キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」十冊目【後編】back

キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」十冊目【後編】


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青い鳥ってたしかファミチキだっけ?
778: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/18(日)23:09:17 ID:rNI
諸事情で定期更新明日にずらします、申し訳ないー!
悟空&玉龍ちゃん(+分身悟空1 2 3)の活躍、概ね書けているんで一日だけお待ちをー
代わりに前に息抜きで書いた番外編久々にあげとく
>>777 ですね、今はでっかい鳥です
ではまた明日 どうかお付き合いを!
【僕と妹が捨てられた森にそっくりな場所】
現実世界 とあるお休みの日 驚安の殿堂ドン・キホーテ
\ドンドンドン ドンキー ドンキーホーテー/
グレーテル「ドンドンドン……ドーンキー……ドン・キホーテー……」ウキウキ
司書「ボリューム満点、激安ジャングル〜」ウフフ
グレーテル「ジャングルだー……」ワクワク
ヘンゼル「……」
司書「ヘンゼル?さっきから黙ってるけどどうかしたの?お腹痛い?」
ヘンゼル「いや、そういうんじゃないけど…」
グレーテル「それじゃあなんで元気無いの……?せっかくのドン・キホーテなのに……おかしをお安く買えるチャンスだよ……」
ヘンゼル「いや…そもそも僕あんまりここ好きじゃないんだよ。通路狭いし、商品は山のように置いてあるし、順路はわかりにくいしさ。この感じ……」
ヘンゼル「『一度迷えば終わり』そんな雰囲気が漂ってる。僕にとってそんな雰囲気は……昔、グレーテルと一緒に捨てられた森を思い出させるんだ」
779: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/18(日)23:11:35 ID:rNI
グレーテル「大丈夫だよ……ここに悪い魔女はいない……いるのは優しい店員さんとドンペンだけだよ……」
司書「トラウマだね。気持ちは解るけど、昔の悪い思い出はちょっとずつでも克服していかなきゃって私は思うよ?」
司書「私もあれからしばらく赤飯も小豆も無理だったけど、頑張って少しずつ食べるようにしたから今はまた大好きになったしね」ニコリ
ヘンゼル「君のメンタルどうなってんの…努力は買うけど赤飯くらい別に避ければいいだけの様な気がするけどね」
グレーテル「不安になるのはお腹がすいてるからだよ……さぁさぁお菓子コーナーに急ごう……」トテトテトテ
司書「ちょ、一人でいっちゃ駄目グレーテルっ!なんでお菓子選びに行く時だけこんなに早いの…!?」スタタタ
ヘンゼル「ちょっと待ってよ。こんな森の奥地みたいな場所ではぐれたら取り返しがつかない事に――」
ドンッ
ドンキ好きなおっさん「おっとゴメンよ。驚くほど豊富な品揃えと安心する値段設定に目移りして、つい前を見ていなかったよ」ハハハ
ヘンゼル「いや、僕こそ。すいません」スクッ
ドンキ好きなおっさん「ハハッ、お互い様だね。それじゃあ私は引き続きドカンとあふれる夢を買うとするよ」シュタッ
ヘンゼル「……さて、と」
ポツーン
ヘンゼル「言ってる傍からはぐれた……」ズーン
780: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/18(日)23:15:28 ID:rNI
ヘンゼル「どうする…?二人と連絡する手段は当然無い。…あっ、小夜啼鳥だ!彼女の事だからいつものように僕の鞄とかその辺の陰に隠れてるに違いない。小夜啼鳥、助けて欲しいんだ。出てきてくれないか!」
シーン
ヘンゼル「なんでだ!いつもは勝手に鞄に潜んでるのになんでこんな日に限ってあいつ……!これでもう完全に積みじゃないか!」ギリッ
ヘンゼル「こうなったらリスクを伴う最後の手段、闇雲に探すしかない。とりあえずここをスタート地点として、迷わないように目印を残しながら……よし進むぞ!」ポトッ
キモオタ「ちょwwwヘンゼル殿wwwドン・キホーテの店内にほんのり光る石を置いていくのは迷惑ですぞwwwやめてくだされwww」コポォ
ヘンゼル「じゃあどうしろっていうんだ!?パン屑でも撒けっていうのか!?それじゃ食い意地が張ってるあんたみたいな輩に食われて――って、君達か。奇遇だね」グイッ ファサ
ティンカーベル「いやもう奇遇とかどうでもいいよ。メッチャ取り乱してるじゃん、普段のヘンゼルどこ行ったのさ!?」
ヘンゼル「……ごめん、道に迷うの正直トラウマなんだ。グレーテル達が居るとまだ大丈夫なんだけど、一人で迷うとどうしても取り乱しちゃうんだ」
キモオタ「そんな事では好感度下がりますぞwww主にドロシー殿からのwwwそれはさておきはぐれたのならば我輩が司書殿にメールしてみるでござるよ」ポチポチ
ヘンゼル「……」
キモオタ「っと、返信キタコレwwwどうやらお菓子売り場にいるようですなwww二人とも心配しているようでござるし、共に行くでござるwww」
ヘンゼル「うん、助かったよ。それにしてもキモオタお兄さんはこんなにも頼れる男だったんだね、見直した。優しいチャーシューくらいに思ってたけど、これからは評価を改めなきゃね……うん、すごく見直した」
キモオタ「こんなことで見直されてもwww今までどんだけ評価低かったでござるかwww」コポォ
ティンカーベル「まぁ好感度マイナススタートみたいなところあるからねキモオタは。っていうかキモオタじゃなくてスマホの手柄だからね、単なる文明の勝利だよ!」
キモオタ「ちょwwwお主はwww黙ってれば我輩の手柄だったというのにwww」コポォ
ヘンゼルの弱点その1 『道に迷うのがトラウマ。一人に時に迷うとポンコツ化する』
785: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/20(火)01:24:30 ID:MEA
ハートの女王の城 城前
ワーワー ワーワー
分身悟空第二弾「ウキッ、ウキキィィィッ!!」ビュバッ
「チョロチョロとすばしっこい猿め…!いつまでも分身の相手してるわけにゃいかないんだよ!」ズバッ
分身悟空第二弾「キキッ、ウキィ…」ドサッ
「よしっ!次だ、次!ドンドン蹴散らして行くぞっ!」
「おぉっ!あいつやるなぁ…よぉし、俺達も続くぞ!さっさと分身始末して本物倒さねぇと、アリスさんに合わせる顔が無いしな!」
「そうだね。アリスちゃんの為にもあいつらここで食い止めないとねっ!気合入れ直そう!」オォー!!
シュタッ
分身悟空第一弾「ったく、やっぱ分身出し過ぎっと精度も強さも下がっちまうな……あの程度の剣術にやられちまうなんて、情けねぇったらないぜ」
「出たぞ!まともな言葉話してるって事はアイツ強い分身だ!みんな気を付けろ!」
「あぁ!こいつには大勢で一気に仕掛けるぞ!そうでなきゃ勝てないぞ!」
「了解!近くにいる奴は手を貸せ!一気に叩いて動きを封じてやれ!!」
分身悟空第一弾「ヘヘッ、一気に叩くっつぅ判断は正しいけどよぉ……一つだけ間違ってんなぁお前ら」
ビュバッ
分身悟空第一弾「分身だっつっても俺ァ孫悟空だ!倒してぇってぇんならその倍の人数で襲ってこなけりゃ話になんねぇぜぇ!!」ブォン
786: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/20(火)01:26:40 ID:MEA
「ぐ、ぐあぁぁっ!さっきの猿っぽい分身より何倍も強い…!」ドサッ
「ま、まさか分身でこれ程に力の差があるとは……ぐふっ」ドサッ
分身悟空第一弾「ヘヘッ、俺の実力は本体と遜色ねぇからな!さぁ次はどいつだ?何匹束になってこようと俺は相手してやるぜぇ?」
ビル「フッ…分身如きが大口叩くじゃねぇか。いいぜ、今度はこのビル様が相手になってやろうじゃねぇか」スッ
分身悟空第一弾「お前…確かさっき赤ずきんに二度も撃たれてたトカゲだろ?やめとけ、お前の実力じゃ俺には敵わねぇからよぉ」
ビル「うるせェ!!俺の専門は接近戦なんだよォ!銃とかいう卑怯な武器でやられたってノーカンだあんなもん!今度こそ俺の実力思い知らせてやらァ!」オォン?
分身悟空第一弾「……」
ビル「ヘヘッ…どうやら俺の凄さを感じ取ったようだな?だが今更命乞いしたって遅いぜ!このビル様の妙技、余すことなく披露してやるぜぇ!」
分身悟空第一弾「いや、どうでもいいけどよぉ……お前後ろ気をつけた方が良いぜ?」
ビル「あぁん?後ろがどうかしたって言うのかy」クルッ
分身悟空第三弾「うっほほーい!!シンゴチャァァァン!」ウッチャン
ビル「べぶっ」ゴキッ ドサッ
分身悟空第一弾「あーあー…こいつ本当に口だけだったな…。つぅかよぉ、オメェはもうちょっと俺等と意思の疎通できねぇのかよ?動きも読めねぇし戦いにくいったらねぇぜ」
分身悟空第三弾「うほほーーっい!『孫悟空』デ ググルト サイヤジン ノ ホウバッカリ デテクルゥゥゥーー!!」ナットクイカナイ
分身悟空第一弾「何言ってんのかわかんねぇっての…。まぁ、言うだけ無駄か…しゃあねぇ、本体が青い鳥倒しちまうまで雑魚共は俺が食い止めてやるかぁ!」
・・・
787: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/20(火)01:29:14 ID:MEA
一方、玉龍VSメリーアン
バシュッ ババッ バッ シュババ
「なんてハイレベルな戦いなんだ…!龍の娘の方が上手に見えるがメリーアンも負けちゃいない!」
「あいつ元々やたら格闘に詳しかったし、今回更に力つけたみたいだしなぁ…多分タイマン勝負なら俺達の中で一番強いぜ」
「あんなに強いのになんでメイドなんかやってんだアイツ……」
玉龍「隙ありッス!玉龍ちゃんのとっておきっ!龍の爪!山さえ斬り裂く鋭利な刃、その身で味わうといいッス!」ズバッ
メリーアン「……」スタッ
玉龍「おっとっと、今のは決まったと思ったんスけどね。流石はウサギちゃん、身のこなし軽々ッスね…!」
メリーアン「……っ」スタッ ブンッ
玉龍「っとぉ…!間髪入れずに反撃ッスか!でも爪を使わなくったって接近戦はお手の物……なんて言ってる傍から捕えたッスよぉ!流石は玉龍ちゃんッス」ガシッ
メリーアン「……違う、捕えさせた」クルッ
玉龍「あん?何を強がりを言って……あだだだだ!ちぎれるちぎれるッスゥゥゥゥ!!」ビキビキ
メリーアン「……このまま左腕をネジ切る」ギギギッ
玉龍「くぅ…可愛い格好の割にえげつないッス!でも思い通りにはさせないッスよ…!」クルンッ
玉龍「おっ…らぁぁ!!玉龍ちゃんエスケープ!はー…しっかし今のはヤバかったッスね」ゼーゼー
メリーアン「……抜けだされるとは、不覚。しかし称賛に値する、あの状態から抜け出せる者はそう多くはない」
788: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/20(火)01:31:56 ID:MEA
玉龍「あんたの技、関節技…って奴ッスね?噂には聞いたことあるッスけど受けたのは初めてッスよ」
メリーアン「関節を極めれば、どんな相手でも沈められる。例え相手が龍の娘でも」
玉龍「テクニックでパワーを押さえつけるって感じッスかー。でもそういう小細工に頼るって事は、力押しに不安があるって事ッスー!」シュバッ
メリーアン「……」シュバッ
ババッ シュババッ ヒラッ ババッ シュバババ
「本来ならメリーアンの援護をすべきなんだろうが……思わず見入っちまう。何なんだこの激しい攻防は…目が離せねェ!」
「仕方ねぇよ、こいつ等は俺達の理解を越えた攻防を繰り広げてる。下手に援護なんかしちゃかえって邪魔になる」
「あぁ、でも仲間が頑張ってるんだ。目をそらさず見届けようぜ」
(戦闘で破れたメイド服が背徳的な感じでグッド…!チャイナドレスのスリットから見える生足がセクシーでグッド…!)
ババッ ビッ シュババッ
メリーアン「……」ゼーハー…
玉龍「どうやらスタミナにはいまひとつ自信無しって感じッスね…!メイドちゃんの弱点見抜いたりッス!」シュババ
メリーアン「……弱点、そんな物は関係無い。私はメイド、与えられた任務を遂行するのみ」ググッ
玉龍「弱点を見抜かれても戦おうって気概…そういうの嫌いじゃないッス!まっ、弱点を見抜いたところであんたは油断ならない相手ッスから…全力玉龍ちゃんッスよー!」バッ
メリーアン「望む所…。どちらにしてもあなたを先に行かせるわけにはいかない。それは――『アリスお嬢様』の意思に、反する」バッ
・・・
789: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/20(火)01:34:49 ID:MEA
一方、孫悟空VS青い鳥(怪鳥形態)
青い鳥「ブルウウウウウォォォォォッ!!」グワッ
ガキィィン
孫悟空「おおっと、危ねぇ危ねぇ。そんなバカデケェくちばしで啄ばまれちまったらハラワタが取り返しのつかねぇ事になっちまう」シュタッ
青い鳥「ぐぅ…これだけ身体の大きさに差があるって言うのに、どうして攻撃が通らないんだ!?」グヌヌ…
孫悟空「そりゃあ、オメェ…図体がデカけりゃその分動きも鈍っちまうのが普通だからな。玉龍の奴だってそうだ、まぁあいつの場合はでかくても素早いけどな」ヘヘッ
青い鳥「ぐぬぬ…。さっさとこいつを倒さなきゃアリスさんに申し訳が立たない…!いつまでもモタモタしてちゃアリスさんに恩返しできない…!」
孫悟空「だからそれがわかんねぇんだよなぁ…。他の連中は【不思議の国のアリス】の住人だからまだ解るんだがよ」
孫悟空「お前は【青い鳥】の世界の住人だ。アリスを崇める理由も無けりゃ敬う理由だってねぇハズなんだがなぁ…?」
青い鳥「……アリスさんは僕を救ってくれたんだ。あの最悪で残酷な世界から、僕を助け出してくれたんだ」
孫悟空「ほう、お前を助けた…?アリスがか?」
青い鳥「あぁ、そうだ。だから僕はアリスさんに従うし恩を返したいんだ、だからお前をここで食い殺す…!」ガキンッ
孫悟空「そう殺気立つなってのに。さて如意棒、出番だぜ。ちょっくら奴の背中に飛ばしてくれよ……っとぉ!」ビュバッ
スタッ
青い鳥「なっ!?如意棒を利用して僕の背中に……!えぇい降りろ!降りろ!さもないと振り落とすぞ!!」
孫悟空「そう暴れんなって、俺は少しばかりお前と話がしてぇだけなんだからよ」
790: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/20(火)01:39:22 ID:MEA
青い鳥「そうやって僕を話術で懐柔しようって魂胆か!?見え透いた手だ!そんな手には――」
孫悟空「ちげぇよ。まぁ俺の説得でお前が退けば一番だがな」
青い鳥「誰が退くもんか!そんな事より早く降りろよ、不愉快だ!降りないって言うなら全で飛んで振り落とすしか――」
孫悟空「よっこいせっと」ドカッ
青い鳥「なんで座った!?降りろって言ってるだろ!座るな!まぁいい…!すぐに振り落として――」
孫悟空「やめとけって。お前なら知ってんだろ?俺ァ龍の背にだって雲にだって乗りなれてんだ、今更デカイだけの鳥の背から落ちたりしねぇよ」
青い鳥「くっ…!何が目的だ!?」
孫悟空「だから言ってんだろ、オメェと話がしてぇと思ってな」
青い鳥「だから僕と話す事の目的を教えろって言ってるんだ!そうか、情報を聞き出すつもりか?そうだな!?」
孫悟空「お前、少しばかり思い込みが激しいタイプじゃねぇのか…?どうでもいいことだけどよ」
青い鳥「警戒するのは当然だろう!僕とお前は敵同士、急に話がしたいなんて何か裏があるに決まっている!だってさっきまでお互いの事を倒そうと打ち合っていたんだぞ!?」
孫悟空「だからこそだ、戦う前はお前の事なんざどうとも思っちゃいなかったが…。お前に殺気を向けられ、攻撃され、それを交わしてるうちになんか引っかかりを感じたんだよなぁ」
孫悟空「どうもお前の攻撃からは迷いっつぅか後悔っつぅか……そういうもんを感じるんだよな。戦う事に対する覚悟が固まってねぇっていやわかりやすいか?」
792: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/20(火)01:53:55 ID:MEA
青い鳥「馬鹿な…!僕はアリスさんの為に戦うと決めた!覚悟だってしてるんだ、あまり僕を侮辱するような真似をすると許さないぞ!」
孫悟空「なぁ青い鳥。お前……アリスに救われたって言ったよなぁ?」
青い鳥「……あぁ、言ったさ」
孫悟空「つぅ事は『何か』がお前を苦しめてたって訳だ。その『何か』ってのはよぉ……一体、なんなんだ?」
青い鳥「……言っただろ、お前に理解なんか出来やしない。だから話す必要だってない」
孫悟空「あぁそうかい。でも俺はお前の背から降りねぇぜ?っつぅか……このまま如意棒をお前の身体に突き刺すことだって、俺は出来るんだぜ?」
青い鳥「……。おとぎ話【青い鳥】だ」
孫悟空「あぁ、お前の生まれ育った世界だろう?それは知ってるぜ。そうじゃなくてよぉ、お前を苦しめたもんが何か話してみろって言ってんだよ」
青い鳥「察しが悪いな。だからそう言ってるだろう、僕を苦しめたのは【青い鳥】というおとぎ話、そして世界そのものだ」
青い鳥「この際だ、もっとわかりやすく言ってやろうか?僕はあの世界の主人公チルチルとミチルが嫌いだ」
青い鳥「あいつらに青い鳥を探して来いなんて言った老婆が嫌いだ。連中に協力した精霊が嫌いだ。そんな物語を紡いだ作者が嫌いだ」
孫悟空「そいつぁ…どうしてだ?理由が、何かあるんだろ?」
青い鳥「理由?あぁ、あたりまえじゃないか。連中は僕から家族を奪った、両親も兄弟も友人も連中のせいで死んだんだ」
青い鳥「そして連中は僕から未来を奪った。自由を奪った、自分達が幸福になるために――僕達を追いかけまわして、何もかも奪ったんだ」
796: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)01:06:21 ID:f8n
ビュオォォォォ バサバサッ
「おぉっ、青い鳥の奴ものすごい高さまで飛び上がったぞ!」
「孫悟空に背中をとられた時はヤバいと思ったが杞憂だったな、あの高さじゃ相手もむやみに動けねぇ。さぁどうする?そのまま振り落とすつもりか?勢いよく叩きつけるつもりか?」
「どっちにしろ考えがあってのことだろうさ。孫悟空は奴に任せて俺達は分身を始末しようぜ、アリスさんの願いの為に!」シュババ
玉龍(先輩、青い鳥との打ち合いの中で何かを感じ取ったみたいッスけど…。今更、あいつと話なんかしてどうしようっていうんスか?それで何かが変わるなんてとても――)
ビッ
メリーアン「……心外。私の相手など余所見をしながらでも十分、そう言いたいのですか?」ハァハァ
玉龍「そんなことないッスよ。でもこればっかりは勘弁して欲しいッスね、恋する乙女はいつだって愛する人を目で追っちゃうもんなんスからっ!」シュバッ
玉龍(……余計な心配をしている余裕はないッスね。でも大丈夫ッス、先輩の事だから何か考えがあるに違いないッスよ)
・・・
青い鳥「……孫悟空。お前は知っているのか?【青い鳥】がどんな物語なのか、【青い鳥】が僕達に何をしたのか」
孫悟空「悪ィが詳しくは知らねぇ。チルチルとミチルって名の子供が青い鳥を探して旅する話だって事くらいしか、な」
青い鳥「まぁそうだろうね。あの【西遊記】の主人公、天下無双の孫悟空様には他のおとぎ話の筋書きなんて興味無いだろうしね?ましてや異国の貧乏人の物語なんか眼中にないか」
孫悟空「ぐっ、よく知らねぇのは事実だから言い返せねぇ…。にしても随分とトゲのある言い方しやがるなお前…」
青い鳥「……まぁいいさ、成り行きだ。話してやるよ、僕の事。【青い鳥】の事をね」
797: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)01:10:37 ID:f8n
青い鳥「ある村にきこりの夫婦、そしてチルチルとミチルという兄妹が住んでいた。こいつらが【青い鳥】の主人公、そして僕はそいつらに飼われていたのさ」
青い鳥「まぁ、飼われてると言えば聞こえはいいけどさ…クリスマスの祝いもまともにできない貧乏な家だ。子供たちが寂しがらないようにカゴに繋がれてたって言う方が正しいかな」
孫悟空「しっかし、また貧しい子供の話か。おとぎ話の主人公の子供達ってのはどうもその手の境遇に置かれてる奴等が多いな…」
青い鳥「ある時、連中の前に老婆が現れた。そしてチルチルに魔法の帽子を渡してこう言うんだ『病気の娘を助けるために、幸せを呼ぶ青い鳥を探して欲しい』ってね」
青い鳥「青い鳥は幸福を運んでくる。そんな戯言を信じたお人好しの兄妹はあっさり了承して、青い鳥を探す旅に出かけたよ。世界を渡る事が出来るその魔法の帽子を使ってね」
孫悟空「ん…?ちょっと待ってくれ。青い鳥、お前はチルチルに飼われていたんだろ?」
孫悟空「だったらわざわざ余所に探しに行く必要なんかねぇだろ?すぐ手元にお前がいるんだからよ」
青い鳥「その頃の僕の翼は青くなかったのさ。白い羽だったか灰色の羽だったか忘れたけどさ」
孫悟空「そりゃあ…どういう事だ?」
青い鳥「……そんな事、僕が知りたいくらいだ」
孫悟空「あぁ?」
青い鳥「【青い鳥】の筋書きを最後まで聞けばわかるさ。というかわざわざ話してやっているんだ、話の腰を折るのはやめて欲しいもんだね」フンッ
孫悟空「そりゃ悪ぃ事したな。ほら、もう黙ってるから続けてくれ」
798: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)01:17:11 ID:f8n
青い鳥「旅に出た二人は立ち寄った世界ですぐに青い鳥を見つけた。でもその鳥は捕まえた途端、羽の色が抜け落ちて『青い鳥』じゃなくなった」
青い鳥「それでも二人は諦めず、幸せを呼ぶ青い鳥を探し続けた。そして次の世界でも青い鳥を見つけたけれど……それも捕まえた途端に死んでしまった」
青い鳥「どこの世界へ行っても結果は同じだ。兄妹は青い鳥を追い続ける、けれど手にした途端に鳥達は本来の姿を失うか死んでしまう。その繰り返し――」
青い鳥「……そして結局、青い鳥を捕まえる事が出来ずに兄妹は老婆の元へ帰ってくる。そして青い鳥を捕えられなかった事を詫びるんだ」
青い鳥「そこで老婆は言うのさ。『そのカゴの中にいる、お前の鳥をおくれ』ってね」
孫悟空「そりゃあ、お前の事だな?」
青い鳥「あぁ、そうだよ。さっき話した通り……ただの小鳥だった僕は兄妹が気づかぬうちに青い鳥になっていた。二人が追い求めていた青い鳥は、すぐ近くにいた」
青い鳥「あとは僕を老婆に渡しておしまい。追い求めていた幸せはとても身近な場所にあった。そういうおとぎ話だ、【青い鳥】というのは」
孫悟空「なるほど、な…。大体理解したぜ【青い鳥】がどんなおとぎ話かって事はな。でもまだ話は終わっちゃいねぇ、そうだろう?」
青い鳥「あぁ、そうだよ。チルチルとミチルは大冒険の末に、老婆の願いを叶えて病の娘を救えた。そうなりゃお人好しのあいつらも幸せ。文句なしのハッピーエンドだ」
青い鳥「でも僕が話したいのはこんな事じゃない。この物語の筋書きを知った上で、始めっから物語を追ってみようか?今度は主人公であるチルチル達の視点じゃなく――」
青い鳥「生まれたときからおとぎ話の事情と、自分の運命を知っている僕の視点でね」
799: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)01:18:56 ID:f8n
孫悟空「お前、知ってたってのか…?おとぎ話がどういうもんかって事を、生まれたときから」
青い鳥「あぁ。別に驚く事じゃないだろう?あんたの友人のかぐや姫だって師匠の三蔵法師だって知っていたんだ、僕も彼等と同じだ」
青い鳥「始めは特になにも思わなかったさ。チルチルもミチルも優しくしてくれたし、カゴの中の生活は快適では無かったけど安全ではあった、それに二人の事だって……」
青い鳥「……いや、よそう。僕は脇役だけど、重要な役柄だ。それはあの頃の僕にとって誇りでもあった。でも、チルチルに連れられて色々な世界を巡る事になってすぐに考えは変わった」
孫悟空「そうか、お前は……」
青い鳥「最初の世界で、チルチルが捕まえた鳥は僕の友人だった。兄妹に飼われる前に付き合いのあった親友、ってところかな」
青い鳥「彼は青い羽根を誰よりも誇りに思っていたよ、でもチルチルに捕まえられたばかりにそれを失った」
孫悟空「……」
青い鳥「次の世界でチルチルが捕まえたのは僕の母親だったかな。住んでいた場所が違ったから目を疑ったけれど、自分の母親を間違えたりしない」
青い鳥「当然、死んだよ。その場にいた仲間の青い鳥達も全て。次の世界でも、次の世界も、その次の世界でも同じだ」
孫悟空「チルチルが捕まえるたびにその青い鳥は姿が変わったり命を失う、そりゃあつまり……お前にとっちゃ同族の死ってことか」
青い鳥「想像できるか、孫悟空?カゴの中の僕はチルチルに話しかける事は許されない、カゴから出る事も出来ない、なにも出来ないんだ」
青い鳥「目の前で家族や友人が殺されている、山のようにだ!そうなってしまう事を僕は知っていた、でも自分には何もできない…!その苦しみがお前に解るか!?」
800: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)01:24:15 ID:f8n
孫悟空「……俺も若い時ツレを余所の輩に殺された。その時の悔しさや哀しさ、どうしようもねぇ怒りってのは理解できるつもりだ」
孫悟空「しっかし……未来を知ってそれでも何もできねぇカゴの中でその現実を見せられ続けるってのは……辛ぇよなぁ」
青い鳥「お前の想像を超える苦痛だよ。彼等は何もしちゃいない、ただ青い鳥が幸せを呼ぶなんていう迷信のせいで狙われて殺された」
青い鳥「そのわけのわからない迷信のせいで…青い鳥達は殺された!幸福になりたいなんていう他人の欲望を満たす為だけに命を狙われた!」
青い鳥「挙句の果てに、ただの小鳥にされたボクをもう一度青い鳥に戻して『幸せは身近な所にいた』?なんだよそれ…馬鹿なのか!?」
青い鳥「そんなわけのわからない教訓を現実世界に広めるために僕は生み出されたのか!?そんな事の為に苦しめられた!そんなくだらない事の為に、仲間を失った!」
孫悟空「……」
青い鳥「僕はもう心底嫌になった。【青い鳥】の世界も、仲間を殺した兄妹も老婆も。恨んで恨んで気が狂いそうだったけど、それでもカゴの中の僕には何もできなかった」
青い鳥「でも、そのままおしまいとはならなかった。物語の終盤、チルチルが老婆の元に帰った時……本来現れる事無い登場人物がその世界に現れた」
孫悟空「それがアリス…って訳か」
青い鳥「偶然か必然か、とてもいいタイミングだった。チルチルは僕を老婆に渡すためにカゴの扉を開けていた。それが僕に与えられた最初で最後のチャンスだった。だから僕は――」
青い鳥「二人を見限った。迷わず逃げた。僕を縛るあのカゴを捨てて、アリスさんの元へと飛び立った」
801: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)01:27:45 ID:f8n
孫悟空「……お前が老婆の手に渡らなけりゃ物語は進まねぇ、当然代役になるような青い鳥なんか存在しねぇってか」
青い鳥「そうすることで世界が消えてしまう事もわかった、目の前の少女……アリスさんが敵なのか味方なのか、その時は目的すら知らなかった」
青い鳥「でも、僕は迷わなかった。例え自分が死んでも、チルチルとミチルを殺せるのなら良いと思った。仲間の仇をうてるなら、世界さえ消えてしまえと思った」
孫悟空「世界が崩壊していく混乱の中、アリスはチルチルとミチルをさらっていったって訳か」
青い鳥「そんなところだ。アリスさんは自分が自由に動く為に、代役をさせる女の子を探していたからね」
青い鳥「ミチルは代役にはピッタリだったのさ。年の頃はアリスさんよりも幼いけどそこは問題ない、何よりチルチルを人質として捕えれば強制的に従わせられる」
孫悟空「なるほどな…。それで結局【不思議の国のアリス】が結末を迎えて用済みになっちまったから兄妹は幽閉されてるってところか」
青い鳥「そうだよ、僕には関係ない話だけどね」
青い鳥「これでお前も少しはわかっただろう?僕が何故【青い鳥】の世界を見限ったか、何故アリスさんに従うのか」
孫悟空「……あぁ、よくわかったぜ」
青い鳥「だろうね。さぁ、理解できたなら僕の背から降りて貰おうか。もうおしゃべりは終わりだ、今度こそ決着をつけようじゃないか」
孫悟空「そりゃあ、無理な話だぜ青い鳥。さっきも言っただろ?お前の攻撃には迷いを感じる、不安を感じる」
孫悟空「そんな奴とこれ以上戦うなんざ、俺にゃあできねぇな」
802: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)01:37:07 ID:f8n
青い鳥「またそれか…!ふざけるな!また僕に迷いがあるって?覚悟が決まって無いって!?馬鹿を言うな!」
孫悟空「なぁ青い鳥、お前なんだかんだ言って俺に過去の事話してくれたじゃねぇか」
青い鳥「それはお前がしつこいから仕方なく話しただけだ!それに背中に居座られちゃ気分が悪い!」
孫悟空「だったらどうしてわざわざこんな上空まで飛んで話したんだ?」
青い鳥「それは……お前と話している姿を他の連中に見られたら、裏切ったと思われるかもしれないからだ!」
孫悟空「本当にそうか?お前、本当は誰かに聞いて欲しかったんじゃあねぇのか?」
青い鳥「馬鹿にするな…!僕はそんなに弱い奴じゃない!大体、少し戦ったくらいで僕の何をわかったつもりだ!?」
孫悟空「解っちまうんだよ、何度か攻撃を交わせばな。いいや、お師匠様に解るように努力しろって言われてなぁ、色々苦労して……ってそりゃどうでもいいか」
孫悟空「実際な、【西遊記】の世界で俺達に襲い掛かってくる妖怪の中にもほんの一つまみ程居たんだよ。迷いを心に抱えたまま襲ってくる輩が」
青い鳥「……」
孫悟空「俺としちゃあ倒しちまった方が楽でいいんだが、お師匠様がゆるさねぇンだよ。『迷いを持って戦いに臨んでいる者は、本当は戦いを望んでいないのかもしてない』」
孫悟空「『ですから、そういった者達は例え相手が妖怪だとしても。見逃し、改心の機会を与えるように』ってな。とんだあまちゃん僧侶でなぁ」
803: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)01:42:10 ID:f8n
青い鳥「……僕も心に迷いを持っている、だから改心させよう。そういう考えなんだな、お前は?」
孫悟空「おうよ。これでも一応僧のはしくれなんでな。つぅか、お師匠の教えはしっかり守らねぇとコレがどうなっちまうかわからねぇしな」キンコジコンコン
青い鳥「……」
孫悟空「なぁ青い鳥。この高さじゃあ誰も聞いちゃいねぇぜ、下の連中はせいぜいお前が俺を倒すのに手こずってる程度にしか思っちゃいねぇさ」
青い鳥「……僕はアリスさんに感謝してる。それに不安も悩みも無い。お前に懐柔されるつもりだって毛頭無いんだ」
孫悟空「そうは言うがお前なぁ……」
青い鳥「……ただ」
孫悟空「あぁ?」
青い鳥「……」
孫悟空「何だよ、言いかけたんなら言っちまえよ」
青い鳥「ずっと前から気になっていた……納得がいかない事が、一つだけある」
孫悟空「なんだ、そりゃあ?」
青い鳥「……僕は敵として、密偵としてお前達の身の周りを見てきた。でも、どうしても理解できない事がある」
青い鳥「あのティンカーベルとかいう僕に散々突っかかってきた羽虫がいただろう?あいつはどうして……あんな豚を信用していたんだ?」
804: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)01:46:43 ID:f8n
青い鳥「【ピーターパン】の世界を失って、それを取り戻そうって考えるのは解る。非力な妖精が他人の力を借りようってのも理解は出来る」
青い鳥「でもそれならもっと適任がいるだろう。あの羽虫は世界移動が出来たんだ、魔法や妖術使いに頼るとか……それこそお前の様な強いおとぎ話の住人に頼った方が効率的だ」
青い鳥「高名な魔女に頼むとか、もっと方法はあったはずだろ。現実世界の奴に頼むにしてももっと痩せてて身体能力の高い奴に頼む方がずっとスムーズだったはずだろ」
青い鳥「それなのにあいつはあの豚を選んだ。気持ち悪さに服を着せたようなあのどんくさい豚に自分の運命を託した。それが……理解できない」
孫悟空「お前、そんな事考えてたのか?」
青い鳥「そうさ、悪いか?でも当然だろう、あの羽虫はそれほどに効率の悪い事をしていたんだ」
青い鳥「どうしてあの羽虫はあの豚を信じられたんだ?自分の世界を取り戻してくれると、どうして願いを託せた?」
青い鳥「あんたもそうだ孫悟空。話の筋書きがそうなってるとはいえ、どうして三蔵法師に付き従うんだ?」
青い鳥「三蔵法師はただの人間、お前よりずっと体力が無くて妖術が使えるわけでもない、しかもその肉を食べると不老長寿になるとかで妖怪に狙われてる――」
青い鳥「そんな奴にどうして自分の運命を託そうなんて思えるんだ?マッチ売りの少女も、あの豚の仲間達だって同じだ。力も魔力も実績も無い、そんな奴をどうして信じられるんだ?」
805: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)02:00:51 ID:f8n
孫悟空「俺とお師匠の場合は…なんつぅか最初は成り行きだったが、結局はこの人となら天竺だろうと何処だろうと行けるって思えたからだな」
青い鳥「なんだよ、それ。結局根拠の無い感情論って事じゃないか」
孫悟空「ティンカーベルも似たような理由だと思うぜ?確かにキモオタより強い奴や頼れるやつはいただろうが、何よりあいつにとってキモオタは他の誰より気があったんだろ」
孫悟空「だからすぐに仲良くなれた、だから信用できた。それだけの話だろ?」
青い鳥「……いくら仲が良くても、好きだった相手でも。ほんの少しのきっかけで、信じられなくなるもんだ。それを僕は良く知ってる」
青い鳥「実際、チルチルもミチルも……僕にとっては大切な友人で家族だった、きっと向こうもそう思っていたと思う。でも……今は見ての通りだ」
青い鳥「仲が良いとか、気が合うとか、信じられる相手だとかそんな感情は脆いもんだ。大事なのは真実の裏打ちがある情報じゃないか」
孫悟空「だから強さと実績があるアリスに従ってるってのか?」
青い鳥「もちろん恩があるからって言うのも本当だ。でもアリスさんなら実績もあるし強さも折紙付きだ、彼女と一緒にいれば……間違いが無い」
孫悟空「……でもそりゃあお前の本音じゃあねぇって訳だな?」
青い鳥「……」
孫悟空「後悔、しちまってんじゃねぇのか?チルチルとミチルを裏切っちまった事をよ」
806: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)02:03:33 ID:f8n
青い鳥「……解らない。解るわけがないじゃないか」
青い鳥「あの時、僕が二人に向けた怒りの感情は確かなものだ。今だって許しているわけじゃないし、仲間を殺した二人を許す事は無いと思う。この恨みは消えない」
青い鳥「でも、どういう訳だろうな……あの羽虫と豚が仲良くしていたり、無礼なジョークを交わしたり、そういうのを見るたびに兄妹の笑顔を思い出したんだ」
青い鳥「まだ、僕達がただの貧乏な家族だった頃の姿を」
孫悟空「……俺はあんまり偉そうな事言えた立場じゃねぇけどよ。心残りだってぇんなら、やり直したらいいじゃねぇか」
青い鳥「馬鹿を言うなよ、僕を救ってくれたアリスさんだって裏切れない。それに今更やり直しなんて出来るわけがない」
孫悟空「成り行きでそうなっただけで、別にアリスはお前を助けたわけじゃねぇ。そんな事解ってんじゃねぇのか?」
青い鳥「……」
孫悟空「それにな、やり直すことに今更なんてことはねぇよ。間違いに気付いたりよぉ、心残りがあるってならいつだってひきかえしゃいいんだ」
孫悟空「なぁ青い鳥、これを機にやりなおしてみねぇか?今だったらかぐやもドロシーも償いの最中だしよぉ。何だったら俺と一緒に来るってのもありだぜ?」
青い鳥「あんたと一緒にって……天竺へか?」
孫悟空「おうよ。アリスの一件が終わったら旅も再開するからよ。お師匠様以外は償いの旅だからよぉ、お前もすぐに馴染めるぜ。なぁ、どうだ?チルチルとミチルだってよ、お前の話聞きゃあ許してくれるんじゃねぇか?」
青い鳥「……そう、かもしれないな」
ヒュヒュヒュヒュヒュッ
孫悟空「なんだ!?くっ…!あぶねぇ!?畜生、全部は防ぎきれねェ…!」ヒュッ キンキンッ
807: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/06/26(月)02:06:25 ID:f8n
青い鳥「ぐあ…っ!」ドスドスドス
孫悟空「こりゃあ投石部隊の攻撃…!?標的は俺か…いや、違う!なんだって青い鳥めがけて攻撃なんかしてんだ連中は…!」キンキンッ
青い鳥「僕の背から離れろ孫悟空…。きっと話したことを感づかれたんだ、そのうち僕を始末するための……次の攻撃が来る」ゼェゼェ
孫悟空「お前に話せって言ったのは俺だ、ここで見捨てられるわきゃあねぇだろうが!」
???「それならばお前もろとも地に叩き落とすまでだな。投石部隊、攻撃を開始せよ」
ヒュヒュヒュヒュヒュッ
青い鳥「ぐぅあ…!!」ドスドスドスッ
孫悟空「青い鳥…!畜生、今の声……誰だ!?姿を現しやがれ!」
チャシャ猫「まったく、様子を見に来てみればこれだ。だから私は反対したんだ、青い鳥はルイスが生み出した存在ではない。余所者は信用できない、必ず裏切るとな」スゥッ…
孫悟空「顔だけ…ってこたぁアリスのとこのチャシャ猫って奴か!?」
チャシャ猫「ご名答。孫悟空、青い鳥を懐柔しようとしたようだが残念だったな。こいつはもうじき墜落する、使い物にはならない」
孫悟空「懐柔なんかじゃねぇ、俺ァこいつが迷ってるみてぇだったから道を示してやっただけだ」ギロリ
チェシャ猫「どっちでも同じだ、この鳥の末路は決まっている。が…今まで尽くしてきた褒美だ、お前の態度次第では命までは奪いはしないが。青い鳥、どうだ?」
青い鳥「僕は……解りません。ただ、ただ……やり直しが、出来るというのなら――」フラフラ
チェシャ猫「もう結構、これ以上は聞く意味が無い。…つくづく選択を誤る無様な鳥め。投石部隊、攻撃に移れ。裏切り者を処分しろ」
819: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/03(月)00:03:30 ID:mC2
レスありがとう!
更新していくけど今日は捕捉っぽい番外編とレスのみ
本編は明日更新します!明日、長い間留守にしてたあの娘、出ます!
821: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/03(月)00:07:47 ID:mC2
補足番外編『お師匠様の教え』
ずっとずっと昔 まだ孫悟空と三蔵法師が共に旅を始めた頃
西遊記の世界 とある村はずれ
タッタッタッ ザザッ
孫悟空「ヘヘッ、ようやく追いつめたぜぇ!ったく、下級の雑魚妖怪のクセして逃げ足だけは一人前だなぁ?おぉん?」
妖怪「ひっ、ひえぇぇ…!ど、どうか慈悲を…!命だけはお助けを…!」
孫悟空「あぁん?慈悲だぁ?先に手を出してきやがったのはテメェだろうが!都合のいい事抜かしてんじゃねぇぞオラァ!コラァ!!」
妖怪「ひ、ひぃぃ!すいませんすいません!三蔵法師っていう僧侶の肉を喰えばスゲェ妖力が得られるって話を聞いて、それでつい魔がさして…」
妖怪「も、申し訳ありませんでした!この通り反省しています!ほ、ほんの出来心だったんです!どうかどうかお許しを…!」ペコペコ
孫悟空「出来心だぁ?テメェの都合なんざ知った事じゃねぇ!俺ァ守護者としてお師匠に仇なす輩は残らずブチ殺す!一撃で冥土に送ってやっから感謝しなぁ!!」ビュオンビュオン
妖怪「ひ、ひぃぃ…!」ガタガタブルブル
孫悟空「ヒャーッハッハッハ!!下級妖怪の分際で調子に乗りやがった事、地獄で永遠に悔やんでやがれクソ雑魚g……アァァーーーッ!?」ビキビキビキ
ガッシャーン
妖怪「!?」ビクッ
三蔵法師「まったく…いい加減にしなさい悟空!完全にチンピラの立ち居振る舞いではないですか!仏様に仕える者としての自覚をしっかり持ちなさい愚か者!!」ナムナムナム
822: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/03(月)00:08:48 ID:mC2
孫悟空「痛い痛い痛いィィ!なんでこのクソ輪っかが締まりやがる!?俺の何が間違ってるってんだよお師匠オオオォォ!!守護者として真面目にそいつをブチ殺そうとしただr…アアアァァーー!!」ガシャーン
三蔵法師「戦意喪失している者を…しかも命乞いをしている相手を攻撃するなど許されません!恥を知りなさい!」
孫悟空「はあぁぁ!?こいつはアンタを殺そうとしたんだぞ!?自分の身も護れねぇ人間如きが甘ぇ事言ってんじゃねぇぞハゲコラァ!あっ、すまねぇ…ハゲは言い過ぎた悪かったっtアァァァーー!!」ドガシャーン
三蔵法師「……さて、あなた」
妖怪「は、はい…!」ビクッ
三蔵法師「早々にお逃げなさい、この暴れ猿がおとなしくしている間に」
妖怪「お、俺はあんたを殺そうとしたってのに…許してくれるんですかい?」
三蔵法師「反省しているというあなたの言葉を信じるだけです。次は無いと肝に銘じ、今後は邪な事を考えず真面目に生活するよう心掛けなさい」
妖怪「あ、ありがとうごぜぇます…!これからは真面目に暮らしていきます!そ、それじゃあ俺はこれで…!」タッタッタッ
三蔵法師「……さて、これで彼も心を入れ替えてくれることでしょう。あなたもそう思いますね、悟空?」
孫悟空「」
三蔵法師「いつまで横になっているのですか!シャキッとしなさいシャキッと!!」ドゴォ
孫悟空「おうふっ…!ハァー…ハァー…あまりの激痛に気絶しちまってたぜ…。天竺への旅、俺にとっちゃこの輪っかが一番の障害なんじゃねぇか…?」ゼハーゼハー
823: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/03(月)00:18:27 ID:mC2
・・・
孫悟空「キッチリ説明してもらうぜお師匠!どうしてあの妖怪を逃がしちまったんだ!?言っとくが戦意喪失してたとか命乞いしてきたとかいう甘い言いぶんじゃ俺ァ納得しねぇぞ!?」
三蔵法師「…悟空、私とあなたが旅を共にするようになってまだ数日です。ですが既に多くの妖怪が私の命を狙って来ていますね?」
孫悟空「あぁ、うんざりするくれぇにな…。まぁ仕方ねぇさ、お師匠の肉を食らえば不老長寿になれるだとかバカデケェ妖力が手に入るってぇ噂が流れてるらしいからよぉ」
孫悟空「弱っちぃ人間一人殺せばスゲェ力が手に入るってんだ、そんな好機逃す手はねぇよ。まっ、俺ァ既に不老不死だし他人食って強くなってもつまらねぇから興味ねぇけどな」
三蔵法師「まったくハタ迷惑な噂です。ただ火の無い所に煙は立ちません、もしかすると真実かもしれませんが…」
孫悟空「おいおい、それがどうしたってんだよ?んなもんあの妖怪を逃がした事とは関係ねぇだろ?」
三蔵法師「関係ありますよ。それよりも…悟空、先程の妖怪は強かったですか?」
孫悟空「いいや、妖力もねぇに等しい下級の妖怪だったぜ。まぁ、雑魚中の雑魚ってとこだ。だからこそアンタを殺して力を得ようってんだろうな」
三蔵法師「でしょうね。おそらくあの者はきっと自分自身の弱さを知っていた、だからこそ『三蔵法師を殺せば力が手に入る』…そう聞いて思わず出来心で私達を襲ったのでしょう、心に迷いを残したまま」
孫悟空「あぁ?迷ってたかどうかなんてわからねーだろ。それになんで出来心かどうかなんてわかるんだよ。あいつが言ってた事なんざデマカセかもしれねぇだろ」
三蔵法師「迷いなど無く心の底から私を殺そうというのなら、あなたがのたうちまわっていたあの状況で逃げたりせずに私を攻撃するはずでは?」
孫悟空「……そう言われてみりゃあ、確かにそうだ。雑魚とはいえ妖怪、人間相手に遅れなんかとらねぇしそんな事は解ってるはずだよな…」
824: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/03(月)00:49:18 ID:mC2
三蔵法師「魔がさした、出来心だったというあの者の言葉はおそらく真実。今後、彼は改心して真っ当な人生を送る事ができるです、それでも命を奪う必要がありますか?」
三蔵法師「迷いを持って戦いに臨んでいる者は本当は戦いを望んでいないのかもしれません、そういった者達に改心の機会を与える……必要な事なのですよ、これは」
孫悟空「……まぁ、そういう事だったら殺す必要はねぇよ。殺しちまったら償いも改心もできねぇからな」
三蔵法師「そういうことです。人も妖怪も生きている以上間違いを犯すものです、判断を誤ったり悩みや不安に弱い心を揺らされるものです。それを頭ごなしに否定して処罰してはなりません」
三蔵法師「いいですか悟空。私達は天竺へ向かっていますが…これは目的ではなく手段です。本来の目的は仏の教えを広め、そして世界を平和に導く事なのです」
三蔵法師「目の前に選択や判断を誤った者がいたならば、その者達を導き救うという行為もまた私の私達の役目なのです。わかりましたね?」
孫悟空「そりゃいいけどよぉ…。相手の頭ん中は当然見えやしねぇんだ、そいつが何かしらの悩みや不安を抱えてるなんてもんどうやって見抜くんだ?」
三蔵法師「悟空程の実力を持ってすれば拳を交えた相手の心のうち程度なら見破れるのでは?あなたは五百年以上生きてるんですから、出来ますよね?」
孫悟空「んなわけねぇだろ!無茶ぶりにも程があるってもんだ!つぅか何百年生きようとできねぇもんはできねぇっての!」
三蔵法師「そうでしたか。では出来るようになってください」ニッコリ
孫悟空「お師匠じゃなかったらぶん殴ってるとこだぜ……。まぁいいぜ、俺は守護者だ。お師匠がそうしろって言うなら従うまでだ」
三蔵法師「よろしい。それでこそ私の守護者です。改めて…共に天竺を目指しつつ世界を良いものに変えていきましょうね。長く困難な旅になるでしょうが、それでも笑顔がついて回るような旅にしたいですね」
孫悟空「おう、まかせときなお師匠。…っていうかよぉ、お師匠大丈夫か?」
三蔵法師「? 何がですか?」
孫悟空「いやな?命狙われて、天竺への旅もしてるってのに世直しみてぇな事にも手ぇだして…そんで敵にまで情けかけちまってよ。あれもこれも考えすぎなんじゃねぇか?あんまり頭使いすぎると、毛根が死滅しちまうんじゃねぇか?もうしてるって?ハハッ!」
三蔵法師「ハハハ、面白い事を言いますね悟空……毛根が、死滅ですか。ハハハ……」スッ ジャラッ
孫悟空「えっ…なんで数珠握りしめてんだよ?えっ、ちょっ!?今の冗談だからな!?お師匠が笑顔がついて回るような旅が良いって言うから俺なりの冗談で……やめろ、やめろぉぉぉ!!」
アァァァーーーー!! ガシャーン
825: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/03(月)00:53:25 ID:mC2
今日はここまで 明日は本編更新します!
???「明日は私にもちょっとだけ出番があるよー!今までお留守番してたぶん頑張るからねっ!」フンス
またお付き合いを!よろしくお願いします!
829: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/04(火)04:20:09 ID:3Zr
「よしっ、攻撃命令が出たぞ!みんな準備を急げ急げ!マッハで準備して攻で殺すぞ!」
「もちろん!今度こそ青い鳥を撃ち落とすぞ!まったく、仲間だと思ってたのに裏切るなんて…酷い奴だ!」
「そうだな。アリスさんに散々お世話になってたくせに孫悟空に何か言われたくらいでなびくなんて…許せねぇ!」
「青い鳥が裏切ろうとしてるって見抜いてくれたチェシャ猫には感謝しないとな!さぁ準備急げ急げ!俺達の団結を見せてやれ!裏切り者を許すなー!」
青い鳥「うぐぐ……」ヨロヨロ
孫悟空「耳を貸すな、好きに言わせとけ!それより避ける事を考えろ!とっとと逃げちまうかもっと高度上げるとか出来ねぇのか!?」
青い鳥「悪いけど無理だよ…最初の投石で僕の両翼はボロボロでね。飛び去るのも飛び上がるのも難しい…今、この高度を保っているのだって結構無理してるんだ」ゼェゼェ
孫悟空「となると、この場で石の雨を迎え撃つか投石部隊そのものを叩くか…ってところか。玉龍!そっから投石部隊叩けねぇか!?」
玉龍「もうとっくにやろうとしてるッスよ!でもこのメイドが案外粘るんスよぉ!ぐぬぬ…玉龍ちゃんの邪魔をするなッス!」シュバッ
メリーアン「……行かせない。投石部隊が連中を仕留めれば、私達の勝利は決定的。その為にも、あなたは私が食い止める」ギギッ
孫悟空「チィ…玉龍には頼れねぇか。だったら連中に如意棒ブチ込んで…いや駄目だリスクがデカ過ぎる。となるとどうにかして投石を全部はじき返すか?いや、現実的じゃねぇ……考えろ考えろ、何か打開策があるはずだ」ブツブツ
ラプンツェル「ねぇねぇ悟空ー、何をそんなに悩んでるのー?晩ごはんのメニューで悩んでるなら、私がアドバイスしてあげよっか?」ヘラヘラ
孫悟空「いらねぇよ!今は晩飯の事なんざどうだっていいんだよ!この危機をどう切り抜けるか考えてるに決まってんだろ!」
ラプンツェル「そっかー、ごめんごめんー。私なんだかお腹すいちゃっててー、だからついついご飯の事考えちゃってた。ねーっ、ロック鳥ー?」テヘペロ
ロック鳥「ルォォー」バッサバッサ
孫悟空「ったくよぉ、ラプ公……どうしてお前はそう緊張感ってもんが――」
孫悟空「!?」ニドミッ
830: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/04(火)04:23:12 ID:3Zr
孫悟空「ラプ公!?どうしてテメェがこんな所にいるんだよ!?」
ラプンツェル「どうしてって…私もみんなと同じ!アリスをやっつける為にここに来たんだよ!」フンスッ
ラプンツェル「でね、大きなお城が見えたからとりあえずロック鳥の背中に乗って飛んできたらー、なんか悟空が難しい顔してるの見えたから話しかけてみたの!そーだよねーっ?ロック鳥ー?」ナデナデ
ロック鳥「ロォック!」バッサバッサ
孫悟空「そんな事聞いてんじゃねぇんだよ!テメェ今の今までどこで何をしてやがったんだ!?キモオタ達はお前の事ずいぶん心配してたんだぞ!何があったか知らねぇがせめて一報入れるとか――」
青い鳥「孫悟空、今は説教している場合じゃあない。奴ら、ようやく準備が完了したみたいだ。来るぞ……無数の石の雨が!」
孫悟空「チィッ!そうだったぜ……説教は後だラプ公!こうなりゃお前にも手ぇ貸してもらうぜ!」
ヒュヒュヒュヒュヒュッ!!
ラプンツェル「わーっ!見て見て悟空!下にいる動物たちが一斉に石を投げてきたよ!私あんなの初めて見るよー!」ワクワク
孫悟空「ワクワクしてんじゃねぇよ!いいか?この青い鳥はもうロクに飛べねぇんだ、当然あの攻撃を避けるなんてできねぇし見捨てるなんて事もできねぇ!」
孫悟空「あの数の投石だ、少し厳しいかもしれねぇが…俺とお前でなんとか全て防ぐしかねぇ!できるか?ラプ公!?」
ラプンツェル「んー…?ねぇねぇ悟空、よーするにあの石ころ全部なんとかしたらいいんだよね?」
孫悟空「あぁ、だからそう言って――」
ラプンツェル「じゃ二人もいらないね!あれくらいなら私だけでも簡単にできるよー!悟空、なんかちょっと怪我とかしてるし休んでても良いよっ!」フンスッ
831: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/04(火)04:26:58 ID:3Zr
孫悟空「あぁん!?テメェこりゃあ遊びじゃねぇんだぞ!?あの数の投石を一人でなんとかできるわけが――」
ラプンツェル「ふっふっふー……ところがどっこい私にならできるんだよー!悟空はそこで見てるといいよー!」バッ
シュルシュルシュルルッ
ラプンツェル「いくよー!私の魔法の髪の毛!急いで編もうっ、みぎひだりみぎひだりー!」アミアミアミアミ
孫悟空「長い長い髪の毛を交互に編み込んで……なるほど、そういうことか!」
ラプンツェル「ヘヘーン!ラプンツェル特製『髪の毛の網』だよー!これを使えば簡単に……石ころ全部キャーッチできるよねっ!」バッサー
ポスポスポスッ
青い鳥「おぉ…!投石が全部髪の毛の網に絡め取られていく…!」
孫悟空「たまげたぜ…!本当に一人でなんとかしちまいやがった…!」
ラプンツェル「じーびーきーあーみっ、とー!大漁大漁ー!どうどう?私の新しい技すんごいでしょ、悟空びっくりしたでしょー?褒めても良いんだよ〜?」ドヤァァァァァ
孫悟空「褒めてやりてぇとこだがまだ戦いの最中だろうが!油断すんじゃねぇ!」
ラプンツェル「ちぇーっ…まぁいっか。さってとー…この大量の石ころどうしよっかなぁー……ずっと持ってても重くてロック鳥が可哀想だし、捨てちゃおっと」バッ
孫悟空「お、おい待て待て!いくら相手は敵だっていってもだな、こんな高さから石なんざ落としたら――」
ラプンツェル「えっ?もう捨てちゃったよ?」キョトーン
ドサドサドサー
832: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/04(火)04:28:55 ID:3Zr
ドスドスドスドスドス
「う、うわぁぁぁー!!殺される…石の雨に殺される…!これが因果応報って奴か!?逃げろ!逃げろぉぉー!」
「に、逃げろったってこんなもん避けようが……ぐえっ」ドサッ
「お、おい!大丈夫か!?……おぶっ」ドサッ
「さ、最悪だ…!地獄絵図じゃないかこんなもん……げぶっ」ドサッ
青い鳥「うわぁ…ひどいこれ…」
孫悟空「おーい!玉龍!お前大丈夫か!?まだ生きてるかー!?」
玉龍「生きてるッスけど…ふざけんなッスー!!あやうく死ぬところッスよ!?もっと良く考えて行動しろってそこの金髪ロングに言って欲しいッス!」プンスカ
孫悟空「わ、わりぃ…俺も油断してた……」
ラプンツェル「あははっ、戦いの最中に油断しちゃ駄目だよ悟空ー」ケラケラ
孫悟空「こいつ……」イラァ
ラプンツェル「でもでも、何はともあれ石ころ攻撃は全部なんとかできたし、石投げてくる動物も退治出来たからこれでよかったよね?バッチリ大成功ー!ロック鳥もがんばってくれてありがとねー」ナデナデ
ロック鳥「ルォォォー」テレテレ
孫悟空「戦果的には上出来なんだが…なんか喜べねェ…」
833: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/04(火)04:31:35 ID:3Zr
ギャーギャー ワーワー
チェシャ猫「ラプンツェル…。やはりあの魔法の髪の毛は厄介だ。それに馬鹿な奴には常識が通用しない、その点も脅威といえよう……」
チェシャ猫「豚共と合流し損ねたという情報は得ていたが、やはり来たか…。奴の髪の毛と馬鹿さ加減は警戒する必要がある、一応アリスに報告しておくか…」スゥゥ
「待ってくれチェシャ猫!あの馬鹿女のせいで投石部隊は壊滅状態だ!少しでもいい、増援をまわしちゃもらえねぇか!?」
チェシャ猫「難しい相談だ、これ以上ここの防衛に人員を割けば城内の守りが手薄になる」
「し、しかし…」
チェシャ猫「案ずる事など無いだろう。確かに投石部隊はもうまともに機能しないだろうが、数の理はまだこちらにある。やりようによってはいくらでも戦える」
チェシャ猫「それに…こちらに応援を向かわせれば必然的にアリスの負担が大きくなる。それは諸君らの望まぬ事だろう?」
「確かに自分達のミスをアリスさんに押しつける形になるのは避けたい…」
チェシャ猫「ならばこの場は諸君らで食い止めよ。アリスも諸君らの活躍を期待している事だろう、頼りにしているぞ」
「アリスさんが俺達に期待を…!わかりました!決死の覚悟でこの場は死守します、アリスさんの願いの為にも!」
チェシャ猫「頼もしい返事だ、アリスも喜ぶだろう。では私は持ち場へ戻る、後は諸君らに任せるとしよう」スゥッ…
チェシャ猫(返事だけは一人前な連中だ。まぁこんな連中でも利用価値がある以上は持ちあげてやるさ、利用価値があるうちだけはな)
チェシャ猫(やれやれ、まったくアリスは何故こんな雑魚共まで大切にするのやら…理解に苦しむ。雑兵は使い捨てが効く事が一番の利点だろうに…)
チェシャ猫(まぁいい、忠誠心の強い連中は便利だ。槍にでも盾にでもなる、生かして置いて損は無い)
834: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/04(火)04:32:46 ID:3Zr
孫悟空「まぁ、なんだ…多少納得いかねぇ部分はあるがお前のおかげで窮地を脱せたぜ、ありがとうなラプ公」
ラプンツェル「どういたしまして!」エッヘン
孫悟空「それでだな、ラプ公。もう一つ頼まれごとを引きうけちゃくれねぇか?」
ラプンツェル「んー?もちろん良いけど、なにすればいーの?」
孫悟空「こいつを…青い鳥をどこか安全な場所へ運んでやっちゃくれねぇか?ロック鳥ならこいつを背に乗せてもなんとか飛べるだろ?」
ラプンツェル「んっと、ちょっと待ってね?どうかなロック鳥、大丈夫そう?……うん、わかった!ギリイケるって言ってる!」テテーン
孫悟空「そうか!じゃあ悪ぃがこいつの事頼むな。俺はそろそろ下に降りて玉龍の助太刀してやらねぇといけねぇし」
ラプンツェル「わかった!おーぶねに乗ったつもりでラプンツェルさんに任せなさい!」フンスッ
孫悟空「さっきの有様見てるとイマイチまかせっきりにできねぇんだが……まぁ、頼んだぜ」
青い鳥「……待ってくれ、孫悟空」
孫悟空「あぁ?どうした?」
青い鳥「…あの様子じゃあ僕は遅かれ早かれチェシャ猫に始末されていただろう。だから助けてくれた事、感謝してる」
孫悟空「ヘヘッ、良いって事よ。礼を言ってもらう為に助けた訳じゃねぇし、お前が攻撃されちまった一因は俺にあるしな」
青い鳥「それで…なんだ、なんていうのかな。さっき、君が言っていた話。あれは信じても構わないのか…?この戦いが全て終わったら――」
孫悟空「天竺への旅に同行しねぇかって話か?おう、もちろん信じてくれて構わねぇぜ!あたりまえじゃねぇか」ニッ
835: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/04(火)04:34:52 ID:3Zr
青い鳥「そうか、そう言ってもらえると…嬉しいよ」
孫悟空「その代わりウチの連中はやかましいぜ?玉龍はあんなだし八戒は五分に一度飯の催促するんだ。悟浄は影薄いしお師匠は頭が薄いってな、なんつっても坊主だからよぉ」ハハハ
孫悟空「でもよぉ、あそこならきっとお前も変われるぜ。少なくともアリスの所にいるよりはお前自身が心の底で望んでる姿に近づけるはずだ」
青い鳥「そうか、そうだといいね。そしていつか、いつになるかわからないけれどチルチルとミチルと……もう一度話をしないとね」
孫悟空「まっ、それもこれもアリスをとっちめなきゃあ話にならねぇ。つぅわけだ、俺はそろそろ行くぜ?じゃあラプ公、あとは任せるぜ!んじゃあお前ら、また後でな!」
ラプンツェル「うんうん、わかったよー!じゃあ行こっか青い鳥っ!ロック鳥の背中に乗って乗ってー」
・・・
孫悟空「さぁて……少しばかり青い鳥と話し込みすぎちまったぜ。今までサボっちまった分、今から取り変えさねぇとなぁ」シュタッ
「孫悟空の奴が降りてきたぞ!警戒しろ!大勢で取り囲んで逃がすな!」
「おう!こっちも被害はあったが分身もいくらか始末できたからな、そのうえ孫悟空は消耗してる!さっさと倒しちまおうぜ!」
「これ以上好き勝手はさせられねぇ!一気に押し潰すぞ!」
孫悟空「テメェ等、なぁんか勘違いしてやがるなぁ…?俺達が苦戦してたのはあの投石部隊と馬鹿デカイ青い鳥の相手をしなきゃならなかったからだぜ?つまりよぉ……」
孫悟空「テメェ等だけに集中できるってぇんなら、何十人束になって掛ってこようが俺は微塵も負ける気がしねぇ!」
孫悟空「さぁて…最後になっちまうだろうがその目にしかと焼き付けな、【西遊記】の孫悟空の武勇って奴をよぉ!んじゃあ行くぜぇ!伸びやがれッ、如意棒オォォ!!」シュバッ
836: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/04(火)04:40:54 ID:3Zr
ハートの女王の城前 上空 ロック鳥の背中
ラプンツェル「ねぇねぇ、さっきから気になってたんだけど…すっごく顔青いよ?大丈夫?もしかしておなかいたい?」
青い鳥「……青いのは元々だ。身体はあちこち痛いけど、翼を動かさなくていいから少しは楽だよ」
ラプンツェル「そっかー、でもどうしよっかー?悟空は青い鳥をどっか安全な所に連れてったげてって言ってたけど、どこが安全かな?ロック鳥、わかるー?」
ロック鳥「ルォー…?」
青い鳥「ラプンツェル、君はハートの女王の城を目指しているんだよね?」
ラプンツェル「そうだよ!みんなと合流し損ねちゃってさ、遅刻しちゃったけど…多分みんなここにいるよね!」
ラプンツェル「それにね、前に友達と約束したの。その約束を守る時が今だから…私は絶対にお城に行かなきゃいけないの、そんでもってシンデレラを取り戻すの!」
青い鳥「だったら…僕も連れて行ってくれ。僕なら城の中も知ってるから道案内できるし、シンデレラが居るはずの場所も見当がつく」
ラプンツェル「道案内してくれるって事だ!やったね!あっ…でも、悟空との約束もあるしなぁ…」
青い鳥「いいよ、僕がそうしてくれって言ったらいい」
ラプンツェル「えー、ホントにいいの?結構ボロボロだけど、辛くない?」
青い鳥「平気だよ。それに今頃孫悟空はあの軍勢相手に戦ってるんだ、僕だけ安全な場所で時間が過ぎるのなんて待っていられないよ」
837: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/04(火)04:41:33 ID:3Zr
ラプンツェル「そっか、わかった!それじゃあお手伝いしてもらうね!」
青い鳥「といっても、僕にできる事といえば道案内だけだけど」
ラプンツェル「それだけでも十分だよー!それで、えっと…シンデレラが良そうな場所知ってるって言ってたよね?それって、どこなのかなー?」
青い鳥「今頃、シンデレラは桃太郎と戦っているはずだ。そしてその戦いの舞台はきっと、城にあるダンスホール」
ラプンツェル「あっ、それってぶとーかいとかする広いお部屋?」
青い鳥「そうだ、シンデレラが度という武器を生かすにはあそこが一番適しているから」
ラプンツェル「なるほどー!んじゃあ私達はそのダンスホールに行けばいいんだね!ちなみにそれって、ここから見える?」
青い鳥「あぁ、丁度見える。ほら、あそこだ。広いテラスがある場所があるだろう?あそこがダンスホールだ」
ラプンツェル「りょーかい!それじゃあ早あのお部屋に急ごうっ!早く桃太郎手伝ってあげなきゃだしシンデレラも助けてあげなきゃだよー!ねっ、ロック鳥?」
青い鳥「そうはいうけど、結構入り組んだ先にあるんだよあの部屋は。とりあえず、城門前に降りてくれるかい?そこから詳しい道順を説明するから」
ラプンツェル「? どうして?」キョトーン
青い鳥「えっ…どうしてって、何が?」
ラプンツェル「だってここからダンスホールは見えてるんだよ?だったらこっから行くのが一番早いでしょ?」
青い鳥「はっ…?あんた何言って――」
ラプンツェル「そんじゃあお願いね、ロック鳥!よーしっ、お友達の所までレッツゴー!」
ロック鳥「ルォォォッ!」バッ ビュバー
青い鳥「ちょ、ちょっと待って!あのテラスにおりようって事だよね?それにしちゃ度出過ぎじゃないか!?まさか突っ込むつもりじゃないよな!?ちょ、ちょっと待ってって!待て!待てっつってるだろ!」
ビュバーッ
・・・
848: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/10(月)02:24:12 ID:GV5
ハートの女王の城 ダンスホール
アシェンプテル「ここはいつ来ても静かだな」カツンカツン
アシェンプテル(高い天井。豪奢な照明。この城内でも有数の広さを誇る女王自慢のダンスホール。非常に立派な造りだが、アリスが言うには本来の用途で使用される事は無いらしい)
アシェンプテル(なんでも女王は踊る事もそれを見る事もあまり好まないらしい。まぁ、あの性格ならばそれも納得だ。私が口出しすることではないが、少々もったいない気もする)
アシェンプテル「……」カツンカツン
アシェンプテル(ダンスホールは嫌いではない。私は踊る事もそれを見る事も好きだ、大勢の人々が集う賑やかなダンスホールでは自然と心まで踊りだす)
アシェンプテル(だがこうして静かなホールも嫌いではない、なんというか心が落ち着くのだ。特に常に賑やかなこの世界では貴重な独りになれる静かな場所。私のお気に入りの場所だ)
アシェンプテル「……いけないな」
アシェンプテル(ふと、愛した男の顔が頭をよぎる。我ながら情けない、あれはもう過去の男だ。今の私には必要の無い男だ)
アシェンプテル「この場所は好きだ。好きだが…どうしても余計な事を思い出す」
アシェンプテル(『未練など無い』私は自信をもってそう言いきれる。にもかかわらずふいに過去の事を思い出してしまう、それは主に愛した男であったり……かつての友人の事)
アシェンプテル「……まったく、不甲斐ない」フンッ
アシェンプテル(腹が立つ。私は…『アシェンプテル』は過去を捨てて歩んでいくことを決めた。それなのに『シンデレラ』は今も私の心にしがみついているのだ、往生際の悪い事に)
アシェンプテル「だがそれも時間の問題だ。私はこの戦いで過去を完全に断ち切る。『シンデレラ』もあの連中も、全てまとめて蹴り落とす…そう決めたのだからな」
849: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/10(月)02:31:28 ID:GV5
ハートの女王の城 廊下
ライオン「も、もうすぐだよ桃太郎さん!この先が女王様のダンスホールだよ!」ダッダッダッ
桃太郎「いよいよか…。キモオタの予想だとシンデレラはそこにいるんだよな…」
ライオン「う、うん!それで、あの、もうそのまま進んじゃっても大丈夫かな?た、戦いの準備はできてる…?」ダッダッダッ
桃太郎「……」スッ
桃太郎(拙者はこれまで幾度となく戦って来た。盗賊やチンピラの類、猛獣…それと悪鬼。実力が追い付いていない者、拙者よりはるかに強い相手、それこそ色々な相手と刃を交えてきた)
桃太郎(でも、仲間と戦った事は一度も無い。正直な気持ちを言うならシンデレラと戦うのは怖い、恐ろしい。…それは大悪鬼の様な今までの強敵相手に感じた恐怖とは少し違うもの)
ライオン「も、桃太郎さん?も、もしも準備できてないなら一旦ここで止まって…支度を整えた方が――」
桃太郎「いや、大丈夫。ちょっと他の事考えてた、ごめん。拙者は身も心も準備万端だから、そのまま進んでくれる?」
ライオン「わ、わかった!桃太郎さんがそう言うなら…!」ダッダッダッ
桃太郎(大丈夫、恐ろしい事なんか何もない。拙者はただ友達に会いに行くだけだ、心を蝕まれた友達を取り戻しに行くだけ)
桃太郎(大丈夫、大丈夫。舌切りも金太郎も食わず女房も…拙者を送り出してくれた。それに拙者がシンデレラの相手をすると言った時、キモオタも他の皆も誰一人反対しなかった)
桃太郎「皆、拙者の事を信じてくれた。拙者なら、シンデレラを…友を取り戻せると信じてくれた。それなら出来ない道理が無い」
桃太郎(それに拙者にはシンデレラを悪魔の鏡の破片から解放する策がある。拙者の治癒能力じゃ魔力は消せない、だったら魔法具に対抗するには――魔法具だ)
桃太郎(これが…この刃があれば、拙者はシンデレラに巣くう悪しき魔力と憎しみの心を斬り伏せる事が出来る)
850: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/10(月)02:36:56 ID:GV5
ハートの女王の城 ダンスホール前
ライオン「つ、着いたよ桃太郎さん…。こ、ここが目的の場所だよ」スッ
桃太郎「うん、ありがとうなライオン。お前のおかげでここまで迷うことなく来れた、拙者一人じゃこうはいかなかっただろうし…感謝してるぞ」モフモフ
ライオン「え、えへへ…。桃太郎さんの役に立てたなら、僕は嬉しいよぉ〜。で、でも本当にシンデレラさんはここにいるのかな…?」
桃太郎「多分、この扉の向こうにシンデレラは居る。人の気配を感じるからな、それも一人だけ。それで……ライオンは、どうする?」
ライオン「えっ?ど、どうするって…?」
桃太郎「シンデレラは今、悪魔の鏡の破片に精神を侵されてる。この扉を開けば戦いは避けられない…もしもお前が戦いたく無かったり、ドロシーが心配でそっち行きたいっていうなら――」
ライオン「だ、大丈夫…!ドロシーちゃんにはキモオタさんがついてくれてるし…ここまで来たら僕も桃太郎さんと一緒に…た、戦うよ!」
桃太郎「そうか!一緒に戦ってくれるっていうなら心強い!いやー…実は一人で戦う事になったらどうしようかなってちょっと思ってた」ハハハ
ライオン「あはは…。あっ、でも僕、デカイ図体してるくせに見かけほど強くないしシンデレラさんより遅いしで役に立てないかもだし、むしろ足引っ張るかも…」
桃太郎「ちょ、ちょっとお前そう言う後ろ向きな事言うのやめろって!拙者までなんかつられちゃうだろ!」
ライオン「ご、ごめん…」
桃太郎「大丈夫だって、拙者もお前も数日前よりずっと戦えるようになってる。気持ちが後ろ向いちゃってたらさ、うまくいくもんもいまくいかないって」
桃太郎「戦う前から後ろ向いてちゃ斬るべきものも斬れないし斬らなくていいものまで斬っちゃうしさ。だからさ、こう…しっかり前向いて行こう!そうすりゃ結果もついてくるって!」
851: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/10(月)02:41:43 ID:GV5
ライオン「うん、うん…そうだよね!前向きに、ポジティブにいかなきゃだよね!」
桃太郎「そうそう!拙者達は見事シンデレラを救いだして、そんでアリスもなんとかして消えた世界も取り戻すんだ。そしたら一緒に舌切りのとこに報告に行こうな」
ライオン「うん、そうしよう。僕も舌切りさん達にいろいろとお礼もしたいから…」
桃太郎「その為にもまずはシンデレラを救わなきゃな。それじゃあ扉、開けるぞ…?」スッ
ライオン「う、うん…!」
ギィッ…バターン
アシェンプテル「……あぁ、ようやくの到着か。遅かったじゃあないか桃太郎?」
桃太郎「……随分と待たせてしまったみたいだな、シンデレラ」スッ
アシェンプテル「ああ、すっかり待ちくたびれてしまったよ。あまりに遅いものだから怖気づいて逃げだしたのかと思っていたところだ」フフッ
桃太郎「あいにく、友を見捨てて逃げだす程…拙者は落ちぶれてはいない」
アシェンプテル「まだそんな事を言っているのかお前は…。まぁいい、だが友を大切にするのならばそのライオンを連れてきたのは間違いだったな」
桃太郎「間違い?一体、何を言っ――」
852: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/10(月)02:58:25 ID:GV5
桃太郎「シンデレラが消えた…!攻撃が来るぞライオン…!十分に用心してくれ!」スチャッ
ライオン「わ、わかった…!」ジリジリ…
桃太郎(さぁ、どう出る…?シンデレラの狙いは当然拙者だ、だが先程の口ぶりから察するにライオンを攻撃する可能性も考えられる…!)
ヒュバッ ゴシュッ
ライオン「ぐうっ…!」ヨロッ
桃太郎「ライオン…!シンデレラ!お前の狙いは拙者だろう!?無関係のライオンを攻撃する必要がどこにある!」ヒュバ
ガキィィンッ
桃太郎(やはり厄介なのはガラスの靴…!硝子なんて脆いもんのハズなのに、宿った魔力のなせる技か…!)
アシェンプテル「無関係?あまり笑わせないでくれ桃太郎。戦う意思を持つ者が対峙した時点でここは既に戦場だ」スタッ
アシェンプテル「戦場に立っている以上、私の目の前にいる以上、そこにどんな理由があろうとも私の敵だ。殺意を向けるには十分な理由だ」
アシェンプテル「それとも『友達』の『シンデレラ』ならライオンを攻撃してこないとでも?それはあまりに甘い考えだな?」
桃太郎「クッ…!すまないライオン!今、傷を癒すからな!」ダッ
ガキィンッ
桃太郎「ぐっ…!邪魔をするなシンデレラ…!」ギギギ
アシェンプテル「だから笑わせるなと言っているだろう桃太郎?邪魔をするに決まっているじゃあないか。お前の治癒能力は厄介だからな」
853: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/10(月)03:03:12 ID:GV5
アシェンプテル「お前は手をかざすだけでどんな傷でも癒せる、例え肉裂け骨折れる程の大怪我だとしても。そしてその能力を行使する上で代償を必要としない」
ヒュバッ ゴシュッ
ライオン「ぐあっ…!」ヨロッ
桃太郎「……っ!」
桃太郎(すぎる…!ライオンへの攻撃、拙者の妨害、それを一度にこなせる身軽さ…ガラスの靴、知っちゃいたけどなんて恐ろしい魔法具だ…)
アシェンプテル「お前のそれは治癒を行う能力としては非常に優れたものだ。敵に回しては非常に厄介、ただ攻略する方法が無いわけじゃない。お前の能力のも弱点はある」スタッ
ライオン「ぜぇぜぇ……だから、僕を…殺そうっていう考え……?」ヨロヨロ
アシェンプテル「そうだ、桃太郎の能力では死者を蘇生する事は出来ない。それならば殺してしまえばいい、ただそれだけの事だ。そう、こんな風に――」スッ
桃太郎「んな事おぉ…させるかぁぁぁ!!ライオンから離れろシンデレラァァ!!」シャキン
アシェンプテル「……っ!」ヒュッ
ライオン(な、なんで…?いままで桃太郎さんの攻撃を受けてたシンデレラさんが攻撃を避けた…?)
桃太郎「よし…!ごめんライオン!拙者が甘かった…すぐに治すからな!どっか特に痛いところあるか!?」パァァァァ
ライオン「そ、それは大丈夫だけど…。な、なんでシンデレラさんは桃太郎さんの攻撃を受けずにかわしたのかな…?」
桃太郎「きっと峰打ちじゃあ、なかったからだ。今までのシンデレラへの攻撃は全部、刀の刃がついて無い方でやってたけど。今の一撃は違う、刃のついている方で斬りつけた」
ライオン「そ、そうだったの…?」
アシェンプテル「あぁ、そいつは根性無しだからな。そんなヘタレに友人だと思っている相手を真剣で斬りつけるなんて出来るわけがないだろう」
アシェンプテル「思わずかわしてしまったが…真剣で攻撃をしてきたという事は、殺意を向けてきたという事は、お前は認めたという事だな桃太郎?」
アシェンプテル「私と、お前達の間にもう友情などという淡い絆は存在していないという事を」フンッ
桃太郎「……」
858: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/11(火)02:22:53 ID:1RM
アシェンプテル「これで理解しただろう?今、私とお前の間にあるのは殺意だけだ。『救う』だの『取り戻す』だのいくら口にしたところで、どちらかが死ぬまでこの戦いは終わらない」
ライオン「桃太郎さん…」
桃太郎「大丈夫だ、確かに下手を打っちゃったけども…ここから挽回すればいいんだ。ここからは常に相手の攻撃を警戒しよう、ライオン」チャキッ
ライオン「うん、わかった…。このままじゃあ僕、足引っ張ってるだけだ…。次こそ名誉挽回できるようにがんばらなきゃ…!」ガルルゥ…
アシェンプテル「…まだ心は折れていないという訳か。お前の事だからすぐに尻尾を巻いて逃げると思ったが…少し驚いたよ、桃太郎」
アシェンプテル(……実際のところは『少し』なんてものじゃない、私はこの男の行動に相当驚いている)
アシェンプテル(私が知っている桃太郎は剣術の腕は一級品だがそれを霞ませてしまう程に臆病で精神的に脆弱な男。そのくせ情に厚くて仲間を大切にする…甘い男だ)
アシェンプテル(だからこそ私はライオンを標的にした。先程自称していたように桃太郎は仲間を見捨てない見捨てられない、ライオンを手負いにするということは桃太郎の退路を遮断することと同義だ)
アシェンプテル(逃げるに逃げられない状況。自分が協力を要請したせいで手負いになった仲間。今もなお友だと思っている相手からの殺意。それらは桃太郎の脆弱な心をいとも容易く折る……と思っていた)
アシェンプテル(だがそれは違った。心が折れてしまうどころか、奴は私に対して刃を振るった。それは以前の桃太郎では考えられない事だ)
アシェンプテル(少なくとも私が知っている桃太郎ならば、容易く心が折れている。そして私に刃を向ける事など、決してできなかっただろう)
アシェンプテル(だというのに……少し会わなかった間に、随分と変わったようだ。特別な修業でも積んだか?あるいは何かしらの心境の変化か……)
アシェンプテル(どちらにしろ、目の前の侍は……私が思っているよりもずっと、一筋縄ではいかないのかもしれない)
859: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/11(火)02:24:54 ID:1RM
アシェンプテル(……だと、してもだ。私の目的はただ一つ、相手が少々変わっていようと成すべき事は変わらない)
アシェンプテル(目の前で、まっすぐな瞳を私に向けてくる侍を始末すること。ただ、それだけだ)
桃太郎「……」ジッ…
アシェンプテル「どうした?随分と慎重になっているようだが…私を斬るのならば今が好機だぞ?一度駆けだせばもう、お前に私を捕える事は出来ないのだから」スッ
アシェンプテル「それとも後悔でもしているのか?『シンデレラ』を救うだ取り戻すだの言っておきながら、結局お前は私に刃を向けたのだからな」
アシェンプテル「お前は自ら、自分自身の目的を否定したのだ。『シンデレラ』はもういない、今の私は既に仲間ではなく…殺意を向けるに値する敵であるという事を、お前は認めたんだ」
桃太郎「いや、拙者はそんなつもりは無いんだけど…」
アシェンプテル「言い訳とは見苦しい真似を…。ならばお前は何故私に刃を向けた?傷つけ殺すため、それ以外の理由があるのか?」
桃太郎「なんていうか…こんな言い方したらお前は怒るだろうけどさ。拙者がお前に刃を向けた理由、それはお前を信じていたからなんだよ」
アシェンプテル「……流石にその戯言は笑えないな。敵を、信じるだと?」
桃太郎「さっき城の前で、拙者はお前の蹴りを受け止めた。その時、お前の実力は油断ならないものだって確信したんだ。でも、流石にそれだけじゃ本当の実力までは測りきれなかった」
桃太郎「だから峰打ちで戦ってたんだ。お前の本当の実力がわからないうちから真剣で斬りつけちゃ、怪我させるかも知れなかったからな」
アシェンプテル「ということは、まさかお前は…手加減していたのか?」キッ
桃太郎「いやいやいや!そんなもん出来る程余裕ないから!手加減って言うんじゃなくて、戦ううちにお前がどの程度の実力なのか理解できたっていうほうが正しいかもな」
桃太郎「だから拙者はあの時、真剣を振るってもお前ならきっと避けるって思えた。いや、お前なら絶対に避けるって確信が持てた、信じれた。だから拙者はお前に対して真剣を向けたんだ」
860: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/11(火)02:27:49 ID:1RM
アシェンプテル「……私の力量も思考も、お前にはお見通しだったという訳か」
ライオン「す、少し戦っただけで相手の実力を測って次にとる行動まで予想しちゃうなんて…!やっぱり桃太郎さんはすごいや…!」
桃太郎「いやいや、凄くないって…本当ならお前がライオンを標的にする事の方を気づくべきだし。まだまだ未熟だって、拙者は」
アシェンプテル「そう謙遜するなよ桃太郎。敵の力量を見抜き行動を予測する…まるで本物の侍のようじゃないか」
桃太郎(えぇ…拙者も一応侍だけど…)
アシェンプテル「だが、それが出来たからといって勝てるわけじゃあない。そうだろう?」
桃太郎「あぁ。拙者だってこれでお前に勝ったつもりでいるわけじゃない、ただどうしても知っておいて欲しかったんだよ」
アシェンプテル「……」
桃太郎「拙者は、お前を…シンデレラを取り戻すのを諦めたから刃を向けたんじゃあない。例え友に刃を向けてでも、拙者はお前を取り戻す」
桃太郎「それにお前は知らないかもしれないけど、侍っていうのはな……目に見えないものだって斬っちまうんだよ」
桃太郎「心に潜む悪しき感情とか、恨み辛みとかさ…。心を縛って精神を蝕む――魔法の力とか、さ」
アシェンプテル「聞くまでも無く、お前はシンデレラの奪還を諦めていないんだな?」
桃太郎「諦めるくらいだったらここまで来ないし、自分から『必ず取り返すから行かせてくれ』なんて大口叩かないよ」
桃太郎「拙者にはお前をキモオタ達の所に連れて帰る、それ以外の未来は無いんだよ」
861: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/11(火)02:30:10 ID:1RM
アシェンプテル「それがお前の決意であり覚悟か、桃太郎。なるほど、良く解った――だが」
ヒュッ
アシェンプテルの声「私にだって決意も覚悟もある。そして私は、私自身の尊厳と意思を守る為にも……必ずそれを成す」
ライオン「し、シンデレラさんの姿が…!またどこから来るかわからない攻撃…!」
桃太郎「用心するぞライオン!あれだ、目で見ようとしたって駄目だ!空気の流れっていうか…肌で感じれば案外わかるぞ!」
ライオン「そ、そんな達人みたいな事言われても…。急には出来ないよぉ…」
桃太郎「そ、そうか…!じゃあとりあえず拙者の側に来てくれ!そうすりゃシンデレラの攻撃は絶対こっちに来るだろ!」
ライオン「い、いいけど…それじゃあ防御しきれなかったら二人まとめて倒されちゃうんじゃ…」
桃太郎「それは問題ない!こっちに攻撃が来るって解ってたら――」
ガキィィンッ
桃太郎「なんとか防ぎきれる…!」
アシェンプテル「……見事、と褒めてやろう。だが、身を守ってばかりじゃあ埒が明かないぞ」
862: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/11(火)02:34:38 ID:1RM
アシェンプテル「私もお前と戦ううちに一つ気がついた事がある。桃太郎、お前は……何かを狙っているな?」
桃太郎「ばれてるのか…。気づかれないつもりだったんだけどな…」
アシェンプテル「気づくさ、時折お前の意識が私では無い方に向いているからな。具体的に言うのならば――」
アシェンプテル「お前が背中に背負っている、布の撒かれた何か……何かしらの武器の類だろう、切り札といったところか?」
桃太郎「見抜かれてるなら隠す必要もないか…。そうだ、お前の予想通りこれは武器だよ、お前を正気に戻すための魔法具だ」
ライオン(……桃太郎さん、あの魔法具を本当に使うつもりなのかな……?)
ライオン(あれを使えば確かにシンデレラさんを正気に戻せるかもしれない。でも、一歩間違えればその命を奪ってしまうかも知れないのに……)
アシェンプテル「…隠すつもりは無し、か。余程自信があるようだな…?」
桃太郎「自信なんか、拙者はいつだって無いよ。ただ自信があろうとなかろうと…やるべき事はやり遂げる!いざ……!」チャキッ
アシェンプテル「いいさ、お前がそのつもりならば私も全力で相手をしてやる。このさに、ついてこられるとは思えないがな。さぁ……!」カツン
ヒュバッ
桃太郎「参る…!」ザッ
アシェンプテルの声「行かせてもらう…!」ビュバッ
ヒュゥゥゥゥ…ガッシャーン!!!
桃ンプテル「「!?」」バッ
ロック鳥「ルオッルォォォォォッ!!!」ガッシャーン
ラプンツェル「あははははははっ!ガシャーンだって!ガシャーンだって!あはははは!!」アハハ
青い鳥「あああぁぁぁーー!!本気で突っ込むとか馬鹿か…!馬鹿だお前はラプンツェアァァァ!!!」ウワアァァァ
873: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/14(金)02:24:55 ID:UEH
スタッ
ラプンツェル「よーしっ、ここが目的地のダンスホールだねっ!うんうん、無事にとーちゃくして良かったよ〜!ロック鳥が頑張ってくれたおかげだねっ、ありがとっ!」ナデナデ
ロック鳥「ルォッ!」モフモフ
青い鳥「無事に到着したって!?ガラスと瓦礫をこんなにぶちまけておいてよくそんな事が言えるな!?大体あんたは――うぅ、ダメだ…大声出したら傷に響く……」ヨロヨロ
ラプンツェル「だいじょーぶ?あっ、私おくすり持ってるから青い鳥にあげるよ!これ飲んだら大丈夫!ほらほら飲んで飲んで、すぐ治っちゃうから!」スッ
青い鳥「(痛み止めかな…?)ありがとう、助かるよ。それじゃあ早……なんだか飲み薬にしては妙にドロッとしてるけど、まぁいいか…」ゴクゴク
青い鳥「人間用の薬が効くかわからないけど少しは……ってこれ『塗り薬』って書いてあるじゃないか!?なんで飲ませたんだ!?」
ラプンツェル「あっ、ほんとだ!えへへ、なんか間違えちゃったー、ごめんね!でもこのおくすりはすんごく効くよ?こないだちょっと火傷した時もすぐ治った!」ドヤッ
青い鳥「痛み止めですらないとか…。ダメだ、怪我とは別の理由で目眩が…」フラフラ
ラプンツェル「あちゃー、だったら休んでた方が良いよ!ねぇねぇロック鳥!こっちは私だけで頑張ってみるからロック鳥はそこで青い鳥と一緒にいてあげてくれるー?」
ロック鳥「ルオォォッ!」バサッ
アシェンプテル「……」
桃太郎「おいいぃぃぃ!!ラプンツェルお前なにやってんだよぉぉぉぉ!!とりあえず無事でよかったけどさぁ!」タッタッタッ
ラプンツェル「あっ、桃太郎だ!ちょうど良かった!私お腹すいてるからきびだんごちょっと分けてー!」トテトテ
桃太郎「食ってる場合か!今まさに戦いの火ぶたが切って落とされるって雰囲気だったんだぞ!?まぁお前がブチ壊しちゃったけども!」
874: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/14(金)02:30:43 ID:UEH
ライオン「あ、あのぉ…すごい勢いでガラス突き破ってきたけど…ら、ラプンツェルさん達は怪我とかしてないのかな…?」
ラプンツェル「大丈夫!ロック鳥がいい感じに突っ込んでくれたからちょっとの怪我もしてないよ!」フンス
桃太郎「なんか色々といいたい事あるんだけども…っていうかまずなんで窓から入ってきたんだよ!」
ラプンツェル「えっ…?窓から入るのっておかしい?でも私がちっちゃい時からママは塔の出入りに窓使ってたよ?今は私もあの窓から下りたり入ったりするし…。だから普通でしょ?」
ライオン「そ、そっかぁ…ラプンツェルさんの塔には出入り口が窓しかないから、窓からの出入りが普通なんだねぇ。じゃ、じゃあ仕方ないね、桃太郎さん」
桃太郎「騙されるなライオン、全然仕方なくないから!ラプンツェルのペースに飲まれちゃ駄目だって!」
アシェンプテル「……相変わらず、お前の頭の中には花畑が広がっているようだな。ラプンツェル」フゥ…
ラプンツェル「えっと…?あれっ?シンデレラ……だよね?んー…でもなんだか雰囲気も喋り方も違うし……すんごく似てるけど別人だよね?」
桃太郎「…いいや、別人なんかじゃない。悪魔の鏡の影響を受けて性格も雰囲気も変わっちゃってるけど、こいつはまぎれもなくシンデレラ本人だ」
アシェンプテル「肉体的にはな。だがお前の友人だった『シンデレラ』はもう存在しない、目の前にいる女はお前とは縁の無い赤の他人の灰かぶり『アシェンプテル』だ」
ラプンツェル「そんな……そんなのって……私、信じられないよっ!」プルプル
桃太郎(ラプンツェル、随分と衝撃を受けてるみたいだな。無理もないか…魔法具の影響とはいえ仲良くしてた友達がここまで変わってしまったんだからな。衝撃を隠せないだろう…)
ラプンツェル「桃太郎、どうしよう…!シンデレラがなんだかすんごくエッチっぽいドレス着てる…!前はこんなの絶対着なかったのに…信じられないよっ!だってあの格好セクシー通り越してヒワイだよ!?捕まっちゃわない!?」ガビーン
桃太郎「そこはどうだっていいだろ!みんな気づいてるけどなんとなく黙ってるんだからわざわざ言うなって!」
875: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/14(金)02:38:29 ID:UEH
ラプンツェル「だって見てよあれ!すんごいスリット入ってるし、おっぱいのとこだってがばーって開いてて肩も背中もでてるし!あんなので走ったら絶対におっぱいぽr」
桃太郎「具体的に言うなよ!拙者も直視しづらいの耐えてんだぞ!」
ライオン「ふ、二人ともそんな事言ってる場合じゃないよぉ…」ワタワタ
ラプンツェル「でもさー、私が知ってるシンデレラはあんまり肌がでなくて可愛い感じの服の方が好きだったし、そっちのが似合ってたよ?」
アシェンプテル「私は自分が着たいものを着ているだけだ。あの時と違って…今はあれを着ろこれを着ろとやかましく言う王家の者はいないのでな」
ラプンツェル「でもー、魔法使いもシンデレラの旦那さんもきっと前の方が好きだって言うよー?」
アシェンプテル「だからどうした?今や連中と私の間につながりなど無い。それに他人の好みや主張に合わせて流されているとロクなことにならない」
アシェンプテル「それこそ流されるがままに舞踏会へ向かい、一切の努力をする事無く王族に成り上がり、しなくてもいい苦労をする羽目になるのだ」
ラプンツェル「苦労ー?」
アシェンプテル「能天気なお前にはわからないだろうがな、貧民の娘が一夜にして王家の仲間入りを果たしたとなれば相応の苦労がついて周る。お前達もその片鱗をあの日見たはずだが?」
ラプンツェル「えーっと、シンデレラが玉の輿に乗ったからおんなじようになろうとしてた女の人がいっぱい国にいたんだっけ?」
桃太郎「そんな事もあったな。まぁそれだけじゃなかったんだろう、目立つって事は良くも悪くもいろんなもんを引き寄せるからな…富や名声に妬みとか陰口、数え上げりゃキリがない」
桃太郎「拙者が悪鬼を征伐して帰った時もそうだった。称賛の声は大きく得たものは多かったけど……まぁ、いいもんだけじゃ無かったからな」
ラプンツェル「んー…?私にはよくわかんないなー…?」
876: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/14(金)02:47:54 ID:UEH
アシェンプテル「解る必要などないだろう。お前の頭でそれが出来るとは思えない、それに出来たところで先の短い命だ」
アシェンプテル「ラプンツェル、お前の能天気な雰囲気にあてられてしまったのか…長々と無駄な会話を続けてしまったが、それももう終わりだ」スッ
桃太郎「ラプンツェル…!用心しろ!『シンデレラ』だろうと『アシェンプテル』だろうとあのガラスの靴は姿さえ見えない程に戦場を駆ける!」
ラプンツェル「んー……」
桃太郎「ちょ、聞いてんの!?認めたくないけど今のあいつは拙者達の事を敵としてみてる油断してたらそれこそ――」
ラプンツェル「私はあんまり頭良くないからシンデレラが苦労したこととか、何か嫌なことがあったのかーとか、魔法具がどーとかよくわかんないけどさ」
ラプンツェル「悩んでる事があったら私に言ってくれたらよかったんだよー?っていうか今でもオッケーだよ!友達の相談にならどんなときだって乗ったげる!」フンス
アシェンプテル「要らない世話だな。それに言ったはずだ、私にとってお前は赤の他人。友人などではない」
ラプンツェル「またまたー!私は知ってるよー?それは魔法具に心がぎゅーってされてるからそんな事言ってるだけでしょー?」
アシェンプテル「……解らないというのならその身に刻んでやろうか。私とお前の間には、今や何もないという事を」
ラプンツェル「だったら私はその逆をやっちゃうからね!今だって私とシンデレラはおともだち!悪魔のナントカって魔法具のせいで見えにくくなってるだけで」
ラプンツェル「シンデレラと私達の間になんにもないなんて、そんな寂しい事はもう言わせないんだからねっ!」フンス
877: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/14(金)02:52:58 ID:UEH
アシェンプテル「好きに言っていればいい。もうじき解る、私の主張とお前の主張どちらが正しいのか――」スッ
ライオン「き、消えた…!標的はきっとラプンツェルさんだよ!早く逃げt」
ドゴォ!
ラプンツェル「んぐっ…!」ガッシャーン!!
桃太郎「くっ…拙者を警戒して攻をしかけてきたか。大丈夫かラプンツェル!?」
アシェンプテル「あのアホ娘は戦士ではない。桃太郎のように避ける能力も身を守る手段も持ち合わせていない、場を散々掻き乱したわりにあっけの無い奴だっ――」
スクッ
ラプンツェル「いたた…ふっふっふーん!あんなヘナチョコキックじゃあラプちゃんとシンデレラの友情は切れないんだよっ!」フンス
桃太郎「マジか…!あの衝撃じゃあ骨の一本二本折れててもおかしくない感じだったのに!となると…髪の毛か!」
ラプンツェル「そのとーり!壁にぶつかる瞬間に髪の毛をもふもふってやってクッションのかわりにしたんだよ!」ドヤァァァァ
アシェンプテル「……忘れていたよ」
ラプンツェル「?」
アシェンプテル「桃太郎がそのヘタレな本性の底に真の力を持っている事も、ラプンツェルの髪の毛が自在に操れる万能なものだという事もよく知っていたはずなのに…過去をたち切るという事に気を取られ過ぎて、忘れていた」
アシェンプテル「認めたくはないがお前達は強い。お前達との関係を完全に断ちたいのならば、私は始めから全力を尽くすべきだったんだ」スッ
桃太郎「消えた…そしてどうやら拙者達はあいつを本気にさせちゃったみたいだな。そうなったなら、こっちも相応に相手するだけだけど…!」チャキッ
アシェンプテルの声「あぁ、幸いにも私には十分な時間がある。今回は十二時の鐘が鳴るまで…なんて面倒な事は言わない」
アシェンプテルの声「私とお前達、どちらかが倒れるまで踊り明かそうじゃあないか。なぁ、かつての友…桃太郎!ラプンツェル!」ヒュバッ
878: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/14(金)02:55:58 ID:UEH
ヒュバババババ
桃太郎「ラプンツェル…お前、シンデレラの事、目で追えるか?」
ラプンツェル「もちろん見えないよ!」フンス
桃太郎「だよなぁ…知ってた…。んじゃあさっきの髪の毛で身を守るってのはやっぱ受け身な技、そのうち対策されるだろうな…。あともう一つ聞くけど、シンデレラを正気に戻す作戦っていうか考えみたいなのって――」
ラプンツェル「ないよ!でもシンデレラが悪い子になっちゃったら私が元に戻すって約束したし、頑張るよ!そのためだったらなんだってやるよ!」ドヤァ
桃太郎「だよな、拙者もあいつを正気に戻せるってならなんだってやる覚悟だ」
ラプンツェル「っていうことは…桃太郎にはシンデレラを元に戻す作戦があるって事でいいんだよね?」
桃太郎「あぁ、拙者一人じゃちょっと不安なとこもあったけどお前がいるならぐっと成功する可能性上がるとおもう、ちょっと思いきった作戦になっちゃうけども」
ラプンツェル「それじゃ桃太郎の作戦に任せる!どんなことするつもり?教えて教えて!」
桃太郎「機会さえ見極められればやること自体は単純だ。でもこの状況だゆっくり説明してる余裕はない、だから一回しか言わないから、それで理解してくれよ?」
ラプンツェル「えっ、一回で理解しなきゃダメなのかぁ……できるかな」ボソッ
桃太郎「お、おいラプンt」
ラプンツェル「大丈夫!まかせて!そういうのとくいだから!」ドヤァ
桃太郎(不安すぎる)
879: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/14(金)03:00:14 ID:UEH
ダンスホールの隅 崩壊したテラス周辺
青い鳥「……理解できないよ、僕には」
ロック鳥「ルォ?」
青い鳥「だってそうだろう?あいつらの…キモオタ達の目的は消されたおとぎ話の世界の奪還だ。その為にはアリスさん…アリスを倒すか魔法のランプを奪取するのが近道だ」
青い鳥「シンデレラは強いけれどラプンツェルの髪の毛でとりあえず拘束だけしておくとかすればいいじゃないか。それなのにあの二人はどうして今、この場であいつを正気に戻そうとするんだろう?」
青い鳥「非効率じゃないかな?シンデレラを今すぐ正気に戻したって戦いに参加できるとは思えないし、だったら手早く捕縛だけして全てが終わってから正気に戻せばいいんじゃ…」
ロック鳥「ルォォ…」
◆ロック鳥は人語を喋れません。でもそれじゃわかりにくいからここからは翻訳バージョンをお楽しみください◆
ロック鳥「汝の主張は確かに合理的だ。だが人間という種族は、時として損得を勘定に入れずに行動する。今の桃太郎とラプちゃんがまさにそれだ」
青い鳥「うーん…やっぱり効率的じゃないよ。シンデレラを正気に戻せる保証も無いのにさ、もっと大局を見なきゃいけないとおもうよ僕は」
ロック鳥「人間という種族はそう単純にできていないのだ、青い鳥よ。……時に、満身創痍とはいえ目までは霞んではおるまい?」
青い鳥「えっ?目?まぁ、一応見えるけど?」
ロック鳥「ならばラプちゃんの瞳をよく見てみよ。彼女が何故ここまで友の開放にこだわるか、見えてくるだろう」
青い鳥「どういう事?まぁ見ろっていうなら見るけど……。……あれっ?なんかよく見たらあいつの目、赤くなってるしちょっと腫れてない?」
ロック鳥「泣き腫らしたのだ。全てのおとぎ話の世界が消え、この世界に降り立った我の背中でラプちゃんはしばらくの間声を殺して泣いていたのだ。友からの連絡にさえ応答出来ぬほどに」
ロック鳥「無理もあるまい。普段明るく振る舞っていようとも、まだ若き娘…。友や恩人、親衛隊。そして大切な母親と、死別したも同然だったのだからな……」
880: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/14(金)03:05:13 ID:UEH
今日はここまでです 次回に続きます
ゴーテルの娘ラブのせいで霞んでるけど、ラプも大概なマザコン
そしてエッチっぽいドレスプテル
次回もお付き合いください!
881:
おお…ラプちゃんよ…
889: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/18(火)02:08:44 ID:VHC
青い鳥「……あんたの言葉を信じないわけじゃない、でも正直に言うと想像が出来ないよ。あいつが泣いている姿なんてさ」
青い鳥「城前での戦いに乱入したときだって、このホールに突っ込んだときだってあいつはヘラヘラ笑っていたじゃないか。桃太郎とアシェンプテルの間に流れる緊迫した空気を壊した時だってそうだ」
青い鳥「あいつはいつだって笑っていた。そこに殺意が渦巻こうと、危険が待ち構えていようと、息苦しいほど重い空気の時でさえあいつは能天気に笑っていたんだ。それなのに…」
ロック鳥「育った環境のせいかラプちゃんは世間知らずで実年齢よりもずっと子供っぽい、アホの娘などと揶揄される事も多いと聞く。だが彼女とて何も知らぬ訳ではない」
ロック鳥「現実世界の存在、おとぎ話の世界の存在はもとより、おとぎ話がそしてその世界が消滅するとどうなるか……人間が、生物が死ぬという事がどういう事かも、当然な」
青い鳥「……」
ロック鳥「【アラビアンナイト】に属する世界が崩壊を始めた時、我は相棒の頼みを受けラプちゃんがいる【アリババと四十人の盗賊】の世界へと向かい、彼女に状況を説明した」
ロック鳥「我が主が紡ぎし物語の消滅。そして他のおとぎ話が消滅を始めるのも時間の問題だという事、その事を聞いたラプちゃんが真っ先に心配したのは母親であるゴーテル殿だった」
青い鳥「確かラプンツェルとは別行動をしていたんだったね。【シンデレラ】の世界で魔法使いと共にアリスを止める手立てを考えていたんだっけ…」
ロック鳥「うむ。故に我はラプちゃんを背に乗せ【シンデレラ】の世界を目指す事にした。その時、ラプちゃんは親衛隊の面々にも行動を共にするよう声をかけたが彼等はそれを拒んだ」
ロック鳥「盗賊稼業から足を洗い、過去の清算をしようという時に散々迷惑を掛けてきた街の者達を見捨てるなど出来ぬというのが兄貴分の主張だった。同時に、我にならばラプちゃんを任せられるとも」
青い鳥「それでその…親衛隊?とかいう連中とは別れてあいつとあんたの二人でゴーテルの元に向かったのか」
ロック鳥「うむ。だが我々が【シンデレラ】の世界、魔法使いの屋敷にたどり着いた時、そこにはゴーテル殿どころか……誰一人いなかった」
890: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/18(火)02:11:01 ID:VHC
ロック鳥「半壊した屋敷、鮮血で汚れた床、燃え盛る瓦礫を見れば何が起きたのかは一目瞭然。笑顔を失ったラプちゃんに急かされ、我はその世界を後にし【ラプンツェル】に世界へ飛んだ」
ロック鳥「敵の襲撃を受けて別世界に逃げたのならばきっと母親はここに居るのだとラプちゃんは考えたようだが、ゴーテル殿は塔にも小屋にも居なかった」
青い鳥「ラプンツェルの読みは外れた、って事か」
ロック鳥「結果的にはそうなる。だが我はこう思った、ゴーテル殿はあえて【ラプンツェル】の世界に逃げなかったのだと」
青い鳥「どうしてだ?ゴーテルは魔法植物の扱いに長けているって聞いてる、小屋に戻れば怪我を治すような植物だってあるだろうに…」
ロック鳥「ゴーテル殿は魔女である前にラプちゃんの母親、緊急時に娘がどう行動するか予想する事は容易い」
ロック鳥「世界の崩壊が始まれば愛娘は必ず自分を心配して訪ねてくる。【シンデレラ】の世界に自分が居なければ必ず【ラプンツェル】の世界へ来る、とな」
青い鳥「それじゃあ、ゴーテルはもしかして…」
ロック鳥「解っていたのだ。世界が崩壊を始めた時、愛娘が自分を見捨てる事が出来ないという事を…。例え別世界に居ようと、娘は必ず自分を助けようとすると言う事を」
ロック鳥「しかし…その意を汲んで行動を共にしては、大切な愛娘の足を必ず引っ張ってしまうという事も解っていたのだろう。手負いの老婆が戦場で出来る事など…知れている」
青い鳥「……」
ロック鳥「ラプちゃんは呆然としていた。どこでもいいから別の世界へ飛んで母親を探してくれと叫んでいたが……既に時間は無かった」
ロック鳥「我は彼女の言葉を振り切るようにこの【不思議の国のアリス】の世界へ飛んだ。そして到着と同時に、もう二度と別世界に飛び立つ事は出来ないという事を悟ったのだ」
891: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/18(火)02:12:23 ID:VHC
青い鳥「それじゃあ結局、あいつは母親に会えなかったのか…」
ロック鳥「娘を危険に晒すくらいならば消滅する世界と運命を共にする…。そんなゴーテル殿の想いをラプちゃんが理解できたかどうかは解らん。だが彼女にも理解できたことはあった」
ロック鳥「血の繋がっていない自分を我が子のように大切に育ててくれた母親はもう世界中のどこにもいないという事を。そしてそれだけじゃない」
ロック鳥「学問指南をしてくれた我が主シェヘラザード、そしてその夫である国王。彼女が城に来るたび優しく接してくれた城の者たち、そして我が相棒シンドバッド――」
ロック鳥「母の友であった魔法使い、そして自分を慕い何かと協力をしてくれた親衛隊の面々……そういった彼女の大切な者達の殆どは既に命を失っていると」
青い鳥「……」
青い鳥(……それはアリスが世界の消滅をランプに願ったからだ。でも僕はその野望の片棒を担いだ。僕にも当然、責任はある……そう思うと、やはり申し訳ない気持ちになってしまう)
ロック鳥「もっともそれに関してはキモオタや他の仲間達も同じだ、彼等も同様に大切な人々や居場所を失った。だが…塔の中で暮らしていたラプちゃんは『別れ』に慣れていない」
ロック鳥「我々が想像する以上に、彼女が負った悲しみは深かっただろう。何しろ十数年の間知ることの無かった別れの悲しみを一度に経験してしまったのだから」
ロック鳥「故に彼女は我の背で声を殺して泣いた。声を上げれば、我に入らぬ心配をかけてしまうとでも思ったのだろう……」
青い鳥「何も考えていない能天気な馬鹿だと思っていたけど、そんな事は無かったんだね…」
ロック鳥「うむ。だがラプちゃんはやがて涙を拭いて我に言った『みんなの所につれてって。シンデレラはきっと、今の私よりもずっとずっと悲しくて…それで苦しい思いをしてるはずだから』と」
青い鳥「…それって、どういう意味だい?」
ロック鳥「そのままの意味だろう。ラプちゃんは精神を操られ感情を操作された者の苦しみを知っている。同じような目にあわされた者を彼女は知っているのだから」
・・・
892: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/18(火)02:15:09 ID:VHC
ハートの女王の城 ダンスホール
アシェンプテルの声「さぁ…まずはラプンツェルと踊ろうか、その厄介な髪の毛は早々に封じておきたい」スタッ
バッ
ライオン「グルルゥ…!」ババッ ザシュッ
アシェンプテル「……ッ。鋭い牙に強靭な顎、食らえば一大事だが…どこを狙っている?いや、そもそも私の攻撃を邪魔するとは、どういうつもりだ?」
ライオン「ぼ、僕が君の相手をするよ…!さ、さっきのようには行かないからね…!」
桃太郎「ラ、ライオン!?お前どうして…」
ライオン「あ、あんまり長く持たないかもしれないけど…僕が粘るよ、だから桃太郎さんは今のうちにラプンツェルさんに作戦を伝えて!」
桃太郎「お前…。わかった、すぐに助太刀するから少しだけ耐えてくれ!」
アシェンプテル「お前じゃあ私の相手は務まらない。目障りだ」
シュバッ
ライオン「ひゃあっ!あ、危なかった…お、同じ手を何度も食らう訳にはいかないよぉ!」ササッ
アシェンプテル「私の蹴りをかわすとは一応は百獣の王ということか。だが……甘い」シュッ
ドスッ
桃ラプ「ライオン…!」「ライオン!だいじょーぶ!?」
ライオン「うぐぅっ…!だ、大丈夫だから僕の事は気にしないで…!ま、まだだよ…僕はまだやれるんだ…!」グググッ
893: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/18(火)02:19:17 ID:VHC
アシェンプテル「お前は確か【オズの魔法使い】のライオンだったな…。随分としぶといが何故お前がここまでやる?」
アシェンプテル「桃太郎がラプンツェルに作戦を伝える間の時間稼ぎ、それは理解できるが……それに協力してお前に何の利があるんだ?」
ライオン「桃太郎さんは君を助けるためにすごく頑張っているんだ…。で、でも僕にできるのはこれくらい、だから僕はそれを出来る限り頑張るんだ…!」
ライオン「僕は一分でも一秒でも君の攻撃を耐えて…桃太郎さん達の作戦の成功につなげるんだ…!」
アシェンプテル「その意気を認めて相手をしてやる。だがどれだけ時間を稼ごうとどれだけ作戦を練ろうと無意味だ。私の意思は私のもの、他人に変えられたりはしない」
ザシュッ ヒュヒュヒュッ
ラプンツェル「シンデレラの事引き受けてくれるのは助かるけど、心配だよー。大丈夫かなライオン…」
桃太郎「俺も同じ気持ちだけど、今は作戦をしっかり聞いてくれ。少しでも早く作戦を伝えて、ライオンの助太刀に行きたいからな。いいか?よく聞いてくれよ」
・・・
桃太郎「――っと、これが拙者が用意したシンデレラを正気に戻すための策だ。危険は伴うけど現状じゃこれしか方法がないと思う…理解できたか、ラプンツェル?」
ラプンツェル「……?」
桃太郎「……と、とりあえずお前はシンデレラを拘束してくれればそれでいい。まぁ簡単にさせてくれないだろうけど…拘束さえできればあとはこっちでなんとかするから」
ラプンツェル「わかった!私にまかせて、すんごくがんばるよ!すんごくこーそくするよ!」フンス
桃太郎「お、おう…お前がそう言うなら大丈夫……だよな?」
894: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/18(火)02:21:52 ID:VHC
桃太郎「よ、よし!若干の不安は残るけどこれ以上ライオンに負担はかけらんない!さぁ助太刀するぞライオn」
ドシュ
ライオン「ぐぅ…ぐあぁっ!」ドサッ
桃「ライオン!」
アシェンプテル「良かったじゃあないかライオン。目的通りお前は十分に時間稼ぎを成功させた、だが私はこれ以上お前と踊るつもりはない。そろそろ眠っていろ」スッ
ドシュッ
ライオン「ぐあっ…!」ドサーッ
ロック鳥「ルオオォォッ!?」サッ
青い鳥「うわっ、なんだなんだ!?」
アシェンプテル「殺してやっても良かったが…気が変わった。せいぜいそこの役立たずの獣共と一緒に桃太郎の勝利を神にでも祈っているがいい」
桃太郎「クッ…ライオン、今行く!お前の傷も青い鳥の怪我も拙者がすぐに治してやるからな――」
ヒュバッ
桃太郎「シンデレラ…!そこをどけ!拙者は友の傷を癒さなければならないんだ!」
アシェンプテル「させない。これだけ時間を与えてやったんだもう十分だろう……さぁ、そろそろ私と踊ってもらうぞ?」
895: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/18(火)02:37:53 ID:VHC
ヒュバッ
桃太郎「また姿が…!見えないというのは厄介だ。標的は拙者か?ラプンツェルか?さっきはラプンツェルを先に始末するような事を口走っていたけど、その通りに動いて来るか?あるいは――」
ラプンツェル「よーしっ、見切った…!シンデレラはそこにいる!くるっとして捕まえちゃうラプちゃんの髪の毛を受けてみよー!」フンスッ
バサッヒュヒューッ
桃太郎「おぉっ!?まさかラプンツェルお前、早シンデレラを捕えたっていうのk…ゲホォッ!!」ドスッ
アシェンプテル「……そのアホの娘を信じるお前が悪い。そいつに作戦など理解できるはずないだろう」
ラプンツェル「むーっ…避けられちゃったか…」グヌヌ
アシェンプテル「何を言っている、避けてすらいない。お前が勝手に虚空に髪の毛を放り投げただけだ」
ラプンツェル「あれー?でも私は諦めないよー!いーっぱい投げたら一回くらいはなんとなく当たるかも…!」ヒュヒュ ヒュヒュ
パサッ パサッパサッ
アシェンプテルの声「無駄だ、闇雲に投げてあたる程ノロノロと動いてはいないのでな。」
桃太郎「ラプンツェル!焦るのは解らんでも無いけどそんな闇雲にやってても仕方ないって!あいつの攻撃にあわせてもっと確実にだな…」
ラプンツェル「でもー、私はちょっとでも早くシンデレラの事助けてあげたい!だってシンデレラ、いまとっても悲しい気持ちのはずだもんそれにとっても辛いんだよね」
アシェンプテル「悲しいだの辛いだの、助けたいなど勝手な事をぬかすな」
ラプンツェル「強がらないでいいよ、私はママの時も見てるから知ってる…心を操られるってことがどれだけ辛くて悲しくて涙が出ちゃうことなのか…」
898:
 更新乙です!
ラプちゃんが好きなのでイメージで書かせて頂きました!
酷評は何とぞご容赦ください(笑)
899:
乙!
そうだよな……ゴーテルもアリスの胡椒でやられたんだった
ラプちゃん桃さん頑張れ頑張れ
ライオンもよくやった!
>>898
この絵柄なんか好き
お転婆な感じのラプちゃんいいね!
906: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:08:43 ID:srB
ラプンツェル「二人も知ってるよね。アリスが【ラプンツェル】の世界を消しちゃおうとした時、抵抗するママにアリスが心を操る魔法具を使った事」
桃太郎「話には聞いている。確か、怒りの感情を植えつけるコショウを使われて……ゴーテル殿の性格は豹変したんだったか」
ラプンツェル「うん。それでママは、普段絶対に言わないような酷い事を私にいっぱい言ったよ。それでね――」
アシェンプテル「その話に興味は無い」ヒュッ
ドゴォ!
ラプンツェル「……んぐっ!」ズサーッ
桃太郎「ラプンツェル!」
アシェンプテル「確かに私は精神に干渉する魔法具を使われている、そしてお前の母親が感情を操る魔法具を使われた事も知っている。だが…それは今この場で話す必要のある話か?」
アシェンプテル「私はお前達を殺そうとしているんだぞ?そんな相手にする意味のある話か?答えは否だ、考えるまでも無い。……これだから馬鹿の相手は疲れる」
ラプンツェル「……シンデレラはね、私の事、バカだとかそんな風に言わないよ?」ヨロッ
アシェンプテル「当然だろう。私はアシェンプテルだ、シンデレラじゃあない」
ラプンツェル「違うよ、シンデレラだよ」
アシェンプテル「何も解っていないなお前は…そもそも私とお前の母親では使われた魔法具が違う。お前の母親が使われたコショウはありもしない怒りの感情を強制的に植えつける代物だ」
アシェンプテル「だが私の身体に突き刺さる悪魔の鏡の破片は違う、性格を捻じ曲げる代物だ。ありもしない感情を植えつけるような効果は無い」
907: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:14:14 ID:srB
アシェンプテル「つまり…だ。シンデレラは少なからずあの継母や義姉に怒りを感じていたし、周囲に流されるがままの人生に疑問を感じていた。そしてお前の馬鹿さ加減に僅かながらうんざりしていた」
アシェンプテル「私が抱いている怒りや憎しみの感情は元々シンデレラが心の奥底で抱えていたものだ。悪魔の鏡の破片は、その感情を表に出す手伝いをしたに過ぎない」
アシェンプテル「これで理解できたか?感情を植えつけられたお前の母親と、元々存在する感情を引き上げられた私では状況が違う」
ラプンツェル「そんな事無いよ、違わない!同じだよ!」
アシェンプテル「馬鹿に何を言っても無駄か…」
ラプンツェル「だってそうでしょ!確かにシンデレラは悪いおかーさんやおねーちゃんのこと憎んでたかもしれないし、魔法使いのおかげで苦労せずにお姫様になった事悩んでたかもしれない」
ラプンツェル「私がいっつもめちゃくちゃな事しちゃうの、ちょっぴりうんざりしてたかもしれない。でも、シンデレラはそんなこと少しも言わなかったよ!」
アシェンプテル「シンデレラは他人を優先にする愚かな女だ。継母に復讐をすれば王子に迷惑がかかる、労せず王族になった事に疑問を抱けば魔法使いに失礼だ、友人のお前に暴言など吐きたくない…」
アシェンプテル「他人に迷惑をかけたり傷つけるくらいならば自分が耐えればいいという考えの女だ。だから言わない、自分の心内にしまい込む…そういう奴だというだけだ」
ラプンツェル「だったら…今、アシェンプテルがしてる事はシンデレラがやりたくないって思ってた事でしょ!」
ラプンツェル「魔法具のせいで…シンデレラはやりたくない事させられてる!言わないでおこうって思ってた事、言わされてる!それってとてもひどい事だよ!」
アシェンプテル「馬鹿女がわかったような口を…!」
ラプンツェル「シンデレラは愚かだから我慢してたんじゃない、とっても優しいからみんなの事傷つけたくなかったんだよ!」
908: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:21:02 ID:srB
アシェンプテル「……馬鹿と会話をしたのが間違いだった」ヒュッ
ドゴシャ!!
ラプンツェル「……っ!ゲホッゲホッ!」ヨロヨロ
桃太郎「もういいラプンツェル!これ以上は危険だ、拙者の後ろに――」
ラプンツェル「あの時、コショウの効果が切れて正気に戻ったママはね、泣いていたんだよ。今まで、私の前で泣いたことなんかなかったのに……」
アシェンプテル「……」
ラプンツェル「何度も何度も謝ったんだよ!ごめんねって、娘じゃないなんて言ってごめんねって!キモオタ達が帰った後だってずっとずっと気にしてたんだよ……」
ラプンツェル「あれから随分経つけど…今だってママはあの時の事引きずってる。ううん、きっとこの先もずっと私にひどい事言っちゃったこと、ママは自分の事を責め続けるんだよ」
アシェンプテル「私とお前の母親は、違う」
ラプンツェル「シンデレラだって同じだよ!魔法具の効果が切れて正気に戻った時……絶対に悲しむよ!復讐しようとした事、キモオタや私達に攻撃したりひどい事言ったりした事…」
ラプンツェル「全部知って、すんごく後悔してずっと自分の事を責め続けるよ、それでずっと謝り続けるよ!私はそんなの嫌だよ!だから私はシンデレラを元に戻すんだよ、少しでも早く!」
ラプンツェル「ちょっとでもシンデレラの心の傷が少なくて済むように、私の友達が泣かなくてもいいようにしたいの!だから大人しく捕まってよね!」
アシェンプテル「断る。だが安心しろ、今ここでお前を殺してしまえば『シンデレラ』は傷つく事もこの事を知る事も無い、永久にな」ヒュバッ
ガキィンッ
桃太郎「お前の言うとおりだよなラプンツェル…。長引けば長引くほどあいつは辛い思いするんだ、それなのになにモタモタしてんだ拙者は!」
910: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:29:12 ID:srB
アシェンプテル「……感心するよ、随分と度を上げたつもりだったけれど、まだ刀で防ぐか」
桃太郎「あいにく攻撃よりも防御や回避の方が得意だからな」チャキッ
アシェンプテル「腰抜けのお前らしいな。だが…私の最高度はこんなものじゃあないぞ?」カツンッ
スッ…
ラプンツェル「あっ、また姿が消えたよ!桃太郎気をつけt」
桃太郎「避けろラプンツェル!!」グイッ
ビッ
ラプンツェル「……っ!」
桃太郎「さっきまでとは段違いの度…!拙者ですら完全に読み切れない…!」
ビッ
桃太郎「ぬぐぅ…!防御が追い付かない…!」ググッ
キィンッ
桃太郎「しまった!鬼屠りが…!」カラーン
アシェンプテル「その刀が無ければお前などただの男…。いや、まだ隠し玉があったか……だが何を引っ張り出そうと同じ事」
アシェンプテル「終いだ、桃太郎」ビッ
ゴシャアッ
911: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:32:34 ID:srB
桃太郎「がはっ…!」ベキベキッ
アシェンプテル「全力の『ガラスの靴』直撃はなかなかの味だろう?さぁ治癒される前に次の――」
桃太郎「ゼェゼェ…。ラプンツェル…頼む…!」ガシッ
ラプンツェル「わかった!そのまま押さえてて!」シュシューッ
アシェンプテル「チィッ…!」ブンッ
ゴシャァ
桃太郎「ぐあっ…!」
ラプンツェル「あぁっ!もぉー、ギリギリ捕まえられなかったよ!もうちょっとだったのにー!」パサッ
アシェンプテル「気を失ってもおかしくない打撃だったはずだというのに、逆手をとって私を拘束しようとするとはな…」
アシェンプテル(なんという精神力…。これも友を救わんとする気持ちのなせる技か、それなら私はそれを踏みつぶすだけだ)
スッ…
ラプンツェル「桃太郎、ごめんね!捕まえるの失敗しちゃった、せっかくチャンス作ってくれたのにー」
桃太郎「いや…いい、できなかったもんは仕方ない。だがこりゃあいよいよ、長引かせられないぞ…」ゼェゼェ
ラプンツェル「どうしよう…ライオンと青い鳥は無理だと思うけど、ロック鳥なら動けるしお願いする?」
桃太郎「いや…天井が高いとは言っても室内だ、ロック鳥も身動きがとれないうちにやられるのが目に見えてる…」
912: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:34:54 ID:srB
ラプンツェル「でも、それじゃあどうすr……んぐっ!」ドスッ
桃太郎「ラプンツェル!クソッ…容赦がない、本気だって言ってただけの事はある!とにかく、傷を治癒して次の動きに――」
ビッ
桃太郎「……っ!させないってか…!」
ラプンツェル「どうしよ、桃太郎。私、これ以上はちょっとダメかも…」ヨロヨロ
桃太郎「すまん…お前だけでも治癒出来ればいいんだg…ぐぁっ!」ドゴシャッ
アシェンプテル「不可能だ。おまえがどんなに素早く治癒に取りかかろうと、私の『ガラスの靴』のトップスピードには追いつけない」
桃太郎「……ゲホッゲホッ」ゼェゼェ
ラプンツェル「うー…あっちもこっちも痛いよ…」ゼェゼェ
桃太郎(どうする…どうすればいい?このままじゃシンデレラを救えないまま終わる…それだけはダメだ、それだけは絶対に…!)
桃太郎(でも…どうすればいい?拙者もラプンツェルも既に立っているのがやっと…。あれほどの度で動けるなら、どうやってもラプンツェルの髪の毛だって当然のように避けるだろう…)
桃太郎(完全に詰んだか…?いや、諦めるな!ここで諦めたら拙者を信じてくれたキモオタや舌切りに申し訳が立たない、ライオンやここまで戦ってくれたラプンツェル…他の仲間達にもだ。だから諦めるな!)
桃太郎「せめてあの度さえ……あの高移動さえなんとかできれば……ほんの少しでも動きを制限出来れば……」ゼェゼェ
913: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:36:26 ID:srB
桃太郎「しかし、どうやって…?どうすればあいつの動きを――」
ラプンツェル「シンデレラの動き止められたら……あんな風にすんごくく走れなくしたら、まだシンデレラの事取り返せる…?」
桃太郎「あぁ…あの高移動さえ封じればお前の髪の毛で拘束できるからな…。でも、拙者達にはその方法が無い…」
ラプンツェル「あんなにく走れるんだから……シンデレラきっと避けるの得意だよね……」ゼェゼェ
桃太郎「ん…?まぁ、そうだろうけど……」
ラプンツェル「それで……桃太郎、避けるの得意だって言ってたよね?」ゼェゼェ
桃太郎「えっ?あっ、うん、言ったけど…まさか何か考えがあるのか?ラプンツェr」
シュルルルッ
ライオン「あ、あれっ?ラプンツェルさん…髪の毛を天井に飛ばしたりなんかしてどうするつもりなんだろう…」
ロック鳥(翻訳)「ラプちゃんと行動を共にした我にも解りかねる。だが彼女の事だ苦し紛れではない、何か考えがあっての行動だろう」
青い鳥「そうは言うけど、僕には苦し紛れにしか見えないよ。いくら髪の毛を飛ばしたところで天井にはシャンデリアがぶら下がっているくらいで、他には何も…」
シュルル ググッ
桃太郎「なっ……!」
青い鳥「嘘だろ…。あいつ髪の毛をシャンデリアに撒きつけたぞ!二人とも伏せろ、どうなるか目に見えてる!」
アシェンプテル「あの馬鹿女、まさか…!」
ラプンツェル「シンデレラ!桃太郎!ロック鳥と青い鳥にライオンも…みんなちゃんと避けてねーっ…!」
グイッ
914: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:39:49 ID:srB
ガッシャァァン!!
ライオン「うわぁぁぁ…!ガラスの破片が飛んでくる!鉄の欠片が飛んでくるよぉー!」ピシピシピシ
青い鳥「何やっているんだあいつは…!勝てそうもないからってシャンデリアを落とすなんて苦し紛れにも程がある!」ピシピシピシ
ロック鳥(翻訳)「いや、苦し紛れではない。これは――」
桃太郎「……そうか、そう言う事か。ラプンツェル!」バッ
ラプンツェル「桃太郎!こっちこっち!落ちてきたシャンデリアの方に来て!早く早く!」タタタッ
アシェンプテル「……理解してやったのか?それとも苦し紛れか?」
ラプンツェル「わかっててやったに決まってるよ!これでシンデレラはもうすんごい早さで私達に近寄れないでしょ!」フンス
アシェンプテル「……」ギリッ
桃太郎(ガラスの靴はシンデレラの脚力を向上させる魔法具。西洋の馬車を軽々と追い越しどんな俊敏な獣さえも置き去りにする、その姿さえ見えない度で駆ける事が可能な強力な魔法具)
桃太郎(とはいえ所詮は靴だ、地面を蹴らなければ走る事は出来ない。となると足場があまりにも荒れていてはその魔法具も真価を発揮する事は出来ない。要するに…)
桃太郎(ガラスと鉄片が散らかったこんな場所では満足に走れない。高で駆けようというのならばなおさらだ)
桃太郎(あいつはそれを理解したうえで、ガラスの靴が最高の状態で扱える広くて床の整ったこの部屋を戦いの場に選んだ)
桃太郎(ラプンツェルはエッチっぽいなんて言っていたけれどあのドレスだって戦いを意識したものだろう。飾りや布地を極力少なくすれば何かに引っかかったり掴まれる心配も少なくて済む)
桃太郎(なんにしろ…形勢逆転だ、ここから一気にシンデレラを奪還するぞ!)
915: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:40:54 ID:srB
アシェンプテル「馬鹿女め…この程度で私のガラスの靴が役立たずになると思うな。スピードは少し落ちるが、お前達をの相手をするには――」
桃太郎「ラプンツェル!この部屋のシャンデリアを全て落としてくれ!出来るだけ部屋の外側からだ!」
アシェンプテル「貴様…っ!」
ラプンツェル「わかった!任せてよー!シンデレラ、ちゃんと避けてねー!」シュルルルルルッ
ガッシャアアアァン!!
ガッシャァァァァン!!
ガッシャァァァァン!!
ラプンツェル「ひゃわー!思ってたよりずっとすごい事になってる!シンデレラちゃんと避けてくれたかなー…?」
桃太郎「シャンデリアが落ちる場所は予想がつく。それならあいつは大丈夫だ、ガラスの靴が使い物にならなかろうと必ず避ける」
スタッ
アシェンプテル「……考えられないな。テラスは破壊する、シャンデリアを落としてホールは使い物にならなくする、まともな人間ならば普通、躊躇してしまうものだが」
アシェンプテル「これだから馬鹿の相手は嫌になる、何をしだすか予想できない」
916: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:44:09 ID:srB
桃太郎「ラプンツェル、シンデレラはもう走れない。今のうちに拘束してくれ…あっ、刃物持ってるかも知れないから厳重に頼む」
ラプンツェル「わかった!じゃあシンデレラ、ちょっぴりだけ我慢してねー!」ヒュルル
アシェンプテル「……」グルグルグルッ
桃太郎「随分と素直に拘束されたな。まぁこっちとしてはその方が助かるんだけども…」
アシェンプテル「ここまで足場が悪くては走れない。手負いとはいえお前とまともに戦って勝てるなど思っていない、悪足掻きはしない主義だ」
ラプンツェル「よかったー、それじゃあ大人しく元に戻ってくれるよね!」
アシェンプテル「さぁ、それはどうだろうな。私は逃走を諦めただけだ。そもそも自分の意思で悪魔の鏡の破片をどうにかできるわけじゃあない」
ラプンツェル「えーっ!?じゃあ悪魔の鏡の破片をどうにかしなきゃいけないの!?ねぇねぇ桃太郎、聞いてた?どーする?なにか作戦ある?」
桃太郎「拙者、その作戦お前に一回伝えたんだけど…」
ラプンツェル「えーっと、あっ、言ってた言ってた!アレでしょ?ほら、なんとか剣!」
桃太郎「お前がこの剣の名前忘れるのおかしいだろ…。まぁいいけども、よいしょっと…」ガチャッ
アシェンプテル「私の正気を取り戻すものだとか言っていたが、その武器、魔法具……剣か」
桃太郎「あぁ…拙者はこれを手に入れたとき、刀の扱いだけじゃなく剣も使えるようになろうって思ってハインリヒ殿に指南を受けたんだ。必ず戦いの役に立つって思ったからな」
桃太郎「でもまさか、友であるお前に使うとは思わなかったけども」
917: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/20(木)02:46:23 ID:srB
スラッ
桃太郎「七星剣…。それがこの魔法具の名だ」
ラプンツェル「この剣はね!私が前にアリスと戦った時に、お腹に刺されたんだよ!すんごく痛かった!」フンス
桃太郎「なんでちょっと誇らしげなんだよ…。まぁとにかくあの時お前の様子を見てもらったあとに魔法使い殿にこの剣の事を聞いて、拙者が譲り受けたって訳なんだけど」
アシェンプテル「……で、それをどうするつもりだ?」
桃太郎「七星剣は斬ったモノの魔力を弱める事が出来る剣だ。これを使ってお前に取りついている悪しき魔力を断ち切る」
アシェンプテル「言っておくが、私自身を斬ったところで意味は無いぞ?悪魔の鏡の破片は今のこの身体に突き刺さり、影響を及ぼし続けている」
アシェンプテル「それこそ悪魔の鏡の破片自体を貫きでもしない限り、そんな剣を振るったところでシンデレラを呼び戻す事など出来ない」
桃太郎「という事は、直接悪魔の鏡の破片を貫く事が出来れば……お前を正気にできるという事だな?」
アシェンプテル「あぁ、できるさ。だが…不可能だ」
ラプンツェル「えーっ?なんでー!?しちせーけんっていうので悪魔の鏡壊したらいいだけでしょー?」
アシェンプテル「鏡の破片は爪の先ほどの大きさしかない。その上、お前達はそれが私の身体のどこに突き刺さっているのか解らない。それでは手の出しようが無いだろう?」
アシェンプテル「まぁ場所さえ分かればあとは大した問題は無い。魔力を打ち消す剣で鏡の破片を砕き私を正気に戻す、その後に素早く治癒の力で傷を塞ぐ…完璧な作戦に見える、だが重大な欠点がある」
桃太郎「…お前が何を言いたいのか、拙者にはわかるよ」
アシェンプテル「だろうな、桃太郎。おまえが誰よりもわかっているはずだ……私を救うという事が目的だとしても、治癒の力があるとはいってもお前に私は刺せない」
アシェンプテル「他人の目を気にして生きているお前のような腰抜けに友人に刃を突き立てるなど出来るはずが無い。出来るわけがないのだ」
桃太郎「……」
926:
胸熱展開に思わずペンを握ってみました。
粗いけどどうか酷評はご容赦いただきたいw
927: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/24(月)02:14:36 ID:g7R
アシェンプテル(所詮、桃太郎という男はこの程度だ)
アシェンプテル(以前と比べると確かに変わった、多少の度胸を手に入れいくらかは強さに磨きをかけている。だが…生まれ持った性根というのはそうそう変えられない)
アシェンプテル(結局のところ、こいつは腰抜けのヘタレ侍だ。日ノ本一という称号、英雄という栄誉に縛られ自由に動けない。そして世間体という名の鎖が絡みつき、身動きが取れなくなる)
アシェンプテル(『友を救う為とはいえ、その身に刃を突き刺す行為…。まして鏡の破片が何処にあるかわからぬ状況で闇雲に剣を突き立てるという行為……それを見聞きした者はどう思うか?』)
アシェンプテル(『それは英雄らしからぬ行動ではないか…?』そう考えてしまえば、桃太郎はもう動けない。その身に絡みつく鎖が息も出来ぬ程に締め付けてくるからだ)
アシェンプテル(そして結局、鳥獣共や馬鹿女が身を賭して手に入れたこのチャンスさえも無駄にする。落としたシャンデリアの衝撃と轟音は別の場所に居る仲間も感づいただろう…)
桃太郎「……なぁ、シンデレラは日ノ本一って何だと思う?」
アシェンプテル「なんだ突然?自分の在り方に疑問でも感じたか?」
桃太郎「拙者は…ずっとこの称号に縛られてきたんだと思ってる。というか、縛られないと生きて来れなかった」
桃太郎「桃からなんて数奇な産まれでさ、しかも治癒とかいうワケわからん能力まで持ってる拙者はみんなにとって『化物』だ。化物に、化物とその家族に居場所なんか無い」
桃太郎「だけど人っていうのは現金なもんで『化物』って事実を塗りつぶす程の称号とか価値があれば、誰も拙者の事を『化物』としては見ない」
桃太郎「だから拙者にはどうしても必要だった、強者…『日ノ本一』って称号が。拙者と、じいちゃんばあちゃんの居場所を手に入れる為にも」
928: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/24(月)02:17:56 ID:g7R
アシェンプテル「そしてお前は日ノ本一という称号と栄光を手に入れた訳だ、だがそれがまやかしだという事はお前も自覚しているだろう?」
桃太郎「……否定はしない」
アシェンプテル「確かにお前の武勇は本物だったかもしれないが、その『日ノ本一の桃太郎』という存在を支えているモノはとても脆いものだ」
アシェンプテル「逃げ出したいという情けない本音、そして恐怖に支配され怯えきった心を演技と虚勢で塗り固めた、外見だけのハリボテの英雄だ。偽りにまみれた日ノ本一、それがお前だ」
桃太郎「拙者もずっとそう思ってた、最近までは」スッ
チャキッ
アシェンプテル「……何のつもりだ?」
桃太郎「悪魔の鏡の破片。それが埋まっている場所って、ここ…お前の胸元なんじゃないか?」
アシェンプテル「さぁ、どうだろうな。そう思うのなら試してみたらどうだ?」
ラプンツェル「桃太郎!本当にだいじょぶ?あくまの鏡の破片が刺さってるとこ、おっぱいのとこであってる?間違ったら大変だよ!?」グググッ
桃太郎「おっぱいって言うなよ…胸元だっての…」
アシェンプテル「虚勢を張るなよ桃太郎。いくら私に剣を突きつけようと、その刃がこの身を裂く事は決してない」
アシェンプテル「私の胸元に鏡の破片が刺さっているというのも根拠の無い推測。仮にも英雄と呼ばれるものがそのような当てずっぽうに頼るとは、お笑いだな」
929: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/24(月)02:24:13 ID:g7R
桃太郎「根拠ならあるさ、まぁ確証は無いけども…」
アシェンプテル「どちらにしろ推測の域を出ない、同じ事だろう」
ラプンツェル「ねぇねぇ、桃太郎はなんでシンデレラのおっぱいのとこに鏡の破片が刺さってるって思うのー?」
桃太郎「胸元な。シンデレラもさっき言ってたけどさ、悪魔の鏡って身体の中に残り続けてずっと魔力を発しているって事になるだろ?」
桃太郎「【雪の女王】の世界のカイって子も、瞳に刺さった破片が溶けることで正気に戻るって聞いたし。どうにかして身体の外に出すか消滅させれば破片の魔力からは解き放たれるって事で…」
桃太郎「そうなるとさ…手首とか足首とかに鏡の破片を刺したとは考えられないだろ。グロい話になるけど戦いの最中に腕を着られたらそこで正気に戻っちゃうわけだし」
ラプンツェル「……あーっ、なるほどね!」
桃太郎「……。だからさ、きっと鏡の破片は頭か胴体のどこかに刺したんだろうって事になるわけだ。でもシンデレラだって当然抵抗はするから頭に刺すには骨が折れる」
桃太郎「そしてシンデレラは肌を出す衣服を好まない。彼女が来ているドレスは肩も背も露わになっていない、せいぜい少しばかり胸元が見えるくらいのドレスだ」
アシェンプテル「だから消去法で胸元…か。一応筋は通っていないでもない、だがやはり単なる推測だ。アリスが裏をかいて関係の無い場所に刺した可能性だってある」
桃太郎「…いや、アリスだったら一番刺しやすい場所に刺すよ。あいつは拙者達とシンデレラの絆の深さを信じたからこそ、お前を手駒にしたんだ」
桃太郎「それなら拙者達は絶対にお前を傷つけられないって、刺せないって思ってるはずだ。だったらわざわざ裏をかいたりなんかしない、そんな事する必要がない」
アシェンプテル「御託はいい、そう思うなら七星剣で私の胸元を突き刺してみろ。そうすればハッキリする」
アシェンプテル「それとも長々と講釈を垂れていたのは恐れを隠すためか?結論を先延ばしにするためか?あるいは…私の仲間が援軍に来るのを待っているのか?そうなれば敗北した言い訳にできるからな」
アシェンプテル「桃太郎、結局お前は『日ノ本一』の称号を失うのが怖いんだ。失敗が怖い。自分への批判が怖い。ただの『化物』に戻ってしまうのが怖くて何もできない」
930: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/24(月)02:34:21 ID:g7R
桃太郎「……【桃太郎】の世界の人々が拙者に持っている印象は『強くて冷静沈着な英雄』あるいは『義と情に厚い正義の侍』ってところだ」
桃太郎「彼等の中に存在する英雄は、例え友を救う為だとしても刃を突き刺したりしない。何か別の、誰も傷つかない方法を探す。それが彼等の中の『桃太郎』だ」
アシェンプテル「そしてお前はそれを理解できているからこそ私を刺せない。彼等の印象に反する行動をとってしまえば、『日ノ本一』のメッキが剥げてしまうからだ」
桃太郎「拙者の価値を決めるのは周囲の者達。彼等に『英雄』だと思ってもらえなければ、『日ノ本一』だと認めてもらえなければ、拙者は単なる『化物』に戻ってしまう――」
アシェンプテル「だからお前は何も出来ない。彼等の英雄像から逸脱する行為はとれない、そうでなければ世界を取り戻したところで居場所を失うからだ」
桃太郎「……かつての拙者は確かにそう思っていた。だけど今は違う」
アシェンプテル「……」
桃太郎「拙者はここ数日…日ノ本を舞台にしたおとぎ話の世界をいくつか周ったんだ。そこのおとぎ話の主人公達に『日ノ本一』だって認めてもらう為に」
桃太郎「絶対に無理だって思った、しかもカッコつける事は一切禁止なんて無理難題を押し付けられてさ…。ありのままの素で初対面の奴に『日ノ本一』だって認めて貰えって無理だって…」
桃太郎「なんて思ってたけどさ、蓋を開けたらなんてことない。みんなが拙者の事、『日ノ本一』だって認めてくれたよ」
桃太郎「金太郎も食わず女房も雪女も聞き耳頭巾のじーさんも…。皆、拙者がヘタレで臆病者だって知ったのに、それでも拙者の事を認めてくれた」
931: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/24(月)02:40:10 ID:g7R
アシェンプテル「それを鵜呑みにして、お前はいい気になっているのか?馬鹿馬鹿しい、そんな物は社交辞令というものだろう」
桃太郎「拙者はそうは思わない。どっちにしても拙者には結構な衝撃だったよ。拙者の素の部分、ヘタレなとことか情けないとこは一番他人に見せちゃいけない場所だって思ってたから」
桃太郎「それは英雄とは一番程遠い姿だ。そんな姿、素を見られたら英雄になれない『日ノ本一』でいられないって思ってた。でもそれは違った」
桃太郎「拙者は…皆が描く理想の英雄像である必要なんかない。かつて存在した英雄の姿に自分を重ねる必要はない。誰かの評価や世間体の為に自分を偽る必要はない」
アシェンプテル「だからもう自分を偽るのをやめたというのか?馬鹿め、そんな事をすればお前はただの『化物』に戻るだけだ」
桃太郎「例えそうなったとしても、今の拙者にはありのままの姿を認めてくれる仲間が大勢いる。居場所だっていくつもある、じいちゃん達を守る力だってあるって思ってる」
桃太郎「強くて、冷静沈着で、何者をも恐れず、勇猛果敢に敵に立ち向かう英雄…そりゃあそういう奴はカッコいいと思うけど、拙者がそうである必要なんかなかったんだ」
桃太郎「元々自分と家族を守る為に欲した称号だ。強くなくてもいい、慌てて焦っててビビリでもいい、拙者は勇猛果敢じゃなくても……大切な場所や人々を守れるんだったら、それでいい」チャキッ
アシェンプテル「貴様ッ…!」ギッ
桃太郎「いいんだ、少しくらいヘタレでもちょっとくらい情けなくたっていい。お前を刺すことで誰かに後ろ指さされたって構わない、悪し様に言われようと知った事じゃない」
桃太郎「拙者は友であるシンデレラを救う!友達もじいちゃんもばあちゃんも【桃太郎】の世界の人々も、この心と体そして刃で…大切なモノを悪しき存在から護り通す!」
桃太郎「それが拙者にとっての『日ノ本一』だ…!!」グッ
ザシュッ…!!
932: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/24(月)02:43:26 ID:g7R
鳥獣ズ「「「……っ!」」」
ラプンツェル「はわー…すごいなぁ…。おっとっと、まだ緩まないようにしなきゃだ!」ググッ
アシェンプテル「ぐっ、かはっ……」ゴホッ
桃太郎(どうだ…!?この一撃で、悪魔の鏡の破片を貫く事が…出来たか!?)
アシェンプテル「まさか……本当に私に刃を突き刺すとは、思っていなかった、な……」ポタポタッ
桃太郎「……そうしてでも取り戻したかったんだ。もしもお前が拙者の事を恨むというのなら、それは受け入れるつもりだ」
アシェンプテル「……お前を恨むかどうかを決めるのは、私じゃあない」
桃太郎「という事は……っ」
アシェンプテル「幸運にだけは恵まれているようだな……お前もラプンツェルも……。そして、シンデレラも……」パキィィン
ドサッ
ラプンツェル「シンデレラが倒れた!桃太郎!もう髪の毛ほどいてもいい!?」
桃太郎「あぁ、大丈夫だ!よしっ、それじゃ剣を抜くと同時に傷口を塞いで治癒だ!」パァァァァァ
ラプンツェル「おぉーっ、傷が塞がってく…!ねぇねぇ、これでもうシンデレラは大丈夫だよね?私達、友達を取り返せたんだよね!」
桃太郎「あぁ、拙者達は成し遂げたんだ!…っていうか一発で鏡の破片砕けてマジで良かったぁぁぁぁ!!あんな事言ってミスったらどうしようかと思ったわ拙者ぁぁぁ!!もうこういうのコリゴリだから拙者!!」
・・・
933: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/24(月)02:58:15 ID:g7R
・・・しばらく後
ラプンツェル「じーっ……まだかな、まだかなー……」ジーッ
ロック鳥(翻訳)「ラプちゃん、その様にじっと見つめていてもシンデレラが目覚める訳では無い。目覚めを待つまでの間、少しでも休んでおいた方が良い」
ラプンツェル「でもー、目が覚めた時近くに居てあげたいから!」
シンデレラ「……っ」パチッ
ライオン「あっ…シ、シンデレラさんが目を覚ましたよっ!桃太郎さんっ!シンデレラさん、目を覚ましたよぉ!」
ラプンツェル「ホントだー!うわぁい!やったぁ!おはようっ、シンデレラっ!」ニコニコ
シンデレラ「あっ、ラプちゃん……。わ、私……!」ポタポタッ
ラプンツェル「んもーっ!泣いちゃ駄目だよー!」
シンデレラ「だ、だって私…!ラプちゃんにとてもヒドイ事をして…!ラプちゃんだけじゃない、桃太郎さんにも…他のおとぎ話の人達にも、許されないような事を……!」ポタポタ
ラプンツェル「大丈夫、大丈夫だよー。シンデレラー」ギューッ
シンデレラ「ラ、ラプちゃん…?」ギューッ
ラプンツェル「私がちっちゃいときねー、泣いちゃったときとかママがこーやってくれたの。こーしたら涙、とまるよー。大丈夫だから、シンデレラ泣かないでー」
ラプンツェル「シンデレラは操られてただけー、だから私は気にしないよー?」
シンデレラ「……うん、ごめんなさい。ラプちゃん……」グスングスン
934: ◆oBwZbn5S8kKC 2017/07/24(月)03:00:23 ID:g7R
シンデレラ「そ、そうだ…桃太郎さんは!?私、桃太郎さんにもきちんと謝らないと…」
ザッ
桃太郎「シンデレラァァ!!悪かったああああぁぁぁ!!拙者の勝手な判断で胸元突き刺して本ッ当ッに悪かったああぁぁぁ!!!」ドゲザー
青い鳥「すごいな…。流れるように土下座の姿勢に移行したぞ…」
ロック鳥(翻訳)「これがジャパニーズドゲザというモノか…初めて見たぞ、我」
ライオン(も、桃太郎さんの土下座なんか見慣れてるなんて言えない…)
桃太郎「このとおりだぁぁぁぁ!!胸元の傷は完治したし傷跡も残らないからどうか許してもらえないだろうかあぁぁぁぁ!!」ドゲザー
シンデレラ「桃太郎さん!?頭を上げてください!ど、土下座なんかしないでください!」
桃太郎「一国の王妃を刃で突き刺すとか軍隊が動いても仕方ないと思うけども!!それはなんとか勘弁してもらえないだろうかぁぁぁ!!」ドゲザー
シンデレラ「そんなことさせませんから!本当にやめてください!むしろ私が土下座しなきゃいけないくらいで…!本当にごめんなさい…!」ペコペコ
ラプンツェル「あははー!二人とも気にしぃだなぁー。あっ、それじゃあみんなでドゲザしよっか!それで解決だー!」アハハ
キャイキャイ
青い鳥「桃太郎が成し遂げた事は大きいんだから堂々とすればいいのに。なんで土下座してんの」
ライオン「ぼ、僕はこれでいいと思うなぁ…なんだかんだか桃太郎さんらしいと思うから…」
ロック鳥(翻訳)「何にせよ桃太郎とラプちゃんは友の奪還に成功した。これ以上の喜びはあるまい」ルオオ
937:
乙!
良かったよぅ、本当に良かった!
シンデレラお帰りなさい!!
>>926
素晴らしい!アシェさんのおみ足ハァハァ
ただひとつだけ注文というか…
激しい修業や戦闘の為か、人魚姫がデコった桃太郎の愛刀『鬼屠り』のデコが取れちゃってるんですけどぉ!?(酷評じゃないよ?)
939:
>>1さん乙です!!
お帰り!シンデレラ!!
またきゃらふとですがアシェ(左)とシンデレラ(右)を
(アシェたんの衣装はドレスとか描写は特になかったはず…)
940:

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