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昔世話になっていたバイク屋の社長から聞いた話


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カブで思い出した。
昔世話になっていたバイク屋の社長から聞いた話。
長くなるが良いか?
かれこれ12~3年前、1人の女の子が安い中古のスクーターが欲しいと来店した。
その時在庫していたのは5~6万のディオ。
彼女はバイクの知識は皆無で、その値段に驚き、その時は帰ったそうだ。
ある時早朝社長が軽トラで街道を走っていると、パンクしたチャリを押して歩く女の子を見た。
無題 Name
軽トラを止めて声をかけると以前店に来た女の子だと分かった。
その場所は店から結構離れた場所。
何処か行く途中か尋ねると、専門学校に行くと。
じゃあ送ってあげるからとチャリを積み、帰るまでにパンクを直しておいてあげるからと車に乗せた。
近くだと思った社長は行き先を聞いて驚いた。
世田谷区まで行くと。
無題 Name
此処は神奈川県の大和市。
世田谷区までは246号線で行っても30km位ある。
近所の駅までだと思った。でも少し遠くに私鉄の駅があるからそこまで行くんだな、と勝手に思った社長。
急ぎの用事があったので近くの駅まで送った。
その夜彼女から電話があり、今夜は遅くなるから取りに行けないと。
でも社長は遅くても良いから大丈夫と告げる。
そして彼女がチャリを取りに来た。夜も23時過ぎ。
 
無題 Name
社長はバイトして遅くなったんだろう位に考えていた。
だが、彼女は電車代を節約する為にかなりの距離を何駅分か歩いて来たと言った。
社長は驚くよりも怒った。
何で電車代くらいをケチるんだ!
こんな遅くに女の子が1人で何かあったらどうするんだ!
彼女は謝り、涙目で何度も頭を下げた。
社長も気まずくなり、詫びた。
無題 Name
そして彼女は事情を話しはじめた。
山梨県生まれの彼女は東京の看護学校に通っていた。
実家は裕福ではなく、仕送りも殆ど無くバイトしながら勉強していると。
住んでいる大和市は、たまたま親戚が住んでいて安いアパートを世話してもらったからと。
家賃は安いが、学校までの交通費が高く、どうにか節約する為に彼女は大和市から世田谷区までの中間の駅まで三ヶ月間毎日往復4時間かけて自転車で通っていたと。
無題 Name
そこで原付があれば楽だし早く帰って来れてバイトの時間も増やせる。
で、たまたま近くにあった社長の店に来た。
だが、彼女には即金で5万は出せなかった。
社長は困った。
親切心だけならば、どうせ乗換の下取り、タダで引取ったポンコツ。適当に直して売り捌くつもりだったから彼女にあげてしまおうか?
無題 Name
社長は奥さんに相談して、どうせ業者に流すか常連客に二束三文で売るなら彼女に安く譲りなさいよ。と。
しかし社長は、たとえ原付でも命の危険に関わる。
何のバイクの知識も無い女の子にポンコツに乗せる訳には行かない。
そこで、とりあえずキチンと動く様に整備だけでもしておこう。と思った。
無題 Name
整備してテストして、これなら大丈夫。しかし、値段をどうするか?社長はまた悩んだ。
5万が出せないのなら、自賠責、任意保険なんて知らないだろう。それにヘルメットや何やら…
そこでまた奥さん登場。
全部まとめて5万にしなさいよ!
アンタの工賃なんて要らないわよ!
無題 Name
何故奥さんはそこまで彼女に肩入れするのか?
奥さんも看護師だったから。
看護師の苦労をよく知っていたからだ。
社長は彼女に連絡を取る。
まだバイク欲しいの?
事の経緯を話し夜になり店を閉めた頃に彼女が来た。
無題 Name
これ、ちゃんと安全に走れる様に整備したから。
彼女はお金はすぐに払えないと言う。
またまた奥さん登場。
即金じゃなくて良いわよ!
ある時払いの分割払いよ!
社長、え?
無題 Name
で、結局込み込みで5万、毎月五千円。
彼女は涙ぐんで喜んだ。
翌日、奥さんが彼女の委任状を持って登録に行き、その晩に渡す事になる。
乗り方は知っていた彼女は近所を一回りして大喜び。
お財布から一万円札を社長に渡す。
そしてまたまた奥さんが、
五千円よ!無理しちゃダメでしょ!
そうだ、夕飯食べて行きなさい!
そして三人でカレーを食べる夜。
無題 Name
それから彼女は毎日大和市から世田谷までバイクで通う。
往復で70kmを超えるらしい。
月に2、3度店に来て点検をする。
あれから半年以上経った後の年始のある晩、彼女が泣きながら電話して来た。
バイクが盗まれた。
年末を実家で過ごした彼女が帰って来たら、アパートの駐輪場から彼女のバイクが無くなっていた。
無題 Name
社長の奥さんに付き添われ警察に被害届をしに行く。
多分見つからないと言い事務的に受理する警官に奥さんがブチ切れた。
慰める立場の奥さんをなだめる彼女。
怒りプンプンで店に帰って来た。
その晩は社長、奥さん、彼女はしこたま飲んだらしい。
無題 Name
そろそろ学校が始まる。
通学にはバイクがなくてはならなくなった彼女。
新しく買う余裕も無い。払いも残っている。
暫くは社長は自分の原付を貸す事になった。
ある日彼女が、同級生がスーパーカブに乗っていて、自分も乗れるだろうか?と話す。
そこで社長は閃いた。
無題 Name
店の客には地元の信金、新聞屋がいた。
そこで使われているカブの整備、販売をしていて、廃棄するカブが何台かある。
店の裏にも部品取り、廃棄待ちのカブが数台分あった。
これを何個かイチで組めるな。
彼女にそれを提案し、またまた奥さんに相談。
お金の話しは後で良いからとっとと始めなさいよ!と奥さんのGOサイン。
無題 Name
そしてまた、社長のタダ働きが始まった。
マトモそうな車体を選び、使えそうな部品を外し組み立てる。
足廻りはプレスカブの丈夫な車体を組む。
エンジンはどれもガタが来てる。
バラしてチェックして組む。
出来た。わずか3日で。
無題 Name
奥さんが彼女に電話して店に呼ぶ。
ほらこれ!あなたのカブよ!
ウチの人がちょちょいってやったの。
3万円でいいわよ。ある時払いね!
見た目は傷もあるし色もおっさん臭い青のカブ。
またまた彼女は涙ぐんで喜んだ。
奥さんが手取り足取り乗り方を教える。
若いっていいわね?、覚えが早くて、ガハハハハ!
何故か奥さんが大喜びしていたらしい。
翌々日から彼女のスーパーカブライフが始まった。
無題 Name
若い女の子がカブに乗ってる!
それだけで店の常連の男達の感心。
彼女目当てで通うヤツらも出る始末。
中にはちょっかいを出そうとするヤツもいたが、奥さんの硬いガードと彼女の真面目で素直な性格でみんなの人気者。
運転と慣れて、友達も増えてバイクが楽しいと言い始めた。
数ヶ月経ったある猛暑の日、事件は起こった。
無題 Name
店は奥さんの両親の土地にあり、両親は土地の別邸に住んでいる。
つまり社長はマスオさん。
その猛暑日に義父(以下爺さん)が倒れた。
おそらく熱中症だろう。
その日奥さんは登録に行っていて社長と老夫婦しか居なかった。
婆さんが慌てて店に来て、爺さんが倒れた!と。
そこにまたまた休みだった彼女が点検の為来た。
無題 Name
看護学生の彼女は慌て狼狽える2人の前で的確に冷静に処置をした。
そして救急車到着。
的確な処置に隊員が驚く。
看護学生だと告げ同乗する彼女。
大事に至らなく爺さんは回復。
病院に駆けつけた奥さんは泣きながら婆さんと喜ぶ。
そして何故か社長は殴られたそうだ。
無題 Name
大事を取りその日は入院し翌日退院。
老夫婦は是非お礼をと彼女を招く。
後日訪れた彼女は恐縮していたらしい。
社長夫婦には子供がいなかった。
若い頃奥さんは流産したらしい。
あの一件以来老夫婦は実の孫の様に彼女を可愛がった。社長夫婦も。
毎月のバイクの支払いは、老夫婦が、あの子からお金なんて取るな!って大激怒して私たちが払う!って。
でも彼女は払い続けた。
無題 Name
そうして彼女は看護学校を無事卒業し、2年間のお礼奉公で県内の病院に勤務が決まった。
それからも彼女はカブに乗り続け、山梨県の実家にも年に数度帰省している。
社長は相変わらず奥さんの尻に敷かれ、老夫婦は爺さんが亡くなり、婆さんは存命。
その後彼女は良い人に巡り会い結婚した。
結婚式では社長家族が実の家族よりも号泣していた。らしい。
俺の聞いた話しはここまで。
少し盛ったけど全て事実。
ありがとう。
無題 Name
いい話だった!ありがとう
無題 Name

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