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女武道家「ぶっ飛ばしてやる!!!」


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1:
女武闘家「たぁぁっ!」
ズガッ!
魔物「ぐべぇぇぇ」
ズーン
 魔物をやっつけた!!
女武闘家「ふぅ、討伐完了っと」パンパン
女武闘家「今ので4856体目かぁ、あと144体……ようやく終わりそうだなぁ」
女武闘家「やっかいなのは人助けのほうか……あと5人なんだけど、残り10人切ってからからずっと全然……」
女武闘家「ま、次の街は結構大きな商業都市みたいだし、もうすぐクリアだし、頑張って数日中に達成といきますか!」ムンッ
女武闘家「──」
女武闘家(長いこと一人旅してると独り言が多くなるのかな?)
女武闘家(とりあえず、さっさと街に行ってシャワー浴びよっと)
テラフォーマーズ 8 (ヤングジャンプコミックス)
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4:
--------
少年「はぁっはぁっはぁっ!!」
追っ手A「待てこのガキ!!」
追っ手B「クソが! 逃げ足のい!!」
追っ手C「フッフッフッ……」
少年(こ、このままじゃ──追い付かれる──)ダダダダダッ
少年(でもこれは、ぜ、絶対に渡しちゃ駄目だ……中央に訴えるまで……絶対に!)
--------
女武闘家「はぁー久しぶりだなーこんな大きな街」トコトコ
女武闘家「大陸でも有数の商業都市、海の幸山の幸共に豊富に集う食の街でもある……か」グゥゥゥ
女武闘家「よし、オナカもすいたし宿探しの前に腹ごしらえしよっかな」
女武闘家(って感じで街の食堂に来たはいいけど……)
チンピラ共「ぎゃーっはっははははは!!!」
女武闘家(あんまりお行儀のよくなさそうな連中ばっかりね)モグモグ
5:
チンピラA「お、みろよあそこの女……みねえ顔だな」ヒソヒソ
チンピラB「しかも一人……うへへへ気が強そうだが割りと上玉じゃねえか?」ヒソヒソ
チンピラA「一人旅ってとこか、よーし、いっちょ俺らが長旅の疲れを忘れさせてやろうぜぇ」ヒソヒソ
女武闘家(聴こえてんのよあんたらの下品なその声は──)ズズッ
ガタガタッ
チンピラB「おいおねーちゃん、ちょっと俺らに一杯注いでくれやぁ」
女僧侶「──んん?」プハ?
チンピラA「って、このアマ僧侶のクセに酒くせえぞ」
チンピラB「へえオカタイ聖職者にも結構いける口がいるもんじゃねえか! どうだ、俺らと一杯付き合わねえか?

女僧侶「うっさいなぁ、何やのあんたら……んぐっ」グビグビ
チンピラB「まーそーツンツンすんなよ。いい飲みっぷりじゃねえか。一杯くらい付き合ったってバチはあたんねー
だろ?」
女僧侶「──」グビグビ
女武闘家(さて……ここは助けてあげるか……でも矛先がこっちにこなくてラッキーだったし……)
6:
チンピラC「いよーネエちゃん。俺たちとちょっくらあそばねえか?」
チンピラD・E「げへへへへへ……」
女武闘家「……」
チンピラD「お? どうした? 黙ってちゃなんにもぐべぇぇぇ」バキッ!
ガッシャーーン!!
チンピラB「ぶっ!!!」ドターー
な、なんだ!? 喧嘩か!? またかよ! ひぃぃぃ!!
女武闘家「全く……チンピラのナンパってのはどこの町でも下種でワンパターンね」ガタッ
チンピラC「て、てめえこのアマ!!」チャキッ
チンピラE「やりやがったな!」チャキッ
女武闘家「へぇ──女相手にそんなもの抜くのがこの街の男のやり方ってこと? 所詮チンピラはチンピラね」
チンピラA「でけえ口叩くじゃねえかねえちゃん……」
チンピラB「いてて……クソ、俺らの楽しい飲み会を邪魔しやがって、ちっと痛い目見てもらうとすっか」
女武闘家「はぁ……わかり易い展開になっちゃったわね。ま、いいか、丁度イライラしてたとこだし、表出なさい」
チンピラE「んな必要ネエよ!!」ビュッ
7:
女武闘家「ふっ」ドガッ
 女武闘家の攻撃!
 ガッシャーーン
 チンピラEをぶっ飛ばした!
う、うわー! 外でやれよ外でぇぇ!! ひぇぇ!!
 ドガシャーー!!
女僧侶「っ!?」
チンピラA「こいつ!!」
チンピラB・F「おらぁぁぁぁぁ!!!」
ガガッ バキッ ドボォ!
------
表 大通り
 チンピラたちをやっつけた!
チンピラ共「お、覚えてやがれ!!」
女武闘家「全く、所詮チンピラか。捨て台詞までワンパターンね」
9:
ザッ
女僧侶「──」プルプル
女武闘家「あ。危ないトコだったねあなた、変なことされなかった?」ニコッ
女僧侶「……なや」ボソッ
女武闘家「え?」
女僧侶「ヒトの楽しみを邪魔すんなや!!!」
女武闘家「!?!?」キーン
女僧侶「せっかくヒトが久しぶりの一人酒満喫してる時にテーブルひっくり返しよってからに!! かえせ! アタシの楽しみをかえせ! むしろ弁償せえ!!」ヒック
女武闘家「な、なによあんたが絡まれてたからついでに助けてやったんでしょうが!!」
女僧侶「はんっ! こちとらあんなチンピラ慣れっこやわ! 大体先に手ぇだして騒ぎでっかくしたんはあんたやろが!!」
女武闘家「あんなチンピラぶっ飛ばして何が悪いっての! ほっといたら余計に面倒臭いことになるに決まって──」
ドンッ
女武闘家「わっ!」
少年「はぁっはぁっ!!」ダダダッ
10:
女武闘家「ちょ、ちょっとアンタ! いきなり何を」
追っ手「邪魔だ! どけ!!」ドンッ
女武闘家「わっと!!」ヨロッ
ダダダダダダ……
女武闘家「全くもう、ほんっと品のない街ねここは!」
女僧侶「今の奴ら──魔物?」
女武闘家「え? 今、なんて言った?」
女僧侶「今男の子を追いかけてった連中、魔物やわ。こんな街中で……しかも人間に変装してるやなんて──」
女武闘家「魔物……追っ手……人助け……!!」ピーン
-------
少年「はぁはぁはぁはぁ……」
追っ手A「ふふふ、追い詰めたぞクソガキが」
追っ手C「グフ──グフ──」
11:
追っ手B「手こずらせやがって、さあ、大人しく荷物を渡して死ぬか、殺されてから返して貰うか好きなほうを選ぶんだな」
少年「くっ……こうなったら」キィィン
追っ手A「なっなんだと!?」
追っ手B「このガキ、魔法使いかっ!?」
魔法使い「ベギラマぁぁぁ!!」カッ!
プスッ
追っ手A「……」
追っ手B「……」
魔法使い「じゃ、じゃあこれならどうだっ! メラミ! メラミッ!!」
ポンッ ポンッ ポンッ
魔法使い「でろっ! でろよっ! せ、せめてメラで! メラで! あーもうっ!!」
ポンッ ポンッ ポンッ
追っ手A「ふんっ!」ズガッ
魔法使い「ぎゃっ!」バタッ
追っ手B「脅かしやがって……今楽にしてやるっ!!」バッ
12:
女武闘家「はっ」ビュンッ
ドガッ
追っ手C「ギャフッ!!」
追っ手A「なんだ!?」
タタッ
女武闘家「フゥゥ……たっ!」ビュンッ
ドガッ
追っ手B「ぐふっ!!」
魔法使い「うう……げほ」
女武闘家「ったく男でしょ、しっかりしなさい」
追っ手B「へへ、やるじゃねえかお前さん」
女武闘家「へぇ、今のを食らって倒れないとこ見ると、やっぱりあんた普通の人間じゃないってこと?」
追っ手A「さあどうかな? それよりも俺達が用があるのは後ろの小僧だけだ。今そこをどけば見逃してやらなくもないが?」
女武闘家「お断りよ。こっちにとっちゃ一石二鳥のチャンスなんだから。絶対逃がさない」スッ
13:
追っ手B「しかタネェ……」ビキビキ
追っ手A「できれば街ナカデショウタイヲダシタクネエガ……」ミチミチ
魔法使い「あ、あうう……」
 魔物の群れが現れた!
魔物A・B「コロセェェェェ!!!」
女武闘家「はぁぁぁぁぁ!!!」シャッ
ガガガガガガガッ
魔物A・B「ぐぎゃぁぁぁぁ」ズシーン
 魔物の群れをやっつけた!
女武闘家「退治完了っと」
魔法使い「す、すごい……」
女武闘家「さて、大丈夫?」
魔法使い「あ、あの……いえ、ありがとう、ございます……助かりました」
女武闘家「いえいえ、こちらこそ助かっちゃった」
魔法使い「え?」
15:
女武闘家「ううん、なんでもない、こっちの話。ところでなんで街中にあんな魔物が」
魔物C「グァァァァァ!!」
女武闘家「! しまった!! まだもう一匹生きてた!?」
魔法使い「わああっ!!」
女武闘家「少年! 逃げなさい!!」
魔物C「グルル……ガアアアアア!!!」バッ
魔法使い「め、メラァァァ!!」
カッ
ボウッッ!!!
魔物C「ゴ──グァァァァァァ……」ゴォォォォ
女武闘家「……え?」
魔法使い「はぁっはぁっ、や、やった……うまくいった……」
女武闘家(さっきはてんでからっきしだったのにどうしていきなり──っていうか)
女武闘家(何今のバカみたいな威力のメラは……どう見てもメラゾーマ級だったけど)
16:
鳥山明の漫画思い出したわ
人助けするまでってやつ
http://www.amazon.co.jp/dp/B00GGDSQLA/
17:
魔法使い「さっきは本当にありがとうございました」ペコリ
女武闘家「悪いわね、宿を紹介してもらった上にお茶までご馳走になって」ズズッ
魔法使い「ここ最近街の治安があまりよくないので、下手な宿屋なんかに泊まると色々と厄介な事もあると思いますから……」
女武闘家「それそれ。昼間のチンピラといいさっきの魔物といい、この町ってそんなに物騒なとこなの?」
魔法使い「十年くらい前までは、本当に明るくて賑やかな、いい町だったんですけどね。この町の商人協会のトップが変って以来、この町の治安はどんどん悪くなっていったんです」
魔法使い「禁忌とされているご法度な品物、人身売買、盗品が堂々と出回りはじめ、最近は魔物の集団達と取引をしている……なんて噂も」
女武闘家「何それ。そんなの中央教会の連中が黙ってないんじゃないの?」
魔法使い「ここでは古くから商人達の力が強いんです。中でも商人協会の力は、この町に出向している中央教会の方々ではどうすることもできません。現町長も商人協会と癒着していて、町のことなら様々な方向に圧力をかけられますから」
女武闘家「なるほど、やがて犯罪者やチンピラ共がわらわらと身を寄せて、気がつけば悪人の吹き溜まりってことか」
魔法使い「……見てください、この町を」
女武闘家「ん?」キョロキョロ
18:
魔法使い「立派で綺麗な建物が多いでしょう。大陸でも有数の明媚な町並みとして昔から有名だったそうです。人々もすごく大らかな人ばかりで、様々な商人達が集い、大陸中はもちろん、外の国々の珍しいものも沢山集まってきて、交易の盛んな、豊かな町だった」
魔法使い「それを、今の商人協会のトップが台無しにしたんです……」
女武闘家「ふーん……」
女武闘家「で、そんな話をなんで私にしたわけ?」
魔法使い「……さっき僕の事を追いかけていた魔物達は、これを狙ってきたんだと思います」ガサッ
女武闘家「これは……」
魔法使い「僕が偶然手に入れた、協会と魔物達との取引の手紙です。魔族の文字ですが、なんとか解読してみたら、魔界に人間の奴隷を送り込み、見返りに様々なご法度品を受け取ると──」
魔法使い「そしてこれは、手紙と一緒に手に入れた奇妙な宝玉です」コトッ
女武闘家「な、なにこれ──随分と禍々しい雰囲気だけど」
魔法使い「──解りますか」
女武闘家「これ、どうするつもりなの?」
魔法使い「僕はこれを持って中央に訴えようと思い、使者を送ってもらうよう内密に手紙を送ったんです。これだけの証拠品を直接中央に提示すれば、流石に動かざるを得ない……」
魔法使い「そこで──女武闘家さんに、その腕を見込んでお願いがあるんです。どうか、中央から使者が来るその日まで、僕の護衛をお願いできませんでしょうか」
19:
女武闘家「はあ?」
魔法使い「恥ずかしい話なんですけど、僕はまだ魔法使いとしては未熟もいいところで……その、魔法のコントロールが下手なもので……」
女武闘家「ああ、じゃあさっきのすごいメラは魔力が暴発しただけだったんだ」
女武闘家(それにしたってとんでもない威力だったと思うけど……)
魔法使い「だから自分の身一つ満足に守れない……町外れに身を隠そうと思っていた矢先に襲われました」
女武闘家「なるほどねぇ」
女武闘家(んー厄介ごとに首突っ込んじゃった感じだけど……この子と一緒にいればトラブルのほうから転がり込んでくるかもしれないし、うまくいけば一気に目標達成も見えてくるかもしれないわね)
女武闘家「オッケー、いいよ。あんたの護衛、引き受けましょ。言っとくけど安くないからね?」
魔法使い「ほ、本当ですか!?」
女武闘家「こっちとしても都合がよさそうだし、ま、利害の一致も含めて、ね。じゃ、まあよろしく」スッ
魔法使い「あ……よ、宜しくお願いします」カァァ
ギュッ
20:
 女武闘家は、魔法使いと契約した!!
--------
商人協会 本部
男商人「で、まだなのですか、例の小僧を襲撃に行った連中からの報告は」
**「は──それがその……何でも街中でよそ者と思しきものが、魔物相手に大立ち回りを演じたとの情報が……」
男商人「全く……こういう時のためにわざわざ魔族の連中から雇っているというのに」
**「しかもその後、そのよそ者の武闘家は例の少年と行動を共にしているようで」
男商人「まさか護衛として雇ったとでも言うのですか?」
**「おそらくは」
男商人「面倒ですね……仕方ない。あの男です、あの男戦士に依頼なさい」
**「男戦士ですか、奴は、その……」
男商人「多少性格に問題があっても構いません。少なくとも腕のほうは確かです」
**「わ、わかりました。では早手配いたします……」ススッ
21:
男商人「ふん、それにしてもあの小僧は、どこから宝珠と手形を持っていったのでしょうか。一度魔界との流通経路を洗う必要がありそうですね」
男商人「こんなふざけた手紙を中央に出して、どういうつもりかは知りませんが」ピラピラ
男商人「──私の邪魔をすればどんな目にあうか、身をもって知ってもらうとしましょうか」グシャッ
--------
深夜
街中にて
女「あーあ遅くなっちゃったなぁ」トコトコ
女「全く最近物騒になってきてるのに、女性をこんな時間まで働かせるなんて……」
女「最近妙な変質者も出るって言うし……あら?」
女「だ、誰? なによあなた……」
??「誰だと問うか何かと問うか──その返答は今いずこ」ジャリ……
女「……なにいってるのよ。と、とにかく道をあけて! 大声だすわよ!」
??「大声、悲鳴、おお、何者にも換え難い極上の美酒……さて本日はどんなお味を楽しませてくれるのでしょうか」ゴソゴソ
??「さあ! ショー☆タイムのはじまりだーーー!!」バッ
女「──ぎ」
ぎゃああああああああああああああ!!!!
22:
 明け方
**「あっ!?」ダダダ
女「 」プルプル
**「もし、もし! 大丈夫ですか!?」
女「う?ん……か、かたい……あつい……すじきのこ……」ガクッ ブクブクブク……
**「わぁぁっ!? き、気をたしかにっ! い、医者だ! 医者だーー!!」
--------
 町外れ
魔法使い「すみません、買い物まで付き合ってもらってしまって」
女武闘家「あんたの護衛なんだから当然でしょ」
魔法使い「この先に師匠が昔使っていた空き家があるんです。今日からそこに身を隠そうと思ってるんですけど」
女武闘家「うーん人の多い場所から外れるのはよくないと思うんだけど」
魔法使い「だからといって昨日みたいな騒ぎになったら、町の人たちを巻き込むかも知れませんし」
女武闘家「ま、雇い主はあんただし、好きにして」
23:
魔法使い「そういえば、女武闘家さんはどうしてこの町に来たんですか?」
女武闘家「んーちょっと武者修行の最中でね。聞きたい?」
魔法使い「ちょっと興味があります」
女武闘家「……私の出身地は大陸の端っこにある小さな村なんだけどね。武術の盛んな土地で、あたしはそこの……まあ一族の纏め役みたいな家柄の娘だった。その家系の長には代々”拳聖”っていう称号が与えられるんだけど」
魔法使い「拳聖……聞いたことがあります。大昔に実在した武術の神様と言われる武闘家の称号とか」
女武闘家「そうそう。で、あたしはその時期拳聖候補なんだけどね」
魔法使い「え!? そ、それってすごいじゃないですか!」
女武闘家「その称号を継ぐために一人旅で修行をするのが掟なのよ。で、クリアしないといけない条件が二つあるの。5000体の魔物退治と、100の人助けをこなさないといけない。確かな実力と経験値を身につけるのと同時に、人徳を養うってことらしいけど」
魔法使い「ご、ごせん……」
女武闘家「この両腕の腕輪はね、その条件をクリアするまで外れない呪いのかかった封印の腕輪。こいつがある限りあたしは本当の力を抑えられている。クリアするまで拳聖の力を振るう資格はないってことね」
魔法使い「そ、その、あとどれくらい残ってるんですか」
女武闘家「昨日あんた助けたからあと4人、魔物退治が今4856……」
魔物「ガァァァァ!!!」
24:
魔物「ガァァァァ!!!」
 魔物が、あらわれた!!
魔法使い「わわっ!」
女武闘家「ふんっ!」ドコォ!!
 魔物を、やっつけた!!
女武闘家「これで4857体目」
魔法使い「い、一撃で……!?」
女武闘家「まあね。てゆうかこの辺りの魔物なんてあんまり強くないじゃない。あんまり弱すぎるとカウントされないから、最近までもうちょっと強い魔物の出る地域にいたし」
魔法使い「何でもいいってわけじゃないんですね」
女武闘家「最初のうちはスライムやドラキーばっかり狩ってたんだけど、50体目からはカウントされなくなっちゃったし」
魔法使い「大変だったんですね……あ、あの小屋です」
女武闘家「うっわ辺鄙なとこね、町から遠いから魔物も出るし、砂と岩ばっかり……こんなとこであんたの師匠は何して──」
 ジャリッ
魔法使い「な、なんだ!?」
女武闘家「誰か小屋の前にいる……」
25:
マントの男「そこの少年は例の魔法使いだな」
魔法使い「っ!? ま、まさか」
マントの男「俺の名は男戦士。とある方の依頼を受け、奪われた物品の奪還に参った」
魔法使い「く……」
男戦士「手形と宝玉、どちらも大人しく渡せば危険な目にあわずに済むが」
魔法使い「こ、断る! これは中央に提出する大事な証拠品だ……絶対に渡さない!」
男戦士「ならば仕方ない、実力で奪い取ることになるな」
女武闘家「──そうなると、護衛のあたしの出番ってわけね」パシッ
男戦士「女との戦いなど久しぶりだが……いいだろう、力ずくで倒すしかあるまい」
女武闘家「女だからって甘く見てるの? バカバカしい」
男戦士「お主武闘家か、なかなか腕も立ちそうだ……ふふふ、これは本気を出せそうだ」
女武闘家「ごたごた言ってないで、早く始めない? こっちはいつでもいいけど」ザッ
男戦士「一人の戦士として……そして」グッ
 ババッ
26:
女武闘家「ちょっ!?」
魔法使い「え、ええっ!?」
男戦士「一人の変態としてっ!!!」ムキムキィッ!
 E ビキニアーマー
 E あみタイツ
 E うさぎのしっぽ
女武闘家「な、なな、なにこいつ!?」
魔法使い「まさか最近町で噂になってる、例の変質者……!?」
男戦士「さあ、ショー☆タイムのはじまりだーーー!!」バッ
 変態……もとい、男戦士が現れた!!
男戦士「はああっ!!」シャッ
女武闘家「ぎゃああっ!!」バッ
女武闘家(く……き、気持ち悪い!! でもこの太刀筋……かなりの使い手!!)
男戦士「さあさあどんどん行くぞっ!!」ブンッ
 プラプラッ
男戦士「だあっ!」シャッ
28:
 プラプラッ
女武闘家(ぷ、プラプラって何!? 何なのこいつ!?)
男戦士「言っておくが下半身のガードの下は象さんのお鼻が素敵なことになっているぞ!」
魔法使い「ひぃぃっ!?」
女武闘家「うぐ……こうなったら!」ガッ
女武闘家「ふんっ」ブオッ
 女武闘家は持ち上げた岩を放り投げた!!
男戦士「ぬっ!」ガギッ
女武闘家(牽制で動きを止めてから一気に落とす!!)
女武闘家「はああっ!!」
 女武闘家は真空波を放った!
男戦士「ぐっ!」
女武闘家「ふぅぅ……はっ!!」ドゴォォッ!!
 女武闘家は腰を落とし、真っ直ぐ男戦士を突いた!!
男戦士「ぐ、は……が、岩石飛ばしに真空波……どうやら並みの武闘家ではないなお主」
29:
女武闘家「……」タタッ
女武闘家(正拳突きは完全に捕らえた筈なのに、大して効いてない……ビキニアーマーで全身ほぼ丸出しだってのに)
女武闘家(やっぱりこの変態、実力はとんでもないわね)
男戦士「ならばこちらも秘技を使わせてもらおう」スッ
男戦士「俺の剣の師匠は、様々な形で散り散りになっていた古代の勇者の技を纏め上げ、一つの流派として伝説の剣術を復活させた……」
 男戦士は大きく息を吸い込んだ!
男戦士「かつて存在したとされ、今もなお歴史にその名を残す伝説の勇者の名を拝借し、師はその無名の古流剣術に名をつけたのだ」
男戦士「古流剣術、ロト真剣流──」コォォ
男戦士「隼!!」シュバッ!!
 ブワッ!!
女武闘家「な──!?」
 女武闘家は全ての攻撃に備え、身構えた!
ドガァァァ!!!
女武闘家「ああああっ!!」
30:
魔法使い「女武闘家さん!!」
男戦士「……驚いた、武闘家がまさか大防御まで習得しているとは」
女武闘家「くっ……」タラッ
男戦士「それでも今のを完全には防ぎきれまい。ゆくぞっ!!」バッ
女武闘家「は、あああああ!!」バッ
 バシッ ガキッ! ズバッ ドガガッ シャッ!
魔法使い「あわわ……」
魔法使い(す、すごい戦いだけど……女武闘家さんはダメージが大きそうだし……)
 プラプラ プラプラ プラプラプラッ
魔法使い(なんかぷらぷらしてるっぽいし!!)
魔法使い(僕にできること……何か……だめだ、魔法のコントロールもできないんじゃ、サポートなんて……)
魔法使い「が、頑張れ! 頑張って!!」
女武闘家「はぁ、はぁ……」
男戦士「先ほどのダメージが決め手だな、この勝負先が見えた」
女武闘家「ぐっ」ギリッ
31:
男戦士「それにしてもお前、力をあまり出せていないようだが、どういうつもりだ?」
女武闘家「余計なお世話よ……はっ!!」シャッ
男戦士「むっ!」
 女武闘家は疾風の如く攻撃した!!
男戦士「ぐ、ふ!」
女武闘家「はぁぁぁっ!!」ドガガガガガッ
 女武闘家は爆裂拳を放った!!!
男戦士「が、ががががっ!!」
男戦士(ふっ、一撃の重さでなく度と手数で来たか……だが!!)
男戦士「く……古流剣術ロト真剣流──」
女武闘家(っ! 来るっ!)ババッ
男戦士「猛虎!!」グアッ
 ズババババッ
 男戦士は構えた剣を振り抜いた!!
女武闘家「あああっ!!」ブシュッ!!
32:
 ガクッ
魔法使い「女武闘家さんっ!!」タタッ
男戦士「隼斬りを凌駕する度で、かつ威力を落とさずに斬撃を浴びせる”猛虎”をまともに食らったのだ。大防御とて防ぎきれん」
女武道「ぐ──ぁ……」ポタ ポタ……
男戦士「その出血量で動けば、命を落とすぞ武闘家」
女武闘家「あ、ぐ……ぅ……」ガクガク
 ドサッ
 女武闘家は気を失った!
魔法使い「ああっ!」
男戦士「勝負、あったな……う、ぐ……!?」ズシッ
男戦士(く、こ、これだけの重さの攻撃を爆裂拳で連発するとは……この女一体)
男戦士「やはりこの場でケリをつけておくべきだな」スッ
魔法使い「お、お前まさか!」
男戦士「はああっ!!」バッ
パキン
33:
 男戦士の股間のガードが外れた!!
 ビキーン
男戦士「さあ、強き女よ、この俺の聖剣を見るがいいっ!」バッ
 ぐーるぐーる
魔法使い「う、うわっ!?」
男戦士「ほらほら、早く起きないと、顔の上でこんなことしちゃったり」モリッ
魔法使い「ひぃぃぃっ!?」
男戦士「おにーさんの熱くて硬いすじきのこだよーー! はーっはっはっはー!!!」フリフリフリ
魔法使い「な、何してんだよあんた!!」
男戦士「何って露出ダンスではないか ほれっ君も見たまえ!! いよいよ先っちょがむずむずしてきたぞ!!」ボキーン
魔法使い「ひっ!! ろ、露出ダンス……!?」
男戦士「俺は一人の戦士の前に一人の変態だからな! そして変態は紳士であるべき! 弱いものいじめも人殺しも断じて行わん!! そして弱いお前に剣を振るうわけにはいかんので……変態的お仕置きをすることにしよう」ニヤッ
魔法使い「う、うあああ……」ダラダラ
男戦士「それとも、眠れるこの少女の前でダンスを踊り続けたほうが効果的かな!? んーーっ!?」ブラブラブラ
魔法使い「うあああああああああああああ!!!!!!」
34:
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男戦士「よし、確かに受け取ったぞ」
魔法使い「く、くそ……」ダラダラ
男戦士「やめておけ。お前では俺には勝てん。呪文のコントロールを身につけておればまだマシだろうがな」
男戦士「女が目覚めたら伝えておいてくれ、俺はこの町に当分滞在している。真の実力を出す気になったらまた再戦してやろう、と」
魔法使い「え──?」
男戦士「それと起きている間に俺のショーを見たければいつでも大歓迎だとっ!!」
魔法使い「それは絶対嫌だ!!」
男戦士「はははははーっ! じゃあな少年、今度会う時はもう少し男っぷりを上げておくがいい」タタッ
魔法使い「な──なんだったんだ一体……」
魔法使い「っ! そ、そうだ、女武闘家さん」タタッ
魔法使い「ひどい傷だ……とにかく、ここには薬草もないし、すぐ宿屋に運んで僧侶か神父さんを……」
??「あれ……あんたらどしたんそれ」
魔法使い「──え?」
36:
--------
男戦士「これが約束の品物だ」
**「うむ確かに。流石は伝説の剣術を継承する戦士だ。こちらは約束の報酬になる」ジャラッ
男戦士「しかし女子供から手形と宝玉を取り返すだけでこれほどの額を貰えるとは」
男戦士「よほど重要なものなのだろうな」
**「貴様が知る必要もあるまい。傭兵を続けたければ尚更首を突っ込まんことだ」
男戦士「まあ何でもいいが、これで仕事は完了したな」
**「で、例の武闘家と魔法使いは殺したのか?」
男戦士「何度も念を押したはずだ。俺は殺しはしないとな」
**「殺せばさらに報酬を弾むとも言っておいたと思うが」
男戦士「そこまで金に堕ちてはいない。それではまたいずれ」
**「……証拠を知るあの魔法使いだけでも消えていれば都合がよかったのだが。さて、旦那様に報告に行くか」
--------
魔商人「約束の品と手形は取り返したか?」
男商人「勿論ですとも。この通りこちらに」スッ
魔商人「フン、いいだろう。そいつはしばらくこちらで守っておけ。必ず守り抜くのだ」
37:
男商人「魔界にお持ち帰りになられたほうがよろしいのでは?」
魔商人「魔界ではそいつを狙う輩が多すぎる。ここならその宝珠の本当の価値を知るものなぞおるまい」
男商人「さて……それではこちらが今回の目録にございます」
魔商人「──よし、いつも通りだな。それではこちらも前回と同じだ」スッ
男商人「ははっ、魔族の麻薬、ダーククリスタル、呪いの武具の数々……いやはや、どれもこちらでは貴重なものばかりでございます」
男商人「それでは本日はこれにて……」ススッ
***「──良いのですか? 人間と取引など」
魔商人「人間共も使いようというわけだ。ああいう欲深い人間は我々に利益をもたらす……ククク……集まった魂は今いくつだ」
**「まもなく800体に届くかと」
魔商人「順調だな。姿を潜めて魂を集めるには、ああいう手合いから奴隷を集めるのが効率がいいのだよ。バカ正直に人間狩りに興じていては、制約に触れるリスクも大きく、時間と労力を消費するだけだ」
***「それと例の件ですが、あの”転生体”は現在こちらに護送中です」
魔商人「よし、奴と宝珠、どちらも我が手の中というわけだ。両方を人間界に置いておくのは少々不安が残るが、まあ引き逢うこともあるまい。むしろ他の連中に手を廻されるリスクを回避するべきだからな」
魔商人「くく……ははは……すべてが上手くいっている……」
魔商人「はーっはっはっはっは!!」
38:
 女僧侶はベホマを唱えた!!
女僧侶「はい、これで大丈夫やな」
女武闘家「つつ、まだ少し痛む……」
女僧侶「あれだけの重傷やで? それにアンタ回復呪文慣れてないやろ。まあちょっとま体がパニックになる思うけど、気にせんと安静にしとき」
魔法使い「回復呪文か……すごいや」
女武闘家「ありがとね、助けてもらっちゃって」
女僧侶「何いうとんねん、こっちは腐っても僧侶やで、けが人の治療は職務内やって。それにアンタには一回会いたかったし」
女武闘家「え?」
女僧侶「昨日はごめんな、ウチ酒飲んどる時に邪魔されるとカーッとなってまうねん。あの時はつい言い過ぎたわ。それと、チンピラ追っ払ってくれてありがとーな」ニコ
女武闘家「あ──」
 女武闘家の腕輪のカウントが 一つ増えた!!
女武闘家「いえ、こちらこそ、本当にありがとう」ニコ
女僧侶「にしても一体何があったんよ? かなりズタズタにされてたけど」
女武闘家「ああ、あの変態戦士……」ギリッ
魔法使い「お、思い出しただけで寒気が……」
39:
女武闘家「あんな奴があれだけ強いなんて、世の中おかしいんじゃない? 次会った時は自慢の聖剣ごとブチ抜いてやる……」メラメラ……
魔法使い「結局……手形と宝玉は奪われてしまいました」
女武闘家「あーあ護衛を引き受けておきながら不甲斐無い話だわ」バタッ
魔法使い「いえ、こうして命が無事なのは女武闘家さんのお陰ですから……」
女僧侶「何や事情がありそうやなぁ、何やったら手伝ったろか? ウチこの町にしばらく留まるんやけど、今のとこ結構暇してるから、できることなら力になるで」
魔法使い「ほ、本当ですか?」
女武闘家「アンタまだ何かするつもりなの?」
魔法使い「……僕はあの町を昔みたいな町に戻したい。そのためには、裏で牛耳っている商人協会のトップ……男商人を何としても引き摺り下ろさなきゃいけないんです」
女武闘家「で、また別の証拠品を掴みたいってわけね。なんでアンタそこまでするの? 今回の事で明らかに自分の手に負えることじゃないって解ってるでしょ」
魔法使い「──」
女武闘家「……」
女僧侶「……」
魔法使い「……僕の師匠は、同じように商人協会の悪事を明るみにしようとして、殺されたんです」
魔法使い「連中を中央教会に突き出そうとしたら逆に罠に嵌められて……最後は町から離れた場所で、魔物に体中をズタズタにされていました」
女僧侶「ひどい……」
40:
女武闘家「なるほど、師匠の敵討ちでもあるってわけね」
魔法使い「──」
女武闘家「ま、いいか。それで、次はどうするの?」
魔法使い「え?」
女武闘家「忘れたの? あたしあんたに雇われてるんだから、あんたが何かしたいってんなら付き合うのが役割だと思うけど」
魔法使い「え、あ、で、でも」
女武闘家「それにあの変態戦士には是非ともリベンジしたいし、腕輪の封印が解けるまではこの町で滞在する予定だったし。付き合ってあげるわよ」
魔法使い「い、いいんですか……あ、ありがとうございます!」
女僧侶「なんやその変な腕輪呪われとったんやな。言うたら解呪したったのに……」
女武闘家「あ、これは違」
 女僧侶は ザメハを唱えた!
 腕輪が怪しい光を発した!
女僧侶「え?」
 カッ!!
 うにょ?……
41:
女僧侶「わ、わっ! ちょ、な、何これ!?」
女武闘家「あっちゃ?、遅かった……」
魔法使い「うわっ! な、何なんですかこれは!?」
 うにょうにょうにょにょ?
女僧侶「ち、ちょっとこいつらっ! からっ、絡み付いて! ああっ!!」ジタバタ
女武闘家「何ていうか……表向きはインチキを防ぐための仕掛け」
魔法使い「う、裏向きは?」
女武闘家「──何代か前の拳聖の悪趣味らしいわ」
 腕輪から出現した無数の触手が女僧侶を襲う!!
女僧侶「ちょっと! た、たす、たすけ、ああもうどこ入ってきとんねやっ、あ、あんっ!!」ビクッ
女武闘家「安心して、死んだりしないし取って食われたりもしないから。ただちょっと全身を弄くられるだけよ」
女僧侶「こ、こんなんおかしい! おかしいて! あ、ああっ、ふああっ! ちょ、ま、そ、そこは、そこヤバ、ひうっ!?」
魔法使い「──ゴクッ」ハァハァ
女僧侶「あっあ、あ、あああああああ???っ!!」
42:
--------
 数日後
魔商人「フン、達成は目前だというのに次の人間がまだ集まらんのか」
男商人「申し訳ありません……先日の騒ぎが原因で、町の者達の中に魔物が街中に潜んでいるという噂が流れておりまして……奴隷として拉致してきている行方不明者も、魔物に食われているのではないか、などと……」
魔商人「人間共の情報操作くらい貴様には造作もなかろう。それに原因は宝珠と手形を盗まれた貴様らの不手際だろうが!」
男商人「は、は、ははあっ!!」
魔商人「まあいい、一刻も早く次の魂を収めるんだ、いいな!」
男商人「は、はいっ!!」
男商人「く……知恵が働くだけの下っ端魔族の分際で偉そうに……しかし奴がいなければこれだけの利益を得られませんでしたし……全く」ブツブツ
**「旦那様」
男商人「何ですか」
**「魔界の連中との取引を進めていた者たちから連絡です。珍しい物品を魔界で発見したとか」
男商人「ほう、それはいいですね。どれ、一つ見せてもらいましょうか」
--------
**「こちらになります」コト
男商人「装飾の施された箱、ですか。なかなか面白いデザインですね」
43:
 パカッ
男商人「中身は空……この箱はどのようなものですか?」
**「詳細は現在鑑定中ですが、魔界で何かを封印するために使われていたものではないかと思われます」
男商人「成る程。こういうものを骨董品感覚で集めている者もいます。良い取引相手が見つかり次第利益に変えなさい」
**「はっ」
男商人「さて、私は今晩のお楽しみといきますか……」
ガチャ バタン
 シュゥゥゥゥ……
 ぞぶ……ぞぶぞぶぞぶ……
数日後 街中
酔っ払い「う、うう……ありがとうございます……」
嫁さん「全く酔いつぶれて人様に迷惑かけるなんて何考えてんだいアンタ!!」
女武闘家「あはは、いいっていいって。それじゃ、あたしはこれで失礼します」
嫁さん「あっ、本当にありがとねお嬢さん! わざわざこんなロクデナシ世話してくれて!」ペコペコ
女武闘家「オジサン、飲み過ぎには注意してね」
44:
酔っ払い「う、うう、うげ──」
--------
女武闘家「……あー酒臭かった」
女武闘家「よし、あと2人、あと2人で片方達成……」
女武闘家「偶々ああいうのがいたから助けられたけど……まあばったり遭遇ってのはレアケースよねぇ」
魔法使い「女武闘家さん!」タタタッ
女武闘家「あ、どうだった?」
魔法使い「駄目ですね……噂以上の話は聞けませんでした」
女武闘家「こっちも同じく。やっぱり噂は噂なのかなー」
魔法使い「それでも、これだけはっきりした噂になっているところを見ると、あながちデマでもないかもしれませんね」
女武闘家「”悪魔憑き”かぁ……」
--------
 数時間前
女武闘家「悪魔憑き?」
魔法使い「今町で噂になってるんですよ。悪魔に乗り移られて発狂してしまった人が相次いでるって」
45:
これはできる>>1
46:
女武闘家「何それ、全くあんたの住んでる町はそんな怪奇まで呼び寄せてるワケ?」
魔法使い「まあ、あくまで噂ですから……それに先日僕が魔物に襲われたのを大勢の人が見ていたせいか、魔物が街中に潜んでる、なんて話もありましたよ」
女武闘家「うーん……でもその悪魔憑きが本当だとしたらさ、その悪魔をあたしがやっつければ、誰かを助けられるかもしれないわね」
魔法使い「き、興味、あるんですか?」
女武闘家「面白そうじゃん。さ、そうと決まれば情報収集行きましょ」
魔法使い「え? あ、ぼ、僕も!?」
--------
女武闘家「ま、思わぬ人助けが出来たから、こうして出てきたのも無駄でもなかったけど」
魔法使い「どうしますか? もう少し情報を集めてみます?」
女武闘家「うーんそうねぇ」
老人「おい、そこのお二人さん……」
女武闘家&魔法使い「「ん?」」
老人「ふぉふぉふぉ。お主らさっきから町中嗅ぎ回っとるようじゃが、何やっとるんじゃ?」
女武闘家「何よいきなり話しかけてきて……」
老人「まあまあ聞きなされ。例の悪魔憑きの噂を調べ取るんじゃろ?」
魔法使い「え? ま、まあ……」
47:
女武闘家「ちょっとなんであんたそんなコト知ってるのよ」
老人「ふぉふぉふぉ。あれだけ聞き回っとたら、ワシみたいな耳ざといモノは気付くもんじゃて。どうじゃ? このワシが纏めた最新の情報を売ってやっても良いが」
女武闘家「売るって、あんた一体何者?」
老人「まあ、好奇心に任せて情報屋の真似事を道楽でやっとるもんじゃ」
女武闘家「情報屋ねぇ、で、いくらで売ってくれるの?」
老人「そうさのぉ、5000Gってとこかの」
魔法使い「ごっ、ごせんゴールド?」
女武闘家「はぁ!? そんなに払えるわけないでしょ!」
老人「だろうと思ったよ。そこでじゃ、ひとつワシと勝負せんか?」
女武闘家「勝負?」
老人「ふぉふぉふぉ、ワシは元盗賊でな、オイボレても器用さと素早さにはまだまだ自信があるんじゃ。見たところお嬢ちゃんは武闘家じゃろう。どれ、素早さ勝負でどうじゃ? 勝ったらタダで教えてやるわい」
女武闘家「へぇ……持ちかけてくるって事はそれなりの自信があるってことよね、面白いじゃない」
老人「そのかわり負けたら……そうじゃのぉ、お嬢ちゃんの尻でも触らせてもらおうかの」
魔法使い「え゙っ!?」
49:
女武闘家「ゔ……と、とんだスケベじじいね……」
老人「どうじゃ? 何なら尻でぱふはふさせてくれたらタダで教えてやってもいいぞ? ふぇふぇふぇ!」
女武闘家「い、いいじゃない、やってやるわよ!」
魔法使い「えっ!? や、やるんですか!?」
老人「決まりじゃ! ほれ、気の変らんうちに準備するぞ! おい少年、ちょっとこっちへ」
魔法使い「は、はい」
老人「ここに30G硬貨二枚と50G硬貨が一枚、100G硬貨一枚がある。この四枚の硬貨を少年の手に乗せる。ワシら二人は少年を真ん中にそれぞれ5メートルずつ離れて、合図と共に少年の掌の硬貨を取りに行く」
老人「硬貨は何枚でも取ってよいが、早い者勝ち、故意に相手の行動を邪魔すれば反則負け、地面に取りこぼしたコインは無効、取れた硬貨の合計額が大きいほうが勝ちじゃ」
女武闘家「……いいわ、それでいきましょう」
老人「ふぉふぉふぉふぉ、イカサマを防ぐために、互いに財布は少年に預けようかの」
--------
老人「それでは……少年、合図を頼むぞい」
魔法使い「は、はい……」ゴクッ
女武闘家「──いつでもいいわよ」
老人「──」ジャリ……
女武闘家「──」ジリ……
50:
魔法使い「……はいっ!!」
 シャシャッ
魔法使い「!?」
 ババッ シュバババッ!!
老人「っ!!」
女武闘家「っ!!」
魔法使い(ふ、二人ともいつのまに……!? て、掌のコインも消えてる……)
老人「……」
女武闘家「──う、うそでしょ……」
老人「ふぇふぇふぇ、ワシの勝ちじゃな」ジャラッ
魔法使い「お爺さんが、100G硬貨と30G硬貨二枚……」
女武闘家「く、くく……」
老人「ふふふ、何が起こったか説明してやろう少年。お嬢ちゃんは先に少年の元に辿りつき、最初に100G硬貨を手に取った。しかしその次に50G硬貨に手を伸ばした瞬間」
女武闘家「あたしの手の中から100G硬貨を”盗んだ”のよね」
老人「!? あ、あの瞬間を見抜いておったか……たまげたのぅ、見抜けたのはお前さんがはじめてじゃわい」
51:
女武闘家「あたしの”行動”を妨げたわけじゃないから、ルール上でも問題なし。それにあたしが100G硬貨を取っている間に、あなたは30G硬貨を二枚取っていた。どの道純粋な素早さ勝負でも、あたしの負けね」
魔法使い(あの一瞬でそんなやりとりを……僕なんかいつの間に二人が迫ってきたのかさえ解らなかったのに)
老人「さーてそれじゃあお楽しみタイムじゃ」ニヤッ
女武闘家「う……」ビクッ
魔法使い「あ──」
--------
女武闘家「く、屈辱……恥辱……」プルプル
老人「いやーすっかり堪能させてもろたわい! お嬢ちゃん見立て通りいい尻をしとるのぉ」
魔法使い「うう……あんな……顔を埋めるなんて……」
女武闘家「絶対夢に出るわねこのスケベジジィ……その時は全力でぶっ飛ばしてやるわ……」
老人「さて、ええ尻を触らせてくれた礼じゃ。約束通り例の悪魔事件の情報をくれてやるわい」
女武闘家「勿論よ、あそこまでしといて今更何も知らないとか言い出したら攻ぶん殴るからね」
老人「まず悪魔の噂の真偽じゃが……この数日のうちに原因不明のこん睡状態に陥った者が数名おるんじゃ」
魔法使い「その人たちが悪魔憑きの被害者ですか?」
老人「それはまだはっきりしとらんが、そのもの達にはいくつかの共通点があるんじゃ。まずは殆どが若い男という事。中には女もおるから絶対条件ではないかも知れん。第二に、全員が独り身や天涯孤独、あるいは両親に先立たれたり、恋人と別れたばかりのものもおったの」
52:
女武闘家「それって要するに、何らかの寂しい思いをしてるってこと?」
老人「そうじゃろうな、そういった心の隙間に付け入っておるのかもしれん」
老人「最後に、こん睡状態の者達の殆どが、この町の南西ブロックに住んどるということじゃ」
魔法使い「南西ブロック……」
女武闘家「つまり南西ブロックに住んでいる若い男、それも最近誰かと別れたり、何かを失った人物を調べれば」
老人「行き当たるかもしれん」
女武闘家「よし、それならもう一度南西ブロックで情報収集といきましょう」
魔法使い「そうですね」
--------
女武闘家「ってなんであんたが着いて来るのよ!」
老人「面白そうじゃからのう。このオイボレもちっと首を突っ込んでみたくなっての」
魔法使い「……」ムスッ
老人(ふぉふぉふぉ、お気に入りの女子の尻を良い様にされて悔しいかの?)ボソボソ
魔法使い(え、えっ!?)ドキッ
老人(見ておればモロバレじゃ。ま、恋路には疎そうな女子じゃて、頑張る事じゃな)
魔法使い(う、ううっ)カァァ
53:
女武闘家「ちょっと何やってんのよ二人して」
老人「何でもないわい」
女武闘家「それより老人さん。さっきの勝負だけど、今度やる時は絶対負けないからね」
老人「ほぉ、リベンジしたいとな?」
女武闘家「当然よ。現役の武闘家が引退した盗賊に負けたなんてとんだお笑い種よ」
老人「安心せい、次やる時はお嬢ちゃんの勝ちじゃろう。拳聖に本気を出されたら、オイボレたワシなんぞがどうひっくり返ったって勝てやせんわい」
女武闘家「!」
魔法使い「お、お爺さん女武闘家さんのこと知ってるの?」
老人「その腕輪は東の大陸の沿岸部にある武術の村に伝わる封印の腕輪じゃろ。これでも若い頃は盗賊として色んな場所を冒険したもんでの。余所の国の伝説なんかもよく聞いたもんじゃ」
女武闘家「まさか気付いてて話しかけてきたってわけ?」
老人「ふぉふぉふぉ、オイボレてもこの好奇心はどうも止められん」
魔法使い(そういえば、かつて世界の半分を騒がせた伝説の盗賊がいたっていう話を何かで読んだことがあるけど……まさかなぁ)
--------
 南西ブロック 広場にて
女武闘家「夜だってのに賑やかねぇ」
魔法使い「でもこの辺りは、商人協会の本部が近くにありますから、あまり長居はしないほうがいいかもしれません」
54:
女武闘家「こんな時間だし、顔なんかよく見えないでしょ。それよりどこで情報収集すればいい?」
老人「もう夜も遅い、明日夜が明けてからという手もあるぞい」
女武闘家「んーとりあえず情報収集の基本は酒場って相場が……あっ」
女僧侶「あれ」
魔法使い「あ、女僧侶さん、こんばんは」
老人「ふぉ? お知り合いか」
女僧侶「何? なんなんこのお爺ちゃん、てゆうか、あんたらこんな時間に何しとん?」
女武闘家「それはこっちの台詞よ。聖職者がこんな時間にウロチョロ夜遊びしてていいの?」
女僧侶「アホ。ウチは今仕事ちゅうや、例の悪魔騒ぎでな」
魔法使い「女僧侶さんも悪魔憑きの噂を?」
女僧侶「いや、アレは噂ちゃう。この辺りにホンマに悪魔が潜んどる筈やねん」
老人「流石僧侶じゃな、気配で解るのか?」
女僧侶「まあそんなとこや」
魔法使い「実は僕たちも──」
55:
--------
 路地裏に移動
女僧侶「成る程なぁ」
女武闘家「で、さっきのそっちの話だけど……ホントに悪魔はいるの?」
女僧侶「正確には”悪魔”かどうかは解らへん。ただ、事件の起った場所の周辺には、何か異様な気配の残り香があったねん。どう見てもあれは邪気の類やで。せやから何かが起っとるのは確実やろな」
魔法使い「核心に近づいたようなそうでもないような……」
女武闘家「十分じゃない? 少なくともこれでハッキリしたわ。確実にこの町の南西ブロックを中心に何かが起っている」
女僧侶「せやかて……若くて、寂しい想いをしてる南西ブロック在住の男……こんなん探そ思たらなかなか難しいんちゃう?」
魔法使い「一度広場に戻るか、やっぱり酒場にでも行ってみますか?」
 ──!
老人「む?」
女武闘家「どうしたの老人さん?」
老人「しっ──今のは……悲鳴じゃ!!」
56:
--------
数分前
女遊び人「あーあ、疲れちゃったぁ」カツカツ
女遊び人「あの商人さん口ぶりは知的なのに顔と中身はスケベなのよねぇ」
女遊び人「まあでもお給料いいしぃ、しばらくはあそこの接待で稼げるわねぇ」
女遊び人「はぁ、あの子はいい子に寝てるかしらぁ」
ガチャ
女遊び人「ただいまぁ?」ボソボソ
 ユラッ
少年「──」
女遊び人「あらまだ起きてたのぉ? ママのお仕事夜遅くなるから寝てなさいって言ったじゃなぁい」
少年「ママ……」ユラッ
女遊び人「どうしたの少年ちゃん? なんか暗いけど、気分でも悪いぃ?」
少年「……ギ、ギギ」ブルブル…
58:
少年「ギギギギギ──!!」バッ
女遊び人「ひっ!?」
ドガッ
女遊び人「きゃっ!!」ダンッ
少年「ハァァァァァ」
女遊び人「ど、どうしたの!? ママを殴るなんて……少年ちゃん!?」
少年「──」オオオオオオ……
 少年の周囲に、黒い霧が現れた!
 霧がおぞましい魔物の姿をかたどっている!
 
 霧の魔物が現れた!
少年「ガガッ!!」
女遊び人「きゃあっ!」
少年「フゥゥゥ……」
59:
女遊び人「そんな……少年ちゃぁん!」
ヌゥゥ……
魔物「ケタケタケタケタ!!」
 魔物は笑っている!
女遊び人「くっ……少年ちゃん、ママが……ママが助けて、あげるからねぇ……」ヨロッ
 シュウッ
 魔物は少年の体内に戻った!
少年「ガアッッ!!」
女遊び人「っ!!」
60:
シャッ
少年「!?」
女武闘家「ふんっ!」
 女武闘家は、少年を取り押さえた!
 女武闘家が駆けつけた!
 魔法使いが駆けつけた!
 女僧侶が駆けつけた!
 老人が駆けつけた!
老人「大丈夫かのママさん」
女遊び人「あ、あの、貴方達はぁ……」
魔法使い「危機一髪ってところでしたね」
女僧侶「この子や……この子からあの邪気が感じられるわ」
女武闘家「いきなりビンゴってわけね。これも日ごろの行いがいいからかな?」
少年「ググ……」バッ
女武闘家「鈍いっ!」ガシッ
 ブンッ
 女武闘家は少年をぶん投げた!
68:
少年「グヘッ!」ダンッ
女武闘家「はっ!」
女僧侶「待って! このまま攻撃したらあかん!」
女武闘家「えっ!?」
少年「ぐ、ぐるる……」
女僧侶「ママさん、あの子はあんたの息子さんやんな?」
女遊び人「え、ええ……」
女僧侶「あの子から何か霧とか影とか……モヤみたいなのは出たりせんかった?」
女遊び人「そういえば出てきましたぁ……なんか怪物みたいな形してましたけどぉ」
魔法使い「じゃあやっぱり」
女僧侶「実体のない思念体タイプの魔物。あの子の中におるかぎりこっちは手出しできひん。どうにかして引き摺りださな……」
女武闘家「どうすんのよそれ、実体がなけりゃ殴れないじゃない」
女僧侶「本体さえ出せれば攻撃呪文で何とかなるわ。よし、女武闘家ちゃん、あの子取り押さえられる?」
女武闘家「まあ体自体は子供の力だしね……」
女僧侶「取り押さえてさえくれたら、ウチが本体引き摺りだすから。後は魔法使いクン、君が呪文で一発ドカンや」
69:
魔法使い「え、ええっ!? 僕ですか?」
女武闘家「だ、大丈夫なのそれ……」
女僧侶「あの子を傷つけずに中の魔物だけを倒すなんて不可能やし、それなら引っ張り出して攻撃するしかないわ。ウチが強引に繋ぎとめてる間に誰かが攻撃呪文を使わな、倒されへんで」
魔法使い「わ、わかりました、やってみます」
女武闘家「──それしか、手はないみたいね」
老人「方針が固まったのならさっさとしたほうがええ。あの手の魔物はとり付いた生き物の生命力を吸って力を蓄える輩が多い筈じゃ。あまりもたもたしてもおれんぞ」
女武闘家「よし、行くわよ!」バッ
少年「ぐっ! ががっ!」
 女武闘家は少年を押さえつけた!
女武闘家「女僧侶! 押さえた!」
女僧侶「よっしゃ! そのまま……ニフラム!!」
 女僧侶はニフラムを唱えた!
 少年をまばゆい光が包み込んだ!
少年「ぐ……グゴォォォォ」
 シュゥゥゥゥ……
 ぞぶ……ぞぶぞぶぞぶ……
70:
 霧の魔物が姿を現した!
少年「──」ガクッ
女僧侶「今や! 魔法使いクン!」
魔法使い「よ、よーしっ! メラッ!!」
 ポフッ
女僧侶「あ、あれ?」
魔法使い「メラッ! メラッ! く、くそ! ヒャド!」
女武闘家「あ、あんたまたぁ!?」
霧の魔物「ぐ、グガアアアアア」バッ
女僧侶「! あかん!」
 フッ
 霧の魔物の姿が消えた!
女遊び人「う、うぐっ!?」
老人「うっ!?」
71:
女遊び人「う、うう……」ブルブル
老人「いかん! 今度はこっちに乗り移りよった!」
女僧侶「も、もう一回や! ニフラム!」
女遊び人「ううう……ぐ、ぐる……!」バッ
 キラーン!
 女僧侶の呪文は光のカベに反射した!
女僧侶「な──ま、マホカンタ!?」
老人「この女子、ただの遊び人ではない! やっかいじゃぞ!」
女遊び人「ぐぅぅぅぅ!!」
 女遊び人はメラミを唱えた! 女遊び人はベギラマを唱えた!
 ドドドドドドド!!
女武闘家「うぐっ!!」
魔法使い「わああっ!!」
女僧侶「攻撃呪文の嵐やわ……きゃっ!」
女武闘家「でも威力はそれほどでも……わっと!」
魔法使い「きっと魔力の絶対値が低いんですよ。それに操られてる状態ですし……だから出力が全然でない」
73:
女僧侶「きゃあっ!」
ドォン!!
 女僧侶は気を失った!
魔法使い「女僧侶さん!? しっかり! ぐうっ!?」
ドガッ!!
女武闘家「くっ……」
老人「お嬢ちゃん、どうにかして拳聖の力を使えんのか?」
女武闘家「えっ!?」
老人「拳聖の拳にはその名の通り聖なる力が宿ると聞いたことがあるぞ。拳聖の力を使えれば、あの女子の中の魔物にだけダメージを与えることも可能ではないか?」
女武闘家「──できると思う。でも、この腕輪で私の力は半分近く抑えられているし、正式な拳聖の称号はまだ認められていないから……かなり難しいわね」
老人「じゃが他に手はない、魔力が切れてしまうと、女子の中の魔物は今度は生命力を吸いにかかるじゃろう。一刻も早く打開せんとまた犠牲者が出てしまうかもしれん──うぐっ!」
ドンッ!!
女武闘家「──」
魔法使い「くそ……僕が……僕がさっきちゃんと呪文を成功させていれば……!」
女武闘家「魔法使い君、あたしが必ずあの人から魔物を引きずり出すから、今度こそ呪文を成功させなさい」
74:
魔法使い「え? あ、えっと……」
女武闘家「──返事しろ!!」
魔法使い「は、はい! 必ず!!」
女武闘家「はぁぁぁっ!!」
 女武闘家は精神を統一し、大きく息を吸った!!
女遊び人「ぐる、ぐるる……」
 女遊び人はイオを唱えた! しかし魔力が足りなかった!
老人「! いかん、魔力が切れた! こうなったら魔物が生命力を吸い出してしまうぞ!」
魔法使い「女武闘家さん!」
女武闘家「──呪文が止まって好都合よ」
少年「う、う?ん……」モゾモゾ
老人「おお、少年! 気付いたかの」
少年「ぼ、僕一体……あっ、ま、ママッ!!」
女遊び人「ぐ、ぐげげげげ!!」
75:
 女遊び人は女武闘家に飛び掛った!!
老人「大丈夫、お前さんの母親は大丈夫じゃ」
女武闘家「──! はーーーっ!!」
 ドガァッ!
 女武闘家は聖なる力を篭め、真っ直ぐ相手を突いた!!
女遊び人「がほぉっ!!」
 ぞ……ぞぶぅぅっ!!
霧の魔物「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!」ジタバタ
魔法使い「い、今だ! ギラーーーー!!」
 プスン
魔法使い「あ、ああ……」
女武闘家「ああっ! もうっ!!」
老人「し、失敗じゃ!」
霧の魔物「ぎゃはぁぁぁぁぁっ!!」バッ
 霧の魔物は少年に襲い掛かった!
77:
少年「う、うわあああっ!!!」
魔法使い「あ、危ないっ!!」
女僧侶「バギマ!!!」
 女僧侶はバギマを唱えた!!
 ゴォォォォォッ!!
霧の魔物「ぐ、グヘェェェェェ!!」
 シュゥゥゥ
 霧の魔物を やっつけた!
女武闘家「女僧侶!」
女僧侶「あたた……なんとかなったみたいやな……」
--------
少年「ママァ!!」ギュッ
女遊び人「本当にどうもありがとうございましたぁ」ペコッ
女武闘家「全くこんなやっかいな事になるなんて思わなかったなぁ」
女僧侶「ま、みんな怪我で済んだんやからよかったやん」
78:
老人「しかし家の中は滅茶苦茶じゃの」
女僧侶「ああ 今回はウチが正式に討伐の手続きしとるし、中央教会から保証金出るから大丈夫やで」
魔法使い「……」グス
女武闘家「──何よまだベソかいてんの?」
魔法使い「僕がもっとしっかりしていれば……あそこで呪文を成功させていれば……」
女武闘家「あのねぇ、あんたはあんたなりに頑張ったじゃない。そりゃ努力は実らなかったけど、だからっていつまでもしょげてんじゃないの。後悔してるんなら反省だけしっかりして、その分もっと修行しなおしなさい」
魔法使い「あの……怒ってないんですか? 女武闘家さん」
女武闘家「何? 怒って欲しいの? じゃあ──」ボカッ
魔法使い「あでっ!!」
女武闘家「はいお仕置き終了」
魔法使い「い、いたた……はは」
老人「しかし悪魔憑き事件を一晩で解決してしまうとは。偶然が重なったとはいえなかなかようやるお嬢ちゃん達じゃ」
女遊び人「でもなんでウチの子にそんな魔物がとり付いちゃったんでしょうかぁ」
老人「きっと夜に母親がいなかった事がさびしかったんじゃろう。そういった感情にあの魔物は引かれておったようでな」
女僧侶「よしよし、家に一人で寂しかったんやなぁ。ひどい目にあってもうて……」ナデナデ
83:
少年「……」ジー
女僧侶「ん? どしたん?」
少年「ねえ──もっと優しくできないの?」
女僧侶「は?」
少年「こんな小さくて可愛い子がひどい目にあってんだよ? それならさぁ、聖職者のお姉さんとしてもっとこうおっぱいや太ももの癒しがあって然るべきじゃない?」
女僧侶「──な、なんやこの子」
少年「僧侶のねーちゃんが駄目ならさぁ、そっちの武闘家のねーちゃんのお尻でもいいからさぁ」
女武闘家「こ、このガキ……」
女遊び人「ご、ごめんなさいねぇ、この子変なところが、蒸発したパパに似ちゃったみたいでぇ……」
少年「ママーっ」ギュッ
 ムニュムニュ
少年「うへへ……」
女僧侶「は、母親のムネに顔埋めて喜んどる──」
女武闘家(このクソガキの顔……数時間前にも同類の顔を見た気がする……)プルプル
老人「ぶへっくしょい!」
85:
女僧侶「とりあえず一件落着という事で」
女武闘家「あとカウント一つ……残り魔物も100体を切ったし、クリアも間近ね」
老人「さて、ワシもそろそろ帰るかのう。オイボレに夜の寒空はキツいわい」
魔法使い「あの、老人さん……お話があるんですが」
老人「ん? ワシか?」
魔法使い「もしかして老人さんは、あのカマイタチじゃないですか?」
女武闘家「カマイタチ?」
老人「──ふぉふぉふぉ、血気の勇に駆られた若い頃はそんな肩書きを名乗っておったの」
魔法使い「……盗んで欲しいものが、あるんです」
老人「むう?」
女武闘家「あ、あんたまさか」
2:
 数日後 昼下がり 郊外の林地帯にて
女武闘家「てりゃあああああっ!!」ドガァッ
魔物の群れをやっつけた!
女武闘家「よし、今日はこれで17体目……」
女僧侶「はりきっとるなぁ」ポリポリ
女武闘家「当然よ。あと31体でクリアなんだから。もうすぐ四年か……あーあ、長かったなぁ」
女僧侶「クリアしたらあんたどうすんの?」
女武闘家「んーまずは一応村に戻って老師や母さんに報告かな。その後はまあ、旅でもしてみるのもいいかな、この旅も結構楽しかったし」
女僧侶「ふーん……ええなあ気ままに過ごせて」
女武闘家「あんただって結構気ままに過ごしてんじゃないの?」
女僧侶「まあ確かに街の教会勤めよりはブラブラしとるけど、やっぱお勤めがあるからな」グビグビ
女武闘家「何がお勤めよ、昼間っからビールなんか飲んでるくせに」
女僧侶「これは麦茶や麦茶。シュワシュワするだけの。そもそも禁欲なんかで神への信仰が示せるわけないんやから」
女武闘家「そういうもんなの?」
3:
女僧侶「ウチらかて人間やで? 禁欲なんか自分の行為に酔いたいだけのマゾの行為や。人間らしくない信者なんか、どんな神様が望んどるんよ」
女武闘家「へえ、言われてみればそうかもね。じゃあ女僧侶ちゃんみたいな人でもやっぱり信心はあるの」
女僧侶「あったりまえや。こんなウチでも毎日神に祈りを捧げとるし、僧侶の力は世のため人のため神のためにしか使うつもりはあらへん。ただ、信仰とウチの生き方は別やっちゅうこと」グビグビ
女武闘家「──酒飲みながら言われてもあんまり説得力ないわね」
 ガサッ
女武闘家「18体目来たぁっ!!」バッ
魔物「う──」ドサッ
女武闘家「……あれ?」
魔物「はあ、はあ……」
女僧侶「魔物っていうか、魔族やなこの人」
魔族「ぐ……」
女武闘家「随分ボロボロね、何かあったのかな」
女僧侶「大丈夫か? 喋れる?」
魔族「き、貴様らは……人間か……ぐっ」
女武闘家「そりゃここは人間界だし」
4:
魔族「っ! そ、そうか……オレは人間界に──ぐっ」
女僧侶「あーあ、大人しくしとき……」
 女僧侶はホイミを唱えた!
女僧侶「人間の魔力やからあんまり効かんやろうけど、これで喋るくらいはできるやろ」
女武闘家「ちょっと、全快してあげないの?」
魔族「いや──魔族のオレを信用できないのは当然だろう」
女僧侶「悪いけどそういうこっちゃ。ホラ、何かあったんやろ?」
魔族「……」
女武闘家「──話すつもりはなしか。とりあえず敵なのかそうじゃないのかだけでもはっきりさせたいんだけど」
魔族「……フン、ストレートな女だな」
女武闘家「まどろっこしいのって嫌いなのよ」
魔族「──少なくとも、オレは人間に興味はない。人間界にも別に目的があって来た訳じゃない」
女僧侶「じゃあ何しに来たんよ?」
5:
魔族「さあな、オレは別の魔族共に連れて来られただけだ」
女僧侶「連れて来られたって……攫われてきたって事?」
魔族「そういう事になるだろう。オレは魔界でただ静かに暮らしていただけなんだが……近頃オレの周りをウロチョロする連中が現れはじめてな。何かあると思っていたが──」
女武闘家「魔界の事件か何かに巻き込まれてたの?」
魔族「さあな。オレは先日見知らぬ連中に襲撃され、半殺しの状態でこちら側に連れて来られた。ずっと魔牢に幽閉されていたんだが、昨日の晩に隙をついて逃げ出したんだよ」
女僧侶「襲撃された理由に心当たりはないん?」
魔族「オレを攫った連中の事も、オレが攫われた理由も知らん」
女武闘家「なんかややこしそうねぇ」ポリポリ
女僧侶「魔族さんは一体どこに閉じ込められとったんよ」
魔族「すぐ近くの大きな街だ。かなり大きな屋敷だったと思うが」
女武闘家「屋敷……大きな……」
女僧侶「まさか──」
7:
 同時刻 女遊び人の家
女遊び人「うーんそんなに頭を下げられてもぉ」
魔法使い「ご迷惑は承知しています……でも貴女しかお願いできる方がいないんです」ドゲザ
女遊び人「アタシももう引退しちゃった身だしぃ。魔法使いが遊び人に魔法の修行つけてもらうなんて、笑い話にもならないわよぉ」
魔法使い「いえ、貴女は元賢者なんですよね。賢者は僧侶と魔法使いの両方の魔法を操る者。僕の知る限り、貴女以上の呪文の使い手はこの街には……」
女遊び人「所詮”元”賢者よぉ。それにアタシ両親が僧侶と魔法使いだっただけでぇ、アナタの想像するような修行なんか積んでないしぃ」
魔法使い「それでもかまいません。僕に魔法を教えてください!」
女遊び人「はぁ……参っちゃったなぁ」
魔法使い「な、ならせめてアドバイスだけでも!」
女遊び人「う?ん、アナタは確か殆どの魔法は習得済みなのよねぇ?」
魔法使い「はい。ですが、コントロールが全然できなくて……良くて不発、悪くて暴発……」
女遊び人「それ多分アナタ、魔力の量が桁違いなのよ」
魔法使い「あまり自分でも自覚はないんですが……亡くなった師匠もそうおっしゃってました」
女遊び人「普通はみんなはじめのうちは魔力の量が少ないから、少しの魔力で呪文を練り上げる修練から入っていくんだけどぉ……アナタの場合は生まれつき魔力がかなり多いんじゃないかしらぁ?」
9:
女遊び人「樽のコックを捻るとお酒が出るでしょぉ? 普通コックの捻り具合で量を調節するけど、アナタの場合は魔力の質量が大きすぎてコックが壊れちゃってると思うのぉ」
魔法使い「えっと、つまりどうすればいいんでしょうか」
女遊び人「もっと大きくて頑丈なコックをつけてぇ、それをうまく調節できるようにする……普通はレベルアップの中で、樽(魔力の最大値)や中身の量(魔力量)に合わせて自然に付け替わっていくものなんだけどぉ……う?ん」
魔法使い「──」
女遊び人「ごめんなさいねぇ……アタシなんかじゃどういう修行をすればいいかわかんないわぁ」
魔法使い「……いえ、ありがとうございます。とりあえず、基礎の瞑想からやり直してみようと思います」
女遊び人「瞑想なんて普通魔力を高めるためのものなんだけど……まあ頑張ってねぇ」
 バタン
魔法使い「はぁ──結局どうしようもないのかなぁ」
魔法使い「でももう、この間みたいな失敗は絶対したくないし……うん、頑張ってコントロールできるようになろう」
老人「お?い魔法使い君!」バッ
魔法使い「うわっ! き、急に現れないでくださいよ」
老人「そんなことはどうでもいいわい。それより、ホレみてみぃ」
魔法使い「こ、これは? 雇用契約書……?」
老人「ふぉふぉふぉ、これでワシはあの商人協会の本部の雑用係というわけじゃ」
10:
これは面白い
11:
魔法使い「よ、よく雇ってくれましたね」
老人「色んな経験をしておくと意外なところで役に立つんじゃよ。あとはおまえさんの望み通り、連中の悪事の証拠を掴んで中央に訴えるだけじゃな」
魔法使い「でも、中央は動いてくれるんでしょうか……この間出した手紙だけじゃ、結局何もしてくれなかった」
老人「おそらくそんなもん中央には届いとらんじゃろ。この街から正規で出入りする荷物は全部チェックされとる筈じゃからのう」
魔法使い「えっ!? そ、そんな……」
老人「ま、安心せい。ワシが引き受けたからには必ず突き止めてやるわい。感謝するんじゃぞ、引退したワシがこんな仕事を引き受けるなんぞ普通ありゃせんからな」
魔法使い「すいません、お願いします」
老人「ふぉふぉふぉ。ま、お主は安心して恋路の心配でもしとれ。いい加減あの武闘家の女子とは手ぐらい繋いだのかの?」
魔法使い「なっ、そ、そんなんじゃありませんってば!」カァァ
--------
 夜 魔法使いの家
女武闘家「ふーん、結局何にも進展しなかったわけね」
女僧侶「あの遊び人さん賢者やったんやなぁ……その逆はたまに聞くけど、意外やなぁ」
魔法使い「男商人のほうは、老人さんが何とかしてくれるそうです。きっと証拠品を掴んでくると」
女武闘家「そうそう。その男商人、なんか魔界から魔族まで攫ってきてたみたいなのよ」
12:
魔法使い「魔族、ですか?」
女僧侶「実は今日街から逃げ出してきた魔族と今日会うてな、魔界から連れ去られてきたんやって言うとったわ」
魔法使い「あいつらは魔界の魔商人とご法度の取引をしてますから……魔物を使ってよからぬ事をしているという噂も多いですし」
女武闘家「じゃあ魔族が関わっててもおかしくないって事ね」
女僧侶「でもあの口ぶりからすると、そういう商売とは無関係っぽいけどな。まああの魔族の正体がまだ解らんから、決め付けられへんけど」
魔法使い「てゆうか、女僧侶さんなんで当然のごとくウチでご飯食べてるんですか!」
女僧侶「ええやんええやん。宿屋で一人寂しく食事ってつまらんしなー。それとも二人っきりのほうがよかったん?」
魔法使い「ふ、ふたっ!?」カァァ
女僧侶「ふふん」ニヤニヤ
魔法使い「──どうぞごゆっくり」
女僧侶「うん、そーさせてもらうわ♪」
女武闘家「???」
魔法使い「とっ、ところで、その魔族の人は今どうしてるんですか?」
女僧侶「あー少し傷の手当てだけしたったけど、今は林の中で隠れてるらしいわ」
女武闘家「大丈夫かなぁ……」
13:
魔法使い「女武闘家さんのほうはどうなんですか?」
女武闘家「あとたったの13体。明日の早朝トレーニングで一気に片付けちゃうつもり」
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 男商人の屋敷
男商人「全くこの責任をどう取るつもりですか!」
魔物「ギ、ギィ……」
男商人「あの魔族の男は決して魔牢から逃がしてはいけないと魔商人様からきつく言われていたでしょう!」
***「ですがご主人、今回の件は彼らの派遣した魔物の失態、我々が責任を負うこともないのでは」
男商人「何を言っているのですか。この間の宝珠を盗まれた件に続き、先日の悪霊騒ぎ。奴隷もなかなか集まらずに、ただでさえ魔商人様達はご立腹なのです。これ以上我々の信用を失うようなことがあれば、今後の商売がやりにくくなる」
男商人「いえ、もしかすれば我々の命がなくなる恐れもあるのですよ」
***「そんなまさか──」
男商人「魔族と取引するという事はそういう事です。解ったらすぐに捜索の準備をなさい。貴方達魔物も、早く人間に化けて探しに行くのです」
魔物「ギィィ」コクッ
老人「フム、何があったのかはようわからんが、どうやら屋敷の中の人間が何かの捜索に割かれるようじゃの」コソコソ
老人「これに乗じぬ手はあるまい……もう少し内部事情を探ってからと思っておったが、善は急げじゃ。今夜中に動き出すかの」シュッ
15:
 翌日 夜明け前 商人協会本部
老人「──よし、あと少しで他の召使い達が起きてくる頃じゃな」ゴソゴソ
老人「この間少年が荷物の中から盗み出したという宝珠があるそうじゃが……」
老人「確か魔界からの物品を保管しておく部屋が地下に……む、見張りか」
見張りA「……」
見張りB「うう……」
老人(たかだか商人の屋敷の警備にしてはちと物々しいのぉ。どう見てもありゃ警備員というより傭兵じゃぞ……)
老人(とりあえずあの見張りを退かすとしようか)
見張りB「もうすぐ夜明けかぁ。ふ?っ、やっぱりこの部屋の警備はおっかないったらないぜ……」
見張りA「ふん、情けない。たかだか部屋の門番で何を言ってるんだ」
見張りB「でもよぉ……この中には怪しげな魔界の品物が山積みなんだろぉ? なんか変な夢でも見ちまいそうで……」
見張りA「何だ、こええなら部屋に戻ってな。俺が賃金独り占めで仕事しててやるよ」
見張りB「そ、それも御免だ!」
 カツカツカツ……
見張りA「ん?」
16:
老人「ふぉふぉふぉ、おはようさん、お勤めご苦労じゃの」
見張りA「なんだこのじじい」
見張りB「こ、この間下働きで雇われた爺さんだろ」
老人「まあの。年寄りの朝は早くてのぅ……仕事もないのに早々に目が覚めたから、ちと屋敷の中を散歩中じゃ。全く広くて覚えるのに苦労するわい」
見張りA「この部屋はお前みたいなじじいが寄り付く場所じゃねえんだよ、さっさと部屋に戻るか掃除でもしてな」
老人「そうさせて貰おうか。おお、そういえば大旦那様がお前さんの事を呼んでおったぞ」
見張りA「あ? こんな時間にか?」
老人「何でも例の魔族の男がまだ見つからんらしいから、さらに人手を集めるそうじゃ」
見張りA「ち……夜勤明けだってのについてねえぜ。おい、後頼むぞ!」ダダッ
見張りB「え、ええっ? お、おれ一人かよぉ」
老人(まずは一人……)
老人「相方は行ってしもうたのぉ。これじゃ交代で便所にも行けんの」
見張りB「全くだぜ……はぁぁ」
老人「お前さん、今のうちに便所だけでも行ってきたらどうじゃ? その間ワシがここに立っとってやるわい」
見張りB「ほ、ほんとかじいさん」
17:
老人「うむ。どうせ先輩の召使い達が起きてくるまで、することもないしの」
見張りB「ありがてえ。じゃ、じゃあ行ってくるぜ」ダダッ
人「ふぉふぉふぉ、ごゆっくりの」
老人(さて……ここからが盗賊の真骨頂じゃ)チャッ
老人(──)カチャカチャ カチン
 老人は鍵を外した!
老人(ふぉふぉ、こういうのはオイボレてもサビついとらんのぅ)
 ギギギィ
老人「うーむ、薄気味悪い部屋じゃの……おっと」
老人「少年の言っとった宝珠はこいつか。うーむ……確かに禍々しい品物じゃが……こんなもん何に使うんじゃろうか」
老人「他にもこっちには──おお、禁制の麻薬やら稀少品やら呪いのアイテムまで……こんなもん取引しとったとは。到底人間界だけではこうも集まらんぞ」
老人「この辺のも証拠品になりそうじゃの。さて、見張りが戻って来んうちにそろそろ──」
見張りC「あっ!? な、なにやってんだジジイ!!」
18:
老人「!」シャッ
 老人の攻撃!
見張りC「ぐえっ!!」
老人「しもうた……まだ交代の時間じゃない筈じゃが──!」
見張りB「あ、じ、じいさん何やってんだ?」
老人「くっ! 便所くらいゆっくりせんかいっ!」ババッ
見張りB「おいっじいさん!?」
見張りC「ぐ……泥棒だ!! そのジジイ倉庫の品物を盗んだぞーー!!」
見張りB「な、何だってぇ!? おい待てじいさん!!」ダッ
老人「全くとんだヘマじゃ! やはりいささか下調べが足らんかったか!」ダダッ
老人(とりあえず街中へ逃げるとするか、どうにかして街の外に出られればいいんじゃが──)ババッ
ダダダッ シャシャッ
見張りC「くそ! 年寄りのクセになんて素早さだ!!」
見張りA「おい! 何の騒ぎだ!」
見張りB「く、くそー!!」
19:
 街中
追っ手「待てーー!!」
老人「ゼッ……ゼッ……」
老人(いかん、スタミナが切れてきたぞい……やはりオイボレたのぅ──)
老人(若い頃はこんな追っ手すぐにふりきれたもんじゃが……か、体が──)
 ガッ
老人「うっ!」
 ドサッ!
老人「げほっ、げほ……」
声「すまない、ご老。怪我はないか」
老人「う、ぬ?」
男戦士「大丈夫か? こんな早朝に何をしている」
老人(こ、この男は確か、町中で変態行為をして回っとる例の男戦士ではないか)
追っ手「居たぞー! こっちだー!!」
 ダダダダダダッ
20:
男戦士「何だお前たちは」
老人「く……」
見張りA「全くこの大変な時に仕事増やしやがって……」
見張りC「おいそこの、そのジジイを大人しく渡しな」
見張りB「こ、こいつ男のクセにビキニアーマーなんか着やがって……きもちわりぃ」
追っ手A「さあ、今すぐその泥棒を渡すんだ」
男戦士「何があったかは知らんが、こんな年寄りに寄ってたかってとは、いささか卑怯ではないか」
見張りC「やかましい! 腕ずくでもいただくぜ!」
 見張りCの攻撃!
 ガギィィン!!
男戦士「ふんっ!!」バキッ
 男戦士の攻撃!
見張りC「ぐはっ!!」
男戦士「いけすかんな。弱いものいじめと殺しは俺の美学に反する」
追っ手B「こ、この野郎! やっちまえ!!」
21:
追っ手達「うおおおお!!」
男戦士「ロト真剣流……土竜!」バッ
 男戦士は地面に向けて剣を振るった! 地面をえぐる衝撃波が追っ手達を襲う!
 ドドドドドドッ!!
男戦士「町外れまで逃げるぞ」ヒョイッ
老人「おお、すまんのぅ!」
男戦士「ただしもしご老が悪事に手を染めていたのなら、俺はしかるべき所に突き出すからな」
老人「ふぉふぉふぉ、お主の変態行為も犯罪行為なのを忘れとらんか?」
男戦士「私のショータイムと一緒にしないでもらおうっ!!」ダダッ
--------
追っ手達「く、くそーっ!!」
魔商人「全く……どうやら人間などをアテにしていたこの我が愚かだったようだな」
 魔商人の攻撃!
 ドシュゥゥ!!
追っ手達「ぐわぁぁぁぁ!!」
22:
 追っ手達は全滅した!
男商人「も、申し訳ありません! このような失態を……」
魔商人「フン。一度ならず二度までもあの宝珠を盗まれるとはな。この責任は宝珠を取り返した後で償ってもらう。今すぐ貴様に貸した魔物共を集めよ。こうなったら我が直接奪い返してきてやる」
男商人「しかし現在あの魔族の捜索に人材を……」
魔商人「愚か者め! あんな魔族なぞ後回しだ! 宝珠が……何よりもあの宝珠が必要なのだ! 宝珠さえ我の手にあれば全てが収まる! さっさと動け!」
男商人「は、はい!!」
***「──まだあの人間共をお使いになるのですか?」
魔商人「殺すのはいつでもできるが、宝珠を取り返すまでは動いてもらう。それにしても二度も宝珠が狙われるとは……あの宝珠の価値を知る人間が存在するとでもいうのか?」
***「あるいは、貴方様と同じ候補者の連中では……」
魔商人「可能性はあるが……それなら我の命から真っ先に狙いに来たほうが早い筈だ」
魔商人「よし、さっさと逃げた奴らを追うぞ!」
***「はっ!」
ダダダダ……
 ガチャ
女遊び人「ちょっとぉ人んちの前で大声……あらぁ?」
23:
女遊び人「おかしいわねぇ、確かに騒ぎ声が聞こえたの……に」
女遊び人「──」
女遊び人(し、しんでる……)
女遊び人(これは、魔力で殺されてるわねぇ……)パラッ
女遊び人(──こっちは魔物が人間に変装してるわぁ)
女遊び人(一体何が起こってるのかしら……)
女遊び人(とりあえずあの時の僧侶さんに相談したほうがいいかしらねぇ。中央教会の直属だって言ってたしぃ)
--------
 ほぼ同時刻 郊外の林地帯にて
女武闘家「はああっ!!」
 女武闘家の攻撃! 魔物をやっつけた!!
女武闘家「はぁ……はぁ……」
女武闘家「やった……やったぁぁぁぁぁ!!」
 女武闘家は、魔物退治5000体を達成した!!
25:
魔族「こんな時間から修練か」
女武闘家「あ。おはよう」
魔族「人間にしてはかなりの使い手のようだな。勇者に匹敵するのではないか?」
女武闘家「勇者ねぇ。あんなのただの伝説でしょ」
魔族「何だ、人間界には伝わっていないのか。かつて魔王を倒した勇者が存在した筈なのだが」
女武闘家「昔話にはあんまり興味ないのよ」
魔族「そうか。そういえばかなり舞い上がっていたようだが、何があった」
女武闘家「ああ、ノルマを達成したというか。まあまだ課題は残ってるんだけどね」
女武闘家「とりあえずあたしは一度居候先に戻るけど、あんたも来る?」
魔族「──正気か? 俺は魔族だぞ」
女武闘家「朝のコーヒー一杯くらい付き合ったっていいでしょ」
魔族「いや、しかし……」
女武闘家「ほらほら、遠慮しないの」グイッ
26:
 魔法使いの家 
魔法使い「──ブツブツ」パァァ
 魔法使いは静かに瞑想を唱えている。
女僧侶「Zzz……う?んもうのまれへん……」
魔法使い「──はぁっ、駄目だ……うまくいかない」
魔法使い「どうしてもコントロールができない……一体どうすれば……」 バァァン!!
魔法使い「わわっ!?」
男戦士「この家でいいのか?」
老人「そうじゃ、すまんかったの」
魔法使い「お、お前はっ!?」
男戦士「ぬ? おお、お主はこの間の」
老人「話は後じゃ! 少年! 今すぐここから出るぞ! 追っ手がきとる!」
魔法使い「ええっ!?」
女僧侶「うるさいなぁ、何の騒ぎなん?」ゴシゴシ
老人「ほれ! 僧侶の譲ちゃんも急ぐんじゃ!」
27:
男戦士「しかし町中を逃げ回ったというのに全く撒けなかった。それほどその宝珠は重要なのだろうな」
魔法使い「宝珠? じゃあ……!」
老人「これこの通りじゃ」キラッ
魔法使い「あ、ありがとうございます!!」
男戦士「事情は道中ご老人に聞いた。そいつを中央に届ければあいつらの悪事を暴けるというのだな」
魔法使い「少なくとも、教会の捜査が入るきっかけにはなると思います。そうすれば商人協会の悪い奴らも捕まるかもしれない」
老人「よし、追っ手は目前までせまっとる! 逃げるぞ!!」
女僧侶「う?一体何が──」
 シュゥゥゥ
女僧侶(な、何やこの──とんでもなくドス黒い不吉な魔力……)
女僧侶(魔法使いクンの持っとるあの宝珠から、漏れてるみたいやけど)
魔法使い「急ぎましょう! 隣町まで逃げられれば、流石に手が回りきらない筈です!」
男戦士「ご老は俺が担ごう」ヒョイ
 バン!!
魔法使い「うっ!?」
28:
 ズラッ
 なんと、魔法使いの家が魔物達に囲まれている!!
魔商人「そこまでだ、その宝珠を返してもらおうか」
男戦士「く──もう追い付いたというのか」
魔商人「前回も宝珠を盗み出したのは貴様らしいな、小僧」
魔法使い「どうしてここが……」
魔商人「ここは貴様の師匠の家らしいな。情報収集は我々の得意分野でね」ニヤッ
男商人「全く立て続けに私の顔に泥を塗るとは、やはりあの時殺しておくべきでした」ザッ
魔法使い「商人協会のトップ……男商人」
男商人「こんなことをしでかして……一体どういうつもりですか?」
魔法使い「僕はただこの街を昔みたいな良い街に戻したかっただけだ! お前の汚いやり口のせいで街は乱れてしまった! それを暴こうとした人達はみんな……僕の、僕の師匠も!!」
男商人「フン、綺麗事で商売ができますか! あの街はもはや私のものです。どうやら私に歯向かって街を正すつもりだったようですが……」
 ジャッ
魔法使い「う……」
男戦士「流石に多勢に無勢、だな……」
29:
老人「これまでなのかのう……」
 ザッ
女僧侶「──一つ聞きたいことがあるんやけど」
男商人「ん?」
女僧侶「その宝珠は何やのん? とんでもない邪悪な力が渦舞いとる……一体そんなもんで何をするつもりなんや」
魔商人「──いいだろう、どうせここの連中は皆死ぬのだ。冥土の土産に教えてやろう」
男商人「は──?」
魔商人「今魔界ではある重要な儀式が行われている。今から約250年前に勇者に打ち倒され、空位となった新たな魔王を選抜するための儀式だ」
女僧侶「な、何やて!?」
魔法使い「ま、魔王──!?」
魔商人「魔王の選抜に必須とされている最重要アイテムこそが、その闇の宝珠。かつての魔王が転生する際に魔界に遺した、魔王の力の源だ」
魔商人「その宝珠に1000体の人間の魂を捧げることで、宝珠は力を解放し、魂を捧げた魔族にその力の全てを授ける──」
魔法使い「そうか──町中だけでなく近隣の町や村でも流れていた行方不明になっている人たちの噂……!」
魔商人「そういう事だ。この儀式では人間界に我々魔族の気配を必要以上に悟られてはならん。水面下で人間の魂を集めるにはもってこいだったと言うわけだ」
女僧侶「そんな……じゃあまさか魔王が復活するってことなんか」
30:
魔商人「我もその候補者よ。最も……忌々しい事に候補者の中では力が小さい故に、こうして策を労したのだがな」
魔商人「さて、ではそろそろ死んでもらおう。……貴様らの魂を宝珠に捧げてやる」ニヤッ
魔法使い「くっ……」
老人「万事窮すかのう──」
男戦士「──ただでは死なん。魔王の復活なぞ、誰かが絶対に阻止せねば」チャキッ
女僧侶「させへん──そんなこと絶対させへん!!」
 ババッ!!
 女武闘家は持ち上げた岩を放り投げた!!
 ドゴォォ!!
魔物「ぐへっ!!」
男商人「何だっ!!」
 女武闘家が現れた!!
武闘家「何だじゃないわよ全く。話は聞かせてもらったけど、ホントとんでもない連中ね」バッ
 スタッ
31:
魔法使い「女武闘家さん!」
男戦士「お前は……あの時の武闘家か!」
女武闘家「魔王の復活なんて、絶対にさせないんだから」ギッ
魔商人「フン、小娘が一人増えたところで同じことだ」
魔商人「──殺せぇぇぇ!!!!」
魔物達「おおおおおおお!!!」
 魔物の群れが、いっせいに襲い掛かった!!
 ピシッ
魔法使い「ん?」
 ピシッ ピシピシッ
老人「な、何の音じゃ?」
女僧侶「これは……なんや?」
魔法使い「宝珠が、割れてる?」
 ビシビシビシッ
33:
魔商人「な、何だと──」
 ビシビシビシビシッ!!
女武闘家「ああっ! わ、われ──」
 バキィィン!!
 闇の宝珠は、粉々に砕け散った!
 宝珠の中に封印されていた邪悪な力が渦巻いている!!
魔商人「バカな……闇の宝珠が砕けるなど、ありえない……ま、まさか!!」
 ヒュルン
 邪悪な力は、勢いよく飛び去って行った!!
女武闘家「あ、あっちには……」
 ババッ
魔族「な、なんだこれは……う、ぬ、ぬぉぉぉぉぉ!!!」
 闇の宝珠の力が、魔族の男の体を包み込んでいる!!
 バチバチバチ!!
34:
女僧侶「そんな……魔力がどんどん、ふくれあがっとる……」
魔商人「バカな──なぜ……なぜそこに”転生体”がいるのだぁぁぁぁ!!!」
 ドンッ!!!
魔法使い「わあっ!!」
男戦士「ぬううっ!!」
 ドンッ!!!
魔法使い「わあっ!!」
男戦士「ぬううっ!!」
女武闘家「ま、魔族くん!!」
 ゴゴゴゴゴゴゴ……
***「ククク……」
***「この力は──紛れもなく余のものだ──」
 バチバチッ
女武闘家「え?」
***「忌々しい勇者どもに肉体を滅ぼされてから250年。ようやく転生体が魔界に発生したのだが……記憶と力は宝珠の中に封じたまま──」
35:
女僧侶「あ、ああ──」
***「欲にかられた眷属共がつまらん儀式を始めていたようだが、どうあがこうとこの力は余のものでしかありえない」
***「さて──このカラダもまだ幼く、弱い。いささか不十分な器ではあるが……この場にいる連中をくびり殺すには充分よ」
 カツッ
魔商人「ふ、復活……してしまったか……」
***「はっ!!」
 ドドォォォッ!!
魔物達「ぎょええええっ!!!」
 魔物達は全滅した!!
***「さあ、人間共よ。死の覚悟ができたものから、かかってくるがいい──」
魔王「余は魔王──全ての魔の頂点に立つものなり!!」
 魔王が、現れた!!
魔法使い「い、一瞬であの魔物達を……」
男戦士「なに、相手が一人だけになった分、やりやすいというもの」チャキッ
女僧侶「まだ復活して間もない……倒すなら今しかないわ」
女武闘家「魔族くん──出来れば君とは一杯飲み交わしてみたかったけど。こうなった以上仕方ないわ」
36:
女武闘家「覚悟っ!!!」バッ
 女武闘家の攻撃!
魔王「ふ、温いわ!!」ブンッ
 ズシャァァァ!!
女武闘家「ぐっ!」
女僧侶「バギマッ!!」
 女僧侶はバギマを唱えた!
魔王「フン!!」
 魔王はバギマを唱えた!
 バシュゥゥッ!!
女僧侶「な──!?」
男戦士「古流剣術ロト真──ぐわぁっ!!」
女武闘家「く──男戦士!」
女僧侶「なんちゅう魔力や! 同じバギマやのにウチの呪文が完全に押し負けとる!」
女武闘家「こんのぉ! てりゃああああ!!!」ドガガガガガッ!!
38:
 女武闘家は爆裂拳を放った!!!
魔王「人間にしては、なかなかいい拳をしているが──」
 魔王の攻撃!
 ズドカァァン!!
女武闘家「がふっ!!」
魔法使い「女武闘家さん!」
魔法使い「こ、こうなったら僕も……」ザッ
老人「やめておけ! 魔法のコントロールもできないお主に何ができる?」
魔法使い「で、でも!!」
男戦士「隼・一文字!!」ブンッ
 男戦士は横薙ぎの剣圧を繰り出した!!
魔王「──かあっ」ブンッ
 魔王はやり返した!!
男戦士「お、おおおっ!?」ズガァッ!!
魔王「所詮人間の技など児戯同然よ!!」
39:
 魔王はメラゾーマを唱えた!
男戦士「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」
女僧侶「せ、戦士の兄ちゃん! くっ!」
女武闘家「が──げほっ、げほっ……こ、このぉ」ヨロッ
 女武闘家は持ち上げた岩を放り投げた!!
魔王「ぬっ!」バッ!
女武闘家「女僧侶! お願い!!」
女僧侶「ピオリム!!」
 女僧侶はピオリムを唱えた! 女武闘家の素早さがあがった!
 シュバッ
 女武闘家の攻撃! 会心の一撃!!
魔王「ぐ──」メリッ
魔王「ふ、先ほどの爆裂拳よりはマシだが……まだまだだな!!」バチッ
40:
女武闘家「ぎゃふっ!!」
魔王「くたばれ──小娘!!」
女武闘家「男戦士!!」
男戦士「ロト真剣流──狼牙!!」
 男戦士は鋭い突きを放った!!
 ドスッ
魔王「ぬっ!!」
男戦士「ぐ、ぐぐ──」ギリギリ
魔王「ふはは! この余に手傷を負わせるか──貴様の技を児戯だと罵ったことは訂正してやろう。だが!」
 ズブッ
男戦士「な──!?」ググッ
魔王「こんなナマクラで魔王たる余を傷つけるとは何事かぁ!!」ブンッ
 魔王は男戦士を放り投げた!!
男戦士「うおおおおっ!」
 ドンッ!!
42:
女僧侶「あぐっ!?」
魔法使い「ま、まるで歯がたたない──」
魔商人「ふ、ふはは──これが、これが魔王様の力……すばらしい!!」
魔法使い「ま、魔商人!!」
魔商人「あの力を我が物にできなかったのは残念だったが、あのお方さえいれば、人間界など我ら魔族のもの!! 新時代がはじまる──新たな魔王様の時代だ! はーっはははははは!!!!」
 ドシュッ
魔法使い「ひっ!?」
 ピュー ビュルルッ ビチャビチャ
 ドサッ
魔王「くだらん企みをしおった下等魔族が調子に乗るな……」
魔王「しかし余がこうして復活できたのも貴様のおかげよ。故にこうして余が手ずから殺してやったのだ! 光栄に思いながら死ぬがいい!!」
魔王「さて、そちらの人間の商人も先に殺してやるか」
男商人「ひ、ひいいっ!?」ガタガタ
魔王「貴様が欲にかられたおかげで、こうして余の復活が早まったのだ。栄誉に思うのだな、新たなる神の誕生に携われた功績は冥土の土産にはすぎた栄光よ!!」
43:
 バッ
男商人「ひええええっ!?」
 ドガァァァァッ
女武闘家「が──ふっ」ゲホッ
男商人「な──え?」
魔法使い「お、女武闘家さん!?」
男商人「ど、どうして」
魔王「──フン、始末する順番が変わったか」
女武闘家「ぐはっ! げほっ、あ、あんたは……絶対に死なせない……自分のしでかしてきた事がどれだけの悪事なのか思い知るまでは──そして、それをあんたに解らせるために頑張った……魔法使いのためにも──がふっ」ドサッ
魔法使い「あ、ああっ!?」
男商人「う、う……」
女僧侶「女武闘家ちゃんっ!!」バッ
 女僧侶はベホマを唱えた!!
女僧侶「戦士の兄ちゃん! 魔王を足止めしてっ! この傷はすぐには助けられへん!」
男戦士「ぐ、む、無茶な注文をする女だ……」チャキッ
魔王「たった一人で何ができる? いくら余の体を傷つけようとも──」
44:
狼牙なんて技で勝てるわけがない
ヤムチャ臭がひどい
46:
 なんと魔王の傷が塞がっていく!
魔王「所詮無駄な努力に終わるというもの」
男戦士「だがこの場は引き受けよう……行くぞッ! 魔王ッ!!」
男戦士「古流剣術ロト真剣流! 猛虎!!」
 男戦士は構えた剣を振り抜いた!!
 ズババババッ
男戦士「隼!!」
 男戦士は強烈な剣圧を繰り出した!!
 シャッ!!
男戦士「土竜!!」
 男戦士は地面に向けて剣を振るった! 地面をえぐる衝撃波が魔王を襲う!
 ドドドドドドッ!!
魔王「はははは! どうした! その程度かぁぁっ!!」
魔法使い「く、そ……僕じゃ、何もできないのか……」ブルブル
老人「オイボレやヒヨッコ魔法使いじゃ弾除けにもなりゃせん……」
47:
女僧侶「く──傷が深い……ぜんぜん回復が進まへん!」
魔法使い「やっぱり僕、行きます!!」
声「やめなさぁい、君じゃどう頑張っても足手まといよぉ」
魔法使い「え?」
老人「お、お主はこの間の」
女遊び人「ちょっと気になることがあったからそこの女僧侶ちゃんに用があって来たんだけどぉ、とんでもないことになってるわねぇ」
魔法使い「お、お願いします! みんなを、皆を助けてください!!」
女遊び人「無理よぉ、現役を退いたアタシには何もできないわ。この間悪魔にとり憑かれた時に、残ってた魔力を無理やり搾り出されちゃったから、実は魔力なんて殆ど残ってないの。言ったでしょぉ、君の指導なんかできないって」
魔法使い「そんな──」
女遊び人「でも、一つだけできるかもしれないことがあるわぁ。かなり危険だけど……」
魔法使い「えっ!?」
女遊び人「君のその膨大な魔力を生かす呪文がたった一つだけあるのぉ、魔力の全てを解き放ち、破壊のエネルギーに変換して放つ最強魔法──マダンテ」
女僧侶「な、なんやて!?」
48:
女僧侶「な、なんやて!?」
魔法使い「マダンテ……僕がマダンテを? そんな、無理ですよ!」
女遊び人「そう。今の君一人じゃマダンテは絶対にできないと思うわぁ。だから、アタシが協力してあげる」
魔法使い「え?」
女遊び人「君は全身の魔力を頑張って収束させて、一気に爆発させればいいのぉ。呪文のコントロールは何とかアタシがしてあげる」
魔法使い「そんなこと、できるんですか?」
女遊び人「普通は無理だと思うけどぉ、でもやらなきゃみんな死んじゃうでしょ」
魔法使い「──」
女遊び人「解ったら準備なさい。君は魔王目掛けて構えてくれればいいわぁ」
魔法使い「は、はい」ザッ
女遊び人「そしてアタシが後ろから」
 女遊び人は魔法使いの手に手を重ねた!
女遊び人「いい? 魔力を頑張って収束して──」
魔法使い「はい──」キィィ
49:
 ムニュン
魔法使い(う、む、胸が……)
女遊び人「──雑念は捨てな。精神のコンセントレーションは魔法使いの基本だヒヨッコ」ボソッ
魔法使い「え、えっ!?」
女遊び人「ホラ、早くしなさぃ」
魔法使い「は、はいっ」キィィ
男戦士「ぐあああああっ」メキメキメキ……
魔王「思ったよりタフな人間だったが、貴様で遊ぶのももう飽きた」ゲシッ
男戦士「がっ」
魔王「そろそろくたばるがいい──はああっ」
 キラッ
魔王「ぬ?」ピタッ
 ズオオオオオオ
老人「お、おおおっ!」
50:
女遊び人「意識を集中して──もっと、もっと──」
魔法使い「──」
女遊び人「行くわよ……」
魔法使い「はいっ」
魔王「馬鹿な……あれは、まさか最強破壊魔法!」
女遊び人「マダン──」
 バチッ
女遊び人(え──!? し、しまっ)
 魔法使いの魔力が暴発した!!
 ドゴォォォォォン!!!
老人「ぐわあっ!」
魔法使い「あ、あああああっ!!」
女遊び人「きゃああああっ!!!」
男戦士「な、何だ……一体」
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
51:
女僧侶「し、失敗、や……マダンテが、暴発した──」
女武闘家「 」
女僧侶「女武闘家ちゃん……はよ、はよ起きて……!!」
魔法使い「く、そ、そんな……」
女遊び人「うう……ご、誤算だったわぁ……君の魔力の強さ……予想外すぎた──うう」
魔法使い「ご、ごめん、なさい──また僕、失敗を……」
女遊び人「ううん、君はよくできてたわぁ、私のミスよ……君のその才能、もっと早く目覚めさせることができてたら、違った結果になったはず……」
魔王「ふ──ふはは。結局失敗か! 所詮太古に滅んだ呪文よ! もはや今の人間に扱えるものなどおらん!」
女僧侶「そんな──」
女武闘家「 」
--------
女武闘家『あったかい……解る……女僧侶ちゃんがベホマをかけ続けてくれてる』
女武闘家『起きなきゃ。こうしてられない……早くおきて、闘わないと』
声『なぜ立ち上がる? なぜ闘う?』
女武闘家『え? そんなの決まってるじゃない。友達が傷つきながら悪いやつらと闘ってるんだから。あたしだけ寝てるわけにはいかないわ』
52:
声『勝てぬかも知れぬぞ? 命を失うかもしれんぞ?』
女武闘家『冗談じゃないわ。あたしは死なないし、誰も死なせない。そして絶対にあの魔王を叩きのめす』
声『ほう?』
女武闘家『この旅で得たのは力だけじゃない。苦しい事も楽しいことも、大切なことをいっぱい学んできた。そしてあたしは修行で得たこの力を誰かのために──ううん、自分のために使っていく』
声『自分のために力を使うだと?』
女武闘家『そうよ。だってそれは……きっと誰かのためになる。あたしは自分の中の義を信じて、これからを生きていく。誰かのために何かできることをするっていうのは……あたしがそうしたい、そう生きたいから。だから──』
声『──いい眼だ。それがお主の答えというわけか。全くそこまで自信満々に自分が正義だなどと云う奴はお主が初めてだ』
女武闘家『ほっといて』
声『合格だ、若き我が子よ。はじまりの拳聖の名において。今ここに、新たな拳聖の誕生を宣言する!!』
--------
 カッ!
 ドオオッ!!
53:
女僧侶「わっ!?」
魔王「ぬうっ!?」
女武闘家「……」カァァァ
女僧侶「女武闘家ちゃん、その力は……」
女武闘家「聖なる力──」ギュッ
女武闘家「力が、溢れてくる……これが……これが──!」
 女武闘家は、拳聖の称号を手に入れた!!!
女武闘家「はあああっ!!」ドンッ
魔王「死にぞこないが、どうあがいたところで」
 バキッ
 女武闘家の攻撃!!
魔王「ぐはあっっ!?」
女武闘家「だだだだっ!!」ドガガガガガッ!!
 女武闘家は爆裂拳を放った!!!
魔王「がががっ!!」
54:
魔王「ば、ばかな……先ほどと同じ爆裂拳の筈──い、一体何が」
女武闘家「──今この拳には拳聖の力……聖なる力が宿っている」
魔王「何ぃ……」
女武闘家「覚悟しなさい、魔王──」
女武闘家「ぶっ飛ばしてやる!!!」ギンッ
魔王「図に乗るなぁぁぁ!!」
魔法使い「す、すごい……」
男戦士「一体何が──」ヨロッ
女僧侶「女武闘家ちゃんの腕輪の封印が、解けた──」
老人「拳聖の力が開放されたんじゃ……噂以上の力じゃわい」
男戦士「拳聖!? き、聞いたことがある……その身に聖なる力を称え、武道の神とまで言われた伝説の……ただの武闘家ではないと思っていたが──」
男戦士「──よし、加勢に行くぞ。このままじっとはしておれん!」
女僧侶「待ちや戦士の兄ちゃん……」
55:
 女僧侶はベホマラーを唱えた!
 男戦士のキズが回復した!
 女僧侶のキズが回復した!
 老人のキズが回復した!
 魔法使いのキズが回復した!
 女遊び人のキズが回復した!
女僧侶「よっしゃ、行こか」
男戦士「うむっ」
魔法使い「……」スクッ
老人「ぬ、少年?」
タタッ
魔王「フン、少しはマシになったようだが、その程度ではいくら頑張っても余には勝てんぞ!!」
女武闘家「はああっ」
 女武闘家の攻撃!
56:
魔王「ぐっ!!」
 魔王の攻撃!
女武闘家「あぐっ!!」
 魔王の攻撃!
 魔王の攻撃!
 女武闘家の攻撃!
女武闘家「はぁ……はぁ……」
魔王「はははは!! そらそらぁ!!」
男戦士「隼!」
 男戦士は強烈な剣圧を繰り出した!!
 シャッ!!
魔王「ぬうっ!?」
女僧侶「ベホマ!!」
 女僧侶はベホマを唱えた! 女武闘家のキズが回復した!
女武闘家「あ、あなた達、大丈夫なの?」
57:
女僧侶「そらこっちの台詞や。さっきあんた死にかけとったのに、起き抜けでバタバタ動いたらあかんで」
男戦士「加勢するぞ拳聖。かの武術の神と同じ称号を持つものと肩を並べて闘えるとは、戦士冥利に尽きるというもの」
魔王「フン……死にぞこないが何匹集まってきても同じことよ。いいだろう、あれだけ痛めつけられてまだ立ち向かってくるその見上げた勇気が、ただの無謀にすぎんという事を痛感して死んでいくがいい!!」
女武闘家&女僧侶&男戦士「はぁぁぁぁっ!!」ババッ
--------
魔法使い「女遊び人さん……」
女遊び人「なぁに? アタシまだちょっと立てそうにないんだけどぉ」フラッ
魔法使い「もう一度、もう一度マダンテを手伝ってもらえませんか?」
女遊び人「え、ええっ!? 正気なのぉ?」
58:
魔法使い「解っています……今度また暴発すれば、それこそ女遊び人さんも僕も──」
女遊び人「そうじゃなくてぇ! い、いやそれもあるけど……君さっきのマダンテの暴発で、魔力はもう空っぽじゃないのぉ?」
魔法使い「いえ……まだ大丈夫です」
女遊び人(う、嘘でしょぉ? マダンテって全部の魔力を一気に消費する魔法の筈なのに……)
女遊び人「──全く、ほんとにとんでもない才能……」
魔法使い「お願いします!!」
女遊び人「どうして、そこまでしたいの?」
魔法使い「あそこで、女武闘家さん達が闘ってるのに──ただ待ってるなんてできません。こんな僕でも何かできるかもしれないなら……精一杯やってみたいんです」
女遊び人「良く言った。それでこそ男だ」スクッ
魔法使い「お、女遊び人さん?」
女遊び人「ホラ、ぐだぐだしてねえでとっとと構えやがれヒヨッコ!! 今度こそあの魔王をふっとばすぞ!!」
魔法使い「は、はい!!」
女遊び人「ったくガキも作って気ままな遊び人生活を続けようって思ってたのによぉ……ガチガチに固めてたオレのスイッチを入れやがって」
 ギュッ
 女遊び人は魔法使いの手を力強く握った!!
59:
女遊び人「いいか? 今度こそチャンスは一度。お前のやることはさっきと一緒だが、今度は失敗を恐れるんじゃねえ。全力でぶっ放すつもりで魔力を集中しろ」
魔法使い「はい」
女遊び人「タイミングはオレが指示する。集中力を乱すんじゃねえぞ」
魔法使い「コンセントレーションは魔法使いの基本ですね。同じことを、師匠にも何度も言われました」
女遊び人「はん。弟子はまだまだ三流以下だが、師匠のウデは一流だったみてえだな。よし、はじめるぞ……」
 キィィィン
女武闘家「だあああっ!!」
 女武闘家の攻撃!
魔王「ぬんっ!!」
 魔王の攻撃!
女武闘家「はっ!!」
女僧侶「バギクロス!!」
 女僧侶はバギクロスを唱えた!
男戦士「ロト真剣流、飛竜!!」
 男戦士は高く飛び上がり、剣を叩き付けた!
60:
魔王「ぐううっ!!」
魔王「甘いわぁっ!!」
 魔王はイオナズンを唱えた!
 魔王はもえさかる火炎を吐いた!
男戦士「ぐあああっ!!」
女僧侶「ど、同時攻撃!? きゃああっ!!」
魔王「はははは!! 人間ふせいがぁぁ!!」
女武闘家「はあっ!!」ドガッ
 女武闘家の攻撃! 会心の一撃!
魔王「ぐおおっ!!」
魔王「あ、あの一瞬で、大防御をしていたのか……」
女武闘家「女僧侶ちゃんのおかげで大防御が間に合ったわ」
女僧侶「あ、さ、さっきのピオリムか!」
男戦士「しかしこのままでは勝てん……それに魔王もかなりアタマにきているようだ」
魔王「おのれ……人間ごときが……」ユラッ
61:
女武闘家「来る──!!」
魔王「殺す……殺してやる!!! 死ねえええっ!!!」
男戦士「古流剣術──」
女僧侶「バギ──」
女武闘家「はああ──」
女遊び人「お前ら散れぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
女武闘家&女僧侶&男戦士「「「!」」」
魔王「ぬうっ!? あ、あれはまさか!?」
ババッ!
男戦士「離脱するぞ!!」
女僧侶「女武闘家ちゃん!? はよ!」
女武闘家「はああっ!!」
62:
 女武闘家は聖なる力を込め、真っ直ぐ魔王を突いた!!
 ズドォォォッ
魔王「ぐ、ぐは──」グラッ
女武闘家「いけぇぇぇぇぇぇ!!!」
魔法使い&女遊び人「マ ダ ン テ !!」
 魔法使いは、全ての魔力を解き放った!!
 カッ!!
 ドグァァァァァァァ!!!!
男戦士「う、うおおおおおっ!?」
女僧侶「わあああっ!!」
老人「こっ、これはもう呪文とかいうシロモンじゃないぞい!!」
 ゴゴゴゴゴゴゴ──……
魔法使い「はぁ……はぁ……はぁぁ……」
女遊び人「よく、やったわ……確実に、決まった……ふぅぅぅ」
魔法使い「 」ドサッ
66:
 魔法使いは、気を失った!
 ゴゴゴゴゴゴゴ──……
男戦士「爆風が、収まってきたか」
女僧侶「魔王は……女武闘家ちゃんは……」
老人「解らん、しかし魔王はおそらく木っ端微塵じゃろう。あんなもんが直撃したんじゃ。どう考えても生きてられんぞ」
 バッ!!
魔王「がはああっ!!」グアッ
男戦士「な──!?」
女僧侶「う、嘘……」
老人「こ、こやつ……化けモンじゃ……」
女僧侶「女武闘家ちゃん──女武闘家ちゃんはどないしたんや!?」
男戦士「まさか、爆心地の間近にいたせいで……」
魔王「が、う……し、ぬ、死ぬかと思った──」
魔王「この余が、死の予感を……命の危機を感じただと!? ありえん……かつて余を葬ったあの勇者達ならともかく……こんななんでもないただの人間共に……!!!」
魔王「余は──余は闇の世界の神だぁぁぁぁ!!」
67:
シャッ
 ドガアッ!
魔王「が──ぁ?」
女武闘家「これで──終わりよっ!!」
 女武闘家は聖なる力を込め、真っ直ぐ相手を突いた!!
 ズドォォォッ!
魔王「ぶ──」
 ビシッ
魔王「おのれ……おのれおのれ……人間ごときに……余が、二度も──ぉぉ──ぉぉぉぁぁぁあああああああ!!!!」
 魔王の体が、ボロボロと崩れ去って行く!!
 魔王をやっつけた!!
女武闘家「はぁ……や、ったぁ?????」バタッ
68:
女僧侶「女武闘家ちゃん!!」バッ
女武闘家「わっとと!!」
女僧侶「アホ! なんであんな無茶したんや!」
女武闘家「だってあそこで足止めしないと、直撃しなかったじゃん」
男戦士「しかし幾らなんでも危険すぎだ」
老人「全くじゃ。オイボレの前で若モンが死ぬ姿なぞ見せんでくれ」
女武闘家「大丈夫よ、あたしはあの子の事信じてたから」
女遊び人「そうねぇ。この子も頑張ったんだからぁ」ズリズリ
魔法使い「あ、あの、引き摺らないで……」
女僧侶「みんなボロボロやな……ベホマラー!」
 女僧侶はベホマラーを唱えた!
女僧侶「これでよし、っととと」フラッ
女武闘家「大丈夫?」
女僧侶「あ?ウチも魔力がすっからかんになったみたいやぁ」
老人「ま、ゆっくり休んだほうがええ。それにしてもまさか魔王をやっつけてしまうとは。死ぬ前に凄いもんに立ち会ったわい」
69:
男戦士「やはり拳聖の力は偉大だったというわけか」
女武闘家「何言ってんの。皆がいたから勝てたのよ。それに、今回の一番の功労者は──」
魔法使い「え、ええっ!?」
女遊び人「そうねぇ、あのマダンテが成功しなかったら魔王に致命傷を与えられなかったわねぇ」
女僧侶「そうやな。魔法使いクンが今回のMVPってコトで!」
魔法使い「そ、そんな僕なんか!!」アセアセ
男戦士「ところで女武闘家。なぜ俺との戦いではあの力を出さなかった?」
女武闘家「出さなかったんじゃなくて出せなかったの。修行の課題をまだクリアしてなかったからね」
女僧侶「そう言えばなんでいきなり腕輪の封印が解けたん?」
女武闘家「多分魔王の攻撃からあの男商人を助けたのがカウントされたんだと思う」
魔法使い「そうだ! 男商人は!?」バッ
老人「安心せい、そこですっかり伸びておるわい。このままふんじばっておいて中央に連絡すれば良かろう」
女武闘家「さーて! 魔王撃破の祝杯ってことで、今日はいっぱい食べてたっぷり寝ましょ」
--------
 その後……
女僧侶「中央教会からの使者が来たわ。男商人のやってたことは全部明るみに出てきたって。中央の治安部隊もこの街に出向してくれるらしいから、もう大丈夫やで」
70:
魔法使い「そう、ですか……。よかった、きっと師匠もほっとしてると思います」
女武闘家「それにしても、一番の大物が捕まったとはいえ、随分スムーズに解決したのね」
女僧侶「アンタに助けられた時の激が効いたみたいでなぁ。あの男商人すっかり観念して捜査にも協力的らしいわ。まあ懲役100年っちゅう話やから、一生檻の中やろけどな」
魔法使い「とにかく、法の裁きが下ったんですね」
女僧侶「そういうこっちゃ」
女武闘家「さて……それじゃ無事に修行も終わったし、事件も解決したし。一旦村に帰りますか」
女僧侶「う?ん、ウチは今回のことで一回中央教会に出頭せなあかんのやけど、よかったら中央まで一緒せえへん?」
女武闘家「え? あたしと?」
女僧侶「何か女武闘家ちゃんとは結構ええ仲になれそうな気がするんやけど」
女武闘家「あ、あはは、そう言われるとなんか恥ずかしいけど……そっか、考えてみたらあたし同年代の友達っていなかったな」
女僧侶「じゃあ友達一号ってことでヨロシクな」
女武闘家「いや、故郷に幼馴染くらいいるからっ!! 年違うだけでっ!!」
魔法使い「僕もこの町が少し落ち着いたら、旅に出てみようと思います」
女武闘家「えっ?」
魔法使い「女遊び人さんに言われました。僕が魔法使いをやらないのはもったいないって。だから、師匠のような立派な魔法使いになれるよう、修行を積みたいんです」
71:
女武闘家「そっか。どっかで会えるといいわね……いえ、必ず会いましょ」
 スッ
魔法使い「はいっ」
女武闘家「ちょっと待った!」
魔法使い「え?」
女武闘家「”友達”に敬語ってのも、ないんじゃない?」ニコッ
魔法使い「あ──」
魔法使い「うん……いつか、会おう!」
 ギュッ
女僧侶(──ええシーンっぽいけど、これただのお友達宣言と一緒やからな……哀れ魔法使いクン……)
--------
女僧侶「で、もう出て行くんか。ちょっと気ぃ早ない?」
女武闘家「善は急げって言うでしょ。っていっても別に急ぐ旅でもないけど、まあこれからあの町もバタバタするだろうし、余所者がずっと居座っても迷惑でしょ」
女僧侶「事情はどうあれ、事実上のトップを失ったわけやからなぁ。これからが大変やで──ん?」
女武闘家「──やっぱり、来ると思ってた」
 ザッ
72:
男戦士「──やり残したことがあるからな」ザッ
女僧侶「あ、あんたら──」
女武闘家「ケリをつけておかないとね」ザッ
男戦士「ふっ、かの拳聖を前にして臆したとあれば、一生後悔するだろう」ジャリッ
女僧侶「全く体育会系やなぁ……はは」
男戦士「行くぞ!!」
女戦士「行くわよ!!」
女武闘家 「「はあああああっ!!」」男戦士
73:
 パキン
 男戦士の股間のガードが外れた!!
 ビキーン
女武闘家「──へ?」
女僧侶「ひっ!?」
男戦士「見るがいい拳聖! この変態戦士の最後の雄姿をっっっ!!」ムキムキィッ
男戦士「さあ……ショー☆タイムのはじまりだーーーっ!!!」バッ
 ぎゃあああああああっ!!!
 おしまい
75:

老人はどーなったんだ
76:
>>75
女遊び人と老人は地元民なので多分そのまま生活してる
男戦士は変態行為で逮捕ってことで
書き溜めでSSやってみたのはじめてだけど楽しかったわ
付き合ってくれた人ありがとう
みんなの冒険に幸あれ!
おやすみ
77:
>>76
戦士結局つかまるのかよw
おもしろかったよ

78:

おもしろかった
落としてすまんかった……
74: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+

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