魔王「まずはいちご100%からだな」側近「随分と懐かしい作品ですね」back

魔王「まずはいちご100%からだな」側近「随分と懐かしい作品ですね」


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週刊少年ジャンプ。
週刊少年サンデー。
週刊少年マガジン。
週刊少年誌において、常日頃から目にする機会が多いのはもっぱらこの3誌であろう。
それぞれ集英社、小学館、講談社より刊行されている息の長い週刊誌であり、この大手出版社が世に出す漫画は後世まで記憶に残る名作が豊富に存在している。
その中でも特に私の嗜好はラブコメディに傾倒しており、そのジャンルにおいて各週刊誌から1作品ずつ挙げていく。
「もう。魔王様ったらまた漫画ばかり読んで」
「よいではないか。心の潤いが必要なのだ」
「はいはい」
申し遅れたが、私はとある異世界に君臨する魔王であり、勇者との血で血を洗う苛烈な戦いの日々に疲れた時は、こうして世界を跨いで配下の稼いだ金で漫画を読み漁るニート生活を満喫している自堕落な者だと明かしておく。
何ぶん、ニート歴が長いもので、若者にとっては古臭い作品かも知れないがそれでも構わないのならばこの独り言に付き合って貰いたい。
さて、それでは早本題へと移ろう。
勿体ぶるつもりはないので、先にこれから紹介する作品のタイトルを紹介しておく。
いちご100%
ハヤテのごとく!
魔法先生ネギま!
完全に独断と偏見により選別した後世に残るであろうこの3つの名作について、語らせて貰う。
----------------------------------------------------------------------------
2: 以下、
「まずはいちご100%からだな」
「随分と懐かしい作品ですね」
「まさに温故知新と言えよう」
いちご100% とはかつて週刊少年ジャンプにおいて連載されていたラブコメの代名詞とも呼べる名作であり、主人公は偶然目撃したいちごパンツが忘れられず、そのパンツを頼りにヒロインを探して様々ないちごパンツ娘とエンカウント、攻略していく学園ラブコメディーである。
そんな少年の夢を追い求めるこの名作において、まず真っ先に思い浮かぶ魅力を挙げるとするならば、絶対にこれだけは外せないだろう。
「やはり、懸垂しながらの告白は印象深い」
「ああ?! ありましたね?そんなやり取り」
「あの西野つかさが惚れてしまうのも頷けるファインプレーであったと断言出来る」
「まあ、女の子からしたら1回くらいならされてみたい告白ですが、実際にされたらドン引きしてごめんなさいって振っちゃいますよね?」
口の悪い側近はそう言っているが、私としては勇者にそんな告白をされたら立場を忘れて思わず受け入れてしまうかも知れないほど、胸に響く告白の仕方だった。キュンキュンする。
「魔王様は西野つかさ推しですか」
「当然だ!」
「胸の大きさが似ているから自己投影しちゃってるんですね。その気持ちはよくわかります」
「ええい! 余計なことを言うな!」
「おやおや?? この私が北大路さつき並みの巨乳だからって邪険にしないでくださいよ?」
北大路さつきは悪い娘ではないが、敵だ。
同じく東城綾も、向井こずえも私の敵だ。
ちなみに、端本ちなみも敵であり、外村美鈴はギリギリ仲間。そして南戸唯に至っては。
「魔王様そっくりです」
「あの娘よりはあるわい!」
流石に中3から高1にかけての発展途上少女には負けたくないので、ライバルと位置付けておこう。
3: 以下、
「次はハヤテのごとく!」
「三千院ナギお嬢様推しですね、わかります」
「ちがわい! 私は桂ヒナギク一筋だ!」
「どっちもどっちじゃないですか」
ハヤテのごとく! は一風変わった作品だ。
まず主人公の綾崎ハヤテは両親に多額の借金を背負わされ、路頭に迷った彼は大金持ちの三千院ナギお嬢様に拾われて彼女の屋敷に執事として雇われることとなる。
そんな薄幸の美少女ならぬ美少年のハヤテくんは非凡なる才能をいくつも持ち合わせており、執事の英語読みのバトラーにちなんでバトルもこなし破茶滅茶ラブコメディを展開していく。
「そう言えば、魔王様。ふと思ったのですが」
「どうした?」
「ハヤテくんと勇者って似てますよね」
「ふむ。言われてみれば……」
「女装したら勇者も可愛くなりそうですね」
「そうだな。今度衣装を用意しておけ」
「かしこまりました」
綾崎ハヤテは可愛らしい男の娘である。
男の娘という概念はこの主人公から端を発したのではないかと思えるほど女装がよく似合う。
なのでこのハヤテのごとく! は女性でもわりと楽しめる作品なので、是非読んで貰いたい。
「魔王様と勇者がじゃれ合っている姿を見ていると、私はマリアさんの気持ちになります」
「どういう意味だそれは!?」
確かに側近はマリアさんに似ているので、余計に腹が立つ。しかし悪魔なので性格は最悪だ。
中身もマリアさんを見習って淑やかに穏やかに慈悲深くこの私を甘やかして欲しいものである。
4: 以下、
「最後はネギまを紹介するぞ! 予め言っておくが、私はエヴァンジェリンが大好きだ!」
「魔王様はエヴァンジェリン・A・K・マグダウェルと同じく金髪のロリ吸血鬼ですからね」
「ロリは余計だ!」
最後に紹介するのは魔法先生ネギま!
焼き鳥みたいなタイトルだが、その由来は主人公であるネギ・スプリングフィールドの特徴的な名前であり、若干10才の少年である彼が麻帆良学園中等部に子供先生として赴任するところから壮大な物語が幕を開ける。
「あれは倫理的にギリギリな作品ですよね」
「だがしかし、あの裸体の描写は芸術だ!」
「くしゃみで全裸は悪意しか感じませんよ」
この作品の特徴は主人公がショタであることをいい事に、事あるごとにアクシデントを装い教え子を全裸にひん剥くサービスショットが多いところであり、倫理的にはギリギリアウトだ。
しかしその裸体の描写には一切卑猥さがなく、むしろこれぞ健全であると頷けるほどの健康的な女子中 学生の裸体が堂々と描かれている。
まさに、マネキンのような作画と言えよう。
「マネキンとは、なかなか言い得て妙ですね」
「マネキンに欲情する方が間違ってるのだ!」
そのような世論に後押しされ、女子中 学生の全裸を合法的に拝めるネギまは一種の芸術作品として後世に伝わっていくことは疑いようもない。
「魔王様もエヴァちゃんみたいなお召し物を着て勇者を出迎えてみてはいかがですか?」
「なあ!? あれはもはや下着であろう!?」
「然り。あの格好ならば、勇者と仲良くなれるかも知れませんよ? そしてゆくゆくはお世継ぎを……」
「私は淫魔ではなく、ヴァンパイアだ!!」
エヴァンジェリンもヴァンパイアなのだが、そんなことはさておき、滞在時間が残り僅かなのでそろそろ元の世界に帰らなくてはならない。
5: 以下、
「おや? もう戻られるのですか?」
「もうそろそろ勇者が城に攻めてくる時間だ」
「会いたくなったのですね、わかります」
「ち、ちがわい!」
側近の揶揄いを全力で否定して、魔法陣を展開し、嫌々ながら元の世界へと帰還した。
「なあ、この服はどうだ?」
「ただの下着じゃないですか」
「これはギリギリショートパンツだ!」
勇者の来襲に備えてギリギリなショートパンツを穿く私を見て、側近はやれやれと首を振り。
「さて、今日の得物はこれにしましょうか」
「モ、モーニングスターだけはやめておけ!」
「このツンツンしているところが堪りません」
「勇者の脳みそがデレデレしてしまうぞ!?」
「実は私、魔王様と同じくツンデレですので」
「ツンデレの意味を履き違えているぞ!?」
完全にツンデレの意味を履き違えた側近を諌めながらひょっとしたら自分もツンデレなのだろうかと考えつつ、今日も私は勇者を迎え討つ。
【ラブコメ好きな魔王様】
FIN
6: 以下、
引き続き、魔王モノのオリジナル作品を投稿します。
本編とは一切関係ありませんので、悪しからず。
それでは以下、おまけです。
7: 以下、
「勇者になんかなりたくないんだよなぁ」
幼い頃に読んだ物語に登場する魔王に憧れた私は、魔王が主人公のRPGを探し求めたのだが、生憎とそのようなニーズは世間様は求めていないらしく、これだというものに出会えないでいた。
「まあ、世の中そんなもんだよね」
時は流れて大人になり、勧善懲悪が蔓延するこの世の中に嫌気が差しながらも生きていく上ではそのルールに順応せざるを得ず、仕方なく善良ないち市民として退屈な日々を過ごしていたのだが、ある日、ようやくお望みのゲームが発売され、発売日に店頭に並んでそのゲームをプレイしてみたところ、期待通りの出来栄えだった。
VR専用のヘッドディスプレイを装着してゲームをスタートすると、そこは転生の間であり。
『この世界に転生する前に、魔王か勇者のどちらになりたいかを選んでください』
美しい女神に選択を迫られた私は迷わず魔王ルートを選択し、そして魔王としてゲーム内の世界に産声を響かせた。
8: 以下、
「ああ……どの勇者も捨てがたい」
寝る間を惜しんでレベルを上げて、ゲームスタート時に受け取ったユニークスキルのおかげもあって、私はすぐさま魔王としての頭角を現し、最強プレイヤーの一角に数えられた。
勇者側、魔王側のプレイヤーからも一目を置かれ、ついに大魔王の座を手に入れた私は数多の勇者と対決し、悦に浸っていた。
愚かな少年。
憐れな少女。
小癪な小娘。
小賢しい青年。
勇者にはそうした者が多く、そしてそれは私の嗜好にドンピシャでありドストライクだった。
「さあ、私の息の根を止めるがいい」
激戦の果てに魔王は決まって倒されるものだがそれも含めて私は魔王という立場と概念を受け入れ、甘んじて幾度も勇者に討ち滅ぼされた。
「躊躇うな。勇気を見せよ」
最後の一太刀、一撃は、何よりも甘美である。
9: 以下、
「次はあの初心者にしよう」
ゲームの売り上げは好調で、毎日ひっきりなしに新しいユーザーが新規アカウントを作る。
それは魔王側からリアルタイムで確認することが可能で、始めて間もない新米勇者の元に突如現れし絶対悪として洗礼を与えるのが魔王のお約束である。
「悔しければ力を身につけ、また挑むがよい」
絶対に勝てない負けイベントを行うことで、新規ユーザーは身も心も勇者となる。
そこで奮起せぬ者はクソゲーと詰り、もう二度とプレイすることはなかった。
そうして選別された真の勇者のみが力をつけてゲームの終盤で魔王と再戦を果たす仕組みだ。
「惜しいが、まだ少し足りないな」
力が足りなければ当然、勇者とて敗北する。
そしてまたレベル上げに勤しみ、挑戦する。
もっともその時には私もさらなる力を身につけているわけで、いたちごっこの関係だった。
「ああ、君はあの時の坊やだね」
愚かな少年をいたぶり、泣かせるのが好きだ。
「ああ、君はあの憐れな少女か」
憐れな少女を残酷な目に遭わせるのが好きだ。
「ふん。小癪な小娘めが。身の程を知れ」
小癪な小娘に身の程をわからせるのが好きだ。
「そんな小賢しい策が通用すると思ったか?」
小賢しい青年の策を先んじて潰すのが好きだ。
「さあ、盛大にクソを漏らして泣き喚くがいい」
何より、勇者がクソを漏らす様は、痛快だった。
10: 以下、
クソの王。
クソ魔王。
大便王。
脱クソ王。
そんな蔑称と共に数多のユーザーから忌み嫌われる私のユニークスキルは、便意操作。
その名の通り、便意を操作する能力である。
指を打ち鳴らすだけで、勇者はクソを漏らした。
「さて、貴様はどこまで耐え切れるかな」
勇者はレベルを上げることて便意に耐えられる時間を増やすことが出来るが、長期戦になればなるほどこちらが有利であり、デバフや瞑想などを連発して時間を稼ぎ、最終的には便意を耐え切れずに勇者がクソを漏らしゲームオーバーとなるパターンに持ち込み、勝利を重ねていた。
「んん? どぉしたぁ? 顔色が悪いぞ?」
便意で顔を青くする勇者を見るのが好きだ。
「おやおやぁ? なんだ? もう立てないのか?」
腹痛に喘ぎ、膝から崩れ落ちる勇者が好きだ。
「女の癖にクソを漏らしてくたばるとはなぁ!」
羞恥心に震える勇者を罵倒するのが好きだ。
「貴様には理性というものがないのか? ん?」
知的な勇者の理性を崩壊させるのが好きだ。
「ああ、邪悪なる女神よ……心より感謝します」
このユニークスキルを授けてくれた女神に感謝を捧げながら能力を発動し、レジストに失敗した弱者を強制的に敗北に追い込む戦闘スタイルは畏怖され、クソエンドと名付けられた。
11: 以下、
「サービス終了のお知らせ、か……」
瞬く間に歳月は流れ、オワコンとなった。
類似のゲームが世の中に出回り、飽きられたというのも理由のひとつだが、この私の存在によってユーザーが減ったことは否めない。
「まさか本当に世界を滅ぼしてしまうとはな」
一抹の寂しさを覚えながらも、嬉しかった。
ゲームをオワコンに追い込む心苦しさよりも、世界を滅亡させた達成感が上回った。
「ん? GMからのメール……?」
サービス終了のお知らせが届いたその日、ゲームを管理するGMよりメールが届き、それを開いてみるとそこには。
『Congratulations! あなたの勝ちです』
それを読んで私は悟った。
このゲームはこの瞬間の為に作られたのだと。
勇者と魔王、どちらが最後に勝ち残るのか。
それが知りたくて、GMはこのゲームをリリースし、そしてついに回答を得た。魔王の勝利だ。
「私は、勝ったのか」
どうやら私は勝利したらしい。
サービス終了の原因の一端となり終わらせた。
故に、コングラチュレーションを贈られた。
喜ぶべきか、悲しむべきか。
悼むべきか、喝采するべきか。
笑うべきか、泣くべきなのか。
そんなことは今はどうでも良かった。
「……さあ、勇者よ。最期の戦いを始めよう」
サービス終了間近に現れし最後の勇者と対峙した私は、戦闘開始の合図代わりに高らかに指を打ち鳴らし、ユニークスキルを発動した。
12: 以下、
「ほう? 私の力が効かぬか」
勇者は動じなかった。ただ静かに佇んでいる。
「随分とレベルを上げたようだな」
この勇者には見覚えがある。
というか、誰もが知っている有名人だ。
持たざる者と呼ばれし、最弱のプレイヤー。
誰しもゲーム開始時にひとつ与えられるユニークスキルを持って生まれなかった、異端児。
此奴は弱かった。誰よりも何よりも弱かった。
しかし洗礼たる負けイベントで泣かなかった。
歯を食いしばって、こちらを睨みつけていた。
あの日のことがまるで昨日のようだった。
あの瞬間に、私は最弱の勇者に恋をした。
その相手が最期の敵であって嬉しかった。
「む? 剣も抜かずに何を……?」
勇者は黙したまま、歩き出した。
剣を抜かず、構えず、徒手空拳のまま。
静かにゆっくりとこちらに近づいてくる。
「死にたいのか?」
便意操作が効かずとも、私は大魔王だ。
手刀だけでも首を断つことは出来る。
しかし、最弱の勇者が纏う異様な雰囲気が気になり、首を刎ねるのを躊躇した。
いや、正直に言おう。
気圧され、動けなかったのだ。
そして勇者は、おもむろに、私の腹に触れた。
「っ……!?」
ぎゅるるるるるるるるるるるるるるるぅ?っ!
その瞬間、この世界で初めて、便意を感じて。
この勇者が私と似た力を有していると気づき。
宿便を呼び起こされ、宿敵であると認識した。
13: 以下、
「あんたに俺の気持ちがわかるか?」
腹痛に喘ぐ私を見下して、勇者は吐き捨てた。
「クソの魔王と似た力を使うに使えずに、最弱と呼ばれ続けたこの俺の気持ちが、わかるか?」
最弱の勇者はユニークスキルを持たなかったわけではなく、それをずっと使えずにいた。
その理由は紛れもなくこの私の存在だろう。
クソの魔王として猛威を振るうこの私が居たから、勇者は力を使えずに最弱と呼ばれ続けた。
「俺はあんたを恨んだ。いつか絶対に復讐すると誓い、これまで屈辱に耐えてきたんだ」
そしてその復讐は今この時、この瞬間。
サービス終了の間際に果たされることとなる。
勇者は私の髪を掴んで顔を上げさせ、血走った目をギラギラと光らせ、怒鳴り散らした。
「残念だったなぁ魔王! あんたは最期の最期にこの俺に敗北する! このクソの勇者になぁ!!」
自らクソの勇者と名乗り。能力を明かして。
そのユニークスキルを受け入れた勇者は。
その名の通り便意を超越した存在だった。
14: 以下、
「ひとつだけ、聞かせてくれ……」
「なんだ?」
「貴様は我が力をレジスト出来るのか?」
便意に喘ぎながら、私は勇者に尋ねた。
クソの勇者には本当にスキルが通用しないのか。
だが、それでは洗礼の時の説明がつかない。
あの時、たしかに、此奴は漏らした筈だ。
その私の疑問に、クソの勇者は苦々しく答えた。
「残念ながらレジストは出来ない」
「つまり、貴様は……」
「ああ。俺は既にクソを漏らしている」
勇者は既にクソを漏らしていた。
クソの勇者はクソを漏らしていたわけだ。
しかし、そこで新たな疑問が生じる。
ゲームのルール上、脱クソはゲームオーバーだ。
なのに何故、クソの勇者は倒れないのか。
「クソを漏らしても立ち向かう勇気。俺はそれを獲得して脱クソを乗り越えた。ただそれだけだ」
その返答に、私は震えた。
これぞ、これこそが、まさに真の勇者。
勇者とはかくあるべきという誠の勇気を見た。
その瞬間、私は敗北を悟り、脱クソした。
ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ?っ!
「フハッ!」
これがゲーム内での脱クソの感覚。
素晴らしくリアルな排便感。
宿便を吐き出して、爽快感に浸り。
湧き上がる愉悦によって、口角が釣り上がる。
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
まるでゲームクリアのファンファーレの如く。
私は哄笑という名のいてつく波動を響かせた。
周囲に冷気が広がり、世界は凍り、静止した。
15: 以下、
「ふぅ……愉しかった」
輝く吐息と共に悦を全て吐き出して。
氷漬けとなった勇者の氷像を撫でる。
その尻の部分にはたしかに膨らみがあった。
「まさか氷漬けになるとは思わなかったか?」
勇者は答えない。
ただそこに在り続ける。
この私がここに居続けるのと同じように。
「この瞬間を、永遠と名付けようではないか」
ゲームの終わりに永遠を得た。
フリーズした世界に、私は存在し続ける。
そして勇者もまた、存在し続ける。
「クソの勇者よ。貴様に世界の半分をやろう」
そんな昔のゲームに出てくる魔王の台詞を口にして、物言わぬ氷像の勇者に接吻を施した。
唇に伝わる冷たい感触とは裏腹に、顔は火照り、胸は高鳴り、心は激しく発熱している。
そうしたエンディングは、嫌いではなかった。
少なくとも、勧善懲悪よりは断然マシである。
世界はクソの魔王と、クソの勇者のものとなった。
【クソの魔王】
FIN
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1566389133/
いちご100% 全19巻 完結コミックセット(ジャンプ・コミックス)
集英社 河下 水希 2010-01
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