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ペリーヌ「チョコを受け取ってください!」芳佳「よろこんで!」
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1:
ミーナ「美緒、届いたわよ」
美緒「なにがだ?」
ミーナ「分かってるくせに。ほら、世界中から貴方宛に花やメッセージカード、ケーキにチョコレート、手作りのぬいぐるみもあるわ」
美緒「そうか。もうそんな時期か……。それにしても年を追うごとに量が増えているな」
ミーナ「坂本美緒のファンは多いもの。仕方のないことよ」
美緒「ありがたい話だが、量が量だけに困るな。返事を書く身にもなってほしいところだ」
ミーナ「そうやって律儀に返事を出すから、贈られてくる量が増えていくのよ?」
美緒「何を言っている。当然の礼儀を怠ることなどできないだろう」
ミーナ「うふふ、そうね」
ペリーヌ「……」
ペリーヌ(今年こそは直接渡したい……。でも、少佐は迷惑そうにしていますわね……)
ペリーヌ「はぁ……」
2:
ペリーヌ(いえ。貴族ともあろう者が弱気になってどうするのです)
ペリーヌ(折角、リーネさんに頼んで取り寄せたこのチョコを無駄にしないためにも、今年こそは坂本少佐に直接渡して……そして……)
ペリーヌ(私の想いを……!!)
芳佳「あ、いたいた。ペリーヌさーん。ガリアからペリーヌさん宛てに荷物が届いてますよー。アメリーさんって人からですけどー」
ペリーヌ(とはいえ、少佐は迷惑そうにしていたことも事実ですし……)
芳佳「ペリーヌさん?」
ペリーヌ(さりげなくお渡ししなければ、少佐のご気分を害してしまう結果に……)
芳佳「どうしたの?」
ペリーヌ(さりげなく渡す練習をしておきませんと)
ペリーヌ「――チョコを受け取ってください!」
芳佳「え?あ、はい!よろこんで!」
ペリーヌ「そ、そんな。この程度で喜んでいただけるなんて……感無量ですわぁ……」
芳佳「食べていいですか?」
ペリーヌ「どうぞどうぞ。……あら?」
芳佳「いただきまーす」
3:
シャーリー「あぁー。これどうするかな?」
リーネ「これ全部、シャーリーさん宛てに届いたものですか……?」
シャーリー「世界中から毎年くるよ。リーネ、食べるか?」
リーネ「い、いえ、食べるなんてできませんよ」
シャーリー「私もこんなに甘いものばっかりいらないんだけどなぁ。花とかメッセージカードぐらいでいいのに」
リーネ「シャーリーさんは仕方ないですよ」
シャーリー「今年もルッキーニと一緒に食べるか」
芳佳「リーネちゃん……」
リーネ「芳佳ちゃん、どうしたの?」
芳佳「あの……チョコレートってどうやってつくるの?」
シャーリー「お?宮藤にもそういう相手がいるのか?」
リーネ「……そうなの、芳佳ちゃん?」
芳佳「うん。ペリーヌさんにチョコあげないといけなくて……」
リーネ「ペリーヌさんに……?」
シャーリー「へぇー。まぁ、ありえなくもないか」
4:
リーネ「そうなんだ」
芳佳「リーネちゃん、チョコレートってどうやって作るの?知ってたら教えて欲しいなぁって」
リーネ「……いいよ。食堂にいこっか」
芳佳「ありがとー!!」
シャーリー「リーネ、私宛に届いたチョコもっていくかー?」
リーネ「ダメですよ。シャーリーさんへの想いが詰まったものなのに、使えません」
シャーリー「それ言われるとなぁ……」
芳佳「よかったぁ。ペリーヌさんも元気になってくれるかもー」
リーネ「……うん。きっと元気になると思うよ」
芳佳「リーネちゃん?」
リーネ「え?」
芳佳「なにか、あった?」
リーネ「何もないよ。どうして?」
芳佳「ごめん、私の勘違いかな。ちょっと落ち込んでるような気がして」
リーネ「落ち込んでないよー。変な芳佳ちゃんっ」
7:
ペリーヌ「うおぉぉ……おぉぉ……」
エイラ「……なんだ?ツンツン眼鏡のやつ、廊下で寝てるぞ」
サーニャ「ペリーヌさん、どうしたんですか?」
ペリーヌ「うぅぅ……おぉぉ……」
エイラ「おい。起きろってー」
ペリーヌ「ほ、ほうっておいてください……そして笑えばよろしいでしょう!!!」
エイラ「いきなりメンドくさいな」
ペリーヌ「今年の想いは……もう、とどきませんもの……」
サーニャ「とにかく立ちましょう?ここで寝ていたら怒られますから」
エイラ「ほら、立てよ」
ペリーヌ「少佐への……少佐への想いが……よりにもよって豆狸の胃袋に収まってしまうなんて……」
エイラ「あぁ、そうか。サーニャ、今年はなにがいい?」
サーニャ「エイラからのプレゼントならなんでも嬉しいわ。そういうエイラはなにがいい?」
エイラ「私もサーニャからのプレゼントならなんでもいいってー。えへへー」
ペリーヌ「……」
9:
サーニャ「あ……。ペリーヌさんにも今年は贈ります」
エイラ「サーニャが贈るなら、私も贈ってやるよ」
ペリーヌ「同情なんて結構ですわ!!!」
エイラ「なんだよ。折角、やろうと思ったのに」
ペリーヌ「そんなついでみたいに渡されても困ると言っていますの!!」
エイラ「わかったよ。なら、無しでいいんだな?」
ペリーヌ「ええ。結構です」
サーニャ「……そうですか」
エイラ「いこ、サーニャ」
ペリーヌ「え……」
サーニャ「ごめんなさい……」
エイラ「サイテーだよなぁ」
ペリーヌ「……」
サーニャ「ペリーヌさん……」
ペリーヌ「ちょ、ちょうだいします!!なんでもいいからくださいな!!」
10:
エーリカ「……あれ?すっごい甘い匂いがするぅ」
ルッキーニ「ホントだぁー!!」
エーリカ「食堂からかな」
ルッキーニ「そういえばもうすぐバレンタインデーだった」
エーリカ「おー。そうだね。お菓子作りが盛んになる時期じゃん」
ルッキーニ「きっと、芳佳かリーネがつくってるんだ!!急がなきゃ!!」
エーリカ「わーい!おっかしーおっかしー!!」
ルッキーニ「クッキーかなぁ、ケーキでもいいしぃー、チョコなんかもほしー!!」
エーリカ「私はお菓子ならなんでもいいやー」
ルッキーニ「よっしかー!!おかし――」
バルクホルン「……ん?なんだ、騒がしいと思ったらルッキーニ少尉か」
ルッキーニ「あにゃ……」
エーリカ「トゥルーデじゃん。なにしてるの?」
バルクホルン「見ての通りだ。ケーキを焼いている。あとはチョコレートクッキーも並行して作っている」
エーリカ「マジ!?やったー!!」
12:
バルクホルン「何故、お前が喜ぶのかはわからんが、確かにこれは会心の作品になるだろう」
ルッキーニ「おいしそー」
エーリカ「ねえねえー。どれぐらいで出来上がるの?」
バルクホルン「あと1時間ぐらいだろうな」
エーリカ「今日はご馳走だね」
バルクホルン「今日の献立はいつも通りだったはずだが」
ルッキーニ「にしし……」
バルクホルン「つまみ食いしてみろ。私が考案した拷問を受けてもらう」
ルッキーニ「ひっ!?ごめんなさい!!」
エーリカ「たのしみー」
芳佳「あれ、みなさん、なにしてるんですか?」
リーネ「甘い香りがすると思ったら……」
バルクホルン「み、宮藤か。なんのようだ?」
芳佳「あの。チョコレート作りたくて」
バルクホルン「なんだと?何故だ?どうしてチョコを作る?目的を言ってもらおうか、宮藤」
14:
エーリカ「そりゃ、贈りたい相手がいるからでしょー?」
芳佳「贈りたいというか、渡さないといけないというか……」
バルクホルン「相手は?」
リーネ「ペリーヌさん、です」
バルクホルン「……なるほど」
芳佳「あの、リーネちゃん。時間もないし、早作ろう!」
リーネ「う、うん。そうだね」
バルクホルン「厳密に言えばチョコレートを作るのは無理だ。既製品を溶かして型を取り、冷やして固めろ」
芳佳「そうなんですか!わかりました!!」
リーネ「バルクホルンさん、チョコレート余っていますか?」
バルクホルン「ここにある」
芳佳「わーい!ありがとうございます!」
リーネ「それじゃ、つくろっか」
芳佳「うん!!」
ルッキーニ「よしかぁ!私の分もつくってー!」
15:
リーネ「まずは湯煎して……」
芳佳「うん」
バルクホルン「……」
エーリカ「宮藤ー。私の分も忘れないでよー」
芳佳「はい!忘れません!」
リーネ「はぁ……」
芳佳「リーネちゃん、どうしたの?」
リーネ「え?なんでもないよ」
芳佳「そんな風には見えないけど……」
バルクホルン「……」
芳佳「バルクホルンさんも顔色が悪くないですか?」
バルクホルン「いや。そんなことはない」
芳佳「でも……」
バルクホルン「さっさとやれ」
芳佳「は、はい!!すみません!!」
16:
リーネ「どんな形にするの?」
芳佳「確か……ハートの形だったから……ハートにする」
リーネ「だよねぇ……普通はそうなるよね……」
芳佳「リーネちゃん?」
ミーナ「あらあら。何をしているの?」
エーリカ「トゥルーデと宮藤がバレンタイン用のお菓子を作ってるんだよ」
ミーナ「そう。今年はお菓子にしたのね」
バルクホルン「毎年、花やメッセージカードでは飽きるだろう」
ミーナ「こういうのは気持ちでしょう?はい、トゥルーデ。貴方宛に花束が届いてるわよ」
バルクホルン「誰からだ?」
ミーナ「ヘルマ・レンナルツ曹長とクリスさんから」
バルクホルン「そうか……。返事を書かなくてはな」
エーリカ「ミーナぁ、私には来てないの?」
ミーナ「ないわ。一つも」
エーリカ「ウソ……」
18:
美緒「ふむ。倉庫に仮置きしておくしかないか」
シャーリー「おとと……。すみません、少佐。ちょっと道をあけてください」
美緒「シャーリーへの贈与量も順調に増えているな」
シャーリー「応援メッセージは素直に嬉しいんですけどね。食い物はちょっときついっていうか」
美緒「同感だ。とはいえ、無駄にするのも気が引けてるしな」
シャーリー「そうなんですよねー。あれ、こっちの山はなんです?」
美緒「ハルトマン宛だ」
シャーリー「全部、菓子ですか、これ?」
美緒「奴の好みは割と有名なのだろう。去年までは花やカードが多かったが、今年は菓子一色だ」
シャーリー「どうするんですか?」
美緒「ミーナ曰く、このまま渡すとハルトマンはずっと食べ続けてしまうらしいのでな。隠しておくらしい」
シャーリー「腐るな……」
美緒「ミーナにも考えはあるだろう」
シャーリー「そうだ。少佐、宮藤がペリーヌにチョコを渡すらしいんですけど、私たちの分も作ってるかもしれませんよ?」
美緒「宮藤がペリーヌに?ほう。そんな仲になっていたのか。安心した。とはいえ、これ以上増えるのはな……。宮藤からなら喜んで受け取るが」
20:
芳佳「――あとは冷やすだけ?」
リーネ「うん。そうだよ」
芳佳「よかったぁー。これでペリーヌさんに渡せるよー」
リーネ「よかったね……」
芳佳「うん!」
バルクホルン「……」
ルッキーニ「おぉー!!ケーキやけてりゅー!!」
エーリカ「クッキーもいいかんじじゃーん!たべよー、トゥルーデー。たべよー」
ルッキーニ「ケーキぃ!ケーキぃ!」
バルクホルン「……触るな」
エーリカ「なんで!?痛む前に食べないともったいないって!!」
バルクホルン「何か勘違いしていないか?」
エーリカ「なにが?」
バルクホルン「これはお前用ではないぞ」
エーリカ「な……なんで……!?」
21:
バルクホルン「どこでそんな錯覚をしたのかは知らないが、これはハルトマン用ではない」
エーリカ「なら、誰用?」
バルクホルン「……お返し用、だ」
エーリカ「ははーん。宮藤からもらえることを見越して、そんなたいそうなケーキを作ったんだぁ」
バルクホルン「ふん。意味がよくわからないな、ハルトマン。宮藤から貰うことなど、一切想定していない」
エーリカ「じゃあ、誰から貰うつもりだったのさ?」
バルクホルン「誰か、からだ」
エーリカ「……私?」
バルクホルン「お前は永久にキッチンには立てないはずだが?」
エーリカ「言ってみただけじゃん」
ルッキーニ「えぇー!?これたべちゃだめなのー?」
バルクホルン「お返し用だからな」
ルッキーニ「えぇー!!たべたい!たべたい!!大尉のケーキとクッキーたべたーい!!」
芳佳「早く固まらないかなー。でも、ペリーヌさんがこれで喜んでくれるかどうか不安だなぁ」
リーネ「もし喜ばなかったら……いくらペリーヌさんでも……」
22:
エイラ「新しい枕なんてどうだ?」
サーニャ「エイラにはリボンとか?」
エイラ「リボンはちょっとなぁ。サーニャがリボンつけるなら、見てみたいけど」
サーニャ「私?似合うと思う?」
エイラ「思う!」
サーニャ「そう……」
エイラ「サーニャはあれだな。全身に巻けるぐらいながーい、リボンだな」
サーニャ「……全身?」
ペリーヌ「はぁ……。相変わらず仲がよろしいですわね……」
エイラ「ペリーヌにはメガネ拭きやるよ」
サーニャ「エイラ。普通は花よ?」
エイラ「花より実用的なほうがいいって」
サーニャ「そうかもしれないけど、バレンタインにメガネ拭きなんて……」
ペリーヌ「もういいですわ。どんなものでも喜んで受け取りますから。それではわたくしはお邪魔みたいですし、失礼します」
サーニャ「あ、ペリーヌさん」
23:
ペリーヌ(全く。わたくしだって、エイラさんやサーニャさんのように坂本少佐とどんなものを渡すかで話し合ってみたいですわ)
ペリーヌ(それで、全身にリボンなんて巻いて……)
芳佳「あ、いたいた。ペリーヌさーん」
ペリーヌ(は、だかははしたないですから、ズボンだけの姿になって……)
芳佳「ペリーヌさん?」
ペリーヌ(そして、月明かりに照らされた少佐の部屋で、わたくしはこういうのです)
芳佳「どうしたの?」
ペリーヌ「わたくしを……もらってください……」
芳佳「え……それは……ちょっと……」
ペリーヌ「なぜですか!?」
芳佳「ペリーヌさんを貰っても、私では持て余すというか」
ペリーヌ「そんなことありませんわ!!寧ろわたしくが体を持て余しているぐら――」
芳佳「え?」
ペリーヌ「……なんですの、宮藤さん?」
芳佳「あの、これ。チョコレートです。受け取ってください」
26:
シャーリー「あれだけの量、絶対食べきれないしなぁ」
美緒「皆で分けるのが無難だが」
シャーリー「おっと。少佐、ストップストップ」
美緒「急になんだ?」
シャーリー「あれあれ」
美緒「どうしたというんだ」
ペリーヌ「これは……」
芳佳「ちゃんと確認もせずに食べちゃったから……」
ペリーヌ「それで作ったと?」
芳佳「型をとって、固めただけなんですけど」
ペリーヌ「でも……これでは貴方の手作りチョコを少佐が口にしてしまうことに……。いや、わたくしも元々は既製品を取り寄せて渡そうとしていましたし、違いはないといえばないですし……」
芳佳「やっぱり、ダメですか?」
ペリーヌ「それは……うーん……」
美緒(ペリーヌめ、宮藤からの好意を素直に受け取れないのか……。困ったやつだ)
27:
シャーリー「ペリーヌ、やっぱり困ってるなぁ」
美緒「私が言ってきてやろう」
シャーリー「少佐、それはマズいですって」
美緒「しかし、見てられん。宮藤は今にも泣きそうな顔をしているぞ」
シャーリー「だからって少佐が出て行ったら余計にややこしくなりますから」
美緒「だが……!!」
芳佳「お願いします!!どうか、これで!!」
ペリーヌ「本当にいいんですの?」
芳佳「何がですか?」
ペリーヌ「貴方が時間をかけて作ったものなのに、わたくしが作ったということにして」
芳佳「はい!これはペリーヌさんのために作りましたから!!」
ペリーヌ「……わかりましたわ。受け取ります」
芳佳「わーい!!やったー!!」
ペリーヌ「ふん。でも、お礼はしませんわよ。当然の償いですもの」
芳佳「そんなの当然ですよ!!受け取ってくれてありがとうございます!!」
29:
ペリーヌ「よく分からない人ですわね」
芳佳「それではこれで!!ペリーヌさんもがんばってくださいね!!」
ペリーヌ「ええ」
芳佳「わーい。リーネちゃんにつたえにいこーっと」
ペリーヌ(果たして、少佐は喜んでくれるのでしょうか……)
シャーリー「こっちきた」
美緒「何故、身を隠す必要があるんだ?」
シャーリー「いや、なんとなく」
美緒「わからんでもないが――」
ペリーヌ「きゃっ!?しょ、少佐!?……と、シャーリー大尉!?」
シャーリー「お、おう。ペリーヌ。奇遇だなー」
美緒「ペリーヌ……」
ペリーヌ(チャンスですわ!!宮藤さんのためにもここで渡しておかなくては……!!)
ペリーヌ「さ、坂本少佐ぁ!!こ、これ、うけとってください!!」
美緒「なに?」
31:
シャーリー「え……?」
ペリーヌ「どうぞ!!」
美緒「ペリーヌ、本気で言っているのか?」
ペリーヌ「も、もも、もちろんですわ!!」
シャーリー「おい、ペリーヌ、それはまずいだろー」
ペリーヌ「なにがですの?これはわたくしの想いが――」
美緒「断る」
ペリーヌ「……は、はい?い、いま、なんと……?」
美緒「断ると言った」
ペリーヌ「え……あの……」
美緒「……見損なったぞ、ペリーヌ」
ペリーヌ「……」
シャーリー「少佐、そんなはっきり……」
ペリーヌ「少佐、まってください……あの、わたくし……」
美緒「お前がそんなやつだったとは知らなかった。がっかりだ」
33:
サーニャ「リボンは何色がいいの?」
エイラ「赤がいいなー」
サーニャ「赤ね。ミーナ隊長に言えばもらえるかも」
エイラ「そ、そうか……サーニャの全身リボン……」ハァハァ
サーニャ「あ……」
エイラ「ん?サーニャ、どうした?」
サーニャ「あれ」
ペリーヌ「あぁぁあああ……!!!」
エイラ「また廊下で泣いてる。おい、ペリーヌ、今度はどうしたんだよ?」
ペリーヌ「あぁぁあ……あう……えぐ……うぁ……」
エイラ「ど、どうしたんだ、おい」
サーニャ「ペリーヌさん、落ち着いてください」
ペリーヌ「あぐ……えぐっ……」
サーニャ「ペリーヌさん……泣き止んでください……」
エイラ「ペ、ペリーヌ、大丈夫かよぉ?と、とりあえず……そうだ!サウナでもいくか?きっと元気になるって。な?よし、行こう」
34:
リーネ「それじゃあ、ペリーヌさんのチョコを食べたから、そのために作ってたの?」
芳佳「そうなの。ペリーヌさんは坂本さんに渡そうとしていたのに、私が台無しにしちゃって」
リーネ「そうなんだぁ……。あんなに大きなハートチョコを作っていたから、てっきり本命かと思っちゃった」
芳佳「ほんめいって?」
リーネ「な、なんでもないよ」
芳佳「そう?」
ルッキーニ「たいいー、ケーキぃ!」ギュゥゥ
バルクホルン「……」
エーリカ「トゥルーデ、クッキぃー!」ギュゥゥ
バルクホルン「欲しければ何かよこせ」
ルッキーニ「あい!キスでいい?」
バルクホルン「バカにしているのか?」
エーリカ「キスでいいの?それでいいなら何回でもしてあげるよー」
バルクホルン「やめろぉ!!!」
芳佳「ペリーヌさん、上手く渡せたかなぁ……」
36:
ミーナ「……あら?」
エイラ「元気出せって」
ペリーヌ「でも……わた、くし……しょうさに……きら、われて……」
サーニャ「そんなことないです。私はペリーヌさんのこと、好きですよ」
ペリーヌ「サーニャ……さん……わたくし……あなたのこ、と……ゆう、れいって……よんで……たの、に……」
サーニャ「気にしてません。エイラもそうよね?」
ペリーヌ「ほ、んと……ですのぉ……?」
エイラ「ホントダ。ワタシ、ナニモキニシテナイッテ」
ペリーヌ「うぅ……あ、ありがとう……ございます……」
ミーナ「エイラさん、サーニャさん」
サーニャ「ミーナ隊長」
ミーナ「ペリーヌさん、どうしたの?」
エイラ「少佐に思い切り振られたらしいんだ」
ミーナ「なんですって?」
サーニャ「それでペリーヌさん、ショックを受けて泣き崩れてしまって……」
38:
ミーナ「坂本少佐がペリーヌさんをチョコを断るなんて、ちょっと考えにくいわね」
ペリーヌ「わた、くし……きっと……な、にか、して……しょう、さに……きらわ、れて……しまっ……て……」
ミーナ「そんなことないわ。坂本少佐は貴方のことも家族のように想っているもの」
ペリーヌ「でも……で、も……」
エイラ「中佐、少佐と話してきてくれないか?私も少佐がペリーヌを嫌っているとは思えないしさ」
サーニャ「私もです」
ミーナ「そうね。それに士気に関わるような発言を坂本少佐が軽率に吐くとも考えにくいし……」
エイラ「ペリーヌに問題があるのなら、ペリーヌに反省してもらえばいいけどさ。もし、少佐に間違いがあれば少佐を怒るべきだ」
ミーナ「それはわかっているわ」
サーニャ「お願いします。こんなペリーヌさんは見ていられません」
ミーナ「……」
ペリーヌ「うぐっ……えぐっ……ぐっ……うぅ……」
ミーナ「少し待っていて」
サーニャ「あ、それと。赤いリボンがあればください」
ミーナ「赤いリボン?確か倉庫にあったはずだから、いくらでも持っていって」
40:
シャーリー「少佐、怒るのはわかりますけど、ペリーヌの話も聞いてあげるべきだったんじゃないですか?」
美緒「宮藤の好意を無碍にするどころか、それを利用し、私へと差し出してきた。話を聞く以前の問題だろう」
シャーリー「うーん。だけど、あのペリーヌがそんなことをするとは思えないんですけど」
美緒「実際に行った。私もお前も現場を見た。言い逃れなどできるはずもない」
シャーリー「そうなんですけど」
美緒「ペリーヌはもっと思いやりのあるウィッチだと思っていた。よりにもよって宮藤の想いを踏みにじるとは……」
シャーリー「なんであんなことしたんだ、ペリーヌのやつ……」
ミーナ「美緒!」
美緒「どうした?」
ミーナ「ペリーヌさんのことで話があるの」
美緒「……どうした?」
ミーナ「ペリーヌさんは今、酷い状態よ。ペリーヌさんが差し出したものを強い言葉で拒絶したみたいね」
美緒「どうだろうな。私はペリーヌのした行為のほうが余程罪深いと思う」
ミーナ「どういうこと?」
美緒「実はな……」
43:
ミーナ「……本当なの?」
シャーリー「まぁ、見た光景だけを語るなら」
ミーナ「ペリーヌさんが……そんな……」
美緒「故に私はペリーヌを拒否した。それだけのことだ」
ミーナ「ちょっと待って……信じられないわ……」
美緒「私も信じたくはない。しかし、目の前で見せられてはな」
ミーナ「宮藤さんに聞いてみましょう。もしかしたら、ペリーヌさんに頼まれて作っただけかもしれないわ」
美緒「訊けると思うのか?」
ミーナ「そ、それは……」
シャーリー「私、見てるんですよね。宮藤が真剣な顔でペリーヌにチョコを渡したいって言ってるの」
ミーナ「な……」
美緒「ミーナ。私も辛い。夢であればどんなにいいことか。だが、現実だ」
ミーナ「……ペリーヌさんに話を聞きましょう?」
美緒「聞いてどうする?」
ミーナ「ペリーヌさんはそんなことしないはずよ。そうでしょう?疑うよりも、信じてあげないと。大事な家族なんだから」
45:
リーネ「芳佳ちゃん、これ」
芳佳「え?いいの?」
リーネ「うんっ」
芳佳「わーい、綺麗な花ー。あ、カードもある」
リーネ「あ、そ、それはあの、一人で読んで……。その、恥ずかしいことも書いてるし……」
芳佳「うん。わかった。リーネちゃんにお返ししないとダメだよね」
リーネ「そんな!!いいの!!そんなつもりで渡したんじゃないから!!」
芳佳「そういうわけにもいかないよ。でも、扶桑では馴染みのない行事だから、どうしたらいいんだろう……」
リーネ「お……おかしてきな……てづくりの……」
芳佳「それならおはぎでもいい?私、扶桑のお菓子しか作れないから」
リーネ「うん!!うん!!芳佳ちゃんのおはぎ食べたい!!」
芳佳「ちょっと待ってて。すぐに作るよ」
リーネ「やったぁ」
バルクホルン「……」
エーリカ「トゥルーデぇ、クッキぃーケーキぃー!たーべーよー!!」ユサユサ
46:
芳佳「よーし、リーネちゃんのために特大おはぎ作っちゃおう」
バルクホルン「宮藤」
芳佳「なんですか?」
バルクホルン「……ケーキとクッキーを作りすぎてしまってな。どうだ、食べるか?」
芳佳「頂いていいんですか?」
バルクホルン「あ、ああ。一人では、その、食いきれないからな」
芳佳「でも……」
バルクホルン「ん?」
ルッキーニ「うじゅー!!!ケーキぃー!!!ケーキぃー!!!」ギュゥゥ
エーリカ「おかしー!!おかしー!!今年、何ももらえない私にもおかしー!!!」ギュゥゥ
バルクホルン「ええい!!離れろ!!」
芳佳「ルッキーニちゃんとハルトマンさんにあげたほうがいいですよ?」
バルクホルン「しかし、この二人は私になにもよこそうとしないからな」
ルッキーニ「キスじゃダメなのー?」
バルクホルン「ダメに決まっているだろう!!いい加減にしろ!!!」
48:
エーリカ「トゥルーデのケチー!!」
バルクホルン「乞うだけで施しを受けようとする根性が間違っている」
エーリカ「よーし!なら、訓練してくる!!」
バルクホルン「訓練はいつもやっていることだ」
エーリカ「二倍してくる!それでトゥルーデのケーキはいただきだ!!」
バルクホルン「あのな……」
エーリカ「ルッキーニ!!いくぞ!!」
ルッキーニ「あい!!」
エーリカ「いっぱい訓練してトゥルーデのお菓子を美味しく頂いてやるー!!」
ルッキーニ「にゃー!!」
芳佳「ハルトマンさーん!!ルッキーニちゃーん!!……行っちゃった」
バルクホルン「あいつらにも困ったものだ」
芳佳「バルクホルンさん、あまり意地悪するのはよくないですよ。最初からみんなで食べるつもりだから、ケーキ作ってたんですよね?」
バルクホルン「訓練ぐらいはしてもらわなければな。渡す気にはなれない」
芳佳「あ、否定はしないんですね」
49:
エーリカ「トゥルーデのくせにー」
ルッキーニ「どれぐらい走るの?」
エーリカ「うーん……。疲れるまででいいんじゃない?」
ルッキーニ「わかったー」
エーリカ「あーもう……。あれ?」
ルッキーニ「どったの?」
エーリカ「おーい、サーにゃーん!!」
サーニャ「ハルトマンさん。どうしたんですか?」
エーリカ「なにしてるの?」
サーニャ「ここにリボンがあるっていわれて」
エーリカ「リボン?」
ルッキーニ「くんくん……なんか甘い匂いがしゅるぅ」
エーリカ「ホントだ。なんで倉庫から……?」
サーニャ「ああ、きっとこれだと思います」
エーリカ「なにこれ!?おかしの山じゃん!!」
50:
ルッキーニ「おぉー!!しゅごーい!!」
エーリカ「少佐やシャーリー宛に届いたお菓子か?」
サーニャ「こっちはハルトマンさんに届いたものだと思います」
エーリカ「え?ホントだー。ミーナ、なんでウソつくかなぁー」
ルッキーニ「たべりゅ?」
エーリカ「んー……」
エイラ「お。中尉、どうしたんだ?」
エーリカ「いや、ちょっと……って、エイラ。それ、どうしたの?」
エイラ「これか?」
ペリーヌ「えぐっ……うぅ……」ギュッ
エイラ「少佐に振られたらしいんだ」
エーリカ「少佐に?なんでまた」
エイラ「それは少佐に聞かないとわからないって」
エーリカ「そうだね。となると宮藤が作ったチョコは渡せなかったわけだ。宮藤も落ち込むかもね」
サーニャ「芳佳ちゃんが作った……?」
52:
エイラ「どういうことだ?」
エーリカ「宮藤が一生懸命作ったチョコをペリーヌは受け取って、少佐にそれを渡すはずだったんでしょ?」
エイラ「お前、そんなことしたのか?」
ペリーヌ「ちがっ……います……わぁ……あれは……み、やふじ……しゃんが……ご、じぶ、んでぇ……お、つくりにぃ……」
サーニャ「あの、詳しく話してください」
ルッキーニ「芳佳が言ってたけど、ペリーヌが少佐に渡すはずだったチョコレートを食べたから、代わりのチョコを作ったんだってー」
エイラ「そうなのか?」
ペリーヌ「はいぃ……そ、ですぅ……わぁ……」
サーニャ「……エイラ」
エイラ「多分、同じこと思ってるよな」
サーニャ「ええ……」
エーリカ「なになに?二人だけ意思疎通しないでよぉ」
エイラ「ペリーヌ。宮藤からチョコを受け取った直後に少佐に会ったんじゃないか?」
ペリーヌ「そ、そうで、す……けど……それが……な、にかぁ……?」
サーニャ「ペリーヌさんが芳佳ちゃんから受け取るところを坂本少佐が見ていたかもしれません。それで少佐は勘違いして怒ってしまったのかも……」
55:
ペリーヌ「あ……」
エイラ「宮藤がどんな渡し方をしたのかしらないけど、多分傍からみれば宮藤は真剣な表情で渡そうとしてたんだろうな」
エーリカ「少佐は宮藤から貰ったチョコを流用しようとしたペリーヌに怒って、振ったってことか」
サーニャ「はい。可能性はあります」
ルッキーニ「あにゃ……。ペリーヌ、運わる……」
ペリーヌ「そ、そうだったのですね!!そ、それなら少佐はただ勘違いしていらっしゃるだけですわね!!!」
エイラ「ああ、そうだ」
ペリーヌ「わた、わたくし、嫌われておりませんのね!?」
サーニャ「はい」
ペリーヌ「はぁぁ……!!よかったぁ……!!」
エイラ「よし、ペリーヌ!少佐に説明しにいこう!!宮藤にも証言してもらえば完璧だ!!」
ペリーヌ「はぁい!!!」
サーニャ「ちょっとまって、エイラ。まだ、リボンが……」
ルッキーニ「サーニャー。リボンならここにあるけど。これでいいの?」
サーニャ「あ、うん。ありがとう、ルッキーニちゃん」
56:
エーリカ「まさか、ペリーヌがあんなことになってるなんて」
ルッキーニ「ねーねー。おかしはぁ?」
エーリカ「そうか。よぉし。ちょっともって行こう」
ルッキーニ「なんで?」
エーリカ「トゥルーデにここのお菓子渡せば、訓練しなくてもケーキ食べられるじゃん?」
ルッキーニ「おぉぉー!!名案だー!!」
エーリカ「魔法力、ぜんかいー」ピコンッ
ルッキーニ「どれぐらいはこぶー?」ピコンッ
エーリカ「できるだけたくさんに決まってるじゃん」
ルッキーニ「にゃはー!だよねー」
エーリカ「ルッキーニ、いくぞー」
ルッキーニ「あい!!」
エーリカ「これだけあればトゥルーデも文句ないだろー」
ルッキーニ「ないないー」
エーリカ「ペリーヌが笑顔で食堂にきたらお菓子パーティーだー」
57:
ミーナ「ペリーヌさん、どこにいるのかしら……」
美緒「ミーナ、行き先を聞いていないのか?」
ミーナ「あ。そうだわ。サーニャさんがリボンを探していたから倉庫にいるかもしれないわ」
美緒「それを先に言え。こっちだな」
シャーリー「おーい!ペリーヌー!でてこーい!!」
ミーナ「ペリーヌさーん!」
美緒「ん?ミーナ、倉庫の扉が開いているぞ」
ミーナ「本当ね……」
シャーリー「あれ……?少佐、ここに仮置きしていた菓子ってこれだけでしたっけ?」
美緒「いや……。明らかに減っている」
ミーナ「ハルトマン中尉宛の物がごっそりなくなっているわ」
シャーリー「ああ、言われてみれば、ハルトマンのがないな」
美緒「盗まれたか?」
ミーナ「運ぶ出すなんて無理よ。どれだけの量があったと思うの?」
美緒「……魔法を使えば容易いだろう?」
58:
芳佳「でーきたっ。リーネちゃん、バルクホルンさん。おはぎ、できましたよー」
リーネ「わぁ、美味しそう」
バルクホルン「見事だな」
芳佳「えへへ。みんなが揃ってから食べましょうね」
リーネ「うん」
バルクホルン「ハルトマンとルッキーニはもう暫くかかるだろうな……」
リーネ「芳佳ちゃんのおはぎ……」
エイラ「宮藤!!!」
芳佳「エイラさん。丁度よかった。今、おはぎを――」
エイラ「こっちこい!!」
芳佳「え?え?なんですか!?」
エイラ「お前が証言しないとペリーヌの無実を証明できないんだ」
芳佳「ど、どういうことですかぁ?」
エイラ「とにかくこいってー」
芳佳「そんなにひっぱらないでくださいよー」
59:
バルクホルン「騒がしいな」
リーネ「何かあったんでしょうか?」
バルクホルン「気になるな。行くか」
リーネ「は、はい!」
バルクホルン「エイラ!!待て!!」
エイラ「大尉は来なくていいのに」
バルクホルン「施設内で騒いでいれば気にもなる。何があった?」
エイラ「それが……」
サーニャ「はぁ……はぁ……エイラ……」
ペリーヌ「やっとおいつきましたわぁ……」
リーネ「ペリーヌさん、サーニャちゃん。一体何があったの?」
エイラ「宮藤がペリーヌのチョコを食べるからややこしいことになったんだぞ」
芳佳「え?でも、ペリーヌさんにはきちんと謝って、代わりのチョコを……」
ペリーヌ「それは感謝していますが、その……渡すタイミングが悪かったようで……」
バルクホルン「要点をまとめて伝えてくれ」
61:
リーネ「――そ、そんなことがあったんですか?」
エイラ「ああ。ペリーヌが廊下で号泣するのが目障りだから、早く解決させたいんだ」
ペリーヌ「ご、号泣なんてしてませんわ!!」
バルクホルン「少佐は宮藤がペリーヌに渡したチョコレートの意味を知らないが故に、激昂してしまったのか。間が悪かったとしか言えないな」
芳佳「ごめんなさい、ペリーヌさん。また私の所為で……」
ペリーヌ「いえ。今回ばかりは貴方を責めることはできませんわ」
芳佳「坂本さんを手分けして探しましょう!!」
バルクホルン「そうだな。では、私と宮藤は格納庫へ、リーネとペリーヌは宿舎、エイラとサーニャはブリーフィングルーム周辺で少佐たちを捜索しろ」
リーネ「見つけたら、どうしたらいいですか?」
バルクホルン「見つけても、見つけられなくても食堂に戻ってこい」
エイラ「了解」
サーニャ「行こう、エイラ」
バルクホルン「宮藤、ついてこい」
芳佳「了解!!」
ペリーヌ(あぁ、みなさんがわたくしのために……。なんとしても少佐の誤解をとかないと……)
62:
エーリカ「じゃーん!トゥルーデー、これだけのお菓子があれば……って、いないし」
ルッキーニ「どこいったんだろー?」
エーリカ「ルッキーニ、ルッキーニ」
ルッキーニ「にゃにー?おぉ、これ、芳佳のお菓子だー」
エーリカ「できたてみたいだね」
ルッキーニ「おにゃかすいたぁー。もうたべよー」
エーリカ「それはまずいってー。宮藤のお菓子を勝手に食べたら、トゥルーデがどうなるかわるかだろ」
ルッキーニ「うにゃ……そうだったぁ……。大尉、こわいぃ」
エーリカ「あ。トゥルーデと宮藤、外にいるなー」
ルッキーニ「なんでー?」
エーリカ「誰か探してる感じだね」
ルッキーニ「もしかして少佐たち?ペリーヌも探しにいったし」
エーリカ「なーるほど。それじゃ、事情を知ってる私たちも探しにいこっか。早くお菓子パーティーしたいし」
ルッキーニ「あいっ」
エーリカ「いくぞー」
64:
ペリーヌ「宿舎のほうにはいませんわね」
リーネ「みたいですね。一度、戻りましょう」
ペリーヌ「あぁ……少佐……」
ペリーヌ(なんてもどかしい……。もう解決しているも同然なのに……)
リーネ「――あれ?な、なにこれ?」
ペリーヌ「どうしましたの?」
リーネ「こ、このお菓子がたくさん入ったケースはなんですか?」
ペリーヌ「こ、これは倉庫にあったものですわ。ハルトマン中尉宛で届いたものです」
リーネ「どうしてここにあるんですか……」
ペリーヌ「ハルトマン中尉が持ち出したのでしょう。全く、こんなときに」
リーネ「戻したほうがいいですよね?」
ペリーヌ「勿論ですわ。ここにあっても邪魔なだけですし。リーネさん、反対側を持ってください」
リーネ「はい」
ペリーヌ「せーのっ」グイッ
美緒「……ペリーヌ。何をしている?」
66:
ペリーヌ「あぁ!!少佐ぁ!!!」
美緒「……」
ペリーヌ「あの、少佐!!少佐は誤解をしているだけなのです!!」
美緒「誤解……だと……?」
ペリーヌ「はい!色々と偶然が重なってしまっただけですわ!!」
美緒「……」
ミーナ「美緒、ペリーヌさんはみつかっ……え?」
シャーリー「おいおい、ペリーヌ。それ……」
ペリーヌ「こ、これは倉庫にあったもので……」
リーネ「あ、あの!!今から戻そうと思ってたんです!!」
美緒「……ペリーヌ……」
ペリーヌ「しょ、少佐……?」
美緒「……残念だ」
ペリーヌ「え?な、なにがですか?」
美緒「私は……悲しい……。どうしたんだ……ペリーヌ……。何か、辛いことでもあったのか……?」
68:
ペリーヌ「少佐……いえ……わたくしは……」
美緒「ペリーヌ……すまない……。お前がここまで病んでいたとは気づけなかった……」ギュッ
ペリーヌ「あっ……少佐ぁ……」
美緒「不甲斐無い私を……許してくれ……」
ペリーヌ「な、何を仰っているのですか。わたくしは少佐が不甲斐無いなんて微塵も思ったことがありませんわ」
美緒「くっ……ペリーヌ……」ギュゥゥ
ペリーヌ「少佐……?」
美緒「何故、こんなことになるまで相談してくれなかった。弱音の一つでも私に吐けば、結果もまた違ったのかもしれないというのに……」
ペリーヌ「少佐ぁ……あったかいですわ……」スリスリ
美緒「うっ……ペリーヌ……すまない……すまない……」
リーネ「あ、あの……」
ミーナ「リーネさん。ペリーヌさんをどうして止めなかったの?」
リーネ「え?いえ、止める理由もなかったので……」
シャーリー「リーネ。賛同するだけが友人じゃないだろ?道を踏み外しそうになったら、叩いてでも正したほうがいいんだ」
リーネ「ご、ごめんなさい……」
70:
美緒「……ミーナ」
ミーナ「なに?」
美緒「ペリーヌがやったことは非常に軽微なことかもしれん。しかし、罪は罪だ」
ペリーヌ「へ?」
ミーナ「とりあえず、シフトからは外して、しばらくはカウンセリングを受けてもらいましょうか」
ペリーヌ「な、なぜ!?」
美緒「もういい、ペリーヌ。もう分かった。大丈夫だ。私が守ってやる。安心しろ」
ペリーヌ「ど、どういうことなんですの!?」
リーネ「あの、どうしてペリーヌさんがカウンセリングを?ペリーヌさんは何も……」
シャーリー「リーネ。庇う必要はないよ」
リーネ「あ、はい……」
ペリーヌ「少佐!!あの!!わたくしは戦えます!!戦えますわ!!」
美緒「分かった。だが、お前には休暇が必要なだけだ」
ペリーヌ「お、おまちになってください!!」
美緒「さぁ、行くぞ。ペリーヌ」グイッ
72:
ペリーヌ「少佐ぁー!!わたくしの話をきいてください!!お願いします!!!」
美緒「心配するな。私はお前の味方だ」
ペリーヌ「だ、だれかー!!!」
エイラ「――少佐!!!まってくれ!!!」
美緒「エイラ?」
サーニャ「はぁ……はぁ……み、みつけた……」
ペリーヌ「エイラさん……サーニャさん……」
エイラ「ペリーヌはなにもしてないんだ」
美緒「エイラ。戦友を庇いたい気持ちはよくわかるが……」
サーニャ「ちが、うんです……本当に……」
美緒「だから――」
バルクホルン「少佐!!宮藤の話をきいてくれ!!!」
美緒「バルクホルンまで……。やめてくれ、辛くなるだけだ」
芳佳「坂本さん!!ペリーヌさんは何もしてません!!むしろ私が事態を混乱させたんです!!!」
美緒「……どういうことだ?」
73:
芳佳「――というわけです」
美緒「本当の話か?」
バルクホルン「間違いない。ここにいる者たちもその話は聞いている」
エイラ「確かに宮藤はペリーヌにチョコを渡した。でも、それはチョコすら作れないペリーヌのためを思って宮藤が作っただけなんだ。少佐のためのチョコをな」
美緒「……」
シャーリー「あぁ。それなら納得できるな」
ペリーヌ「わたくしが宮藤さんの作ったものを勝手に流用するなんてありえませんわ!!」
ミーナ「よかった。美緒の勘違いだったのね」
美緒「だが、倉庫から菓子を持ち出したのはどういうことだ?」
ペリーヌ「ですから、食堂に戻ってきたら既に置いてあって、それをリーネさんとわたくしで元の場所に戻そうと……」
バルクホルン「ハルトマンに聞けばいい。――でてこい、エーリカ!!」
エーリカ「あ、どうもどうも」
バルクホルン「何がどうもどうもだ!!!きちんと説明しろ!!!1から10までな!!!」
エーリカ「1から10までって言われても、いつもの二倍訓練するのがメンドーになったから、この大量のお菓子とトゥルーデのケーキを交換してもら――」
バルクホルン「ふざけるなぁぁぁ!!!それでもカールスラント軍人かおまえはぁぁぁ!!!」
74:
エーリカ「なんでぇぇ……」
バルクホルン「なんでもくそもあるか!!!そのままバケツを持って立っていろ!!!ルッキーニ少尉もだ!!!」
ルッキーニ「うにゃぁ……ごめんなさぁぁぁい……」
エーリカ「私はトゥルーデのケーキとクッキーが食べたかっただけなのにぃー」
美緒「……ペリーヌ」
ペリーヌ「は、はい?」
美緒「すまない。お前のことを疑ってしまった……」
ペリーヌ「いえ。わたくしのほうこそ、疑われるような行動をとってしまっていましたから……」
美緒「すまない」
ペリーヌ「少佐、やめてください」
芳佳「ペリーヌさん、ペリーヌさん。今、チョコを渡せば……」
ペリーヌ「そ、そうですわね。少佐、あの……改めて……この……」
美緒「いや、それは受け取れんな」
ペリーヌ「な、なぜですか!?」
美緒「それは宮藤がお前のために作ったものだ。故に、そのチョコレートにはお前の想いが込められていない。そんなものは受け取りたくはない」
76:
ペリーヌ「あ……も、申し訳ありません……。ですが、今からだと……あの……」
美緒「私が欲しいのは、お前の想いだ。それさえあれば、なにも要らん」
ペリーヌ「わたくしの想い……」
美緒「それを楽しみにしている。さて、この菓子を倉庫に持っていくか。誰か手伝ってくれ」
リーネ「わ、私が手伝います」
ミーナ「私も持つわ」
ペリーヌ(どうしたら。きっと何を渡しても少佐は喜んでくれるはず……。でも、少佐にああいわれてはわたくしが満足できない……)
ペリーヌ「はぁ……もうバレンタインデーも終わってしまいますし……打つ手が……」
サーニャ「ペリーヌさん」
ペリーヌ「サーニャさん、どうかしまして?」
サーニャ「よかったら、これ」
ペリーヌ「こ、これは……」
エイラ「これぐらいやれば少佐もお前の想いがどれほどか、分かってくれるんじゃないか?」
ペリーヌ「……」
サーニャ「私も結ぶの手伝います。早、やりましょう」
77:
美緒「――ほう?宮藤がおはぎを振舞ってくれるのか」
リーネ「もう出来上がってますよ」
ミーナ「色々あって疲れたから、甘いものがほしいわね」
美緒「そうだな。こういうときこそ菓子を――」
エイラ「少佐がもどってきたぞ!」
サーニャ「ちょっとまって。あとすこし……」
芳佳「こっち結べました!」
シャーリー「こっちもオーケーだ!!」
バルクホルン「どうなっても知らないぞ」
美緒「なんだ、何を騒いでいる?」
エイラ「少佐!こっちを見てくれ!!」
美緒「ん?」
ペリーヌ「しょ、少佐……あの……わたくしを……もらってください……」モジモジ
リーネ「ペリーヌさん……全身にリボンを……!!」
ミーナ「なるほど」
79:
美緒「ペリーヌ?」ギュッ
ペリーヌ「はぁい」
美緒「……こっちにこい」グイッ
ペリーヌ「少佐ぁ、そんな……いきなりお持ち帰りだなんて……恥ずかしいですわ……」モジモジ
美緒「安心しろ、ペリーヌ。悪いようにはしないからな」
ペリーヌ「少佐の好きなようにしてください!!」
美緒「うむ。そうだな。ペリーヌは私が守ってやる。心配はいらんぞ。はっはっはっは」
芳佳「よかったぁ。ペリーヌさん、幸せそう」
シャーリー「おーい、とりあえずお菓子パーティー始めようかー」
エイラ「やったー。ずっと食べたかったんだかんなー」
サーニャ「私、おはぎから食べたい」
バルクホルン「慌てるな。人数分ある」
ミーナ「では、みなさん。色々あったけど、今日は甘いものを食べて、鋭気を養ってね。それでは、せーのっ」
「「ハッピーバレンタイン!!」」
おしまい。
82:
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