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モブキャラ「テメェらいい加減にしやがれッ!!!」


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1:
< モブキャラの家 >
モブ「やったぁ〜っ!!!」
モブ「ついに完成だっ! ビンとかについてる王冠だけで作った巨大城──」
モブ「“クラウンキャッスル”!」
モブ(長かったなぁ〜……10年はかかったんじゃないか?)
モブ(西洋の城を研究して、設計図を作って、王冠を集めて、洗って……)
モブ(着色はナシにしたかったから、欲しい色の王冠を集めるのにも苦労した……)
モブ(王冠を集めるために、容器がビンのドリンクをたらふく飲んで……)
モブ(時にはゴミの王冠を譲ってもらったり、金を払って買ったこともあった)
モブ(あの日々が、ついに報われたんだ!)
モブ(よぉ〜し、さっそくデジカメで写真を撮ろう──)スッ…
元スレ
ニュース報(VIP)@2
モブキャラ「テメェらいい加減にしやがれッ!!!」
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3:
グシャァンッ!!!
モブ「……あ?」
怪獣「ギャース、ギャースッ!!!」ズシンズシン…
モブ「な、なんだぁっ!? ──怪獣!?」
すると──
タッタッタ……
主人公「まったく、なにやってんだよ!」
ヒロイン「ごめ〜ん、とんでもない怪獣を召喚しちゃった!」テヘッ
モブ「な、な、な!?」
5:
頃していいぞ
モブ頑張れ超頑張れ
6:
モブ(突然現れた怪獣によって、俺の“クラウンキャッスル”が潰された……!)
モブ(いや、まだ治せる! 十分修復可能な壊れ方だ!)
主人公「クソッ……どうすればあの怪獣を元の世界に戻せるんだ!?」
ヒロイン「えぇ〜っとね、額についてる“魔紋章”を破壊すれば」
ヒロイン「元の世界に送還されるはずよ!」
主人公「なるほど……だったら」
主人公「俺の『金属をエネルギービーム化する能力』でどうにかするしかねえか!」
主人公「お、こんなところにゴミがいっぱい散らかってるじゃん! ちょうどいいや!」
モブ(俺が苦労して集めた王冠を、ゴミだと!?)
8:
主人公「この散らばってるゴミを……メタルエネルギー化!」バチバチ…
ブゥゥゥゥン……
バシュゥゥゥゥ……!
モブ「!?」
モブ(王冠が全部消えてなくなった!?)
主人公「メタルエネルギー充填完了!」ジャキンッ
主人公「いっけぇぇ、メタルビームッ!!!」
バシュッ! ズガァァァンッ!
怪獣「ギャアアァァァァァス……!」シュゥゥゥ…
主人公「よし、怪獣が消えた!」
ヒロイン「やったわ!」
9:
絶対に許さない
11:
主人公「いえぇ〜い!」
ヒロイン「さっすが、主人公君!」
主人公「まったく……もうこんなお騒がせな魔法は、使っちゃダメだぞ!」
ヒロイン「分かってるってぇ!」テヘッ
主人公「とにかくこれで、めでたしめでたし、だな!」
モブ「…………」
主人公「じゃ、帰るか」スッ
ヒロイン「そうね」スッ
モブ「ちょ、ちょっと待てぇっ!!!」
13:
モブ頑張れ
14:
きれてもいい
15:
主人公「なんだ?」
モブ「さっきの怪獣……どうやらアンタたちが呼びだしたものらしいな?」
ヒロイン「そうよ、スゴイでしょ!」
モブ「スゴイでしょ、じゃない!」
モブ「おかげで俺の家はぶっ壊れて、そしてなにより──」
モブ「10年以上かけて作った“クラウンキャッスル”が」
モブ「一瞬にして消えてしまったんだ!」
モブ「怪獣に踏み潰されただけなら、まだ治しようがあったのに!」
主人公&ヒロイン「…………」
主人公&ヒロイン「で?」
モブ「!?」
17:
いったれいったれ!
18:
モブ「『で?』じゃないだろ!」
モブ「これで、なにがめでたいんだよッ!」
主人公「めでたいじゃん」
主人公「だって、ヒロインが魔法でうっかり呼び出して、町で暴れる怪獣を」
主人公「主人公である俺の能力でみごと撃退したんだぜ?」
主人公「こんなにめでたいこと、なかなかないだろ?」
モブ「でも、俺の家はメチャメチャになって、趣味で作った城も──」
ヒロイン「どうでもいいじゃない、そんなの」
ヒロイン「だってアナタ、モブキャラなんだから」
モブ「!」
21:
王冠はともかく家ぶっ潰しといてこの態度はないわw
23:
主人公「俺たちの世界が“外の世界”の人たちを楽しませるために存在するってのは」
主人公「お前だって百も承知だよな?」
主人公「その人たちにとっちゃ、モブであるお前のどうでもいいような不幸より」
主人公「俺たち二人の楽しいドタバタギャグや」
主人公「初々しいラブラブっぷりの方が重要なんだからさ」
ヒロイン「そうそう」
ヒロイン「せっかく事件が解決したのに、変なイチャモンつけないで欲しいわよ」
モブ「…………!」ギリッ…
モブ「た、たしかにそのことは分かってる……」
モブ「俺だって……家を修理しろとか、王冠を返せとかはいわない……」
モブ「ならせめて……! せめて一言でいい、謝ってくれよ!」
主人公「なんで?」
25:
モブ「なんで……って!」
モブ「俺はアンタらのせいで、家と趣味をメチャクチャにされたんだぞ!?」
モブ「一言ぐらい謝ってくれたっていいじゃないか!」
主人公「やだよ、めんどい」
ヒロイン「それに、こんなギャグみたいな事件で被害を受けたモブのフォローなんて」
ヒロイン「いちいちやってたら、物語のテンポが悪くなっちゃうじゃない!」
主人公「そ〜いうこと! もうオチはついてんだ!」
主人公「それじゃ、帰ろうぜ!」スッ
ヒロイン「うん!」スッ
アハハハ…… キャハハハ……
モブ「…………」
29:
確かにテンポは大事なんだがな・・・
30:
数日後──
< 喫茶店 >
モブ「はぁ〜……」
モブ(この間は散々だったな……)
モブ(家を半壊させられた上に、生きがいだった“クラウンキャッスル”は消滅……)
モブ(しかも、主人公どもからは一言の謝罪もなかった……)
モブ(だが、これは仕方ない。仕方ないことなんだ)
モブ(……と分かっていても、まだ精神的には落ちつかない……)
モブ(仕事に身が入らない……)
「なんだとォ!?」
モブ「!?」ビクッ
32:
マッチョ「ついに、“奴ら”が動き出したってことかよ!?」
主人公「ああ、ついに“奴ら”が動き出した」
ヒロイン「いよいよ“奴ら”との戦いの始まりってわけね!」
クール「フッ……いくら“奴ら”が相手でも、ボクがいれば大丈夫さ」
モブ(あ、あれは主人公ども……。まさか俺の仕事先に来てたとは……いつの間に……)
モブ(なにごともなければいいんだけど……)
マッチョ「面白いじゃねえか……腕がなりやがる」
マッチョ「オレの拳で、やってやるぜ!」ブンッ
ズガァンッ!
モブ「!?」
38:
モブ「ちょっ、ちょっ、ちょっ……お客さん!」タタタッ…
モブ「なにやってるんですかぁ!」
マッチョ「あ?」
主人公「なんだ、お前?」
モブ(数日前のことなのに、顔を覚えてないのかよ! ──いや、今はそれより!)
モブ「パンチで店の壁を壊して……弁償してもらいますからね!」
マッチョ「……え、なんで?」
モブ「!?」
41:
クール「なにをいってるんだい、店員君」
クール「たかぶった若者が、もののはずみでパンチで壁にヒビを入れる……」
クール「よくあることじゃないか」
ヒロイン「そうよ、そうよ。よくあることじゃない」
モブ「い、いや……よくないですよ!」
モブ「“悪いこと”って意味と“滅多に起きない”って意味で、二重によくないですよ!」
主人公「うわっ、さむっ」
モブ(うぐっ……!)
モブ「と、とにかく! これは立派な器物破損だ! 警察に連絡──」
42:
マッチョ「器物破損だぁ〜?」グイッ
モブ「うぐぅ……っ!」
マッチョ「だったらお前は名誉棄損だな」
マッチョ「“モブキャラ”が“主要キャラ”になにたてついてんだ? あ?」
モブ「ぐっ、ぐるじっ……!」
マッチョ「なんなら、さっきのパンチ……お前に喰らわせてやろうか?」グッ…
モブ「ヒィッ……!」
43:
悪役じゃないですか
45:
クール「よしたまえ、マッチョ君」
クール「たかが、モブキャラがやったことだ」
マッチョ「ちっ……!」ポイッ
モブ「ゲホッ、ゲホッ……!」
主人公「行こう」
主人公「俺たちにはこんなところで、こんな奴にかまっているヒマはない!」ダッ
ヒロイン「ええ!」タッ
マッチョ「おうよ!」ダッ
クール「フッ……そうだね」タッ
モブ「ぐっ、がはっ……!」ゲホゲホッ…
モブ(こんなところに、こんな奴、か……)
49:
ギィィ……
モブ店長「いやぁ〜すまんね、留守にしてしまって──」
モブ店長「!」ハッ
モブ店長「…………」
モブ店長「なんだこの壁は!? 君がやったんだな!?」
モブ「そ、それはさっき──」
モブ店長「……言い訳はいい!」
モブ店長「もういい! 君はクビだ! 出ていってくれたまえ!」
モブ店長「君の退職金や残りの給料は、壁の修復にあてさせてもらうよ!」
モブ(そ、そんなぁ……)
51:
< モブキャラの家 >
モブ(あ〜あ、ヒマだ……)
モブ(喫茶店クビになってから、今日で三日か……)
モブ(まぁ、家壊されるわ、キャッスル消されるわ、で)
モブ(仕事をする気力はなくなってたしな……)
モブ(ちょうどいい。静養期間だと思って、しばらくのんびりさせてもら──)ゴロン…
ズガァンッ……!
モブ「な、なんだ!?」ガバッ
54:
ドゴォン……! ズガァン……! バゴォン……!
モブ「家……じゃない! 外だ!」
モブ「外に出てみよう!」ダダダッ
ガチャッ……
ドゴォンッ! ズガァンッ! バゴォンッ!
モブ「町のあちこちで爆発が起こってる!」
モブ「──ん?」
モブ「あれは……町中で主人公たちが戦ってるのか!」
56:
< 町 >
主人公「ハァ、ハァ、手強い……!」
ヒロイン「ええ、戦いはさらに激しくなりそうね」
マッチョ「俺たちの中にも死人が出るかもな?」
クール「フッ……もとより死は覚悟の上さ」
モブ(みんな、かっこいい! なんだかんだいって、主要キャラなだけあるな!)
敵ボス「こしゃくな……我々の計画のジャマはさせんぞ!」
敵側近「全てはボスの理想郷のために!」
敵女「うふふ、楽しませてもらうわよ、坊やたち……」
敵幹部「ヒャーッハッハァ! 勝つのはオレたちだァ!」
モブ(こっちは敵集団か! みんな悪そうで強そうだ!)
──ドゴォンッ!
モブ(戦いが再開した!)
58:
ドゴォンッ! ズガァンッ! グシャァンッ!
モブ(なんて激しい戦いだ!)
バゴォンッ! ドズォンッ! ボガァンッ!
モブA「ぐわぁぁぁっ!」
モブB「ギャアアアッ!」
モブC「ひぃぃぃぃっ!」
モブ(つ、ついに一般人にも被害が……!)
ズガァンッ! ドゴゴォンッ! ガゴォンッ!
59:
モブ「オイ、しっかりするんだ!」ガシッ…
モブD「うぅ……オレは、もう……ダメだ……」ガクッ
モブ「くそうっ……!」
ドゴォォォンッ!
モブE「ぐがっ!」
モブF「ぎえあぁぁぁっ!」
ズガァァァンッ!
モブG「うぐっ……!」
モブH「ガハッ……!」
モブ(ちくしょう……どんどんモブキャラが死んでいく……!)
61:
ボゴォォォンッ!
敵モブA「ぐえぇっ!」
敵モブB「あぎゃあああああっ!」
敵モブC「ぎゃふっ……!」
モブ(敵側の手下モブもどんどんやられてく……!)
モブ(でも、周りでさえこれなら、主人公たちはもっと大変な目にあってるはず!)
モブ(大丈夫だろうか……!?)
モブ「…………」チラッ
モブ「──ん?」
62:
主人公「やっぱり手強いな……!」
ヒロイン「ええ……」
マッチョ「へっ、こうでなくちゃ面白くねえ!」
クール「相変わらずだな、君は……」
敵ボス「こしゃくな……予想以上の強さだな」
敵側近「私の計算違いです。申し訳ありません、ボス」
敵女「うふふ、やるじゃない……」
敵幹部「ヒャーッハッハ! だがよ、最後に笑うのはオレたちだァ!」
モブ「!?」
モブ(主人公たちも敵主要キャラたちも、ピンピンしてるじゃないか!)
モブ(両陣営とも、なんというか……死ぬ気配が全くない!)
モブ(俺たちモブキャラはゴミみたいに次々死んでるってのに!)
63:
あるある
64:
ドゴォンッ! ズガァンッ! ドォンッ! ボカァンッ!
モブI「か、母さん……」
モブJ「だれか、助け……て……」
モブK「いてぇぇぇっ! いてえよぉぉぉぉぉっ!」
敵モブD「ボ、ボスゥゥゥゥゥ!」
敵モブE「無念……」
敵モブF「グハァ!」
モブ(ああっ、人がどんどん死んでいく……! なんだよこれ……なんだよこれ!)
モブ「!」ハッ
モブ(あそこで倒れてるのは……店長!)
66:
モブ「店長! しっかりして下さい!」
モブ店長「君か……この前はクビにしてすま、なかった……」ゲホゲホッ
モブ「そんなことはいいんです! とにかくすぐに病院へ──」
モブ店長「いや……いい。それより私の話を、聞いてくれ……」
モブ店長「実をいうとあの時、私は……壁を壊した犯人は……」
モブ店長「彼らだと、分かっていたのだ……」
モブ「!」
モブ店長「だが……我々は主人公さんに逆らうわけにはいかない……」
モブ店長「だから……私は……私より立場の弱い君に……八つ当たりのように……」
モブ「いいんです! もういいんです! だから早く──」
67:
モブ店長「最後に……君に謝ることができて……心残りを解消できてよかった……」
モブ店長「私たち、モブキャラ……にも心はあるからな……」
モブ店長「私はもう、ダメ、だ……はやく、逃、げ……」
モブ店長「う……っ」ガクッ…
モブ「!」
モブ「店長……」
モブ「店長ぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
69:
その頃──
敵ボス「くっ……ここまでやるとはな! 撤退だ!」
敵側近「かしこまりました、ボス!」
敵女「ふん……覚えてらっしゃい!」
敵幹部「ヒャーッハッハァ、次会った時こそてめぇらを殺してやる!」
ギュウゥゥゥゥン……
主人公「ふぅ、どうにか追い返すことができたな……」
ヒロイン「だけど、戦いはまだまだ続くわ……」
マッチョ「ま、いいじゃねえか! 勝ったんだしよ!」
クール「フッ……そうだね。とりあえずは喜ぶとしようか」
71:
主人公「じゃあ……これにて、めでたしめでたし、ってことで!」
ヒロイン「そうね!」
マッチョ「ガハハッ、なら酒でも飲もうぜ!」
クール「君、よくそんな元気があるね……呆れるよ」
「ちょっと待てやァァァァァ!!!」
主人公「──ん?」
72:
主人公「お前はだれだ?」
モブ(やっぱり覚えてないのか……まぁ、そんなことはどうでもいい!)
モブ「俺は、今の戦いに巻き込まれた町民の一人……モブキャラだ」
主人公「ふうん。で、俺たちになにか用?」
モブ「まずはお礼をいいたい。敵を追い払ってくれてありがとう」
主人公「いやぁ、礼をいわれるほどのことじゃないさ」
主人公「主人公として当然のことをしたまでだ」
ヒロイン「そうよねぇ〜」
モブ「だけど、もう一つだけ言いたいことがある」
主人公「なんだい?」
73:
モブ「アンタたちの戦いに巻き込まれて……」
モブ「少なくとも1000人以上の町民が死んだんだ!」
モブ「もちろん、これをアンタたちのせいだっていうつもりはない!」
モブ「悪いのは全部、敵ボスたちだ!」
モブ「アンタたちがいなきゃ、多分もっと死んでただろうしな……」
モブ「だけど……だけどさ!」
モブ「戦いが終わってめでたしめでたし、で収める前に──」
モブ「せめて少しぐらい……死んだ1000人のモブキャラたちのことを」
モブ「悲しむとか、悼むとか……考えてくれてもいいんじゃないか……!?」
主人公「…………」
主人公「え、なんで?」
モブ「!」
74:
主人公がクズにしかみえねぇ
75:
モブ「なんでって……!」
モブ「だって敵も味方も人が大勢死んでるんだぞ!?」
主人公「で?」
主人公「モブキャラが何人死のうが、俺たちの知ったこっちゃないよ」
ヒロイン「そうよねえ」
マッチョ「モブ一億の命より、オレたち一人の命のがずっと重いもんな!」
クール「そのとおり。モブキャラが1000人死んだ、なんてのは」
クール「ボクたちの戦いがそれだけ激しかったことを示す記号に過ぎないよ」
主人公「むしろ1000人じゃ、ちょっと物足りないよなぁ」
モブ「な、な、な……!」
モブ「テ、テメェら……」
モブ「テメェらいい加減にしやがれッ!!!」
77:
覚醒型モブ
80:
モブ「俺たちだってなぁ……生きてんだよ!」
モブ「テメェらの起こす騒動に巻き込まれたり……」
モブ「気分で建物ぶっ壊されたり……」
モブ「主要キャラ引き立たせるためだけに大量に死んだりしてっけど……」
モブ「生きてんだよォッ!」
主人公「だから?」
主人公「“外の世界”の住民にとっちゃ、お前らの生き死になんてどうでもいいんだよ」
主人公「彼らは俺たちがどうイチャイチャするか、どうドタバタするか、どう戦うか」
主人公「──だけに興味があるんだから」
モブ「こんだけいってもわかんねぇか……なら」
モブ「モブキャラの意地、見せてやらぁぁぁぁぁ!!!」ダッ
82:
主人公「なんか吠えてるとこ悪いけど、俺たち疲れてるからさ……ジャマ」
ドゴォッ!
モブ「ごはァ!」ドシャッ…
主人公「さ、行こうか」
ヒロイン「そうね」
マッチョ「よっしゃあああ、酒だぁぁぁ!」
クール「ボクはワインにさせてもらうよ」
ワイワイ……
モブ「…………」ピクピク…
モブ(そりゃ……こうなるよな……。分かってたさ……ハハ……)
85:
モブ(もう……イヤだ……)
モブ(主人公や主要キャラのために生きてく人生なんて……)
モブ(俺たちは“外の世界”の奴らにゃ決して見向きもされない存在……)
モブ(物を壊されても、ケガしても、死んでも、なんとも思われない……)
モブ(だから、俺たちも何も文句は言えない……)
モブ(もう……イヤだ……)
モブ(もうモブキャラはイヤだ……)
モブ(だったら……行こう。新天地に……“外の世界”に……)
88:
どこかに続く道を、ひたすら歩き続けるモブキャラ──
< 道 >
ザッザッザッ……
モブ(行こう……)
モブ(新天地に……)
モブ(“外の世界”に行けば……)
モブ(きっと俺はモブキャラじゃ、なくなるはず……ッ!)
ザッザッザッ……
すると──
91:
モブ爺「ほっほっほ、珍しいこともあるもんじゃ。こんなところで人と会うとはのう」
モブ「!」
モブ爺「若いの、そんなおっかない顔して、いったいどこに行こうというんじゃ?」
モブ「…………」
モブ「新天地……“外の世界”を目指そうと思って……歩いてます」
モブ爺「ほう、そうかいそうかい」
モブ爺「若いの、なぜ“外の世界”を目指すのじゃ?」
94:
モブ「なぜ……?」
モブ「おじいさん、あなたもモブキャラなら分かるでしょう?」
モブ「この世界にいたら、俺はいつまでたってもモブキャラのままだ」
モブ「主人公や主要キャラどもにゴミのように扱われ」
モブ「たとえケガしようが死のうが、あいつらは悲しむことはない」
モブ「なぜなら、“外の世界”の人たちはモブキャラの不幸なんかより」
モブ「主人公たちの華々しい活躍に興味があるから……」
モブ「──もうこんなのはウンザリなんですよッ!」
モブ「だから……俺はこの世界を飛び出して、“外の世界”に行くんだ!」
モブ爺「なるほどのう……」
96:
モブ爺「じゃがな……この世界も“外の世界”も根っこのところは同じじゃよ」
モブ「えっ……」
モブ爺「ルックスがいいわけでもないし、親が有名な人間ということもない」
モブ爺「ヒーローになれるわけでもなければ、大悪党にもなれない」
モブ爺「ノーベル賞も取れない、オリンピックにも出られない」
モブ爺「ずば抜けて商才があるわけでもないし、面白いことを考えられるわけでもない」
モブ爺「新聞に載ることも、wikipediaに自分のページが作られることすらない」
モブ爺「死んだところで悲しんでくれるのは、よくてせいぜい身内と知人……」
モブ爺「一ヶ月もすれば、あんな奴もいたね、と忘れ去られていく存在……」
モブ爺「“外の世界”はそんな大勢のモブたちが、少数の主要キャラを支えることで」
モブ爺「成り立っておるのじゃよ」
モブ爺「この世界とおんなじなんじゃ……」
モブ「…………」
モブ爺「少し話をしよう。昔、こんな男がおったそうじゃ」
99:
モブ爺「その男は、“外の世界”の典型的なモブキャラじゃった」
モブ爺「それがどうしても我慢ならず、架空の世界でならヒーローになれるはず、と」
モブ爺「かなり強引な手段を使って、この世界に入った……」
モブ爺「そやつは喜んだ……ここでなら自分は活躍できる、主要キャラになれる、と」
モブ爺「しかし……結果はどうじゃ」
モブ爺「“外の世界”にいた時と変わらず、モブキャラのまま無駄に年を取った」
モブ爺「主要キャラになるなんて夢のまた夢、なぁんにも変わらなかった……」
モブ「おじいさん、その男ってもしかして──」
モブ爺「ほっほっほ」
モブ爺「さて……おぬしがどうするかは自由じゃ」
モブ爺「この道をまっすぐ行き“外の世界”に出るか、それとも引き返すか……」
モブ爺「では、さらばじゃ……」ザッザッ…
モブ「…………」
101:
モブ(モブキャラはどこにいってもモブキャラのまま、か……)
モブ(まぁ……なんとなくそんな気はしてた……)
モブ(世界が変われば主要キャラになれる、なんて幻想だったんだ)
モブ(だって……俺は主人公たちに比べて……)
モブ(あまりにも平凡で、地味で、才能がなく、華もない)
モブ(それを丸々覆すような努力だって……とてもムリだ。長続きはしないだろう)
モブ(多分、俺がこのまま“外の世界”に出たとしても)
モブ(ヒーローにも悪党にもなれず、なにか大きなことを成し遂げることもなく)
モブ(その他大勢の一人として、死ぬことになるんだろうな……)
モブ(そして、それはこのままこの世界に残っても同じ……)
モブ(──だけど!)
103:
モブ(俺にだって──やれることはある!)
モブ(やりたいことだってある!)
モブ(なら、やってやろうじゃないか!)
モブ(主人公になれないのなら、少しでも輝くようなモブに──)
モブ(モブキャラとしての自分を、徹底的に磨き上げる!)
モブ(これが……俺のモブキャラとしての意地……!)
モブ「…………」
モブ「戻ろう……!」クルッ
ザッザッザッ……
107:
一年後──
< テレビスタジオ >
モブ司会「はい、ど〜も〜! 本日の『町のスゴイ人』始まりました〜!」
モブ司会「まず一人目のスゴイ人は、この方です!」
モブ司会「なんと空きビンなどの王冠を集めて、城を作っちゃったそうですね〜!?」
モブ「はい」
モブ「城の資料集めをしたり、王冠集めに苦労したり、一度完成品が消えたりで」
モブ「だいたい10年以上かかりましたね」
モブ司会「完成品が消えたってどういうことやねん!」
ワハハハハ……! ハハハハハ……!
108:
やり遂げたのかよ…!
109:
モブ司会「それでは完成品をどうぞ!」
バサッ!
オォ〜……!
モブ芸人「すげぇ〜〜〜〜〜!」
モブアイドル「うわぁ〜、すっご〜い! お城だぁ〜! 住んでみたぁ〜い!」
モブ俳優「いや、これはホントすごいよ、ウン」
モブ司会「ちなみに、お城の名前は?」
モブ「“クラウンキャッスル”です!」
オォ〜……!
111:
モブ司会「ほぉ〜、このお城の横にある小さな建物は?」
モブ「昔お世話になってた喫茶店をモデルにした建物です」
モブ司会「すごいねぇ〜、凝ってるねぇ〜!」
モブ(店長……)
……………
………

モブ(あれから俺はすぐ家に戻り──)
モブ(“クラウンキャッスル”作りを再開し、わずか一年で完成できた)
モブ(俺の力じゃ、こんなバラエティ番組に出演するのがやっとだけど)
モブ(俺は今、とても満足してる……)
114:
ウルトラマンとか街どうなってんだよって毎回思いながら見てた
121:
>>114
その昔、街を壊しながら戦ってたら
「バカヤロー!なんてヘタクソな戦い方だ!」
って隊員に怒られたウルトラマンがいてな
116:
< 主人公の家 >
主人公「おい見ろよ、このテレビ番組。世の中には、変わった奴がいるもんだなぁ」
ヒロイン「へぇ〜、ここまでくると一種の芸術ね」
マッチョ「マジかよ!? これ全部王冠かよ!?」
クール「フッ……並大抵の努力では不可能だろうね」
主人公「──そうだ! 俺たちもああいうのを作ろうぜ!」
三人「えぇ〜!?」
この後、主人公たちが一騒動起こすことはいうまでもない。
モブキャラをきっかけに、一つの物語が誕生するのである。
しかも後に、“外の世界”において、この“クラウンキャッスル”を再現してしまう
マニアックな人間が現れることとなる。
モブキャラだって、やればこれぐらいのことはできるのだ──
<END>
118:
というかこれただ主人公達がクズなだけだろ
122:
>>118
モブとのやりとりやモブの受けた被害が描かれてないだけで
クローズアップしてみると実際にはこういう奴って感じじゃないかと
120:

モブはモブなりに生きることだな
127:
>>1乙
モブキャラも救われてよかったよ
130:
この発想はあったけどうまく描けなかったんだよな
すごくいい出来だ。最後、安易に復讐したりしなくてよかった
13

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