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P「月が綺麗だな」 響「えっ!?」


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1:
P「ん? どうした響?」
響「え、あいや、うん……き、綺麗だね」
P「流石は中秋の名月ってとこかな」
響「う、うん……」
2:
P「しかもちょうど満月なんてなー」
響「そ、そうだね……」
P「どうした響? なんか今日はやけにおとなしいじゃないか」
響「そっ、そんなことないぞっ! 自分、いつもカンペキに元気だし!」
P「そうか? それならいいけど」
響「…………」
5:
?回想?
教師「……このように、子規との出会いは漱石に多大なる影響を与え――……」
響「…………。(午後の現文の授業ほど眠いものは無いぞ……しかも文学史とか反則……)」
教師「――そういえば、今日は中秋の名月ですね」
響(ん?)
教師「漱石にちなんだエピソードとして、ひとつ面白い逸話があります」
響(なんだろう。眠気が吹き飛ぶようなお話だったら聞きたいぞ)
教師「漱石が英語の教師をしていたとき、生徒が「I love you」を「我君ヲ愛ス」と訳したそうですが」
響(ふむ)
教師「このとき漱石は『日本人はそんなことを言わない。月が綺麗ですね、とでもしておきなさい』と言ったそうです」
響(お……おお! な、なんかかっこいいぞ! 漱石!)
?回想終り?
6:
響(つ……つまりプロデューサーのさっきの発言は……)
響(こ……こくはk)
P「響」
響「うっひゃあ!」
P「う……うっひゃあ?」
響「え、あ、あいや……違うんだぞ」
P「違うって……何が」
響「今のは……くしゃみだぞ」
P「え、響お前『うっひゃあ!』ってくしゃみするのか?」
響「するんだぞ」
P「そ、そうか……」
響(どうやら上手く誤魔化せたみたいだぞ)
11:
響「で、プロデューサーは自分に何を言おうとしてたんだ?」
P「ん、ああ……」
響「…………」
P「月が綺麗だな、って」
響「ぬっひゃあ!」
P「ぬ、ぬっひゃあ?」
響「……くしゃみだぞ」
P「え……響お前『ぬっひゃあ!』ってくしゃm」
響「するの!」
P「そ、そうか……」
響(今度も上手く誤魔化せたみたいだぞ)
17:
響(それにしても……こうも何回も言うってことは……)
響(ぷ……プロデューサーはやっぱり、その、自分のことを……)
響(……って! そ、そんなわけないだろー!?)
響(自分はアイドルで、プロデューサーはプロデューサーなんだし!)
響(そんなの……そんなの、あるわけないぞ!)
響(……そんなの……)
響(…………)
P「…………」 
19:
響(だ、大体……プロデューサーが漱石の話を知ってるとも限らないし……)
響(実際、今夜の月は満月で綺麗だし、ただその感想を言っただけって考える方が自然だよね……)
響(……うん、そう、だよね……)
響(…………)
P「なあ、響」
響「! な、なんだぞ」
P「お、今度はくしゃみしなかったな」
響「じ、自分は花粉症じゃないぞ! そんなしょっちゅうくしゃみばっかするわけないでしょ!」
P「そうか? ほ?ら、ネコジャラシこちょこちょ」
響「ふぁ!? あ……あ……ぬっひゃあ!」
P「あっ」
響「もー! 何するんだ!」
P「……本当に『ぬっひゃあ』ってくしゃみするんだな……お前」
22:
響「もー、プロデューサーのせいで鼻がムズムズするさー」
P「ごめんごめん、ほらティッシュ。鼻ちーんしな」
響「ちーん」
P「スッキリしたか?」
響「うん……まあ」
P「そっか、よかった」
響「…………」
P「…………」
響「……で、さっきは何を言おうとしてたの? プロデューサー」
P「ん? ああ……」
響「…………」
P「月が綺麗だな、って」
25:
響「! も、もう……またそれ?」
P「ああ……だめか?」
響「さ、流石にちょっと聞き飽きたさー……」
P「……そうか」
響「……うん」
P「…………」
響「…………」
P「…………」
響「…………」
P「…………」
響(……って、え! 何でいきなり黙るの!?)
P「…………」
27:
響「ぷ……プロデューサー?」
P「ん? ああ……ごめん」
響「いや、別に謝らなくてもいいけど……急に黙っちゃうからどうしたのかと思ったぞ」
P「…………」
響「…………」
P「……なあ、響」
響「? 何?」
P「俺達ってさ」
響「うん」
P「アイドルとプロデューサー……だよな」
響「!」
29:
響「…………」
P「…………」
響「それは……そうだろ! 今更何言ってるんさー、プロデューサーってば!」
P「…………」
響「…………」
響(……あれ? 何だろう……なんか……)
響(胸の奥が……痛いぞ……)
P「…………」
31:
P「なあ、響」
響「! な、何?」
P「……響がこうやって俺の家に来るようになったのって、いつからだっけ?」
響「え? えっと……確か、プロデューサーが風邪引いたときにお見舞いに来たのが最初だったから……半年前くらいからかな?」
P「そうか……もう、そんなになるのか」
響「……うん」
P「この半年……色んなことがあったな」
響「…………」
P「響に手料理ご馳走になったり」
響「…………」
P「逆に俺の方が料理を振る舞ったり」
響「…………」
P「二人で鍋したこともあったよな」
響「…………」
32:
おいおい
34:
これでまだ付き合ってねえのかよ
35:
響が幸せになるならそれでいい
37:
P「料理だけじゃない。二人で一緒にゲームしたり、テレビ見たり」
響「…………」
P「それ以外にも――……」
響「……てよ」
P「え?」
響「……やめてよ」
P「響……」
響「何でそんな……昔のことばっかり振り返るんさ!? こんなの……こんなのまるで……」
P「…………」
響「まるで……」
P「…………」
響「うっ……ぐすっ……」
39:
P「響」
響「あ、あれ? 何で自分……」
P「響」
響「あれ? おかしいな。なんでこんな……あれ?」
P「響」
響「ま、まあいいや! ほら、プロデューサーも月見ようよ月! 折角の満月なんだから……」
P「響」
響「嫌だ!」
P「……………」
響「聞きたくない! 絶対に聞きたくないぞ!」
P「……響……」
42:
響「じ、自分は……嫌だからな!」
P「…………」
響「今までみたいに、プロデューサーの家で、一緒にご飯食べたり、テレビ見たり……」
P「…………」
響「これからも、ずっとずっと、そうやって……」
P「……駄目だ」
響「! …………」
P「もう……駄目なんだよ、響」
響「…………」
P「…………」
響「……なん、で……」
P「……………」
45:
響「なんで……なんでダメなんさ!?」
P「……………」
響「自分がアイドルで……プロデューサーがプロデューサーだからか!?」
P「…………そうだ」
響「……!」
P「響がアイドルで、俺がプロデューサーである以上……もう、これ以上はやめた方がいい。いや、やめなければならないんだ」
響「そ、そんな……なんで!? だって自分達、やましいこととか何も……」
P「そんなこと分かってる。でも、第三者から見てそう判断されるかどうかは別の話だ」
響「……えっ」
P「……この前、響が俺の家から出てくるところを見たっていう人から、事務所に電話があったそうだ」
響「!」
P「幸いにも写真とかは撮られてなかったようだし、音無さんが上手く誤魔化してくれたから大事にはならなかったが……」
響「…………」
P「でも、次もそうなるとは限らない」
響「…………」
46:
P「響はこれから、ますますアイドルとして成長し、売れていくだろう」
響「…………」
P「でもそれは同時に、スキャンダル等を狙う輩が増えていくことにもつながる」
響「…………」
P「俺は、響がトップアイドルになる前に……こんな形で、響の大切な夢を壊したくない」
響「…………」
P「だから、響……」
響「……わかったさ」
48:
P「響」
響「プロデューサーの言う通りさ……自分も、アイドルとしての自覚が足りなかったよ」
P「響……」
響「自分、すごく楽しかったんだ。プロデューサーの家で、二人で同じ時間を過ごすのが……」
P「…………」
響「だから、つい、その……プロデューサーの好意に、甘えちゃってた」
P「……ごめんな、響」
響「……ううん。謝らないでよ、プロデューサー」
P「……ああ」
51:
響「まあでも……そういうことなら、今日ここに来る前に言ってほしかったかな……」
P「…………」
響「この家で言われちゃうと、その……やっぱり、い、色々思い出しちゃって……」
P「…………」
響「わ、わかってても、やっぱり、つらい…かな……」
P「…………」
響「……ふっ……うっ、ぐすっ……」
P「…………」
54:
響「うぇええええ……」
P「…………」
響「うぇええ……」
P「…………」
響「うぇえ……えぐっ、ぐすっ……」
P「……響」
響「……な……何?」
P「……辛い思いをさせて、ごめんな」
響「…………」フルフル
P「でも、今日はどうしても……響にここに来てほしかったんだ」
響「…………?」
56:
P「なあ、響」
響「……うん」
P「俺達は、アイドルとプロデューサーだよな」
響「…………うん」
P「だからもう、こういう形で二人で会うのは……今日で、終わりにしよう」
響「………………うん」
P「でもな、響」
響「……?」
P「俺はどうしても、今日ここで……お前に伝えたいことがある」
響「……え……?」
65:
P「ずっと考えてたよ」
響「…………」
P「どうやって伝えたらいいのか、って」
響「…………」
P「直接的な言葉じゃ言えない。それはやっぱり、するべきでないとも思った」
響「…………」
P「……少なくとも、“今”は」
響「…………」
68:
P「……それでずっと考えてたんだが……最近、ふと思い出したんだ」
響「…………?」
P「高校の時、現代文の授業で―――……先生が、雑談交じりに話してくれたこと」
響「…………!」
P「もしかしたら、響も知ってるかもしれないし、知らなかったらまあ……どっかで調べてくれたらいい」
響「ぷ、プロデューサー……!」
P「いいか? 響。今日何回も言ったことだけど……もう一回だけ、言うぞ?」
響「…………うん!」
P「月が綺麗だな、響」
69:
えんだあああああああああいやああああ
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