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「廃村に響く エピローグ」


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1:
「謎が解かれるのを待ってたのに謎残して終わるとかふざけてんのか」という至極ごもっともな意見を貰いました
その通りです。ということで、残りの謎の答えをここで書かせていただきます
加えて最後の最後でクソみたいなミスをやらかしましたので訂正させてもらいます
これのせいで時間を無駄にした、との方がいましたら深くお詫び申し上げます
2:
廃村に響く >>913 訂正
響「むぅ。それで次は……『教頭が発覚を恐れていたのは、選別中にあったある事件』? なんだこれ?」
P「こればっかりは謎のままだな。壁新聞を見れなかったし、そういった資料も見つけていない」
響「そうだろうなぁ……。でも発覚を恐れる事件って何があったんだろ」
P「いや、待てよ。思えばあの事件の犠牲者は、選別入学者だったのか……?」
響「また……。その『あの』だとか『アレ』だとか『例の』だとか、抽象的すぎる考えを口にするのはやめてほしいぞ!」
P「なんだ響。気になってるのか?」
響「そりゃあ……。そんな思わせぶりな事を口にしてたら、気になるに決まってるぞ!」
P「そうか、すまんかったな」
響「いや、だからその思いついたことをしゃべってほしかったんだけど……」
P「間違ってたら恥ずかしいので言わない」 キッパリ
響「むぅー!」 ペシペシ
P「痛い痛い」
4:
廃村に響く >>915 訂正
P「最後は……『生き残ったのは私だけじゃない』、か」
響「樋村先生に助け出された生徒が、隠れたところにもたくさんいたってことなのかな」
P「いや。仮にそうだとしても、あのゾンビ事件で全滅しているハズ……」
響「じゃあゾンビ事件の2人が双方とも生き残れてたってこと?」
P「まぁそれしか生徒が生存できるところが見当たらないもんな。多分そういう意味で……ん?」
響「どうかしたのか?」
P「いや、まさかあのメモの意味って……」 ボソッ
響「えっ?」
P「もしそうだと時列系がおかしい……。いや、でも……」 ブツブツ
響「えっ? えっ? 一体何の話だ?」
P「……んー。資料を全部あいつにあげちゃったのは失敗だったかなぁ。確かめようがない」
響「だから何の話なのかわけ分かんないぞ―!」 プンスカ
P「つまりお手上げってことだ。資料なければ調べられないし。あーあ、残念だなぁ」 ハァー...
響「……つまり、考えを話すつもりはないんだな」
P「おうとも」 キリッ
響「……っ!」 パシーン
P「っ痛ェ!!」
9:
―…
――……
――――…………
- 病院の一室 -
警察「……はい。ご協力ありがとうございました。静養中のところ、申し訳ありませんでした」
P「いえ、暇でしたので構いません。ではまた後日、こちらから伺いますので……」
警察「はい、ご協力感謝いたします。では、失礼いたします。どうぞ、お大事になさってください」 ガラララ...
P「ありがとうございます。失礼します」
      ガラララ...  ピシャッ
P「……っふー。やっと終わったか」
      ガララ..
高木「やあ。調子はどうだね?」
P「っと、社長! あぁ、わざわざお越しいただいて……。こんな姿で申し訳ありません」
高木「何を言っているんだね。その傷は我那覇君を身を呈して護った証と聞くよ。恥じる必要などどこにもないさ」
P「は、恐縮です」
高木「ところで……で今しがた警察とすれ違ったが、調書でも取られていたのかね」
P「えぇ。何せ私くらいしか事件の概要を語れる人物がいませんからね。色々聞かれましたよ」
高木「にしても、怪我の身だし、多少控えてくれてもいいと思うのだがねぇ」 ヤレヤレ
P「警察にも事情はあるんでしょう。仕方ないです」
15:
高木「そうそう。先日キミから聞かれた内容についての答えだがね」
P「! は、はい。どうだったんでしょう」
高木「その通りだったよ。事務所に1件、アイドルに3件ほど不審な電話がかけられていたよ」
P「やはり……。そ、それで内容は」
高木「うむ。事務所の方は我那覇君の携帯からで、拾得物回収センターの職員なる人物から電話があったそうだ」
高木「『拾得物の携帯からかけており、登録番号から無作為に選び連絡させてもらった』」
高木「『この携帯に心当たりがあり、○○街まで回収に来れる方がいたら回収をお願いしたい』」
高木「『念のため、回収に来られる方の名前を控えさせていただきたい』」
高木「と、以上だったそうだ。対応は音無君がやって、実際に取りに行ったが……」
P「その街にはそんな施設は存在しなかった……と」
高木「いや。あるにはあったんだが……」
高木「そんなの知らない。そもそも拾得物に関してはこちらから弄らない、とのことだったそうだ」
P「ふむ……」
18:
高木「そしてアイドル達に関しては、如月君、三浦君、天海君へ不審な電話がかけられていたそうだ」
高木「どれも我那覇君の携帯から。内容は全て同じ」
P「同じ……ですか?」
高木「あぁ。最初はもしもしこんにちはの一言もなしに、ただ無言」
高木「アイドル側から、我那覇君へ呼びかけがあると、『いえ。音無小鳥です』、と女性の声で一言呟いたそうだよ」
高木「そこでアイドル達が、電話をかけてるのは音無君か、と呼びかけると途端に通話が切れたそうだ」
高木「声の特徴として、音無君と如月君は知らない女性の声。あとの二人は音無君の声に聞こえたと答えている」
高木「と、以上だ。キミに聞かれたことはこれで全てになるかな」
P「わざわざすいません。ありがとうございました」 ペコリ
高木「しかし何なのだね、こんな奇妙なことを聞いてきて」
P「いや、ハハハ……。入院中のちょっとした暇つぶしですよ」
高木「またまたキミィ。隠し事はよくないぞ。暇潰しでこんな奇妙なことを聞けるものか」
P「ハハハ……。その、つい先日、ちょっと推理を外してしまい、悔しい思いをしましてね。その再思考を……」 ハハハ...
高木「何だね、その推理を外す――とは」
P「んー、社長くらいにならいいかな? 実はですね……」
21:
―…
――……
――――…………
P「……と、いうことでしてね」
高木「なるほどォ。何か事件があったとは聞いていたが、まさかそんな大変なことがあったとは……」
P「あ、フルフェイスの彼女のことは、警察には今は秘密でお願いします。期を見てこちらから言いますので」
高木「んむ。まぁ、そこはキミの判断に任せよう」
P「で、今披露した推理について、彼女からこのような評価をいただきましてね……」 ペラッ
高木「ふむふむ……。おぉ、すごいじゃないか。ほとんど合っていると言われているじゃないか」
P「はい。ですが、その3点のみは外してしまってたらしくて……。それがちょっと悔しくてたまらなかったんですよ」
高木「ふむ、ふむ……。なるほどねぇ。その推理で外れているとなると……」 フムフム
P「まぁ、これらを暇してる間にいろいろ考えようかなって思ってはいるんですよ。それだけです」
29:
P「一応『選別』はこの推理で当たってるとは思うんですけどねぇ」
高木「それは私も同感だ。もっと細かく言えば、『学力』の篩分けで当たっているだろう」
P「おぉ、社長から賛同をいただけるなら少し自信が戻ってきますよ」
高木「ここまで正確に推理をしておいて何を謙遜をしてるのかね。十分すごいことだよ」
P「はは、ありがとうございます。……ちなみに『学力』のみ思った根拠はなんでしょうか」
高木「有名『中学』への進学、だね。ポイントは高校ではなく中学だという所だ」
高木「中等教育は義務教育内の教育カリキュラムだ。当たり前だが、入試に教育外の技術を使う学校はまずない」
P「しかし特待生というものもあると思いますが。それだと芸術やスポーツでも篩分けされた可能性が……」
高木「それは普通学校の場合のみだよ。あの学校では機能しない」
高木「特待というのは、要はオファーだ。招く理由が見つからなければ、当然オファーは来ない」
高木「当たり前だ。完全部外者を学校が敷地内に招くわけがない」
高木「篩分け候補を彼らに見せるだなんて論外だ」
高木「篩分けた後に、『そういえば○○君はどうしました』なんて言われたら事後処理だけに相当な労力を費やす」
高木「芸術も同じ。その生徒の存在を消しても、作品を残してしまっては本末転倒」
高木「だから篩分けをするとするならば、顔を覚えられる機会もなく、また何か作品を残すでもない『学力』のみ」
高木「そう考えたのだよ」
P「そう、ですか……。そうですよね」
31:
高木「次に『教頭が発覚を恐れていた事件』、ね。教頭というのは、例の……?」
P「えぇ。この傷をつけた犯人です。今警察がどーとかしてるみたいですけどね」
高木「ふむ……。これは、そうだな。なんとなく思い当たる節があるんだがね」
P「あ、社長もですか。実は自分も考えてる内容があるんですが……。とても口に出したくない内容でして」
高木「んむ? 君もか。私も考え付いたのは、ちょっと人に聞かせられないようなことなのだが」
P「……もしかして、2人して同じ推理をしてないでしょうね」
高木「だとしたら奇遇もいいところだがね。信憑性は増すと思うよ」
P「そうですよね。あっ、じゃあ疑問に思ったことについて、同時に言うことにしません?」
高木「ほほう、面白いね。では12の3、で言うことにしようか」
P「そうですね。えー、ではっ。1、2の3の――」
高木「放送室の事件」
P「カッター事件」
33:
高木「えーっと、カッター事件というのは……」
P「放送室で起きた9の悲劇のうちの1つの事件です。まぁ、同じ事件ですね」
高木「ということは、同じ想像をしている……ということなのかね」
P「かもしれませんね。うぇー、こんなこと、響に聞かせることなんてできませんよ」
高木「なに? 我那覇君にキミの推理を聞かせたのかね?」 ズイッ
P「いや、だからしてませんって! セクハラどころの騒ぎじゃありませんもん!」 アセアセ
高木「ま、それはそうだろうね。同じ推理であればなおさらだ」
P「……」
高木「……」
P「確認、してみます?」 オソルオソル
高木「あまり人前で口にしたくない内容なんだがね」 ヤレヤレ
P「あ、すいません社長。そりゃあ口にはできませんよね……」
高木「あぁ、別にそんなつもりで言ったわけじゃない。それにここまできて確かめないなんて選択しはあるまい」
P「あ、じゃあ……」
高木「そうだね。合ってるかどうかは別として、私の推理がキミの推理と合っているかを確認してくれ」
68:
高木「コホンッ……。えー、それでは私が疑問に思ったこととそれについての推理だがね」
P「はい」
高木「まずその事件、大まかの流れが壁新聞通りだとするならば、疑問に思われることが1つある」
高木「それはその生徒の死を隠そうとしていないということだ」
P「やはりそこに気付きますよね……」
高木「うむ。キミの考えでは、昔の隠蔽工作が杜撰だった故と思ってた節があるみたいだが――」
P「えぇ。その事件を契機に秘密の処理部屋を作る流れになったのかと」
高木「たしかにその線は十分考えられるだろう。だが、事件が起きたのは昼食時の放送室だった」
高木「全生徒が校内にいる時間帯で、しかもわざわざ放送室で殺害工作を図ろうとする……」
高木「何故そんな時間帯に? 何故そんな場所で? 下手すれば一気に事態が露見する」
高木「ヘマどころの話じゃないではないか。こんなことを教員が下手にやらかすとは思えないんだがねぇ」
P「まぁ、そうですね。私も同意見です」
高木「そして先述したように、例え事故であったとしても、その生徒の死を隠す気がまったくみられない」
P「数年後の校内新聞の記事にされるくらいですもんね。事件として新聞に載るくらいはしたのかも」
72:
高木「では本当に自殺だった場合はどうか? その場合も疑問に思う点が複数残る」
P「まず血濡れの声含む、遺体の状況ですね」
高木「そうだね。本当にカッターで自殺するには頸動脈のような血管に突き立てることが必要だ」
P「ですね。動脈は想像以上に深い位置にありますし……」
高木「あぁ。カッター程度では、のこぎりのように何度も切るか、突き刺すくらいでしか血管を傷つけられんだろう」
高木「しかし新聞の内容では、放送が行われた、ということだ。息遣いや、微かだが声らしきものも聞こえたとか」
高木「それだとこの自殺は行えない。頸動脈を突き立てれば出血のショックで意識を失う。最悪即死だ」
高木「とても放送をしてるような暇なんてない」
高木「逆に喉に突き立てた場合は血濡れの声は出せるだろうが、すぐ死ぬほどの出血にはならない」
高木「それどころか、カッターでは筋組織に阻まれて、呼吸器まで刃が通らないかもしれない」
P「とても小学生一人で出来るようなことじゃありませんよね」
高木「加えて言うなら、この自殺の方法は恐ろしく痛いだろう。喉を傷つけて喋ろうとすれば尚更だ」
高木「近年の事件を見ていたら軽々しくこうは言えないだろうが……」
高木「小学生がこんな自殺を図るとは思わないし、するにしても放送室で行うこと自体が不可解だ」
P「一応理由を考えようと思えば、思いつきはするんですけどね」
高木「そ、そこはスルーで頼むよ」
73:
P「まぁ、とりあえず自殺の線はかなり厳しいということで」
高木「そういうことで頼むよ。さ、話を戻そうか」
高木「では他殺前提で話を進めるとして、先に述べた通り、選別現場としても疑問が残る」
高木「ではどういう状況であの事件が発生したか?」
P「別の思惑で行われた殺人、あるいは偶発的な殺人と見るのがセオリーでしょうね」
高木「うむ。それなら一応は説明が通るね」
高木「あの場所、あの時刻に事件が起きたのは偶然。もしくは選別外に殺す理由があり、そうする必要があったから」
高木「死が隠されていないのは、この事件が学校側が隠蔽工作をするほどの事件ではなかったから」
高木「もしかしたらその生徒は選別側の生徒ではなく、死を隠せなかったのかもしれないな」
P「もしそうだとすれば、これは選別外の普通生徒殺人事件という別の枠組みの事件になりますね」
高木「ほとんどこじ付けに近いがね」
76:
高木「さ。では次にこの事件当時の状況へと視点を動かしてみよう」
高木「この事件が、いままでの推理通りだったとして、では誰がどのようにして生徒を殺したのか、に移るんだが……」
高木「ところでキミ。私は実物を見てないから分からないのだが、あの学校の放送室は……」
P「言わんとしてることは分かってますよ。えぇ、放送機材は全て壁付けされていました」
高木「うむ。ならば想像通りではあるね」
高木「生徒が仮に放送準備中、あるいは放送しようとして放送室内に立っていたのなら――」
P「はい。放送機材に向かって立つか座るかしていたでしょうね」
P「つまり、真正面には誰も立てなかった。言い方を変えれば、真正面から生徒の首を切ることはできなかった」
高木「うむ。生徒が事件に巻き込まれて、即時放送が行われたことを考えれば」
高木「生徒は放送機材の前に座るか立つかしていたんだろうが、キミの言った通り正面から切ることはなかなか難しい」
P「では後ろからバッサリと?」
高木「だろうね。振り返るようにして首を捻ると、肩に首が覆い隠されて更に首を切ることが難しくなる」
高木「身体ごと別方向に向けて誰かと話していた可能性もなくはないが……」
高木「それだと凶器を見せた途端に暴れて殺害どころじゃなくなるかもしれないしね」
高木「後ろから近づいてバッサリが一番しっくりくる考え方ではあるかな」
77:
高木「さ。では次に、後ろからその子をザクッとやった後だ。……ここからが本番だね」
P「偶然なのか故意なのか、あるいはその子が助けを求めるためにしたのか」
P「放送のスイッチが入り、しばらくその部屋の音声が実況されることになったって所ですね」
高木「そうだね。そして放送の内容は……」
P「血濡れの声じゃないですかね?」
高木「いや、違うだろう? 引っかけようと思ってもそうはいかんよ」 ハッハッハ
P「ハハ、バレましたか。えぇ、血濡れの声だなんて新聞には一言も書いていませんでした」
P「正確には水から空気が漏れだす音と、誰かの呪詛のような声。……でしたね」
高木「そうだね。……ところで、我那覇君はその当時の様子を再現したらしき放送を聞いたそうじゃないか」
P「えぇ。又聞きの情報になりますが――」
P「最初に『ハァハァ』という誰かの息遣い。次に『チキチキ』と何かの金属音」
P「そして『クチュッ』という生々しい音がして、その間に誰かの声。そして最後に『ガポガポ゚』と水と空気が混ざった音」
P「これですね、確か」
78:
高木「うむ。壁新聞の内容とはいささか違った風にも受け取れるね」
P「そうですね。……大人になれば、他の意味で見てとれることもできますね」 ボソッ
高木「うむぅ……、そうだね。所で話は変わるが――あぁ、言いたくないねぇ。ここで終わりにしないかい?」
P「いや、ここまできたのなら最後までやりましょうよ」
高木「いや、だが恐らくキミの思ってることと私が推理した内容は同じだよ?」
P「そうとは限りませんよ。さっきの社長の話、少しだけ私の推理と異なる部分がありましたし」
高木「ふむ? どこか違った箇所があったのかね?」 フムム?
P「あ、いえ。些末なことですし、大筋は同じなので問題ないです。それより続きを……」
高木「むぅ、そうか。なら仕方ない。……では、改めて話は変わるが、学級オカルト、87年の2月号の著者からのコメント」
高木「『エログロ路線』で進めよう、という声が挙がっていたそうだね」
P「1度しか話さなかったのに、よく覚えていますね……。その通りです」
85:
高木「不思議なものだね。『グロ』は分かる。9の……何と言ったかな?」
P「9の悲劇ですね」
高木「そうそう。9の悲劇ではグロテスクな内容を含む記事が含まれたりしていたしね」
高木「要は過去起きた事件を少し脚色して、グロテスクなものにしようということだ」
高木「では……『エロ』とはなんだ? 何を持ってエロティックな記事を出そうとしたのだろう」
P「さあ。スカートめくりとか、エロ本落ちてたーとかの事件群とかじゃないですかね」 シラーッ
高木「白々しいね、キミも……。そんなもの、『オカルト』新聞に乗せる内容じゃないよ」 ハァ...
高木「それに『グロ』成分は翌年以降の記事でも見受けられるのに、『エロ』の記事は見られない」
P「それは私が見逃したって可能性もありえますが」
高木「そうだね。だが『エログロ路線』と表現するくらいだ」
高木「エロティックかつグロテスクな記事に、当時心当たりがあったはずなんだよ」
P「学校側が禁止したのかもしれませんよ。流石にエロはダメだーって」
高木「ま、それはありえるね。問題はその『心当たり』の部分だ」
高木「加えて、えー……確か、次号の記事でとんでもないことを暴く、とも書いていたらしいね」
P「……えぇ」
86:
高木「ここで、話を事件の方に戻そうか。確か放送の内容で止まっていたね」
P「えぇ。放送の内容が別の意味でも取れる、の部分で止まってましたね」
高木「キミも意地が悪いねぇ……。ま、そうだね。あの放送はなかなかに意味深すぎた」
高木「突然だがここで、あの放送が血濡れの声ではなかった、という仮説を立ててみよう」
高木「事件の内容や、死体の状況らしき記事から、『首切り』と『水音』、『声』を無意識に繋げてしまっていたが……」
高木「首切りと放送の内容は無関係。あの水音や声、生々しい音は別の所から発生していた、と考えてみよう」
P「放送機材は機械ですし、近くに水源があるとは思えないですけどね」
高木「……分かっててやってないるだろう」 ズイッ
P「す、すいません」
高木「まぁいい。だが確かに放送室に水道が通っているとは思えない」
高木「通っていたとしても、放送機材の近くにもってくるだなんて普通考えられない」
高木「と、すればその水音の発生源はたったひとつだ」
P「人体、ですね」
87:
高木「……やっぱり考えていることは同じだったじゃないか」
P「ハハハ。そうみたいですね。余計な心労をお取らせして申し訳ありません」 ペコリ
高木「何が悲しくてこんなこと語ってるんだろうと、途中で冷静になって悩ましかったよ……」 ヤレヤレ...
P「ではここからは俺も混じって簡潔に……」
P「あの息遣いは興奮した人の呼吸音。金属音はさしずめベルトですかね」
高木「うむ。あの水音らしき音は……。うん、まぁ例のあれだろうね」
P「最後の空気と水が混じったような音も同様ですね。問題は何故あの場所で聞こえたか、と言うことですが……」
高木「偶然、というほかないか。その最中に偶然スイッチが入ってしまったのだろうね」
P「全校中に、しかも昼食時にそんな音を聞いた生徒たちに同情しますよ……」
高木「まぁ、あくまで推理通りだったとしたら、の話だがね」
P「えぇ。あくまでこれは私たちの推理、ですもんね。……でも、仮にそうだとしたら」
高木「うむ……」
P「あの事件の被害者、確か『男子生徒』だったんですよねぇ……」 ウゲェ...
90:
P「まあ、もしそうだとして犯人は――」
高木「当時、学校の放送室に入れることから学校関係者。それもソレ目的なら犯人は大人」
P「教員ってことですね」
高木「うむ。そして今までの推理通りと仮定して、例の記事に執着するとなれば――」
P「まぁ、分かっていたことですけど、教頭……ですよねぇ」
高木「そうなるね。まったく、とんでもない人物だな、彼は」 ハァ...
P「それには同意見です。……なら教頭が必死になってタイムカプセルを暴かれまいとしたのは――」
高木「いやいや。そこまでしておいて同性愛を隠すためだけ、なんてことはないだろう」
高木「彼がタイムカプセルに執着したのは、あくまでこの事件を暴かれたくなかったからだろう」
高木「恐らくこの事件は彼個人が起こした事件として――」
高木「学校の事件と異なるのならば、立件されていないため時効もまだ成立していない」
高木「発覚すれば強姦殺人鬼として逮捕され、自分の経歴も白日のもとに晒される」
高木「ようは最後まで逃げ切りたかったんだよ、彼は」
P「ふーむ……」
91:
高木「まぁ、これが彼女の言っていた『教頭が発覚を恐れた事件』だろうね」
P「頭に『推理通りなら』がつきますがね」
高木「別に今は確かめる手段もないんだし、別に自己満足のそれでいいだろう」
P「まぁそれもそうですね。しかしそっか。それで彼女は記事を……」
高木「教頭というより、その男子学生に考慮したのだろうかね。もしかしたら実名が入っていたのかもしれん」
P「思えば、カッター事件の記事だけに『諸事情により匿名』だなんて入れてましたしね。諸事情って……」
高木「もしかしたら、彼女はその事件を担当してたのかもしれんね。彼女、元新聞部員だったんだろう?」
P「えぇ。それくらいしか正体はわかりませんでしたが……」
高木「そう考えれば。『4代目』が書いていた『エログロ路線』提唱者も彼女になるのかもしらんね……」 ウーン
P「ま、そこはおいおい。というか手元に資料がないので分かりませんて」
高木「うむ、そうだね」
92:
高木「ところで……先ほどキミが言っていた、『少し違った箇所』とはどの部分だったのかね?」
P「えっ? あぁ、それは最初の自殺と選別を否定した部分ですよ」
高木「ほ。そこかね?」
P「えぇ。あの放送の内容が、男子生徒の声だとかと関係がないのだとすれば……」
P「男子生徒が普通に頸動脈を切って自殺した後、それを見つけた教頭が行為に及んだとか」
P「或いは別の日に選別し、その日昼休み時に遺体を運び出そうとして……」
P「それを担当していた教頭が我慢できなくなって例の行為に及んだ――とか考えられなくもないですから」
高木「なるほどねぇ」
P「ま、前者は小学生がそんな所で自殺する理由が見当たらないというところ」
P「後者は昼に運ぶ必要もないし、臭いなどの問題点が浮き上がってくるので否定しましたが」
高木「ふむ。それは私のミスだったね。話す順序を間違えた」
P「まあ結論は当たってましたし、良かったんですが」
106:
高木「さて、最後は『生き残ったのは私だけじゃない』、か」
P「これも心当たりがあるんですが、手元に資料がないので確かめようがなくて……」
高木「資料、ね。もしかして更衣室のメモのことかい?」
P「……すごいですね、社長。正解です」
高木「やはり、か。私もその部分を聞いた時、ん? と思ったんだよ」
P「そうなんですよねー。あれだけ、実に浮いているんですよねぇ」
高木「そのメモがあった更衣室、少なくとも87年の卒業式までは生徒が入れる程度に知られたものだったはずだ」
高木「実際にその時、更衣室として使われていたのかは知らないが……」
高木「もし使われていたのなら、ロッカーにそんな物騒な内容のメモが残っていることがおかしい」
P「ですね。少なくとも87年の3月かそれ以降にロッカーに置かれたと見るのが正しいでしょう」
高木「と、すると……例の秘密の部屋から逃げてきたということかな?」
P「いえ、それも考えてみるとおかしいんです」
高木「ふむ、というと?」
108:
P「校舎の構造です。そういえば社長は学校の地形をご存じなかったですよね」
高木「まぁ、実物は見ていないね」
P「ここの教員舎3階から逃げるとして……。階段を下りて1階まで逃げたとしましょう」
P「そこから体育館へ向かうルートを取ったとして、そのルートは職員室前を必ず通らなければいけないんですよ」
P「メモを見るに、筆者は教員に追われていたと自覚していました」
P「冷静さを欠いていたとしても、そんな危険なルートをわざわざ選ぶでしょうか?」
P「私なら……そうですね。玄関から村へと逃げるか、寮へと逃げるかすると思うのですが」
高木「ふむ……。では北校舎や南校舎をぐるりと回り込んでいった、という可能性は?」
P「それも苦しいですね。北校舎を駆け抜けて体育館へ向かったとして、入口は教員舎側にあります」
P「つまり、教員舎へと向かっていかなければいけないんですよ」
P「南校舎も同じ理由で否定できますし、なにより南校舎には寮への道があったはず」
P「生徒が逃げたのが突発的な出来事であったとして、待ち伏せされているというのも苦しい」
P「なので私が思うに、このメモの著者は、あの秘密の部屋から逃げ出してきたというわけではないと思うんです」
高木「ふむ。なるほどねぇ。ならば私の説も若干の軌道修正をしなくてはな」
111:
高木「ふむ。そう考えるとなると、87年3月以降かつ、その更衣室が隠されるまでの間で何らかの事件があった」
高木「部屋を使わないと仮定するならば、少なくとも通常の選別とは別の思惑があったのかもしれない」
P「えぇ。それで私は最初、ゾンビ事件の被害者の一人が残したのかと思ったのですが……」
高木「しかし当時、学校側は生徒全員を体育館へと押しこめていたはず……だね?」
P「はい。なのでゾンビ事件の被害者は、少なくともそのメモとは関係はないでしょうね」
P「当然、ゾンビ事件のもう1人の被害者が彼女の言う『生き残り』の可能性も十分考えられますが……」
高木「ま、そこは置いておこうか。それならそれということで」
P「そうですね。そうすると、誰がこのメモを残したという話になりますが……」
P「この場合はいくらでも考えられますね。私が目にしなかった事件や、語られることのなかった事件」
P「そういった事件の被害者が残したメモという可能性も大いに出てきます……が」
高木「キミが知り得ない事件での生き残りがいたのなら、キミの推理に間違いとして取り上げることはないだろうね」
P「そうですね。『正さなければいけない点』と書いてましたし、私の知っている事件から生き残りが出たんでしょう」
高木「キミの知っている事件群といえば……」
P「まぁ、9の悲劇でしょうねぇ」
112:
高木「となると――うん。87年3月以降に発生した事件で、かつゾンビ事件ではない事件は……」
P「タイムカプセル事件。これでしょうね」
高木「うむ。考えてみればこの事件、いろいろとおかしい所があるしね」
高木「まずひとつ。殺害の日時だ」
高木「あの学校が行っていたのは選別のはずだ。仮にタイムカプセルの子が選別側の生徒だったとして……」
高木「卒業まで漕ぎつけたのなら、選別は合格していたはずだ」
高木「それがいきなり卒業間近でやはり殺そう、とするのは聊か急に思える」
P「中学への入学手続きももう済んでいる頃合でしょうしね。あまりに急すぎます」
高木「ふたつに学校側が『行方不明』で済ませている点。もっと詳しく言えば、学校側が事件化を許している点」
P「行方不明だーって思いっきり後輩に伝わってますもんね」
高木「だがこの子が一般の生徒だとしたら、警察による事件化は防げなかったろう」
P「いくら警察に賄賂を渡しても、マスコミなんかに訴えられれば事件は大きくなってしまいますもんね」
高木「あぁ。仮に事件を鎮静化させたいのであれば、事故に見せかけて殺して、遺体を遺族に届ける」
高木「そしてこの事件を『事故』や『自殺』という形で終わらせればよかったのだ。カッター事件のように」
高木「つまる話、被害者が一般生徒なら遺体を隠してはいけないのだ」
P「ではこの子は選別側の生徒だったと?」
高木「ま、そうだろうとは思うがね」
114:
高木「しかし事件化はさせてしまっている」
高木「対応が間に合わなかったのか、或いは生徒側が騒いだためか」
高木「要は事件化をせざるを得なかったということだね」
P「学校側としては随分と迂闊ですね」
高木「逆だよ。事件化を許してでも、その子を早急に消さなければならなかった、ということだね」
P「つまり殺害理由が卒業間近になってできた、ということですね」
高木「うむ」
117:
高木「さて、では視点をメモの方に戻そう。あのメモは87年の3月以降に置かれた可能性がある、まで話したね」
高木「正直メモと生き残り、事件を繋ぐ糸は非常に脆く薄い。むしろ現状はほぼ無関係に近い」
高木「だが87年以降に起きた事件は、ゾンビ事件を覗けばほぼ全てがあの体育館と無縁な事件だ」
高木「当然、87年以降も選別などは幾度かあっただろうが、先も言った通り、このメモと選別はまず無関係だ」
高木「しかし選別外の事件が幾度も発生したとはとても思えない」
高木「起きれば少なくとも何らかの痕跡や、事件として生徒側や学校側に動きが見えたハズだからね」
高木「しかしそれがないなら、消去法からこのメモを残した事件はタイムカプセル事件の可能性が高い、と思われる」
P「ちょっと強引すぎやしませんか?」
高木「仕方ないだろう。キミから聞いた話の中だけで完結すると仮定して、話を進めてるんだから」
P「まぁもしかしたら見つけていない資料とかもあったかもしれませんが……。後の祭りでしょうしね」
高木「その時はその時だ。そもそも間違っていたところで構わないじゃないか」
高木「キミはもう事件には興味がなく、これはあくまで暇つぶし、なのだろう?」
P「……まぁ、そうですけど」 ブツブツ
高木「コホンッ。では話を事件の方に戻そうか」
119:
高木「しかしあのメモがタイムカプセル事件で書かれたものと仮定するならば、筋の通る部分もでてくる」
高木「まず時期だね。87年3月以降に置かれたものとした仮定と見事時期がピッタリだ」
P「まぁ更衣室がどの時期まで使われていたかの推理材料にした事件がコレでしたしね。当たり前と言えばそうですが」
高木「そして次にメモが見つからなかったという点だ」
高木「この推理で進めるにあたって、メモを残す事件の後にあの更衣室が使われないことが絶対条件だ」
高木「一度でも使われれば、あのメモは生徒の誰かに見つかってしまうだろうからね」
P「しかし平日、例え休日を挟んだとしても、授業がある以上更衣室を長期的に閉鎖することはできない」
P「更衣室を使えなくするには、新たに別の更衣室を作るしかない……ですね?」
高木「うむ。しかし更衣室を新たに作るにしてもそれなりに時間がかかるものだ」
高木「特に旧更衣室を壁に見せかけて隠してしまうような、工事を必要とする改装にはね」
P「そこで3月、ですか」
高木「うむ。春休みのような長期休みがあれば、工事だって入れられる」
P「おまけに授業がないので生徒の立ち入りなんてまずない……ですか」
高木「そうだね。工事のタイミングだって別に変ではないだろうし、カモフラージュにはピッタリの時期だ」
121:
高木「だがこれが同一の事件だったとして、1つの疑問が生じる」
P「何故更衣室を閉鎖しなくてはいけなかったのか、ですか」
高木「うむ。当初はタイムカプセルを学校側が確保するために、その入口となる更衣室を閉鎖したのかと思われた」
高木「しかしそれなら早急に閉鎖などせずとも別の穏便なやり方があったはずだ」
高木「では何故、早急に更衣室を閉じなければいけなかったのか?」
高木「もっと言うなら、どうして中身をそのままにして外の入り口だけを隠すような改装をしたのか」
P「事件の痕跡が残っていた、からでしょうね」
高木「そうだろうね。私が思うに……大量の血や肉片が飛び散った状態だったんだろうね」
P「そういえばメモのあったロッカーの底がドス黒く変色してた、と響が言ってましたね」
高木「うむ。しかしここで血が飛び散るような殺し方をする必要はない」
高木「絞殺、撲殺……。血の出ないやり方はいくらでもあったはずなのに」
高木「だが何故かそこでは血が大量に出るであろう殺し方をした。それは何故か?」
高木「それは必要だったからだろう。では何が為にそんな殺し方をする必要があったのか?」
高木「……ま、もう言わずともわかるだろうね」
P「ここで樋村、ですか」
122:
高木「うむ。その生徒を救うためにダミーの死体を使ったんだろうね」
P「これが『生き残ったのは私だけじゃない』、の内容ですか」
高木「あぁ。だがそれでも先に起こるゾンビ事件でこの生徒が死んでしまっては元も子もない」
高木「恐らく、この子はちょうどその年に卒業したんだし、樋村教諭の手で他の街の中学校へと送られたのだろうね」
P「それでゾンビ事件には巻き込まれなかった、と」
高木「うむ。あくまで想像の話になってしまうがね」
P「そうすると、この救われた子は誰って話になりますが……」
高木「想像はついてるんだろう?」
P「えぇ、まあ。あくまで想像ですが。――学級オカルトの4代目の筆者でしょう?」
高木「だろうね。もしその子が被害者なら、卒業間際になって急に学校が消そうとした説明がつく」
P「醜聞を調べた、或いは記事にした人物本人を消すため、でしょうね」
高木「それくらいしか今は思いつかんよ」
124:
高木「ま、推理した事件の概要はこうだ」
高木「3月の卒業シーズンになって、壁新聞で学校の教員、教頭だね。彼の醜聞に関する記事が書かれる」
高木「それを見た学校側は慌てて事件の隠蔽を図る」
高木「新聞はもちろんのこと、その記事を書いた本人までも消そうとした」
高木「本人を消そうとするくらいだから、それなりの論理と証拠を兼ね備えた記事だったのかもしれないね」
高木「そして卒業式の前後、春休みの前あたりの日に、学校はその生徒を一人呼び出した」
P「その時に本人からタイムカプセルに原版を埋めたとでも言われたんでしょうかね」
高木「かもしれんね。それで激高した教員から逃げ出して、あの更衣室へと隠れ、メモを残した」
P「そして樋村が偽の死体で死を演出し、生徒を救い出した」
高木「しかしおかげで更衣室は血まみれの地獄絵図だ。慌てて更衣室を閉鎖し、春休みを使って更衣室を封印した」
P「更衣室内がそのままで、外だけをカモフラージュするようにしていたのは、業者を中に入れなかったからですかね」
高木「簡易的な掃除をしても、血の跡と言うのは簡単に取れるものではないしね。そうなんだろう」
P「そして救い出した生徒を、学校の手の届かぬ場所へと送り、事件は一旦幕を閉じる。ですか」
高木「そうだね。これが『生き残ったのは私だけじゃない』に関する内容だろう」
P「果して合ってるのかなぁ。ここまで推理したら本気で気になりますわ」 ウーン
125:
高木「それをハッキリさせるために、資料を調べなおそうとしたんだろう?」
高木「もっと正確に言えば、例のメモと、学級オカルトの文字が同一人物のものか調べたかった。違うかい?」
P「へへ……。やっぱ隠せませんね。その通りです」
P「もし一致していれば、ほぼこの推理に確証が持てたんですけど――まぁ無いものは仕方ないです」
高木「ま、過ぎてしまったことを深追いしないことだね。もう事件は終わったんだ」
P「分かってますよ。単なる入院中の暇つぶしです」
高木「うむ、それが一番だ。ま、とりあえずこれでキミの疑問に思っていたことは全部解き明かしたかな?」
P「え、えぇ。まぁ合っているかはともかくとして、一応は」
高木「それならばいい。――さて、随分と長居してしまったな。そろそろ行かなくては」
P「あっ。そういえばまだ社長は仕事中でしたよね。変なことにつきあわせてしまって申し訳ありません」 ペコリ
高木「いや、こちらが勝手に興味を持ったことだ。謝ることなんてなにもないさ」 ハッハッハ
高木「さて……。では身体に気を付けてくれたまえ。ゆっくり休養するのだよ」
P「はい、わざわざありがとうございました。では、また事務所で」
      パタン
127:
P「ふぅ……。思ったより長く話してしまってたな。とりあえずもうひと眠りするか……」
     コン コン
P「――と、思ったそばからこれか……。はーい、どうぞー」
響「し、失礼するぞー」 ガララ...
P「って、響じゃないか! どうしたんだ一体」
響「えっと……」 モジモジ
P「あぁ、そこに立ってないで、とりあえずこっちに来なさい。ほら、椅子」
響「うん。ありがとだぞー」 スタスタ ポスッ
P「……で、何の用だ。まだ怖くて眠れないのか?」
響「違うぞ! 違うんだけど……」 モジモジ
P「なんだ、要領を得ないな。何でも言っていいんだぞ。この部屋には今俺たちしかいないんだから」
響「……うん。そのね」
P「あぁ」
響「さっき春香に聞いたんだけど、あの時やっぱり自分の携帯に電話なんてかけてなかったんだって」
P「ほう?」
128:
響「プロデューサーが例示した中で一番説得力のある説明だったのに、違ったみたいで……」 モジモジ
響「でもそれなら、あの電話は一体なんだったのかなって――気になってしかたがないんだぞ」
P「ん? なんだ。まだ廃村の出来事を気にしてたのか」 ハッハッハ
響「そ、そんなこといったって、気になるんだから仕方ないじゃないか!」 プンスコ
響「それにあの謎だけ放置して終わりーだなんて、ちょっと尾を引く感じで嫌だぞっ!」
P「ま、そういうことなら別にいいが……。響、タイミングが良かったな。あれ、多分解けたぞ」
響「へっ? そうなのか?」
P「あぁ。響が聞いた春香の声。あれはな……」
響「う、うん」 ゴクリ
P「恐らく、春香本人の声だ」
129:
響「は、春香本人の声? それなら納得だけど……え? でも春香は――」
P「ただし、『最初の声だけ』という条件がつくがな」
響「へ? 最初だけ?」
P「ついさっき、社長から聞いたんだよ。響の携帯から春香や他のアイドルへ連絡した痕跡があったって」
響「えっ。自分の携帯から? そんなの自分、かけてないぞ!」
P「いや。だからあのフルフェイスの女性がかけたんだろうよ」
響「あの人が」
P「そ。そして多分その時に録音でもしたんじゃないかな」
P「お前、最初の電話出た時、春香かどうか確認しただろ? その時電話の相手はどう答えた?」
響「そ、それは……。ただホテルから連絡が云々って言ってて……」
響「……うん、確かに春香か? っていう質問には何も答えてくれなかったぞ。そういえば」
P「まぁ、つまりはそういうことだ。恐らくお前が最初に聞いた台詞と、その次に聞いた台詞」
P「もともとは地続きの台詞だったんだろうな」
130:
響「そ、それを分割して自分に聞かせたってことか?」
P「分割は意図的なのかは知らないが、結果的に受け答える形になったんだろうよ」
P「そしてその受け答えを聞いたお前は、電話の相手を春香と信じ込んだんだ」
P「お前、当時安堵感から決壊して大泣きでもしてたんじゃないか?」
響「うぐっ。それはっ……。そうかもしれないけど、でもあの時は本当に安心して……」 ブツブツ
P「まあまあ、別にからかってなんかないさ。だが、そうやって感情的になれば冷静さを失う」
P「そうなれば後は簡単だ。バレない程度に声色を変えて、受け答えをすればいいだけだ」
P「冷静さを欠き、かつ電話越しの相手を騙すくらい、短い時間くらいなら可能ではあったろう」
響「それが……例の電話の真相?」
P「細部は違うかも知れんが、だいたいそうだろうよ」
P「じゃなきゃ、お前の携帯からアイドル達に電話する意味が見当がつかないからな」
響「そう、なのかー……。そうだったのかー」 ブツブツ
P「納得いったか?」
響「うーん、半々ってところだぞ」
131:
P「ま、今は納得できなくともいいさ」
響「いいの?」
P「ああ。やがて時間が経って冷静に振り返ることができれば、自ずとお前の中で真相は決まるだろう」
P「その時、ちゃんと収まる所に収まれば、別にいいのさ。真実なんて」
響「随分と投げやりだなー」
P「だって終わったことなんだし……。ふゎぁ?……っ。眠いわ……」 ゴロン
響「ん? 眠いのか?」
P「ああ。廃村では寝ないで走りまわってたからな。ちと疲れが一気に、な」 ヘニャー
響「それは……お疲れ様だぞー」
P「お前もそうなんじゃないのか? あぁ、いいねぇ若いってのは」 シミジミ
響「自分は少しの間だけ休んだぞ。それにプロデューサーだって、そんな歳ってわけじゃないじゃないか」 ペチペチ
P「いやぁ?……。20台も後半を越えるといろいろな……」
響「まったく……。仕方ないぞ」 ヨイショット
133:
P「? 何だ、いったい」
響「病院だからあんまり声出せないけど……。プロデューサーが眠れるまで、何か歌ってあげるぞ」
P「おいおい。お前も疲れてるだろうし、そんなサービスしなくても」
響「自分は平気だぞ! さ、寝て寝て」 グイグイ
P「たは……。ならお言葉に甘えて……」
響「うん……。じゃあちょっと耳元に失礼して、っと。じゃ、歌うぞー」 イソイソ
響「?♪」
P「おぉ……。こりゃあ心地いいな……。本当に、夢……心地……みたいに……」
響「?♪ ?♪」
P「……」
響「????♪」
――――…………
――……
―…
135:
―…
――……
――――…………
P「zzz……」 スピィ
響「えへへっ。プロデューサー、本当に寝ちゃったぞ」
響「……」 キョロ キョロ
響「プロデューサー、頼りにしてるからな。これからも、ずーっと一緒に……」 スッ...
響「……」 ピタッ
響「……やっぱやめとこ。せっかく寝たのを起こしちゃ悪いし」 スクッ
響「じゃ、プロデューサー。おやすみなさいだぞ」 スタスタ
P「なぁ……」
響「ん?」 クルッ
P「迷子の子猫……たらばがに……」 ムニャムニャ
響「……なぁんだ。寝言かぁ。どんな夢見てるんだろ」 ハハッ
137:
響「それじゃ、今度こそ起こさないように……」 ソロリ ソロリ
P「……うーん、響……俺……」 スヤァ
響「自分もプロデューサーの夢に出てるのかな」 ガラララ...
P「――――」 ボソッ
響「!」 ピタッ
P「うーん……」 ムニャムニャ
響「今のって、もしかして……」
響「……」
P「Zzz……」
響「……えへへっ。ありがと、プロデューサー。自分、頑張るからな……」
響「じゃ、今度こそ本当におやすみなさいだぞ」 ガラララ....
      パタン
- Fin -
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