犬「くぁ。今日も平和ですね」back

犬「くぁ。今日も平和ですね」


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1:
今日も綺麗なお月さまです。
初めまして。ボク、犬って言います。
ご主人に飼われてもう・・・何年???
とにかく、ご主人と2人で暮らしています。
ん?誰かきました。
あぁいつものおじさんです。
毎日朝早くに出掛けて、夜遅くに帰ってくる人です。
今日はお酒飲んでるみたいですね。
 
おじさんは門の柵越しにボクに話し掛けます。
「お前は良いよなぁ、
 毎日寝転がってれば良いんだもんなぁ
 俺なんか、毎日、毎日仕事ばっかりだよ。」
そういうと門に寄り掛かって座り始めました。
おじさんの手が門の内側に少し入っています。
マメだらけでゴツゴツしてて、
決して綺麗とは言えない
いっぱい苦労している手。でも格好良い手。
ボクはその手をペロっと舐めてみました。
「おおぅ!くすぐったいな、お前(笑)
 なんだ、労って(ねぎらって)くれてんのか?
 ありがとうな。」
そう言うとボクの頭をクシャクシャっと撫でてくれました。
撫でてくれる手をボクも舐め返します。
 
「そうかそうか、頑張れってか?
 よっし!!!明日も頑張るか!じゃあなワン公」
そう言って背中越しにボクに手を振って歩いて行くおじさん。
おじさんの背中に向けてエールを込めて
「ワン!」
「ガララ」居間の窓の開く音が・・・
 
「夜なんだから静かにしてね。」
ご主人に怒られてしまいました(泣)
さて怒られたし、今日はそろそろ寝るとします。。。
2:
「ブルルン、ガチャ」
ん?もうこんな時間ですか?
新聞屋さんですね。おはようございます。
まだ薄暗い中、バイクのライトが明るく光ってます。
新聞屋さんのおじさんは小声で
「犬、おはよう。ホレ今日も持ってきたぞ」
そう言うとビーフジャーキーをくれます。
晩酌のおつまみの残りだそうです。
ボクも小声で
「わぅん。」
ありがとうございます、おいしいです。
「よしよし、良い子だ。今日も出迎え有難うな。
 じゃあ、また明日持って来るからな。」
毎朝ご苦労様です。運転気を付けて下さいね。
新聞屋さんを見送りましたので、小屋に戻ってひと眠りです。
3:
日が昇ってきました。今日も良い天気ですね。
高校生の女の子が走って行きます。
通り過ぎた・・・と思ったら戻ってきました。
門の前で足踏みをしながら、
「犬君、おはよ!今日も元気かい?」
元気なのはアナタです(笑)
毎朝遅刻しそうなのにボクに挨拶してくれる
元気な子です。
ボクも門の前まで行って、軽く
「わん。」
元気です。行ってらっしゃいの挨拶。
「うんそう(笑)行ってくるね。じゃあね(笑)」
ちらっと腕時計を見て
「やばいぃぃ、遅刻ぅぅ!」
また凄いさで走って行きました。
でも不思議ですね、ボクは「わん」しか
言ってないのに。
人間にはボクの言葉は通じないはずなんですが。
まぁ毎日思うんですが、取り敢えずもうちょっと
早起きしたらどうかと思うのです。。。
5:
おっ猫さん。
毎日女の子が走って行った後に現れる彼です。
「おはようございます。」
塀の上の彼に話掛けます。
ツイっとコッチを向いて
「おはよう。今日も良い天気だな。」
毎日話し相手になってくれます。
門柱の上に座ってこっちを向いている猫さん。
後ろの太陽の光に照らされてグレーの
毛色が綺麗に輝いています。
「喉渇いたな。その水貰って良いか?」
「どうぞどうぞ、飲んで下さい。」
「じゃ、ありがたく。」
ストッと飛び降りボクの水桶の水に口を付けてます。
良く犬と猫は仲が悪いと誤解されがちですけど
そんな事も無いんです。
猫さんは水を飲むと毛繕いをしながら
話し掛けてきました。
「どうだい、最近ご主人の調子は?」
実はボクのご主人、足が悪いんです。
だからボクも何年も散歩に行ってません。
ボクに見えるのは門の間からと塀の上の空だけなんです。。。
猫さんはいつもそんなボクとご主人の事を気遣ってくれます。
「最近暖かくなってきて良いみたいですよ。
 庭に出るのも増えたし、良かったです。」
「そうか、それは良かったな。君のご主人には
 たまに食べ物を貰うからな。よろしく言っておいてくれ」
・・・ボク犬ですから…。よろしく言えません…。
「じゃあ、水ご馳走様。またな!」
そう言うとヒラリと塀の上に上がり向こうに歩いて行きました。
猫さんは自由で格好良いです。ボクの憧れです。
7:
猫さんが通り過ぎた後は暫く誰もきません
今日は小春日和で気持ちよいので、
日向ぼっこでもしようかと思います。
玄関前のコンクリートの部分が最適なんです。
下はちょっとヒヤッとするけど、お日様の日差しで
上はポカポカ。
暖かくて気持ちよくて天国です。
暫く寝転がってウトウトしてしまいました。
ん?ヒクヒク。誰の匂いかな?
この匂いでこの時間だと…。
クッキーちゃんですね。朝の散歩の時間です。
「おはよう。」
門に近づいて挨拶します。白い毛並みが
今日も綺麗です。
やっぱ可愛いなぁ。
「おはよう、犬君。今日は何してるの?」
毎日こう聞かれるのですが、
いつも困ってしまいます。
だって、ボクは一日中ここでこうしているので…。
「今日は天気が良いから、日向ぼっこです。」
「あら、良いわね。気持ち良さそう。
 わたしは帰ったら家の中だから中々できないもの。
 羨ましいわ。」
8:
羨ましいですか。感じ方は犬それぞれですね。
ご主人が元気がだったらボクも散歩に行きたいです。
「そうですね。でもお散歩も良いですね。
 気持ち良さそうです。」
「あら、そんな事ないわよ。
 わたし元々歩くのそんなに好きじゃ無いし…。
 ご主人様がダイエットで歩くのにわたしも
 付き合ってるのよ。」
・・・大変ですね。
「ほら、クッキー行くわよ。」
クッキーちゃんのご主人がリードを引っ張ります。
「もぅ、そんなに引っ張らないでよ。
 またね、犬君」
「はい、お気をつけて」
行ってしまいました…
あぁ、後ろ姿も可愛いです。。。
11:
「ガララ」玄関の扉が開きます。
朝ご飯の時間ですね。
いつもとっても優しいボクのご主人です。
猫さんとも言ってましたが、
足が少し悪くて辛そうです。
今日も腰の辺りに手を当ててます。
早く良くなって貰いたいです。
「はい、犬。ご飯だよ。
 お座り。」
はい、ご主人。座りマス!
「お手」
はい、右手ですよね。よいしょっと。
「おかわり」
今度は左手ですよね。毎日やってますから。
「おあずけ」
・・・これがいつもながら辛いです。
ついヨダレが出ちゃいます。。。
でも我慢です。
「はい、食べて良し。今日も良い子ね」
ありがとうございます。いただきます。
おっ今日はドッグフードですか。
半生なこの食感がまたなんとも。。。
ふぅ、おいしかった。ご馳走様でした。
「うん、美味しかったかい?今日も良い天気だね。
 こんな日にもお散歩連れて行けなくてごめんねぇ」
ご主人、そんな事言わないで下さい。
ご主人が大変だったらボク我慢しますから。
ボクに朝ご飯をくれると縁側で座って
佇むのがご主人の日課です。
ボクは縄の届く限りご主人に近づき、
寄り添ってお付き合いします。
少しのんびりとした時間が過ぎご主人は
家の中にいってしまいました。
ちょっと寂しいです。。。
13:
また日向ぼっこ再開です。
ふう、本当に今日は良い天気です。
・・・・・・・・・くぅ。
あら?寝てしまったみたいですね。
もう日差しが随分高いです。
ん?クンクン。
この匂いは・・・。
「いぃぬぅさんー(笑)きゃきゃ(笑)」
兄君です!遊びに来てくれたんですね。
ご主人がとっても喜びます。。。
「ほら兄、そんなに走らな・・あっ。
 ほら転んだぁ。だめでしょ」
後ろからママさんが歩いてきました。
腕には弟君が抱っこされてます。
寝てるみたいですね。。。
兄君と弟君とママさんが来ると
ご主人がとっても喜ぶんです。
ボクも嬉しくなります。
あっ!目の前で兄君が転んでるんでした。
「ふえぇぇ。」
あぁ兄君、泣かないで。
ほら、ボクに乗っていいから。よいしょっと。
起き上がった兄君の足の間に頭を入れ、
背中に乗れる様に伏せてみます。
「あら犬ったら。遊んでくれるの?ありがとう」
いえいえ、どういたしまして。
…うっ重い。兄君も大きくなったなぁ。。。
「キャッキャ(笑)」
良かった。泣き止んでくれました。
さて玄関まで兄君を連れて行きますか。
14:
「ワンワン」
ご主人!遊びに来てくれましたよ。
出てきて下さーい。
あ、ご主人が出てきました。
「あら、ママ。来てたの?
 良いわねぇ兄君。犬と遊んでるの?」
うんうん、良かったご主人の顔がとっても明るい。
…に…しても…兄君。
耳を引っ張るのはやめてくれないでしょうか?
「ほら、あに、中入って。犬、ありがとうね。」
そう言うとボクの頭を撫でて家の中に
入っていきました。
さてと、まだ暖かいし日向ぼっこを続けましょう。
大分日も傾いてきましたね。。。
「ガラガラ」
暫くして玄関の扉が開きます。
もう帰るみたいですね。
「うん、母さん。また近いうちに遊びにくるから
 うんうん、分かったわよ。
 出なくていいから。座ってて。」
「兄君、弟君。また遊びに来てね。」
「ほら兄、ご挨拶は?」
「ばあば、ばいばーい」
「犬、母さんを頼んだわよ。」
ボクの頭と顎の下を撫でてくれました。
気持ちいいです。
「わん。」
了解しました!お任せ下さい!
手を振り3人が帰って行きます。
ご主人が寂しそうです。。。
また遊びにきて下さいね。
15:
3人を見送ったご主人が縁側に座ってます。
ちょっと疲れたみたいですね。
じゃあ、ボクもお供します。
またご主人にできるだけ寄り添って
お付き合いします。
しばらく夕日を見ながらボーっと佇みます。
ううーん、今日は良い日でした。
「ドサッ」
あれ?どうしました?ご主人??
ご主人?ご主人?起きて下さい。
こんな所で寝てたら風邪引いちゃいますよ。
「い・・ぬ・・・」
ご主人が苦しそうです。何とかしないと。
そうだ、隣のうちの主婦Cさんを呼ぼう!
早く行かないと・・・。
「キャン!」
走り出そうとしたボクを縄が・・・。
早く行かないとなんだ、邪魔するな!
ボクは縄をかじり必死に切ろうと頑張りました。
硬いです、でもご主人の為に頑張らないと!
あと少し、あと少し。…切れた!!!
あぁ、でも門が開けられない・・・。どうしよう。
これじゃ外に出られない。
16:
「よう、どうした?」
門柱の上から声が聞こえます。
「猫さん!!」
ボクは必死にご主人の事を伝えます。
「ご主人が倒れて、誰か、誰か呼ばないと」
「あっホントだ、ちょっと待ってろ!」
そう言うと猫さんはヒラっと門の内側に飛び降り、
門に掛かっている掛け金に向かってジャンプ!
ああ、失敗。頑張って下さい。
2回目、ジャンプ!やった、掛け金が外れた!
「さあ、早くヤツラを呼ぶんだ!」
「ありがとうございます!行ってきます!」
門を身体で押しのけて外に飛び出しました。
全力で隣の主婦Cさんの家に走ります。
玄関の前で
「ワンワンワン!」
吠えてみますが、誰も出てきません。
お出かけ中・・・か。どうしよう。
主婦Cさんの家の門から飛び出し、逆隣の主婦Aさんの家に向かってみます。
19:
門から飛び出すと誰かの姿が見えました。
あっいつもの朝の女の子だ!
「あれ?犬君。どうしたの外に出て?」
大変なんです、ご主人が…ご主人が。
失礼とは思いましたがスカートの裾を咥えて
うちの門の中に引っ張ろうとしました。
「ちょっと、やめて犬君。どうしたの君がそんなになるって?」
大変なんです、来て下さい。あぁこんな時に人間の言葉が話せれば…。
「ワン!ワン!」
やっぱり通じませんか…。
お願いです来て下さい(泣)
「ん?何かあったの?コッチにこいって事?」
そうです!通じました!コッチです。
ご主人を助けて下さい!
女の子を引き連れて家の中に駆け込みます。
ご主人はまだ庭に倒れてます。
しっかり!ご主人!
「あっ飼い主さん!大丈夫ですか?
 救急車呼びますね、ちょっと待って下さい」
そう言うとバックの中から携帯電話を取り出し、
電話してくれました。
「はい、はい、そうです本町通りの
 飼い主さんの家です。
 急いで下さい、お願いします。」
電話をすると、女の子はご主人の脇で
ずっと声を掛けてくれてます。
20:
ボクはその横で見ているしかありません。
何もできない自分が情けないです。
「ワン!ワン!」
ご主人、頑張って!もうすぐ助けが来るから。
「犬・・が女ちゃん・・・を呼んで
 きて・・くれたの? ありがとう・・・」
良いんです、そんな事言わなくても、
無理しないで下さい。
猫さんもずっと心配そうにこっちを見ています。
ピクっと何かの音に気が付いて猫さんが
向こうの方を向きます。
「おい!くるまが来たぞ!もう少しだ!」
猫さんが叫んで教えてくれてます。
ご主人、もうちょっとです。頑張って下さい。
ボクの耳にもサイレンの音が聞こえてきました。
いつもはこの音を聞くとつい遠吠えして
しまいますが、
今はそんな事してる場合じゃないです。
家の前にくるまが着きました。
「通報はこちらですか?患者さんは…
 そちらの方ですね?もう大丈夫ですよ」
そう言うとご主人を担架に乗せてくるまの中に
連れて行きました。
女の子も付き添って一緒に乗って行きました。
「アオーン!」
ご主人をお願いします!助けて下さい!
走り去るくるまに向かって遠吠えしていました。
23:
猫さんが降りてきてボクを勇気づけてくれます。
「きっと大丈夫だ。あとはヤツラに任せよう。」
そう言うと一緒に居てくれました。
不安でいっぱいのボクには猫さんの優しさが
嬉しかったです。
辺りが暗くなった頃、女の子が戻ってきました。
「犬君、頑張ったね。飼い主さん、
 
 もう大丈夫だって」
そうですか、良かった(泣)
ありがとうございます、ありがとうございます、
ありがとうございます。。。
「良かったな。ふぅ安心したよ」
「猫さんもありがとうございました。
 
 お陰でご主人が助かりました。」
「よせよ照れるだろ(笑)
 そんな大した事してないよ」
フっと笑う猫さん。やっぱり格好良いです。
24:
女の子は目の前にしゃがみ込んで
ボクの頭を優しく撫で続けてくれました。
「クゥン。。。」
女の子と猫さんの優しさで泣きそうです。
女の子はボクの頭を撫でながら横にいる猫さんを
見つけ話し掛けました。
「あれ?チビ?こんな所に居たの?
 犬君と友達なんだ(笑)ほら帰るよ。
 今日こそシャンプーの日なんだからね!」
猫さんがビクっして女の子の方を振り向きます。
知りませんでした。彼女は猫さんの
ご主人だったようです(笑)
「え゛・・・いや、まて女、
 何回嫌だって言えば… 犬、じゃあまたな!」
「あっコラ、逃げるな!待て?チビぃ。」
お二人とも、ありがとう。…ってもう見えないです。
やっぱり、足がいですね・・・。
ん?モゴモゴ。プッ。
あ・・・歯が…。さっき縄を切った時かな?
まぁ良いです。ご主人の為です。
ふぅ。今日は色々あって疲れました。
もう寝ます。
2

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