提督「初恋」back

提督「初恋」


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1:
かなり短いです。独自設定も含まれています。
始まり方に違和感を覚える方もいるかもしれませんが、お付き合いいただけたら幸いです。
4:
男「お?い」
女「なんだ?」
男「今日も宿題やってきてなくてさ…見せてくれね?」
女「お前…宿題くらい自分でやるようにしろ」
男「どうにもやる気がしなくてな?」
女「まったく…しかたがない」
男「恩に着るぜ!」
5:
男「お?い」
女「むっ…なんだ?」
男「今日の帰り、どっか遊びに行かないか?」
女「かまわんぞ。それでどこへ行く?」
男「カラオケとかどうよ」
女「ふむ…悪くない」
男「俺の美声に酔わせてやるぜ」
女「気持ち悪いぞ」
男「ひどいっ!」
6:
男「お?い」
女「なんだ?」
男「今日お前の家に遊びに行っていいか?」
女「女子の家に上がろうとするとは…何をする気だ」
男「家族ぐるみの付き合いをしていて今更だな」
女「言ってみただけだ」
7:
女「知ってるか?」
男「何をだ?」
女「艦娘の話だよ」
男「ああ、今や世間で最も注目されてる話題だしな。知らないはずがないだろう」
女「世界中の海に突然出現した深海棲艦に対抗するために、かつて戦に使われた艦の記憶と魂を女性に憑依させて艦娘とする…すごい技術が開発されたものだ」
男「艦にも記憶や魂があるって不思議だよな」
女「この世の神秘だな」
男「女性しか艦の記憶と魂を憑依させられないってのも変な話だよな」
女「原因はわからないが、男には憑依させられないらしい」
男「よくわかんねえな」
8:
女「その艦娘の一般募集が近日始まるそうだ」
男「…もしかしてお前、興味があるのか?」
女「ああ、実はな」
男「やめとけやめとけ…そんなわけわからない存在になってどうする?それに深海棲艦との戦いで死ぬかもしれないんだぞ」
女「無論死ぬのは怖いが…艦娘となった者にはかなりの好待遇が約束されるらしい」
女「うちは貧乏だからな。少しでも助けになりたい」
9:
男「お前の両親は艦娘になることを許さないと思うけどな」
女「うむ、反対されるだろう」
男「ならあきらめろよ」
女「説得するさ。艦娘になって戦うということは、国を守る、ということでもあるからな。きっとわかってもらえるはずだ」
男「…それでも」
女「はは、心配してくれてるのか?」
男「当たり前だろうが」
女「…ありがとう」
女「まあ、艦娘になるには適性検査を受けなくてはいけないからな。検査に通る者の数はかなり限られてるらしいし、通らなかったらおとなしくあきらめるさ」
男「……」
10:
女「話がある」
男「…なんだ?」
女「先日、艦娘の適性検査を受けてきたんだ」
男「…結果は?」
女「…適性あり、だ」
男「…そうか」
11:
男「艦娘になるんだな」
女「ああ」
男「お前の両親はどうなんだ?」
女「当然猛反対されたさ…けど一生懸命私の気持ちを伝えたら最後はわかってもらえたよ」
男「俺が止めても無駄か…」
女「大切な両親に決意を伝えた後だからな。いくらお前とはいえ私の決意は変えられんよ」
男「…それは残念だ」
12:
男「お?い」
女「なんだ?」
男「…明日だな」
女「…ああ、私は明日艦娘になる」
女「お前とも会えなくなるな」
男「…ああ」
女「そう悲しそうな顔をするな。今生の別れというわけじゃない」
女「…私だって悲しくないわけじゃないんだ」
男「わかってる」
男「絶対に死ぬんじゃねーぞ」
女「ああ、約束する」
13:
――
男(あいつが艦娘になったあの日から三ヶ月)
男(今日はあいつの進水式)
男(機密保持ということで一般公開はされていない)
男「あいつ…元気にしてっかな」
――
男(進水式からさらに半年)
男(両親とは定期的に連絡を取っているようだが、俺は…)
男(いいかげん一度くらい会いたくなってきた)
男「とは言ってもなあ…どうすればいいかわかんねえ」
14:
――
男(もう一年だぞ!このままじゃ一生会えなさそうだ)
男「あいつのいるとこまで会いに行ってやるぞ!誰にも邪魔はさせん!」
――
男「ここがあいつのいる鎮守府か…」
男(勢いで来てみたものの…どうすりゃいいんだ)
男「とにかく中に入ってみよう」
15:
――
男「…迷った」
男(さすがに行き当たりばったりすぎたかな)
「あなたは…?」
男「ん?」
「鎮守府内には立ち入り禁止よ?」
男「はい、でもその前に会いたいやつがいるんです」
「会いたい人?」
男「ええ、この鎮守府に配属されている艦娘で――」
女「どうしたんだ?」
男「!!」
16:
女「君は…」
男「久しぶりだな!元気にしてたか!」
女「……」
男「本当に会いたかったぞ!」
女「……」
男「いろいろと話したいことがあるんだ!お前の話も聞かせてくれよ!」
女「…すまない」
男「ん?どうした?」
女「君は…誰だ?」
男「…えっ?」
17:
男「ま、またまた…おもしろくない冗談だな」
女「冗談を言っているつもりはないのだが…」
男「…俺を覚えてないのか?」
女「ああ…昔どこかで会ったことがあるだろうか?」
「ちょっとあなた…これはどういうこと?」
男「嘘だろ…俺だよ!本当に忘れたっていうのか!?」
「やめなさい!」
女「本当にすまない…やはり思い出せないんだ」
男「そんな…」
「出ていきなさい!」
18:
――
男(あれから一ヶ月…俺は未だに現実を受け入れられないでいる)
男(多くの時間を共に過ごしたあいつが…誰よりも大切なあいつが、俺のことを忘れているなんて、どうして受け入れられる?)
男「この記事は…」
男(『発覚!艦娘の抱える問題』…問題だって?)
男(…何だと!?)
男(艦の記憶と魂を憑依させられた女性には、一部記憶の欠損が生じることがある…だと)
男「あいつが俺のことを忘れてしまったのは…くそっ!」
男「そんなことがあっていいものか!」
男「あいつは…あいつは!」
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