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貴音「歌のまにまに」


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1:
「あら、貴音ちゃん」
聞き覚えのある丸く柔らかな声に振り返ると、そこには私服姿の小鳥嬢が立っておりました
手には白いびにーる袋
夕餉の買い出しでしょうか?
「ええ。お給料貰ったばかりだから、ちょっと奮発」
2:
「なるほど。今宵の献立は?」
不躾だとは知りつつも、食への興味の方が上回ってしまうわたくし
淑女への道はなんと険しきものなのでしょう…
「今日はすき焼きを」
「なんと!」
す、すき焼きと
そう申されましたか、小鳥嬢!
4:
「う、うん。申しました」
つい先ほど柚塩らぁめん温玉付きを食したばかりだというのに、卑しくも反応してしうわたくし
「えっと…貴音ちゃんも一緒に食べる?」
「い、いえ。わたくしは既に夕餉を済ませてしまった身ですから」
らぁめんを食したことを悔やんだのは、今日が初めてです
8:
「そっか。残念」
「はい、真に」
ぐつぐつと耳障りの良い音を立てて煮える割り下…
まだしゃきしゃきとした食感を残している水菜…
出汁を吸い、鍋の中でふわふわとそよぐしらたき…
あぁ…
なんという"粋"!
「あ、あの、貴音ちゃん?」
10:
「わ、わたくしとしたことが!取り乱してしまいました!」
「…うふふ。今度すき焼きするときは前もって教えるね?」
「はい。是非とも」
「そういえば、貴音ちゃんもこっち?」
そう言って月の昇る方角を指差した小鳥嬢
「帰り道のことよ?」
あぁ、そのような意味でしたか
11:
「はい。そちらの方角です」
「私も。良かったら途中まで一緒に帰らない?」
「えぇ、ご一緒致します」
そういえば、小鳥嬢の私服姿を見るのは初めてかもしれません
黒いじーんずに空色のじゃーじ
そして白いにっと帽
ずいぶんと動き易そうですね
13:
太陽は姿を隠し、辺りはもうすぐ宵の刻
小鳥嬢と肩を並べて歩きながら、取り留めの無い会話を楽しみました
「貴音ちゃん、こっちこっち」
わたくしの手を引いた小鳥嬢が、公園の中へと入って行きます
「この公園を横切るのが近道なの」
公園の中には、仄かな桃花の香りが漂っていました
14:
公園の中心には小さな池
そこに渡された木橋の半ばで、小鳥嬢は足を止めました
「ちょっと休憩」
そう言って欄干に両肘を付き、大きな息を一つ
その横顔を、昇り始めた月が白く照らしていました
17:
「春らしくなってきたね」
「えぇ、真に」
「私にも春が来ないかなぁ」
わたくしに気の利いた返しなどできるワケもなく、
「そのうちきっと」
などと、芸の無い言葉を返してしまいました
やはりまだ幼いのです、わたくしは
18:
「貴音ちゃんには春が来そう?」
「わ、わたくしは別にそのようなことは」
どうやら口というものは、心情の通りには動いてはくれないようです
慌てているのが丸わかりではないですか、これでは
「わたくしには、まだ早いですから…」
そう取り繕うのがやっとでした
19:
「しのぶれど 色に出でけり わが恋は」
「なんと!」
「うふふ。やっぱり知ってるんだ、百人一首」
「…平 兼盛、ですね?」
「正解。私もね、小さい頃にお祖母ちゃんに教わったの」
それにしても、その歌は…
22:
「顔に出ていますか、わたくしは?」
「そこまでじゃないけど…何て言うか、女の勘?」
「そうですか…」
自分では忍んだつもりでも、やはり隠せぬものなのですね
23:
「貴音ちゃんらしいけどね。忍ぶ恋って」
「…持て余してばかりです」
そう
一人で持て余して、一人で泣いて…
そしてそれを、月のせいにしているのです
なげけとて 月やは物を 思はする
かこち顔なる わが涙かな
という、西行法師の歌の如く…
25:
「私も同じだったなぁ、貴音ちゃんくらいのときは」
「いまは違うのですか?」
「いまは…そうだなぁ…謙徳公?」
それはまた随分と…
「侘びしい?」
「はい、失礼ながら」
「うふふ、ちょっと自虐的だったかしら?」
27:
あわれとも いふべき人は おもほえで
身のいたづらに 成りぬべきかな
ただ一人と思っていたあなたに捨てられてしまった私には、情けをかけてくれそうな人は誰も思い当たりません
私はこのまま、独り空しく死んでしまうのでしょう…
という意味の、謙徳公の名歌
ですが小鳥嬢
やはり侘びし過ぎます…
29:
「じょ、冗談よ、貴音ちゃん」
「そうなのですか?」
「さすがにそこまで諦観できないわ。私、まだ若いつもりだから」
「ならば良いのですが…」
はて?
そういえば…
「小鳥嬢はお幾つなのでしょう?」
33:
「…何が?」
「いえ、年齢が」
「まだ若いわよ?」
「具体的には?」
「…二十代後半」
…どうやら、触れてはならぬ話だったようです
響にもよく言われるのです
「貴音、空気読んで」
などと
34:
「人には誰しも秘密があるものよ、貴音ちゃん」
「はい。一つや百個の秘密が」
辺りはすっかり宵闇に包まれ、公園内の電灯が木々を照らしています
わたくしたちの足下を、一羽の鴨がすーっと泳ぎ去っていきました
その際に生まれた波紋が、水面に映えた月をゆらゆらと揺らしています
38:
「貴音ちゃんは」
「何でしょう?」
「どこを好きになったの?」
「えっ?」
「お相手の」
…まさかそのようなことを聞かれるとは…
虚を衝かれるとは、このような状態を言い表すのでしょうか?
どこを好きに…
あらためて考えると、面映ゆいものですね
39:
返答を待つ小鳥嬢を余所に、思案に耽るわたくし
理由は幾つも考えつきます
ですが、一つ一つ理由を挙げることは、無粋なことのように思えました
それに…
どの理由も、言葉にした途端にあわあわと宙に溶けていきそう…
「ですからただ、"愛しているから"と、そう申し上げておきます」
41:
「…うん、貴音ちゃんらしいわ」
「初めてです。このようなことを口にしたのは」
「うふふ。顔赤いわよ?」
「み、見ないで下さい!そのようにまじまじと」
「なんだか私がドキドキしちゃった。プロポーズされてるみたいで」
42:
「わたくしは、はしたないのでしょうか?」
「へ?なんで?」
「女の方から愛を告げるなどと…」
淑女への道がまた遠のいていきます…
「本人に告げたわけじゃないから大丈夫なんじゃないかな?」
「そうなのでしょうか?」
「んーっと、たぶん?」
44:
ご本人に告げるなど、考えただけでも息が苦しくなります…
そんな心情を見透かしたかのように
「大丈夫大丈夫」
と微笑む小鳥嬢
「貴音ちゃんからさっきのセリフ言われたら、どんな男の人もコロってなっちゃうから」
ころっ?
「そうそう。コロコローって」
そう言いながら、右手で宙に円を描いた小鳥嬢
なるほど
ころころ、なのですね?
46:
「勉強になりました」
「私から学ぶと、私みたいになっちゃうわよ?」
自虐的な物言いをしながら、しかしその笑顔はとても愛らしいものでした
「小鳥嬢は素敵な女性です、真に」
「うふふ。一人ですき焼きしちゃうけど、それでも?」
「…ふふ。それでも、です」
僭越ながら、わたくしが保証致します
47:
「さて、休憩終わりにしますか」
「はい」
「そろそろお腹減ってきた?」
「えっ?」
「食べにいらっしゃい。一人より二人だから」
「そのための休憩だったのですか?」
「うふふ、秘密」
…ふふ
わたくしが太ってしまったら、責任を取って下さいね?
50:
「春ね、もうすぐ」
「ええ、直に」
「みんなでお花見しなくちゃね」
「はい、是非とも」
木橋を渡り終えたわたくし達の傍らを、春を乗せた風が通り抜けて行きました
その風を受けて、桃の花が一枚、はらりと
歌のまにまに、花のまにまに
そして
空を渡る、月のまにまに
お し ま い
51:
烈火の如き乙
53:

59:
とてもよかった

6

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