にこ「キャンプに行くわよ!」凛「シシノケ?お尻の毛みたいニャ」back

にこ「キャンプに行くわよ!」凛「シシノケ?お尻の毛みたいニャ」


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3:
にこ「みんなでキャンプに行くわよ!」
希「突然どうしたの、にこっち」
にこ「毎日毎日練習と受験勉強……。逃げれば拘束からのワシワシ……。正直私はつかれたわ! よって、休息することを要求するわ!」
真姫「この前合宿したじゃない。それじゃあだめなの?」
花陽「海にも行ったよね」
凛「花火大会にもお祭にも行ったニャ」
絵里「これだけ夏休みを満喫しててもダメなの?」
にこ「どぁめに決まってるじゃない! しかも合宿の時は真姫の家の敷地内じゃない。ノーカンよノーカン!」
海未「ですが……」
にこ「止めても無駄よ! みんなが行かなくても、私一人でもいくから!」
ことり「どうするの? 穂乃果ちゃん」
穂乃果「キャンプか?」キラキラ
絵里「もう行く気になってるようね……」
にこ「フフン。どうやら決まったようね」
4:
絵里「ワシワシしすぎたんじゃない? 希」
希「エリちだってノリノリで捕まえてたやん」
絵里「そ、そんなこと……。まあ、確かに楽しんでたけど」
希「詰め込み過ぎたのも原因やんかな?」
絵里「あと熱さかも」
希「……どっちみち」
「やり過ぎたか……」
にこ「あはははーー! 早く準備しなさいよ!」
5:
.
キャンプ当日
凛「わー! 木がいっぱいニャァー!」
花陽「わわわ…。凛ちゃん荷物を捨てて走って行かないで!」
―にゃー!
―りんちゃーん!
にこ「すぅ―――、はぁ―――。んんー! 気持ちいいわね!」
希「す、すぴりちゅあるぱうわが増大していく……!?」
絵里「の、のぞみ……?」
穂乃果「きれいなとこだねー。空気がすっごく澄んでて気持ちいい―!」
ことり「木漏れ日が幻想的だね?」
海未(こういうところで練習できれば……)
真姫「海未、こういう時くらい練習のこと忘れたら?」
海未「こ、心のなかを読まれた!?」
真姫「顔に出てるのよ……」
6:
にこ「さ、さっさと組み分けするわよ」
ことり「え? 組み分けするの?」
にこ「そりゃそうよ。一箇所に固まってやってたら、キャンプの意味なんて無いわ」
にこ「だから食材も余分に持ってくるように言ったのよ」
絵里「なるほど。だからあんなに多かったのね」
にこ「食材担当の希、ことり、花陽は当然バラバラね。あとの6人はこのくじを引いてもらうわ」
凛「くじをわざわざ作ってきてくれたの? にこちゃんやるぅー!」
にこ「いいわ、もっと褒めて! そしてたたえなさい!」
穂乃果「にこちゃんテンション高いねー」
希「にこっち……そこまで追い詰められてたんやな……」ホロリ
にこ「じゃあくじを引く順番を決めるわ。私は最後でいいから、じゃんけんで私に勝った人から引いていっていいわよ」
花陽「わかりました!」
じゃーんけーん……
7:
希グループ
穂乃果
真姫
ことりグループ

にこ
花陽グループ
絵里
海未
にこ「よし、グループ分けは決まったわね。キャンプ開始!」
8:
グループごとに指定のキャンプ場へ移動していった
にこ「はぁ?。これでやっと鬼二人から逃げられたぁ……」
ことり「鬼って……。大変だったんだねにこちゃん」
にこ「大変どころじゃ無かったわ。練習のない日、練習が終わった後。全部を図書館で勉強三昧! ハッキリ言って監禁に近かったわ」
凛「にこちゃんがんばった、がんばったニャ」ナデリコ
にこ「ふふふふふ……。でも、今日明日はその呪縛から開放されるにこ!」
にこ「さ、荷物を置いたら川へ行くわよ。突撃ぃー!」
凛「いくニャー!!!」
―あははははは……
―にゃはははは……
ことり「え、テント私一人で立てるのー!? ま、待ってよふたりともー!」
9:
海未「はあ、ことりは大丈夫でしょうか……」
絵里「穂乃果じゃなくてことりの心配?」
海未「ど、どういう意味ですか! その……凛とにこ。考えられる限りこの状況で暴走しないはずがないんです。
 その二人をことり一人で抑えられるとは到底考えられなくて……」
絵里「あー、確かに……。最近のにこは普段よりもはっちゃけてるし」
海未「そう考えるともう心配で心配で……!」
絵里「そう、た、大変ね……。あっちはあっちで大分きてるようだし……」
花陽「はぁー凛ちゃん大丈夫かなみんなに迷惑掛けてないかな怪我してないかなちゃんとごはん食べられるかな」ブツブツブツ……
絵里「私も、いろんな意味で心配になってきたわ。あなた達が」
―リンチャンリンチャンリンチャン……
―コトリコトリコトリコトリ……
エリチカ(あ、もうダメだ)
10:
希「テント立てるから手伝ってー」
穂乃果「はーい! 穂乃果いっきまーす!」
真姫「あんまり力仕事やりたくないんだけど」
穂乃果「ダメだよ真姫ちゃん! こういうのはみんなでやらなきゃ」
希「最近のテントの組み立ては、女の子でも出来るように力いらずで出来るようになってるんやで」
希「真姫ちゃんもそう言わんでがんばろ。ね?」
真姫「し、しょうがないわね。私だけなにもしないっていうのもバツが悪いし、手伝うわ」
穂乃果「ありがと真姫ちゃーん!」ダキ!
真姫「も、もう! そんなに簡単に抱きつかナイデ!」
穂乃果「難しくならいいの?」
真姫「難しくってなに!? 意味分かんない!」
―マキチャーン
―アツイカラハナレテ!
希(ナイスすぴりちゅある!)b!
11:
.
ことり「もぉ?、ふたりとも遊んでないで手伝って?」
―キャーミズガツメターイ
―サカナモイルニャ-
―ナンデスッテ!? イクノヨリン!
―リンイクニャー!
ことり「もう、怒ったから」プク?
凛「やった、とったニャー!!」
にこ「やるじゃない! 私もとるわよ!」バシャ!
凛「そっちに追い込むよ!」パシャパシャ
にこ「ん?、どりゃ!」
――ピリリリリリリリリリリリリィィィィィィィィ―――――――ッ!
にこ「 」プカァ
りん「 」プカァ
.
12:
ことり「クマ撃退用の笛を、こんな所で使うことになるなんて……」
凛「反省してるニャ……」
にこ「右に同じ……」
ことり「山の天気は変わりやすいっていうから、まずみんなで協力してテントを張ろう? ね?」
凛「はいニャ」
にこ「はいにこ」
凛(ことりちゃん怒ると怖いニャ……)
にこ(普段穏やかな分、怒った時の威力が半端ないわね……)
ことり「テントが終わったら三人で遊ぼうね!」
凛(いや、やっぱり天使だニャ)
にこ(天使だってにこにーは信じてたから)
ことり「?」
にこ「さっさと終わらせて遊ぶわよ! そのために来たんだから!」
凛「凛がんばるよー! がんばっちゃうよー!」
13:
――リリリィィィィ――……
海未「ハッ! いまことりからタスケテコールが!?」
絵里「ないから。落ち着いて」
花陽「凛ちゃん? ウフフ……」
絵里「凛は居ないから。誰と会話してるの?」
絵里「あなた達ってそんなキャラだったかしら……。わからないものね」
絵里(でも、怪しいことを言いながらも、テキパキ作業をこなしていくのは流石というかなんというか)
絵里「ていうか私、今なにもしてないんじゃ……あれ?」
絵里「ツッコミしか、してない……? ツッコミだけのお飾り……?」
花陽「海未ちゃん海未ちゃん。絵里ちゃん大丈夫かな?」
海未「え、ええ。多分、大丈夫だと思います……。突然落ち込んでどうしたのでしょうか……」
花陽「普段からみんなを引っ張ってるから、疲れちゃったんだよ。そっとしてあげよう?」
海未「そうですね。どうやらこの作業も二人でも全然大丈夫なようですし。休ませてあげましょうか」
―ノゾミ…エリチカガンバッテルヨネ……
14:
希「…………ハッ!」
希「こっちの方に何かあると出たで」
穂乃果「なにかって、なんだろう」
真姫「滝、とか?」
穂乃果「滝かー、一緒に水着持ってくれば良かった?」
希「足だけ浸すのも気持ちええもんやよ」
穂乃果「気持ちよさそう! 早くつかないかな!」
真姫「いや、まだ決まったわけじゃないわ。落ち着きなさいよ」クルクル
穂乃果「そんなこと言って、真姫ちゃんも楽しみなんでしょー? 毛先をすっごくクルクルしてるよ」
真姫「別にそんなんじゃ……。滝を見れば、何かいいインスピレーションわかないかなって思っただけよ」
希「話に盛り上がっとるけど、足元悪いんやから気を付けなー」
16:
希「ここ、なんやけど……。な、なんやろ、不気味やな……」
穂乃果「」ゴクリ…
真姫「ねえ、ここから離れない? なにか嫌な予感がするんだけど……」
希「うん、そうしよか……」
そこは、丁度木々で完全に陽の光が遮られている場所だった
そのためジメジメと湿気が高く、苔やカビに覆われている
むせ返るような瘴気が、辺りを包んでいた
立ち去る際に、希は何かを目の端に捉えた
それは恐らく何かの動物の死骸だったのだろう
草に隠れていてなんの動物かはわからなかったが、それなりに大きい。鹿や猪のようだ
希の背に冷たいものが走る
瞬間的に感じた恐れを二人に悟られまいとして、余計に明るく振る舞って、その場を離れた
17:
.
にこ「ふぅー。これで完成? 意外と手間取ったわね」
凛「にこちゃんが失敗ばっかりするから」
にこ「にこのせいじゃないにこー」
ことり「まあまあ。それじゃあ汗もかいたし、川に遊びに行こ!」
にこ「行くのよ、ほしりん号!」
凛「ほしりん号発進ニャーー!」
パタパタパタ……バシャーン!
ことり「あ! こ、ことり号もいくよ?!」
パタパタパタ……コケッ!
―あ、ことり大丈夫!
―に、にこちゃんありがとぉ……
―頭にカエル乗ってるよ
―ホントだ!
アハハハハハ……
.
19:
絵里「はあ、どうして空はこんなに青いのかしら……」
―ハア……
海未「これは本格的に心配になって来ましたね」
花陽「絵里ちゃんどうしたのかな……ずっと落ち込んでるけど……」
海未「わかりません。……ハッ!? まさか……」
花陽「何か分かったの? 海未ちゃん!」
海未「まさか……ホームシック!?」
花陽「ほおむしっくっ!?」
海未「そうです。端的にいうと家が恋しい状態のことを言います」
花陽「そんな! それじゃあどうすれば……!」
海未「帰るのは明日の昼過ぎですし……うーん」
花陽「そうだ! 絵里ちゃんに妹さんいたよね、確か……」
海未「亜里沙さん?」
花陽「そう! 亜里沙ちゃん! 私達が絵里ちゃんの妹になれば、少しは気が紛れるかも!」
海未「!?」
天啓。正に天啓だった!
この状況を打破しうる、最善最高の一手だった!
20:
海未「で、ですが……」
花陽「恥ずかしがってる場合じゃないよ! 絵里ちゃんのためだもん!」
海未「え、絵里のため……」
花陽「そうだよ。見て、海未ちゃん! あの気の抜けた炭酸のような絵里ちゃんを!!」
絵里「ほけ?……。ぴろしき食べたーい……」 ←気の抜けた炭酸チカ
花陽「ほら! かつてキレキレだった生徒会長絵里の面影の欠片すらない、糸の切れたタコ状態の絵里ちゃんをっ!」
海未「は、花陽も結構言いますね……。気づいていないようですが……」
花陽「だから、ね! 海未ちゃん!」
海未「わ、わかりました。絵里のためです。私も人肌脱ぎましょうっ!」
22:
希「あ、滝や!」
真姫「すっごい……初めて間近で見た……」
穂乃果「うーん! きもちー!」
希「なんか…」
穂乃果「スピリチュアルパワー?」
希「うちのセリフ?」
穂乃果「えへへー、ごめん。なんか言いたくなっちゃって」
希「も?」
真姫「でも、言いたくなるのも分かるわ。こんなに迫力満点なんだもの」
穂乃果「真姫ちゃん分かってくれる!? なんかマイナスイオンとかすごそうだよね!」
真姫「まいなすいおん……」
希「この川をそって行けば、にこっち達がキャンプしている場所やね」
穂乃果「そうなんだ。ね、行ってみない? どんな様子か見に行こうよ」
真姫「そうね。もしかしたら何か困ってることがあるかも」
希「決まりやな」
穂乃果「それじゃあ、新たなキャンプ地へ出発ー!」
23:
.

――
――――
希「あらあら……」
穂乃果「こ、これは……」
真姫「へぇ?」
にこ「すぅー、すぅー……」
凛「むにゃ……」
ことり「くー……」
穂乃果「殺人現場ッ!?」
真姫「チガウ」
希「三人川の字で寝とるね。可愛い寝顔」
穂乃果「川だけに?」
真姫「あなた一体どうしたの?」
穂乃果「いや、言わなきゃダメかなって思って」
希「なんかうちまで滑った感があるんやけど」
.
25:
.
凛「んーー……にゃ?」
真姫「あ、起きた」
穂乃果「凛ちゃんおはよ」
凛「あ、ああ……う、にゃ……」
希「あ、赤くなった」
真姫「珍しいものを見れたわ」
凛「にこちゃん、ことりちゃん起きるニャー!」
にこ「なに?、にこ疲れたんだけど……」
―パシャ!
ニコ「!! なに! いま撮られた!?」
真姫「なにも……」ニヤニヤ
穂乃果「撮ってないよぉ?」ニヤニヤ
にこ(しまった?、油断した。にこ一生の不覚?……)
希(とか思ってるんやろうな。何度目の不覚なんだか)
.
26:
ことり「んー……あ、ほのかちゃん、おはよー」ニッコリ
希「いい? これがアイドルの寝起きのお手本や!」
にこ「むぐぐ……ぐうの音も出ない……」
凛(寝起きも天使ニャ)
穂乃果「寝起きのことりちゃん可愛いねー」
真姫「これは……」パシャ!
ことり「あ、あれ?」
穂乃果「そっか、遊びすぎて眠くなっちゃったんだね」
希「三人で寄り添って寝てて、可愛かったよ」
凛「とんだむぼうびをさらしてしまったニャ」
真姫「無理して難しい言葉使わなくていいのよ」
ことり「恥ずかしいよ?」
にこ「ことりはいいのよ。悔しいけどアイドルとして完璧な寝起きだったわ。誇りなさい」
ことり「そういう問題かなぁ」
27:
穂乃果「ねえ、絵里ちゃんたちの所も見に行ってみない?」
にこ「いいわね。なにかおもしろいことでも起きてないかしら」
真姫「真面目なメンバーだから、にこちゃんが思ってるようなことにはなってないと思うわ」
ことり「海未ちゃん頑張ってるかな」
凛「凛はかよちんに会いたいニャ」
希(カードは……ほうほう。これは楽しみやね……)
にこ「なに一人でニヤついてるのよ」
希「べ、べつにニヤついてなんかないんよ! ほんと」
にこ「んー?」
希「さ、出発するよ」
31:
.
真姫「 」パシャ!
穂乃果「 」
にこ「 」
凛「 」
ことり「 」
希「ぶふぅーー、くくく……エリち……ぷぐふ……」
エリチカ「妹が一人、妹が二人! おねえちゃんを癒してーー!」ギュー
海未「お、おねえちゃーん!!」ゴロニャーン
花陽「おねえさまー!」クンクーン
エリチカ「あは、あはは、あははははははは」
.
32:
にこ「なにあれ。頭イッてんじゃないの?」
穂乃果「くぅー! 生徒会長絵里の、切れたナイフのような絵里ちゃんはどこへ行ったの!?」
ことり「生徒会長の仕事とμ'sの事で疲れがたまって、それで……」
真姫「……」パシャパシャパシャ
希「ほ、ほか…他の二人も、ひぐっ、どう、どうしたんやろな」
凛「そんなかよちんも好きだよー」
エリチカ「あははははははははは……」
エリち「ははははは……」
絵里「――――ハッ!?」
絵里「――はうあっ!!」バッ!
真姫「気付かれた、ようね」パシャリ
にこ「どんな顔して出て行けばいいのよ」
希「笑えばええとちゃうん?」
にこ「あんたは笑いすぎ」
33:
希「なあエリち、機嫌直して? な? 笑ったのは謝るから」
絵里「…………」
希「まさかあそこまで追い詰められてたなんて知らなかったんよ」
希「だから泣かないで、エリち!」
絵里「ないてないもん……」
希「???ッ!!」ゾクゾク…
花陽「……ハッ!? わたしは一体なにを?」
凛「そういうかよちんも凛は好きだよ」
花陽「え? 好き!? ……あれ、なんで凛ちゃんがここに?」
凛「みんなで遊びに来たんだニャ!」ダキ!
花陽(はえ?。りんちゃんがりんちゃんでりんちゃんの香りが?……)
海未「オネエチャーン」
ことり「海未ちゃんしっかり!」
穂乃果「よーし、こうなったら海未ちゃんポエム第一章の封印を解かなくてはっ」
海未「ごきげんようほのかたいようがまぶしいわ」
にこ「正気に戻ったのか判断に困る反応ね」
真姫「コントはとこまでにしないと。そろそろ夕飯の支度をしないと日が暮れちゃうわよ」
35:
キャンプ場に設置されている炊事場
ここで料理を行うことが出来る。管理者から許可をもらわなければ、そこ以外で料理することは禁じられている
残飯処理等を怠ると、最悪の場合凶暴な動物を引き寄せてしまう事があるからだ
真姫「キャンプなのにこうやって水道があるっていうのは、なんか微妙な気持ちになるわね」ジャバジャバ
にこ「そう? でも無いと不便じゃない」ジャバジャバ
真姫「んー、そうなんだけど……」
海未「完璧にキャンプだとかなり辛いと思いますよ。それにゴミの問題もありますからね」
海未「一箇所に集めるのは致し方ないかと」ジャババ
にこ「そうよ。本格的だと最早サバイバルよ。にこそんなのゴメンだから」
36:
.
凛「んー! カレーのいい匂いが漂ってきたニャ!」
ことり「キャンプといったらカレーだよねぇ」
凛「あ! かよちーん! ごはんこれでいいかニャー?」
花陽「…………」d!
凛「OKがでたよ」
ことり(ごはん奉行?)
.
37:
.
料理長にこ、ごはん奉行花陽の全面的支援によって、一同は大変美味しく夕食を終える事が出来たのだった
後はキャンプファイヤーと言えるほど大きくないが、小さい焚き火を囲み、食後のまったりとした空気を楽しんだ
夜もすっかり更け、程なくしてそれぞれのテントへ戻っていった
まだキャンプファイヤーの興奮が冷めないのか、テントに戻っても床につくものはなく、存分に語り合ったのだった
.
38:
夜の山。昼間の生命力溢れる活気はぱったりとなりを潜める
だが、夜は夜で別な趣がある雰囲気と変わるのだ
虫の鈴々とした音色が、夜を綺麗に彩るように
ことり、にこ、凛はテントに入ってトランプ遊びに興じていた
なかなか白熱していたのだろう。外の様子が変わったことに気づいたものはいなかった
ことり「やったー、あがりー!」
にこ「だぁ! また負けた! あんた強すぎるのよ……」
凛「凛なんて連続最下位ニャ……」
ことり「運がいいのかな? 昔から得意なの」
――ザァァ―――……
   ――ザァァ―――……
にこ「風が出てきたわね」
ことり「さっきまでそよ風だったのに」
凛「山の天気は変わりやすいっていうよ。雨がふるかも」
39:
ことり「でも予報ではあと二日は快晴が続くって……」
にこ「風だけじゃない。心配する必要はないわよ」
ガサッ!
――ギャギャーー! ギャーー!
   バサバサ……
ことり「……」ドキドキ
にこ「……」ドキドキ
凛「……」ドキドキ
凛「びっくりしたにゃ」
にこ「ただの、と、とりじゃない……」
ことり「にこちゃん声、ふ、震えてるよ……」
にこ「ことりだって……」
40:
凛「夜の山はこわい……」
ことり「そういえば山の怪談って多いよね……」
にこ「な、な、な、なんで今それを言うのよ!」
ことり「つ、つい……」
外ではまだ風がうねり、木々を騒がせている
楽しかった気分が一気に冷え、快適だと思ったテント内が途端に蒸し暑く感じてきた
にこ「そういえばさ」
ことり「な、なあに? にこちゃん」
凛「怖いことは聞きたくない?」
にこ「さっきから思ってたんだけど、虫の鳴き声いつから聞こえなくなってた……?」
凛「……え?」
ことり「き、気のせいだよぉ……。ほら、今風が強いし……」
にこ「そうよね、風が強いからよね!」
42:
騒がしい外とは裏腹に、テント内は誰も口を開かず、身動きもしない程に静まり返っていた
緊張が彼女たちを包んでいる
夏の夜らしく、額や背筋に汗が流れ落ちた
凛「……」
にこ「……」
ことり「……」
全神経はテントの外に向けられていた
さすがの彼女たちも、なにか様子がおかしいと感じたのだ
だが、それは思考を深い迷宮に落とし込める事になる
想像、空想、妄想が恐怖によって暴走し、ありもしない考えを生み出そうとする
43:
凛(あれは本当にとりだったのかな)
にこ(あんな声で鳴く生き物なんているのかしら……)
ことり(風の音がなにかの唸り声に聞こえるぅ?……)
――ザザァァァ……
  ――ザァー……
凛「……風、収まって来たみたいニャ」
ことり「みたいだね……」
にこ「これでようやく寝れそうね」
風は吹き始めてから小一時間程で収まった
しかし、にこが言うように寝付くことは出来なかった
44:
相変わらず虫の鳴き声一つもせず、風が収まった無音が逆に彼女たちの神経と想像力を余計に掻き立てた
したくもないのに耳は外をうかがい、身体は冷や汗をかいている
――ァ"ァ"ァァオォォ……
にこ「……!」ビク
ことり「……!」ビクク
凛「猫ニャ!」
にこ「ね、ねこ……かしら」
ことり「わ、わかんない……」
にこ「にこには赤ん坊の鳴き声に……」
ことり「やめてよにこちゃん!」
にこ「ごめん……」
凛「凛には猫に聞こえたけどなぁ」
ことり「たとえ猫でも怖いよ?」
にこ「ねえ」
凛「ニャ?」
にこ「今の声、近くなかった……?」
45:
.
――ズ……ズズ……ズ……
凛「ひぐ……っ!」
にこ「……」
ことり「……」
凛(な、なんの音……)
にこ(なにか重いものを引きずってるような……)
ことり(ちちちち、近く、近いよ……!)
――ァ"ァ"ァ"ア"ァ"ァ"ァ"オ"ォォ……
三人は確かに聞いた
先程よりも近いところから発せられた鳴き声を
そして気付いた。それがこの世ならざるものの声だということを
本能が感じ取ったのだ
46:
にこ「……覗いてみるわ」
ことり「!? あ、危ないよ!」
にこ「でも、何が起こってるか確認しないことには何も出来ないじゃない」
凛「り、凛も気になるニャ。怖いけど……」
にこ「み、見るわよ……」ソ?…
テントからだいぶ離れた川沿いに、何か大きな物体が蠢いているのが見えた
幸い月が出ており、月の薄明かりに下、その姿を確認することが出来た
49:
にこ(クマ……かしら)
凛(でっかい芋虫にも見えるニャ)
ことり(鳥肌が……)
月の光があるとはいえ、全貌を完璧に把握することが出来なかった
暗がりの中、一箇所異常な部分をにこは発見した
にこ(ねえ、もしかしてあれ、三つ目がない?)
凛(三つ目がある動物なんていないよ、にこちゃん)
ことり(暗くて良くわからないよ……)
肝が座っているのか座っていないのか、それとも神経が麻痺しているのか、
目の前の非現実的光景に、好奇心が芽生え始めていた
それが、今自分たちが置かれている状況を誤認させたのだ
50:
極限まで高まった恐怖と緊張感が、興奮と高揚に変わり、目前に迫る危機を忘れさせた
一種のパニック状態と言える
その物体は、芋虫のように巨体をうねらせて、這うようにこちらにゆっくりと向かっていた
近づいてきてようやくその姿があらわになる
顔と思われる所に、ナメクジのような触角の先に目玉がくっついていた。それも三つもだ
その触覚眼の中央に、一つポッカリと空いた穴がある
そして全身はゴワゴワとした、針のような体毛に覆われていた
それまで異常な興奮状態にあった三人は、冷水を浴びたように醒めていった
正気に戻ったその時…
にこ「!? 目、目があっちゃった……」
ことり「え!?」
凛「ど、どうしよう!」
51:
目があった時から三つ目の芋虫は絶えず、赤ん坊とも猫ともつかないおぞましい鳴き声を上げ続けている
どうやら完全に気付かれてしまったらしい
ことり「ひうぅぅぅぅ……」
凛「こわいにゃー!!」
にこ「に、にげなきゃ……」
にこ「二人とも何してるの! 懐中電灯持って! 立ちなさい! 逃げるわよ!!」グイ!
ことり「にこちゃん……」
にこ「あれがなんなのかわからないけど、ろくでもないモノなのは分かるわ。だから逃げるの!」
にこ「きっと近づけたらまずいことになるに決まってるわ! ほら、早く!」
凛「わ、わかった!」
ことり「荷物は?」
にこ「命のほうが大事でしょ! 後でも取りに来れるから!」
53:
.
それぞれ持ち寄った懐中電灯を手にとって、テントを飛び出した
目指したのは、夕食を食べたときの炊事場だった
ここなら取り敢えず明かりがあるため、やや安心できる
ことり「ハァハァ……あれ、あれなんだったんだろう……」
にこ「ゼェ、ハァ……そんなの、にこが知るわけ無いでしょ……」
凛「ひ、膝が震えて立てない……」
にこ「どうしよう。きっとまだ完全に逃げ切れてない」
ことり「ええ! そんなぁ……」
凛「あんなの見たこと無いニャ。まだ鳥肌が……」
にこ「他のメンバーも起こして逃げたほうがいいかも……」
ことり「でもどこに? ここ山の中だよ? バスだって今の時間通ってないし……」
にこ「…………そうよ! 管理人さんが居るウッドハウスがあったじゃない。あそこに逃げ込めば」
凛「名案ニャ! ここから近いのは絵里ちゃんたちのところだよ」
54:
.
―ペチペチ……えりちゃーん、おきてー
絵里「ん……ん? な、に? ……まだ夜じゃない……ふあぁ?」
にこ「寝ぼけてる暇なんてないわ。逃げるわよ、絵里!」
絵里「に、にげ? なによ?、にこのほうが寝ぼけてるんじゃないの?……」
にこ「この声が聞こえないの?」
絵里「こえ?」
――ァ"ァ"ァ"ァ"オ"……
絵里「…………………」
にこ「わかった?」
絵里「く、クマかな、なにか、でしょ。怖がる必要ないわよ」
花陽「それはそれで怖いよ……」
絵里「花陽も起こされたの?」
55:
花陽「う、うん。でも絵里ちゃん。本当に避難したほうがいいよ。あの鳴き声ずっと聞こえてくるし」
花陽「それに心なしかこっちに近づいてきてる気がするの」
海未「えええええええ絵里。ははははは早く、ひひひひなななな……」ガタガタ…
花陽「海未ちゃん落ち着いて……」ナデナデ
絵里「……どこに避難するの?」
ことり「ご挨拶した管理人さんの、あのウッドハウスだよ」
凛「丈夫そうだし、大っきいからみんなで行ってもきっと大丈夫だよ」
にこ「あなた達は先に行って、状況を説明してきて。ことり、説明お願いね」
ことり「うん」
にこ「にこと凛で、希たちのテントに声掛けに行くわ」
花陽「く、暗いから足元気を付けてね……」
凛「凛に任せて。夜目がきくから!」
56:
にこ「希たちのテントがある場所に行くには、炊事場を通らなきゃいけないんだけど……」
凛「もしかしたら居るかも知れないニャ……」
炊事場は四つの道につながっている
一つはにこたちがいた、川に近いテント場に続く道
その隣が、いま二人が潜んでいる道の、絵里たちがいたテント場に続く道
右隣がテントではなく、山歩きの散策道
そして、今いる丁度向かい側が希たちの居るテント場へ続く道となっている
四方に枝分かれしており、その中央に炊事場があるのだ
57:
.
にこ「見える?」
凛「いない、かも」
にこ「まあ、あんなに大っきいから、見逃すことはない、よね」
凛「もしかしたら真姫ちゃんたちの方に行ってるのかも……」
にこ「そうね。急ぐわよ」
――…チッ……チッ……イトッ……シャ……ノウ……
.
58:
にこ「希!」
希「にこっち。そんな顔してどうしたん。身体もドロドロやし」
凛「無事だったニャ?……。ところで、みんなどうして外に出てるの?」
穂乃果「希ちゃんが怖いって言うから……」
真姫「突然起こされて眠いわ……」
にこ「怖い?」
希「うん……。なんか雰囲気が凄く淀んでて、猛烈に嫌な予感っていうのが」
にこ「普段からスピリチュアル言ってないわね」
希「ど、どう意味なん?」
にこ「起こす手間がはぶけたってこと。希の感は当たってるわ」
にこ「理由は後で話すから、今は私達についてきて」
穂乃果「……真姫ちゃん」
真姫「……穂乃果」
穂乃果「なんか、良く分かってないのって私達だけ?」
真姫「置いてきぼり感があるわね」
59:
管理小屋 ウッドハウス
それから程なくして、にこたちは管理人がいるウッドデッキハウスに辿り着いた
道中、例の不気味な鳴き声が聞こえたり、むせるような獣臭が漂っていた以外、特に何も起こらなかった
ことりたちから説明されたからか、猟銃を肩から下げた管理人がにこたちを出迎えた
管理人「話しは聞きました。さあ、早く中へ」
ウッドハウスはなかなか大きく、そして頑丈そうだった
頑丈そう。そんな感想が出てきたことに、にこは心のなかで笑った
普段ならそんなところなど気に留めることも、考えることもしないのに、
今、危機的状況にあって、そういうところに目がいった事がおかしかったのだ
にこ(にこ、あれが襲ってくる前提でモノを考えるのはやめなさい……)
自分が思っている以上に、恐怖を感じているのだ
ちょっとした事で正気を失うような、そんなギリギリの状態だった
60:
絵里「希、穂乃果、真姫。無事だったのね」
穂乃果「あ、絵里ちゃん」
真姫「無事も何も、一体全体なにが起こっているのかわかってないんだけど」
絵里「実は、私もなの。にこたちに起こされて、変な声が聞こえてきたから、ここに避難するように誘導されて……」
にこ「全員ちょっと集まってもらえる? 私たちの方から何が起こったのか説明するわ」
絵里「あんな顔のにこなんて初めて見る……」
希「うちは一度だけ。一年生のときに」
61:
ちょっと広い談話室
管理人を入れて10人が入るのがやっとという感じの広さだった
各々、それぞれ手頃なイスや場所を見つけて、にこを中心に座った
にこ「私達が置かれている状況なんだけど、ちょっと信じ難い話になるけど聞いてちょうだいね」
にこ「風が強くなってきた時間帯。だいたい10時くらい? その辺りから、なにか周りの様子がおかしくなったの」
にこ「でもその時は風が強いなーぐらいにしか思ってなかったわ」
ことり「風が弱まってくる11時頃なんだけど、私達、へんな鳴き声を聞いたの」
―絵里「それって道中聞いた、赤ん坊みたいなやつかしら」
凛「そうだニャ。凛たちは、最初猫の鳴き声かと思ったんだけど、でもちょっと様子がおかしいねって話してたんだ」
にこ「突然のことで固まってたら、近くの川の方からなにか重いものを引きずるような音が聞こえてきたの」
―海未「アワワワワワ……」ガタガタ…
62:
ことり「そうしたら、今度はもうちょっと近い所で鳴き声が聞こえてきて……」
凛「お腹のそこから震えるような鳴き声だったニャ……」
にこ「それで、何が起こってるのか確認しようと外を覗いたら、ナメクジのような、芋虫のような、おっきい何かが動いているのがわかったわ」
にこ「月に照らされてた所しか分からなかったけど、目は触角の先についてて三つあって、その真中にポッカリと穴が開いていた」
にこ「全身は針金みたいなごわついてる毛に覆われていて、初めて見るなにかだったわ……」
ことり「そこで、運が悪いことににこちゃんと目があっちゃって……」
 
――…ァ"……ァ"……ォ"……
「――!?」
63:
にこ、ことり、凛が説明している最中に、ここから遠くの方で例の鳴き声が聞こえてきた
半信半疑だった者も、船を漕いでいた者も、全員がハッとして耳を澄ました
談話室は水を打ったように静まり返った
静寂が耳に痛い。だれも音をたてる者はいなかった
しばらくして
穂乃果「…………」カタカタ…
真姫「…………」カタカタ…
絵里「と、遠ざかってるのかしら……?」ギュギュ
希「そ、そうみたい、やね……」ギュ
海未「苦しい……怖いけど苦しい……」ムギュ
68:
.
にこ「まあ、どういう状況か分かってくれた?」
穂乃果「はいぃぃ……」
ことり「管理人さんと相談したんだけど、日が出てからみんなでいったん猟友会の皆さん合流して、それから荷物の回収をすることになりました」
ことり「それまでここで休んでいいですよ、って管理人さんが言ってたよ」
にこ「その管理人さんは?」
ことり「玄関のほうでワンちゃんと一緒に待機してるって」
にこ「絵里、希。海未が窒息するから放しなさい。一応年長者なんだから、管理人さんに挨拶に行くわよ」
絵里「え、わ、わかったわ」
希「うん……」
希「そういえばにこっち……」
にこ「どうしたの? なんだか弱々しいわよ」
希「実は……」
69:
にこ「日中怪しい場所を見つけた?」
希「そうなんよ。丁度、今のような雰囲気がある場所で、もしかしたらあそこが巣だったのかも……」
にこ「そんなこと……。考え過ぎよ。希らしくない」
希「……その後なんやけど、滝に突き当たって、そのまま川沿いに下ってにこっち達がいるテントにいったんや」
にこ「…………」
希「も、もしかしたら、うちがにこっちたちの所にあれを連れてきたんやと……」
にこ「バカ。何言ってるのよ。そんなのどこにも関連性がないわ。ただの想像よ」
希「でも……」
にこ「しつこい。勝手に罪悪感感じないで。……だれも悪い人なんていないの。わかった?」
にこ「次言ったら一週間にこにーの刑だから」
にこ「それに、そういうこと考えるより、いつもの希に戻って、不安がってるみんなをまとめるくらいやりなさいよ」
希「にこっち……うん!」
絵里(にこにーの刑ってなにかしら……)
71:
.
疲労と緊張のためか、程なくして彼女たちは眠りについた
それは浅い眠りだったが、身体を休ませるには十分だった
このウッドデッキを訪れたのがだいたい0時やや過ぎ
全員揃ったのがそれから30分後
休み始めたのがだいたい1時を過ぎたあたりだった
途中で起こされたこともあって、眠りに落ちるのは早かった
他に部屋もあったのだが、不安と恐怖で談話室で集まって休むことを決め、お世辞にもアイドルとは言えないような雑魚寝を繰り広げている
.
72:
.
全員集まって無事を確認したことで、気が緩んだのだろうが
夜はまだ終わらない
.
73:
深夜3時
管理人「……」ウツラ
― ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ……
管理人「…………」ウツラ
― ァ ァ ァ ァ ァ ァ……
管理人「……うあ?」
 
― ア" ァ" ァ" ァ"……
管理人「き、き、き、来たっ……!」
74:
―ドタドタドタドタドタ……!
管理人「み、皆さん、起きて下さい!」
小声で出せる、限界ギリギリの大きさで、談話室で寝ているみんなを起こそうとした
一番早く反応したのは、入り口近くで寝ていた花陽と凛だった
花陽「あ、あの。どうかしましたか?」
凛「うーん……」
管理人「あの、皆さんを起こして下さい。外に、アレが……」
―ァァァァァアアァァ……
――ドンッ!!
花陽「!?」
凛「!?」
管理人「い、入り口から……」
75:
管理人「とにかく起こしてくださいね! 私は玄関に戻ってますから!」
花陽「は、はいぃぃぃ……!」
凛「あ、アレがくるの……? 逃げ切ったんじゃなかったの?」
花陽「凛ちゃん落ち着いてっ。取り敢えず言われたとおりにみんな起こそう?」
凛「うん……」
とは言っても、外の騒がしさに既に何人かが起き上がって来ていた
外からは絶えず赤ん坊のような鳴き声が聞こえてきている
さっきの衝突音からして、既にすぐ横にいるのだろう
76:
にこ「な、なに……! まさか……」
穂乃果「……う、うみちゃん……」
海未「ほほほほほのののの……」
にこ「管理人さんは?」
花陽「玄関に戻っていったよ」
にこ「起きている人はついてきて。靴を取りに行くわ」
にこの考えはこうだった
もしここが壊され、侵入されることになったら逃げる必要がある
山道を逃げるには、素足ではほぼムリだろう
逃げるためには靴が居る。そう考えての判断だった
にこ「凛、花陽。ついてきてくれる? 海未も穂乃果も腰が抜けちゃってるみたいだから」
花陽「わ、わかった。がんばる……」
凛「凛、もういやニャ……」
にこ「泣き言なら後でいくらでも聞いてあげるから、行くわよ」
78:
玄関
すぐにダイニングにつながっているため、かなりのスペースがある
扉の真向かいに、膝立ちになって猟銃を構えている管理人と、その傍らで唸り声を上げている管理人のペット犬がいた
扉の向こうでズリズリと、なにかを引きずる音が聞こえてきている
アレがいるのだ
管理人「……さっきまでしつこいくらい叩かれてましたよ。今は様子を伺っているみたいです。玄関口から移動しないようですが」
管理人が玄関にやってきた三人に早口で状況を説明した
にこ「じゃあ、今は近づいても大丈夫ってわけね? あの、下駄箱から靴をとっても……?」
管理人「……ああ、いいよ。私のもとってもらえますか」
三人は外に気付かれないように抜き足差し足で戸口に近付いていく
にこが先頭で、間に凛が入り、バケツリレーの要領で花陽に受け渡していく
79:
這いずる音、荒い息遣い、扉越しでもわかる獣臭にも似た異臭
いつ察知されるかわからない恐怖に、にこたちの心臓は異常なほど早く動いた
管理人の銃を握る手にも力がこもる。なにかがあった場合は覚悟を決めなければならない
その使命感が、恐怖で握りつぶされそうな心を引き止めていた
にこ(これで全部よ)
凛(かよちん引き上げるニャ)
花陽(わ、わかった?)
にこと凛はその場に残り、花陽に靴を入れた袋を渡した
花陽「じゃあみんなに渡してくるね」
81:
にこ「……静かね」
凛「そういえば。音も声も聞こえなくなったニャ」
管理人「諦めた、のかも……」
 ――イ……トッシャ、ノゥ……ッチ……チッ
         ――イ…トッシャ……ノゥ…ッチ…チッ…
  ――イトッ…シャ…ノゥ…ッチチ…
        ――ッチッチ……イトッシャ…ノ、ウ
「!?」
82:
.
―ドンッ!
にこ「……」ゴクリ…
―ドンドンドンドンドンッ!!
凛「……」ギュゥ?
にこ「……」ギュ
扉を破らんとする勢いだった
扉だけではない、家全体を揺るがすような衝撃だった
83:
全員の緊張が頂点に達した時、管理人が声を張り上げた
管理人「だれだッ! なんの用だッ!!」
恐怖と緊張に耐え切れなかったのだろう。声がやや上ずり、身体は震えていた
管理人が怒鳴ると、扉を叩く音がプツリと止んだ
その場にいる全員が身動きを取れなかった
一分……二分……
一秒一秒がゆっくり進むようだ
三分が経過した時……
――ア"……ケ、テ……
84:
.
管理人「うううぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
恐怖が頂点に達した時、人はどんな行動をとるのか
その人の性格や状況に左右されるが、大抵の場合、恐怖の対象を排除しようとする
この管理人もそうだった
猟銃が火を吹き、射出された弾丸は扉を粉砕して、その向こうにいる生き物に命中した
――ッチャギャアアギャァァァァァア"ア"ア"ア"ア"―――――ッ!!
夜をつんざくような叫びが、にこたちの鼓膜を揺るがした
.
85:
.
砲身から漂う火薬の臭いに混じって、腐ったドブ水のような臭いも漂っていた
発砲によって耳が痛み、断末魔によって肝を潰していた
誰も動けなかった
.
86:
ようやく動き出したのは、それから一五分後のことだった
よろよろとした足取りで、管理人がドアに近付き、あいた穴から外を確認していた
管理人「……もう、いないみたいです」
その証拠に、夏の夜らしい虫達の鳴き声がほのかに聞こえ始めていた
それでも誰も安心することは出来なかった
あいた穴を修理する管理人を手伝う組みと、逃げるために土足で汚してしまった談話室を掃除する組みに分かれて行動した
87:
午前四時半
夜明けだ。小鳥のさえずりが聞こえてくる
この世に生ある者達が活動する時間がやってきたのだ
談話室で固まって眠る彼女たちの顔にも、ようやく安らぎが訪れる
96:
.
また、暑い一日が始まる……
.
97:
おわりですん
98:
エピローグ
にこ「あれから管理人さんが猟友会に電話をして応援を呼んだわ」
にこ「三時間くらいで、猟銃を持ったおじいさんたちが来てくれた」
にこ「おじいさんたちと一緒に、荷物を取りに行ったんだけど、にこたちの荷物だけ、何かに潰されたようにぺちゃんこになっていたわ」
にこ「そして、汚臭。一応袋詰めにして持ち帰って選択したんだけど、臭いが全然落ちなくて結局処分したわ……」
アレが何だったのか、聞いてみたが誰にも分からなかった
だが、アレは何度も存在を確認されていたらしく、襲われたことを話したら応援に来た猟友会のメンバーは驚いていた
にこ「私が一番怖いと思ったのは、遭遇した時は獣の鳴き声しか出さなかったのに、
 ウッドハウスに逃げ込んだ段階で、意味はわからなかったけれど、人語を解した事のほうが怖かったわ」
にこ「あのまま管理人さんが撃って追い払わなければ、どこまで『成長』していたか考えると……」
にこ「やめましょう。もう思い出したくないの」
99:
にこ「責任は感じるわよ。自分で言い出した企画が、まさかあんなことになるなんて思ってなかったし」
にこ「それに、希にも。落ち込ませちゃったし……」
にこ「でも、当分山も森も行きたくないわ。次はやっぱり海よね、海!」
にこ「そういえば絵里達が海の近くで出来るバイトを見つけたって言ってたわね……」
にこ「みんなで働きながら海を、夏を満喫するのも悪く無いわね…」
にこ「よし、海行くわよ海っ!」
fin
103:

10

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