……。そうでしょう、桜……)
桜「…………」
凛(……私も甘いなァ……。蒼月君、あと、お願いね……)
パシィッ
凛「蒼月君……? 放しなさい!!」
うしお「させねえさ。桜姉ちゃんの代わりに器になるなんて」
凛「……っ!?」
凛「ち、違うわ……。わ、私は、桜を、こ、殺そうと……」
うしお「今回さ、おかしいとは思ってたんだ」
凛「え……?」
うしお「いつも冷静な遠坂先輩が、キャスターの神殿をどんどん進んでいくからよ」
うしお「桜姉ちゃんを一番心配してたのは遠坂先輩だ」
うしお「そりゃそうだよァ、妹なら当然だよな」
凛「あ、蒼月君……私は……私は……」
305: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 00:42:28.23 ID:f9d2oEFZ0
凛「でも、私たちにキャスターの魔術を解くなんて出来ないわ……」
凛「あとは大元のキャスターを倒すしか、でも、もうその時間もないのよ……」
うしお「いや、方法はまだあるぜっ!!」
キャスター「フフ、面白いわね。まだ足掻いてくれるのかしら?」
うしお「あぁもちろんさキャスター!!」
うしお「桜姉ちゃんのためなら最後の最後まで足掻き続けてやる!!」
うしお「それによ、オレには桜姉ちゃんがキャスターの魔術に負けるなんて思えねえよ!!」
キャスター「なっ……」
うしお「桜姉ちゃん、初めて会ったときのことを覚えてるかい?」
桜「…………」
306: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 00:49:54.33 ID:f9d2oEFZ0
「桜、まさかお前、僕に意見するつもり?」
「そ、そんなことはないです兄さん」
「それじゃなに? なにを言いたいの、お前は」
「ただ、まだ一年生には弓を持たすのは早いんじゃないかと思って……」
「それが僕に意見してるって言ってるんだよっ……!!」
バシッ
「ただの兄妹喧嘩ならほっとくつもりだったんだけどよ」
「あ……」
「女の人に手を上げるのは黙ってみてられねえよ、センパイ」
「お、お前、あの蒼月か……。く、くそっ……」
「はぁ、うしおのケンカっ早さは高校生になっても変わんないのね」
「だ、だってよォ」
「まぁ今のはアンタが行かなくても、この麻子さんが行ったけどね」
「とか言って麻子はうしおくんが助けに行くの分かってたくせに?」
「ま、真由子!!」
「あの、ありがとうございます」
「えっ? あ、いや、礼なんてやめてくれよ。オレが勝手にやったことさ」
307: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 00:57:00.58 ID:f9d2oEFZ0
「蒼月君……」
「あれ、確かこの前の……」
「この間は、ありがとうございました」
「も、もう礼はいいよっ。それよりセンパイも買い物かい?」
「はい、夕飯の準備を」
「オレもさ。今、親父と母ちゃんが総本山に行っててさ、オレ一人なんだ」
「そうなんですか……。それが、今晩の夕飯ですか……?」
「あぁ、ジェットサンダーラーメン」
「……………………」
「ん……?」
「今日の夕飯は私が作ります。私にお礼をさせてください」
「えぇっ!?」
「蒼月君はこの町を、いえ、この国を救った人なんですよ。もっと食べるべきです」
「い、いや、ちょっと待ってくれよっ。それとこれなんの関係が」
「待ちません。それに後輩は先輩の言うことをきくものです」
「買い物かご持って行っちまった……」
「ひゃー、意外に強引な姉ちゃんだったんだなァ」
「でも良かったぜ。あれなら兄貴にも誰にも負けねえや」
308: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 01:16:23.98 ID:f9d2oEFZ0
うしお「あの桜姉ちゃんがキャスターの魔術に負けるはずがねえ!!」
桜「…………」
キャスター「まさか私の魔術を直接この娘に破らせるつもり?」
キャスター「坊や、その儚い希望も空しくなってこないのかしら」
キャスター「桜さんは抗うことなんて出来ないのよ。過去も、そして今も」
凛「そんなことないわ!!」
凛「昔は出来なくても今なら出来る。私も桜も、今なら抗える!!」
凛「桜、私も覚えてるわよ。アンタが負けず嫌いだってこと」
凛「だって私はアンタの……」
凛「桜の……姉なんだからっ!!」
桜「……っ……」
うしお「確かに桜姉ちゃんは『間桐桜になったとき』は一人ぼっちだったかもしれねえ」
うしお「でも『今の間桐桜』は一人だなんて言わせねえぜ!!」
うしお「ここに桜姉ちゃんを待ってる人間が二人もいるんだぞ!!」
桜「……あ……ぁ……」
うしお「オレたちだけじゃねえ!! 麻子も真由子もそうだ!!」
うしお「間桐桜を待ってるヤツらがたくさんいる!!」
うしお「だからよ、キャスターなんかに負けるなァーーーー!!!!」
桜「……あぁ、姉、さん……蒼月、くん……」
309: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 01:28:42.73 ID:f9d2oEFZ0
キャスター「そんな馬鹿な……。ありえないわ……」
キャスター「外側から魔術を破れないからって、内側から魔術を破らせるなんて……」
凛「さ、桜……。桜ァーー!!」
桜「夢の中で、ずっと、姉さんと蒼月くんの声が聞こえていました……」
凛「ごめん、ごめんね……」
桜「私は姉さんがうらやましかった……。でも、今は違う……」
桜「私を……私として必要と……。私を待ってくれている人たちがいるんですね……」
凛「ええ、ええ、そうよ、桜……」
キャスター「大人しく夢の中で私の操り人形になっていればいいものを……」
うしお「キャスター!!」
キャスター「見事、と褒めるべきかしらね。現存する英雄とはいえ島国の坊やと甘く見ていたわ」
うしお「もう桜姉ちゃんを器の魔術師になんてさせねえぞ、キャスター!!」
うしお「聖杯の召喚なんてことはやめろよ!!」
キャスター「フフ、面白いわね。すでに勝った気でいるのかしら?」
キャスター「別に器の魔術師は一人でなくてもいいのよ。そう、二人でも、ね」
310: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 01:36:37.61 ID:f9d2oEFZ0
桜「姉さん、これは……」
凛「ごめん桜。今は説明してる時間がないの。ここに隠れてて」
キャスター「まずは現代の魔術師さん、褒めてあげましょう」
キャスター「正攻法ではないとはいえ私の魔術を破ったのですから」
凛「そりゃどうも。でも古代の魔術師の魔術も大したことなかったわよ」
キャスター「フフ、言うようになったわね。そうでないと面白くないわ」
キャスター「今から私の魔術でアナタも桜さんも器になるのですから」
うしお「そんなことはさせねえよ」
キャスター「まさか、そのなんの能力もない槍で私と戦うつもりかしら?」
うしお「あぁそうさ」
凛(……そうよ。あれは宝具『獣の槍』じゃない。ただの槍よ……)
凛(キャスターの魔術で、桜は完全に洗脳されてた。それを蒼月くんは宝具なしで……)
凛(バーサーカーのときは宝具の能力だと思った、でも違ったってこと……?)
凛(桜の洗脳を解き、バーサーカーの暴走を止めた能力……。それは蒼月くんの……)
311: ◆I4R7vnLM4w 2017/04/12(水) 01:40:31.50 ID:f9d2oEFZ0
キャスター「なめられたものね。サーヴァントなしで大した武器もなく私と戦うと」
キャスター「思い知らせてあげましょう。魔女の指先、とくと味わってもらおうかしら」
うしお「遠坂先輩、準備はいいかい?」
凛「ええ、蒼月くん。いつでもいけるわ」
うしお「それじゃオレたちとキャスターの……」
凛「タイマン、始めましょうかっ!!」
うしお「おう!! 行っくぜェーーっ!!」
315: ◆I4R7vnLM4w 2017/05/09(火) 21:41:44.12 ID:Epm9CavJ0
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316:以下、

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