中野三玖「だっかんじぇらしー」back

中野三玖「だっかんじぇらしー」


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五等分の花嫁のss。R18。
中野二乃「こんすいれいぷ」
の続きです。
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2: 以下、
「あ、上杉さん。ここでしたか」
「お、おお。四葉か」
 珍しくバイトも家庭教師の予定も入っていない一日だったので、一人学校の図書室にこもって勉強していた。ここ最近、自分のためだけに使える時間がぐっと減っていたので、こういう機会は無駄に出来ない。また、勉学に精を出している間は、思考を一点のみに集中できるのでありがたかった。私事だが、近頃は色々なことに巻き込まれ過ぎて、頭がパンク寸前なのだ。
 そんな最中の来客は、はっきり言ってしまえば望ましいものではなかった。しかし、ここに来るからにはその目的は読書か勉学なので、文句を言うわけにもいかない。
3: 以下、
「隣、良いですか?」
「なんだ、今日は家庭教師の日じゃないけど」
「個人的に教えてもらいたいことがあって。先生に聞いても良く分からなかったので、困ったときの上杉さん頼みです」
「……なら、仕方ない」
「この数学の問題なんですが」
「ぶほっ!」
「上杉さん?!」
「……気にするな。続けてくれ」
4: 以下、
 ノートを広げた先に待っていたのは、ちょっと前にとある生徒からも質問を受けた問い。説明用の作図のあとで意識を失ったのは、まだ記憶に新しい。それと同時に、非常に生々しい情事の記憶も呼び覚まされてしまって、ばれないように前かがみになった。
「点Hの扱いが全然分からなくて。ここの曲線と点Hの関係が大事なのはぼやーっと理解できるんですけど、でもそうすると、H以外のことが考えられなくなって困るんです」
「分かった。一回黙ってくれ」
「へ?」
「いや、教えるモードに入るから。それまで静かに」
5: 以下、
 おちょくっているのかこいつは。えっちえっち連呼しやがって。まさか二乃や三玖が喋ったなんてことはないと思うけれど、それでも気になるものは気になるのだ。こちらの反応を見て遊んでいるのではあるまいな。
 ただでさえ同じ顔だからやりづらいのに、絶妙に行為を連想させるワードを叩き込まないで欲しいものだ。こんな時間から悶々とさせられてもどうしようもない。
6: 以下、
「……よし、ペン出せ。どこから分からなくなっているのかを確認するためにも、解答の過程を一から追いかけるぞ」
 無心だ無心。直接関係のない四葉相手にムキになっても意味がない。とにかく落ち着いて教えて、もう一度自分だけの穏やかな時間を確保しよう。スムーズにこなすことが、ゆくゆくは俺のためになる。
 …………けれど。
7: 以下、
「上杉さん、この式はどうして出てくるんでしたっけ?」
「あー、えっと、それはだな……。やべ、途中式抜けてる……」
「お疲れでした?」
「いや、待ってくれ。まだギアが上がってないだけだから。ここから本調子に戻す」
8: 以下、
 なかなかどうして上手く行かない。いや、原因は間違いなく分かっているのだけれど、それを認めてしまうことがどうにも恥ずかしく思えて、踏ん切りがつけられないのだ。
 俺は同世代の男子とは違って、性欲なんかに支配されるような意志薄弱な人間じゃない。それを誇りのように思ってこの数年勉学に励んできたというのに、一度童貞を捨てただけでこのザマだなどと、どうしてもプライドが許さないのだ。
 これまでは、あらゆる欲を理性で制御してきたつもりだった。だから今さら、一時の快楽に流されるなんてことがあってはならない。ならないのだから――
9: 以下、
「上杉さん、なんだか顔が赤いみたいですよ?」
「……知恵熱」
 ――四葉の体に二乃の裸体を重ねてしまったなんて言い出せるわけもなく、ぷいっとそっぽを向いた。五つ子はこういうところで作用してくるのかと、心の中で悪態を吐く。性格的には全然違う癖に、まったく同じ体つきだなんて、たちが悪いにもほどがあるだろう。
 
 俺の渋るような返答を聞いた四葉は何かしらの思案を経てから、ぽんっと手を打った。いかにも、『妙案を思いつきました!』みたいな顔で。
10: 以下、
「おい」
「じっとしててくださいねー」
 ずずいっと顔を寄せてくる四葉。端整な顔立ちだなあなんて思っている余裕はなく、脳裏をよぎるのは、この前強引に二乃に唇を奪われた時のこと。……え? そんな素振りなんて一切見せてなかったってのに、まさか四葉もなのか……?
「そこまで変わらないので問題はなさそうです」
「…………お前の体温が高いだけだ」
11: 以下、
 おでこ同士をぴったりくっつけて、熱の計り合いをしているつもりらしい。正月の時と言い、こいつは他人との距離感の取り方がバグっているとしか思えなかった。やり方なんて、他にいくらでも選べそうなものなのに。
「じゃあ、体調に異常がないのが判明したところで、続きをしましょうか。あんまりお時間を取らせてもいけないですし」
「……ああ、さっさと理解してくれ」
12: 以下、
 どっと気疲れが押し寄せてきて、そのまま肩を落とす。勘弁してくれよ、ほんと。 
 しかし、朗らかに笑っている四葉の顔を見るとどうにも毒気を抜かれてしまってダメだった。ご姉妹の中で一番単純なようでいて、実のところ最も良く分からないのがこいつかもしれない。
 その後二十分くらいの悪戦苦闘の末、なんとか四葉から「納得しました」との言葉を引き出すことに成功した。お辞儀をした後で元気よく走り去っていく彼女の後姿を脱力しながら眺めた後で、俺もようやく自分自身のテキストを開き直す。気を抜いていると、また思い出してしまいそうだ。
15: 以下、
 ノートを広げた先に待っていたのは、ちょっと前にとある生徒からも質問を受けた問い。説明用の作図のあとで意識を失ったのは、まだ記憶に新しい。それと同時に、非常に生々しい情事の記憶も呼び覚まされてしまって、ばれないように前かがみになった。
16: 以下、
「点Hの扱いが全然分からなくて。ここの曲線と点Hの関係が大事なのはぼやーっと理解できるんですけど、でもそうすると、H以外のことが考えられなくなって困るんです」
「分かった。一回黙ってくれ」
「へ?」
「いや、教えるモードに入るから。それまで静かに」
17: 以下、
 おちょくっているのかこいつは。えっちえっち連呼しやがって。まさか二乃や三玖が喋ったなんてことはないと思うけれど、それでも気になるものは気になるのだ。こちらの反応を見て遊んでいるのではあるまいな。
 ただでさえ同じ顔だからやりづらいのに、絶妙に行為を連想させるワードを叩き込まないで欲しいものだ。こんな時間から悶々とさせられてもどうしようもない。
18: 以下、
「……よし、ペン出せ。どこから分からなくなっているのかを確認するためにも、解答の過程を一から追いかけるぞ」
 無心だ無心。直接関係のない四葉相手にムキになっても意味がない。とにかく落ち着いて教えて、もう一度自分だけの穏やかな時間を確保しよう。スムーズにこなすことが、ゆくゆくは俺のためになる。
 …………けれど。
19: 以下、
「上杉さん、この式はどうして出てくるんでしたっけ?」
「あー、えっと、それはだな……。やべ、途中式抜けてる……」
「お疲れでした?」
「いや、待ってくれ。まだギアが上がってないだけだから。ここから本調子に戻す」
20: 以下、
 なかなかどうして上手く行かない。いや、原因は間違いなく分かっているのだけれど、それを認めてしまうことがどうにも恥ずかしく思えて、踏ん切りがつけられないのだ。
 俺は同世代の男子とは違って、性欲なんかに支配されるような意志薄弱な人間じゃない。それを誇りのように思ってこの数年勉学に励んできたというのに、一度童貞を捨てただけでこのザマだなどと、どうしてもプライドが許さないのだ。
 これまでは、あらゆる欲を理性で制御してきたつもりだった。だから今さら、一時の快楽に流されるなんてことがあってはならない。ならないのだから――
21: 以下、
「上杉さん、なんだか顔が赤いみたいですよ?」
「……知恵熱」
 ――四葉の体に二乃の裸体を重ねてしまったなんて言い出せるわけもなく、ぷいっとそっぽを向いた。五つ子はこういうところで作用してくるのかと、心の中で悪態を吐く。性格的には全然違う癖に、まったく同じ体つきだなんて、たちが悪いにもほどがあるだろう。
 
22: 以下、
 俺の渋るような返答を聞いた四葉は何かしらの思案を経てから、ぽんっと手を打った。いかにも、『妙案を思いつきました!』みたいな顔で。
「おい」
「じっとしててくださいねー」
23: 以下、
 ずずいっと顔を寄せてくる四葉。端整な顔立ちだなあなんて思っている余裕はなく、脳裏をよぎるのは、この前強引に二乃に唇を奪われた時のこと。……え? そんな素振りなんて一切見せてなかったってのに、まさか四葉もなのか……?
「そこまで変わらないので問題はなさそうです」
「…………お前の体温が高いだけだ」
24: 以下、
 おでこ同士をぴったりくっつけて、熱の計り合いをしているつもりらしい。正月の時と言い、こいつは他人との距離感の取り方がバグっているとしか思えなかった。やり方なんて、他にいくらでも選べそうなものなのに。
「じゃあ、体調に異常がないのが判明したところで、続きをしましょうか。あんまりお時間を取らせてもいけないですし」
「……ああ、さっさと理解してくれ」
25: 以下、
 どっと気疲れが押し寄せてきて、そのまま肩を落とす。勘弁してくれよ、ほんと。 
 しかし、朗らかに笑っている四葉の顔を見るとどうにも毒気を抜かれてしまってダメだった。ご姉妹の中で一番単純なようでいて、実のところ最も良く分からないのがこいつかもしれない。
26: 以下、
 その後二十分くらいの悪戦苦闘の末、なんとか四葉から「納得しました」との言葉を引き出すことに成功した。お辞儀をした後で元気よく走り去っていく彼女の後姿を脱力しながら眺めた後で、俺もようやく自分自身のテキストを開き直す。気を抜いていると、また思い出してしまいそうだ。
27: 以下、
 そこから二時間程度鉛筆をノートに走らせて、外が暗くなったのを理由に帰宅を決めた。重たくなった肩をぐるぐる回すと、関節がばきぼきと嫌な音を奏でた。
 ここでふと、俺にしてはかなり珍しいことに、ケータイを見てみることにした。もしかしたららいはにお使いの催促をされている可能性がある。
28: 以下、
「……おっと」
 即座に『見なかったことにする』という選択肢が浮かんできたが、それは否定。今の俺が置かれている立場上、下手な手は打てなかった。
 『六時に校門で』とのメール。送り主は三玖。現在時刻は六時半なので、間違いなく遅刻していることになる。
「…………」
29: 以下、
 冷や汗がつーっと背中を流れた。この前の一件は三玖に協力を仰ぐことによって、一応のところは穏便に片付いた。……いや、三玖からは一ミリも穏やかじゃないお願いをされたけど。
 別に、脅しをかけられたわけではない。……が、無視していいわけもないだろう。あれをバラされてしまうと、俺が半年と少しの期間をかけて積み上げた信用がパァだ。たとえ実情が『薬を使った二乃に襲われた』ってことでも、姉妹間にかなり大きな亀裂が入りかねないのは事実。
30: 以下、
 とにかく、行くだけ行ってみよう。待っていればそこで謝れるし、いなかったら電話をかければいい。俺がケータイに触らない人間だというのは三玖も知っているので、きちんと説明すれば温情をかけてもらうことも可能だろう。
31: 以下、
 そんなわけで、ガラにもなく駆け足で図書室を出る。たらたら歩いて近寄って来られても説得力に欠けるだろうから、こういうポーズをとることも大切だ。元から体力はスカスカだから、階段の上り下りで息はきちんと上がってくれるだろう。
 あれこれと策略を巡らせながら、薄暗い昇降口で上靴を履き替える。照明くらいつけてくれよと思ったが、節約を掲げられては言い返す口がない。
 自分の靴箱をなかなか探し当てられずに慌てる。こういう時はかえってゆっくり動いた方が上手く行くものだが、猶予も余裕も持っていない身なので、そんな楽な構えではいられなかった。この間にも言い訳を複数パターン考えて万一に備える必要があったし、そもそも三玖がまだ待っている確証もない。下手をしたら、あいつらの家を訪ねる必要性も生まれ得る。
 今、どうしてもそれだけは避けたかった。流石に現場に戻って平静を装い続けられる自信はなく、光で馬脚を露すのが目に見えている。二乃とはあれっきりまともな会話もなく、ただジトジトした視線を向けられるだけになってしまっているし、とにもかくにもあの家はまずいのだ。
32: 以下、
 急げ急げと指差しで下駄箱をなぞって、可能な限り早くオーダーを達成しようとするも、やっぱり靴は見つからなかった。列を間違えているのではとも考えたが、どうやらその線は薄そうだし。
 
「うおっ!」
33: 以下、
 肩を落としていると、横合いから網膜を焼かんばかりの光が襲ってきた。ぴかぴかと俺を照らす光源は良く見ればスマートフォンのようで、誰がこんな悪戯を……とそいつの腕を引っ掴む。
 下手人は男だろうと想像していたのに、手首は思いのほか細かった。突然の明暗変化に視力が付いてこれていないので顔は分からないが、もしかして女子か、こいつ。
34: 以下、
「なにすん……おい?」
 思考に意識を削がれて気を抜いていると、今度は逆に俺の体が引っ張られた。突然のことなので踏ん張りがきかず、そのまま引きずられるように昇降口の端の方まで連れて行かれる。そこでどうにか足を止めると、ようやく犯人様の顔が拝めた。
35: 以下、
「逃げないようにって靴を隠しておいたんだけど、普通に遅刻しただけなんだね」
「…………」
「静かにしてね、フータロー。ここ、先生も来るから」
「……三玖」
 俺の鎖骨あたりから感じる妙に硬い感触は、きっと三玖のトレードマークであるヘッドフォンなのだろう。それよりもまず問題なのが、なぜヘッドフォンがぶつかるくらいまでこいつが密着してきているのかということだ。
 もちろん、そんな具合なので、胸やら足やらもくっついている。感触は数日前のものと酷似していて、やっぱりこいつらは五つ子なんだなと思い知らされた……のは良いものの。
36: 以下、
「おい」
「……すん」
「三玖」
「……すんすん」
「なぜ嗅ぐ」
 当の三玖本人は俺の首あたりに顔をうずめて、ただ深呼吸を繰り返すだけ。それも、どう考えたって匂いを嗅いでいるとしか思えない仕草で。
 こんな調子なので、会話もままならない。まともな返事をしてくれない三玖に根気強く問いかけ続け五分程度経ってから、ようやく彼女は俺に取り合ってくれた。
37: 以下、
「この前約束したでしょ?」
「……この前とは?」
「フータローが二乃とイチャイチャしてた時」
「別にイチャイチャは……」
「じゃあ、二乃と何度もえっちしてた時」
「…………」
 それに関しては否定できる手札を持っていないので黙るしかない。ぶっちゃけなんの間違いも存在しないただの事実だし。
38: 以下、
「私がなんて言ったか覚えてるよね?」
「……私ともしてって」
「そう。伝えたからにはフータローから言い出してくれるんだろうなーと思ってたのに、いつまで経っても知らんぷりなんだもん」
「ジョークの可能性もあるだろ……ちょっとは」
「ジョークに初めてを賭ける女の子なんていない」
「…………」
39: 以下、
 いきなりの処女宣言に怯む。……ま、まあ、この歳ならなんら不思議なことではないし、俺だってちょっと前まで童貞だったわけだけど。
 しかし、どんな論法を使えば『私とセックスしろ』に繋がるのか毛頭分からない。そこは姉妹に先を越されたくなかった……みたいな、俺には理解しようもない感情でも絡んでいるのだろうか。
40: 以下、
「二人っきりになれる時間も場所も全然見つからなくて、だからこそ、フータローは私のために今日一日をフリーにしてくれたのかと思ったのに」
「……だからメールを?」
「そう。こうなったらこっちから行こうって」
41: 以下、
 外から生徒の声がして、咄嗟に二人で近くの自販機の影に体を隠す。柱と筐体とが上手く密集していて、この暗がりならじっとしている限り見つかることはなさそうだ。……いや、そもそもなんで俺が隠れなきゃならんのだとは思うけど、三玖の三玖らしからぬ俊敏な動きに釣られてしまった。
 尻もちをついた俺の上に覆いかぶさるような姿勢をとった三玖は、どうにも先ほどから呼吸の調子がおかしい。浅く早く、矢継ぎ早に酸素の入れ替えを行っている。
「なんだお前、体調でも悪いんじゃないのか?」
「ううん、違うよ」
「にしたっておかしいだろ。どこか体壊して……」
42: 以下、
 と、ここで俺は一つの大きな違和感に気付く。こちらに三玖が体重を預けてきているのでそのたわわに実った二つの果実の感触がダイレクトに
伝わってくるのは当たり前と言われれば当たり前なのだが、それにしたってどうにも様子がおかしいように思えるのだ。
 こんなのは一切自慢できることじゃないが、五つ子全員羞恥心の概念がガバガバなので、そのやたらとデカい胸を押し付けられたことはこれまでにも多々あった。なんならちょっと前には布一枚噛ませることなくダイレクトに触る羽目になったりもした。……で、その経験から鑑みて、今の状況はどうにも……。
43: 以下、
「気づいた? フータローにしては察しが良い」
「正気かお前。母親が草葉の陰で号泣してるぞ絶対」
「……これくらいで驚いてると、後から腰を抜かすことになるかも」
 ものすごく悪い予感に体中が警報を鳴らし始める。いや、というのも、こいつ下着つけてないんだ。どう考えてもブラなしで生活できるような生半可なサイズじゃないのに。これまで何度も感じていたワイヤーの硬さがまるでない。
44: 以下、
「待て待て待て! お前まさかここでするつもりじゃないだろうな?!」
「……? じゃあ他にどこでするの? フータローのおうち?」
「それは流石に勘弁だが……。いや、そうじゃなくてももっと……」
「でも、フータロー、ちゃんとえっちな気分になってるじゃん」
「……それは生理現象で」
「嬉しいな。私でもちゃんと興奮してくれるんだ」
49: 以下、
 ここで三玖は、徐に自分のスカートをたくしあげた。そんなことがあってくれるなよと神に祈ったのも束の間、俺の嫌な予感は最悪な形でもって的中してしまう。
「バカ、お前なぁ……!」
「へへ、もうびたびた……。太ももの方まで伝っちゃった」
「…………っ!」
 特有の匂いが鼻をついた。少し前までならこれが何かは分からなくて、しかし今となってはどうしようもなく理解できてしまうこの香りは即ち、女性器からの分泌液で。
 そしてそれが太ももまで垂れているということは、本来それを押しとどめる役割を持った衣類が何らかの理由で機能していないことを意味する。……というか、確実にノーパンだこいつ。暗くてはっきり見えないが、布の類が存在していない。
50: 以下、
「おい痴女」
「先に見せてきたのはフータローだもん」
「あれは……」
 二乃との行為の合間を覗かれたのは事実。その時俺が一糸まとわぬ全裸だったのもまた否定しようのないことで、言いようによっては俺が見せつけたと解釈できなくもない。……が。
51: 以下、
「だからって、なんで上も下も着てないんだよ……」
「自分で脱がせたかった?」
「そんな意図は一切ない。お前も小学校から国語やり直してこい」
「でもフータロー、これくらいしないと私のこと意識してくれなさそうだったし」
「意識ってなんだよ意識って」
「二乃と何があったかは知らないけどね、一番最初は私なんだよ?」
「もったいぶらずに結論を言え」
「フータローのこと一番最初に好きになったのは、私なんだよ?」
「…………」
 閉口。沈黙。二乃の告白を受けた時もそうだったが、これに対してどんな返事をするのが正解なのかがさっぱり分からない。
 それにしたって、順序ってものがあるだろう。あの二乃でさえ、一応は告白した後で肉体関係を迫ってきたのだ。それをこいつは蔑ろにしているせいで、もう全てがしっちゃかめっちゃかだ。脳の処理が追いついてくれなくてくらくらする。
52: 以下、
「フータローはさ、二乃と付き合ってるの?」
「断じて違う……」
「じゃあ、なんでえっちしてたの?」
「襲われたんだよ。前みたいに薬盛られて」
「でも、お風呂では自分からしようとしてたように見えた。見間違いかな?」
「……おう」
「嘘が下手」
 瞬時に欺瞞を見抜かれて、床に押し倒された。閉所にいるせいで反撃しようにも力が入らない上に、もしかしたら怪我をさせる可能性を思ってしまって、動くに動けない。
53: 以下、
「フータロー、二乃とキスは済ませた?」
「…………」
「何回?」
「…………二回くらい」
「そっか。分かった」
「何がだ――」
 回数になんの意味があるかはさっぱり分からなくて、だからそれを問おうとしたところに、三玖の唇が覆いかぶさってくる。
 口内を撫でる舌の感触は二乃のそれにそっくりだったが、どうにも癖みたいなものが違った。二乃からは口の中全てを調べてやるくらいの意気込みと威勢を感じたが、三玖はひたすら舌と舌を絡めることに終始している。
 そのおかげで呼吸がままならない。鼻から酸素を取り入れられるという日頃当たり前に行っていることが今この瞬間だけは上手く行かなくて、頭にまるで血が回ってくれない。
54: 以下、
「あ……ぷぁ……」
 三玖が一心不乱に全てをねぶり取ろうとしてきて、それに耐えるのが精いっぱいだった。彼女の漏らす喘ぎは恥ずかしがっているのか、それとも場所に配慮しているのか控えめで、色々と豪快だった二乃とは毛色の違いを感じる。五つ子とは言え、細部に関しては違いが生まれるらしい。
 さすがに苦しさがどうにもならなくて、腕力だけでどうにか三玖を引きはがすと、二人の唇の間に唾液の橋がつーっと渡った。いけないものを見ているみたいで、急いで視線を逸らす。
55: 以下、
「フータロー、二乃と私、どっちが上手かった?」
 息を整えるための間のあとで、三玖がこれまたどう答えればいいのか困ることを尋ねてくる。正直、キスの上手い下手を判定できるほどの心の余裕なんてない。覚えていられるのなんて、せいぜいが苦しさと唾液の甘さくらいのものだ。
「……分かんねえよそんなの」
「じゃあ、もう一回……」
「……むぐっ」
56: 以下、
「フータロー、二乃と私、どっちが上手かった?」
 息を整えるための間のあとで、三玖がこれまたどう答えればいいのか困ることを尋ねてくる。正直、キスの上手い下手を判定できるほどの心の余裕なんてない。覚えていられるのなんて、せいぜいが苦しさと唾液の甘さくらいのものだ。
「……分かんねえよそんなの」
「じゃあ、もう一回……」
「……むぐっ」
57: 以下、
 懇願は聞き入れられたようで、強めの衝撃が伝わってくる。唇と唇の隙間からはたまにぴちゃぴちゃ音がして、それが正常な判断力に靄をかけていくのが分かった。
 結局、二乃の時と同じだ。どう強がっても性欲の前に膝を折ることになる。こいつらが揃いも揃って巨乳の美少女じゃなかったら、俺ももう少し踏ん張れたかもしれないのに。
「……どう、かな? 二乃よりも気持ちいい?」
「……まあ、今のに関しては、多少」
「そっか。やった」
 何がどうやったなのかは定かじゃないが、納得してくれたらしいことは分かった。だから、出来れば胸をぐりぐり押し付けてくるのはやめて欲しい。下着を通さないせいで、感触が生々しいったらありやしないのだ。
「じゃあ、今度はフータローの番ね」
58: 以下、
 こちらが一息つく間もなく、三玖に再三唇を奪われる。要領を理解してきたのか、ちょっと手慣れた感じすらあった。
 勉強もこれくらいの度で飲み込めよと悪態の一つもついてやりたいところだが、血液が頭ではない場所に集まってしまっているせいで上手い台詞が思いつかない。けだし性欲は悪だ。学生の本分である勉学を多いに脅かし得る。
 しばらく人任せに唇を預けていると、何やら三玖の動きに変化があった。催促するように舌で上唇を何度も何度も舐め上げてくるし、腕は俺を急かすように背中をポンポン叩いている。どうやら、何か意味するところがあるらしい。
「フータロー、私にも、やって」
「……何を?」
「唇吸うやつ。ちゅーってするの」
59: 以下、
 そういえば、二乃にもおねだりをされたっけ。背中をぎゅっとしてだのなんだの。擬音の使い方と言いなんといい、やっぱりこいつらは姉妹らしい。
 そして、そんなことを涙目で言われてしまっては、流石の俺も、こう、クるものがあるわけで。
 心臓の下あたりがきゅっと締め付けられる優しい苦しみに責任を放り投げて、三玖の上唇を吸った。下手を打てば痕が残ってしまうくらいの強さで、長く。
 そしてその後、ようやっと唇を離すと。
「これで三回、だね」
「回数にこだわる意味が分かんねえよ」
「全部二乃より多くもらうの。そうすれば、私の方が上だから」
「どんな理屈だそれ」
「知らない。けど、する」
60: 以下、
 また、一瞬だけ唇が重なった。これで通算四回。そもそも俺がさっき口に出した『二回』もハッタリのようなものなので、正直正確な数字とは言い切れそうにもない。だが、これからは発言に気をつけなくちゃ。なにせ、言った分より多くやらされる羽目になるのだから。……問題は、それがそこまで嫌なことにも辛いことにも思えないという点だ。本当に頭がどうにかしてしまっている。
「フータロー、二乃としたえっちなこと全部言って。それ、これから私もするから」
「だからなんでだ」
「私の方が上手だって、フータローの体に教え込むの」
「そうするとどうなるんだよ」
 
 そこで三玖は下着に支えられていない大きな胸を自信満々に張って、
「私のこと、ちょっとは好きになるでしょ?」
 と大言壮語。
61: 以下、
「……俺、襲われてるんだけど」
「でも逃げてないじゃん。私は薬も盛ってないし、縛ってもいないよ?」
「…………」
「フータローに性欲があるのかどうかずっと不安だったけど、意外と正直だったね。気持ちいいことからは逃げられてないもん」
「…………」
「さっきからずっと、太ももに硬いのがあたってるしさ。……出したいんでしょ、すぐにでも?」
「…………」
「いいよ。私に出来る気持ちいこと、全部やってあげるから」
「……やっぱ痴女だお前」
「……む。それ以上言うとみんなにこの前のことバラすからね」
「今までの台詞、何回練習したんだ?」
「…………」
「顔真っ赤にしながら淫語言うとか何がしたいんだよお前は」
 夜目が効くようになってきたからはっきりわかる。今、三玖の顔は羞恥で真っ赤に染まっているのだ。元々口数の多い奴じゃないし、予め色々練ってきたとしか思えない。
62: 以下、
「作戦ならもっとちゃんとしたの考えて来い。俺の性欲に頼ってる面がデカすぎる」
「なんで私はこの状況でお説教されてるの?」
「詰めが甘いからだバカ。俺に好きって言わせたいなら、それこそこの前の秘密を餌にすりゃいいだろ」
「……それじゃ意味ないもん」
「はあ?」
「……いや、だって、そういうのは心からじゃないとダメだし……」
「お前ら姉妹の恋愛観が分かんねえよ俺は。心より体のハードルが低いってどういうことだ」
「二乃と同じ体だから、私の体に目新しさなんてないもん」
「えぇ……」
「フータローが二乃の裸を見た時点で、他の四人が裸を見られたも同然なの。だから、他のところで勝負しなきゃいけないの」
 五つ子理論は俺に理解できそうもない。そこは普通に恥じらうものじゃないのか?
63: 以下、
「私の方がフータローのこと好きだって、尽くせるって、教えてあげるんだから……」
 言いながら、三玖は俺のベルトをカチャカチャといじっている。しかし残念なことに、不器用さが災いしてなかなか外れてくれないようだ。……しかし、彼女が失敗するたびに絶妙に先っぽの方が擦れる。明らかに意図したものではないのに、こちらの射精感だけが一方的に募っていった。
 だいぶ、限界だ。布越しの刺激なんかでは満足できない。
「貸せ」
「あぅ」
 
 自分でベルトを外し、ファスナーを下におろした。その瞬間に、狭い空間に閉じ込められていたものが勢いよく飛び出ていく。
「……二乃は、口でしてくれたっけな」
「…………わ、私もできるもん」
64: 以下、
 震える手で俺の下着をずりおろした三玖は、そのあとあぅあぅ言いながら数秒硬直して、それから意を決したように先端に口をつけた。温かさと柔らかさが直に伝わってきて、それだけで射精しそうになる。
 俺のいっぱいいっぱいな様子を見て気を良くしたのか、彼女の攻め手が激しくなった。竿全体を咥えこみ、強く吸い、上下運動を繰り返し、こちらが迎える臨界点を低くしようとしてくる。
 拳を強く握って、限界まで我慢をする。ここであっけなく果ててしまうのは、なんだか嫌だった。俺の女性遍歴が負けっぱなしになっていくような予感がして、それを本能が拒んだのだ。
 三玖の肩を掴んで俺から引き剥がす。その勢いで彼女の体を仰向けに押し倒し、上に覆いかぶさった。
65: 以下、
「フータロー?」
「やられっぱなしは性に合わん」
「へ? ……きゃ!」
 片手で三玖の口を塞いだ。大声でも出されようものなら、あっという間に誰かに見つかってしまう。この状況を誤魔化す術など持っていないので、それは避けなくてはならない。冗談抜きに退学の危機に瀕してしまう。
 よりにもよって俺が卒業できなくなるのは笑うことも出来ないから、三玖には静かにしていてもらおう。
66: 以下、
「ダメだよ……汚いよそんなところ……」
「さっきまで俺のしゃぶってた奴がなに言ってんだ」
「で、でも、びしょびしょだよ?」
「……二乃にはしなかったな、これ」
「…………優しくね?」
「現金だなお前」
 秘部に顔を寄せると、そこにこもる熱気が良く分かった。やたらとエロい匂いがするし、正気を保ち続ける自信がどんどん薄れていく。
 スカートに潜り込む形になっているせいもあってか、諸々がなかなか逃れてはくれなかった。熱も、匂いも、ある分だけそこに蓄積され続けるのだ。
67: 以下、
「……ぁ、あうぅ……」
 独特の味だった。俺の人生で口にしたものの中で、これに類するものはない。美味しくはなくて、なんなら不味くすらあるのに、なぜだか病みつきになるような、おかしな風味。
 奥から奥からあふれてくる液体を逐次舐めとりながら、舌先で敏感な部分を探し始める。大小の陰唇と核を中心に、その周辺をひたすら吸ったり、舐めたり、時には甘噛みしたり。
 三玖が特に大きな反応を示した部分に集中攻撃しながら、おそらくは五分以上にわたって、彼女の女性器を俺の唾液で濡らし続けた。
 そして、俺が要領を掴み始めた頃合いになって、三玖は、
「あ、あ、あ、壊れちゃう、おかしくなっちゃうよぉ……」
 なんて言葉とともに、思い切り肉体をびくんびくんと震わせ、脱力した。とろんと蕩けた目は、焦点が合っていないように思える。
 酸欠のように浅い呼吸を繰り返す三玖は、これだけでもう体力が尽きてしまったようだった。袖で隠した顔は、ずいぶんと火照っている。
68: 以下、
「フータローのえっち……」
「そういうことはパンツ履いてから言え」
「フータローも履いてないじゃん……」
「俺のはお前が脱がせたんだろ。お前は最初から履いてなかった」
「でも、でもさぁ……」
 いやいやをするように首を振りながら、俺の言い分を否定したがる三玖。だが悲しいかな、自分が変態さんであるという俺の指摘は、誹りではなく事実なのだ。普通の女子高生は学校でパンツを脱がないし、男子を物陰で犯さない。
 
「……フータローはえっちな女の子、嫌い?」
 目元を指で隠し、だけどその隙間からこちらを窺いつつ、三玖は言う。
69: 以下、
「……仮に嫌いって言ったらどうすんだよお前は」
「清楚路線を目指す」
「無理だよ。俺の中でお前のキャラはもう定まったんだから」
「……だからもう、えっちな子としてやっていくしかないじゃん」
「……なら、そのえっちな子は、次に何をするんだ?」
「…………舐め合いっこ、もうした?」
「…………してない」
「………………………………じゃあ、する」
 ぺたぺたと地を這って体勢を変えた二乃は、俺の顔にそのお尻を向けてきた。それと同時に、俺の局部が彼女の手中に収まる。
 実を言うと、先ほど出していないせいで、舐めている間もずっと暴発寸前だった。下手をすれば、自分の手で慰めてしまっていたくらいに。
70: 以下、
「あ、さっきよりがちがちだ……」
「お前もぐちゃぐちゃだろ」
「そ、それはフータローがあんまり必死に舐めるから」
「うるせえ発情娘」
「……むう!」
 握る手に力がこもった。それと同時に上半身が跳ねて、勢い余って彼女の陰部に顔を埋めてしまう。
 それが号砲になったようで、再び彼女の舌が俺の陰茎にぐるりと巻きついた。負けじと俺も、さっき一番三玖が感じていた豆粒の部分を舐め倒す。それだけで、彼女の秘部は何度もひくひく蠢いた。まるで、喜びに打ち震えているみたいに。
 だが、そうしている間に、俺も攻めを受けている。
 じゅぼじゅぼと淫らな音を立てつつ、三玖は容赦なく俺を搾り取る態勢に入った。下腹部に力を込めることでどうにかあと一歩耐えているが、正直今にも全てをぶちまけてしまいそうだし、出来ることならそうしたい。ここまで耐え抜いたのだから、きっと最高の快感が俺を出迎えてくれるはずだ。
 まだ見ぬ未知の領域を夢想しているうち、とうとう限界が訪れてしまった。こみ上げる強烈な射精感に屈した俺は三玖の口の中に大量の子種を流し込みながら、せめて反撃をと彼女の核を思い切り吸い上げる。どうやらこれが奏功したようで、二人がほぼ同一のタイミングで絶頂を迎えることと相成った。
71: 以下、
「きもちーね、これ」
 
 何か言い返そうと思ったが、息が乱れていて言葉が出ない。未だに三玖が俺のを離してくれないせいで、変な喘ぎが漏れそうだ。
 さっさと離せという意図をこめて服の上から胸を揉むと、「ひゃんっ」なんて嬌声とともに彼女の体が浮き上がる。それに乗じて、どうにか再び三玖を組み伏せることに成功した。
74: 以下、
「えっち」
「お互い様だ」
「……あっ、んうぅ……!」
「二乃は最初指一本でもきつきつだったのに、お前はこの段階で二本入るぞ。これがどういうことか俺に分かりやすく説明してくれ」
「それはっ、フータローがいっぱい濡らしたからっ……!」
「最初から太ももまで垂らしてたろ」
「…………」
「膨れっ面で誤魔化すな」
 指を前後運動させると、分かりやすいくらいに彼女の全身が打ち震えた。相当気持ちいいのか、袖を噛んで声を潜めている。
 ……こういうのを見ると、嗜虐心にちょっとした火がつく。自分にそんな嗜好はないはずなのに。
75: 以下、
「あいつはもっと気持ちよさそうにしてたのに、お前は意外と反応薄いのな」
「……なっ!」
「エロい女としてやっていくのなら、もっとなんかあるんじゃないか」
「で、でも。声出したらバレちゃう……」
「そんな心配する奴が学校でおっぱじめるわけないだろ。心のどこかで期待してたんじゃないか? 見られたり、聞かれたりするの」
「いじわる言わないで……」
「じゃあ、言い方変える」
「うぅ……」
「声、聞きたい」
「…………変な子って思わない?」
「それはもう思ってるから心配すんな。ここから評価が変わることなんてそうそうねえよ」
「いっ、いじわるぅ……。フータローのばかぁ……!」
 とかなんとか言いながらも、言葉の端々が乱れ始めていた。俺の愛撫に合わせて普段からは想像もつかない高くて甘い声が、控えめながらに俺の耳朶を打つ。
76: 以下、
「んっ、んぅ……!」
「三本入った」
「ゆっくり、ゆっくりしてぇ。またイっちゃうからぁ……! あっ、ダメ! そこ、敏感で……!」
 言葉では俺を止めている癖に、三玖の腰は先ほどから快楽を求めるように、何度も何度も前へ後ろへ小刻みに振動していた。腕は思い切り俺を抱きしめていて、背中あたりからみしみしと関節の軋む音がする。
 それにしても、ものの見事に性感帯が二乃と一緒だった。五つ子やっぱりやべえなあなんて思いながら、拙いテクニックで彼女の膣内をかき乱し……そして、三玖が高まってきたタイミングで、動きをぴたりと静止させた。
77: 以下、
「へ……? なんで……?」
「ダメだって言うから」
「そ、そこはさ! なんとなく分かってくれなきゃ困る……」
「何を?」
 努めて分かっていない風を装い、彼女から決定的な言葉を引き出そうとする。三玖には、他人のSっ気を引き出す才があるのかもしれない。
「……ここ、切ないの。早く、気持ちよくして?」
「…………」
 「ここって?」と聞く案もあったが、流石にそれは気持ちが悪いのでやめておいた。自尊心が邪魔をするラインを割ってしまいそうだ。
 彼女の要求に逆行するのはここらへんでやめておこうと思い、指を引き抜く。再び「なんで?」と問われたが、答えは行動で示すことにした。
 腕の力だけでどうにか彼女を持ち上げて、俺の太ももの上に座らせる。ちょうど、陰部どうしが向かい合う姿勢になるように。
「こっちのがいいだろ」
「……うん」
78: 以下、
 亀頭を裂け目にあてがう。高い体温がそこを通して伝わってきて、背中がぶるりと震えた。長い前戯のせいかそこはとろとろにとろけてしまっているから、今にも吸い込まれて行きそうな錯覚に襲われる。
 早く挿れたいという思いと、また避妊しないのはまずいだろという思いが混在するせいで停止していた状況を動かしたのは、目の前の女の子だった。
「……するする入るね。私、処女なんだけど」
「処女の痴女とか性質が悪すぎる……」
 三玖が俺を強引に抱き寄せて、根元まで連結した。体の一部だけが湯船に浸かっているように熱くて、思わずここが学校であることを忘れる。
「お腹……奥がきゅんきゅんする……」
「おま……っ、あんま締めつけんな!」
「でっ、でも、どこに力入れればいいか分かんなくって……!」
「一回脱力しろ。死にはしないから。……ほら、深呼吸」
79: 以下、
 規則的に背中を叩いてリズムを作ってやると、三玖の胸のあたりがそれに合わせて上下した。同時に、下半身にかかっていた圧が優しいものに変わる。動く前に果てるみっともない事態だけは避けられそうだ。
「フータロー、慣れてるね」
 じとじとした目で見つめられる。補助してやったのになんでそう恨めしげなんだよ。
「あ、そうだった。フータローは二乃といっぱいえっちした後なんだった」
「……なに、嫉妬してんのかお前?」
「私は初めてなのにフータローは初めてじゃないんだもん。不平等」
「嫉妬でこんなことするとか、お前やっぱりエロい奴だな……」
「これで公平になると思ったんだもん。公平にいこうぜって、フータローが言ったんだよ?」
「……もっと読解力磨いて行こうな」
「む?……」
 俺を責めるように、彼女の腰が何度か弾んだ。そこで生まれる快感をどうにか顔に出さないよう心掛けながら、三玖の細い腰に手を回す。
80: 以下、
「座位は二乃としてないから、どうすればいいかちょっと謎だが」
「……なら、こう、でいいんじゃない……?」
 確かめるように、あるいは俺に分からせるように、彼女は一度、大きな、そしてゆっくりとしたストロークで腰を振った。
「フータロー……キス、お願い」
「…………」
 片手を首に回して、唇と唇をくっつけ合う。唾液は先ほどよりも粘度を増していて、三玖の興奮が明確に伝わってきた。
 上下から、同時に水音がする。唾液と愛液が奏でる淫らなメロディに合わせ、満を持して俺も腰を動かした。
「…………んっ、すご……」
81: 以下、
 奥を突くたびに、彼女のキスは激しさを増す。こちらの呼吸を阻害しかねない勢いで、舌が絡み、口の中がめちゃくちゃに犯される。
 二点から同時に襲ってくる快楽は俺の脳を溶かすにはあまりに十分で、それからしばらくは、何を考えるでもなくただ猿のように腰を打ち付け、舌を絡め合わせた。
 そして、いよいよ俺の耐久が限界に差し掛かった頃のことだった。
 廊下の奥から、ぺたり、ぺたりと足音が響いてきたのは。
「三玖、止まれ、人だ」
「……や、やだ……」
「ああ、見られたらガチで人生終わっちまう……」
「……ここでお預けはやだ……」
「おま……ぐっ」
82: 以下、
 嫌なのはそっちの方かよ?!とは言えなかった。というより、もう音を発するのが危険な距離になっていた。角度の都合で姿が見えているわけではないけれど、足音の反響具合を考えるとかなり接近していると考えていい。そして、近づいているのが生徒であれ教師であれ、見つかったら一発で大問題だ。ここはなんとしてでも姿を隠し通さなきゃいけない。
 ……それだというのに、三玖の体はすぐそこに迫った最大級の快楽を享受するのに躍起になっていて、腰も舌も、まるで大人しくなる気配がなかった。腕で抱いて限界まで密着し音を小さくしようとしても、彼女は膣を自力で伸縮させることにより、俺の精をどうにか搾り取ろうとしてくる。
 こうなったらと、俺はもう声が漏れる隙間もないくらいに、三玖に深いキスをした。息を止めて、何の音も響かないように。こいつが求めているのは目先の気持ちよさなんだから、それさえ満たしてやればある程度は従順になってくれる。
 脚まで使って三玖と一体化するレベルで密着し、二人の占める面積を極限まで小さく抑える。動いているところを見られないように、音を聞かれないようにと極限まで集中を研ぎ澄ましながら。
 最中、足音が真横にやって来た。
 心臓が大きく跳ね、体が強張る。それでも必死に息を殺して、この辛い時間が早く過ぎ去ってくれるように祈った。
 足音は、一度俺たちのすぐ近くで止まった。いよいよここまでかと俺も死を悟ったが、どうにも俺は悪運が強いらしく、そのまま音源は遠くに離れていった。
83: 以下、
「……………………っぷはぁ!」
「………………くるしーよ、フータロー」
「……お前が、動くの、止めないから……」
「あっ、あっ、フータロー、私、キちゃう……!」
 三玖の体が大きく跳ねたタイミングで、俺の亀頭からも大量の精子が飛び出した。きっと、今の三玖の膣内は、俺ので真っ白に汚れている。
 だらりと体を俺に預けて、三玖は言う。
「ね、もう一回……」
「…………」
84: 以下、
 俺の聞かん棒も、二回程度ではまるで収まってくれなかった。彼女の言質をいいことに、再び腰を振りだそうとすると。
『完全下校時刻です。まだ校内にいる生徒の皆さんは、ただちに下校の準備をしてください』
 なんて、予めセットされたアナウンスが流れた。施錠のために職員の巡回が始まったら、もうさっきのようには隠れられない。
「帰るぞ」
「……いけず」
「…………近くに、人の来ない路地がある」
「……………………腰抜けちゃったから、腕組んで」
85: 以下、
 パンツとズボンを上にあげてから、三玖を抱え起こす。彼女は下着を装備していないので、なにも支度する必要がないらしい。
 体重を容赦なくこちらに預けてくるせいで、胸の感触がリアルに伝わる。勃起の硬度は異常な次元に達しているので、この刺激は体に毒だ。
 三玖の歩き方はおかしな内股で、控えめに見ても不審。誰にも見つかりませんようにと祈りながら、どうにか無傷で学校の敷地内から出た。
 そして、家の方向とはまるで関係ない住宅街に足を向ける。自然に呼吸は早くなって、鼓動は跳ね回った。一刻も早くもう一度三玖を堪能したくてたまらない。
「フータロー」
 耳元で、三玖が囁く。焦りに感づかれないように「なんだ」と簡潔に聞くと、三玖はその場で、再びスカートをたくしあげた。
「垂れてきちゃった」
「????????ッ!!!!!」
86: 以下、
 今回三玖の太ももに垂れてきていたのは、さっき注ぎ込んだばかりの俺の精子。
 流石に、そんなものを見せられては我慢なんて出来なかった。
 彼女の手首を強引に引っ張って、近くに都合よくあった公園に誘い込む。端の茂みにちょうど良く一本の木が生えていたので、三玖にそこへ手をつくよう促して、強引に後ろから犯した。
 尻を突き出す三玖はさっきは抑えざるを得なかった喘ぎ声を大胆に漏らしながら、「もっと、もっと」と何度も何度もおねだりをしてくる。俺もその要求を飲んで、何回も、何回も、彼女の膣に射精した。息が果てて、彼女の腰が砕けるまで、ずっと。
87: 以下、
「じゃ、ここまででいいよ」
「……おう」
「学校ではいつも通りに接してね」
「パンツ履いてくれるならそうする」
「……脱いで来たら、またしてくれる?」
「…………その時に考える」
 五つ子の家にほど近い道路で、彼女と別れた。絶頂しすぎて意識が半分飛んでしまった三玖を正気に戻すのに割と時間を食ったから、時刻はもう九時を回っている。逆に言えば、それだけの間俺たちは繋がっていたということだ。なんとも末恐ろしい。
 夜風に頭を冷やしながら、俺も帰路に着いた。こんなことがあったというのに謎の余裕が生まれていて、そのせいで、本日二回目となるケータイのチェックなんて行為に及ぶことになった。
 ……が、それは大いなる落とし穴で。
『フータロー君、三玖と何してたの?』
 一花からの簡素なメール。それだけで、俺は全てを察してしまった。
 あの時通りかかったのは一花で、こちらに気付かなかったのではなく、意図的に見逃したのだと。
「…………勘弁してくれ」
 この後の展開に怯えつつ、頭を抱えた。相変わらず、俺の家庭教師業務の明日は見えてこない。
88: 以下、
 はいおしまい。
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1544619044/
これからアナタを奪うから!!! ユウワク・ソウダツ・シスターズ
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