花丸「あなたの名前、教えてくれる……ずら?」back

花丸「あなたの名前、教えてくれる……ずら?」


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1:
?図書室?
花丸(……相変わらず、暇ずら)
花丸(学校の図書室、こんなに本があるのになんで誰も借りに来ないずら)
花丸(本が好きな人って、やっぱり少ないのかな)
花丸(話が合う人もいないし、口調を変えるのも大変だし)
花丸「……ぁ、もうこんな時間ずら」ガタッ
花丸(……あれ?あんな隅っこで本を読んでる子がいるずら)
スタスタ
花丸「そろそろ時間なので、図書室を出てもらいたいず……のですが」
??「はひっ!?」ビクン
花丸「!?」ギョッ
??「あ、あぅ、あ、す、すいませ、ご、ごめんな、ピッ、ご、ごみんなさい!」スタターッ
花丸「あっ!?」
花丸「……本、置いていっちゃったずら」
花丸「そういえばあの子、同じクラスに居たような……?」
2:
?帰り道?
花丸(とりあえずあの子が読んでた本を借りてみたずら)
花丸(題名は「トモダチヅクリ」……不思議な題名の本ずら)
花丸(たまにはこんな小説もいいかもしれないずら)
花丸(早かえってみたら読んでみ……)
クラスメイトA「あはは、それでさ?」
クラスメイトB「なにそれ、あっはは!」
クラスメイトC「あんた前もその話したじゃない……」
クラスメイトA「あれっ!?そうだっけ!?」
花丸(……楽しそう、ずら)
花丸(マルにも、あんな風に楽しくお話できる友達がいたら……)
3:
?花丸の部屋?
花丸「……ふぅ、読み終わったずら」
花丸(トモダチヅクリ。主人公の女子中学生は)
花丸(……自分にコンプレックスがあって、なかなか友達ができないことを悩んでいた)
花丸(そのコンプレックスを治そうと努力するけれど)
花丸(それを受け入れてくれる一人の女の子が、その主人公と友達になるところでお話が終わる……)
花丸「……」
花丸「あはは、今のマルみたい……ずら」
花丸(……もしかしたら、マルの全部を受け止めてくれる子も……いるのかもしれないずら)
花丸(……なんて。さすがに、夢を見すぎずら)
花丸「……おやすみなさい……」パチ、パチ
5:
?学校?
花丸(あれ?あの子は……)
??「」スタスタ
花丸「あのー」スタスタ
??「ピッ!?」ビクゥ
花丸「ひっ!?」ビクッ
??「ご、ごめんなさいぃ!」スタタタタ
花丸「あ、ま、待って!」スタタ
花丸「ぉぇ……走ることなんて……ないから、すぐ疲れたずら……」ふらふら
花丸「うぅ、話したいのに……」
?教室?
花丸「あの?」
??「ピァ!?」ビクッ
?科学室?
花丸「あの?」
??「ピェ!?」ビクッ
?昼食の時間?
花丸「一緒に食べてもいいでs」
??「ピギィ!?」スタタタタタタ
花丸「……」
6:
?放課後 図書室?
花丸(あの子、話しかけるたびに驚いては逃げてばかりで、全然話せないずら)
花丸(……あの子も一人だったから、話しかけてみたけど)
花丸(マルと一緒な感じの人かと思ったけど)
花丸(……一人でいるのが好きな子、なのかな)
花丸(はぁ……ちょっと外の空気でも吸うずら)カラカラ
花丸「……あれ?」
?校庭?
??「♪」ニコニコ
???
花丸「あの子の側にいるのは……生徒会長?」
花丸(マルが話しかけたときはおびえきってた表情だったのに)
花丸(……)
花丸(いつか、あの笑顔をマルに向けてくれることって、あるのかな)
花丸(仲良くなれたなら、あの子はマルに向かって微笑んでくれるのかな)
花丸(……うぅぅ。な、なんでマルはあの子にこんなに執着してるずら)
花丸(考えるだけで恥ずかしいずら……!!)バタバタ
8:
?一週間後の図書室?
花丸「ふぅ。……今日も人は来ないずら」
??「失礼しますわ」ガラガラ
花丸「あ、こんばん……せ、生徒会長!?」
??「こんばんは。ちょっと資料を借りに来ましたわ」
花丸「資料ず……ですか?どんなものをお探しですか?」
??「宇宙についての資料ですわ。自由研究に使いたいんですの」
花丸「宇宙についてですね。少しお待ちくださいず……コホン」
??「?」
花丸「な、なんでもないです!」
ガサゴソガサゴソ
花丸「こちらでどうですか?」
??「ありがとうございます」
花丸「えーと、学年とお名前を教えてください」
??「はい。3年2組、黒澤ダイヤですわ」
9:
花丸「はい、ダイヤさん、ですね。……」
花丸(……あれ?あの子とどこか雰囲気が似てるような……?)じーっ
ダイヤ「どうかしましたの?」
花丸「い、いえっ」ピッ ピッ
花丸「はい、これで貸し出し登録は終了しました」
ダイヤ「二週間後には返しますわ」
花丸「はい。……え、えっと」
ダイヤ「?」
花丸「あの……赤髪でちょっとおどおどした子とこの前、一緒に居ましたよね?」
ダイヤ「あぁ、妹のことですの?」
ダイヤ「あの子はちょっと……というかかなり人見知りで、私以外とあまり話そうとしませんの」
ダイヤ「友達の一人や二人、作ってくれれば姉としてもうれしいのだけど……」
花丸「……」
ダイヤ「まぁ、とりあえずありがとうございましたわ」
花丸「は、はい。どういたしまして」
11:
花丸(生徒会長の妹さんだったんだ……)
花丸(はきはきとした生徒会長とは真逆の性格……)
花丸(友達になるって言ったって、あんなに逃げられたら話しようがないずら)
?花丸家?
花丸「おばあちゃん。マル、お友達になりたい子ができたずら」
花丸祖母「あらあら、それはいいことね」
花丸「でも、マルはずっと一人で本ばっかり読んでたから仲良くする方法が分からないずら」
花丸「どうすれば初対面の人と仲良くなれるずら?」
花丸祖母「うぅん、そうねぇ。例えば……」
※書き溜めておいたのがあっという間に切れたのでペース落ちます
12:
?数日後?
花丸「あのー」
??「ヒゥ!?」ビクッ
花丸「お、お菓子、作りました!よければどうぞ!」
??「……ふぇ……?」
花丸(よし、成功ずら!)スタタタ
??「……。……バタークッキー?」
??「……」モグモグ
??「……美味しい……」
??「なんで、これを……?」
花丸(……って、ただ渡すだけじゃダメな気がするずら……)
?お昼の時間?
花丸「あのー」
??「ヒャ、ヒャイ?」オドオド
花丸「一緒にお弁当、どうですか?」
??「は、はい、いいですけど……」
花丸「ありがとう!」トナリニスワル
??「……??」
花丸「モグモグ」
??「……。……」
15:
?放課後?
花丸「ねぇ、図書室に行かない?」
??「ぇぅ、う、ぅん……」コクリ
花丸(よし、図書室のお誘いに成功したずら!)
??「あ、あの」
花丸「へ?」
??「うりゅ……。あ、あのぉ……どうして、こんなに身近に接してくれるんですか……?」
花丸「え、えっと、それは……」
??「お姉ちゃんが、言ってたから……?」
花丸「……え?」
??「お姉ちゃんが、友達の一人や二人作れ、って……」
??「図書室で話してたでしょ?」
花丸「あっ……もしかしてあの時、図書室に……」
16:
??「……ごめんね。お姉ちゃんが、変なこと言って……」
花丸「へ、変じゃない!!マル、じゃなくて、私、あなたと本当に……!!」
??「無理強いしちゃって……ごめんなさいっ!!」スタタタ
花丸「友達にっ……あっ……!!」
??「……っ……」タタタタ
花丸「……泣いて……た……?」
花丸(結局、マルは泣いていたあの子を追いかけることが出来なかった……ずら)
17:
?図書室?
花丸(……なんで、泣いてたんだろう)
花丸(マルの胸がなんだか締め付けられてる気分ずら)
花丸(……)
花丸(マルは本当に、あの子と友達になりたいのに……)
ツーッ
花丸「……あれ?なんで、マルが泣いてるずら……?」
花丸「……。……ぅ」グシグシ
花丸(本当に……友達に、なりたいのに……)グシ……
スッ
花丸(えっ……ハンカチ?)
20:
花丸「生徒……会長?」
ダイヤ「……」
ダイヤ「この前のこと、聞かれてたみたいですわね」
ダイヤ「泣かれながら怒られてしまいましたわ。「余計なことを言わないで」って」
花丸「え……」
ダイヤ「お隣の席、お借りしますわ」スチャ
ダイヤ「あの子、もともと昔から知らない人が苦手でしたの」
花丸(……)グシ
ダイヤ「そのせいで小学校から今まで、あまり友達がいませんでしたわ」
ダイヤ「中学校に上がった今でさえ、友達は居ないに等しいですし」
花丸(マルと……同じだ)
22:
ダイヤ「あの子はそれが……現状がダメなことは分かってるはず」
ダイヤ「でも、踏み出せない。踏み出したいのにも関わらず」
ダイヤ「それが、あの子のコンプレックスなのですわ」
花丸(……コンプレックス)
ダイヤ「……あなたをあの子に押し掛けるような真似をしてすいません」
花丸「……そんなこと、ないです」
花丸「マ……私は、自分であの子と友達になりたい、って思ったんです」
花丸「あの日、図書室で出会った時に……」
花丸「私が声をかける前、本を読んでいたときの表情……」
花丸「あの輝きに満ちていた表情がとても素敵だったんです」
ダイヤ「……」
花丸「……生徒会長」スッ
ダイヤ「この本は?」
花丸「生徒会長の妹さんが読んでいた「トモダチヅクリ」っていう本です」
23:
花丸「生徒会長、ぜひこの本を読んでみてください」
花丸「私も、この本の主人公と同じ立場なんです」
花丸(そして、きっとあの子も……)
ダイヤ「……」パラパラ
花丸「……私は、きっと、ここであの子と友達になれなかったら」
花丸「この先、絶対後悔します」
ダイヤ「……」パタン
花丸「あの子が踏み出せないなら、私が引っ張ります」
花丸「……仲良く、なりたいから」
ダイヤ「……ふふ」
ダイヤ「ありがとう、図書委員。……お願い、しますわ」
花丸「……はいっ!」
24:
?花丸家?
花丸「とはいっても、どうすればいいずら……」
花丸(人と接するのが怖いんだから引っ張ったって逆影響かもしれないし)
花丸(だからといってこのままだと仲良くなれないし)
花丸「うぅ?どうすればいいずらぁ?」フトンニボフッ
花丸「う???ん」ゴロゴロゴロゴロ
花丸「とりあえず寝るずら」スヤースヤー
?????
??「ねえ、お姉ちゃん」
ダイヤ「どうしたの?」
??「……今日ね、クラスメイトにひどいこと……言っちゃったんだ」
??「その子……傷ついてるかな」
ダイヤ「……」
ダイヤ「大丈夫よ」ギュッ
??「はぅ……」
ダイヤ「安心して、明日学校に行きなさい」ナデナデ
??「うりゅ……」
???????????
27:
?朝 通学路?
花丸「あ、おはよう」
??「ピッ……!……ぅりゅ、お、おはよう」
花丸「!!!!!」
花丸「あ、あああ」
??「……あ?」
花丸(挨拶を返してくれたずら??!!)ピョンピョン
??「ピェ!?」
花丸(やった、やったずら!!これは大きい進歩ずらー!!)ピョン
??「は、はぅ、じゃあ行くね……?」スタタタタタ
花丸「あ、ま、待って?!」スタタタタ
?教室?
??「……」ビクビク
花丸(……)
花丸(確かに何かに怯えてるずら)
花丸(後ろに人が通るたびに体を震わせて……)
花丸(人見知りにもほどがあるずら……)
花丸(……)
花丸(……でも)
花丸(マルは、諦めないから)
花丸(生徒会長とも、約束したんだから……!)ジーッ
??(……なんだか、とても見られてるなぁ……)ウリュ……
30:
?昼?
花丸「ねぇねぇ」
??「……?」
花丸「今日は中庭でごはん、食べてみない?」
??「なかにわ……?」
花丸「うん、今日はいい天気だし、中庭のベンチも空いてるみたいだし……」
??「ぁぅ」
??「……」
花丸(……ど、どうなるずら……?)
??「……う、うん」
??「うん、いい……よ?」
花丸「……!そ、それじゃあ、早お弁当持って、行こう!」
???
??「わぁ……太陽の光がカーテンみたいになってる……」
花丸「えへへ、この時間だけ見れる景色なんだよ」スワリ
花丸「あぁ、太陽の光が気持ちいずら……」
??「ずら?」
花丸「……あっ!?い、いや、ずらじゃなくて!ずらなんて言ってなくて!!」
花丸「そ、そう、ちょっとむせただけずら!あっ、あっ!!?」
??「……」ジーッ
花丸「あぁああああっ!!??」カァァーッ
33:
??「っぷ……」プルプル
花丸「……へ?」
??「あは、あはは……面白いねっ」
花丸「へ、へっ?」
??「大丈夫だよ、変じゃないから」
??「むしろ、なんだか……可愛い、ね」
花丸「ぁ……あふぅ」プシュッ
花丸「そ、そんな。私はこの喋り方、あんまり可愛いなんて……」
??「あ、あぅ、そ、そんなこと……ないよ?」
花丸「」テレテレ
??「」テレテレ
花丸「あ、あー、うんっ!お弁当食べようっ!!」
??「ん、うん。そうしよう……ずらー」
花丸「わーっ!!それは忘れてっ!!」
??「……」クスクス
34:
花丸(も、もう、恥ずかしいずら)
花丸(でも……マルの言葉を、可愛い、って言ってくれた)
花丸(それに、笑顔だって向けてくれた)
花丸(最初の頃よりは……仲良く、なれたかな?)
花丸「ね、ねぇ」
??「うりゅ?」
花丸「良ければ、だけど、放課後に図書室……行かない?」
??「……ぅん。……いいよ?」
花丸「……あのね、それでね?」
??「?」
花丸「あの本……あの時、床に置いていったままの本」
花丸「最後シーンのちょっと前まで、読んでたでしょ?」
花丸「生徒会長が今朝、私にその本を戻してきたから。最後のシーン、残り数ページ」
花丸「一緒に読もう?」
??「……?うん、分かった。じゃあ、放課後……だね?」
花丸「うん」コクリ
花丸(……生徒会長……)
35:
???
花丸「あ、どうでしたか?本の内容は」
ダイヤ「えぇ、とてもいい話でしたわ。……」
花丸「……?」
ダイヤ「まるで、アナタと妹の未来を描いているような、そんな気がして」
花丸「……ふぇ?」
ダイヤ「……いや」
ダイヤ「私がこうなって欲しい、と思ってるだけなのかもしれませんが」
花丸「……そうなれるかどうかは分かりませんが」
花丸「私もそんなエンディングを迎えられたら……幸せです」
ダイヤ「……」ニコッ
花丸「ところで……生徒会長は気付きましたか?」
ダイヤ「え?」
花丸「その主人公の友人の名前は、作中には一度も書かれていないんですよ」
花丸「だから、最後の1ページの、最後の行」
花丸「そこには、こう書かれているんです……」
???
37:
花丸「ふぅ、やっと放課後だね」
??「うん。じゃあ、図書室いこっか」
花丸「うん!」
花丸「どこから読んでないかな?」
??「えーっと……ここから、かな?」
花丸「うん、分かった。じゃあここから読もうか……」
花丸(……)ジーッ
花丸(あ、とっても嬉しそうな視線だ)
花丸(あの時見たのと、同じ視線)ペラッ
花丸(そういえば、その姿を見てマルの中に初めて……)
花丸(この子とお友達になりたい、っていう気持ちが生まれたんだ)ペラッ
花丸(初めて、他人のためにお菓子を作って)
花丸(初めて、他人とごはんを食べて)
花丸(初めて、他人と笑いあって)ペラッ
花丸(……初めて、こんな「強い気持ち」を味わって)
花丸(マルの中は、あなたでいっぱいになった)
??「……次のページで最後だね」
花丸「うん、そうだね」
??「……あはは、なんだか、涙が出てきちゃった」
花丸「?」
??「……」ペラッ
38:
??「……『私はあなたを見捨てないよ。例えあなたがコンプレックスを気にしていたとしても』」
花丸「……『私があなたを認める。私はあなたを否定しない』」
??「『だって、それはあなたの素敵なアクセサリーなんだから』」
花丸「『大丈夫、自信を持って。私には、あなたが素敵な人にしか見えないよ』」
??「『……ありがとう、でも、ひとつ。聞きたいことがあるんだ』
花丸「『なぁに?』」
??「『最初からずっと聞きたかったんだ』」
花丸(この子の手が、マルの手をそっと包んだ)
花丸(そして、小動物のように怯えていた視線は、マルのことをじっと見つめている)
花丸(マルは、その手の暖かみをしっかり、感じた)
??「『あなたの名前、教えてくれる……?』」
花丸「……そこで、物語はおしまい」
39:
??「……そっか」
??「だけど、おしまいにしたくないよ」
花丸「……うん。私たちは、これからだからね」
??「……もう一度、言うよ」
花丸「うん」
??「あなたの名前、教えてくれる?」
花丸(心臓の鼓動が大きくなっていく……)
花丸(マルが自分をこの物語の主人公に置き換えたように)
花丸(この子もきっと、自分を主人公に置き換えたのかな)
花丸(きっとそうかな。そうだと嬉しいな)
花丸(マル、いまなら確信できるんだ。もし、マルが主人公なら、その友人は……きっと……)
花丸「私は……花丸。国木田花丸、ずら」
??「……うん。花丸、ちゃん」
花丸「じゃあ、私から……マルからも」
花丸(きっと……)
花丸「あなたの名前、教えてくれる……ずら?」
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