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オオカミを導入してから25年。イエローストーン公園の生態系が安定したことを確認(アメリカ)
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オオカミを導入してから25年。イエローストーン公園の生態系が安定したことを確認(アメリカ)
2020年07月17日 ι コメント(27) ι 自然・廃墟・宇宙 ι 動物・鳥類 ι #
オオカミが生態系に奇跡をもたらす/iStock
アメリカの広大な自然が残るイエローストーン国立公園に41頭のオオカミの群れを招き入れて今年で25年となった。
かつて、ここには多くのオオカミが暮らしていたのだが、1926年、野生のオオカミが殺されたという公式記録を最後に、完全に姿を消してしまったのだ。
そこで、乱れてしまった生態系を回復する目的で、1995年にカナダから狼たちが連れてこられた。「20世紀最大の実験」と呼ばれるこの試みは順調に進み、20年後、「生態系が本来の姿に戻り始めた」ことがわかった。
そして25年の月日がたった。新しい研究によれば、オオカミたちは公園内の生態系を安定させている役目を果たしているそうで、ヘラジカを食い尽くすようなことはなく、むしろ弱った個体や病気の個体を間引いてくれるために、ヘラジカの群れはこれまでよりも健全になっているそうだ。
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オオカミは気候の変化に合わせて捕食対象を変えている
雨や雪が普段どおりの年なら、オオカミが主に狙うのは、一番楽に狩ることができる老いたメスのヘラジカだ。
しかし最近の研究では、雨・雪が少なく、乾燥して草や低木があまり繁殖しない年の場合、狩りの標的はオスに変わることが明らかになっている。
がっしりとした体つきのオスのヘラジカは、秋になると食べることよりも、メスを巡って雄叫びをあげたり、互いに突進したりすることに熱中する。そのせいでエネルギーを消費し、季節が冬に向かうにつれて弱ってくる。乾燥した季節ともなれば、なおのことだ。
賢く、適応力の高い捕食者として、オオカミはこうしたことを学習している。だから体重200キロのメスではなく、340キロもあるが栄養不足で消耗したオスを殺す。
エサの乏しい年にオスが狙われると、その分だけメスが子供を産むチャンスは増える。そのためにヘラジカの生息数は維持される。
ヘラジカ / Pixabay
生態系のバランスを保つのに重要な役割を果たすオオカミ
『Journal of Animal Ecology』によれば、より重要なのは、今イエローストーン公園内に300〜350頭いるとされるオオカミたちが、ヘラジカの群れが変わりやすい気候の脅威を切り抜けられるよう手助けしていることだという。
たとえば、ヘラジカの生息数がやたらと増減したりせず、一定に保たれるために、頻繁に発生する干ばつ(温暖化の影響の1つでもある)に耐えやすくなっている。
「将来的にはかなり予測が難しくなるので、(大量死の備えとして)緩衝となるものが欲しいところです」と語るイエローストーン国立公園の野生生物学者ダグ・スミス氏は、ヘラジカの群れのバランスをとってくれるオオカミはその役割を果たすことができると解説する。
狩猟や管理政策を通じて「人間もヘラジカの数を安定させる手助けができますが、オオカミとまったく同じようにはいきません」と、同氏は付け加える。
オオカミ/iStock
ウィルマーズ氏とスミス氏らは、イエローストーンで20年以上にわたって1000頭を超えるヘラジカの死骸を分析してきた。
毎年、冬の初めと終わりの1か月、3つのオオカミの群れ(パック)を追跡しながら、彼らが仕留めたヘラジカを見つけ、その年齢や性別を記録。さらに骨髄を抽出して、ヘラジカが死んだときの健康状態を調べた。
また衛星データから、雪解け水や降雨の量によって変化する、ヘラジカが食べる植物の各年の量を割り出した。
こうした調査から判明した、オオカミは植物が少ない年はヘラジカのオスを狙うという事実や、気候の変化にあわせて彼らが行動を変化させるという理解は、オオカミを管理・保全する上でとても大切なことだ。
オオカミ/iStock
オオカミを絶滅させたことによる弊害
1世紀以上に渡り迫害されてきたオオカミの生息数は未だ再建の途上にある。
20世紀以前、イエローストーンに生息していたバイソン、ヘラジカ、ミュールジカ、プロングホーン、ビッグホーンといった動物の数はしっかりとしたもので、それらと共にハイイログマ、アメリカグマ、オオカミ、ピューマといった肉食獣がたくさんいた。
しかし政府の政策によって、肉食動物とバイソンは駆除の対象となる。1926年にはイエローストーン最後のオオカミの群れが殺された。
やがてアメリカ本土における昔からの生息域のほとんどでも駆逐され、オオカミは五大湖周辺にわずかに残るのみとなってしまった。
オオカミがいなくなり、クマやピューマも大きく数を減らすと、ヘラジカが爆発的に増えた。1932〜68年にかけて、国立公園局とモンタナ州は北イエローストーンから7万頭のヘラジカを取り除いた。駆除するか、ヘラジカがいなくなった地域に移動させたのだ。
1968年にヘラジカの駆除が停止されると、今度は5000頭から2万頭近くにまで増加した。それからの数十年、ヘラジカの生息数は毎年の気候の変化にあわせて、激増と激減を繰り返すことになる。
厳冬の年には、飢えて死んだ無数のヘラジカの死体が転がった。
ヘラジカ / Pixabay
オオカミの再導入で生態系が生き返る
イエローストーン国立公園にオオカミ41頭が再導入されたのは、1995〜1997年のことだ。ハイイログマやピューマも保護され、数を増やした。ヘラジカは数を減らしたが、やがては激増と激減のサイクルが落ち着きを見せるようになった。
たとえば、2010年から2011年にかけては雪深い厳冬だった。にもかかわらず、似たような冬になればヘラジカが大量に餓死していただろう1980年代・90年代に比べると、ヘラジカは比較的よくエサを食べていた。
それだけではない。川の形が変わり、緑豊かな森がよみがえったのだ。
「生態系はヘラジカが餓死していたときよりも、今のようなあり方にうまく進化・適応しています。ヘラジカが餓死するということは、彼らが財産を食い潰しているということですから」とスミス氏。
オオカミの群れ / Pixabay
アメリカ各地でオオカミ再導入が検討されている
イエローストーンでの成功事例を見て、今年11月、コロラド州でもオオカミを再導入するべきかどうかの是非を問う投票が行われるそうだ。
投票が近づいている今、研究者は25年間のデータを用いて、オオカミをコロラド州をはじめとする各地に再導入した場合にどのような変化があるのか予測しようとしている。
中には、タイリクオオカミの亜種であるメキシコオオカミを元々彼らが生息していたニューメキシコ州やアリゾナ州にもっと導入しようという意見もある。
現時点では、答えよりも疑問の方が多い。イエローストーンは広大で、それゆえに動物もまばらだが、コロラド州はそうではない。
つまり、どこにどれだけオオカミを導入する余地があり、その存在にどれだけ人間が耐えられるのかといった点において、潜在的に難題をはらんでいるということだと、コロラド大学ボルダー校の環境学者ジョアンナ・ランバート氏は話す。
コロラド州当局は、オオカミを「実験的な個体数」として管理するつもりだ。イエローストーンに再導入され、「絶滅危惧種」として管理されているオオカミたちとは違う。
後者は、万が一イエローストーン国立公園から迷い出てしまったとしても、殺すことは概ね禁止されている。コロラド州ではそうした規制は設けられないだろうと思われる。
しかしイエローストーンからはっきり分かることはある。「オオカミは間違いなくコロラド州にたくさん生息するヘラジカを食べるでしょう」とランバート氏。再導入が実現すれば、同州のヘラジカは「間引かれ、より健全になる」ことだろう。
ここ12年、イエローストーン国立公園内のヘラジカの生息数は6000〜8000頭の範囲で安定しており、気候の変化によって極端に増加したり、その反対に激減したりするようなことにはなっていない。
How climate impacts the composition of wolf‐killed elk in northern Yellowstone National Park - Wilmers - 2020 - Journal of Animal Ecology - Wiley Online Library
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1365-2656.13200References:Wolves Have Stabilised Yellowstone’s Ecosystem 25 Years After They Were Reintroduced/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1
1. 匿名処理班
- 2020年07月17日 09:12
- ID:ySkRFqS40 #
狼は人を襲うことはほとんどなく、日本でもシカ駆除のために導入しようという話も一部ある
2
2. 匿名処理班
- 2020年07月17日 09:32
- ID:FZ7DLJZ20 #
狼でさえ自分たちが生きていけるよう生態系を守っているのに人間はひとつの種が絶滅するまでなにも考えず狩りつくし自然を破壊する。人間はこんな風に自然の摂理に逆らって森を破壊してあらゆる動物を殺してきたのに目の前の野鳥一匹助けちゃいけない、自然に任せろ、なんておかしいよね。
3
3. 匿名処理班
- 2020年07月17日 09:35
- ID:O8PeumbJ0 #
サムネの三密モフモフ、どれが誰の脚なの。
4
4. 匿名処理班
- 2020年07月17日 09:39
- ID:g2kO.5sN0 #
餓死することはだめで狼に噛み殺されることはOKなの?
それもまた人間の都合でしかないな
5
5. 匿名処理班
- 2020年07月17日 09:51
- ID:p6vgCdtp0 #
やっぱり多すぎるのもだめっていうことなんだろうな。
6
6. 匿名処理班
- 2020年07月17日 09:57
- ID:ZLjV0.Pm0 #
へー!いいね。ニホンオオカミもいなくなってしまったものね。
イノシシやキョンなんかの駆除もしてくれるのかな
7
7. 匿名処理班
- 2020年07月17日 10:11
- ID:ui3eGgu.0 #
人間も、そのサイクルの中に組み込まれるべき動物だったのかな…
ヘラジカの数が増え、資源を食い尽くすことで飢えで苦しみ餓死する個体がいるように
人間の数も増え、資源を食い尽くしている現状に
繁栄だけを栄華とするのではなく個体数削減対策も組み込まないといけないのかもしれないですね。
その辺にライオンを放つとか。
8
8. 匿名処理班
- 2020年07月17日 10:14
- ID:VjJkdenY0 #
猪害や猿害に悩んでいる地方に解き放ってみたい。
9
9. 匿名処理班
- 2020年07月17日 10:19
- ID:xFgoavU60 #
食物連鎖が壊れたら良いことはないよね
10
10. 匿名処理班
- 2020年07月17日 10:28
- ID:MmITi9ix0 #
人間て愚かな生き物だね。
11
11. 匿名処理班
- 2020年07月17日 10:31
- ID:03cts.O80 #
オオカミが生態系に影響がある事があるなんて初めて知った
やはりカラパイアはタメになります
関係無い話ですけど一枚目のサムネがパッと見でケルベロス
三枚目がオルトロスに見えたw
12
12. 匿名処理班
- 2020年07月17日 10:45
- ID:1ZswGW8x0 #
日本における狼導入はクマでさえ人里に出てくるほど野生動物と人間の生活圏が隣接してるからちょっと難しいかな。
攻撃力の高い野犬みたいなもんだから、人間の子供が狙われる可能性の方が高い。
13
13. 匿名処理班
- 2020年07月17日 10:45
- ID:xSJfaW5y0 #
珍しく納得出来る介入例ですね
矢っ張り主が居ないと駄目なんだ
14
14. 匿名処理班
- 2020年07月17日 10:51
- ID:ebTM7wt80 #
正直人間にも言える事だと思う
老人が増えすぎた
15
15. 匿名処理班
- 2020年07月17日 10:53
- ID:rLk8JhDR0 #
これはきちんと管理されている国立公園内でのこと
北海道でも同様の管理が出来れば導入は可能だろうけど
本州では難しそうだね
16
16. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:01
- ID:iRvkw7jS0 #
遺伝的多様性はカナダから来た以上昔のままとは言えないけど食物網が安定したのは大きいね
願わくば人間が過ちを繰り返さんことを
17
17. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:09
- ID:WCfycDgf0 #
オオカミが役に立つという事実だけは知っていたけど単に病気や年寄りの間引きだけだと思っていたから敢えて種馬を狙うことで出産数のコントロールまでしているとは驚いたなぁ
日本でも鹿対策にオオカミ導入はどうかと言われているし個人的には実現したらワクワクする
ただ危惧しないといけないのは明治までの日本のクマの食べ物のうち肉の占める割合が70%以上だったものがオオカミ絶滅で獲物を横取りできなくなった明治以降は6%に激減しているというデータがある
つまりオオカミ導入でオオカミ自体による人間への食害は無いかもしれないけどせっかく150年かけて草食男子と化したクマたちが再び人間食に目覚めてしまうかもしれないという危険性は考慮しないといけない
18
18. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:09
- ID:X.8.UZuE0 #
ヨーロッパは熊導入して生態系復活とかいってたけど射殺したよな
19
19. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:11
- ID:IkwYN2Rl0 #
>>4
餓死すると病原菌の温床になってしまう
20
20. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:13
- ID:50oLCPqK0 #
ずーっとオオカミとイヌの見分けがつかなかったけど、最近ようやく少しだけわかるようになってきた。「目」が違うんだね、色や形じゃなくて「深い」感じがするよ。
21
21.
- 2020年07月17日 11:17
- ID:xjGWwJwz0 #
22
22. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:44
- ID:2UmolkWC0 #
日本狼の代わりに導入してみても・・・狭すぎてダメか_| ̄|○
23
23. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:45
- ID:7kjVkciZ0 #
日本でも昨今は獣害が酷く、特にシカとイノシシは異常発生と言えるほど増えています
(ついでに殆どの県で保護獣のツキノワグマも増えている)
自然破壊ガー!人間の開発ガーとか言われてますが、実際に恐ろしいまでの増殖
餌が豊富故に増えるわけですが、当然増えすぎた後には大減少が待っているわけで・・・
それを自然の摂理として見るだけにするのか、それとも増殖中に個体数の調整を図るのか
まぁどっちをやっても喚くだけの人は文句を言うのでしょうが
24
24. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:48
- ID:GY7Ehu.00 #
この世界から人間だけがいなくなったら生態系はどうなるのだろう
人間だって生きている意味はあるはず
25
25. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:53
- ID:AUQHV9L50 #
>>4
ヘラジカが一気に増える→餌が少なくなる(干ばつ・食べすぎによる森林破壊など)→大量飢死→残っていた数少ない肉食獣が死ぬ & 植生が乱れる→生態系が破壊される
というカスケードを食い止めるために捕食者のオオカミが必要なんだよ
狂った食物連鎖の是正に必要なこと
別に可哀想な死に方してるからダメってことじゃない
26
26. 匿名処理班
- 2020年07月17日 11:56
- ID:sQrQHrjW0 #
※2
人間って知能は高いはずなのに、感情があるせいかやり過ぎることが多い
必要以上に狩りつくしたり、食べもしない動物を娯楽のために殺したり
人間同士の争いも、動物の同種間争いに比べてやり方が苛烈すぎたり、自分をも滅ぼしかねなかったり
27
27. 匿名処理班
- 2020年07月17日 12:21
- ID:a8datAQq0 #
生態系が維持されていくのはよかったと思う。
しかし私は自然は全ての事(維持される事、壊れる事)が自然であると思う。
豊かな森もそうだし、不毛な砂漠も自然。壊れていけばそれに対応した何かが自然につくられる。
そして人間が現状を破壊していけば、それに対応して自然が人間を淘汰していくだろう。
28
28. 匿名処理班
- 2020年07月17日 12:21
- ID:iu.hWyjw0 #
>>12
害獣駆除で海外から狼を連れてこようなんていう話もあるが、日本の場合は無理だよね…
29
29.
- 2020年07月17日 12:31
- ID:0Evi6lmc0 #
30
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