つぼみ 「帰ってきた希望の花! 新たなプリキュア誕生です!」【後半】back

つぼみ 「帰ってきた希望の花! 新たなプリキュア誕生です!」【後半】


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ふたば 「そんなの……まだ分からないよ!!」
ダッ……!!!
るみ 「あっ……ふたばちゃん!!」
バニラ 「くっ……僕はふたばを追いかける! るみちゃんは逃げて!」
ピューン!!!
るみ 「………………」 フルフル 「……逃げられるわけ、ないじゃない!!」
ダッ……!!!
………………上空
ダーク 「……心つよき者……どこだ。どこにいる?」
ダーク 「む……?」
ななみ 『こっちです!! こっちに逃げてください!!』
ななみ 『落ち着いて、避難してください!!』
ダーク 「………………」 ニィィ 「……強いな」
ダーク 「あの女のこころの花、頂くとしよう」
――――ビュン!!!!
403:以下、
ななみ 「落ち着いて動いてください!! 転ばないように気をつけて!!」
ななみ (るみ……一体どこへ行ってしまったの……?)
ダーク 「……身内の心配をしながら、しかし己の責務を全うする」
ダーク 「強いな、貴様」
ななみ 「!? あ、あなたは……プリキュア……? いや、違う……」
ダーク 「ほぅ。残念ながら私はプリキュアだ。それも、真のプリキュアと名乗るべきのな」
ななみ 「真の、プリキュア……?」
ダーク 「全てのプリキュアを討ち倒し……今度こそ私が、本物の、唯一のプリキュアとなる」
ダーク 「そのための力を……お前から貰い受ける!!」 バッ……!!!!
ななみ 「!?」
ダーク 「……闇の力よ集え。ダークタクト! ダークフォルテ――――」
―――――― 「やめて!! すずらんちゃん!!!!」
ダーク 「む……?」
404:以下、
ふたば 「……ダメだよ、こんなの! 悲しすぎるよ!!」
ななみ 「うそ……!? ふたばちゃん!?」
ダーク 「お前は……しつこいな……」 ギリッ
ダーク 「邪魔をするというのなら容赦はしない。まずはお前のこころの花から頂こうか?」
ふたば 「そんなの、もうやめようよ……!! 悲しいよ! 辛いよ!」
ダーク 「……うるさい。耳障りだ。お前から黙らせる」
バニラ 「や、やめるんだ!! ダークプリキュア!」
るみ 「そ、そうだよ! やめなさい!!!」
ダーク 「っ……次から次へと、雑魚が現れる……」
ななみ 「るみ……? だ、ダメよ! みんな逃げなさい!!」
るみ 「逃げないよ!! 逃げられないよ!!」
るみ 「私、小さい頃からずっと、お姉ちゃんに守ってもらってたんだもん!!」
るみ 「お姉ちゃんみたいに素敵に笑えないけど、お姉ちゃんみたいに強くなれないけど!!」
るみ 「それでも……私はお姉ちゃんに恩返しがしたい! お姉ちゃんを守りたい!!」
るみ 「そして、今度は私がお姉さんとして、ふたばちゃんたちを守りたい!!」
405:以下、
ななみ 「るみ……」
ダーク 「………………」 ギリッ 「……くだらん芝居だ。何が守りたいだ。力ない者がいきがるな」
スッ……!!!
バニラ (いけない……!!)
ふたば 「ダメだよ!! すずらんちゃん!!!」
ダーク 「……闇の力よ集え! ダークフォルテウェイブ!!!!」
――――――ッッッッッッドンンンンン!!!!!
バニラ 「っ……!!」 (せめて、似ているというのなら……!)
バニラ (こころの大樹よ……僕に……コロンと同じ結末を……!!)
バニラ (――――――せめて、人々を守って……逝かせてください……!!)
――――――ドガfァァァアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!
バニラ 「えっ……?」
?? 「ぐっ……これは……効くな」 ニィ 「……よう、みんな、無事か?」
ななみ 「!? け、ケンジくん!?」
406:以下、
ケンジ 「ははっ……腕っ節は強かないが、ガタイだけは良くてよかったぜ」
ガクッ
ケンジ 「なんとかかんとか……壁になること、だけは……できる……」
るみ 「ケンジお兄ちゃん!!!」
バニラ 「そ、そんな……僕は……」 ギリッ 「僕は、一般市民に、守られて……」
ななみ 「ど、どうしてこんな無茶を……!!! 大事な手だって、こんなに、ボロボロに……っ」
ケンジ 「俺の身体ひとつで、手ひとつで……大事な恋人と、その妹を守れた、なら、本望だ……」
バニラ 「……ッ!!!」 ギリリリッ 「ダーク……ダークプリキュア!!!!!」
ダーク 「……ふん。無駄なことを。まぁいい。まずはその男の身体からこころの花を頂くとしよう」
バニラ 「……ダークプリキュア……!! お前は……ッ!! お前だけは!!!」
ダーク 「何もできない不甲斐なさで、私に当たるなよ、妖精」 ニィィ
ダーク 「人間に守られる妖精か……ふん。滑稽だな」
バニラ 「ダーク……プリキュアぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!」
―――――― 「――――――もうやめて!!!!!」
408:以下、
ダーク 「!?」 (な……なんだ……!? この私が、一瞬気圧された……)
バニラ 「!!」 (心が……命じている。この声を聞けと……!)
ふたば 「もう……やめて……」 ポロッ……ポタッ……ポタッ 「もう、こんな悲しいこと、やめて……」
ふたば 「お互いを傷つけ合って、憎み合って……こんなの、悲しいだけだよ」
ふたば 「何で、ななみお姉ちゃんの恋人さんが、傷つかなくちゃいけないの?」
ふたば 「何でお姉ちゃんたちが、泣かなくちゃいけないの?」
ふたば 「何で、バニラちゃんはそんなに怖い顔をしているの?」
ふたば 「何で……何で、すずらんちゃんは、こんなことをするの?」
ダーク 「ッ……!!」 (な、何だ……? 頭が、揺さぶられる、これは……)
ふたば 「……わたしは、もう、こんなことを終わらせたい。わたしは……」
ふたば 「誰かが傷つくのも、誰かを傷つけるのも、見たくない。そんなの、悲しいだけだもん」
ふたば 「……わたしは、だから……すずらんちゃん。あなたも、助けたい……!」
キィ……キィィイィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!
バニラ (!? まさか、そんな……!! 僕のプリキュアの種が……ふたばに共鳴しているのか!!)
410:以下、
………………超高々度
マリン 「……ねぇ、コフレ、ひとつ気になってたんだけどさ」
コフレ 「なんです?」
マリン 「あの新しい妖精……バニラって、どうしてあんなにしょぼくれた顔してるの?」
コフレ 「ああ……バニラは、ちょっと特別な妖精なんです」
コフレ 「だから、自分に自信がないというか……」
コフレ 「とっても優秀で、優しい妖精なのに……もったいないです」
ブロッサム 「特別な妖精?」
シプレ 「はいですぅ……バニラは、とっても不思議な妖精です」
コフレ 「なんとですね……バニラのプリキュアの種は……――――」
411:以下、
………………明堂学園
バニラ 「僕の、プリキュアの種が……出来損ないの妖精の、僕の……」
パァァァアアアアアアアアアア!!!!
バニラ 「僕の、“二つに割れている” プリキュアの種が……輝いている……!!!」
ふたば 「な、なに……? これ……とっても、温かい……力が、みなぎってくる!!」
るみ 「ふたばちゃん……?」
バニラ 「そうか……あのとき、僕の助けを呼ぶ声が、ふたばに聞こえたのは……!!」
バニラ 「ふたばにプリキュアになる素養があったからなのか!!」 (やれる……僕は……!!)
バニラ 「――僕は、プリキュアを生み出し、一人前の妖精になれるんだ!!」
ふたば 「バニラちゃん、これは……」
バニラ 「……行くよ、ふたば!!」 スッ 「君が思うとおりに、イメージするんだ」
バニラ 「君がなりたい姿を。憧れる姿を……なりたい自分を!!」
ふたば 「なりたい、自分……憧れる、姿……」
―――― 『お手伝いが終わったら、お外に遊びに行きましょうか?』
ふたば 「……わたしは……ふたばは……」
417:以下、
ふたば 「……なりたい」
ザッ……!!!
ふたば 「お姉ちゃんみたいに……素敵な笑顔で、言葉で……誰かを癒せる人に……!!」
ふたば 「お姉ちゃんみたいな、立派な女の人に、なりたい!!」
キィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!
バニラ (いける……やれる!! 今の僕なら……できる!!)
バニラ 「――受け取るんだ、ふたば!! それが君の、ココロパフュームだ!!」
パァァァア……ッッポン!!!
ふたば 「ココロパフューム……? これって……いつか、お姉ちゃんの机で見た……」
バニラ 「そう。なるんだよ。君も。お姉さんのように……キュアブロッサムのように!」
バニラ 「立派なプリキュアに、なるんだ!!」
ふたば 「お姉ちゃんがキュアブロッサム……? ……そっか。うん。分かった」
ふたば 「……わたし、お姉ちゃんみたいな、立派なプリキュアになる」
ふたば (光が……温かい光が、わたしに、教えてくれる……そう)
ふたば (教えてくれる通りに……) ギュッ 「この、ココロパフュームで!!」
418:以下、
ダーク 「なん、だと……!? ココロパフューム……新たなプリキュア……!?」
ダーク 「ッ……!! させるか!!」
バニラ 「もう遅い!! 僕は……僕は、もう一人前の妖精なんだ!!」
バニラ 「行くよ、ふたば!!」 バッ 「受け取って!! プリキュアの種!!」
ふたば (うん。わたしは……お姉ちゃんみたいな、プリキュアになる……!!)
ふたば 「――――プリキュア!! オープンマイハート!!!」
パァァアアアアアアアアアアアアアアア……!!!!!
ダーク 「っ……この、清浄な光は……間違いない……!!」
ななみ 「ふたばちゃんが……プリキュア……!?」
るみ 「す、すごい……これ……温かい……」
………………カッ!!!!     ――――――ットン
ダーク 「ば……馬鹿な!! 何故……こんな……そんな、ガキが……プリキュアだと!?」
?? 「ガキじゃ、ないよ。きちんと自己紹介したでしょ?」
ダーク 「っ……!! 緑色に輝く、プリキュア……!!」
419:以下、
るみ 「すごい!! すごいよ、お姉ちゃん!!」
ななみ 「ええ……きれいね、とっても。それに、何だか心が安らぐわ……」
?? 「……もう、大丈夫だから。わたしが、しっかり、みんなを守るから」
?? 「お姉ちゃんのように。ちゃんと、プリキュアするから」
ダーク 「っ……!! なりたてのプリキュアに何ができる!!」
?? 「……できるよ。だって、救いたいから。あなたを」
ダーク 「ッ……!?」
?? 「あなたを、助けたいから。救いたいから。だからわたしは、戦う……!!」
バニラ 「……さぁ、名乗るんだ。君の名を。君がなりたいその名を、名乗るんだ!」
?? 「わたしは……」 ギュッ 「……わたしは、できることなら、」
?? 「世界を癒し、見守り、育む……そんな、緑のようでありたい」
?? 「花に栄養を与え、人々にきれいな空気を与える……ちっぽけだけど、綺麗な葉っぱのように」
?? 「強く、たくましく……ありたい。だから、わたしは……わたしの、名は……!!」
―――――― 「深緑に舞う一輪の花!! キュアリーフ!!!」
420:以下、
………………超高々度
シプレ 「でもですね、バニラは絶対に出来損ないなんかじゃないです」
コフレ 「プリキュアの種が二つに割れている本当の意味を、知らないだけですっ」
マリン 「本当の意味? なにそれ?」
コフレ 「こころの大樹から、バニラが自分で気づくまで口止めされてるですが……」
シプレ 「実は、バニラは……――」
ムーンライト 「――静かに。そろそろアフリカ大陸の上空に入るわ。気を引き締めなさい」
シプレ 「は、はいですぅ!!」
サンシャイン 「そろそろ降りてみよう。何があるか分からないから、みんな、僕から離れないようにね」
ポプリ 「ポプリからも離れないでくだしゃいね!!」
ムーンライト (上空からだと、さすがに分からないわね……)
ムーンライト (しかし……実際に砂漠の総面積は増えている……)
ムーンライト (“砂漠の意志” がその原因であるとすれば、私たちは……)
ムーンライト (……いえ、考えるのは後ね。今は、戦いに集中しなければ)
421:以下、
………………サハラ砂漠
ブロッサム&マリン 「「………………」」
サンシャイン&ムーンライト 「「………………」」
シプレ&コフレ&ポプリ 「「「………………」」」
ヒューーーー……
マリン 「……な、何にもないね」
ブロッサム 「見渡す限り、一面の砂漠……というよりは、荒野という感じでしょうか」
ムーンライト 「……何の変哲もない岩石砂漠ね。ごく一般的な砂漠よ」
サンシャイン 「へぇ……砂漠って言うから、砂丘みたいなのを思い浮かべていたよ」
ムーンライト 「もちろん、そういう砂漠もあるわ。けれど、そこまで広くはないの」
マリン 「へぇぇ……初めて知ったっしゅ」
サンシャイン 「ともあれ、どこを探したものか……」
ブロッサム 「……よく考えたら、サハラ砂漠ってとても広いですもんね」
コフレ 「広いってどれくらいですっ?」
サンシャイン 「たしか……アフリカ大陸の三分の一くらい」
422:以下、
マリン 「三分の一? にゃはは、なんだそれくらい……」
マリン 「――三分の一ぃ!!?」
シプレ 「お約束ですぅ」
ブロッサム 「ふざけてる場合じゃないですよ、マリン。本当にどうしましょう……」
ムーンライト 「……こんなときこそ、人に頼るのが筋、でしょうね」
ブロッサム 「人?」 キョロキョロ 「しかし、こんな砂漠の真っ直中に、人なんて……」
ムーンライト 「いるのよ、それが。聞いたことないかしら?」
ムーンライト 「“砂漠に住まう者” という名を持つ、彼らのことを」
ブロッサム 「なるほど!! 砂漠の遊牧民の方々ですね!!」
マリン 「砂漠に遊牧民なんているの!?」
ムーンライト 「……まぁ、最近は人口が目に見えて減っているようだけれど」
ムーンライト 「彼らは今でも、伝統を守りながらたしかに生き続けているわ」
ポプリ 「はぇええ……すごいでしゅ」
ムーンライト 「……さて、彼らに会いに行く前に、」 ニコッ 「まずは変身を解きましょうか」
サンシャイン 「あっ……はは。そうだね……」
424:以下、
……………… “砂漠の民” テント群
少年 「………………」
ザザ……ザザザザ……
少年 「……っ、このポンコツラジオめ。ろくろく電波を拾いやしないじゃないか」
少年 「街からそう遠くはないとはいえ、仕方ないか……」
プチッ
少年 (…… “神様” が、全世界に攻撃を始めたらしい)
少年 (砂漠の神はいつも正しい。だから、これもきっと……正しいこと……)
少年 「考えるのはやめよう」
ザワ……ザワザワザワ……
少年 「うん……? なんか外が騒がしいな……」
『うわわわわ!! あたし本物のラクダって初めて見たよ!!』
『ち、ちょっとえりか!! 騒ぎすぎですよ!!』
『えりか!! 勝手に触っちゃダメ……って乗っちゃダメだって!!』
『……まったくもう』
425:以下、
………………テント外
少年 「なんだってんだ……?」
大人1 「こ、コラ!! 君たち何をやっているんだ!!」
?1 「わっ……わわわわ……」 ズルッ……ドタッ!! 「ふげっ!?」
少年 「あのガキ……勝手にラクダに乗ったのか……」
?2 「す、すみませんすみません!! すみません!!」
?2 「この子、初めて見たラクダに興奮してしまったようで……本当にごめんなさい!!」
?3 「本人も反省しておりますので、どうか許してください!!」
?4 「申し訳ありません。保護者である私の落ち度です」
大人1 「あー……いや、いいよ。子どものやったことだもんな。そうは怒らないよ」
?1 「むきーーー!! あたしは子どもじゃむぐぅ!!」 ?2 「えりかは」 ?3 「黙ってて!!」
?1 「むごむごむごーーーーー!!」
少年 「……なんだぁ、アイツら……?」
大人1 「それで……君たちは一体どこから来たんだい? 見たところ、東洋人のようだが……」
?4 「……日本から、この近辺の調査で参りました」 ペコリ 「私は、月影ゆりと申します」
427:以下、
………………
大人1 「それで、君たちは一体何を調査しに来たんだい?」
少年 (……何で俺が給仕をやらされてんだよ……クソ親父め)
少年 (たしかに “砂漠の民” は客人をもてなすもんだが……)
少年 (コイツら、こんな軽装で砂漠に来たって……明らかに怪しいだろ!!)
ゆり 「実は、本日未明、全世界で一斉に “砂漠化” が起こりまして」
少年 「!?」
ゆり 「そのことに関して、砂漠に住まう皆様に何か情報を頂けないかと参じた次第でございます」
大人1 「砂漠化……? それは、一体どういうことだろう?」
ゆり 「実は……――」
少年 「………………」
トトトトト……
つぼみ 「?」 (どうしたんでしょう。あの子……体調が悪そうでしたけれど……)
えりか 「つぼみ?」
つぼみ 「……すみません。ちょっと席を外します」
428:以下、
………………
少年 (……やっぱり、本当だったんだ。神様……本当に、全世界を、砂漠に……)
少年 (これは、正しいこと……。だから、大丈夫……)
少年 (決して間違っていたりはしない……だって、俺は……)
少年 (“砂漠の意志” ……神様に、そう言われたから……)
?? 「あ、あの……」
少年 「!?」 ビクッ 「お、お前は……」
つぼみ 「あ……は、初めまして。花咲つぼみと申します」
少年 「……ふん。日本人がわざわざこんな場所まで。ご苦労なことだな」
つぼみ 「いえ……わたしたちの使命ですから」
少年 「そうかい」
つぼみ 「あの、あなたは何かご存知ではないですか? 世界の、砂漠化について」
少年 「……知らねぇよ、何も」
つぼみ 「そう、ですか……」
少年 「………………」 スクッ
437:以下、
つぼみ 「あ……どちらに?」
少年 「……壊れかけのテントの補修だ」
つぼみ 「あ、あの……それ、お手伝いさせてもらってもいいですか?」
少年 「……何で?」
つぼみ 「いえ……砂漠で暮らすなんて、きっと大変でしょうから、お手伝いをさせてもらいたくて……」
少年 「……余計なお世話だ」
つぼみ 「あ……あう……」
少年 「……大変だが、」
つぼみ 「え……?」
少年 「……大変だが、俺たちはこの生活に誇りを持っている。余計な同情なんていらない」
つぼみ 「あ……! じゃあ、正直に言います!!」
少年 「あん?」
つぼみ 「ここの生活がとても興味深いので、見学も兼ねてお手伝いさせてください!」
少年 「………………」 フイッ 「……勝手にしろ」
つぼみ 「あ、ありがとうございます!!」
439:以下、
………………
カンカンカンカン……!!!
少年 「………………」
ヨロヨロヨロ……
少年 「……?」
つぼみ 「はっ……はひっ……あ、あの……これ、持ってきましたぁ……」
少年 「……それくらいでフラフラかよ。弱いな」
つぼみ 「め、面目ありませぇん……」 ペタッ
少年 「まぁいい。助かった。ありがとよ」
つぼみ 「これ……テント補修用の、布、ですよね……すっごく重くて、ビックリしました……」
少年 「補修した部分は必然的に弱くなる。丈夫な布を使わざるをえないんだよ」
つぼみ 「はぁ……なるほど」 ニコッ 「生活の知恵、ですね」
少年 「ああ。壊れたら直せばいい。ずっと昔から受け継がれている経験と伝統でな」
少年 「じゃあ、今度は鋲がほしいな。そこらの灌木を切ってきてくれ」 スッ
つぼみ 「……!? わ、わひっ!? お、おっきいナイフ!?」
440:以下、
少年 「それくらいで驚くなよ……ほら、早く受け取れ」
つぼみ 「は、はい……」
少年 「恐る恐る扱う方が危険だ。刃物を持ったこともないのか?」
つぼみ 「……これは剪定ばさみこれは剪定ばさみこれは剪定ばさみ」 コクッ 「大丈夫です」
少年 「……? まぁいい。それで使えそうな枝を数本切って持ってきてくれ」
つぼみ 「はい! 行ってまいります!!」
ビューン
少年 「……今度こそ面倒がって逃げると思ったが……何なんだ、あの女?」
少年 「………………」 フン 「……まぁ、どうでもいい」
カンカンカン………………
つぼみ 「……取ってきました!!」
少年 「お、おう……早かったな……」
つぼみ 「枝を切ることだけは得意なんです!」
少年 「そうかい」
つぼみ 「はい!」
442:以下、
つぼみ 「それにしても驚きました。こんな乾燥地帯でも生える草木はあるんですね」
少年 「知らん。俺たちはその場所を経験として語り継ぐだけだ」
つぼみ 「……すごいです。ご先祖さまから今まで、ずっと受け継がれてきたんですね」
少年 「ふん……どうせ、不便で退屈そうだと思っているんだろう」
つぼみ 「そんなことありません! こんな風に皆さん力を合わせて生きている姿を見ると、」
つぼみ 「わたしも、もっとがんばらなきゃって思えてきます!」
少年 「……ふん。しかし、お前たちみたいな人間が、砂漠を否定しているんだ」
つぼみ 「えっ……?」
少年 「砂漠はずっと昔からここにあった。それこそ、人間なんかが生まれるずっと前からな」
少年 「なのに……世界中の人間は、砂漠を目の敵にする。いけないものだと糾弾する」
少年 「……たしかに、この生活は不便で退屈で……大変だ」
少年 「けど、俺はこの生活に誇りを持っている。俺は “砂漠の民” として誇り高く生きたいんだ」
つぼみ 「………………」
少年 「……まぁ、この部族の人間も、どんどん街に行ってしまっているんだがな」
少年 「この部族にももう大した数の人間はいない。それでも俺は、砂漠で生きる」
447:以下、
つぼみ 「………………」
つぼみ 「……多分、その通りだと思います」
少年 「あん?」
つぼみ 「わたしは心のどこかで、砂漠とは怖いものだと思っていました」
つぼみ 「なくなった方がいいって……悪いものなんだって……そう、思っていました」
少年 「………………」
つぼみ 「けれど、違うんですね。砂漠は、きちんとひとの心を育んでいるんですね」
少年 「え……?」
つぼみ 「外の草木も、懸命に生きようとしていました」
つぼみ 「そしてあなたも……まっすぐ、自分自身に誇りを持って生きていらっしゃいます」
つぼみ 「砂漠は厳しくも……しっかりと、心と命を、育んでいるんですね」
ペコリ
つぼみ 「ごめんなさい。わたし、考えを改めます」
少年 「………………」 プイッ 「……あんたみたいな人も、いるんだな」
少年 「あんたみたいな人ばかりだったら、神様も、あんなこと、しなかったかもしれないのに……」
448:以下、
つぼみ 「え? 神様……? それって……」
少年 「……全世界の砂漠化、だろ? それを起こしたのは、砂漠の神……」
少年 「いや、“砂漠の意志” ……って言ってたかな」
つぼみ 「!? あ、あなた…… “砂漠の意志” を知っているんですか!?」
少年 「……俺たちの部族。いや、ほとんど全部の遊牧民が知ってるよ」
少年 「砂漠を司る、俺たちの神様さ」
………………
大人1 「なるほど……そんなことが起こっているのか
大人1 「しかし、ここではそういった被害はないな……」
大人1 「まぁ、ここは元々からして砂漠だから、当たり前かもしれないが」
ゆり 「……そう、でしょうか?」
大人1 「? どうかしたかい?」
ゆり 「ここは砂漠のただ中です。だからこそ……被害がより甚大になる可能性もあります」
大人1 「はは……まさか、そんな……砂漠を砂漠にする意味なんてないだろう」
ゆり (“砂漠の意志” の目的が、全世界を砂漠とすることだけならば、たしかにその通り)
449:以下、
ゆり (けれど、違う…… “砂漠の意志” の目的は、全人類のこころの花を枯らせること)
ゆり (ならば……)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!
大人1 「……!!?」
ゆり 「……?」
えりか 「? 何、この音? 地鳴り?」
いつき 「いや……これは……風……ううん。風に、何かが……」
大人1 「冗談だろう……!! この音は、まさか……そんな……!!」
ゆり 「どうかされたのですか? この音は、一体……?」
大人1 「……砂嵐だよ。こんな時期に来るなんて、普通はありえないのだが……」
えりか 「砂嵐?」
大人1 「ああ……それも、この音からして……かなり大きい」
大人1 「砂嵐はとても危険なものなんだよ。君たちはここから動かない方がいい」
大人1 「私はラクダたちを避難させなければならない。それでは、失礼するよ」
タタタタ……
451:以下、
ゆり 「………………」
いつき 「……ゆり、えりか」
えりか 「……うん。何か、すっごく嫌な感じがするっしゅ」
ゆり 「それも、段々と近づいてきている……」
ゴゴゴゴゴゴ……
ゆり 「……恐らくは、この音とともに」
いつき 「季節外れの砂嵐。それも、かなり大きいときた」
いつき 「これはつまり、そういうことなのかな」
ゆり 「間違いないでしょうね。“砂漠の意志” の目的は、すべてを壊すこと」
ゆり 「たとえ砂漠に住まう者たちであったとしても例外ではないわ」
えりか 「世界中が砂漠で包まれたことによって、ひとのこころの花は弱ってる」
えりか 「けれどここのひとたちにとって、そんなのは当たり前のこと」
えりか 「だから、“砂漠の意志” はここを直接……」
いつき 「……なんて卑劣なことを!」
ゆり 「ええ。けれどちょうどいいわ。私たちの手で、“砂漠の意志” と決着をつけましょう」
452:以下、
………………
少年 「そんな……どうして……?」
つぼみ 「なんですか、あれ……遠目からでもはっきりと見えます……」
つぼみ 「黄金に輝く……壁……?」
少年 「……とてつもなく強大な砂嵐だ。あんなの、今まで見たこともないぞ」
つぼみ 「砂嵐……?」
少年 「外に出ていては危険だ。お前は早くさっきのテントに避難しろ」
つぼみ 「あ、待ってください! “砂漠の意志” のこと、もう少しだけ教えてください!」
少年 「…… “砂漠の意志” は俺たちが信じる神――砂漠の神だ……と思う」
少年 「俺は少なくとも、“砂漠の意志” の声を聴いたとき、それが神だと思った」
つぼみ 「!? “砂漠の意志” と会話をしたんですか!?」
少年 「ああ。神様は、俺にだけ声を聴かせてくれた。神様は……」
少年 「……砂漠を軽んじる者たちに罰を与えると、そう言っていた」
つぼみ 「罰……?」
少年 「……悪い。俺はラクダたちを避難させなきゃならない。お前は早くテントに行け」
453:以下、
えりか 「つぼみ!!」
つぼみ 「……えりか」
コフレ 「……? どうかしたです?」
つぼみ 「………………」
シプレ 「つぼみ……?」
つぼみ 「……あの……砂漠って、悪いものなのでしょうか?」
えりか 「えっ……? ち、ちょっとつぼみ、いきなり何言い出すの?」
つぼみ 「……砂漠は、ずっと昔からここにあったんです」
つぼみ 「わたしたちが生まれるずっと前から。ずっと、ずっと」
ゆり 「………………」
つぼみ 「けれどわたしたちは砂漠を悪者にして……なければいいと思っています」
つぼみ 「……それって、正しいことなんでしょうか……?」
ゆり 「……たしかに、現代で砂漠というものに良いイメージを抱いている人は少ないでしょうね」
ゆり 「砂漠もこの地球の一部。なければいいというものではないわ」
ポプリ 「でも、だからといって、世界中が砂漠になっていいわけはないでしゅ!!」
455:以下、
つぼみ 「それは、そうですが……」
いつき 「……それに、“砂漠の意志” は、全人類のこころの花を枯らそうともしている」
いつき 「僕らプリキュアは、そんなことを決して許してはおけない」
つぼみ 「………………」
いつき 「……けど、話すことはできる。幸いなことに、“砂漠の意志” との会話は可能だからね」
つぼみ 「えっ……?」
えりか 「何に影響されたのかは知らないけどさ、」 ニッ
えりか 「つぼみらしいよね。こんなときでも、そんなこと考えられるってさ」
コフレ 「ですっ」
つぼみ 「えりか、コフレ……」
ゆり 「環境を破壊しているのは私たち人間。だというのに、砂漠を恨むっていうのは確かに筋違いだわ」
ゆり 「……話して聞いてくれるなら良し。けれどそれでダメなら……分かっているわね?」
つぼみ 「はい! そのときは……わたしたちの手で、なんとかしましょう!」
ゆり 「ええ。その意気よ、つぼみ」
いつき 「……そろそろ行こう。奴が砂嵐とともに来る」
456:以下、
………………明堂学園
ダーク 「っ……キュアリーフだと……!? 馬鹿なッ!」
ダーク 「この状況でこころの大樹にまだ新たなプリキュアを生み出す力が残っていたなど……!」
リーフ 「……こころの大樹は、今も成長を続けているんだよ」
バニラ 「ひとの心が強くあり続ける限り、こころの大樹は邪悪な者たちと戦う戦士を生み出し続ける!!」
バニラ 「さぁ覚悟しろ、ダークプリキュア! キュアリーフが現れた今、お前もこれでおしまいだ!」
ポスッ
バニラ 「わ……わふっ……」
リーフ 「……バニラちゃん。そんなひどいこと言ったらダメだよ」
バニラ 「ひどいって……でも、ダークプリキュアは彼をあんなに傷つけたんだよ!?」
ダーク 「………………」
リーフ 「……それは、そうだけど……でも、ごめんなさいすることはできるよ」
バニラ 「ご、ごめんなさいって……そんなの……」
ケンジ 「そうだ、その通りなんだ! ごめんなさいすれば解決だ!」
バニラ 「そうそう! 普通は……――ってぇぇえええ!?」
457:以下、
ケンジ 「すばらしい考え方だな、新しいプリキュアは! 俺もそれに全面的に賛成だ!」
ケンジ 「それでこそプリキュア! それでこそ俺たちが憧れるヒーローだ!!」
バニラ 「ひ、被害者本人が大絶賛してる……!?」
リーフ 「ななみお姉ちゃんの恋人さん!」
ケンジ 「友達なんだろう? だったら、救ってみせるんだ! 次代のプリキュア……キュアリーフ!!」
リーフ 「う……うん!!!!」
リーフ 「わたしは……キュアリーフは、絶対にすずらんちゃんを救い出してみせる!!」
ダーク 「っ……! 黙って聞いていれば勝手なことを!!」
ダーク 「私は “すずらん” などという名ではない! そしてお前の友達でなどありえない!!」
リーフ 「……ううん。あなたはすずらんちゃんだよ。そして、わたしの友達だよ」
ダーク 「っ……いいだろう。ならばその戯れ言ごと、まずはお前を打ち倒すまでだ!!」
――――ッッドン!!!
リーフ 「ッ!?」 (は、い……!!)
ガッッッッ……!!!!
リーフ 「きゃああああああああああ!!!!」
458:以下、
バニラ 「キュアリーフ!!」
ダーク 「ふん。他愛もない。私の蹴り一つ満足に防げぬのか」
リーフ 「いっ……痛い……」 (これが、プリキュアの戦い……すごく、怖い)
リーフ (一発で吹き飛ばされちゃった……。でも、それでも……わたしは……)
ザッ……!!!
リーフ 「……決めたもん。変わるって。お姉ちゃんみたいに、しっかりプリキュアやるって」
リーフ 「泣いている人を癒してあげたい。苦しんでいる人を助けてあげたい。だから、わたしは……」
リーフ 「……痛くても、恐くても……立ち上がる。絶対に」
ダーク 「くだらん。ブロッサムほどの力も持たぬ幼きプリキュアに何ができる」
リーフ 「何ができるかじゃないよ。何がしたくて、何をするかだよ」
ダーク 「戯れ言を!!!!」
――――――カッ……!!!!
リーフ 「きゃっ……!?」 ドン!!! 「な、何、これ? 風!?」
バニラ 「ダークプリキュアの瞳から放たれる衝撃波だ!! 何者をも吹き飛ばすほどの力を秘めている!!」
バニラ 「けれど大丈夫だ! 君は、“君” を思い出せ! 君がなりたい自分を……そのプリキュアの名を思い出せ!」
461:以下、
リーフ 「なりたい、自分……この、名前……」
ダーク 「ふん……」
ギィィィイイイイイ……!!!!
バニラ 「もう一発くる!! リーフ!!」
リーフ 「わたしは、そう……キュアリーフ!!」
――――――――ッッッッドンンン!!!!
リーフ 「――リーフ・ミラージュ!!」
ザザザザザザ……ッッッシュンンン!!!!
ダーク 「な……何ッ……!? 分身だと……!?」
バニラ 「……木の葉は空を舞い、そして数多の葉っぱと擦れ合い、その姿を隠す」
バニラ 「なるほど。慎ましやかに人々を癒したいと願った、キュアリーフらしい回避能力だ」
バニラ (キュアリーフ。君は、キュアマリンのように爆発的なパワーを持つわけではない)
バニラ (キュアサンシャインのように剛の攻撃・防御能力を持つわけでもない)
バニラ (キュアムーンライトのように万能の力を持つわけでもない)
バニラ (しかし君は、キュアブロッサムのようなトリッキーな動きを得意とするようだ)
462:以下、
ダーク 「馬鹿な……! 私の衝撃波をも完全にしのいだというのか……!?」
リーフ 「キュアメロディが言ってた!! 駄々っ子にはお灸を据えなきゃだって!!」
リーフ 「……だから、今度はこっちから行くよ、すずらんちゃん!!」
――――ッッドッッ!!!
ダーク 「っ……!!」 (予想以上に、い……!?)
バニラ (そう……彼女の本質は宙を舞う葉の如く鮮やかで先の読めない動き)
バニラ (だからこそ、強敵であるダークプリキュアにも勝利しうる可能性を秘めている)
リーフ 「行くよ、最大加!! リーフ・アクセル!!」
ダーク 「!?」 (スピードが、加度的に――ッ!?)
ダーク (また分身……いや、残像……!? どれが本物……どれを、狙ったら――)
リーフ 「――迷っちゃダメだよ、すずらんちゃん! それから、痛かったらごめんね!!」
ダーク (しまっ……!? このタイミングで懐に!! 反応が、追い、つか――)
リーフ 「――プリキュア!! 分身パンチ!!」
ドゴォォオオオオッッ!!!!
ダーク 「あ、がッ……!!?」
463:以下、
バニラ 「!! ダークプリキュアに隙ができた! リーフ、今だ!!」
リーフ 「う、うん!!」
リーフ 「集まれ、花のパワー!!」
パァァァァアアアアアアアア……!!!!!
リーフ 「リーフタクト!!」
バニラ (すごい……! もうタクトを使いこなしている!)
リーフ 「……花よ閃け!! プリキュア・グリーンフォルテウェイブ!!」
――――――ッッッッッッッッッドンンン!!!!!
ダーク 「ッ……!! この、程度で……」 スッ 「舐めるなぁぁああああああああ!!!」
ダーク 「闇の力よ集え! ダークフォルテウェイブ!!」
――――――ッッッッッッッッッドンンン!!!!!
      ――――――――――カッッッッ……!!!!!!
ッッッッドォォオオオオオオオ!!!!!!!!
ななみ 「す、すごいパワーだわ。とても近寄れない……」
るみ 「ふたばちゃん……ううん、キュアリーフ……がんばって!!」
464:以下、
リーフ 「………………」
ダーク 「………………」
ズキッ!!!
リーフ 「……っ」
バニラ 「! キュアリーフ!!」 ピューン 「リーフ!! 大丈夫かい?」
リーフ 「だ、ダメ……分かるの。完全に、押し負けちゃった……」
ダーク 「……これが貴様と私の格の違いだ。思い知っただろう、キュアリーフ」
ダーク 「プリキュアになったばかりの貴様では、私には勝てん」
リーフ 「そんなこと……」 ズキッ 「痛っ……!」
ダーク 「恐らく貴様は史上最年少のプリキュアであろう。身体に無理が来ていることは想像に難くない」
ダーク 「そんな貴様では、本調子でない私すら倒せない」
リーフ 「っ……!」 (ダメ……身体に、力が……)
ダーク 「無様だな、キュアリーフ。その程度で私に立ち向かったこと、地獄で後悔するのだな」
ギィィィィイイイイイ……!!!!
リーフ 「………………」
466:以下、
ダーク 「……何だ、その目は」
ダーク 「なぜ、諦めない。なぜ、絶望しない。なぜ……まだそんな目ができる……!!」
リーフ 「……決まってるよ、そんなの」
リーフ 「わたしが諦めたら、すずらんちゃんを助けられないもん!!」
ダーク 「っ……」 (なんだ、こいつは……なぜ怯えない。恐怖しない……何故だ……!!)
ダーク (我が身を顧みる気すらないのか……ただ、ただ “すずらん” のために……!)
ダーク 「……いいだろう。お前にはまず、絶望の色を知ってもらうとしよう!」
ジャキッ!!!!
ななみ 「え……!?」 るみ 「ひっ……」 ケンジ 「な、何を……!!」
リーフ 「!? た、タクトをみんなに向けて、どうするつもりなの!!」
ダーク 「決まっている」 ニィィ 「こころの花が枯れ果てる瞬間を、お前の目に焼き付けてやる」
バニラ 「なっ……!! や、やめ――――」
ダーク 「――――遅い!! ダークフォルテウェイブ!!」
――――――ッッッドンンン!!!!
ゴォォォォオオオオオオオオオオオ!!!!
467:以下、
バニラ 「っ……!!」 ギリッ 「無関係な、人間を、狙って……わざわざ……!!!」
バニラ 「ダーク……ダークプリキュア!! お前は……お前はあぁああああああ!!!」
ダーク 「そうだ。それこそ正しい反応だ。私を恐れ、私を憎み、そしてこころの花を枯らせるがいい!!」
ダーク 「どうだ、キュアリーフ? これでお前も私を下らぬ名で呼ぶようなことは、――――なッ!!?」
ダーク 「ば……っ、馬鹿なッ……!!」
るみ 「キュア、リーフ……?」
ななみ 「そんな……」
ケンジ 「キュアリーフ、君は、どうやって……」
リーフ 「……良かった。無事で。みんなが、無事で……」
バニラ 「そんな……なんて、ことだ……これは……」
ダーク 「なっ……何が起きたというのだ!?」
ダーク 「――なぜだ……! なぜその人間たちが、別の場所に移動している……!?」
バニラ 「……キュアリーフは、己の能力をフルに使いこなしたんだよ」
バニラ 「分身による回避運動と、残像すら生み出すほどの瞬間加……」
バニラ 「それらを駆使し、君の攻撃からあの三人を守りきったんだ」
468:以下、
ダーク 「なん……だと……!?」
バニラ 「まだプリキュアになったばかりだというのに……まだ六歳だというのに……」
バニラ 「なんて凄まじい潜在能力だ……」
ダーク 「そこまでして、あの人間どもを守りたかったというのか……!」
バニラ 「……なぜわからない? それだけじゃないさ」
ダーク 「な、なに……?」
バニラ 「リーフは彼女らを守りたかっただけじゃない。君に、これ以上罪を重ねてほしくなかったのさ」
ダーク 「!?」
バニラ 「……ここまでやられたのなら、僕ももうキュアリーフに全面的に同意せざるをえないな」
バニラ 「本気で君を救いたいんだ、リーフは。だから僕も、その意志を尊重しようと思う」
ダーク 「っ……誰も彼も、世迷いごとをほざく……!!」
バニラ 「それでも、リーフも僕も、それを諦めることはない。絶望することもない」
ダーク 「っ……!!」
リーフ 「……ななみさん、るみさん、ケンジさん。ごめんなさい、巻き込んでしまって……」
るみ 「な、何言ってるの!? 助けてくれたんじゃない! ありがとう、キュアリーフ」
470:以下、
ケンジ 「……ななみ」
ななみ 「ええ。キュアリーフ、わたしたちは邪魔にならないように逃げているわ」
ななみ 「るみ、行くわよ」
るみ 「う、うん……」 ギュッ 「キュアリーフ……ごめんね。がんばってね!!」
リーフ 「うん!!! ありがとう、るみさん!」
ダーク 「っ……そこまでの潜在能力を秘めながら、それを今の今まで隠していたというのか……」
ダーク 「このダークプリキュアも舐められたものだな……ッ!!」
リーフ 「………………」 ポタッ……ポタッポタッ…… 「っ……うっ……」
ダーク 「……!?」
リーフ 「……っ……ぐすっ……ねえ、すずらんちゃん、どうして? どうしてこんなことをするの?」
リーフ 「悲しいよ。つらいよ。こんなの……ダメだよ」
ダーク 「っ……! さっきから言っている。この世界を砂漠とすることが、私の使命だからだ」
ダーク 「……そして私は、今度こそこの手で、全てのプリキュアを葬り去らなければならない」
ダーク 「そうすれば……私は、本物になれる。本物の……キュアムーンライトになれる」
リーフ 「なに、それ……?」
471:以下、
バニラ 「……ダークプリキュアは、キュアムーンライトの遺伝子から作られたんだ」
バニラ 「だから……彼女は、キュアムーンライトを倒して、自分が本物になりたいんだ」
リーフ 「………………」
ダーク 「分かったのなら、おとなしくここで滅べ。私は、お前の言葉など聞く耳持たん」
リーフ 「……おかしいよ、そんなの」
ダーク 「………………」 フッ 「……おかしいと思うのなら、私を止めてみせるのだな」
ダーク 「プリキュアを倒すためだけに生み出された、人形の私をな……――――」
リーフ 「――――だから……!! それがおかしいって言っているんだよ!!」
ダーク 「……何だと?」
リーフ 「すずらんちゃんはすずらんちゃんなのに……他の誰かになりたいなんて……」
リーフ 「そんなの絶対、おかしいよ……!! あなたはあなただよ!!」
ダーク 「ッ……!」
―――― 『お前は、私の――――――』
ダーク 「な……何を……ッ!!」 (この、記憶は……一体、私は……)
472:以下、
リーフ 「すずらんちゃんは人形なんかじゃないよ! すずらんちゃんは、すずらんちゃんだよ!!」
リーフ 「他の誰でもない! 他の誰かに変わる必要なんてない!」
リーフ 「……なのに、何で……? 何で、人形だなんて言うの?」
リーフ 「本物になるなんて言うの? あなたは……本物のあなただよ……」
―――― 『お前は、私の――――――』
ダーク 「ッ……う、る……さい……!! うるさいうるさい……!!」
ザッ……!!!!
ダーク 「私は、プリキュアを倒すためだけに生み出された人形だ! それ以外の何者でもない!!」
ダーク 「だから私は、プリキュアを倒し、本物のプリキュアとなる!! それだけだ!!」
リーフ 「すずらんちゃん!!」
ダーク 「――――私を……その名で呼ぶな!!」
ギリッ
ダーク 「……闇の力よ集え」
ギィィイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
バニラ 「!? あ、あれはまずい……!!」
476:以下、
リーフ 「すずらんちゃん……すずらんちゃん!!!」
バニラ 「ダメだキュアリーフ!! 逃げろ!!」
バニラ 「今の君では、あの攻撃を避けるどころか、耐えることすら叶わない!!」
リーフ 「えっ……?」
ダーク 「もう遅い!!」 ニィ 「これで終わりだ!!」
ダーク 「――――ダークパワー・フォルティシモ!!!!」
ッッッッッッッッッドンンンン!!!!!
リーフ 「!!?」 (は、――――――)
――――――ッッッッッッッッッッッッッッッッッッド!!!!!
リーフ 「――――きゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」
バニラ 「リーフ!? キュアリーフぅぅうううううううううう!!!!」
……スタッ
ダーク 「……やはり貴様は弱い。この程度、キュアムーンライトであれば容易く凌いでいたぞ」
バニラ 「っ……!!」 キッ 「弱くなんかない!! リーフは、逃げなかったんだ!!」
バニラ 「君を救いたいから、助けたいから……だから、逃げなかったんだ!!」
477:以下、
ダーク 「妖精までもが何を。私はダークプリキュアだぞ?」
バニラ 「……憎いさ。僕だって、憎い……君が憎い!!」
バニラ 「けれど、リーフが……プリキュアが、助けようとしているのに……」
バニラ 「それを否定するようなことを、僕はしたくない!!」
ダーク 「……くだらん」 スッ 「まぁいい。どうせお前たちも始末しなければならない」
ダーク 「お前ごと、キュアリーフを消滅させよう」
バニラ 「……僕は逃げない。キュアリーフだって逃げなかった。だったら、僕も逃げない!!」
ダーク 「………………」
――――――――さようなら、キュアムーンライト――――――――
ダーク 「ッ……!?」 (キュアムーンライトの妖精……)
ダーク (この妖精は……似ている……?)
ダーク (私は、また……また、同じ事をするのか……?)
ダーク (私はまた……妖精を、滅ぼすのか……?)
ダーク (私は……――――)
478:以下、
ダーク 「……私は……人形だ。心など持ち合わせていない」
ダーク 「だから、そう……私は……」
ダーク 「私は、人形……プリキュアに……本物の、プリキュアに、なる、ために……」
「――――ちがうよ……そんなの、おかしいよ……」
ダーク 「なっ……!?」
ググッ……グググッ……!!!
ダーク 「キュアリーフ……!? ダークパワー・フォルティシモを受けてなお立つというのか!?」
リーフ 「あなたは人形なんかじゃないよ! だって……だって!!」
リーフ 「――――だったらどうして、あなたはそんなに悲しそうな顔をしているの!!!!」
ダーク 「ッ……!? か、悲しそう、だと……馬鹿なことを言うな!!」
ダーク 「貴様は、何を言っているんだ!!」
リーフ 「……だって、わたしには分かるもん」
リーフ 「……人形なんて嘘だよ。あなたはだって、わたしのことを、励ましてくれた」
リーフ 「わたしに、勇気をくれた。元気をくれた。色々なものをくれた」
480:以下、
リーフ 「心のない人形に、そんなことはできないよ……!!」
ダーク 「ッ……」
リーフ 「そして今、そんなすずらんちゃんが悲しそうな顔をしているのなら……わたしは……」
リーフ 「……今度は、わたしがすずらんちゃんを、助けてあげたい」
リーフ 「わたしは……あなたを助けたい!! 悲しそうで辛そうなあなたを、救いたい!!」
リーフ 「――――――あなたは、わたしの……友達だから」
ダーク 「……っあ……うが、ああああああああああああああああ!!!!」
バニラ 「!?」 (な、何だ……? ダークプリキュアの様子がおかしい……)
ダーク 「私、は……人形じゃ、ない……私は……私は……」
―――― 『お前は、私の…………――――――』
ダーク 「私は……」
―――― 『お前は、私の……………………』
―――― 『――――――――私の、娘だ』
ダーク (そう……そうだ……私は……私は……!!!)
482:以下、
バニラ 「い、一体何が……!?」
ヂッ……ッッッッッッッッッッドォオオオオオオオオオオオオ……!!!!!!
リーフ 「!? す、すずらんちゃん!! すずらんちゃん!!!?」
ダーク 『ば……馬鹿な!? 器が拒絶反応を起こしただと……!? これは、一体……』
すずらん 「う……ぐっ……」
リーフ 「!!! すずらんちゃん!!!」
バニラ 「!?」 (ダークプリキュアとすずらんが分かたれた……これは……――ッ!?)
トトトトトト……!!!
リーフ 「すずらんちゃん!! すずらんちゃん、しっかりして!!」
すずらん 「……ふた、ば……いや、キュア、リーフ……ありがとう……」
リーフ 「えっ……?」
すずらん 「お前の、おかげだ……私は、何より大切な記憶を、取り戻すことが、できた……」
すずらん 「ありがとう……ありがとう。新たな、プリキュア……」
すずらん 「強き癒しの力を持つ、深緑の恵みを表わす、プリキュア……キュアリーフ」
すずらん 「――――――ありがとう。私に、お父様の言葉と温もりを思い出させてくれて」
484:以下、
ダーク 『何だ……!! これは一体どういうことだ……!?』
バニラ 「………………」 (まさか、これは、そんな……)
バニラ 「こんなことが、起こるなんて……」
バニラ 「――心のない人造の生物に、こころの花が生まれたというのか……」
ダーク 『!? まさか、月影博士は、これすらも見越して……!?』
すずらん 「一体、どういう、ことだ……?」
バニラ 「……君に心が……そして、こころの花が生まれた」
すずらん 「え……?」
バニラ 「綺麗な、純白のスズランだ。君は、もう人形ではない。ひとりの人間だ」
すずらん 「!? だから、私は……ダークプリキュアの意志と、強制的に分離したのか……」
ダーク 『ぐっ……何をしている!! 戻れ、ダークプリキュアの器!!』
ダーク 『この世界を砂漠とする――プリキュアを倒すことは、お前の目的でもあるはずだ!!』
すずらん 「………………」 スッ 「……いや。私はもう、そんなことを望まない」
ダーク 『!? 何だと……!?』
すずらん 「……私は、思い出したからな。お父様が、私を認めてくれた言葉を」
485:以下、
すずらん 「だから私は、もうお前の思うとおりにはならない。私は……」
すずらん 「私は人形としてではなく、プリキュアの代わりとしてでもなく、」
すずらん 「――私は、私として生きていく。砂漠の意志ではなく、自分自身の意志で生きていく」
ダーク 『貴様……!? 正気か!!』
すずらん 「……ああ。私は数え切れない罪を犯した。今さらそれが許されるとは思っていない」
バニラ 「………………」
すずらん 「死ねと言われればおとなしく滅びよう。しかしお前たちの軍門に下ることだけは是としない」
ダーク 『ッ……!!! ならばいい! 貴様のこころの花を頂く!!』
――――ッダンンン!!!
すずらん 「……っ!!」
ダーク 『そしてもう一度、その器を明け渡してもらうぞ!!』
――――――――――――ギィインンン!!!!!
ダーク 『なッ……!?』
リーフ 「……させない。絶対に……」 キッ 「そんなこと、わたしが絶対にさせない!!」
すずらん 「ふ、ふたば……?」
487:以下、
リーフ 「……わたしが守るよ。だから安心して」
リーフ 「すずらんちゃんがすずらんちゃんでいることを選んだのなら、」
リーフ 「わたしは、プリキュアとして、そしてすずらんちゃんの友達として、あなたを守るよ」
すずらん 「ふたば……っ」
ダーク 『っ……邪魔をするな……!!』
ギィィイイイイイ……!!!!
ダーク 『たとえ器がなくとも、貴様を潰す程度造作ない!!』
ダーク 『――ダークパワー・フォルティシモ!!』
バニラ 「もう一発……!? キュアリーフ!!!」
リーフ 「………………」 ニコッ 「……大丈夫。安心して」
―――― 『もう大丈夫ですよ、ふたば。怪我はないですか?』
バニラ 「!?」 (何だ……? 今、リーフがブロッサムと重なって見えた……)
リーフ 「集まれ! 花の力よ!!」
バニラ (あの、タクトの振り方は、まさか……!!)
リーフ 「――――プリキュア・フローラルパワー・フォルティシモ!!」
489:以下、
すずらん 「あれは……キュアムーンライトと同じ……」
バニラ 「……プリキュアになったばかりだというのに、単体でのフォルティシモを……」
バニラ 「リーフは、史上最年少にして……史上最強となる可能性を秘めたプリキュアかもしれない……」
ダーク 『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
リーフ 「はああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
――――――――――――――――――――――――――ドッッッッッ!!!!!
ドォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ………………!!!!!
バニラ 「ッ……!?」 (なんていう力の衝突だ……これは……!!?)
………………………………………………――――――
すずらん 「ふたば……? ふ、ふたばーーーーーーーー!!!」
リーフ 「………………」
ガクッ
すずらん 「ふたば……!!!」
ニコッ
リーフ 「……大丈夫。心配しないで。わたしは、大丈夫だから」
491:以下、
ダーク 『――ッ……ぐっ……』
ピシッ……ピシシッ……!!!!
ダーク 『やはり……器のない状態では、限界がある……』
サラサラサラサラ……
ダーク 『だが、これで終わりだと思うな、キュアリーフ。そして、ダークプリキュアの器……!」
ダーク 『“砂漠の意志” が在る限り、私は何度でも現れる。そして、ダークプリキュアは必ず復活する』
すずらん 「……っ」 ゾクッ
ダーク 『……今度は負けん。待っていろ、キュアリーフ……ッ!!』
リーフ 「……負けないよ。わたしは、絶対に」
ダーク 『くくく……くはははははは…………――』
――――――サラララ……………………
バニラ 「気配が消えた……とりあえずは一安心だ」
バニラ (だが、奴は言葉通りすぐ現れる……そんな気がする)
すずらん 「………………」
すずらん 「……私は……――」
492:以下、
………………サハラ砂漠 上空
『……世界が砂漠化したことにより、人々のこころの花は弱っている』
『しかし、一部だがまったく弱っていない地域がある』
『取るに足らぬ数ではあるが……潰しておく必要はあるな』
『む……?』
? 「……そこまでです。止まってください、“砂漠の意志”」
『……なるほど。どういうわけかは知らぬが、私の居場所が知られていたのか』
『本当にわざわざ出向いてくるとはな、当代のプリキュア』
『だが止まるつもりはない。この強大な砂嵐は私の一部だが……』
『……これを止められるというのなら話は聞いてやろう』
ムーンライト 「こんなに強力な砂嵐……自然界では発生しえないわ」
ムーンライト 「あなた……あの部族を全滅させるつもりかしら?」
『さてな。私は全人類のこころの花を枯らせればそれでいい』
マリン 「あんた……!! 自分を神様だって慕ってくれてる人たちまで……!!」
『知らんな。私は “砂漠の意志” を体現するまでだと言ったはずだ』
494:以下、
サンシャイン 「お前は……!! あの部族は砂漠で暮らしているんだぞ!?」
サンシャイン 「砂漠の民は、砂漠を愛し、砂漠に順応してくらしている!!」
サンシャイン 「そんな人々にまで牙を剥くというのか!!」
『気に入らぬというのなら私を倒してみせるのだな』
ゴゴゴゴゴゴ……!!!!
『あのテントを全て破壊すれば、砂漠の民もこころの花を枯らすであろう』
ブロッサム 「っ……!!!」
―――― 『けど、俺はこの生活に誇りを持っている。俺は “砂漠の民” として誇り高く生きたいんだ』
ブロッサム 「……させない」 グッ 「そんなこと絶対にさせません!!!」
サンシャイン 「みんな!! わたしを基点に展開して!!」
サンシャイン 「ブロッサムとマリンはわたしの左右! ムーンライトはわたしの上!」
サンシャイン 「そしてポプリはわたしの傍を離れないで!!」
ムーンライト 「どうするというの、サンシャイン?」
サンシャイン 「わたしがサンフラワーイージスを最大出力で展開する……」
サンシャイン 「みんなには、そのための力を分けてもらいたいんだ」
495:以下、
マリン 「……たしかに、あんな大きな砂嵐を止めるには、それしかないっしゅ!」
ブロッサム 「分かりました! なんとしても止めましょう!」
ムーンライト (……わたしたちのプリキュアの力を、直接……サンシャインに流し込む)
キィィイイイイイイイイイイイイイイイ……!!!!!
サンシャイン 「……うん。大丈夫。みんなの力が感じられる。とても温かい」
ポプリ 「でしゅ!」
サンシャイン 「……ポプリ、君は力の整流を頼む。できるね?」
ポプリ 「はいでしゅ! ポプリやるでしゅ!!」
パァァアアアアアアアアアアアアアアアア……!!!!
サンシャイン 「……やれる」 キッ 「行くよ、みんな!!」
ブロッサム 「はい!」 マリン 「うん!」 ムーンライト 「ええ!」
サンシャイン 「――プリキュア・スーパーサンフラワーイージスッ!!!!」
キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!
『……ふん。ちょこざいな』
496:以下、
サンシャイン 「衝突する……!! みんな、衝撃に備えて!!」
――――――――ドガガガガガガガガガ!!!
サンシャイン 「っ……!! なんて強大な、力……!!」
ムーンライト 「諦めないで! ブロッサム、マリン! もう少し出力を上げるわよ!!」
マリン 「で、でも! これ以上やったら、サンシャインが……!!」
サンシャイン 「――大丈夫! わたしなら大丈夫だから!!」
サンシャイン 「だから……頼む! わたしの身体をみんなに預ける! だから!」
サンシャイン 「みんなの力を貸して!!」
ブロッサム 「……はい!!」
キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ………………!!!!!!!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ………………!!!!!!
『なるほど。さすがにプリキュアが四人ともなればこれくらいの力は出るか』
『ならばいい。いつまで保つか、見物させてもらうとしよう』
497:以下、
………………明堂学園
さつき 「………………」
さつき (学園内のほとんどの人は校舎内に避難させたけれど……)
さつき (結局、サソリとコブラとクモの化物については、所在が掴めていない)
さつき (何人かの証言によれば、“花の使徒” を名乗る人間が相手をしているらしいが……)
さつき (僕も助太刀に……いや、しかし校舎の守りを手薄にするわけにもいかない……)
さつき (プリキュアは一体どこに行ったんだ……こんなときに……)
さつき (……いや。彼女らは今もきっと戦っている)
さつき (嘆くのは後だ。いま僕にできること……最善を尽くさなくては)
………………校舎内
ふたば 「………………」 zzzzz……
すずらん 「………………」 zzzzz……
陽一 「よく寝ちゃってまぁ。しかしどこに行っていたんだか」
みずき 「あまり心配かけないでほしいけれど……」
陽一 「当面の脅威は去ったらしい。心配しすぎるのもよくないよ」
500:以下、
………………
クモジャキー 「っ……」 ギリッ 「なかなかやりおる」
クモ 『グガガガガガガァアアアアアア!!!!』
ブゥンブゥンブゥンブゥン!!!!!
クモジャキー (ちっ……足が多い怪物ってのは、存外厄介ぜよ!)
………………
コブラ 『フシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
ピシャッ……!!!
コブラージャ (っ……毒か!!!) 「――サンフラワーイージス!!!」
キィィィイイイイ……!!!!
コブラージャ (くそっ……なんとか人気のない場所まで誘い出したが、これじゃうかつに近寄れないな)
………………
サソリ 『ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
サソリーナ 「っ……ちょこまかと尻尾を振る……!!」
サソリーナ (まずはあの尻尾をどうにかしないと……)
501:以下、
………………とある教室
ななみ 「………………」
ケンジ 「悪いな、ななみ。わざわざ手当てしてもらって」
ななみ 「恋人なんだからこれくらい当たり前でしょ」 パンパン
ケンジ 「いたっ……お、おいおい、もう少し丁寧にやってくれよ」
ななみ 「痛いって感じられるのは幸せなこと。文句言わないの」
ケンジ 「……ななみには敵わないな。分かったよ」
ななみ 「………………」
ケンジ 「……やっぱり、怒ってるのか?」
ななみ 「それをわざわざ訊くあたりケンジくんにはデリカシーが足りません」
ケンジ 「悪かったな。俺は不器用で察しが悪いから聞かなきゃわからないんだよ」
ななみ 「……そりゃ怒ってるよ。あんな無茶して。わたしとるみを守って」
ななみ 「でも、守ってくれたんだもん。嬉しかったし、ありがとうとも言いたい」
ななみ 「……だけど約束して。もう、あんな無茶は絶対にしないって」
504:以下、
ケンジ 「ななみ……」
ななみ 「あなたの手、傷だらけじゃない。漫画家として生きていくことができなくなったらどうするつもりなの?」
ななみ 「それだけじゃなく……もしあなたが死んじゃったりしたら……わたし……」
ケンジ 「………………」
ななみ 「だから、約束して。もうあんなこと絶対にしないって」
ケンジ 「……いや、それは約束できないな」
ななみ 「! ど、どうして……!!」
ケンジ 「またさっきと同じように、ななみやるみが危なくなったら、俺はまたこの身を投げ出すだろう」
ケンジ 「だから、そんな約束できない約束はしない」
ななみ 「ケンジくん!!」
ケンジ 「たしかに、漫画家として生きていくことは俺の夢だ」
ケンジ 「……けどな、ななみ。お前とるみを幸せにすることも、俺の大切な夢なんだ」
ななみ 「……!!」
ケンジ 「だから、約束はできない。だけど、約束するよ。俺はどんなことがあろうと絶対に死なないから」
ケンジ 「……だから、安心してくれよ」
506:以下、
ななみ 「………………」 ポー……
ケンジ 「ななみ? どうしたんだ?」
ななみ 「……い、今の……って……」
ケンジ 「?」
ななみ 「も、もしかして……ぷ、プロポーズ……?」
ケンジ 「……?」 ハッ 「……!!!!?」
ケンジ 「いや……え!? お、俺、プロポーズしたのか!!?」
ななみ 「し、知らないわよ! あなたが言いだしたんじゃない!!」
ケンジ 「いや、え、おい……あ……」
ななみ 「………………」 プイッ 「……ち、違ったんならべつに、いいわよ」
ななみ 「変な勘違いして悪かったわね」
ケンジ 「……あー……できればもっと平和なときに言いたかったんだがな」
ななみ 「……?」
ケンジ 「仕方ない。指輪も何もないが……ななみ、この騒動が終わったら結婚しよう」
ななみ 「ふーん……」 ハッ 「え……?」
508:以下、
ケンジ 「? 聞こえなかったか?」
ななみ 「いや……聞こえたけど……けど……」
ガバッ!!!
ななみ 「そんなにサラリと言っちゃうものなのプロポーズって!!?」
ケンジ 「えっ……? ちがうのか?」
ななみ 「し、知らないわよ初めてなんだから!」
ケンジ 「……で?」
ななみ 「で? って何?」
ケンジ 「いや、返事がほしいんだが……」
ななみ 「……あなたみたいな目つきの悪い漫画馬鹿、誰も結婚したいなんて思わないわよ!」
ケンジ 「………………」 ズーン 「……そりゃそうだよな……」
ななみ 「は、話は最後まで聞いてよ! “だから” ……わたしが、結婚してあげる」
ケンジ 「うぅ……」 ハッ 「……まじ?」
ななみ 「………………」 コクッ
509:以下、
………………廊下
ハヤト 「………………」
ハヤト (包帯の追加持ってきただけなのにえらい話を聞いてしまった……)
ハヤト (プロポーズ……かぁ……)
るみ 「………………」
ハヤト 「?」 (……? そういえば、この子はあの女の人の妹さん、だよな……)
ハヤト (やっぱり複雑な心境だったりするのだろうか……?)
るみ 「……よし」 グッ 「やっと結婚までこぎつけたね」
ハヤト 「!?」 (こ、こぎつけた……!?)
るみ 「これでお姉ちゃんは幸せになれる。良かった……」
ハヤト (……言葉遣いはともかくとして、本当にお姉ちゃん想いなんだなぁ……)
るみ 「? どうかしました?」
ハヤト 「いや……お姉さん、結婚できるみたいで良かったね」
るみ 「うん!!」
ハヤト (……さて、俺もこの騒動が終わったら……とりあえず指輪のためのお金でも貯めようかな)
510:以下、
………………
すずらん 「………………」
パチッ
すずらん 「……夢、ではなかった」
ふたば 「………………」 zzzz……
すずらん 「私は、本当に……この子に助けてもらったのか」
すずらん 「……私は本当に、人間になることができたのか」
バニラ 「その通りだよ、すずらん」
すずらん 「妖精か……」
バニラ 「そのあどけない顔をして寝ている少女が、君を救ったんだ」
すずらん 「………………」 スッ 「……傷だらけだな」
バニラ 「……? 僕のことかい? まぁね」
すずらん 「ふたばの傷も……お前の傷も……全部私がつけたものなんだな」
バニラ 「…… “君が” かい?」
すずらん 「……? どういう意味だ?」
511:以下、
バニラ 「この傷は君がつけたのかと、そう聞いているだけだよ」
すずらん 「………………」 コクッ 「……ああ。私がつけた。お前たちを吹き飛ばした感触も覚えている」
バニラ 「そうか」
すずらん 「………………」
バニラ 「……?」 ジロッ 「なら、何か言うことがあるんじゃないのかい?」
すずらん 「えっ……?」
バニラ 「聞き返さないでくれ。それくらい自分で考えてほしいな」
すずらん 「………………」 スッ 「……ごめん、なさい……?」
バニラ 「うん。じゃあ許そう。もう大して痛くもないしね」
バニラ 「ふたばが起きたらふたばにもしっかり謝るんだよ? あとお礼もね」
バニラ 「それから、ななみさんとるみちゃん、ケンジくんにもね」
すずらん 「あ、ああ……」
バニラ 「それから、言わずもがなとは思うけど、ふたばがプリキュアっていうことは内緒だからね?」
すずらん 「も、もちろんだ」
バニラ 「よし。ならオーケーだ」
513:以下、
すずらん 「……? いや、あの……」
バニラ 「何だい?」
すずらん 「私を……どうにかしなくていいのか?」
バニラ 「どうにかって?」
すずらん 「閉じこめるなり……消滅させるなり……しなくていいのか?」
バニラ 「……僕も、君のことをどう思ったらいいのか、正直困っている」
すずらん 「………………」
バニラ 「……けれど、君は、リーフの助けを借りて、自分自身の意志で “砂漠” を絶った」
バニラ 「そして君はこころの花を得て、心ある人間となった」
バニラ 「少なくともそれもまた事実だ。それに、多分……なんとなく、だけど」
バニラ 「――コロンは、君に生きていてもらいたいと思うだろうから」
すずらん 「!?」
バニラ 「……だから、僕はこれでいいと思う。君は君として、人間として生きるべきだ」
すずらん 「………………」 スクッ 「……本当に、いいのだろうか、私は」 フラフラフラ……
バニラ 「どこへ行くんだい?」 (っ……放っては、おけないか……) ピューン
514:以下、
………………廊下
春菜 「………………」 (年甲斐もなく無理をしすぎたわね……)
春菜 (けど……さっきの赤い髪の男の人、大丈夫かしら……?)
すずらん 「………………」 フラフラフラ……
春菜 「あ……あなた……」
すずらん 「……? !?」 ビクッ
春菜 「さっきあなたたちを隠した場所に帰ったらいなかったから心配したわ」
春菜 「大丈夫だった?」
すずらん 「あ……ご、ごめんなさい。先に、逃げてて……」
春菜 「そうだったの。それならいいのよ。心配だっただけだから」
春菜 「ふたばちゃんも無事なのね?」
すずらん 「あ、ああ……」
春菜 「そう。よかったわ」 ホッ 「……? あら、かわいいぬいぐるみね」
バニラ 「………………」
春菜 「ふふ……なんか懐かしいわ。ゆりも昔、これにそっくりのぬいぐるみを持っていたわね」
516:以下、
すずらん 「!?」
バニラ (コロンのことだ……!!)
すずらん 「………………」
――――――――さようなら、キュアムーンライト――――――――
すずらん 「っひぁ……!!」 ビクッ 「あ……ああああ……ああああああ……」
春菜 「? どうしたの……? 寒いの? それとも……怖いのかな?」
スッ……ギュッ
すずらん 「あっ……」 (あたた、かい……この、感触は……ああ……)
―――― 『お前は、私の娘だ』
すずらん 「月影、博士……お父様……」
春菜 「……大丈夫よ。怖くないわ。私がついているからね」
春菜 (この子は……きっと、あの人の……)
春菜 (なら……この子は私の娘だわ。ゆりの妹ね) ニコッ
すずらん 「……お父様……お父様……」 ギュッ
春菜 「……大丈夫よ。大丈夫。寒くない。怖くない。私がついているわ」
517:以下、
………………
ふたば 「………………」
パチッ
ふたば 「ふにゃあ……ねむいよぅ……」
ゴシゴシゴシ
ふたば 「あれ? おとうさん? おかあさん? すずらんちゃん? バニラちゃん?」
シーン……
ふたば 「………………」
ふたば 「……さみしい」
ヨロヨロヨロ……
ふたば 「みんなー……どこー……?」
ヨタヨタヨタ……
ふたば 「むにゃむにゃ……むにゃ……」
トコトコトコ……
520:以下、
………………
すずらん 「……もう、大丈夫。ありがとう」
春菜 「そう?」 スッ 「もう怖くない?」
すずらん 「ああ……いや、……うん」 ニコッ 「大丈夫。ありがとう」
春菜 「ふふ……あなた、笑うととっても綺麗ね。私の娘にそっくり」
すずらん 「そ、そうかな……?」
春菜 「ええ。滅多に笑わないところも、笑うと可愛いところもね」
すずらん 「………………」 スッ 「……あ、あの、私、実は――――」
春菜 「――――無理しなくてもいいわ。時が来たら話を聞くから」
すずらん 「えっ……?」
春菜 「あなたはまだ子どもよ。そんな辛そうな顔をしなければできない話なら、今はしなくていいわ」
春菜 「だから……時が来たら教えてね。あの人のこと……そして、こころの大樹のこと」
すずらん 「……うん」 コクッ 「約束する。絶対に……あなたに話すから」
春菜 「……ふふ。わたしは “お父様” でも “あなた” でもないわよ?」
すずらん 「あっ……ご、ごめんなさい……えっと……――」
春菜 「――……お母さん、って。そう呼んでくれたら嬉しいな。なんてね」 ニコッ
522:以下、
………………
バニラ 「……優しそうな人だ。あの人が、月影博士の奥さんなんだね」
すずらん 「……うん」
バニラ 「せっかくだからお母さんって呼べば良かったのに」
すずらん 「そんな資格……私にはない」
バニラ 「……お母さんに甘えるのに資格なんて必要なのかい?」
すずらん 「知らないよ。私は人の子じゃないから。ただの人造生物だから」
バニラ 「すずらん……」
すずらん 「無理して私に付き合うことはない。ふたばのところに戻ったら?」
バニラ 「……君はもう人間だ。それに、ふたばの友達だ。放ってはおけないよ」
すずらん 「……私がまたダークプリキュアになっては困るから?」
バニラ 「またそんなことを言う! 君を疑ってはいないよ!」
すずらん 「……だけど、事実可能性はゼロじゃない」
バニラ 「だけど君はならない。だったら心配はいらないだろう」
すずらん 「信じるのも大概にしたらどう? また足下をすくわれるよ?」
526:以下、
バニラ 「君も本当に意固地だな!」
バニラ 「こうなったらこっちも意地だ! 君にずっとついててやる!!」
すずらん 「……勝手にすればいい」
トコトコトコ……
? 「ん……? あ、すずらんちゃん!!」
すずらん 「!?」 (たしか……るみ、と言ったか……?)
るみ 「よかった! もう大丈夫そうだね!」
すずらん 「あ……う、うん……」 ハッ 「その……傷は……?」
るみ 「? ああ、これ?」 ニコッ 「ただのかすり傷だよ。気にしないで」
すずらん 「……私が、やったんだな」
るみ 「あなたじゃなくて、ダークプリキュアでしょ?」
すずらん 「ううん。私がやったんだ。記憶もはっきりしてる」
すずらん 「……だから、ごめんなさい」
るみ 「そうなの……? うーん……ま、いいや」
るみ 「大丈夫だよ。許すよ。わざわざ謝りにきてくれるなんて良い子だね、すずらんちゃんは」
527:以下、
すずらん 「良い子なんかじゃない……私はあなたやあなたのお姉さん、あの男の人も傷つけた」
すずらん 「そんな簡単に許してしまっていいわけがない……」
るみ 「? そうなの? バニラちゃん」
バニラ 「さてね。許す許さないは君たちが決めるんだろう?」
バニラ 「ちなみに僕は許したしふたばは確実に許すだろうね」
るみ 「じゃあわたしが許してもいいね」
すずらん 「……なら、あの二人が……」
るみ 「あー……無理だと思うよ。むしろ感謝されるかもね」
すずらん 「感謝……?」
るみ 「……あの二人、いまはふたりの世界に入っちゃってるから」
るみ 「今さっきお兄ちゃんがお姉ちゃんにプロポーズしたの」
バニラ 「!? ぷ、プロポーズ……!?」
すずらん 「ど、どうして……?」
るみ 「知らない。でも、お姉ちゃんが幸せそうでよかった」
るみ 「だからすずらんちゃんも笑って」 ニコッ 「笑うと、みんな幸せになれるんだよ」
529:以下、
………………
―――― “わたしからもありがとう、すずらんちゃん”
―――― “結果として、すずらんちゃんはふたりの恋のキューピッドになってくれたんだね”
すずらん 「……解せない」
バニラ 「さすがに今のは僕も」
バニラ 「まぁめでたいことだから文句は言うまい。おめでとうとだけ伝えてもらったけど」
すずらん 「……解せない」
バニラ 「……要は、君を罰そうなんて思うような人間が君の回りにいなかったってことだ」
バニラ 「諦めなよ。君のことを元ダークプリキュアだって知ってる人はもういないよ」
すずらん 「………………」
バニラ 「………………」
すずらん 「……不安、なんだよ」
バニラ 「不安?」
すずらん 「私、とってもホッとしてる。よかったって思ってるんだ」
すずらん 「だけど同時に、これでいいのかとも思うんだ。いや、いいはずがないんだ」
530:以下、
すずらん 「私は……悪いことをたくさんした。たくさんの人を傷つけた」
すずらん 「そして私は……キュアムーンライトの妖精を、この手で……」
バニラ 「………………」
すずらん 「それに、お父様を殺したのも……きっと私だ」
すずらん 「こんな私が……こんな汚れた手で……これからを生きていって、いいのだろうか」
すずらん 「いいはずがないんだ。私は……」
すずらん 「……――私はあのとき、消滅するべきだったんだ」
バニラ 「………………」 フゥ 「……これは独り言だ。君は聞かなくていい」
バニラ 「僕の推測だけどね。おそらく、六年前、君が消滅する瞬間に月影博士が君に寿命を与えたんだ」
バニラ 「それは六年間で君の中で君の命として育ち、やがて君が復活した」
バニラ 「そのときに “砂漠の意志” が君にちょっとした細工をした。だからダークプリキュアが復活した」
バニラ 「……だが、その細工がキュアリーフによって破られた今……君を縛るものは何もない」
バニラ 「君は、せっかく君に命を与えてくれた月影博士の想いを捨ててまで、死にたいと思うのか?」
すずらん 「………………」
バニラ 「以上。独り言終わり。最後の質問は聞いてしまった人間が勝手に考えてくれ」
531:以下、
………………???
ダーク 『………………』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!
ダーク 『………………』
ニィィイイ
ダーク 『……三幹部の “意志” も、花の使徒を相手に善戦している』
ダーク 『肝心の当代プリキュアたちがサハラ砂漠にいるのが気がかりだが……』
ダーク 『まぁいい。邪魔者がいないと考えるべきか』
ダーク 『……今のうちにダークプリキュアの器を手に入れる』
ダーク 『そのために、キュアリーフ……あの邪魔なプリキュア潰す』
ダーク 『……さて、行くか』
ダーク 『先までの私とは違うぞ、キュアリーフ……!!!』
533:以下、
………………サハラ砂漠 砂漠の民 テント群
大人1 「一体何が起こっているっていうんだ……」
大人2 「あの巨大な、まるで砂の波のような砂嵐……」
大人2 「それを押し留めるように空を飛ぶ少女たち……」
大人2 「これは、一体……」
少年 「あれ、もしかして……アイツら、なのか……?」
大人1 「なんだ? どうかしたのか?」
少年 「………………」 フルフル 「……なんでもない。何にせよチャンスだ」
少年 「今のうちに年寄りや女子共、ラクダと最低限の荷物だけ運び出そう」
大人1 「あ……ああ、そうだな……」 (しかし、あの四人の少女はどこへ……?)
大人1 (すでに避難をしているのなら良いが……)
少年 「………………」
ギリッ……!!!
少年 「……神様……どうして?」
少年 「どうして、こんなことをするんだ……」
535:以下、
………………上空
キィィイイイイイイイイイイイイイイイ…………!!!!!!
サンシャイン 「っ……ぐっ……」
ムーンライト 「サンシャイン、大丈夫?」
サンシャイン 「ああ……この程度、なら……」
バヂヂヂヂヂヂヂ……!!!
サンシャイン 「ぐッ……!?」
ポプリ 「む、無理でしゅ! 四人のプリキュアの力を、整流しきるなんて……」
ポプリ 「大地、海、月……それぞれの力が、そのままサンシャインに流れちゃうでしゅ……」
サンシャイン 「それでも、構わない……!」
サンシャイン 「できる範囲で、僕の使いやすい力に、変換してくれ……」
サンシャイン 「残りは……僕が、直接……お日様のエネルギーに、変える……」
マリン 「そんな! ダメだよ! サンシャインの身体がおかしくなっちゃうよ!」
サンシャイン 「はは……大丈夫、だよ……ありがとう、マリン」
サンシャイン 「身体が丈夫なことが取り柄なんだ。だから、大丈夫……」
536:以下、
『どうした? もう限界か?』
ピシッ……ピシシッ……
ブロッサム 「!? サンフラワーイージスにヒビが……!?」
サンシャイン 「ぐっ……まだ、まだだッ!!!」
――――キィィィィイイイイイイイイイイイ…………!!!!!!
バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ……!!!!!
サンシャイン 「っ……」
ポプリ 「無茶でしゅ!! いちゅきの身体が壊れちゃうでしゅ!!」
サンシャイン 「それでも、まだ……まだ、やれる……!!」
サンシャイン 「この手で守れる命があるのなら、守れる心があるのなら、」
サンシャイン 「わたしたちはそれを守らなくちゃならない!!!」
ポプリ 「サンシャイン……」
グスッ
ポプリ 「分かったでしゅ! ポプリ、もっと頑張るでしゅ!」
キィィィイイイイイイイ……!!!!
537:以下、
『ふん。存外保つな』
ブロッサム 「………………」
―――― 『けど、俺はこの生活に誇りを持っている。俺は “砂漠の民” として誇り高く生きたいんだ』
ブロッサム 「“砂漠の意志” ! あなたには見えないのですか!? 砂漠で暮らす人々の笑顔が!!」
『……ふん。笑顔など、どうでもいい。私は枯らすことしか知らぬ。できぬ』
ブロッサム 「違う! あなたは何かを枯らすことしかできないんじゃない!!」
ブロッサム 「人々を守り、心を育むことができるじゃないですか!!」
『くだらん。私は私だ。砂漠に住まう人間どものことなど知らぬ』
ブロッサム 「っ……!!」
『……まぁよい。もう飽いた。貴様らは勝手に砂嵐と格闘しているといい』
ザザザザザザッッ……!!!
ムーンライト 「……!? また逃げるつもり!?」
『馬鹿な。攻めにいくだけだ』
マリン 「攻めるって……一体どこをよ!?」
538:以下、
『……感じぬか? 貴様らと同じ、このいけ好かぬ波動を』
マリン 「……?」
『希望ヶ花市だ……この気配は、おそらく……プリキュア』
マリン 「なんですって……!? プリキュア!?」
『あの新たな妖精のプリキュアが現れたようだ』
『“奴” に任せてあるから大丈夫だとは思うが……』
『万一ということもある。貴様らより先に潰しておこう』
ゾゾゾゾゾゾゾゾッ……!!!
マリン 「ま、待て!! あんた、新しいプリキュアを先に倒すつもりね!!」
『……今度は希望ヶ花市で会おう。まぁ、そうは言っても、』
『貴様らが希望ヶ花市に戻るまでに、街が残っていれば、の話だが』
『まぁ、あの砂漠の民を見捨てるつもりならば、話は別であるがな』
――――――――………………ッ……
ムーンライト 「気配が完全に消えた……でも……ッ!!」
539:以下、
ブロッサム 「……行けません。だって、私たちがここで力を抜いたら……」
マリン 「砂漠の民のところに、この凶悪な砂嵐が……!!」
サンシャイン 「っ……しかし、衰えない……!!」
マリン 「っ……どうしたらいいの……どうしたら!!」
ブロッサム (砂漠の民を見捨てることはできない)
ブロッサム (しかし、“砂漠の意志” は希望ヶ花市へ向かった)
ブロッサム (そして、わたしたちの力を無理に取り込んでいるサンシャインももう限界……)
ブロッサム (どうしたら……どうしたら……!!)
? 「――――おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!!!」
ブロッサム 「えっ……? この、声は……下から……――!?」
少年 「聞こえるかぁぁあああああああああああああああああああ!!!!」
ブロッサム 「そんな……こんなところにきたら、危な――――」
少年 「――――住民の避難は終わった!! もう、大丈夫だ!!!!」
少年 「ありがとう!!! もう、大丈夫だから!! どいてくれ!!!!」
ブロッサム 「えっ……?」
540:以下、
ブロッサム 「だ、だって、人がいなくたって、わたしたちが、ここをどいてしまったら……」
ブロッサム 「砂嵐が、テントを全て、なぎ払ってしまう……」
ブロッサム 「それって、わたしたちが家を失うのと同じ……なのに、もう、大丈夫って……」
ムーンライト 「……つまり、そういうことなのでしょう?」
ムーンライト 「彼から見ても、この砂嵐はどうすることもできないって分かるのね」
ムーンライト 「だから、もういいって……人命は助かるから、って……」
ムーンライト 「私たちのことを想って、そう言ってくれているのよ」
マリン 「……ブロッサム」
ブロッサム 「………………」 コクッ 「……どきましょう。仕方がありません」
ブロッサム 「これ以上、サンシャインに無茶をさせるわけにもいきません……っ」 ポタッ
ブロッサム 「ひとの、命を、助けられた……だけでも……っ」 グスッ 「僥倖、だったと……っ」
ムーンライト 「……そうね。私たちは頑張ったわ。けど、できないこともあった」
ムーンライト 「サンシャイン、ありがとう。もう、大丈夫よ……砂嵐を、通しましょう」
サンシャイン 「……分かった。悔しいけど、わたしたちにできるのはここまでみたいだね」
543:以下、
…………………………ゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
子供1 「あ……お家、が……」
ギュッ
少年 「………………」 ニコッ 「……なぁに、テントくらい、また作ればいい」
少年 「そう不安がるな。大丈夫だ」
子供1 「う、うん……」
つぼみ 「……あ、あの……」
少年 「……おお、良かった。あんたたちも無事だったんだな」
つぼみ 「は、はい……あの……」
少年 「……さっきの四人のヒーロー、アンタたちなんだろ?」
ゆり 「………………」 コクッ 「……ええ、そうよ」
つぼみ 「あ、あの……ごめんなさい……っ!! わたしに、力が足りなくて……」
つぼみ 「皆さんの大切なもの……守ること、できなくてっ……」 グスッ
少年 「………………」 ポカーン 「……何を言ってるんだ?」
つぼみ 「えっ……?」
544:以下、
少年 「お前たちが守ってくれたんだろう? 俺たちの命を」
子供1 「……そうなの?」
少年 「ああ。この人たちが、俺たちを守ってくれたんだぞ?」
子供1 「じゃあ……ありがとう、お姉ちゃんたち!」
つぼみ 「で、でも……わたしたち、皆さんの大切なもの、守れなくて……」
つぼみ 「幸せも、何もかも……砂の下に……」
少年 「……そんなもん、また作ればいい」
少年 「言ったはずだぜ? 壊れたら直せばいい。そのための知識は俺たちの中に生きている」
少年 「だから、ありがとう。俺たち全員の命を、お前たちが救ってくれたんだ」
つぼみ 「……は、はい!!」
少年 「……約束するよ。お前たちが命を賭けて守ってくれたこの命で……」
少年 「必ず、今まで以上に再興してみせる! そのときは歓迎するから、また来てくれよな!」
少年 「……今度は、きちんとラクダに乗せてやるよ」
えりか 「本当に!?」 キラキラ 「楽しみにしてるからね!! 約束だからね!!」
少年 「ああ。約束だ」
547:以下、
………………明堂学園
すずらん 「!?」 ズキッ!!! 「っ……くる……!」
バニラ 「……僕も感じたよ。奴が……来る!」
バニラ 「ふたばのところへ急ごう! 今は頼れるのが彼女しかいない!」
すずらん 「………………」
―――― 『……私が守るよ。だから安心して』
―――― 『すずらんちゃんがすずらんちゃんでいることを選んだのなら、』
―――― 『私は、プリキュアとして、そしてすずらんちゃんの友達として、あなたを守るよ』
すずらん 「っ……それで、また……?」
バニラ 「……?」
すずらん 「また、ふたばに守ってもらって……ふたばに怪我をさせて……」
すずらん 「そうまでして、生きなければならないのか……!?」
バニラ 「!? すずらん! 何を――――」
すずらん 「――――そんなことする必要はないんだ。私は……私さえ、」
すずらん 「私さえ、いなければ……!!」
548:以下、
――――――ダッ!!!
バニラ 「す、すずらん!? どこへ行くんだ!!」
バニラ 「っ……」 (すずらんを追いたいが、しかし……)
バニラ (……いや、先にふたばと合流するべきだ)
バニラ (ダークプリキュアに対抗できるのはキュアリーフだけだ……)
ピューン!!!
バニラ 「っ……」 ギリッ (早まったことをするなよ、すずらん!!)
………………
タタタタタタ……
すずらん 「わたしは……わたしは……!!」
すずらん 「もう、嫌だ。傷つけるのも、傷つけさせるのも、もう……!!」
すずらん 「私なんかのために、ふたばが傷つく必要はない……」
―――― 『……だから、すずらんちゃんに恩返しがしたい。わたしは、すずらんちゃんに笑ってほしい』
すずらん 「あんな優しい女の子が、私なんかのために……戦う必要なんてないんだ」
――――――バァン!!!
549:以下、
すずらん 「………………」 ゼェ、ゼェ…… 「……そう、ここなら、」
すずらん 「ここなら……いい。私は、正しい形で、終われるんだ……」
すずらん 「……そう。ここからなら、私は……お父様の元へ、行ける……」
すずらん 「今度こそ、罰を受けることができる……――」
『――――……屋上から飛び降り死ぬことで自らを罰すると、そういうことか?』
すずらん 「!?」 バッ 「……ダーク、プリキュア……!!」
ダーク 『そう怖い顔をするな。お前も私の一部だろう』
すずらん 「……私は断ったはずだ。この身体をダークプリキュアとすることはない」
ダーク 『穏便な話し合いをする気などこちらとしては毛頭ない。が――』
ダーク 『くく。力尽くで奪うまでもないか。こころの花をそんなに萎れさせている』
すずらん 「っ……! だけど、残念だったな! 私は今ここから飛び降りて死ぬ!」
すずらん 「この身体でまた悪事を働くくらいなら……誰かを傷つけるくらいなら!」
すずらん 「……死ぬ覚悟など簡単に決められる。私は、ふたばのために……」
すずらん 「あの優しい女の子のために、今ここで死ぬ!!」
550:以下、
ダーク 『くく……だが、それを奴が許すかな?』
すずらん 「何だと……?」
ヒラリ……!!!!
すずらん 「!?」 (緑色の、若葉……いや……!!)
――――――スタッ……
すずらん 「き……キュアリーフ……!?」
リーフ 「………………」
……パシィイイ……!!!!!!!
すずらん 「へっ……?」
リーフ 「………………」
ポタッ……ポトッ…………グスッ……
リーフ 「……馬鹿!!! すずらん、ちゃんの、馬鹿ぁああ!!!」
すずらん 「ふた、ば……?」
リーフ 「死ぬ、なんて、言わないで! 死のうと、なんて、しないで!!!」
リーフ 「そんなの、悲しいよ! おかしいよ!! 間違ってるよ!!!」
552:以下、
すずらん 「で、でも……私は……これ以上ふたばに、傷ついてほしくないんだ……」
リーフ 「勝手だよ、そんなの!」 グスッ 「わたしは……すずらんちゃんに生きていてほしいよ」
リーフ 「すずらんちゃんと一緒に生きていきたい。大切な、友達だもん」
すずらん 「とも、だち……だから……?」
リーフ 「元ダークプリキュアでもいいよ。昔に酷いことをしていたとしてもいいよ」
リーフ 「だって、今のすずらんちゃんはすずらんちゃんだもん」
リーフ 「わたしの友達の、笑うと可愛くて、わたしを励ましてくれる……友達だもん」
すずらん 「………………」 グスッ 「……ふたば」
すずらん 「わたしは……生きていてもいいのか?」
すずらん 「お前に迷惑もかけるだろう。色んな人間に迷惑をかけるだろう」
すずらん 「それでも、私は……――――」
リーフ 「――――……それでも、なんでも!!! わたしはすずらんちゃんに生きていてほしいよ!!」
すずらん 「……ふたば……」 グスッ 「ふたばぁ……」 ギュッ
リーフ 「……まったくもう。すずらんちゃんも、わたしと一緒で泣き虫さんなんだから」
リーフ 「本当に……もう……っ」 グスッ
553:以下、
パチパチパチパチ……
リーフ 「………………」 キッ 「……ダークプリキュア」
ダーク 『素晴らしい余興だ。いや、下らぬお涙頂戴と言うべきか』
ダーク 『その器が滅びれば、私が真の力を取り戻すことも叶わぬというのに』
ダーク 『惜しいことをしたな、キュアリーフ。お前は軽率なことをした』
リーフ 「……助けちゃいけない人なんていないんだよ。みんな助けるんだ」
リーフ 「すずらんちゃんがあなたに身体を奪われる危険があるっていうんなら」
リーフ 「わたしが守る。それだけで十分だよ」
ダーク 『ふっ、考え方が幼いな。まぁいい。こちらとしては好都合だ』
リーフ 「……すずらんちゃん、バニラちゃん……ちょっと、離れていてね」
すずらん 「リーフ……」
リーフ 「大丈夫。心配しないで」 ニコッ 「わたしは負けないから」
バニラ 「……うん! キュアリーフ、がんばって!!」
リーフ 「うん、がんばる!!」
すずらん 「………………」 (リーフ……ふたば……がんばって……!)
556:以下、
ダーク 『では行くぞ、キュアリーフ!!!』
――――――ッッドッッ!!!!
すずらん 「……!」 (さっきよりい……けど、この程度なら……)
――――ガッ……!!!!
ダーク 『ほぅ、反応したか。だが、これならどうだ?』
ドドドドドドドド……!!!!!
バニラ 「!? 連続打撃……!? リーフ!!」
リーフ 「……この……くらいなら!!!」
ダダダダダダダダ……!!!!!
すずらん 「!?」 (拳と脚……すべてを駆使して、ダークプリキュアに合わせている……)
――――ザッ……!!!
ダーク 『……なるほど。やるな』
リーフ 「プリキュアだからね」
スッ
リーフ 「……今度はこっちから行くよ」
557:以下、
――――――――――ッッッッドッッ……!!!!!
ダーク 『ッ……!!』
リーフ 「――――最大加!!! リーフ・アクセル!!!」
――――ドドドドドッ……!!!!
ダーク 『やはりいな……! だが……ッ!!!』
ダーク 『スピードがすぎて、判断をおろそかにしているな、キュアリーフ!!』
スッ
リーフ 「!?」 (そんな……残像の中で、わたしの位置を正確に割り出して……!?)
ダーク 『――――――――そこだッ……!!!』
ブゥン……!!!  ――――――――ドゴォオオオオオオッッッ……!!!!
リーフ 「かっ……ふ……!!」
――――――ガシャッッ……!!!
バニラ 「!? リーフ!! キュアリーフぅうううううううう!!!」 ピューン
リーフ 「……っ……一発で、フェンスまで、吹き飛ばされる、なんて……」
ダーク 『……キュアリーフ。お前は確かに脅威となりえる力を持っているが、まだ甘い』
559:以下、
リーフ 「な、にを……」
ダーク 『お前の攻撃はい。そして回避能力もずば抜けている』
ダーク 『しかし、それ故にその能力に頼りすぎだ。己の中で攻撃がパターン化していることに気づかないのか』
リーフ 「パターン化……? あ、わたし……最大加のとき……」
リーフ 「同じ、足の動かし方、してたかも……」
ダーク 『そういうことだ。そしてそれを見逃すほど、私は甘くない』
ダーク 『お前は幼いが故に脆い。一撃喰らっただけでフラフラだろう?』
ダーク 『さは裏を返せば相手の攻撃を増幅させる。能力に振り回されたな、キュアリーフ』
リーフ 「っ……まだ……!!」 フラフラ 「まだ……!!」
ダーク 『そうだな。私も仕上げにお前を消滅させなければならないからな』
バニラ 「リーフ!! しっかり!」
リーフ 「う、うん……っ……」 ガクッ 「か、身体が……」
バニラ 「リーフ!?」 (まずい……さっきまでの疲労も蓄積しているのか……!!)
バニラ (グリーンフォルテウェイブにフローラルパワーフォルティシモを使ったんだ……)
バニラ (幼い身体に、それがどれだけ負荷を与えているか……!! くそっ……!)
560:以下、
ダーク 『どうした? 立たないのか、キュアリーフ?』
バニラ 「っ……お前、これを見越して……!!」
ダーク 『ああ。私としても、他のプリキュアが帰ってくる前にキュアリーフを片づけ、』
ダーク 『ダークプリキュアの器を手に入れておきたかったからな』
バニラ 「お前……! どこまでもきたない……!!」
ダーク 『吠えたくば好きに吠えればいい』
ダーク 『……さて、覚悟はいいか、キュアリーフ?』
リーフ 「っ……」 (どうして……? 身体が、思うように動かない……)
ダーク 『ははははははは!!! 良いザマだなキュアリーフ!!!!』
ッッシュンン!!!!
リーフ 「!?」
――――ドゴォオオオッッ……!!!!
リーフ 「か、っ……!?」
ダーク 『この至近なら外すことはあるまい』 ニィ 『消滅しろ。キュアリーフ』
リーフ (だ、ダメ……苦し……)
561:以下、
すずらん 「や……やめてえええええええええええ!!!!!」
バニラ 「やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ダーク 『……? はは、これはまた傑作だな』
ダーク 『何の力もない私の器と、何の力もない妖精が刃向かってくるとは……』
リーフ 「……!? や、やめ、て……ふたりには、手を……出さないで……!」
ダーク 『ああ。断る』
すずらん 「キュアリーフを……ふたばを放せ!!!」
バニラ 「ダークプリキュアあああああああああああああ!!!!」
ダーク 『……馬鹿が』
――――ブゥンンン!!!!
ドガァアアアアアアアッッッッ……!!!!!
すずらん 「っあ……!?」 (そんな……たったの、拳ひとつで……)
バニラ 「がっ……!」 (こんな、簡単に……吹き飛ばされるなんて……)
――――――ドサッ……
ダーク 『力ない者はそこではいずっていろ。お前たちはキュアリーフを滅ぼした後だ』
565:以下、
すずらん (い、たい……身体中が、痛い。でも、ふたばは、きっと……これ以上に……)
すずらん (……どうして、ふたばが……? 私なんかのために……こんな……)
すずらん 「何故だ。何故、ふたばがこんな目に遭わなくちゃいけない? どうして、私には何もできない?」
ダーク 『ふん。当たり前だろう。お前のその手で誰かを助けられるとでも思っているのか?』
すずらん 「……!?」
ダーク 『お前はその手で何人の人間を苦しめた? 誰を傷つけた? 誰を殺した?』
すずらん 「あ……ああああ……」
―――― “私は影。闇。キュアムーンライトの影だ”
―――― “月の光を影が飲み込む。そして私は本物のキュアムーンライトとなる”
――――――さようなら、キュアムーンライト――――――
すずらん 「あ……ああああああっ……あああああ!!!!!」
ダーク 『……誰がその汚れきった手を掴んでくれるという? いったい誰を、その手で救うことができる?』
ダーク 『そんなことはありえない!! お前はダークプリキュアだ! 汚れきった殺戮者だ!』
ダーク 『それ以外の何者でも―――――――』
        「―――――――――違う!!!!」
567:以下、
すずらん 「え……?」
ダーク 『……? ふん……まだそんな声を出す力が残っていたか、妖精』
ふたば 「ばに、ら……ちゃん……?」
バニラ 「……僕は、散々すずらんにひどいことを言った。きっと傷つけた」
バニラ 「だから今さらこんなことを言う権利も資格もないかもしれない。でも、言う」
バニラ 「違うんだ……すずらんは、汚れきってなんかいない。殺戮者なんかじゃない……!」
バニラ 「……彼女は、自分がかつて犯してしまった罪を後悔していたよ」
バニラ 「自分は許されてはいけないって……そう言って、ずっと苦しんでいたよ」
すずらん 「よう、せい……?」
ダーク 『……ふん。苦しめば、後悔すれば、罪が許されるとでも? 罪がなくなるとでも?』
バニラ 「……違う。彼女が犯した罪は消えない。決して消えることはない」
バニラ 「彼女がダークプリキュアとして壊したもの、殺めてしまったものは、絶対に帰ってこない」
ダーク 『ははっ。ならばもう――』
バニラ 「――ちがう! “だから” だ! だからこそ、彼女は罪を償わなければならないんだ!」
バニラ 「犯した罪がなくなるわけじゃない。いなくなった者が帰ってくるわけでもない。それでも!!」
569:以下、
バニラ 「それでも……彼女は償わなければならないんだ……!」
バニラ 「すずらんは自分の罪を後悔し、苦しみ、だけどお前と決別し償う道を選んだ……!」
バニラ 「これ以上迷惑をかけたくないと、自ら命を絶とうとまでした!!」
バニラ 「罪はなくならない! だが……僕は許すよ。僕は以前の戦いを知らないけれど……それでも、僕は……」
バニラ 「すずらんに、ただのふつうの女の子として、生きていってもらいたいんだ……!」
バニラ 「ふつうの女の子として、ふつうの子どもとして……幸せに生きることが、償いなんだ……」
バニラ 「だから僕は……僕と、キュアリーフは……! そんなすずらんを守りたいって、そう思うんだ!」
リーフ 「バニラ、ちゃん……」
すずらん 「妖精……バニラ……。お前は……っ」
ダーク 『小さいくせによく回る舌だ。二度と口を開けぬようにしてやろう』 ――バサァアアアア!!!!
バニラ 「っ……!?」 (翼が、手のように……――!?)
――ドバァンンンン!!!!
バニラ 「がっ……!?」 (翼の拳……なんて、威力……!)
コロンコロンコロン……コテン……
すずらん 「バニラ……!? バニラーーーーーーー!!!!」
570:以下、
タタタタ……ギュッ
すずらん 「バニラ! バニラ、しっかりして!!」
リーフ 「バニラちゃん……!!」 グッ 「放して! 放してよぉ! バニラちゃんが死んじゃう!!」
ダーク 『……何を寝ぼけたことを。次はおまえだ』
ギリリリリリリッ!!!!
リーフ 「がっ……あ……!!」
すずらん 「リーフ……っ!!」
ポタッ……ポタッ……
バニラ 「涙……? ああ……温かい……」
すずらん 「バニラ……! 良かった……!」
バニラ 「………………」 フッ 「……君は、もう少し、自分を信じるべきだね」
すずらん 「え……?」
バニラ 「かつての罪を悔やみ、“砂漠” を絶った……そして、心を手に入れた、君自身を、信じるべきだ」
バニラ 「僕やリーフの危機に声を上げ、僕の無事に温かい涙を流すことができる、君自身を……」
バニラ 「君は、温かい心を持った……美しいこころの花を持った……すばらしい人間だ」
572:以下、
すずらん 「バニラ……」
バニラ 「……だから、笑って。君は、悲しい顔をしているより、笑っていた方がいい」
すずらん 「リーフも、お前も、自分が危険だというのに、ひとの心配ばかり、して……」
すずらん 「……どうして……」 ギリッ 「どうして、こんな……こんなことが、許しておける……?」
すずらん 「許しておけるわけがない……こんなの、間違ってる……!」
ダーク 『ふん。間違っているなら。おかしいなら。許しておけないのなら、』
ダーク 『一体どうするというのだ? その汚れきった手で、どうするというのだ?』
すずらん 「……たとえ、この両手が血で汚れていたとしても」
すずらん 「たとえこの手で、救えるものなどないのだとしても」
すずらん 「それでも、私は……私は、もう……後悔するようなことはしたくない」
キィ……キィィィイイ……――――――
ダーク 『……!?』 (なんだ……この、気迫は……!?)
すずらん 「……救えなくなって、救いたい! 助けられなくたって、助けたい!!」
すずらん 「守ることが叶わなくても……それでも、守りたいものがあるんだ!!」
――――――キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!
574:以下、
………………超高々度
ブロッサム 「新しいプリキュア……やはり、バニラが生み出したのでしょうか……?」
シプレ 「絶対そうですぅ! シプレも先輩として鼻が高いですぅ」
マリン 「……それでさ、コフレ、シプレ。さっきの話の続きだけどさ」
コフレ 「さっきの話ってなんですっ?」
マリン 「だからぁ、バニラの話だよ。特別な妖精って、どういうことなの?」
ブロッサム 「プリキュアの種が二つに割れているんでしたっけ?」
ブロッサム 「その本当の意味とかなんとか……」
シプレ 「……そうなんですぅ。バニラのプリキュアの種は真っ二つに割れているですぅ」
シプレ 「本人はそのせいで自分を出来損ないなんて言ったりしますけど、」
コフレ 「本当はそんなことないですっ。むしろ、バニラはすごい可能性を持ってるです」
マリン 「すごい、可能性……?」
シプレ 「はいですぅ。実は、バニラは……――」
シプレ 「――……プリキュアをふたり生み出す可能性を秘めている妖精なのですぅ」
575:以下、
………………
すずらん 「なっ……なんだ、これは……?」
バニラ 「そんな……馬鹿な……!!」
ダーク 『!? なん、だと……!?』
リーフ 「明るい……光……とっても、きれい……」
すずらん 「温かい……心が、どんどん満たされていく……この、光は……」
バニラ 「どうして……? 僕の、こころの種が……もう一つ……?」
バニラ 「二つに割れていた種の、片割れ……まさか、そんな……」
ダーク 『馬鹿な……!! この光は、そんな……ありえない!!!』
ダーク 『――――プリキュアがもうひとり生まれるとでもいうのか!?』
バニラ (そうか……そうなんだ。僕のプリキュアの種が割れていた、その意味……)
バニラ (僕は、ふたりのプリキュアを生み出す、可能性を……)
バニラ 「………………」 ギュッ 「……すずらん。やれるね?」
すずらん 「………………」 ギュッ 「……もちろん!」
576:以下、
バニラ 「良い返事だ! それでこそ、僕のもうひとりのパートナーだ!!」
バニラ 「すずらん、受け取って!! それが君の、ココロパフュームだ!!」
パァァァア……ッポン!!!
すずらん 「ココロパフューム。これが、プリキュアの……」
ダーク 『馬鹿な……馬鹿なあああああああああああああああああ!!!!』
――ガシッ
ダーク 『……!?』
リーフ 「……行かせない。あなたの相手は、わたし、でしょ?」
ダーク 『っ……キュアリーフッ……!!』
バニラ 「……行くぞ! 受け取れ、プリキュアの種だ!!」
パァァアアアアアアアアアアア……!!!!
すずらん (私は……私は……私は……!!) スッ 「今、本物のプリキュアに……!!!」
すずらん 「――――――プリキュア・オープンマイハートッ!!!」
――――ガシャッッッ!!!!!!
    キィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ………………!!!!!!!
577:以下、
すずらん (ああ……なんて温かく、心地良い……これが、本物のプリキュアの光……)
リーフ 「すごい……とってもきれいな、真っ白の光……」
キィィイイイイイイイイイイイイイイイ………………
ダーク 『っ……!? ダークプリキュアの器が、プリキュアになるなどと……!!』
バニラ 「……彼女は自ら、その過去と向き合い、否定した」
バニラ 「そして後悔し、償うことを決めたんだ」
バニラ 「……そんな強い心を持つ彼女が、プリキュアとなるのは、何ら不思議なことじゃないよ」
すずらん (たとえ、この手が血で汚れていたとしても)
すずらん (それでも……手を差し伸べたい相手がいるんだ)
すずらん (過去の罪よりも、いま守りたい相手が、いるんだ……!!)
  ―――――――――――――――――――――――カッッッッッ……!!!!
――――――スタッ……
ダーク 『……!?』 ギリッ 『純白の……プリキュア……だと!?』
リーフ 「す、すごい……天使様みたい……」
バニラ 「……美しい。そして、気高い。ああ……とてもきれいだよ、すずらん」
578:以下、
?? 「これが……これが、私……?」
?? 「こんな……姿で……?」
バニラ 「……とても似合っているよ」 ニコッ 「何より白く、何より潔白な、君の姿だ」
?? 「私……プリキュアになっても、いいのかな……?」
バニラ 「何を言っているんだい?」 クスッ 「もうなってる」
?? 「あっ……そうだね」
?? 「――――――じゃあ、プリキュアはプリキュアらしく」
――――――シュシュシュシュシュンンンンン!!!!
ダーク 『!?』 (ばっ……馬鹿な!? 瞬間的に、距離を縮め……――――)
リーフ 「はぇ……?」
?? 「大丈夫、キュアリーフ? 苦しくない? 痛くない?」
バニラ 「!?」 (今の、一瞬で……!?)
ダーク 『な……んだと!? 一瞬の間で、私の手から、キュアリーフを取り戻したというのか!?』
?? 「……お前も分かっているはずだ。私の中にはダークプリキュアの戦闘経験がある」
?? 「戦績だけなら百戦錬磨だ。私をなりたてのプリキュアだと思わない方がいい」
580:以下、
ダーク 『っ……!』
リーフ 「きれいなだけじゃなくて、とっても強いんだね……すごい!」
?? 「そんな風に言われると……照れる」
リーフ 「それで! あなたの、お名前は?」
?? 「えっ……? 名前……?」
バニラ 「……なりたい自分。憧れる何か。君が目指し、変わりたいと思う存在を想像するんだ」
?? 「なりたい自分……? 憧れ、目指し、変わりたいと思う何か……」
バニラ 「それが答えだ。君の中で、それが具現化されたのが、その姿だからね」
?? 「……私は……」 ギュッ 「……私は、できることなら」
?? 「……月の、影ではなく……光になりたい。ちっぽけでも、誰かを照らせる光になりたい」
?? 「月と共に人々を照らし、月がいないときには代わりに人々を見守る……」
?? 「……そんな、小さな星の光のようでありたい……!!」
?? 「そして、海を、大地を、葉を、花を……太陽と月と共に、見守りたい……!」
?? 「だから、私は……私の、名は……!!」
「――――闇夜に煌めく一輪の花!! キュアスターライト!!」
583:以下、
ダーク 『キュアスターライト……っ』 ギリッ 『何故……何故だ!?』
ダーク 『貴様は元ダークプリキュア。一度は消滅し、復活した不安定な存在だ!』
ダーク 『何故そんな貴様がプリキュアになることができる!? 何故!?』
バニラ 「……こころの大樹が選んだんだ。そして、僕が望んだんだ」
バニラ 「自らの罪を認めた上で、それでもなお彼女は、ふたばを救いたいと願った」
バニラ 「……その心を……心の強さを!! 僕が選んだんだ!!」
スターライト 「……ありがとう、バニラ。それから、キュアリーフ」
リーフ 「えっ……わ、わたし……?」
スターライト 「ふたりのおかげだ。ふたりのおかげで、私は変われる気がするんだ」
スターライト 「だから、後は任せて」
ニコッ
スターライト 「私はもう、影じゃない。闇じゃない。小さくても、ちっぽけでも、」
スターライト 「――光になることができたから」
リーフ 「すずらんちゃん……」 フルフル 「ううん。キュアスターライト!」
スターライト 「ああ。キュアリーフ」
591:以下、
ダーク 『っ……!』
スターライト 「……だから、覚悟しろ、私のかつての意志よ」
スターライト 「私はお前を拒絶しない。お前は……かつてお前だった私の罪もまとめて私のものだ」
スターライト 「これ以上、私の罪を野放しにしてはおけない。今度こそ、私はお前を」
スターライト 「……お前と、真っ直ぐに向き合い、そして償う。そう、決めた」
ダーク 『ほざくな……吠えるな悪人がぁぁああああああああ!!!!』
――――ッッドッッ!!!!
スターライト 「さすがにいな。しかし――」
――――ガッッッ!!!
ダーク 『……ッ!?』
スターライト 「言ったはずだぞ? そして、お前も分かっているはずだ、かつての私」
スターライト 「お前は私だ。だからこそ、お前にできることならば私にもできる」
スターライト 「そして今の私にはプリキュアの力がある。……お前には負けない」
ダーク 『調子に……乗るなッ……!!!!』
スターライト 「……ふん」
592:以下、
バニラ 「す、すごい……。なんて凄まじい攻防だ」
リーフ 「黒と白がくっついて、離れて、またくっついて……」
リーフ 「すごい。目で追うのがやっとだよ。スターライト、とっても強い」
リーフ 「わたしも……」
スッ…………ズキッッ……!!!!
リーフ 「っ……!?」
バニラ 「リーフ! 君はまだ本調子じゃない。無理はやめるんだ!」
リーフ 「で、でも……! スターライトがああして戦ってるのに……」
バニラ 「……心配には及ばないようだよ? 見てごらん」
リーフ 「えっ……?」
バニラ 「凄まじい戦闘能力だ。まるで白き閃光……本物の流星のようだ」
バニラ 「……勝負は、もうつくようだね」
――――――――――ッッッドッッ……!!!!!
ダーク 『………………』
スターライト 「………………」
595:以下、
   ――――――――――――――――ガクッ
ダーク 『ぐっ……な、なぜ……だ……』
ダーク 『なぜ、勝てない……スピードは互角。力も互角。技も互角……なのに、何故』
ダーク 『解せぬ。なぜ私はお前に勝つことができない……!?』
スターライト 「……そんなの、決まってる。お前に愛がないからだ」
ダーク 『……ッ! 世迷い言を! 人造生物の我々に愛など……ッ!!』
スターライト 「しかし、私は心を得て愛を知った。これもきっと、お父様の計らいだろう」
ダーク 『お父様、だと……?』 フン 『我々に父などいない』
ダーク 『忘れたか? 我々はただプリキュアを倒すためだけに生み出された人造生物だぞ?』
スターライト 「……元がどうであれ、生み出された目的がどうだったのであれ、」
スターライト 「それでも、私たちは生み出された。お父様――月影博士の手によって」
スターライト 「……そのせいで、多くの人間が傷ついた。犠牲になった妖精もいる」
スターライト 「けれど、それでも……身勝手だとは分かっているが、それでも……」
スターライト 「生きたいと思った。心が生まれたこの身体で、人間として生きていきたい」
スターライト 「……私のその意志が、かつての私の “砂漠の意志” ……お前を超えたんだ」
596:以下、
ダーク 『………………』
ダーク 『くくっ……くくくく……』
スターライト 「……?」
ダーク 『“愛” か……』 ギリッ 『また……またも、“愛” か……ッ!!』
ダーク 『愛などいらぬ! 愛など不要だ!! それが何故分からん!?』
ダーク 『貴様らの言う愛がいったい何をしてくれるというのだ! 愛など……!!』
スターライト 「……そうだな、かつての私よ。愛はときに人を傷つける」
スターライト 「憎しみ、恨み、悲しみ……人の愛は、冷たく暗いものに変わってしまうこともある」
スターライト 「……だが、それでも……それでも、人の愛は人を救う。この星さえも、救う」
スターライト 「愛がなければ何もない。人を思いやることもできない」
スターライト 「……そして、お前は気づいていないだろうが、愛がなければ人を傷つけることもできないんだ」
ダーク 『……!?』
スターライト 「お前の中にある憎しみ、怒り、それらもまた愛の一部、そして心のひとつだ。かつての私よ」
ダーク 『………………』
スターライト 「私は認めよう。かつて、ダークプリキュアであった私にも心があった。想いがあった」
597:以下、
スターライト 「“サバーク博士に認められたい”」
スターライト 「“キュアムーンライトを倒し、本物のプリキュアになりたい”」
スターライト 「……今の私がお前にこんなことを言うのは卑怯なことだろう。分かっている」
スターライト 「それでも私は、お前に分かってもらいたいんだ。お前は……私だから」
スターライト 「お前の心の愛を、私の中に取り戻したいんだ」
スターライト 「そして私の罪を、愛故に犯してしまった罪を……一緒に償っていかないか?」
ダーク 『っ……世迷い言を……!!!』
ザッ……!!!
ダーク 『闇の力よ集え!! ダークタクト!!』
スターライト 「……分かった。お前があくまで憎しみで戦うというのなら、私もまた愛で戦う」
スターライト 「私は変わった。そして、これからもっと変わっていく。だが、お前を捨てて変わるわけではない」
スターライト 「かつての私。お前と向き合い、私の罪を償いながら、変わっていく」
スターライト 「……だからこれは、お前を、私を、救うための戦いだ」
ザッ……!!!
598:以下、
スターライト 「集まれ! 花の力よ!!」
スターライト 「――――スタータクト!!」
スターライト 「花よ瞬け!!」
ダーク 『ダークパワー……――――』
スターライト 「フローラルパワー……――――」
      『「――――フォルティシモ!!!!」』
――――――――――ッッドドンンンンンンンンン!!!!!!
ダーク 『あああああああああああああああああああああ!!!!!!!』
スターライト 「はぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
ッッッッ……………………ドッッッッッ……――――――――――!!!!!!!!
600:以下、
スターライト 「………………」
ダーク 『………………』
ガクッ
ダーク 『……こ、れが……人の、愛の……力、か』
スターライト 「ええ。そしてこれはきっと、あなたにも」
スッ!!!!
スターライト 「今、届くはずの、愛」
スターライト 「――――――ハート・キャッチ!!!!」
………………――――――
『……なるほど。ああ。そうか。ありがとう、私』
「いいえ。こちらこそ、ありがとう、私」
『私は、私の中で、生きていく。ずっと、ずっと』
「ええ。私は、私の中で、ずっと生きていく。ずっと、一緒に……」
――――――………………
601:以下、
リーフ 「す、すごい……」
バニラ 「ああ。本当に凄まじい戦いだった……」
スターライト 「………………」
スッ
スターライト 「大丈夫? キュアリーフ」
リーフ 「あ……う、うん。ありがとう、スターライト」
バニラ 「ダークプリキュアの意志は、消滅したのか……?」
スターライト 「………………」 フルフル 「……ここに、いる。私の中で、生きている」
バニラ 「……そうか」
スターライト 「……不安?」
バニラ 「いいや。だけど君が心配だ。かつての罪の重さに押し潰されやしないかって」
スターライト 「……どうだろう。分からない。けど……」
スターライト 「向き合うって、決めた。だから、きっと……大丈夫」
バニラ 「……そうか。スターライトがそう言うのなら大丈夫だろう」 ニコッ
リーフ 「……うん!!」
602:以下、
………………
クモジャキー 「――覇ぁぁあああああああああああああああ!!!!」
クモジャキー 「マリン・海面割チョップ!!!!」
ドゴォオォオオオオオオオオオオ!!!!
クモ 『グギャッ!? ガ……ガガガガ……グ……』
………………
コブラージャ 「サンシャイン・カードストーム!!!」
シシシシシシシシュュュュ!!!!!!
コブラ 『ギギ……ギ……ギギ……』
………………
サソリーナ 「ブロッサム・毒針頭突きパンチ!!!!」
ドゴッッッッ……!!!!
サソリ 『グ……ギギギギギギ……ゴ……』
サソリーナ 「……手こずらせてくれたけれど、尻尾も切り落としたし、これで終わりのようねぇ」
サソリーナ (……とはいえ、こちらも満身創痍なのだけどね)
603:以下、
サソリ 『グ……ガ……』
ガクッ……
サソリーナ 「……終わりね、かつての私の意志。これで最後にしましょう」
スッ――――――
―――――― 『ふむ。だがそれは困る』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
サソリーナ 「!!?」 (急に気配が……!?)
バッ!!!
サソリーナ 「なっ、何者!?」
『分からぬか? 否。分からなくても構わぬ』
サソリ 『ギギギ……』
『致し方あるまい。力を貸そう。そして今度こそ、このプリキュアもどきどもを打ち倒せ』
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!
サソリーナ 「……!?」 (なに……? とてつもなく邪悪な力が……集まっている……)
604:以下、
『我が呼び声に応えよ。そして、全てを砂漠とし、破壊し尽くす力となれ』
ジジジジジジ……ゴォォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
サソリーナ 「なっ……何!? 砂嵐……!?」
『……さぁ、行け。お前たちの器のこころの花を枯らし、その身体を手に入れろ』
――――――ドッッッッバァアアアアアア……!!!!!
サソリ 『ゴガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
サソリーナ 「!?」 (砂嵐の中から……!? 復活したとでも言うの!?)
サソリーナ 「っ……舐めるんじゃ、ないわよ……!!!」
――――――――ッッッドッッ……!!!!
サソリーナ 「なっ……なんていう、力……!!」
サソリ 『ギギギガアァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
ギギギギ……ギリリリリッ……!!!!! ッッッッッドンンン!!!!
サソリーナ 「がッ……!?」 (尻尾……!? さっき、切り落とした、はずなのに……)
………………ガクッ……
サソリーナ 「だ、ダメ……力が……」
607:以下、
………………
クモ 『グゴォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』
クモジャキー 「っ……いい加減しつこいぜよ!!!」
ドガァアアッッ!!!
クモジャキー 「なッ……!?」 (手応えが感じられんぜよ……!!)
クモ 『ゴァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
ブゥン……!!!!
――――――――――――ドガァアアア!!!!
クモジャキー 「ぐッ……!? なんちゅう力じゃ……!!」
………………
コブラージャ 「ちぃ……!! 素早さが先とは段違いだ……!!」
シャシャシャシャシャシャ……!!!!
コブラージャ 「っ……カードの刺さりも悪い……! 鱗が強化されたのか!!」
コブラ 『ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!』
ブゥンンン!!!!
   ッッッドッッッッ……!!!!!
608:以下、
コブラージャ 「ご、がッ……!!?」 (尻尾の、攻撃……?)
コブラージャ (馬鹿な……! 僕の視界に、まったく映らなかったぞ……?)
コブラージャ 「そんな……こんな……」
ガクッ
コブラージャ 「くそっ……力が……でない……」
『……ふん。無様だな、花の使徒。だから我が軍門に下れと言ったのだ』
コブラージャ 「誰が……もう一度 “砂漠” などにこの心を差し出すか……!!」
『そうか。ならば先にそれを後悔させてやろう』
コブラージャ 「……僕のこころの花を奪うのかい? ははっ、好きにするといい」
コブラージャ 「僕が犠牲になったとしても、すぐにプリキュアが来る」
コブラージャ 「こんな怪物に僕の身体が加わったところで、大した力にはならないさ」
コブラージャ 「……少なくとも、プリキュアたちの美しい愛の力には絶対に敵わない」
コブラージャ 「だから、構わない。僕ひとりがどうにかなる程度で、僕を後悔させられると思うな」
『……くく……くくくくく』
コブラージャ 「……何が可笑しい」
610:以下、
『……罪を償おうと必死で抗っている者……たしかに貴様らは、もう己の命など惜しくはないのだろう』
『しかし何を勘違いしている? 私は貴様らを後悔させてやると言ったんだぞ』
コブラージャ 「貴様……何を……!」
『……今から貴様らのかつての意志……三体の怪物を明堂学園に差し向ける』
コブラージャ 「なっ……!? き、貴様……!!!」
『こころの大樹の力を借り受けた貴様らでもなお手に余る怪物だ』
『そして今、私の力で強化されている……さて、どうなるだろうな』
コブラージャ 「馬鹿なことはやめろ!! お前は……!!」
『元より、全て無に帰すのが私の目的だ。何もおかしくはなかろう』
『……行け。三幹部の意志たちよ』
『花の使徒のこころの花を奪う前に、奴らが守りたい全てを壊すのだ』
コブラ 『ギギギギ……ギギギィイイイイイイイイイ!!!』
コブラージャ 「っ……!! やめろおおおおおおおおおお!!!」
ザッ……!!!!
『ほう? まだ立つ力が残っているとはな』
611:以下、
………………
クモジャキー 「っ……」 (しかし……立ち上がっただけで僥倖と言わざるをえんぜよ……)
クモジャキー (まるで戦える気がしない……しかし……それでも……)
『……だが、満身創痍だ。貴様らには何もできんよ』
クモジャキー 「……それはどうかな」
『ふん。下らぬ強がりを申すな』
『……構わぬ。踏み潰して明堂学園へ向かえ』
クモ 『グゴガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
『……何もできぬ無力を思い知り、絶望しろ。花の使徒』
クモジャキー 「……くだらん」 ギリッ 「くだらんくだらんくだらんくだらん!!!」
――――――ッッッッッドッ……!!!!
『……!? なんだ、この力は……ッ』
クモジャキー 「……どかん。退かん。決して避けん!!!」
クモジャキー 「学園には大勢の人間がいる! 俺の大切な者もいる!」
クモジャキー 「この心が俺の強さじゃ!! 俺は死んでも、お前をここから先へは行かせんぜよ!!!」
612:以下、
『ならばいい!! そのまま潰れて朽ち果てよ! 花の使徒!!!!』
クモ 『グォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』
クモジャキー (はっ……強がってはみたものの……さすがに、これは……まずい……)
クモジャキー (立ちふさがるだけで、手一杯……こんなザマじゃ、笑われるぜよ……)
クモジャキー 「……悪いな、キュアマリン。俺はどうやらここまでのようじゃきぃ」
クモジャキー 「あとは任せたぜよ。この怪物が学園を襲う前に、どうにか止めてくれ……」
ドドドドドドドドドドドッッッッ……!!!!
クモジャキー 「……ああ。俺の強さでは、お前には及ばなかったようぜよ」
クモジャキー 「せっかく説教してもらったのに、すまんぜよ」
―――――――― 「勝手にあきらめてんじゃないわよ!!!」
クモジャキー 「なに……ッ?」
? 「――――――マリン・シュートぉぉぉおおおおおおお!!!!!」
クモ 『グゴッ……!?』
――――――――ッッッッッッドッッッッ……!!!!!
615:以下、
………………
サソリーナ 「学園には子どもたちがいる……私の大切な、教え子がいる!!」
サソリーナ 「だから私はここをどかない!! かつて、あの優しい女の子たちが、教えてくれたから!」
サソリーナ 「私はもう、世界を恨み、人を呪っていたときの私じゃない!!」
サソリーナ 「力がなくたって……私は絶対に諦めない!! 守ってみせる!!!」
ドドドドドドドドドドドッッッッ……!!!!
サソリーナ 「……そう。私は信じてる。たとえ私がここで、踏み潰されたとしても」
サソリーナ 「絶対に、プリキュアが現れて、学園を守ってくれる」
サソリーナ 「だから、私は……せめて、その礎に……――――」
―――――――― 「勝手なことを言わないでください!!!」
サソリーナ 「えっ……?」
? 「――――――ブロッサム・シャワーぁぁああああああああ!!!!!」
サソリ 『ガッ……!!?』
――――――――ドガァアアアアアッッ!!!!
617:以下、
………………
コブラージャ 「……あそこには、守るべき幸せな笑顔がたくさんあるんだ」
コブラージャ 「そのどれもが至高に美しい。僕は、そんな笑顔を曇らせることだけは、絶対に是としない」
コブラージャ 「美しくなくたっていい。無様に地を這いずってでも、泥を啜ることになってでも、」
コブラージャ 「僕はここをどくことはない。諦めることはない」
コブラージャ 「醜く、往生際悪く、立ちふさがる。それが僕の知った、心の美しさだから!!!」
ドドドドドドドドドドド……!!!!!
コブラージャ 「しかし……さすがの僕も、諦めたくなるな。……まぁ、でも、いいか」
コブラージャ 「ふっ。あとは美しい彼女らに任せて、僕は退場するとしようかな」
―――――――― 「そんな諦観が、格好良いとでも思っているんですか?」
コブラージャ 「なっ……?」
? 「――――――サンフラワー・イージスッッッ!!!!!」
コブラ 『グガッ……!?』
――――――――ギィィイイインンンン!!!!!
618:以下、
………………
クモジャキー 「そんな……まさか……」
? 「……久しぶり、クモジャキー。まさかまたその姿で会うとは思わなかったけど」
? 「アンタ、結構やるじゃん」 ニッ
クモジャキー 「キュアマリン……!」
………………
サソリーナ 「うそ……でしょ」
? 「お久しぶりですね、サソリーナ。相変わらず変な格好です」
? 「でも、安心しました。ご無事だったんですね」
サソリーナ 「キュアブロッサム!!」
………………
コブラージャ 「……相変わらず美しい……」
? 「はは……再会の第一声がそれっていうのもなんかなぁ。まぁ、あなたらしいかもしれないけれど」
? 「……ボロボロですね。でも、今のあなたは美しいですよ、コブラージャ」
コブラージャ 「キュアサンシャイン……」
620:以下、
………………
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
リーフ 「な……なに、この……嫌な感じは……」
スターライト 「これは……間違いない……!」
バニラ 「……この波動は…… “砂漠の意志” ……!!!」
『ご明察だな、新たな妖精』
ギギギギギギギギギ……!!!!
バニラ 「っ……今の今まで気配なんてなかったというのに……!」
バニラ 「一瞬で現れるとはね、“砂漠の意志” !!」
『そう気色ばむな。本当に憤りたいのはこちらの方だというのに』
『貴様らはイレギュラーとしてあまりにも大きくなりすぎた』
『やはり貴様は確実に始末しておくべきだったな、妖精』
『新しいプリキュアを生み出すに留まらず、もうひとり……』
『それも、元ダークプリキュアをプリキュアとしてしまうとはな……』
バニラ 「……僕は何もしてないさ。それを成し遂げたのは、このふたりだ」
622:以下、
スターライト 「“砂漠の意志” 。お前はお父様の私への想いを踏みにじり、利用した」
スターライト 「私はお前が憎い。だけど、憎しみは何も生まない。だから、いい」
『ふん。ならばどうするというのだ?』
リーフ 「……今すぐ世界の砂漠化を解いて。そして、砂漠に帰って」
リーフ 「わたしたちはあなたを傷つける気はないよ」
『……そしてまた、砂漠を悪者にした人間の生活が始まるのか』
リーフ 「えっ……?」
『何でもない。忘れろ。否。今ここで消滅しろ。プリキュアと妖精』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!
リーフ 「ひっ……!?」 (やだ……なに、この感じ……)
『私の直接の端末が、この地に散らばっている。今頃、全ての邪魔者を消しているだろう』
『そして私は、“砂漠の意志” の本体…… “頭” だ』
『光栄に思うといい。私は元三幹部の花の使徒より、貴様らプリキュアを脅威と見なしたんだ』
スターライト 「……なるほど。私たちを直接潰したいほどに恐れているということか」
『好きなように解釈するといい。どちらにしろ、貴様らはここで滅ぶ運命なのだ』
623:以下、
バニラ 「!? 攻撃が来る!! 避けて!!!」
リーフ 「へ……?」
スターライト 「ッ……!!!」
『遅い。サンドサンダー!!!』
――――――――チュドッッッッ……!!!!
スターライト 「!?」 (雷……!? っ……リーフとバニラだけは……ッ!!!)
バヂッ……!!!!!
スターライト 「ぐ……がッ……!!」
リーフ 「……え……? スター、ライト……?」
バニラ 「スターライト!!!」
スターライト 「……リーフ、バニラ……良かった……無事か」
『ふん。砂の摩擦で雷を作り出してみたが……なるほど。一点集中になってしまうのか』
バニラ 「何を……!」
『貴様らはたしかにイレギュラーだが、脅威とはなりえん』
『四人の当代と戦う前に、プリキュアの対抗手段を研究しておきたくてな』
624:以下、
スターライト 「なる、ほど……」 ヨロヨロ 「私たちは、体の良い、実験台という、わけか……」
スターライト 「舐められたものだな……ッ!!」
リーフ 「す、スターライト! ダメだよ! もうフラフラじゃない!」
スターライト 「……いや、大丈夫だ」 ニコッ 「バニラとお前は、私が守る」
スターライト 「私が……私が、絶対に……」
リーフ 「スター、ライト……」
スターライト 「お前こそ、疲れている、はずだ……ゆっくり、休んでいて、くれ……」
バニラ 「スターライト……」
スターライト 「心配、しないでいい……大丈夫だから」
リーフ 「………………」 (わたし……また……)
リーフ (何も……できないの……?)
スターライト 「……今度はこっちから行くぞ、“砂漠の意志” !!」
スターライト 「集まれ、花のパワー!!」
『なるほど。かつてのダークプリキュアよ。貴様の戦闘能力はたしかに高い』
『――しかし、それだけだ』
625:以下、
スターライト 「花よ瞬け! プリキュア・ホワイトフォルテウェイブ!!」
――――――ッッッッッドンンンン!!!!
パァァアアアアアアア………………――――
バニラ 「やったか……!?」
スターライト 「いや……」
ゴゴゴゴゴゴ……
『……白き清浄な光。なるほど。存外に強力であった』
『しかしやはり、それだけだ』
リーフ 「そんな……まったく効いてないの!?」
スターライト 「っ……」
『貴様ら程度では、プリキュアへの対抗手段の実験台にもならんな』
『……そろそろ私の端末が花の使徒を潰している頃合いだろう』
『終わりにしよう。新たなる二人のプリキュアよ』
ギギギギギギギギィィイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
スターライト 「っ……なんて強大な、力……!!」
626:以下、
『これくらいを恐れるな。これと同等の力を、キュアフラワーは押し返していたぞ?』
バニラ 「……っ」 (史上最強と謳われたキュアフラワーが、ようやく押し返した力……)
バニラ (そんな強大な力をくらって、このふたりが耐えられるわけがない……!)
バニラ 「逃げろ!! 今の君たちでは、“砂漠の意志” には敵わない!!」
リーフ 「えっ……そ、そんな……」
バニラ 「悔しいが、僕らはまだ未熟だ……できないことも多い……」
バニラ 「だから、せめて……――――」
『――――……構わぬが、その場合この力がどこへ放たれるか、分からぬ訳ではあるまいな?』
バニラ 「ッ……!? ま、まさか……貴様ッ!!」
『この下にはこころ強き者がたくさん集っているようだ。そこに直接落とすとしよう』
リーフ 「っ……そんなこと……!!」 ズキッ 「痛っ……」
スターライト 「………………」 (リーフはまだ、傷が癒えていない……)
スターライト (そしてもちろん、バニラにも無理はさせられない……)
スターライト (……なら、私のやることなんかひとつに決まってる)
スッ
628:以下、
リーフ 「えっ……? スターライト?」
スターライト 「……逃げて。リーフ、バニラ」
バニラ 「……!? な、何を言って……――」
スターライト 「――いいから早く逃げて!!!」
バニラ 「なっ……だから君は何を言っているんだ!!?」
スターライト 「あの邪悪な力が校舎を直撃したら、人々のこころの花がただでは済まない!」
スターライト 「なら……誰かが守るしかない!!」
バニラ 「し、しかし……! あんな強大な力、到底僕らに防ぎきれるものじゃない!」
スターライト 「だったら!!!」 ギリッ 「私がこの身に代えてでも、防ぎきる!」
リーフ 「!?」
スターライト 「……あなたたちまで犠牲になる必要はない。……私が、守る」
リーフ 「そんな……そんなのダメだよ!!」
スターライト 「考えて、リーフ。学園にはあなたのお父さん、お母さん、おばあさんもいるんだよ?」
リーフ 「!? そ、それは……」
スターライト 「……安心して。そんなあなたの大切な人たちもまとめて全て、私が守るから」
630:以下、
スターライト 「だから……だから、早く逃げて」
バニラ 「………………」 コクッ 「……分かった」
リーフ 「バニラちゃん!?」
バニラ 「……逃げるんだ、リーフ。僕はスターライトに力を貸すために残る」
スターライト 「なっ……!? バニラ!!」
バニラ 「妖精とプリキュアはセットだよ。一緒にいた方が力が出るに決まってる」
バニラ 「君ひとりに辛い思いはさせられない。僕は、君の妖精だからね」
スターライト 「バニラ……」
バニラ 「……だから、せめて……リーフ。君だけは逃げてくれ」
バニラ 「そして、当代のプリキュアたちと共に、この世界を守ってほしい」
リーフ 「そんな……そんなのって……っ」
リーフ 「わたしも……わたしも手伝うよ! ふたり一緒なら、きっとできるよ!」
スターライト 「………………」 フルフル 「……そんな危険な賭けに、あなたを巻き込めない」
スターライト 「私とバニラが犠牲になるだけで済むのなら、それに越したことはない」
リーフ 「わたし……」 (わたしじゃ役に立たないから? 弱いから……? だから、ダメなの?)
631:以下、
『そろそろ行くぞ……』
スターライト 「ああ……こんな程度、私たちが押し留めてみせる……!!」
バニラ 「行くぞ、スターライト!!」
『――――ヘルビサイド!!!』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
スターライト 「……あとは頼んだ、キュアリーフ」
スターライト 「集まれ、花の力よ!! プリキュア・フローラルパワーフォルティシモ!!」
――――ッッドッッッ!!!!
リーフ 「スターライト……スターライトーーーーーーーーーー!!!!」
リーフ (どうして……わたし、弱いから……だから、何もできない……)
リーフ (わたし、変われてないよ……どうして、わたし……)
リーフ (わたしが弱いせいで、スターライトは……すずらんちゃんは……)
リーフ (それに、バニラちゃんも……っ……どうして……!)
『……なかなかやる。だが、終わりだ』
ゴォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
632:以下、
バニラ 「っ……舐めるなぁぁぁあああああああああああああああ!!!」
バニラ 「スターライト! 枯れ果てても構わない! 僕の力を使え!!! 使い尽くせ!」
バニラ (僕は……ずっと、自分を出来損ないだと思っていた。けれど、違った)
バニラ (それを教えてくれたのは、他でもないキュアリーフ……すずらんなんだ)
バニラ (だから僕は……キュアリーフを、守りたいんだ……)
スターライト 「……分かった。あなたの力を、私に貸して!!」
スターライト (わたしは、リーフに……ふたばに出会うことで、全てを取り戻した)
スターライト (砂漠の端末としてではなく、人間として……ほんの短い間だけだったけれど、過ごせた)
スターライト (だからせめて、リーフにだけは生き残って欲しい)
スターライト (この身に代えてでも、私は……そう。きっと、リーフを守りたい)
スターライト 「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
バニラ 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
『……くだらぬ。その努力も、想いも、何もかも……私が無に帰そう』
ギギギギギ……ギギギギギギ……!!!!
633:以下、
バニラ 「ッ……!?」 (出力が、上がった……!?)
スターライト 「まずい……!! これ以上は、力が……ッ」
ビキィッッ……!!!
スターライト 「っ……」 (この身体は小さい少女のもの。さっきまでの疲労が蓄積しているのか……)
スターライト (くっ……わたしは、この程度も……できないのか……)
ギュッ……
スターライト 「……? バニラ」
バニラ 「……諦めないで、スターライト。僕がついているよ」
スターライト 「……うん!」 コクッ 「私は、諦めない。私の心に、この想いが、心が、愛が、ある限り」
スターライト 「この手を握ってくれる優しい人がいる限り……私は、絶対に諦めない!!!」
―――――――― 「ええ。となりに誰かが立っているだけで、人は強くなれるものよ」
スターライト 「え……?」 (銀色の、光……? これは、まさか……)
? 「――――――ムーンライト・シルバーインパクト!!!」
――――――――ッッッッッッド!!!!!
635:以下、
――――ストッ……
? 「……危なかったわね」
スターライト 「お前は……いや、あなたは……そんな……」
バニラ 「キュアムーンライト!!!」
バニラ (すごい! スターライトと僕が弱らせていたからって……)
バニラ (一撃で、“砂漠の意志” の攻撃を吹き飛ばしてしまうなんて……!!)
『……!? ば、馬鹿な……!!』
『なぜ、このタイミングで現れるのだ……! キュアムーンライト!!!』
『そして……ヘルビサイドが、なぜこんな簡単に防がれたのだ……!!』
ムーンライト 「あら、おかしいことかしら?」
クスッ
ムーンライト 「前代のプリキュアにできたことが、どうして当代の私にできないと思うの?」
『っ……!!』 ギリッ 『だが、ここに来たということは……!!』
『ふはははははは!! プリキュア! 貴様ら、あの部族を見捨てたということか!!』
ムーンライト 「………………」
636:以下、
『守ると言っておきながら、やはり守り得なかったか!』
『浅はかだな、プリキュア! 所詮貴様ら程度では、誰の幸せも守れぬのだ!!』
ムーンライト 「……それは違うわ」
ムーンライト 「私たちは、たしかにあの部族の幸せを守れなかった」
ムーンライト 「けれど、命は守ったわ。幸せになる可能性……その大元である、命だけは」
『……ッ!?』
ムーンライト 「あまり人間を舐めないでほしいわね。人は、生きていればなんでも出来るのよ」
ムーンライト 「彼らは私たちに約束してくれたわ。必ず再興し、日常を取り戻すと」
『貴様……キュアムーンライト……!!!』
ムーンライト 「希望ヶ花市で戦っている気配が四つあった。その全てにプリキュアが向かったわ」
ムーンライト 「残念だったわね、“砂漠の意志” 。当てが外れてしまったかしら?」
『構わぬ! 今ここで全員、潰す!!』
ムーンライト 「……だ、そうよ? 力を貸してもらえるかしら」
スターライト 「えっ……あ……あ……」 フルフル 「私、あの……その……」
ムーンライト 「……今はいいわ。後で、話を聞かせてもらえると嬉しいけれど」
637:以下、
スターライト 「あっ……」 コクッ 「う、うん!!」
スターライト 「私は……私の名は、キュアスターライト」
ムーンライト 「そう……良い名前ね」 ニコッ 「私はキュアムーンライトよ」
ムーンライト 「……行くわよ? 準備はいいわね、スターライト!」
スターライト 「……うん!! ムーンライト!!」
ザッ……!!!!
『くっ……たかがプリキュア二人がぁああああああああああ!!!』
「「集まれ、ふたつの花の力よ!!!」」
―――――― 「「プリキュア・フローラルパワーフォルティシモ!!!」」
――――――ッッッッッッドッ……!!!!!
バニラ 「す、すごい……!! 月と星の力が、いま、ひとつになる……!!」
リーフ 「スターライトと、ムーンライト……すごい……」
「「はぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
639:以下、
………………
ズドン……!!! ズドンズドン……!!!!!
マリン 「っととととと……あっぶないっしゅー」
クモジャキー 「大丈夫か、キュアマリン」
マリン 「大丈夫だいじょーぶ。心配しなさんな」
マリン 「っても、アンタが人の心配するとはねー……変わったモンだ」
クモジャキー 「茶化すな。お前が教えてくれたんだろうが」
マリン 「ははは……そう面と向かって言われると照れるっしゅ」
クモジャキー 「……ふん。仕方がないから力を貸してやる」
クモジャキー 「さっさとあの怪物を倒すぞ」
マリン 「合点承知!」 ザッ……!!! 「行くわよ、クモジャキー!!」
クモジャキー 「応!!!」
マリン 「集まれ、花のパワー!! マリンタクト!!」
クモジャキー 「海の如く荒ぶる力よ、この身に集うぜよ!! マリンブレスレット!!」
―――― 「「集まれ!! ふたつの花の力よ!!」
640:以下、
………………
ブロッサム 「あなたも変わりましたね、サソリーナ」
サソリーナ 「あったりまえでしょー。あんたたちにブッ叩かれて目が覚めたのよぉ」
サソリーナ 「砂漠の使徒の元大幹部が、今じゃしがない幼稚園の先生だもの」
ブロッサム 「……でも、輝いています。今のサソリーナ、とっても」
サソリーナ 「……そう? なら、更生した甲斐があるってものね」
――――――ズドォォオオッッ……!!!
サソリーナ 「……さて、ちゃっちゃとあれを倒しちゃいますか」
ブロッサム 「はい!! 行きましょう、サソリーナ」
サソリーナ 「ええ!!」
ブロッサム 「集まれ、花のパワー!! ブロッサムタクト!!」
サソリーナ 「大地の如く揺るがぬ力よ、この身に集いなさい!! ブロッサムブレスレット!!」
―――― 「「集まれ!! ふたつの花の力よ!!」
641:以下、
………………
キィイイイイイイイイ……!!!
コブラージャ 「温かく、そして美しい……黄金の光……」
コブラージャ 「大人になった君も相変わらず美しいな、キュアサンシャイン」
サンシャイン 「はは。それはどうも」
サンシャイン 「……あなたたちが戦ってくれていたんですね」
サンシャイン 「ありがとうございます、コブラージャ」
コブラージャ 「なに、これは僕らの贖罪でもある。気にすることはないさ」
コブラ 『グオォオオオオオオオオオオ!!!』
コブラージャ 「……そして僕は、あのかつての僕の罪を取り戻さなくてはならない」
コブラージャ 「力を貸して欲しい。キュアサンシャイン」
サンシャイン 「わたしでよければ、いくらでも」 スッ 「……行きましょう、コブラージャ!」
サンシャイン 「集まれ、花のパワー!! シャイニータンバリン!!」
コブラージャ 「日の光の如く美しき力よ、この身に集え!! シャイニーブレスレット!!」
―――― 「「集まれ!! ふたつの花の力よ!!」
642:以下、
   「「「「「「プリキュア・フローラルパワーフォルティシモ!!!!!!!」」」」」」
――――――――ドッッッッッ……!!!!
………………
マリン&クモジャキー 「「はぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!!」」
………………
ブロッサム&サソリーナ 「「たぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!!」」
………………
サンシャイン&コブラージャ 「「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
………………………………――――ッッッッッドッ……!!!!!
    ―――――――――― 『ハート・キャッチ!!!!!』
――――――――――――――カッ……!!!!!!!!
    パァァアアアアアアア………………――――――――
643:以下、
………………
『ば、馬鹿な……ぐっ……』
『私まで、浄化されるわけにはいかん……!!』
――――――ザザザザザザザッッッ……!!!!
『覚えていろ、プリキュアども!!! 次で終わりにしてやる……絶対に!!!』
『全ての端末を結集し、私はひとつの “意志” としてお前たちを潰しに来る!!』
『そのときが、お前たちの最後だ! プリキュア!!』
…………ザザザザ……――――――
ムーンライト 「……さて、とりあえずは退けたかしらね」
スターライト 「あ……うん」
ムーンライト 「それで? あなたは……まさかとは思うけれど……」
スターライト 「そ、その……私は……」
――――――さようなら、キュアムーンライト――――――
スターライト 「っ……わ、私は……」
646:以下、
リーフ 「……あ、あのあの!!」
スッ
ムーンライト 「……? あなたは?」
リーフ 「キュアリーフです! もうひとりの新しいプリキュアです!」
リーフ 「あ……あの! スターライトのこと、責めないでください!」
スターライト 「キュアリーフ……?」
リーフ 「スターライトは、昔やったことを、すっごく後悔してて、自分を責めていて……」
リーフ 「それで、今……やっと人間になれて、プリキュアにもなれて……」
リーフ 「だから、その……」 グスッ 「……ムーンライトの気持ちは、分かるけど……」
リーフ 「責めないで、あげて……ください……っ」
ムーンライト 「………………」 フゥ 「……ひとつだけ、訊かせてもらえるかしら」
スターライト 「は、はい……」
ムーンライト 「……あなたは、ダークプリキュアなの?」
スターライト 「………………」 コクッ 「……その、通りです」
ムーンライト 「……そう」
647:以下、
バニラ 「あ……ぼ、僕からも頼むよ、ムーンライト!」
バニラ 「彼女はもう、プリキュアなんだ! 過去の過ちを償おうとしているんだ!」
バニラ 「だ……だから! だから……」
ムーンライト 「あなた、あの子なのね……」
スターライト 「……うん」
ムーンライト 「………………」
――――――ギュッ!!!!!
スターライト 「えっ……?」
ムーンライト 「…………――――った……」
スターライト 「……?」
ムーンライト 「よかっ、た……」 グスッ 「良かった……あなただけでも、無事で……!」
ムーンライト 「私の、妹……生きていてくれて、ありがとう……」
バニラ 「あ……」 テヘッ 「……僕ら、勘違いしていたみたいだね」
リーフ 「………………」 グスッ 「……うん。恥ずかしい」
ムーンライト 「よかった……本当に、よかった……」
648:以下、
スターライト 「温かい……ああ……」
スターライト 「………………」
グスッ……エグッ……
スターライト 「ああ……あた、たかい……よぅ」
スターライト 「なんで、だろう……心地、いいのに……涙が……止まらない……」
ムーンライト 「……泣きなさい。いくらでも」 ニコッ 「だって私も、涙が止まらないもの」
スターライト 「ムーンライト……ムーンライト……」 ギュッ
スターライト 「おねえちゃん……っ」
ムーンライト 「……うん。私があなたのお姉ちゃんよ」
スターライト 「あああ……うわああああああああああああああああああああああんん!!!」
リーフ 「よかった……よかったね、すずらんちゃん……」 グスッ
バニラ 「うん……本当によかった……」
――――――スタッ
マリン 「……? 駆けつけてみれば……これは何事?」
サンシャイン 「うん。とりあえずここは空気を読んで静かにしてようねえりか」
650:以下、
………………
つぼみ 「こうして総轄してみると、色々なことがあったんですね……」
えりか 「しかしまさか、ふたばがプリキュアになるなんてね……」
ふたば 「えへー」
いつき 「それに、ゆりの妹が生きていたなんてね……」
ゆり 「ええ……本当に嬉しいわ」 ギュッ
すずらん 「あ、う、うん……」 (そろそろ恥ずかしいからはなしてほしい……)
シプレ 「バニラもよくやったですぅ! それでこそ私たちの後輩です」
バニラ 「あ……はい!! ありがとうございます、先輩方!!」
コフレ 「……で、三幹部はちゃっかり正義のヒーローですか」
佐曽 「そう鼻白まないでちょうだいよぉ。あたしたちだって色々あったんだから」
熊本 「ふん。俺たちは俺たちにやれることをやるまでだ」
古布 「まぁ、その通りだね」
ポプリ 「でしゅ! 強力してくれる人がたくさんでしゅ!!」
薫子 「そうね。ここにいる皆が力を合わせて、たくさんの人々の心が守られたのね」
652:以下、
つぼみ 「おばあちゃん、わたしたち……」
薫子 「ええ。もちろん分かっているわ。ハートキャッチミラージュね」
薫子 「今、“砂漠の意志” は恐らく、最後の決戦に備えて力を溜め込んでいるわ」
薫子 「その間に、こちらも戦力を確実なものにしておきましょう」
熊本 「ハートキャッチミラージュか……正直、嫌な思い出しかないぜよ」
えりか 「そりゃアンタたちにとってはそうでしょうよ」
ゆり 「薫子さん。ハートキャッチミラージュは、プリキュアパレスに……?」
薫子 「ええ。役目を終えたミラージュは、プリキュアパレスの最奥にあるわ」
薫子 「まさか生きているうちにもう一度見ることになるとはね……」
えりか 「よし! じゃあ早取りに行こうよ!」
薫子 「あら、えりかちゃん、忘れたのかしら? ミラージュを手に入れる条件」
えりか 「へ……?」
いつき 「え? まさか……あの試練を、もう一回やるってことですか!?」
つぼみ 「えええーーーーーーーーー!!?」
すずらん 「……?」 (試練……?)
653:以下、
薫子 「……もちろん。ミラージュは神聖な儀式を終えなければ手に入れられないわ」
薫子 「それは非常事態でも変わらないことよ」
つぼみ 「でも、わたしたちはもう、試練を終えているはずじゃ……あっ!」
ふたば 「……? どうしたのおねえちゃん?」
つぼみ 「……なるほど。この子たちが、ということですか」
薫子 「ええ。次代のプリキュアが二人、こうして生まれた」
薫子 「ならば、今度試練を受けるのはふたばとすずらんちゃん。このふたりよ」
えりか 「そんな……!! だってこのふたり、まだプリキュアになったばかりなんだよ!?」
薫子 「それでも、やらなければならないの。今は非常事態なんだから」
すずらん 「試練というのは?」
薫子 「……ふふ。それは実際にやってみてのお楽しみ」
薫子 「さて、のんびりはしていられないわ。早行きましょう」
薫子 「……私たちは少しの間、ミラージュを取りに行ってくるわ」
薫子 「その間に何かがあったら……できる範囲で、守ってもらえるかしら?」
熊本 「応。安心して俺たちに任せるぜよ」
654:以下、
………………???
『“頭” “右腕” “左腕” “右足” “左足” “胴” 。……全てを結集する』
『……待っていろ、プリキュア』
『全ての力をひとつとし、今度こそ私が貴様らを葬り去る』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!!!
『世界を砂漠に……全てを無に帰す……』
『全てを終わらせる……それが、私の意志だ……』
―――― 『あなたには見えないのですか!? 砂漠で暮らす人々の笑顔が!!』
―――― 『違う! あなたは何かを枯らすことしかできないんじゃない!!』
―――― 『人々を守り、心を育むことができるじゃないですか!!』
『……今さら、何をしたところで変わらぬ』
『人の豊かさが砂漠を生み、砂漠が心を枯らせるのだ』
『いずれ世界が砂漠に飲まれるのなら、今私がやってしまったところで何も変わらない』
『……私が一足先に終わらせる。ただそれだけのことだ』
655:以下、
………………プリキュアパレス
ふたば 「ほぇえええええ……きれいなお城!!」
すずらん 「………………」
ふたば 「すごいねぇすずらんちゃん! 植物園の木の中にこんな場所があるなんて!」
すずらん 「あ……ああ……」
ゆり 「………………」
ギュッ
すずらん 「……!」
ゆり 「……大丈夫。コロンも、あなたがプリキュアになって、きっと喜んでいるわ」
すずらん 「……うん。お姉ちゃん」
ゆり 「忘れないで。あなたはもうダークプリキュアじゃない」
ゆり 「私の妹の、月影すずらんなんだから」
すずらん 「……うん!」
シプレ 「……スズランの花言葉は、“幸福の再来” ですぅ」
コフレ 「すずらんはゆりさんにとって、かけがえのない “帰ってきた希望の花” です!」
657:以下、
………………プリキュアパレス内 ホール
ふたば 「うわぁああ……すごい……」
すずらん 「……ここが、プリキュアパレスなのか」
ふたば 「なんか、ダンスを踊る場所みたい。とっても広いね」
薫子 「ダンス……言い得て妙かもしれないわね。ここは、プリキュアが踊る場所よ」
薫子 「……試練という演目の、ダンスをね」
ふたば 「えっ……?」
つぼみ 「……ふたば、すずらんちゃん、そしてバニラ……用意をしなさい」
すずらん 「何を……するつもり?」
つぼみ 「試練です」
バニラ 「試練……? 詳しい内容は、僕もよく知らないんだけど……」
つぼみ 「……こういうことですよ」 スッ 「……プリキュア・オープンマイハート!!!」
パァアアアアアア……!!!!!
ブロッサム 「……さぁ、早く変身しなさい。事態は一刻を争います」
ふたば 「ど、どうしたの、お姉ちゃん……ちょっと、怖いよ」
660:以下、
ブロッサム 「……今のわたしはあなたのお姉ちゃんじゃありませんよ、ふたば」
ブロッサム 「キュアブロッサム。あなたたちの先代のプリキュアにあたります」
ふたば 「じ、じゃあ……ブロッサム、一体何をするの?」
ブロッサム 「………………」
ギュゴッッッ……!!!!!
ふたば 「――――へ……?」 ペタン 「な……何、するの……?」
ブロッサム 「……わたしが寸前で止めていなければ、」
ブロッサム 「あなたは今のわたしの拳で吹き飛んでいましたよ、ふたば」
すずらん 「なっ……! いきなり何をするんだ、キュアブロッサム!!」
ブロッサム 「これから、あなたたちに、わたしを倒してもらいます」
ふたば 「えっ……!? そ、それって……どういうこと?」
ブロッサム 「そのままの意味ですよ。それが試練です」
ブロッサム 「先代のプリキュアを倒すことで、ハートキャッチミラージュが手に入るのです」
ブロッサム 「……さぁ、早く変身しなさい」
661:以下、
ふたば 「そ、そんなの……! できないよ! できるわけないよ!」
ふたば 「どうしてプリキュア同士で戦わなくちゃいけないの!?」
ブロッサム 「……そうですか。なら、今すぐここを去りなさい、ふたば」
ふたば 「えっ……」
ブロッサム 「それを厭うなら、帰りなさい。あなたにプリキュアである資格はない」
ふたば 「そ、そんなのって……」
ブロッサム 「まだうだうだ言うというのなら……」
――――――ドッッッ……!!!!
ふたば 「……へ……――――――」
―――――― 「プリキュア・オープンマイハートッッッ!!!!」
    ――――――――――――――――ギィィイイイインンンン!!!!
ブロッサム 「……さすがは、戦闘の経験が多いだけのことはある。よく受け止めましたね、」
ブロッサム 「――――キュアスターライト」
スターライト 「あなたは……あなたはいま、本気でふたばを傷つけるつもりだったのか!!?」
662:以下、
ブロッサム 「……だったらなんだっていうんです?」
スターライト 「……っ!!! 姉が妹を傷つける……そんなのを、許しておけるか!!」
ブロッサム 「……そうですか。なら、あなたは試練を受けるということですね?」
スターライト 「それで構わない!」
ブロッサム 「……で? どうしますか、ふたば?」
ふたば 「………………」
―――― 『お姉ちゃんみたいに……素敵な笑顔で、言葉で……誰かを癒せる人に……!!』
―――― 『お姉ちゃんみたいな、立派な女の人に、なりたい!!』
ふたば 「っ……」 グッ 「プリキュア・オープンマイハート!!!」
パァァアアアアア……!!!!
リーフ 「………………」 ギュッ 「……受けるよ、試練。わたし、お姉ちゃんとでも、戦うよ」
ブロッサム 「分かりました。では、詳しい取り決めを説明しましょう」
ゆり 「………………」
いつき 「………………」
えりか 「………………」 ボソッ 「……つぼみ、ごめんね」
664:以下、
ブロッサム 「まず、あなたたちと戦うのは、わたしだけです」
ブロッサム 「他の三人に頼んで、わたしを試練の監督とさせてもらいました」
スターライト 「ふたりがかりであなたを倒せばいいのか?」
ブロッサム 「ええ。ですが、あなたたちはなったばかりのプリキュアです」
ブロッサム 「さすがに、わたしを倒すというのはあまりにも荷が重いでしょう」
ブロッサム 「……なので、わたしは」
スッ
リーフ 「えっ……?」
ブロッサム 「右手しか使いません」
スターライト 「なっ……なんだと!?」
ブロッサム 「わたしに左手を使わせることができたら、試練通過です。よろしいですね?」
スターライト 「ッ……!! 随分と舐められたものだ……!」
ブロッサム 「そうですか? 妥当だと思いますけど」
スターライト 「……行こう、リーフ。さっさと試練なんか終わらせて、ミラージュを手に入れよう」
リーフ 「う、うん……」
666:以下、
ブロッサム 「……よろしいですね? では、始めます」
ザッ……――――――ッッッッッッドッッ……!!!!!
リーフ 「へ……!?」 (い……!?)
リーフ (こ、拳……け、蹴り……? いや、でも、相手は、お姉ちゃんで……)
スターライト 「っ……! どうしたんだ、キュアリーフ!!」
リーフ 「……!!!」 (もう、目の前に……!?)
ブロッサム 「……判断が遅いですよ、キュアリーフ」
――――――――――――ズドンンンンン……!!!!
リーフ 「かはっ……!?」 (なんて、重い……一撃……)
――――――ッッドンン!!!!
リーフ 「っ……一発で、壁まで……なんて、威力……」
リーフ 「これが……キュアブロッサム……なんて、強いの……」
リーフ 「……ちがう。わたしが、弱いのかな」
スターライト 「リーフ!! 大丈夫!?」
リーフ 「う、うん……なんと、か……」 フラフラ 「……あれ……目が、回る……」
667:以下、
スターライト 「………………」
スッ
リーフ 「あっ……」
スターライト 「無理をするな。お前はまだ幼いんだ。身体が悲鳴を上げている」
スターライト 「ここで寝ていていい。私ひとりで十分だ」
リーフ 「で、でも……」
スターライト 「……私は、お前にこれ以上傷ついてほしくないんだ」
スターライト 「お前は私の初めての友達で、命の恩人で……もう感謝してもしきれない」
スターライト 「私は、そんなお前に傷ついてほしくない。友達だから、大好きだから」
リーフ 「………………」 (……そっか。わたしが戦っても、足手まといになるだけだから)
スターライト 「……安心しろ。私は絶対に勝つ」 ニコッ
リーフ 「う、うん……」
ブロッサム 「………………」
スターライト 「……待たせた。行くぞ、キュアブロッサム」
ブロッサム 「……その前に、ひとついいですか?」
668:以下、
スターライト 「なんだ?」
ブロッサム 「あなたにとって、友達とは、友情とは……そういうものなのですか?」
スターライト 「どういう意味だ……?」
ブロッサム 「………………」
スターライト 「……私は、ふたばを守りたい。ふたばに傷ついてほしくない。だから、守る」
スターライト 「それが私の友情――友達に対しての想いだ」
ブロッサム 「……そうですか。ならば、」
――――――シュン!!!!
スターライト 「ッ……!?」 (さすがにい……!!)
………………ギィィイイイインン!!!!
ブロッサム 「……あなたたちのそれは、真の友情ではありませんね」
スターライト 「なんだと……ッ!!?」
ブゥゥウンンンン……!!!!
スターライト 「キュアブロッサム!!! そこまで言うのなら見せてやろう!」
スターライト 「あなたくらい、私ひとりで倒してみせる!!」
669:以下、
スターライト 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ブロッサム 「………………」
――――――ドドドドドドドドドドドッッッッ!!!!!
………………
いつき 「……いし、重い。けれど、」
えりか 「ブロッサムの右手の楚々とした受け流しの前では、すべて無駄だね」
ゆり 「……スターライト」
えりか 「……なんか、つぼみに嫌な役目を押し付けちゃったみたいで、嫌な気分だね」
いつき 「うん……」
………………
スターライト 「防戦一方じゃないか、ブロッサム!」
ブロッサム 「……そうですね。わたしはおそらく、単純なパワーではあなたにも敵わないでしょう」
ブロッサム 「だから防ぐより仕方がない」
スターライト 「随分と弱気じゃないか」 グッ 「……これで終わりだ!!」
――――――ブゥンンンンンンンン!!!!!
671:以下、
スターライト (この、攻撃なら……絶対に、左手を使うはずだ……!!)
スターライト (これで、私の、勝ち――――)
ブロッサム 「――――体重の移動が甘い。重心がズレてます」
スターライト 「……――――ッ!?」
ギリッ……!!!
スターライト 「なっ……にが……!?」
スターライト 「いつの間に……私の、関節が、極められて……!?」
ブロッサム 「あなたの最後の一撃。たしかに防ぐためには左手も使わざるを得ないでしょう」
ブロッサム 「ですが、あなたは拳にばかり集中して、身体の方をおろそかにしていました」
ブロッサム 「だから私は一歩手前の攻撃を受け流すフリをしつつ手を掴み、」
ブロッサム 「あなたの重心移動に合わせるように関節を極めました」
ブロッサム 「……それだけの話ですよ」
バニラ 「スターライト!!」
スターライト 「っ……」 (くそっ、なんて力だ……抜け出せない……!!)
ブロッサム 「……まったく、この程度ですか。キュアスターライト」
673:以下、
スターライト 「なに……っ?」
ブロッサム 「この程度なら、これ以上戦う意味はありません」
ブロッサム 「……キュアスターライト、そしてキュアリーフ」
ブロッサム 「あなたたちがプリキュアである意味はありません」
ブロッサム 「――――ココロパフュームを置いて、去りなさい」
スターライト 「なっ……何を……!!!」
ブロッサム 「……聞こえなかったのですか? 足手まといだから去れと言ったのです」
ブロッサム 「ミラージュに関しては、こちらでなんとかします」
ブロッサム 「まったく、とんだ見込み違いでした。少しはできるのかと思いましたが。いえ……」
ブロッサム 「……ごめんなさい。そういえば、あなたたちはまだ小さな子どもでしたね」
ブロッサム 「酷なことをさせてしまいました。もう、戦う必要はありませんよ?」
スターライト 「キュアブロッサム……!!」
ギリリリッ……!!!
スターライト 「ぐっ……!」
ブロッサム 「……悔しいのなら抜け出してみせなさい。そして、わたしに左手を使わせたらいいでしょう?」
675:以下、
リーフ 「す、スターライト……!!」 グッ (だ、ダメ……どうせ、わたしが行ったって……)
リーフ (足手まといにしか、ならない……きっと、邪魔になる、だけ……)
ブロッサム 「………………」 スッ 「……弱いですね、スターライト」
ブロッサム 「本当に弱い。この程度なら、わざわざプリキュアになる必要なんてなかったのに」
リーフ 「!?」
―――― 『……私は……』 『……私は、できることなら』
ブロッサム 「……星の光、ですか。あなたには過ぎた名前でしたね」
スターライト 「っ……そんな、こと……」
―――― 『……月の、影ではなく……光になりたい。ちっぽけでも、誰かを照らせる光になりたい』
ブロッサム 「ムーンライトにあやかったつもりかもしれませんが……」
―――― 『月と共に人々を照らし、月がいないときには代わりに人々を見守る……』
ブロッサム 「あなたはムーンライトには遠く及ばない。弱い光です」
スターライト 「っ……光……私、は……っ」
―――― 『……そんな、小さな星の光のようでありたい……!!』
リーフ 「ッ……!!!!」 (わたしは……わたしは……!!)
676:以下、
リーフ (わたしは、弱い……きっと、また迷惑をかける……)
リーフ (スターライトは、すごい……だって、ムーンライトと一緒に、戦ってたくらいだもん)
リーフ (それに比べてわたしは……わたしは……)
リーフ (でも……) ギュッ (……弱くったって、戦えるよ)
リーフ (わたしは、きっと……そう。迷惑をかけたくないとか、そう言って、)
リーフ (戦うことから逃げていただけなんだ……)
リーフ (……わたしに、勇気をくれたあの子のために、わたしは……)
リーフ 「……いま、戦わなくちゃ」
ザッ……!!!!!
ブロッサム 「……? なんです、キュアリーフ? どうかしましたか?」
リーフ 「……――――な、して……」
ブロッサム 「はい?」
リーフ 「はなして……って、そう言ったんだよ」 キッ 「スターライトを……はなせ!!」
リーフ 「……そして、スターライトに謝って!! スターライトは、きれいで大きな光だよ!」
677:以下、
スターライト 「き、キュアリーフ!!」
リーフ 「………………」
スターライト 「ダメだ、だって……また、お前が傷ついてしまう……!!」
スターライト 「わたしは、そんなのは嫌なんだ……だから……――――」
リーフ 「――――……ねえ、キュアスターライト、お願い」
リーフ 「わたしは、弱くて、頼りなくて……ダメダメかもしれないけど、お願い」
リーフ 「いまだけでいい。わたしのことを信じて」
スターライト 「……!?」 (信じる……? 私は……もしかして……)
スターライト (リーフを庇い、守るつもりで……リーフを信じていなかったのか……?)
ブロッサム 「……信じて、どうなると?」
リーフ 「信じれば、戦える。信じ合えば、一緒に力を合わせることができる」
リーフ 「だから、わたしも今、信じるよ」
――――――――ドッッッ……!!!!!
リーフ 「――――わたしは信じる!! わたしとスターライトならできるって!!!」
ブロッサム 「………………」 スッ 「……そうですか。なら、」 ドンンン!!!
678:以下、
スターライト 「ぐっ……!?」 ドサッ (私を突き飛ばしたということは……)
スターライト (まさか、リーフに技を……!?) 「リーフ!!! 危ない、避けろ!!」
ブロッサム 「遅いですよ」
キィィイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
ブロッサム 「ブロッサム・シャワー!!!」
――――――ドドドドドド……!!!!!
リーフ 「……遅いのは、どっちかな」
ブロッサム 「!?」
リーフ 「リーフ・ミラージュ!!!」
――――ザザザザザザ……ッッッシュンンン!!!!
ブロッサム 「分身……!?」 ハッ 「まさか……!?」
リーフ 「――――だから遅いってば!!」
――――ズドンンンンン!!!!!
ブロッサム 「ぐっ……!!」 (しかし、まだ使ったのは右手だけです……!!)
タン……タタタン……!!!
679:以下、
スターライト 「リーフ……? お前……」
リーフ 「えへへ。よかった、スターライトを助けることができて」
ブロッサム 「……まさか分身するとは。面白い技ですね、キュアリーフ」
リーフ 「………………」
ブロッサム 「分かりました。あなたたちが試練を無事終えることができたら」
ブロッサム 「先の言葉を訂正することにしましょう」
リーフ 「……うん。分かった。俄然やる気が出てきたよ」
スターライト 「リーフ……」
リーフ 「スターライト、やれる?」 フルフル 「ううん。やれるね?」
スターライト 「………………」 グッ 「……もちろんだ」
リーフ 「わたしね、思い出したんだ。キュアメロディとキュアリズムが言ってたこと」
スターライト 「……?」
リーフ 「プリキュアは、ふたりでひとつ。ふたりが力を合わせれば、いくらでも強くなれる」
スターライト 「ふたりなら……いくらでも、強くなれる……」
リーフ 「うん! だって、わたしたちはふたりでプリキュアなんだから!!」
680:以下、
リーフ 「……信じ合うふたりなら、いくらでも強くなれる。だから、わたしはあなたを信じるよ」
スターライト 「……うん。私もお前を信じる。信じて、力を合わせるよ」
ブロッサム 「………………」 スッ 「集まれ、花のパワー! ブロッサムタクト!」
ブロッサム 「……行きます」
リーフ 「わたしたちもやろう、キュアスターライト!」
スターライト 「ああ!」
リーフ&スター 「「集まれ、ふたつの花の力よ!!」」
リーフ 「リーフタクト!!」
スターライト 「スタータクト!!」
ブロッサム 「プリキュア・フローラルパワーフォルティシモ!!!」
リーフ&スターライト 「「プリキュア・フローラルパワーフォルティシモ!!!」」
     ――――――ッッッッッッッッドッッッッ!!!!!
ブロッサム 「はぁあああああああああああああああああああ!!!」
リーフ 「たぁあああああああああああああああああああ!!!」
スターライト 「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
682:以下、
――――――カッッッッ……!!!!
    ―――――ッッッッドォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
えりか 「ひゃっ……なんてパワーなの……!?」
いつき 「すごい……これが、新たなプリキュアとの、激突……」
ゆり 「ふたば、すずらん、……つぼみ……」
………………
ブロッサム 「………………」
リーフ 「………………」
スターライト 「………………」
――――ガクッ
リーフ 「っ……ブロッサム、ひとりなのに……」
スターライト 「なんて力だ……わたしたちのフォルティシモが、ふたつまとめて弾かれた……」
ブロッサム 「………………」
クスッ
ブロッサム 「でも、わたしの負けですね。ふたりとも、合格です」
683:以下、
ブロッサム 「……考えましたね。同時にフォルティシモを発動し、」
ブロッサム 「しかし正面から激突するのではなく、両側から……」
ブロッサム 「これではさすがに、左手を使わざるをえませんからね」
ペコリ
ブロッサム 「……では、約束通り、訂正して謝ります。ごめんなさい、スターライト」
ブロッサム 「あなたはムーンライトにも劣らない、明るい光の持ち主でした」
スターライト 「……いや、こちらこそ、怒ったりしてごめんなさい」
スターライト 「だってあれ、演技だったんでしょ?」
リーフ 「……え?」
スターライト 「分かったんだ。優しいブロッサムが、なんであんなこと言ったのか」
チラッ
リーフ 「?」
スターライト 「私とリーフに、真の友情を知ってもらうためだったんだね」
リーフ 「真の、友情……?」
ブロッサム 「お互いを大切にするだけじゃダメなんです。お互いを、信じ合わなくちゃ」
684:以下、
ブロッサム 「それが本当の友情。本当に友達です」
スターライト 「私は、リーフを大切に思うあまり、リーフを信じることができなかった」
ブロッサム 「そしてリーフは、自分が足手まといになっているのではないかと思い、」
ブロッサム 「スターライトの優しい言葉を信じることができなかった」
リーフ 「あっ……そっか。わたし、自分が弱いからだって思いこんで……」
ブロッサム 「……ですが、あなたたちはそれを克服しました」
ブロッサム 「お互いを信じ、背中を預け合い、そしてわたしに左手を使わせた」
ブロッサム 「忘れないでください。その互いを思いやる心こそが、プリキュアの力です」
リーフ 「うん!」 スターライト 「はい!」
ブロッサム 「ふふ……ふたりとも、いい返事です。それから、よくがんばりましたね」 ナデナデ
リーフ 「えへ……えへへー」
スターライト 「はう……」 (あったかい……)
ゆり 「………………」 グッ 「私がなでなでしてあげたかったのに……」
えりか&いつき 「「ゆり……」」
薫子 「……プリキュアパレスの最奥が開いたわ。みんな、行きましょう」
686:以下、
………………プリキュアパレス 最奥部
ゆり 「ハートキャッチミラージュ……六年ぶりね」
えりか 「また力を借りることになったから、よろしくね」
いつき 「また、あの力を……」 グッ 「うん。そうすればきっと、“砂漠の意志” にも勝てる」
パァァアアアアア……!!!!
ふたば 「わっ……ミラージュが光り出したよ!」
ポプリ 「!? こころの大樹が呼んでるでしゅ!!」
『……聞こえ……ますか……妖精と……プリキュアたちよ……』
コフレ 「こころの大樹の声ですっ!!」
シプレ 「苦しそうですぅ……」
『……人々の……こころの花……が……急に……弱っています……』
『次の……戦いで……すべてが決まる……でしょう……』
『“砂漠の意志” ……が……やってきます……』
『……お願いします……プリキュア……そして、妖精たちよ……』
『世界を……人々の、心を……守って……ください……』
687:以下、
つぼみ 「……はい! 約束します!」
つぼみ 「わたしたちが絶対に、守り抜きます。六年前のように!!」
『あり……がとう……あとは……頼み……まし……た……』
パァァア……………………
すずらん 「消えた……」
ポプリ 「こころの大樹……」
ゆり 「……しょぼくれていても仕方ないわ」
ゆり 「きっと全世界の砂漠化をなんとかすれば、こころの大樹も元気を取り戻すわ」
いつき 「……うん。行こう。最後の戦いだ」
えりか 「うん!!」
つぼみ 「……おばあちゃん、ふたりのことを、よろしくお願いします」
薫子 「ええ。任せてちょうだい」 ニコッ 「……四人とも、がんばってね」
ふたば 「えっ……? ふ、ふたばたちは!?」
すずらん 「ここに置いていくつもりなのか!?」
えりか 「……うん、そうだよ」
689:以下、
ふたば 「そ、そんな……! わたしたちだってプリキュアなんだよ!?」
えりか 「そうだね。だけど、まだミラージュが使えない」
ふたば 「えっ……?」
すずらん 「………………」
えりか 「最後の戦い……きっと、ミラージュを使って戦うことになる」
えりか 「けどふたりはまだ、最後の試練を終えてないから」
えりか 「……だから、まだ戦えない」
すずらん 「まだ……? と、いうことは……」
えりか 「……そーいうこと」 ニッ 「ちゃっちゃと最後の試練を終えて、手伝いにくるっしゅ!」
ふたば 「えりかお姉ちゃん……!!」 グッ 「うん! わたしたち頑張るよ!!」
いつき 「まあ、ふたりが試練を終えている頃には、僕らが勝っちゃってるかもだけどね」
ふたば 「むむ……。そんなことないもん! わたしたち試練なんてすぐ終わらせちゃうもん!」
ふたば 「ね、すずらんちゃん!」
すずらん 「ああ、その通りだ」 グッ 「そしてすぐに助けに行く!」
ゆり 「ふふ……楽しみにしているわね、すずらん、ふたば」
691:以下、
………………
タタタタタ…………
えりか 「ははっ……ああは言ったものの、まさか本当に戦わせるわけにはいかないしね」
つぼみ 「当たり前です。これ以上あのふたりに危険なことはさせられません」
つぼみ 「さっきの試練だって、心の中で何度あのふたりに謝っていたことか……」
いつき 「だから僕が代わりにやるって言ったのに……頑固なんだから」
つぼみ 「辛いって分かってたけど……でも、やりたかったんですよぅ……」
ゆり 「……まあ、いい演技だったわ、つぼみ」
つぼみ 「だったらいいのですけど……」
ゆり 「……とにかく、いま私たちにできることは……」
ゆり 「あのふたりが試練を終える前に、“砂漠の意志” を止め、世界を元に戻すこと」
ゆり 「……それだけよ」
つぼみ 「……はい!」
いつき 「うん!」
えりか 「やってやるっしゅ!」
692:以下、
ザッッッ……!!!
つぼみ 「……行きましょう! これがきっと、最後の変身です!!」
  「「「プリキュアの種、行くですーーーーーー!!!」」」
ガシャッ……!!!!
  「「「「プリキュア・オープンマイハートッッ!!!」」」」
パァァアアアアアア……!!!!
ブロッサム 「大地に咲く一輪の花! キュアブロッサム!!」
マリン 「海風に揺れる一輪の花! キュアマリン!!」
サンシャイン 「日の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン!!」
ムーンライト 「月光に冴える一輪の花! キュアムーンライト!!」
――――――ザッ……!!!!
  「「「「ハートキャッチプリキュア!!!」」」」
693:以下、
………………明堂学園
クモジャキー 「……来る」
サソリーナ 「ええ……来るわ」
コブラージャ 「上空から、か……さてはて、防ぎきれるのやら」
クモジャキー 「やるしかなかろう? それが俺たちの贖罪なのだからな」
コブラージャ 「……そうだね。この美しい世界を、美しい人の心を守らなければ」
サソリーナ 「大切な人がいる。自分を呼んでくれる人がいる」
サソリーナ 「……今のわたしは、そんな当たり前を捨てたくはないわ」
サソリーナ 「だから、守りたい……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!
コブラージャ 「……これまた規格外の暗雲だ。これが “砂漠の意志” か」
『プリキュアはどこだ?』
クモジャキー 「さて、知らんな」
『そうか。まぁいい。どうせ貴様らを潰せば、勝手に出てくるだろう』
『私の本体を出すまでもない。貴様ら程度、一瞬で終わらせる』
695:以下、
………………プリキュアパレス 最奥
薫子 「……さて、ふたりとも準備はいいかしら?」
リーフ 「うん……大丈夫だよ、おばあちゃん」
スターライト 「私も、大丈夫」
リーフ 「でも、最後の試練って、一体何をするの?」
薫子 「それは……内緒。だけど、今度はふたり別々に受けてもらうの」
リーフ 「えっ……? スターライトと一緒じゃないの?」
薫子 「ええ。最後の試練は、プリキュアがひとりで受けなくてはいけないのよ」
リーフ 「………………」
スターライト 「……大丈夫だ、リーフ。お前は強い」
スターライト 「私はお前を信じている。だから、お前も自分を信じろ」
リーフ 「……うん!」
薫子 「……よろしい。では、始めましょうか」
バニラ 「……ふたりとも、がんばってね!」
………………――――――
696:以下、
――――――………………
リーフ 「……? あ、あれ……?」
リーフ 「いつの間に、こんなところに来たんだろ……?」
ピヨピヨピヨ……サワサワサワ……
リーフ 「うわぁ……きれいな森。空気が美味しいな」
リーフ 「……この森が、試練の場所なのかな……」
――――ガサッ……
リーフ 「!? だ、誰……!?」
?? 「……こんにちは、キュアリーフ」
?? 「いいえ。ふたば、と呼ぶべきでしょうか?」
リーフ 「えっ……う、うそ……!?」
リーフ 「ど、どうしてこんなところにいるの……?」
リーフ 「――――つぼみお姉ちゃん……」
つぼみ 「ふふ……」
698:以下、
………………
スターライト 「一面、暗い白で何もない。寂しい場所だ」
スターライト 「ここで試練を受けるということなのか……」
スターライト 「………………」
ブルッ
スターライト 「……はは、手が震える。リーフにあんなえらそうなことを言っておいて、これか」
スターライト 「怖いんだな、私は。きっと、人一倍寂しがり屋なんだ」
スターライト 「会いたいよ、ふたば。会いたいよ、お姉ちゃん……」
カツ、カツ、カツ……
スターライト 「!? だ、誰だ……!?」
?? 「……こんにちは、スターライト」
?? 「ううん……すずらんちゃん」
スターライト 「なっ……ど、どうしてここに……?」
スターライト 「――――ふたば……」
ふたば 「ふふ……」
699:以下、
………………明堂学園 裏
クモジャキー 「ぐっ……」
ガクッ
クモジャキー 「くそっ……!!」
『……ふむ。まぁ、よく保ったと褒めるべきか』
クモジャキー 「ふん……貴様に褒められたところで嬉しくもなんともないぜよ……」
コブラージャ 「……まぁ、これだけボロボロなんだ。そもそも褒められるいわれもないしね」
サソリーナ 「………………」 グタッ 「……もうダメ。あたしもうダメ」
クモジャキー 「情けない……と、言いたいところだが……俺ももう動けんぜよ」
コブラージャ 「美しくない……が、僕も同じく」
コブラージャ 「だが、奴の攻撃はすべてどうにか防ぎきった。それだけでも、まぁ……」
サソリーナ 「やることはやったって気分ね……」
クモジャキー 「ああ……そうだな……」 ニィ 「だから、後は任せたぜよ、プリキュア」
――――――スタッ……!!!!
703:以下、
マリン 「……ありがとう、クモジャキー、コブラージャ、サソリーナ」
マリン 「安心して。あとはあたしたちがなんとかするから」
ムーンライト 「……ありがとう、花の使徒。ゆっくり休みなさい」
サンシャイン 「すごいよ。ブレスレットの力だけで、学園を守りきったんだ」
ブロッサム 「……あとは、わたしたちが……その花の意志を引き継ぎます!!」
『ふん。ようやく現れたか、プリキュア』
『しかし、ふたりほど足りないようだが?』
ムーンライト 「あなたには関係のない話よ。今ここで、おとなしく浄化されるあなたにはね」
『……やれるものならやってみろ』
ブロッサム 「……行きましょう、みんな!!」
マリン 「うん!」 サンシャイン 「はい!」 ムーンライト 「ええ!」
シプレ 「はいですぅ!!」 コフレ 「はいですっ!!」 ポプリ 「でしゅーー!!!」
    「「「「鏡よ鏡、プリキュアに力を!!!」」」」
――――――キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
705:以下、
『……清浄なる光が、場を埋め尽くす』
『たしかに凄まじい力だ。しかし……』
――――――――――――――――――カッッッ……!!!!!
   「「「「世界に輝く一面の花! ハートキャッチプリキュア・スーパーシルエット!!」」」」
Sブロッサム 「花よ、咲き誇れ!!」
   「「「「プリキュア・ハートキャッチオーケストラ!!!!」」」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
Sマリン 「はぁぁああああ!!!」 (これが……)
Sサンシャイン 「たぁああ!!!」 (わたしたちの……)
Sムーンライト 「はぁああああ!!!」 (全力……)
Sブロッサム 「――――たぁああああああああああああ!!!!!」 (全開です!!)
――――――――――――――ズドォォオオオオオッッッ……!!!!
706:以下、
『………………』
Sブロッサム 「……どうですか? “砂漠の意志” 。これがプリキュアの力です」
『……なるほど。ハートキャッチオーケストラとは、この程度なのか』
Sマリン 「なっ……!? き、効いてないの……!?」
ザザザザザザザザザザザッッッ……!!!!
『ふむ。私の雲の防壁を破壊するくらいの力はあったようだな』
――――ズドンンンン!!!!
Sサンシャイン 「……!? なっ……!!」
Sムーンライト 「……なるほど。ようやく本当の姿を見せてくれたのね、“砂漠の意志”」
『……ああ。これが私の、本来の姿だ』
Sマリン 「砂の、巨人……サンドクラスタなんて、比べものにならないくらい、大きい……」
『まさかこれで終わりか、プリキュア? ならば私は私の “意志” を続行するが?』
Sブロッサム 「っ……まだ……まだです!!」
Sブロッサム 「みんな、やりましょう……! 最後の手段です!!」
Sブロッサム 「“砂漠の意志” 。あなたに見せてあげましょう。最強のプリキュアの姿を!!」
709:以下、
………………
リーフ 「お姉ちゃん……? どうして、ここにいるの……?」
つぼみ 「……さて、どうしてでしょうね?」
ニコッ ―――――――――― ッッッッダンンンン!!!!
リーフ 「!?」
――――ザザッ……!!!!
リーフ 「い、いきなり何をするの!?」
つぼみ 「ふふ。いい反応ですね、ふたば」
リーフ 「もしかして、最後の試練も……またお姉ちゃんと戦う試練なの?」
つぼみ 「………………」
リーフ 「そ、それなら……わたし、もう一回お姉ちゃんと……」
つぼみ 「――違いますよ。何を言っているんですか、ふたば」
リーフ 「えっ……?」
つぼみ 「わたしはただ単に、あなたに絶望を知ってもらいたくて来ただけです」
リーフ 「絶望……?」
712:以下、
つぼみ 「ええ」
ザッ……!!!!
リーフ 「っ……!!」 (い……けどッ……!!!)
ダン……ダダダダンンンン……!!!!
つぼみ 「へぇ……」
――――――ズサッ……!!!!
リーフ 「……どう、お姉ちゃん。わたし、強くなったよ」
リーフ 「もう、諦めないから。弱いからって、逃げないから」
リーフ 「わたしは、わたしを信じてる。強く、なれるって」
つぼみ 「ふふ……そうですか」 ニコッ 「強くなりましたね、ふたば」
リーフ 「う……うん!!」
つぼみ 「……でも、ダメ」
リーフ 「え……?」
つぼみ 「……気づきなさい、ふたば。あなたは弱い。致命的なまでに」
――――――――――――ズドンンンンンンン!!!!!!
714:以下、
リーフ 「か、はッ……!?」 (う、そ……? いつの間に、目の前に……?)
――――ザザザザザザッッッ……!!!!
リーフ 「な……なに、今の……? どうやって……?」
つぼみ 「それも分からないようでは、ダメだと言っているのです」
つぼみ 「やはり弱いですね、ふたば」 ニコッ 「あなたは弱い」
リーフ 「そ……そんなことッ……!!」 (痛いけど……でも……!!)
リーフ 「そんなこと、ないもん!!!」 (やらなくちゃ、いけない……!!)
ダッ……!!!!!
つぼみ 「………………」
リーフ 「見せてあげる! わたしの、本当の力!!」
リーフ 「最大加!! リーフ・アクセル!!!」
    シュシュシュシュシュンンンンン………………!!!!!!
リーフ (今度は、しっかりと自分の動きを考えて、足を動かす……!!)
リーフ (動きを気取られないように。宙を舞う木の葉ように、しなやかに……!!!)
つぼみ 「………………」 クスッ 「……その程度が、なんだと言うのですか?」
715:以下、
リーフ 「……!?」
――――――――――――――ヴン…………ドゴオォオオオオッッッッ……!!!!
リーフ 「っあ……!?」
ガクッ
リーフ 「う、そ……どう、して……?」
つぼみ 「……その程度で変わったつもりですか、ふたば?」
つぼみ 「それで変われたつもりだというのなら、それが間違いだと教えてあげましょう」
つぼみ 「あなたは変われない。あなたは弱いまま。友達と話すこともできない、弱い人間のまま」
リーフ 「……!」 ギリッ 「そ、そんな、こと……」
つぼみ 「ない? 本当に? 強くなったと、変われたと……あなたはそう胸を張って言えるのですか?」
リーフ 「そ……それ、は……」
つぼみ 「……認めなさい。あなたは変われない。あなたは弱いまま。あなたはわたしにはなれない」
つぼみ 「諦めなさい。そうすれば、この苦しみは終わります」
つぼみ 「弱いあなたでは、わたしにはなれない。わたしのようになりたいと願ったところで、無駄です」
リーフ 「……わたし……わたし……は……――――――」
717:あと20数スレで終わるのでできるだけ書き込まないでもらえると嬉しい 2011/05/01(日) 17:09:09.39ID:l9H60MO/0
………………
スターライト 「………………」
ふたば 「……? どうしたの、すずらんちゃん?」
スターライト 「……お前は、ふたば……だな」
ふたば 「? もちろんだよ。わたしはふたばだよ?」
スターライト (雰囲気も、何もかも……ふたばと同じ……だが……)
スターライト (違う……目の前のふたばは、ふたばじゃない……)
ふたば 「そんな怖い顔しないでよ……怖いよ……」
スターライト 「あっ……ああ、すまん……」
スターライト (しかし……ダメだ。これは、ふたばだ……)
スターライト (分からない。違うと分かるのに、ふたばじゃないと分かるのに……)
スターライト (しかし、何となく……ふたばと同じに、思えてしまう……)
ふたば 「………………」 ニコッ 「……じゃあ、行くね、すずらんちゃん」
――――――――ドッッッッ……!!!!!
スターライト 「……ッ!?」 バシッ 「ちぃ……!!」
718:ID変わったけど1です。あとスレじゃなくてレス 2011/05/01(日) 17:10:52.41ID:l9H60MO/0
スターライト 「ふ、ふたば……!!」 (しまった……思わず、叩いて……)
ふたば 「へぇ……やっぱり強いね、すずらんちゃんは」
ふたば 「でも、どうしてそんな声を出すの? わたしが心配だから?」
スターライト 「と……当然だ! ふたばは友達だ! 傷つけたくない!」
ふたば 「そう」 ニコッ 「じゃあ、何もしないでね?」
スターライト 「えっ……?」
    ズドンンンンンンンンン……!!!!!
スターライト 「がッ……!?」
ふたば 「うわー、律儀だね、すずらんちゃん。本当に防御も何もしないなんて」
スターライト 「だ……だって……もし、変に、ガードを、して……」
スターライト 「ふたばが、拳に怪我をしたり、したら……大変、だから……」
ふたば 「はは……そこまでしてもらえるって、すごいことだね」
スターライト 「ふたばは、わたしの……大切な、友達だから……」
スターライト 「初めての、友達、だから……わたしに、全てをくれた、から……」
スターライト 「だから、傷つけるような、ことは……できないよ……」
719:以下、
ふたば 「そう。でも、これからあなたにはわたしと戦ってもらうから、」
ふたば 「そのままじゃ、一方的にやられちゃうよ?」
スターライト 「……ふたばと、戦うくらいなら、それでいい」
ふたば 「……そう」
――――ズドン!!!
スターライト 「ぐ、は……ッ!?」
ふたば 「じゃあ、これで終わりだよ。ここで、おしまい」
ふたば 「すずらんちゃん。あなたはここでリタイア。さようならだね」
 ――――ッッッドンンン!!!!
スターライト 「ごッ……!?」
ふたば 「攻撃もしない。防御もしない。万が一にもわたしを傷つけないため」
ふたば 「ならそのまま、ここで終わるといいよ」
スターライト 「………………」
ふたば 「……あなたは変わることができなかった」
ふたば 「だから、ここで……そのまま、消えていくといい」
721:以下、

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