夏海「両さーん。拳銃持ってる?」両津「持ってるぞ」back

夏海「両さーん。拳銃持ってる?」両津「持ってるぞ」


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1:
両津「ほら」チラッ
夏海「おぉー、すっご」
小鞠「うわっ危ないよ夏海っ! 撃たれちゃうよ!」
両津「撃つわけないだろ……わしをなんだと思ってるんだ」
小鞠「不発弾を爆発させたぐらいだから銃だって暴発するかも……」
両津「引き金に安全ゴムがはまってるから大丈夫だ。銃規制社会の日本だぞ?」
両津「……あれ? ゴムが外れてるな。どっかに落としたか」
小鞠「ひっ」
両津「どっちにしろ、リボルバーなんだからそう簡単には暴発せん」
夏海「撃ったことあんのー?」
両津「まあ、何度かな」
夏海「撃ってみせてよ」
小鞠「ちょ、夏海!」
7:
両津「無闇に撃つと始末書を書かされるんだが……」
両津「まあここには部長がいないからいいか」チャキ
夏海「やった!」
小鞠「う、撃ってもいいの!?」
両津「あそこの木がターゲットだ。見てろよ」
小鞠「……!」バッ
夏海「なんで耳塞ぐの?」
小鞠「怖いわけじゃないよっ。ただ、ちょっと大きな音はびっくりするからねっ」
夏海「あっそ」
両津「……」
バキュン バキュン バキュン バキュン バキュン
夏海「おお?!」
小鞠「終わった!? ねえ、終わった!?」
夏海「姉ちゃん、目をつむってちゃ意味ないじゃん」
8:
両津「どうだ。シングルアクションみたいに片手を添えて連射するとかっこいいだろ」
夏海「西部劇みたいだった」
小鞠「もういいからしまってよ!」
両津「わかったわかった。小鞠は臆病だな」
夏海「ウチらの中で一番年上なのにぃー」
小鞠「別に怖いわけじゃないってば!」
両津「勢い余って全弾撃ってしまった。もう空だ」
夏海「予備の弾とかないの?」
両津「弾を補充するためにはいちいち許可証を提出する必要があるから予備は用意できん」
両津「面倒だから、わしはとあるルートから許可証無しで補充してるがな」
小鞠「と、とあるルート……?」
両津「これは他の人には内緒だぞ」
夏海「わかった」
小鞠「聞いちゃいけないことを聞いちゃったよ……」
9:
今の両さんって一般市民に撃ったりしないんだよな
10:
両津「署までいくのも面倒だ。とりあえず今は何か別の物を装填しておこう」
小鞠「そんなテキトーでいいの……? 悪い人がきたらどうするのさ」
両津「いざとなれば素手でなんとかする」
夏海「熊も倒せるもんねー」
蛍「センパーイ」
れんげ「にゃんぱすー」
夏海「おっ、ほたるんとれんちょんがきた」
小鞠「ふたりとも遅いよー」
蛍「すいません。れんちゃんと具にご飯をあげてたら遅れちゃって」
れんげ「ウチの特選を与えてるん。今日は笹かまぼこをあげたのんなー」
両津「タヌキの分際でいいもん食ってるな……わしなんてここ数日カップ麺ばかりなのに」
れんげ「両さんっ。にゃんぱすー」
両津「おう。お前ら、なんでわざわざ駐在所を待ち合わせ場所にしてるんだ?」
夏海「なんでって……なんとなく?」
蛍「自然とここに集まってますね」
14:
れんげ「両さん何書いてるん?」
両津「報告書だ。今日一日何があったかを書く」
蛍「今日一日って……まだお昼前ですよ?」
両津「いいんだよ。あらかじめ日記みたいなもんだ。書いた通りに今日一日を過ごせばいい」
小鞠「そんな無茶苦茶な」
夏海「どんなこと書いてんの? ウチに見せてよー」
ヒョイッ
両津「あっ、おい」
夏海「なになにー?」
【特になし】
小鞠「字きたなっ」
夏海「えっ、これだけ?」
両津「どうせここでは何も起きないだろ」
れんげ「ウチも書くー!」
17:
【りょうさんとあそんだのん】
夏海「だったらウチも書こっと」
【りょうさんとあそんだのん。その後、ドロボーをつかまえた。やったぜ】
夏海「これでよし」
小鞠「ドロボーって……こんな田舎にいないでしょ」
夏海「いなけりゃ自作自演すればいーじゃん」
小鞠「私はやらないからね」
夏海「えー。じゃあほたるんがドロボー役ね」
蛍「わ、私ですか……!?」
小鞠「自分でやりなよ」
夏海「いやいや。ウチみたいないい子がドロボー役なんてできるわけがないし」
両津「まあ『特になし』と書くよりマシか。これで提出しよう」
蛍「や、やめたほうがいいと思いますよ」
20:
両津「よし。報告書も書いたし、遊ぶか」
小鞠「えっ。両さん、仕事中じゃないの?」
両津「今日はここまでだ。報告書に『遊んだ』って書いたしな」
小鞠「だって、駐在所が無人になっちゃうじゃん」
両津「なら書置きを残しておこう」
【本日の営業は終了しました。またのご来店をお待ちしております】
両津「これでよし」
ペタッ
蛍「え、営業って……」
両津「で、お前らはこれからどこへ行く予定だったんだ?」
夏海「川」
れんげ「またお魚釣るん!」
23:
?川?
両津「でやぁーっ!!!!」
パシャシャシャシャシャシャ
れんげ「おぉ、ウチ感動したん! 石があんなにはねるのんなー」
夏海「すっご、あっちの岸までいっちゃったよ!」
両津「水切りは得意だ。ガキの頃に近所の寺の池で散々練習したからな」
蛍「お寺?」
両津「ああ。寺の石は跳ねやすい形をしてるだろ。日が暮れるまで投げたら寺の石がほぼ池の中だ。さすがに怒られたぞ」
小鞠「すごい迷惑……」
蛍「あっ、れんちゃんの釣竿が動いてるよっ」
れんげ「きましたかっ!」
夏海「れんちょん! 逃すな!」
れんげ「ウチの腕前、甘く見ないでほしいのん」
25:
両津「引きが弱まったら一気に引くんだぞ」
れんげ「……とぉー!」
バシャァ
れんげ「やったのん! えへん」
蛍「すごーい!」
小鞠「うっ、れんげに先を越された」
夏海「しっかし、これでやっと一匹かー。四人でやってるのに全然釣れないなー」
両津「釣りは朝まずめ、夕まずめと言うぐらいだからな。昼は基本的に釣れん」
両津「そもそも、わしの水切りの音でほとんど逃げてる」
夏海「げっ! 暇つぶしの遊びが裏目に出るとは……!」
れんげ「釣った魚を食べるん!」
ピチピチ
蛍「えっ、どうやって?」
れんげ「……生?」
小鞠「生で食べられるの?」
34:
両津「川魚は生で食べんほうがいい。寄生虫がいるかもしれん」
蛍「き、寄生虫……!」
れんげ「虫さん? この中に虫さんいるん?」
両津「可能性は高い。腹が痛くなるぞ」
夏海「じゃあ食べられないの?」
両津「加熱すれば大丈夫だ」
小鞠「火なんてどこにあるのさ」
両津「マッチならあるぞ。ほら」
夏海「さっすがー! 両さん用意良いじゃん」
両津「コレクションしてるからな。その一部だ」
夏海「へぇー。ピンクサロン亀あr」
両津「おっと間違えた!!! こっちだこっち」
夏海「えっ、今のでいいって」
両津「これは子供には扱いが難しい。こっちを使いなさい」グッ
夏海「わ、わかった」
39:
パチッ パチッ
れんげ「もーえろよもえろーよーほのおよもーえーろー♪ かーこのきおくとともにー♪」
夏海「結局一匹だけかー」
蛍「釣りって以外と難しいんですね」
小鞠「釣れるときはもっと釣れるんだけどね」
両津「待ちの時間が長いから根気がいる。わしには向かんな」
蛍「じっとしてるの嫌いそうですもんね」
両津「ああ。……そろそろ魚、いいんじゃないか?」
れんげ「虫さんもういなくなったん?」
両津「熱に弱いからな。ただ、内臓は食べるなよ」
夏海「でもさー。さっき川魚には寄生虫がいるって言ってたけど、海の魚は生で食べるじゃん」
小鞠「そういえば……そうだね。海にはいないんじゃない?」
両津「いるよ。鯖なんかに寄生してることがある。食べると死ぬほど辛いらしい」
小鞠「ひえっ」
44:
夏海「じゃあ刺身とか食べたら駄目じゃん。つーかウチら昨日まさに刺身だったんだけど……」
小鞠「……」フラッ
蛍「センパイ! しっかり!」
両津「今言ったのは稀なケースだ。基本的に海の寄生虫はイルカとかクジラを宿主にするから人間の身体には合わずすぐ死ぬ」
両津「ただ、淡水の寄生虫は陸上の生き物を宿主とするからな。わしらも危ないわけだ」
小鞠「な、なんだ……脅かさないでよ」
夏海「姉ちゃんびびってやんのー、やーい。ヒヒヒ」
小鞠「びびってないよ!」
蛍「それにしても、両さん詳しいですね」
両津「寿司職人だからな。一通り覚えさせられた」
夏海「えっ! 両さん警官じゃないの!?」
両津「警官でもあり、寿司職人でもある」
47:
れんげ「両さんたいしょーなん? へい! たいしょー!」
小鞠「警官に、寿司職人に、爆弾魔……」
両津「爆弾魔は違うと言っとるだろうがっ!」
れんげ「両さんの握ったお寿司食べてみたいのんなー」ハムハム
夏海「ってー! れんちょんひとりで全部食べちゃうの!?」
れんげ「ウチが釣りましたが?」ムシャムシャ
夏海「おぉう……それを言われたら何も言い返せないよ」
両津「寿司か。お前らに食わせてやらんこともないが」
れんげ「やったー!」
夏海「寿司だー!」
両津「ネタが無けりゃつくれん。米ならいくらでもあるがな」
小鞠「ここらへんだと海の幸は高いよ」
両津「なら無しだ」
れんげ「……ウチぬか喜びなんな……」
両津「うっ……」
52:
?駐在所?
小鞠「……えっー! 私10だったの!? おりなきゃよかったぁ?」
両津「よしよし。おい蛍」
蛍「は、はいっ」ビクッ
両津「お前、わしとやりあう気か?」
夏海「ほたるん命知らずだねぇ。いいよ、ウチが全力で相手になってやる」
蛍「ひぃ……お、おりますおりますっ……えっ! 13!? おりなければよかった……」
両津「ガハハ! 後悔しても遅い! よし! 他におりるやつはいないか?」
れんげ「ウチは自信ありますから」
夏海「絶対勝つ!」
両津「オープン!」
バッ
両津「ゲッ!!! 2!?」
夏海「っかぁー! 4って低すぎ!」
れんげ「8なのん! ウチの勝利!」
55:
小鞠「ふたりとも数字が低いのにどうしてあんなに自信満々だったの?」
夏海「しょーがないじゃん! 自分の数字見えないんだから! だいたい、ウチら低いのになんで勝負おりたんだよー」
小鞠「ふたりが『おりなきゃ末代まで呪う』って迫ってくるからでしょ!」
両津「インディアンポーカーは威圧して相手をおろさせるのが楽しいんだ」
蛍「あう……私これ苦手です……」
れんげ「ウチは得意なん」
両津「れんげは常時ポーカーフェイスだからな」
宅配「すいませーん。浅草さーん」
両津「なんだ?」
宅配「御届け物です。この駐在所に、浅草一郎さんはいらっしゃいますか?」
両津「ああわしだ」
夏海「なにいってんの、両さん。浅草一郎じゃないじゃん」
両津「浅草一郎はわしの二つ目の名だ」
小鞠「さらっと凄いこと言ったね」
蛍「は、はい」
59:
両津「なんだ? 夏春都からだ」カパッ
夏海「なにこれ! 魚がいっぱい入ってる!」
れんげ「おぉ……ウチ興奮してきたん……!」
蛍「箱に何か書いてありますよ」
両津「なになに……『異動送別品』……? あいつら、何か勘違いしてないか?」
夏海「カニも入ってるー! はっさみーはっさみー。姉ちゃんの髪切っちゃうぞ?」
小鞠「ちょっとやめてよっ」
れんげ「焦げた栗が入ってるのん」
蛍「それはウニだよ」
両津「おい、あんまり弄るなよ」
ピピピ プルルルル
纏『はい、もしもし』
両津「ああ、纏か? わしだけど」
纏『勘吉か。これから一生ド田舎で暮らしてくって本当か?』
両津「どこ情報だそれは……」
65:
両津「ちょっとしたミスで飛ばされただけだよ。そのうちそっちに戻る」
纏『そうなの? なんだよ、婆ちゃんが送別品を送っちゃったよ』
両津「ああ、届いた。相変わらず豪快だな」
纏『両津家が日本中に蔓延するのが申しわけないってさ。地元の人に振る舞えって』
両津「わしはウイルスか何かか……」
纏『まあせっかく送ったんだからしっかり食べろよ。腐らせないうちにな』
両津「おう」
ピッ
両津「れんげ。さっきの話だが、撤回だ。寿司を食わせてやる」
れんげ「ほんと!?」
両津「ああ」
れんげ「お寿司を食べるんじゃーい!」
夏海「やった! 寿司パーティだ!」
小鞠「いいの? なんか高そうだよ?」
両津「かまわん。身内が送ったものだ」
68:
?越谷家?
両津「いいのか? 台所を借りて」
夏海「いいよー。ごちそうになるのはこっちなんだし」
小鞠「お母さんもいいって言ってくれたしね」
両津「そうか」
小鞠「その格好でお寿司握るの?」
両津「……そうだな、上着が少し汚れてるから……」
夏海「割烹着あるけど」
両津「いや、いいよ。上だけ脱ごう。ホルスターも邪魔だな」
両津「小鞠、これをそこらへんに置いておいてくれ」
小鞠「わかったー。くさっ! 両さん、これちゃんと洗ってるの!?」
両津「時々な」
小鞠「うえー。ちゃんと毎日洗いなよ……玄関に置いとくよ」
両津「ああ」
71:
れんげ「ウチも手伝うん! ウチもー!」
蛍「私も、お手伝いしますよ」
両津「よし。じゃあ、れんげは皿を机に並べてくれ。箸とか、醤油もな」
れんげ「らじゃー」
両津「蛍は……そうだな、包丁は危ないか」
蛍「あ、大丈夫ですよ」
両津「そうか? じゃあこいつを一口大に切ってくれ。切る時は……」
蛍「筋目と交差するように、ですよね」
スッ スッ
両津「よ、よく知ってるな(……扱い慣れてる。小学五年生とは思えん)」
夏海「ほたるんしっかりものだなー。いい嫁さんになるよ」
小鞠「……」
77:
小鞠「両さん!」
両津「なんだ?」
小鞠「私も手伝うよ! 包丁とか使えるし!」
夏海「えー? 姉ちゃん包丁握ってるとこ見たことないけど」
小鞠「そ、そんなことないって」
両津「調理実習とかでやってるだろ?」
夏海「ウチらそういうのやんないよ。やっても焼くだけ」
小鞠「とにかく! 私も魚をさばくよ!」
両津「あ、ああ」
78:
小鞠「……」
両津「……大丈夫か? 手が震えてるぞ」
夏海「姉ちゃん無理すんなって」
小鞠「ていっ」
ザシュッ
両津「おい。刺すんじゃないぞ。切るんだ」
小鞠「わ、わかってるよ!」
小鞠「ふん! てりゃ! は!」
ザクッ ザクッ
夏海「姉ちゃんはそいつをどうしようとしてんの?」
小鞠「えっ、三枚におろすつもりだけど……」
両津「三個に分離してるぞ」
小鞠「あれ? ほんとだ」
蛍「あの、私ひとりで大丈夫ですから! センパイは、えっと、他のことを」
83:
両津「海苔はどこだ?」
夏海「そこに入ってない?」
両津「ないぞ」
夏海「あっちゃー。切らしてるんだ。母ちゃーん!」
小鞠「お母さんは飲み物とか買いにいってるよ。もうちょっと早く気づいてればね……」
両津「おいおい。海苔がなきゃ巻きできんぞ……しょうがないな、わしが買ってくるか」
夏海「ならウチもついてくよ。両さんの自転車爆走を体感してみたい」
両津「いいけど、振り落とされるなよ」
夏海「はーい」
蛍「切り身はラップして冷蔵庫に入れておけばいいですか?」
両津「ああ。余分な水分を抜いてチルドに入れといてくれ。すぐ戻ってくる」
夏海「姉ちゃんつまみ食いしないでよー」
小鞠「しないよ!」
92:
蛍「……」
スッ スッ
小鞠「ね、ねえ蛍」
蛍「なんですか?」
小鞠「その、さぁ。魚ってどうやって切ったりするのか、教えてもらえないかなぁーとか」
蛍「私が、ですか……?」
小鞠「知ってるんだけどね!? 知ってるんだけど、蛍のほうが、ちょっと得意っぽいし……」
蛍「手取り足取り?」
小鞠「うん」
蛍「やりましょう!」ズイッ
小鞠「あぶなっ! 包丁あぶないよ!」
蛍「す、すいません!」
97:
れんげ「お皿並べ終わったのん」
トテトテ
れんげ「そうだ。ウチとしたことが、具を呼ぶの忘れてたん」
れんげ「グルメなたぬきをウチがプロデュースするのんなー」
タッタッタッタ
ガララ
泥棒「……やっぱり田舎の家は鍵をかけないな……簡単に侵入でき……」
れんげ「……」
泥棒「!!!」
れんげ「にゃんぱすー」
泥棒「にゃ……にゃんぱす……?」
105:
泥棒(くそ……さっき自転車で出てった二人以外にも人がいたとは……!)
れんげ「おじさん……」
泥棒「あ、いや、これは……」
れんげ「両さんの友達なん?」
泥棒「りょうさ……そ、そう! りょうさんの友達なんだ!」
れんげ「呼んでくるん!」
泥棒「いや! いい! 今日はもう帰るから!」
れんげ「? おじさん、なに慌ててるん?」
泥棒「慌ててなんかいないさ!」
れんげ「だったらそこに座って待ってるのん」
泥棒「わ、わかった」
れんげ「両さーん」
タッタッタッタ
109:
泥棒(落ち着け……俺はまだこの家からは何も盗んでないんだ。何を恐れることがある)
泥棒「……ん? なんだこれ。制服?」
バサッ
泥棒「こ、これは……警察の……!」
ガチャン
泥棒「なんか落ちたな……」
泥棒「!?」
泥棒(け、拳銃……!)
115:
れんげ「両さんどこいったん?」
蛍「両さんだったら、夏海先輩と一緒に海苔を買いにでかけたよ」
れんげ「両さんにお客さんきてるん」
小鞠「お客さん?」
蛍「あっ、包丁持ちながら余所見したら危ないですよっ」
れんげ「戸を勝手に開けて入ってきたん」
蛍「……」
小鞠「……」
れんげ「……? どうしたん?」
蛍「れんちゃん……それって」
小鞠「ど、泥棒なんじゃ」
れんげ「なんと」
小鞠「ま、まさかね! こんな田舎にわざわざくる泥棒なんているわけないよね」
蛍「そ、そうですよ。たぶん、強引な押し売りか何かですよ」
117:
れんげ「なら帰ってもらうのん」
小鞠「ちょ、ちょっと、ま、れんげ!」
れんげ「どうしたん?」
小鞠「危ないよっ。両さんかお母さん帰ってくるまではそっとしておこう」
蛍「そ、そうですね……念のために、刺激しない方が……」
れんげ「なるほど」
小鞠「その人、今玄関にいるの?」
れんげ「うん」
小鞠「……」
そろり そろり
蛍「せ、センパイっ」
小鞠「大丈夫、ちょっと覗くだけだから……」
チラッ
泥棒「……」チャキ
小鞠「ぎゃああああ!!!!! 拳銃持ってるーん!!!!!!!」
123:
泥棒「っ!」ビクッ
蛍「えっ、け、拳銃!?」
れんげ「なんてこと! ウチ見抜けませんでした!」
泥棒「ち、違う! これは!」
小鞠「お助け?!!!」
れんげ「おじさん!」
蛍「れんちゃん! 逃げてぇ!」
れんげ「田舎のおふくろさんが泣いてるのん!」
泥棒「違うって! これは俺のじゃない! そこに置いてあったものを……!」
ガララ
両津「ただいま……って、誰だおまえ」
泥棒「ひっ」
小鞠「殺される?!!!」
両津「なに!?」
128:
両津「おい! おまえ、他人ん家で何してんだ!」
夏海「えっ、なに。どしたの」
泥棒「ち、違う!」
れんげ「そのおじさん、泥棒か押し売りなのん」
両津「泥棒だと?」
泥棒「違う! いや、そうだが……ああ、いや! 違う!」
両津「こいつ! 逮捕だ!」
ガバッ
泥棒「わあっ!」
バキュン
小鞠「ひぃ!」
蛍「きゃっ」
両津「……っ!」
130:
そういえば、一体何を装填したんだ?
138:
夏海「りょ、両さん! お、お腹に!」
蛍「ち、血が……!」
両津「なんじゃこりゃああああああああああああ」
泥棒「ひっ! わ、わざとじゃないんだ!」
ガチャン
れんげ「両さん!」
両津「心配いらん。言ってみただけだ」
両津「こいつ! よくもわしを撃ったな! 許せん!」
ガシッ
泥棒「えっ」
両津「本官が成敗してくれる!」
ボカスカボカスカ
夏海「撃たれたのに元気!?」
144:
泥棒「ご、ごめんなさい……」
両津「ごめんですめば警察はいらん」
ポカッ
泥棒「ぐっ……」
夏海「そ、それより両さん! お腹お腹!」
小鞠「う、撃たれてるのん! 撃たれてるのんなー!」
れんげ「ウチ、バンドエイド持ってくるん!」
蛍「それよりもマキロンのほうが……!」
両津「大丈夫だ。これはただの血糊だ」
夏海「えっ……ち、血糊?」
蛍「に、偽物ってことですか……?」
両津「まあな」
156:
両津「知り合いにつくらせたトウガラシ入りのペイント弾だ。ルパン三世みたいだろ?」
両津「実弾はさっき撃ち尽くしたから、代わりにこれを装填しておいたんだ」
小鞠「な、なんだぁ?……」
夏海「びっくりしたぁ?」
蛍「本当に撃たれちゃったかと思いましたよ」
れんげ「さすがのウチも焦りました」
両津「ったく。こんな田舎で拳銃ぶっぱなすとはふてぇ野郎だ」
小鞠「自分だって撃ってたくせに……」
泥棒「撃つつもりはなかったんです……あんたが脅かすから」
両津「人のせいにするな。だいたい、お前泥棒だろうが。署に連行する」
夏海「えっ。寿司は?」
両津「……そうだったな。しかたない、応援を呼ぼう。それまでお前も寿司パーティに参加しろ」
小鞠「えっー! 泥棒も一緒に!?」
161:
?数十分後?
両津「一丁上がり」
夏海「おぉ! 両さんプロみたい」
両津「プロだからな」
卓「……」
雪子「ありがとうございます。ほんとに、ウチの子のわがままで」
夏海「なんでそこでウチを見るのさ! ウチだけじゃないよ!」
両津「かまわん。食ってくれる人がいないとこの特技を生かす機会がないからな」
卓「……」
小鞠「お兄ちゃん食べるのはやっ」
蛍「お米が口の中で広がりますね?」
れんげ「グルメのウチも納得なのん!」
夏海「れんちょんグルメ主張はげしいなぁ」
れんげ「グルメですから」
167:
夏海「いや?まさか本当に泥棒が入るなんてね?」
れんげ「なっつんの書いたとおりになったんな」
小鞠「夏海のせいじゃん」
夏海「えぇ! それおかしいでしょ! ウチは悪くないって!」
泥棒「……」
れんげ「おじさん、お腹すいてるん?」
泥棒「ま、まあね……」
れんげ「両さん。ドロボーさんにもお寿司あげたいのん」
両津「なに?」
れんげ「お腹すいてるん」
両津「……しょうがないな。れんげの優しさに感謝しろ」
泥棒「あ、ありがとうございます」
172:
両津「ほら、お前はかっぱ巻きだけだ」
泥棒「はい……」
両津「で、なんでこんな真似したんだ? わざわざ田舎にまで出向いて」
泥棒「実は……会社を解雇され……求職活動をしてもまったく職につけず、思い切って諦めようと」
泥棒「故郷を離れ、路上で野菜でも売りながら生計を立てようと考えたんですが……」
両津「ここでか?」
泥棒「スーパーマーケットが多い場所では太刀打ちできないかなぁと」
両津「自給自足上等の爺さん婆さんばかりだぞ。無人販売もあるし、売れるわけないだろ」
泥棒「はい……まったく」
両津「ニーズってもんを考えろよ。たとえば、そうだ。ここら辺ならまさに寿司だろ」
両津「寿司は老若男女にウケがいい。まして内陸の方なら店舗も少ないから集客もいい」
両津「田舎のスーパーマーケットに屋台が便乗してるのをよく見る。あんな感じで安く売ればそこそこ儲かるんじゃないか?」
両津「問題はネタの仕入れだな……さすがに車じゃ難しいから……独自のルートを……」
泥棒「あの……」
両津「どうせ暇だ……いけるかもしれんな」
176:
?翌日?
両津「そうだ……金だ。断ったらギャンブル断ちしたのが嘘だって奥さんにバラすぞ」
両津「よしよし。いつか返す、それじゃ」
ピッ
両津「こんなもんか。次は中川に……」
ピピピ プルルルル
両津「……ああ、中川か? 以前、タイ焼きの屋台を開いたことがあっただろ? あの時につかった車は……」
両津「そうだった、炎上したな……。じゃあ新しいの作れ。今度はもっと鯛っぽいのだ」
両津「できたらこっちに送ってくれ……なに? 払うよ。セグウェイ代と一緒にそのうちな。じゃ」
ピッ
両津「これでよし」
れんげ「両さんなにしてるん?」
両津「おっ、れんげか。いつからいたんだ?」
れんげ「『良い話があるんだが』の時からなん」
両津「最初からか」
182:
れんげ「お寿司屋さん?」
両津「そうだ。屋台で小回りがきく寿司屋だ。なかなかないだろ?」
れんげ「ウチ、そもそもお寿司屋さんあんまり見たことないのん」
両津「そこも狙い目だ。ここらは寿司屋が少ないからな。食ったとしても惣菜ぐらいだろ」
れんげ「両さんお巡りさんやめるん?」
両津「やめないよ。両立させる。パトロールの一環だ」
れんげ「ウチも手伝うん!」
両津「そのつもりだ。店員にはお前ら四人を含めてる」
れんげ「おぉー!」
夏海「おーっす」
小鞠「こんにちはー」
蛍「れんちゃん、先にきてたんだ」
れんげ「ウチらお寿司屋さんになるのん!」
夏海「はい?」
187:
夏海「おもしろそー! ウチも手伝うー!」
小鞠「いいけどさ。両さん仕事は……って、もうこれ聞くのも無駄な気がしてきた」
蛍「材料とかはどうするんですか?」
両津「米ならある。問題は魚介類なんだが、そっちは輸送手段込みでツテがあるから大丈夫だ」
蛍「か、顔が広いんですね」
両津「老舗寿司屋の二号店の店長をしたことがあるからな」
小鞠「ホント、両さんって無駄に万能だね」
両津「無駄とか言うなよ……」
夏海「屋台って自分達でつくるの?」
両津「後輩につくらせる。たぶん明日あたり届くな」
れんげ「メニューは!? ウチ、メニュー気になるのん!」
夏海「グルメとして?」
れんげ「グルメとして!」
両津「メニューは考えてあるぞ。ためしにつくってみるか」
190:
両津「どうだ! キャラ寿司!」
夏海「おお! ウチらだ!」
れんげ「ウチの顔なん!」
小鞠「へぇ?、器用?」
蛍「こ、これは……!」ゴクリ
両津「アニメ・漫画のキャラクターから客の顔まで、注文を受けてつくろうかと思ってる」
両津「元々は外人ウケを狙ったんだが、案外日本人にも評判がいいんだ。もちろん、普通の寿司も売るがな」
れんげ「食べたいのんなー! 食べたいのんなー!」
両津「いいぞ」
れんげ「ていっ」ガブッ
夏海「ちょ! なんでウチの顔食べるのさ!?」
れんげ「なっつんの顔美味しそうなん」
夏海「この?、だったられんちょんもらいっ」ガブッ
れんげ「ウチ食べられた?」
夏海「うまっ! れんちょんうまっ!」
196:
小鞠「私も自分の食べてみよ?っと」
蛍「駄目ですよ!!!」
小鞠「えっ」
蛍「両さん! このコマ寿司ください!」
両津「あ、ああ。いいけど」
蛍「はぁ?、いいなぁ?、ふふふ」
小鞠「そんなに私の顔って美味しそうかな」
夏海「いや、不味そうだよ」
小鞠「失礼な! ……って反応も変か」
れんげ「具もつくってほしいのん! 両さん、具を?!」
両津「いいぞ。タヌキは稲荷をベースにするんだ」
蛍「コマ寿司をもっと! できたら5個ぐらい!」
夏海「ほたるん寿司大好きだな?」
203:
?翌日?
社員「すいません、両津様いらっしゃいますか?」
両津「わしだ」
社員「中川自動車の者ですが、中川エクスクルーシヴから両津様に贈呈品をと」
両津「よしよし。そこに置いてってくれ」
社員「はい。おーい、ここだってよ」
れんげ「お魚の車なん!」
夏海「鯛?」
両津「たいやきくんだ」
小鞠「これが屋台なのかな」
蛍「すごく目立ちますね」
社員「ここにサインをお願いします」
両津「両津・パトリシア・勘子……っと、よし。ご苦労」
社員「それでは」
207:
バババババババ
夏海「……? 今度はなに?」
蛍「ヘリコプター?」
パーパラパーパー パーパラパーパー
れんげ「音楽がきこえてくるん」
両津「ワルキューレの騎行だ。タネが届いたな」
小鞠「わっ! なんかいっぱいきた!」
ババババババババ
蛍「こ、ここにおりてきますよ!」
両津「どう見てもスペースが足りんだろ! 相変わらず無茶するやつだ……! 危ないから逃げろ!」
夏海「わー!」
れんげ「おー!」
小鞠「ひえ?」
210:
相変わらず無駄にすげえ練度だ
212:
爆竜「久しぶりだな、両津」
両津「無茶するなよ! 駐在所が解体されるところだったぞ!」
爆竜「細かいことを気にするな。さあ、再会の握手だ」
両津「どうせ拳銃が飛び出すんだろ」
爆竜「パターンを完璧に読まれているな……と見せかけて足元に手榴弾を転がしてみたりして」
コロン
両津「うおっ!」
ドガーン
小鞠「ひゃー!」
れんげ「ダイナマーイ!」
夏海「洒落になんないって!」
218:
両津「ばかっ! 子供もいるんだぞ!」
爆竜「心配するな。火薬の量は減らしてある」
両津「そういう問題じゃないだろ……こいつこそ爆弾魔だ」
爆竜「まだまだ油断があるな。あと少し反応が遅れていたら足がもげていたぞ」
両津「十分あぶねえじゃねえか! いちいちわしを試そうとするんじゃない!」
両津「ったく……それよりも、ちゃんと持ってきたんだろうな」
爆竜「当然だ。業務用冷凍庫と、飛鷹二徹からの預かりものを運んで来たぞ。おい荷物を下ろせ!」
米兵「Yes sir!」
夏海「姉ちゃん! 外国人だ! 挨拶挨拶!」
小鞠「ハ、ハロー!」
れんげ「コマちゃんすごいのん! 英語話せるのんなー」
小鞠「あ、あったりまえでしょ」
米兵「Hello little girl.」
小鞠「うあっ、えっと、えっと」
蛍「ぐ、軍人さん……?」
221:
爆竜「これで用は済んだ。帰るぞ」
両津「ああ、わざわざこんな田舎まで悪いな。また頼む」
爆竜「ジョディーに寿司をマスターさせてくれた礼だ。空母でも寿司は人気だからな」
パーパラパーパー パーパラパーパー
ババババババババ
両津「後は……」
ピピピ プルルルル
両津「ああ、日光か? わしだ……なに、月光? どっちでもいいや。届いたよ。そう」
両津「ハリケーンのライブと巨人のナイター戦のチケットを送っとく。ああ、親父さんによろしくな。じゃあ」
ピッ
両津「これで必要なものは揃ったな」
小鞠「嵐のようだった……」
れんげ「これでお寿司屋さんできるのん?」
両津「ああ。さっそくいくぞ。お前ら、たいやきくんに乗り込め」
蛍「えっ、も、もうですか!?」
224:
両津「どけどけぇ!」
ギャギャッギャギャ キキィ
夏海「両さん運転荒っ! おわっ」
れんげ「おぉ、えきさいちんぐ!」
ガタン
蛍「あ、安全運転でいきましょうよぉ!」
小鞠「……」
夏海「姉ちゃん! どうした!」
小鞠「なんでもない」
蛍「なんでもなくないときの顔ですよ! 気持ち悪いんですか!?」
れんげ「エチケット袋つかうん?」
小鞠「大人だからいらない……」
夏海「いや、歳とか関係ねえって!」
両津「吐けば楽になるぞ」
れんげ「両さん刑事さんみたいなのん」
228:
?スーパーマーケット?
両津「よしついた」
小鞠「あっ、天使なのん。ウチの上飛んでるん」
蛍「センパーイ! 帰ってきて?!」
夏海「許可とかとってあんの?」
両津「今からとりにいくんだよ。待ってろ」
バタン
夏海「行き当たりばったりだなー。両さんらしいけど」
れんげ「コマちゃんコマちゃん。気持ち悪いときは梅干し舐めるといいって聞いたことありますが」
蛍「あっ、ありますよ! ほら!」
小鞠「すっぱいのんなー」
夏海「ぶっ壊れてるときのコマちゃんだねー。しばらくはこのままだよ」
蛍(これはこれで可愛い……///)
233:
?数分後?
両津「いいぞ、許可が出た。開業だ」
夏海「はやっ。もう話ついたの?」
両津「当たり前だ。わしの交渉術を侮るなよ。鳩とカラスを和解させたことだってある」
れんげ「動物ともお話しできるん?」
両津「鳩の通訳を通せばな」
夏海「いや、意味わかんないって」
両津「とにかく、仕込みに入るぞ。蛍と夏海はわしのアシスタントだ」
夏海「りょーかい」
蛍「は、はいっ」
両津「れんげと小鞠は呼び込みだ。看板娘になってくれ」
れんげ「ウチかんばんになるーん!」
小鞠「わかったのん……」
両津「おい、小鞠の様子がおかしくないか?」
蛍「今更ですか……」
235:
客A「ん? なんだこの車」
客B「『超田舎寿司』……? お寿司を売ってるの?」
れんげ「いらはーい。いらはーい。そこのお兄さん、ちょっと寄ってくん」
客A「え、俺?」
れんげ「そこの奥さんも。お寿司いりませんかねー。グルメなウチの舌もうならせる一品なのん」
客A「寿司?」
れんげ「ささ、どうぞー」
グイッ
客A「あ、ああ」
客B「ええ」
れんげ「両さーん。ゲスト連れてきたん」
両津「らっしゃい!」
夏海「エアロスミス?」
客A「寿司売ってるんですか?」
両津「そう! 太平洋から直送した新鮮なネタが揃ってるよ! 安いから買ってって!」
239:
客B「へぇー、あの超神田寿司の姉妹店!?」
両津「そう! 本場江戸前寿司をリーズナブルな価格で提供してるよ!」
客A「確かに安い……じゃあ竹を1パック貰おうかな」
両津「へいまいど!」
夏海「アランドロン不在でした?」
客B「じゃあ、松を1パックと……これは? 可愛いわね」
両津「てまり寿司。子供でも食べやすいよ」
客B「じゃあそれも」
両津「はい、お買い上げ!」
夏海「村おこし来るスタンハンセ?ン」
247:
小鞠「うぅ……なんか恥ずかしい……」
れんげ「コマちゃん。のぼりが傾いてるん」
小鞠「こ、こう?」
れんげ「もっとおっきな声出さないとダメなん」
小鞠「わ、わかってるよ……。いらっしゃーい。寿司だぞ?」
お婆さん「あらあら。可愛い呼び込みさんだこと」
小鞠「お、い、いらっしゃいませ!」
お婆さん「アルバイトかい?」
小鞠「はい、まあ、そんなものです」
お婆さん「大変だねェ……(まだ幼いのに)」
小鞠「えっ?」
お婆さん「あそこのお店かい?」
小鞠「はい」
お婆さん「じゃあ買わせてもらおうかね」
小鞠「あ、ありがとうございまーす(なんか、憐みの目を感じたような……)」
251:
客C「竹を2パック」
客D「このキャラ寿司ってのはつくってもらえるのかい?」
両津「今日注文を受けて、明日のお渡しだよ。おい、夏海!」
夏海「はいはい。この用紙に記入してくださーい」
蛍「両さん。ネタを切り分けましたよ」
両津「よし。客の相手をしてくれ」
蛍「はいっ」
両津「いい感じだな。昼時を逃したが、いい客足だ」
両津「やはり田舎は店の数が限られてるだけあって、自然と客が集まる」
夏海「両さーん、てまり寿司がなくなりそうだけどー」
両津「はいよっ!」
254:
?数時間後?
れんげ「売り切れなのん!」
小鞠「またのご来店をお待ちしてま?す」
蛍「すごいっ、今日の分は完売しちゃいましたよっ」
両津「ああ。想像以上だ」
れんげ「ウチら大勝利なん!」
夏海「えっ、なにと戦ってたの」
両津「…………ニヒヒ(これは思ったよりいい儲けになるな)」
小鞠「両さん、顔が怖い……」
両津「よしお前ら。今日の給金だ」
蛍「いいんですか?」
両津「当たり前だろ。働いた者の権利だ」
夏海「やっほーい! 儲け儲け!」
小鞠「まあ、あんな目にあったんだからね」
258:
れんげ「明日も頑張るん!」
小鞠「え、でも明日は普通に学校あるし」
両津「なにっ! しまった、それを計算にいれてなかったな……」
両津「よし、サボれ」
小鞠「ちょっとお巡りさん!」
蛍「さすがにそれは……」
夏海「ウチはサボってもいいけど。ってかサボりたいかなーなんて」
小鞠「お母さんに言いつけるよ」
夏海「うそうそっ! 冗談冗談! なはは?」
蛍「夕方からなら手伝えますよ」
両津「そうか、じゃあ他に人を探さないとな……村で暇なやつ……あいつだな」
262:
?翌日?
楓「なんで寿司屋の手伝いなんか……駄菓子屋なのに」
両津「どうせ暇だろ。ギャラも払うんだから文句言うな」
客「昨日頼んだキャラ寿司を受け取りに来たんですが」
両津「はいはい! おい駄菓子屋」
楓「え?っと……これか。まいどー」
客「こまかいのがなくて、一万円で」
楓「は、はい。お釣り」
両津「またのおこしをー」
楓「……」
両津「なんだ、どうした」
楓「ああ、いや。札を受け取るなんて久しぶりでさ。なんか、本業よりこっちのほうが断然儲かる気がしてきた」
269:
両津「わしの地元にも駄菓子屋はあるが、ほとんど趣味みたいなもんだからな」
楓「スキーのレンタルとかやって生計立ててるけど……ポッと出の新参者がチート寿司で儲けてるの見るとやる気なくす」
両津「おいおい。モチベーション下げるなよ」
楓「手伝ってんだから利益の半分くれ。よこせ」
両津「無茶苦茶言うな」
楓「っけ」
両津「……その地元の駄菓子屋だが、婆さんが経営していてな。福引でPCを当てたんだ」
楓「なんだよ、藪から棒に」
両津「わしがセットアップをして、ついでに駄菓子のネット販売も始めてみたんだが、大繁盛したぞ」
楓「そういうの面倒」
両津「手伝ってやらんこともない」
楓「……えっ? ホントか?」
両津「ああ、だから真面目に働け」
楓「……アンタ、原始人みたいな顔して、実はいい人だな」
両津「原始人は余計だ! ったく、婦警連中と似たようなこと言いやがる……」
273:
れんげ「両さーん」
夏海「おーい」
両津「おっ、学校終わったのか」
蛍「はい」
れんげ「駄菓子屋ー! なんでお寿司屋さんになってるん?」
楓「なってねえよ。手伝いだ手伝い」
小鞠「へぇー。珍しい」
夏海「いつもは何を頼んでも『店があるから』の一点張りなのに」
楓「今回は特別だ。駄菓子屋としてのプライドってもんもある」
楓「おい警官、もう手伝わないからな」
両津「ほら、今日の給料だ」ピラッ
楓「……多いな……どうしてもって言うならまたやってもいい」
夏海「掌返しはやっ」
れんげ「寿司屋ー!」
楓「だから寿司屋じゃねえって!」
277:
両津「今日はちゃんと卓をつれてきただろうな」
夏海「うん。兄ちゃーん」
卓「……」
両津「おっ、ちゃんとギターもってきたな」
卓「……」コクン
両津「じゃあ弾け。客の注目を集めるようにな。機材はたいやきくんに積んである」
卓「……」
両津「それから小鞠とれんげには衣装があるぞ」
小鞠「衣装?」
れんげ「どれすあっぷするん?」
両津「ああ。河豚の着ぐるみと蟹のキャップだ」
蛍「私も一緒に選んだんですよ!!!」
小鞠「そ、そう……」
281:
れんげ「ウチ蟹ー!」
小鞠「えっ、じゃあ私が河豚!? 河豚の場合全身フル装備じゃん!」
蛍「さあ、あっちで着替えてきてください」
れんげ「かにーかにー」
小鞠「えぇー」
卓「……」
ジャージャジャージャジャ
両津「おい。それ、けいおんの曲か?」
卓「……」コクン
両津「深夜アニメ主題歌のギターだけってコアすぎるぞ。もっとわかりやすいのを弾けよ」
両津「おさかな天国とか、およげたいやきくんとか」
卓「……」フルフル
ジャジャジャジャジャ ジャジャジャー
両津「妙なところで頑固だな……まあいいか」
285:
小鞠「……」
蛍「いいです! 似合ってますよセンパイ! 本物の河豚みたいです!」
小鞠「ほめられてるの?」
夏海「あらー。コマちゃん可愛いわね?」ツンツン
小鞠「つっつくな! なんで着ぐるみなのに顔出てるのさ……せめて顔を隠したかったよ」
れんげ「ウチかにー!」
夏海「おおー、れんちょん蟹だねー。スプーンで食べたくなるねー」
れんげ「はさみで抵抗するのん」
夏海「あっぶね! ガチの鋏じゃん! はさみを表現したいならチョキでいいって!」
れんげ「ウチはりありちーを追求するん」
夏海「いや、現実の蟹だって鉄の鋏は持ってないよ」
両津「おい、着替えたなら持ち場につけ」
れんげ「おー!」
小鞠「これ、歩きにくっ」
288:
?数日後?
両津「……」パチパチパチ
両津(売上が順調に伸びていくな……口コミの広がる度がはやいのか)
両津(あいつらが手伝ってくれてるのもデカイな……子供はウケがいい)
両津(キャラ寿司の注文も増えてきたし……こりゃあ遠方にも手を伸ばしていいかもしれんな)
両津「HPを開いて……販売地域を駅前まで広げて……」ブツブツ
プルルルル
両津「ん? なんだ?」
ピッ
両津「もしもし」
TV局『すいません。こちら、TV局のものですけど。超田舎寿司の両津勘吉様でいらっしゃいますか?』
両津「そうだが」
TV局『是非とも、取材させていただきたいのですが』
両津「なに、取材?」
293:
夏海「テレビ!? テレビ出れんの!?」
両津「ああ、明日取材にくるらしい。いい宣伝になるぞ」
れんげ「ウチ、今度こそ全国デビューなん!」
蛍「すごいですね。こんな田舎の屋台に注目が集まるなんて」
両津「なんでも、熊を倒した警官が寿司屋を営業してるってのが面白いらしい」
小鞠「たしかに、普通じゃないね。むしろ無茶苦茶だよ」
夏海「やったー! サインの練習しよ?」
小鞠「いや、意味ないでしょ。誰が欲しがるのさ」
夏海「このみちゃんとか、ひか姉とか」
れんげ「ウチのサインを参考までに……」カキカキ
蛍「ざ、斬新だね」
夏海「サインっつーか、たぬきの絵じゃん」
296:
兄ちゃん、盆回しスタンバイ!
297:
?翌日?
レポーター「こちらが、今話題となっている超田舎寿司です!」
レポーター「こんにちは。超田舎寿司大将の両津さんですね?」
両津「いやー、どうもどうも。超田舎寿司へようこそ」
レポーター「なんでも、あの老舗・超神田寿司で店長を務めたこともあるとか」
両津「まあな。本格江戸前寿司だ」
レポーター「あっ、こちらには可愛らしい御嬢さん方も」
両津「うちの店員兼看板娘だ」
夏海「なっちゃんでーっす☆ ひか姉みてる??」
小鞠「えっ、えと、こ、こんにちは!」
レポーター「元気がいいですね?。お手伝いしてるんですか?」
蛍「あっ、はい。アルバイトです」
レポーター「ここのお寿司は美味しいかな?」
れんげ「グルメなウチの舌を唸らせる一品なん」
夏海「おぉ、とうとうれんちょんのグルメネタが全国デビュー……!」
300:
レポーター「こちらではどういったお寿司を食べることができるんですか?」
両津「定番の握りずしから、女性や子供向けのてまり寿司、あとキャラ寿司なんてのも売ってる」
レポーター「キャラ寿司? それはどういう」
両津「これだ」
レポーター「うわっ、すごい可愛いですねー! これは両津さんが?」
両津「そうだ。キャラクターはもちろん、お客さんの顔に似せてもつくれる」
夏海「ウチのもありまーっす!」
れんげ「ウチのもー!」
蛍「コマ寿司もぜひ!」
小鞠「えっ、なんで蛍が私のを!?」
303:
レポーター「色んな種類がありますねー」
両津「だろ? それが売りだ」
レポーター「……? これは、お巡りさんですか?」
両津「ああそれ。それは、大原大次郎」
レポーター「おおはらだいじろうさん?」
両津「そう! わしの上司で、とんでもない時代遅れ。罵声を浴びせるのが趣味みたいな野蛮人だ」
両津「部下をストレス発散の道具にする外道! 極悪非道っぷりがよく表現できてるだろ? ハッハッハ」
レポーター「は、はぁ」
両津「こういう老害は、こうだ!」ガブッ
両津「お前らも食え!」
夏海「いただきまーす」モグモグ
れんげ「ウチちょび髭食べるん」ムシャムシャ
両津「こういう楽しみ方もある。嫌いな上司の顔をつくりたかったらぜひうちへ」
レポーター「あ、アハハ」
304:
わろたww
308:
両津「はっはっは。まあおふざけはこのぐらいにして、今のとこカットね」
レポーター「えっ」
両津「ん?」
レポーター「あの……これ、生中継ですけど」
両津「なにっ!?」
プルルルル
両津「あ、ちょっと失礼」
ピッ
両津「なんだ、中川」
中川『まずいです先輩……! 部長、見てましたよ』
両津「げっ!」
中川『あっ! 今、立ち上がりました! 走って出ていきましたよ!』
両津「やばい!」
315:
大原「両津の馬鹿はどこだぁぁぁぁぁぁ!!!!」
小鞠「ひぃぃ!」
夏海「こわっ!」
蛍「りょ、両さんなら水切りの修行の旅に出ると言ってました」
大原「りょぉぉぉぉぉぉつぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
ズドドドドドド
夏海「両さん大丈夫かなー」
小鞠「い、生きて戻ってこられるの?」
蛍「大丈夫ですよ……たぶん」
れんげ「両さんがいるとえきさいちんぐなんなー」
?完?
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