モバP「モバセルク〜黄金時代編〜」【前半】back

モバP「モバセルク〜黄金時代編〜」【前半】


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1:
―そのアイドルはスカウトの下
金とドリンクの混じる欲望に抱かれ生まれた
幸子「ボクが一番カワイイに決まってますよ。プロデューサーさんはそんなコトも分からなかったんですか?
 失礼ですね!いいです、許してあげます!その代わりにボクがカワイイって証明するの手伝って下さいね!」
2:
・モバマスキャラがベルセルクのストーリーを追っていくだけです
・バトルはご都合バトルです 物理攻撃したりしますが気にしないでください
3:
プロ「もたもたするな、さっさと移動だ。次の現場だぞ」
幸子「す、すいません…でもちょっと時間がきつすぎですよ!」
プロ「うるさいな…文句でもあるのか?」
幸子「そ…そういうわけじゃ…」
プロ「だったらさっさと動け」
幸子「……はい…」
プロ「…ったく!誰のおかげでスケジュールが埋まってきたと思ってるんだよ?」
?♪
タン タン タン
プロ「おっと!そら!そら!」
幸子「くっ…」ゼエゼエ
プロデューサーWIN!
プロ「どうした?こんなもんか?」
幸子「ハア…ハア…」
プロ「…ったく踊りもロクにできないのか?」
4:
トレーナー「プロデューサーさん、いくらなんでも無理ですよ…」
トレーナー「まだ幸子ちゃんは入って間もないんですよ?体力だってまだまだで…」
プロ「いつまでもほっとくわけにはいかないだろ?」
プロ「それに体力つけるためにやってるんだ、今言ったろ?まだまだだって」
トレーナー「そ…そんなこと言ってもあんまり無理をすると体壊しちゃいますよ!幸子ちゃんも何か言って…」
幸子「こ…こんなの…ボクにとっては…厳しい…うちには…入りませんよ…っ」
幸子「ふふー…んゲホッ!」
プロ「はは、強情だな」
幸子「く……!」
プロ「だめだだめだ、踏み込みが足りないんだよ!そら!」
幸子「うぐ…!」バッ
ドカッ
プロ「ぐうっ!」
DLOW!
幸子「ふふーん…」
幸子「!」ハッ
プロ「…こ」
プロ「この野郎!」
ドゴォ
幸子「うああっ!」ドサッ
プロデューサーWIN!
トレーナー「ちょっと!プ…プロデューサーさん!やりすぎですよ!」
プロ「はは…つい力が入りすぎちまった」
トレーナー「幸子ちゃん大丈夫?ゆっくり休んでね…」
プロ「……」
5:
幸子「1・2・3!1・2・3!」
幸子「ふうー…!」ハーハー
プロ「ずいぶん朝早くからレッスンしてるんじゃないか?」
幸子「プロデューサーさん…!」
プロ「……」
プロ「…フン」
プロ「そら」
ヒョイ
幸子「?」パシ
プロ「スタドリだ…疲れたら飲んどけ」
幸子「…え?」
プロ「……」
プロ「チッ…」
スタスタ
幸子「プ…プロデューサーさん!」
プロ「!」
幸子「あの…あり…」
幸子「……ありがとうございます…」
プロ「……」
プロ「とっとと移動の仕度しろ!」
幸子「……」
幸子「……」
プシュ…
幸子「ゴクゴク…」
幸子「ふう…」
幸子「……」
幸子「ふふ…♪」
6:
プロ「よしお前ら!イベントだ!」
プロ「報酬は早い者勝ちだ!たっぷり稼げ!」
プロ「おい幸子」
プロ「初イベだろ?しっかり頑張れよ」
幸子「……!」コクリ
プロ「よし…いけぇ!」
????????????????????????
「じゃあこれ今回の報酬ね」
幸子「ありがとうございます!」
タタッ…
幸子「プロデューサーさん!」
プロ「何だ?」
幸子「これ…ボクが貰った報酬です!褒めてもいいんですよ!」フフーン
プロ「……」ガサガサ
プロ「ほら、今回の仕事のギャラだ」
プロ「ま…しっかりやれよ」
幸子「は…はい!!」
プロ「……」ニコ
幸子「……」
幸子「ふふ…」
「なあプロデューサー」
プロ「何だ?何か用か?」
「……」
7:
プロ「…………次の仕事が決まったぞ」
幸子「わあ!どんな仕事ですか!?」
プロ「まあ地方のラジオ番組のゲストだな…そこのレギュラーもアイドルの子だから気軽でいいぞ」
幸子「わかりました!ふふん、ボクのカワイイ顔を見せられないのが残念ですね!」
プロ「……」
????????????????????????
―お仕事終了
「おつかれさまでしたー!」
幸子「おつかれさまでした!」
幸子「それじゃあ帰り…あれ、Pさんがいない…遅れてるんですかね?」
幸子「まったくしょうがない人ですね!まあ許してあげますよ、ボクは優しいので!」
コンコン
「幸子ちゃん、ちょっといいかな?」
幸子「はーい!なんですか?」ガチャ
「入ってもいい?」
幸子「いいですよ」
「ありがとう!…ふひひ」
バタン…カチャリ
8:
幸子「それで、何の用事ですか?」
「うひひひ…幸子ちゃんかわいいね…」
幸子「え…」
ガバアッ
幸子「ひいっ!?」
「取って喰おうってわけじゃないよ…おとなしくしてりゃすぐすむよ!」
「ふひ…この業界にはよくあることだよ…じゅるり…一目見てから触りたかったんだ…ハアハア」
幸子「やめ…やめてください!」ジタバタ
「その顔もカワイイよ…!ん…柔らかい…♪」モミモミ
幸子「やだ!やだ!!やめて!」
「あぁー、やわらかさが、すてき♪」モミモミ
幸子「うあ…」
「小さいのも…いいよね…大きさじゃないんだよこういうのは…」モミモミ
幸子「うう…」ピクピク
「はぁーん♪満足!うひひ、またいっしょのお仕事があったらよろしくね!」ガチャ
幸子「」
バタン...
愛海「いやー一度ふれあいたいと思ってたんだ…♪私のプロデューサーもいい仕事するね!」
幸子「まさかあんな子だったなんて…残念すぎますね…黙っていればボクほどじゃないにしろカワイイのに」ハアハア
プロ「愛海ちゃんとの共演は…まあ幸子にはいい経験になるだろ……たぶん」
9:
―――――――――――――――――――――――――
幸子(そしてボクは順調に人気を伸ばし…日に日に強く、カワイくなっていった)
幸子(そんなある日)
幸子「ユニットですか?」
プロ「ああ、お前もずいぶん頑張ってるしな」
幸子「やったあ!やっぱりボクには魅力があるんだ♪」
幸子「これからはもっと頑張りますよ!だからちゃんとボクを見ててくださいね!」
プロ「……ああ」
プロ「……」
卯月「よろしくね、幸子ちゃん!私も頑張りますっ!」
幸子「よろしくお願いします!」
10:
幸子(そしてボクのユニットも順調に人気になっていきました)
プロ「そろそろ総選挙の時期だな…」
幸子「総選挙!これはもうボクが一番に決まってますね!」
卯月「私だって頑張るからねっ!」
プロ「おう、頑張れよ」
幸子「ちぇっ!一番じゃなかったですね…」
卯月「でもトップ5に入るなんてすごいよっ!私ももっと頑張らないとね!」
幸子「ふふーん♪卯月さんもカワイイんですから自信持っていいんですよ!ボクほどじゃないですが!」
プロ「二人とも頑張ったな…!次はもっと上を目指すんだぞ」
幸子「当然です!プロデューサーさんももっと褒めていいんですよ!」
プロ「はいはい…じゃあ今日は終わりだ、帰っていいぞ」
卯月「お疲れ様でした♪」
幸子「お疲れ様でした!」
プロ「そうだ、卯月にはちょっと話がある、残ってくれ」
卯月「あ、はい」
幸子「それじゃボクは先に帰りますね!」ガチャ
卯月「うう…あんまりいい結果じゃなくてごめんなさい…!」グス
プロ「気にするな!30位には入ってるんだから充分だろ!頑張ったな卯月」ナデナデ
卯月「えへへ…次はもっと頑張りますねっ!」
プロ「おお!期待してるぞ!」
ワイワイ キャッキャッ
幸子「……」
幸子「なんですか…ボクの方がいい結果だったのに…」
幸子「プロデューサーさんの…ばか」
11:
幸子(それからも二人で頑張っていって…)
幸子(でもいつも人気なのはボクの方でした)
幸子(その代り…)
プロ「今日も頑張ったな卯月!」ナデナデ
卯月「えへへ!ありがとうございます!」
幸子「ボ、ボクのこともいっぱい褒めていいんですよ!」
プロ「…幸子も頑張ったな、次も頼むぞ」
プロ「じゃあ帰るか」
幸子「……」ムス
12:
幸子「ちょっと!プロデューサーさん!!なんですかこのスカイダイビングって!!」
プロ「なんだ知らないのか?飛行機やヘリに乗って上空からダイブして…」
幸子「そんなの分かってますよ!そういう事じゃなくて!こんなのアイドルの仕事じゃなくないですか!?」
プロ「幸子はいつも天使天使って言ってるだろ?天使は空から舞い降りないといけないと思ってな」
幸子「う…うぐぐ…」
卯月「だ、大丈夫だよ…ちゃんとパラシュートもあるし…」
卯月「幸子ちゃんが空から来たらファンのみんなもきっと喜ぶと思うよ!」
幸子「…………………………うぅ」
プロ「そうか幸子、さては怖いんだな?幸子にしかできない仕事だと思ったんだがな…そんなに怖いなら」
幸子「こ…怖いわけじゃありませんよ!!!」
幸子「そんなに言うなら分かりました!やってやりますよ!か、寛大な心に感謝して下さい!」
プロ「よし頼んだぞ!それで、卯月の仕事は…」
卯月「わあ!かわいい衣装ですね!えへへ♪」
幸子(ボクも普通にカワイイお仕事の方がよかったな…)ガクブル
13:
プロ「卯月、今日のレッスンは俺がしてやろう」
卯月「プロデューサーさんですか?お願いします♪」
幸子「ボクも頑張りますよ!」
プロ「あー、お前はトレーナーさんに頼んであるぞ」
幸子「えっ?」
プロ「お前は人気だからレベルの高いレッスンを受けないとな」
幸子「そ…そうですね!ボクは人気者ですからね!」
幸子「じゃあ二人とも頑張ってくださいね!」
卯月「幸子ちゃんもねー♪」
幸子「……」チラ
プロ「卯月、ここはこうだ!」
卯月「は…はい!」ハアハア
幸子「ボクも一緒にやりたかったのに…」
15:
プロ「よし卯月!飯でも食いに行くか!」
卯月「はい!幸子ちゃんも一緒にいこ♪」
プロ「幸子はまだレッスンがあるからダメだ」
卯月「えっ…」
プロ「まあサボってまで食いたいってんなら別にいいけどな」
卯月「プ…プロデューサーさん…」
幸子「……」
幸子「ボクはいいです、お弁当がありますから…」
幸子「それに今日レッスンを入れたのはボクですよ?サボるわけないじゃないですか」
卯月「幸子ちゃん…」
プロ「ほら行くぞ、卯月」
卯月「ごめんね?それじゃ…頑張ってね」
幸子「ふふん!まかせといてください!」
バタン...
幸子「……」ギリ...
幸子「なんですか…!いつも卯月さんのことばかり…!」
16:
幸子(そしてある日のこと)
プロ「幸子、今日はお前にプレゼントがあるんだ」
幸子「え…?」
幸子「プ…プレゼント!?ふ…ふふーん、貰ってあげますよ!」
プロ「幸子は最近頑張っていたからな…ほら、これ」
幸子「これは…腕時計ですね」
プロ「おー、似合ってるぞ」
幸子「そうでしょうね!ボクには何でも似合ってしまうんです♪カワイイですよね?」
プロ「ああ…かわいいかわいい」
幸子「…ふふ♪」
プロ「そうだ、一ついいか」
幸子「はい♪なんでしょうか?」
プロ「俺はお前のプロデューサーだ…」
プロ「だからそれが俺から貰ったものだってことは絶対他の人には言わないでほしいんだ」
幸子「なんでですか?」
プロ「プロデューサーが担当アイドルに贈り物なんて、週刊誌やネットであらぬ噂をかけられるからな」
幸子「…まあそうです…ね」
プロ「うちの仲間のアイドルにも言うなよ?それはそれで何言われるかわからんからな」
プロ「いいか?絶対誰にも言うなよ」
幸子「わかりました…じゃあこれは二人だけの秘密ですね!」
プロ「ああ…その言葉、信じてるぞ…『二人だけの秘密』だ」
幸子(ふふーん♪ようやくプロデューサーさんもボクのことを認めてくれたんですね!)
幸子(二人だけの秘密…ふふ…♪)
17:
?????????????????????????????
プロ「次の仕事は765の先輩との共演だ、頑張ってこいよ」
幸子「言われなくてもわかってますよ♪」
幸子「この時計はつけていっちゃいますね!ふふーん♪」
プロ「ああ…しっかりな」
プロ「……」
オツカレサマデシター
幸子「今日のボクもかわいかったですね!ふふーん!」
幸子「プロデューサーさんからプレゼントももらっちゃって…♪」
幸子「でもちょっと目立つんですかね?響さんがずっとちらちら見てたような気が…」
コンコン
「幸子ー、ちょっといいかー?」
幸子「はーい!どうぞ!」
響「お疲れさまだぞ、幸子!」
幸子「ありがとうございます!響さんもお疲れ様でした!」
響「いっつもカワイイカワイイ言ってるだけあってカワイかったさー♪」
幸子「響さんだってカワイイですよ!ボクには及びませんけど!」
響「あはは、威勢いいなー!」
幸子「なんたってボクが一番ですからね!」
18:
幸子「それで…何かご用ですか?」
響「ちょっと幸子のその時計、見せてほしいと思ってな」
幸子「時計ですか?もちろんいいですよ」カチャ
幸子(この時計が欲しいんですかね?さっきも見てたし)
響「……」ジー
幸子「ふふん、カワイイでしょう?ボクにぴったりの時計ですよね!」
響「うん…かわいいな…」
幸子「響さんにもわかりますか!さすがですね!」
響「……」
響「……」
響「…幸子」
幸子「なんですか?」
響「この時計ってどうしたんだ?」
幸子「その時計?それはですね…ボクのプ…」ハッ
『絶対誰にも言うなよ』
響「?」
幸子「…ボクへのプレゼントとして買ったんです!自分用として!」
19:
響「買った…そっか」
響「いつ買ったんだ?」
幸子「3日前ですが…」
響「幸子、これいくらした?」
幸子「えっ?」
響「だいたいでいいぞ、いくらぐらいで買ったんだ?」
幸子「え…っと…」
幸子「お…覚えてない…です」
響「じゃあどこのお店で買ったのか教えてくれるか?」
幸子「あ…あの…それもよく…」
響「そっか」
幸子(な…なんでこんなこと…?)
響「……」
響「幸子、実はな」
響「これと同じ腕時計…自分も持ってたんだ」
幸子「あ、そうなんですか?センスがあってるんですね!」
響「でももう今は無いんだ…」
幸子「ない?」
響「うん…なくしちゃってな…」
響「……3日前、に」
幸子「っ!」
20:
幸子「……なくした…そうですか…残念でしたね…」
響「荷物を置いてたらどっか行っちゃてな…本当残念さー」
幸子(もしかして…盗んだって思われてるの…?)
幸子「落し物の所にあったりするかもしれませんよ?探しに行きましょうか?」
響「そういう所は全部探したさー…誰かがひろって持ってっちゃったのかもしれないぞ…」
幸子「……」
幸子「あの…」
響「幸子」
幸子「は、はい」ビク
響「さっき幸子は3日前に買ったって言ってたな?」
幸子「は…はい」
響「実はな、この時計はもう製造終了してるんだ」
幸子「!!」
幸子「せ…製造終了…」
響「そうだぞ…だから買うことはできないはずさー」
幸子(そういえばこれ…箱には入っていたけど外箱だけで…説明書とかも…)
幸子「……」
21:
響「自分が無くしたのが3日前、幸子が買ったのも3日前」
響「でももうこれを売ってるお店はないんだ…」
幸子(で…でも…でもこれは…プロデューサーさんがボクのために…)
幸子(ボクの…ために…)
幸子(ボクの…)
幸子「う……!」
響「……」
響「…なあ幸子」
響「自分は別に怒ってるわけじゃないし…盗んだと思ってるわけでもないぞ」
響「ただ…本当のことを言ってほしいだけさー…」
響「拾ったけど欲しくなったから…って事ならそれでいいからさ…」
響「本当のことを言ってくれれば…」
幸子「……ううぅ…!」ポロ
響「…幸子……」
幸子「うあぁぁ……!」ポロポロ
22:
響「……本当か?」
幸子「うぐっ…ひっく…はい゙…」
響「そっか…幸子のプロデューサーが…」
響「……」
幸子「グスッ…あの…許してくれるんです…か……?」
響「許すも何も幸子は何もしてないだろ?当然さー」
幸子「その…ボクのことじゃなく…プロデューサーさんのことです」
響「あーそっちか…それは…」
幸子「……」
響「それは…ダメかな」
幸子「なっ…!」
幸子「ご…ごめんなさい…!ボクも謝ります!ちゃんとプロデューサーさんにも謝罪に行かせますから!」
幸子「響さんの時計を盗んだなんてひどい事ですけど…!でも…!どうにか…!」
響「別に自分の時計を盗んだことを言っているわけじゃないぞ」
幸子「え…?」
23:
響「そりゃもちろん盗まれて気分いいわけないさー」
響「当然怒ってないわけじゃないけど…でも絶対に許されないようなことじゃないとは思うぞ」
幸子「な…なら…」
響「いいか幸子…自分が本当に怒っていることは…」
響「その時計が自分の物だと知っていてそれを幸子にプレゼントしたことだぞ」
幸子「そ…そんな…プロデューサーさんはきっとこれが響さんのだって知らなくて…それで…!」
響「そんなはずないだろ!だったらこんなタイミングよく一緒に仕事なんかするわけない」
響「だいたいその時計は自分のお気に入りさー、時々仕事で会う人がわからないはずがないぞ」
響「それに知らなかったとしてもそんなのプレゼントとして渡すわけないだろ?」
幸子「う……」
響「それを知っててなんで幸子にプレゼントしたと思う?」
幸子「そ…れは…」
響「それは幸子が時計を盗んだことにしたかったからさー」
幸子「な…なんで…」
響「自分はそれが許せない…担当のアイドルを裏切るなんて…絶対に許せないぞ」
響「どんな理由なのかは知らないけど…こんなことをするなんて…」
響「そんな奴ほっといたら幸子にも、ほかの仲間にもまた何かするに決まってる」
幸子「プ…プロデューサー…さん…が…ボクを…」
幸子(どうして……!?)
響「幸子にはつらいかもしれないけど…これはちゃんと報告させてもらうぞ…ごめんな」
幸子「……!」ギリ
24:
―――――――――――――――――――――――――
ダダダダ…
バアンッ
幸子「ハア…ハア…」
プロ「!」
プロ「よう幸子」ガサガサ
幸子「プロデューサー…さん…」
プロ「もうプロデューサーじゃねえよ、首になったからな」ガサガサ
プロ「今荷物まとめてるところだ、終わったらここを出ていく」
プロ「そしたらもう二度と会うことはないだろうな」
幸子「プロデューサーさん…」
プロ「絶対誰にも言うな、二人だけの秘密だ、って言ったんだけどな?」
プロ「お前を信じてたんだけどなァ、誰にも…響ちゃんにも言わないって」
幸子「そ…そんなの…」
幸子「そんなの…」
幸子「……」
プロ「……」
25:
プロ「迂闊だったぜ俺としたことが…」
プロ「お前をここにスカウトしたおかげでこの有り様だ」
プロ「顔はカワイイからスカウトしたが凄い性格でびっくりしたよ」
プロ「すぐにやめると思ったんだがなァ…あんな傲慢なお嬢様みたいなキャラ…」
プロ「だがどうだ?やめることになったのはお前を拾った俺自身…シャレにもなりゃしねぇ…!」
幸子「プロデューサーさん…ボクは…!」
プロ「わかってるからわざわざここに来たんだろうけど…」
プロ「あの時計を盗ったのは…俺だ」
プロ「もちろんあれが響ちゃんのだってわかっててお前にやったんだ」
幸子(…嘘だ…)
幸子「…………どうして…?」
プロ「どうして?うっとうしかったからだよ…お前が!」
プロ「お前が犬っころみたいに懐いてくるのがな!」
プロ「わかってたろ?俺は卯月が一番気に入ってたことを…」
プロ「だがあいつには個性が足りない…だからお前とユニットを組ませた」
プロ「そうすりゃ全体としての個性は出るから目立つことができ、王道キャラだ…きっと人気になれる…」
プロ「そう思って、お前を『引き立て役として』組ませたんだよ」
プロ「だけどお前のそのキャラは…自分のことばかり考えてるキャラが…」
プロ「なぜかしらんが随分人気になっちまったからな…」
プロ「結局のところむしろお前だけが人気になっただけだ…ふざけやがって」
26:
プロ「あの時計は響ちゃんのお気に入り」
プロ「仕事中はあまりつけてはいないがファンなら大体は知っていることだ…」
プロ「その時計がなくなって、お前がつけていたらどうなると思う?」
プロ「少なくともネットなんかじゃお前が盗んだんじゃないか?って話になるだろう…」
プロ「そうなるとお前の評判は落ちるがまたお前たちのユニットにも注目は来るだろう」
プロ「炎上商法って奴だな…だが事の発端はお前だ、今度こそはきっと卯月が…」
幸子「……!」ガクガク
幸子(……)
幸子(どうして……?)
幸子(どうして!?)ギリ
幸子「…う」
幸子「うう…」
幸子「うあああっ!!」
バチイィンッ
プロ「っ…」ツゥ...
幸子「えぐっ…ひっく…」ポロポロ
プロ「……」ゴシ
プロ「…満足したか?」
幸子「……っ!」
ダッ
プロ「……」
プロ「じゃあな…幸子」
27:
幸子「うぐっ…ぐす…うあああ…!」ポロポロ
幸子(どうして…)グス...
幸子(どうしてこんな…!!)ヒック...
幸子(……)
幸子(どうするっていうんですか…?)
幸子(このままやめちゃえば楽なのに…何もありはしないのに…)
幸子(いやなことだけじゃないですか…)
幸子(何処へ…?)
幸子「うぅ…………!」
『頑張れよ』
幸子「……プロデューサー…さん…」
『しっかりな』
幸子「……」
幸子(プロデューサーさん…)
『君、俺と一緒にアイドルを目指してみないか?』
『ボクがカワイイって証明するの手伝って下さいね!』
『ああもちろんだ!君がトップアイドルになれる日を楽しみにしているぞ!』
29:
輿水幸子(14)
島村卯月(17)
我那覇響(16)
31:
――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
ワアアアア
「対決キタ―(゚∀゚)―!」「ライブで対決!」「ガンバレ!」
笑美「ひゃっふー!!ほないっくでー!!!」
「難波笑美だ!」
「『浪の派手娘』の難波笑美…!」
笑美「あんたら遠慮はいらんで! ウチはひな人形みたく、おとなしくしてへん。かかってきいや!」
ザワザワ
「今回は誰が行くんでしょうかね?」
ザッ
幸子「……」
「お…!?」
幸子「……」
「誰だ?」「ソロ活動の子みたいだな」
笑美「お、あんたもアイドルなん?ウチとLIVE対決してくれへん?かっこええとこ、見せてーや!」
幸子「こんなにカワイイアイドルのボクに挑もうなんて…ヒドいことを考えますね!ま、ボクが一番ですけど♪」
笑美 「挑んできたのはあんたやろ!
 まあ売られたケンカは買わな失礼やもんなー!よっしゃよっしゃLIVEで対決しよか!」
幸子「ボクとLIVEで対決ですね!ま、カワイイ方が勝つと思いますよ!」
笑美「ほな、いくでー!」
幸子「負けるわけありませんよ!」
幸子WIN!
笑美「ええやんええやん! あんがとなっ、楽しかったで!」
幸子「ボクのカワイさにやられましたね。そのままボクに見とれてて下さい!フフーン♪」
32:
「へえ、ソロなのに凄い子もいるものですね…」
「あなたとどっちが凄いでしょうか?」
「きっと次元が違いますよぉ…ねぇPさん♪」
「このイベントももう終わりだね…そろそろ移動しよう…」
幸子「……」
「じゃあ今回の給料と勝利報酬ね」
「しかし大したものだね…君みたいな若い子があの笑美ちゃんを…正直驚いたよ」
「どうだい?君、うちに正式に勤めてみないか?
 悪いようにはしない、給料も今までの何倍にもなるしなんならすぐユニット組んであげても…」
「君みたいなソロ活動の子にはまたとない話だろう?どうだい?」
幸子「……」スッ
幸子「イベントは今日までですよね?この辺にはイベントはもうなさそうですし」
「あ…いや、ちょっと…」アセアセ
「なにもソロを続けなくても…!仕事も給料も保証するよ!?なんならうちのメインアイドルとして…」
幸子「ほっといてください!!」
「うおっ…」
幸子「ボクに…なれなれしくしないでください」
「……」
幸子「……」
幸子「フンッ!」
「な…なんだ全く!仕事がなくなっても知らないからな!」
幸子「……」
33:
?????????????????????????????????
「あっ!」
「ねぇ誰か来るよ」
幸子「……」スタスタ
「あ!あれは昨日笑美ちゃんに勝った子だね」
「きっとお金も衣装もいっぱい持ってるにゃ…どうするPチャン?」
P「…好きにしな」
みく「よし行ってくるにゃ!」
クス…
みく「なーにまゆチャン?」
まゆ「みくちゃんじゃあの子に勝てませんよ…?」
みく「まあ、まっかせっにゃさぁ?い!!」
智絵里「みくちゃんったら…いいんですか…?ほっといて…」
P「……」
34:
幸子「……」
幸子「ん!」
みく「にゃははは!みくとLIVEで対決するにゃ!」
幸子「な、なんですか急に…」
幸子「うーん、ボクみたいなカワイイアイドルに挑んでくる人がいたんですね…まったく、ひどい人ですね!」
みく「負けないにゃ!『おねだり Shall We??』ッ!」
いたずら目してThank you
鈴が響いてBye-bye
街灯に照らされ また明日
…な?んて甘い
子猫じゃないのよ にゃお!
触れてよ ね?え
やさしく ね?え
指絡めて 背伸びをして
瞳閉じて Silence
幸子「勝つに決まってますよ!『To my daring…』!」
月曜日 おんなじ通りの朝7時
「おはよう」って鏡に向かって ごあいさつ
少しハネてる寝癖のあともチャームポイントなの
カワイイですよね?
通学路 定刻通りの朝8時
「おはよう」ってあなたに向かって 言えなくて
遠目で見てるあなたの背中 いつもの笑顔見せて
今はただそれが ほしいから
幸子WIN!
みく「みくの実力はこんなじゃない!きっと証明して見せるにゃあ!」
まゆ「もう…やっぱり…」
P「まゆ…お前行ってやれ」
まゆ「え…どうしてですかぁ?みくちゃんが勝手に…」
P「……」ジー
まゆ「…解りましたよぉ…」スタスタ
35:
幸子「!」
みく「まゆチャン!」
まゆ「Pさんが行けっていうもんですから…」
幸子「ボクのファンなんですか?ボクはカワイイからしょうがないですね。少しだけ遊んであげます!」
まゆ「うふふ!行きますよ!『エヴリデイドリーム』!」
大好きだよ ささやいてよ ほっぺたが真っ赤
きっと何回言われても足りないよ
大好きだよ あなただけよ この恋は真っ赤
赤い薬指の糸は永遠 エヴリデイドリーム♪
幸子「こっちも行きます!」
私だけの あなたへ step up!いつも 見ているわ
言葉だけじゃ たぶん 伝えきれないから
あなただけの 私をpop up!トクベツにあげる
だから oh my…Darling☆Darling☆I love you…
幸子WIN!
まゆ「……」
まゆ「負けちゃった…」
まゆ「負けたら…褒めてもらえない…負けたら…」ブツブツ
幸子「……」
幸子(ちょっと怖い…)
ザッ
幸子「!」
P「……」
幸子「何度も何度もなんなんですか!いくら優しいボクでもいい加減あきれちゃいますね!」
まゆ「Pさん!」
幸子(P…?)
みく「にゃはは!これで終わりにゃ!」
36:
幸子「ん?…まったく。いいですか、覚えておいてください…」
幸子「ボクの前に立つのはダメなんですよ!」ドヤァ
幸子「あしらってあげますよ!」
P「……」
P「抱きしめたい貴女を 心も身体も…」
幸子「!?」
ズンズンチャチャチャ…
P「冷たい夜空 無数に輝く星♪
 今夜幾つ星座に変わる…
 震える心 北風が吹き抜けていく♪
 ひとり歩く銀世界 眩しすぎる光♪」
幸子「ちょ、えっ!?」
P「今貴女は誰と?
 暖め合うんだろう…
 悴んだ 指先に
 雪が優しく堕ちる?♪」
P「抱きしめたい貴女を 心も身体も?」
P「溶け合って結ばれてCrystal Dust♪
 暖め合おう このまま真冬の所為にして♪」
P「さあ傍においで 近く深く♪
 こよなく貴女とCrystal Dust?♪」
幸子「」
PのWIN!
37:
幸子「……」
幸子「……」
幸子「…あなたに花を持たせてやるボクって本当に優しいですね!」
「やった!」「さすがPさん!」
「歌もダンスもすごいキレです!」
幸子「……」
幸子「」ドサッ
まゆ「あら…体力が切れちゃったみたいですねぇ…」
――――――――――――――――――――――――――――
バシャ
幸子(……)
幸子(…女の子?)
まゆ「なんでまゆがこんなこと…」ブツブツ
幸子(あ…濡れタオル…)ヒンヤリ
幸子(……)スゥ…
38:
??????????????????????????
幸子「……」
幸子「うーん…」ムクリ
幸子「…ここは?」
ザワザワ
ワイワイ
幸子(女の子たち…?)
幸子「!」
幸子「あれは…」
まゆ「??!」プンプン
P「??」
まゆ「……」
スタスタ
ザ…
まゆ「……」
幸子(確か昨日の…)
デコピンッ
幸子「フギャッ!?」
まゆ「ふんっ!」スタスタ
幸子「このかわいいボクに何するんですか!」
39:
智絵里「あはは…ご、ごめんね…昨日負けたのが結構ショックみたいで…」
智絵里「でも、普段はいい子なんだよ…?」
智絵里「昨日…あなたのこと看病してあげたのもまゆちゃんだから…あとでお礼言っておいてね」
幸子「ムー…」
P「あはは、今ので目が覚めたかな?」
ザ…
P「…オレはプロデューサー」
P「君、名前は?」
幸子「……輿水幸子、です」
P「一緒に来てくれないか?」
まゆ「!」
まゆ(Pさん…?)
みく「Pチャンはあの子をどうするつもりなのかにゃあ?」
杏「仲間にするつもりじゃないの?」
杏「結構あの子強かったじゃん?仲間にすればきっと戦力になるよ」
みく「確かにそうにゃ」
杏「……あの子が入ればもう杏は働かなくて大丈夫だね!今まで応援ありがとう!」
みく「ふざけたこと言わないでお仕事してよ杏チャン!」
かな子「……」
40:
幸子「なんなんですか?この人たちは…」
P「……」
P「アイドル事務所…『鷹の団』」
幸子(鷹の団!)
P「知ってるのか?」
幸子「噂だけなら…」
幸子(鷹の団…いろんなイベントで結構いい成績をとるとか聞いたことがあります)
P「フー…いい眺めだな」
幸子「…なぜです?」
幸子「なぜ昨日ボクを助けたんですか?」
幸子「ほっとけばいいじゃないですか、ライブバトルした相手のことなんて」
まゆ「……」ジー
P「……」
P「君が欲しいと思ったからさ…幸子」
P「こないだ、俺たちもあのイベントに居たんだ」
P「君と笑美ちゃんのライブバトル拝見させてもらったよ…見事だった」
P「…だが 危なかったな」
幸子「!」
P「笑美ちゃんの守備コストが無くなってなかったら負けたのは君のほうだったはずだ」
幸子「…でしょうね」
P「正直だなァ」
41:
P「君の戦い方はまるで…自分の命を試しているかに見える」
P「どんな相手にも一歩も引かない…逆に自分からがむしゃらに突っ込んでいく 確かに勇ましいが…」
P「オレには…わざわざ自分の身を敗北の危機にさらして」
P「逆にそこから勝利を拾おうとあがいている…そんな風に感じたよ」
P「…君は面白い」
P「オレは君が気に入った」
P「一目見てティンと来た」
幸子「……」
P「君がほしいんだ…」
P「幸子」
幸子(…なんですかこの人!?人のことをずけずけと…)ムカッ
幸子「いやだ…と言ったら?」
P「いやかい?」
幸子「ええ!おっことわりですね!!」
幸子「…知った風なことを言って…」
幸子「あなたに何がわかるんですか!口をきいたこともないあなたにボクの何が!?」
P「解りはしない…ただそう感じただけさ」
42:
幸子「…気に入りませんね!」
幸子「勝手に攻撃してきたくせに馴れ馴れしいんですよ!」
幸子「…ボクとあなたは…敵同士なんです」
P「どうするつもりだい?」
幸子「簡単です…ライブでケリをつけます!」
幸子「ボクが勝ったらあなたたちのお金も衣装も全部奪ってやりますよ!」
P「……オレが勝ったら?」
幸子「仲間にするなり何かを奪うなり好きにしてください!」
幸子「昨日はまさかアイドルでもない男性があんなにうまく歌えると
 思ってなかったので驚いてしまいましたけど…今回はそうはいきませんよ」
幸子「まあ本気でやったらこのカワイイボクが負けるはずありませんからね!」
P「解った」
P「力ずくっていうのも…」
P「嫌いじゃない」
ス…
まゆ「Pさん!」
P「手を出すなまゆ」
まゆ「でもぉ…」
P「オレは欲しいものは絶対手に入れる」
43:
幸子(その人を小馬鹿にした態度が…気に入らないんです!)
P「日を改めてもいいんだぞ?まだスタミナも攻コスも全快してないだろ」
幸子「ほっといてください!」
幸子「覚悟してくださいね…ボクの本気を見せてあげます!」
授業中 手紙を書いてる 午後1時
少しだけ隣のあなたが 気になるの
横目で見てるあなたの顔は だれより 魅力的で
渡せない 手紙 抱きしめる
どんなときも あなたをcheck up!あきらめないのよ
私だけを むいてくれるその日までは
背の高い あなたへjump up!届け この想い
だから oh i…miss you★miss you★Everyday…
幸子「ハアハア…」
幸子「ど…どうでした…?」
「すごーい!」「歌も上手だね!」
幸子「ふふーん!ボクはカワイイし歌も上手だし完璧なんです!」ドヤア
44:
P「それじゃあ…オレの番だな」
P「こっちも少し…本気を出してやろう」
BANG×BANG BIG BANG!!心は BIG BANG!!
夢と現実をぶつけて BOMBER!!
さあ叶えてみようぜ ROCKET DASH 極上の PEACE
BANG×BANG BIG BANG!!BARI×BARI BIG BANG!!
やるなら思いっきり ENJOY FEVER
願ってるだけじゃ進まないぞ
EVERYBODY ACTION START
FIRE!! FIRE GO!!
BIG BANG!!
幸子「うぐっ!」
幸子(う…す…すごい!)
Pさんの大勝利?!
「やった!」「さすがPさん!」
まゆ「むっ……」
45:
P「……」
幸子「う…」ヨロ...
ス…
P「これで君はオレのものだ」
幸子「……」
「ということは?」ワイワイ
P「今からこの子は鷹の団の一員だ」
ワアアアアア
まゆ「……」
まゆ(言ったことない…)
まゆ(Pさんは誰にもあんなこと)
『君が欲しいんだ』
まゆ(言ったことありません!)ギリ
46:
???????????????????????????
P「次のイベントはあのステージだ」
P「オレたちは相手ユニットにダメージを与え…」
P「それが終わったら一目散だ」
P「今回の殿は…幸子」
P「お前にやってもらう」
幸子「!」
まゆ「…!」
ザワザワ
P「骨の折れる仕事だ…敵を牽制して味方の逃走を助けるんだ」
P「ステージは一本道とはいえ相手は気力数百万以上…負ける可能性も高い」
幸子「……」
P「やれるか?」
幸子「命令ですよね?」
P「…そうだ」
ザワザワ
「いきなりすごい役だね」「あの子がどのくらいか試すつもりなのかな」
まゆ(違いますね…)
まゆ(大変とはいえこんな重要な役目…あの子を試すためだけにやらせたりはしません)
まゆ(Pさんは…幸子ちゃんを信頼しているんですね…)
47:
愛梨「ドイツでは、ウサギは幸運の卵を運んでくるんですって。
 少し派手ですけど、私たちもその役目!」
DLOW!
愛梨「私も思いっきり飛んでみます! ぴょーん♪ …あ」
P「よしみんな、逃げるぞ!」
幸子(ここからがボクの役目ですね!)
美嘉「マジメなのは、おもしろくないなー★アタシたちといっしょに楽しくなろーよ!」
幸子「ボクが負けるワケないです!」
幸子WIN!
美嘉「やばっ、本気にさせると、こんなにスゴいの!? もってかれた?!」
夏美「年甲斐もなくはしゃいじゃってるかな?でもLIVEが楽しくてね♪全力で行くよ!」
幸子「ボクが一番カワイイに決まってますよ!」
幸子WIN!
夏美「可愛い感じは似合わなかったかな…?今度はセクシーに攻めるよ♪」
幸子(さあ…もっとかかってきてください!)
48:
「おお!大戦果だ!みごとだPくん!」
「これで勝つのが楽に…あら?」
ス…
P「……」
まゆ「! Pさん?」
P「こっちのダメージは?」
「大したことないよ!あの新人の子結構強いね!」
「殿が頑張ってるおかげで相手はなかなかこっちに噛みつけないみたい」
「一本道とはいえ一度に何人も相手に…大したもんだね!」
P「幸子は?」
「さあ…負けてなければいいんだけど」
P「……」
まゆ「……」
49:
真尋「ドイツでは大きな陸上の大会が何度も開催されてるんだよね。自分もガッツでは選手に負けないよ!」
真尋「歌で金メダルッ!」
幸子「くっ…」
幸子WIN!
真尋「やりきったから悔いなしっ。でもやっぱりメダルがほしかったな!」
幸子「危なかった…」
幸子(そろそろ潮時ですね!)ダッ
麻理菜「はぁい♪ちょっとクラシックな雰囲気だけど、
 ここでお姉さんたちが空気をやわらげてあげようかな」
麻理菜「薄着でアクティブにね!」
ドゴォ
幸子「うわっ!」
幸子(まずい!このままじゃ…)
幸子(!)
幸子(Pさんたち!?)
P「行くぞ!」バッ
幸子「…!」ガシッ
幸子「どうして戻ってきたんですか!?」
P「話は後だ!」
50:
麻理菜「ここで決めなきゃ女が廃る!」
麻理菜「むっ!」
かな子「私に任せてください!」
かな子「グリム童話のお菓子の家みたいに、カラフルなLIVEをしたいですね。私たちなら届けられますよね♪」
かな子「『ショコラ・ティアラ』ッ!」
お手本よりたくさん イチゴのせたショートケーキ
こんな風にきっと なりたかった
だから 今 この気持ち
そっと 奏でてみよう
胸の鍵を 開けて
夢のティアラ 変われるかな
いくつもの花が咲くような
虹のショコラ しあわせから
ドキドキに変わってく
かな子WIN!
麻理菜「やられちゃったわね。この衣装はさすがに攻めすぎだったかな…」
51:
ワアアアア…
ワイワイ
ガヤガヤ
P「……」ニコッ
幸子「……」
まゆ「……」ジー
「まったく…たかだかイベントが一度成功したくらいで浮かれやがって」
「まあしかたないさ…今回の成果は確かに大きい…そうそう邪険にはできないさ」
「しかし…恐ろしい男だなあれは」
「今回の作戦もすべてあいつが取り仕切った物」
「あの若さで無課金だというのにアイドルの親愛度の高さといい…末恐ろしい」
「それにしてもあの子結構やるね!」
「さすがPさんが見込んだだけはあります!」
P「……」
52:
幸子「……」
智絵里「あ!いたいた」
智絵里「何やってるの…?こんなところで…夕涼み?」
智絵里「こっちへおいでよ、一緒に楽しもうっ」
幸子「…ボクはいいです」
杏「幸子、結構スゴイじゃん!」
杏「君がいれば杏は安心して引退できるよ…あとはまk
かな子「だめですよ杏ちゃん!もう…」
智絵里「わたし…智絵里、よろしくね!」
智絵里「一緒に来てよ、主役がいないと…盛り上がらないから…」
幸子「何ですかそれ…」
智絵里「今夜のパーティーは…幸子ちゃんのお祝いも兼ねてるんだ…」
智絵里「だから…一緒に…ね?」
幸子「別に頼んではいないですが…そうですね!」
幸子「やっぱり一番カワイイボクがいないと始まりませんよね!」
かな子「それじゃあ行きましょう!」グイッ
幸子「あっ、ちょっと引っ張らないで…」
かな子「私はかな子です、よろしくお願いします!」
かな子「それじゃジュース飲んで!」ズイッ
幸子「……」グイッ
ワイワイ
みく「みくはみくにゃ!これからよろしくね!」
幸子「……」チラ
P「……」ニコッ
まゆ「……」
53:
???????????????????????????????
―翌朝7時
幸子「……」
智絵里「あ…早起きだね…」
智絵里「どうかな…ここ?」
幸子「どうって?」
智絵里「やって…いけそう?」
幸子「……」
幸子「わかりませんよ、そんなこと」
幸子「…ここは変わってますね」
幸子「アイドルと言ったらどこも大差ない…
 ちょっとかわいいだけでみんな同じような、大した特徴のない集団というイメージですが…」
幸子「…ここは…なにか…というかもの凄く違います」
智絵里「へえ…そんなものかな…」
智絵里「確かにアイドルとしては少しバラエティに豊んでるね…」
智絵里「お医者さんでしょ
  幼稚園の先生でしょ
  ギャンブラーでしょ
  巫女さんでしょ
  ボーイッシュな子でしょ
  宇宙人でしょ
  ギャルの子や…
  探偵アイドルまでいろんな子がいるね…えへへ!」
54:
智絵里「でも…しいて言えばPさんかな?やっぱり…」
智絵里「Pさんが大好きな子…Pさんと一緒なら有名になれそうだと思った子…」
智絵里「とにかく…ここのみんなはPさんに惹かれて集まったんだ…」
智絵里「わたし達だって…一人一人なら大したことないよ…逆に個性ありすぎだもん…」
智絵里「ただ…他の事務所とは違うんだ…」
智絵里「ここでは…衣装取ったり取られたり…毎日いろいろやりながら…」
智絵里「泣いたり、笑ったり、怒ったりできるんだっ」
幸子「……」
幸子「Pさんって…どんな人なんですか?」
智絵里「えっと…よく…わかんないかな…」
幸子「…彼に惹かれて集まったって…」
智絵里「あはは…えっとね」
智絵里「なんていうかね…何か悟ってるみたいだと思ったらまるで子供みたいだったり…」
智絵里「背筋も凍るような冷たい目をしたと思ったら赤ちゃんみたいに無邪気に笑ったり…」
智絵里「子供なのか大人なのか…『よくわからない』人だよ」
智絵里「ただ…Pさんはわたし達とは違う…」
智絵里「わたし達が憧れるだけの夢物語みたいなことを…Pさんは当たり前のように実行しちゃうんだっ」
幸子「……」
智絵里「うまく言えないけど…歌や踊りだけじゃなくて」
智絵里「Pさんには私たちにはわからない…もしかしたら一生かかっても手に入らない…」
智絵里「確信みたいなものを持ってるんじゃないかな…きっと」
幸子(確信…)
幸子「何の…?」
智絵里「いろんなことの…ね」
55:
智絵里「いい人だとか…悪い人だとか…」
智絵里「その人のことを…よく知ってる知らないじゃなくてさ…」
智絵里「人が集まるってことは…そういうものなんじゃないかな…」
「幸子ちゃーん!Pさんが呼んでるよ!」
幸子「それじゃあ…」
智絵里「幸子ちゃん!」
智絵里「ここならきっと見つかるよ…あなたにも、居場所が」
56:
バシャア
幸子「!」
バシャア
幸子(水浴びしてる…)
P「フウ…」
幸子「…//」
P「よお!」
P「どうだお前も?目覚ましにはこれが一番だぞ」
幸子「ボクはいいです!」
P「まーそう言わずに…」スタスタ
幸子「わー!やめてください!子供じゃあるまいし…フギャー!」
バシャアァ
幸子「ガボゴボガボゴボボ!」
幸子「ハ…クシュン!な、なんですか!」
P「ハハハ!変な顔!」
幸子「……」ガシッ
バシャア
P「わち!甘い!」ヒュッ
ザバッ
P「ブハッ」
幸子「ふふーん!」
P「……」
57:
幸子「こ、こんなびしょ濡れになってもカワイイボクってやっぱりスゴイですね!
 でもさすがにもっとボクを大事に…ってまた水!?フギャー!」ザバア
幸子「……」
ガシッ
ガシッ
バシャア
ザバッ
智絵里「……」
智絵里(元気だなあ…朝早くから)
ザ…ガラガラ…
幸子「」ゼーゼー
P「」ハーハー
P「朝からいい運動になった…」フー
ザバッ
P「わっぷ」
P「幸子…おまえ!」ケホ
幸子「これでおあいこです」
P「…あ」
P「プ…」
P「ハハハハ!」
P「わかった参ったよ!つくづく強情なんだなおまえ…」
58:
幸子(ん?)
幸子「……」
P「? なんだ?」
幸子「変わった首飾りですね…」
P「これか…」
P「昔、とある事務所の事務員さんからもらったんだ」
P「ベヘリット…別名『覇王の卵』とかいって…」
P「なんでもこれを持つ者は、自分の血と肉と引き換えに世界を手に入れる運命なんだってさ」
幸子「世界を…?」
P「いーだろ?」ニヤニヤ
幸子「」
幸子(ほんとによくわからない人です…ただの子供みたい)
幸子「…まだ答えを聞いてませんでしたね」
P「ん?」
幸子「さっきのライブ…どうしてボクを助けに戻ったんです?」
P「……」
P「せっかく手に入れた優秀な子をあんなケチなイベントでなくしたくないからな」
幸子「……」
59:
P「人間ってのは…みんな大きな流れに身を任せているだけだ、運命とかなんとか言うやつに…」
P「そしてみんな消えて行くのさ…命を使い果たして…自分が何者なのかさえ知ることもなく」
幸子「……」
P「この世には人の定めた属性や課金とは関係なく世界を動かす鍵として生まれついた人間がいる」
P「それこそが宇宙の黄金律が定めた真の特権階級…」
P「神の権力を持ち得たものだ!」
P「……オレは知りたい!この世界においてオレはなんなのか」
P「何者で何ができ…何をするべく定められているのか」
幸子「……」
P「…不思議だな……」
P「こんなこと話すのはお前が初めてだよ」ニコ...
P「幸子…お前はオレについて来い…」
P「今はほんの一歩に過ぎない 鷹の団も、イベントでのいくつかの勝利も」
P「ほんの手始め ほんの始まりさ」
P「面白いのはこれからだ…命を懸けるほどにな」
P「オレはオレの国を手に入れる」
P「お前はオレのために働け」
P「お前はオレのものなんだからな」
P「お前の行先はオレが決めてやる」
幸子「国…?」
P「そう…国だ」
P「世界中に名を轟かせるような…神プロダクション」
P「必ず手に入れてみせる… 幸子、おまえと一緒にな」
60:
??????????????????????????
幸子(神プロダクションを手に入れるですって?)
幸子「アハハ!本気ですかね?」
幸子(廃課金や重課金でもない、ましてや微課金ですらない)
幸子(たかだかファン数も50万そこらの事務所が…神プロダクションですって?)
幸子(あの人…当たり前のような顔して言ってのけましたね)
幸子(…ボクより年上と言ってもまだまだ若い…ただの…一人の男が…)
幸子「そう…言い切るんですか?」
幸子(ボクはこの数か月間何をやってたんでしょうか)
幸子(あっちこっちのイベントをただ駆けずり回って…)
幸子(ただ…歌を歌って…)
幸子(ただ…生き延びて…)
幸子(何処へ…?)
幸子「あの時の答え…まだ見つかりませんよ…昔のプロデューサーさん…」
61:
カンカンカン
杏「おーい幸子ー」ガチャ
ドン
幸子「」
杏「あ」
幸子「フギャー!」ドボン
幸子「ハ…クシュン!な、なにするんですか!」
杏「ご、ごめんごめん」
幸子(今日は水難の日ですね…)
杏「聞いたよ、さっそくチームのリーダーになるんだってね、すごいじゃん」
杏「これからいろいろあるだろうけど、よろしく」スッ
幸子「……」
とりあえず…
幸子「よろしくお願いします…杏さん!」ガシッ
杏「うーん…」ザバ…
かな子「幸子ちゃん!聞いたよ、チームリーダになるって…」ガチャ
ドンッ
杏「」
幸子「」
ドボーン
…とりあえずね
杏「ちょっとかな子!前みてよ!」ゲホッ
幸子「水も滴るボク!セ、セクシーですね!」クシュン
まゆ「……」
62:
難波笑美(17)
前川みく(15)
佐久間まゆ(16)
緒方智絵里(16)
三村かな子(17)
城ヶ崎美嘉(17)
相馬夏美(25)
北川真尋(17)
沢田麻理菜(26)
双葉杏(17)
65:
―――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
――――――――――――
この世界には人の運命を司る何らかの超越的な"律"…
"神の手"が存在するのだろうか?
少なくとも 人は自分の嫁さえ自由にはできない
人は記憶の彼方 遥か遠い日
心に負った小さな傷を庇うためにガチャをする
人は思いの彼方 遥か遠い日
微笑みながら逝くためにガチャを引く
66:
≪そのイベントは長きにわたった…≫
「ぬう…なんたる様だ!たかだか数人相手にいい様にかき回されるとは…」
「誰でもいい…きゃつらを止められるものは…このプロダクションにはおらんのか!?」
ザッ
[自称・カワイイ]輿水幸子「……」
「バカな!このユニットに対して単騎だと!?」
「いいだろう!返り討ちにしてやれ!」
幸子「カワイイ方が勝つんです!!」
ワアアア
「くっ… すごい歌だ!」
幸子「ふふーん!こんなに大勢の人たちをトリコにしてしまうなんて…
 ボクのカワイさって、罪ですね…。みんながボクを求めてやまないなんて、ゾクゾクします!」
幸子(でも、ボクを一番求めてるのはPさんですよね?)
「くそ!相手は一人だ!一気にやっちまえ!」
「! 社長あれを!」
「た…鷹の団!」
ドガガガガ…
ワアアアア…
67:
?????????????????????
「幸子ちゃん!」「凄かったよさっきの歌!」
「かわいかったー!私もー体が震えちゃって…!」
「今回の勝利の立役者だね!」
幸子「ボクの方こそごめんなさい…一人で勝手に突っ走っちゃって…」
「何言ってるの!もー」「それじゃお祝いしよう!」
「幸子ちゃん」
「!」
まゆ「……」
「まゆさん…!」
幸子「……」
まゆ「話があります」
まゆ「ちょっと来てくれますか?幸子ちゃん」
幸子「それじゃ皆さんは先に行っててください」
「はーい……」
「何だろね?」「さあ」「ケンカじゃないの?また」
「幸子ちゃんが3年前入って以来あの二人の犬猿の仲は有名だもんね」
「たぶん今回一人で戦ってた事じゃないかな…」
68:
まゆ「あなたどういうつもりですか?」
幸子「何がです?」
まゆ「とぼけないでください!あなたの役目は私たちが突っ込むのを側面から援護することだったじゃないですか!」
まゆ「それを…味方を無視して一騎打ちだなんて…!」
まゆ「たまたまうまくいったからいいものの…あなたの勝手な行動がチーム全体を危険にさらすことだってあるんです!」
幸子「ふふん、大丈夫ですよ…ボクが負けるはずありませんから!」
幸子「でもまあ…今後気を付けますよ」
まゆ「…いつもそうですねぇ」
まゆ「そうやって口先だけ…そしてまた同じことを繰り返す…」
まゆ「あなたは実際3年前と何も変わっていません…Pさんに噛みついていったあのころと…」
まゆ「あなたはただステージで派手に目立てればそれで満足なんです!
 仲間の事なんて何も考えていない…ただの自己中ですよ!!」
幸子「……!」バンッ
幸子「もう一度…」
幸子「もう一度言ってみてください!!」ギリッ
まゆ「…!」
「二人ともその辺にしとけ」
幸子・まゆ「!」
まゆ「Pさん」
P「幸子にはオレからよく言っとく」
まゆ「……」
スタスタ
まゆ「Pさんは幸子ちゃんに甘すぎます…」
幸子「……」
69:
P「…フウ」
P「お前らほんっとに仲悪いな」
P「顔突き合わせてもう3年になるってのに…」
幸子「考えてますよ…」
幸子「ボクだって仲間のことは考えてます」
幸子「もう…昔のボクじゃない」
P「……」
P「思い出すな…3年前の…イベントを渡り歩いていたお前を仲間に入れるためのライブバトル…」
P「…あのケンカは楽しかった」
P「ケンカってのはああいうのがいい…」
幸子「……」
幸子「…Pさん」
幸子「今日のイベント…すいませんでした…」
P「…お前の『そういうところ』も…オレの策のうちさ」
幸子(……)
70:
「まったく前代未聞だな無課金ごときを役員だなんて…」
「一体社長は何を考えているんだ…」
「しかし今回のイベントも…確かに奴らの功績は大きい」
みく「他の人たちもこう勝利を重ねられちゃ…」
みく「さすがにみく達の実力を認めざるを得ないにゃあ」
みく「これでみく達は晴れて有名プロの仲間入りってことにゃ」
幸子「これもボクがカワイイおかげですよね!感謝してください!」
みく「い?や違うにゃ…みくのおかげだにゃあ」
みく「みくほどアイドルらしいアイドルはいないからにゃ?、かわいいだけじゃだめだモン☆」
幸子「いいえ、一番大事なのはカワイイかどうかですよ!」
みく「カワイイだけなんて子どもだってそうでしょ??」
まゆ「二人ともうるさいですよぉ…任命式の最中です」
まゆ「これからは私たちのスキャンダルがPさんの足を引っ張ることになりかねません…」
まゆ「今までのように自由にやっていればいいと言うわけにはいきませんよぉ…」
幸子「はいはい、分かってますよ」
みく「……まったく…お母さんみたいだにゃ」ボソ
まゆ「何か言いましたかぁ…?」ギロ
みく「にゃあ!式、式」
まゆ「ぅ…」
71:
―――――――――――――――――――――――――
それは深い海のような紺碧だった
P『昔、とある事務所の事務員さんからもらったんだ』
P『ベヘリット…別名『覇王の卵』とかいって…』
P『なんでもこれを持つ者は、自分の血と肉と引き換えに世界を手に入れる運命なんだってさ』
幸子『世界を…?』
P『オレは…オレの国を手に入れる』
3年前 彼はそう言った―――
P「……」
「Pさん!敵の要塞はほとんど制圧完了したみたいだよ!」
P「敵のリーダーは?」
「それがまだ…今幸子ちゃんたち切り込み隊が包囲してはいるんだけど…」
「相手にすごいアイドルが一人いて…その子のために突破口が開けないみたい」
まゆ「…一人」
みく「たった一人に?情けないにゃあ…」
智絵里「きらり…」ボソ
まゆ「え?」
P「!」
杏「きらりって…まさか?智絵里…」
智絵里「今回のイベントでうわさを聞いたんです…」
智絵里「相手にあの"諸星きらり"ちゃんが…加わってるって…」
「「「諸星きらり!!」」」
72:
かな子「だ、誰ですか?」
杏「知らないの?かな子」
杏「…諸星きらり 仲間の間だと伝説的存在のアイドルだよ」
杏「きらりがイベントでハピハピさせたファンは何千何万ともいわれてる」
杏「でも…きらりが恐れられてる理由はそれだけじゃないんだ」
杏「きらりはイベントの度に必ず…かわいい子を『きらりん☆ルーム』とやらにお持ち帰りするらしい」
P「……」
智絵里「幸子ちゃん…誰でも構わず…挑戦していくところあるから…」
シーン…
智絵里「嫌な雲行きですね…」
73:
幸子「千佳さん!離してください!」
千佳「だめだよ!もうちょっと待とうよ!」
幸子「バカ言わないでください!もう一時間も経つんですよ!!」
幸子「何人も送り込んで一人も出てこない…!ほっとけません!」
千佳「じゃあまゆちゃんたちに援護を…」
幸子「冗談じゃありませんそんなこと!」
幸子「…一人です!たった一人の相手に…」
幸子「全員が釘づけにされて一歩も動けない…!」
幸子「こんな情けない話がありますか!!」
ニョワアアァ!
「「!」」
「さ…幸子ちゃ…」ヨロヨロ
「…きらりちゃんが…ハピ…ハピ…」ドサ
「やっぱりあのウワサ本当だったんだね…」
「どうしようか…」
幸子「……」
ザッ!
74:
千佳「ちょ…ちょっと幸子ちゃん…!」
幸子「来ないでください!」
幸子「誰もついてこないでください…」
幸子「ボクが一人でやります」
ゴオオオオオ…
「」ハピハピ
「」ハピハピ
幸子「ヒッ…」
幸子(何ですこの人たちは…)
幸子(アイドルたちが完全にハピハピ状態に…!)
ニョワアアア
幸子「くっ!」ダッ
ゴゴゴゴ
きらり「にょわー☆」
幸子「うああああ!」ダダッ
きらり「おにゃーしゃー☆」ゴッ
幸子「うわっ!」
幸子(何ですか…これは!?)
75:
きらり「あなたもきらりとハピハピしよ☆」
ましゅまろほっぺ 指先でぷにぷに♪
たのしそうに あなたがはじいて笑う(ぷにぷに)
ましゅまろほっぺ 私あなたの楽器♪
秘密の五線紙の暗号
「大好き。chu!」わかるかな?
幸子「ハア…ハア…」
きらり「すごーい!きらりんとハピハピしてルンルンね☆ばっちし☆」
きらり「でも他の子はすぐ疲れておねむみたいなんだにぃ…」
きらり「でもきらりんは今日はとってもハピハピだにぃ☆それじゃいっくよー☆れっつらごー!」
あなたの「大好き」の中に 私も入れて♪
もういちど「かわいい」って言ってみて♪
あなたが なでてくれた 髪の毛も眉も くちびるも
その瞬間から たからもの♪ハピハピ♪
甘いお菓子が 欲しいな どこどこ?
ぱふぱふぱふ ころんころん
ましゅまろ ころがる はぷにんぐ(タイヘン!)
ましゅまろほっぺ 指先でぷにぷに♪
たのしそうに あなたがはじいて笑う(ぷにぷに)
ましゅまろほっぺ 私あなたの楽器♪
秘密の五線紙の暗号
「大好き。chu!」わかるかな?
幸子(す…凄すぎる!もの凄いパワーの歌です!)
76:
きらり「きらりん嬉しいにぃ…こんなに一緒にハピハピできる子って初めてだにぃ☆」
きらり「それじゃ…いっくよー!きらりん・おん・ざ・すてーじ☆…」
きらり「『きらりんぱわー』☆」┣¨┣¨┣¨┣¨
ゴゴゴゴゴ
それは巨大な…女の子だった
きらり「きらりんびーむ☆」ビュゴオォォォオォ
幸子「フギャー!」
きらり「きらりんあたーっく☆」ドゴオォン
幸子「ひいいい!」
幸子(なんですかこれ!まるで歯が立ちませんよ!?)
幸子「あぅ…」ドサッ
きらり「あ…お疲れみたいだにぃ☆きらりんルームにいらしゃーい☆」ガシ
ドドドド
きらり「にょわ?」
P「……」アセダク
幸子(Pさん…)
みく「す…すごい大きい子にゃあ…」
杏(ヤバい)
まゆ(何ですかあれは!?)
77:
P「気を抜くな!第二陣行け!」
ドドドド
「やったか!?」
きらり「…かわいい」
きらり「うきゃー!かわいい子いっぱいだにぃ☆」
きらり「みんなきらりんホームにご招待すぅ☆」
P(全然効いてねえ!)
幸子「だめです…逃げてください!」
「きゃー!」ハピハピ
「うわっ!」ハピハピ
「まずい!とても手におえない!」
P「まゆ!全員退避させろ!」ダッ
まゆ「! Pさんどこへ…!」
幸子「」
P「幸子…!」ダダッ
まゆ(……!)
78:
P「おい立てるか?」
幸子「バカなんですか!なんで来たんですか!?」
P「文句ならここから脱出した後にしろ」
幸子「なぜです…」
幸子「なぜこうなってしまうんです…もう!」
P「……」
ズシッ
きらり「どこへいくんだにぃ?きらりんルームはこっちだゆ☆」
P「動けるか!?」
幸子「やらなきゃやられます!」
P「お前は左!行くぞ!」
バッ
きらり「!」
ドシャア
「やった…すごいです!」
P「一気に走り抜けるぞ!」
まゆ「Pさん危ないです!後ろ!」
P「!」ハッ
きらり「にょわー☆(物理)」
ドゴォ
P「グハッ…」
79:
幸子「Pさん!」
ガシ
幸子「ちょ…」
きらり「今日は素敵な日だにぃ…」
きらり「これだけいっぱい歌って踊れて…とっても楽しいにぃ☆ヤバーイ!」
きらり「いっしょに、ぎゅーーーっ☆」
幸子「あっ」ギューーーッ
きらり「ありゃっ、だ、だいじょぶ?」
幸子「」
きらり「やっぱりお疲れみたにだにぃ…それじゃあきらりんルームにつれてってあげるゆ☆
 まずはこっちのカッコいい人から…」
まゆ「Pさん!」ジタバタ
智絵里「だめですまゆちゃん!」
きらり「!」
きらり「…これは…!?」
きらり「覇王の卵!?」
幸子「!」
きらり「にょわ…覇王の卵…!?こんな若い男の人が…紺碧の"ベヘリット"を…!?」
きらり「うぇへへ!おもしろいにぃ☆そういうことだったのかにぃ…」
80:
きらり「きらりんルームへのご招待はまたあとでにすゆ☆」
きらり「でも…また会えるかにぃ…?」
きらり「ひとつだけ…もしあなたがこの人にとって本当のアイドルと言える人なら…」
きらり「覚悟しておくにぃ…この人の夢が終わる時…」
きらり「あなたに死がおとずれるにぃ…ぜったい逃げられない死にょわ…ヤバーイ!」
きらり「でも…夢はいつでもおっきいのがステキだにぃ☆じゃーね☆」
ドゴゴゴゴゴゴ…
幸子(…死?)
幸子(死ぬですって…?このボクが…?)
まゆ「Pさん!」ダッ
まゆ「Pさん!しっかり…!」
「大丈夫幸子ちゃん?」
幸子「ええ…なんとか」
千佳「もう…強がっちゃって」
幸子「それよりPさんは?」
バシィ!
幸子「!」
まゆ「Pさんに触らないでください…」グスッ
まゆ「あなたのせいです…Pさんがこんな目にあったのは…」
まゆ「あなたのせいです!!」
81:
?????????????????????????
幸子「……」スタスタ
智絵里「! 幸子ちゃん」
幸子「何やってるんです?みんな揃って」
杏「もう歩き回っていいの?」
幸子「……」チラ
まゆ「……」ジロ
『あなたのせいです!!』
まゆ「……」プイ
智絵里「気にしないで…あれは幸子ちゃんのせいじゃないよ…みんなもわかってるから…」
智絵里「まゆちゃんもあの時は動揺してあんなこと言っちゃったんだよ…気にしないでね」
幸子「……」
幸子「それで、皆さん何をやってるんですか?」
智絵里「みんな同じ…Pさんのお見舞いなんだけど…」
智絵里「先に人がいてね」
幸子「誰ですか、あれ?」
智絵里「プロダクションの偉い人たちだよ」
智絵里「捨てる神あれば拾う神ありってね…Pさんを無課金だからって煙たがる人もいるけど…」
智絵里「ああやって今のうちに仲良くしておけば…あとでいい思いができると考える人たちもいるんだね」
智絵里「まあ当然といえば当然だけどね…」
智絵里「今の所Pさんは負けなし…最強の事務所のプロデューサーなんだから…」
82:
幸子「…ふーん じゃ…」
智絵里「じゃ…って…え?」
まゆ「ちょっと!今の話聞いてなかったんですか!?」
幸子「聞いてましたよ?だから?」
まゆ「…だから?」
智絵里(あっ…)
まゆ「だからじゃありませんよぉ!重役の人たちが終わるまでここで待ちなさいって言ってるんです!」
幸子「別にどうってことないでしょう?お見舞いに身分もなにもありませんよ」
幸子「だいたい身分がどうとか言う前に、このカワイイボクが行かない方が間違ってますね!」
幸子「プロデュー…」ガシ
幸子「なんですか?いい加減に…」
まゆ「……」スッ
バチィンッ
幸子「」
「「「あっ」」」
幸子「イタタ…何するんですか!」
83:
幸子「!」
まゆ「……」ジワァ
幸子「……」
まゆ「…なぜですか?」
まゆ「なぜあなたという人はいつもそう…」
まゆ「なぜPさんは…あなたみたいな子を…あんなに…」グス
幸子(なんなんですかもう…泣きたいのはこっちの方ですよ)
幸子「フン!」スタスタ
智絵里「幸子ちゃん?」
幸子「あとで出直してきます」
幸子「……」チラ
まゆ「……」グス…
杏「でも…幸子の気持ち…少しはわかるかな」
杏「最近のプロデューサー…気軽に声をかけづらいっていうか…」
杏「なんだか少し…遠くなった気がするよ…」
まゆ「……」
杏「この頃全然甘やかしてくれないし…毎日仕事いれてくるし…」
かな子「それは我慢してください!」
84:
タン タン タン
『あなたはただステージで派手に目立てればそれで満足なんです!
 仲間の事なんて何も考えていない…ただの自己中です!!』
『なぜあなたという人はいつもそう…』
幸子(……)
『あなたのせいです!!』
幸子(もう…なんだっていうんですかあの人は…!)
P「荒れてるな」
幸子「! Pさん」
P「もうレッスンして平気なのか?」
P「オレよりよっぽどひどくやられてたのに…まったくタフな奴だな」
P「昨日はすまなかったな…みんなで見舞いに来てくれてたようだったけど…」
P「…ったくあの重役たち人がスタミナ全然ないからって恩着せがましく毎日毎日…うっとうしいったりゃありゃしない」
P「…でもまぁ仕方のないことだけどな」
P「このプロダクションでのし上がっていくためには絶対必要なことだ」
幸子「……」
85:
P「…諸星きらりか…」
P「あんな凄い子もいるとは…世界は広いもんだ」
P「しかし裏を返せばこの世界には人知の及ばない巨大な何かが存在するという証拠かもしれないな」
P「たとえば…『女神、天使』と呼ばれるなにか…」
幸子「『鬼、悪魔』…じゃないですかね」
P「さあな…同じことだろ?」
P「ところでオレどうして助かったんだ?途中で気ィ失っちまったからなァ…」
幸子「あなたが首につけてるそれ…」
幸子「どういうわけかそれを見たらどこかへ行ってしまいましたよ」
P「ベヘリットをね…ふむ…」
幸子(きらりさんは知っていた…これのことを…)
『ひとつだけ…もしあなたがこの人にとって本当のアイドルと言える人なら…』
『覚悟しておくにぃ…この人の夢が終わる時…』
『あなたに死がおとずれるにぃ…ぜったい逃げられない死にょわ…ヤバーイ!』
86:
P「これには防御アップの力でもあるのかな?事務員の人にお礼を言わなくちゃ」
幸子「……」
幸子「…また…借りができちゃいましたね」
幸子「…なぜです?」
幸子「3年前あなたは"優秀な子を失えない"と言いました」
幸子「でも たかだか一人のためにいろいろ失いかけるなんて…」
幸子「冷静沈着なあなたとしてはおかしい話ですよ」
幸子「…なぜです?」
P「……」
P「…やれやれ3年も前の話を…こだわるなァお前も」
P「理由なんかないさ…何も…」
P「必要か…?理由が…」
P「…オレが…お前のために体をはることに…」
P「いちいち理由が必要なのか…?」
87:
幸子「……」
P「……」
幸子「…いや…ボクは…」
「これはこれは スタミナの方はもうよいのかな」
幸子・P「!」
P「これは…社長」ペコリ
P「! おい幸子…」
幸子「……」ペコリ
社長「まあ頭をあげたまえ」
社長「ここの所の立て続けのイベントやガチャでプロ内は殺気立っている」
社長「気を休める暇もないわ全く…」
社長「時にP君 君の事務所鷹の団の働き、いつもながら見事だったぞ」
P「恐れ入ります」
幸子「ふふーん!ボク達なら当然ですね!」ドヤァ
P「何言ってんだバカ!」ポカッ
幸子「いたっ」
88:
社長「ははは…君たちの楽しそうなライブを見ているとこの老骨の身ですら血がたぎってくるようだ…」
社長「昔の友とイベントを駆け回った…若かりし日を思い出す…」
社長「重役たちの中には君たちを快く思わないものがいるのは事実…」
社長「無課金のものがこうも幅を利かせていてはわが社の威信にかかわると言ってな…」
社長「しかし威信や格式などではイベントでは勝てぬ」
社長「社員の腹は膨れない、今は乱世なのだ…」
社長「わたしはむしろ金さえ使えば何でも手に入れられる課金兵よりも」
社長「君たちのように型にはまらぬ者にこそこのプロダクションを支える礎として期待しておるよ」
P「ありがたいお言葉…感服いたします」
P「!」
ヒョコッ
桃華「……」
P「あちらの子は?」
社長「ん?おお…」
社長「うちのメインアイドルで、実の娘でもある櫻井桃華だ」
社長「あれで結構激しい性格なのだが…」
社長「桃華、こっちへ来い」
89:
桃華「あなたがウワサのPちゃまですわね?ごきげんようですわ!」
桃華「もし望むならわたくしのお仕事のパートナーにしてあげてもよろしくてよ♪」
社長「一人娘だからといって甘やかし過ぎたのか…許してくれPくん」
社長「じゃあ桃華、いくぞ」
桃華「はいですわ!」タタッ
ガクン
桃華「きゃ…!」
P「!」
ガシッ
P「失礼…お気をつけて」
桃華「…//」カァ
桃華「か、感謝いたしますわ」
桃華「Pちゃま、意外と紳士の心得があるみたいですわね。素敵ですわ…」
桃華「うふ、それではまた」
スタスタ
P「……」
幸子「……」ニヤニヤ
90:
????????????????????
幸子「……」
『オレがお前のために体をはることに…いちいち理由が必要なのか…?』
幸子(お前のために…ですか)
幸子(…これがボクの探していた答えかどうかはわからない…)
幸子(…でも今は)
幸子(今は彼のために…歌を歌う)
91:
横山千佳(9)
諸星きらり(17)
櫻井桃華(12)
92:
――――――――――――――――――――――――――
みく「あーあ、今頃Pチャンはお食事会でおいしいもの食べてるんだろうにゃあ…」
みく「役得だよにゃ、プロデューサーって」
智絵里「でも…わたしはみんなと楽しくたべられる方がいいな…」
かな子「ここの御飯だっておいしいですよ!」モグモグ
まゆ「……」
杏「杏は飴があれば別にいいし。そうだ、じゃあこれみくにあげるよ」
みく「にゃああああ!お魚は嫌にゃー!みくはハンバーグが食べたいにゃあ!」
幸子「多分今回のお食事会は和食ですからお肉よりお魚が多いと思いますよ?宴会みたいなものですから」
みく「にゃあ…しかたないにゃ…」
幸子「でもそろそろ終わる時間じゃないですか?迎えに行ってきますね」
まゆ「あ…じゃあまゆも…」
スタスタ…
幸子「あ、プロデュー…」
幸子「!」
P「……」
桃華「……」
まゆ「…二人の話が終わるまで待ちましょうか」
93:
桃華「少し疲れましたわ…」フウ
P「どうぞおかけください」ファサ
桃華「…ありがとう…」
P「よろしいんですか?主催者が勝手に抜けだしたりして…」
桃華「構いませんわ!皆さんわたくしがいなくてもお楽しみですわ」
桃華「…わたくし…食事会はあまり好きではないんですの…ただ騒々しいだけで…」
桃華「それに本当は…今夜の会はイベント続きで疲れ気味の社員の皆さんに
 少しでも気を紛らわせようという父のお取り計らいなんですの」
桃華「…こんな夜会を開くくらいならイベントそのものをやめてしまわればよろしいのに…」
P「……」
P「どうして争いばかりをするのか…そうお考えですか?」
桃華「? ええ…」
P「確かに私たちにはそんな野蛮な一面があるのかもしれません …でも」
P「それは貴いものを勝ち取り守るための道具…諸刃の剣なのでしょうね」
桃華「貴いもの…?家族とか…恋人とかですの?」
P「そういう人もいますね」
P「…でもわれわれはその二つを手にする前に…もう一つの貴いものに恐らく出会っているはずです」
桃華「もう一つの…貴いもの…?」
P「誰のためでもない」
P「自分が…自分自身のために成す」
P「夢です」
桃華「…夢」
幸子「……」
94:
P「世界の覇権を夢見る者」
P「ただ一つのステータスを鍛え上げることに一生を捧げる者」
P「一人で一生をかけて探求していく夢もあれば…」
P「嵐のように他の何千何万の夢を喰らい潰す夢もあります」
P「身分や階級…生い立ちに係わりなく」
P「それが叶おうと叶うまいと人は夢に恋い焦がれます」
P「夢に支えられ、夢に苦しみ、夢に生かされ、夢に殺される」
P「そして夢に見捨てられた後でもそれは心の中でくすぶり続ける…多分死の間際まで…」
P「そんな一生を一度は思い描くはずです」
P「"夢"という名の神の…殉教者としての一生を…」
幸子「……」
まゆ「……」
P「生まれてしまったからしかたなくただ生きる…」
P「そんな生き方オレには耐えられない」
幸子「…!!」
95:
桃華「……」ポー
P「!」
P「すみません、つい喋りすぎました」
P「女性には退屈な話でしたね」
桃華「い…いえ!」
桃華「…わたくし、男の方とこんな風にお話しするのは初めてですのよ?」
桃華「Pちゃまって…不思議な方ですわね」
桃華「初めてあなたを見かけした時はどこかのお金持ちの方かと思いましたわ」
桃華「まだお若いのにあまりに堂々としていて…」
桃華「無課金なのだとお聞きした時はとても信じられませんでしたわ」
桃華「何だか…このプロダクションでも…並の方よりずっと資産をお持ちですし…」
桃華「……」
桃華「不思議な方ですわ…」
桃華「…あなたのお仲間の方々も」
桃華「そんな魅力に引かれてあなたについてこられたのですわね」
96:
P「……」
P「彼女らは…優秀な仲間です」
P「何度も一緒に死線を越えてきた…」
P「わたしの思い描く夢のためにその身をゆだねてくれる大切な仲間…」
P「人気も実力もありとてもいいアイドルでもあります」
P「…でも 私にとっての『アイドル』とは…違います」
P「決して人の夢にすがったりはしない…」
P「誰にも強いられることなく自分の生きる理由は自らが定め進んでいく者…」
幸子「……」
P「そして その夢を踏みにじるものがあれば全身全霊をかけて立ち向かう…」
P「たとえそれがこの私自身であったとしても…」
P「私にとってのアイドルとは…そんな…"対等の者"だと思っています」
幸子「……!」ガーン
幸子(対等の…人間)
まゆ「……」
まゆ「!」
幸子「……」ギュ…
97:
桃華「…すごい自信ですわね」
P「ええ…」
P「そうやって私は今あるすべてを手にしてきたんです」
P「数日たってもドリンク一本増えないこともありました」
P「…でも今は…」
P「有名なプロダクションのメインアイドルであるあなたに…」
P「こうして口をきいていただくこともできます」
桃華「……」
まゆ「……!」フイッ
桃華「…Pちゃまの夢って…?」
「お嬢様?!!」
桃華「あら」
「そろそろお食事会も終わりですから、こっちへいらしてください」
桃華「仕方ないですわね…それではPちゃま、ごきげんようですわ」
幸子「……」
スタスタ
まゆ「! ちょっと…」
まゆ「……?」
98:
――――――――――――――――――――――――――――――
『オレにとってアイドルとはそんな…』
『"対等の者"だと思っています』
幸子「……」
ワアアアア
智絵里(ふぅ…これは乱戦だね…)
智絵里「ん…?」
まゆ「はあ…はあ…」ヨロ
麗奈「アンタがウワサの鷹の団のリーダーね!」
麗奈「レイナサマがナンバー1アイドルになる手伝いをできるなんて、アンタ運が良いわ。
 後世まで語り継ぎなさい。愚民共がアタシの前にひれ伏す日が楽しみね!
 アーッハッハッ…ゲホゲホ」
麗奈「おとなしくやられることね!ザコはザコらしくしていればいいわ!」
まゆ「………面白いことを言うじゃないですかぁ」イラ
まゆ「それだけ言うんですから…覚悟してもらいますよぉ」
麗奈「望むところよッ!行くわよ!」
まゆ「血って、どんな味でしょうか?」
麗奈「ひれ伏しなさい!」
麗奈WIN!
麗奈「アハハッ!やっぱり大したことないわねッ!」
99:
麗奈「フッ、アタシの実力に手も足も出なかったようね!!ハッハッハッ…ゲホゲホ」
まゆ(…だ、ダメです)
まゆ(力が…力が入りません…!)
麗奈「止めよッ!くらいなさいッ!」ゴッ
まゆ(…!)ギュッ
ガギィンッ
麗奈「!」
幸子「らしくないじゃあないですか」
まゆ(幸子ちゃん…)
幸子「えい!」ゴギャ
麗奈「うわッ!どっから出てきたのよアンタ!」
麗奈「このレイナサマに挑戦するなんて、身の程知らずも良いところね!真のアイドルの力見せてあげる!!」
麗奈「今の一撃!よく受けたわね!でもまぐれは二度続かないわッ!」
麗奈「受けきれるかしら…!?この世界の覇者、極悪大魔王スクールデビルレイナサマの一撃をッ!」
麗奈「くらいなさいッ!恐怖のレイナ…
幸子「To my daring…」
麗奈「ぐはっ!きょ、恐怖の…」
ドゴォ
麗奈「きゃああッ!」
幸子「恐怖の…なんですって?」
オオオオ
「すごい!あの子を一瞬で!」
100:
幸子「どうしました?いつものあなたらしくないですね」
幸子「気を抜いてるとやられちゃいますよ?」
まゆ「……」ハアハア
幸子「…?」
まゆ「」フラ
幸子「ちょ…ちょっと!」
麗奈「……」チラ
麗奈「今よッ!『レイナサマ・バズーカ』ッ!」ドオーン
幸子「わっ…!」ガシ
ドゴォン
幸子(しまった!)ズル
千佳「さ…幸子ちゃん!」
智絵里「幸子ちゃん…!」
麗奈「ヒャーハッハッハ…ゲホゴホ」
ヒュウウゥゥ…
ドボン
智絵里(幸子ちゃん…まゆちゃん…!)
幸子「ガボゴボガボゴボボ!」バシャッ…
幸子「ハ…クシュン!なんなんですかもう!!」ゲホ
幸子(無事だったのはいいんですけど…どうやって戻りましょう?)
まゆ「」ガタガタ
幸子(…ひどい熱です!だからあんなフラフラと…)
幸子(どこか休憩できる場所は…)
101:
????????????????????????
P「幸子とまゆが!?」
千佳「うん…川に落っこちちゃって…」
智絵里「幸子ちゃんのことですから…多分大丈夫だと思いますけど…」
智絵里「攻撃されてダメージもあるし…まゆちゃんの様子も変でした」
智絵里「探しに行くなら早い方がいいですっ」
P「……」
「P殿お分かりでしょうな?」
「イベントではまず敵に打ち勝つことこそが大事!」
「だからその最中たかが二人ごときに…」
P「……」
幸子(さて…どうしましょう)
まゆ「」ガタガタ
幸子(そういえば出会った時看病してもらったんでしたね…)
幸子(とりあえず着替えさせますか)
幸子(ボクの衣装しかないですが…まあ大して体型変わりませんしいいでしょう)
102:
≪ついてくるも来ないも君の自由だ≫
≪もう戦い方は知っているだろう?≫
≪でも…≫
≪…でも…≫
まゆ「」パチ
まゆ「……?」
幸子「あ」
まゆ「……」
まゆ「…ここは?」
幸子「川の近くの小屋ですよ」
まゆ「…川?」
幸子「何ですか…何も覚えていないんですか?」
幸子「あのへんな子とやりあった後あなたが足滑らせて落っこちたんですよ」
幸子「溺れるかもって所だったのにのんきですね…」
まゆ「ぅぅ…」ムク
幸子「ちょっと!まだ熱は下がってないんですよ、横になっててください」
まゆ「あ」シタギスガタ
まゆ「」
幸子「しょうがないでしょう、ずぶ濡れだったんですから」
まゆ「」ジー
幸子「な、なんですかその目は」
まゆ「きゃあああ!」ポイポイ
幸子「フギャー!」ゴツッ
まゆ「……」ハアハア
103:
幸子「何するんですかまったくもう!」
幸子「恩を着せるつもりはありませんけど!」
幸子「こっちはあなたの看病をしてあげたんですよ!」
幸子「それでお礼の一つどころか空き瓶を投げつけるなんて!」
まゆ「ご…ごめんなさい…つい取り乱して」グス
幸子「まったく…」
幸子「まだふらふらしてるんですから横になっててくださいよ」
まゆ「……」グス…
幸子「なんです?また泣いてるんですか?」
まゆ「うるさいですよぉ!むこう向いててください!」
まゆ「情けないです…あなたにだけは…助けられたくありませんでしたぁ…」ポロポロ
幸子(ずいぶんと嫌われたもんですね…)
幸子「…ねえ」
幸子「あなたは…どうしてアイドルになったんですか?」
まゆ「……」
幸子「喋りたくなきゃ…いいですが…」
まゆ「…プロデューサー………」
まゆ「プロデューサーさんです…」
まゆ「私は元々…モデルの仕事をやっていました」
まゆ「少しは知名度はありましたが…そんなに有名ではありませんでしたし」
まゆ「その時の会社もあまり大きいとは言えず…営業成績も芳しくありませんでした」
104:
…ある日…大手の会社の社長が私に目をつけました
その社長は私をぜひ移籍してほしいとうちの社長に申し出ました
社長は渋りながらもその申し出を受けました…
実際しかたなかったんです あの時の私はその会社でも成績は大したことありませんでしたし…
何よりその時の会社の赤字を補えるくらいの移籍金…会社としては当然の選択だと思います
でも…その人が…
おやじ『ニヤニヤ』
まゆ『……』
おやじ『やっぱりかわいいなあまゆちゃんは…』サワ
まゆ『きゃああ…!』
考えてみれば当たり前です…
あまり知名度もないただのモデルをわざわざ大金出して移籍する人なんていません
その人ははじめから私が目的だったんです
でも…その時
ボゴォ
おやじ『ぐわ!』
P『……』
まゆ『!』
P『金をもっているというだけで…神にでも選ばれたつもりか?』
105:
…不思議な…まるで教会の聖人の絵がそのまま動き出したような…
神々しく…現実味の薄い光景でした
無力な少女を憐れんで神様が天使を遣わされた…その時の私には一瞬そんなふうに思えました
しかし…その天使が差しのべたのはそんなおとぎ話のような…都合のいい救い手ではありませんでした
P『……』ポイッ
まゆ『!』
P『君に守りたいものがあるならそのビンをとれ』
まゆ『…!?』
おやじ『!』ダッ
まゆ『…!』ガシ
ガシャッ!
おやじ『ぐ…』ドサ
…怖かったです
初めて本気で人を殴りました…相手は気絶してるだけとはいえ…
恐ろしくて…声も出ず その場を動くこともできず…
106:
ギュ…
まゆ『…!』
P『……』
コクリ
その人は大きく…ゆっくりとうなずいただけ…
でもそれが…彼の差し伸べてくれた本当の救いの手だったんです
恐怖は消えはしませんでしたが罪悪感と後悔の念は薄れ…
誇らしさと…彼のくれた衣装のぬくもりが心を満たしていきました
P『……』
おやじ『』
ボゴォ
バキッ
ドカッ
グシャア
ガンッ
ゴスッ
ブシャアァ
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
Pの勝利!15000マニーゲット!
………
……
107:
まゆ『この人お金を取ってるんですねぇ…』
まゆ『…あ…待ってください…』
まゆ『私…どうすれば…?』
P『好きにすればいい』
まゆ『………私も』
まゆ『わたしも一緒に連れて行ってください!』
衝動的に…その一言が私の口をついて出ました
みく『本気なの?』
みく『みく達は軍資金を集めてそのうち立派な事務所を作るのにゃ!』
みく『アイドル事務所だからモデルとは仕事も違うよ?』
まゆ『もう前の会社には戻れません…正式に移籍してしまったんです…』
まゆ『それにこのままじゃ…前の会社の方たちにも迷惑がかかるかも…』
まゆ『お願いします…歌や踊りを覚えろというなら覚えます…ですから…』
P『レッスンは大変だよ?』
まゆ『……』
まゆ『はい』コクリ
P『……』ニコ
P『言ったろ?好きにすればいい』
P『ついてくるも来ないも君の自由だ』
P『もう戦い方は知っているだろう?』
まゆ『……』
でも…
……でも
マイクも衣装も…
あなたがくれたんです
108:
まゆ「あの日からすべてが変わりました」
まゆ「私の考え方も生活も…すべてが」
まゆ「ただ受身なだけの生き方が」
まゆ「戦い勝ち取る生き方へ…」
まゆ「あの日から…」
まゆ「Pさんと出会ったあの日から」
まゆ「私は…今でも長い夢を見続けている気がします」
まゆ「あのころの私は…Pさんを崇拝していました」
まゆ「まるで…預言者か何かのように…」
幸子「……」
109:
実際その通りだったんです
なんの後ろ盾もない無課金と新人の寄せ集めの集団が
イベントでは常勝無敗 奇跡のような戦いぶりを見せたんですから…
そして何よりもそれを率いるのがまだあどけなさの残る少年ともいえるほどの若者で…
しかも彼は社長の息子でもましてやコネの一つすらない、私たちと同じ一般人であるという事実…
奇跡…そう…私にとってPさんは奇跡そのものでした…
それからしばらくして私もどうにか一アイドルとしてやっていけるようになった頃…
わたし達はある地方の大きめのイベントに参加したんです
そこに一緒にいたPaのハゲた人が有名な男性で…国内でも5本の指に入るほどの資産家という話でした
しかし そいつの本当の風評は財力ではなくその悪趣味だったの…
それは知り合う人の中からその目に適った人…若い男性ばかりを表向き秘書として仕えさせ
その実 夜の相手として雇っていたんです
芸能界ですし…それは取り立てて珍しい光景ではないんでしょう…
でも…私は正直 背筋が寒くなりました
恐怖と嫌悪感で胸のつぶれる思いでした…
私も一度はそうなりかけたんですから…
まゆ『……』ブルブル
ポン
まゆ『!』
P『……』ニコ
…あの時と同じ
彼は肩に手を置いただけ…
それだけで不思議と私の震えは止まりました
…それから何度目かのイベントの後…
P『…アイドルをやめるって?』
110:
それは半年ぐらい前に入ったアイドル見習いの子でした
年は十代前半…名前は美由紀ちゃんといいました
数えきれないほどのアイドル志願者の中で
まだ日も浅い見習いの子に目をかける人などだれもいませんでした
ただ…Pさんを除いて…
かな子『Pさん!』
まゆ『なんですか?』
かな子『あの子が置いていった荷物ですよ』
それは手垢で少し汚れたお姫様のぬいぐるみでした
まゆ『Pさん…?』
P『お姫様のぬいぐるみか…憧れていたんだろうな』
P『あの子のことはよく覚えている』
P『まるで物語の主人公でも見るような目でオレを見つめていた』
まゆ『……』
P『…あの子は幸せだったろうか…?』
P『夢の途中で…夢を魅ながらゆけたのだろうか?』
P『それとも…引退は夢の終わり…"絶望"だったのか…?』
P『あの子の夢を殺したのは…オレの夢なのかもしれない』
かける言葉が…見つかりませんでした…
111:
まゆ「あんなPさんを私は見たことがありませんでした」
まゆ「あのPさんが…あんなに肩を落として…」
まゆ「でも…その時からです」
まゆ「Pさんが…少しずつ違って見え始めたのは…」
そしてプロダクションに戻って何日目かの夜…
まゆ『Pさ…』
P『……』チラ
まゆ『!』
ハゲ『フヒヒ…』
サワサワ
P『……』
まゆ『……!』
幸子「じょ…冗談でしょう!?あのプライドの塊みたいな人が…!?」
まゆ「……」
幸子「……!」
まゆ「夜も白みがかったころ…」
112:
私は眠れずに近くの川あたりをうろついていました…
まゆ『!』ピクン
P『……』バシャ
まゆ『……』
クル...
P『!』
P『一緒にどうだ?気持ちいいぞ』
まゆ『』ビク
まゆ『あ…あのぉ…まゆは…』
P『…汚らわしい…か?』
まゆ『そ…!』
まゆ『……』
まゆ『…どうして』
まゆ『どうして…さっきはあんな人と2人で…?』
P『……』バシャバシャ
まゆ『……』
まゆ『…そ…そうですよねぇ…まゆの勘違いですよね』
まゆ『昨夜のあれは…会議か何かで…それで…!』
P『いいや』
P『勘違いじゃない』
113:
まゆ『………どうして?』
まゆ『どうして…Pさんが…あんな人と…!?』
P『金だよ』
まゆ『…え?』
P『事務所というものはただそれだけでも金を食う』
P『衣装・メイク・食事・設備 どれもただじゃない』
P『ましてや鷹の団はこれからまだまだ大きくなる…大きくしなければならない』
P『そのためにも必要なのさ…莫大な軍資金が…』
P『あのハゲはどうやらこの俺がお気に召したようだし…俺は彼の財産に興味があった』
P『利害が一致したってことさ』
まゆ『だからって…そんな…!!』
まゆ『…い、今のままではダメなんですか?』
まゆ『このまま…勝ち続けることができれば…いつか軍資金だって…』
P『…時間がかかりすぎる…それに』
P『イベントを走るということはそれだけ多くの人間を犠牲にするという事だ』
まゆ『!』
まゆ『Pさん…もしかして…あの子のことで…』
P『違うよ』ガリ
P『俺は合理的に考えたまでさ…何度もイベントに出るのと』
P『おっさん一人たらし込むのと…どちらの方がリスクが少ないか』
まゆ『……』
114:
P『オレはね、まゆ』
P『オレの采配で影響を与えた仲間たちに何ら責任を感じてはいないよ…』
P『なぜなら…それは彼女らが自分自身で選んだ道なのだろうから』ガリ
まゆ『Pさん…?』
P『このオレがそうであるようにね』ガリ
P『…でももし彼女らのために…オレに何かしてやれることがあるとしたら』ガリガリ
まゆ『Pさん血が…』
P『それは勝つこと』ザク
P『あいつらが…将来をかけてまでしがみついたオレの夢を為し遂げるために』ガリガリガリ
P『勝ち続けることだ』
まゆ『Pさんやめて…!』
P『オレの夢は仲間の犠牲の上に立つことでしか実現できない所詮血塗られた夢だ』グシュ…
まゆ『やめ…』
P『その事で後悔や後ろめたさはない…だが』
P『だが…何百何千の命を懸けながら自分だけは汚れずにいられるほど…』
P『それほど…オレの欲しいものはたやすく手に入るものではないんだ』
ダッ
まゆ『…!』ギュ
まゆ『…やめて…』
まゆ『もうやめてください…』ギュ
P『…』グッ
P『大丈夫…』クル
P『なんでもないさ』
振り返り私の肩に手を置いたPさんは…もういつものPさんでした
その時はそれが…無性に悲しかったです
115:
まゆ「人が子供の他愛もない憧れとしてとうの昔に捨ててしまったことを」
まゆ「Pさんは実現すべき夢として持ち続けています…『夢は夢で終われない』、と」
まゆ「そして私たちも…その夢につられて…同じように夢を見ている」
まゆ「でも…選んだ夢が純粋で途方もなく大きいだけ…」
まゆ「あの人の背負ったものも計り知れません…」
まゆ「強い人…その一言で片づけてしまうのは簡単ですが…」
まゆ「大きなものを手にしようとする人はそれだけ人より多く何かに堪えているのだと思います」
まゆ「あの人は一人で…私たち全員の夢を背負っている…」
まゆ「だから強かったんじゃなく…Pさんは…強くなければならないんです」
まゆ「……」
まゆ「私はあの人の…隣にいたい…」
まゆ「あの人が自分の夢に全てを捧げるなら…」
まゆ「あの人の夢が戦い切り開いていくものなら」
まゆ「私はあの人の…武器になりたい…」
117:
小関麗奈(13)
118:
まゆ「イベント、イベント、イベント…何人も仲間がいなくなりました」
まゆ「古い顔も少なくなり…またそれを上回る仲間が加わりました」
まゆ「わたしもいつしか古参の一人として」
まゆ「Pさんから厚い信頼を受けていると自覚するようになっていました」
まゆ「あの人の隣にいたい…」
まゆ「あの人の夢を為し遂げるために欠かせないものになりたい」
まゆ「その願いがかなえられると信じていました…信じることが出来ました」
まゆ「あの日…あなたが現れるまでは」
幸子「……」
まゆ「覚えていますか?あの日…Pさんがあなたにかけた言葉」
『お前が欲しいんだ』
幸子「…ええ」
まゆ「…あの一言…あんなことを…決して口にする人じゃありません」
まゆ「Pさんは…誰にもあんなことを言いはしませんでした」
まゆ「今まで…誰にも…」
119:
まゆ「…私は気に入りませんでした…」
まゆ「Pさんにいともたやすくそう言わせたあなたが…妬ましかった」
幸子「……」
まゆ「でも…それでも…Pさんは鷹の団に必要な人材としてあなたを欲しがっていると…」
まゆ「…そう私は思いこもうとしました…」
まゆ「…でもあの沈着冷静なPさんがあなたのこととなるといつも衝動的になる…!」
まゆ「まるで…!」
まゆ「…まるで……」
幸子「…?」
まゆ「Pさんはあなたを信用してます」
まゆ「なのにあなたは好き勝手に…後先を考えず突っ走ってばかり…」
まゆ「私が許せないのは…あなたのその身勝手さが…Pさんを危険にさらしたということです!」
まゆ「あなたがどこでどうなろうと知ったことじゃありません!」
まゆ「でもそのために鷹の団を…Pさんの夢を道連れにすることは許せません!」
幸子「……」
120:
まゆ「…Pさんを…」
まゆ「そんな風に変えてしまったあなたが許せません…」
まゆ「なぜですか…どうして…あなたでなければならないんですか…」グスッ
まゆ「どうして…」
幸子「……」ムゥ
ザッ
幸子「!」バッ
まゆ「何を…!」
幸子「シッ!」
「ねえほんとにこのあたりなの?」
「間違いないよ」
「あの二人を倒せば報酬をいっぱいくれるらしいからね」
「他の人に先を越される前に見つけよう」
まゆ「……」
幸子「ハーフドリンクです…飲んどいてください」スッ
幸子「のんびりしてるヒマはないですね…ここはさっさと逃げましょう」
121:
まゆ「ハアハア…」スタスタ
幸子「……」スタスタ
まゆ「あのぉ…まゆを置いてかないで下さいね」ハアハア
幸子「……」クス
まゆ「ちょっと!笑わないでくださいよぉ…!」
ザッ
幸子「!」
ズラアアアッ
「イエーイ!」「見つけた!」「よーし!」
幸子「こんなにたくさん…どこから出てきたんですか?」
麗奈「フフフ…」
麗奈「アーハッハ!見つけたわよアンタ達!」
幸子「どこかで見た顔ですね?あ、ボクの前に立たないでくださいねジャマなので!さ、どいてください!」
麗奈「ふざけんじゃないわよ!忘れたとは言わせないわっ!」
幸子「冗談ですよ…あなたも元気そうじゃないですか」
麗奈「あったりまえよッ!たとえまぐれとはいえ…あんたみたいなザコに負けたなんてあたしのプライドが許さないわ!」
麗奈「ここであったが百年目!あの時の雪辱晴らしてやるッ!」
幸子「だったら一人で来ればいいのに」ボソ…
麗奈「う、うるさいわね!行くわよ!」
ワアアアッ
122:
幸子「人気者はつらいですね!」
まゆ「邪魔はさせないんだから!」
幸子WIN!
まゆWIN!
麗奈「あーもう!みんな使えないわね!」
麗奈「みりあ!来なさい!」
みりあ「はーい!わるい子みりあだぞーっ!」
麗奈「あたしの弟子の赤城みりあよッ!ちびっこアクマの力見せてやりなさい!」
みりあ「狂気の沙汰ほど面白い…!」
麗奈「それ違う!悪魔っちゃ悪魔だけど!」
麗奈「いいからゴーよ!やっちゃいなさい!」
みりあ「それじゃあみんなー、いっくよー!」
みりあ「『Romantic Now』!」
幸子「かかってきてください!」
幸子「『To my daring…』!」
123:
麗奈「す…すごい!みりあと互角に戦うなんて…!」
麗奈「いや…どうにか攻撃を耐えることが精いっぱいなのね!」
まゆ(…違います)
まゆ(幸子ちゃんの能力ならこのくらいなら勝てるはず)
まゆ(わざわざ正面きってダメージを受ける必要はありません…)
まゆ(……)
まゆ(私の…せいですか…?)
麗奈「アーハハハ!どうやらそっちのザコをかばって受けたダメージ!」
麗奈「まだ癒えてはいないみたいねッ!」
まゆ(え…!?)
幸子「まゆさん」
まゆ「えっ?」ビク
幸子「ボクがチャンスを作ります」
幸子「そしたら一気に逃げてください」
まゆ「でも…それじゃあ…」
124:
幸子「『(自称)セクシーアピール』!!」ドドドド
みりあ「きゃあ!」
幸子WIN!
幸子「今です!」
まゆ「!」
幸子「ボサっとしてないでとっとと行ってください!」
まゆ「…だ…だめです…一人で行くなんて…」
まゆ「私には…私にはできません!」
麗奈「あ…あっちの女を攻撃するのよッ!」
ヒュウウゥ
まゆ「…!」
バキイッ
幸子「くっ…」
まゆ「幸子ちゃん…!?」
まゆ「ど…どうして…」
まゆ「どうして…」
幸子「……」
125:
幸子「勘違いしないでください」
幸子「半病人は邪魔だからとっとといなくなってください」
幸子「逃げ回るのはボクには合いません!あの子には借りもありますし」
幸子「…あなたが前に行ってた通り…派手に目立てりゃそれで満足なのかもしれませんね…ボクは…」
まゆ「……」
幸子「…いいんですか?あなたはこんなところでやられても」
幸子「ここが…こんなつまらないのがあなたの最後ですか?」
幸子「あなたの望みっていうのはそんなに安っぽいものなんですか?」
幸子「…あなたは武器だとか言ってましたよね」
幸子「武器なら持ち主に収まるもんでしょう」
幸子「…帰るんですね…持ち主のもとへ…」
幸子「Pさんの所にね」
幸子「さあ…早く行ってください!」
幸子「はやく!」
まゆ「……」ギュ
まゆ「みんなを連れて必ず戻ります…!」タッ
126:
麗奈「あーっ!あっちの女を逃がすんじゃないわよ!」
幸子「おっと!追いかけるのはお仕事の後にするんですね…」
麗奈「う…みんな!アイツを倒したらあたしが持ってるドリンク全部やるわ!」
「ドリンク全部だってさ」
「けっこういっぱい持ってたよね…」
「相手は一人だし一斉に行けば…」
幸子「……」
幸子(めんどくさいなあ…)
「「「いっせーの!」」」
幸子「そうそう…アイドルってのはそうでなくちゃ…ね!」
まゆ「ハア…ハア…」
まゆ「!」
まゆ(追いかけられてる…!)
まゆ(この状態で…勝てるでしょうか…?)
「あ!みつけた!」「やっちゃおう!」
まゆ(でも…やるしかない…!)
ザッ
まゆ「!」
智絵里「まゆちゃんは私たちの大切な仲間なんだから…あなた達にはやらせないよっ…!」
127:
ドガァッ
幸子「フウ…」ゼェゼェ
麗奈「う…うそでしょ!?一人で…こんな何人も…!これはまぐれじゃないの!?」
幸子「後何人いるのか知りませんが…あなたを倒すのは時間かかりますね…」ハアハア…
麗奈「怯むんじゃないわ!あいつはもう立ってるのがやっと!一気にやるのよ!」
ウオオオオ
幸子(…何やってんですかボクは…)
幸子(こんなくだらない所で…安っぽく体張って)
幸子(まゆさんのためかな?…いやたぶん違う?)
幸子(…今は考えてるヒマはありません)
幸子(今あるのは どう歌うか)
幸子(どう戦うか それだけ)
幸子(それすらいずれ頭の中から消え去る そして…)
幸子(そして 心臓の鼓動だけに)
128:
智絵里「ごめんね遅くなっちゃって…」
まゆ「」ヨロ…
智絵里「ちょ…ちょっと」
まゆ「…急いで…」
智絵里「え?」
まゆ「…あの子が」
まゆ「幸子ちゃんが…はやく!」
智絵里「幸子ちゃんが…どうしたの…?」
まゆ「こっちですはやく…」
智絵里「あ…誰か支えてあげて!」
まゆ「そんなのはいいです!」
まゆ「私を逃がすためにあの子は…一人で敵の中に残ったんです!はやくしないと…!」
智絵里「……」
智絵里「わかりました!」
まゆ(…間に合って…)
まゆ(間に合ってください…!)
129:
まゆ「ここです!」ザッ
智絵里「人がいっぱい……これ全部幸子ちゃんが…?」
まゆ「…!」キョロキョロ
まゆ「あ!」
幸子「」
まゆ「幸子ちゃん…!」
智絵里「!」
幸子「」
まゆ「…!」
まゆ「幸子ちゃん!」ユサユサ
まゆ「ねえ!」
幸子「…うるさいですねえ…」グイ
幸子「ゆすらないでくださいよ…疲れてるんですから」
まゆ「幸子ちゃん!!」
130:
????????????????????????
まゆ「みんなどいてください!急いでるんです!」
杏「戻ってきたね」
みく「やっぱり大丈夫だったにゃ、しぶといにゃあ」
幸子「大げさなんですよ!一人で歩けます!」
まゆ「動かないでください!」
幸子「みっともないですよこんなの…」
まゆ「……」
幸子「イタタタタ!痛いですって!」
マストレ「あれだけ無茶をしたんだから当然だ」グイグイ
マストレ「しかしなかなか丈夫だな、今後の活動に問題はないだろう」
智絵里「大丈夫ですか?よかった…」
マストレ「だが今回のイベントはもう無理だな、しばらく休まないと」
まゆ「!」
幸子「何言ってるんですか!このカワイイボクが参加しないなんてファンが泣いちゃいますよ!」
幸子「何が何でもこのイベントの最後までやりますからね!」
マストレ「…ほう?私のいう事がきけないと…?」ポキ
幸子「あー凄く休みたくなってきました!わかってますよもちろん!」
杏「杏も体中ボロボロだから休もうっと!」
マストレ「君はこっちでレッスンだ」ガシ
杏「あー!誰か!誰か助けて!」ズルズル
131:
智絵里「まあとにかくよかったね…二人とも無事で」
幸子(どのあたりが無事なんでしょう?)
智絵里「ところでPさんは…?」
かな子「Pさんは会議ですって」
かな子「今朝出かけて、明日までは戻らないそうです」
まゆ「……」シュン
みく「せっかく二人が戻ってきたっていうのに…タイミング悪いにゃ」
まゆ「……」スタスタ
智絵里「! まゆちゃんは大丈夫なの?」
まゆ「私はいいです…」
まゆ「私のは…ケガとかではないですから…」
かな子「……」
智絵里「……」
みく「?」
幸子「……」
132:
?????????????????????????
「いや?一時はどうなることかと思ったよ」
「今回ばかりは幸子ちゃんに感謝しないといけないよね」
まゆ「皆さんには心配かけましたね…ごめんなさい」
「それにしてもPさんもこんな時にいくら会議だからって冷たいよねー」
「ちょ…ちょっと!」
まゆ「……」
『…帰るんですね…Pさんの所にね』
まゆ「……」クスン
智絵里「まゆちゃん」
智絵里「ちょっと来てくれる?」
まゆ「何ですか?」
智絵里「まゆちゃんには話しておこうと思って…」
智絵里「二人を探しに行くようPさんに言いに行ったとき…」
智絵里「周りの人たちがなんか反対してたんだけどね…」
智絵里「でもPさんは言ってたよ…きっぱりと」
『P殿お分かりでしょうな?』
『イベントではまず敵に打ち勝つことこそが大事!』
『だからその最中たかが二人ごときに…』
ボゴッ
『ゲフッ』
P『うるさい!!』
P『お前バカか?川に落っこちた女の子ほっとくなんて頭おかしいんじゃないか?』
P『………コホン』
P『あの二人は鷹の団の要です…失うわけにはいかない』
133:
まゆ「…Pさんが」
智絵里「うん、Pさんにそこまで言わせるんだから凄いね…」
智絵里「正直少し妬けちゃった…」
智絵里「!」
まゆ「…うふ」ポロリ
智絵里「……」ニコ
智絵里「それからこれ…幸子ちゃんと二人で分けてね」
まゆ「金平糖と…八つ橋ですか」
智絵里「私のお気に入りですよっ!」
まゆ「…ありがとう智絵里ちゃん」タ…
智絵里(…なんか急にしおらしくなっちゃって…何があったのかな?)
タタ…
まゆ「……」キョロキョロ
まゆ「あ…!」
幸子「……」
134:
幸子「…ん」チラ
まゆ「……」
幸子「……」
まゆ「…いいんですか?寝てなくて」
幸子「体がほてって眠れませんよ、外にいた方が涼しくていい按配です」
まゆ「……」
まゆ「お夜食です…一緒に食べましょう」
幸子「……」モグモグ
幸子「おいしいですね…なんだか体が軽くなります…」
まゆ「少しですけど回復効果もあるみたいなんです」モグモグ
幸子「……」
幸子「ちょっと聞きたかったんですが…なんで具合が悪かったんですか?」
まゆ「……」
まゆ「……」
まゆ「……えっとぉ…その…恥ずかしいんですけど…」モジモジ
まゆ「Pさんが…その…喜ぶと思って…内風呂で待ってたんです…」
まゆ「でも…全然来なかったのでのぼせちゃいまして…体中があつくて…」
まゆ「そのあと薄着で涼んでたんですけど…そのまま寝ちゃって…風邪を…」
幸子「……」
まゆ「………ごめんなさい」
135:
幸子「ずいぶんと大胆なことをしますね…まあ過ぎたことですしいいですよ」
幸子「それに…気にすることはないんですよ?」
まゆ「え…?」
幸子「あれはボクが勝手にやったことです」
幸子「別にあなたのためってわけじゃありません…」
幸子「逃げ回るより戦ってた方が性に合うんですよ ボクは…」
まゆ「性に合ってるというだけで…あんな人数と闘ったっていうんですか…?」
幸子「……」
幸子「ええ」
幸子「戦うたびにボクのカワイさを他の人に見せつけてあげられますからね!」
幸子「それにあの子には借りがありましたから」
幸子「夢中で戦ってたからどうなったかわかりませんが…」
幸子「…ですが」
幸子「正直言いますとあの時はこうも思いました…」
幸子「あなたがやってることに比べれば…」
幸子「ボクが何人と戦ったとしても…どうでもいいことなんだって…」
まゆ「……」
136:
幸子「あなただけじゃない…Pさんもそうです」
幸子「生きてることをまるまる賭けられる程のものを持ってる…」
幸子「凄いと思いますよそういうのって…」
幸子「…それに比べれば…ボクが行き当たりばったりで何しようが」
幸子「そんなことは大したことないって…そう思ったんです」
まゆ「幸子ちゃん……」
幸子「いい眺めですね」
まゆ「…え」
幸子「千佳さんは…いつも魔女っ娘になりたいって楽しそうに言ってます…」
幸子「魔法でみんなを幸せにするんだって…ボクほどじゃないですけどカワイイですよね」
幸子「小春さんはヒョウくんってイグアナをペットにしてて…お姫様になりたいって頑張ってます…なれるといいですね」
幸子「…こうして女子寮の外から眺めていると」
幸子「何だかあの部屋の明かり一つ一つに…」
幸子「皆さんのちっぽけな夢や思いが宿ってる…」
幸子「そんな風に見えてきます」
まゆ「夢のかがり火…………ですか」
幸子「うまいこといいますね」
まゆ「うふ、まゆも夢見る女の子ですから♪」
137:
幸子「そうやって一人一人が小さな火を持ち寄ってここに集まってるのかもしれませんね」
幸子「…そしてその吹けば飛ぶような小さな火を絶やさないように」
幸子「一番大きな炎に自分の火を投げ込むんです…」
幸子「Pさんという…大きな炎にね」
まゆ「……」
幸子「…でもね」
幸子「ここにボクの火はありません」
まゆ「……」
幸子「…ボクは」
幸子「ボクはその篝火で…ちょっと温まっていこうと…フラッと立ち寄っただけなのかもしれませんね」
まゆ「…幸子ちゃん」
幸子「ボクは…どんなイベントでも生き残る自信があります…実際今までだってそうでした」
幸子「鷹の団に入る前だって…どんなきつい戦いでもボクは生き延びてきました…今回だって」
幸子「…でも…そんなことに大した意味はないんです」
幸子「ボクは確かに一番カワイイです…」
幸子「でもアイドルになったきっかけはスカウトされたからでした」
幸子「ボクの可愛さを広めたいという目標は確かにあります…ですが」
幸子「今までやってきたのはお仕事だからで自分の意志じゃありません…」
幸子「アイドルとして一番大切な…トップアイドルを目指す理由を」
幸子「ボクはいつも他人に預けようとしてたのかもしれない…」
138:
まゆ「幸子ちゃん…あなた…」
幸子「ふふん…しまらないですね…グチャグチャとグチばっかりで…」
幸子「なーんでこんな事あなたなんかに話しちゃったんでしょうか…」
幸子「ボクとしたことがなさけないですね」
まゆ「お互い様です…」クス
まゆ「!」
まゆ「幸子ちゃん…あなたまさか!」
まゆ「まさか…鷹の団を…」
まゆ「やめるつもりじゃ…?」
ザワザワ…
幸子「言ったでしょう?何が何でもこのイベントの最後までやるって」
まゆ「……」
まゆ「…それじゃ…そのあとは…」
杏「幸子ー!まゆー!」
杏「プロデューサーが帰ってきたよー」
杏「二人が無事だって聞いて予定を一日繰り上げたんだってさ」
まゆ「!」
幸子「……!」ニヤッ
139:
P「……」
幸子「Pさん」
P「……」ニコ
まゆ「……」
まゆ「ごめんなさいPさん…私のせいでみんなの足を引っ張ってしまいまして…」
まゆ「体調が悪いのに出たのは私のミスです…どんな処分でも…!」
幸子「……」
オシリスパンッ
まゆ「きゃあああ!」
まゆ「…な、何するんですかバカあ!」ギュッ
P「おっと」ギュッ
まゆ「あ…」
P「おかえり」ニコ…
まゆ「……」ジワ…
ヒューヒュー
イイゾイイゾー
まゆ「…///」カア
幸子「それじゃ向こうでジュースでも飲みましょう!」
千佳「えーいいの?もう夜だよ」
幸子「いいんですよ!あれだけ頑張ったんですから少しくらい平気です」
千佳「太っても知らないからねー!」
まゆ「……」
P「どうした?」
まゆ「え?なんでも…」
まゆ(……)
まゆ(あの子…本気で…?)
140:
―――――――――――――――――――――――――
幸子「次のフェスの相手が決まったって?」
幸子「いーんじゃないですか?どこだって…」
幸子「イベントなんて勝つときは勝つし負ける時は負けますよ…まあボク自身は負けませんけどね!」
まゆ「……」
幸子「? 何か気になることでもあるんですか?」
まゆ「え?いえ…」
幸子「だーいじょうぶですよ、今までだって似たようなことは何度もあったじゃないですか」
幸子「冷静沈着な彼が自分から買って出たんです、勝算あってのことでしょう?」
まゆ「冷静で…いられればいいんですけど…」
幸子「…え?」
まゆ「あの時あなたに話しましたよね?昔、まゆたちが地方のイベントになんかした時の事…」
幸子「……ええ」
まゆ「その時のハゲた人というのがその財力にものを言わせて今じゃ出世してまして…」
まゆ「ある大きなプロダクションの副社長をやっています」
幸子「……」
幸子「それってまさか…」
まゆ「次の相手のプロダクションの総合プロデューサー…それが…今のその人の肩書です」
幸子「!」
141:
?????????????????????????????
「よく無事だったね麗奈ちゃん」
麗奈「あったりまえよっ!」
麗奈「時には戦略的撤退をする!これも大事な事なのよ」
「ただ逃げただけじゃ…」
麗奈「それにしてもあの女!今度あいまみえたときこそは…決して逃しはしないわッ!」ガァ!
「おい!レイナ!」
麗奈「げえっ!光!」
光「聞いたぞ!なんでも弱ってる二人を相手に何人もで襲い掛かったらしいな!」
光「そんなひどいことをするなんて!正々堂々とやれよ!」
麗奈「うるさいわねこのヒーロー気取り!」
麗奈「ツアーとかだって十人が一人相手に戦ってたりするでしょ!勝てば官軍よ!」
光「それとこれとは話が別だろ!大体負けてるじゃないか!」
麗奈「ぐぬぬ…」
光「いいか!次はアタシが一人でやる!レイナはさがってろ!」
光「ヒーローは…かっこよく勝たないとダメなんだ!」
142:
麗奈「アタシよりチビのくせにこのレイナサマに命令してんじゃないわよ!」
光「小っちゃくない!!140cmはある!」
光「それにレイナの方が年は下だろ!年上のいう事を聞け!」
麗奈「うっさいチビ!」
光「なんだと!」
ギャーギャーワーワー
ハゲ「うるさい!何ケンカしてるんだ!」バンッ
麗奈「チッ!戦略的撤退よっ!」ダダダ
光「あー!逃げるなこのー!」
ハゲ「まったくお前らケンカしてばかりだな…」
光「ご、ごめんなさい」
ハゲ「まあいい…それより次の対戦相手が決まったぞ」
ハゲ「お前も知ってるだろう?鷹の団…」
光「おおっ!それは!」
ハゲ「嬉しそうだな?」
光「聞いた話じゃ常勝無敗!最強の事務所だって話じゃないか!」
光「強い相手ほど燃えてくるだろ!楽しみだな!」
ハゲ「そうか…まあ期待してるぞ」
143:
?????????????????????????????
智絵里「どう?体の調子は…」
幸子「ええ、貰ったお菓子のおかげかずいぶんいい感じですよ、ありがとうございます」
幸子「トレーナーさんもなんだかんだでドリンクくれましたし…すっっっごくまずかったですが…」
智絵里「それにしても…大丈夫かな…」
智絵里「今回の相手は守備全振りの守極の要塞って言われてるって話だよ」
幸子「なーに、ちょっとばかり強いだけですよ…」
幸子「いつも通りPさんの段取りなら大丈夫ですって」
智絵里「だといいけど…」
?????????????????????????????
光「くうぅ?燃えてくる!ヒーローとして!この戦い!負けられないね!!」
光「それに相手の強い子…アタシと同い年で身長もほとんど変わらないらしい!よかった!」
?????????????????????????????
ハゲ「…フフ…Pか…」
ハゲ「再びこうして奴と巡り合えるとはな…何たる幸運よ」
ハゲ「あの一夜の事…今でも忘れられぬわ」
ハゲ「やつは美酒…」
ハゲ「同じ量の黄金と同等の価値を持つ…幻の火酒よ」
ハゲ「あの夜の火傷はまだ癒えぬ…必ず再びこの手にしてみせるぞ恋人よ」
144:
赤城みりあ(11)
南条光(14)
146:
P「幸子…大丈夫か?」
幸子「フフーン!ボクを誰だと思ってるんですか!」
P「はは、そうだな」ニコ
P「よし…そろそろ始めるぞ」
幸子「……」
『冷静で…いられればいいんですけど…』
幸子「フン!」
幸子(そんなことないですよ…彼に限って、そんなことありえません)
幸子「……」
幸子(…これが…最後ですね)
幸子(この事務所の下で歌を歌うのは…多分これが最後…)
P「第一陣前へ!」
幸子(…でも)
幸子(ケジメだけはきっちりつけます!)
幸子(チームのトップバッターとしてのケジメだけは…きっちりと!!)
P「第一陣!行けェ!」
147:
「相手が動いたよ!」
光「きたか!よし…受けて立つぜ!」
光「こっちも行くぞっ!出撃だ!」
「あれがウワサに聞く鷹の団のチームだね!」
「こっちもいまだ負けたことはないんだから!望むところ…」
幸子「邪魔です!!」
ドガッ!!
「うわあ突っこんでくる!止まらないよ!」
光「なに!?」
光「中央突破で一気にリーダーを倒す…それが向こうの狙いか!」
幸子「敗北なんて知りません!」
光「正義の味方は負けない!」
ドガアァッ
DLOW!
148:
光「むっ!」
幸子「くっ!」
千佳「幸子ちゃんに続くよー!」
ゴゴゴゴゴ
「そんな…止まらない!」
「今までどんな相手でも負けたことがないのに…進むどころか押されてる!」
光「あの子だな…レイナ達を倒したっていうのは…」
光「本当に強いな!だけどこっちだって負けちゃいられない!」
光「みんな怯むな!こっちの方が人数も多いんだ!押し返すぞ!」
ハゲ「ほう…奴らもなかなかやるな…」
ハゲ「だがしょせん多勢に無勢、ここら辺が限界だな」
ハゲ「さっさと勝利し…そしてPを再び私のものに…」
ハゲ「よし、私が直接指揮してやる」
149:
幸子「うぐ…」
幸子「そろそろ潮時ですよ!Pさん!」
P「全員撤退だ!」
幸子「ふふ…」
幸子「みなさん!逃げますよ!」
「はーい!」「逃げるんだよォーッ!」
「光ちゃん!相手は逃げて行ったよ!追いかけよう!」
光「変だな…」
「え?」
光「こんな攻め方じゃ最初から結果は目に見えてたはず…」
光「これが本当に常勝無敗の事務所のやり方なのか?」
「光ちゃんは相手を買いかぶりすぎなんじゃない?苦し紛れに一点突破でどうにかしようとしてたんでしょ」
「相手はしょせん無課金軍団、私たち相手に残された策はそれくらいしかなかったんだよ」
「それより早く追いかけようよ!みんなアイドルランクを上げるチャンスだって沸き立ってるよ!」
光「う?ん…だけどなあ…」
ハゲ「光、何をしているんだ」
光「プロデューサー」
ハゲ「敵は逃げていくぞ?みすみす勝機を逃す気か?」
光「いや…でも」
ハゲ「全員に告げる!」
ハゲ「あいつらにとどめを刺した者にはアイドルランクを二階級特進を約束する!報酬も思いのままだ!」
光「プロデューサー!そんなこと言ったら…」
ハゲ「いいんだ」
光「それに…相手はあれだけ自信満々に突っ込んできてすぐに逃げて行ったんだ」
光「これを追いかけるなんてどんな物語でも罠だって相場が決まってる!危険だよ!」
ハゲ「光!!」
ハゲ「この私の指示だ!全員敵の追撃に移れ!!全員に伝えるんだ!」
「光ちゃん…」
光「くっ…仕方ない!罠だとわかっていても臆さないのがヒーローだ!全員敵の追撃に移るぞ!」
150:
ドドドドド…
幸子「うわあ何十人もいる!これはいつかみたいに一人で足止めできる量じゃないですね!」
幸子(でも予定通りみなさんPさんに食いついてきました…)
幸子(…そう 何もかもあなたの手の平のなかってわけですか…)
幸子(いつもそうでしたね…)
みく「にゃは…あれ全部相手にしようっていうのかにゃ…?みく達」
智絵里「すごいね…」
P「陣形を整えろ!」
P「ここが正念場だ!逃げ場もない!!」
P「命を捨てろ!それ以外生き残る道はない!!」
P「生き残れば!オレたちの勝ちだ!!」
151:
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ヒュオオオオオ…
「あーあいったいどうなってるんだろうね」
「まあ万に一つもこっちが負けるなんてことはないよ」
「相手にとどめを刺したらランクが上がって報酬もいっぱいだってよ?」
「無理無理、倍率高すぎだよ…ん?」
「………………!!!」ガタッ
「ど、どうしたの?」
「あ…あれ!みんな!空から女の子達が!」
「嘘っ!?」
ヒュウウウ…
まゆ(まあ幸子ちゃんは経験者らしいですし…サプライズ効果も大きかったみたいですし仕方ないですね…)
まゆ(でもこんなノルマンディー上陸作戦みたいなことをアイドルがやるなんてビックリです)
ドサッ
まゆ(こ…怖かった…)ドキドキ
まゆ「フウ…」
まゆ「うふふ…やっぱり本陣は手薄ですねぇ…」
「空からとかアイドルがやることじゃないでしょ!お笑い芸人の領分じゃん!」
まゆ「勝てればいいんですよ…みなさん!行きますよ!」
「よーし!いくよ!」「おー!」
まゆ(みなさんスカイダイビングしても全然ひるんでないなんて、元気すぎですよぉ…すごいです)
まゆ「第一隊はほかの人たちに情報を伝えないようにしてください!ほかは全員予定の行動に!」
麗奈「む…あれは…」
152:
まゆ「急ぎますよ!出入り口を抑えるんです!」
ドゴォン…
「きゃあ!」
まゆ「!」
麗奈「フフフ…」
麗奈「アーハハハハ!ゲホゲホッ…」
まゆ「…またあなたですか…ほんとにしぶといですねぇ」
麗奈「アハハハ!この世から悪は滅びたりはしないのよッ!」
麗奈「フフフ…アンタ達みたいなザコ共の考えなんてこのレイナサマ!とうの昔にお見通しよッ!」
麗奈「だからこのレイナサマ自らここの防衛を買って出て、こうしてアンタ達がノコノコ現れるのを待ち構えていたってワケ!」
まゆ「うそですね、置いてけぼりにされたんでしょう?」
麗奈「………嘘じゃなーい!出てきなさい!」
「「「はーい!」」」
ザシャアア…
まゆ「むっ…」
麗奈「見たか!この時のためにアタシが残しておいたレイナサマの手下たち!」
麗奈「アンタ達みたいなザコ軍団に引けを取ったりはしないわッ!」
麗奈「いい!?一人たりとも生かしてここから出さないわよッ!」
麗奈「かかれっ!!」
ワアアアッ
麗奈「さあ来いザコ共!みりあたちの敵…今こそ討ってくれる!」
麗奈「もう容赦はしないわ!今度という今度こそ…全員泣かせてあげるわッ!」
まゆ「…!」ザッ
153:
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ハゲ「え???い何をしてる!まだ勝てないのか!?」
「意外と相手の抵抗が激しくて…」
「どうやらすごく強い子がいてなかなか大変みたいです」
ハゲ「何ィ?!」
ドガガガッ
幸子「フフーン!」
「強い!だれか止めないと!」
ドン!
光「長い眠りから覚めたひとりのアイドルが、今歩き出す!その名は…南条光!!」
光「…というのはどうだろう!今新たな伝説を作ってみせる!」
幸子「ボクに挑もうだなんて、やる気がありますね!すごくうれしいですよ!」
幸子「とってもとってもカワイイボクが皆の前で証明できるときが来たんですから!ボクが一番ってことをね!!」
光「世界の平和はアタシが守る!」
幸子「ボクに跪きなさい!」
ドカアッ!
ドゴンッ!
バキィンッ!
ガガガガガガ!
「す…すごい戦い!」
「これじゃ近づいたら巻き込まれるよ!」
154:
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ドガッ
麗奈「きゃあああ!」
まゆ「………」
麗奈「な…なんで!?あの時アタシに手も足も出なかったアンタが…!?」
まゆ「あの時は体調が万全じゃありませんでした…私には私の都合がありますから」
麗奈「体調…都合って…えっと…///」カア
まゆ「風邪をひいていただけですっ!!!!」
まゆ「敵は少数です!ひるまず押し切りますよ!」
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みく「にゃ?!これじゃ全滅は時間の問題にゃ!」
杏「あー疲れた…もうやめていいかな」
かな子「だめです!それに今ここでやめたら飴はもう二度ともらえませんよ」
杏「えっ」
かな子「それどころか印税生活の道も途切れちゃいますよ?いいんですか?」
杏「うぐぐ…飴…印税生活…でも仕事は…」
かな子「はい、飴ですよ♪」スッ
杏「飴うまー♪」コロコロ
杏「くっ!この飴が!印税生活が!途切れてしまうくらいなら少しくらいなら働いたほうがマシだーっ!!」
みく「にゃあ!杏チャンがキレたにゃ!」
155:
ハゲ「ハハハ…!圧倒的ではないか我が軍は!」
ハゲ「それに引き替え光は…たかが一人相手に何を手間取っているんだ」
P(…幸子)
P「……」
幸子「ハアハア…」
幸子(…強い!)
幸子(今まで幾人と闘ってきましたが誰よりも強い!)
幸子(これは死ぬ気でやらないと…負ける!)
幸子(……)
幸子(…いえ)
幸子(あの時ほどじゃないですね…)
『にょわー☆』
幸子(あの時ほど…絶望的ってわけじゃ…)ニヤリ
光「いいねその不敵な笑み!アタシも燃えてくるよ!うおおおお!」ダッ
幸子「ボクも!本気でいきますからね!!」ダッ
バキィンッ
幸子「あっ!!」
156:
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麗奈「うぐぐっ!」ドサ
まゆ「うふふ…」
「麗奈ちゃん!」
麗奈「…っく…かくなる上はああ…」
まゆ「!」
麗奈「ごめんなさ―――っい!!」ドゲザ
まゆ「………は?」
麗奈「なにとぞお見逃くださーい!これまでの嫌がらせの数々!チッ、反省してまーす!」
まゆ「………」
「ちょっと麗奈ちゃん!いくらなんでもそれは…!」
「そりゃないよー!麗奈ちゃんのせいで全員居残りになっちゃったのに!」
「麗奈ちゃんすごくカッコわるーい!」
麗奈「うるさいわねッ!引き際を見極めるのも強者の器量なのよッ!」
麗奈「全部うちのプロデューサーやれって言ってたやっただけ!
 アンタ達に個人的な恨みなんて一切ないわ!
 たまたま敵同士になったばかりに戦わないといけないなんて
 運命とは悲しいものね、いやほんと
 それにアタシは強い者の味方だから、アンタ達は強い!
 だからアタシはあんたたちの味方ってワケ!
 事務所をブッ潰したいならハイどうぞ!
 アタシは邪魔しないわ!だから見逃してね!」
まゆ「……」
まゆ(こんな子相手に本気になってたんですか…私は)
157:
麗奈「……」コソコソ
麗奈「と見せかけてアッハハハ!」ジャキ!
まゆ「!」
麗奈「アーハッハ!バカね!とっとと止めを刺しときゃいいものを!」
麗奈「レイナサマ特製バズーカ!破壊力はすごいわよ!」
麗奈「それともアタシが引き金を引く前に倒せるか試すのもいいかもねぇ?」クックック
まゆ「くっ…」
           バズーカ
麗奈「というわけで喰らいなさい!レイナサマ特製!『ウルトラレイナ様砲』!」カチッ
まゆ「…!」ギュ
ドゴォオォン…
まゆ「……」
まゆ「……」
まゆ「……?」チラ
麗奈「ゴホッ!ゲホゲホッ!なんなのよこれ!暴発するなんてゲホッ」
まゆ「……」
麗奈「ガハゴホ!クッ…レイナサマお手製のスペシャルバズーカで驚かせるはずだったのに…」
まゆ「……」ゴゴゴゴ…
麗奈「あっ」
まゆ「うふふ…あなたけっこう面白かったですよぉ♪どうしようもないおバカさんですけど♪」ニコォ...
麗奈「……」
麗奈「えっと…ごめんなさいって言っても無理…よね」
まゆ「うふ♪」
麗奈「戦略的撤た
まゆ「逃がしませんよぉ」ガシ
まゆ「悪い子には…お仕置きです♪」ス…
麗奈「あ…」ガタガタ
まゆWIN!
158:
幸子「……」
幸子(まいりましたね…マイクが壊れるなんて…)
光「残念だな…こういう幕なのは」
幸子(どう…しましょう!?)
ヒュウウゥ
「にょわ…?」
光「ヒーローとしてはフェアに行きたいけど、こっちも余裕はないからな」
光「まあ勝負は時の運だし…ちゃんと整備しておかなかった責任もある」
光「だから容赦はしない!行くぞっ!」
「あれー?あの子もしかしてピーンチかにぃ?」
「それじゃ助けてあげゆ☆いっくよー☆」ブンッ
幸子(…まずい!このままだと負けてしまいます!)
ヒュウウウゥ
ドガアァッ!
幸子「!?」
幸子(マイク!?)
光「何っ!?」
P「幸子!そのマイクをとれ!」
159:
幸子「っ!」
ガシッ
幸子「い、いきますよ!」
幸子「    !!」
光「!?」
P「え!?」
幸子「あれ!?こ…これ…」
幸子(飛んできた時の衝撃で壊れてるじゃないですか!!!)
光「なんだ…!?驚いたけど…それも壊れてるのか…」
光「ならば止めだッ!必殺技は最後まで取っておくもの!行くよ…」
光「大地で、大海原で、大宇宙で!時空も超えるスーパーヒーロー南条光!」
光「『SAMURAI STRONG STYLE』!!」
沈み切ったこの世界 誇りさえ見失い
闇の中 佇んで 孤独に這う
誰かが君を呼んでいる声が 聴こえないか
俺達 愛する者 守るため 生まれて来たんだ
熱く 勇ましく SAMURAI STRONG STYLE
正義とこの歌を君に届けよう
タフに風切れ FIGHTING FOR TOMORROW!!
男達は 闇夜を超えて 駆け抜ける
SAMURAI STRONG STYLE
160:
光(カンペキに決まった…)フッ
幸子「く…」
光「この戦い…楽しかったぞ!」
スタッフ「ちょっと!南条ちゃん!」
光「だけど最後はアタシの勝ち…え、あ、なんだ?」
スタッフ「その曲はマズイって!なんで急にその歌なの!?」
光「カッコいい曲だからな!マズイって何が?」
スタッフ「その曲は版権の問題があるんだ!この部分放送できないよコレ!」
光「えっっ!!!」
幸子「えっ」
スタッフ「せめて事前に確認してくれればよかったのに…」
光「え…っと…」
幸子「どうするんですか…」
光「く…くそぉっ…!」
光(どうする南条光!?)
光(こんな…こんな終わり方でいいと言うのか!?)
光(それでもヒーローなら…)
光(それでもヒーローならきっとこう言うはずさっ!!)
光「戦略的撤退をするぜっ!」
161:
幸子「ちょっと!逃げるんですか!?」
光「次に会う時を楽しみにしているぜ!じゃあな!」ダダダダ
――版権問題に触れた彼女が再び世に出てくるのは、実に20か月以上も後の事である
「そ…そんな!あの光ちゃんが…!」
ハゲ「ぐうう…!光の役立たずがああ!」
「ああっ!プロデューサーあれ!」
ハゲ「何だ!?」
守備コスト:6
ハゲ「な…こんなバカな!」
「い…いつの間に!?」「何が起こったの…!?」
幸子「ふ…ふふーん!まだわからないなんておバカさんですね!」
幸子「リーダーは逃げて!守備コストはほとんどゼロ!となったら決まっているでしょう!」
幸子「負けたんですよ!あなたたちは!」
幸子「まあボクに勝とうなんて最初から無理がありますから仕方ないですけどね!」フフーン
P「よしっ!今からさらに集中攻撃を行う!相手は逃げるならいいが…」
P「抵抗をするなら一人残らず倒してしまえ!」
「このままじゃやられちゃう!」「に…逃げよう!」
ワアアアア…
162:
ハゲ「バ…バカ!誰が逃げろと言った!返せ…戻せェ!」
ハゲ「ま…まだドリンクを飲みまくれば!まだ勝機は…」
ドンッ
ハゲ「ぐわ!」ドサァ
ハゲ「ぐ…くそ…」
ザッ
ハゲ「!」
P「……」
ハゲ「P…!」
163:
P「お久しぶりですPaPさん」
ハゲ「あ…ハハ…」
ハゲ「Pよ…かつての誼だ…」
ハゲ「ど…どうかこの場は見逃してくれまいか?」
ハゲ「お…お前と私の仲だ…今は不幸にして敵味方になってはいるが…」
ハゲ「あの日以来私はお前を探し続けてきた…」
ハゲ「こうして再び巡り合える日を待ち焦がれていたのだ!そのためにどれだけ私財を投じたことか…」
ハゲ「…あの夜のことお前とて忘れたわけではあるまい?一夜限りとはいえ恋い焦がれた仲だ…」
ハゲ「かつてその身を預けたものの頼み聞き入れてくれないか?」
P「・・・・・・」
ハゲ「……」
ハゲ「ま…まさか…?」
ハゲ「まさか…?恨んでいるのかこの私を…?」
P「……」
P「恨んでなどいませんよ」
164:
ハゲ「おお…それでは…」
P「ですが恋い焦がれたなどと言われては心外です」
P「私はあなたに対して何の感情も持ち合わせてはいません」
P「恨みも、好意も…何も」
P「たまたまあの時そこにいたあなたを利用させていただいたまでです」
P「私の歩く道端にたまたまあなたという石コロが転がっていた…」
P「ただ…それだけです」
ハゲ「き…貴様…!」
P「ですが」
ドシュッ
ハゲ「がっ…」
P「この先あなたのそのよく開く口で…」
P「CuPはホモだのと、くだらぬ噂を振りまかれるのも…少々都合が悪いのです」
ハゲ「」
ドシャアアァ
P「……」
スタスタ
165:
????????????????????????
まゆ「フウ…」
まゆ「!」
幸子「……」スタスタ
幸子「まゆさん、お疲れ様です」
まゆ「ええ……」ニコ
チラ…
ワーワーワー
ワイワイ
P「……」ニコニコ
まゆ「すごいです…」
まゆ「……」ポロ...
幸子「…どうしました?」
まゆ「おかしいですね…」グス
まゆ「ほんとうは…いつも思うんです」
まゆ「イベントが終わってああしてみんなの中で勝ったことを喜んでいるPさんを見ていると…」
まゆ「なぜだか手の届かない…遠い存在に思えてきて…切なくなるんです」ポロポロ
幸子「……」
幸子「…」
幸子「…そんなことないですよ……」
まゆ「え…?」
166:
グイッ
まゆ「キャ…!」
まゆ「ちょ…ちょっと…」
幸子「ここでこうして眺めていたってらちが明かないでしょう?」
幸子「行きましょう…あなたのプロデューサーの出迎えに」
まゆ「…!」
まゆ「はい!」
タタタ…
幸子「……」
幸子(あの時のマイク…まさかね…)
????????????????????????????
ヒュウウウゥ
きらり「にょわー☆」
きらり「マイクが壊れちゃうなんてしっぱいしっぱい☆しゅーん…」
きらり「でも助かってよかったにぃ!」
きらり「でも…もうすぐ…あの人もきっと…」
167:
―――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
重役A「Pがこのプロダクションに来てからというものここ最近の出世ぶり…」
重役A「やつめとんでもない野心家よ!自分の身分もわきまえずに厚かましい事この上ない!」
重役B「フェスも終わり…これでひとまずは永きにわたったこの戦いも終わる」
重役B「そうなればアイツは必ず会社の内部にまで口を挟んでくるに決まっている!」
重役B「あんな奴に会社の運用がわかるものか!」
重役C「しかし社長もずいぶんとあいつを信頼されている様子…」
重役C「私の入手した情報によると社長は今回の功績でやつにCEOの立場をと…」
重役A「何という事だ!そうなればやつの発言力はかなり大きく…!」
重役C「これはやはり…」
重役C「会社の中で生き延びるには…奴は少々慎みに欠けたということです」
重役B「しかし…いったいどのような手立てで…?」
重役C「……」
スッ
重役B「! それは…?」
重役C「エナジードリンク…ご存知ですよね?」
重役C「それを濃縮したものがエナドリチャージ10なわけですが…」
重役C「これはその原液をさらに濃縮を重ね…『エナドリチャージ1000』となった物です」
168:
重役A「それはいったいどのような効果が?」
重役C「エナジードリンクというものは飲めば体が活性化し、興奮作用や覚醒作用があります」
重役C「それにより体力なども回復し活動を行うことができるのですが…」
重役C「しかしそれがいい効果であるのはある程度の量の摂取の場合のみ」
重役C「多量に飲めば視覚異常・消化器異常・痙攣・精神錯乱などの症状を起こし…致死量を超えれば死に至る」
重役B「なるほど…!しかもエナジードリンクはプロデューサーにとって身近な存在で死因になっても違和感はなく…」
重役B「さらに体内を調べても特別な毒物が検出されるわけではない!」
重役A「し…しかし大丈夫なのでしょうな?万が一にも我々の企みが明るみに出るようなことには…」
重役C「ご心配なさるな…間違ってもそのようなことはございません」
重役A「し…しかし…」
副社長「案ずるな」
副社長「もしお前たちの言うようなことがあったとしても私が必ず内々に処理する」
重役B「これは…」
重役A「副社長よりその言葉さえ頂ければ何も怖いものはございません」
副社長「皆の者きくがいい…
 この計略はあの男によって今後脅かされるであろう
 お前たちの地位の安泰を計るためであると同時に
 いずれはこの会社を腐らせかねぬ獅子身中の虫を
 その害が広がらぬうちに摘み取るためのもの…」
副社長「何よりも会社のため、大義のためだ!」
重役A「それは無論です…」
重役B「我らとて何よりも会社を愛するが故です」ハハ…
重役C(長々と心にもないことを…笑わせるわ)
重役C「それでは皆さん…」
重役C「我らが愛社精神と互いの信頼の証に…この血判状に印を―――」
169:
――――――――――――――――――――――――――――――――
―祝賀会
みく「にゃは!ビシッとしないとなめられちゃうにゃあ!」キョロキョロ
杏「…なめ猫ってだいぶ古いよね」
みく「しかし何ていうか…みく達もようやくここまで来たって感じだにゃあ!」
杏「まあそうだねー、もしプロデューサーに出会ってなかったらもっと印税生活も遠かっただろうし」
智絵里「うん…ほんとにね…」
幸子「……」
「Pさん!」ドドド
「おかえりなさい!手作りドーナツをどうぞ!」ドナア…
P「…ありがとう」
「フゴフゴフゴゴゴ!(おいしいパンもありますよ!)」
P「(……?)あ、ありがとう…」
「この一皿で黙らせます」つイチゴパスタ
P「・・・・・・・・・・・・・・・・・」ウップ
智絵里「大人気だね…」
かな子「うーっ!ひとつくらいこっちに回してほしいですー!」
杏「…でもすごく大変そうなんだけど」
みく「食べ物を押し付けられるツラさ…みくにはよーくわかるにゃあ」
170:
幸子「……」
まゆ「あ、幸子ちゃんちょっと来てくれますか…?」
幸子「? なんですか?」
まゆ「ふぅ…どうしてもああいう騒がしいところは苦手なんですよぉ…」
幸子「あ、そうなんですか」
幸子(たぶんPさんが女の子に囲まれてるのが嫌なんでしょうね…)
まゆ「でも幸子ちゃんはどうしたんですか?今までなら…」
まゆ「『フフーン!もっとボクを崇めてもいいんですよ!』」
まゆ「とか言って楽しんでそうなのに今日は随分おとなしいですね?」
幸子「……」
幸子「…静かに…見届けておこうと思いまして」
まゆ「…え?」
幸子「皆さんと出会ってからのこの3年間…Pさんとボクや皆さんが何をやってきたのか…」
幸子「彼が今どんなものを手に入れて…そしてこれから何を手に入れようとしているのか」
幸子「それを見届けておこうと思ったんです」
171:
まゆ「…幸子ちゃん…」
まゆ「あなた…やっぱり本気なんですか…?」
幸子「……」
まゆ「…どうしても?」
ワアアアア
「社長ばんざーい!」
幸子「主催者が来ましたね」
幸子「先にみんなのところ行っててください、ボクは少し休んでます」
まゆ「……」
まゆ「早く来てくださいね」
幸子「わかってますよ」
幸子「……」
幸子「まゆさんは…」
まゆ「え?」
幸子「……」
幸子「いえ…なんでもありません」
まゆ「…?」
スタスタ
幸子(…ボクが今静かなのにはもう一つ理由がある)
幸子(これからここで起ころうとしてることについて…まゆさんや鷹の団の皆さんは何も聞かされてません…)
幸子(…少し酷いんじゃないですか?Pさん…)
172:
――――――――――――――――
―――――――――――
社長「少々性急ではあるがめでたい祝いの席だ、皆に報告しておこう」
社長「明後日の任命式にて…私はPくんにわが社のCEOの立場を検討している」
オオオオオ…
パチパチパチパチ
まゆ「……!」
みく「最高経営責任者…すごいにゃあ!」
P「……」チラ
幸子「ふふ…!」
P「……」ニコッ
「く…」「な…何と!?」
桃華「凄いですわ!」
副社長「フン」
副社長(貴様の命もあと僅か…)
副社長(せいぜい幻の栄華に酔いしれるがよいわ)
重役A「そろそろですな…」
173:
志保「お飲み物をどうぞ―♪」
重役C「あ、ちょっといいかな?」
志保「はい!なんですか?」
重役C「ここの飲み物をP君に持って行ってくれ」
志保「わかりました!」
カチャ…
重役C「……」ニヤ
志保「はい、どうぞ♪」
P「……」
P「ありがとう」スッ
社長「それでは新たなる若き英雄の誕生と」
社長「わがプロダクションの輝ける未来を祝し…」
社長「乾杯」
「乾杯!」
174:
智絵里「ゴクゴク…おいしい!」
みく「お酒飲んでる人はすでに出来上がってるのが何人もいるにゃ…」
杏「ああいう大人にはなりたくないね」
かな子「わたしはジュースだから平気です!」ゴクゴク
まゆ「プロデュー…」
P「……」
ゴクッ
ガシャアアアン
まゆ「……?」
P「……」フラッ
まゆ「…!」
P「」
ドサッ
まゆ「P…さん…?」
まゆ「Pさん!!」
175:
??????????????????????
重役A「まさかこうもうまく事が運ぶとは…あっけないものですな」
重役B「これを段取りしたのは重役Cさんによるもの…見事なお手並みです」
重役C「いえ…そのような」
副社長「いや見事であったぞ重役C君」
重役B「これでようやくわが社も本来の威厳を取り戻すことができますな」
重役A「いやまったく…」
副社長「何はともあれ皆の者大儀だった…」
副社長「ん?」
チリチリ…
重役A「な…なんだ?この煙は」
重役B「と…扉が外から何かに抑えられていて開きません!」
重役C「く…」ドンドンッ
バキィィッ
重役C「やった!開いた…」
ゴオオオォ
重役C「うわあっ!火が!」
重役A「ヒイィィ!か…火事!?」
副社長「こ…これは…!?」
副社長「外に誰か…!」
バッ
副社長「!」
ゴゴゴゴゴ…
ザッ
P「……」
176:
副社長「プロデューサー…!?」
副社長「プロデューサァァ!!」
副社長「な…なぜ…!?医者は確かに貴様は死んでいると…!!」
P「確かにそう思うでしょうね…そう仕組んだのですから」
P「ご存じなかったようですが…私の事務所には医者をやっているアイドルがいましてね…」
P「彼女に頼んで死んだことにして貰いました」
P「彼女にはちょっと驚かすためですぐに自分から教える…と言っておきましたが」
重役A「な…どうして今回のことを知っていた!?」
P「これもご存じなかったようですが…私の事務所には探偵の子もいるんですよ」
P「ちょっと皆さんを調べてもらい…怪しい人物を洗いました」
P「まあその子はまさかこんなことになっているとは思ってないでしょうがね」
重役C「バカな…お前はあの時あれを飲んだはず…!生きていられるはずが…」
P「…どうやらあなた方は机の上で物事を画策するのに慣れ過ぎているようですね」
P「確かに飲みました…しかしあなた方は現場の現実をよくご理解なさってないようで…」
P「第一線で働くのプロデューサーといえば日にドリンクを数百本飲んでも珍しくはない」
P「そしてそれが毎日のように続いているのです」
P「ドリンクには強い耐性ができているのでね…もっともあれだけ濃縮されていたので本当に倒れてしまいましたが」
副社長「おのれ…おのれプロデューサー…!」
P「あなた方がいろいろなことで私財を肥やしていたのも知っていたのでね…」
P「もうすぐあなた方はこの世から影も形もなくなるでしょう」
P「でもご安心ください、あなた方の資産は全て私が頂きますから」ニコッ
副社長「うわあああ…」
ゴゴゴゴ…
177:
P「……」
スタスタ…
ザッ
幸子「全部終わったみたいですね」
P「……」ニヤ
幸子「しかしこれでまたひっくり返したような大騒ぎになりますね…重役の人が何人もいなくなるんですから」
幸子「でもおかげであなたの名前を口にする人は一人もいなくなったわけですね」
幸子「まさか死にかけた当人がやらせたことだとはだれも考えないでしょうし」
P「ひどいと思うか…?」
幸子「え?」
P「こんな薄汚い陰謀を行って…他人の資産も奪い取って」
P「…オレを」
P「ひどいやつだと思うか」
幸子「……」
幸子「なーに言ってんですか!今回のことは殴られたから殴り返した!それだけのことじゃないですか!」
幸子「それに物を盗った盗られたはいつものことでしょ?」
178:
幸子「……」
幸子「…これがあなたの夢につながる道なんでしょう?」
幸子「そう信じてるんですよね?」
幸子「何言ってるんですか、今さら…」
P「……」
P「そうだな…」フッ
バン!
P「うおっ」
幸子「さあ帰りましょう!死人がいつまでもうろついてちゃまずいです!」
幸子「早いところまゆさんたちを安心させてあげないといけませんね」
P「ああ…」
幸子「あなた死んでたから知らないでしょ?」
P「え?」
幸子「ボクほどじゃないですけどまゆさんもとてもカワイイドレス着てたんですよ」
P「ほんとか!?」
幸子「ちゃんと褒めてあげてくださいね!」
179:
???????????????????????
P「……」
まゆ「プロデューサーさん…?」
P「……」ニコ
まゆ「プロデューサーさん!!」
みく「Pチャン!」
智絵里「プロデューサーさん…!」
かな子「プロデューサーさん!」
杏「プロデューサー!」
まゆ「プ…プロデュ…グスッ…ヒッ!」
P「心配かけたな…まゆ」
杏「大変だったんだよ?プロデューサーが倒れてからず―――っとまゆ、放心状態だったんだから」
P「……ごめん」
まゆ「え…?」
P「ドレス似合ってるよ」
まゆ「……」グス
ギュッ…
杏「ヒューヒュー」
みく「ニヤニヤ」
幸子「……」
幸子「ふふっ…」
スタスタ
180:
槙原志保(19)
181:
―――――――――――――――――――――――
一か月後―――
幸子「……」
幸子(この衣装とも…お別れですね…)パサッ
ガチャ…
幸子「ふふ……」
バタン
まゆ「雪ですか…きれいですね…」
まゆ「あれ?」
まゆ「誰です?こんな時間に…」
ザッザッ
幸子「……」
まゆ「幸子ちゃん…!?」
みく「それでね!その猫チャンってのがとってもかわいくて…」
智絵里「あれ?」
智絵里「まゆちゃん?こんな夜更けにどこへ…?」
まゆ「はあ…はあ…」タタタタ
智絵里「…どうしたのかな?あわてて…」
みく「トイレじゃない?冷えるからにゃー」
182:
まゆ「幸子ちゃん!」
幸子「!」
幸子「……」クル
まゆ「……幸子ちゃん…あなた…」
まゆ「出て…行くの?そうなの?」
幸子「……」
まゆ「……」
まゆ「ちょ…ちょっと待って…」
まゆ「あなたとはずいぶんとケンカもしたけど…一緒に頑張ってきた仲間じゃないですか」
まゆ「鷹の団も今までの苦労がやっと実を結びかけてる…何もかもこれからでしょう?」
まゆ「それを…こんな時に…」
幸子「もう…決めてしまったことですから」
まゆ「だけど…!」
幸子「このまま」
幸子「このまま…彼の夢に埋もれるわけにはいかないんです」
まゆ(…だけど…)
幸子「Pさんと…うまくいくといいですね、まゆさん」
まゆ「う……」
183:
智絵里「ねえ…」
幸子「!」
まゆ「智絵里ちゃん…みくちゃん…」
智絵里「幸子ちゃん、ちょっとお話ししよう?」
幸子「はい…」
スタスタ
まゆ「……」
まゆ「……」
まゆ「そうだ…!」
まゆ(Pさんなら…)
まゆ(Pさんならあの子を止めてくれるかもしれない…!)
184:
幸子「……」
智絵里「でもどうしてなの…?今になって急に…」
幸子「急にじゃありませんよ?イベントの前から考えてました」
みく「あ、このパフェお願いするにゃ」
智絵里「何かイヤな事でも…あった?」
幸子「イヤな事?あるわけないですよ、そんなの」
幸子「鷹の団は普通の事務所とは違う…」
幸子「みんなライバルだけど、それだけじゃない」
幸子「心から信頼し合える仲間でした」
幸子「こんなボクにも仲のいい人がいっぱいできて…」
幸子「この3年間は本当に楽しかったです…」
智絵里「それじゃ…いったいなんで…」
みく「パフェおいしいにゃあ」モグモグ
智絵里「……ってみくちゃん…少し話…」
みく「ふーんだ!」
みく「みくは売れっ子アイドルだよ!好きな時高くておいしー物食べたっていいでしょ!」
みく「道を歩けばファンのみんなが集まってくるにゃ!当たり前だにゃ、みく達は大人気なんだから!」
みく「それどころかもうすぐみく達はプロダクションの主要アイドル!そうなったらテレビにもいっぱい出て!」
みく「小さくて狭かった事務所ともさよなら!うまくいけば国民的アイドルにゃあ!」
みく「…こんなの普通じゃ絶対手に入らないにゃ!元々ただの女の子だったみく達にとっては夢みたいな話だにゃあ」
みく「だけどみく達は手に入れたにゃ!血のにじむような努力をして!ようやく手に入れたのにゃ!」
みく「…それを幸子チャンは捨てていくっていうんだモン…まるで古い衣装を脱ぎ捨てるみたいに」
185:
智絵里「…みくちゃん」
みく「いつも『カワイイボクが一番!』とか言ってるくせに…」
みく「いざ一番になりそうだってなったらどこか行っちゃうなんてワガママすぎにゃ!」
幸子「みくさんの言うとおりです」
幸子「ボクは…ワガママです」
幸子「ボクは自分がカワイイことが大切で…ずっとそれを主張してました」
幸子「他にもカワイイ子はもちろんいましたが…それでも良かった」
幸子「…誰でもいいから…こっちを向いていてくれれば」
幸子「だけどあるとき思い知ったんです…そんなのはなんの役にも立たないことだって」
幸子「でも…それでも…出会ってしまったんです」
幸子「本当に振り向かせたい人を…ボクは見つけてしまった」
幸子「その人は何一つ持ってはいませんでした」
幸子「そしてすべてを手に入れようとしていました」
幸子「…いえ、それを可能に思わせる何かが…彼にはあった」
幸子「…ですがあまりに高みを目指いていたから」
幸子「彼は自分自身をいつも極限まで研ぎ澄ましておかなければならなくて」
幸子「だから彼には…自分の隣に弱い人を並べておくゆとりはないんです」
幸子「…でもおかしなことに…そうあればあるほど」
幸子「ボクの目には彼が眩しく映る…」
幸子「…もうごめんなんですよ」
幸子「彼の夢の中で…彼を見上げているのは」
幸子「ただカワイイからじゃなく」
幸子「ただ強いからじゃなく」
幸子「ボクは…自分で手にする何かであの人の横に並びたい」
幸子「ボクはあの人にだけはバカにされるわけにはいかないんです」
186:
みく「Pチャンの横に並ぶ…?」
智絵里「……」
みく「何言ってるのにゃ!わかるでしょ!Pチャンは特別なの!みく達とは違うって!」
みく「今までみたいに大きなステージに立って!いろんな歌を歌ってこれたのも!」
みく「ぜんぶPチャンがいたからでしょ!」
幸子「大きなステージだとか…一番人気だとか…今はそういうのには興味ないんです」
幸子「ボクが欲しいのはもっと別の…自分で勝ち取る、何かです」
みく「自分で勝ち取る何か!?フン!そんなのが簡単に見つかりゃ誰も苦労しないにゃ!」
みく「もし運よく見つかったとしてもそこでイチバンになれるのはほんの少しだけ!」
みく「大抵の人は自分の力量や器と自分の置かれた現実に折り合いをつけるものにゃ!」
みく「夢が全部ダメってわけじゃないけど…夢さえあれば、なんてそんなのは現実を見てないだけにゃ!」
智絵里「み…みくちゃん」
幸子「…みくさんには」
幸子「あなたにはないんですか?そういうの…」
みく「っ!」
みく「フン!もう知らないにゃ!」
みく「智絵里チャン、みくは先に帰って寝てるにゃ」
みく「幸子チャンのことなんてもー知らない!」テクテク
幸子「みくさん…」
187:
智絵里「…みくちゃんはね、ああ見えても大阪出身の子なんだ」
智絵里「『大阪出身ならこういうキャラ』みたいに思われるのが嫌で…自分だけのキャラを作っていったんだ」
智絵里「でもね…いつからか初心者に自信をもたせるためにわざと負ける、みたいな立ち位置になっちゃって」
智絵里「Pさんに引き抜かれるまでずーっと負けるために戦う…なんて事をしてたの」
智絵里「それに自慢の猫キャラも…他の人気の子がやったりして…」
智絵里「犬の真似してみてとか言われたり…いろいろつらいこともあったんだ…」
智絵里「昔はみくちゃんにも…自分で勝ち取る何かってのがあったのかもね…」
幸子「そんなことが…」
智絵里「わたしはね…昔からいつも自信が無くて…おどおどしてて…人並み以上に怖がりで…」
智絵里「だけど…Pさんやみんなと出会ってから…『頑張りたい!』って思えるようになったんだ…」
智絵里「いまだってみんなと一緒に頑張っていきたいと思ってるし…」
智絵里「みくちゃんだって本当に諦めてるわけじゃないと思う」
智絵里「だって…今だってアイドルを続けてるんだもんね…!」
幸子「……そうですね」フフ
智絵里「3年前のあの日…わたしは幸子ちゃんにここならあなたの居場所が見つかるよって言ったよね…」
智絵里「…外れちゃったね…わたしの勘」
智絵里「そこまで送るね…」
智絵里「…見つかるといいね…幸子ちゃんの"何か"」
188:
ザッ...ザッ...
智絵里「ねえ…ひとつ聞こうと思ってたんだけど」
幸子「何ですか?」
智絵里「幸子ちゃん、まゆちゃんとはどうなってるの?」
幸子「えー?なんですかそれ」
智絵里「2人が川に落ちた一件以来…ずいぶん仲良くなったみたいだから」
幸子「そうですかねぇ?」
幸子「まあまゆさんとは…いろいろありましたから」
智絵里「……」
智絵里「ねえ…まゆちゃんを誘ってみたらどうかな?」
幸子「はい?」
幸子「な、何でです!?ヤブから棒に!」
智絵里「一人でいるより…二人でいた方がぜったい楽しいよっ!」
幸子「鷹の団にいる人ならだれでも知ってる事でしょう?まゆさんはPさんが…」
智絵里「まゆちゃんは…Pさんと一緒になれないから…たぶん…」
幸子「え…?」
智絵里「幸子ちゃんの言うとおり…Pさんは何一つ持たないところから」
智絵里「プロダクションの責任者にまで出世して…」
智絵里「それだけでもほとんど奇跡だし…これ以上何を望むのって所だけど」
智絵里「でも…Pさんは止まらない」
智絵里「Pさんの求めるもの…到達点はただ一つだから」
智絵里「だけど…大きな会社の社長になるなんて…やっぱり『大きなつながり』が必要なの…」
智絵里「何か後ろ盾をする…切り札が…」
幸子「…?」
189:
智絵里「わからない?」
智絵里「桃華ちゃんだよ…桃華ちゃんと親しくなるのがPさんにとって夢をかなえる一番の近道」
幸子「……」
智絵里「桃華ちゃんのうちはとっても大きなお金持ちの家…」
智絵里「それだけでもきっと大きな力はあると思うんだけど…」
智絵里「桃華ちゃん自身がこの業界に入ってきてるんだから…いろんなところに顔がきくのは間違いないし」
智絵里「気に入ってもらえればこれからの出世、そしてその後のことにも大きな役に立つと思う…」
智絵里「それにこのプロダクションのお金だっていっぱい出してると思うんだ…」
智絵里「なんたって社長の娘さんなんだもの」
智絵里「…偶然にも副社長はいなくなっちゃったし…排他的な重役の人たちもいなくなって…」
智絵里「これでPさんの目的の邪魔になる人たちはいなくなっちゃったんだね」
幸子「ギクッ」
P『幸子…このことはみんなには口外しないでくれ』
P『あいつらを信用しないわけじゃない…鷹の団は運命共同体だからな』
P『だがあいつらにはオレの薄汚い部分はあまり見せたくない…』
P『あいつらには登っていく感覚だけでいい』
P『強気なお前には付き合ってもらうぞ?とことん』
幸子「……」
智絵里「それに桃華ちゃんも…Pさんのことを…その…………好きみたいだし」
智絵里「まあ…Pさんがそうしたんだろうけど」
190:
智絵里「まゆちゃんにとってPさんは特別な存在なの」
智絵里「好きになった相手ってだけじゃなく…つらい現実から連れ出して…生きる術を与えてくれた…」
智絵里「だからまゆちゃんは恋心以上に…崇拝に近い感情を持ってるの…」
智絵里「だけど…どんなに頑張ってもぜったい一緒になれない人を思い続けるなんて…」
智絵里「きっとまゆちゃんは…幸せになんてなれないよ…」
智絵里「つらいだけだと思うの…そういうの…」
幸子「……」
智絵里「幸子ちゃんは…どう思ってるの?まゆちゃんの事」
智絵里「親友なんでしょ?一緒にいたいとか…思ったことないの?」
幸子「…ボクは…………」
191:
幸子「まゆさんはいい人です」
幸子「ただカワイイだけじゃなくしっかりした目標もあって…」
幸子「でも…まゆさんはボクにとっては親友というより…仲間なんです」
幸子「だから…」
智絵里「……」ジー
幸子「……」
幸子「…いえ」
幸子「……違います……」
幸子「まゆさんが見つめているのはPさんだけだから」
幸子「だから…今は」
幸子「今のボクじゃ…だめなんです」
智絵里「……」
智絵里「そっか……」
智絵里「幸子ちゃんなら大丈夫だと思ったんだけどなー…」
幸子「今は…自分のことで精いっぱいですよ」
幸子「もうこの辺でいいです…」
幸子「!」
かな子「あっ」
みく「……」
まゆ「…!」
杏「幸子!」
192:
幸子「みなさん…」
杏「ちょっと酷いじゃん幸子、黙って行っちゃうなんてさ」
杏「どうかしたの?何かイヤなことがあったとか」
幸子「杏さん…」
まゆ「……」
幸子「!」
幸子「……」
まゆ「……」
ザ…
幸子「…!」
P「……」
193:
P「……」
幸子「……」
P「出て…行くのか?」
幸子「…はい」
P「鷹の団を…抜けるつもりなのか?」
幸子「……」
幸子「ごめんなさい…」
P「…っ!」
杏「ごめんじゃわからないよ!説明とかないの!?」
杏「適当な理由で辞められるなら杏だってとっくに辞めてるよ!」
智絵里「あ…杏ちゃん…」
智絵里「幸子ちゃんは…いっぱい悩んで…決めたことなんだって」
智絵里「だから行かせてあげようよっ…」
杏「ええ?…だけどさァ…」
かな子「グス…本当にやめちゃうんですか?」
かな子「一緒に過ごして…すごく楽しかったよ!」
かな子「またいつか…一緒にライブやろうね!」
幸子「はい!」
194:
みく「おうおう!この際だから言っといてやるにゃあ!」
みく「みくは幸子チャンがキライだったにゃ!」
みく「正直ライブ中に幸子チャンの背中にねこぱんち☆の狙いを定めたのは一度や二度じゃないにゃあ…」
智絵里「……」
幸子「やってくれたら盛り上がったかも…」
杏「プッ」
みく「ま、まじめな話をしてるのっ!」
みく「フ…フン!どうして幸子ちゃんがキライなのか今わかったにゃあ!」
みく「…その顔にゃ」
みく「その自信たっぷりの…!張り切ったドヤ顔が!キライだったんだにゃあ!」
みく「自分一人が最高でイチバンだって顔にゃ!自分一人が特別なんですってにゃ!」
幸子「…ドヤ顔が嫌なら最初からわかりきってる気が…」
みく「う…うるさいにゃあ!」
幸子「みくさん…ボクの事…そんなに嫌いだったんですか………」ジワ
みく「うっ…」
智絵里「……」ジー
杏「……」ジー
かな子「……」ジー
みく「ぅ……」
みく「あー!わかったにゃ!最後だから本心を言ってやるにゃ!」グシュ…
みく「さびしいにゃ…!みくだって行ってほしくないよっ…!」ポロポロ
幸子「……!」グス
195:
かな子「これ…餞別のお菓子だよ!」
杏「杏もとっておきの飴玉をあげるよ…元気でね」
智絵里「わたしは…四葉のクローバーを閉じ込んだしおり…あげるね!」
智絵里「えへへ…幸子ちゃんにいいことがありますように、って思いを込めたんだっ…」グス
幸子「み…みなさんありがとうございます…!」ポロ
幸子「???!!」ゴシゴシ
幸子「こ、こんなにカワイイボクを見送ることができるなんて皆さんは幸せ者ですね!」
幸子「ボクがいなくてさびしいからって泣いたりしないでくださいよね!」
智絵里「…ふふ…がんばってねっ…!」
みく「みくからもプレゼントがあるのにゃ!」
みく「とってもかわいいネコミミ!あげちゃうにゃ!」
幸子「あー…それは別に…」
みく「えええええ!?ひどくにゃい!?」
幸子「冗談ですよ!ありがとうございます…本当僕は何でも似合っちゃって困っちゃいますね!」ドニャア…
196:
ザアアアァ…
P「……」
幸子「……」
幸子「みなさん…お世話になりました」
まゆ「……」
『まゆちゃんは…Pさんと一緒になれないから…たぶん…』
『ねえ…まゆちゃんを誘ってみたらどうかな?』
『一緒にいたいとか…思ったことないの?』
幸子(まゆさん…)
幸子「……」
スタスタ…
まゆ「…!!」バッ
幸子「!」
P「・・・・・・」ゴゴゴゴゴ
197:
幸子「P…さん…」
P「あの時言ったはずだ」
P「お前はオレのものだとな」
P「オレはあの時お前を勝ち取った…」
P「お前のライブもお前の敗北も全てオレのものだ」
P「オレの手の中から出ていきたいというのならあの時と同じ…」
P「力で自分をもぎとって行け」
杏「プロデューサー…!」
まゆ「…!」
幸子「……」タラ...
幸子「笑ってさよならってわけには…行かないんですか?」
P「・・・・・・」ゴゴゴゴゴ
幸子「……」
幸子「本気みたいですね…」
ス…
まゆ「!」
198:
ゴゴゴゴゴ
P「……」
幸子「……」
まゆ「ま…待ってください…!」
まゆ「二人とも本気なんですか!?」
まゆ「こんなところで戦うつもり!?」
まゆ「Pさんも引き止めるなら話し合いで…!」
P「・・・・・・」フウゥ...
まゆ「……!」ビクッ
幸子「どいてくださいまゆさん」
まゆ「…!」
幸子「邪魔…しないでください」
まゆ「何言ってるんですか!?本気で戦ったら二人ともただじゃ…」グイ
まゆ「!」
かな子「まゆちゃん…こっち」
まゆ「か…かな子ちゃん!?何するの放し…!」
かな子「……」フルフル
智絵里「やるしかないのかな…こうなっちゃったら」
みく「どうなるのかにゃ…」
まゆ「みんなどうしたんですか!?止めないと…!」
杏「二人の問題だから、杏たちが口を挟むことじゃないよ」
199:
まゆ「でも…!」
智絵里「戦って何かをとられたら戦いで取り返す…それが基本でしょ…?」
智絵里「こういうのは…昔は何回もやってたことじゃない…」
まゆ「だけど…!」
まゆ「…だけど」
智絵里「……」
智絵里(変わったなあ…まゆちゃんも…)
智絵里(以前のまゆちゃんなら…仲間がキズつくことがあってもあまり気にはしなかった…)
智絵里(たとえ自分のアイドル生命を終わらせることになったとしても…)
智絵里(それがPさんの意志なら…きっとためらったりしなかったよね…)
智絵里(…もしかしたら…それは今でも同じかもしれない…)
智絵里(だけど…)
智絵里(まゆちゃん…気づいているのかな…?自分が変わりはじめていることに…)
200:
幸子「……」
……まるで敵でも見るかのような目ですね…当然でしょうか
あなたが寄せてくれたアイドルとしての信頼や期待…
ぜんぶほっぽり出して行ってしまおうっていうんですから恨まれたって文句は言えません
ですが…
それでも
たとえあなたに憎まれても…
裏切り者扱いされようと
『決して人の夢にすがったりはしない…』
『誰にも強いられることなく自分の生きる理由は自らが定め進んでいく者…』
ですから……
『そして その夢を踏みにじるものがあれば全身全霊をかけて立ち向かう…』
『たとえそれがこの私自身であったとしても…』
『私にとってのアイドルとは…そんな…"対等の者"だと思っています』
だから…ボクは行きます
201:
みく「でもこれでPチャンに負けちゃえばまた一緒に過ごせるにゃあ…フクザツ」
智絵里(そう…うまくいくかな…?)
智絵里(この3年間幸子ちゃんは事務所の一番手として…イベントでは常に先陣をきって来て…)
智絵里(鷹の団の中でも…一番大変な仕事に身をさらしてきたはず…)
智絵里(Pさんは確かにあらゆることで天才だけど…)
智絵里(幸子ちゃんは常につらい状況の中で鍛え上げた体)
P「・・・・・・」
智絵里(やっぱり…Pさんの表情にいつもの余裕がない…)
智絵里(二人の力は拮抗してるんだ…!)
ヒュウウゥ…
まゆ「……」ドキドキ
みく「……」
かな子「……」
智絵里「……」
杏「……」
202:
幸子「……」
……不思議です
妙に落ち着いた気分ですね…
相手はあのPさん…余裕なんてあるわけないのに…
3年前のあの日も…こんなのでしたね
ケンカで始まってケンカで終わる…それもいいですね…
あなたにとってボクは…
戦うぐらいの価値はまだあるってことですもんね
203:
まゆ「……」
……幸子ちゃんは強い!
この3年間であの子は強くなりました!計り知れないほど…!
…だけど
それでもPさんなら…
Pさんなら!
きっとあの子を止められる!
…そう
そして何もかも…また今まで通りに…
まゆ「…!」ハッ
まゆ「……」
まゆ(…まゆは…望んでいる…?)
まゆ(居てほしいって…)
まゆ(あの子にいてほしいって…)
まゆ(望んでいるの?)
204:
P「……」
……いつものようなムキ出しの自信や闘志が感じられない…静かな目をしている
…だがそれでいて隙がない迷いのない目だ
それだけ決意が固いという事か…
行きたいのか!?そんなに…
オレの手の中から出ていきたいのか!?
……だめだ
だめだ!!
許さない!!
行かせない!!!
205:
…だが…どうする!?
幸子の力も体力も以前とは比べ物にならない
やつの攻撃を受けきる自信は今のオレにはない…
出来たとしてもせいぜい二・三撃が限度 それ以上は気力が持たない
…………勝機は最初の一撃
幸子が攻撃を仕掛けた瞬間…幸子の攻撃を打ち落とし
そのまま幸子の腹に一撃を叩きこむ!
スピードタイミング共に一分の狂いも許されない…手加減のきかない必殺の一撃
今の幸子に勝つにはこの技しかない だが…
成功すれば幸子でもただでは…
…いや もし攻撃が当たる瞬間幸子が攻撃を防ぐ行動を何一つしなかった場合
本当に大怪我をさせてしまうことも…!
………………
それでも
手に入らないならそれでも…!
206:
一同「……」ドキドキ…
幸子「……」ジリ...
P「……」ピク...
P(かまわない!!!)
ズバッ!!
ギュオ...
P(くらえ!!)
幸子「!」バッ
スカッ...
P(!?)
P(こいつ…最初からオレの攻撃を読んで…!)
幸子「……!!」ブンッ
ドゴンッ!
P「ぐあっ!」ドサ
まゆ「Pさん!」
207:
P「」ガクッ...
幸子「……」ザ...
幸子「さようなら…」
P「」ピク
まゆ「Pさん…」
P「」
まゆ「……」
まゆ「……」チラ…
幸子「……」
スタスタ
まゆ「うぅ…」
幸子「……」ザ...
まゆ「……さ」
まゆ「幸子ちゃん…!!」
幸子「っ…」
幸子「……」ギュ…
ザッザッ…
まゆ「あ……」
208:
杏「行っちゃたねえ幸子…振り返りもしないでさ」
智絵里「……」クスン
みく「Pチャンに勝つなんてすごいにゃ…」
まゆ「……」
まゆ「幸子ちゃん…」
幸子「……」
大丈夫…
道端で石コロにつまづいた様なものですよ
つまらない…小さなことですよね
あなたの行きたいところは…もっと遙か…遠いんでしょ
だから…大丈夫、立てますよ
そして歩き出します…
すぐに……
211:
―――――――――――――――――――――――――――
ホー…ホー…
幸子「……」
幸子(わかってたけど一人はさみしいな…)
幸子(一人…そういえば久しぶりですね…)
幸子(考えてみればこの三年間ほんとの意味で一人になったことなんて一度もありませんでした)
幸子(……)
…もしかしてボクはまた…
二度と手に入らないかけがえのないものを自分から捨ててしまおうとしてるんじゃないですか…?
本当はボクは…暖かいと感じられればそれでよかったんじゃないの?
手に入るかどうか…あるか無いかすらわからないあやふやな未来のために
ボクはかけがえのない今を手放そうとしてるんじゃ…
そんな大きな夢なんて掲げなくたって…人は生きていける…
そもそもこんなことを思いついたのはPさんのあの言葉を聞いてしまったからです
でなきゃこんなこと…
これで…
自分の意志で歩き出したと言えるんでしょうか?
結局ボクは……
…………
もう"今"じゃない
過去なんだ
212:
ゴオオオォ...
幸子「!?」ビクッ
バッ!
幸子「……」
幸子(何です…?今の殺気は!?)
幸子(これは…覚えがある!)
幸子(これは…このまとわりつくような迫力は…)
『にょわー☆』
幸子(まさか…!?)
幸子「!?」
オオオオオ…
珠美「……」
幸子(そんな…!?たしかに後ろにいたはず!)
幸子(きらりさ…いや、違いますねどう見ても…)
幸子(でもこれは…この感覚は…!)
213:
珠美「やはり歯車は回り始めたのですね」
幸子(歯車!?何のことです!?)
珠美「心するのです…」
珠美「これから一年の後蝕の刻!」
珠美「貴方と貴方の友人!今は見えざる幽霊ども!」
珠美「そしてその王であるあなたの半身が彼の地へ集う時!」
珠美「貴方の上に決して贖いきれぬ死の嵐が吹き荒れるでしょう!!」
珠美「ですが心するのです!もがき!挑み!足掻く!」
珠美「それこそが死と対峙するものの唯一の剣!ゆめゆめ忘れぬことです!」
幸子(この人…すごく強そうだし…カッコいいなりでカッコいいことを言ってるのに小さいな…)
珠美「何かものすごく失礼な事考えてる気がしますが…まあいいでしょう…」
珠美「絶望の淵で折れた剣を手に立ち上がる者のみが…あるいは…」スウゥ...
幸子「ま…待ってください…!」
ヒュウウゥゥ…
幸子「……!」
幸子(幻ですか…!?)
幸子(……いや)
幸子(小さい剣士…)
214:
―――――――――――――――――――――――――――――
ザアアアアアア…
桃華「あら、雨…雪が溶けてしまいますわ…」
「お風邪をひいてしまいますよ?早く床にお入りください」
桃華「ええ…あなたたちも今日はもう下がってよろしいですわ」
桃華「フウ…」
コンコン
桃華「!?」ビクッ
桃華「?」チラ…
P「……」
桃華「え…えっ!?」
「どうかなさいましたか?」
桃華「な、な、な、何でもありませんわ!行ってくださいまし!」
桃華「……」
カチャ
桃華「Pちゃま!?」
桃華「い…いったいどうなさいましたの!?雨の中…こんな夜更けに…!?」
P「こんばんは桃華様」
桃華「殿方が一人こんな時間に女子寮に入り込んだと知れれば大変な騒ぎになりますわ!」
桃華「誰かに見つかりでもしたら…!」
P「ですから、よろしければお部屋にあげていただけませんか?」
P「今誰かに見られでもしたら桃華様の名誉にもキズがつきます…」
P「それにここはすごく寒いんです」
桃華「え…ええ…そうですわね、どうぞ…」
P「失礼…」
215:
桃華「……」
P「すみません、女性の部屋をこんなに濡らしてしまって…」
P「こんな時刻にお伺いした非礼を…」
桃華「…!」
ギュッ
P「……」
桃華「お会いしたかったですわ…!」
桃華「でもずいぶん他人行儀な話し方じゃありませんこと!?」
桃華「わたくしとPちゃまの仲なのですからもっと親しいはずでしょう?」
桃華「それに…祝賀会ではあんな恐ろしいことが起こり…本当に怖くて…」
桃華「なのに…どうしてもっと早く…会いに来てくれなかったのですか!?」
桃華「わたくし…悲しかったですわ…」
P「……」
P「・・・・・・」
グイ
桃華「…?」
チュッ...
216:
桃華「…ん」プハ
P「……」
チュ…
桃華「…!」
桃華「んむ……///」
チュ…レロ…
桃華「ふあ…」
サワ…
桃華「い…いや…」
グイッ
桃華「!」
ドサッ
桃華「い…いくら親しいと言っても…その…」ドキ…ドキ…
P「怖いですか?」
P「恐ろしいことも悲しいことも…」
P「火にくべてしまえばいい」
ペロペロ…
217:
??????????????????????????
ザアアアア…
かな子「わー…よく降るね…」
杏「…お陰様で私のアツいキタクカツドウも中止だよ…絶好の篭り日和だねっ」
みく「飴だったらよかったのににゃ」
智絵里「……」
かな子「……」
杏「……そうだね」
みく「…そういう冷めた反応が一番残酷なんだにゃあ…」
まゆ「みなさん、Pさんを見ませんでした?」
杏「さあ…今日はあれから見かけないけど」
まゆ「……」
218:
??????????????????????
桃華「ん…Pちゃま…」
P「……」
チュプ…ピチャ…
『そう信じているんですよね?』
P「……」
桃華「あ…ん…」
ジュル…レロ…
『さようなら…』
P「……」ギリ…
紗南「へへ…やっぱり夜更かしは楽しいな」スタスタ
キシ
紗南「ん?桃華ちゃんも夜更かししてるの?珍しいな…」
紗南「何やってんのかちょっと気になっちゃうねっ…」チラ…
桃華「ふ…ぅ…」
P「……」
ペロペロ
紗南「あ…あわ…あわわわわ…///」
タタタ…
チュンチュン…
桃華「クー…クー…」スヤスヤ
P「……」
P「……」
P「……………………」ギリ...
219:
???????????????????????
桃華「……ん」パチ...
桃華「……」
桃華「!」
桃華「Pちゃま…?」キョロキョロ
チャリ
桃華「!」
桃華「Pちゃまのネクタイピン…」
桃華「うふ…♪」
桃華「ペロペロされて体がベトベトですわ…シャワーを浴びませんと…」
P「……」
クル…
P「!」
ザッ…
早苗「あーら…これは誰かと思えば次期経営責任者様じゃなーい?」
早苗「そんな人がこんな時間に女子寮から忍んで出てくるなんていったいどうしたのかなー?」
P(やべえ…どうしよう)
早苗「詳しいことは後でじっくりと聞かせてもらおうかしら…」
早苗「事と次第によってはタイホしちゃうぞ♪ん、割とマジで♪」
早苗「それじゃ対象を確保!逃げないように手錠かけちゃうわね!」
ガチャリ
P「……」
220:
「ま…待ってください社長!」
「なにぶん夜更かししてた女の子の言う事です!」
「暗いですし見間違うこともあるでしょう…!そんな見幕では…!」
社長「黙っていろ!!」
バアンッ!!
桃華「!」
桃華「お父様」
桃華「い…いったいどうされましたの?こんな時間に…」
桃華「いくら父親でも年頃のレディの部屋に断りもなくいきなり押し入るなんて非常識ですわ!」ドキドキ
社長(キスの跡…)
社長(濡れた床…)
社長「!」バッ
桃華「あっ!」
社長「何だこのピンは…これはPの…!!」
社長「…………」
社長「桃華…………!!」
221:
―――――――――――――――――――――――――
コツーン
コツーン
ガチャ
P「……」
社長「……P…」
P「……」
社長「私はお前に経営者としていずれはこの会社の片翼を担ってくれる大器であると大いに信頼を寄せていた」
社長「あの時お前にかけた言葉…偽りではないぞ」
P「……」
社長「盗賊まがいの連中とお前たちを謗る輩も少なくなかったが私はそうは思わなかった…」
社長「鷹の団がイベントで成果を上げる度にその確信は高まった」
社長「私はかねてより人間の価値はその家柄や地位ではなく…」
社長「その者個人の才覚・行動にこそ重きを置くべきだと考えていた」
社長「…だが!!」
バキィッ!
P「ぐ…」
社長「やはり盗人は盗人…!下賤の血は贖えぬか…!?」
P「……」
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