春野サクラ「誰かを選ぶなんて……!」back

春野サクラ「誰かを選ぶなんて……!」


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1:
初の演習の時、カカシ先生に脅された。ナルトを殺さなければサスケ君が死ぬと、先生はチームワークの大切さを教えようとやった事だったけど、私はあの時からずっと悩んでいた。もし、仲間を人質にとられたら私はどうすればいいのだろう。
演習の結果、私達は合格しその後も色々あった。波の国の任務もそうだけど、中忍試験や大蛇丸や新しい火影様、嫌な記憶もそれなりにあるけど、どれも印象深かった。その記憶のどの部分を切り取っても、私が役にたっていることはほとんどない。私も試験を合格して下忍として認められたはずなのに、守られてばかりの自分が嫌だった。
今回の任務でもそうだ。私だけではないけれど、私達を庇ってカカシ先生は重症をおってしまった。久しぶりの第七班での任務だったのに、命を落としかけるところまで先生は追い詰められた。その様子を見てることしか出来なかった私は、無力感と罪悪感に襲われた。サスケ君とナルトも私と同じだったようで、何かどす黒い雰囲気を纏っていたサスケ君は、罪悪感のお陰と言うとあれだけど、少し穏やかになっていた。ナルトはとにかくみんなを元気付け、私も一緒になって明るく振る舞った。
五日のびた滞在期間の内に、先生は動けるようになるまで回復した。新しい火影様の影響で、浅く医療の知識がある私は、先生の回復っぷりに忍者の生々しさを感じる。一般人より遥かに早く怪我が治るのは、寿命より任務が優先だから。望んで忍者になったのに、自分達は忍者だからこそ仲間でいるのに、何だか酷く嫌悪感を感じた。
まだ足元が覚束ない先生の体を交代で支え、私達は帰途につく。全快するまで期間を延長出来ないのかと聞いてみたけど、これ以上は無理らしい。何かあったら置いていけ、なんてさらっと言われて三人共凍り付いた。すぐにナルトが明るい声で全否定してくれて助かった。何で自分達は忍者なんだろうなんて、思いたくなかったのだ。
森を横切る道をしばらく進んでいくと、同じ額当てをした木の葉の忍者が、にこやかに手をふっていた。人の良さそうな男は何か伝令があるらしく、手には巻物を持っている。すっかり油断した私たちは、カカシ先生の低い声が聞こえても、反応することが出来なかった。
男が地面を蹴った次の瞬間、ナルトとサスケ君は脇に抱えられていた。更に一瞬遅れて、先生が男に襲いかかる。あまりにも急すぎて敵を敵だと認識する暇もなかったから、私はその場に立ち尽くしてしまった。
元スレ
SS報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
サクラ「誰かを選ぶなんて……!」
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2:
ナルトとサスケ君もただ捕まっているわけではなく、抜け出そうと必死にもがいていたが、何かの札を貼られて動かなくなった。二人とも意識はあるのに、地面に転がり喚き散らす事しか出来なくなった。よろめきながら繰り出す蹴りは簡単にかわされ、先生は私の目の前まで吹っ飛ばされる。
やっと我に帰り先生に駆け寄ったが、やっぱり私に出来ることなんて声をかけるぐらいだ。その声に答える余裕もないようで、先生はなんとか起き上がろうと地面から体を引き剥がしていた。
焦るだけで空回りする思考が突然、真っ白になる。胸に重い痛みを感じ、私は背中から固い地面に叩きつけられた。間髪を入れず、先生が踵落としを食らってそのまま踏み潰される。
男は先生の髪を掴むと、何が目的なのか二人の前までずるずると引きずって行った。止めに入ろうとしたけど、私は簡単に殴り飛ばされてしまう。人の良さそうな笑顔なんて微塵も残さず、醜く歪んだ笑みを私達全員に向けると、ほとんど抵抗出来ない先生に暴力をふるい始めた。
さっきまで、穏やかな空気が流れていたのに。そりゃ、カカシ先生の発言にはひきつったけど、それでも久々にみんなと一緒の任務だったのに。カッコいいサスケ君も、底抜けに明るいナルトも、ちょっと怪しいカカシ先生も、全員大切な仲間なのに。
私はまた何も出来ないのだろうか。動けるのは私だけで、私だって忍者なのにいとも簡単に蹴飛ばされてしまう。倒れ込む私の目の前で続く暴力は、忍者らしさなんて欠片もなくただ薄汚かった。
執拗に繰り返される打撃の鈍い音が響く度に、くぐもったうめき声が聞こえてくる。それでも先生は諦めず、踏みつけられながらもなんとか体を起こそうとしていた。そんな姿を嘲笑うように、深く沈み込む蹴りを放たれ、先生は激しく咳き込んだ。マスク越しに赤黒い血がボタボタと流れ落ち、地面に染み込んでいく。
その間も私は泣き喚きながら、何度も止めに入ったし、何度も札を剥がしにいった。でも何回やっても結果は同じで、私は馬鹿みたいに何度も地面に転がるだけだった。自分の方が大怪我してるのに、先生はその度に悲痛な目をして逃げてくれと声を絞り出した。
絶対嫌よ。そう言おうとした時、サスケ君達から禍々しいチャクラを感じて、ばっと振り返る。二人とも怒りで顔を歪め、自力で札の力に勝てるんじゃ無いかと思うほど、濃い殺気を感じた。先生は異様なチャクラの正体を知っているらしく、吐血しながらうわ言のように暴走するなと繰り返した。
ナルトは本当に悔しそうに顔を歪め、歯の隙間から泣き声を漏らしそれに従った。サスケ君も底光りする目で男を睨み付けるにとどまり、呪印が顔を覆うことはなかった。
私はと言うと、暴走させられるような力は一切無いので、何か行動を起こす度に惨めに殴り飛ばされた。
3:
そして、今まさに私は結論を出せなかった思考に決断を迫られている。あの時と決定的に違うのは、カカシ先生までが敵の手中にあるということだ。ボロ雑巾のように、なんて表現がぴったり当てはまってしまうほど、先生は痛め付けられていた。緑色のベストは踏みにじられ足跡だらけになり、辺りの雑草は血を浴び赤く染まっている。おかしな方向に伸びる手足はピクリとも動かず、まばたきがなかったら死んでいるように見えた。
それに比べたら私なんて全然何ともない筈なのに、身体中が痛くてプライドもズタズタで涙が止まらない。ナルトは何を押さえ込んでいるのかは分からないけど、もう限界だと言わんばかりに目を血走らせていた。サスケ君も、あんなに怖い顔をしているのは見たことがない。
受け入れがたい現実を目の当たりにして、思考が停止しそうな私の耳に男の楽しげな声が響く。仲間を一人犠牲にしろって言ってるだけだろ、早く選ばないと全員こいつのようになるぞ、とカカシ先生はまた足蹴にされた。なぜこんなことになってしまったのだろう。誰か一人を選ばせる事が、こいつにとって何か利益があるのだろうか。ニヤニヤと下卑な笑いを浮かべる顔を見れば、目的なんてないのだと分かった。
私がくの一だから、そしてどうしようもなく弱いから馬鹿にされているのだろう。実際、私だけは拘束も何もされていなかった。悩んでいる間にも先生は暴行を加えられ、頭から血を流していた。銀色の髪は真っ赤に染まり、いつもは眠そうな右目にも血液が流れ込んで、苦しげに閉じられた目が血の涙を流しているように見える。誰かを差し出すなんて無理だ。でも、このまま答えを出さないでいれば、先生はなぶり殺しにされてしまう。
追い詰められた私は、何も言えず頭をかきむしった。このまま地面に頭を打ち付けて、死んでしまいたい衝動にかられる。それでもどうしたらみんなを助けられるか、思考をやめる訳にはいかなかった。肩で呼吸をしながら、私はみんなの顔を見る。
サスケ君は目を薄く開き青筋を立て、ナルトは逆に目を剥いて、カカシ先生は……何か呟いていた。何とか聞き取ろうと耳を傾けると、先生は必死に声を張り上げた。
「俺を選べ」
低く掠れた叫び声は深い諦めで曇り、全員助かるのは無理だという現実を突きつけられた。血を吐くような、と言うか実際に血を吐きながら叫んだ声はナルトたちにも聞こえたらしく、伝染病のように二人も同じ言葉を口にした。
俺にしろ!他の奴は選ぶな!誰が誰の声か認識する事も出来ず、頭は余計に混乱した。そんな様子を見て、敵の忍者はさも滑稽だと言わんばかりに、腹を抱えて笑い出した。
もういっそ、私も含めた全員選んで、みんなで死ぬなんて選択肢があってもいいんじゃないかと、私は自暴自棄になった。だけどそのお陰で残された可能性に気がついた。ゲスな笑い声をあげるコイツなら、この提案を飲むかもしれない。出来るだけ悪いことは考えないようにし、声が震えないよう勢いよく息を吐き出すと、すっかり体温を失った唇を動かした。
「……その一人、私じゃ駄目なの?」
自己犠牲の精神はお気に召さなかったのか、それとも利用価値の低い私では不満なのか、男は明らかに不愉快そうな顔をした。コイツが血継限界を狙っているとは思えないが、二人は写輪眼を持っていて私には何もないし、女性の魅力としても欠けるだろう。真剣に自分の長所を考え込む私をよそに、ナルト達は本当に意外だったのか、怒りや悲しみは消え失せ全員目を見開いていた。
真っ先にナルトが馬鹿なことはやめろと騒ぎ始めた。サスケ君もナルトと同じような事を叫んでいる。変態男が口角を上げるのを見て、カカシ先生は青ざめていた。ナルト達に騒ぐなと訴えているが、二人は聞き入れない。
やっと好転してきたと思える事態に、一筋の光明をと言うより底無し沼に足をとられたような感じだった。心底楽しそうに笑みを浮かべ、男は条件を飲んだ。何をされるのかは考えたくも無かったが、とりあえずお先真っ暗と言ったところか。
身動きのとれないみんなを残し、叫び声に後ろ髪を引かれながら、闇の中に足を踏み出した。
4:
その場で殺されるかあるいは……なんて事を想像していたが、男はついてこいとだけ言った。逃げろと必死に訴えるみんなの声が耳から離れない。それでも、私はその言葉に従う訳にはいかなかった。私が守らなければ、仲間が殺されてしまう。そんなの自分が死ぬより嫌だ。
そう覚悟を決めた筈なのに、私はまた泣き出していた。みんなともっと一緒にいたかったし、下らなくても大事なことでも、色々やってみたい事があった。なんで忍者なんか選んでしまったのだろう。アカデミー入学は半強制的だったけど、自分の意志が無かった訳ではない。
幼くて浅すぎた決断に今さら深く後悔しつつも、この期に及んで助けが来るんじゃないかなんて、甘い考えを捨てきれない。自ら選んだ道だとは言っても、助けてもらえるならやっぱり助けて欲しいに決まっている。でも、結局目的地についてもサスケ君もナルトもカカシ先生も、誰も駆けつける事は無かった。極力、期待しないようにはしていたが、落胆と絶望は大きかった。
男が歩を進める建物は、入り口以外は全て埋まっていて玄関も掘り下げられた位置にあり、いかにも陰気な奴が住んでいそうだった。石造りの門には両側に蛇が描かれている。爬虫類は苦手だなーとか下らない事を考えて、自分の未来を想像しないように必死だった。
本当は不安で仕方がなくて今すぐにでも逃げ出したかったけど、自分だって忍者なのだ。先生に認められた下忍で、ナルト達の仲間だ。後悔しても事実は変わらないし、みんなの仲間であることを私は誇らしく思っていた。死を覚悟するくらい忍者として当然なんだと言い聞かせ、暗い廊下に繋がる扉を通った。
所々にしか蝋燭は灯されておらず、足元なんて全然見えない程暗かった。気味の悪い廊下を、気味の悪い男について進んでいけば、たどり着く先も気味が悪いのだろう。恐怖ばかりが頭を支配し、震える体を抱きながら男の後についていった。
先の見えない闇に怯えていた私は、突然歩みを止めた男に、無造作に檻の中へと放り込まれた。そのまま変態男は去っていき、理由も分からないまま私は檻の中に取り残される。暗い檻の壁は冷たく湿気を含み、何かの染みが床一面に広がっていた。とりあえず染みについても自分についても考えたくなくて、ナルト達の事を考えることにした。
きっとカカシ先生ならあの札も何とかしてくれるだろう。あの二人なら自力で剥がせるかもしれないし、いくら大怪我を負ったとしても先生が死ぬはずがない。出来るだけ良い方向に考えてたら、みんなの笑顔が浮かんできて、胸が締め付けられた。
仮に自力で抜け出せるとしても、私は逃げ出す訳にはいかない。みんなに、特にボロボロのカカシ先生に助けに来てもらっても困る。せっかく守ったのに、私なんかのために命を落として欲しくない。
だけど、やっぱり助けに来て欲しかった。みんなに会いたくてたまらない。笑顔を想像して泣くのではなく、笑顔を見て安心したかった。
5:
暗い廊下の先から、人影は見えず足音だけが反響し、少し落ち着き始めていたのに恐怖心がぶり返す。また、あの変態男だろうか。それとも助けがきたのかなんて楽観的な思考を、暗闇から現れた人物は粉々に打ち砕いてくれた。
「久しぶりね……サクラちゃん?」
ちゃん付けされたこともそうだけど、目の前のなよなよした男の姿は私を震え上がらせた。こんな憎い顔を忘れる筈もない。中忍試験の時に私達を苦しめ、サスケ君を未だ苦しめ続けている変態オカマ、もとい大蛇丸だった。血色の悪い肌には大粒の汗がへばりつき、顔はやつれきっている。火影様に腕を封印されていたことを思い出した。
「フフ……アナタが私のところに遊びに来るなんて、どういう風の吹き回しかしら?」
「……あの変態男に聞きなさいよ。サスケ君より私を選んだんだから」
「変態男?……ああ、あの役たたずはうっかり始末してしまってね。だからアナタに聞きに来たのよ」
口調は変わらないまま、一瞬で空気がざらついた。死が一気に現実味を帯びて背筋が凍りつく。
「サスケ君の居場所を言いなさい。そうすればアナタは自由の身よ」
7:
恐怖を感じながらも、私はどこかで頭にきていた。サスケ君に執着する理由はよく分からないが、どうせろくなことではない。怒鳴り付けてやりたかったが、やっぱり自分はそこまで強くなかった。
「……私はみんなを庇ってここに来たのよ。教えるわけないじゃない」
「そう。なら、みんなのために死ぬ覚悟は出来ているのかしら?」
出来ているはずがない。強がりを口にするのが精一杯で、声も震えている私に問う必要などないだろう。やっぱりこいつは変態だと、恐怖に押し潰されそうになりながら、心の隅で悪態をついた。そんな心の内を知ってか、大蛇丸は楽しそうに笑う。
「別にアナタに聞かなくても死者を復活させる術があるのよ。でも私は出来れば忍術を使いたくない。アナタはここから逃げ出したい、利害が一致しているでしょう?」
「忍術を使いたくない、じゃなくて使えない筈よ。火影様が封印したのは知ってるわ」
「……いいから質問に答えなさい」
伝説の三忍が放つ膨大な殺気は、一瞬でも呼吸困難に陥りそうなほど威圧感があった。込み上げる吐き気を必死に抑え込む。
「まぁ、アナタが思い付かない方法なんていくらでもあるって事よ。それで、サスケ君の居場所を教える気にはなったのかしら?」
こんな奴の言いなりになるのも、サスケ君を売り渡すのも絶対嫌だった。なのに、ガタガタと震える体は体温だけでなく、決意さえもとどめて置けない。話してしまえば、本当に価値が無いような私など、捕まえておく気はないのかもしれないのだ。立て続けに襲いかかる恐怖が頭を疲労させ、思考能力が麻痺していく。何も考えず、悪魔の誘いに飛び付いてしまいたかった。
でも……やっぱり嫌だ。サスケ君の居場所を教えればナルトとカカシ先生もただでは済まないだろうし、第一サスケ君が大蛇丸なんかの手に渡るのは許せない。しかも、それが自分のせいでだなんて絶対後悔してもしきれない。怖くて怖くて仕方がないのに、私は震える声で思いっきり悪態をついた。
「……アンタなんかに教えるわけないでしょ!変態オカマヤロー!」
抑え込んでいた涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。きっと多分絶対殺される。歯が勝手にガチガチと音をたてた。
「フフフ……カカシ君の影響かしら。アナタも私をイラつかせるのが上手ね」
大蛇丸は不気味に笑いながら、檻の扉を蹴飛ばした。大きな金属音に飛び上がるほど驚き、本当に飛び上がったかもしれない私は尻餅をついた。重そうな扉は簡単に吹っ飛び、壁に叩きつけられてひしゃげる。それを横目に見て、頭が真っ白になる程怖くなった。
私は情けない叫び声をあげ、檻の中に侵入してくる大蛇丸から無我夢中で逃げ出した。出入口の方に行く事はできず、とにかく距離をとろうと急ぐ足はもつれて、顔で全体重を受け止めた。受け身もとれない体は無様に転がり、なかなか立ち上がる事ができない。無駄に力がこもった腕を床に叩きつけ、その勢いでなんとか体を起こし這いずるようにして逃げた。武器は没収されていないのに、存在が頭を掠めることすらない。
変態オカマはまた楽しげに目を細め、きっとそんな必要はないのに、わざわざ口から舌で刀を取り出した。私はその異様な光景に釘付けになり、喉だけが高い音を立てて鳴っていた。すらりと伸びる刀身に、涙と鼻血でぐしょぐしょになった私の顔が映る。封印された腕は垂れ下がり、刀を口にくわえていた。
恐怖で色々と麻痺した私は、なんだか意味もなく吹っ切れた。情けない声が無駄に響く。
口からゲロゲロとバッカじゃないの!肌も白すぎてキモいのよ根暗オカマ!もう追い詰められすぎて、今度こそ本当に自暴自棄になっていた。
バーカバーカバーカ!アカデミーのガキみたいな悪口しか出てこない。さすがの大蛇丸も私に呆れたようで、笑みを引っ込め刀を振りかざした。
8:
切りつけられる感覚は無くて、ちょっとだけ目を開けてみる。ぼやけた視界に人影が増えているように見えた。ちゃんと目を開くと、サスケ君とナルトとカカシ先生が、大蛇丸を取り囲んだいた。目にした光景が唐突すぎて、私は声も出せなかった。
「カマヤローが……サクラを泣かせやがって」
「サクラちゃん、こいつは俺がボコボコにしてやるってばよ!」
「ま、おれも俺も今回は腸煮えくり返ってるからな。サクラ、大丈夫か?」
「……みんな……」
考える前に涙が溢れだした。感情が強すぎて呼吸も上手くいかず、咽び泣きのようになりながら、ぼろぼろ泣いた。まだ大蛇丸が目の前にいるのに、みんなの声にとにかく安堵して、みんなの姿が嬉しくて、私は泣き止むことが出来なかった。
「アナタ達ごときが、私に勝てると思ってるのかしら」
「そう言いつつ、本体はアジトの外に逃げちゃってるじゃない。そんなに俺達ごときが怖いのか?」
「フフフ……アナタを治療したやつとは戦いたくないのよ」
「なぁ、こいつってば分身なのか?」
「ああ、お得意の蛇分身だな」
「チッ……蛇相手に会話しても時間の無駄だ」
「サスケ君、アナタはこちら側についても良い筈よ。アナタの復讐、手伝ってあげるわ」
「ふざけるなよ。……サクラを泣かせた時点で、お前は交渉の相手じゃねぇ」
「ククク……良いわ。いつかアナタは私を必要と……」
大蛇丸の姿が白煙に包まれるのと同時に蛇が現れ、地面が低い音をたてて大きく揺れた。轟音に気をとられている隙に、大蛇丸に姿を変えていた蛇はとどめをさされていた。
9:
カカシ先生からハンカチを渡されて、私はやっと自分の顔の状態を思い出した。鼻血と涙にまみれた顔を、サスケ君に見られてしまったのだ。今さらのように恥ずかしくなって、ハンカチに顔を埋める。でも、みんながいるだけで、ついさっきの押し潰されそうな不安なんて忘れていた。
「さーて……どこから話せば良いかな」
また今さらのように、聞きたいことが山ほどあるのを思い出した。カカシ先生が平気に動いてる事も、謎の轟音も、本当に分からない事だらけだった。
「あの蛇を倒したのは俺だってばよ!」
「テメェの手裏剣は壁に突き刺さっただけだろ」
「外したのは一個だけだろうが!なぁ、カカシ先生!」
「ちょっと、サクラに説明しようとしてんだけど……」
凄く、いつものみんなだった。嬉しくてしょうがなくて、疑問を口にするより笑いが込み上げてきた。なぜか、涙も止まらなかった。
「あはは!もう、みんな緊張感無さすぎよ!」
「さ、サクラちゃん……泣くのか笑うのかどっちかにしてくれよ……」
「うっさい!だってスッゴく嬉しいのよ……めちゃくちゃ怖かったんだから……!」
結局、涙に押されて言葉が掠れてしまった。私が再び泣き出したのを見て、三人とも表情を曇らせる。
「ごめん……俺ってば、サクラちゃんに辛い思いさせちまって……」
「……悪かった」
「ごめんな。俺がお前らを守ってやらなくちゃいけないのに、逆に守ってもらうなんて……」
口々に謝罪の言葉を述べるのを聞いて、私は泣きながらも納得がいかなかった。もう少しだけ、せめて今だけはもうちょっと認めてくれてもいいじゃない。感情の抑えがきかなくて、そのまま口に出た。
「私だって……頑張ったのに……!なんで謝るのよ……みんな仲間じゃないのよ……!謝るなんて酷いじゃない……!私はただ……!」
私の無理な注文に三人とも困惑している。でも、私は泣き止むことが出来ない。謝罪が不服なら自分は何を求めているのか、それさえも分からないのだ。それなら、みんなにもわかるはずは無いのだが、なぜかみんなには私が言って欲しい言葉を見つけられたようだった。
「……そうだな。ありがとね、サクラ。おかげで助かったよ」
「あ……そっか。サクラちゃん、本当にありがとだってばよ!サクラちゃんってば、すげぇカッコよかったぜ!」
「……ありがとな。だが、俺だってお前の仲間なんだぜ」
「え……」
「もう誰かが死ぬのは耐えられねぇ。お前にしろ、ウスラトンカチ共でもな」
「……なーにカッコつけてんだよ、サスケェ。誰がウスラトンカチだ、コノヤロー」
「お前に決まってんだろ、ドベ」
「サクラちゃんに免じて許してやろうと思ったのに……ぶっ飛ばす!」
「フフ……全く、やめなさいよバカナルト!」
「なぁ、俺もウスラトンカチなの?」
「当たり前だろ、18禁ヤロー」
「18禁……」
「カカシ先生!しょげてねぇで一緒にスカシヤローぶっ飛ばそうぜ!」
「アンタがぶっ飛ばされることになるわよ。ねー、サスケ君」
「やめろ、くっつくな……」
「酷いってばよ、サクラちゃん……」
疑問は残ったままだったけど、とりあえずこの暗いアジトとはおさらばする事にした。随分と時間が経った気がするのに、空はまだ明るく清々しい風が吹いている。私は、深呼吸をしてみんなを振り返った。
「サスケ君、ナルト、カカシ先生。本当にありがとう。私、こんなに嬉しかった事って今までないかも」
「へへっ、俺もすっげー心配したけど、庇ってくれたのは嬉しいってばよ。なぁ?」
「まぁな」
「でも、ちょっと無茶しすぎでしょ。俺達の気持ちも考えてちょーだいよ」
「全くだ。下忍のくせに大した根性だ」
突然増えた声の方を向くと、火影様がこちらに歩いて来ていた。自来也様まであとについて笑っている。状況が飲み込めず目を白黒させていると、カカシ先生が説明してくれた。
10:
カカシ先生を治療したのも、さっきの轟音も火影様によるものだったらしい。治療後、駆けつけた火影様と自来也様と大蛇丸で戦闘になり、怪力が地を震わせたのだそうだ。駆けつけたのが火影様じゃなかったら、カカシ先生はおろかサスケ君やナルト達まであの札の力で死んでいただろうと、自来也様が言った。最初から変態男は、誰一人生かしておく気はなかったのだ。背筋がすっと冷たくなった。
「カカシが走らせたパックンがかすかに大蛇丸のニオイを感じ取っていてね、万が一に備えて私が来たらドンピシャだったのさ」
「でも……どうしてサスケ君じゃなくて私でも良かったのでしょうか」
「それはついでだったからだね。大蛇丸は、お前をさらった男に巻物を頼んでいただけらしいぞ。大蛇丸本人が不愉快そうに言ってたから確かだろう。きっと、その帰りに実験体の補充もしようとしたんだろうな」
「ついでじゃなかったらサスケを連れてった筈だのぉ。サスケの顔すら認識してない下っぱの仕業だ。余計なごますりのおかげで、足がついたなんてお笑いだがな」
聞いてしまうと拍子抜けだけど、それでもみんなが無事なのが奇跡みたいに思える。連れていかれたのが私じゃなくサスケ君だったら……考えるのはやめておくことにした。そんな私の横で、カカシ先生が問いかけた。
「戦闘は終わったようですが、大蛇丸はお二人が倒されたのですか?」
「いや、逃げられたよ。腕も使えないくせに、逃げ足だけはくてね。カブトとかいうクソガキと一緒に逃げちまった」
「そうですか……。しかし、お二人のおかげでサクラを助け出すことができました。本当にありがとうございます」
「火影としても、有能な人材を見捨てる訳にはいかないからね。さて、サクラ」
「は、はい?」
完全に無防備だった私は思わず身構えた。何を言われるのだろう。もしかして怒られるのだろうか。
「お前は頭脳明晰だと聞いている。根性も申し分無い。どうだ、私の弟子になってみないか?」
本当に目が点になるほど驚いて、最初は何を言われたのかさえわからなかった。でも、私の答えは決まっている。大事な一言を大事に告げた。
「……はい!お願いします!」
「そうか、これから宜しくな。みっちり修行をつけてやる」
「はい!」
今回の事件のおかげで、私は忍者として何がしたいのか、はっきりと認識することができた。こんな形じゃなくて、ちゃんと仲間を助けられる力が欲しいと、今は心の底から思う。だから私は、いつかあの問題に答えられるようにこれからも忍者を続けていくだろう。仲間を人質にとられ選択を迫られたら、私は迷わず言い放てるぐらい強くなる。
「全員守る」と言ってやるんだと、心に決めた。
ー終わりー
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