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サウザー「渋谷凛籠絡計画」


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1:
☆注意☆
・このSSは「アイドルマスターシンデレラガールズ」
と「北斗の拳イチゴ味」要素を含みます
・キャラ崩壊
・前回までのあらすじ↓
神谷奈緒と北条加蓮が入社したのはいいけど、渋谷凛ちゃんがいないから、
サウザーの独断で大食いタレントとしてデビューさせるぞ、みたいな☆
2:
北斗の拳イチゴ味
渋谷凛
4:
前作↓
サウザー「神谷奈緒、北条加蓮……?」
前回の奪還計画↓
サウザー「渋谷凛奪還計画」
6:
前作↓
サウザー「シンデレラガールズ 7610プロ」
サウザー「渋谷凛奪還計画」
【安価】サウザー「モバマスアイドル獲得に向けて制圧前進あるのみ!」
サウザー「白菊ほたるの死兆星と拳王ラオウ」
‐‐‐
前作?↓
サウザー「神谷奈緒、北条加蓮……?」
8:
(7610プロダクション 会議室)
シン「サウザー、今度は俺達に一体何の用だ?」
ユダ「下らん話をするようならば、即座に帰らせて貰うからな」
レイ「どうせ生産性の無い話なのだろう…馬鹿馬鹿しい」
サウザー「フン…貴様ら、毎度毎度招集に応じるのはいいが…」
サウザー「反応がワンパターンだな。もう少し捻って変化を付けろ、変化を」
サウザー「一発屋の芸人か、貴様ら?」
シン「このッ…偉そうに…!」
サウザー「偉いんですが何か?」フフーン
ユダ「おいシン、やめろ! 時間と体力の無駄だ!」
レイ「…早くコイツに用件を喋らせてを終わろう。それが精神衛生上、一番効率がいい」
7610…「ナント」、つまり南斗と読む。決して北痘神げんこつと対を為す拳法の流派の総称ではない。
12:
サウザー「何を気だるそうに言っている。今日は貴様らにも大いに関係があるのだぞ?」
レイ「何だと…?」
ユダ「まさか…南斗DE5MENの活動再開とかではないだろうな…」
サウザー「それもいいが…」
サウザー「今回の議題は、神谷奈緒と北条加蓮についてだ」
レイ「…!」
シン「あの二人か…」
ユダ「(確かに…元はと言えば、彼女らをこのプロダクションに押し留めたのは俺達の独断だからな…)」
レイ「(悔しいが…今回は話を聞かずにはいられないようだな)」
サウザー「フフフ…もう気安く帰るなどとは言えまい。姿勢を正して拝聴するがいい」
14:
サウザー「二人の処遇だが、大食いタレント路線で行くと言ったら猛反発されたから、一応アイドル路線も検討してはみるが…」
レイ「何故希望を叶えようとしないんだ。以前はあれだけスカウトに取り組んでいたのに…」
サウザー「まあ聞け。以前も言ったが、あの二人だけでは決定的な何かが欠けている」
サウザー「例えるなら…折角の酢豚なのにパイナップルしか無いようなカンジじゃん?」
シン「お前、毎回毎回その例え方が辛辣過ぎないか!?」
ユダ「二人だって我らを見てアイドルを志してくれたのに、あまりにも失礼だろう!」
サウザー「少なくともユダには気を遣ってたと思うわ。だってお前ナルシストだし…」
レイ「ナルシストとか、アニオタに並んで女子から距離を置かれる性格ナンバー1だしな」
シン「ああ…それは言えてるな」
ユダ「き、貴様ら…!」ビキビキ
15:
サウザー「仮に奈緒と加蓮をアイドルとして売り出すなら、クールな路線であろうな…」
レイ「うむ。概ね同意だ」
サウザー「しかし、彼女ら2人だと如何しても締りが悪い。だからもう1人、そこにクールオブクールなアイドルを加える事が出来たならば…」
サウザー「…彼女らは全国のトップアイドルユニットに席巻する実力を発揮できるであろう」
ユダ「それが、お前がしつこく狙ってる…例の…」
シン「渋谷凛だな?」
レイ「また彼女か…」
シン「こんな馬鹿につけ狙われて…彼女には同情すら覚えるな…」
ユダ「(渋谷凛に変装した奴が同情とか言ってるぞ…)」
16:
サウザー「まあ分かり易く三人の写真を組ませて、渋谷凛を加えることで如何にチームとしての一体感が出るか説得力を持たせると、こんな感じだな」トン
シン「おまっ…!?」
レイ「だからこういうの失礼だろッ! 特に左がッ!!」
サウザー「フハハハハ!」
ユダ「346と7610で差別し過ぎだろ! そろそろ誰かに本気で怒られるぞ!!」
シン「お前絶対渋谷凛のファンに殺されるぞ!!」
レイ「何!? お前、渋谷凛が欲しいんじゃないの!? 嫌悪してるの!?」
サウザー「俺が嫌悪するのは北斗一派を含む346プロダクションのみだ」
レイ「ていうかお前、奈緒と加蓮をアイドルにさせる気満々だろッ!!」
ユダ「しかも何なの右上のお前のキメ顔! 超絶不快なんだけど!」
サウザー「フフフ…全ては渋谷凛が我が7610プロに所属すれば済む話よ」
シン「一回失敗したのだから諦めろ! しつこいと彼女からも本気で嫌われるぞ!」
サウザー「そもそも失敗した最大の原因は、貴様の女子力が足りなかったからであろう、人のせいにするなッ!! 小学生かッ!!」
シン「黙れ!! どう考えても根本的な貴様の作戦が荒唐無稽だったのだ前回は!!!」
19:
サウザー「さて、そろそろ今回の本題に入ろうか」
シン「くそッ…何だこの中途半端な気分は…!」
レイ「今ので一層、俺は純粋に渋谷凛を応援したくなってきたぞ…」
サウザー「さあ、今回の計画は題して『渋谷凛籠絡計画』だ。橘、説明を頼むぞ」
ありす「はい。では僭越ながら、この橘ありすが計画の全容を…」
シン「待て、また前回と似たような計画ではあるまいな?」
ありす「…?」
20:
橘ありす(商品企画課兼、宣伝広報課兼、調理課兼、北斗の拳イチゴ味販売促進課)
21:
サウザー「フフフ…安心しろ。前回失敗した貴様は今回は戦力外だ」
シン「だから、前回は計画自体に無理があり過ぎたのだ! 女装で替え玉など無謀すぎる!!」
サウザー「だーからー! 貴様の女子力が足りなかったせいだと言っているだろう!!」
シン「自分の非を認めん奴め…!」
サウザー「橘よ! 貴様の思うところを言ってみろ!!」
ありす「わ、私ですか?」
ありす「そうですね…」
サウザー「…」
シン「…」
ありす「…計画の段取りに不備は無く、シンさんの女装も目を見張るものがありましたが、……それでも失敗したのは、やはり敵の本拠地で作戦を決行した事ではないでしょうか…?」
サウザー「…ふぅん」
シン「成程…そうかもな」
ユダ「(どちらの肩も持ちながら、微妙な落とし所に着目した…)」
レイ「(賢いな…この子…)」
22:
サウザー「橘の明察どおりだ。前回の作戦は渋谷凛を欲するあまり、我々が前進し過ぎて敵の領域に足を踏み入れ、不覚を取った事が敗因だ」
ありす「今回は反省し、逆に渋谷凛を私達の行動領域まで誘い込むのです」
レイ「しかし…どうやるのだ?」
ありす「渋谷凛さんは実家で生花店を営んでいます。彼女の従順な職人姿勢を利用し、この7610プロダクションに花を届けて貰うのです」
ユダ「…イマイチ話が見えて来ないな…」
シン「花を届けさせてどうする。そこから茶にでも誘って、移籍を説得するのか?」
レイ「彼女の冷静な性格的に、そう簡単に誘導トラップに引っかかるようにも見えんが…」
サウザー「フフフ…ならば、奴が喰いつく餌を撒けばいいだけの単純な話だ。俺に必勝の策がある」
橘「はい。今回の作戦は、我が7610プロダクションの中で最も渋谷凛さんと関わりがあった人物を囮にします」
23:
サウザー「その必勝の策の名は、名付けて『You're stars shine on me』!!」
レイ「それって…」
ユダ「『私の上で星々は輝く…』?」
シン「…星?」
レイ「というか…関わりのあった人物とは…」
ガチャ
シュウ「すまん、サウザーに頼まれていた用事を済ませていたら遅くなった」スッ
レイ「おお、シュウか…」
バン!
サウザー「ハアッ!!」ズアッ!
シュウ「っ!?」
サウザー「喰らえシュウ様!! 極星十字拳!!」ズバッ
シュウ「ぐおおっ!?」ズシャッ
レイ「!?」
シン「貴様!! いきなりシュウに何を…!」
ユダ「血迷ったか、サウザー!」
24:
シュウ「」
サウザー「フフフ…見ての通り、シュウ様には入室即御就寝願ったわけだが…」
レイ「貴様…っ!」
サウザー「今回の作戦、ずばり仁星のシュウ様にはまさに星となり、聖帝十字稜の高みから我々の作戦遂行を見守っていて貰おうではないか…!」
シン「それって…」
ユダ「オイ、まさか…」
25:
‐‐‐
(同時刻 朝)
(渋谷凛の実家、生花店『Flower Shop:SHIBUYA』(アニメ設定))
凛「…」
凛「くぁ…っ」
凛「…」ゴシゴシ
凛父「おい凛、欠伸をするな、仕事中だぞ?」
凛「はーい…」
凛「だって…暇なんだもん…」
凛「今日から5日間、折角連休なのに…」
凛「……」
凛「くぅ…」
27:
ジリリリリリリリリッ!
凛父「りーん! 電話受けてくれー!」
凛「はーい」ガチャ
凛「はい、お電話ありがとうございます、『Flower Shop:SHIBUYA』です」
ありす『あの……葬儀用の花の注文なのですが…』
凛「(…葬儀用? 直接卸売に注文する客なんて珍しい…)」
凛「はい、承ります。日にちはいつに致しましょう?」
ありす『明後日で。配達でお願いします』
凛「明後日ですね。献花、供花、スタンドや花束など形状、また種類も要望などありましたら…」
ありす『種類…』
凛「故人のお葬式では、百合、蘭、カーネーションなど白や薄紫などの淡い色合が特に好まれますね」
ありす『では…』
『(………)』ヒソヒソヒソ
凛「……」
ありす『……薔薇で。血のように真っ赤な』
凛「ば、薔薇ですか!?」
ありす『50万本程用意して下さい』
凛「50…」
凛「…ん!?」
凛「50万本!?」ガタッ!
37:
‐‐‐
(2日後 7610プロダクション 会議室)
サウザー「さて、作戦コード『You're stars shine on me?シュウ様星になる』を確認する。小型無線も各自忘れるなよ」
サウザー「本日、聖帝十字稜にてシュウ様の葬儀を執り行う。聖帝軍2000人が集う、大型葬儀だ」
サウザー「午前10時に、渋谷凛の生花店含めた業者の一団が2000本の薔薇を携え7610プロダクションを訪れる」
レイ「流石に50万本は無理だったか。まあ当然の結果だが」
シン「というか注文の時点で、冷やかしと間違えられなかった事が奇跡だな」
サウザー「薔薇は献花だ。聖帝十字稜の頂上にて拘そ…永眠しているシュウ様に、1人一本ずつ添えていく」
ユダ「十字稜を薔薇の赤で染めるわけか…悪趣味だな…」
38:
サウザー「この会議室を本部とし、ユダと俺の二人が待機する」
サウザー「シン、貴様は業者が到着し花を搬入し次第、頃合いを見計らい、渋谷凛以外の業者を渋谷凛に悟られずに気絶させろ」
サウザー「レイが勧誘する時間を少しでも稼げ」
シン「フン…今回は比較的楽なポジションだな」
サウザー「レイ、貴様は渋谷凛を規定時刻に例のポイントに誘導しろ。そこが勝負の分かれ目だ」
レイ「逆に今回、俺はかなり過酷な役目だな…」
サウザー「さあ、各自存分に役割を果たし、今度こそ悲願を成し遂げようではないか!」
レイ「…今回きりだぞ」
ユダ「シュウの睡眠薬も効力に限りがある。早いうちに片付けてしまおう」
シン「そうだな。取り敢えず仮にでも奴の首を縦に振らせれば成功なのだ。さあ行くぞ!」
40:
‐‐‐
(20分後 7610プロダクション正門)
凛父「お、あそこだな」
凛「じゃあ軽く挨拶してくるね」バタン
リハク「お、来ましたな…」
レイ「ああ…」
凛「おはようございます。ご注文の薔薇を2000本お持ちしました」
レイ「ああ、御苦労さま」
凛「トラック2台分と少し量が多い反面、従業員が4人と少ないのでお時間がかかると思いますが…」
レイ「構わん。我が社の人間にも手伝わせよう」
凛「ありがとうございます」
凛父「どうもお世話になります。では、早搬入しましょうか」
レイ「ああ、では…」
レイ「女の子の……君は、俺と一緒に、建物まで付いてきてくれ。お父様方はそちらの男と一緒に、十字稜の麓までの運搬をお願いしましょうか」
リハク「ささ、案内しましょう。こちらへ」
41:
‐‐‐
(会議室)
サウザー「よし、上手くいったな」
ユダ「リハクには生花業者と運送車の男共を任せ、時を見計らった後、近くの物陰に潜んでいるシンに合図を送り、勧誘の水を差さないようにするために男共を気絶させる…」
ユダ「レイに引率された渋谷凛は、建物の前で運び出される棺と遺影に御対面…と」
サウザー「フフフ…それが以前街角で自分とトラブルを起こした人物だとは思うまい…!」
サウザー「『7610プロダクションの名誉会長であるこの老人は、以前、何者かにぶつかり躓いた拍子に骨折をして、それから寝たきりの生活になり、肺炎で死亡…』」
サウザー「『名誉会長は多くのアイドルから慕われていたが、寝たきりになってからは経営に殆ど携わる事は無くなり…』」
サウザー「『そのため、残った会長派だけでは反会長派の暴走を抑えられず、プロダクションは内紛瓦解』」
42:
サウザー「『内紛と会長の逝去も相まって、多くのアイドルがプロダクションを去り、もはや経営は風前の灯。歯車が狂った原因は全て、その時の謎の事故』……というシナリオだ」
サウザー「悲哀と同情を誘うための、レイの迫真の演技に期待したいところだな」
ユダ「…」
ユダ「…お前さぁ…」
サウザー「うん?」
ユダ「前回のシュウとの衝突シナリオもそうだけど、よくもまあこんな胸糞悪い脚本を考えつくな」
ユダ「相手はJKだぞ? 純真なメンタルをごりごり削って…罪悪感とか無いワケ?」
サウザー「今の時代、JKに純真純潔を求めるなどお笑いもいいとこだ」
サウザー「子供なんてのはいつでも嘘をつくし! 絶対に信用するべきじゃないし!」
サウザー「だから我が聖帝軍は子供を奴隷とし労働力として扱っているんだしっ!」
ユダ「…お前何? 子供に対してどんなトラウマを抱いたらそんなに思想が屈折してしまう訳?」
43:
‐‐‐
(7610プロダクション エントランス)
凛「(まさか依頼先があの7610プロダクションだったとはね…)」
凛「(7610とはイベントとか一緒にやったことあるけど…あんまり関係者の顔覚えてないや…何でだろう…?)」
凛「(なんか殆どの人が着ぐるみとか着てたからかな…)」
凛「(ていうか…ここで少し待ってろって言われたけど、あの人、まだかな?)」
凛「…ん?」
側近A「おい、この棺の中に会長が眠っていらっしゃるのだ! 落とすんじゃあねえぞ!」
44:
側近B「あぁ…会長…ッ…最近までお元気だったのに…何で急に…ううっ…」
側近C「泣くな! 例えアイドルの半分以上が辞めても、俺達でこのプロダクションを守って行くんだ…!」
凛「(確か、葬儀は名誉会長が亡くなったとか…)」
凛「(なんか複雑な事情でもありそう…)」
側近D「ああ…この遺影を見ていると、会長のお元気な姿が浮かんできて……うぅっ…」
凛「(遺影…)」
凛「…」
凛「んん…?」
 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
凛「!!!」

45:
凛「(あ、あのおじいさんは…!!)」
レイ「やあ、遅くなって済まない。では、その花は遺影の近くに置くから、ついて来て…」
凛「あ、あのッ!」
レイ「ん?」
凛「い、いえ…あの、失礼なことをお聞きするかもしれないんですけど…」
凛「亡くなった方…名誉会長…って…」
レイ「!」
レイ「(喰いついた…! よし、聞かれていない事でも何でも喋って、こっちのペースに引き込むか…!)」
レイ「ああ、我がプロダクションの名誉会長だがね…最近亡くなったんだ」
レイ「本当に元気で、高齢なのに倒立ジャンプとか脚で岩とか切り裂いたりとか出来るハイパージジイだったんだが…」
レイ「……」
レイ「ほんの少し前に、買い物帰りに転んで、足の骨を骨折してしまってね…」
凛「(そ、それって…!!)」
レイ「それが遠因となって、寝たきりになって肺炎を罹って……ポックリ逝っちまったよ」
凛「……」
48:
レイ「会長は多くの社員とアイドルから慕われていたんだが、会長が寝たきりになって経営から疎遠になっちまったのを好機に、水を得た魚の様に反会長派の聖帝という奴が会社を牛耳ってね…」
レイ「その横暴っぷりに辟易して、半分以上の人間が会社を去っていった。もうこのプロダクションも終わりさ。有力なアイドルが根こそぎ出て行っちまった…」
レイ「会長さえ、いれば…会長さえ…生きていれば…ッ」
レイ「うウウ…ッ……うあああああああッッ!!!!」ガクッ!
レイ「畜生ッ…! ちくしょおおおッ……ッ!!」ダン!
レイ「う”う”う”う”う?????ッ」ダンダン!
凛「……ッ」
‐‐‐
ユダ「wwwww」
サウザー「やべーwwこれはやっべーわwww」
ユダ「会長、生きてますからwww」
サウザー「はーっ、はーっ…ww」
サウザー「妹とマミヤが捕われてる時以上に取り乱してるぞアイツwww」
49:
レイ「ッ…す、済まない…取り乱してしまって…」
凛「あ、ああ…いいえ…お構いなく…」
レイ「…」
凛「あ、あの…」
凛「良ければ、私にも一輪、会長さんのために献花を添えさせてくれませんか?」
レイ「! ああ…それは構わないが…」
凛「お願いです…私にも、贈らせて下さい…」
レイ「…分かった。会長が眠る棺は、聖帝十字稜の頂上まで運ぶ。そこで順番を待って、花を添えてくれ」
‐‐‐
凛『お願いです…私にも、贈らせて下さい…』
サウザー「よしッ! ここまで来たらあと一押しだ!」
ユダ「もう少しだけ情を誘う話をすれば、イケそうだな…!」
サウザー「あとは邪魔が入らないように父親と従業員と運送業者を遠ざけるだけだ!」
サウザー「シン、貴様の出番だぞ!」
シン『案外早かったな』ガガッ
サウザー「あとはリハクの合図に従え! 男共を気絶させ、足止めしろ!」
51:
‐‐‐
(7610プロダクション 正門)
凛父「よし…と。次の運搬で全て完了です」
リハク「なるほど…では皆さん、少々お待ちを…」
業者A「? 分かりました…」
リハク「(よし…シン様、私は下がります。後は頼みます…)」ヒラヒラ
凛父「何かありましたか?」
リハク「いえ、最後に花スタンドにも薔薇を数本飾りたいのです。今スタンドを持ってきますので、皆さんはここにいて下さい」
業者B「はあ…」
シン「(よし…よくやったぞ)」
シン「あとは任せろ…」コソコソ
業者A「それにしても、ピラミッドの頂上に埋葬なんて、変わった葬儀だよ…」
業者B「余程の金持ちなんだろうな」
シン「(チャンスだ…上手い具合に人員がバラけてる…これならまずバレはしまい)」コソコソ
シン「(軽く当て身をするだけだ…!)」コソコソ
52:
シン「(今だッ…!)」ビュオッ!
ガシッ!
シン「!?」ググッ
シン「な、なにぃ!?」
ケンシロウ「……」ググッ
ケンシロウ「シン、貴様…今この者達を背後から襲おうとしたな?」
業者A「!!」
業者B「な、なんだお前らぁ!!」
シン「け、ケンシロウ!?」
凛父「おい、何があった?」スッ
凛父「!」
凛父「貴方は…凛のプロデューサー…! 何故ここに?」
シン「な、何故ッ!?」
53:
ケンシロウ「凛に火急の用件があってな…。俺は携帯電話は上手く使えんし、直接家に出向いたんだが…」
ケンシロウ「家に残っていた母親に尋ねたら、凛がここにいると聞き足を運んだが…」
ケンシロウ「すると何だ、一般人が卑劣漢に襲われそうな現場を目にしたのでな…」ググッ
凛父「成程、凛に用事でしたか…」
業者A「そ、それよりもコイツっ!」
業者B「このロン毛、俺を襲おうとしてたって…!?」
シン「(そ、想定外のアクシデントだ…!!)」
‐‐‐
サウザー「ハァ!?」ガタッ
ユダ「け、ケンシロウだと!? あいつ、なんてタイミングで来やがる…!」
サウザー「死神かアイツ!? マズイ! 急ぎ渋谷凛の首を縦に振らせねば…!」
サウザー「レイ、非常事態だ! シンがケンシロウに捕まった! 早く渋谷凛を堕とせッ!!」
レイ『な、なにィ!?』ガガッ
54:
‐‐‐
(7610プロダクション 聖帝十字稜)
凛「(もう殆ど依頼分の花は積み込まれてるようだけど、お父さん達どうしたのかな…)」
凛「(……あの石碑の下に、おじいさんが眠っているんだよね…)」
凛「…」
レイ「な、なにぃ!?」
凛「!」ビクッ
凛「ど、どうしたんですか?」
レイ「あ、いや…気にするな」
凛「結構社員の方がいますね…」
レイ「ああ。あと50人位で君の番だ」
レイ「…」
レイ「(ケンシロウだと…!? くそ、アイツ本当に絶妙な時に顔を出すな)」
レイ「あ?…先程の話だがね…会長が生前言っていたよ」
凛「?」
レイ「足を骨折したのは、買い物帰りに女子高生と曲がり角でぶつかったそうだ」
凛「…!?」
58:
レイ「だがこうも言っていた。若い子供ってのはそれくらいヤンチャで良いと」
レイ「会長は特に恨んでたりはしていない様子だった…」
凛「…!」
レイ「その子はアイドルだったらしいが、『ウチのプロダクションのアイドルも、あれくらい可愛くて元気があれば良い』…と暢気に言っていたよ」
凛「……」
レイ「会長は本当に凄いお方だ。アイドル事業を一人で立ち上げ、ここまで会社を成長させた。本当にアイドルが好きだったんだよ」
レイ「例え経営が下火になっても、殆どの社員がいなくなっても、俺達はこの会社を守って見せる」
59:
レイ「そのアイドルも知らない所で、元気にやっているだろう。俺達も悲しみに暮れていないで、少しは見習わなくてはな…」
レイ「だが…経営が厳しいのは事実だ…。アイドルの数が全然足りなくてね…。せめて頭数さえ揃えば…」
凛「……」グスッ
レイ「…!?」
レイ「お、おい、泣いているのか? 一体…」
凛「! いえ、これは…」ゴシゴシ
凛「あ…あの、天国の会長さんのために…」
レイ「…!」
凛「私……よければ…っ!」
60:
『うおおおおおおおっ!!!』
ドゴーン!!
レイ「!?」
凛「っ!?」
シュウ「はあっ…はあっ…サウザァ?ッ!!」パラパラ…
シュウ「今日と言う今日は絶対許さんッ! 待っていろ、クソサウザー…ッ!!!」
シュウ「うおおおおーッ!!!」ダダダダ!
レイ「…」
凛「あ、あの…今の…」
凛「凄い勢いでピラミッドを掛け降りて行きましたけど…アレって…」
レイ「……」
レイ「い、生き返った…」
凛「えっ!?」
61:
‐‐‐‐
(7610プロダクション 正面)
業者A「ふ、不審者かコイツ!」
シン「お、折れる…! 離せケンシロウ! 誤解だ…!」ググッ
ケンシロウ「貴様は前科があり過ぎる。最早何を言われても信用できん…」グググッ
凛父「と、とりあえずリハクさんを呼んできましょう!」ダッ
ケンシロウ「リハクだと…!?」
リハク「そ、そうだリハクだ! 奴に事情を聞けッ!」
業者A「そうだ! 凛ちゃんは無事か!?」
業者B「よし、呼んで来よう!」
シン「(しまった! 足止めが…!)」
シン「(さ、最悪だッ…!!)」
62:
凛父「リハクさん、こっちです!」
リハク「…!!」
リハク「(この状況は、足止めを失敗する以上にマズイ気がする…!)」
シン「リハク、もう全て話せっ! 渋谷凛がじきに合流してしまう! 計画は失敗だ!」
ケンシロウ「計画? リハク、一体何のことだ?」
凛父「…?」
リハク「…」
ケンシロウ「…」
リハク「さ、さあ…シン様、一体何を仰っているのですか…?」
シン「!?」
リハク「今日はサウザー様の知人の葬儀です。貴方がここで何をしていたかまでは…この海のリハク、存じていませんな…?」
シン「り、リハク…貴様ァ?っ!?」ググッ
ケンシロウ「…シン、やはり貴様の勝手な蛮行の様だな」グググッ
シン「(こ、こうなってはもう何を言っても無駄だ…!)」
ケンシロウ「コイツの処分は俺に任せて貰おう。リハク達は仕事を優先しろ」
リハク「よ、よし、では最後の花の運搬をしてしまいましょうかっ!」
凛父「は、はあ…」
シン「く、クソ共がッ?!!」ググッ
63:
バシン!
シン「ダアッ!」バッ!
ケンシロウ「っ!!」
シン「ウオオオッ! ケンシロウ、地獄に堕ちろぉッ!!」グオッ!
ケンシロウ「シン…今日こそ息の根を止めてやる…」スッ
シン「南斗獄屠拳ッ!!」ズァッ!
‐‐‐
サウザー「…」
ユダ「…」
サウザー「…俺はもうすぐ襲い来るシュウ様を迎え撃つ。ユダ、貴様はレイのフォローだ」
ユダ「…おう」
サウザー「シンはもう死んだな。今日の葬儀は代わりにアイツのって事にしよう」
ユダ「…そうだな」
・・・
・・
64:
‐‐‐
(翌日 7610プロダクション 会議室)
奈緒「…」
加蓮「…」
サウザー「えー、本日皆さんに集まって貰ったのは他でもありません」
サウザー「我が社の活動に関して、嬉しいお知らせと、悲しいお知らせです」
サウザー「まずは悲しいお知らせから。昨日、我がプロダクションの事務員兼アイドルのシン君が、暴行罪、脅迫罪、業務妨害罪のハットトリックで逮捕されました」
ユダ「…」
レイ「…」
シュウ「…」
サウザー「精神に重大な異常があるとのことで釈放の見込みは立っていますので、もし復帰してきたら優しく迎えてあげて下さい」
6

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