【デレマス】クリア【SS】back

【デレマス】クリア【SS】


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ボイスアイドルオーディションをテーマにした短編ssです。
特定のアイドルは登場しません。架空のアイドルと架空のプロデューサーのみの登場なので気になる方はブラウザバックをお願い致します。
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2: 以下、
 僕は耳が聞こえない。所謂、難聴ってやつだ。
 突発性難聴。そんな病名らしい。40代から60代に多い病気らしく、症状が出るのは大体は片耳だけで、早期に対処すれば完治できるそうだ。
 つまり大学の時に罹って両耳の聴力を失った僕は、相当なレアケースなんだろうな。
 いや、厳密に言うと、全く聞こえないって訳じゃない。補聴器さえあれば家族や親戚の声は普通に聞き取れるし、友人もギリギリ分かる。
 要は関係性の濃さだ。付き合いが長ければ喋り方のクセが分かってるし、聞き取れない部分は口の動きから脳内で補完しながら生活できる。
 ところが初対面だとそうはいかない。相手は難聴者なんて慣れてないから変な気を回してかえって聞き取りづらくなったりもするし、かと言って気を遣ってくれているのも分かるから何も言えず。
 そんなだから就活に失敗したのは自明なのかもしれない。見事に全ての志望先から「お祈り」され、晴れてフリーター生活が始まるところだった。
3: 以下、
 そんな時、僕を拾ってくれたのがシンデレラプロダクションだ。遠い親戚のコネを使ってなんとかそこに入社させてもらえることになった。
 新入社員になった僕は、プロデュース部門に配属された。
 最初は先輩のアシスタントがメインだったが、入社してから数年が経ち、僕も担当アイドルを持つことになる。確かその子は俺がスカウトしたんだっけ。正直細かいところは覚えていない。まあ、それほど劇的な出会いじゃなかったってことだろう。それに8年も経ってしまえば記憶は薄れていくというもの。
 そう、8年。それが僕と彼女が出会ってから過ぎた時間。そして8年経っても彼女は鳴かず飛ばずの無名アイドルのままだ。
4: 以下、
 昔話が長くなったね。そろそろ今の話をしようか。この話は、そうだな……。俗にに言うとすれば――
5: 以下、
『1、2、3、4、5、6、ターン!』
 ポーズが決まる。なかなかに映えているのではないだろうか。まあ8年以上も毎日レッスンしていたらこれくらいになるのは当たり前と言えば当たり前か。
「さすがだな。今日も調子よさそうじゃないか」
『そうかもね。誰かさんのせいで実践に生かす機会は全然来ないけど』
 チクリと刺さる言葉が飛んできた。実際彼女が未だに無名なのは僕の責任でもある。ただ、彼女の実力不足だって一因となっているかもしれないのだから、そこまで言わなくて良いじゃないか。
 こうして口に出さずに心の中で愚痴を吐いているのには理由がある。正直なところ、僕は8年経った今でも彼女との距離感を掴めていない。
 昔から人と親しくなるのが苦手だった。親友なんていたこともない。それが尾を引いて、社会人になって久しいのに、未だに人間関係の構築が下手だ。
そんなのが担当アイドルとの信頼関係がモノを言うアイドルプロデューサーなんかやってるんだから世の中は分からないものだ。まあ実際に結果は出てないんだけど。
 だから迂闊なことを言って事務所を辞められたりしないように、彼女の言動にはあまり反論しないようにしている。
 そんな微妙な関係なのが響いて、正直なところ僕には、彼女の発言を一言一句違わずに聞き取れている自信がない。
6: 以下、
「悪いな。だが、朗報だ」
『なに!? やっとお仕事!?』
 急に表情が変わった。現金なやつだ。ただ、その貪欲さが彼女の推しポイントでもある。らしい。
「まだそうじゃない。でもチャンスが来たってとこかな」
『どういうこと?』
「事務所内オーディションが開催されることになった。対象アイドルはシンデレラプロダクション内の無名アイドル。合格者は3人。合格者は次のライブイベントでオリジナル曲が歌えるそうだ」
『つまり自分だけの曲をメインで歌えるってこと?』
「そういうことだ。まあ3人で歌うから『自分だけの』って訳じゃないけどな。エントリーするか?」
『するに決まってるでしょ! こうなったらレッスンにも気合入るわね!』
「そうか。じゃあ手続きはやっておくから。引き続きレッスン頑張ってくれよ」
7: 以下、
 事務室に戻って早エントリーをする。しばらくして、オーディションの概要が転送されてきた。
 一次審査はビジュアル審査か。まあ彼女の得意分野だし、どんなに無名だと言ってもさすがにここで落とされることはないだろう。
 それにしても実際のところ、彼女の評価はどうなんだろう。シンデレラプロダクションは毎年、シンデレラガール総選挙と称して人気投票のようなものを開催しているけど、彼女が圏内に入ったことはないし、他の子と比べようにも、こなした仕事の絶対数が少ないから比べられない。エゴサーチなんかしてもヒットするものはほとんどないし。
8: 以下、
『エントリーしてくれた?』
「ああ、戻ってきてたのか。丁度オーディションの概要を読んでたところだ。一次はビジュアル審査みたいだから余裕で突破してくれよ」
『当たり前よ。ところで、○○ちゃんって分かる? その子と合同レッスンしてみたいんだけど』
「○○……、あの子か。いいけど、どうしたんだ? いきなり」
『更衣室で他の子とオーディションのこと話したんだけど、実力からして○○ちゃんは合格候補じゃないかって。合格を狙うなら合格ラインを知っていた方がいいでしょ?』
「そういうことか。分かった。○○のプロデューサーに相談してみるよ」
9: 以下、
 ○○のプロデューサーとは個人的に知り合いだ。というか僕の5年後輩にあたる。5年も下の奴に先を越されているのだから同期内出世レースに参加すら出来ていないのもうなずける。まあ縁故採用の身だから最初から出世なんて期待してなかったけど。
 予想した通り、○○との合同レッスン依頼は通った。さすがに5年先輩の頼みは断りづらかったようだ。スケジュールを調整する時に若干見下されている感は否めなくて腹も立ったけど、珍しく彼女の要望を通せたんだからと我慢した。
10: 以下、
 合同レッスン当日、彼女はやけに気合いが入っていた。それこそオーディションの順番待ちみたいな雰囲気だ。
 こういう時は何か気の利いた、リラックスできるセリフでも言えたらいいんだろうけど、それを考えている内に順番が来てしまうのが毎度毎度お決まりのパターン。今日もそうで、何を言おうかと考えている内にレッスントレーナーが入ってきてしまった。
 何を言えば効果的かを教えてくれる、そんなメモ帳でも落ちてないかと願うばかりだ。
 っと、現実逃避なんかしている場合じゃない。せっかく合格候補とレッスンしているんだからしっかりと分析しないと。
 まずはビジュアルレッスンか。うん。悪くない。さすがに得意分野なだけはある。○○にも負けてない。
 次はダンスレッスン。二人ともいいじゃないか。指先まで意識した、躍動感のあるダンスだ。
 ということは最後のこれはボーカルレッスンだな。
 僕は正直なところ、歌の上手下手がよく分からない。難聴になってからは音程が取れなくなったし、息遣いや表現力みたいな細かいところも聞き取れないことが多い。
 まあ彼女からボーカルレッスンがしたいと言われることはほとんど無いから、特に苦手だ、ということはないんだろう。周りからも悪い評判はあまり聞かないし。
11: 以下、
 レッスンが終わり、事務室に戻って書類仕事を始めてから数十分が経つと、レッスン着から着替え終えた彼女が戻ってきた。
『……ただいま』
「おう、戻ったか。レッスン見てたぞ。ビジュアルレッスンもダンスレッスンもよかったじゃないか。○○と比べても遜色なかった。これならオーディションも合格狙えるはずだ!」
『……た?』
「悪い、聞こえなかった。もう一回頼む」
『ボーカルレッスンはどうだったかって聞いてるのよ!』
「えっと、ボーカルレッスンはだな……、その……」
『そうよね! あんたには分かるわけないわよね! だって聞こえないんだもん!』
『あんたには分からないわよ! ○○の歌がどれだけ凄かったかなんて! 音感も、声量も、表現力も、全部桁外れ! 何が“○○と比べても遜色ない”よ! なんにも分かってないくせに分かったようなこと言わないで!』
「いや、確かに歌に関しては何も分からないけど、それ以外ならお前も同じくらい凄かったよ」
『あの子、デビューしてから1年しか経ってないのよ! 私は8年! 8年レッスンしてきてるのに、この前入ってきたばっかの新入りと同じくらいってなんなの! なんで得意だと思ってたビジュアルレッスンでも勝てないのよ!?』
「……」
『私、もう世間ではアラサーって呼ばれる年齢なの! そんな年になるまで一生懸命頑張ってきたのに若い子に一瞬で抜かされる気持ち、あんたに分かる!?』
「……」
『なんか言いなさいよ! あんたっていつもそう! 大事な時は黙り込んで! アイドルを励ますのもプロデューサーの仕事でしょ!?』
『アイドルなんてやらなければよかった! あの時にスカウトされて、その気になっちゃって、気づいたらこんな年になってて! もう後戻りなんかできないの! 私の時間返して! 私の人生ぶち壊しにしたんだから責任取ってよ!』
 ああ、まただ。また何も言えなかった。僕は彼女に何をしてあげればいいんだ。いつまでも秘密にしてないで、そのメモ帳譲ってくれてもいいじゃないか。
12: 以下、
 ――誠に残念ながら今回はご期待に添えない結果となりました――
 ――貴殿の今後益々のご活躍をお祈り申し上げます――
13: 以下、
 ふと甦ってくる、学生時代に嫌というほど送られてきた「メモ帳」。そうか、今僕が取るべき行動は――
14: 以下、
 あれからもう1か月が経つ。僕は彼女の担当プロデューサーから降り、当面はアイドル部門の事務員のヘルプをすることになった。彼女とはしばらく会っていない。
 風の噂だが、一次審査は通過したらしい。まあ、もう僕には関係ないことだけど。そういえば後任のプロデューサーは誰になったんだろう。部長に訊いてみようか。
『彼女の後任かい? それなら、誰も担当しないことになったよ。プロデューサー職も限りがあるからね。酷だけど、タイムリミットが近くて見込みのない子に割く人員は無い。ただ、だからといって無理やり退所させるのも悪いから、セルフプロデュースって形で頑張ってもらうことになったよ』
「そうですか……。彼女には悪いことをしましたね」
『いやいや、君が彼女を8年も担当してくれたのには感謝してるんだ。多分誰もやりたがらなかっただろうからね。君が責任を感じる必要はないよ。今は彼女なりに時間をやりくりしてうまくやっているようだし』
「楽しんでるならそれはそれでよかったです」
 セルフプロデュース。聞こえは良さそうだが、言ってしまえば戦力外通告。彼女が僕に対して「お祈り」したように、彼女もまた、事務所から「お祈り」されたようだ。
15: 以下、
 事務職は思っていた以上に激務で、あっという間に1日が終わる。忙しない生活をしていると月日の流れがくなる、というのはこの世の常で、知らぬうちに例のオーディションは二次のダンス審査、三次のボーカル審査を終え、最終審査が翌日に控える、というところまで来ていた。
 一応僕も8年間プロデューサーをしていた身だから、誰が合格するのかは気になる。最終審査は公開オーディションになるようだし、明日は休みだから、会場に行ってみよう。確か関係者席がいくつか余ってたはずだ。
16: 以下、
 かなり大きい会場だ。最終選考に残った子達とはいえ、さすがにここまでの大舞台は経験したことが無いだろう。事務所の本気度が伺える。ここで合格した子を本気で売り出すつもりだ。
 ところで、この会場に着いて、驚いたことが三つある。
 一つ目はお客さんの多さだ。確かに事務所はかなり宣伝してたけど、出るのは無名アイドルばかりだからそこまでの人は集まらないと思っていた。ここまで大規模となると、落選した子にも違う形でチャンスが来たりするかもしれないな。
 二つ目はタイミング。僕と彼女にとっては完全に他人事だったから知らなかったけど、別会場で行われているシンデレラガール総選挙と全く同じ時間に結果発表のようだ。ここまで大規模なイベントを同時進行しているなんて、尋常じゃない。だから事務員があれほど忙しかったのか?
 そして三つ目。これが一番驚いたんだけど、最終選考に残った103人の中に、彼女がいた。
 セルフプロデュースってのはかなり忙しくて、レッスンなんかしている暇はほとんどないし、オーディション対策なんてできっこないから、当然のように二次審査で落ちていると思っていた。
 いったい何が起きているのかと思ったが、8年間の努力がここにきて報われたってことにしておこう。
 にしてもなんだって103人なんて半端な人数なのだろうか。まあ、そんなことはどうでもいいか。
17: 以下、
 最終審査は、実際に一人一人が1ステージこなして、全員の出番が終わった後に観客が投票するシステムのようだ。
 1人目のステージが始まった。見事なダンスだ。コンマ1秒のズレさえないように見える。
 2人目。急に漫談を始めた。さすがは何でもありのシンデレラプロダクション。しかも中々面白い。
 3人目。ピアノの弾き語り。すっかり聴き入ってしまった。聞こえないはずなんだけど。
18: 以下、
 103人目。幸か不幸か、大トリは彼女だった。
 彼女のステージが始まる。その瞬間、僕は彼女から目が離せなくなっていた。得意なポージングを中心に魅せつけてくるステージ。
 彼女よりも良いアイドルは今日の102人の中にもたくさんいた。それでも、今日一番輝いているのは彼女だ、と胸張って言えるくらい圧倒された。何故だかは分からない。どう表現したらいいかも分からない。
 何だ? 何がいつもと違う? これまでの彼女と明らかに違う部分がどこかにあるはず……。
 ……目だ。彼女のあんな目は見たことがない。あれはきっと、覚悟を決めた目。
 ああ、そうか。彼女が最終選考に残れたのも。この素晴らしいステージも。
19: 以下、
 彼女の出番が終わった。引き続いて投票時間に入る。
 数分後、アナウンスが入った。集計が終わったようだ。電光掲示板に出された合格者3人の中に、彼女の名前は……
20: 以下、
 僕はイベント後の舞台袖の雰囲気が結構好きだったりする。出演者、スタッフが一体になっていた場所がもぬけの殻になって、明かりは非常口の緑のランプだけ。
 あれだけ熱気に渦巻いていた場所がたった数時間でこんな風になるのがおもしろくて、会場の人に注意されるまで居座ったこともあるくらい。
 こうして休日に関係者特権使って舞台袖に入り込んでるなんて、部長にバレたら小言を言われそうだけど、こればっかりは譲れない。それに今日はここに来る理由がちゃんとある。
 積み重ねられたステージ用の椅子を一つ取り出し、たそがれること数分。不意に蛍光灯の明かりが差し込んできた。誰かが入ってきたようだ。振り返って正体を確かめる。
 そこにいたのは、彼女だった。
21: 以下、
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22: 以下、
「よう、久しぶりだな。8年かけてようやく立てたステージに挨拶、ってとこか?」
『そんなところよ。あんたはなにしてんのよ、こんなとこで。出演者とスタッフ以外は立ち入り禁止よ』
「そう堅いこと言うなよ。そうだな……かっこいい言い方をすれば、お前に会いに来た、ってとこだ」
『全然かっこよくないけど』
「……アイドル、辞めるんだろ?」
『へえ、珍しく察しがいいのね』
「正直に言ってお前の実力は最終審査まで残れるようなレベルじゃない。それでもここまで来れたのは、今回合格出来なかったら引退する、って覚悟を決めたからじゃないかって思ったんだ。実際かなりの気迫だったしな」
『当たりよ。あんたがいなくなって、セルフプロデュースしろって言われたときに分かったの。私にアイドルは向いてなかったんだってね。そうなったらなんか吹っ切れちゃって、気が付いたら最終審査まで残ってた』
23: 以下、
「……残念だったな」
『いいのよ。さっきこっそり全員の結果見ちゃったんだけど、私何位だったと思う? 103位よ、103位。最下位だったの。しかも得票数1。逆に気になるよね。私に1票入れた見る目のないバカは誰なんだろうって』
「確かに。相当なバカだろうな。なんたって才能無しアイドルを8年も担当してるのに結局放り投げて逃げるんだから。普通そこまで行ったら死なばもろとも、だよな」
『ってことはあの1票はあんたが?』
「そうだよ。悪いか? あんな圧倒されるステージは初めてだ。結局8年間結果は出なかったけど、あの時スカウトしたのは間違いじゃなかったなって思ったよ」
『ほとんど覚えてないのによく言うよ。それにやっぱあんた見る目ないね。歌、音外しまくってたじゃない』
「目が無いんじゃなくて、耳が悪いんだよ。忘れたのか?」
『……開き直らないでよね。調子狂うじゃない。いつもだったら黙り込むところよ?』
「もう考えるのはやめようって思ってな。どうせ考えたって正しい選択なんか思いつきやしないんだから、直感で答えることにしたんだ」
『あんたっていつもそうよね。決断遅すぎ。もうちょっと早くそれに気づいてたらアイドル辞めなくてよかったかもしれないのに……』
「そうか? お前の実力なら無理だったと思うぞ?」
『言ってくれるじゃない。まあそうだろうけどね』
24: 以下、
『でも、今のあんたならもう一回出来るんじゃない? プロデューサー。なんだか上手くいく気がする』
「そうか? そう言ってもらえるとありがたいな。ちょっと考えとくことにするよ。デカいイベントも終わって、どうせもう事務員のヘルプは要らないだろうしな」
『そうやって真に受けてまた私みたいに不幸な女を生み出すのよね、あんたみたいな奴って』
「いいだろ、別に。っていうか俺のことなんかよりお前のことだろう。何か次の仕事のアテでもあるのか?」
『えっと、それは……』
『すいませーん、そろそろ施錠したいので出てもらってもいいですか?』
『あっすいません! すぐ出ます! ほら、会場に迷惑かかるから帰るよ! って、もうこんな時間! 早く事務所に戻らないと! ごめん、私時間無いから先に帰るね!』
「あ、ちょっと! 送っていくから待っ……」
 行ってしまった。直感に従っても間に合わないこともある……と。最近書き始めたこのメモ帳も結構埋まってきている。プロデューサーになった時に備えて新しいのを買っておこうか。
25: 以下、
 今日はレッスンの見学だ。と言っても、アイドルのレッスンじゃない。
 あのオーディションの後、事務員ヘルプの必要が無くなって、専ら雑用係になっていた僕の頭の中には、彼女の「もう一度プロデューサーをやってみる」という、アドバイスだかリップサービスだか何だか分からないものが常に漂っていた。
 またアイドルプロデューサーをやってみたいという気持ちは無いということは無かったけど、よく考えたら歌が分からないアイドルプロデューサーなんて馬鹿げている。なんで今まで不思議に思わなかったのだろう。
 そんなことを考えていたら人事に呼び出されて、モデル部門への異動が決まった。他にも数人、結果の出てないプロデューサーが異動になったそうだ。
 この期に及んで「お祈り」されるなんて思ってなかったからちょっと笑ってしまった。まあクビになってないだけマシだろう。
 それで、モデルという全く違うジャンルでならもしかしたら、という希望を持ってダメ元でプロデューサーを志願したら意外にも希望が通ってしまった。
 何でも、モデル部門の部長は、俺を入社させてくれた親戚とは同期に当たるそうで、苗字が一緒だったことから僕の事情に気付いて気を遣ってくれたらしい。まさに災い転じてなんとやら、だ。
 何はともあれ、めでたくモデル部門に来て1週間経った今日、僕の担当候補数人がこの先でレッスンしていて、そこから僕が1人を選んでデビューさせるとのこと。まだ何も知らされてないけど、どんな子達なんだろう。
26: 以下、
 ちょうどトレーナーさんがレッスン室から出てきた。
「あれ、もうレッスン終わりですか?」
『いえ、少しだけ休憩です。この後プロデューサーがデビューさせる子を選びに来るって聞いたので、先におしゃべりでもして人柄を見ていただいたほうがいいと思いまして。もしかしてあなたが?』
「そうですね。わざわざお気遣いありがとうございます。では早会ってきます!」
 ノックしてから扉を開ける。中にいた数人の女性が振り返ってこちらを見る。そのうちの1人が、僕の顔を見て、ニヤリと微笑む。一目見ただけで僕の心は決まった。
「……なるほど。では君にデビューしてもらおうかな」
27: 以下、
「1回失敗したんだから、2回目は許さないわよ。8年分の時間、きっちり返してもらうから」
28: 以下、
 彼女の声が、初めて鮮明に僕の耳へと響いた。
29: 以下、
 昔話が長くなったね。そろそろ今の話をしよう。この話は、そうだな……。俗に言うとすれば――
30: 以下、
 ――僕が「鼓膜を実装する」までの物語。
31: 以下、
以上です。ありがとうございました。
元スレ
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