水銀燈は動かない『採血室』back

水銀燈は動かない『採血室』


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733 :
蒼星石「もっと早く走って、マスター! このままじゃ追いつかれる」ダダダ
BJ「わ、分かってるよ! で、でも…これ以上は足が」
蒼星石「見えた! あそこです! あの教会に逃げ込んで!」
BJ「へ!?」
蒼星石「いつもは無人だけど、先回りした水銀燈が今は中で待機しているはず!
  彼女にかくまってもらってください!」
BJ「あ、ああ!」
蒼星石「…僕はここで、あの赤い悪魔を食い止める!」ジャリッ
BJ「蒼星石!?」
蒼星石「大丈夫。僕を信じて…マスター! それだけで…それが僕の力になる!!」
BJ「!」
734 :
BJ「……」ギィイイイ
水銀燈「やれやれ。さえない人間が入り口を開けると、扉もさえない音を出すものねぇ」
BJ「す、水銀燈。本当にいた…」
水銀燈「いるに決まってるでしょ。さ、アンタも早くこっちに」
BJ「?」
水銀燈「こんな教会の大広間で身を隠していてもしょうがないでしょ。だから、こっち」
BJ「え? ここに入れってことか? でも、これ、懺悔室じゃあ?」
水銀燈「アンタにはお似合いでしょ? 人生に迷える子羊ちゃん?」
BJ「…水銀燈が神父、いや司祭ってのは似合わないけどな」
水銀燈「皮肉が言える程度には、落ち着けてきたようね」
BJ「…いや! 落ち着いている場合じゃない! 水銀燈、僕はここに隠れているから、お前は蒼星石を助けに!」
水銀燈「お馬鹿さぁん。アンタを一人にすることの方がよっぽど危険だってこと、まだ分からない?」
BJ「う…」
735 :
水銀燈「……」
BJ「……」
水銀燈「ちょっとぉ、いくら隠れてるからって黙ってる必要もないのよ。何か小粋な話でもしたら?」
BJ「とてもそんな気分じゃ。それにお前ってそんなに話好きなキャラだったか?」
水銀燈「嫌いよ。でも、アンタみたいなさえない人間のオスと見つめ合って、だんまりってのはもっと嫌。
  たとえ懺悔室の、この仕切り越しにだとしてもね」
BJ「本当、口の悪い奴だな」
水銀燈「そうだ! 場所がら告解っていうのをやってみたら? 興味あるわぁ私」
BJ「逆十字の黒い天使相手にか? 罰当たりにも程がある。
  それに僕にどんな罪が…、何の因果で、どうして今日こんな破目に」
水銀燈「ふん。罪の意識は無いにしても、話したいことはあるようねぇ。
  聞いててあげるから、隠さず最初から話しなさい」
BJ「……」
736 :
水銀燈「……」
BJ「いきなりバイト先で正社員の話が出るわ、大学でも友達ができるわ、良い事づくめ」
水銀燈「斉藤さんとの仲の進展も…よね?」
BJ「な、なんだよ、その言い方は」
水銀燈「別にぃ。まあ、いいじゃない。何にしろ運勢が良いにこしたことはない」
BJ「けど、一つだけ不安がずっと、僕の背後にずっと…地球の周りを回る月のように存在した」
水銀燈「何それ? 運勢のツキと月を掛けてるの、ひょっとして? 面白いわねぇ」
BJ「真紅が絵本に残した言葉…『忘れないで』」
水銀燈「あの子らしい、しみったれた言葉。けど、それがどういった不安の種に繋がるというの?」
BJ「言葉には続きがあった。絵本の次のページに」
水銀燈「?」
これからあなたの運勢は好転する。でもそれは天の恵みでもなく、ましてやあなた自身の力でもなくてよ。
この高貴なローゼンメイデン第5ドール真紅様が、あなたの運命に、閉じられた世界に力を貸したから。
貸したものは返してもらう。利子もたんまりつけてね。あなたが幸せの絶頂にある時に必ずあなたから取り立てる。
もう一度ここに書いておくわ、『忘れないでね』……。あなたの幸せなお人形、真紅より愛を込めて。
水銀燈「マジ話? 今のそれって…、たまげたわぁ。けど、それも真紅らしい陰湿な書置き」
BJ「この続きの言葉に気付いたのは最近になってから、実際に運勢が好転してからだった。その文を見た瞬間
  ケツの穴にツララを突っ込まれた気分になった。そして、そのツララがまだ溶けない。それどころか…」
水銀燈「実際に赤い悪魔に襲われた今となっては、むしろツララが更に、ごんぶとになったってとこかしら?」
BJ「ああ」
737 :
水銀燈「デートって便利な言葉があるでしょうが。回りくどい言い方する子は嫌いよ。末妹を思い出すから」
BJ「いやいやいやいやいやいやいや! ぼ、僕と斉藤さんはまだ、そんな…!」
水銀燈「ええい、うるさい。分かったわよ、で、そのショッピング中に何があったって?」
738 :
斉藤「ジャーン! どう? ねえ、どう? これなんてどう!? ジュン君!」
BJ「うーん、もうちょっと明るい色の方がいいかなぁ」
斉藤「え? 明るい色の服の方がジュン君の好み?」
BJ「いや、斉藤さん、よく舞台の稽古とかでも暗がりで作業することが多いじゃない。
  明るい色の私服の方が分かりやすいかなぁって」
斉藤「あ、そう…」
BJ(あれ? ちょっと斉藤さん怒った?)
斉藤「まあいいわ! とにかく試着してみる。ジュン君、悪いけどまたちょっと待ってて」シャッ
BJ「ああ、うん。(……でもないか、機嫌良いみたいだし)」
739 :
BJ「へ? な、何でしょう…?」
店員「試着されている方は彼女ですか? 可愛らしい女性ですね」
BJ「え! あ、いや! そんな! いやいやいやいや…」
740 :
水銀燈「……」イラッ
BJ「あ、水銀燈ちょっとイライラしている?」
水銀燈「ちょっとどころじゃないわよ。他人の惚気話がこれほど不快だとはね」
BJ「お前が最初から全部話せって言ったんじゃないか」
水銀燈「はいはい。で、続き、その後どうなったって?」
BJ「僕はこの時こう思ってしまったんだ『本当に斉藤さんが彼女だったらどんなにか【幸せ】だろう』ってね」
水銀燈「……」
BJ「そうしたら…」
741 :
斉藤「ジュンく?ん見て見てぇ、今、試着室のカーテン開けるから?」
BJ「は、はい!」
斉藤「それじゃ、1…2の…」
  |┃三 
  |┃    r‐rァZ´~"ヾ
  |┃   rヘi !〃 ̄ ヽ}
 シャッ |┃    7b!リノノリリ))》
  |┃ // /ノヘ.!}!^ω^ノ| どじゃぁ??ん
  |┃三.   (( く_ヒ|卯i7ヾト、
  |┃   rク /爿'^ jス ソ〉
  |┃   r'ブー-rァァ-‐′r'〉
BJ「えっ!?」
真紅「ふふふ、久しぶりねジュン」すたすた
BJ「えええっ!? 何が起きた!? な、何で真紅が試着室から出てくる!? 斉藤さんは!? 彼女をどこに隠した!?」
真紅「随分なご挨拶ね。取りあえず斉藤さんには今、安全なところで眠ってもらっているわ」
BJ「!」
真紅「ジュンあなた今、自分はなんて幸せなんだって思っていたでしょう?」
BJ「え!? いや、まだそこまでは…」
真紅「誤魔化してもダメ。今のジュンからは『幸せオーラ』が満ち満ちている。私の癪に障るほどにね!」
BJ「うっ!?」
742 :
BJ「あ、ああ…」
真紅「ならば話が早いのだわだわ。貸したものは確かに返してもらう」
BJ「か、返せったって…いったい何を!?」
真紅「抽象的に言えばあなたの幸せエネルギー、具体的に言えばあなたの血よ」
BJ「血ぃ!?」
真紅「血は力なり! 血こそは生物の魂の通貨にして生命波動の証。
  私とジュンの間に結ばれた契約の代償、血で払ってもらう! そして私のドレスは更に鮮やかに!」
BJ「そんな馬鹿な! 全ッ然、意味が分からない! 寝ぼけているのか!」
真紅「寝ぼけてなんかいない! さあ若者よ、その肌を切り裂いて溢れる血潮を浴びるように頂いてやるわ!」
BJ「う、うわああああああ!」ダダダッ
真紅「あ、こら! 待ちなさい! 逃がさないわよ!」
743 :
真紅「どこまで私の健脚から逃げ回れるかしら!? ジュン!」すたたた
BJ「ば、馬鹿な! 真紅が早すぎる! 追いつかれる! どうして…!? どうして僕がこんな目にぃいい!」
真紅「大体あなた、斉藤さんのことはどうでもいいの!?
  今、彼女は薔薇乙女内でも最高峰のイタズラスペシャリストである翠星石と雛苺の監視下にあるのよ」
BJ「ッ!?」ぴたり
真紅「私の合図一つで二人は野獣と化す! それでもいいの?」
BJ「な!? 何て下劣な!」
真紅「だったらジュンが採るべき道は唯一つ! 安心なさい、痛いのは最初だけだから」
BJ「ぼ、僕が大人しく血を渡せば…」
真紅「ええ、そう。ギブアンドテイクよ。斉藤さんは無傷で返してあげるのだわ」ニヤリ
BJ「し、仕方ない。斉藤さんの安全のためなら…」
744 :
  |┃  ┌──┐
  |┃  i二ニニ二i
 シャッ |┃  i´ノノノヽ)))
  |┃ // Wリ゚ -゚ノリ その取引! ちょーっと待ったーーーー!!
  |┃三.  ⊂)_介」つ
  |┃   〈__l__〉
  |┃    〈_ハ_〉
真紅「むむ! 蒼星石!?」
BJ「こ、今度はあいつまで試着室の中から!?」
蒼星石「試着室の姿見の鏡が今、僕達の世界と、nのフィールドと繋がっているんです。
  真紅を追いかけて僕もそこからやってきた!」
真紅「…!」
BJ「そうだったのか! 部屋の中の鏡が…」
蒼星石「マスター! 騙されちゃあいけない! 真紅はマスターの精根尽き果てるまで血を奪うつもりです」
BJ「け、けど僕が抵抗したら斉藤さんが…」
蒼星石「斉藤さんは金糸雀が救出に向かっている。だから安心して」
BJ「かしら先生が!?」
蒼星石「そうです! 今は先ず逃げることだけに専念を。真紅にアドバンテージを取られたままでは何もできない。
  ジョースター家の伝統のように、逃げなら対策を考えるんです!」
BJ「わ、分かった!」ダダダッ
蒼星石「こっちへ! マスター!」タタタッ
真紅「なんてこと! とんだ邪魔が入ったわ! けれど絶対に逃がさなくてよ!!」
745 :
BJ「そして蒼星石と一緒に服屋から飛び出して、大通りを走り抜けて…」
水銀燈「この教会にたどり着いた」
BJ「そうだ。それにしてもどうして真紅は急にあんなことを…? 吸血鬼にでもなったってのかよ」
水銀燈「……」
BJ「なあ水銀燈? お前も蒼星石も随分とタイミングよく僕を助けに来てくれている。
  真紅の目的の真実をちゃんと把握しているんだろ? 教えてくれないか」
水銀燈「それは…」
蒼星石「マスター! 水銀燈! いるー?」バァン
BJ「蒼星石が教会に入ってきた? 迎えに出なきゃ」ガチャッ
水銀燈「どうやら無事に赤い悪魔を退けたようね」バタム
746 :
蒼星石「ええ。流石に少し手こずりましたが真紅は撃退できた。それに喜んでください。
  金糸雀のピチカートから連絡が来て、斉藤さんを無事に保護できたとのことです」
BJ「本当に!?」
蒼星石「はい。斉藤さんは小指一本すら齧られていませんでした」
BJ「良かったぁ?。これこそ、まさに不幸中の【幸い】だよぉ?」
水銀燈「……!」
蒼星石「……ッ!!」
BJ「ん? どうしたよ? 急に二人とも顔色変えて……て、痛っ!?」チクッ
747 :
ブサ綺晶「ちゅーちゅー」
BJ「ッ!? な、何だコイツは!? 口から針を出して僕の足に刺して…!? 血、血を吸っているのか!?
  それよりも、いつから!? いつの間に僕の足にくっついていた!?」
ブサ綺晶「じゅぞぞぞぞ」
BJ「こいつコドウグ…じゃあない! なんだ、何者!? は、離れろ!」
真紅「それは吸血ブサ綺晶。そう簡単には振りほどけなくてよ」テクテク
BJ「し、真紅…!? どうしてお前まで教会の中に!? 蒼星石に退治されたはずじゃあ」
蒼星石「……」
BJ「なあ蒼星石、さっきお前言ったよな! 確かに真紅を…」
蒼星石「ごめん、マスター」
BJ「お、おいおいおいおいおいおいおい! 嘘だろ? 蒼星石が僕を騙し……!?」
水銀燈「お・ば・か・さぁん。最初からあなたに味方なんていなかった。分かるぅ? その吸血ブサ綺晶だって
  懺悔室に潜んでいたのよ、最初からね。そしてずっと血を吸うタイミングを計っていた、今まで」
ブサ綺晶「ききっ」ニタリッ
BJ「!?」
748 :
BJ「え、ジュン君て、僕?」
真紅「あなたじゃあない。『巻いた』ジュンの方よ」
BJ「もう一人の僕のために、僕の血が必要!? どういうことだ? 厄介な病気にでも罹ったのか!?
  そうだとしても、何故こんな手の込んだ方法で僕から採血を…!?」
ブサ綺晶「ききっ」チュポン
BJ「!? や、やっとこいつが足から離れた!」
水銀燈「予定量の血は吸い終えたってことね。バンソーコーでも貼っとけばぁ?」
真紅「そして血を採り終わった今なら、ようやく全部を説明できる。
  耳くそストローでスコスコ吸い取って、しっかり聞きなさいよジュン」
BJ「?」
蒼星石「今、巻いたジュン君は真紅の微粉末が体細胞と一部結合して
  喉と心臓にロゼリオン化した指輪状の異物を抱えた状態になっている」
BJ「はぁ?」
※桜田ジュンの感冒『その苦輪の運命』 参照
749 :
真紅「ええっ!? ジュンのロゼリオン化を解除する方法が分かった!?」
槐「解除できるかもしれないという…まだ仮説にも到ってないような推論レベルだが」
翠星石「それでもゴイスーですぅ! 流石は槐です!」
雛苺「ロゼリオンかいじょやくってのができたのよね!」
槐「すまない。残念ながらそれとも違うんだ」
真紅「え? それじゃあ結局どういうことなの? 槐の言う解除できるかもしれない方法って?」
薔薇水晶「あなた達の助力で大量に捕獲したメメントリオン幼生を使った実験で研究は進展しましたが
   ロゼリオン解除薬のためのブレイクスルーにまでは…まだ遠い、しかし」
翠星石「しかし?」
薔薇水晶「メメントリオンを分けてあげた柿崎めぐが
   水銀燈の黒羽根と一緒にそれを飲んで自らのロゼリオン化を図りました」
雛苺「うぇええ!? そんなこと本当に実行しちゃったのよ? 水銀燈のマスターの人は?」
薔薇水晶「私も水銀燈も迂闊でした。注意はしていましたが阻止しきれなかった。
   いえ、何を言っても今は言い訳。実質、対応を取れなかったことと同じです」
750 :
槐「どうもならなかった」
雛苺「?」
槐「ロゼリオン化しなかった、いや、できなかったと言うべきか」
翠星石「な、なんでですぅ?」
薔薇水晶「ロゼリオン化、特に第3世代化は条件が複雑ですし、柿崎めぐに適性が無かったとも言えます」
真紅「あの娘に適性が無いようには見えないわよ、あくまで私見だけど。雪華綺晶と合体したこともあるぐらいだし」
槐「僕もそう思う。が、ロゼリオンが生まれるためには野薔薇(薔薇乙女)、メメントリオンの他に
 見落としていた隠れたファクターがあるらしいことが彼女の『失敗』から見えてきた」
真紅「それは一体?」
薔薇水晶「ローゼンメイデンに対する恨み、嫉み、絶望といったドス黒い負の感情です」
翠星石「!」
751 :
 以前に捕獲してもらって、まだうちで試験飼育しているメメントリオン幼生も
 培養アストラルを餌として与えているが、どうにも食いが悪い。しかし……」
薔薇水晶「私が記憶の海で採取した、悪しき感情の海月(※)であれば旺盛な食欲を示します」
※月食と雪華綺晶 参照
槐「ロゼリオンが生まれるためには薔薇乙女に対する怨念が必要だ。
 ロゼリオンが薔薇乙女を恨むんじゃない、薔薇乙女を恨む者がロゼリオンとなる」
翠星石「で、でも薔薇水晶だって、ごく一部だけロゼリオン化して…?」
薔薇水晶「あなた達に対する黒い感情が私の中に無い…とは胸を張って言えません」
槐「…だが、柿崎めぐの中にそれは無かった。彼女は薔薇乙女、特に水銀燈に対して
 かなり曲がりくねった感情を抱いているが、それは決して暗黒ではない。黄金のような希望が根底にある」
真紅「じゃあ、ジュンだってロゼリオン化するはずないじゃないの!」
雛苺「そうよそうよ! ジュンがヒナ達のことを恨むだなんてありえないのー」
槐「よくもまあ、いまだにそんなこと言えるね君達。餅つき事件はゲスの極みだったくせに」
翠星石「ぬうう!」
752 :
翠星石「ほう?」
槐「結論から言うと、メメントリオンは良感情に由来する海月アストラルには手をつけなかった。
 あまりに清らかなアストラルは取り込めないようだ。
 穢れを浄化する生物が清浄なるものを拒むというのは、興味深い事象ではある」
真紅「なんかナウシカの腐海みたいな感じね」
薔薇水晶「そしてまた、ごく一部の、たった一例だけではありますが、薔薇乙女に対する
   しがらみを捨て自らの運命に満足して受け容れたロゼリオンは自滅するケースがあった」
翠星石「オズレの最期のことを言っているですか? それって」
薔薇水晶「はい。彼女自体、かなりイレギュラーなロゼリオンではありましたが」
※薔薇乙女のうた『王樹の夢』 参照
753 :
 ポジティブなアストラルに満ち溢れれば、自然と彼の体内の真紅細胞は駆逐されるはずだ」
真紅「なんだか結局、『病は気から』って感じの結論になってない? それって」
槐「なかなか馬鹿にできないよ。深呼吸や笑いでも免疫力上がるそうだし」
翠星石「免疫力で野薔薇やメメントリオンの細胞がやられちゃうもんですかぁ?」
薔薇水晶「免疫の基本、マクロファージの発見は
   ヒトデのプルテウス幼生に薔薇の棘を刺すところから始まったのですよ翠星石」
槐「薔薇水晶、その話、今は関係あるようで全然関係ないよ」
薔薇水晶「そうですか? すいません」
雛苺「えーと、ヒナ難しいことは全然よく分からないけど、とにかくジュンに
  いっぱい笑ってもらって元気になってもらえば良いってことなのよ?」
薔薇水晶「まあ、そういうことですが、現状ではそれはほぼ不可能」
真紅「え? なんで?」
槐「君達がいつまでも桜田家にタムロして、悪さばっかりしているからだ」
754 :
 お試しも兼ねて、輸血療法という方法を採りたいと思っている」
真紅「おけつ両刀?」
薔薇水晶「わざと間違えてるのですか真紅?」
槐「要は隣の世界の希望に満ち満ちたジュン君から血をちょこっと貰って
 それを、この世界のジュン君に入れてみようってわけだ」
薔薇水晶「世界が異なるだけで同一人物間の輸血ですからデメリットがほぼありません」
翠星石「試すだけの価値はあるってことですか。それで幸せなチビ人間とやらはどこの『隣の世界』から選ぶんですぅ?」
槐「え? どこって、そりゃ『巻かなかった世界』の大きいジュン君で…。彼、リア充になったんでしょ?」
真紅「リア充って言うか、マイナスだったのがゼロに戻った程度よ、ぶっちゃけ」
槐「けれども、そういう人間の血液にこそ僕達が求めている希望に満ちたアストラルが流れているはずだ。
 一度、底ってものを見た人間が這い上がれた時、それはそれは生気に満ち溢れて…」
翠星石「デカチビ人間の底ってのも、タカが知れていたですけどねぇ」
755 :
真紅「『やらないかの世界』のホモジュンとか、もっと幸せに溢れているわよ」
槐「何? そのヤバい匂いがプンプンする世界」
薔薇水晶「し、しかもホモジュンって…」ドキドキ
翠星石「ちょい待ちです真紅。あの世界のホモチビ人間は
  確かに幸せなキス状態ですが何か変な病気も持っていそうですぅ」
雛苺「こっちのジュンに病気がうつっちゃったら大変なのよね」
真紅「確かに。ロゼリオン化それ自体が病気みたいなものなのに、さらに病気が増えたら厄介だわ。
  しょうがない、ここは巻かなかったジュンの血で我慢してあげましょう」
雛苺「うぃ」
真紅「しかし、リア充気取りのビッグジュンではジャック兄さんみたいにちょっと血が薄い気がする」
翠星石「なんとか、もう少し幸せレベルを引き上げてやってから採血したいですねぇ」
雛苺「何かいい方法はないのよ槐せんせー?」
槐「んん? そうだなぁ、さっきも少し触れたけど、一度軽く落としてから持ち上げると…」
756 :
真紅「…と言うわけで、急遽ホーリエを巻かなかった世界の過去に送り込み私の書置きを改変させた」
BJ「あ、あのやたら脅迫じみた文章からして仕込みだったのか!?」
真紅「そのとおり。さらには蒼星石と水銀燈にも一芝居うってもらった」
蒼星石「ごめんね。でも、こっちも巻いたジュン君の健康に関わってるんで」
水銀燈「勘違いおしでないわよ。私はただ、アンタをだまくらかすのが面白そうだったから…」
BJ「……」
真紅「ちなみに、このブサ綺晶は今回のために特別に雪華綺晶と鳥海皆人が改造した吸血仕様。
  この後、巻いた世界に帰ってジュンに直接輸血もできるという優れものよ」
ブサ綺晶「ききっ」
BJ「……」がくっ
蒼星石「大丈夫? マスター? 貧血?」
水銀燈「そんな大量に血を採ってはいないはずだけど?」
BJ「いや、何て言うか…もう一人の僕のためにお前達が頑張ってたっていうのはよく分かるし
  そのための今日の騒ぎってのも納得はできる。けど、なんなんだ、このやりきれなさは…」
真紅「まあまあ。そんなことより早く服屋さんにお戻りなさい。お姫様が試着室で目覚めるわよ」
BJ「?」
真紅「斉藤さんをどこか別の場所に隠したというのは嘘。
  試着室の中で当て身で気絶させてカーテンの死角に寝かせておいただけ」
BJ「な!? 本当なのか、それ!」
蒼星石「うん、今度は本当。マスター、早く行ってあげなよ」
BJ「さ、斉藤さーーーーん!」ドヒュン
水銀燈「色ボケした人間って…本当にやれやれって感じだわぁ」
757 :
薔薇水晶「…これより真紅達が苦労して手に入れたビッグジュンの血液を、桜田ジュンあなたに輸血します」
ブサ綺晶「ききっ」
ジュン「もう一人の僕もとんだ災難だったな」
槐「他人の心配より自分の心配をしようよ…と言っても、ジュン君にとってはどっちも同じか」
薔薇水晶「では桜田ジュン、輸血を始めますのでパンツを脱いでオケツを出してください」
ジュン「はいはい…て、何でだ!? ちょっと待て! なぜ尻を出す必要がある」
薔薇水晶「何を言ってるんです? 輸血はオケツ、これはこの世界のケツの…じゃなかった鉄の掟」
ジュン「いやいやいやいやいや! 絶対おかしいって! そんなルール聞いたことない!」
薔薇水晶「…チッ」
ジュン(えっ!? 舌打ち? あの薔薇水晶が?)
薔薇水晶「仕方ありません。どうしてもと言うのなら腕からにします。…ブサ綺晶、お願いできますか」
ブサ綺晶「ききっ」プスッ
ジュン(え?? なんで僕がわがまま言ったみたいな流れになってるの?
  なぜ? どうして? 薔薇水晶、こんな性格でしたっけ? 槐先生ぇ??)
槐(うーん、薔薇水晶も思春期だねぇ)
ジュン(思春期じゃないでしょ、これは絶対)
758 :

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