響「陽だまりの彼女」back

響「陽だまりの彼女」


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1:
――やだ離して!響っ!!
――嫌だ!離さない!もう二度と離さないっ!
――絶対に…絶対に…ッ!!
――そいつが聖遺物を消し去るっていうんなら…こんなの脱いじゃえ!未来――!!
―――
――

「―――ん……ここは…」
クリス「――!――おい……おい未来! 大丈夫か? 私のことちゃんと分かるか!?」
翼「………」
未来(クリスちゃん、翼さん…)
未来「うん、大丈夫…大丈夫だよ」
クリス「よかった…お前もアイツみたいにもう起きないんじゃないかって……」
翼「……おい…雪音」
2:
未来「翼さん……響は今どこに…一度響に会って…」
クリス「…やめとけ」
クリス「私達が駆けつけた時、アイツは…それはもう酷い有様だった…ずっと見てたら気がどうにかなっちまいそうな程…」
クリス「なんでアイツがあんな目に……アイツ…響…だけは、誰よりも幸せに…誰よりも救われなきゃいけないのにっ…」
クリス「……未来…誰よりもアイツを大切に思ってるお前には…あの現実はあまりにも辛すぎる…」
未来「……それでも、私はそれを受け入れなくちゃならないの」
未来「私は、響にこの身全てを捧げても清算しきれない罪を背負わせてしまった」
未来「今ここでこの現実を受け入れないのは…その罪から逃れようとするのと同じなんです」
未来「だから、響に会わせてください」
翼「……ついてきてくれ」
3:
あおい「早急な手術でなんとか手遅れになることだけは防いだけれど…」
あおい「それでも決して容態が安定したとは言えないわ…それほどにも響ちゃんの身体へのダメージは大きかった…」
あおい「…この容態じゃ…暫くの間はICUから出られそうにないわ」
あおい(左腕の欠損、循環器系・呼吸器系への深刻な裂傷、一部中枢神経系の異常、その他器官への多数の障害……)
あおい「本当に…生きていること自体、奇跡と言っても過言じゃない程…」
響「コヒュー…コヒュー……」
未来「ひ…びき…」
(痛々しく全身に巻かれた包帯、体中に繋がれた多数の生命維持装置や薬品の管)
(あの時、最後まで響の手を離さなければ。 あの時、私が死んでさえいれば、)
(私が居なければ、響はこんな凄惨な目に遭わずに済んだのに、)
(全部私のせい、何もかも私が、私が、)
未来「あ…あ…あぁぁぁ……!」
あおい「未来ちゃん…」
4:
未来「うぅ…うぁっ…うっ…うぅぅぅ……」
あおい「…にわかには信じられないかもしれないけど…未来ちゃんの力が無ければ、響ちゃんは今この瞬間に死んでいてもおかしくなかったのよ」
未来「……そんな…嘘……」
あおい「この言葉は決して気休めの嘘なんかじゃなく、確かな事実よ」
「私達が予想していた以上にガングニールと肉体との融合は進みすぎていた…」
「あの戦闘の時点で多くの部位はガングニールの侵食によって既に人間の遺伝子の構成と大きくかけ離れてたの」
「その結果…聖遺物に侵食された部位もろとも聖遺物を完全に分解してしまった…」
「でも同時に響ちゃんの死という最悪の結果だけは回避出来た…これもまた事実なの」
「形はどうであれ、未来ちゃんが死の淵から響ちゃんを救ったのよ」
未来「…私が…響を…?」
あおい「そうよ…だから、あまり自分を責めないで…自分が居なくなれば、なんて思わないで…」
あおい「いつになるかは分からないけど…響ちゃんならきっといつか目を覚ますと思う」
あおい「その時、響ちゃんにとって一番の心の支えになるのは未来ちゃん、あなただと思うの」
5:
あおい「あなただけじゃなく他のみんなが元気でいれば、きっと響ちゃんはすぐに良くなるわ」
あおい「だから…響ちゃんが目覚めるその時まで、強く待ち続けましょう」
未来「………はい…!」
――――――
―数ヶ月後―
――――――
(―――『こんなの脱いじゃえ!未来――!!』)
(その刹那、私の身体は紫色の光に包まれる)
(私の中の熱いモノがみるみるうちに溶け、体中を貫いていた鋭い痛みが光とともに失せていく)
(同時に身体からは亀裂が生まれ、堪え難い苦しみによって意識は捻じ伏せられた)
(呆然とした意識の中、ずっと抱き留めていた筈の大事な人は腕の中から消えていた)
(まただ。 どれだけ強く抱きしめても、結局は甲斐もなくすり抜けていく)
(何度も何度も…私の辿り着けない何処かへ遠くへ。もうそんなことの繰り返しは厭だ)
(再び抱きしめることが出来るのなら、もう二度と…絶対に、絶対に離さないから……未来―――)
6:
―――
――

響「………」パチ
未来「すぅ…すぅ…ムニャムニャ…ヒビキ……」
響「…ぉ…おき…て……み…く……」
未来「……んっ……………響?」
響「………未、来……おは…よう」
未来「え……響っ!? 目が…目が覚めたの!?」
響「…ぅ…ん」
未来「あ…あぁ…よかった…よかったっ…! は、早くお医者さんを呼ばなきゃ……」
響「…ねぇ…未来、は……身体……なんともない…の…?」
未来「……うん…響が、響が命を懸けて…助けてくれたから…私は今、こんなに元気でいられるんだよ」
未来「響がこんなにボロボロになって…私を救おうとして…それで……」
未来「……本当に…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ…!」ボロボロ
7:
響「………」
未来「どれだけ謝っても赦されることじゃないことは分かってる…それでもっ……」
響「……った」
未来「…え?」
響「……未来が無事で、よかった」
未来「…」
響「…あの光に飛び込んだ時、私はもう助からないんだって思ってた…」
響「未来が無事いてくれるなら…別に死んでもいいかな、って…」
響「だから、生きて未来とまた話せて、本当に嬉しいんだ」
未来「………」
響「こうやって再び話せたのも…全部、未来のおかげだよ」
9:
未来「ひび、き」
未来(なんて暖かいんだろう…私はこの温もりにいつも守られていたんだね)
未来(けど今は…この温もりを私自身が守らなきゃいけない)
未来(私が、響を―――)
―――――――
―――――
―――
響「そういえばFISやらフロンティア計画だとか…私が眠ってる間にそこら辺の騒動はどうなったの?」
未来「あまり私も詳しい事は分からないけど…フロンティアは結局浮上せずに計画は失敗、」
未来「FISも抵抗の末に結局米国政府に拘束されて実質の解体だとかで騒動は一応の終結…」
未来「だから変な心配せずに今はゆっくり休んで、響」
響「……むー…毎日毎日…絶対安静、絶対安静って…それはもう聞き飽きたよ…」
響「ずっとベッドで寝てるのつまんないー…未来とどこかに行きたいー…」
未来「今はダメ、もう少しで生命維持装置も外せるようになるんだから我慢しなきゃ」
響「でも…私はこんなに元気一杯なのに…なんでまだこんな変なのに繋がれてないといけないの?」
10:
未来「我慢、とにかく我慢だよ響、外出許可が降りないってことはまだまだ治りきってことなんだから」
未来「私は響が治るまでいつまでも待ってあげるから、だからもう少しだけ頑張ろ」
響「未来がそこまで言うなら……それじゃあさ、外出許可が降りたらどこに行こうか?」
未来「うーん…特には無いけど……響ならどこがいいの?」
響「……私は未来が連れて行ってくれる場所なら…」
響「……未来が居てくれる場所ならどこでもいい…」
響「……未来…未来と…ずっと…一緒に……」ボソボソ
未来「…ひ、響? 大丈夫…?」
響「ん? 別になんともないけど、どうかした?」
未来「…それじゃ、前みたいに流れ星を見に行こうよ。 今、大きい流星群が近づいてるんだって」
響「流れ星かぁ…見に行ったのはあの時以来だね」
響「……なるべく早く見に行きたいなぁ…少しでも早く……」
12:
未来「……もう遅いしそろそろ私もう帰るね。 ちゃんとゆっくり休むんだよ、響」
響「うん、また明日…ね」
未来(響…どうしちゃったんだろう)
未来(少し様子がおかしかったような…疲れてるだけなのかな…?)
――――
響「……少しでも早く来てね…1時間でも、1分でも、1秒でも早く…」
響「……私が…私じゃなくなる前に…」
響「……会いたい…会いたいよ、未来……」
14:
――――――
――――
――
響「…いつの間にか月の大きさが尋常じゃないことになってるね」
響「手を伸ばせば掴めそうなほど……」
未来「結局月の落下への対処法は見つからずじまいで…いつ落ちるかも正確には分からないんだって…」
響「…せっかく明日には外出許可が出るっていうのに…なんか落ち着かないね…」
未来「きっと大丈夫だよ…きっと…なるようになるから」
未来「とりあえず、明日の準備もあるし…私そろそろ帰る…」
響「待って」
未来「……響?」
響「久しぶりにさ、二人で一緒に寝ようよ」
16:
未来「一緒にって…私寝巻も持ってきてないし…」
響「もう一人は嫌だよ…」
響「今日だけでいいからさ…お願い」
未来「……そこまで言うなら…ちょっと着替えるから待ってて…」
――――
響「なんだか変な感じだね、前まではずっと二人一緒に寝てたっていうのに」
未来「う、うん」
響「ふふっ、未来の体…あったかい…」ギュッ
未来「ちょっ…もう、私は抱き枕じゃないんだよ」
響「相変わらず未来の体はやわらかくて抱き心地がいいなぁ…」
響「……またこの温もりを感じる事が出来て…本当に良かった」
未来「…」
19:
未来「……私ね、響に伝えなきゃいけないことがあるんだ」
響「……なに?」
未来「私の事をどうしようもなく最低な人間だって、思うかもしれない、一生軽蔑したっていい…だから、聞いて」
「響がこんな風になってしまって…そんな中、ある人に響の一番の心の支えが私だって言われた時……」
「その時一瞬…ほんの少しだけ……"嬉しい"って思っちゃったんだ」
「…おかしいよね、大事な親友を傷つけて…その挙句、"嬉しい"だなんて……」
「でも…響が私だけを頼ってくれて、これから先も私だけを見てくれるんだと思ったら…」
「そのことが嬉しくて仕方がなくてっ…私はそれでっ…………ちゅ…んむっ!?」
未来「れろ、ちゅっ…ん……ぷはっ…ひ、響っ!?」
響「ははっ…未来のファーストキス、貰っちゃった」
未来「な、な…なんで突然こんなっ…キ、キキキスだなんて…!」
響「そりゃあもう、未来さんが可愛いくて仕方がなくて…我慢できなくなっちゃった…」
未来「…か、可愛いって…」
21:
響「……可愛いよ。 その内罰的過ぎるところも、私の事を必死に一途に思い続けていてくれることも」
響「……本当に…狂おしい程に愛らしいよ…」
未来「ひ、響」
響「……ねぇ未来、私もね伝えたいことがあるんだ」
響「私がこんな身体になってしまったこと、未来の行ってしまったことに関して、怒りだとか何一つ抱いてない」
響「それに最愛の人がこれほどにも私と居たい、って言ってくれてるんだもん。 嬉しくないわけがないよ」
未来「…それでも…私には響に対して清算しきれない罪が…」
響「またそうやって自分を責め始める…本当に未来ってどんなことも溜め込んじゃうよね…まあ、そこも未来の魅力の一つなんだけど」
未来「響…さっきから何を言ってるの…?」
響「……私が目覚めた時から…いいや、正確には私があの惨劇から生き残った時かな…」
響「ずっと、ずっと思ってたんだ、未来の私に対する愛情と罪悪感で未来を束縛できる、って」
未来「………え?」
22:
響「この感情…今までは胸の奥の深いところに押し込んでた、私でさえ気づかないように」
響「でもやっと気付けたよ…この捻じれに捻れて歪みきった愛情に……」
未来「何を言ってるの響…何言ってるのか全然分からないよっ…目を覚ましてっ…! 響!」
ガシッ
未来「え…なに、これ」
未来(禍々しく黒に染まった腕が、強く私のことを掴んでいる)
未来(その気味の悪い腕は響の左腕から生えていて、私の腕を強く掴んでいた)
ガシッ
未来(その黒い何かを纏ったものが、私の上に覆いかぶさってきた)
24:
未来「ひび、き? ねぇ…響!? ねぇ! どうしちゃったの…響っ!」
響「m、み、k、み、く、みみ、み、くく、くくくく、く」
ギリリッ
未来「あぐっ…! …いた…い…離して…」
響「……やだ…いやだ…嫌だ嫌だ嫌だッッ!!」
ギリッ ギチチッ
未来「うあ"ぁ"ぁ"!!」
響「――はぁ…はぁ…はあっ…! 未来…ごめん…」
未来「うぐっ…! ううっ……響…なんで、どうしてこんな…」
響「あの時……医療班の人達は気付いていなかった…私とガングニールがもう完全に融合してたことに…」
未来「…ぇ…それって…どういう…」
響「……私の肉体はね、それこそ見た目や作りは完全に人間と同じ……」
響「でもね、私には分かるんだ…もう私の身体は…人間のそれじゃない……」
27:
響「見ての通りだよ…私…こんな化け物になっちゃったんだ、もう、手遅れだよ」
未来「―――! そんなことないっ! 響は…紛れも無く私の知ってる響だよ! 手遅れなんかじゃ無いっ!!」
響「もう、ダメだよ」
響「この手を離したくても、怖くて、凄く怖くて、離せないんだ」
未来「………」
響「もう絶対に離さない…離せるわけがない…ねぇ、ずっと一緒に居よう…? 未来……」
未来「うん……もう怖がらなくてもいいよ…大丈夫…ずっと…ずっと、一緒に居てあげるから」
響「……ありが、とう」
29:
響「見ての通りだよ…私…こんな化け物になっちゃったんだ、もう、手遅れだよ」
未来「―――! そんなことないっ! 響は…紛れも無く私の知ってる響だよ! 手遅れなんかじゃ無いっ!!」
響「もう、ダメだよ」
響「この手を離したくても、怖くて、凄く怖くて、離せないんだ」
未来「………」
響「もう絶対に離さない…離せるわけがない…ねぇ、ずっと一緒に居よう…? 未来……」
未来「うん……もう怖がらなくてもいいよ…大丈夫…ずっと…ずっと、一緒に居てあげるから」
響「……ありが、とう」
30:
メキッメキメキ…
未来「ぐあ"っ"! う"ぎぃ"っ"! あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
響「ごめん…ごめんね…もうすぐでひとつになれるから…」
未来(骨の髄から毛の先まで、身体全てが溶けて崩壊していく)
(脳は崩れ落ち、骨は粉微塵になった。 神経は一本ずつ引き抜かれ、皮膚は綺麗に細分化されながら剥がされていく)
(痛い、なんて言葉じゃ表現出来ない)
(強いて名状するなら、罰)
(そうか、これは罰なんだ)
(響を傷つけてしまったこと、響を守れなかったこと、何もかもの罪、全ての罰)
(やっと…私はこの大きすぎる罰に対してしっかり向き合うことができた)
31:
郷「もうすぐ、だからね」
末来(なんだろう…とても熱い…まるで太陽に触れてるみたいに)
hび木「みく…わかる、みくのことが…わかるよ」
3k(ああ、これが、響なんだね)
『よかった、これで、もうずっと一緒なんだ』
―――――――――――――――
――――――――――――
―――――――――
――――――
―――
「ねえ響」
『ん?』
「実はね、明日にも世界が滅んじゃうかもしれないんだって」
『それはおっかないね』
32:
「家族とか…二課のみんなのことは心配じゃないの?」
『勿論心配だけど…それよりも今は未来と居たいから…』
「そっか…まあ私も同じ気持ちだったけど」
『そういえばさ、前に一緒に星に見に行く約束だったよね』
「うん、そうだけど…今日見に行く?」
『そうしようよ、誰にも邪魔されないような…遠い遠い、静かな場所で―――』
――――――――――――――
翼「………」
クリス「よお先輩、何かいい出掛かりでも見つかったか?」
翼「……そういう雪音はどうなのだ」
クリス「私…? 探しすらしてねぇよ」
翼「どうして…こんな状況でこれ程にも落ち着いてられるのだ……」
クリス「…落ち着ける訳無いだろ…背伸びすりゃキス出来そうなぐらい月が近づいてるってのに……」
クリス「なんていうかさ…諦めがついたんだよ…」
クリス「多分アイツらは無事だろうよ…まあベッドに血溜まりだけ残して消えたらそりゃ気が気じゃなくなるのも分かるけどさ」
33:
クリス「おそらくだが…アイツらなら私達の知らないところで元気にやってるさ…」
クリス「本当…なんとなくだけど分かる気がするんだ…」
翼「雪音…」
クリス「とりあえず今はあのでっけぇお月様をどうにかしねえとさ。 結局対策も何も出来ないのかよ」
翼「フィーネの残したカ・ディンギルの使用も検討したが…案の定、使用は不可能だった」
クリス「だろうな…結局、どっかの映画みたいに隕石を木っ端微塵、ってことも出来ないってわけか」
翼「はは…いっその事二人で一緒に月を押し返しにでもいくか」
クリス「それが出来たら苦労しないんだけどな…今の私達には力が無さ過ぎる」
クリス「あの時みたいに…アイツが居てくれたら…何かしらどうにか出来てたのかな…」
34:
クリス「なぁ…今から私が話す事は頭のトチ狂った奴の独り言だと思って聞いてくれ」
翼「む…何だ突然」
クリス「……このままさ、世界が滅んじまってもいいんじゃないかなーって」
翼「…本当に気でも違ったか、雪音」
クリス「…このまま人間みんな死んじまえばさ、皆、誰一人残されることなくあの世に行けるんだろ?」
クリス「勿論私も…父さん、母さんと同じところに行ける…のかもしれない」
クリス「お前にも…もう一生絶対に会えなくなっちまった大事な人は居るか?」
翼「………」
クリス「そいつともまたすぐに会えるかもしれないんだぜ…保証は出来ないけどさ」
クリス「……悪りぃ、聞き苦しいにも程がある独り言だったな」
翼「……いいや…そういう考え方も悪くはないかもしれない」
翼「人には妥協と諦観が必要な時もある…それが、今この瞬間なのだろう」
35:
クリス「人類の明日を諦観か…随分とスケールが大きいな…」
翼「……もしかすれば…私達には更に素晴らしい未来があったかもしれない…こんなことを未練がましく思うのはいけないのだろうか?」
クリス「いいや、いいと思うぜ。最後まで諦めが悪いってのもさ……けど、私達はあまりにも運が悪すぎたんだ」
翼「…運が悪かった、か」
クリス「それじゃあ私は地球最後の月光浴でも楽しんでくるさ、またな」
翼「またな……私達は再び会うことはできるのか?」
クリス「一々面倒臭い先輩だな…あの世か地獄の底でまた会う日まで、サヨナラだ、翼先輩」
翼「ああ、さよなら…クリス」
36:
この夜、一つの完全聖遺物が地球から反応を消した。
だいぶ前に突如として観測された謎の完全聖遺物のアウフヴァッヘン波形。
正体不明のこの聖遺物の捜索に特異災害対策機動部二課は力を注いだが、
あまりにも反応が微弱な為、発見へと至らなかった。
だが今夜、この完全聖遺物はこれまでにない程大きな反応を見せた後、地球上から姿を消した。
この聖遺物の正体はなんだったのか、何故突如として地球から姿を消したのか。
人類の死滅した世界では、もう誰もその真相を知ることは叶わない。
FINE
3

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