ドラえもん「道具を使って本気で戦いたいだって?」【完】back

ドラえもん「道具を使って本気で戦いたいだって?」【完】


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8:
――8月6日、深夜――――――…
ー公園ー
のび太「この辺がいいかな………」
しずか「ええ、ここだと人目につく事も無いでしょう」
のび太「さて……まず穴を掘らなきゃ……」
しずか「……ええ。」
539:
のび太「ドラえもんの事だ……タイムマシンを修理に出してるだろう………」サクッサクッ
しずか「…………」
のび太「………はやくタイムマシンを見つけて……こんな歴史………!」
しずか「のび太さん……」
のび太「な、なんでもないよ……はねた土が目に入っただけ……」ゴシゴシ…
しずか「無理しないで………」
のび太「……うん……………」
540:
のび太「……早くお墓を作ってやらなきゃ……野ざらしじゃ…落ち着かないもんね……」
しずか「ええ………」
のび太「……」サクッサクッ
ガンッ!
しずか「……あら?今地面に……」
のび太「シャベルに何か当たったね……なんだろう…?」
542:
のび太達は
地面に埋まってた球状の物体を掘り起こした…
しずか「……何かしら……?」
のび太「丸い、ね……公園の設備に関するものじゃあないみたいだ……」
しずか「……誰かが埋めたのかしら…?」
のび太「う〜ん……玩具かな…………」
しずか「あら?このボール、上半分が蓋みたいだわ?」
のび太「何かの入れ物なのかな……?」
543:
しずかが球状の物体の上部分を捻り
蓋を開いてみると
中には 一冊のノートと一枚のシール、それに時計がひとつ
ひっそりと置かれていた…
しずか「……誰かが記念品を埋めてたみたいね。」
のび太「タイムカプセルってやつかぁ………何だか悪い事をしたなぁ…………」
しずか「誰かのしまった思い出はむやみに覗くものじゃないわ…元に戻しておきましょう」
のび太「うん……それにしても変な形の入れ物だね。」
しずか「うふふ、まるでドラちゃんの道具みたい……」
544:
――――――――――――ドラえもんの道具……
のび太「……待ってしずちゃん!」
しずか「え…!?」
のび太はボールを両手に取り
見開いた目で中身を覗く…!
のび太「……ま、間違いない!じっくり見るまで何の道具か全く思い出せなかった……!」
545:
のび太「これは…………!」
のび太「このボールは……『タイムカプセル』だ……!」
しずか「……?」
のび太は中にあった一冊のノートを手に取り
ページをめくる…!
のび太「……………!?」
しずか「……どうしたの?のび太さん……?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
のび太「……こ……これ……これはどうなって……!」
546:
7月07日――――――
のび太は死なない
7月08日――――――
のび太は死なない
7月09日――――――
のび太は死なない
…次々とページをめくるも
どのページも同じ事柄で埋め尽くされていた
のび太〈―――――――何だ……ッ!?これは……ッ!?〉
547:
のび太「どのページも…どのページもッ!!」
しずか「のび太さん…!?ちょっと落ち着いて…!」
のび太「お墓を作る為に…ここの地面を選んだのは……僕だ…!」
のび太「……だけどこれは?……誰が……誰が書いた?……これは僕の字じゃあ無いッ!」
のび太「これを埋めた奴は……どうして僕がここを掘る事を知っていたんだ!?」
のび太「………!」
548:
8月6日――――――
日記を付けたのは良いものの
のび太が好き勝手していないだろうか心配だ
8月6日に一度僕らで日記を掘り起こそうと思う
そこで話し合って、どうするか決めよう
それまでこの日記やタイムカプセルは誰にも見つかる事なく
ひっそりと地中に埋まる事
のび太「これは……?ドラえもんが書いたのか……!?」
しずか「そういえば、ドラちゃんがおかしくなったのはいつ頃からなの……?」
のび太「ドラえもんがおかしくなったのは……7月13日………」
しずか「……?」
のび太「無い……13日以前の記憶が……全く思い出せない……!!」
549:
のび太はバッグから
『いつでも日記』を取り寄せた
のび太「『いつでも日記』、これは記憶にないような過去の出来事を正確に書くことができる……!!」サラサラサラ…
のび太〈書いた通りになる『あらかじめ日記』に何故、僕が死なないと書かれていたのか……『いつでも日記』で僕の抜け落ちた記憶を探れば何かわかるかも……!〉
7月07日――――――
もっと刺激のあるスリルに満ちた日々を送りたい
ドラえもんに『もしもボックス』を出してもらおう
のび太〈――――――っ!!〉ズキッ!
のび太〈……頭が……痛い……………!〉
しずか「何か思い出せた……?」
のび太「……見当はついたよ……後は『記憶とり出しレンズ』で念じて……曖昧な記憶を脳内で鮮明に映像化させる……!!」
554:
――7月07日――――――…
のび太「ドラえも〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」ドタドタドタドタ…!
ドラえもん「お帰りのび太くん。期末テストの結果が返ってきたんだろ?どうだった?」
のび太「聞かなくてもわかるだろっ!!」
ドラえもん「やっぱりね…」
のび太「もうこんなテストに追われる生活は嫌だーーーーーっ!!」
555:
ドラえもん「仕方ないよ。みんな嫌々ながらやってる事なんだ。」
のび太「こんな紙切れの上から僕が判断されてたまるかっ!!人間は統計じゃない!!」
ドラえもん「逆に5分10分の面接で人間の全てが把握できる訳でもなく……ある程度の指針になっちゃうのはしょうがないよ。」
のび太「あーやだやだっ!こんな退屈な学校生活っ!もっと刺激のあるスリルな毎日を送りたーーいっ!」
ドラえもん「起業でもすれば」
のび太「……それだ!僕は独立する!!そして独立するにはやっぱり経験が必要だな……」ジーッ
ドラえもん「……何だいその目は」
のび太「その…ドラえも〜ん……『もしもボックス』をかしてくれないかな〜」
ドラえもん「君はまず僕から独立する方が先なんじゃないかな……」
556:
のび太「何だかんだ言いながらも道具を出してくれるドラえもんってやっさし〜」ガチャ
ドラえもん「はぁ…」
のび太「何だよ」
ドラえもん「君が好き勝手しないか心配だ。僕もついて行く」
のび太「えぇー…」
ドラえもん「やっぱり遊ぶ目的だったんだな!?だいたい君はいつも…」
のび太「『もしも僕がスリルに満ちた戦いの日々を送る事が出来たら』!!」
ドラえもん「あ、こらっ!!」
パァァァァ・・・・・・
557:
ドラえもん「呆れたっ!やってる事はバーチャルのゲームと同じじゃないか!!」プンスカ!
のび太「それは違う。この野比のび太が独立へと踏み出す為の夢の第一歩だよ。」
ドラえもん「何がさ」
のび太「これから僕は『スペアポケット』を落としにいく。それを見ず知らずの誰かが拾う事によって、これから幾多の戦いが展開される事になるだろう…」
のび太「そういった困難に対し僕は適材適所で道具を使い分けて潜り抜ける!それによって僕は状況判断能力が磨かれると言うわけさ!」
ドラえもん「全然理に適ってないよ」
のび太「それじゃさっそく」
ドラえもん「ちょっと待て」グィッ
558:
のび太「何だよドラえもん。止めたって無駄だよ。僕は何度でも『もしもボックス』を使ってここへ戻って来るからね」
ドラえもん「わかってるよ。どうせ止めても聞きやしないんだ……これで良し、と。」サラサラサラ…
のび太「そのノートは?」
ドラえもん「これは『あらかじめ日記』。この日記帳に書いた通りになる。僕の持ってる道具の中で一番凶悪な道具だね。」
ドラえもん「君が死なない様に書いておいた。」
のび太「!?」
ドラえもん「考えても見ろ……『ウソ8OO』とかを使われてしまえば僕らは一発であの世行き。元の世界へ戻る事も出来なくなるぞ。」
のび太「そ、そうか……確かに!……でもドラえもんは?」
ドラえもん「僕の身に何かあれば君に助けてもらうとしよう。これも修行の一環である。」
のび太「えぇ〜めんどくさい事するなぁ……」
559:
のび太「それじゃあこうしよう」
のび太はドラえもんのポケットから
『ワスレンボー』を取り出した
ドラえもん「?」
のび太「いくつかの無敵の道具の存在を一旦忘れるんだ。どうせ僕は死なないし、それくらいのハンデが無いとスリルな日常は送れない」
ドラえもん「なるほどね。すると誰かに悪用されても困るな……本当に危ない道具は『タイムカプセル』に入れて僕等にしか掘り起こせない様に隠しておこう。」
のび太「いいね!あとは……これと、『タンマウォッチ』は使ってみたいから……こっちを入れて……これだけでいいかな。」
ドラえもん「道中、スペアポケットを落とすのも忘れずにね。」
のび太「それじゃあさっさとむさ苦しい『もしもボックス』から出て、公園へしゅっぱーつ!」ガチャ!
560:
ー公園ー
ドラえもん「『ジェットモグラ』を使えばあっという間だったね!」
のび太「あとは『タイムカプセル』を埋めて、と……」
ドラえもん「そういえば『魔法事典』も中々危ない道具だけれど……入れなくていいのかい?」
のび太「魔法と逆の名前を言うだけで対処できるし、入れなくてもいいだろ。」
ドラえもん「そっか……道具を忘れるといっても、見たり聞いたりする内に思い出せるから悪用されても心配ないね。」
ドラえもん「それじゃあ『ワスレンボー』でお互いの頭を叩くよ」
のび太「よしきた」
ポコッ☆
ポコンッ☆
561:
―――――…
のび太「……!!!」
しずか「のび太さん、何かわかった……?」
のび太「え……いや……確信部分についてはまだ何にも……!」
のび太〈い……言えやしないよ……この世界が僕のワガママによって作られた『もしもボックス』の世界だなんて……!〉
のび太〈それより……ドラえもんはどうしてああいう風になってしまったんだ……!?〉
のび太は再び『いつでも日記』に
筆を走らせる…
のび太「……!?」
562:
7月07日――――――
夜に珍しい客が訪ねてきた
どうやら僕らが故意に落とした『スペアポケット』を返しに来てくれたらしい
僕らは油断していた
この世界はスリルある日常を求めて作られた世界……
彼は『敵』として僕らの前にやって来たのだ
『メモリーディスク』の不意打ちを喰らって僕等は倒れてしまう……
ディスクとして取り出される今日一日分の『記憶』
でも日記の力は僕を守ってくれている
それに記憶を覗いた所で『タイムカプセル』は僕等でしか掘り起こせやしないんだ
ドラえもんの記憶を覗き見ている隙に再び起き上がる僕
奴は記憶のディスクにあわてて何かを書き込んだ後、ドラえもんの頭にそれを放り戻す
僕は我を忘れて飛び掛ったが、奴も何か道具を使ったのだろう
一瞬の内に『ワスレンボー』で殴られてしまった
ここで逃がす訳にはいかない……
何度も起き上がろうとする僕に恐れをなしたのか、奴があわてて逃げていく……
追いたくても……追えない……今日一日分の記憶が剥がれ落ちていく……
明日になっても……僕はこの事を覚えているのだろうか……
奴は……出木杉は今日の記憶を見て何を思ったのだろうか……
563:
のび太「こ……これは……!?」
しずか「ねぇ、のび太さん……」
のび太「な、何だい!?」
しずか「私……普段はマッチなんて持ち歩かないし……今だって暑いから擦りたいとも思わないのよ……?」
のび太「……?」
突然、静香は取り出したマッチを擦り
『あらかじめ日記』に火をつけた!!
のび太「しずちゃんッ!?一体何をッ!?」
しずか「私だってわからないわッ!身体が勝手に動いて……!」
564:
のび太〈マズいぞ……『あらかじめ日記』は燃えてしまえば効力を失う……火がついた今、もう手遅れだ……!!〉
のび太「『もしもボックス』もバッグから取り出す事が出来ない……とすれば残る手は一つ…!」
のび太は『タイムカプセル』の中にあった
時計を手に取り、叫んだ!
のび太「『ウルトラストップウォッチ』ッ!!時間よ止まれッ!!」
バァ――z___ン!!
のび太〈全てのカギを握るのは出木杉だ……奴に直接会わないと……!〉
のび太は出木杉の家へ向かい
駆け出した…!!
565:
のび太「……見つけた!」
出木杉はちょうど家の門から出た所であった
しかし、それよりものび太が驚いたのは出木杉の手に握られていた物……!
のび太「あれは『ビッグライト』!?……やはり出木杉が………!」
のび太「……………」
のび太「『ウルトラストップウォッチ』は……止まっている生物に関わることで時間停止が解除されてしまう……」
のび太「だから一撃で仕留める。このスーパー手袋の拳で……!頭蓋骨を叩き割るッ!」
ゴシャァッ!!
のび太〈……出木杉……さようなら……〉
566:
出木杉「――…それが君の答えか」
のび太「!?」
のび太の拳は出木杉の頭部を捉えていた……!
しかし、額から多少の血が流れた程度で
当の本人は至って平静であった
出木杉「数発、撃たれてたらどうなっていたかわからないな……」
のび太〈硬い……!!なんて体の強度だ……!!〉
出木杉「あらかじめ日記で保険をかけるような君だ……時を止めて襲ってくる事も予想していたよ」
出木杉「だがしかし……止まった時間の中では他の物体の時も止まる…君は直接攻撃しか術が無い様だな。」
567:
のび太「……まさかこれまでの戦いが……全て君が仕組んだものだったなんて……!!」
出木杉「日記の効果で君を倒す事が出来なかったからな。『メモリーディスク』も例外では無かった…」
出木杉「だから君に対しては記憶を弄るのではなく、一部の記憶を消し去る事にした……」
出木杉「翌日に襲えば記憶が戻る恐れがある……だから『メモリーディスク』で洗脳しておいたドラえもんに数日間『ワスレンボー』を使用させた後、戦わせるように仕向け……」
出木杉「8月6日『タイムカプセル』を掘り起こした後、日記を焼き払うよう静香の記憶も改ざん……」
出木杉「ドラえもんの記憶によると今日、君がタイムカプセルを掘り起こす事は『あらかじめ日記』によって決定された事だったからな……」
のび太「……まさか……ドラえもんが自爆したのは…ッ!!」
出木杉「君と協力されても困るので、今日に備えて離脱してもらった………あの青ダヌキは良くやってくれたよ。」
568:
のび太「君は協力するフリをしながら……平気で僕らを欺いていたのか……!!」
出木杉「いくら僕でもそこまで演技は上手くない。君達と協力した出来杉は言わば片割れ、あれは僕であって僕ではない…」
のび太「……?」
出木杉「君の記憶を消したとは言え……万が一、僕の計画に気付かれたら厄介だ」
出木杉「日記を燃やすまで僕が無害だと刷り込ませる必要があったわけだ……そこで『分身ハンマー』を使った」
のび太「……!!」
出木杉「『分身ハンマー』でこの出木杉の肉体を『善』と『悪』に完全に分断」
出木杉「悪意の記憶を一切持たない『善』の肉体を君の味方として溶け込ませ……」
出木杉「後は『悪』である肉体を『タイムピストル』を自身に撃つことで未来に飛ばした。7月7日から……この8月6日にね……」
出木杉「今しがたちょうど融合して元の僕に戻ったばかりだよ……くくく……!」
569:
出木杉は『ビッグライト』を床に捨て
踏み潰した……!
出木杉「面倒だった事といえば……分裂した事で身体のサイズまで半分になった事だな。毎日サイズを調整する様に記憶を埋め込んでおいたが……」
出木杉「昨日、『ビッグライト』のバッテリーが尽きたところだ。タイミング的にもちょうど良かった……」ギロ…
のび太「……っ!」
出木杉「『宇宙完全大百科』を少しかじった程度だが……中々道具の併用が上手いだろう僕は?」
出木杉「しかし、それでも僕は屈辱的な敗走を強いられる事になった……!」
出木杉「あの時の君ほど……憎たらしく感じたものは無い……!」
出木杉「自ら生み出した世界で、結果の見えた勝負を挑ませる、反吐が出る程に臆病な君に、な……!」
570:
のび太は目の前の青年に打ちのめされかけていた……
戦い続けていたのは自分だけでは無い……
この男も『あらかじめ日記』という地上最強の道具を打破せんが為に
全頭脳を駆使し、勝負をしかけていたのだ……!
そして今、自分の前に立ち憚っている…!
出木杉「のび太君。いや、のび太。勝負だ……!」
のび太「……!」
以前の出木杉からは想像もつかない気迫が
のび太の身体を震わせた
571:
出木杉「始めて直面する苦難に君がどう立ち向かうのか…見極めさせてもらおうか!!」
言い終えた直後、出木杉がすかさずナイフを放つ!
瞬間、その切っ先がのび太の喉元に達しようとしていた!
のび太「……こ…これは……!」
出木杉「避ける暇も無かったろ―――…」
バァ――z___ン!!
のび太〈なんてね、こっちだってウルトラストップウォッチがあるんだ……時を止めた!〉
572:
のび太「……僕だけは…この止まった時間の中で動く事ができる…!」
のび太は首に刺さる寸前だったナイフを払いのけた
のび太「しかし……出木杉のやつ……今、何をしたんだ…?」
出木杉の手を見ても、道具らしきものは見当たらない
しかし彼の放ったナイフが、一瞬で喉を貫こうとしていたのは確かなのだ
のび太「……この世界を作った責任は僕にあるとはいえ……!」
のび太「ドラえもんを侮辱したのは……絶対に許せないッ!!」
のび太は出木杉の顔面に
強烈な一撃を浴びせた!!
573:
ドゴオオン!!
のび太「……二発目を受けても平気だなんて……まるでサイボーグだ…!」
出木杉「『機械化機』……という道具がある……」ガラガラ・・・
※機械化機
さまざまな機械の機能を人間の体にうつす。最大9つまで記憶出来る
出木杉「『宇宙完全大百科』と『お医者さんカバン』の技術力をもってすれば……」
出木杉「未来デパートの道具でさえも『機械化機』に登録し、肉体に組み込む事が可能だ……!」
のび太「じ、自分の肉体を!?道具で改造したというのか!?」
のび太〈……つまり……任意で道具の効果を発動させる術を持っている、という事か!!〉
574:
出木杉「僕に失敗があるとすれば早とちりしすぎた事だな……」
出木杉「まさか君たちが『故意』でスペアポケットを落としたなんて思いもよらなかった……」
出木杉「奪われる心配が無いなら、もう少し『宇宙完全大百科』を読んで色々道具を把握しておきたかったが……まァいいか……」
出木杉「結果的にドラえもんは死に、『あらかじめ日記』は無くなった……!!」
のび太〈……以前の出木杉だとは思えない……このドス黒さ……これが僕が作ってしまった世界の出木杉なのか!?〉
のび太「な――――――――――――…」
出木杉の殺気に身構えようとしたのび太であったが
突如、体が停止してしまう…!
出木杉「フハハハハハ!この世界の創造者だと言うのに……惨めだね!」
575:
出木杉の肉体に組み込んだ道具の真骨頂
『狂時機〈マッドウォッチ〉』
この道具は特定の範囲〈エリア〉だけ時を加させたり減させたり出来る
ただし時を完全に停止させたり、巻き戻したりという事は出来ない※原作に発言や描写が無い為
出木杉「この地球上を流れる時のさを1億分の1程度にした……!」
出木杉「今の君にナイフを突き刺せば…単純に1億倍の時間君の歪んだ表情が見れるというわけだ…!!」
のび太「―――――――――――――――」
出木杉「んん?今の君は必死に聴覚の信号を脳に送っているという感じかな?」
出木杉「実に愉快だ……笑いが止まらないよ………!!」
576:
出木杉「本来なら今、君の持っている全ての道具を奪ってやりたいところだ…今後の為にもね」
出木杉「しかし君達の事だ、仲間割れの時点で『道具を奪う道具』の対処はしているのだろう?」
出木杉「だから無駄な作業はしない…!今すぐ楽にしてやる…!」
出木杉はのび太の心臓部分にナイフを付き立てた
出木杉「『あらかじめ日記』の無い今なら…このナイフでとどめを刺せる…!」
出木杉「……終わりだよ、のび太…」
ザクッ
577:
無情にも―――――
出木杉の持ったナイフは
のび太の心臓部を貫いた
出木杉「……届いた…とうとう奴の心臓に……!」
出木杉「……この一撃の為に……!」
出木杉「……あらゆる計画を練った……!」
出木杉「……長い……戦いだった…!!」
578:
出木杉「……それなのに…貴様という男は…!」
出木杉「この抜け目の無さ…癇に障る…!虫唾が走る…ッ!」
出木杉のナイフはのび太を貫いた…
しかし血しぶきを上げるわけでもなく
その腕はのび太の体をすり抜けていたのだ!
出木杉「こいつのこの腐った性根…!あくまで自分の優位な土俵にしか上がらないアンフェアな精神ッ!」
出木杉「全くもって腹立たしい…!」
出木杉はのび太の脇腹に貼られてある印を見た
出木杉「『四次元若葉マーク』…つまり肉体だけこいつは別の空間に逃げていたというわけだ…」
※四次元若葉マーク
この若葉マークを貼ったものは肉体だけ四次元空間に入った状態となり
壁でも建物でも何でもすり抜けることができる。
579:
出木杉「時を止めて実体による攻撃、次の時間停止まで『四次元若葉マーク』による完全防御…!」
出木杉「スリルを求めてこの世界を創造しておきながら、汚い浅知恵を使うものだ…!」
出木杉「しかし、窮地を脱し、この出木杉をうろたえさせているのも事実。賢しいとも言える…!」
出木杉「『マッドウォッチ』解除!」
のび太「―――んて奴だ……」
のび太〈出木杉の能力の大体の想像は付く……ここは若葉マークで身を守るのが得策だ…〉
出木杉「くくく…ッ!望む所だ…!必ずこのナイフで君を貫いてやる…!」
のび太がウルトラストップウォッチを押す寸前…!
出木杉は再び体内の道具を発動させた
580:
――――――――――――……
のび太「あっちから感じるぞ…!この異様な感じは……間違いない!」
のび太は街の本道を抜け、住宅街へと駆け出す
道行く人の影が落ち 町が徐々に色を付け始める頃
街角から流れるラジオが時刻を告げた…
「ピッ…ピッ…ピッ…ポーン……」
「―――さぁ17時を回りましたミュージックチャンネル。7月23日現在のヒットチャートをお送り致します…」
ドシャ―――z___ン!!
出木杉「僕は時間を逆行させる事ができるんだよ……!!」
※フリダシニモドル
出たサイコロの目の数だけ日付や時間を戻せる
581:
出木杉「さて、僕の予想が正しければ、ここは先程から数日前。ドラえもんと奴が戦いを繰り広げている時間軸の筈だ」
出木杉「なるべく今日中に見つけたいものだ……『ドラえもん』の方をな……」
出木杉はデパート5階の駐車場まで飛び上がり
街を見下ろした
出木杉「見慣れた景色だ……何の面白みの無い景観………あれは……!?」
出木杉の見ている先
のび太が全力で住宅街の袋小路へ向かって駆けていた
出木杉「向こうは奴の住んでいる家の方向と真逆…一体何を企んでいる……?」
出木杉「ふむ……ドラえもんの消息が掴めない今、奴が唯一の手がかり……ならば追跡するまで……!」
582:
出木杉〈この先は行き止まりだがどうするつもりだ…?〉
のび太は慌てふためいた後
タケコプターを取り出した
出木杉「空路を利用するのか。僕も後を追わなければ…」
出木杉「『逆重力ベルト』作動ッ!!」フワッ
出木杉「奴はあの脚で陸路を行くのでは無く、わざわざ敵に見つかりやすい空路を選んだ…!」
出木杉「袋小路に真っ直ぐ向かった事から恐らく、この住宅街をよく知らないのだろう。」
出木杉「にも関わらずこの住宅街に入り込むという事は…!」
出木杉「奴にとって避けられない『何か』…すなわち『ドラえもん』に関わる事があるに違いないッ!」
583:
出木杉「どれ、一応検証しておこうか……奴があの屋根に近い場所まで来たところで…」
出木杉「『マッドウォッチ』作動ッ!」 ドギュウゥ―――z___ン!!
のび太「――――――――――――」
出木杉「この住宅街だけ時の流れを限りなく停止状態に近い度にした……!」
出木杉は忍ばせたナイフを取り出す…!
出木杉「今、この時点で奴の心臓を貫いたら果たしてどうなるのか…?」
出木杉「大きな時間改変が起き、僕は戦わなくて済むのか…タイムパトロールが阻止しに来るのか…」
出木杉「様々な可能性を模索する上で……試してみるとしようッ!」
出木杉は手に持ったナイフを
のび太に突き刺した!
584:
出木杉「……答えはどちらでも無く、心臓を捉えたはずのナイフは『何故か致命傷にならない箇所へと逸れる』…か。」
出木杉「このまま…!」ザクッ
出木杉「奴を…!」ズバッ
出木杉「蜂の巣のように刺し傷を加えようとしても…!」ブンっ!
出木杉「……攻撃するたびにどんどん逸れていく。もうこれ以上傷をつける事が出来ない……」
出木杉「まぁ想定の範囲だ。この時点の奴には『あらかじめ日記』が味方をしている」
出木杉「やはり未来の……日記を燃やした後の奴を直接下さなければならないようだな…!」
出木杉「『マッドウォッチ』解除!」
585:
のび太「うわっ!!こ、この攻撃はッ!!?」
出木杉〈くくく……〉
飛行機の漏れたエンジンが引火していく様に
のび太から赤々しい血液が飛散し目の前で墜落していく
?「んん?まだ上に仲間がいたのかァ?」
出木杉〈何ッ!?敵がいたのかッ!?〉
男は地上から目に見えぬ攻撃を繰り出す…!
出木杉は思わぬ不意打ちに屋根から滑り落ちてしまった
出木杉〈ちっ…中々思い通りに事は運ばないものだな…!〉
准士官「……そろそろのび太が来る頃だと思ってたぞ」
586:
准士官「お前が今にボスの居場所を把握しようとしてるって『中将』が言うんでな」
のび太「ドラえもんのやつ…自分の位置が割れている事に気がついてないのか…」
准士官「そぉいう事よ。上がボスに連絡を取ろうと躍起になってる間、俺達下っ端は道中見つけ次第足止め役ってわけだ」
のび太「…大した統率力だよ…君達のボスはワッペン以外にも何か道具を使って従えてさせているようだね…」
准士官「さぁ…どうだったかな…」
出木杉〈……確かこの男、『准士官』だったな。道具の支給、編成を任されていた筈……〉
587:
准士官「お前は中々の策士だと聞いてるが……まさか仲間を連れてくるとは…」
のび太「仲間?」
のび太は後ろに振り返った
のび太「お前は……出木杉!?どういう事だ?確かお前は……!!」
出木杉〈まずいな……気付かれたか……〉
出木杉「『フリダシニモドル』発動…!」
ドシャ―――z___ン!!
出木杉〈むやみに過去を弄って厄介事を増やすわけにはいかない…慎重に事を進めなければ……〉
588:
―――この時点でのび太の前に姿を現すのは、出木杉自身に相当なリスクを伴う行為である
もし自身が黒幕であることがバレたなら
のび太の目的は『ドラえもんを止める』のではなく、『正気に戻す』ことに変わる
つまり元の時間軸に戻った時
ドラえもんと結託したのび太達と戦わなければならない可能性を産む事になるのだ
それだけは何としても避けたい出木杉であった
ーデパート5階の駐車場ー
少し前の出木杉「ふむ……ドラえもんの消息が掴めない今、奴が唯一の手がかり……ならば追跡するまで……!」
出木杉「待て」
少し前の出木杉「何者だッ!?……なんだ『僕』か、どうしてここに?」
589:
出木杉「『僕』なら少し頭を働かせればわかるだろう……?」
少し前の出木杉「……今から僕がやろうとしている事が失敗すると?」
出木杉「そういう事だ。奴から距離を取れ。興味半分で近づくのは止めておく事だ。」
少し前の出木杉「了解した。過去の僕にも同じように伝えよう。武運を祈る。」
少し前の出木杉「『フリダシニモドル』、発動しろッ!」
出木杉「うう……っ!」ギュオオオオオオオオ・・・・・・・
過去を変えた事で
出木杉の記憶が改変される……!
出木杉「…ふむ、未来の僕は『遠くから様子を伺え』と言っていたな……今、奴は袋小路へと向かっているが…」
出木杉「目的はあくまでドラえもん…必要な時まで手を出さず、あくまで傍観に徹しよう……」
590:
のび太「『爆発コショウ』だ!!『自分自身の』クシャミで宇宙まで飛んでいけッ!!」
准士官「ウォォォォォォッ!!」
――――――――――――…
のび太「ハァ…ハァ……」
出木杉〈あの男も倒し、だいぶ距離を進めた……そろそろ何らかの手がかりを示しても………!〉
のび太「な…なんだ…ドラえもんの奴…」
591:
のび太「さっきまでこっちの方角…『西側』にいた筈だぞ!?」
出木杉〈何だ……?何をキョロキョロと見回している…?〉
のび太「真逆だ…今は『東』にいる……!」
のび太「今度は北ッ!!」
出木杉〈『東』…『北』……?〉
その時である
背筋に氷塊が滑るが如く……
張り詰めた異様な空気が出木杉を慄然とさせた……!
出木杉〈…な……何だこの感じは……!?〉
出木杉〈奴の見ている方角……確かに遠くから何か大きな『存在』を感じる…!!〉
出木杉〈な、何だ……この威圧感にも似た圧倒的な『存在感』は……!!〉
592:
のび太「くそ〜…ここまで頻繁に移動されちゃ…!」
出木杉〈奴がこの『存在感』を頼りにしている事は明白……ならば!!〉
出木杉「『マッドウォッチ』ッ!時を減させろッ!!」 
ドギュウゥ―――z___ン!!
出木杉「ドラえもんの位置はわかった…が、用があるのは僕一人だ、君には一旦退場願おう」
出木杉はのび太の両足のアキレス腱に
ナイフを突き刺した!
出木杉「ふん…あくまで『足止め』として相手をしてやろう…この『存在感』が消えて君がドラえもんを見失うまでの、な」
出木杉「この『存在感』が消えた後、『フリダシニモドル』で再びこの時間軸に訪れれば…!」
出木杉「君が『今の僕』に足止めを食らっている間に用件が済ませられるというわけだ…ッ!」 
593:
『マッドウォッチ』を駆使し、のび太を足止めしながら
ドラえもんの『存在感』が消えた事を確認すると
出木杉は再び時を遡った
――――――――――――…
出木杉「さて、この『存在感』のする方へ向かうか……」 
出木杉「頻繁に位置を変化させている様だが…『マッドウォッチ』を持ってすればこの程度の瞬間移動…」 
出木杉「捉えられないものではないッ!」 ドギュウゥ―――z___ン!! 
594:
ードラえもんのアジトー
ドラえもん「くそーのび太のやつ!『石ころ帽子』に細工をしていたとは…!」
※石ころ帽子
この帽子を被ると道端の石ころのように、周りから一切認識されなくなる
ドラえもん「石ころ帽子に『あべこべクリーム』が塗ってあったおかげで僕が巨大な存在感を出す様になってしまった!」
ドラえもん「脱ごうにも接着剤らしき道具が塗ってあってしばらく脱げない!」
出木杉「……それで『ひっこし地図』を使い、この家の位置を頻繁に移動させていたというわけか…くくく…!」 
ドラえもん「むっ、誰だッ!」
出木杉「やぁドラえもん…『石ころ帽子』で買い物、もとい食料調達に行く所を狙った緻密な作戦に引っかかったのかな…?」
ドラえもん「…出木杉か?たかが『上等兵』の君がここで何をしている?」 
595:
出木杉〈たかが『上等兵』か、ふん……『善』の肉体は良いカモフラージュになったな………!〉
出木杉「実は今、のび太君の足止めをしていてね…」
ドラえもん「何ッ!?本当か!?」
出木杉「ああ、だけど少し困っているんだ…『准士官』殿が退けられたんだ…その、わかるだろう?」
ドラえもん「まぁ准士官の事だ…君のような低階級にはあまり良い道具を渡していないだろうからね…」
出木杉「そういう事なんだ。このままだとあっけなくここへ辿り着いてしまう」
出木杉「早急に新たな道具を支援していただきたい」
596:
ドラえもん「出木杉君」
出木杉「何でしょう」
ドラえもん「それは出来ない相談だ…」
出木杉「…と、申されますと?」
ドラえもん「君はとても頭が良い…万が一、寝首をかかれると厄介だ」
出木杉「滅相も御座いません…恐れ入ります」
ドラえもん〈急にかしこまっちゃって…あざとい奴だ〉
出木杉「ところでさっき准士官殿が吹き飛ばされたのですが…」
出木杉「その際、落ちたジャケットにワッペンが貼られていましてね…」
ドラえもん「…ちっ、そういえば具体的にどこへワッペンを貼れば良いのか指示をしてなかったな……」
597:
出木杉「じゃあこのジャケットを羽織れば僕は『准士官』という事でよろしいのでしょうか?」
ドラえもん「…まぁそうなるけど…昇格がそんなに嬉しいのかい?」
出木杉「五階級特進ですよ?冬戦争の英雄シモ・ヘイヘ以来の快挙だ」
出木杉「それに…」
ドラえもん「何をするッ!?」
出木杉は『二等兵』の階級ワッペンを
ドラえもんの背中へと貼り付けた
出木杉「このジャケットに入ってました…これで君は『大将』でもありただの『二等兵』…」
ドラえもん「!?」
598:
出木杉「なに…この事実を知っているのはこの場にいる二人だけだ。君は普段通り『大将』として振舞えばいい…」
出木杉「心配しなくてもわざわざ上司に命令しようとする部下はいない」
出木杉「この僕を除けば、ね…」
ドラえもん「くっ…!」
出木杉はジャケットの袖に手を通した
出木杉「『准士官』の僕が命令する。『入りこみミラー2』と『道路光線』をこちらに渡せ」
ドラえもんは渋々命令に従った
599:
出木杉「最初から素直に言う事を聞いていればよいのだ…」
出木杉はドラえもんの石ころ帽子にナイフで傷をつけた
ドラえもん「痛っ!」
出木杉「もうこの時代に用は無い…さらばだ!」
ドラえもん「あっこら!待ていっ!」
ドギュウゥ―――z___ン!!
ドラえもん「……逃げ足のい奴め……まぁいいや…石ころ帽子を傷つけてくれたおかげで僕が助かったのも事実だ…」
ドラえもん「あんな道具じゃ寝首をかかれる事も無いだろう…」
600:
出木杉「『機械化機』を使ってこの道具を肉体に登録し…任意で使えるようになれば…!」
――――――――――――…
出木杉「最強だ…これで奴を……のび太を倒せる…ッ!!」
出木杉「ふはははははァ…ッ!!待っていろのび太ァ!!」
出木杉「『マッドウォッチ』ッ!元の時間まで加しろッ!」――――――――――――… 
601:
――8月6日――――――…
出木杉「………やぁ、お待たせ」
のび太〈急にいなくなったと思ったら…何をしていたんだ……?〉
出木杉〈『入りこみミラー2』発動ッ!〉 瞬ッ! 
のび太「また消えた…!?」
――――――…
出木杉「ふははは!着いたぞ『鏡面の世界』ッ!」
出木杉「奴が『四次元若葉マーク』で肉体だけ異次元の空間に逃げようが関係ない!」
出木杉「回避不可能の攻撃というのを見せてやろう…!」
602:
ー現実世界ー
のび太「奴は何をしているんだ……!?」
透明になる道具は全て処理してあるにもかかわらず
出木杉は目の前で消えた…
つまり出木杉は消えたのでは無くどこかへ『移動』している事になる……
のび太「とりあえず『ウルトラストップウォッチ』で時を止めるッ!!」
バァ――z___ン!!
のび太「時を止め、尚且つ若葉マークを貼っておけば襲われずにじっくり次の手を予想する事が出来る……奴はどこに移動した…?」
603:
のび太「例えば、『タイムピストル』で未来に移動してから攻撃を行うとしたら……?」
未来に移動して攻撃……
この手段は言い換えれば『目隠しをしながら瞬間移動で攻撃』するのと何ら変わりない
時を止める道具を持っている相手に対し、出木杉はこれほどリスクの高い方法を選ぶだろうか…?
のび太「逆に過去に移動したところで『あらかじめ日記』が存在している。僕の命を奪うことは不可能……」
では、日記を『燃やした』時点まで時を戻したとすれば
出木杉はどうするだろうか…
のび太「もしあの時、僕に何らかの攻撃を仕掛けていれば……僕の『四次元若葉マーク』の存在に気付くだろう。」
『四次元若葉マーク』で攻撃が通らないと知れば
出木杉なら…のび太ならどうする……?
のび太「『四次元若葉マーク』に対抗する術は………無い、不可能だ。僕の考えすぎか…?」
604:
ー入りこみミラー2の鏡面世界ー
※入り込み鏡
この道具は『現実世界』と『鏡面世界』を行き来する事が出来る
『鏡面世界』は左右が逆なだけで現実の世界とまったく同じように出来ている。
『鏡面世界』には人が誰もいない上、何をしようと現実世界には一切影響がない
出木杉「『四次元若葉マーク』と『入りこみミラー2』……一見別の道具だが、この二つには共通点がある……」
出木杉「ひとつは『現実世界』と『別の世界』を行き来できるという能力…」
出木杉「そしてふたつめ、これが最大のポイントだ……」
出木杉「これだけは他の道具じゃあ代用できない…この二つの道具のみが持つ特有の物といえる…」
605:
『入りこみミラー2』の鏡面世界は
上記で説明した『入り込み鏡』の鏡面世界とは少し異なる…
それは『入りこみミラー2の鏡面世界』で壊した物体や家などは『現実世界でも壊れる』という点である
出木杉「『四次元若葉マーク』は肉体だけ『別の世界』に移動するが…」
出木杉「使用者は『現実世界』で見聞きができ、姿も目視することができる。時間の干渉も受けていた…」
出木杉「『入り込みミラー2の鏡面世界』で壊した物体や建物は『現実世界でも壊れる』……」
出木杉「つまり…双方とも『現実世界』と『別世界』の間を『常に』リンクさせている『道』のようなものが存在するという事だ……」
出木杉「もし、その『道』に…干渉する術があるとしたら…!」
606:
出木杉「……どうやら奴は『現実世界』の時を停止させている様だな……」
出木杉〈しかしこちら側の世界とリンクしているのは『現実世界』に存在する『物体や建物』……僕は時間の干渉を受けない……!〉
出木杉「まずは『入りこみミラー2』を覗き、『現実世界』にいるのび太の現在地を把握ッ!」
出木杉「続いて、僕とのび太の位置を結ぶ直線上に、現実世界と鏡面世界を繋ぐ出入り口を作成ッ!!」
出木杉「そしてその出入り口に……『道路光線』を照射するッ!!」
607:
カッ――――――…
のび太〈何だ!?眩しい……!!〉
のび太〈時は停止している筈だ……何故、急にライトが……!?〉
その時……!
光を遮る様に
一つの人影がのび太の視界に飛び込んで来た…!
のび太「誰か……来る!」
出木杉「これで終わりだッ!のび太ッ!」
608:
のび太がその目を凝らすと
出木杉がナイフを握り、眼前まで迫っていた……!
のび太「出木杉!?」
身の危険を察し
咄嗟に突進攻撃をかわすのび太…!
出木杉「ふん、かわされたか……!!」
のび太「何故……時の止まった中を動けるんだ……ッ!?」
出木杉「次の一撃はタダでは済まさん……!」
のび太〈しかも『四次元若葉マーク』を付けている僕に迷わず攻撃してきた………!!〉
出木杉〈『フリダシニモドル』発動ッ!!時を『数分』巻き戻すッ!!〉
ドシャ―――z___ン!!
609:
ー数分前ー
出木杉B「………やぁ、お待たせ」 …瞬ッ! 
のび太「また消えた…!?」
出木杉A〈『僕』が鏡面世界へ移動したようだな……『入りこみミラー2』発動ッ!〉 瞬ッ!
――――――…
出木杉B「ふははは!着いたぞ『鏡面の世界』ッ!」
出木杉A「どうやら上手くいった様だな……」
出木杉B「君は……未来の僕か……良く来てくれた………!!」
610:
カッ――――――…
のび太〈何だ!?眩しい……!!〉
のび太〈時は停止している筈だ……何故、急にライトが……!?〉
その時……!
光を遮る様に
一つの人影がのび太の視界に飛び込んで来た…!
のび太「誰か……来る!」
出木杉B「これで終わりだッ!のび太ッ!」
611:
のび太がその目を凝らすと
出木杉がナイフを握り、眼前まで迫っていた……!
のび太「出木杉!?」
身の危険を察し
咄嗟に突進攻撃をかわすのび太…!
出木杉「ふん、かわされたか……!!」
のび太「何故……時の止まった中を動けるんだ……ッ!?」
のび太が疑念を抱いたと同時…
上空から再び光の道筋が現れ、のび太を照らし出す!
のび太〈何だ!?また光が……!!〉
出木杉A「逃げられると思うなッ!」ズァァ!!
のび太「!?」
612:
出木杉A「――――…中々の身のこなしじゃあないか………ッ!」
上からの突進攻撃……!
ナイフは頬をかすめたものの致命傷には至らなかった…!
のび太「で、出木杉が……どうして二人もいるんだッ!?」
出木杉A「だがあともう少し………!」
出木杉B「楽しみだよ……君に一撃が加えられると思うと……!」
のび太〈『四次元若葉マーク』を付けている僕に迷わず攻撃してきた……それより、『二人』いる……これは……!?〉
出木杉A、B〈『フリダシニモドル』発動ッ!!時を『数分』巻き戻すッ!!〉
ドシャ―――z___ン!!
613:
ー数分前ー
出木杉D「………やぁ、お待たせ」 …瞬ッ! 
のび太「また消えた…!?」
出木杉C〈『僕』が鏡面世界へ行ったようだな……『入りこみミラー2』発動ッ!〉 瞬ッ!
出木杉A、B〈『入りこみミラー2』発動ッ!〉 瞬ッ!
――――――…
出木杉D「おや、先客が居る様だが……未来から加勢に来てくれた様だな。」
出木杉C「のび太は仕留められそうか……?」
出木杉A、B「あと3巡ほど遡れば奴の退路は完全に塞がるだろう……」
出木杉D「ハッハッハッ!これはいい!最強の攻撃だッ!!」 ――――――…
614:
カッ――――――…
のび太〈何だ!?眩しい……!!〉
のび太〈時は停止している筈だ……何故、急にライトが……!?〉
のび太「そ……それよりも……!!」
のび太は周囲を見渡しながら吃驚する……!
止まった時の中、四方八方からライトを照射されていたからだ…!!
のび太「……何じゃこりゃああああァーーーーーーーーッ!?」
出木杉「これで終わりだッ!のび太ッ!」
光の軌跡を辿り
無数の出木杉が一斉に襲い掛かってきた……!
615:
出木杉の群れが
のび太の居た場所をあっと言う間に覆いつくす…!
のび太「ハァー……ハァー……!!」
出木杉「小さい穴を掘って地中へ逃げたか……だが…!」
出木杉の群れの中の一人が握るナイフから
真新しい血が滴る…
出木杉「このダメージ……摩擦などによる『かすり傷』ではない、僕の攻撃が完全に触れたッ!!」
のび太「!?」
出木杉「君の時間停止は『ウルトラストップウォッチ』によるものだ……よって僕が君に触れた今、時は動きだす……ッ!!」
616:
のび太〈『四次元若葉マーク』を付けているのに……ダメージを受けてしまった……!?〉
出木杉「『マッドウォッチ』ッ!のび太の周囲を減させろッ!!」ドギュウゥ―――z___ン!!
のび太「――――――――――――」
出木杉「チェックメイト……!!」
617:
『四次元若葉マーク』に対する出木杉の攻撃……
それは秘密道具の製作者にも想定されていない
道具の併用による『バグ』を利用したものであった
『道路光線』で作り出した異次元の道筋に『入り込みミラー2の出入り口』を噛ませることで
現実世界と異世界を繋ぐ隙間に干渉出来る異次元空間を作り出したのである……!
出木杉「お別れだ……!!」ジャキン!
出木杉達はのび太のいる穴に向かい
一斉にナイフを放つ!!
出木杉「『マッドウォッチ』……ナイフの周囲を加させろッ!!」ドギュウゥ―――z___ン!!
618:
加した数十本のナイフが
のび太の体に突き刺さる……!
出木杉「『マッドウォッチ』……解除ッ!!」 
のび太「が…ハ………!?」ブシュウウ…!
出木杉「自ら墓穴を掘ってくれるなんてね……手間が省けた……」
のび太「あ……」
出木杉「さよならのび太……」
のび太「」
619:
出木杉A「さて……ここに至るまで増えてしまった僕等をどうするか……」
出木杉J「簡単な事だ……一番古い君がここに残り、後は全員過去へ戻って同じ事を繰り返す……」
出木杉X〈僕が抜けるのは当分先か、まぁしかたない。Aのおかげで我々の勝利が約束された様なものだ……〉
出木杉C「」
出木杉K「三番目……さっきからうずくまってどうした?」
出木杉F「ぐ………ぁ………」ブシュウウ…!
出来杉L「!?」
620:
違和感に気付いた時には既に何人かが
体中から血を流し倒れていた後であった……!
出木杉C´「な……何だァァーーーッ!?何がどうなっているッ!?」
出木杉Z「喚くなッ!僕なら平静を保t……っ………」ブシュウウ…!
ドサッ・・・
出木杉A´「こ……これは一体……!?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
621:
32名の出木杉の誰もが
現状を把握できずに次々と倒れていく……!
出木杉B´「う………ッ!!」ブシュウウ…!
出木杉F´「こ……このままでは……ッ!」
出木杉D´「き、君……この時間軸の僕か……!?」
出木杉F´「何なんだこの状況はッ!?何かわかったのかッ!?」
出木杉D´「あくまで予測にすぎないが……奴は……のび太は『ダメージを跳ね返した』のだと思われる……ッ!!」
出木杉F´「何……だと……!?」
622:
出木杉D´「その証拠に……一番最近である僕……つまり君の……ダメージの進行が遅い……」グシュ……ブシュ…!
出木杉F´「おいッ!?しっかり……!!」
出木杉E´「このままでは全滅だ……このダメージの進行を食い止める手段はひとつ……!」
出木杉F´「……過去に戻って……今までの僕の攻撃を一旦止めるという訳か……!!」
出木杉E´「『マッドウォッチ』ッ!!……出木杉F´の開いた傷口を『減』させろッ!!」ドギュウゥ―――z___ン!!
出木杉F´「……ッ!」
出木杉E´「僕はもうすぐ死に……減が解除されるのも時間の問題だ……焼け石に水だが……後は……ッ!!」ブシュウウ…!
出木杉F´「くっ……『フリダシニモドル』発動しろッ!!」
ドシャ―――z___ン!!
623:
ー数分前ー
出木杉A「………やぁ、お待たせ」 …瞬ッ! 
のび太「また消えた…!?」
出木杉F´〈喰い止めなければ……『入りこみミラー2』発動ッ!〉 瞬ッ!
――――――…
出木杉A「ふははは!着いたぞ『鏡面の世界』ッ!」
出木杉F´〈いちいち……説明している暇は無い……〉グシュ……ブシュ…!
出木杉F´は自身から取り出した『メモリーディスク』を
もう一人の出木杉へと放り投げた!
出木杉A「うう……!?」ギュオオオオオオオ・・・・・・
624:
出木杉F´〈僕の……肉体の『存在』が消える……これで最悪の事態は……免れ……た……〉シュウウ…
出木杉「この記憶は……未来から来た……僕の……!?」
出木杉「こ……このまま奴に攻撃を仕掛ければ全滅は必至、という事か……!」
出木杉は『メモリーディスク』の記憶を頼りに
新たな攻撃方法を模索していた……
出木杉〈ダメージを跳ね返す道具だと…!?しかし、奴の手には『ウルトラストップウォッチ』しか握られていなかった……!!〉
攻撃は一旦中止しなければならない……
しかし、あの時点でのび太から目を離すわけにもいかない
何故ならのび太を見失い、もしタイムマシンを使われる様な事があれば
歴史が所々で改変され、出木杉に勝機が無くなるからだ
出木杉「奴の使用した道具の正体は掴めないが……僕には悠久とも言える時間がある……過去だ、『日記』の効果が発動する前まで遡って奴を葬るチャンスを窺う……!!」
625:
――7月07日――――――…
ドシャ―――z___ン!!
出木杉「くっ……ダメか!!………この世界は『作られた並行世界』!」
出木杉の嫌な予感が的中してしまう……
『もしもボックス』はどこかにある『パラレルワールド』へ移動する他
新たな『パラレルワールド』を構築する事もできる
出木杉「『作られた並行世界』……つまりこの世界が作られるより以前の時へ遡る事が出来ない……時間軸が存在しない………!」
出木杉〈ならのび太だ……日記を書く前に……奴を仕留めるッ!!〉
626:
ーのび太の部屋ー
のび太「公園に『タイムカプセル』を埋めるとして……どうやって穴掘ろうか?」
ドラえもん「モグラジェットがいい、あれならすぐだよ」
出木杉「い……いた……二人だ……あの二人さえやれば……!」
――――――――ガチャ
出木杉「今だッ!!『マッドウォッチ』作動――――!!」
627:
出木杉「…………!?」
出木杉は困惑していた……
今、のび太達が『もしもボックス』から出たのを見届け
マッドウォッチを発動させた瞬間……
自身がのび太の机に
叩きつけられていたのである……
バァ――z___ン!!
のび太「本当によくやるよ君は………」
出木杉「き……君は……何故ここにいるッ!?」
628:
のび太「『いただき小判』で一緒に時を遡り、ついて来たのさ。」
出木杉「僕についてきただと!?……バカな!!君は地中へ逃げた筈じゃあ……ッ!?」
のび太「『四次元若葉マーク』に対抗する術は無い……」
出木杉「………?」
のび太「だけどもし君が対抗手段を持っていたら……それはもう僕の頭を持ってしても敵わない相手だ……」
のび太「だから僕は戦うのをやめた……君が二度目にいなくなった後で時間停止を解除し、ドラえもんが以前に確保していた『コピーロボット』を取り寄せた後、僕の分身を作らせ……君と戦わせたんだ……」
出木杉「何……だと……!?」
629:
出木杉「では……ダメージが跳ね返ったのは……ッ!?」
のび太「『コピーロボット』に『痛みはねかえりミラー』を忍ばせておいて……僕は『いただき小判』で君に付着しながら隙を伺っていた……」
のび太「まさか君が時間を逆行する能力を使い、『もしもボックス』の前に来るなんて思いもよらなかったけどね……」
出木杉「き、君は……!!」
のび太の拳が
ゆっくりと出木杉の頭に沈み込む……
出木杉「『マッドウォッチ』!!作動を…ッ!!」
のび太「無駄だよ、今は『ウルトラストップウォッチ』で時を止めてある……」
のび太「近くにいる君にもこの止まった時の中に入って来てもらった……僕と同様に『他の道具』を使用する事が出来ないこの静止空間にね……!」
630:
出木杉「だ……だが僕の肉体の強度の前では君の拳も無力……ッ!!」
のび太「だから『いただき小判』でくっつきながら『力電池』で今の今までチャージしておいた……時が止まった今、フルパワーが維持された状態だ……」
出木杉「ま……待ってくれ……やり直そうじゃあないか……!!」
のび太「やっと元の世界へ帰れる……!!」
出木杉「や……やめろォーーーーーーーーーーッ!!」
ゴシャアア!!
のび太「時は動きだす……!!」
631:
出木杉「ふ……ふふ……ふふ……!!」
『力電池』によるフルパワーで頭部を殴られたにもかかわらず
出木杉は狂った様に笑いだす……!
のび太「な……何がおかしい……!?」
出木杉「僕を叩きつけた先に……何があるか見るかい……!」
のび太「!?」
632:
出木杉の頭の下には
のび太の勉強机では無く、『もしもボックス』が置かれていた…!!
出木杉「時が動き出した瞬間ッ!!『物体変換クロス』の能力で『机』と『もしもボックス』を交換したッ!」
出木杉「この世界によって作られた僕は『もしもボックス』に干渉できないが……君なら別だ……ッ!」
のび太「もしもボックスが……潰れてしまった……!!」
出木杉「ククク……僕は負けたが……どうせ負けるなら……君………も……一緒に……ッ!」
ドラえもん&過去のび太「な……なんだ突然!?この二人は一体……!?」
のび太「『もしもボックス』が………爆発する――――――ッ!!」
――――――………
633:
――――――………
のび太「―――――………」
のび太が目を覚ますと
見覚えのある娘がのび太の顔をまじまじと見つめていた…
娘「あ…///」
のび太「………ここは!?」
娘「べ、別に何でもないわよっ!?タオルを交換しようとしただけで……///」
のび太「ここは…?僕は一体どうしてここに……?」
娘「へ…?アンタ何も覚えてないの?この外で倒れてたのよ。」
のび太〈そうか……僕は爆発で吹き飛ばされて………〉
634:
?「あら、気が付いたのね」
娘「あ、ママ!」
ママ、と呼ばれた女性が部屋にやってくるなり
のび太に顔を近づけ額を押し当てる
のび太「え……えっと……///」
ママ「うーん、熱は無いようね……」
娘「ちょ……ちょっとママ!?見ず知らずの人になんて事……!」
ママ「いいじゃない別に。見たとこ娘ちゃんと同じくらいの年齢よ?それとも……」ジーッ
娘「そ……そんなんじゃないわよ!もうっ!」
ママ「ふふ、冗談よ。そんなに怒らなくても……」
娘「わかったからご飯!!」
ママ「はいはい」
635:
のび太「それにしても……君の母さんって随分若いんだね。」
娘「へ?ああ……違うわよ。彼女はこの児童養護施設の『ママ』よ。」
のび太「児童養護施設?」
娘「そ、私も小さい頃はママと遊んでもらったわ。ママもこの施設出身なのよ。」
のび太「へぇ〜」
園児「おにぃちゃん一緒にあそぼー」
園児「あそぼー」
娘「あら、気に入られちゃったみたいね。お昼ご飯の準備手伝ってくるからこの子達の遊び相手頼むわね。」
のび太「え?……うん、わかったよ……」
のび太〈それにしてもびっくりしたなぁ………目を覚ましたら、中将にそっくりの娘がいるんだもの……〉
636:
―――――…
娘「ごはんの用意できたわよ〜!!」
園児「あ!おねぇちゃん!」
園児「このおにぃちゃん凄いんだよ!!絵本の中の絵がね……それに数字当てゲームも……」
娘「へぇ〜。この子達、人見知りでなかなか懐こうとしないのに……やるわね。」
のび太「へへへ、それ程でも……〈あやとり超絶テクニックで子供心を掴もうとしてすごい引かれたけどね……〉」
キャ――――z___ッ!!
のび太「な……何だ!?下の階から悲鳴が……!!」
娘「ママッ!?」
637:
悲鳴のする部屋の方へ向かうと
不審な男が先ほどの女性にナイフが突きつけていた……!
娘「強盗!?」
のび太「!!」
強盗の顔を見るなりのび太に戦慄が走る……!
それは、その男の顔が以前に戦った『少佐』の顔と瓜二つであったからに他ならない……!
強盗「動くなよッ!動いたらこの女の命は無いッ!」
娘「いや!やめて!ママを離して!!」
強盗「おい、そこの男……前へ出ろ……!」
のび太「………?」
638:
のび太〈『ウルトラストップウォッチ』はさっきの爆発で故障してしまった………隙を見て、とりよせバッグから何か道具を……!〉
強盗「おっと、手を動かすなよ……『野比のび太』ッ!」
のび太「………!?」
のび太〈この時間軸はまだ戦いが始まる前だ……この男はどうして僕の名を――――――!?〉
強盗「……これで終わりだ……ッ!」
のび太「何ッ!?」
強盗の掌が不気味に光り出し
のび太を包み込む―――――……
639:
娘「……アイツが……『写真』になっちゃった……」
強盗「………計画通りッ!」
児童養護施設を突然襲ったこの強盗……
外見こそ違うものの、中身は出木杉であった……!
のび太の渾身の一撃により頭部が半壊し、絶命する寸前……!
出木杉は『メモリーディスク』と『機械化機』の能力を併用し
精製した『フラッシュメモリー』を通りすがりの男に挿し込む事で、意識を一日だけ乗っ取ったのである……!
強盗〈容量の都合で『チッポケット二次元カメラ』1発分の能力しか引き継ぐ事は出来なかったが……これでいい……!!〉
※チッポケット二次元カメラ
撮影した対象を写真にしてしまう
※冒頭〈7月13日〉に破壊した秘密道具の一つだが
7月7日の時点で『機械化機』に能力は登録済みであったので出木杉は使用可能
強盗〈後は写真を身分証拠としてこの時間軸の僕とコンタクトを取り、より確実な勝利を掴む様に作戦を練り直し、歴史を改変させるだけ!!〉
強盗〈これで僕の……完全勝利だッ!!〉
640:
強盗「そして成り行きとはいえ残念だが……目撃者は全員始末しておかなきゃな……!」
ママ「……!!」
強盗「いや、良い事を思いついたよ……そこの娘、君に罪を擦りつけてやろう……!」
娘「何ですって!?」
強盗〈この身体が元々持っている殺人と証拠隠滅の知識は相当なものだ……どうやら運命はつくづく僕を味方してくれているらしい……!!〉
娘「ママにも……子供達にも……手は出させないわ……!!」
園児「おねぇちゃん、大丈夫だよ……パーマンが守ってくれるもん……!」
園児「そうだよ、あんな奴パーマンがやっつけてくれるさ!」
強盗「パーマン……?ぷっ、はははははははは!!」
641:
強盗「それは正義のヒーローか何かの名前かな?全く笑いが止まらないよ!現実にはいないんだよ!そんな者は!」
園児「いるもん……パーマンは……さっきみせてくれたもん……!」
園児達はスプレー缶を拾い
落ちているのび太の写真に吹きかけた……!
強盗「……何をしている……?」
園児「さっきおにぃちゃんが……やってたんだ……!」
園児「そうだぞ……絵本のパーマンが……動き出したんだ……!」
強盗「…………?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
のび太「まったくしぶといね君は……!」
強盗「ッ!!?」
642:
強盗「……バカなッ!?どうやって『チッポケット二次元カメラ』から逃れたッ!?」
のび太「『アニメスプレー』……園児達が吹きかけてくれたおかげで僕は写真の中で動く事が出来る様になった…!」
のび太「そして『磁石式四次元通過方式採用瞬間移動ベルト』を使う事でここへ戻って来たという訳さ……!」
強盗「そんな……ここまで来て……あのガキ共が道具を……そんな偶然が…ッ!?」
のび太「そう、偶然………園児とアニメスプレーで遊んでいなければ……マグネットで数字遊びをしていなければ僕はここへ戻って来る事も出来なかっただろう……」
強盗「な……ならば何故……どうやってその偶然を引き寄せたッ!?」
のび太「それは君が今回一番身に染みてわかった事じゃあないか…?」
強盗「……?」
のび太「『運命』からは……決して逃れられないって事さ!!」
643:
―――――――――…
強盗「は、離せド畜生がァーーーッ!!」
刑事「ご協力ありがとうございました。奴は指名手配中の『連続殺人犯』でして……」
警部「お二人には申し訳ないが……引き続き当時の現場の状況を詳しくお聞かせ願えませんかな?」
のび太「ええ、結構ですよ……」
女「妹……妹はどこ!?」
ママ「姉さん、兄さん!ここよ!」
男「妹……良かった!……無事で!」
ママ「ちょ……ちょっと恥ずかしいじゃない男……みんなの前で……」
娘「あはは……」
644:
兄「君が妹を助けてくれたみたいだな……」
男「ありがとう……本当に感謝してる……!」
のび太「そんな……うっ……!」
のび太は答え終えない内に
その場に崩れ落ちてしまった……
警部「おい!君!?」
娘「ちょ……ちょっと!?どうしたのよいきなり!?」
のび太〈そ……そうか……彼等を助けたから………歴史が変わるのか………〉
のび太〈僕の記憶は新たに改変され、以前の記憶は無くなってしまうけど……これで良かった………本当に……―――――……
645:
のび太「―――――…」
ドラえもん「気が付いたかい?」
のび太「……ドラえもん!?……そうか……僕は出木杉と時を遡って………」
ドラえもん「おめでとうのび太君。」
のび太「へ……?」
―――――パァン!
646:
のび太「…………!!」
のび太がおそるおそる目を開くと…
クラッカーを持った四人がいた……!
しずか「おめでとうのび太さん」
スネ夫「おめでとうのび太!!」
ジャイアン「のび太!おめでとう!じゃあ、下で待ってるぜ!!」
のび太「…………これは!?」
ドラえもん「のび太君……どこから説明すればいいのか………」
647:
のび太「……『タイムテレビ』?」
ドラえもん「そう。あれから『タイムテレビ』を見て、君が面白半分にスペアポケットを落とすなんて事も無くなって歴史が変わったのさ。」
のび太「……じゃあ、あの児童養護施設の人たちは……?」
ドラえもん「ちゃんとそこも微修正しておいたよ。君が助けたように、事件を未然に防ぎ、犯人を警察につきだしておいた……」
のび太「そうか……でも何で僕は『改変後』の歴史を歩んだ記憶が無いんだ?……それに以前の記憶も残ったまま……」
ドラえもん「ええと……今のは……あくまで免罪符のようなもので……」
のび太「………?」
648:
のび太「……………」
ドラえもん「……………」
のび太「………夢だって?」
ドラえもん「………うむ」
のび太「仲間達と危険を潜り抜けてきた日々も……新たな出会いも……しずちゃんとの日々も……全て道具で君が見せた夢の中の世界だったと……?」
ドラえもん「………すまないと思ってる……」
のび太「よくも………」
ドラえもん「……………え?」
のび太「よくも………だましたね……!?」
ドラえもん「!?」
649:
のび太「『!?』じゃあねーんだよオオォォッ!!偉大な教師のつもりかオメーはよォォォォッ!!」
のび太「よくも騙したァァァァッ!!騙してくれたなァァァァァッ!!」
ドラえもん「や……やめないかッッ!!」ビシャッ!!
のび太の頬を思い切り引っぱたくドラえもん
のび太「…ッ!?」
ドラえもん「確かに……僕は睡眠中だった君の夢の内容を勝手に変えた……だがしかしッ!!僕が手を加えたのは夢の中の設定だけだッ!!」
ドラえもん「酷い様子ならすぐに起こしてやるつもりだった……だが君は立ちはだかる困難に対し自分で考え、そして見事勝利を掴み取ったんだッ!!」
のび太「……!!」
ドラえもん「今まで道具に振り回され、己の身を滅ぼすだけだった君がッ!!工夫して道具を使いッッ!!見事困難を乗り越えたのだッ!!」
ドラえもん「妄想であって妄想ではないッ!!これは経験だッ!!経験は血となり肉となり……やがて君の財産となるッ!!」
650:
自分を仇にしてまで戦った日々…
それはのび太の自立を促す為に仕組まれた
ロボットの不器用な『愛』であった…
ドラえもん「それに………今日は8月7日……何の日か知っているだろう……?」
のび太「……あ!」
ドラえもん「さぁ、一階に降りてバースデーケーキを美味しくいただこうか……みんなも誕生パーティを祝ってくれるみたいだよ。」
のび太「ドラえもん……みんな……」
スネ・ジャイ「へへへへへ……」
しず「うふふふふ……」
ドラえもん「僕はロボットだけど……中々器用なもんだろう?」
ドラえもんがニヤリと笑ってみせた
651:
夏休みも終わり、九月
いつもと同じ平穏な日常が再び幕を明ける……
一つ変わった事と言えば……
ドラえもんが未来へ帰った事
どうやら僕の面倒を見る必要もなくなったと言って
安心して帰った様だ……
ドラえもんは安心していたけれど
果たして僕は本当に強い人間になれただろうか
これから先、人生を歩む上で
幾多の困難が待ち受けているだろう……
僕は道具の力に頼らず
自分の力で乗り越えていけるだろうか……
――――でも心配しないで、ドラえもん
あの角を曲がれば
僕を頼りにしてくれる友達が背中を押してくれる
いつもの街路樹の下で
あの娘が僕を待っていてくれている……
野比のび太の青春は今、始まったばかり―――――――
652:
ドラえもん「――――――気が付いたかい……?」
のび太「ドラえもん……あれから『何秒』経った……?」
ドラえもん「5秒だ……」
のび太「!?」
ドラえもん「そう……君が「道具を使って本気で戦いたい」と僕に訊ねてからたった5秒の間に……
  君は小学校生活を終え中学二年生まで進学し
  順風満帆ながらもどこか満たされない日々に不満を感じること約半年
  『退屈な生活に刺激が欲しいーー!!』と僕に駄々をこね始め
  『もしもボックス』の作った世界で何の哲学も持たない相手と能力バトルに明け暮れたと思ったら
  実は夢の中の世界で、現実では皆で誕生日を祝う事になり
   無事、夏休みも明け……僕が帰った後も華やかな学園生活を送る事が出来るであろうという
   予感をさせた所で君にかけた『催眠術』を解いた……!」
      
ドラえもん「恐ろしいだろう?『さいみんグラス』の力は……?」
のび太「……ッ!!」
ドラえもん「道具を使って本気で戦いたい……なんてくだらない事を言ってないで勉強しろォッッ!!」
          −終−
653:
>>1乙
めっちゃ面白かった
654:
>>1乙
ドラえもんという作品への愛を感じた
660:
おつきあい下さったみなさま
ありがとね〜( ; ´ω`  )ノシ
661:
>>660
一週間お疲れ様
662:
お疲れー
しかしこうして見ると藤子パネェな道具のレパートリィがすげぇ
663:
乙でした
今まで見たドラえもんSSで一番の傑作だと思う
664:
毎日の楽しみがおわった…
>>1超乙!
感動した
667:
>>1乙!
すげーおもしろかった?
66

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