【冴えカノ】恵「女の子に告白する練習?」 倫也「そうだ!」back

【冴えカノ】恵「女の子に告白する練習?」 倫也「そうだ!」


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倫也「……」カタカタ
恵「……」ポチポチ
倫也「うーん……」
恵「……」ポチポチ
倫也「ううーん……」
恵「……」ポチポチ
倫也「うううーん……」
恵「……どうしたの? そんなあからさまに構ってもらいたそうな声を出して」
倫也「いや……実はさ。昨日から新作ギャルゲーのプロットを練ってる途中なんだけど」
恵「倫也くん、今絶賛浪人中だってこと忘れてない?」
倫也「ヒロインの可愛さの方に力を入れ過ぎてて……なんか主人公の魅力が弱い気がするんだよなあ」
恵「まあ……そもそも、主人公の作り手がパッとしない男の子だし」
倫也「それもうどうしようもないよね!? 遠回しに俺じゃ魅力あるギャルゲーの主人公は作れないって言ってるよね!?」
恵「ぼかしたつもりは全然、全く、これっぽっちもないんだけど……」
倫也「致命傷与えた後ついで感覚で2回刺すのやめてえっ!」
恵「……んー、じゃあ。とりあえず、倫也くん本人がパッとする男の子になってみればいいんじゃないかな〜」
倫也「え?」
----------------------------------------------------------------------------
2: 以下、
恵「ほら、倫也くん実体験からイベント作成するの得意だし。キスシーンとかキスシーンとかキスシーンとか」
倫也「後悔はしてないけどあの件は本当にごめんなさい反省してます」
恵「だからさ、倫也くんが実際に男の子としてカッコいいイベントを三次元でもこなせれば……」
倫也「……!」
恵「おのずとキャラにも自己投影……」
倫也「それだっ!」ガバ
恵「顔近くない?」
3: 以下、
恵「女の子に告白する練習?」
倫也「そうだ! 俺の書く主人公は、前作含めどこかキャラが弱いと思っていた……! その大きな要因は、男側からの告白イベントにある!」
恵「えっと。私はどちらかというと、根本的なキャラ設定から見直した方が早いんじゃないかと思ってたんだけど」
倫也「俺はなんという勘違いをしていたんだ……っ! メインヒロイン相手に『消去法でお前を選んだ』なんて残念な告白をする主人公に、女の子はおろかユーザーもついてくるわけ無いじゃないか……!!」
恵「ついてきちゃった私が言うのもなんだけど、なんでその判断が一年前に出来なかったのかな」
倫也「というわけで! 恵には俺の告白の実験台になってもらいたい!」
恵「別にいいけど……」
倫也「よし! それじゃさっそく始め……」
恵「それ、明日に回さない?」
倫也「なんで!?」
4: 以下、
恵「ほら、だって今日はもう遅いし。明日は花の金曜日だし」
倫也「花の浪人生に曜日感覚を説かれましても……」
恵「今思い付きで口説くより、一日ネタを温めておいた方が倫也くん的にも良いと思うんだけど」
倫也「お、おお……?」
恵「じゃあ倫也くん。私、とりあえず今日は帰るから、明日までに色々手法考えてきてね」
倫也「わ、分かった。もう遅いけど気を付けて帰ってな」
恵「うん、ありがとう……それじゃあ、また明日、ね」
倫也「ああ、また明日……」
バタン
倫也「……」
倫也「……なんかさっきよりハードルが上がったような気がしないでもないけど……」
倫也「お、おおっといかん。告白イベントの口説き文句だよな、口説き文句」
倫也「……」カタカタ
5: 以下、
※ ※ ※
倫也「……」カタカタ
倫也「……いや、ここの言い回しは我ながらいい出来じゃないか?」
倫也「……」カタカタ
倫也「まずい、まずいぞ……自分の才能が怖い! まさか俺に天然ジゴロの才があったとはっ!」
倫也「もはや二次元イケメン主人公も恐れるに足らず! 明日の恵のおっとり顔が目に浮かぶわー!」
倫也「わーはっはっ!!」
倫也「……」カタカタ
倫也「……」
倫也「……なんで俺、夜中まで必死に自分の彼女をどう落とそうか悩んでるんだろうな……」
6: 以下、
※ ※ ※
恵「ただいま、倫也くん」
倫也「おう、おかえり……」
恵「……なんか顔、げっそりしてない?」
倫也「いや、なんか徹夜のテンションが長引いてて……というか、思ってたより来るの早かったな」
恵「そう?」
倫也「金曜はもっと遅くに家に上がってたイメージだったんだけど……って、あれ?」
恵「どうしたの?」
倫也「なんか今日の格好、いつにも増してオシャレじゃないか?」
恵「そうかな〜」
倫也「心なしか香水の良い匂いもするし……それに」
恵「あれ、もしかして私もう口説かれてる?」
倫也「ちち違うよただの世間話だよ!?」
7: 以下、
恵「それじゃあ倫也くん。早貴方の考えた告白シーンを、実際に演じてみてくれる?」
倫也「おう……な、なんか演技だとわかってても、いざやるとなるとやっぱり恥ずかしいな」
恵「そんなに恥ずかしからないでも大丈夫だよ」
倫也「そ、そうか」
恵「そう。去年付き合う前にくれた、例の狂気じみた私へのラブレターの内容を一言一句漏らさず思い出せば、この先の人生で恥じる事なんて何一つないはずだよ」
倫也「背中押し倒した後マウントでボコボコにするのやめてくれる!?」
恵「それで? 私も何か、演技した方がいいのかな?」
倫也「いや、大丈夫だ……恵はそのまま、テーブルの前で座っててくれ」
恵「うん、わかった」
倫也「よし……! それじゃあ早、一発目の告白行くぞ……!」
恵「……」
倫也「……」スーハー
恵「……」
倫也「……『恵っ!!』」
恵「……え、えっと、はい」
倫也「『あんた、あたしのこと好きだった??っ!?』」
恵「カット」
8: 以下、
恵「ちょっとそこに座って」
倫也「例の如くもう座ってるんだけど……」
恵「今のは何?」
倫也「い、いや……俺的に、胸がキュンキュンした告白シーンを演じてみたつもりだったんだけど……」
恵「倫也くん自分のコト『あたし』って言ってたよね? 今の、完全にヒロイン側の告白イベントだよね?」
倫也「ち、違うんだ! 本当はその、もう少し男らしい言い方に変えるつもりだったんだけど……!」
恵「……『変える』って事は、元ネタがあったって事なんだよね?」
倫也「……え」
恵「実際、倫也くんがあの告白を『誰かさん』から受けて、それでキュンキュンしちゃったって事なんだよね?」
倫也「い、いや、その……」
恵「……」
倫也「……」
恵「……」
9: 以下、
倫也「……はい」ボソ
恵「帰る」
倫也「お待ちください神様仏様恵様ぁぁぁっ!!」
10: 以下、
恵「……」
倫也「ご、ごめんな恵……」
恵「……」
倫也「けどこれだけは分かってくれ。これもより良いゲームを作る為の試練なんだ……!」
恵「……その試練、一人で勝手に乗り越えてくれないかなあ……」
倫也「謝罪は後で沢山する……いや、なんで謝るのか俺も分からないけど! とりあえず次の告白シーンも付き合ってくれるか、恵!」
恵「駄目だって言ってもどうせするんでしょ……」
倫也「ありがとう! けど安心しろ、次のは結構自信作だぞ!」
恵「そうなの?」
倫也「ああ! ちなみにイメージは……遠距離恋愛になる二人、そこで主人公はヒロインに最後の愛の告白をする……っていう設定だからな!」
恵「まあ、導入は割と良さそうな感じだね」
倫也「だろう! それじゃあ、準備はいいか!」
恵「……どうぞ」
倫也「……」スーハー
恵「……」
倫也「……『これでお別れだね、恵……』」
恵「……っ、びっ……そ、そうだね、倫也くん」
倫也「……『大丈夫だよ、恵。俺にはちゃんと分かってるから……』」
恵「……?」
倫也「……『君は間違いなく、俺の全てに恋をしていた……っ!』」
恵「え、きも」
倫也「えっ」
11: 以下、
恵「え、待って、本当に気持ち悪い。何、今の」
倫也「え、い、今の、そんな生理的に受け付けなかった……?」
恵「見てよこの鳥肌。自分の肌じゃないみたい、鳥インフルってこんな感じなのかな」
倫也「人の魂の告白をウイルス扱いしないでくれる!?」
恵「だって、明らかに勘違い男の告白だったもん。多分その辺のストーカーの方が情緒のある告白するよ」
倫也「俺の主人公像ストーカー以下なの!?」
恵「ねえ、さっきのもそうなんだけどさ。なんで主人公は基本的に上から目線なのかな?」
倫也「え、いや……なんでだろう?」
恵「それもう告白じゃないよね、いいとこ誘導尋問だよね。どうして自分のコトが好きだという前提で話を進めちゃうのかな?」
倫也「お、おかしいな……俺の時はもっとこう、胸に響いたものが……」
恵「俺の時は?」
倫也「あ」
12: 以下、
恵「……」
倫也「……」
恵「……」
倫也「お、おーい……機嫌直してくれって」
恵「……」
倫也「あ、後で沢山謝る! 謝るから、今は練習に……」
恵「……ねえ、倫也くん」
倫也「は、はい」
恵「私、別に実体験を持ってきた事に対して怒ってるわけじゃないんだよ?」
倫也「お、おお……?」
恵「ただ、前2つの告白の中身がちょっと酷すぎて……客観的に見て、無いんじゃないかなーっ、て苛立ちを多少覚えただけで」
倫也「それ、本当に私情入ってないですよね……?」
恵「とにかく。魅力ある主人公を作りたいなら、もっとオリジナリティのある告白をしないと」
倫也「わ、分かった。オリジナリティだな……うーん」
恵「……」
13: 以下、
倫也「ちなみにさ」
恵「うん」
倫也「恵的にキュンとくる告白って、なんかあったりするのか?」
恵「それを私に聞いちゃうのかあ……」
倫也「えーと……なんとなく、女の子目線の意見も欲しくなったというか」
恵「うーん……特には思いつかないけど……」
倫也「そっか……」
恵「あ、でも」
倫也「?」
恵「もしもの話なんだけどさ。去年の、9月23日での出来事あったよね」
倫也「……お、おう」
恵「女の子を誕生日デートに誘っておいて、あんなに楽しみにさせておいて、当日倫也くんが華麗にドタキャンした事、あったよね?」
倫也「言い直さないでぇぇ?!!」
恵「もしもあの日、普通にデートしてたとして……」
倫也「……う、うん」
恵「もし、私に告白してたとしたら……どんな顔で、どんな態度で、どんな痛い台詞だったのかな? っていう純粋な興味はあるよね」
倫也「if世界でも痛い台詞を吐くのは確定なの!?」
14: 以下、
恵「ということで倫也くん、どーぞ」
倫也「どーぞと言われましても……」
恵「そんなかしこまらなくてもいーよ。もしもの話だし。そもそも、今日は告白の練習が目的なんだし」
倫也「……そ、そっか。練習だよな、もしもの話だよな……」
恵「うん。だから直感で出てきたセリフ、言ってみてくれるかな」
倫也「わ、分かった。その前にちょっと、深呼吸だけさせてくれ……」スーハー
恵「……さっきから気になってたけど。それ、癖なんだね」
倫也「……よし、行くぞ……!」
恵「……」
倫也「『お、お待たせ?!』」
恵「ちょっと待って」
15: 以下、
恵「何? あの日の倫也くん、待ち合わせで合流した瞬間、初手で私に告白する気だったの?」
倫也「ちち、違うよっ!? なんていうかその、今直感で出てきた言葉がそれだったんだよ……」
恵「それに、第一声がお待たせって……女の子を待たせる前提でデート場所に現れる主人公って、少なからず魅力に欠けると思うんだけど、どうかなあ?」
倫也「嫌なら変えますからそんな深読みしないでっ!」
恵「せめて、いい天気だね?ぐらいの導入だったらまだ最悪救いようもあったんだけど……」
倫也「ちょ、ちょっと待ってくれ、今、もう一回深呼吸して気持ちを落ち着かせるから……!」スーハー
恵「もしもの話でそんなに緊張しなくても……」
ギュ
恵「……ぇ?」
16: 以下、
倫也「さ、さて! 今日はどこにいこうか、恵!」
恵「……また、急に始まったね」
倫也「い、一応俺のプランで言うとだな! とりあえず映画を見て、お茶して、買い物して、最後に食事という流れで考えてるんだけど、どうでしょうか!?」
恵「……」
倫也「……め、恵?」
恵「……うん、うん。定番で……いいんじゃないかな」
倫也「よ、よし! それじゃあ早映画のチケットでも買いに行くか!」
恵「……倫也くん」
倫也「な、なんだ?」
恵「……手、繋いでる設定、なんだね」
倫也「……も、もしもあの日、デートしてたらな」
恵「……」
倫也「……え、えーと……嫌ならすぐ離すけど……」
恵「……ううん、いーよこのままで」
倫也「そ、そっか」
恵「……」
倫也「……」
恵「ねえ倫也くん」
倫也「え?」
恵「『今日は』、誘ってくれてありがとうね?」
倫也「すみません本当胸の痛みが限界なので含みのある言い方はどうか避けて下さいお願いします」
17: 以下、
※ ※ ※
倫也「いやー食事も美味しかったし、最高の一日だったな!」
恵「あ、もう食事終わったんだ……」
倫也「……な、何か駄目だったか?」
恵「いや……あの日の倫也くんは、私にどんな豪勢な料理を用意してくれてたんだろうな?って、少し気になっちゃって」
倫也「そ、それはあの日の俺に聞くとしてだな……それよりも、映画面白かったな!」
恵「例えば?」
倫也「え?」
恵「例えば、映画のどんなところが面白かったのかな?」
倫也「え、えーと?」
恵「倫也くん、ついさっき見た映画の内容も忘れちゃったの?」
倫也「わ、忘れてないぞ! あの、男主人公の告白シーンが特に良かったと思うな!」
恵「え?。私達が見てたの、男しか出てないバトル映画だったよ?」
倫也「……ぉぃ」
恵「ふふ……」
倫也「……」
18: 以下、
恵「どうしたの、倫也くん」
倫也「……恵はさ」
恵「うん」
倫也「今日、楽しかったかな」
恵「さあ?」
倫也「……そ、そうか」
恵「まあ、でも……」
倫也「?」
恵「もしそれが、仮に気になる男の子と二人っきりの時間だったなら……」
倫也「……」
恵「どんなしまらないイベントがあったとしても、なんだかなあ、って機嫌良く笑い飛ばしてたと思うな」
倫也「……」
19: 以下、
倫也「なあ恵」
恵「うん」
倫也「そ、その……実は……」
恵「……」
倫也「……実は俺、お前に伝えたいことがっ!」
恵「え、私のどこが好きだって?」
倫也「空気読んでくれよぅ!?」
20: 以下、
倫也「あ、あのぅ……」
恵「どうしたの〜?」
倫也「俺、今せっかくオタクなりにビシッとカッコいい告白を決めようと思ってたところだったんですが……」
恵「そんなことより倫也くん。ほら、私の好きな所を一つずつ、そこに至るまでの具体的なエピソードも添えて提示してくれるかな?」
倫也「何そのロマンの無い告白!? 就活生のエントリーシートじゃないんだぞ!」
恵「え、まさか好きな女の子の良いところを一つも挙げられないくせに、その場のノリと勢いで私に告白しようとしてたの? それって男の子としてどうなんだろう」
倫也「最早これ告白じゃないよ圧迫面接だよ!! と、というかさ……」
恵「なに? 不合格濃厚の倫也くん」
倫也「告白の事は一旦置いておいて……シチュエーションに去年の誕生日を指定してきた時から、ちょっと気になってたんだけど……」
恵「?」
倫也「……あの日の恵。告白されるの、実は結構期待してたりした?」
恵「……」
21: 以下、
恵「……」
倫也「……え、えっと」
恵「……そもそもさ」
倫也「は、はい」
恵「事の始まりはあの日の数日前、誰かさんが下心丸出しで私をデートに誘ったことなんじゃないかな??」
倫也「いやいや! あの時恵もめっちゃ乗り気だったし!」
恵「そうだっけ?」
倫也「そうだもん! 誘った時の恵、『絶対行く!』とか『すっごい楽しみになってきた……!』とか、加藤恵史上トップクラスの浮かれ具合だったもん!」
恵「……んー、おかしいね?、それはあり得ないね?」
倫也「あり得てたもん現実だもん! 俺、ちゃんと聞いたんだもんっ!」
恵「でもさ。あの時の私も、悪徳シナリオライターのやる気を出させる為にわざとそういう甘い言葉を選んでたのかもしれないよ?」
倫也「やめてぇっ! 俺の大切な思い出を汚い大人の打算で塗り潰さないでぇぇ!!」
恵「というか私、誘われたからしょうがなくついていっただけだし?、下心なんてまるで無かったし?」
倫也「……それにしては、その。ドタキャンした時、分かりやすく落ち込んでいたような……」
恵「大体さあ。私の方が倫也くんに夢中になってるっていう図式が、そもそも間違いだと思うんだよね?」
倫也「あれ、話題変えられた?」
22: 以下、
恵「だって私、友達に倫也くんの良いところ聞かれてもパッと答えられないし」
倫也「彼氏目の前にしてそんな悲しい話する必要あります!?」
恵「絶対、倫也くんの方が私に夢中になってると思うんだよね〜」
倫也「そ、それは別に否定はしないけど……」
恵「……けど?」
倫也「……恵もそこそこ、俺に夢中になってる……と思う」
恵「……」
倫也「……」
恵「……」
倫也「……」
恵「……ふうん」
倫也「……な、なんだよ」
恵「ふぅぅぅぅ〜ん」
倫也「意味ありげに相槌打つの止めてよ!?」
恵「じゃあ、勝負する?」
倫也「え?」
23: 以下、
倫也「しょ、勝負って……?」
恵「私と倫也くん、どっちがより相手に好かれてるか……の勝負」
倫也「そ、そんなのどうやって……」
恵「告白するの」
倫也「え?」
恵「倫也くんがね。ネタでも嘘でも良いから、今から私に沢山告白するの」
倫也「お、おう……?」
恵「それで私が動揺を顔に出したり……顔を赤らめたりしたら、倫也くんの勝ち」
倫也「……」
恵「逆に私がずっとフラットに……平静な顔のままでいられたら、この私達の関係は倫也くんの一方的な片想いで成り立っている……ということで、私の勝ち」
倫也「それもうカップルじゃないよねアイドルとファンぐらいの距離感あるよね!?」
恵「勝負。自信あるなら、いいよね?」
倫也「い、いいけど」
恵「うん。それじゃあ、これで今日の練習は最後だよ倫也くん」
倫也「……」
恵「どうしたの?」
倫也「え、ええっとさ」
恵「魅力ある主人公、作るんでしょ?」
倫也「……そ、そうだな! よし……」スーハー
24: 以下、
『それ、明日に回さない?』
『なんで!?』
倫也(結論から言うと。恵が提案したこの勝負は、最初からゲームとして破綻していた)
25: 以下、
倫也「ええと……恵!」
恵「はい」ギュ
倫也「はは、初めて会った時から好きでした!」
恵「2点」
倫也「普通の告白でその点数はシビア過ぎない!?」
恵「普通の告白だからだよ?」
26: 以下、
『なんか今日の恰好、オシャレじゃないか?』
倫也(そもそも、動揺を恵の顔だけで判断するという前提が既に間違っていて……)
27: 以下、
倫也「クラスで一緒になった時からずっと気になってました!」
恵「大嘘。1点」
倫也「入試で助けてくれた時から、運命の赤い糸を感じてました!」
恵「当時気付いてなかったよね? 3点」
倫也「え、ええと……じゃあ!」
恵「0点」
倫也「土俵にも上がらせてもらえない!?」
28: 以下、
『心なしか香水の良い匂いもするし……それに』
倫也(だって、今日の恵の顔は、分からない)
倫也(今日に限って、マスクを付けてきた彼女の顔を、俺は読み取る術がない)
29: 以下、
倫也「め、恵さんは俺にとって特別な人です!」
恵「……さん要らない。20点」
倫也「恵は俺にとって特別な人です!」
恵「30点」
倫也「勿論、この世界で誰よりも……!」
恵「英梨々と霞ヶ丘先輩よりも?」
倫也「……」
恵「マイナス1000点」
倫也「点数のインフレ激しくない!?」
30: 以下、
『ええと……恵!」
倫也(例え、仮にマスクが無かったとしても。俺は恵の顔を確認出来ない)
31: 以下、
倫也「好きです好きです大好きですっ! だからどうか怒りをお納めくだぐええええ!!」
恵「別に怒ってないし通常運転だしフラット恵だし」
倫也「そう思うなら器用に俺の手つねらないでぇぇっ!?」
32: 以下、
『はい』ギュ
倫也(ゲームが始まった瞬間に。抱き着いてきた彼女の顔を、俺は横からしか見ることが出来ない)
33: 以下、
恵「大体さあ。もし仮に私が怒ってると思うなら、好き好き言うだけで許して貰おうなんて都合良過ぎるんじゃないかなあ?」
倫也「でも俺、恵好きなんだもん! 大好きだもん!! それだけは本当に本当だもん!」
恵「……それ、全然私の質問に対しての答えになってないと思うんだけど、どうかなあ?」
倫也「鯖折りはやめてぇいやぁぁぁ〜!」
倫也(今日恵がたまたまオシャレを決め込んできたのも)
倫也(マスクで顔を隠してきたのも)
倫也(早く俺の家に上がってきたのも)
倫也(この勝負を持ちかけたのも)
倫也(この告白タイムを心待ちにしていたからなんじゃないか。という予測も、所詮俺の妄想に過ぎないし、勝敗の行方には関係がない)
34: 以下、
恵「倫也くんってさ。好きって言葉を安売りし過ぎなんだと思うんだよね?」
倫也「そ、そうかな……?」
恵「そんなに連呼されたら嘘っぽいよ。本当に好きなら、せめて証拠の一つや二つぐらい……」
倫也「……」スーハー
恵「……倫也くん?」
倫也「……か、鏡見ろよ」
恵「え?」
倫也「声、録音して聞いてみろよ。恵が今まで俺にしてくれたこと、思い出してみろよ」
恵「……え、えっと」
倫也「お前、滅茶苦茶いい女なんだぞ。最高の彼女なんだぞ、理想のヒロインなんだぞ」
恵「……」
倫也「俺がお前を本気で好きにならない、道理が無いだろ……」
恵「……」
倫也「……」
恵「……」
倫也「……な、何点?」
恵「今の余計な一言で50点」
倫也「点数聞いただけ……!? むぐっ」
倫也(もし恵がマスク越しにキスして俺の口を塞いだとしても、それは勝負に関係無い)
倫也(『恵の動揺した顔を見る』コトが俺の勝利条件なのだから、それ以外の愛情表現は勝敗に全く影響を及ぼさない)
35: 以下、
恵「もう、終わり、なのかなあ……」
倫也「ちょ、力つよ……っ!?」
恵「一晩たっぷり考えて出てきた告白があれだけなんて、あり得ないんじゃないかなあ……っ!」
倫也「ま、待って! 本当呼吸出来な……っ!!」
恵「……この、甲斐性なし……っ!」
倫也「恵さんキャラ変わってますよ!?」
倫也(恵の抱きしめる強さが強すぎて、押し倒されたとしても)
倫也(告白の連打で、なんとなく恵の気持ちが盛り上がっているように見えたとしても)
倫也(それは。全然、全く、これっぽっちも、俺の勝利には結びつかない)
36: 以下、
倫也「あ、愛してる! 愛してるから!」
恵「あ?そう。それはよかったね?」
倫也「俺はずっと恵だって! 最後まで恵といくって、決めてるから!」
恵「口だけなら何とでも言えるよね?」
倫也「大好きだ! 恵の優しさも、同じぐらいの重さも! 良いところも悪いところも全部ひっくるめて大好きだ?!!」
恵「私、別に重くないって?……あ?もう」
倫也(告白の合間に恵がキスをし過ぎて、マスクが完全に取れたとしても)
倫也(艶やかな、女の顔が完全に丸見えになっていたとしても、そんなことはもうどうでもいい)
倫也(ただ、確かな事があるとすれば……)
37: 以下、
倫也「な、なあ……」
恵「なに?」
倫也「ちょ、ちょっとだけ勝負、休憩しない?」
恵「……1分」
倫也「みじか……嘘です嘘! だからそんなに怖い顔しないでぇっ!!」
恵「……」
倫也「……」
恵「……ねえ、倫也くん」
倫也「うん」
恵「……」
倫也「……」
恵「………」
倫也「……」
恵「…………」
恵「…………………好き」
倫也「100万点」
倫也(やっぱり俺は、主人公よりもヒロインに魅力のあるゲームの方が好きらしい)
おしまい
38: 以下、
おまけ
女子「加藤さんの彼氏って、どんな人なの?」
恵「……どうしたの、急に?」
女子「だって……加藤さんってほぼ毎日、浪人生の彼氏の家に上がり込んでるんでしょ?」
恵「……」
女子「あの草食系の加藤さんを夢中にさせるって、どんな人なんだろう? って、ふと気になっちゃって……」
恵「……別に、そんな大した人じゃないよ? オタクだし、甲斐性ないし」
女子「でも、良いところもあるんでしょ?」
恵「良いところ?」
女子「そう、彼氏さんの良いところ」
恵「……」
女子「……」
恵「……?」
女子「そ、そんな難しい質問だったかな……」
恵「悪いところだったらもっと詳細にお話も出来るんだけど……」
女子「嫌だよそんなハードルの高い会話!? 私達この間知り合ったばっかりだよ!?」
恵「うーん……でも本当に、パッと思いつかないな?」
女子「……加藤さん」
恵「……ああ、でもあるかも。良いところ」
女子「え、どこどこ!?」
恵「私の事、好きで好きで仕方ないところ……かな?」
女子「爆発しろ」
ほんとうにおしまい
39: 以下、
前作 【冴えカノ】倫也「別れてくれ、恵」恵「はいはい」
最後まで読んでくれた方、前回コメントしてくれた方、ありがとうございました!
41: 以下、
乙乙
読んでて二人に全然違和感が無かった
いいものを読ませてもらったわ
42: 以下、
連投してすまない
前作読んできたんだけど年甲斐にもなくキュンキュンしてしまった
いい作品をありがとうございました
元スレ
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