オーガ娘「私、大きいよ?」back

オーガ娘「私、大きいよ?」


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1:
オーガ娘『ぐすっ、ひっく…』
悪ガキ1『みなしごーみなしごー!』
悪ガキ2『やーい、巨女ー!デカ女ー!』
悪ガキ3『鬼の子ー!』
オーガ娘『やめてよぅ、ぐしゅっ』
悪ガキ1『やーい!弱虫ー!』
悪ガキ2『デカイくせに泣き虫ー!』
悪ガキ3『鬼のくせにすぐ泣くー!』
オーガ娘『うぐっ、うわぁぁぁん!』
2:
男『オラァっ、お前らっ!!』ダダッ
オーガ娘『ううぅっ…お、男…ひっ、ちゃん、えっぐ…』
男『また性懲りもなくっ!』
悪ガキ1『来やがったな!』
悪ガキ2『デカイ奴にデカイって言って何が悪い!』
悪ガキ3『角なんか生やしやがって!だっせーの!』
男『おまえらっ…!!!』ムカムカ
悪ガキ1『やるか?』
悪ガキ2『いつもやられてばっかだから、今日はやり返してやる』
男『やれるもんなら、やってみろ!』
悪ガキ3『やっちまえー!』
男『おらぁっ!』
バキッ、ドカッ、ゲシッ…
……

3:
……
オーガ娘『男ちゃん、ひっく、大丈夫?』
男『いつつ…、くちびる切れてる…』
オーガ娘『ごめんね、いつも私のために』
男『オーちゃんが謝る必要なんてないだろ?』
男『悪いのはアイツらだ』ムカムカ
男『でも、1対3はキツかったな…やられちゃった』
オーガ娘『卑怯だよぅ、うくっ』
オーガ娘『アイツら、えぐ、わ、私をダシにして、男ちゃんをおびき出したのよ…』
男『…わかってた』
4:
オーガ娘『私のせいで、男ちゃんがケガしちゃ嫌だよ…ひっく』
男『こんなもんはほっときゃ治るからいいんだよ。それよりオーちゃんが傷つけられるのは我慢ならねぇ』
男『アイツら、オーちゃんが今までどれだけ辛かったか知らないから…!』ギリッ
オーガ娘『男…ひっく、ちゃん』
オーガ娘『ふふ、優しいね、男ちゃん』
男『オーちゃんはそうやって笑ってる方がいいよ』
5:
オーガ娘『いつも、ありがとう』
?「お………ゃん…」
男『いいよ、別に』
?「男……ん」
オーガ娘『私、大人になったら…』
?「男ちゃ…」
オーガ娘『男ちゃんとけっ… ?「男ちゃんっ!」
―――
――

6:
?「男ちゃんっ!」
男「んが…」
男「んあ、オーちゃん…」
オーガ娘「んあ、じゃないっ!」プン
オーガ娘「私が警護団の任務で遠方に行くから、出発までに工房に来てくれって言ったの、男ちゃんでしょう!?」プンスカ
男「ふああぁ…そだったな…」
オーガ娘「来てみたら、型紙にヨダレ垂らして寝てるし…」
男「あ、いけね、作り直しか…」ジュル
オーガ娘「あーあー、もう…」
7:
男「んん、うぇぇいぃ…」グリグリコキコキ
オーガ娘「随分お疲れのようね」
男「最近、オーダーがよく入って、忙しいのなんのって…」
オーガ娘「人気仕立て職人はツラいね、ふふふ」
男「忙しいうちが華ってことさ」
男「あ、お茶淹れるわ」
オーガ娘「もう頂いてまーす」
ホカホカ
オーガ娘「勝手に用意させてもらったよ」
男「すまないな」
オーガ娘「それで用件は何?」
8:
男「ああ、採寸だ」
男「新作のドレスを作るから、念のためにな」
オーガ娘「ああ…////」
オーガ娘「やっぱりか…////」
男「落胆するわりに、素直に寄ってくれたんだな」
オーガ娘「まあ…男ちゃんが仕立て職人になったのは、私が原因だから」
オーガ娘「協力しないとね」
男「原因とかそんな言い方するなよな」
男「俺がオーちゃんの服を仕立てたのが始まりなだけだろ?」
9:
オーガ娘「男ちゃんの手先の器用さにはびっくりしたよ」
オーガ娘「簡単に服を作っちゃうなんて」
男「小さい頃からもの作りは好きだったんだよ」
オーガ娘「それからどんどん巧くなって」
男「新作を作ると、オーちゃんスゲェ喜んでくれるから」
オーガ娘「今は自分の工房も持って、人気も出て」
男「よせよせ////」
オーガ娘「まあ、オーガ族の私の体型に合うような服なんて、そうそう無いから助かるっちゃ助かるんだけどね…」
11:
オーガ娘「…」シュン
男「自分で言ってヘコむなよ…」
男「ま、だから俺が仕立ててんだろ?」
男「オーちゃんは出るとこ出て、引き締まって全体的にバランスの取れた良いカラダしてるから」
男「モデルにピッタリなんだよ」
オーガ娘「恥ずかし…////」
男「照れんな照れんな」
オーガ娘「そんなこと言ったって////」
12:
男「はははっ」
男「オーちゃんは気にするかもしれないけど、大きいと服の見映えもよくなるし」
男「俺も結構助かってんだぜ?」
オーガ娘「そう言われると、大きいのも悪くないね」
男「そういうこと」
男「じゃあ、採寸するか!」
13:
男「ふむふむ…」メモメモ
オーガ娘(ああ…男ちゃんの前で薄着で…)
オーガ娘(女の子の極秘情報のスリーサイズ計られてるなんて…////)
オーガ娘(いつまで経っても慣れないなぁ////)
男「オッケ!ありがとう」
オーガ娘「うん」キガエキガエ
14:
男「オーちゃん、また胸でかくなったな」
オーガ娘「あえ!?////」
オーガ娘「や…やっぱり?////」
オーガ娘「最近、団の制服、前ボタンがキツくなったんだよね…////」
男「いつまで成長期なんだか…」
オーガ娘「し、身長は止まったもんっ////」
男「まあ、毎日の訓練で鍛えてるから、体幹がしっかりして姿勢もよくなるしな」
男「胸なんかは下地の筋肉が鍛えられたら大きくなりやすいらしいし…」
男「しかし…」ジー
15:
ポヨン
男「…」ニヘラ
バキッ
男「おがっ…」
オーガ娘「せっ、セクハラッ!////」
オーガ娘「目線がやらしいっ!」
男「いだいいだい」モンゼツ
オーガ娘「あ、ごめん…」
男「いたた…いや、こっちも悪かった」
男「しかし、相変わらずのパワーだな」
オーガ娘「このオーガ族天性の剛力で王立警護団にスカウトされたからね」フン
オーガ娘「コンプレックスだったのに、頼りにされると誇りに思うの…不思議ね」
16:
男「はははっ、昔はいじめられっ子のオーちゃんだったのにな」
オーガ娘「はう…////」
男「今じゃ、警護団でも一目置かれてるもんな」
オーガ娘「なんでそんな話////」
男「さっき寝てたときに、夢を見てな…」
男「小さい頃の夢だった」
男「いつも、オーガ族の事をからかわれて泣いてたのに…」
男「ホントは強かったんだよな」
男「両親を早くに亡くして、それでもへこたれず、真っ直ぐ、いい女になった」
オーガ娘「いい女…」
オーガ娘「私みたいな、デカイ女に…そう言ってくれるの男ちゃんだけだよ」
17:
男「そんなことないだろ」
男「それは見た目の話であって、みんな内側の良さにも気づいてるよ」
オーガ娘「そう、かな」
男「もう昔と違って、みんなに認められてるだろ?」
オーガ娘「まあ…うん」
男「自信持てよ」
オーガ娘「うん!」
18:
男「それで?今回の任務は?」
オーガ娘「ああ、っとね。隣国からの要請で災害支援」
オーガ娘「おととい、大嵐があったでしょう?」
オーガ娘「国境を越えてすぐの場所なんだけど」
オーガ娘「先刻の大嵐で複数の種族の集落が被災し、甚大な被害が報告されており、当国だけでは対応しきれないため応援願います、だって」
19:
男「…災害支援、か」
男「…毎度の事だけど…危険な任務の時は気をつけてくれよな」
ギュ
オーガ娘「男ちゃん…」
男「出発は?」
オーガ娘「明日夜明け前」
男「そうか」
男「帰ってきたらまたモデル、頼みたいから」
男「気をつけて、な」
オーガ娘「うん!」
オーガ娘「そろそろ行くね、明日の準備とかあるから」
オーガ娘「お茶ごちそうさま」
20:
男「明日、見送り行くよ」
オーガ娘「いいよ、男ちゃんは忙しいみたいだし」
オーガ娘「それに、夜明け前だと男ちゃん、大変でしょう?」
オーガ娘「朝、弱いし」クスクス
男「う…。まあ、確かに…」
オーガ娘「男ちゃんはいい服仕立てて!ね?」
男「ああ」
オーガ娘「じゃあ、またね」
21:
―翌日・夜明け前―
団長「今回の任務は隣国に於ける災害支援だ」
団長「如何なる状況下でも対応できるよう、各自細心の注意を以て臨むように」
総員「「「はいっ!!」」」ビシッ!
オーガ娘(男ちゃん…行ってきます)
団長「では出発する」
ヒヒーン!
ドドッドドッドドッ…
 
22:

――
男「いらっしゃい、注文の品できあがっていますよ」
客「まあ…!ホントにいつ見ても綺麗な仕上がりね」
男「ありがとうございます」
客「これで孫に素敵なウェディングドレスをプレゼントできるわ」
客「ありがとう」
男「いえいえ。またどうぞご贔屓に!」
男「ありがとうございましたー!」
男(夕方か…少し休憩しようか)
23:
[只今休憩中]
[ご用の方は呼び出しベルを鳴らして下さい→]
男(お茶は…と)カチャカチャ
男(出発から約半日…)
男(そろそろ警護団も活動し始めた頃かな)
男(無事に任務をこなしていればいいけど…)
コポコポ…
ピシッ…!
男「あ!」
男(この湯飲み、気に入ってたのに)
男(しかし、ひび割れするなんて、なんか縁起悪いな…)
男(オーちゃん…)
24:

――
オーガ娘「周辺集落の住民の避難、順調に進んでいます」
団長「ああ」
オーガ娘「ただ、二次災害の恐れもあり生存者の捜索、救助は慎重にならざるを得ません」
団長「ん…ああ」
オーガ娘「…どうかしましたか?」
団長「いや、朝な」
団長「滅多に見ない新聞の占いを見たんだよ」
オーガ娘「団長もカワイイところがありますね」
団長「うるせ。そしたら、まあ、俺の今日の運勢、最下位だったんだが…」
団長「大切なものを失うかもしれません、だとよ」
25:
オーガ娘「所詮占いですよ」
団長「それに、愛用のブーツの靴紐も切れちまったんだ」
オーガ娘「あら…」
団長「不吉だろ?」
オーガ娘「そう言えば…私も今朝、愛用のマグカップ、落としてもないのに横に真っ二つに割れましたね」
団長「横に?」
オーガ娘「マグカップの輪切りみたいな感じですね」
団長「なんか、気味悪いな…」
オーガ娘「考えすぎでは?」
団長「だといいんだがな」
26:
団員1「団長!」
団長「どした?」
団員1「危険区域のエルフの集落にて、生存者を確認しました!」
団長「よし。団員1、オーガ娘、いけるな?」
オーガ娘・団員1「はい!」
団長「行くぞ」ダダッ
27:
――
団長「くそっ」
団長「もっと早くに救援要請してくれりゃ、まだ楽に活動できたのによ」
オーガ娘「同感ですね」
オーガ娘「何故もっと早く要請が無かったんでしょう?」
団長「推測の域を出んが、過去の因縁だろう、どうせ」
団長「どうぞ慌てずに!必ず全員助けますから!」
オーガ娘「はい、もう大丈夫よ。お父さんお母さんとはぐれないでね」
エルフ子供「ありがとう、オーガのお姉さん!」
オーガ娘「どういたしまして」ニコ
オーガ娘「…でも大戦があったのはもう二百年以上前でしょう?」
28:
団長「隣国の中枢は、頭でっかちで石頭のジジイ共らしいからな」
団長「何よりメンツが大事な連中じゃねーの?」
オーガ娘「皆さん、足元気をつけて下さいね!」
団長「そんなのチャチなメンツなんかどうでもいい。今は任務に集中して救える命を救うだけだ」
オーガ娘「…ですね」
団長「落ち着いて避難して下さい!」
ポツ…
ポツ…
29:
ポツ…
オーガ娘「!」
ポツ…ポツ…
団長「雨…?」
ポツポツ…ポツポツポツポツ…
ザアァァアァァァァ…
オーガ娘「本降りかも…マズイですね」
団長「しばらくは快晴続きとか言ってたじゃねぇかよ!」
30:
ザザアァァァアアァァァァァ…
オーガ娘「未だ止む気配は無し」
オーガ娘「むしろ降り方が激しくなってきています」
団長「あと何人いる!?」
団員1「あと二人です!」
オーガ娘「急ぎましょう!」
ゴ…
ゴゴッ…
オーガ娘「!?」
31:
ガラッガラガラガラ…!
オーガ娘「そんなっ…」
ドドッ…
オーガ娘「みんなっ!離れてぇぇっ!!」
ドドドドドドッ…
団長「み、道が崩落…」
団長「前の大嵐と…この急な大雨でか!!」
団員1「向こう側も長く保ちそうにありません!」
オーガ娘「あと、あと二人なのにっ…!」
団長「くそ、何とかしないと…」
エルフ少女「パパっママぁっ!」
オーガ娘「!」
オーガ娘「…」
32:
………
オーガ娘『お父さんっお母さぁんっ!』
オーガ娘父『行きなさいっ!』
オーガ娘父『父さん達は…もう、そっちに行けない…』
オーガ娘母『あなたはっ…生きて』
オーガ娘母『私達の…分までっ…幸せになってっっ!』
オーガ娘『お父さんっ…!!お母さんっ…!!』
オーガ娘父『約束…だぞ!』
オーガ娘『約束っ…する!』
33:
オーガ娘父母『私達はずっとお前を見守っているよ』
ドドッドドドドドドドド…
オーガ娘『お父さ…お母…さ』
『いやあぁぁああぁぁあぁっっっ…!!』
……

オーガ娘「…」ギリッ
34:
オーガ娘「私が行きます」
団長「は?」
オーガ娘「私が跳び越えて、二人を連れて戻ってきます」
団長「ちょ、何言って…」
オーガ娘「私の跳躍力なら…可能です」
団長「落ち着け!オーガ娘っ!」
オーガ娘「その子に…私と同じ思いをさせたくありません!」
団長「待てっ!冷静になれっ!」
オーガ娘「エルフちゃん…」
オーガ娘「必ずお父さんとお母さんを助けるから!」
35:
ダダッ
エルフ少女「え」
団長「待…!」
ダダダッ!
オーガ娘「うぉおおぉぉあぁぁぁっ…!!」
ダンッッ!!
オーガ娘「らああぁぁぁぁぁぃっ!!!」
団長「!」
一同「「「!!!」」」
36:
ズシャアァァンッッッ!
エルフ父母「うわっ!」
オーガ娘「ふんっ!」フン
団長「と…届いた…!」
一同「「「ワアーーーー!!」」」
オーガ娘「驚かせてすいません。でも、事は急を要するので」
オーガ娘「さ、早く行きましょう。お嬢さんが待ってますよ!」ニコッ
エルフ父「な、なんて無茶を…」
オーガ娘「…」
37:
オーガ娘「私は…災害で両親を亡くしています」
エルフ母「え…」
オーガ娘「エルフちゃんに…私と同じ思いをしてほしくありませんから!」ニコッ
オーガ娘「必ず…あの子の元へ!」
エルフ父「…ありがとう」
オーガ娘「では失礼しますね」
ガシッ
オーガ娘「跳ぶ瞬間、少し力みますから…苦しいかもしれませんが我慢して下さいね」
エルフ父母「…はいっ!」
38:
オーガ娘(とは言ったものの…)
オーガ娘(助走距離は…行きの半分くらいかな)
オーガ娘(かつ、小柄な種族とは言え、成人エルフ二人を両脇に抱えて…)
オーガ娘(いや…マイナスイメージはやめよう…)キリッ
オーガ娘「ふぅっ…ふぅっ!」
 
39:
オーガ娘「…行きます」ゴクッ
オーガ娘「お父さん…お母さんっ!」
オーガ娘「男ちゃんっ…!」
オーガ娘「ふぅっっ!」グッ
タッ!
オーガ娘「私に力をっ…!私をっ…!」
ダダダッ!
オーガ娘「守ってぇぇぇっっっ!!!」
ダッンッッ!
40:
一同「「「!!!!」」」
ドンッ
オーガ娘「!」
オーガ娘「届いた…」ホッ
ガラッ
オーガ娘「え」
41:
ズルッ
オーガ娘「ヤバっ…!」
団長「お、オーガ娘ぇっ!!」
エルフ少女「お姉ちゃんっっ!」
オーガ娘「せめて…お二人だけは!」
エルフ父母「え?」
ブンッ
エルフ父母「わあっ!?」ドシャァ
ガラガラッ
オーガ娘「男ちゃん…」
42:

――
男(!)
男(!?…?)
――

43:
オーガ娘「もうモデル、できないよ…ごめんね…」ジワ
オーガ娘「もっと」ポロリ
オーガ娘「男ちゃんの仕立てた服」ポロポロ
「着たかったな」
ブチッ
 
44:
―工房―
バタンッッ!
男「おわぁっ!?」
?「しっ、失礼っ、します!」
男「警護団、の方…?」
団員2「はっ、はあっはあっ、伝令…です、はっはあっ…」
団員2「先程…はっ、派遣先から、連絡が、はあっ、ありまして…」
団員2「おっ、オーガ娘が…はあっ、任務で…はあ、被災者を救助しようと…」
男「え」ドクン
45:
団員2「救助した、二名は…、かすり傷程度で済んだんですが…」
団員2「オーガ娘が…!」
男「え…」ドクンドクン
ドクンドクンドクンドクン!
50:
―避難所―
オーガ娘「」
男「…」
オーガ娘「」
男「うぅ…ぐすっ」
 
51:
オーガ娘「男ちゃん…」
オーガ娘「泣いてるの?」
男「…」コク
オーガ娘「男ちゃん…」
52:
オーガ娘「あばら骨と足、折っちゃった!てへ♪」テヘ
男「てへ、じゃねぇ!!バカタレェ…あぐっ」
オーガ娘「ごめん…なさい…」
男「顔も…うぐ、傷、だらけで」
男「頭も、何針か、っく、縫ったらしいな」
オーガ娘「ごめん…」
オーガ娘「骨折以外は、異常は無いみたい」
男「うん…生きててくれて…」
男「うっく…良かった…ホントに良かった…ぐすっ」
53:
オーガ娘「小さい頃、ケンカで負けても泣かなかった男ちゃんが…泣いてる」
男「ひぅ、ぅうるせぇっ!」
オーガ娘「泣いてるの初めて見た」
男「ふっぐぅ…」
オーガ娘「心配かけてごめんね…しか、言えない…。ホントにごめん…」
男「ぐすっ、ああ」
オーガ娘「…これ」スッ
ボロッ
男「すん、これは…」
54:
オーガ娘「ミサンガ。切れちゃったけど…」
オーガ娘「今回も着けて任務に就いたの」
男「…ぐすっ」
男「まだ、持ってたのか…」
オーガ娘「任務の時のお守りにって、男ちゃんが入団祝いにくれたんだよね」
男「お守り…か」
オーガ娘「崖から落ちた時ね…」

……
………
55:
ガラッ
オーガ娘「え」
ズルッ
団長「お、オーガ娘ぇっ!!」
エルフ少女「お姉ちゃんっっ!」
オーガ娘「せめて…お二人だけは!」
エルフ父母「え?」
ブンッ
エルフ父母「わあっ!?」ドシャァ
56:
ガラガラッ
オーガ娘「男ちゃん…」
オーガ娘「もうモデル、できないよ…ごめんね…」ジワ
オーガ娘「もっと」ポロリ
オーガ娘「男ちゃんの仕立てた服」ポロポロ
オーガ娘「着たかったな」
ブチッ
オーガ娘「あ…」
オーガ娘「ミサンガ切れ…」
57:
………
男『これ、お守りだ』
オーガ娘『これは?』
男『南の大陸の工芸品で、願いが叶うとき切れるって言われてる、紐で編んだ腕輪』
男『ミサンガっていうものなんだ』
男『警護団の入団祝いに、な』
オーガ娘『ホント!?ありがとう!』
男『ごめんな。まだ工房も開いたばっかりで、金が無くて…』
男『余った糸とか…生地で編み込んだだけなんだ』シュン
オーガ娘『ええっ!?そんなの気にしないでよ!』
オーガ娘『ホントに…嬉しいよ、ありがとう』
58:
男『せめて、俺に着けさせてくれ』
オーガ娘『うん』
クルッキュッ
男『ほい』
オーガ娘『ありがとう』
オーガ娘『私、頑張るから!』
ギュッ!
男『ああ、応援してる』
オーガ娘『ふふ、うん!』
59:
………
オーガ娘「男…ちゃ…」
オーガ娘「私の…手…、掴んでっ…」
ガッシィッッ!!
オーガ娘「あがっ…!!」ギシンッ!
ギシッ…
オーガ娘「いぎぃっ…木の…枝っ!?」
オーガ娘「助かっ…」ベキッ…
オーガ娘「あ」
ベキベキベキッ!
オーガ娘「うそうそうそ…」ベキンッ!
オーガ娘「きゃあぁぁっ…!!」
――

60:

――
団員1「い、いました!」
団員1「おいっ、オーガ娘!!」
オーガ娘「…ぅ」
団長「様子は!!?」
団員1「息はありますっ!気絶しているだけですっ」
団員1「しかし、頭部から出血、足も折れているようです」
団長「無茶しやがって…!救護班!急げっ!!」
………
……

61:
男「俺の…手?」
オーガ娘「うん…」
オーガ娘「男ちゃんが、私に手を伸ばしてくれたの」
オーガ娘「男ちゃんが掴んで、助けてくれたんだね…」
男「大袈裟な…」
オーガ娘「ううん、本当にありがとう」
男「俺は何もしてねぇんだけど」
男「…何にせよ、大事に至らなくて良かった」
男「オーちゃんに何かあったら、亡くなったご両親に顔向けできねぇもの」
オーガ娘「ごめん…」
男「…もう無茶しないでくれよな」
62:
オーガ娘「うん…でも、わかんない」
オーガ娘「また今回みたいな事があったら、ね」
男「ははっ、オーちゃんらしいや」
コンコン
オーガ娘「はい」
団長「団長だ。入っても大丈夫か?」
オーガ娘「はい、大丈夫です」
ガチャ
団長「お?仕立屋の男」
男「おひさしぶりです」
団長「ああ」
団長「今回はすまんな。俺がついていながら、お前の大切な幼なじみに大ケガさせてしまって…」ペコリ
63:
男「あいやや、団長さんの責任じゃないっすよ!」
男「こいつが冷静さを欠いたのが問題なんであって…」
オーガ娘「…ごもっともです」
団長「確かにな」
団長「本当に…事故の日の占い、外れて良かった」
男・オーガ娘「え?」
団長「大切なものを失うかも…オーガ娘、お前は俺の大切な部下であり、大切な仲間だ」
団長「失わなくて…本当に良かった」
オーガ娘「はい…ご心配おかけしました」
64:
団長「うむ。今回は運が良かった、ということもある」
団長「今後はもっと冷静に行動するように」
オーガ娘「…はい。すいません」
団長「まあ、そのオーガ娘の無茶のお陰で、二次災害での死者はゼロ」
団長「お前はかけがえのないものを守ったんだ」
団長「入ってください」
バッターーーーン!
男・オーガ娘「!?」ビクゥッ!
ダダダッ!
エルフ少女「お姉ちゃんっ!!」ダキッ!
65:
オーガ娘「あだだだっ!あ、あばら、おお折れてるの!!」
エルフ少女「わあっ!ごめんなさいっ!」バッ
オーガ娘「え、エルフちゃん!」
エルフ少女「ありがとう!パパとママを助けてくれて!」
エルフ父母「オーガ娘さん…」
オーガ娘「お父さんお母さんも!」
エルフ父「すいません、私達のために…」
エルフ母「なんとお礼を言っていいのか」
オーガ娘「いえ、私は私の役目を全うしただけです」
オーガ娘「何より、エルフちゃんに辛い思いはさせたくなかった」
オーガ娘「私がケガ済んで、幸せな時間が守れたならそれで満足ですから」
エルフ母「オーガ娘さん…」
66:
エルフ父「エルフ、あれをお姉さんに渡して」
エルフ少女「はい!」
ゴソゴソ
エルフ少女「お姉ちゃん、これ」
オーガ娘「あら、カワイイ包み」
エルフ少女「私が包んだの!」
エルフ父「中にはエルフ族の秘薬が入っています」
オーガ娘「エルフ族の秘薬っ!?」
オーガ娘「そんな貴重な物を!?」
エルフ母「せめてものお礼です。長老様から是が非でも受け取ってもらうように、と」
エルフ父「オーガ娘さんは、この秘薬よりももっと大切なものを守ってくれました…、どうかお受け取り下さい」
オーガ娘「でも…」
67:
団長「お前はそれだけのことを成したんだ」
団長「厚意を受け取るのも礼儀だぞ」
オーガ娘「はい…、では有り難く、頂戴しますね」
エルフ母「ええ、どうぞ!」
エルフ少女「ね、お兄ちゃん」
クイクイ
男「ん?」
エルフ少女「お兄ちゃんはお姉ちゃんの恋人?」
68:
オーガ娘「どぅえっ!?」
オーガ娘「エルフちゃんっ!違っ 男「そうだよ」
オーガ娘「え////」
オーガ娘「ええっ?////」
オーガ娘(ええええっっ!!?)
エルフ少女「お姉ちゃん、優しくてカッコよくて美人で」
エルフ少女「お兄ちゃん、ハナタカダカ、だね」
男「ああ、そうだな」ニッコリ
エルフ少女「お姉ちゃんを泣かせたら私が許さないよ!大切にしてね!」ニッコリ
男「ああ、約束する」ニッコリ
オーガ娘「////////」マッカッカ!
69:
オーガ娘「あ、あ、ああの、ささ早、お薬いいい頂きますね!」アセアセ
パク
エルフ父母「ああっ!?」
オーガ娘「んえ?」
エルフ母「その秘薬は…料理とかに混ぜないと…」
エルフ父「と、とてつもなく…ニガイ、ですよ?」
オーガ娘「!!!!」
オーガ娘「ぎにゃあああああああああああああっっっっ!!!!!!」
70:
―数日後―
団長「痛みは残るようだが、もう骨は十分にくっついているそうだ」
オーガ娘「驚きました」
団長「多少なら動いても大丈夫だと」
男「すげえな、エルフの秘薬」
団長「それから」
団長「与えた休暇でキッチリ傷を癒すことだ」
オーガ娘「…はい」シュン
団長「そう落ち込むな」
団長「今回、無茶をしたと言ってもその功績は多大なものだ」
71:
団長「自信を持て、オーガ娘」
団長「団の皆も、お前が帰ってくるのを待っている」
オーガ娘「団長…」
団長「俺達の大切な『仲間』だからな」スッ
オーガ娘「はいっ!」ニギッ
アクシュアクシュ
団長「では男」
男「はい」
団長「付き添いを任せてすまないな」
男「いえ、大丈夫っすよ」
72:
団長「我々もまだ復興作業が残っているのでな」
団長「あまり時間が無いんだ。協力感謝する」
男「気にしないで下さい」
団長「それから休暇中のオーガ娘の話相手でもしてやってくれ」
男「はい。団長さんも復興作業頑張って下さい」
団長「ああ。ありがとう」
団長「外に馬車を待たせてある」
団長「直ちに帰還し、英気を養いたまえ」
オーガ娘「ありがとうございます」ペコリ
男・オーガ娘「では失礼します」
73:
――
ゴトゴト…
オーガ娘「…////」
……
エルフ少女『お兄ちゃんはお姉ちゃんの恋人?』
男『そうだよ』
……
オーガ娘(気まずい…)
オーガ娘「…はあ」
男「団から離れるの、不安か?」
オーガ娘「え?」
男「さっきから黙ってて、ため息ばっかりだ」
オーガ娘「そ、そうかな?」
オーガ娘(男ちゃん、アナタのせいですよ!)
74:
オーガ娘「不安…かな。でも、今は全力で休養に勤しみます」
男「休むのに全力…か、はははっ」
オーガ娘「ふふふっ」
オーガ娘「…忙しいのに何度も往復させてごめんね」
男「気にするな。仕事は問題無くこなしてるよ」
男「それにオーちゃんとは幼なじみなんだから、大変な時は俺を頼ればいいさ」
オーガ娘「うん、ありがとう」
男・オーガ娘「…」
75:
男「…なあ」
オーガ娘「ん?」
男「王都に着いたら、工房に寄ってくれないか?」
オーガ娘「いいわよ。どうせ暇だから」
男「見せたいものがあるんだ」
オーガ娘「え?何?何?」
男「見てのお楽しみ!」
ゴトゴト…
76:
―夜・工房―
男「入ってくれ」
オーガ娘「うわっ…!」
ゴッチャゴチャ…
シッチャカメッチャカ…
オーガ娘「どこが『問題無く』よ!」
オーガ娘「バタバタした後が目白押しじゃない!」
男「忙しいのも重なって、な」ポリポリ
77:
オーガ娘「しかし、これは…」
ゴッチャゴチャ…
シッチャカメッチャカ…
男「お客さんも忙しいのは解ってくれてるし、ボチボチ片付けるから」
オーガ娘「はあ…。ま、私のせいでもあるから後で手伝うよ」
男「そんな事より、こっちこっち!」チョイチョイ
オーガ娘「うん」
78:
男「これを見せたかったんだ」
キラキラ
オーガ娘「真っ白で…すごく綺麗…」
オーガ娘「でも不思議な形の服ね」
男「文献で見つけた『キモノ』っていう服で、東の果ての島国の服らしい」
男「その中でも」
男「花嫁に着せる、この純白の衣装を」
男「『シロムク』というらしいんだ」
79:
オーガ娘「花嫁…」
男「シロは純白、ムクは無垢」
男「純白も無垢も、清く穢れのない清楚な状態の事を指すだろ?」
オーガ娘「うん」
男「花嫁の清純さを表した衣装なんだと」
オーガ娘「へぇ…」ホレボレ
男「服の構造を調べるのにえらく時間がかかったけど…」
男「ようやく8割くらいまで作れた」
オーガ娘「新作のドレスって、これのことだったのね!」
男「ああ」
80:
オーガ娘「あ、この白い帽子みたいなのは?これも不思議な形ね」
男「それも、同じ島国の花嫁衣装で」
男「『ツノカクシ』っていう帽子なんだ」
男「白無垢とセットの帽子だ」
オーガ娘「ツノカクシ…角隠し、ってこと?」
男「まあ、そうだな」
男「説明臭くなるけど、文献によると…」
81:
男「女性が嫁入りするにあたって、嫉妬や怒りを象徴する角を隠すことで、優しく従順でしとやかな妻となることを示す」
男「だ、そうだ」
オーガ娘「なんかイヤなカンジー!」ツーン
男「違う」
オーガ娘「え?」
男「この衣装を文献で見つけた時」
男「俺は真っ先に、オーちゃんの顔が浮かんだ」
オーガ娘「え?え!?」
82:
男「オーちゃんの真紅の綺麗な髪と純白の衣装」
男「紅白で縁起がいいだろう?」
オーガ娘「…う、うん」
男「角隠し」
男「オーちゃんの額に生えた、オーガ族の象徴の角」
男「偶然だけど、ツノカクシ、そのまんまだろ?」
男「オーちゃんの為の衣装って思ったんだ」
オーガ娘「ほえぇ…」ポカーン
 
83:
男「この衣装は」
男「ただのモデルでオーちゃんに着てもらうために作ったんじゃない」
オーガ娘「え…」
オーガ娘「え、どういうこと…!?」
男「オーちゃん…」
オーガ娘「はっ、はひっ!」
男「小さい頃から一緒にいて」
男「いつのまにか好きになってた」
オーガ娘「!!////」
84:
男「体は大きいけど、心は繊細で」
男「でも芯は真っ直ぐで、決して曲がらない、決して折れない」
男「そんなオーちゃんに惹かれていた」
男「さっき、帰りの馬車で『幼なじみ』って言ったけど…」
男「俺の中で、オーちゃんはもう『幼なじみ』じゃいられないんだ」
男「この衣装を俺のために」
男「俺のお嫁さんになるために、着てくれないか?」
オーガ娘「お…と…」
オーガ娘「男…ちゃんっ!」
85:
オーガ娘「種族…違うよ?」
男「それでも心は通じ合うだろ?」
オーガ娘「私、大きいよ?」
オーガ娘「身長242センチの大女だよ?」
男「それはこっちが聞きたい」
男「俺は人間の平均身長からしたら普通だと思う」
男「でも、オーちゃんと比べたら、やっぱり小さいだろ?」
男「キスもオーちゃんに屈んでもらわなきゃできない」
男「抱きしめ合っても、抱いてるのか抱かれてるのかわかりゃしない」
男「それでもいいのか?」
86:
オーガ娘「私は…いつも守ってくれる男ちゃんが大好きだった」
オーガ娘「こんな私でも『女の子』として見てくれて、優しくて、いつも勇気をくれる男ちゃんが大好きだった」
オーガ娘「体は私の方が大きいけど」
オーガ娘「男ちゃんの『器』は他の誰より大きい!」
オーガ娘「そんな男ちゃんの…」
オーガ娘「あなたの、隣で…」
オーガ娘「その花嫁衣装を身に纏いたい!!」
男「オーちゃんっ…!!」
87:
男「オーちゃん…おいで!」
オーガ娘「はいっ!」タッ
ダキッギュウ!
男「おぅげっ」ギリリッ
オーガ娘「あ、ごめん…嬉しさのあまり…」シュン
男「大丈夫…」
オーガ娘「うふふふ」キュウ
男「なあ、キス…していいか?」
オーガ娘「…はい////」
トン
88:
男「はははっ、立て膝ついてもらってようやくか。少し情けないな」ポリポリ
オーガ娘「仕方ないよ」
オーガ娘「ね?それより////」ン
男「うん…」スッ
チュ
オーガ娘「んんっ」チュウ
男「ふむっ」チュウ
オーガ娘「ふぅっ…はぅふっ」
男「へへへ////」
オーガ娘「うふふ////」
 
89:
オーガ娘「男ちゃんっ!」ガバァッギュウ
男「ふんむっ!」ムネギュウゥゥゥゥ!
オーガ娘「大好きっ!大好き!大好き大好き大好き大好き大好きっ…!!」ギュウ
男「…!…!…!」バタバタバタ
オーガ娘「大好き大好き大好き!!!」
男「もぶぁっ!ちょ、ぜぇ、胸に、ぜぇ、押し付け、はあ、られて」
男「ぐる、はあ、し、はあ」
オーガ娘「ああっ!ご、ごめん!!」
男「ふひー、気をつけてくれよな」
オーガ娘「…はい」シュン
男「まあ、その大きな胸も大好きデスヨ?」ニヘラーニヘラー
オーガ娘「////」
90:
オーガ娘「…えっち、ばか////」
オーガ娘「採寸の時、いつもすごく見てたもんね」クスクス
男「…////」
男「…はい////」
オーガ娘「でも」
オーガ娘「私は…もう男ちゃんのモノだから…許す////」ニッコリ
91:
男「ははは」
オーガ娘「ふふっ」
男「オーちゃん…」
オーガ娘「ん?」
男「二人で、幸せな家庭をつくろうな」
キュ
オーガ娘「!」
オーガ娘「はいっ!」
―――
――

 
92:
―十数年後―
オーガ娘「おはよう」
息子「おはようごさいます!団長!」ビシッ
オーガ娘「こらこら」
オーガ娘「家では『母さん』でいいのよ」
息子「あ、ついクセで…警護団で訓練中の母さんは、ホント『鬼』だからな」
オーガ娘「まあ、ヒドイ!」クスクス
娘「ふわああああ」ノビー
男「ふわああああ」ノビー
オーガ娘「二人ともおはよう」
93:
男・娘「おはよぅふあああぁぁ」
オーガ娘「また徹夜?」
男「まあ」
娘「だってお父さんが新作のキモノのデザイン、なかなか描いてくれないんだもん!」
娘「結局、私が出した図案でいくことになったけど…」
男「ふむ、お前も随分腕を上げたな」
男「父さんはあえてお前を試したのだ!よくぞ試練を乗り越えた!」
娘「馬鹿言ってないで、早く食事!仕事も貯まってんだから!」
男「へい」シュン
娘「まったく!どっちが上かわかりゃしない!」
94:
オーガ娘「ふふふっ」
男「はははっ」
息子「何を二人して笑ってんだよ」
娘「気味悪い…」
男「息子、お前は母さんに似て良かったな」
息子「は?」
男「恵まれた体格、揺るぎない勇気、類い稀なる身体能力」
男「どれも母さん譲りのものだ」
息子「ああ、感謝してる」
息子「でも、いつか母さんを超えてやる」
オーガ娘「ふふふっ楽しみね」
95:
オーガ娘「貴女は父さんに似てるわね」
娘「ん」
オーガ娘「器用な手先、美的センス、底を知らない探求心」
オーガ娘「ホントに父さんとそっくり」
娘「私はまだまだ高みへいくよ?」
娘「それで、父さんの服より素晴らしい物を作ってやる!」
男「俺も負けねぇからな!」
オーガ娘「ふふふ」
オーガ娘「さあ、朝ごはん食べましょう!」
カチャカチャ、ワイワイ
96:
――
オーガ娘「そうそう!」
オーガ娘「エルフちゃん、今度結婚するらしいわ」
男「エルフちゃんも、もうそんな歳か!」
オーガ娘「昨日、連絡があったの」
オーガ娘「お相手は隣国の貴族なんだって!」
娘「エルフお姉ちゃん玉の輿だぁ!いいなぁ…」
息子「エルフ姉みたいな美人の嫁さん!いいなぁ…」
オーガ娘「それでね」
97:
オーガ娘「ウェディングドレスを、あなたと娘に」
オーガ娘「結婚式典の近衛兵の役を私と息子に頼みたいって!」
オーガ娘「旦那さんも賛成してくれてるみたいだよ!」サムズアップ!
一同「「「おお!イイネイイネ!」」」
オーガ娘「お忙しいとは思いますが、是非ともお願い致します、だって」
息子・娘「やるしかないでしょ!!」
男「決まりだな」
オーガ娘「そうね」
98:
オーガ娘「…じゃあ」
オーガ娘「式典当日まで各自精進に努めよ!」ビシッ
一同「「「了解!」」」
息子「先輩に近衛兵の心構えを教わろ!」
娘「早デザイン考えなくちゃ!」
99:
オーガ娘「ふふふっ」
男「どうした?」
オーガ娘「ううん、なんでもないの」
オーガ娘「ただただ、幸せだなって…」
男「そうだな」
オーガ娘「うん」
キュ
男「またまたどうした?」
オーガ娘「この幸せは、あなたのおかげよ」
男「いや、違うな」
男「二人で築き上げたもんだろ?」
100:
オーガ娘「いいえ」
オーガ娘「あなたと出会えたのが全ての始まりだった」
オーガ娘「あなたが居たからこそ」
オーガ娘「あなたと幼なじみになれたからこそ」
オーガ娘「幸せになれたんだよ」
 
101:

……
孤児院のおばちゃん『今日からうちで預かることになった、オーガ娘ちゃんっていうの』
オーガ娘『…』ペコ
男『俺は隣に住んでる男っていうんだ』
男『事情は…聞いた』
オーガ娘『…』
男『つらかっただろう?』
男『だから、俺がオーガ娘をつらいのから守ってあげる』
102:
オーガ娘『え』
男『誰だってつらいより楽しい方がいいもんな!』
男『おばちゃん!二人でちょっと出かけてきてもいい?』
孤児院のおばちゃん『ええ、あまり遅くならないようにね』
男『おっけ!』
男『早、王都を案内してあげるよ!』
男『行こう!』グイ
オーガ娘『あ』
男『えーと、オーガ娘だから…』
103:
男『オーちゃん!』
オーガ娘『あ、と、うん』
男『よろしく、オーちゃん!』
オーガ娘『よ、よろしく、男ちゃん』
男『ぎゃー、男ちゃん!?男なのに、ちゃん付けしないでくれよーぅ』プー
オーガ娘『…ふふ』
オーガ娘『男ちゃん!』
男『ぎぇー!』
オーガ娘『男ちゃん!』
男『ぴゃー!』
オーガ娘『あはははっ!!』
……

104:
オーガ娘「私、男ちゃんと出会えて本当に良かった!」
男「お?その呼び方、久しぶりだな」
オーガ娘「…ダメ?」
男「いや、久しぶりだから少し照れるけど『オーちゃん』がそう呼びたいなら、かまわないよ」
オーガ娘「あ…ふふ////」
105:
オーガ娘「男ちゃん!」
男「オーちゃん!」
オーガ娘「男ちゃん♪」ニヘラー
男「オーちゃん♪」ニヘラー
オーガ娘「男ちゃ?ん♪♪」ニヘニヘラー
男「オーちゃ?ん♪♪」ニヘニヘラー
息子・娘「…バカ夫婦め////」
 
106:
オーガ娘(お父さんお母さん…)
オーガ娘(見てくれてる?)
オーガ娘(二人と約束したこと)
オーガ娘(ちゃんと叶えたよ!)
オーガ娘(だから、これからも見守っててね)
「私、今すごく幸せよ!」
おわり
109:
最後まで読んで頂きありがとうございました
過去作共に読んで頂いている方がいるとは思わず、感激した次第です
また、新しく作った時は投下したいと思いますので、その時はよろしくお願いいたします
ありがとうございました
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