【ミリマス】33分探偵ナンナン 黄昏島殺人事件back

【ミリマス】33分探偵ナンナン 黄昏島殺人事件


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1:
次回予告なんてなかったので初投稿です。
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【ミリマス】33分探偵ナンナン
2:
ーー目を覚ますと、そこには水と、砂と、空があった。
鼻腔をくすぐる潮の香り。どうやらここは海岸らしい。
「………ここ、どこ?」
声は出た。おそらく生きている。
しかし、この場所に見覚えがない。まさか記憶喪失?
ここはどこ?知らない。私は誰?私はカワイイカワイイ野々原茜ちゃん。
うん、記憶喪失ではない。単に知らない場所なだけだ。
記憶を手繰り寄せる。嵐。高波。転覆する船。離れていく親友の手。
つまるところ、これは……
「…遭難かぁ」
知らない場所なのも道理だ。生きていることが奇跡とさえ言える。
しかし、ここでただじっと甲羅干ししていても文字通り干からびてしまう。
水なら目の前にいくらでもあるが、飲みようがない。
一度濡れて生乾きになった制服と下着しかない今は蒸留装置なんて高尚なものも作れない。
まずは食糧と水分、それに日光や風雨を凌げる拠点が必要だ。
ここが人の住んでいる文化的な場所ならいいんだけど、そんな希望的観測は持たない方がいいだろう。
3:
とりあえず砂浜に大きくSOSを書いて、海の反対側すぐの森に分け入る。
正直このスカートで森はきつい。が陽射しが遮られるのは大きい。
熱中症対策に水分と塩分を補給しろ、とは言うが海水をガブガブ飲むわけにもいかない。
であれば、まずはその根源たる陽射し、熱を遮断することが重要だ。
幸い、頑丈な枯れ枝も拾えた。しばらくはこれで草を払って森の探索を続けよう。
「……ふぅ」
ため息が漏れてしまう。せめて荷物を持っていれば……
と思ったが、よくよく考えればサバイバルグッズなんて持っていなかった。
……ネー
余計なことを考えてしまった。それより周囲に意識を集中して……
…カネー
…人の声?虫か潮の音だと思っていたが、今確かに金、と…
……こんなところで金?とんだ金の亡者だ。
アカネー
!近い!そして金じゃない、私を呼ぶ声だ!
それに、あの声は間違いない、私の親友の…
「茜ちゃんは、ここだぁぁぁぁぁ!!!」
4:
「アカネー!やっぱり生きてたんだネ!!」
「エレナちゃん!」
私の親友、島原エレナが抱きついてくる。
汗だくで泥まみれでくさい。私も同じようなものなのでお互い様か。
「砂浜のSOS書いたのアカネでショ?アレ見て、きっとアカネは近くにいるって…」
別の人が書いたものだとは思わなかったのか。もっとも、それが彼女らしい。
底抜けに楽天家で、妙に勘が鋭い。実際、こうして見つけてもらったわけだ。
「って、それつまりアレ書いて動かないでいたらもっと早く会えたってことかぁ……」
「アハハ、会えたんだから気にしないノ♪」
「そりゃそーだ」
ごもっともである。今は再会を喜べばいい。
「後でカオリ先生とリツコ先生と合流するノ、一緒に行こ?」
「先生達も生きてたんだ!良かったぁ…」
三人寄れば文殊の知恵なんて言葉があるくらいだ。四人いればサバイバルも脱出も楽勝だ。
5:
「先生ー!」
見晴らしのいい高台に3人はいた。担任の桜守歌織先生と、教育実習の秋月律子先生だ。
2人ともかわいい服がボロボロだ。遭難しているんだから当たり前か。
でも海に放り出されたはずなのに律子センセはしっかりメガネはかけていた。すごいな。
……ん?3人?もう1人、あのメイド服?は誰だ?遭難者にしては汚れているように見えない。
「あ、島原さん……と、野々原、さん?」
「えっ!?野々原さん、無事だったのね!?」
「野々原茜、ただいま生還いたしました!」
なんて、敬礼しつつ言ってみたり。茜ちゃんってば生粋のムードメーカーだからね。
「まったくもう、何言ってるのよ…ふふっ」
「でも良かったわ…本当、良かった」
目尻に涙を浮かべてそう言われちゃ茜ちゃんも流石にいつもの調子でいられない。
まあ、そのもうひとつの理由として……
6:
「ところで先生、そのメイドさん?は誰なノ?」
そう、先から一言も発していない謎のメイド。顔立ちは整っているしスタイルもいい。
歳の頃は茜ちゃんとさほど変わらないように見えるけど、眼帯で隠れてない片目はやけに鋭い。
そしてあのメイド服、被服の知識なんてないけどあれは素人目にも上物。秋葉原で客引きをしている人達とは訳が違う。いわゆる「本物」の圧力がある。
……逆に言えば。
原野とも言えるこの海と森の境界において。
その完璧すぎるとも言えるメイドの出で立ちは、異物でしかなかった。
「あ、そうそう、この方は…」
「………」
歌織センセが口を開くと、メイドは片手でそれを制し
「島原様、野々原様ですね。桜守様、秋月様よりお話は伺っております。
 私はこの島、黄昏島を所有する二階堂家に仕えるメイド、北沢志保と申します。
 当二階堂家はあなた方を心より歓迎いたします」
見た印象通りの凛とした声で、恭しく一礼した。
7:
「こちらが二階堂の屋敷となっております」
ここは本当に同じ国なのか?と疑う程度には、大きな屋敷だった。
まあ確かに、この国には櫻井だとか鷹城だとか、規格外の金持ちはいるし、こんな屋敷もテレビで何回か見た覚えはある。
しかしテレビで見るのと実際に目の当たりにするのでは、流石に話が違う。
「?どうなさいましたか?どうぞ、お入りください」
他の3人も同じく呆気に取られていたらしい。北沢さんに不審がられてしまった。
「すみません、今行きます!」
しかし、あのメイド服もそうだけど。
この異物感。どうにかならないものか。
8:
「まあまあまあ、ようこそいらっしゃいました」
そう言って出迎えてくれたのはえらい豪華な服に身を包んだ女性。あのマスクはなんだ。
歳の頃は歌織センセと同じくらいかな?落ち着いた雰囲気の美人さんだ。マスクが気になるけど。
「私、この屋敷の主の二階堂千鶴と申しますわ。
 志保から話は聞きました。昨日の嵐で難破してしまったそうで…
 どうぞ、ここが自分の家だと思っておくつろぎになってくださいましね」
原野の島に眼帯メイドと屋敷と謎のマスク。異物感が更に増した。特にマスク。
けど、そう言って微笑む姿は悪い人には見えない。変なマスクだけど。
9:
「桜守歌織です。この場を代表して、お礼を申し上げたく存じます。
 ですが、救援が来るまでとなると長く滞在してしまうかと思うのですが…よろしいのですか?」
「あぁ、その事でしたら…すぐにでも問題はなくなると思いますので、ご心配なく。ふふ…」
「ひょっとしてもう本土と連絡取ってくれたのかしら…?」
律子センセが何やらブツブツ言っている。でもこの島、外と通信できるようには見えないんだけど。
「まずはお身体を休められるとよろしいかと。志保」
「それでは皆様、お部屋にご案内いたします。後程、浴場とお着替の案内もさせていただきます」
「今宵は宴にいたしましょうか。それでは皆様、また後程」
そう言うと怪しいマスクの二階堂さんは姿を消した。
「宴だってさ……仮面舞踏会でもやるのかね」
「プフーッ」
神妙な顔をしてボケたらエレナちゃんが吹いた。と同時に律子センセに殴られた。いたい。
10:
「アカネのサービスシーンがあると思った?ザンネン、ソレは残像だヨ!」
風呂上がりにこの子はいきなり何を言ってるんだ。
まあわけのわからないエレナちゃんは放っておくとして。
「いやぁ、いい湯だったねぇ…茜ちゃん溶けちゃうかと思ったよ」
「エ!アカネ、気付いてなかったの…?」
「えっ!?えっ、何が!?」
エレナちゃんが急に真顔になる。声もマジのヤツだ。え、恐い、何があったの?
「アカネ、溶けてたヨ…?もう身長も8cmくらい縮んで…」
「そんな!身長142cmで自称カワイイってどこかで聞いた設定…ってなんでやねーん!」
「テヘッ」
ボケか!びっくりしたよ本当に!急に真顔でボケられると心臓に悪い!
まあ茜ちゃんは縮んでも伸びてもカワイイけどね!
「まったく…しっかしこの服もいいヤツだよねこれ絶対」
「だよネー、肌触りが違うモン」
やはりこんな屋敷を建てるくらいだから相当な金持ちなんだろう。見た目に違わない。
でも二階堂なんて財閥聞いた覚えがないんだけど、ひょっとして裏世界の住人だったりして。
『ご歓談中失礼いたします、島原様、野々原様。お食事の支度が整いました、食堂までご案内いたします』
そんなアホなことを考えていると、扉の外から北沢さんの声がする。
今の茜ちゃんは、お腹がペコちゃんだ。
11:
「それでは皆様の無事を祝して。乾杯!」
気味のわるいマスクを輝かせた二階堂さんの乾杯の音頭で宴席が始まった。
見た事のない料理が立ち並ぶ。味の想像はまったくつかないけど、美味しそうではある。
「ところでチヅルさん、その娘はダレ?」
エレナちゃんの疑問は尤もで、そこには妙におデコの存在感が強い女の子。
何となく気の強そうな顔だけど、先からずっと押し黙っている。
「これはたくの娘でして…これ、挨拶なさい」
「………伊織」
促されると、ただ短く、いおり、とだけ言葉を発した。おそらく名前だろう。
思った通り気の強そうな声だ。
「これ!……ほほほ、すみません、たくの娘は人見知りが激しいもので」
人見知りというか、こんな島に住んでたらそりゃ人とは会わないだろうなぁ、とは口には出さない。
結局伊織ちゃんはそのまま一言も発さず黙々と料理を食べていた。
12:
料理はどれも美味しかった。どうやら野菜は島で菜園を拓いているらしく、野菜そのものの味を活かした無農薬のオーガニックな味わいだ。
自家製らしいトマトジュースは舌触りがトロッとしている。妙に鉄分が多かったような気がしないでもないが。
しかし何よりこの肉である。牛でも豚でも鶏でも、勿論魚でもない、今までに食べた事のない肉だ。
わりと大きい肉塊もあるからカエル肉みたいなゲテモノというわけでもないだろう。何の肉だろう?
「ンー、このお肉不思議な味だネー。何のお肉?」
歌織センセと律子センセもお肉を食べて怪訝な顔をしている中、エレナちゃんが直球に尋ねた。こういう時物怖じしないって強いなぁ。
しかし、そのエレナちゃんの一言で、部屋の温度が下がった。ような気がする。
屋敷の住人達がピクッと一瞬動きを止めてから、二階堂さんがゆっくり口を開く。
「……ほほ、このような場所ですから特別に取り寄せているのですわ。お口に合いませんでしたか?」
「ううん、そんなコトないヨー」
その後は特に誰も何を発するでもなく、宴席はお開きになった。
あの後、伊織ちゃんがずっと軽く震えていたのは、気のせいではないと思う。
13:
「何かご用がございましたら枕元のハンドベルを。直ちに伺います。それと、夜間は屋敷の外に出られることがないよう、お願いいたします」
「わざわざこんな時間に外には出ないよー」
「それではおやすみなさいませ、野々原様」
「はーい」
部屋の前で就寝前のそんな問答。ハンドベル鳴らすとすぐ来るってそんな漫画みたいな事あるのかな。いや、試さないけど。
ちなみにエレナちゃんはと言うと部屋に戻ってベッドに直行して3秒で寝た。
「もう食べられないヨー」
お約束すぎる寝言まで言っている。そりゃあんだけ食べたらもう食べられないよ。
さて、茜ちゃんも寝ようかね…と思ってふと窓の外を見ると。
中庭…のような場所で誰かが座り込んでいるのが見える。
「あれは……伊織ちゃんかな?」
あの小柄な体躯と長い髪は伊織ちゃんのものだろう。
彼女はじっと座り込んでいたかと思うと、ふと立ち上がってどこかへ行ってしまった。
座り込んでいたところをよく見てみると、何やら木の枝のようなものが差してあるように見える。
「…何だろアレ、ペットのお墓?」
金魚やカブトムシが死んでしまった時の墓標のようにも見えるソレは、月明かりを受けて細い影を落としていた。
14:
翌朝。エレナちゃんが身体を動かす音で目を覚ます。
あくびをしながら何をしているのか訊いてみると
「ラジオ体操だヨー!」
大嘘である。どう見てもサンバでしかない。
しかしエレナちゃん本人はこれをラジオ体操だと信じ切っているらしい。何故だ。
ひとしきり自称ラジオ体操に付き合って目が覚めた。
律子センセはもう起きているだろうけど、確か歌織センセは朝がめちゃくちゃ弱いはず。
「歌織センセ、まだ起きてないかもだし起こしに行こっか」
「そうだネー」
教師を起こすのも生徒の務めである。そうかなぁ?
15:
結論から言うと、案の定歌織センセは爆睡中だった。
「むにゃむにゃ…もう食べられないよぉ」
既視感がすごい。具体的には8時間くらい前にも見た。
「まあ歌織センセは予想通りとして……」
「リツコ先生いないネ?」
そう、律子センセがいないのである。
トイレにでも行っているのかと思ったが、歌織センセを起こす10分間戻ってくる様子はない。
まさか屋敷の中で迷ったのでは、とも考えたがしっかりした律子センセに限って考えにくい。
「ふわぁ…まま…?あと5分ー…」
「もー、カオリ先生ー、朝だヨー、起きなヨー」
寝ぼけてる歌織センセかわいいな。なにこのかわいい生き物。茜ちゃんの担任だわ。
16:
歌織センセが起きたので律子センセを探しに出る。
とは言え、別にアテがあるわけではない。虱潰しに探すには流石に骨が折れる広さである。
「とりあえず北沢さん辺りに話を聞いてみましょうか」
「この時間なら朝ご飯の支度してそうだネ」
北沢さんの姿を求めてひとまず厨房へ向かう。
厨房の中では何かの音がしている。おそらく北沢さんだろう。
「おはようございます、北沢さん、ちょっとお聞きしたいこと……が……」
歌織センセの顔が引き攣った。原因がわからない。
まさか厨房の中にいたのは冒涜的な名状しがたいナニカだったとか、それは流石に笑えない。
「皆様。おはようございます、朝食の支度はじき済みますので、しばしお待ちを」
ほら、北沢さんじゃないか。歌織センセは何で引き攣ってるのさ。
片目を覆う眼帯に、切れ長の目。長い黒髪。
片手には血みどろの刃物、上質なメイド服と返り血。
机の上には血まみれのナニカの肉塊。
少し離れたところには、ナニカの血がついた、上等な服と、見覚えのある、メガネ。
ほら、どこからどう見たって。
あのメイドが。律子先生を。解体している現場じゃないか。
17:
「ひっ……!」
「……!」
「?どうされましたか?」
まずい。これはまずい。いくら私が一般JKより多少死体を見慣れているからって身内の解体現場を見て正気でいられるはずがない。
でも、今は、そんなことよりも。探偵の相棒としての経験が、これ以上ないくらい警鐘を鳴らしている。
逃げなければ。逃げなければ、殺られる…!
「…っ!逃げるよ!!」
言うが早いか、へたり込んだ2人を無理矢理引き起こし走り出した。
この島に逃げ場なんてあるのかは分からない。が、むざむざ殺される為に生き延びたわけじゃない。そう信じたい。
少しでも生き延びる道があるのなら、それに賭けるしかないのだ。
「皆様、あまり走られては危険です」
振り返るとメイドが平然とした顔で追いかけてくる。アレから逃げ果せなければいけないのか。
軽く絶望に襲われるけどそんな事で諦める私ではない。茜ちゃんはしぶといのだ!
18:
1時間は走り続けたか。森のかなり深いところまで来たらしい。
周囲にメイドの気配はない。とりあえずひと息つけるだろうか。
「律子ちゃん…どうして、あんな……」
歌織先生は青ざめた顔でガタガタ震えている。無理もない。私だってできたらそうしたい。
そういえば、さっきから一言も発していないエレナちゃんは…
「………………うっ!ぅぇ……」
しばらく呆けていたと思ったら、急に吐いた。人体が解体されていたのだから当然だ。
…ふと、違和感を覚える。人体を解体?何故?細かく刻んで隠す為?
人体には硬く強い骨がある。そう容易い話じゃない。なら何故。そもそも解体現場が厨房だった理由。
《このお肉不思議な味だネー。何のお肉?》
《特別に取り寄せているのですわ。お口に合いませんでしたか?》
《すぐにでも問題はなくなると思いますので、ご心配なく》
《朝食の支度はじき済みますので、しばしお待ちを》
19:
繋がった。
・・・・・・・・
繋がってしまった。最悪のシナリオに。
カニバリズム。食人習慣。人肉を食するという、現代社会における禁断の行為。
二階堂は食人の習慣を持っていた。私達のような遭難者を保護し、殺し、解体し、食べていたのだ。
おそらくは、昨日私たちが食べた肉も、そう。アレは、人の……
「…ぅっ…」
吐き気がこみ上げる。踏みとどまる。吐いてしまえば楽だが、体力を著しく失う。
今体力を失うことだけは避けたい。3人の中で私が一番理性を保っているのだから。私が崩れてしまえばそれは終わりを意味する。
「はぁ、はぁ……っく…歌織センセ、エレナちゃん、とりあえずここから離れよう、ここもいつ見つかるか…」
「こんなところにいらっしゃいましたか。探しましたよ」
「っ!?」
赤黒い血で鈍く輝く刃物を携えたメイドがそこにいた。
ここから2人を連れて走り出す余力は、ない。
20:
「…野々原さん!島原さん!ここは私が何とかします!逃げて!」
歌織先生がメイドの前に仁王立ちになる。
「でもそれじゃ先生が!」
「…大人っていうのはね、その身を犠牲にして子供を未来へ羽ばたかせるのが役目なの。
 あなた達はこんなところで命を散らしてはいけないわ!必ず、生きて!生き延びて!」
「でも…!」
たとえ1%にも満たない生の道かもしれない。それでも、歌織先生は、その身を張って道を示した。
その覚悟を、穢してはいけない。
「エレナちゃん。……行こう」
「アカネ!?先生を見殺しにする気!?」
「そうじゃない。歌織先生の覚悟を…無駄にしない為には、これしかないんだ」
「そんな……」
「ふふ。野々原さん、満点です」
「後で茜ちゃんをナデナデするといいよセンセ!」
迫るメイドに、しかし私は振り返らない。
絶対に、生き延びてやるんだ…!
21:
「そこまでです!!」
誰かの声がした。昨日今日聞いた覚えはないけど、どことなく聞き覚えのある…
「警視庁です!殺人未遂の現行犯であなたを拘束します!!」
「な、七尾警部!?」
いつも探偵事務所に事件を持ち込んでくる七尾百合子警部がそこにいた。
どうしてここに、と聞くより先に、助かった、という安堵感から、私は意識を手放してしまった。
22:
んん…誰かに頭を撫でられている気がする。それにこのふかふかな感じ……
「…はっ!?」
生きてる。生き延びた。あの凶刃から逃げ果せた。助かったのだ。でもどうして?
そうだ、何故か七尾警部がいて、それで…
「どうやらご無事なようですね、野々原さん」
「…つむりん!?」
何故かそこに相棒の探偵、白石紬がいた。撫でてくれていたらしい。わかってるね。そうじゃない。
なんでここに。いやそもそもここはどこだ。ベッド?まさか二階堂の屋敷?
「あの後野々原さんが気絶したので、拘束した北沢さんに案内していただき二階堂さんのお屋敷で休ませていただいたところです」
エスパーか。説明ありがとう。
「や、それはそれとしてつむりんはどうしてここに?こんな連絡手段もない島…」
23:
紬「?定期的に連絡船出てますよここ」
茜「孤島ちゃうんかーい!」
紬「ちなみに携帯の電波もバッチリ入ります。ほら」
茜「外界と隔絶した空間じゃなかったのここ!」
紬「そんなの現代日本じゃ不便極まりないですよ」
茜「そりゃそうだけど!というか空気が一気にユルくなった気がするけど気のせいかな!?」
紬「何の話かわかりませんね。それより、目が覚めたのなら食堂へ行きましょう。今回の事件を解決しなくてはなりません」
茜「事件を解決って、そんなの、あのメイドが律子先生を…!」
紬「この事件、そんな簡単には終わりませんよ…行きましょう」
24:
ーー食堂
百合子「それでは署までご同行を願います」
志保「全く身に覚えがないのですが…」
紬「警部。事情聴取は終わりましたか」
百合子「ええ。北沢志保本人と主人の二階堂千鶴は否認していますが、秋月律子殺しの証言と状況証拠がこうも揃っては、とりあえず重要参考人として連行せざるを得ないですからね」
紬「…果たして本当にそうでしょうか?」
茜「出たよ」
百合子「しかしですね探偵…」
紬「こんなところで終わらせるわけにはいきません。この簡単な事件、うちが「ふぅー、すみませんシャワーありがとうございました」
紬「!?」
茜「り、律子センセ!?生きてたの!?」
律子「へっ?何言ってるのよ野々原さん、遭難したのは昨日の話よ?何か混乱してる?」
百合子「…どういうことかご説明願えますか?」
志保「だから身に覚えがないと言ったのに…」
25:
百合子「えー、つまりまとめると。朝早く起きてしまった秋月律子さんは、北沢志保さんが朝食の材料調達に行くところに出会して、折角なので山菜採りくらいは手伝いたいと申し出た」
律子「そうです」
百合子「朝なので危険は少ないだろうと判断した志保さんは同行を許可した」
志保「ええ」
百合子「そこで熊に遭遇、律子さんが襲われる。これをすんでのところで志保さんのナイフが熊の眉間を貫き、血飛沫をあげて熊が死亡」
志保「はい」
百合子「返り血を浴びてしまったので律子さんは使用人用のシャワールームを借りる」
律子「浴場沸いてなかったですからね」
百合子「そして仕留めた熊を解体しているところに桜守歌織さん、島原エレナさん、野々原茜さんがやってきて、血のついた律子さんの衣類と返り血を落としていなかった志保さんを見て勘違い、と」
百合子「……事件性、ないですね?」
茜「…なかったんだねぇ…」
紬「果たしてそうでしょうか?」
茜「えっまた?」
26:
紬「この一見事件性のない話、しかしそこには裏に周到に張り巡らされた事件があったのです」
百合子「流石に被害者がいないのに事件性を持たせるのは無理がありますよ探偵」
紬「いいんですか?あと8分もあるんですよ!こんなところでは終われません!」
茜「8分くらいエピローグでよくないかなあ」
紬「この簡単な事件!うちが33分持たせたるげん!!」
27:
BGM
https://www.youtube.com/watch?v=0u46idafQFM
ナレーター「普通にやればたった5分で終わる超簡単な事件を、ミリシタだいたい11曲分の33分いっぱいまで何とか持たせる名探偵。その名も33分探偵、白石紬」
ナレーター「次々と繰り出される推理にガンガン増える一方の容疑者。その果てに真犯人は見つかるのか見つからないのか」
ナレーター「ただいま26分です。」
28:
紬「この事件の肝。それはこの二階堂家に蔓延るカニバリズム、食人の習慣にあったのです」
千鶴「大抵何でも食べますが流石に人肉は食べたことありませんわね…」
紬「これを見てもシラを切れますか?中谷刑事!」
中谷育「はーい!証拠V流すねー」
https://www.youtube.com/watch?v=idvKPHzCs5Y
https://www.youtube.com/watch?v=QrpWGVAjXvM
千鶴「……えーと、何ですのこれ?」
紬「ご覧の通りミリシタのMVです。そしてこの2曲にはとある共通点があります」
百合子「はっ…吸血鬼!」
紬「そう。そして見てください、このMVのオリジナルメンバー。二階堂さん、そして娘の伊織さん。あなたがたにソックリですね?」
千鶴「ま、まぁ……そう、かしら?」
紬「つまり、あなたがたは吸血鬼!人肉が欲しくて欲しくて仕方がないのです!」
伊織「……ひとつ、いいかしら?」
紬「自白ですね」
伊織「仮に私達が吸血鬼だとして、吸血鬼に必要なのは血よ?人肉を貪るのは食人鬼、山姥とかグールとかの領分でしょ」
紬「………」キッ
伊織「いや睨まれてもね」
29:
紬「別の視点から見て行きましょう。犯行に使われた凶器についてですが」
律子「そもそも何もされてないのに凶器も何もないんだけど」
茜「つむりんの発言の方がよほど狂気的だよ」
紬「殺人において問題となるのは遺体と凶器の処理。遺体は食べてしまったので問題ありませんが、果たして凶器はどうしたのか」
伊織「食べてないっつってんでしょーが」
歌織「血のついた牛刀そのままにしてる時点で処理も何もなくないかしら?」
紬「犯人はこれも食べてしまう事で処理を済ませた。そう、昨夜の食事でね!」
千鶴「凶器を…食べた?それはどういう…」
エレナ「ハッ…あの変わったお肉、もしかして…!」
紬「冷凍しておいたヤリイカか何かで凶行の後調理して食べてしまえばそう!凶器は残らない!これは即ち厨房を預かる北沢志保さん、あなたが犯人だ!」
百合子「相棒S2第3話、殺人晩餐会ですね!」
茜「そういうの言っちゃダメだよ警部」
志保「昨日はカツオくらいしか冷凍していなかったのですが…」
紬「痩せたカツオなら刺さるよねぇ!!」
茜「無理やり原作ネタ入れると大体とっ散らかるからやめろってあれほど言ったよね!」
30:
紬「なるほろなるほろ……そういえば伊織さん」
伊織「何よ。また吸血鬼がどうこう言うんじゃないでしょうね」
紬「あなた、昨夜の食事の席で寒くもないのにカタカタ震えていたそうですね」
伊織「!?」
紬「それに、深夜中庭にある墓標のようなものに手を合わせていた」
伊織「な、何でそれを…!」
紬「さっき野々原さんが気絶している時うわ言で」
茜「茜ちゃんそんな説明くさいうわ言喋ってたの!?マジで!?」
伊織「ふぅん、そう……それで?それが何なの?」
紬「いえ単純に気になったので教えてほしいなって」
茜「聞きたいだけかい!」
伊織「事件…事件?に関係ないなら言う必然性ないと思うんだけど…まあいいわ、教えてあげる」
31:
伊織「まずあの墓標はね…私の大切な、とても大切な友達のお墓なの」
千鶴「伊織…」
伊織「いいの。友達のお墓に手を合わせる、いたって自然な行動よね?」
百合子「そう…ですね。心中お察しします」
茜「じゃあ食事の席で震えてたのは…?」
伊織「ああ、アレね。あの時食卓に出てた肉、何の肉かわかる?」
エレナ「普通にスーパーとかで買えるお肉じゃナイよネ?」
伊織「猪よ。猪の肉。ぼたん肉なんて言われてるわね。ちなみに売ってるところには普通に売ってるわよ」
歌織「猪肉は流石にあまり食べた覚えないですね…」
伊織「その猪が!私の友達を!大事なうさちゃんを…!」
紬「…うさちゃん?ひょっとして友達とは、ウサギだったのですか?」
伊織「そうよ。小さい頃から大事にしてたウサギのぬいぐるみのうさちゃん」
律子「…へ?ぬいぐるみ?」
志保「お嬢様…ですからあの程度でしたら私が繕います、と…」
伊織「無理よ!首はもげるわ腕はちぎれるわ、よだれと泥でベットベトだわ、繕ってもまともになるワケがないわ!」
紬「えー、つまり…特に何もなかった?」
伊織「私のうさちゃんが酷い目に遭ったっていうのに何もなかったとは何よ!」
紬「あー、いえ、その、すみませんでした…」
32:
紬「あー、今回とは特に関係のない悲しい事件でしたが…今回の事件、全貌が見えました」
百合子「それでは探偵、真相は…!」
紬「はい…被害者と思われた秋月さんは特に被害を被っておらず…」
紬「問題とされる食人行為はこの二階堂家では特に行われておらず…」
紬「野生動物による死亡事故は特に発生せず…」
紬「つまり、この事件は!」
紬「特に事件性は!」
紬「ない!!!」
茜「うん」
茜「5分前には終わってた話だね」
33:
ーー連絡船
茜「はー、ようやく帰れるよ、遭難とかまったくとんだ旅行になったもんだよね」
エレナ「忘れられない思い出にはなったヨー!いいか悪いかは別として」
歌織「白石さんも一緒に行けたら良かったんだけど…って、遭難したんだから行かなくて良かったのよね」
紬「迷い猫の捜索依頼が入ってしまいましたからね、仕方ありません」
律子「それにしても高校生探偵なんて、そんな漫画かゲームじゃあるまいし…」
茜「律子センセ、あれ、あれ」
律子「どれ」
百合子「育ちゃん、本庁に報告済んだ?」
育「ばっちり!」
茜「野暮ってもんだよ」
律子「………そうね」
34:
北上麗華「えーおせんにキャラメル、お弁当いかぁっすか?」
茜「船でもこういうのあるんだ…」
紬「すみません、お茶をひとつ」
麗華「毎度ー!他に何かいりますかー?」
紬「いえ特に」
麗華「えっ…」
紬「………」っプリン
茜「あっそれ茜ちゃんのおやつ!」
麗華「『次やるとしてもネタが思いつかないからむりくぼですけど』って話だよ」モグモグ
紬「なるほろ、ありがとうございました」
茜「茜ちゃんのプリン……」
百合子「賑やかですね探偵、何の話をしていたんですか?」
茜「聞いてよ警部、つむりんが茜ちゃんのプリンを…そういえば結局何でつむりん達はあの島にいたのさ?」
紬「説明していませんでしたか。まぁ……なんやかんやあったのです」
茜「いや何の説明にもなってないし!なんやかんやって何さ」
紬「なんやかんやですか?なんやかんやは……」
紬「なんやかんやです!!」
35:
ED
https://www.youtube.com/watch?v=1xTKpLnY9b0
出演
白石 紬 白石 紬
野々原 茜 野々原 茜
島原 エレナ 島原 エレナ
桜守 歌織 桜守 歌織
二階堂 千鶴 二階堂 千鶴
北沢 志保 北沢 志保
水瀬 伊織 秋月 律子
七尾 百合子 中谷 育 北上 麗華
高木 順二朗(声の出演)
36:
矢吹可奈「今日も練習?可奈は優秀?♪」
佐竹美奈子「すごい…この和三盆、並の和三盆じゃないよ…!」
篠宮可憐「私、人よりちょっと、その…霊感、強くて…」
真壁瑞希「この学園には怨霊が棲み着いています。その正体は……」
北上麗華「 ^o^ わ た し で す 」
白石紬「………」っプリン
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【画像】世界最大の尿路結石が〇〇だったwwwwwwww

【驚愕】バブル世代が凄すぎるwwww ワイ(30歳)「転職決まったで」親父「年収は?」ワイ「550万円」→親父の感想がこちらwwww

【モヤモヤ】職場に凄く可愛い女性が中途で入ってきた。身嗜みに厳しい職場でみんな黒髪で薄メイクだが、その子は染髪していてマツエク有り→なぜ彼女が採用されたのかというと…

脳内麻薬

自分の故郷に懐かしいって感情が全くわかない人っている??

【愕然】社食が高いくせに不味いから親の弁当を持ってきたらマザコンかよって言われたwwww意味不明すぎる…

義兄夫婦が結婚式費用と家を建てる際に援助を受けたのにまだ強請る。守銭奴すぎてどんびき

【画像】こういう「誰かの死とかを遠くで感じ取る」的なシーンが好きなんだが

【エロ注意】お金持ちの性奴隷になる10代少女たち。やらされてる事がヤバい・・・

【悲報】30代になって、太ったり痩せたりを繰り返した結果・・・お前らマジで体重はベストをキープし続けろよ。。。

【池袋暴走事故】マジでクソ老害だな

うちのいぬが昨日行方不明になった結果www

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