天然美少女「安価で能力ばとるー?」back

天然美少女「安価で能力ばとるー?」


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1:
女教師「これで技能測定、面談は終わりよ」
天然「はいぃ」
女教師「何か質問はある?」
天然「ありません!」
女教師「そう。各々の適正によって、能力はランダムに決められるわ」
天然「んん? 適正?」
女教師「ええ。その人にあった能力が与えられるってわけ。あなたの能力は>>5よ」
5:
両手が注射器に変化
8:
異能力者養成学園。
その校門前に、天然はいた。
天然「ここに今日から通うのかー!」
今日は入学式。
天然はクラス分けの掲示板へと向かう。
天然「私は>>10クラスね」
クラスはA、B、C、Dに分かれており、Aが上級クラス、Dが下位クラスだ。
10:
C
11:
天然「C組かぁ。……まぁ、そんなとこだろうと思っていたよ!」
平均よりやや下。
勉強でもスポーツでも、そこが天然の特等席だった。
天然「じゃあ、行こうかな」
入学式は体育館で行うらしい。
天然は校舎とは反対側へと歩き出した。
12:
天然「ふぁーあ……。疲れた……」
入学式を終えた天然は、C組の教室へと向かう。
その途中、何やら人だかりを見つけた。
天然「なになに? なんの騒ぎ?」
野次馬の男子生徒に話しかける。
「……ああ。毎年恒例、上級生による新入生狩りだよ」
見ると、人垣の中心で、二人の女子生徒が何やら揉めているのが目に入った。
天然「うわぁ。怖いなぁ」
どうしよう。助けようかな? >>14
14:
助けない
16:
天然「さわらぬ神になんとやらだね」
争いは無視して、天然は踵を返すと教室へと向かった。
天然「みんなー。おはようぅー」
カラカラと音を立てて、扉は開いた。
教室に入るなり天然が挨拶をすると、数人の生徒が「おはよう」と返してくれた。
天然「みんないい人そうだねぇ。良かったぁ」
黒板に書かれている座席表を頼りに、自分の机へと辿り着くと、
天然は荷物を置いて椅子に腰かけた。
17:
担任は面接をしてくれた女教師だった。
軽いオリエンテーションの後に、女教師は真剣な面持ちでこう続けた。
女教師「あなた方は学園内で”弱い方”だとちゃんと認識しておいてね。
 やたらと能力バトルを仕掛けると、最悪の場合……」
そこでたっぷりと間を取った。
女教師「死ぬわよ。それじゃあね」
ざわつく生徒を気にもせず、女教師は教室を出て行った。
天然「能力ばとる?」
18:
天然「ねぇねぇ。能力ばとるって、なぁに?」
横の席の女生徒に、天然は尋ねた。
ロングヘアの黒髪をぱつんと前髪で切りそろえ、目のくりくりとしたかわいらしい生徒だった。
ぱつ子「ええ……。さっき先生が説明してたでしょ?
 学内のランクを上げるために、他の生徒と戦うことだよ」
天然「そうなんだ。まったく聞いてなかった」
ぱつ子は呆れたようにため息を吐くと、女教師がしたのと同じ説明を繰り返してくれた。
19:
能力バトルとは能力を駆使した戦いのことである。
仕掛けられた際、拒否することもできるが一気にランクが下がり、
何度も続けて拒否した場合は問答無用で退学となる。
能力バトルにおいて重症を負ったり死亡しても、
生徒同意のものとみなされ、それに対する処罰は無い。
天然「うへぇ。物騒だねぇ」
ぱつ子「あんた何も知らずに入学してきたのね……」
20:
天然「お昼!」
チャイムが鳴ると同時に天然は立ち上がった。
教室中の注目が集まり、天然はやや赤面する。
天然「ねぇねぇ。お昼食べに行こうよ」
ぱつ子「ずいぶんせっかちね……。まぁ、いいけど」
二人は、>>22
A お弁当を食べるため、中庭へと向かった。
B お弁当を食べるため、屋上へと向かった。
C 安くておいしいと評判の、学食へと向かった。
22:
a
24:
天然「中庭! いい天気!」
ぱつ子「いちいちうるさいのよあんたは……」
中庭の中心にある一際大きな木の下に、二人は腰を降ろした。
天然「いただきまーす!」
ぱつ子「準備するの早っ!」
天然「んー! おいしい!」
卵焼きを頬張りながら、天然はニコニコとした笑みを漏らしていた。
25:
「おい! 誰に許可貰ってここで食べてんだお前ら! ああ!?」
突然響いた怒声に、ぱつ子は思わず顔を上げた。
時代錯誤のリーゼントを決めた、明らかな不良が二人を見下ろしている。
天然は何事もないかのようにお弁当をぱくついていた。
不良「俺は2年B組の者だ! そこは俺の特等席!」
ぱつ子「す、すいません……」
26:
ぱつ子「やばいよ天然ちゃん。上級生だし、しかもB組だよこの人」
ひそひそと、ぱつ子は天然にそう告げた。
天然「ほえ? やばい系?」
ぱつ子は全力で首を縦に振る。
そんな様子を黙って見ていた不良だったが、
突然地面を強く踏み鳴らし、叫んだ。
不良「お前ら舐めてんのか……。上等だ、コラ! 能力バトルを申し込む!」
ぱつ子「いやいや……。無理っすよ……」
天然「んー?」
どうしよう。受けようかな? >>28
28:
不意打ちで先制攻撃
30:
天然はいそいそとお弁当箱を片付けると、ゆっくりと立ち上がった。
ぱつ子と不良は怪訝な顔でそれを眺めている。
 ヘヴンズインジェクション
天然「”天使の針と悪魔のしっぽ”!」
叫ぶと、天然の両手が注射器に変化した。
 ポライズン
天然「”劇薬の地平”!」
そのまま不良に突進し、両腕を突き出す。
ぶすり。と音を立てて、二つの注射針が身体をかばおうとした不良の右腕に突き刺さった。
不良「い……っ!?」
  ラヴ
天然「”愛情”注入!」
31:
不良「おおお……っ! お……っ!」
ガクガクと両膝が揺れ、そのまま不良は地面にへたり込んだ。
不良「てめえ……。何しやがる……」
天然「能力バトルだよ!」
両腕で生成した薬品は、不良の体の中で化学反応を起こしていた。
体中の筋肉を麻痺させ、身体能力を著しく低下させていた。
不良「ふざけんな……。てめぇは殺す……!」
痙攣する身体で、無理やり立ち上がった。
不良「俺の能力>>34でな……」
34:
生物以外のものを一度に吹き飛ばす
36:
不良「悪いが……、一気に決めさせてもらうぞ……」
ぜえぜえと肩で息をしながら、不良は両手を広げる。
 グラウンドゼロ
不良「”ここに空地を作ろう”発動!」
天然「ひゃっ……!」
ぱつ子「きゃあああああああああっ!!!」
中庭に爆風が舞った。
それは不良を中心として、すべてをなぎ倒し、吹き飛ばし、
砂埃を巻き起こした。
37:
不良「はっは……。これで終わりだ……」
砂埃がややおさまってくると、
膝に手を突きかろうじて立っている不良のシルエットがおぼろげに浮かんだ。
中庭には彼以外の影は無い。
天然とぱつ子はもちろん、巨木も、灌木も、ベンチも、花壇も、うさぎ小屋も。
全ては遠方に見える瓦礫の一部と化していた。
不良「俺に逆らう……、からだぜえ……」
前のめりに倒れると、それきり不良は動かなくなった。
39:
天然「ぷっはぁ!」
瓦礫の山から天然が顔を出した。
それからやや遅れて、ぱつ子も顔を覗かせる。
ぱつ子「おお……。死ぬかと思った……」
ガラガラと崩れる瓦礫の山から、二人はなんとか這い出す。
天然「あらら。不良先輩、このままじゃ死んじゃう」
中庭の中心で倒れている不良を見つけると、
天然は慌てた様子でパタパタと駆けていった。
40:
天然が再び能力を発動し、不良に針を突き刺した。
ぱつ子「ええっ!? とどめ刺すの!?」
天然「違うよぉ。助けてあげるの」
ぱつ子が驚きの声を漏らしたので、天然は困ったように笑う。
 バッドメディスン
天然「”良薬口に苦し”!」
注射器の中の液体が、不良の体の中へと浸透していった。
天然「……ふう。これで死にはしないと思うよ」
42:
お弁当箱を拾い上げると、天然は校舎へ向けて歩き出した。
ぱつ子「ちょ、ちょっと待ってよ!」
その後をぱつ子が足をもつれさせながらついて行く。
中庭には、気を失った不良だけが取り残されていた。
第一バトル
  ヘヴンズインジェクション
天然 ”天使の針と悪魔のしっぽ”
  VS
  グラウンドゼロ
不良 ”ここに空地を作ろう”
勝者 天然
43:
天然「放課後!」
ぱつ子「あんたはいちいち叫ばないと気が済まないの?
 ……って、支度するの早っ!」
チャイムが鳴ると同時に立ち上がった天然の肩には、
もうスクールバッグがかけられていた。
天然「当然だよぉ。勉強道具は全部置いて帰るんだから」
ぱつ子「数学の宿題出てたでしょ……」
46:
下駄箱から革靴を取り出している時、ふとぱつ子は気になっていたことを口にした。
ぱつ子「そういえば。不良先輩倒したって報告書提出したの?」
天然「なにそれ?」
ぱつ子「あんたは……」
呆れてため息を吐いた。
ぱつ子「先生が朝言ってたでしょ? バトルで倒したことを当日中に報告しないと、
 最悪の場合、義務違反で退学だって」
天然「ええっ!? 私聞いてないよ!?」
ぱつ子「だから先生が朝言ってたっての」
47:
天然「すぐ戻るから! 待ってて!」
天然はパタパタと職員室へと駆けていった。
ぱつ子「はぁ……。まったくもう」
下駄箱に寄りかかり、ぱつ子は>>49
A おとなしく待つことにした。
B 呆れてものも言えない。もう帰ることにした。
C 報告書作成には時間がかかるはず。校内を散策することにした。
49:
A
51:
ぱつ子「どうせ15分くらいだろうし。……ここで待ってよ」
スクールバッグを降ろし、スマフォを取り出そうとした時だった。
……誰かに見られてる?
ぱつ子は、何者かの嫌な視線を感じ取っていた。
スマフォをバッグにしまい、あたりの様子を窺う。
ぱつ子「……誰? いるんでしょう?」
視線を強く感じる方へと、ぱつ子は声をかけた。
52:
下駄箱の奥、階段の下の物置のようになっているスペースだ。
その闇の中に、何者かの気配を感じる。
ぱつ子「なんなのよ……。気持ち悪い……」
声をかけてしばらく待ったが、その何者かは何の反応も示さなかった。
ぱつ子は、>>54
A 様子を見に行くことにした。
B 冷静に考えると少し怖い気もする。天然の居る職員室へと向かった。
C 危害を加えられないならそれでいい。そのまま無視することにした。
54:
B
56:
ぱつ子「ちょっと怖いわね……」
ぱつ子は朝に女教師が言っていたことを思い出していた。
『あなた方は学園内で”弱い方”だとちゃんと認識しておいてね』
その通りなのだ。
負けるつもりはさらさらないが、無用な戦いは避けた方がいい。
ぱつ子は職員室へ向けて駆けだした。
57:
天然「あははー。ぱつ子ちゃん迎えに来てくれたんだー」
ぱつ子が職員室へ着くと、ちょうど天然が報告処理を終えたところだった。
ぱつ子「べ、別に心細かったわけじゃないのよ?
 あんたが迷子になっていないか心配で……」
言い訳がましいぱつ子の言葉を聞いても、
天然は相変わらずニコニコとした笑みを浮かべていた。
天然「うん! 下駄箱まで辿り着けるかちょっと不安だったんだー。
 ありがとね、ぱつ子ちゃん」
ぱつ子「え、ええ。感謝しなさいよ」
59:
再び二人で下駄箱に向かうと、嫌な視線は感じなくなっていた。
気のせいだったのかしら、とぱつ子が考えていると、天然の嬉しそうな声が響いた。
天然「あ、わんちゃんだー!」
真っ茶色の毛糸玉みたいな子犬が、尻尾を振りながら近づいてくる。
階段下の物置の方からだった。
天然「かわいいー! 靴下履いているみたい!」
その子犬は4本の足の先だけ、白い毛に覆われていた。
ぱつ子「ああ。この子だったのね」
天然「ん? 何が?」
なんでもないわ、とぱつ子は答えながら、
あの嫌な視線はこの子犬の発したものなんだと結論付けた。
60:
天然「翌日!」
ぱつ子「さすがにそれを発言するのはおかしいでしょう」
昨日に比べて閑散とした教室を不思議そうに見回しながら、
ぱつ子はツッコミを入れた。
そして、始業の時間が迫っても、
クラスの座席の2割ほどは空席のままだった。
ぱつ子「風邪でも流行っているのかしら……」
62:
ぱつ子「死んだ……?」
女教師の報告を受けて、教室は静まり返った。
40人いるクラスメートの内、2名が初日に死亡したというのだ。
女教師「ええ。明日は我が身。あなた方も気を付けることね」
女教師が教室から出て行っても、口を開く者は皆無だった。
休んでいる者のうちの何人かも、
いつ死んでもおかしくないほどの重傷を負っているらしい。
それでも淡々としていた女教師の様子が、ぱつ子の脳裏に焼き付いている。
ぱつ子「なんなのよ……。この学校……」
63:
天然「なんだか、悲しいね」
ぱつ子「……そうね」
天然はそう言いながら、本当に悲しそうな顔をしていた。
正直、話したこともない、昨日会ったばかりのクラスメートの死を悲しむほど、
ぱつ子は感受性が豊かでもなかった。
ただ心中を占めているのは、不安と恐怖。
『明日は我が身』
女教師の言葉が、頭から離れない。
64:
天然「お昼……、行こうか」
ぱつ子「そうね。そうしましょう」
お昼になるころには、ぱつ子もやや元気を取り戻していた。
天然は相変わらず悲しげな雰囲気をかもしだしていたが。
天然「中庭……は、ダメだから……」
ぱつ子「>>66」
A 「気晴らしに屋上に行きましょうか」 ぱつ子は元気が無い天然が心配だった。
B 「今日こそ学食にしましょう」 おいしいご飯でも食べたら元気になるだろう。
ぱつ子はそう提案した。
C「教室で食べましょう。外は怖いわ」 ぱつ子は率直な意見を漏らした。
66:
a
67:
天然「屋上!」
澄み渡るほどの晴天だった。
暖かい日差しと、程よい風が心地よい。
ぱつ子「晴れていて良かったわね」
天然「うんっ!」
どうやら天然も元気になったようだ。
ぱつ子はそんな様子に安堵していた。
68:
「あーあー、キミ達」
後ろから声をかけられた。
ぱつ子は身体をビクリと跳ねさせ、ゆっくりと振り返る。
天然はそそくさとお弁当箱を広げると、鶏のから揚げを口に放り込んだ。
「屋上は立ち入り禁止だよ。……またどこの馬鹿だ。鍵を壊したのは」
腕に「風紀委員」と書かれた腕章を付けた女子生徒が、腰に手を当て呆れたように言った。
黒髪のショートヘアを風に揺らし、神経質そうに眼鏡の位置を直している。
ぱつ子「そ、そうなんですか。すいません」
70:
ぱつ子「天然ちゃん。そういうことみたいだから」
天然「ほえ?」
ほっぺたにご飯粒を付けながら、天然は口にお弁当の中身を放り込むのをやめない。
風紀「えーと。キミ達、私の話聞いてる?」
ややトゲのある言い方だった。
まずい。
ぱつ子の心臓が大きく跳ねる。
ぱつ子「ほら。天然ちゃん。早く」
天然「ちょっと待って。あと少しで食べ終わるから」
71:
風紀「タイムアウトね。再三の注意に従わず、風紀を乱した者……」
風紀は言いながら両手で髪をかきあげると、
手首に付けていたゴムで髪の毛を後頭部で一つにまとめた。
風紀「校内規則にのっとって処罰するわ。屋上への立ち入りは」
ぱつ子「まずいよ、天然ちゃん! 逃げよう!」
天然「もう! まだ食べてるのにぃ!」
ぱつ子は天然の腕を乱暴に掴み、回り込むように風紀を避けながら階段へと向かう。
風紀「……また話を聞いてないみたいね。屋上への立ち入りは」
天然「ぐえ……っ!?」
風紀「死刑よ」
72:
ぱつ子「天然ちゃん!? 大丈夫!?」
天然「ううううー……」
いつの間にか横に現れた風紀の蹴りが、見事に腹部に突き刺さったようだ。
地面に膝をつき身体を折り、天然が苦しげに呻いている。
風紀「じゃあ、次はちゃんと殺してあげるわ。私の能力>>75でね」
天然の顔を心配げに覗き込んでいたぱつ子が、ゆっくりと体を起こした。
そして、強いまなこで風紀を睨み付ける。
ぱつ子「私の友達を……、許せない! 私も能力>>76使っちゃうからね!」
75:
能力を強制的に発動させて永久に解除できなくする
76:
全身の感覚強化
82:
風紀「……まずは、あなたの能力を知らないとね」
軽く地面を蹴ると、風紀はすぐにぱつ子の眼前へと現れた。
ぱつ子「……っ!」
   エリート
風紀「この学校の”役職持ち”達は、子供のころから英才教育を受けてるから」
風のようなさの蹴りを、ぱつ子は必死に避ける。
風紀「へぇ。今のを避けるの、ねっ!」
流れるような動きで風紀は拳を、足を休みなく繰り出し続け、
その全てがぱつ子へ向けて正確に襲い掛かった。
83:
風紀「……ふぅん。それは何の魔法かしらね」
やや息を切らせながら、風紀は尋ねる。
余裕の表情で、ぱつ子は鼻を鳴らした。
 オーバーセンス
ぱつ子「”超感覚”。魔法じゃなくて、私の能力よ」
風紀「へぇ、そう」
呼吸を整えると、再び風紀がぱつ子に襲い掛かった。
84:
見える! 聞こえる! 感じる!
嵐のように吹き荒れる攻撃の中で、
ぱつ子の心は大きな高揚感に包まれていた。
風紀「はああっ!!!」
ぱつ子「遅いわよ!」
避けれるし、当てられる!
ぱつ子の攻撃は、気持ちいいほど綺麗に風紀にぶち当たった。
ぱつ子「あはっ! そんなもんかしら……っ?」
後方へ吹き飛んだ風紀へ追い打ちをかけようとしたぱつ子の膝が、
がくりと曲がり前につんのめった。
86:
風紀「良い能力とはいえ、やはり新入生ね。能力の使い方がまるでなっちゃいないわ」
手の甲に負った擦り傷を舐めながら、風紀がひどく冷たい調子で言う。
ぱつ子「ど、どうして……」
両膝が笑い、言うことを聞かない。両腕も痺れて動かなかった。
身体を大きく震わせながら、ぱつ子の顔は恐怖に染まる。
 フルタイムワーカー
風紀「”滅死暴行”発動」
風紀の能力は、他者に干渉し、強制的に能力を発動させ続けることができる。
風紀「超感覚? 単純に強くなったつもりでいたのかしら?
 そんな都合のいい能力があるわけないじゃない。
 痛みも疲労もあなたの普通の身体じゃあ耐えられないわよ」
87:
ぱつ子「ぎゃあああああああああああっ!!!!!!」
校舎裏にある森から、たくさんの野鳥が羽ばたいた。
ぱつ子のつんざく様な悲鳴は青空に吸い込まれ、あたりに残響する。
風紀「うふふ。軽くつねっただけじゃないの。……ほら」
ぱつ子「いぎゃああああああっ!!!! やめえええっ!!!!!!
 ああああああああっ!!!! やめてええええっ!!!!!」
指の骨をへし折られると、ぱつ子は一度だけ大きく身体を痙攣させて、
泡を吹いて動かなくなった。あまりの痛みに失禁したようで、
お尻の下に水溜りができている。
89:
天然もいつの間にか気を失っていたようだ。
屋上の地べたに転がった二人を見下ろし、風紀はため息を吐く。
風紀「……まぁ、一度くらいは見逃してあげるわ」
そう言って踵を返し、頭の横でひらひらと手を振る。
風紀「じゃあね。次は無いから」
第二バトル
  オーバーセンス
ぱつ子 ”超感覚”
 VS
 フルタイムワーカー
風紀 ”滅死暴行”
勝者 風紀
90:
天然「ひぐっ……! ひぐう……っ!」
ぱつ子が寝かされている保健室のベッドに顔をうずめ、
天然が絶えず泣き声を漏らしていた。
天然「ごめんねぱつ子ちゃん……。私のせいで……」
自身の自分勝手な行動が招いた結果に、
天然は後悔と謝罪の涙を流し続けている。
その肩に、そっと手が乗せられた。
保険医「命に別状はなかったんだし……、そこまで気に病むことは無いわ」
91:
執行室。
ここは、風紀委員が活動拠点としている部屋だ。
「ええ? それで見逃したのぉ?」
風紀「はい、そうです。委員長。まだ新入生ですので」
委員長「まったく……。あんたは甘いわねぇ……」
風紀「私は私の正義を執行したまでですから」
委員長「>>93」
A 「何を言っているの? 決まりは決まりよ」 委員長は、風紀に刑の執行を命じた。
B 「分かったわ。あなたはもう下がって」 委員長は、自ら刑の執行に動いた。
C 「そうね。新入生はかわいいものね」 年下好きの委員長は、後輩には甘いのだった。
93:
b
97:
これは、私の責任だ。
天然は自責の念に駆られ、俯いたまま廊下を歩く。
目的の場所へと辿り着くと、大きく深呼吸をしてから、扉に手をかけた。
天然「失礼します」
カラカラと音を立てて、スライド式の扉は開いた。
委員長「あら。出向く手間が省けたわね」
余裕の笑みを浮かべる委員長が、それを出迎えた。
99:
天然「あんな規則……、おかしいと思います」
両の拳を握りしめ、ぱつ子を痛めつけた諸悪の根源を睨み付けた。
委員長「あらあら。そんな悪の親玉みたいな扱いしないでもらえるかしら?
 校則は、我が学園の”法”なのよ。守れない人間ほど、そういう悪態をつくものなのね」
大きな事務机に向かっていた委員長が、ゆっくりと立ち上がる。
委員長「弱き者は法に守られているのよ。ガチガチに縛らなければ秩序は生まれない。
 強者が弱者を虐げるような、そんな世界をお望みかしら?」
100:
天然「力で縛っているのはどっちですかぁ!」
精いっぱいに天然は叫ぶ。少し頭がクラクラとした。
その形相に、「ふん」と委員長は鼻で笑う。
委員長「そりゃあ強者ひしめく我が学園だもの。力なくして平和は訪れないわ。
 小さな決まりを守れないものは、いつしか大きな歪みを生む。
 それはいずれ、学園の崩壊を招くのよ。私はその芽を摘み取っているだけ」
まったく、話にならない!
天然は怒っていた。
こんな怒りは、生まれて初めてのことだと思う。
天然「おかしいです! 間違っていますよ!」
荒々しく扉を閉めると、天然は委員長へ向けて駆けだした。
102:
委員長「まったく、せっかちねぇ」
委員長は事務机を手で払い、書類の束をまき散らす。
視界を塞がれた天然の攻撃は、同様に舞い散った分厚いファイルへと突き刺さっていた。
委員長「あっはははは! それがあなたの能力!?
 随分と扱いずらそうねぇ!」
叫び、大きく跳躍すると、委員長は事務机の上に飛び乗った。
委員長「くらうがいいわ! 私の能力>>106を!」
106:
蹴り飛ばした物を勢いをそのままに重さを30倍まで重くできる能力
109:
委員長「まずは軽めに、ねっ!」
まだ事務机に半分ほど残っていた資料の束を、
委員長は無造作に蹴り飛ばした。
再び視界を塞がれ、天然は反射的に両腕で頭をかばう。
  ローリングスノウ
委員長「”魔術師の石”発動……」
天然「え……っ!?」
ただの紙束のはずなのに。
のしかかる重圧は並のものではなかった。
天然の身体はいとも簡単に吹き飛ばされ、床へと投げ出された。
110:
天然「う……っ。ぐうう……っ」
床に落ちた紙は、どうやらただの紙のようだった。
自分の上に乗った紙束を払いのけ、フラフラと天然は立ち上がる。
……右腕の骨が折れているだろうか。
頭にぬるい液体が伝うのを感じ、触れると赤い液体がついた。
委員長「あっはは。私の能力はね、蹴ったものを30倍の重さにできるの。
 度が無くなると重さも元に戻っちゃうんだけど」
笑う委員長は手の上で、サッカーボールをもてあそんでいる。
委員長「重さ約450g。30倍にすると、大体ボウリングの玉の3倍になるわね」
笑みは崩さず、委員長はボールを無造作に蹴り飛ばした。
委員長「あなたに、耐えられるかしら」
112:
天然「ごぷっ!?」
サッカーボールは下腹部に命中した。
呼吸が止まり、喉の奥から血が溢れだす。
委員長「じゃあ、死んでおきなさい」
テニスボールがたくさん入った袋を、委員長は蹴り飛ばした。
およそ砲丸ほどの重さになるだろうか。
空中でまき散らされたそれが、天然目がけて降り注ぐ。
天然は充血した目を剥く。
とてもじゃないが、避けられない。
天然「ああ……。あああ……っ!」
テニスボールが眼前に迫る。
天然は、自身の両手を自らの身体に突き刺した。
113:
委員長「なんで、あなたがここに」
そこまで言って、委員長は大きく咳き込んだ。
血の混じった飛沫が、周囲に散る。
 ブラッディドーピング
天然「”純粋なる力”……」
先程自身に打ち込んだ注射針から、
身体能力を極限にまで高める薬を注入していた。
瞬時に危機を脱すると、そのまま委員長の腹部に両手を突き刺した。
委員長「ごぼっ! げえぇっ! ……な、何したのよ、これ」
114:
委員長「がふっ!」
天然が両手を引き抜くと、そのまま委員長は後方へと倒れた。
そしてそのまま動かなくなる。
 ドクターブラック
天然「”闇医者の強力麻酔”……。強力過ぎて中毒になるけど、
 命にかかわるようなことは無いから安心して」
意識を失った委員長を残して、天然は執行室から立ち去ろうとした。
115:
天然「……」
執行室の扉に手をかけたまま、天然は固まっていた。
後ろを振り返り、委員長の姿を視界におさめる。
ベッドに伏せるぱつ子の姿がちらついて、
再び天然の心中に怒りがふつふつと湧きあがった。
この人。どうしてやろうかな。>>118
A ぱつ子は死んでない。この人も殺すべきではない。
B 私は殺されかけた。この人は死ぬべきだ。
C この人は悪くない。悪いのは規則だ。治療してから帰ることにした。
118:
風紀委員を倒すのに利用する
119:
そうだ。
天然はふと思い立った。
この人を人質に、風紀も倒せばいいんだ。
なるほど。名案だと自分でも思う。
天然「そうとなれば、善は急げだよ」
第三バトル
  ヘヴンズインジェクション
天然 ”天使の針と悪魔のしっぽ”
  VS
  ローリングスノウ
委員長 ”魔術師の石”
勝者 天然
120:
風紀は、下駄箱に入っていた紙を握りしめた。
強く握った拳が、ブルブルと震えている。
風紀「なんなのこれは……! ふざけないで……!」
ビリビリとそれを破り捨て、再び上履きを履くと、
風紀は校舎内へと駆け戻って行った。
舞い散る紙片にはこう書かれいる。
『委員長が屋上で寝てるよ。規則やぶりは殺さないとね。 天然より』
121:
風紀「いるか!? どういうつもりだ!」
屋上から校舎内へと戻る扉が、けたたましく開かれた。
同時に怒声と、突風が舞う。
天然「ここにいるよぉ」
屋上の隅。
鉄柵の向こうに天然と委員長の二人が立っていた。
風紀「委員長……!? 貴様ァ! 何をした!?」
今にも倒れそうなほど足元のおぼつかない委員長が、
天然の支えで危なげに身体を揺らめかせていた。
122:
天然「ストップ。近づかないでねぇ」
慌てて駆け出そうとした風紀を、天然が制した。
天然「ほいっと」
ぷすり。音を立てて注射針を委員長に突き刺す。
風紀「やめろォ! 貴様ァ!」
声の限りに、風紀は叫ぶ。
天然は声を出して笑った。
天然「大丈夫大丈夫。毒とかじゃないから」
委員長を鉄柵と夕暮れの間に寝かせる。
天然「助かるかどうかは、あなた次第だけど」
123:
風紀「……言うことを聞けば、委員長は助けてくれるんだな」
天然「うんっ! あなたがおとなしくしててくれたらね」
風紀は俯き、観念したように目を閉じた。
風紀「……分かった。委員長が死んだら、学園の秩序は保たれなくなる」
天然は心のざわつきを覚えた。
待っててね、ぱつ子ちゃん。同じように苦しめてあげるから。
天然は、>>126
A お説教をした。歪んだ正義は、二度と貫かないこと。
B あっさりと殺した。拷問をする趣味なんてない。
C ただ殺すだけじゃ足らない。苦しめて苦しめて、散々に痛めつけた。
126:
c
129:
天然「……にじゅうきゅーう! ……さんじゅう!」
風紀「……っ!」
かろうじて立っていた風紀は、天然の拳を受けるともんどりうって後ろに倒れた。
口元を歪めた天然が、楽しそうに笑っている。
天然「あっははははははははははははははは! 終わり!? もう!?
 まだ死んじゃダメだよぉ!!! まだぱつ子ちゃんは許してないッ!!!」
風紀の顔は赤黒く腫れ、頭から口から、裂けた頬から。
至るところから血が滴っている。
天然「はーい! お薬の時間ですよぉー!」
液体を身体に無理やり流し込まれると、風紀は再び息を吹き返した。
132:
天然「ぱつ子ちゃん、痛そうだったねぇ」
うつ伏せにした風紀の右肘に足を乗せ、天然はその先にある手首を両手で握る。
天然「指が逆に曲がっちゃってたよね……。こんな風にさあ!」
ゴギリ。
やや湿っぽい、重厚な音を奏でて、風紀の右肘が逆に曲がった。
通常なら意識を失うような、それこそ死んでしまうほどの激痛の中でも、
風紀は小さな呻きを漏らしただけで、意識を失うことはできなかった。
天然「んー? 何かしゃべってるう?」
風紀のかすかに動いている口元に、天然が耳を近づけた。
風紀「も……、殺し……て……」
天然は鼻で笑った。
天然「誰が殺してやるかよ! ばぁか!」
134:
天然の破壊は止まらなかった。
右肘に続いて左肘も壊した。
次は両膝。残っていた歯も全部抜いた。
それでも怒りは収まらない。
ぱつ子ちゃんは泣き叫んでた。苦しんでいた。
それは自身に向けた怒りでもあった。
自分のせいでぱつ子ちゃんは痛い思いをした。
許せない許せない。
目の前にいる人間が許せない。
天然「……さぁて。お薬の時間だよぉ」
138:
風紀「殺……、も……、殺し……て……」
もう、風紀の身体は人としての体裁を保っていなかった。
大きく腫れあがった顔と胴体はまん丸に、
間接の壊れた両手足はそれぞれおかしな方へと向いていた。
天然「あは……っ。あははは……っ」
天然は泣きながら笑っていた。
取り返しがつかない。
もう。帰れない。
天然「あはは……っ! あはははははあああああああああっ!!!!!」
風紀の身体を見て、天然は、子供のころに作った雪だるまを思い出した。
春が近づいて暖かくなると、雪だるまはいつの間にか消えていた。
私の罪は、いつか消えるのだろうか。
139:
翌日。
登校したぱつ子は、教室を見回した。
昨日よりも閑散とした教室は、7割ほどが空席になっている。
天然の姿も、無い。
ぱつ子「天然ちゃんは……」
女教師は朝のホームルームで、
クラスメートの半分が死んだことと、天然の退学を告げた。
理由は言っていなかったが、ぱつ子には理由が分かっていた。
ぱつ子「……天然ちゃんは優しい子だから、戦いばかりで疲れちゃったのよね」
悲しげに俯いたぱつ子は、誰に言うともなく呟いた。
142:
ぱつ子は、女教師に学園の実情を聞いた。
内容は衝撃的だったが、今のぱつ子にとってはどうでもいいことだった。
A組の2割、B組の5割、C組の9割、D組のほぼ全員。
これだけの人間が、昇級することもなく学園から消える。
この比率は毎年変わっていない。
D組に至っては、ここ10年で昇級できたのが一人もいないそうだ。
C組の私も、いつか死んでしまうのかな。
友人が学園から去り、悲しみに暮れるぱつ子は、>>145
A 学園をやめることにした。人としての心を失う前に。
B 学園に残り、成長を望んだ。このままじゃ、生き残れない。
C 天然を潰した学園が許せなかった。今すぐにでも、叩き潰してやる。
145:
b
146:
そうだ。自分にはまだやるべきことがある。
ぱつ子「風紀委員の人が言ってた……、私の身体じゃ能力に耐えられないと」
それは裏を返せば、体を鍛えることによっていくらでも能力を強化できるということだ。
ぱつ子「いつか天然ちゃんに会ったときに、胸を張れるように……」
瞳に闘志の炎をともし、ぱつ子はそう決意するのだった。
147:
月日はあっという間に流れた。
死屍累々の1学期が終わり、戦いに明け暮れる夏休みが過ぎ、
2学期が始まるころには、ぱつ子は学内でも名をとどろかせるほどの実力者になっていた。
「ねぇ、ちょっといいかな」
始業式の日は、午前中に終わる。
お昼に何を食べようかと思案していたぱつ子は、背後から呼び止められ、振り返った。
「君、ぱつ子ちゃんだよね? ちょっと手合せ願いたいんだけど」
148:
こんなことは慣れっこだった。
ぱつ子は笑みを浮かべ、それを承諾する。
やや長めの黒髪を揺らして、声をかけた男子生徒はほっとした様子で一息ついた。
黒髪「僕は2年A組の黒髪。よろしくね」
ぱつ子「A組……!?」
どうせいつもの無謀なチャレンジャーだと思い、油断していたぱつ子は、
気を引き締めると慌てて身構えた。
150:
黒髪「いいよね、これ。お互いの力量が測れない一撃目。その緊張感」
涼しい顔で言うが、一切の隙を見せない。
ぱつ子の頬に冷汗がつたう。
黒髪「……来ないならこちらから行くよ。普段はレディファーストだけど、
 戦いの礼儀として、挑んだ方から仕掛けないとね」
来る!
ぱつ子は能力を発動し、その時に備える。
黒髪「受けて見なよ! 僕の能力!>>154」
154:
魔法少女に変身できる
159:
戦闘経験は数えきれないほど積んできたつもりだ。
予期せぬ事態にも冷静に対処できる。
自身はあったし、覚悟も持っていた。
そんなぱつ子を置いても、一瞬心に隙間を作る。
彼の能力は、それほどに恐ろしいものだった。
ぱつ子「な……っ!」
眼前で起きた出来事に、ぱつ子は絶句する。
ピンクと白を基調としたフリフリのコスチューム。
短いスカートに、派手な頭の装飾。
足元を守るロングブーツ。手に持たれたハートを散りばめたような不思議な形のステッキ。
先程までそこにいた男子生徒は立ち消え、
その変わりに、魔法少女が立っていた。
 ナイトメアドール
黒髪「”妄想の産物”発動☆」
ぱつ子にとって、まさにそれは悪夢だった。
162:
黒髪「えーい☆」
魔法少女が、かわいらしい掛け声とともに手に持ったステッキを振る。
 フォーリングデススター
黒髪「”迷子の流れ星”だよ☆」
ぱつ子「くう……っ!」
オーバーセンス
”超感覚”を発動したぱつ子であっても、かわすのは至難であった。
ステッキより現れた拳よりやや大きめの石が、音を超えて無数に降り注いだ。
黒髪「まだまだいくよー☆」
衝撃波が空間を裂き、直撃を受けた巨木が音を立てて崩れた。
163:
黒髪「そうこなくっちゃね☆」
ぱつ子「がっ!?」
殺意持った流星群に気を取られ、ぱつ子は全く反応ができなかった。
空中で逆立ちのような体勢をした黒髪が両腕に持ったロッドが、
ぱつ子の首にかかっていた。
 デッドリーデッドデスロール
黒髪「”くるくるはたらく水車のおうち”ー☆」
ぱつ子「……っ」
黒髪が背後に着地し、その勢いのまま腕を振るった。
首の骨が軋み、ぱつ子の両足がふわりと浮く。
黒髪「吹き飛べー☆」
声を発する間もなく、ぱつ子は校舎の壁へと叩きつけられた。
165:
ぱつ子「げほっ! げほっ!」
首元を押さえながら、ぱつ子は立ち上がった。
自ら飛びあがらなかったら、あのまま首の骨をへし折られていただろう。
乱れた髪を直すこともなく、ぱつ子は眼前の魔法少女を睨み付ける。
黒髪「さすがぱつ子ちゃん! しぶといねー!」
魔法少女は頭上でくるくるとステッキを回し、満面の笑みを浮かべている。
ぱつ子「まったく……。やりづらいわ……」
166:
再び巻き起こった流星群の中にぱつ子はいた。
冷静に眺めてみると、あの能力はステッキありきの物なんじゃないだろうか。
ぱつ子は考える。
ぱつ子「……」
ひゅん。
ぱつ子は身体を回転させながら流星群の一つを手に取ると、
遠心力を利用し魔法少女へ向けそれを投げ返した。
黒髪「うわっ! あぶねぇ!」
ぱつ子「……はぁ」
やはりあの甲高い声は作っていたのだろうか。
思わず地声を漏らした黒髪へ向け、ぱつ子は疾走していた。
167:
黒髪「んなっ!?」
ぱつ子「これが無かったら何もできないんでしょう!?」
飛びかかり、ステッキをひったくる。
そして腹部に蹴りを見まい、ぱつ子は距離を取った。
ぱつ子「ふっふー。これであんたは……」
勝ち名乗りを上げようとしたぱつ子の眼前で、
魔法少女が髪を振り乱し、頭を両手でバリバリと掻いていた。
黒髪「それは僕のアイデンティティなんだぁ……っ!
 返せええええ……っ!」
鬼気迫る表情で、魔法少女が不恰好にこちらへ駆けてくる。
168:
ぱつ子「ちょ……っ! やめ……っ!」
黒髪「返せ返せ返せ……。うおおおおっ!」
ぱつ子が頭上高く掲げたステッキを、魔法少女が必死に取り返そうとしている。
ぱつ子の身体にしがみつき、ぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
ぱつ子「やめんかい! うっとおしい!」
その頭部へ向け、思い切り拳を叩きつける。
地べたに魔法少女が崩れると、
まばゆいほどの光を放って先程の男子生徒の姿に戻った。
ぱつ子「さすがにA組……。おそろしいわね……」
170:
男子生徒が元に戻っても、ステッキだけは消えなかった。
ぱつ子は、倒れる黒髪の背中にそっと、ステッキを置いた。
ぱつ子「……あの格好は趣味? もう関わり合いたくないわね」
侮蔑の視線をしばし向けた後、ぱつ子はその場を立ち去った。
第四バトル
  オーバーセンス
ぱつ子 ”超感覚”
 VS
 ナイトメアドール
黒髪 ”妄想の産物”
勝者 ぱつ子
171:
ぱつ子「うっそ……。あいつ、ランカーだったの……?」
ランカーとは。
学園内でトップに君臨する、A組の中でも上位層にだけ与えられた権利。
ランカー同士でポイントを奪い合うことにより、順位が変動する。
一般生徒がランカーに勝った場合、相手に見合ったポイントが与えられ、
晴れてランカーの一員となる権利を得る。
ぱつ子「ランカー26人中19位……。低い方ではあるけど……」
今日付けでランカーの人数がぱつ子を加えて27人になり、
ぱつ子は最下位の27位の位置についた。
174:
天然「へぇ……。あのぱつ子ちゃんがねぇ……」
真っ白い部屋で、ベッドの上で上体を起こした天然が、ぼそりと呟く。
天然「私には、もう関係ないよ」
何もない壁を見つめながら、口だけを動かしている。
天然「”壁の向こう”は見えた。けど、私の心は耐えられなかった」
全く抑揚のない声だった。
天然「自分で言うなんて馬鹿げてる? それはそうでしょうね」
天然は、口元だけで、笑みを作る。
176:
ぱつ子「天然ちゃんが帰ってくる!?」
女教師の言葉に、ぱつ子は大声を上げた。
「しっ、静かに」小声で女教師がそれを制する。
女教師「まだオフレコなんだから。仲が良かったあなたには伝えておこうと思って」
それだけ言うと、女教師は教室を出て行った。
ぱつ子「天然ちゃんが……」
人の血が通っていないと思っていた女教師にも、少しはいいところがあるんだな。
そんなことを考えながら、ぱつ子は天然にあったら何を話そうかと、
ニコニコと笑みを浮かべるのだった。
177:
激動の毎日は、矢のように早く過ぎていった。
ランキング最下位だったころは、
ランカー狙いの野心溢れる強者の挑戦が後を絶たなかった。
順位が上がってくると、順位を守ろうと必死な輩、
上からの抑えつけと下からの突き上げが苛烈を極めた。
春になるころには、ぱつ子はトップランカーの仲間入りを果たし、
その順位は8位まで上昇していた。
そして。
無事進級し、新学期が始まる。
178:
ぱつ子「A組!? 私が!?」
掲示板の前で、ぱつ子は叫び声を上げた。
まわりの評価からすると当然の振り分けではあったが、
当のぱつ子は、未だにC組気分が抜けていないのだ。
ぱつ子「あっ!? えええええええええええっ!!!!!!」
トップランカーの叫びが再び響くと、
掲示板前に集まっていた人垣が一気にはけた。
戦いのとばっちりを受けては、身が持たないと案じてのことだろう。
ぱつ子「て……、天然ちゃんが……」
2年A組。
その振り分け表には、ぱつ子の上に天然の名前が記されていた。
180:
ぱつ子「天然ちゃん!」
教室に入るなり、ぱつ子は叫ぶ。
トップランカーの出現に、教室はやや騒然となった。
ぱつ子「久しぶり! 元気だった!?」
『誰だあいつ? ぱつ子と知り合いみたいだけど』
『さぁ。編入してきたらしいよ』
『いきなりA組って。どんな奴なんだろうね』
ぱつ子「いきなりいなくなって……、私心配してたんだからね!」
モブの発言には耳も傾けず、
ぱつ子ははやる気持ちを抑えることもしないで、天然に言葉を投げかけていた。
181:
天然「うるさいな」
ぱつ子「えっ」
ぼそり。天然は言葉を漏らした。
ぱつ子は一瞬呆けた顔で黙った後、困ったような笑みを浮かべた。
ぱつ子「あは……、あはは。ごめんね。久しぶりなのに、少し馴れ馴れしかったよね」
無言のまま、天然は立ち上がる。
椅子がガタンと無機質な音を立てた。
天然「悪いけど、ぱつ子ちゃん。私、もう馴れ合いとか疲れちゃったのよ」
言葉を失ったぱつ子を残して、天然は教室を出て行った。
182:
ぱつ子は必死に頭を働かせていた。
天然のあの変貌ぶりはなんなのだろう。
学校を去る前に何かあったのだろうか。
それとも、去った後に?
ぱつ子にはよく分からなかった。
馴れ合いは疲れた。天然は確かにそう漏らしていた。
ぱつ子は、>>186
A 天然に会ったら、再び謝ろうと思った。
きっと、久々なのにこっちが一方的に話したから、気分を害したんだろう。
B 天然に会ったら、無視しようと思った。
あの言葉の意味は、そういうことなんだろう。
C 天然に会ったら、戦いを挑もうと思った。
あの言葉の意味は、そういうことなんだろう。
186:
A
188:
朝のホームルームが始まる直前、天然は教室へと戻ってきた。
ぱつ子の前の席へ、無言で腰を掛ける。
ぱつ子「天然ちゃん。さっきはごめんね?」
人差し指で、トントンと軽く天然の肩口を叩いた。
何事もなかったかのように、天然は前を見たままだった。
やっぱり、怒ってるのかな。
ぱつ子が泣きそうな顔で天然の後頭部を眺めていると、
それがゆっくりとまわり、困ったような笑顔が覗いた。
天然「ううん。私の方こそごめんねぇ。
 ずっとひとりぼっちでいたから、人と話すのにまだ慣れてなくて……」
189:
そう言って俯いた顔は、ぱつ子のよく知る天然のものだった。
ぱつ子の目に、思わず涙が溢れる。
天然「わわっ……。ごめんねぇ、ぱつ子ちゃん。ほんとにごめえん……」
つられたように、天然も声を上げて泣き出した。
ぱつ子は両手で涙を拭いながら、無理に笑顔を作って言う。
ぱつ子「ううん、違うのよ。私……、うれしくて……」
ぱつ子と天然は抱き合いながら、長いこと泣き続けていた。
192:
始業のチャイムが鳴ってから10分後。
二人が泣きやむのを待っていたかのように、女教師が教室へと入ってきた。
なぜか女教師の目元と鼻は真っ赤で、
先程まで泣いていたぱつ子と天然そっくりな顔をしていた。
女教師「さて、今日から新しい学年なわけだけど」
簡単なあいさつの後、女教師はそう切り出した。
女教師「今年の1年は糞生意気なやつが多いから、早々に叩き潰してやることね」
その言葉を聞いて、教室には割れんばかりの歓声が上がった。
194:
天然「あはは。あんなこと言ってるよぉ」
ぞくり。
ぱつ子は天然の笑顔に、何やら不気味なものを感じた。
ぱつ子「まさか……、天然ちゃんはしないわよね」
天然「何を?」
ぱつ子「その……。新入生狩り、とか……」
天然「>>197」
A 「どうしてそんなこと聞くの? 私がやるわけないでしょお」
目の前にいる人間は、やはりぱつ子のよく知る天然だった。
B 「どうしてそんなこと聞くの? 1年生なんて叩き潰してやればいいんだよ」
笑顔のままで言った天然に、ぱつ子は寒気を覚えた。
C 「やるよぉ。殺して殺して殺してぇ……。1年生がいなくなるまで、殺してやるんだよ」
狂気の色に目を染めて、目の前にいる人間はそう答えた。
197:
A
199:
ぱつ子はほっと胸を撫で下ろした。
ぱつ子「そ、そうだよね」
天然「そうだよぉ。私が入学した時もやってて、怖くて逃げちゃったんだから」
肩を竦める仕草をして、天然は笑った。
そして、ふと何かに気付いたように表情を変えた。
天然「あ、そうだ。じゃあ私たちが守ってあげようよ」
突然の提案に、ぱつ子の頭に疑問符が湧く。
ぱつ子「どういうこと?」
「ふんす」と鼻を鳴らし、天然は力強く立ち上がった。
天然「”新入生狩り”狩りだよ!」
201:
ぱつ子「ちょ、ちょっと待って」
勢い込んで言った天然を、ぱつ子がたしなめた。
ぱつ子「新入生狩り……、狩り? それって、どうやってやるつもり?」
天然「そんなの簡単だよぉ」
再び椅子に座ると、天然は笑みを浮かべる。
天然「適当に1年生がいるとこをろうろついてればいいんだよ」
ぱつ子「……あ、そう」
202:
慌てて教室から出て行こうとした天然を、必死にぱつ子が止めた。
ぱつ子「ちょっと! どこに行くつもりよ!」
天然「どこ、って……。1年生がいそうなところだよぉ」
ぱつ子は呆れたようにため息を吐く。
ぱつ子「いい? 天然ちゃん。……授業は?」
天然「あ」
すとんと腰を降ろした天然は、「そうだった」と呟きながら、黒板の方へ向いた。
ぱつ子は授業を受けながら考える。
天然の提案もあながち悪くはない。あとはやり方だ。
天然には任せておけないので、ぱつ子は授業そっちのけで頭を悩ませるのだった。
206:
天然「お昼!」
ぱつ子「なんか懐かしいわね、それ」
教室でお弁当を食べながら、二人は話し合う。
昼休みが終わるころには、結論もほぼ出かかっていた。
ぱつ子「じゃあ、これでいいかな?」
天然「うんっ!」
二人の結論はこうだ。>>209
A 常に見張るのは難しい。放課後だけ校内をパトロールすることにした。
B 出る杭は打て。新入生狩りをしそうな危険人物を、前もって潰しておくことにした。
C 個人では、新入生を守るのは難しい。先生に意見を求めることにした。
209:

210:
女教師「新入生狩りを止めたいですって? 馬鹿言わないで」
二人の意見は一蹴されてしまった。
それも当然だった。新入生狩りを推奨していた人物だったのだから。
天然「あーうー……。ダメだねぇ、ぱつ子ちゃん」
ぱつ子「そうだったわね……。考えすぎて前提を忘れていたわ」
うなだれて歩く二人は、前方に見覚えのあるリーゼントを見つけて足を止めた。
ぱつ子「あら、あれは」
211:
ぱつ子「不良先輩おっす!」
バシンと音を立てて、後頭部をはたいた。
「なんだコラァ!」とすごみかけて、ぱつ子を見た途端苦笑いを浮かべる。
不良「なんだ……。お前かよ……」
ボリボリと頭を掻きながら、不良は体ごと向き直った。
不良「んで。なんか用か」
下から不良の顔をの覗き込みながら、ぱつ子は問いかける。
ぱつ子「不良先輩って、新入生狩りとかします?
 私たちも1年生の時に、先輩に襲われたんっすけど」
212:
不良「新入生狩りだぁ? んなもんしねぇよ馬鹿」
不機嫌に顔を歪め、不良は吐き捨てた。
不良「あの時はお前らが俺の特等席を占領しやがった上に、舐めた態度取ってたからだよ。
 襲ったとか新入生狩りとか人聞きの悪いこと言うなよ」
ぱつ子と天然は顔を見合わせ、笑顔で頷いた。
ぱつ子「じゃあ、先輩も私たちの手伝いしてよ!」
不良「ああ?」
不良は二人の話を聞いて、>>215
A「馬鹿馬鹿しい。勝手にやってろ」そう言い残してその場を立ち去った。
B「面白れぇ。新入生狩りとかする陰険野郎は、前から気にくわなかったんだ」
手のひらで拳を打ちならし、意見に同調した。
C「まぁ、いいけどな。別に積極的には動きゃしねぇぞ」
意見には同調してくれたが、一緒にパトロールなどはしてくれないようだった。
215:
C
219:
ぱつ子「ありがとう! それでいいよ!」
天然「うんうんっ! ありがとね、不良先輩!」
二人が不良の両手を握り、ぴょんぴょんと飛び跳ねると、
顔をしかめた不良はそれを振り払った。
不良「べ、別にお前らのためじゃねぇ。陰湿な野郎が嫌いなだけだよ……」
頭をボリボリと掻きながらその場を立ち去った不良は、やや頬を赤く染めていた。
ぱつ子「やったね! 仲間一号だよ!」
天然「うんっ! 良かったねぇ!」
220:
ぱつ子「うわぁ……」
天然「どうしたの? ぱつ子ちゃん」
並んで廊下を歩いていたぱつ子が、急に柱の陰に隠れた。
ぱつ子「あいつは……、仲間にしなくていいかな」
天然「誰? 知り合い?」
二人の前方を、長い黒髪の男子生徒が歩いていた。
ぱつ子「うーん、知り合いと言うか、なんというか……」
悪夢のようなおぞましい体験を、ぱつ子は思い出していた。
ぱつ子「あいつは歩く犯罪野郎だから。無視しといたほうがいいね」
天然「……ふーん? そうなんだぁ」
221:
天然「放課後!」
ぱつ子「じゃあ、パトロールに行こうか」
天然「うんっ!」
さて、どこに行こう。>>224
A 放課後はみんな帰宅する。昇降口付近を張ろう。
B 放課後はみんな部活に励む。部室棟の方へ行ってみよう。
C 放課後はみんなやることもないのにダラダラ学校に残ってる。
 人のいそうな中庭に行ってみよう。
224:
C
225:
天然「中庭!」
ぱつ子「うはぁ。いるねぇ、暇人がうようよと……」
中庭は結構な人数の生徒がいた。
ベンチに座って語らう者、緑樹の中を歩く者、花壇の花を愛でる者……。
ふと、ぱつ子は気付いた。
天然「ねぇねぇ。ぱつ子ちゃん」
天然も同じことに気付いたようだ。
ぱつ子「天然ちゃん。頼むから、その先は言わないで」
天然「うん……」
中庭は、カップルで溢れていた。
227:
ぱつ子「暇人は私たちだけみたいね」
天然「うん。ミイラ取りがミイラになるとは、まさにこのことだよ」
ツッコむのも億劫で、ぱつ子は無言で天然のボケを流した。
ぱつ子「んん? あれは……」
何やら言い争う男女の姿が、ぱつ子の目に留まった。
どうするべきだろうか。>>230
A どうせただの痴話喧嘩だ。割って入っても話がこじれるだけだろう。
 二人は見て見ぬふりをすることにした。
B もしかして新入生狩りか? 二人は近づいてみることにした。
C 女の敵は許せない。問答無用で男の方を叩きのめした。
230:
C
231:
ぱつ子は全力で現場まで駆けつけた。
 オーバーセンス
ぱつ子「”超感覚”!」
能力を発動するや飛びあがり、男の側頭部に全体重を乗せた回し蹴りを放つ。
声を出す間もなく男は吹き飛ばされ、校舎の壁に深々とめり込んだ。
粉塵が舞い、瓦礫の崩れる音が響く。
ぱつ子「大丈夫だった? 許せないよねぇ、ああいう男は」
「え……、はぁ……」
女生徒は、大きく目を剥いて、まじまじとぱつ子を眺めていた。
緩くウェーブのかかった茶色のショートヘアが、
風に舞ってふわふわとなびいている。
232:
癖子「あの……、ありがとうございました」
小柄な女生徒は、ぺこりと頭を下げた。
新入生だろうか。
かわいらしいなぁ、とぱつ子は思う。
癖子「私、3年A組の癖子です。あの人に毎日言い寄られてて……、ほとほと困ってたんですよ」
ぱつ子「そうなんだ。まぁ、これであいつも懲りたんじゃないかな」
癖子「もうストーカーみたいで……。怖かったんです。ありがとうございました」
ぺこぺこと何度も頭を下げながら、癖子はその場から駆けていった。
ぱつ子「癖子ちゃんかぁ。かわいいなぁ」
その後ろ姿を見送りながら、ぱつ子は呟く。
ぱつ子「ん……? 3年A組……?」
233:
ぱつ子「癖子癖子……。あ、あった!」
ランキングを確認すると、癖子の名前が載っていた。
ぱつ子「ランキング……、1位……!?」
他に数いる実力者を押さえ、頂点にその名前は記されていた。
天然「すごいねぇ……」
ぱつ子「うわぁ……。すごく失礼なことしちゃった気がする……」
234:
天然「翌日!」
ぱつ子「おっはよー。……あ」
教室の扉の所に、見知った顔があった。
ぱつ子「あ、オハヨウゴザイマス……」
癖子「おはようございます。昨日はありがとうございました」
ぱつ子「イエイエ。当然のことを、シタマデデスカラ」
癖子「うふふ。 どうしたました? 何かしゃべり方がぎこちないようですけど」
ぱつ子「ソンナコトナイデスヨ」
236:
ぱつ子「うっはぁ……。緊張した」
ひとしきりお礼の言葉を述べると、しばし雑談したのちに癖子は去って行った。
天然「すごいほんわかした人だねぇ。戦ってるとこが想像つかないよ」
ぱつ子「そうだね……」
二人はいつもと変わらぬ一日を過ごした。
そして。
天然「放課後!」
ぱつ子「さて。今日はどこに行くかな」
中庭はもうこりごりだ。>>239
A 昇降口の前で張ることにした。
B 部室棟の方へ行ってみることにした。
C 不良先輩をからかいに行くことにした。
239:
C
240:
ぱつ子「不良せんぱーい!」
不良「うおっ!?」
後ろからぱつ子が突然抱き付くと、不良は頓狂な声を上げた。
不良「またお前らかよ!? 今度は何だ!」
身体をブンブンと振り回してぱつ子から逃れようとするが、
トップランカーの両腕はなかなかほどけなかった。
ぱつ子「うふふー。不良先輩もしかして」
耳元で、ぱつ子が小馬鹿にしたような笑いを漏らす。
ぱつ子「照れちゃってます?」
不良「うるせぇな!」
顔を真っ赤にして不良は叫んだ。
241:
不良「あー。昨日も狩ったぞ。確か10人くらい」
ぱつ子「10人!?」
今度はぱつ子が頓狂な声を上げた。
不良「ああ。昼休みになると馬鹿な新入生が体育館でバスケ始めるからな。
 そいつらを狩ろうとしてるやつを、そりゃあもうボコボコよ」
拳を突き出して、不良は言う。
天然「ほえー。体育館かぁ」
今まで選択肢にすら上がっていなかったところだ。
やはり、思考回路が似ているのか、こう言うことに関しては不良が一枚上手らしい。
不良「あとは運動部だな。あいつら指導と称して新入生狩りしてやがる。
 正々堂々がスポーツマンの矜持じゃないのかね」
242:
お礼代わりにぱつ子と天然が両側から抱き付くと、
顔を真っ赤にして何やら叫びながら不良はその場を立ち去って行った。
ぱつ子「新入生狩りが出没しそうなところは大体わかったね」
天然「うんっ! じゃあ、行こうか」
その日を境に、二人の活動の成果は如実に表れていった。
新入生狩りの数はめっきり減り、学園の平和は守られた。
……ように見えた。
「最近、馬鹿な上級生が絡んでこなくなったなァ……」
まるで悪意の塊のような目つきの男子生徒は、呟く。
大きな口を歪めて笑うと、ギザギザの歯が隙間から覗いた。
悪意「んじゃあ、まぁ。上級生狩りと、しゃれこみますかねェ……」
糞生意気な一年生が、上級生へと牙を剥いた。
243:
ぱつ子「またうちのクラスの子が……?」
天然「うん……。もう今月で3人目だよ」
新入生狩りの数は、二人の努力の甲斐あってほぼゼロになった。
しかし。
ぱつ子「誰がやったの?」
天然「それが……、報告処理されてないんだって」
報告しなければ、義務違反により退学になる。
それにもかかわらず、凶行に及んだ生徒は学園側に報告をしていないというのだ。
通常ならば、負けた生徒による報告で発覚するはず。
ぱつ子「どうして、こんなひどいことを……」
天然「うん……。負けた相手の、首をちぎっちゃうなんて……」
244:
天然「犯人捜し!」
ぱつ子「うん、そうだね。クラスメートが3人もやられるなんて。
 これはちょっと、放っておけないよ」
二人は、>>246
A 捜査のセオリーは現場100回。死体の見つかった場所を見に行くことにした。
B 捜査のセオリーは聞き込み。生徒たちから情報を得ることにした。
C 不良先輩をからかいに行くことにした。
246:
B
249:
ぱつ子「癖子ちゃーん」
癖子「あ、ぱつ子さん。こんにちは」
ぱつ子「うん。ちょっと、聞きたいことがあってさ」
ぱつ子は事の顛末を話した。
癖子「そうですね……。その件は、3年生の間でも話題になってるんですよ。
 私のクラスは平気ですが、B組の生徒が数人やられたようで……」
どうやら学校中で噂になっているようだ。
癖子「でもね、変なんです」
ぱつ子「何が?」
癖子「犯人が使ってるのは、データベースに載ってる能力じゃないみたいなんです。
 2年生、3年生の能力は網羅されているし……。
 1年生じゃあ、3年のB組とか、2年のA組なんて一方的に倒せるわけないはずなんですが……」
250:
「あ、天然先輩! お菓子あげますよ」
「天然ちゃん。お菓子あげるわね」
「天然さんちーっす。お菓子食べます?」
天然「うしし。もうかった」
ぱつ子「……あんたは何やってんの?」
天然の両手には、こぼれんばかりのお菓子が抱えられていた。
天然「ち、違うよ! 情報も仕入れてきたんだよ!」
二人はお互いの意見をまとめることにした。
252:
ぱつ子「ふぅん。なるほどねぇ」
天然「まぁ噂程度のことなんだけど……。ここから絞り込めないかなぁ」
『どうやら犯人は一年生らしいよ』
『未知の能力を使う、学園外の人間なんだって』
『ゴリラと人間のハーフで、鉄格子を素手で折り曲げる』
『実は学園側が送り込んだ刺客で、問題児を間引いてるんだって』
『犯人は理事長だよ。新聞部のやつがスクープだって騒いでた』
『退学した生徒を死んだって言ってるだけだろ』
全て眉唾物の情報だった。
ここから犯人を捜すのは至難だろう。
二人は、>>254
A 手当たり次第に探すことにした。
B 罠を張ろう。待ち伏せする作戦を選んだ。
C 不良先輩をからかうことにした。
254:
B
255:
凶行が行われた現場には、いくつか共通点があった。
時刻は放課後、人目につかない場所。
同じ場所ではやらないだろうという考えで、
ぱつ子はまだ犯行が行われていない校舎裏で待ち構えることにした。
天然「準備はオーケー? オーバー?」
ぱつ子「あんた無線機使いたいだけでしょ……。オーバーとか言わなくていいわよ」
天然は巨木の上に身をひそめ、ぱつ子を頭上から見守っている。
二人はインカムを通じて会話をしていた。
ざわざわと木々が風にさざめく中、
無為に時間だけが過ぎていった。
256:
日も陰り、あたりが薄暗くなってきた。
ぱつ子「天然ちゃん。そろそろ……」
帰ろうか。言いかけた、その時。
天然「ぱつ子ちゃん! 後ろ!」
インカムを通じなくても、聞こえるほどの大声だった。
慌てて能力を発動し、ぱつ子は強く地面を蹴ってその場から離脱する。
地面の上を滑るようにして、ぱつ子は背後を振り返った。
先程まで自分が立っていた場所に、その男は立っていた。
悪意「へぇ……。待ち伏せ、ねェ……」
じっとりとした視線をぱつ子に向けた後、悪意は巨木の上を睨み付けた。
258:
ガザガザガザガザ!
ザンッ!
天然は巨木の上から飛び降りると、葉や枝をクッションにして地面に着地した。
天然「予定変更! 二人がかりで制圧するよ!」
当初はぱつ子が戦ってる最中に、天然が不意打ちで倒すというプランを練っていた。
しかし、待ち伏せがばれた今となってはそれは通用しない。
ぱつ子「了解! とりあえずぶっ飛ばす!」
悪意へ向け、二人は疾走する。
悪意「別に待ち伏せとか二人がかりとかはどうでもいいけどよォ」
つまらなさそうに言って、悪意は大きく口元を歪めた。
悪意「人に踊らされんのは、好きじゃあねェなあ……」
自身の能力>>260を使うに値する相手なのか、
悪意はじっとりとした視線を向け、品定めをしていた。
260:
空間切断
261:
悪意「へぇ……」
  オーバーセンス
ぱつ子の”超感覚”。
 ブラッディドーピング
天然の”純粋なる力”。
身体能力を著しく強化された二人の猛攻を、
悪意はかろうじて全て受け切っていた。
悪意「しゃらくせえなァ!!!」
叫び、悪意は大きく腕を振った。
……やばい!
二人は直感し、即座に後方へと飛び退いた。
眼前の景色が不気味に歪み、校舎の壁に亀裂が入る。
轟音をたたせて、亀裂から校舎が滑りずれた。
262:
悪意「なんだお前ら……。暴力馬鹿がよォ……」
二人は攻撃を全て受け切られたように感じていたが、
実際はそうではなかったらしい。
悪意がぺっぺっと唾を吐くと、そこに赤いものが混じっていた。
 クロスセクション
悪意「”境面断裂”……。お前らの中身も、俺が見てやるよ」
次の攻撃ではまるで指揮者のようにして、悪意は両腕を振るう。
景色の歪みが眼前で展開され、二人へとものすごいスピードで迫ってきた。
263:
天然「ぱつ子ちゃん!」
天然は、友人を失うのが怖かった。
入学当時、それを恐れるあまり、自身の心を壊すことになった。
ぱつ子「天然ちゃん! 大丈夫!?」
景色の歪みは大きくなる。
ぱつ子はその中へと、吸い込まれそうになっていた。
そんな窮地にも口をついて出たのは、友人を気遣う言葉だった。
天然「ぱつ子ちゃん!」
友人を失いたくない。
では、どうすればいい?
天然の辿り着いた答えは、とてもシンプルなものだった。
注射針へと変貌した両手を、自身の心臓に向けて打つ。
天然「うああああああああああああっ!!!!!!!」
そうだ。何が来ても守れるように。
ただただ、強くなればいいんだ。
265:
ぱつ子「きゃあっ!」
空間に飲まれかけていたぱつ子を、
寸でのところで天然が突き飛ばした。
中空を舞う落ち葉が二つに割れ、
歪んだ景色に映り込んでいたものすべてが断裂した。
ぱつ子「ありがとう。天然……、ちゃん?」
尻餅をつきながらぱつ子は、肩で息をする天然を見上げた。
真っ赤に充血した目を剥いて、天然は大きく開けた口から白い息を吹き出している。
天然「うあああ……っ」
ビキビキと音を立てて、天然の上腕が膨張した。
まるで2足歩行の爬虫類のような不恰好な歩き方で、
ゆっくりと悪意へ向けて前進していく。
悪意「はっ! ただの脳筋かァ!」
再び悪意が両腕を振るった。
歪んだ景色に、冷たく裁断された空間が飛ぶ。
天然「うああああああああああっ!!!!!!!」
血管の浮き出た腕を振るうと、天然の眼前で歪みが止まった。
赤い飛沫を上げ、狂ったように腕を振り回している。
悪意「……なんだよォ。このバケモンは」
266:
天然「あああああああああああっ!!!!!!!!!!」
叫び、地面を力強く蹴った。
一瞬で悪意の喉笛まで到達する。
悪意「チィィ!」
眼前の天然に向け、悪意は両腕を振るった。
粉々に砕けた鏡のように、天然と悪意。二人の間の空間が爆ぜる。
ぱつ子「天然ちゃん!」
天然「があああああああっ!!!!!!」
二人の叫びはほぼ同時だった。
滅茶苦茶に繰り出す天然の拳が、悪意の顔面を捉える。
悪意「あが……っ!」
一瞬で悪意は意識が飛び、能力の発動が解除された。
天然「ああああああああああああっ!!!!!!!」
それでも天然は無秩序な暴力を振るい続ける。
もう敵なのか味方なのか。
目の前の人間が生きているのか死んでいるのか。
天然にはその区別がつかなくなっていた。
268:
ぱつ子「天然ちゃん! もうやめてぇ!」
友人の背中にしがみつき、ぱつ子は懸命に叫ぶ。
ふと、天然の手が止まった。
その視線の先には、かろうじて人間の形を保っている血みどろの物体があった。
天然「ああ……。あああ……」
また、やってしまった。
天然の脳裏に、後悔の記憶がよみがえる。
天然「あああ……っ! あああああああっ!!!!!!」
友人を失うことを恐れるあまり、過去に犯してしまった取り返しのつかない過ち。
それが再び、眼前に現れたのだ。
頭を抱え、天然は慟哭を漏らす。
天然「うああ……っ! 殺しちゃった……。また……っ!」
ぱつ子「天然ちゃん!」
無理矢理にぱつ子がその身体を起こすと、
天然の頬を平手で張った。
ぱつ子「気をしっかり持って! 天然ちゃんは殺してない!
 彼はまだ……」
天然がゆっくりと顔を向ける。
か細い呼吸を繰り返す、悪意がそこにはいた。
269:
女教師「あなた達のおかげで大事にならずにすんだわ。協力、感謝します」
一連の殺人は、悪意の手によるものだということが分かった。
彼は病院で手当てを受けたのち、能力者専用の機関へと搬送された。
ぱつ子「終わったわねぇ」
天然「うん……」
浮かない顔で、天然は頷く。
精神的ショックから、未だ立ち直れていないようだった。
ぱつ子は鼻を鳴らすと、その背中を平手で思い切り叩いた。
バチン! と小気味良い音が響く。
天然「い……っ、たぁい……」
驚いたような顔で、天然はぱつ子へと視線を送った。
270:
ぱつ子「いい!? あんたが気に病むことなんてひとつもないんだからね!」
天然「でも……」
今にも泣きそうな顔で天然は何か言いかけたが、再び俯いて口を閉ざしてしまう。
ぱつ子はやや怒っているような顔で、ため息を吐いた。
ぱつ子「あんたが突き飛ばしてくれなかったら私は死んでいたし、
 悪意とかいうやつだって、あんたの注射で一命をとりとめたのよ!?
 お医者さんがすごいって、褒めてくれたじゃない!」
天然「そう、だけど……」
自分はまたいつか、同じ過ちを繰り返してしまうだろう。
友人としてぱつ子のそばにいることが、
彼女にとってひどく迷惑であることのように感じられてしまっていた。
271:
ぱつ子「あんたはもう……。ほら、ちょっと手出しなさい」
天然「手?」
ぱつ子「そうよ。ほら」
おずおずと出した天然の手を、ぱつ子が両手で握った。
ぱつ子「やっぱりね。あんたの手、すごく暖かいわ」
慈愛に満ちた顔をしたぱつ子の目を見つめながら、天然は無言のまま首を傾げた。
ぱつ子「人殺しの手なんかじゃないわ。この手に、私は何度救われたことか」
天然の目に、みるみる涙が溜まっていった。
ぱつ子「今までありがとね。そして、これからもよろしく」
微笑みを浮かべそう言うと、ぱつ子は両腕を広げた。
そんな様子を、天然がうるんだ瞳で不思議そうに眺めている。
ぱつ子「ほら。今日だけ特別よ」
天然「……うん」
ぱつ子の胸に顔をうずめると、天然の思いが決壊して瞳から溢れた。
天然「うああああああん!!! ぱつ子ちゃんありがとねぇ!!!」
天然の頭を優しく撫でつけるぱつ子の瞳にも、光るものが浮かんでいた。
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