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コナン「探偵をやめて犯罪者になる」【後編】
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7:
◆14時00分://工藤邸/優作の書斎◆
コナン「……」
【――優作が立ち去った後、コナンは一歩も動けないでいた】
【非日常が始まって、もうすぐ6時間が経とうとしている】
コナン(俺……何でこんなことしてるんだ……?)
【我に返ったらしく、自分が分からなくなったコナンは――】
【今更になって、今日起こったことを整理することにした……】
?俺は非日常を求めて、まず歩美ちゃんと灰原の胸を触り、
?灰原に関しては、振られた衝動でレイプをしようとした。
?それから阿笠博士を殺すために、米花ビルに場所を移し、
?トイレで待ち伏せすることにより、博士を殺すことに成功。
?その後、組織を潰すため調査目的で博士の家に趣き、
?秘密兵器の存在を見つけたところで、蘭の追跡を確認……
コナン(ん……? 蘭の追跡……?)
『カチャ』【――同時に《地下二階》への蓋が開く……!】
蘭「ふふっ、新一。みぃーつけたぁ♪」
コナン「なっ……!?」
【――そこには、ロープを持った素っ裸の蘭が立っていた】
420:
コナン「うあッ!? うあああああああああ!!!」タタタタタ
【悲鳴を上げ、走りだすコナン……!】
蘭「待ちなさい新一!! 絶対に逃さないわ!!」タタタタタ
【暗闇の中、綺麗なフォームで追いかけてくる蘭……!】
コナン(こええええええ! てか、今更思ったけど――)
コナン(何で蘭に、俺が新一だってバレてんだよぉ!?)
【だがそれを彼女に聞く暇なんてあるはずもない】
【コナンは書斎を抜け、階段を登り、1階に逃げ込む!】
蘭「新一! いい加減、この中にチンポ入れなさいよ!!」クパクパ
【しかし流石は運動神経抜群の怪女――】
【差はどんどん縮まっていき、捕まるのは時間の問題だ!】
コナン(くっ……誰か……助けてくれぇええええ!!!)
『ガチャ……!!』
【コナンはそう願いながら、工藤邸の玄関を辛うじて出る!】
【するとそこには――】
目暮「蘭君! その子は新一君じゃない! やめるんだ!!」
【――目暮を筆頭に、複数の警官、そして毛利小五郎がいた!】
424:
シュールすぎるだろ
430:
コナン「め、目暮警部……! おじさん!!」
蘭「はぁ!? コナン君は新一よ! すっこんでなさい!!」
目暮「くっ……おいコナン君! 早くこっちに来るんだ!」
蘭「絶対に逃がさないわ!!」タタタタ
【一向に追跡をやめない蘭に小五郎が動く――】
小五郎「やめろらあああああああん!!!!!!」
蘭「……ぇ……!?」 『スッ……』
『ドスッッッッッッッッッッッッ!!!!!!』
【小五郎は、得意の一本背負いを蘭に食らわした】
蘭「くはっ……!!」
小五郎「はぁはぁ……もう休め……蘭……」
小五郎「キッドに縛られて、怖かっただけだろ……?」
小五郎「だがもう大丈夫だ。俺がついてるから……!」ギュッ
蘭「がぁ……がぁああ……!!!」
【裸の蘭を、優しく抱き寄せる小五郎――】
【そんな小五郎の愛を感じてか、蘭は少しだけ大人しくなった】
435:
コナン「警部さん……どうしてここに……?」
目暮「ああ。歩美君から通報があったのだよ――」
『蘭君が、新一君の家で、君を襲おうとしてる』
目暮「――とね」
コナン「あ、歩美ちゃんが……!?」チラッ 歩美「……」
目暮「ああ。普通ならそんな通報、無視するところだが――」
目暮「丁度我々は、蘭君を探していたところでね」
目暮「急いでこの場に駆けつけたってワケさ」
コナン「……そ、そうなんだ……」
歩美「コナン君、助けが遅くなってごめん……」
歩美「近くのおばさん家まで電話を借りに行ってたから……」
コナン「……えっ……?」
歩美「トイレの張り紙(>>189)って、こういうことだったんだよね?」
歩美「コナン君、歩美に助けて欲しかったんだよね?」
439:
コナン「あっ……それは……」
【眩しすぎるくらいに純粋な、歩美の瞳……】
【犯罪者は、直視することが出来ずに目を逸らした……】
歩美「……えっ? もしかして違った?」
コナン「いや……なんというか……それは……」
【……その瞳は少し、コナンの毒を消したのかもしれない】
コナン「……ごめん!! 歩美ちゃん!!」
歩美「えっ……?」
コナン「俺……どうかしてた……!!」
コナン「女の子の胸を勝手に触るなんて――」
コナン「絶対やっちゃいけないことなのに……!!」グスン
歩美「……コナン……君……?」
コナン「ごめん……本当に……ごめん……!!」グスン
【今のコナンは歩美に痴漢したことを後悔していた】
【それ故に彼は己の裁判で、有罪の判決を下し――】
【そしてひたすらに歩美に頭を下げ続けた……】
【『それが最善策だ』……優作の声が聞こえた気がした……】
441:
歩美「か、顔を上げてよ。そんなのコナン君らしくない」
歩美「確かにいきなり触られて、少し困っちゃったけど……」
歩美「そこまでされたら、別の意味で困っちゃうよぉ……」アセアセ
コナン「歩美ちゃん……許してくれるのか……」グスン
歩美「うん♪ でも次からは絶対にしちゃダメだからね」ニコッ
コナン「……ごめん……本当に……ごめんっ……!」グスン
歩美「アハハ……もうやめてってば」
【歩美は優しかった。罪が赦されるとは、犯罪者も運が良い……】
『PRRRRRRRR♪ PRRRRRRRRRR♪』
【少し離れた場所、突然鳴り響く着信音】
目暮「おお高木か。蘭君は無事見つかっ――」
目暮「何!? キッドの意識が戻っただと!?」
目暮「わ、分かった。今すぐ向かう。奴に隙を見せるなよ!」ピッ
444:
歩美「コナン君、キッドだってさ」
歩美「もう私のことはいいから、行ってきたら?」
コナン「……え?」
歩美「私、蘭お姉さんがこうなったの、キッドのせいだと思うの」
歩美「だからコナン君、キッドに会ったら言っといて――」
『いくら格好良くても、女の子を縛るなんて最低だよ』って。
コナン「……い、いいのか? 歩美……」
歩美「うん♪ ほらほら、早くしないと警部さん行っちゃうよ?」
コナン「……わ、分かった……じゃあ行ってk――」グイグイ
歩美「あ、でも明日は博士とキャンプだから――」
歩美「それまでには戻ってこなきゃダメだからねー♪」ニコッ
コナン「……ッ」ズキッ
【……少女の笑顔を見て、犯罪者は何も言えなかった……】
451:
◆14時30分://米花総合病院/某室◆
『ガラガラ……』
高木「あっ、目暮警部」
目暮「キッドはどうだ? 逃がしてないだろうな?」
佐藤「大丈夫です。ベッドで大人しくしています」
キッド(黒羽快斗)「……」
目暮「……ほう……思ったより若いじゃないか……」
高木「ええ。僕もびっくり――ってあれ?」
高木「警部、コナン君も連れてきたんですか?」
目暮「ハハ……本人があまりにしつこく言うのでな……」
目暮「毛利君が来れない代わりに、特別に連れてきたんだよ」
コナン「えへへ……」 高木「あ、あははは……」
中森「まさかお前が……キッドだったなんて……」
コナン「あれ? 中森警部、その人と知り合いなの?」
中森「ああ。娘の幼馴染なんだよ、コイツは……」
458:
中森「おい小僧……何でキッドなんかやってたんだ?」
快斗「フン……親父の敵を取るためさ……」
中森「……なにっ!? 父親の敵だと?」
快斗「8年前、俺の親父――黒羽盗一が死んだのは知ってるだろ?」
中森「あ、ああ……だがマジック中の事故死だったはずだが?」
快斗「違う!!! 親父は事故死なんかじゃない!!!」
中森・目暮・高木・佐藤・コナン「……!?」ビクッ
快斗「親父は……殺されたんだよ……何者かになッ……!」
中森「な、何を言ってるんだ!? お前の父親は事故死だと……」
快斗「……くそっ……これだから警察は嫌いなんだ……」
【……病室に重く伸し掛かる、キッドの呟き……】
快斗「……まぁいい。どうせ知らないと思うが――」
快斗「元々《怪盗キッド》は、俺の親父が始めたものだった……」
中森「何っ!? それは本当か!?」
快斗「ああ。だから正確には、俺は2代目キッドってワケさ……」
459:
快斗「なんたって、キッドを続けていれば――」
快斗「親父を殺した犯人を誘い出せるかもしれねぇだろ?」
快斗「だから俺は2代目キッドとして、暗躍することを決めたのさ」
中森「ほう……じゃあ何か? タイムマシンを盗もうとしたのは――」
『過去に戻り、父親を殺した犯人を見つけるためだとでも言うのか?』
快斗「ふっ……まぁそんなところだ……」
快斗「だが実際、タイムマシンの説明を聞いてガッカリしたぜ」
『あの仕組みだと、親父を殺した犯人、又はそれを知る人物が――』
『あの《BJ》とかいうヘルメットを頭に装着しない限り――』
『俺の知りたい過去は《仮想世界》に出来上がらないからな』
快斗「だから正直言って、落胆は隠せなかったよ……」
快斗「まぁその油断のせいで、こうして病室で寝てるワケだけどな」
463:
中森「ふっ……残念だったな」
中森「いくらそんな身の上話をされたところで――」
中森「俺はお前を見逃す気は毛頭ないぞ」
快斗「わぁーってるよ。だが盗みを働いた事に関しては――」
快斗「俺だって、後悔する気は毛頭ねぇからな」
中森「なっ!? なんだとぉおおおお!?」
コナン(……そうか……コイツにも自分の《正義》――)
コナン(ちゃんと墓まで持っていける――)
コナン(揺るぎない《正義》が……あるんだな……)
コナン(……それに比べて俺は……)
中森「クックック。その根性、ムショで叩きなおしてやるぜ」
コナン(……ははっ……無駄だよ中森警部……)
ソイツは俺のような、よくいる犯罪者とは違う……
考えつくされた、己の《正義》に従ってやがるんだ……
コナン(……脱獄してでも、怪盗はやめないだろうぜ)
470:
目暮「オホン。えぇー、快斗君と言ったね」
目暮「君を撃った犯人については覚えていないかね?」
快斗「ああ、うっすらとなら覚えてるぜ」
快斗「暗闇とはいえ、赤外線眼鏡を掛けていたからな」
目暮「ほ、本当か!? どんな奴だった!?」
快斗「んーっと……痩せた子供……だったかな?」
目暮・高木・佐藤「こ、子供!?」
佐藤「け、警部。米花ビルから脱出できると思われる経路は――」
佐藤「階段、エレベータを除くとダストシュートしかありませんでした」
佐藤「彼が言ってることは、嘘ではないかもしれません!」
目暮「そ、そうだな……他には何かあるか?」
快斗「あと銃を握ってた。俺と一緒で赤外線眼鏡も」
快斗「恐らく停電の事態を予測してたんだろうな……」
快斗「ハハッ。冷静に考えれば滅茶苦茶頭の切れるガキだぜ」
476:
高木「警部。銃と言えば、例のフロアから一丁だけ発見されました」
目暮「なんだと!? それは本当か!?」
高木「ええ。ただ、一発も打たれた形跡がないので――」
高木「快斗少年、阿笠氏両方の事件において関係ないかと……」
目暮「はぁ? 何だそりゃ……?」
高木「僕も何が何だかさっぱり……」
佐藤「そういうのって、余計に迷惑ですよね……」
目暮「ああ……しかしどうしたものか……」
『PRRRRRRRR♪ PRRRRRRRRRR♪』
目暮「ん? 電話……誰からだ?」
中森「ったく。病院なんだからマナーモードくらいしとけタヌキ!」
目暮「あぁ!? 誰のせいでこんな苦労をしてると思ってるんだ!」
高木「ま、まぁまぁ……とにかく出てみましょうよ目暮警部」
493:
『おう。おっさん! 久しぶりやな』
目暮「む。誰かね君は? どこかで聞いたような声だが……」
『ハハハ。忘れてしもたんか? オレやオレ、服部や』
目暮「なんだ服部君か……一体どうしたというのかね?」
『いや、今、阿笠のオッサンの助手とおんねんけどな――』
『あのヘルメット盗みよった犯人が分かるかもしれん言うとって――』
『こら警部に教えたらなアカン思て電話したっちゅうワケや』
目暮「な、なにィ!? 犯人が分かるかもだと!?」
コナン・高木・佐藤・中森「……!?」
コナン「ね、ねぇ警部! それってどういうこと!?」
『ん? そこにくど……やのうてコナン君おるんか?』
『なら早いわ。警部はん、今からその子連れて来てくれへんか?』
目暮「えっ……コナン君をかね?」
『そうや。ソイツがおらな、この事件は解かれへんからな』
目暮(……どういうことだ?)
498:
◆15時30分://《BJ》中央サーバー第一管理室◆
【目暮警部一行は、服部からの提案に同意して――】
【ここ、タイムマシンの中央サーバ管理室にやってきた】
『ウィィィン』
服部「おっ、来よったか」
関係者A「あ、役立たずの警部じゃないですか。お久しぶりです」
中森「ぐぬっ……久しぶりって、さっきまで一緒にいましたよね?」
関係者A「あはっ、そうでしたっけ? それは失礼しました」
関係者A「いやぁ、あなたが余りにも役立たずだったから――」
関係者A「体感的に1年くらい、存在を忘れてたもんで」
中森「この……!!」ブチッ
関係者A「アッハッハッハ! 冗談ですよぉ、中堀警部」
中森「ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」イライライラ
高木「ま、まぁまぁ、2人とも……」
目暮「ふん。馬鹿が……」
目暮「して服部君、犯人が分かるかもとはどういうことかね?」
502:
服部「ああ、それならこっちのオッサンが説明してくるわ」
目暮「ほう……あなたは?」
関係者B「はい。私はこの管理室の室長をしている者ですが――」
関係者B「今から2時間程前にこちらのログを見つけましてね」
[ ID ]25.32*.71.24*.103.41
[TIME]logged in at 13:50/18/05/2012
[PAST]15:32/18/05/2011
目暮「ん? 何ですかこれは?」
コナン「ねぇこれ、誰かが《BJ》を使ってるんじゃない?」
関係者B「おお、よく分かったね坊や」
佐藤「えっ、じゃあまさかこのIDって……」
関係者B「はい。《BJ》端末は現在2台しか作ってなく――」
関係者B「しかも、ココに置いてあるものと――」
関係者B「発表会に出展したもので全てなんです」
関係者B「つまり今、《BJ》にログインしている人物は――」
関係者B「《BJ》端末を盗んだ人物、ということになります」
503:
目暮「おおお! じゃあ今なら犯人の居場所が……!」
関係者B「いえ……残念ながらそれは……」
目暮「えっ……分からないんですか?」
関係者B「はい。博士はプライバシーの保護を重視しておられて」
関係者B「《BJ》では、こういったログから決して――」
『利用者の個人情報を特定できない仕様になっているんです」
高木「じゃ、じゃあどうやって犯人を特定するんですか?」
関係者B「もちろん、方法はあります」
関係者B「少しばかり危険が伴う方法ですけどね」
目暮「構いません。警察に危険は付き物――」
関係者B「でも死ぬかもしれませんよ?」
目暮「……!?」
505:
関係者B「私が考えている方法とは――」
『《BJ》の同期機能を使って、犯人のいる《世界線》に行くことです』
目暮「犯人のいる……《世界線》?」
関係者B「ええ。というのも犯人は1年前に時間旅行しており――」
関係者B「その《世界線》には、犯人が『2人』いるはずですから」
中森「なるほど。要するに『2人いる奴が犯人』ってことだな?」
関係者B「はい。現実世界に手掛かりが残っていない以上――」
関係者B「こちらの仮想世界で犯人を探す方が効率的かと……」
佐藤「うん……不本意だけど、それが最善策ね……」
高木「ええ……僕もそう思えてきました」
関係者B「ですが、先程も言ったようにこの方法には危険が伴います」
目暮「死ぬかもしれない……というやつか」
関係者B「はい。現在、《BJ》には致命的な仕様――」
『仮想世界に同一人物がいると、端末が強制終了する』
関係者B「――といった、言わばバグがあるんです」
510:
中森「ほう……端末の強制終了が、最悪死に至る……と?」
関係者B「ええ。1年前というと、皆さんは存在していますから」
関係者B「《BJ》端末が強制終了してしまう可能性があるんです」
佐藤「えっ、ちょっと待って。じゃあ犯人も危なくない?」
関係者B「そうですね……ほんと、いつ強制終了が起こるか……」
目暮・高木・佐藤・中森「……え?」
コナン「ねぇ……それ、急いだ方がいいんじゃないの?」
目暮「そうですよ! 何を悠長なことを言ってるんですか!」
目暮「今すぐ私をその世界に送り込んで下さい!!」
服部「待てやおっさん」 目暮「!?」
服部「タイムリープすんのは、そこのボウズや」
コナン(……えっ……)
目暮・高木・佐藤・中森「……コ、コナン君!?」
服部「なんたってこのボウズ、1年前にはおらへんかったからなぁ」
目暮・高木・佐藤・中森「……は!?」
517:
服部「――っちゅうんは冗談やとして」
目暮・高木・佐藤・中森「……はぁ?」
服部「ホンマの理由は、犯人が子供やからや」
高木「えっ……何で君がそんなこと……」
服部「アホ。脱出経路がダストシュートだけで――」
服部「そのダストシュートが子供しか通れないとあっちゃ――」
服部「犯人は子供しかないってことになるやろ」
高木「えっ……あ、そうだね……」
服部「相手が子供なら、こちらも子供――」
服部「同じ視線に立てるっちゅうんは、結構有利やと思うで」
高木「な、なるほど……一理あるかも……」
コナン「(おい服部。何だよその滅茶苦茶な論理は)」
服部「(アホ。んなもんコジツケで、ホンマの理由は最初のやつや)」
服部「(お前やったら、機械が勘違いしてくれるかもしれんやろ?)」
服部「(お前が工藤新一とは同一人物じゃないってな……)」
524:
【そして結局、コナンがタイムリープすることに……】
関係者A「よしっ、じゃあこのヘルメットを装着してくれ」
コナン「……分かった……」 『シュポッ』
コナン「……おじさん、被ったよ」
関係者B「よしOKだ」
関係者B「今回は特別に、緊急用IDでログインするから――」
関係者B「君の過去は《BJ》には吸い取られない」
関係者B「だから安心してね」
コナン(……過去を吸い取られないってことは、つまり――)
『仮想世界の過去は、オレの知らない過去ばっかり』ってことだな。
コナン(よし……これは重要な手がかりになりそうだ……)
関係者B「じゃあ出発するよ。ログアウトジェスチャーはどうする?」
コナン「んーと……じゃあ手を3回叩いたらでお願いします」
関係者B「『手を3回叩く』だね。分かったよ」ピピピピ
関係者B「よし! 設定完了! それじゃ頼んだよコナン君!」
529:
◆タイムリープ中(1年前)://帝丹小学校/正門前◆
コナン「……ここは……帝丹小学校か……?」
コナン「すげぇ……めちゃくちゃ細かく再現されてるぜ……」
【無事タイムリープに成功したコナン――】
【感覚としては、現実と比べて遜色はゼロだった】
コナン(取り敢えず、犯人は子供だってことは分かってるんだ)
コナン(まずは小学校の中から探すとするか――)
◆タイムリープ中://帝丹小学校/校庭◆
コナン(――って、時間帯的に生徒が残ってるわけねーよな)ハハ
【時間はまもなく16時を迎えようかとしてるところで】
【校庭には、友達とサッカーをする生徒がちらほらいた】
コナン(アイツらはどっちなんだろうな……)
?《BJ》の過去補完機能によってリアル度を向上させてるだけなのか
?それとも、実際に誰かの記憶を再現したものなのか
コナン(……話を聞いてみるか)
530:
コナン「なぁお前ら。ちょっといいか?」
少年A「何? 僕達今、サッカーの練習中なんだけど」
コナン「君たちって何年生なの?」
少年B「4年生だよ。何か文句あっか?」
コナン(凄いな……会話に全然違和感がない……)
コナン「いや、何でもないよ。サッカーを続けてくれ」
少年B「ふん。変な奴だな……」タタタ
コナン(やべぇな……これじゃ、聞き込みなんて意味ないぞ……)
コナン(いや……オレの知ってる奴に聞き込みすれば或いは……)
コナン(よし……蘭の家にでも行ってみるか)
532:
◆タイムリープ中://毛利探偵事務所前◆
【小学校を出て、毛利探偵事務所前に来たコナン】
コナン(にしてもこの再現度は凄いな……)
コナン(米花市の街並みに、全く違和感を感じない……)
コナン(ん? 違和感を……感じない……?)
―――― コナン ――――ピシュン!!
コナン(よく考えれば、それっておかしいじゃねーか!)
俺は《BJ》に、“過去”を提供してないんだぞ……!
つまり、今まで過去を提供した奴の中に――
米花市を知ってる奴がいるってことだ……。
コナン(まぁソイツが例の犯人かどうかは分からないが……)
なんたって過去提供者は、犯人の他に数十名いるらしいからな。
おそらくその数十名ってのは、組織の仲間だと思うけど……。
コナン(よしっ……とにかく事務所に突入してみよう……)
536:
◆タイムリープ中://毛利探偵事務所◆
『ガチャ……』
コナン(あ、やべ。インターフォン押すの忘れてたぜ)
小五郎「ああ? 何だお前……?」
コナン(お、おっちゃん!?)
コナン「あの……これはその……」
コナン「お、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」
小五郎「……は?」
コナン「おらおらおらおらおらおら!!」ドカドカドカ
【執拗に、壁を蹴るコナン】
小五郎「なっ……! この糞ガキッ!!!」
『ドスッッッッ!!』 コナン「くはっ……!」
【小五郎にぶっ飛ばされたコナン】
小五郎「ちっ! 唯でさえ競馬に負けて苛ついてるってのに」
小五郎「二度と来るんじゃねぇぞ!!」 『ガチャン!!』
539:
コナン「けほ……けほ……やった……ぜ……」
おっちゃんの顔は、おっちゃんの顔だった……!
言動も趣味もおっちゃんのそれだし、間違いねぇ……!
コナン(つまり犯人は……おっちゃんを知ってる人物……!)
……いや、待て。おっちゃんは全国的に超有名人じゃねーか……
犯人がおっちゃんを知ってたところで、その情報に価値はない……
コナン(……じゃあ有名人じゃなきゃいいのか……)
――歩美ちゃんの家にでも、行ってみるかな……
543:
◆タイムリープ中://吉田邸門前◆
コナン(凄い……ここの再現度も完璧だ……)
『ピーンポーン♪』
『……はい。誰ですかー?』
コナン(えっ……? これ、歩美の声じゃねーか……)
組織の仲間が、歩美を知ってるワケねーし……
つまり犯人は……歩美を知ってる人物――
コナン(って俺はアホか! タイムマシンを発明したのは誰だよ!)
コナン(歩美のことをバリバリ知ってる、阿笠博士じゃねーか……!)
くそっ……また俺は意味のない情報を……
『……あれ? もしもーし?』
『……はぁ……今日は変な人が多いな……』
『さっきも《痩せた元太君》みたいな人がいたし……』
コナン(えっ……なんだって!?)
549:
コナン「歩美ちゃん! 今何て!?」
『ふぇ!? いや、こっちの話です!!』ブチッ
コナン(くっ……! 切られてしまった……!)
だが、今確かに歩美は《痩せた元太》って言ってたよな……。
つまりこの世界には《痩せてない元太》もいるってこと……。
コナン(じゃあタイムマシンを盗んだのは――)
――元太ってことか……?
550:
◆タイムリープ中://小嶋酒店◆
【元太の家に、超特急でやってきたコナン】
コナン「おばさん! ちょっといい!?」
元太母「あら、坊やどうしたの?」
コナン「ここに《痩せた元太》が来なかった!?」
元太母「痩せた元太……? やだ……あれやっぱり……」
元太父「ああ……幻覚じゃなかったのかもな……」
コナン「えっ!? 来たの!?」
元太母「ええ……あなたは元太の友達?」
コナン「え……あ、うん。そうだけど……」
コナン「その痩せた元太は何か言ってなかった!?」
元太母「ええ……なんかね――」
『鰻重を食わせろ』
元太母「――って、物凄い形相で言ってきたわ……」
コナン(……鰻重だと!?)
553:
コナン(確か現在では、鰻は絶滅(>>14)していて……)
-----------[Internet Explorer]-----------
-------------[Yagoo! Japan]-------------
『うなぎ絶滅……各地で悲嘆の声』
『行方不明の工藤新一、実は生きてた!?』
『いよいよ明日、米花ビルでタイムマシン発表会』
『怪盗キッド犯行予告、次なる狙いは“時間”?』
―――― コナン ――――ピシュン!!
コナン(何だ……そういうことだったのか……)
……元太……おめぇはそこまでして……
コナン「……おばさん。その元太は今どこにいるの?」
元太母「なんか《米花リバー》に行くって言ってたけど……」
コナン「……分かった。ありがとうおばさん!」タタタ
元太母「あっ、待って!」
コナン「……え?」
元太母「坊やは一体……何者なの……?」
コナン「……江戸川コナン――探偵さ!」
元太母「……探……偵?」
コナン(……あ……)
【思わず飛び出たそのセリフには――】
【辞めたはずの《探偵》という単語が入っていた……】
580:
>>14のニュース全部に意味があったとは
555:
伏線YABEEEEEEEEE!!!!
556:
あれも伏線だったのか
557:
まさかの動機
563:
◆タイムリープ中://米花リバー◆
【――そこには、痩せ細った裸足の少年……】
【河流に入って、何やら魚を探してるようだった】
コナン「おい元太。そんなんじゃ鰻は取れねーぞ……」
元太「なっ……コナン!? どうしてここに……!?」
【その言葉を聞いた瞬間、犯人が元太であると確定した】
【何故ならこの世界に、俺を知ってる奴なんているはずないのだから】
コナン「お前は阿笠博士のタイムマシンを盗んだ……そうだろ?」
元太「へっ……だからどうした!?」
元太「俺は後悔なんかしてねーぞ!」
コナン「……!?」
元太「鰻は俺の命なんだ。俺は死ぬまでこの世界で生き続けるッ!」
コナン「……ッ!!」
コナン(こんな小さな子供でも……こんな立派な《正義》を……)
……それなのに……俺は……俺という奴は……!
元太「……ん? おいコナン……何泣いてんだお前……?」
567:
コナン「お前……鰻のためだけに銃を覚えたのか?」
元太「ああ」
コナン「鰻のためだけに、キッドを利用したのか?」
元太「まぁな」
コナン「鰻のためだけに、キッドを撃ったのか?」
元太「おい、うぜぇぞコナン」
コナン「本当に一生、後悔しないか?」
元太「だからするわけねぇって言っただろ!」
コナン「……元太ッ……!!!!」
元太「な、何だよ急に……?」
コナン「お前はその犯罪を誇っていい!」
元太「……はぁ?」
コナン「世間はお前のことを絶対に許さない!」
コナン「もちろん俺だって1ミリも認めちゃいない!!」
コナン「だがお前だけは……大いに胸を張っていいんだよ!!!」
575:
元太「お前……なんかキメェぞ……」
コナン「ははっ……それはおめぇの体型のことだ……」
コナン「早いとこ鰻をたらふく食って、元の体型の戻れよな……」
元太「……俺を捕まえねーのか?」
コナン「いや、捕まえるさ。今からログアウトして――」
コナン「警部達にお前が犯人だったことを伝えるつもりだよ」
元太「何っ!? お前言ってることが滅茶苦茶じゃねーか!」
コナン「バーロー。俺はお前を認めるなんて言ってねぇし――」
コナン「それにお前と同じように、俺にも《正義》があるんだ」
《犯罪者》を捕まえるために全力を尽くすという《正義》がな……
元太「くっ……この野郎……!!」
元太「逃がしてたまるかよッ!」
【川岸においてある凶器を取りに行く元太――】
【その隙にコナンはゆっくりと掌を3回叩いた……】
コナン「あばよ……孤独なヒーロー……」
582:
◆18時00分://《BJ》中央サーバー第一管理室◆
【タイムトラベルを終え、現実に帰ってきたコナン】
【どうやら彼の中で、何か得られたものがあったようだ……】
コナン「……ふぅ……(脳みそが熱い……)」
服部「おっ、目ぇ覚めたようやで」
目暮「コナン君! それで犯人は分かったのかね!?」
コナン「うん……分かったよ……」
『犯人は……小嶋元太だった……』
【――コナンは目暮達に真実を伝えた――】
高木「そんな……あの元太君が……」
服部「なるほど……鰻が絶滅したストレスで痩せとったから――」
服部「あのダストシュートから逃げられたっちゅうワケか……」
佐藤「うっ……そんな……いやあああああ……!!」グスン
583:
佐藤さんどうしたよ
585:
佐藤さん?
586:
佐藤に何があった
587:
コナン「あのさ、目暮警部……」
目暮「な、何だねコナン君?」
コナン「……実はキッドを撃った犯人だけじゃなくて――」
コナン「……博士を殺した犯人も分かったんだけど……」
目暮「……ぇ……?」
全員『な、なんだってー!!?』
服部「おい工藤! やのうてコナン! はや教えろ!」
目暮「そうだぞコナン君! 是非とも教えてくれたまえ!」
コナン「うん……勿論教えるけど――」
『3時間だけ、時間をくれないかな……?』
高木「えっ……ど、どうして……?」
服部「ほんまや! そんなん言うとる場合ちゃうやろ!」
目暮「むぅ……理由は何だね? コナン君」
589:
コナン「ごめんね警部。理由は言えないんだ……」
コナン「でも必ず、今日の9時までには教えるから……」
目暮「し、しかしだな……」
コナン「絶対に……教えるから……」
目暮「うむむ……そこまで言うなら仕方ない……」
目暮「じゃあ9時までには、警視庁舎に来るんだよ?」
コナン「うん……ありがとう……目暮警部……」
服部「(おい工藤! 何やねんそれ!)」
コナン「(ハハ……お前こそ、その顔の痣は何なんだよ?)」
服部「(こ、これは和葉と園子に殴られ――ってアホか!)」
服部「(んなことはどうでもいいから、さっさと教えろや!)」
コナン「(ハハッ……心配すんな服部……)」
コナン「(9時になったら、全部教えてやっからよ……)」
594:
◆19時00分://工藤邸/リビング◆
【――1時間後、自宅にて優作を待つコナン】
コナン(親父にはココに来るようメールを送っといた……)
コナン(遅くても8時までには来てくれるだろう……)
【およそ30分前、優作にメールを出したコナンだが、】
【そんな彼には、メールを送る方法が2通りあった――】
?組織のボスのアドレス《#969#6261》にメールを出す方法。
?父親のメールアドレスにメールを出す方法。
【この2択は、まるで優作の問いに対する選択肢のように思えた】
【?を選んだら殺し合い、?を選んだら自首、といった感じに……】
コナン(まぁ結局、俺が選んだのは……)
『ガチャ』
【コナンの思考を遮る形で、玄関のドアが開く――】
闇の男爵「……待たせたな……新一……」
コナン「いや……俺もいま来たところだよ……」
【どうやら《ナイトバロン》が到着したようだ】
598:
闇の男爵「結局、1日も時間を使わなかったみたいだが?」
コナン「ああ。だが俺は、この意思に後悔しないと誓えるぜ」
闇の男爵「そうか……なら話は早い。早聞かせてもらおうか」
『お前にとっての《正義》というやつをな……』
コナン「ふっ……そんなの言うまでもない……」
『俺の《正義》は、探偵として人を救い続けることだ』
コナン「……俺が間違ってたよ……親父……」
コナン「博士を殺しちまって……後悔しまくりだぜ……」
闇の男爵「……そうか……なら自首してくれるんだな……?」
コナン「ああ……俺は自分の罪を認めてる……」
コナン「自首することが、きっと最善策だ……」
603:
闇の男爵「ふっ……ならお前と最後の対面をしよう」
闇の男爵「探偵と悪ではなく、もちろん、父と子として……」
コナン「ああ……」
闇の男爵「――と、言いたいところだが」
闇の男爵「残念ながらそれはできないな……」
コナン「……え……?」
【そう言いながら、仮面を取る《ナイトバロン》――】
【その仮面の裏には、変声機らしきマイクがついていて……】
闇の男爵「なんたって“俺”の正体は――」
新一「《工藤新一》なのだから……!!」
コナン「……ぇ……」
コナン「……はああああああああああ!!?」
620:
コナン「な、何なんだよお前はッ!!?」ガクガク
新一「まぁ厳密に言うと、10年後のお前だけどな」
コナン「……10年後の……俺……!?」ブルブル
新一「ああ。俺は博士のタイムマシンでこの時間軸に来たのさ」
コナン「タイムマシン……だと……?」ガクガク
【……確かに思い当たるフシはいくつかあった……】
まず奴は、書斎に現れるタイミングがピッタリすぎた。
まるで俺が13時45分(>>352)に来ることを知ってたように……
【間違いない。この本の数、机の配置、独特の匂い……】
【優作お気に入りの古時計は13時45分を指していた】
さらに俺が博士を殺したことを何故か知っていた……()
加えてそれが暇つぶしだったことも知っていた……(>>379)
闇の男爵「愚かな……そんなもの、《正義》とは言わない」
闇の男爵「《正義》とは、真に《貫けること》――」
闇の男爵「お前のそれに、一貫性なんてものがあるのか?」
闇の男爵「殺人に対して、死ぬまで後悔しないと言い切れるのか?」
闇の男爵「ただの《暇つぶし》に、それだけの責任が取れるのか?」
コナン「あっ? うっせーな! 暇つぶしのどこが悪いんだよ!」
それに今思えば、暇つぶしが《悪》とは限らない……
それが後悔しない暇つぶしならば、十分に《正義》と言える。
奴は、俺が後悔することを知っていたから自首を勧めたんだ……
つまり奴は……俺以外の……何者でもない……
コナン「……まさか……そんな……」ブルブル
『“機械”の癖にやるじゃないか』
コナン「うわあああああああああああああ……!!」
627:
新一「ちなみに言っとくが――」
新一「俺が親父のフリをして話した内容は全て本当のことだぞ」
コナン「……ぇ……?」
10年後のお前――すなわち俺は、
10年前、親父から親父の全てを聞いたんだ。
だが当時の俺は、以前までのお前のような奴でな。
親父がボスだと聞いて、親父を殺すことしか頭に無かった。
コナン「……それで……親父を殺したのか……?」
ああ。俺は親父を不意打ちで殺した末、10年間ずっと――
《ナイトバロン》に成りすますことで組織のボスであり続け、
そして、ひたすら罪を犯しまくるという生活を送っていた。
新一「だがある日を境に、唐突に冷めてしまってな……」
そしたら今まで感じなかった《罪悪感》を感じるようになり――
酷い時で3日間くらい全く眠れない日が続いたんだ……
新一「酷いもんだぜ? 毎日掻き毟り、叫んで、壁を殴って……」
ロクに考えも持たずに、ただ何となく罪を犯してたせいさ……
心を支える強い信念がない人間は、いつか必ず孤独に陥る……
新一「そう――犯罪者になるには、相応の覚悟が必要だったんだ」
それこそ、俺達の父親・工藤優作のようにな……
632:
新一「だから俺は……この世界にやってきたんだ……」
過去の自分に自首をさせ――
手遅れになる前に、罪を懺悔させるためにな……
コナン「……」
【一度冷静になり、脳内を整理するコナン……】
コナン(待てよ……俺が仮想世界のNPCなら……)
この世界での俺の思想、思考、趣味、性癖は――
全部機械によって作られてるものってことだよな……?
じゃあ今、こうして考えてるのも俺ではなく機械で……
コナン「うぅ……うあああああああああああ!!!」
新一「……ちなみに親父は別の場所にいるから安心してくれ」
新一「この世界線では、親父も野望を達成できるだろうよ」
637:
コナン「……お前……何でそこまでして……」
新一「ああ……俺だって意味のないことくらい分かってる」
所詮この世界は現実ではなく、仮想の時空――
そんな世界で自首したって、現実は何も変わらねーからな……
コナン「……じゃあ……何で……」
強いて言うなら……仮想世界の過去の自分を変えることで――
自分のアナザーライフの存在を、確かめたかったのかもしれない……
新一「俺にも別の人生があったんだってことをな……」
コナン「……」
【新一の目は充血しており、その下にはクマが出来ていた】
【彼が眠れない日々を送ってることは本当らしい……】
640:
新一「ふっ……じゃあそろそろお別れの時間だ……」
コナン「……ぇ……」
新一「最後にもう一度確認するが――」
『お前は本当に……自首するんだな?』
コナン「あ、ああ……それは変わらねーけど……」
新一「そうか……なら良かった……」
『きっとそれは、お前にとっての最善策になるよ……』
コナン「ま、待て……現実に帰ってどうするつもりだ……?」
新一「……ハハッ……おいおい……」
新一「探偵の癖に、聞かなきゃわかんねーか?」
新一「お前を自首させて、俺は心辺整理を済ませたんだ――」
新一「現実に帰って何をするかは……察してくれよな……」
コナン(……ま、まさか……)
652:
コナン「……後悔はしないんだな……?」
新一「バーロー……おめぇには言われたくねぇよ……」
コナン「ふっ……そうか……なら好きにしてくれ……」
新一「……じゃあこれでサラバだな、過去の俺――」
新一「いや、『もう一人の俺』と言うべきか……」
コナン「ああ……一生のお別れだ……」
新一「……コナン……」
コナン「……ん?」
新一「現実は、いつもひとつ……だぜ?」
コナン「……」
コナン「バーロー……何当たり前のこと言ってんだ……」
新一「……ハハッ……それもそうだな……」
【……そして新一は、この世から姿を消した……】
655:
コナン(……ん……?)
【新一のいた場所に手紙を見つけたコナン……】
【どうやら新一からの最後のメッセージのようだ】
コナン(……えーっと……なになに……)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
もう一人の俺――江戸川コナン へ
俺はこの仮想世界からログアウトしたが、
あと2時間くらいは、《BJ》を起動したままにして――
新機能・自動進行モードでプレイすることにする。
つまりお前は、プレーヤーである俺がいなくとも、
あと2時間だけはその世界で行動できるということだ。
是非その間に警視庁に行き、自首をしてきてくれ。
工藤新一より
P.S.
お前が《闇の男爵》でなく――
《父親》にメールを送ってくれたことから、
俺は前もって、お前にプレゼントを用意しといた。
もうじきそこに来るだろうから、楽しみにしとけ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コナン(ん……? プレゼントって何だ……?)
662:
『ピーンポーン……』
コナン「!?」
【静寂に鳴り響く、インターフォンの奏】
【もしかして……プレゼントとやらが来たのか……?】
【コナンは思考を巡らしながら玄関へと向かう……】
『ガチャ……』
コナン「……ぇ……?」
灰原「……工藤君……」
コナン「は、灰原……!?」
669:
灰原「あの……私……」
コナン「新一に……会ったのか……?」
灰原「……ええ……」
コナン「そうか……まぁとにかく上がれよ……」
675:
◆19時30分://工藤邸/リビング◆
コナン「そりゃ驚くよな……この世界が仮想世界だなんて……」
灰原「そうね……さっきから頭が痛いわ……」
コナン「てかお前、どうして《闇の男爵》に会えたんだ?」
灰原「話せば長くなるけど――私、ジンに捕まって――」
灰原「それで、組織のボスの元に連れて行かれたのよ」
コナン「……えっ?」
【灰原は組織に捕まるまでの紆余曲折を――】
【嘘偽りなくコナンに聞かせた……】
コナン「そうか……光彦のせい――」
コナン「いや、元はと言えば俺のせいか……」
灰原「……え?」
コナン「光彦は……俺を脅してない……」
コナン「俺は俺の意思で……お前に酷いことをしたんだ……」
灰原「……えっ? あなたが……?」
680:
コナン「ああ……悪かった……灰原……」
灰原「で、でも円谷君は授業中の会話を知ってたのよ?」
コナン「それはきっと、盗聴でもしてたんだろう」
コナン「何にせよ全て俺が悪い……すまなかった……」
灰原「い、いいわよ……別にもう何とも思って――」
コナン「嘘つくな……だってお前……泣いてたろ……?」
灰原「あ、あれはその……」
コナン「……あれは?」
灰原「……馬鹿……そんなことも分からないの?」ボソッ
コナン「……え?」
灰原「好きな人にあんなことされたら――」
灰原「誰だって、泣きたくなるに決まってるじゃない」
コナン「……」
……へ?
689:
好き? 灰原が……この俺を……?
コナン「なっ! 何言ってんだよ!?///」
コナン「お前、今日の授業中、俺を振ったじゃねーか……!///」
灰原「馬鹿ね。授業中に告白する人間がどこにいるのよ」
灰原「はぐらかすくらいしか、方法がないじゃない」
コナン「んなこと言われたって……!」
灰原「それに私が今までどれだけ――」
灰原「蘭さんと楽しそうにしてるあなたを見てきたと思ってるの?」
灰原「信じろって言う方が無理な話でしょ」
コナン「じゃ、じゃあ! 何で今更信じてくれたんだよ?」
灰原「それは……10年後のあなたから聞いて……」
コナン「は!? 俺よりアイツの方を信じたってのか!?」
灰原「な、何よ! アイツの方って……どっちもあなたじゃない!」
コナン「……」 灰原「……」
灰原「……ちょっと……何で黙るのよ……?」
691:
コナン「いや、怒った灰原も可愛いなーって」
灰原「……はぁ? ば、馬鹿じゃないの!」
灰原「急に何言って――」
コナン「ははっ、照れてる顔も可愛いぜ」
灰原「くっ……うっさいわねっ……」プイッ
コナン「……」
【しばし灰原を見つめるコナン――】
【そして真剣な口調で彼女を呼ぶ】
コナン「灰原。ちょっとこっちを向いてくれ」
灰原「何よ。どうせまた誂うんでしょ?」プイッ
コナン「いや……ここからは真面目な話だ……」
灰原「……え……?」
698:
コナン「俺は阿笠博士を殺した――」
コナン「それは10年後の俺から聞いてるよな?」
灰原「……ええ……聞いてるわ」
コナン「じゃあ何でお前は、そのことに触れないんだ?」
コナン「お前にとって、博士は命の恩人なんだろ?」
コナン「言わば俺は、憎き敵になるんじゃないのか……?」
灰原「……そうね……」
灰原「確かに博士は私の恩人である上に――」
灰原「あなたは取り返しのつかないことをしたわ」
コナン「……」
灰原「でもね、博士がロリコンだってこと、あなたは知ってた?」
コナン「……え? 博士がロリコン……?」
灰原「ええ。お風呂に盗撮カメラを仕掛けたり――」
灰原「私が着替えをするとき、部屋に入ってきたりされたわ」
コナン「なっ……! なんだと……!?」
708:
灰原「あとは偶に下着を盗まれる程度ね……」
灰原「まぁ直接何かされたりはなかったから――」
灰原「まだ救いようのあるロリコンだけど……」
コナン「そんな……博士が……」
灰原「でも勘違いしちゃダメよ……」
灰原「だからと言ってあなたの罪が軽くなるわけじゃないから」
コナン「ああ……それはちゃんと分かってる……」
灰原「ただ私が言いたいのは――」
『あなたが思ってる程、私は博士を慕ってなかったってこと』
灰原「……それとあとは《BJ》についてもね」
コナン「《BJ》? あの機械に何か問題あるのか?」
灰原「ええ……あの機械は、はっきり言って有害なの」
709:
パソコンの中身か・・・
着々と複線を回収してる
713:
伏線回収の鬼
715:
ほとんど忘れかけてるやつが出てくるな
719:
忘れかけた頃にきっちり伏線回収する話がこれほど気持ちいいとは
720:
灰原「実は私、あの機械の開発には少し携わっててね」
灰原「――まぁもちろん、組織にバレない程度だけど」
灰原「前から《BJ》の完成には、少し抵抗があったの」
コナン「……それが“有害”だからか?」
ええ。《BJ》は人間の脳をフルに稼働させて――
仮想世界を現実であるかのように錯覚させる機械だけど、
そもそも人間の脳ってのは、そんなにタフじゃないのよ。
灰原「その証拠に、10年後のあなたはこう言ってたわ――」
『10年後の世界では、《BJ》利用者が10億人以上いる』
『しかし、それと同時に《BJ》利用者の40%が――』
『――脳死でその一生を終えているんだ……』
灰原「――ってね」
コナン「……ま、まじかよそれ……!!」
灰原「全部ホント」
灰原「もちろん私の他に、《BJ》の有害に気づいてた人はいたわ」
灰原「中でも板倉ってプログラマーは一味違ってて――」
灰原「彼は組織に対し、ただ一人、勇敢に立ち向かった人間よ」
721:
伏線回収の能力を久保帯人に少し分けてあげて
725:
灰原「でも博士は、自分と組織の夢のため、最後まで開発を続けたわ」
灰原「だからこの件も、私が博士に嫌気が差した理由の一つよ……」
コナン「じゃあお前は、俺のことをそこまで恨んでねーのか……?」
灰原「……そうね……まぁ軽蔑はするけど、恨んではいないわ……」
コナン「……そうか……ハハッ……俺はほんと運がいいな……」
灰原「馬鹿ね。だから最後にあなたを見送りにきたんじゃない」
灰原「恨んでたら、10年後のあなたの命令なんて無視してるわよ」
コナン「そうか……お前は10年後の俺からのプレゼントだもんな」
灰原「何? 私を物扱いするわけ?」ジトッ
コナン「ハハッ……わりぃわりぃ……」
734:
【そして――】
コナン「じゃあそろそろ行ってくる」
灰原「……ええ。警部さんが待ってるものね」
コナン「灰原。あの……その……何だ……」
灰原「?」
コナン「いや、なんというか……」
コナン「俺がちゃんと罪を償って帰ってこれたらの話なんだが――」
灰原「ふふっ……何かしら?」
コナン「だから……その日が来たら……その――」
灰原「工藤君」
コナン「えっ?」
『……ちゅ……♪』
コナン「……ぇ……」ポカーン
灰原「それ……初めてだから……///」
コナン「……えっ……あ……えっ!?///」ドキドキドキ
735:
うおおおおおおおおおお
736:
えんだあああああああああ
740:
えんだあああああああああああああああああ
741:
いやあああああああああ
742:
えんだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
743:
いやああああああああああ
744:
えんだあああああああああいやああああああ
746:
いあやあああああああああああああああああああ
747:
何このホイットニー率
757:
灰原「私、工藤君のこと、いつまでも待ってるから……」
コナン「は、灰原……お前……///」
【無言で見つめ合う2人――】
【そこに言葉は要らなかった】
灰原「……ほら、早く行かないと――」
灰原「目暮警部に怒られるわよ?」
コナン「……ああ……そうだな……」
コナン「じゃあ灰原! 俺、絶対に戻ってくるから!」
灰原「何言ってんのよ。戻って来なかったら抹殺よ?」
コナン「ははっ……わぁーってるって」
コナン「あ、でも……抹殺もされてみたいかも……」
灰原「……バカ……///」
【見送る灰原を背に、コナンは工藤邸を出発する】
【向かうは警視庁――彼の人生は、始まったばかりだ】
781:
◆現実(2時間後)://米花ビル/屋上◆
新一「……2時間経過……」
新一「……ゲームクリアーだ……」
【《BJ》の電源を落とし、メモリーカードを抜く新一】
【その中には、新一の変えた過去が記録されている】
新一「ふっ……俺のアナザーライフ……か……」
【そう呟くと、遺書の隣にそのメモリーカードを置いた】
新一(……意味なんてない……ただの自己満足……)
『……何一つ、現実は変わっちゃいないんだ……』
【フェンスを飛び越え、その下を見下ろす新一】
【その高さに目眩を覚えたが、罪悪感は更にそれを上回った】
新一(人生に手遅れなんてない……そう言った奴が居たっけ?)
新一(ハハッ……ソイツはどんだけ狭い世界で生きてんだろうな)
789:
【――新一は重心を前方移した】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
考えろ。後悔したくなきゃ、考えるんだ……
手遅れになってもしらないぞ
今のままの生き方でいいのか?
棺桶まで持っていける《正義》はあるのか?
考えろ。後悔したくなきゃ、考えるんだ……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『……グシャッッッ……!!!!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
過去は絶対に、変えられない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コナン「探偵をやめて犯罪者になる」・完
795:
乙
序盤からは考えられないシリアスだし伏線貼りまくりだしでいい意味で騙されたわ
801:
乙
ここまでの長編とは驚いた
806:
>>1乙
最初から最後まで見られてよかった!!
810:
乙
色々伏線あったが、機械呼ばわりしたのが上手かった
811:
乙
面白かった
812:
おつ。久しぶりに良ssを見た
814:
乙
伏線の使い方が素晴らしかった
815:
乙
久々に面白いSSを見れてよかった
826:
乙。楽しかったよ>>1
839:
素晴らしい...
35
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