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モバP「ファイヤーボンバーバーニング」


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D「さぁーさ、Pさん! 次行きましょ、次っ!」
D「何にしましょーかね? ラーメンいっちゃいます?」
D「あでもラーメンはまだ早いっすよね! 〆ですもんね!」
P「いや、あの……うっぷ」
D「それともアレすか? やっぱ女のコがいた方がいいっすかね?」
D「自分そういう店も詳しいっすよ! ちょっと待っててくださいね、この近くに――」
P「いえ、すいません」
P「今日はそろそろお暇しようかと……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1477315830
2: 以下、
D「は?」
D「いやいやまだ二軒回っただけっすよ?」
D「いつもはもっと付き合ってくれるじゃないすか、なんだつれないなー」
P「明日早いんです、終電もありますし――」
D「ぶははっ! 終電! いや、面白いなーPさんは!」
P「え?」
D「まあまあいざとなったらタクシーでも何でも呼べばいいじゃないっすか!」
D「そんなん気にしてたらプロデューサー業なんて勤まらないっすよ!」
D「むしろこっちが本分ですって! 言うでしょ? 飲みニケーションって」
P「飲みニ……?」
3: 以下、
D「そ、プロデューサー業は人脈が命!」
D「接待してコネ作ってナンボの世界っすからね!」
D「飲みニケーションの一つや二つできないとやっていけないっすよね! わかってますわかってます!」
P「はあ……」
D「いやほんと大変っすよね! 俺同情しちゃいますわ!」
D「しゃーない! いいっすよ! そういうことならとことん付き合いますわ!」
P「は?」
D「Pさんのコミュ力向上のためにね! 不肖私めが朝までレクチャーしてあげますよ!」
P「え?」
D「そうとわかれば善は急げ! さぁさ、行きましょ行きましょ!」グイグイ
P「ちょ、あの、あんま揺らさないでください。行きます、行きますから」
P「うえっぷ……はぁ」
P「いいのかな、俺こんなことしてて……」
D「なーにいってんすか! いいんすよこれで!」
D「短い人生、楽しんだもん勝ちですって!!」
4: 以下、
――――
――翌朝
P「う……」
P「だめだこれ、予想外に残って――ん?」
ドドドドドド……
茜「ぶぁあああーーーーにんぐっ!!」
茜「Pさんっ!! おはようございまああああーーーっ!」
ドガシャーーン!!
P「おはよう、茜」
5: 以下、
ガバッ!
茜「はいっ! Pさん、おはようございますっ!」
茜「快晴! 快適! いい陽気! 今日は本当、いい天気ですねっ!」
茜「思わず走り出したくなってしまいますね! 走り出したくなってきませんか!?」
P「ごめん、体調悪くて走れそうもない」
P「茜、今日は早朝レッスンだろ? いいよ先に行ってて」
P「俺、トレーナーさんと打ち合わせあるからさ、その後で見に行くよ」
茜「はい! わっかりました!」
茜「それではまた後ほど! 失礼しますっ! うおおおっ!!」
茜「ぼんばーーーっ!!」
ドドドドドド……
P「足下気をつけてなー」
P「……元気だな、本当」
6: 以下、
―――
――
P「……十曲?」
マス「うむ」
P「一週間でですか?」
マス「そうだ」
マス「次のライブまでに全曲マスターさせる」
7: 以下、
P「キツくないですか?」
マス「曲自体は三人とも知っているものだよ」
マス「観客の前で演ったこともある」
マス「ただ振り付けが変わるだけだ、心配には及ばない」
P「しかし、一週間はあまりに――」
マス「短い、と?」
P「そう思います」
P「ポジパも忙しいですし、全体練習の時間も限られてる」
P「今日だって朝しか集まれないからって、早朝レッスンしてるわけで」
P「できればもうちょい余裕を持ってですね……」
マス「ふむ」
マス「私には長いくらいに見えるがね」
マス「どうやらP殿は自身のアイドルを過小評価しているようだ」
8: 以下、
P「過小……そうかな?」
マス「P殿、若者の吸収力を侮ってはいけないよ」
マス「一を聞いて十を知るという言葉があるだろう」
マス「あのくらいの年の子はみんなそうさ」
マス「三日も経てば見違えるし、一週間もすれば別人になる」
P「確かに若い時は何でもすぐに覚えられましたけど……」
マス「だろう? 今の私たちと比較するから駄目なんだ」
マス「我々とは密度が違うんだよ、時間の密度がね」
9: 以下、
P「時間の密度、ですか」
マス「そう、だから私は一週間でも長いくらいだと思っている」
マス「五日、いやそれこそ三日でいいんじゃないか?」
マス「どうだろうP殿、三日で全曲マスターというのは」
P「いやいやいや」
P「流石にそれはやめてあげてください、藍子とかぶっ倒れちゃいますよ」
マス「そうか? ふふ、全くP殿は過保護だな」
P「マストレさんはスパルタ過ぎますって……」
ヴー ヴー
P「ん? 俺のスマホか」
P「すいません、ちょっと失礼します」
10: 以下、
P「はい、もしもし」
P「あ、Dさんですか。はい、はい、昨日はどうも」
P「そうですね、また誘っていただければ……え? 明後日?」
マス「……」
P「いえ、そんな、予定確認してみますね、え?」
P「あ、ちょ、Dさん、Dさん?」
P「……切れた」
P「まいったな、もう」
マス「P殿もご多忙なようで、なによりだ」
P「はは、いや、まあこれも――」
マス「仕事のうち、と?」
P「……」
マス「まあいい、私は口出しできる立場にないからな」
マス「そのかわり、彼女たちのレッスンは任せてもらおう」
マス「必ず一週間で形にしてみせるよ」
P「……わかりました、よろしくお願いします」
11: 以下、
――――
――夕刻
P「……二日酔い、治らんな」
P「明後日はまた飲み会らしいし」
P「はよ帰って寝――」
ドドドドドド……
茜「Pさーーーんっ!!」
ドゴォッ!!
P「ごふっ」
12: 以下、
茜「今お帰りですかっ!! よ、よければっ!!」
茜「よければ私と一緒に、一緒に!」
茜「一緒にっ! 帰り! ませんかっ!!」
P「」
茜「Pさんっ?」
P「おう、大丈夫、帰る、帰ろう」
P「でもちょっと待ってな、あの、息が、げほっ……いいタックルだよ、本当」
茜「ホントですか! ありがとうございますっ!」
茜「きたえてますからね! これもトレーニングのたまものですっ!」
P「何本か持って行かれたかと思った」
13: 以下、
―――
――
茜「1、2、3、4……」タッタッタ…
茜「1、2、3……ターンッ!」クルッ
P「おー」パチパチ
P「すごい、それ今日覚えたやつ?」
P「完璧じゃん」
14: 以下、
茜「いえいえっ! まだまだです!!」
茜「ここでこう、テンポを落とさなくてはならないのですが……」
茜「これが苦手でして、ほっほっ……ほあっ!」タッタッタタッ
P「あー」
P「ちょっといかな」
茜「うー! なかなかうまく行きませんねっ!」
茜「こういうのは未央ちゃんが上手なんですよっ! ぱぱぱっとこう、鮮やかなんですっ!」
P「ほお」
茜「明日お二人に教えてもらいましょうっ!!」
茜「そのためにも今日は復習、復習ですっ! やるぞーっ!」
15: 以下、
P「帰ってからも自主練か」
P「悪いな、こんな過密スケジュールで」
茜「いいえっ! なんてことありませんっ!」
茜「私今、燃えていますからっ!!」
P「燃えてる?」
茜「はい! 燃えているときは疲れなんて感じませんっ!」
茜「次から次へとパワーが溢れてきて、常に全力でいられるんです!」
P「へえ」
P「アドレナリンでも出てるんだろうか」
茜「それだけじゃないんですよ! バーニング時にはですね……」
P(バーニング時?)
茜「いつもよりご飯がおいしくなるんですっ!」
茜「さらにっ! 夜もぐっすり眠れるようになるんですよ!!」
茜「すごい! これってすごくないですか!?」
P「すごい」
16: 以下、
P「快眠、快食、疲れ知らずってわけだ」
P「うらやましいな。俺もあやかりたい」
P「特に最近寝不足だからな」
茜「Pさんも熱くなればいいんです!」
茜「一緒にバーニング、しましょう!!」
P「バーニング、したいな」
P「どうすればいいんだろうな」
茜「? どうすれば、ですか?」
P「うん、どうすれば熱くなれる?」
P「どうやったら茜みたいになれるだろう」
17: 以下、
茜「なんだ、そんなことですか!!」
茜「簡単ですよ! 己の信念に従えばいいのです!!」
P「信念?」
茜「はい! 魂の赴くまま、自分を偽らなければいいのです!!」
茜「私はこれが好き! こうしたい! こうなりたい! と全力で叫べばよいのです!」
茜「そうすれば自ずとハートに火が点いて、勢いよく燃え上がりますよ!!」
P「なるほど」
P「それができたら、どんなに楽なことだろうな」
茜「えっ?」
P「いや、なんでもない」
P「……ところで、こんなとこまで来ちゃったけど、大丈夫か?」
茜「へっ?」
P「茜、帰り道そっちじゃなかった?」
P「このまま行くと駅だけど……」
18: 以下、
茜「あ……ああっ! うっかりしてました!!」
茜「すみません、Pさんっ!! 私、こっちでした!!」
茜「あのっ! 今日は本当にありがとうございました!」
P「おう、練習頑張ってな」
P「あんまりマストレさんが無理言うようだったら相談してくれ」
P「こっちでどうにか対応するから」
茜「はいっ!! それではまた明日!」
茜「失礼しますっ!! うぉぉぉっ、ぼんばーー!!」
ダダダダダッ……
P「転ぶなよー」
P「……もう見えなくなった」
P「はぁ」
P「明日も仕事か、それに明後日は……」
P「……信念、信念か」
P「そんなもんがあるのかな、俺に」
19: 以下、
―――
―――――
20: 以下、
D「Pさんだってうすうす感づいてんでしょーっ!」
D「うちらの人生、もう大勢決してんですわ!」
D「今さらマジになったところで、なにも変わりゃしないんすわ!!」
D「この下らない現実に乾杯しましょ乾杯っ!!」
21: 以下、
P「Dさん、少しペース落としたほうが……」
D「まあまあ聞いてくださいよPちゃん! ね! ホラ座って!!」
P「(Pちゃん?)」
D「なあ、Pちゃん今何年目よ?」
P「何年……、五年目くらいですかね」
D「五年ね! それくらい経ちゃあもう何となく分かってくるっしょ!」
D「自分の立ち位置って奴がさ!」
P「立ち位置?」
22: 以下、
D「例えばPちゃんはさあ、将来自分が社長になれると思う?」
P「なんですかいきなり」
D「まあ答えなって」
P「……いや、社長はどうですかね。なれるなれないとか以前に」
P「自分には器じゃないかなって気がします」
D「"器じゃない"! それよそれ! Pちゃんいい言葉知ってるね!!」
P「はあ」
D「そう、もうこの年になると悟っちゃうわけよ!」
D「自分の能力の限界ってやつをさ!」
23: 以下、
D「あくせく働いても、八方美人に媚売っても」
D「越えられない壁ってのはやっぱあるわけよ!」
P「……」
D「俺なんかいい例よ? ディレクターまではかったのにさあ」
D「そっから十年、今に至るまで何の音沙汰もないわけ!」
D「十年だぜ十年! Pちゃん信じられる?」
P「いえ……」
D「その間どんどん若手に追い抜かれていってよ」
D「あんな小さかったガキが高校に通うまでになっちまった」
D「なんかもうアホらしくなってさあ、ついには気付いちゃったのよね」
D「結局、そうなんだなって」
D「器じゃないやつが必死になったところで、なんも変わりゃしないんだなって」
24: 以下、
P「……」
D「まあまだPちゃんは若いかもしんねえけどさ!」
D「二十も後半なら人生、ほぼ決まったようなもんだって!」
D「今から何かになろうなんて考えるだけ無駄無駄!」
D「これから野球選手になろうとか、パイロットになろうとかぜってー無理っしょ?」
D「バカ正直に夢追いかけたって、それこそバカを見るだけっすわ!」
P「そう、ですかね」
25: 以下、
D「そぉーよ! そう!」
D「やたら暑苦しい奴とか意識高い奴とかいるけどさ」
D「俺から見たらああいう奴らは人生損してるね! 今を生きてない!」
D「叶わねえ夢追って必死になってよ、後悔するのが目に見えてんのに」
D「いつも言いたくなるね、いい加減現実みなよってさ」
P「……」
D「人間、大人になんなきゃダメよダメ。いつまでも子供じゃないんだって」
D「できないものはできない、無理なものは無理! スパッと割り切らなきゃ!」
D「まったく、そこんとこわかってねえ奴が多すぎんだよな、ほんとによ!」
D「あ、Pちゃんは大丈夫よ! Pちゃんはこっち側だから、こっち側! ぶはは!」
P「……」
26: 以下、
D「あ、俺ちょっとトイレ行ってきますんで!」
D「ビール、追加しといてくださいや! ジョッキでね!」
P「あ、はい」
D「こっち側どうし、これからも仲良くやりましょーや! ねっ!!」バシッ!
スタスタ…
P「はは……」
P「こっち側どうし、か」
P「……」
P「なんでだろ、酔ってるのかな」
P「なんで、茜の顔がちらつくんだろう」
27: 以下、
―――――
―――翌朝
P「……」ボー…
P「眠……」
P「ダメだ、ちょっと休――」
ゴスッ
P「ぐおっ」
P「っつう、なん」
P「……だこりゃ? DVD?」
マス「お疲れのようだな、P殿」
28: 以下、
P「あ、あれ? マストレさん?」
P「今日、何かありましたっけ」
マス「いや、何も」
マス「ただちょっと面白いものが手に入ったのでね」
P「……? これですか?」
マス「ああ」
マス「彼女たちのこと、褒めてあげるといい」
マス「私自身、これほどとは思わなかった」
P「??」
P「ええと」
P「よくお話が見えてこないんですが……」
マス「そうだろう」
マス「なにせまだ三日しか経っていないからな」
マス「なんだかんだで、一週間はかかると踏んでいたんだがね」
P「三日?」
P「……」
P「……まさか」
29: 以下、
マス「言っただろう」
マス「私たちとは時間の密度が違う、とね」
30: 以下、
―――――
――
茜「?♪」
茜「??♪」
P「ご機嫌だな、それに」
P「今日はやけに静かじゃないか」
31: 以下、
茜「静か、ですか? そうですかねっ?」
P「そうだよ、いつもはほっといたら走り出しそうなのに」
P「ずいぶんとスローペースだからさ」
茜「えへへっ」
茜「せっかくPさんと一緒に帰れるのですから!」
茜「たまにはゆっくり歩くのもいいかと思いまして!!」
P「なんだ」
P「てっきりレッスン続きで疲れてるのかと」
茜「いえいえ! 全然元気ですよっ!!」
茜「なんならダッシュしましょうか? ダッシュいけますよ!!」
P「ダッシュいいです、ノーダッシュで」
P「まあ、それならゆっくり行こう」
茜「はい!」
32: 以下、
茜「?♪」テクテク
P「……」テクテク
茜「??♪」
P「……」
P「映像、見たよ」
茜「はいっ、えっ?」
P「マストレさんからもらったんだ」
P「昨日の全体練習のやつ」
茜「あっ! リハーサルのときのですね!」
茜「私も見たいですっ! きちんと出来ていましたかねっ!?」
P「驚いたよ」
P「ばっちりだった」
33: 以下、
茜「ばっちり! ばっちりでしたか!!」
P「たいしたもんだよ、本当」
P「このままステージに上げても大丈夫そうだ」
茜「ありがとうございます! 嬉しいですっ!!」
茜「でもですね! まだまだ気は抜けませんっ!」
茜「本番で最高のパフォーマンスを見せるためにも!」
茜「極限まで! 完成度を高めなくてはなりませんからっ!!」
茜「よーーっし! 明日からも、燃えていきますよーー!!!」
P「明日からも、か」
P「……」
P「若いってのは、いいよな」
34: 以下、
茜「へっ?」
P「体力があってさ」
P「時間があって」
P「何のしがらみもなくて」
P「眩しいよな」
茜「……Pさん?」
P「疑いなくやりたいことがやれて」
P「何にだってがむしゃらになれて」
P「その気になれば、三日でできるようになっちまうんだから」
P「心底羨ましいよ、俺は」
茜「え、えっと、あの……?」
P「……」
P「いや、すまん」
P「何言ってんだ、俺」
35: 以下、
茜「あの……?」
P「ごめん、今のは忘れてくれ」
P「ちょっと、なんだ、たぶん疲れてるんだろうな」
茜「……何か、ありましたか?」
P「大丈夫、何でもないよ」
P「少し休めば元に戻るだろう」
茜「本当ですか? 我慢しちゃダメですよ!」
茜「悩みごとがあるなら、何でも私に言ってください!」
茜「私、絶対にPさんのお力になってみせますからっ!!」
P「そりゃ、頼もしい話だ」
P「……」
P「じゃあ、ひとつ、聞いてもらおうかな」
茜「はい! 何でもどうぞ!!」
36: 以下、
P「もしも……あのな、もしもの話だぞ」
P「もしも俺が、今道に迷っていると言ったら、どうする?」
茜「道に……ですか?」
P「そう」
P「今まで来た道に自信がもてなくなって」
P「この先どこに行けばいいかもわからなくなって」
P「一人ぼんやり、途方に暮れてると言ったら」
P「そしたら、どうする?」
茜「え、えっ?」
P「わかんないか、まあそれでもいいよ」
P「最後まで聞いてくれるだけでいいんだ」
茜「は、はいっ」
37: 以下、
P「昔はな、全然そんなことなかったんだよ」
P「昔はなんていうか、それこそ燃えていたからさ」
P「どこに行けばいいかなんて一目瞭然だったし、何も考えず突っ走っていられた」
P「でもなんでだろな、自分じゃまっすぐ進んでるつもりだったけど」
P「しばらくして、ふと立ち止まってみるとな」
P「違ったんだよ」
茜「……違った?」
P「想像していた景色と、全然違ったんだ」
P「やっちまったなって思ったよ」
P「こんなはずじゃなかったのに、ってさ」
P「でももう、気付いたときには遅すぎたんだよな」
P「今更何をしても、時間は巻き戻せないし」
P「あのころみたいに、充実した時間を過ごすことはできない」
P「そう思うと、途端にあたりが暗くなってな」
P「……何にも見えなくなっちまった」
茜「……」
P「前は俺にも確かにあったはずなのにな」
P「それこそ、信念とか、そういう、何かがさ」
38: 以下、
茜「……」
P「……」
P「なんか、ポエムったな」
P「どうも茜の前だと余計なことまで喋っちまう」
P「悪かったな、ちんぷんかんぷんだったろ?」
茜「……」
P「しっかし、茜はすごいよ本当」
P「三日だぞ? 俺この三日間何してたっけな」
P「酒飲んで接待してたことくらいしか覚えて――」
茜「あ、あのっ!!」
P「ん?」
茜「まだ私、答えていません!」
P「えっ?」
茜「まだ私、Pさんの悩みに、答えてないです!!」
39: 以下、
P「」
P「いや、答えったって……」
P「俺の話、理解してたのか?」
茜「いいえ! 全然わかりませんでした!!」
P「」
P「まあ、そうよね……」
茜「あ、いえ、あの! わからなかったんですけど!」
茜「でも私、なんて言えばいいかはわかります!」
茜「つまりPさんは、道に迷っているんですよねっ!!」
P「お、おう」
茜「だったら!」
茜「だったら! 私が見つけますよ!!」
40: 以下、
P「……は?」
茜「私がPさんを見つけますよ!!」
茜「私がPさんを探し出してみせます!!」
茜「大丈夫です! 私、視力には自信がありますからっ!」
茜「Pさんがどこにいても、きっとすぐに見つかりますよっ!!」
P「いや、しりょ、え?」
茜「そしてPさんに向かってこう叫ぶんです!」
茜「『私はここですよ!!』と!」
茜「『私はここにいます! こっちに来てください!!』と!!」
茜「そうすればPさん、迷わずにすみますよ!!」
P「……茜が?」
P「俺を、呼んでくれるってのか?」
茜「はいっ!」
茜「私がPさんを導いてみせます!!」
茜「そう! あの地平線に輝く夕陽のように!!」
茜「私がPさんの、太陽になってみせます!!!」
41: 以下、
P「太陽……」
茜「かつて、Pさんがそうしてくれたように!」
茜「私の未来を照らし、アイドルへの道を作ってくれたように!」
ガシッ!
P「お、わ」
茜「今度は私が、Pさんを照らしてみせます!」
茜「今度は私が、あなたの太陽になります!!」
茜「だから迷ったら、私を探してください!」
茜「私、いつでもここにいますから!」
茜「Pさんの隣に、ずっといますから!!」
茜「Pさんのそばで輝き続けますから!!」
42: 以下、
P「茜……」
茜「……」
ギューッ
P「……」
P「あの、手が」
茜「はい?」
P「手がちょっと痛い、かも」
43: 以下、
茜「」
茜「あ、ああっ!! し、失礼しましたっ!!」パッ
茜「つつつい力がこもってしまって、というかあああの、すみませんっ!!」
茜「私、なんだか興奮してしまって、その、あの、変なことを……っ!!」
P「……」
P「茜、手めっちゃ熱いな」
茜「あ、えっ?」
P「いや」
P「俺の太陽に、か」
P「……」
茜「Pさん?」
P「……茜」
P「俺は今からでも、燃えることができるだろうか」
P「また昔みたいに、熱くなることができるだろうか?」
44: 以下、
茜「! は、はいっ!! もちろんです!!」
茜「消えていたら、また灯せばいいんです!」
茜「絶やさず火をくべてあげればいいんです!」
茜「それがいつだろうと、どこだろうと関係ありません!」
茜「人は誰だって、いつだって、熱くなれるはずですっ!!」
茜「熱くなって、いいはずです!!」
45: 以下、
P「……」
P「そうか」
P「そうだよな」
P「遅すぎることなんて、ないよな」
茜「はい!」
P「ありがとう、茜」
P「なんだか心配かけたみたいだな」
茜「えっ」
P「今日、俺の帰りを待っててくれたんだろ?」
P「歩くペースも、合わせてくれたんだよな?」
茜「あ、いいいえ……! それ、は……!」
茜「……あの、気付いて、いましたか?」
P「うん」
P「なんとなくだけどな」
46: 以下、
P「でも、もう大丈夫」
P「俺のペースに合わせる必要なんてない」
P「俺も取り戻すからさ、自分の時間を」
茜「……Pさんの時間を、ですか?」
P「そう、燃えていたころの時間を」
P「必死になって生きてたあのときの時間を」
P「だから茜は俺のことなんて気にしなくていい」
P「好きなだけダッシュして先に行っててくれていい」
P「俺、絶対追いつくから」
P「次はきっと見失わないから」
茜「……Pさん」
P「ありがとう、茜のおかげで火がついたよ」
P「茜の手、すげえ熱かったからな」
茜「……はいっ!」
47: 以下、
P「さ、茜は帰り道、そっちだよな」
P「じゃあな、今日はいろいろ世話をかけたな」
茜「は、はい、えと!!」
P「ん?」
茜「Pさん! 負けないでください!!」
茜「私、いつも応援していますから!!」
茜「だから、あの!」
茜「ファイヤーです! ボンバーです!!」
茜「バーーーニングッ!! ですよ!!!」
P「うん」
P「また一緒に帰ろう」
P「次は必ず、俺から誘うからさ」
茜「……! は、はいっ! 待っています!」
茜「あ、ああの……! えっと……!!」
茜「そ、そ、それでは!! 失礼しますっ!!」
茜「うおおーーーーー! ぼんばーーーーーーッ!!!!」
ダダダダダダッ……
48: 以下、
P「……」
P「……」スッ
prrr…prrr…
ガチャ
P「もしもし」
P「Dさんですか」
49: 以下、
P「いえ、違います、飲みの話ではなく」
P「仕事の話をしようと思いまして」
P「……」
P「わかってます、非常識だってことは」
P「でもどうしても今、聞いてもらいたいんです」
P「……」
P「ダメなんです、それじゃ」
P「明日じゃ、ダメなんですよ」
50: 以下、
P「あいつら、この一瞬一秒を生きてます」
P「俺みたいに、間延びした時間を送っていない」
P「顔向けできないんです、このままじゃ」
P「俺、あいつらのプロデューサーなんです、だから」
P「あいつらと一緒の時間を過ごさなきゃダメなんです」
P「あいつらと一緒に燃えていなきゃダメなんです」
P「俺、あいつらのプロデューサーなんです、だから」
51: 以下、
P「もう一度、みんなのプロデューサーになるんです」
52: 以下、
―――
――
53: 以下、
ダダダダダッ……
バターン!
P「はあ、はあ……」
P「間に合った、か?」
54: 以下、
マス「間一髪、だね」
P「あ、マストレさんっ」
P「みんなは?」
マス「これからリハーサルだよ」
マス「そろそろ出てくる頃だろう」
P「よかった」ホッ
P「ギリギリだったな」
マス「また、打ち合わせかい?」
55: 以下、
P「ええ、まあ」
P「ちょっと長引いちゃってですね」
マス「ふふ、噂には聞いているよ」
マス「TV局に殴り込みをかけたそうじゃないか」
P「へ?」
マス「なんでも、その筋じゃ有名なディレクターを捕まえて」
マス「会議室に閉じ込めて朝まで帰さなかったそうだね」
P「あ、いや」
マス「しかもそれだけでは飽き足らず」
マス「部長クラスまで引っ張り出して一席ぶったとかなんとか……」
P「あの、だいぶ尾ひれがついてるんですが」
マス「だが、あながち間違いでもないんだろう?」
P「……まあ、はい」
マス「ふふ」
マス「……」
P「?」
56: 以下、
マス「前に話したろう、時間の密度について」
マス「どうやらあれは少し訂正が必要なようだ」
P「訂正?」
マス「人生には濃淡がある、その考えは変わらない」
マス「無意味に過ぎていくだけの空虚な時間もあれば」
マス「一瞬一瞬が詰め込まれた濃密な時間もあるだろう」
マス「しかし、その模様はそれこそ十人十色らしい」
マス「若くしてピークを迎えてしまうものもいれば、いわゆる晩成型の人間もいる」
マス「……一度挫折した後、また這い上がってくる者もいる」
マス「私はそれに気がつかなかった」
マス「濃い時間は、若者だけの特権ではなかったんだな」
P「……」
57: 以下、
マス「いや、唐突にすまない」
マス「最近のP殿を見ていると、何となくそう思えてきてな」
P「いえ」
P「わかる気がします」
マス「差し支えなければ、聞かせてくれないか」
マス「どういう心境の変化なのか」
P「そうですね、それは」
P「きっと――」
??「Pさーーーーーーーーーーんっ!!!」
マス「?」
58: 以下、
茜「Pさーーーんっ!! 見えてますかーーっ!!」
ブンブンッ
茜「ここですよーーーっ!!! 私はここですーーーっ!!!」
ブンブンブンッ
茜「日野茜は、ここにいますよーーーっ!!!」
59: 以下、
マス「日野か、あきれた視力だな」
マス「最後列だぞ、ここは」
P「……」
茜「Pさんっ! Pさーーーーーーんっ!!!」
ピョンピョン
60: 以下、
マス「まったく、本番前に大声出すなといったろうに」
P「……」
マス「……P殿?」
P「はい?」
マス「はい? じゃないだろう」
マス「呼んでいるよ、彼女が」
P「ええ」
P「心境の変化なんて、何にもないんです」
マス「ん?」
P「ただ、茜を、みんなを見れば良かった」
P「それだけで俺もバーニングできたんです」
マス「ばー……?」
P「バーニング状態っていうんです、すごいんですよ」
P「この状態になるとですね」
P「次から次へとパワーが溢れてきて――」
61: 以下、
P「いつも、全力でいられるんです」
62: 以下、
おまけ
『サポート体制』
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藍子「あ、ほら来たよ茜ちゃん」
茜「どどどどうしましょう! なんて言えばいいんですかね!」
未央「そんな緊張しなくても大丈夫だって?」
未央「『偶然ですね! 一緒に帰りませんか!』くらいでいけるいけるっ」
茜「そうでしょうか? でも……」
未央「あーもうっ!」
未央「ぐじぐじ悩むなんてらしくないぞっ!」
未央「当たって相手を砕いていくのが茜ちんでしょ!」
藍子「茜ちゃん、勇気を出して!」
茜「……そうですねっ! ぃよしっ!」
茜「日野茜、突撃しますっ!」
未央「うむ、健闘を祈る!」
藍子「頑張ってー!」
茜「Pさーん! うおおおぉっ!!」
ドドドドド……
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……
P「明後日はまた飲み会らしいし」
P「はよ帰って寝……」
ドドドドドド……
茜「Pさーーーんっ!!」
ドゴォッ!!
P「ごふっ」
藍子「あっ」
未央「あっ」
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藍子「す、すごい音……」
未央「本当に突撃しちゃうからなー……」
藍子「うずくまってるけど、Pさん、大丈夫かな」
未央「あ、ほら、起きあがったよ。問題なさげ」
藍子「……何か話してるね」
未央「お、おおっ、一緒に帰り始めたっ!」
藍子「やった! 成功ですね!」
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未央「いやまあ、大方予想通りの展開なんだけどねー」
未央「あのPさんが茜ちんの誘いを断る訳ないのに」
未央「まったく変なところで乙女なんだから……」
藍子「ふふ、いいじゃないですか」
藍子「茜ちゃんが迷っていたら、私たちが背中を押してあげればいいんです」
藍子「こうしてみんなで、補っていけばいいんですよ」
未央「おっ、あーちゃんいいこと言うね、流石だねー」
藍子「それにほら、見てください。二人の顔」
未央「顔?」
未央「……ありゃりゃ」
未央「Pさん、さっきまでふらふらで死にそうだったのに」
未央「なんともはや、まったく……」
藍子「素敵ですよね。二人とも」
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藍子「本当、幸せそう」
終わり
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日野茜は私の太陽になってくれたかもしれない女性だ
html依頼してきます
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元気出る
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