娘「お医者さんごっこしよっか!?」back

娘「お医者さんごっこしよっか!?」


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1:
男「あ、もしもし? おふくろ? いや、たまには声が聞きたいかなーって。」
男「んーやっぱりバレちゃうか。実は会社が潰れちゃってさ。」
男「まぁね、でも、ちょっと蓄えが残ってるし、このまま新しい仕事探すわ。」
男「いやいや、そうならないために仕事を探すわけでね。」
男「ああ、ホントにそうなったら一回戻るから。」
男「うん。今日のところはそれだけ。」
元スレ
娘「お医者さんごっこしよっか!?」
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3:
――――――――――
男「あ、もしもし? おふくろ? いや、たまには……って昨日の今日だっけ。」
男「ま、バレるもなにもないか。実はアパート燃えちゃってさ。」
男「いや、どうも放火みたいだわ。というわけだから……その。」
男「通帳は燃えたけど、キャッシュカードは持ってるから。」
男「うん。かなり予定が早まったけどね。」
4:
男「というわけで、不肖の息子ただいま戻りました。」
母「ああ、おかえり。」
男「親父は?」
母「仕事に決まってんでしょ。」
男「愚妹は?」
母「大学。もうすぐ戻ると思うけど。」
男「そうか。」
母「あんた荷物それだけなの?」
男「アパート全焼したし。コレもパソコンと途中で買った着替えしか入ってないよ。」
6:
男「俺の部屋ってまだ残ってる?」
母「半分物置になってるわ。あんたあの部屋使う気なの?」
男「そこ以外のどこで生活しろと?」
母「居間でいいじゃない。」
男「プライバシーねえじゃん。」
母「家族なんだし気にしないわよ。」
男「俺が気にするんだよ。」
7:
母「ほんとにあの部屋使うのかい?」
男「そのつもりだけど、なんか不味い事でもあんの?」
母「あの部屋、出るっぽいんだよ。」
男「蜘蛛か? 百足か? 今に始まったことじゃないでしょ。」
母「幽霊だよ。ユーレー!」
男「俺そんなもん信じてないし。」
8:
母「じゃあ、適当に片付けて使いなよ。どうなっても知らないよ。」
男「うん。使わせてもらうわ。」
母「あ、あの部屋はエアコン付けてないからね。」
男「という事は、他の部屋には取り付けたってことか。」
母「思い切っていろいろ電化にしたけど、あの部屋は使う予定なかったしね。」
男「ストーブあまってるのない?」
母「やめてよ。アパート火事になったんでしょ。」
男「火元は俺じゃないっての。」
9:
男「あー、懐かしいな。てか、こんなに狭かったっけ?」
男「つーか、物置にするにしても、もう少し規則的に収納しとけと。」
男「テレビはつくな……映らないのはアナログだからか。チューナー買うか。」
男「これはコタツか。エアコンあるから出してないのな。」
男「丁度いい。この部屋の暖房はコレ使おう。」
―くすくす―
男「?」
男「近所のおばさんでも来てんのかね。」
11:
母「お? 出かけるの?」
男「テレビが映らん。チューナー買ってくる。」
母「じゃあ、帰りに卵買ってきてよ。」
男「いいよ。ん? 誰か来てたんじゃなかったの?」
母「何が?」
男「何でもない。」
13:
男「とりあえずこれでテレビは映るようになった、と。」
男「たまにはコタツも風情があっていいもんだよね。」
―うん!―
男「?」
男「テレビの音か? ちょっとボリュームを……」
男「ていうか、リモコンどこ行った? コタツの中とか?」
―きゃっ!えっち!―
男「…………」
16:
男「…………」
娘「こ、こんにちは。」
男「俺にこんな小さい妹いたっけ?」
娘「こんな、って? 見えるんですか?」
男「何が?」
娘「私が。」
男「テレビのリモコン握りしめてコタツに潜り込んでる女の子以外は何も見えんな。」
娘「それ、私です。」
17:
男「で?」
娘「はい?」
男「誰?」
娘「何が?」
男「君が。」
娘「私?」
19:
男「質問文に対し、質問文で答えるとテスト0点なの知ってた?」
娘「私は会話が成り立たないアホじゃないです!」
男「その返答には百点満点あげる。で、誰?」
娘「えーと、う―…私はコタツワラシです。」
男「なにそれ?」
娘「コタツに住む神様? みたいな?」
男「座敷ワラシみたいなもん?」
娘「座敷ワラシじゃないです!」
22:
男「ふーん……」
娘「信じていただけるんですか?」
男「いや、ぜんぜん。」
娘「じゃあ、信じてください。」
男「無理。」
娘「どうしてですか?」
男「勝手に人の部屋に入り込んでリモコン隠した半袖・短パンの子供にしか見えないから。」
娘「ああ、あなたには私が見えてるんでした。じゃあ、ちょっとついてきてください。」
26:
娘「どうです? あなた以外に私に気付いた人、いました?」
男「隣のおばさんや、ウチのおふくろがグルじゃないっていうなら、いなかったかな。」
娘「私は子供にしか見えないんです。」
男「うん、どう見ても大人だとは思えないね。」
娘「そうじゃなくて、私を見ることができるのは子供だけなんです。」
男「でも、俺には見えてるわけで。」
娘「じゃあ、あなたは子供なんですね。」
男「いや、俺25ですよ? 酒も煙草も合法だし。この歳で子供って無理があ……!?」
娘「今、思い浮かべた基準で間違いないと思いますよ。」
男「ヤメテ!そんな憐みの眼差しを向けないで!」
27:
やーいどーてー!
29:
男「はぁ……」
娘「もともとこの部屋に住んでた人ですよね?」
男「そうだけど。」
娘「なんで戻って来たんですか?」
男「彼女に振られて、勤めてた会社が潰れて、住んでたアパートが全焼した。」
娘「弱り目にたたり目というやつですね。」
男「そんな簡単に済ませないでよ。」
娘「踏んだり蹴ったり?」
男「余計に簡素になってるから。」
娘「泣きっ面に蜂?」
男「マジで泣きたい。」
32:
娘「落ち込まないで、禍福はあざなえる縄のごとしって言うじゃないですか。ね?」
男「今のところ禍禍禍だけどな。縄じゃなくてミサンガ編めるぞ。」
娘「でもまあ、これからはいい事ありますよ。」
男「良く当たる占い師が言いそうな言葉だよね。」
娘「ほんとですって。私を追い出さなければ……ですが。」
男「なにそれ?」
娘「私を見た人には幸運が訪れるんです。」
男「座敷ワラシじゃん。」
娘「あ、いや、違います。コタツワラシです。」
35:
男「そもそもコタツワラシとか聞いたことないし。」
娘「とにかく、座敷ワラシじゃないんです。」
男「座敷ワラシが嫌いなの? 同一視されんの嫌?」
娘「座敷ワラシってバレたら奥座敷に閉じ込められちゃうでしょう?」
男「…………」
娘「あちゃー……」
男「だが……マヌケは見つかったようだな。」
娘「シブくないです!まったくぜんぜんシブくないですから!」
38:
男「まあ、別に何ワラシだっていいけど。」
娘「閉じ込めたりしないですか?」
男「そもそも閉じ込めるってなんだよ?」
娘「私達がいる所は栄えるんです。でも、ずっといるわけじゃなくて、適当な時期に他へ移るんです。」
男「ああ、家が廃れるのが嫌だから立ち去れなくするわけか。」
娘「別に、いなくなったからって即座に家が潰れるわけもないですけどね。」
男「じゃあ、我が家は君が居るから順風満帆ってこと?」
娘「私はこのコタツに憑いているので。家計には干渉してません。」
男「このコタツだけが人生バラ色ってこと?」
娘「そうですね。このコタツに入る人だけ幸運を授けます。」
39:
男「でも、このコタツは使われていなかった、と。」
娘「だからこそ憑いたわけです。人目を忍ぶ意味でも。ね?」
男「なんで? 人を幸せにするのが嫌になったとか?」
娘「嫌じゃないですよ。でも、私は下手っぴだから幸せに出来なくて。」
男「どういう事?」
娘「大体の人は幸運が続くとそれが当たり前になっちゃって、欲に溺れてしまうんです。それが嫌で……」
男「そんなのは本当の幸せじゃない(キリッ!ってことですね。」
娘「その言い方、なんか癪に障りますね。」
41:
娘「それに、そういう感じになっちゃった人は私を閉じ込めようとするんです。」
男「閉じ込められるのは、まあ、嫌だろうね。」
娘「そしたら子供も遊んでくれなくなっちゃうし。」
男「遊ぶって何? おはじきとか毬つきとか……あとアレ、お手玉とか?」
娘「そんな時代遅れの遊びはしないです。バカにしないでください。」
男「バカにしたわけじゃないよ。ルールとかよくわかんないことだと遊べないな。と思ってね。」
娘「遊んでくれるんですか?」
男「内容によるってば。」
娘「時代はハミコンですよ!」
男「ナウい……って言えば君の時代に追い付けそうだね。」
44:
男「で、俺はこのコタツ使うつもりなわけだ。」
娘「どうぞどうぞ。」
男「どうする? 次の家を探して移る?」
娘「追い出さなければって言ったじゃないですか。しばらくは居ますよ。居てもいいならですが。」
男「嫌じゃない?」
娘「あなたはカラ元気振りまわしてますけど、心が泣いてるじゃないですか。少しくらいいいかと。」
男「心が泣いてる……だってお!」
娘「照れ隠しですよね? 茶化さなくてもいいですよ。」
男「…………」
娘「今度は怒ってみせる気ですか?」
男「……いや、ごめん。」
娘「あ、すいません、私も短慮でした。」
47:
男「ところで、閉じ込めるのってどうやるの?」
娘「聞いてどうするんですか?」
男「気になっただけ。教えたくないなら別にいいよ。」
娘「部屋の周りに縄をはわせてお札を貼るんです。」
男「結界っていうので合ってるかな? そういうのを張るわけね。」
娘「ええ、ちなみに蔵や土間に縛られる事もありますよ。自分で憑く事もありますが。」
男「座敷ワラシなのに?」
娘「そういう場合はクラボッコとかコメツキワラシって呼ばれますね。」
49:
男「今のところ追い出すつもりは無いけどさ、具体的にはどうなの?」
娘「何を訊かれているのか分かりません。」
男「寝る場所とか、食う物とか、いろいろ。」
娘「私は寝なくても大丈夫ですし、食べなくても死にません。」
男「経済的だな。」
娘「気分次第で寝る事もあれば、食べる事もありますけど。」
男「あくまで、出来ないんじゃなくて、しなくていいだけか。」
50:
娘「寝るときはコタツで寝ようと思います。私は風邪も引かないし。」
男「座し……コタツワラシって何食べるの?」
娘「人間の食べるものなら食べられます。ただ、食べると、その……後で出すことになりますが。」
男「吐くの?」
娘「吐いたりしません!人間と同じです!」
男「ああ、要するにウンk……痛っ!蹴るなよ!」
52:
男「ちなみに何歳?」
娘「あなたモテないですよね? まあ私が見えるくらいですから……」
男「関係ねえし。言いたくないならそう言えよ。」
娘「数えてないから正確にはわかんないです。三百歳くらいかと。」
男「つまりロリババアですね。わかります。」
娘「でも、その半分くらいは閉じ込められてました。」
男「そりゃまた……」
55:
男「まあいいや、質問タイムおわり。」
娘「信じるんですか?」
男「一応はね。てか、疑ってほしいの?」
娘「子供ならともかく、大人の人にしてはアッサリしてるなと……あ、子供でしたね。」
男「なんなら、今この場で大人の階段登ってやろうか?」
娘「この鬼畜!ロリコン!AC-10!」
57:
男「根拠っていうのも変だけど、見た目より達観してるしさ。」
娘「上から目線ですこと。」
男「即席で思い付いた設定でも無さそう。」
娘「当然です。」
男「おかっぱ頭で着物でも着てればもっとスムーズだったとは思うけどね。」
娘「このご時世でそんな格好してたら浮き過ぎますよ。」
男「ま、そういう事だから、とりあえずは信じる。」
娘「では、私は童女 コタツワラシ コンゴトモヨロシク。」
58:
男「じゃあ、何して遊ぶ?」
娘「お医者さんごっこしよっか!?」
男「……え?」
娘「ウソに決まってるじゃないですか。なに赤くなってるんですか。」
男「いやいや、俺は断じてそんな趣味は……」
娘「ドキドキ……しました?」
男「……うん。ちょっとだけ。」
娘「プッ……あはは、このロリコンどもめ!」
男「遊ぶって、俺で遊ぶってことか。」
60:
娘「まあまあ、この部屋にはハミコンあるのでこれで遊びましょう。ね?」
男「ファミコンだ。ハじゃなくてファ。つか、まだ残ってたのかこれ。」
娘「しまいっぱなしになってるのを発掘したんです。」
男「でも無理。」
娘「どうしてですか? カセットもいっぱいありますよ?」
男「これワンコンのAボタン効かないし、このテレビ、同軸ケーブルつなぐとこが無い。」
娘「ワンコンはジョイスティックつなげばいいじゃないですか。」
男「そもそもテレビにつながらないから画面も音も出ないんだってば。」
62:
娘「はうー……今度こそヴ○ルガードIIをクリアしようと思ったのに。」
男(ループゲーとか、世の中には知らない方がいい事もあるよね。うん。)
娘「じゃあ、歌いましょう。せめて気分だけでも。ね?」
男「何だよ? 歌?」
娘「♪れんしゃ〜れんしゃ〜 ♪ついたぞれんしゃ〜……」
男「ごめん、ついていけない。」
66:
男「というか、女の子らしい遊びとかしないの?」
娘「別に楽しければなんだっていいんです。私にとって遊びに貴賤はありません。」
男「カッコ良さそうで全然カッコ良くないから、それ。」
娘「遊び相手が楽しめることなら私も楽しく感じるようにできてますから。」
男「できてるとかいう表現はちょっと引くなぁ。」
娘「あー……どんな相手とも楽しさを共感できる程度の能力。だったらどうです?」
男「程度って部分に作為的な何かを感じずにはいられない。」
69:
男「まあ、ゲームだったらノートパソコンに入ってるからそれで遊ぶか。」
娘「えっちなゲームですか?」
男「いやいや、シューティングですから。パッドないからキーボード操作だけど。」
娘「じゃあやりましょう。」
〜操作説明中〜
娘「右手で移動だから、ファミコンとは手が逆なんですね。」
男「パッドはその内買ってくるよ。高い物じゃないし。」
71:
娘「では早、失礼しまーす。」
男「……おい。」
娘「どうかしましたか?」
男「なんで俺の上に座る?」
娘「重たいですか?」
男「そんなに重くない。でも、問題はそこじゃないでしょ?」
娘「重くないなら問題ないですよ。」
男「ありますよ。」
娘「これなら一緒に画面見れるし。二人ともコタツに入れます。」
74:
男「ボク男の子ですよ?」
娘「まさか欲情するっていうんですか? あ、おっぱい揉んだりしたら絶好ですから。」
男「揉むほど無いじゃん。」
娘「そんなだから、いまだに私が見えるんですよ。」
男「何この敗北感。」
娘「おぉ!あぁぁ!うわっ!」
男「一緒に体が動いてるぞ。」
娘「うるさい、気が散る。一瞬の油断が命取り。」
77:
男「初見で河童のポロロッカ取得……だと?」
―ご飯だよ〜―
男「どうやら飯の用意ができたみたい。ちょっと行ってくる。」
娘「そうですか。残念です……」
男「食ったらすぐ戻るから、そのまま遊んでていいよ。」
娘「駄目です。」
男「?」
娘「一人で遊んでても楽しくないです。戻ってきてから続きしましょう。ね?」
男「なにこれ可愛い。」
81:
男「久方ぶりの一家団欒てやつだな。」
妹「兄貴ちょっと痩せたんじゃないの?」
男「お前は相変わらずのビヤ樽っぷりだな。マイシスター。」
妹「信じらんない。のたれ死ねクソニート!」
男「開口一番がおかえりなさいじゃなくて傷付いたお返しだ。」
父「顔会わせて早々に喧嘩するな。」
82:
男「タマネギageとか言えば丸く収まる?」
妹「逝ってヨシ!」
母「オマエモナー」
妹「それよか、話声がしてたけど? 長電話でもしてたの?」
男「ん? ああ、そんなとこだな。ノートでボイスチャットとかもするだろうから気にするな。」
父「これからどうするんだ?」
男「職探しするしかないでしょ、明日履歴書買いに行って来るわ。」
84:
母「いい仕事が見つかればいいんだけどねえ。」
男「とりあえず、貯金が尽きるまでは足掻いて見る。」
妹「尽きたら?」
男「バイトしながら職探しに切り替える。」
妹「そして、そのままフリーターで一生過ごすわけね。」
男「そこは応援しろよ、このム○シュビバンダム!」
妹「ムッシュ……何?」
男「ggrks……じゃ、ごちそうさま。」
86:
男「戻ったぞ。どこだ? またコタツか?」
娘「……えっち!」
男「スカートめくったわけじゃないでしょうが。」
娘「コタツ布団も同じようなものです。」
男「そもそもなんでコタツの中に居るんだよ。」
娘「コタツワラシですから。」
男「まだ言ってるよこの人。」
88:
男「じゃあ何? 俺はスカートの中に足や手を突っ込んで温もりを分けてもらってるの?」
娘「そんなわけないじゃないですか。」
男「もしかして、また俺で遊んでる?」
娘「あなたは面白い人ですから。つい、悪戯したくなっちゃいます。」
男「まあ、今はその方が気が紛れて楽だな。考え込むと潰れそうだもん。」
娘「そういうことは言葉に出さないでください。」
男「あ、紛らわしてくれてたのか。ありがとうな。」
90:
―クソ兄貴!アトデコロス!(ググった)―
※画像 ムッシュビバンダム
娘「ふふ、兄妹仲がいいんですね。」
男「どこが?」
娘「当たり前すぎて自覚が無いだけです。私は兄弟とか無いからちょっと羨ましい。」
男「俺は君みたいな妹がいたほうが嬉しいけどな。」
娘「え? ……じゃあ、お兄ちゃんって呼んでもいいですか?」
男「へ? あー……うん、そのほうがいいなら、構わない……けど?」
娘「まあ、呼びませんけどね。」
男「クソがぁぁぁぁあ!」
91:
娘「まあまあ、テレビでも見てくつろぎましょう。ね?」
男「そうしよう。」
娘「では再度、失礼しまーす。」
男「またですか。」
娘「テレビが見える角度からしてここに座るのがベストでしょう。嫌ならどこか行ってください。」
男「ここ俺の部屋だし。」
娘「私のコタツです。」
男「私のじゃないが。」
93:
男「後ろで匂い嗅いだり、息を吹きかけたりするかもしれないぞ?」
娘「それで満足するならそうしてください。襲われるよりはマシです。」
男「いや、別に襲いませんけど? 子供に欲情するほど壊れてないわ。」
娘「私、ある程度なら、見た目を成長させたりできますよ?」
男「まあ、しませんけど。だろ?」
娘「さすがに耐性ついちゃいましたか……」
男「頭、撫でてもいい?」
娘「特別に許可します。」
男「……」
娘「なんだか、落ち着きますね。」
94:
娘「もうテレビもつまんないですね。ニュースばっかりの時間になっちゃいました。」
男「…………」
娘「無視ですか? それとも私に見とれてます?」
男「…………」
娘「ちょっ!苦しいです!襲わないって言ったじゃ……む?」
男「Zzz……」
娘「……テレビは私が消しておきますね。」
95:
――――――――――
男「寒いと思ったら、コタツで寝てたのか。もう朝……っつーか昼近いな。」
娘「きゃっ!」
男「え!?」
娘「みみみみ、見ましたか?」
男「見てない!何も見てないから!」
娘「見られたぁ……紐パンなんか履いてる淫らな子だと思われたぁ。」
男「いや、クマさんのプリントでしたよ?」
娘「……やっぱり見たんじゃないですか。」
男「くっ……なんて初歩的な……」
99:
娘「もう、お嫁に行けない……」
男「待って待って、いろいろとおかしいでしょ?」
娘「獣のような眼差しで着替えを覗いておいて、この上さらに私を辱めるつもりですか?」
男「というか、ここで着替えてたのはそっちでしょ。俺は目を覚ましただけだし。」
娘「責任……とって下さいね。」
男「あー……要するにプリンとか、クレープとかで良いのかな?」
娘「話が早いですね。あなた見込みがありますよ。」
男「かなわないわー……」
100:
娘「でも、誤解はしないでください。ホントに恥ずかしかったんですから。」
男「最初の反応だけは素だったのね。」
娘「はい。陥れるために待ち構えて着替えてたわけじゃないです。」
男「じゃあ、もう少し目を覚ますのが早ければ……」
娘「パンツ換える瞬間を見られてたでしょうね。」
男「そういう事みなまで言わない。」
娘「意識しちゃいますか?」
男「しませんよ。」
101:
娘「家の人はみんな出掛けちゃってますよ。」
男「おふくろもか。」
娘「なんか、町内会の婦人部がどうのこうのと。」
男「飯どうするかな。」
娘「あなたの分も用意してありました。もう冷めてると思いますが。」
男「見て来たのか。まあ、大人からは見えないしな……ん?」
娘「それです、それ、妹さんに見つかるかとヒヤヒヤしました……」
男「まあ、バレて困るもんでもないか。」
娘「……でも、妹さんも私が見えないみたいですね。」
男「俺はあのハークルビースト以下かよ!!」
102:
ハークルビーストでググったらわろたwww
※画像 ハークルビースト
103:
さっきから妹のビジュアルがひでえwwww
104:
男「とりあえず飯食って買い物に行こう。」
娘「プリンですね。」
男「ああ、それもあったか。」
娘「ワッフルも買ってきてくれるんですか?」
男「違うし、履歴書とか求人誌とかを買うの。」
娘「ついてってもいいですか?」
男「家から出れるの?」
娘「当たり前です。家を移る時だってワープしてるわけじゃないんですよ?」
105:
男「火のもとよーし!戸締りよーし!では出発。」
娘「私を忘れてますが?」
男「誘導いるの? 迷子とかになったりする?」
娘「なりません。でも、どうせなら一緒に歩きましょう。ね?」
男「こら、裾を引っ張るな。」
娘「じゃあ、手を繋いでください。」
男「んー……まあ、いいけど、なんで?」
娘「そのほうが、きっと楽しいからです。」
107:
男「コンビニで履歴書が買えるとか、便利な時代になったもんだ。」
娘「プリンもちゃんと買ってください。」
男「大丈夫、忘れてないよ。どれがいい?」
娘「じゃ、これを。……あと、私が見えない人もいるので独り言に気を付けてください。」
男「ああ、はたから見たらアブない人になるな。」
娘「既に何人かに奇異の目で見られましたけどね。」
男「そういう事は店に入る前に言って欲しかったな。」
娘「すいません、人と歩くのは久々だったので。」
110:
男「せっかく外出したんだし、商店街のほうも行ってみる?」
娘「いいですね。でも、もし知り合いに会っても話し込むのはやめましょう。ね?」
男「見えない人だと困る?」
娘「逆です、見える人だと困ります。」
男「んん?」
娘「私について訊かれたらどうします? そして、その様子を見えない人が見ていたら?」
男「アブない人として勘定される人数が増えるな。」
娘「ね? 可哀想じゃないですか。」
男「まて、それは暗に俺だけなら思われてもいいって言ってないか?」
112:
娘「あ、みかんがありますよ。買いましょう!」
男「プリン買ってあげたじゃないですか。欲張りはダメです。」
娘「コタツがコタツであるためにはみかんが必須なのです。」
男「よくわからん理論を説いてもだめです。」
娘「コタツにみかんが無い家は日本の心を無くしてるんです。心が和めば世界は一つです。」
男「まあいいや、このままじゃ奇異の視線に晒されてしまうしな。」
娘「やった。日本の心を取り戻しましょう。ね?」
114:
男「あの人、明らかに俺に向かってきてるんだが。」
娘「そうですね。」
女「ね? あなたもしかして……」
男「見えてる……のか?」
娘「私はコタツワラシです。あなたが思ってるようなものじゃないです。」
女「あら、そう。まあいいわ。何か相談に乗れることあるかしら?」
娘「今のところは無いです。」
女「私、この辺に住んでるから、何かあったら相談してね。」
115:
女「あなたはこの子の保護者さん?」
男「うーん……友達、かな?」
娘「…………」
女「免許は持ってる? 車を買う予定とか、ないかしら?」
男「免許はありますが、予定は今のところ無いですね。」
女「宝くじでも当たったら、考えてくれるかな?」
娘「むっ……」
女「じゃ、またね。」
116:
男「うちのマシュマロマンより断然綺麗だったのに、人は見掛けによらないな。」
娘「さっきの人は、あなたの同類じゃないですよ。」
男「でも、君が見えてたじゃないか。」
娘「あの人は、私の同類です。元……ですが。」
男「じゃあ、その気になればあんな風にもなれるわけか。」
娘「あくまで元、ですよ。私はまだあそこまでは発育できません。」
男「条件を満たせばなれるってことか。まあ、教えませんけど?」
娘「ええ、教えませんけど。」
120:
男「おまたせ、買ってきたぞ。」
娘「その箱がゲーム機の箱? 案外と小さいんですね。」
男「そして商店街の福引券が2枚だな。」
娘「それはそれは、楽しみですね。」
男「特等は温泉旅行か……興味無いわ。」
娘「早引きに行きましょう。」
125:
男「まさか、2回とも2等を引き当てるとは……」
娘「その商品券? ってなんですか?」
男「商店街の加盟店でお金の代わりに使える券だよ。一応、儲かったって事になるかな。」
娘「早いい事あったじゃないですか。」
男「てことは、これは君のご利益というわけか?」
娘「それは分かりません。ただ、そう思うんなら感謝してほしい……かなぁ。」
男「じゃあ、ここで待ってて。すぐ戻る。」
140:
娘「何か買って来たんですか?」
男「内緒。帰ってからのお楽しみって事で。」
娘「焦らしプレイですか。あんまり感心しないですね。」
男「いつも思うんだけど、そういう知識はどこで培ったの?ねえ?」
娘「私達って、人からはどういう関係に見えてるんでしょうか?」
男「親子っていうには俺が若すぎるだろうな、兄妹?」
娘「あ、ロリコンの誘拐犯と、その被害者がベストマッチしますね。」
男「じゃあ、せめてロリに含まれない年齢を装ってよ!」
娘「そしたら援助交際カップルでしょうか。ね?」
男「犯罪者は確定路線かよ。」
142:
男「あ、鍵あいてる。」
娘「お母さんが帰ってきてるみたいですね。」
母「おかえり。買い物かい?」
男「うん、履歴書とかいろいろ。」
母「お昼は?」
男「朝食べるの遅かったし。いらないわ。」
母「あっそ。」
143:
娘「さあ、早くプリンを出してください。ね?」
男「そういえば、買った事すっかり忘れてた。はい、どうぞ。」
娘「まさかこのまま食べろなんていう気じゃないですよね?」
男「いう気ですが?」
娘「プリンに対して失礼ですよ。お皿にプッチンすべきです。」
男「至極どうでもいい。」
娘「どうでもよくないです。カラメルだけ底に残るのも味を損ねますし。」
男「それは一理あるか。」
娘「それに、これが償いだってこと思い出してください。」
男「仰せのままに……」
145:
男「それ食べたらしばらくおとなしくしててね。」
娘「遊んでくれないんですか?」
男「履歴書を書くから。それが終わったら遊ぼう。」
娘「それを書いたら働き口が見つかるんですか?」
男「そうとは限らないよ。でも、先に書類で自己紹介するのが決まりで、これがその紙なの。」
娘「よくわからないけど、とりあえずはめんどくさいんですね。」
男「君って、知識にかなりの偏りがあるよね。」
146:
男「…………」
娘「…………」
男「…………」
娘「…………」
男「…………」
娘「つまんない。」
149:
男「つまんないのは俺も一緒だよ。」
娘「じゃあ、一緒に遊びましょう。ね?」
男「みかん出すから。これでも食べてなさい。」
娘「コタツの本懐ですね。」
男「…………」
娘「♪〜♪〜」
男「何してるの?」
娘「みかんは揉むと甘くなるんです。」
151:
蜜柑を揉むと甘くなるってのは
揉むことによって損傷した部分を酸っぱい成分で修復するから
相対的に甘くなるんだぜ
152:
豆知識入りました
150:
男「…………」
娘「♪はちほうこう〜♪はーちほうこう〜♪に〜ごうきついたらろーくほうこう〜♪」
男「減ってるじゃねえか!」
娘「終わったんですか?」
男「いや、言わずにはいられなかっただけ。もすこし静かにしてて欲しいかな。」
154:
娘「…………」
男「…………」
娘「♪みどりの〜だ〜いちは〜♪は〜る〜かなゆめ〜♪」
男「…………」
娘「♪ごーほぶれーか〜 ♪ごーほぶれーか〜 ♪ここは〜コリい…ゲホッ!コホッ!」
男「うん、あるある。」
160:
男「お待たせしました。遊ぼうか。」
娘「待ちくたびれましたよ。」
男「じゃ、君はこれ開けて。」
娘「え、同じの二つ買ったんですか?」
男「そっちは君にあげる。」
娘「こんな高価なもの、ダメですよ。」
男「商品券で交換しただけだよ。君のおかげなら君に還元するのが筋かな? って。」
娘「でも、一緒に遊ぶなら、一個を使いまわせばいいじゃないですか。」
男「一緒に遊ぶから、二個必要なの。」
161:
男「流石と言うか、遊びに関しては飲み込みが凄い早いな。」
娘「当然です。あ、シビレ置きました。」
男「おっけー!かかったら尻尾切るね。」
娘「思いっきり空振りじゃないですか。もう罠無いですよ。」
男「ぐぬぬ……」
娘「閃光投げます。それで何とか。」
男「お、切れた!あとは捕獲で……」
娘「だから、罠が無いんですって。」
163:
男「あ、さっきまで弓だったから砥石忘れた。」
娘「私ヘビィですから、持ってきてないです。」
―ご飯できたわよ〜―
男「もうそんな時間になるか……リタイアして今日は終ろう。」
娘「面白かったです。それにしても最近のゲームウォッチは凄いですね。」
男「いや、32ビット機だし、第七世代だし。」
165:
父「どうだ、仕事のほうは、見つかりそうか?」
男「いやいや、昨日の今日で見つかるとか無理だし。」
母「良さそうな求人はあったの?」
男「とりあえず3社ほど、履歴書5枚書いたし、明日送るわ。」
妹「どんな業務?」
男「刺身の上にタンポポのせる会社とか、依頼人の代わりに壁を殴る会社……です。」
妹「ちょっと、なんでそんなにかしこまるのよ。私が何かした?」
男「いえ、矮小な自分を恥じているだけです。」
166:
妹「ようやく自分の立場を理解したってわけね。」
男「おっしゃる通りです、返す言葉もございません。」
妹「いい心がけだけど、ちょっとキモい。」
男(今に見ていろクソビッチが……)
母「焦って決めなくてもいいからね。下手すりゃ一生に関わることだし。」
男「まあ、ブラックじゃなければどうにかなるよ。ごちそうさま。」
168:
男「またコタツに隠れてるのか?」
娘「コタツワラシなので。」
男「続きやる?」
娘「次はパソコンがいいです。」
男「あ、そう。じゃあ、パッドも買ったから接続するわ。」
娘「では早、失礼しまーす。」
男「また俺に座るのね。」
169:
男「いいかげんにしないと、俺、勘違いしちゃうよ?」
娘「勘違いするだけなら構いません。衝動に負けなければ。ね?」
男「ひょっとして、寂しかったりするの? 人恋しいみたいな。」
娘「当たり前じゃないですか。何年隠れてたと思ってるんですか。」
男「すんなり認めたよ、この人。」
娘「あ、でも、今日は布団で寝てくださいよ。」
男「そういえば昨日はこのままオチたんだっけ。」
娘「私にもたれかかって来ました。襲われるかと思いましたよ。」
171:
――――――――――
娘「発送してきたんですか?」
男「うん。いきなり一社目から採用されるとは思ってないけどね。」
娘「暇だったのでエイトメロディーズ10回くらい歌っちゃいました。」
男「なにそれ?」
娘「私、一人で寂しいときは何か歌って紛らわしてるんです。」
男「ゲームの歌か? もしかして、幽霊の正体ってコレ?」
娘「♪らぁららららぁ〜 ♪らぁらぁらららぁ〜」
男「あ、それ知ってる。」
172:
ワラシちゃんいい趣味してるな…
MOTHER
ふぅ…
173:
男「♪Sing a melody〜 ♪Simple as can be〜」
娘「エンディングまで……」
男「泣くんじゃない。」
娘「ちなみに出だしは、♪てーかーめろでぃ〜ですよ。」
男「ああ、Takeだったっけ。」
娘「しんがーは二回目のメロディの前です。」
男「というか、英語わかるの?」
娘「歌詞の意味とかはこの際どうでもいいんです。」
男「わかんないってことね。」
174:
――――――――――
男「これで11社目か……さすがに凹むなぁ。」
娘「またダメだったんですか。」
男「空求人だったりもするんだろうけどね。」
娘「なんとか慰めてあげたいですけどね。」
男「いいよ。十分気晴らしにはなってくれてると思う。」
娘「めげずに頑張ってる姿はカッコいいと思いますよ。」
男「あ、ダメだ……それ泣ける。」
娘「ちょっと、ほんとに泣かないでください!私、そんなつもりじゃ……」
177:
男「うっ……うっ……」
娘「あーもー、特別に抱っこしてあげます。」
男「うん……ぐすん。」
娘「ごめんなさい、辛かったですか?」
男「……いや。」
娘「傷付いちゃいました?」
男「そんなんじゃないよ……」
178:
娘「いじめるつもりはなかったんですよ?」
男「わかってるよ。悲しいのと嬉しいのといろいろ混ざっちゃってさ。」
娘「私、変なこと言っちゃいました?」
男「君には弱い所見せてもいいんだなーって思ったら、なんかこみ上げて来た。」
娘「私はびっくりしました。意図せずひどい事言っちゃったのかなーって。」
男「ありがと。もういいよ。締まらないから、いつもの調子で頼むよ。」
娘「嘘泣きして私の胸を堪能したんですね。この変態。」
男「そうそう、それ。」
180:
―ニュースをお伝えします。一部上場企業の今北産業が―
男「あれ? この会社、面接までいったとこじゃん。」
―虚偽会計を行っていたことが、昨日明らかになりました。―
男「マジか。」
―調べによりますと……―
男「あそこに決まらなくて良かったな。」
娘「人生万事塞翁が馬なんですよ。ね?」
181:
わらしのおかげすなあ
183:
男「落ちる理由は色々だろうけど、落ちて良かったってトコもあるってことだよな。うん。」
娘「……無理、してますね。」
男「何か言った?」
娘「その切り替えの早さに、嘘泣き疑惑が濃くなったって言ったんです。」
男「こいつは厳しい。」
娘「まあ、安心してください。私が居れば悲惨な会社には縁が無いでしょう。」
男「うむ、苦しゅうない。頼りにしておるぞ。」
娘(笑顔が辛そうですね……)
184:
娘「あの、宝くじとか買ってみませんか?」
男「ああー、いかにも当たりそうだな。」
娘「一等は無理でもそこそこの配当は望めるかと。」
男「そういうのって、いいの?」
娘「いいとか悪いとかがあるんですか?」
男「君の立場からそういう事を勧めるのがさ、なんか悪用っぽいじゃん。」
娘「定期的な富の再分配は行われて然るべきだと思いますけど。」
男「そんな風に利用されるのが嫌だから、隠れてたんでしょ?」
娘「それはそうですが……なんとかしてあげたいと思うので。」
185:
男「やめとこう、一度やったら味をしめて繰り返しそうだ。」
娘「私がいいって言ってもですか?」
男「そうなったら君のこと金ヅルとしか見れなくなる。俺はそれが嫌なわけよ。」
娘「え?」
男「他意はないだろうけど、自分から金ヅルにしてくださいって言ってるみたいで、嫌だ。」
娘「ずるいです……」
男「はぁ?」
186:
――――――――――
娘「私がコタツワラシじゃなかったら、私達どうなってましたかね?」
男「どうって? お、逆鱗ゲット。」
娘「こんな風に仲良く遊んでくれてましたか?」
男「仲良くも何も、接点なかったんじゃない?」
娘「そういうことじゃないです……」
男「剥ぎ取らないの?」
娘「あ、そうですね。尻尾どこですか?」
189:
男「それってさ、お互いの立場が今と違ってても、こんな風になりたいってこと?」
娘「え?」
男「そういう、たらればの話は、願望から来るものだと思うんですよ。」
娘「そうかもしれないです。」
男「何かしら現状に不満がある? くそっ、秘薬盗まれた。」
娘「不満ではないですが、遊んでもらってるのに返せてないのが心苦しいのはあるかと。」
男「俺は話相手になってもらえるだけでも、十分なんだけどな……やべぇ、死ぬ!」
娘「粉塵もうないです。」
娘(そっか、話相手じゃ物足りないと思ってるのは私のほうなんだ……)
男「あぁ、乙った。」
196:
娘「そろそろご飯でお呼びがかかる時間ですね。」
男「そうだな。たまには用意くらい手伝うか。」
娘「いい心がけだと思います。」
男「じゃあ、緊急クエはまた今度にしよう。」
娘「あの、もし私が……」
男「どうしたの?」
娘「いえ、またの機会にします。」
197:
――――――――――
男「またコタツに隠れてるのか? いいかげんワンパターンだぞ。」
男「あれ? 居ないな。」
男「流石に趣向を変えて来たか……」
男「……押入れか?」
男「じゃあ、クローゼット……も、違う。」
男「まあ、飽きたら出てくるだろ。たまには放置プレイもいいよね。」
198:
男「…………」
男(まさか、本当に居なくなったのか?)
男「…………」
男(任期満了に伴い余所宅へ移動?)
男「…………」
男(居なくなるなら一言欲しかったな。)
男「…………」
男(言えば引きとめようとするって思われてたかな。)
201:
娘「まだ起きてたんですか? 夜更かしは感心しませんね。」
男「あれ? 居たの?」
娘「ちょっと野暮用で外出してました。」
男「出かけるなら行き先ぐらい言って出なさいよ。」
娘「すぐ戻る予定だったんですよ。ちょっと遅くなりましたけど。」
男「予定はそうでも実際遅くなっただろ。心配かけるなよ。」
娘「子供扱いしないでください。これでもあなたより年上ですよ?」
203:
男「でもよかった、出て行ったわけじゃなかったんだ。」
娘「あぁ、心配って私の身の上じゃなくて、私が居なくなる事だったんですか。」
男「はっきり言われるとなんか照れるな。でも、そういう事です。」
娘「その点は安心してください。黙って出て行ったりはしないです。」
男「無性に君のことを抱きしめたい気分です。いいですか?」
娘「……特別に許可しましょうか。ね?」
209:
――――――――――
男「ついにやりました。採用通知です。」
娘「それはめでたいです。でも、それにしては淡々としてますね。」
男「二人で一緒に喜びたいと思ったので、我慢してるんです。」
娘「私も一緒に喜べと?」
男「そうです。準備はいいですか?」
娘「わかりました。OKです。」
男「イヤッホォォォウ!」
娘「い、いやっほぉぉぉ!?」
210:
娘「どんな会社なんですか?」
男「小さいけど、ちゃんとした会社だよ。でも県外なんだな。」
娘「この家からは通えないですか。」
男「うん。それが問題だ。」
娘「じゃあ、辞めますか?」
男「いや、むこうで部屋を借りて住もうと思ってる。」
娘「時々は遊びに戻って来てくれますか?」
男「毎週とかはちょっと辛いと思う。」
217:
娘「まあ、そうですよね……」
男「だからさ、別の方法を考えてるんだけど。」
娘「別の方法?」
男「このコタツごと引っ越しってどうかな?」
娘「私も連れて行くって事ですか。」
男「そういうこと。ダメ?」
娘「その気があるなら、コタツがなくたって私だけでも移れますよ。」
男「そうか、じゃあ、一緒に行こう。」
219:
娘「私を囲う気ですね。ますますロリコンに磨きがかかってます……」
男「え? ちょっと、泣かないでよ。ここ喜ぶところでしょ?」
娘「嬉し涙です。ホントはその言葉を待ってたんですから。ね?」
男「ああ、こんなだから……」
娘「いまだに私が見えるんですよ。」
男「……だな。」
娘「でも良かった。これで心残りもなくなりました。」
男「心残り?」
娘「ちょっと出かけてきますね。」
男「ああ、うん。」
221:
――――――――――
妹「ちょっと、兄貴!聞いてる?」
男「え? あ、悪い。何?」
妹「仕事決まったんでしょ? いつからなの?」
男「来月の21から。締め日が20日でそれに合わせてるんだと思う。」
母「なんか最近ぼーっとしてること多いわ。仕事決まって気が抜けたの?」
男「うーん、そうなのかな……」
父「借りる部屋は決まったのか?」
男「一応。」
226:
母「だったら、生活に必要なものいろいろ買わなきゃ。」
男「そうだね。大きい物はアッチで買うとして、服なんかは明日買いに行くよ。」
妹「今持ってる服でいいんじゃないの?」
男「私服はな。スーツはともかく、シャツが面接用の一枚しかない。」
妹「ふーん。そう言えば最近さ、長電話してないの?」
男「長電話?」
妹「前は四六時中、話声がしてたと思うんだけど。」
男「ん……まあ、みんな忙しいみたいだからな……ごちそうさま。」
228:
男「部屋に戻ったら、コタツ布団をめくるのが習慣になっちゃったな。」
男「やっぱり、今日も居ないか。」
男「…………」
男「何やってもつまんない。」
男「…………」
男「まるで毎日がサザエさん症候群だ。」
男「…………」
男「今日も寒いな……」
230:
嘘…だろ…?
231:
――――――――――
男「この商店街、前は二人で来たんだっけ。」
男「あ……」
『コタツがコタツであるためにはみかんが必須なのです。』
男「みかん……買おうか。」
『みかんは揉むと甘くなるんです。』
男「一人で食べるにはちょっと多かったかなぁ……」
『私達って、人からはどういう関係に見えてるんでしょうか?』
男「恋人とか言ったらどんな反応してたんだろうな……」
233:
男「話相手になってもらえるだけで十分とか……俺、嘘つきじゃん。」
『当たり前すぎて自覚が無いだけです。私は兄弟とか無いからちょっと羨ましい。』
男「失って初めて気づくって、今までもたくさんあったじゃん。」
『あぁ、心配って私の身の上じゃなくて、私が居なくなる事だったんですか。』
男「気持ちを伝えた事にはならないか……どうしたかったのか自分でもわかんねえし。」
『めげずに頑張ってる姿はカッコいいと思いますよ。』
男「こんな風にうじうじするのはきっと彼女も望んでないよな。」
236:
女「あら? あなたは確かコタツの子の……」
男「あ、お久しぶりです。」
女「お買いもの? 今日は一人なんだ?」
男「ええ、まあ……」
女「喧嘩でもしたのかな?」
男「喧嘩も何も、出て行っちゃったみたいです。」
女「どういう事?」
237:
男「それはこっちが聞きたいくらいで。」
女「キミ、ちょっと時間ある?」
男「はい。大丈夫ですけど。」
女「立ち話もなんだから、喫茶店でも入りましょ。」
男「そういう気分じゃないんですけど。」
女「いいから来なさい。詳しい話を聞かせて欲しいの。」
239:
女「ホットコーヒーを二つ。」
*「以上で?」
女「ええ、後はいいわ。」
*「はい、少々お待ちください。」
女「それで、あの子が出て行ったって言ったわね? それっていつ?」
男「一週間くらい前です。」
女「何か言ってた?」
男「心残りが無くなったとか言ってました。」
242:
男「俺、会社が潰れて無職で、それで新しい就職先が決まって。その日の事です。」
女「…………」
男「仕事が決まったから、面倒を見る必要が無くなったんだって、勝手に思ってますけど。」
女「その後、出掛けてそれっきり。ということよね?」
男「そうです。」
*「こちらホットコーヒーになります。」
男「あ、どうも。」
女「私の事、あの子から何か聞いてる?」
男「詳しくは聞いてないです。元同類だって事だけ。」
245:
女「あの子は子供しか見えないけど、私は誰からでも見えるの。」
男「そう言えば、普通に注文受けてましたね。」
女「要するに人間と一緒なの。歳も取るし、寿命もあるわ。」
男「彼女の事を見ることができてたのは……」
女「そうね。そこが人間とちょっと違うところ。でも、それだけよ。もちろん幸運も授けられない。」
男「えと、この話、何か重要な事なんですか?」
女「あの子ね、私と同じになろうと思ってたのよ。」
男「へ?」
246:
女「人間として生活する道を選んだのよ。それで私はたまに相談を受けてたわ。」
男「時々出かけてたのはそういう事だったのか。」
女「一週間くらい前にも来てたわ。おそらく、居なくなった日で間違いないわね。」
男「じゃあ、心残りっていうのは……」
女「座敷ワラシとしての生活にじゃないかしら? 踏ん切りがついたんだと思うわ。」
男「うーん……」
女「なにか決心を促すような事、あった?」
『嬉し涙です。ホントはその言葉を待ってたんですから。ね?』
男「はい。」
252:
女「人間として生活するなら、戸籍の問題とかいろいろあるわよね?」
男「そうですね。湧いて出るものじゃないですし。」
女「私達はそういうのを解決できるの。方法は教えられないけどね。」
男「私達?」
女「私みたいなのって沢山いるのよ。だからその虎の巻があるって思って頂戴。」
男「じゃあ、あの日はそのことを頼みに行った?」
女「そういうこと。そこまで段取りしてて雲隠れっておかしいでしょ?」
男「その帰り道で何かがあった……ということですか。」
254:
女「たぶん、誰かに捕まって、その家に縛られている……」
男「なんとかならないんですか?」
女「居場所が分かれば、あの子を縛ってるお札なり護符なり剥がせばいいんだけど……」
男「警察に言ってもダメですよね。」
女「そうね、取り合ってもらえないでしょう。酷なことだけど、あの子はそもそも人じゃない。」
男「俺に何かできる事、ないですか?」
女「なんとかして探しましょう。方法は思い付かないけど……」
男「あの、連絡先を交換しても?」
女「ええ、いいわ。」
257:
――――――――――
男(とは言っても、どうやって探したもんか……)
母「箸が止まってるわよ。」
男(ご近所を一軒ずつ上がり込んで調べるわけにも……)
母「最近ますます磨きがかかって来たわね。」
男(こうしてる間にも遠くに連れていかれている可能性だって……)
男「くそっ! 俺は何をしてるんだ!?」
妹「クスリでもキメてんじゃないの?」
父「意識が戻ったなら早く食べろ。」
男「ごめん、食欲ないわ。ごちそうさま。」
260:
――――――――――
女『もしもし、今大丈夫かしら?』
男「はい。何かわかったんですか?」
女『もしかしたら、あの子の場所がわかったかもしれない。』
男「本当に!?」
女『焦らないで。あくまで可能性の話よ。』
男「それでもいいです。」
女『明日、こないだの喫茶店まで来れる?』
男「今からは無理ですか?」
女『気持ちは分かるけど、もう開いてないわよ。』
男「じゃあ、居酒屋でもショットバーでもいいです。」
女『わかったわ。』
266:
――――――――――
女「お待たせ、待ったかしら?」
男「いえ、無理言っちゃってすみません。」
女「いいのいいの。全部じゃないけど気持ちはわかるつもりだから。」
男「教えてください。」
女「電話でも言ったけど、確定したわけじゃないわ。」
男「わかってます。」
女「絶対に早まらないって約束してくれる?」
男「はい。約束します。」
女「駄目ね。教えたら飛び出していくって顔してるわ。」
男「…………」
267:
男「お願いします。教えてください。」
女「順を追って話すから、最後まで聞きなさい。頭を冷やす意味でもね。」
男「……はい。」
女「私は自動車のディーラーをやってるの。知ってた?」
男「前に、車を買う予定とか訊かれたので、たぶんそうだと。」
女「突然ね、飛び込みで高級車の注文をしてきた客がいるの。」
男「そいつが彼女を?」
女「結論はそういう事だけど、ぜんぜん根拠になってないのはわかるわね?」
男「そうですね。」
268:
女「今乗ってる車の下取りとか、見積書の提示とかで自宅にも何度か行ったの。」
男「その家で彼女を見た!?」
女「確定じゃないって言ってるでしょう。家には上がっていないわ。」
女「でも、戸建とはいえ小さな家だし、今持ってる車も、とても値段が付くようなものじゃなかった。」
女「そして、下取りも、値引きも全く交渉しようとせず、こっちのいう事に頷いていたのよ。」
男「何が言いたいのかわかんないです。」
女「あんまりこういう事言うのは良くないけど、車を買ったことが無い貧乏人って感じの人だったわ。」
男「じゃあ、いきなり金持ちになった元貧乏人ってことですか?」
女「はっきり言ってしまえばそう言う事ね。」
女「そして、そのお客は現金一括での支払いを希望している……」
269:
男「彼女のご利益だとすれば、宝くじ……」
女「そうね、おそらくはロトくじなんかで荒稼ぎしてるんだと思う。」
男「……彼女って意外と凄かったんですね。」
女「ずっと一緒にいて、あの子を利用しなかったあなたも大概だと思うけどね。」
男「それで、その家はどこに?」
女「少しは頭も冷えたみたいね。でも、まだ教えられないわ。宝くじも推測でしかない。」
男「そんな!」
女「今度、注文書を作成しに訪問するの。その時に一緒に来れる?」
男「え? いいんですか?」
女「注文書ならサインや押印が必要。家にも入れる。あなたは研修員として同伴させる。」
男「そこに彼女が居れば……!」
女「そう。だから、早まったことはしないで。」
270:
――――――――――
男「あの、本当にこんな格好で大丈夫なんですかね?」
女「大丈夫、大丈夫、むしろ研修中って感じがよく出てるわ。」
男「今から訪ねるお客さんですけど、彼女の事が見えてたんでしょうか?」
女「どうやってあの子をつかまえたか。って事?」
男「はい。その……子供って事は無いと思いますし。」
女「霊感の強い人だったか、物の怪を見分ける護符の類を持ってれば可能よ。」
男「そんなものがあるんですか?」
女「座敷ワラシを部屋に縛るくらいだから、そのくらい用意していたと考えるのが自然ね。」
女「降りて。あの家は客が駐車するスペースないから、ここからは歩くわ。」
274:
女「もし、あの子を見つけたなら、その部屋の中には札か護符が貼ってあるはずよ。」
男「それを剥がせばいいんですね。どんな感じのものなんですか?」
女「作った人によっていろいろよ。でも、一目でわかるはず。」
男「いかにもって感じの物を探せばいいと?」
女「ええ。その後は、会社から呼びだされたフリをして彼女と逃げなさい。」
男「あなたはどうするんですか?」
女「契約を成立させて普通に帰るわ。ケツの毛までむしってやるつもりよ。」
男「うまくいきますかね。彼女が居るかどうかも含めて……」
女「前は確証なんてなかったけど、今は上手くいくと思ってるわ。もちろんあの子も居る。」
男「どうして?」
女「あなた、あの子からもらった幸運、使ってないでしょ? これはそれが返って来てるんだと思うの。」
男「だといいな。」
276:
女「この度はありがとうございます。今日は注文書をお持ちしました。」
*「おう、あんたか。そっちの人は?」
男「あの、わたたた私は。その……」
女「研修中の後輩です。契約の様子を見せるために連れてきました。」
男「よ、よろしくお願いします。」
女「ほら、緊張しないで。お客さんが不安になるでしょ?」
男「すいません。」
*「新米か? フン、見習いは大変だな。早く儲けられるようになれるといいがな。」
男(この野郎……)
279:
想像よりクズ野郎だった
280:
女「内容を確認してここに押印を。あ、印鑑証明はご用意いただけましたか?」
*「これでいいんだろ? 車一台買うのにいちいち面倒なことだな。」
女「まあ、高額なお買い物になりますからね。保険の引き継ぎなどもありますし。」
*「で? 肝心の車はいつ届くんだ?」
女「注文書を頂いてから、社のほうでいろいろと手続きをしてそれから納車になります。」
*「だから、それがいつになるかって訊いてるんだ。」
男「すいません、トイレを拝借しても?」
*「廊下の突き当たりを右だ……ったく。」
281:
クソっ、アナルが偉そうに…!
283:
だいたいアナルが喋ってんじゃねーよ
285:
―正確……問い合わせて……かりませんが―
―すまんすま……アンタを責める気……んだ―
男「よし。」
男(迷ったフリして探索を……?)
―♪てーかーめろでぃ〜 ♪しんぷーあーきゃび〜―
男(この歌は!!)
―♪ぎーびっさんわーずあ〜 ♪すいたーもーに〜―
男(……こっちか!)
288:
娘「♪れーいやーぼーいせー……」
男「よっ、久しぶり。元気にしてた?」
娘「あ……えっ?」
男「感激のあまり声も出ない? まあ、泣きだされても困るけど。」
娘「あのっ、私……いえ、どうしてここが?」
男「詳しい話は後だ。お札ってこれだよな?」
娘「えと……帰れるん……ですよね?」
男「とりあえず部屋から出てて。一応、貼り直しとく。」
娘「ごめんなさい。言いたいことが沢山あるはずなのに、言葉がぜんぜん足りないです。」
男「俺もだよ。でも、今は時間が無い。すぐ行くから外で待ってて。」
男(室内の見た目はこれで元通りだな……まあ、バレてもいいけど)
291:
―あんたさえよければワシがお得意さんになってやろうか?―
―困ります、お客様。私、そんなつもりで来たわけじゃ……―
男(何の話をしてんだよ)
―大口の客が付けばあんたの業績アップだって……な?―
男「すいません。今、会社のほうから連絡があって……」
女「午前中にって、お願いしてた顛末書の件かしら?」
男「え? あー、ハイ。至急戻るようにと。」
女「そう。仕方ないわね。」
男「今日はとても勉強になりました。ありがとうございました。」
女「あとはやっておくから。よろしく言っといて。」
293:
男「お待たせ。さ、見つからないうちに急いで帰ろう。」
娘「帰ったらいっぱいいっぱい遊んでください。ね?」
男「そうじゃないでしょ? もっと他に何かあるでしょ?」
娘「ひぐっ……駄目です。えうっ他の事考えたり、言ったりしたら……きっと泣いてしまいます。」
男「それは俺もです。それにもう泣いてるじゃない。」
娘「とにかく駄目です。変な人だと思われてしまいます。」
男「ん、わかった。帰ってから感動の再会のやり直しね。」
娘「……はい。」
295:
――――――――――
男「部屋に戻って来ましたよ?」
娘「ええ、戻って来ましたね。」
男「戻って来たんですよ?」
娘「なんなんですか?」
男「ごまかそうとしても無駄です。観念しなさい。」
娘「あう……」
男「手始めに確認からね? あの家に居たのは自分の意思?」
娘「いえ。あの日、帰り道に捕まってしまいました。」
298:
男「じゃあ、俺のしたことは余計なお世話じゃないんだね?」
娘「はい。とても嬉しかったです。」
男「怖かった? それとも寂しかった?」
娘「寂しかったです。また何年も閉じ込められるかと思いました。でも……」
男「でも?」
娘「閉じ込められることより。あなたに会えなくなることのほうが怖かったです。」
男「……それ反則だわ。」
娘「え?」
男「話の主導権握れるかと思ったけど、無理。泣けてきた……」
娘「ちょ、ちょっと。」
304:
娘「苦しいです。放してください。」
男「承服できません。いっぱい抱きしめて、何度も匂いを嗅いで、頭を撫でます。」
娘「こ、このロリコン!女の敵!それから……えと……」
男「嫌われたって構わない。もう絶対に離さない。」
娘「……私も、離れたくないです。」
男「えんだあぁぁぁぁ!!!?」
娘「それは……ちょっと気が早いです。」
男「あれ?」
娘「ごめんなさい。いろいろ台無しにしてしまいました。」
307:
娘「とりあえず、あの人にはお世話になったみたいですから。お礼をしましょう。」
男「うん。それはしないとな。感謝してもしきれない。」
娘「そして、聞いたかもしれないですが、あの人に頼んでいたことがあります。」
男「人間として生活するための根回しだっけ。」
娘「そうです。それに、私自身はまだ人ではないんです。」
男「ああ、そのことなんだけど、本当にいいの?」
娘「何がですか?」
男「コタツワラシをやめたら、寿命とか加齢とかがあるんでしょ?」
娘「思い付きで決めたことじゃありません。考えた末の結論です。」
311:
娘「でも、あなたが私を受け入れてくれる事が前提です。」
男「それなら問題は無いぞ。」
娘「軽く考えてはダメです。人の身になった私を一生養ってくれますか?」
男「え? それって……」
娘「戸籍とかが解決しても。私には生活基盤がありません。だから手続きも保留してます。」
男「…………」
娘「そういったことも含めて、返事を決めてください。」
男「決めません。返答を凍結します。」
娘「図々しいですよね。気持ちだけで暮らしていけるわけでもないですし……」
男「気づいて無い? さっきのってまるっきりプロポーズになってますよ?」
娘「あ!」
男「答えないって言ったのはね、そういうのは男からするものだからなの。」
315:
なんだこの童貞。本当に童貞なのか
318:
――――――――――
男「その節は大変お世話になりました。」
女「うまくいって良かったわ。」
娘「本当になんてお礼を言ったらいいのか……」
女「いいのいいの。私のほうは大口の契約が取れたんだし。」
男「その後、あの客はどんな感じですか?」
女「居なくなってる事には気付いたみたいね。私達の仕業ってことには気付いて無いわ。」
娘「なんとかして報復をしたいところですね。」
女「その必要は無いんじゃない? 保険料や維持費でそのうち思い知るでしょう。」
324:
男「今日はお礼も勿論なんですが、お願いがあるんです。」
女「二人揃ってのお願いってことは、覚悟は決まったってことかしら?」
娘「はい。準備してもらってた件、最後までお願いします。」
男「それで、彼女はいつごろ人間になれるんですか?」
女「はあ?」
男「彼女のこと、人間と同じにしてくれるんじゃ……?」
女「まさか、あなた一番大事なこと教えてないの?」
娘「その……なんだか気恥かしくて……」
328:
女「私達のほうで手配できるのは戸籍とか書類上の事だけよ。」
男「え?」
娘「…………」
女「しょうがないわね。私が説明するわ。」
娘「お願いします。」
女「まず、この子と口づけしなさい。キスよ、キス。」
男「は?」
娘「いやん。」
女「好きな人との口づけで、この子はワラシから乙女になるわ。」
男「そうすればずっと一緒に居られるんですね?」
女「まだよ。」
330:
第三者に冷静に説明されるとすごい恥ずかしいよなこういうの
333:
女「乙女になるったって、一時的なものでしかないの。」
男「えーと……そうなんですね。」
女「キスで乙女になるんだったら、一人前のオンナになるには……わかるわよね?」
娘「やだもぉ……恥ずかしい。」
女「私の三倍は生きてるくせに良く言うわ。」
男「あの、要するにそれは、その……」
女「やることやって、あげるものあげて、貰うもの貰いなさい。お互いに。」
342:
――――――――――
男「なんか、いざとなると……その。」
娘「うー……」
男「緊張しますよね……」
娘「意識するからいけないんだと思います。」
娘「そうです、お医者さんごっこだと思えばいいんです!」
男「まて、それは何かおかしい。」
娘「お医者さんごっこしよっか!?」
351:
――――――――――
男「ほら、起きて。記念すべき初出社の朝が来ましたよ。」
嫁「あ……朝ですか。」
男「おはよう。」
嫁「なんで先に起きちゃうんですか。」
男「そんなこと言われてもねぇ。」
嫁「私が朝ごはんを作る音で目を覚ましてください。」
男「じゃあ、明日からそうするよ。」
嫁「すぐに用意しますから。新しいコタツでみかんでも食べてください。ね?」
――――――――――――――――――――おわり
362:
>>351
おパンつ!!
354:
うおおおおおおおおおおつかれさま
356:
今夜はコタツで寝よう
お前らおやすみ
358:
うわあああああああああああ!!!何この切ない気持ち…
好きな漫画の最終回を見た時と同じ気持ちだ
367:
以上になります。お付き合いどうもでした。
補足説明いりますか?
372:
>>367
コタツワラシたんはパンツは何パターンあるの?
386:
>>372決めてない。
好きに想像して履かせてやってくれ。
371:
あの・・・エロシーンは・・・
379:
>>371
お前の脳みそは何のためにあるんだ?
376:
面白かった
378:
いやあよかった
今まで読んだ中でベスト3に入るわ
お疲れさま
380:
いつ妹も入れて3Pするんですか?
気になって夜も眠れません
387:
>>380
妹はハークルビーストだぞ
414:
乙素晴らしかった
416:
面白かった
今からこたつ出すわ。
女も非処女ってことだよな?
421:

良い話だった、俺ん家にもコタツワラシ頼む
422:
俺もコタツ引っ張り出してくるかな
423:
>>1乙!
素晴らしいSSに巡りあえたことに感謝顔射。
424:
>>1乙
いいスレだった 泣きそう
42

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