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青葉モカ「雲と幽霊」


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 お盆も過ぎた夏のころ。あたしはベンチに座って空を見上げる。
 青々と広がる大空には入道雲があって、きっとあの中には昔映画で見たみたいなお城があるんじゃないか……って考えるんだろうな、なんてことを薄ぼんやりと考えていた。
----------------------------------------------------------------------------
42: 以下、

「あっついねぇ?……」
「……暑い」
 あたしの言葉が聞こえているのかいないのか、少し前を歩く蘭が独り言みたいな呟きを口から漏らした。それからキョロキョロと辺りを窺って、ポケットから出したスマートフォンに目を通す。
「どこだろ、ここ……」
「考えなしに歩くからそうなるんだよ?」
「…………」
 やっぱり蘭は応えずに、小さなため息を吐き出して、無造作にスマホをポケットに再び投げ込む。それを見て、だからしっかり行き先を決めればよかったのにー、と思う。
43: 以下、
 事の発端は蘭の思い付き。
 夏の終わりを見に行きたい、とかそんな感じのことを呟いたと思ったら、ロクに準備もしないでお財布とスマホだけ持って家を出るもんだから、友達想いのやさし?モカちゃんはそれを放っておくことなんて出来ず、その突発的な行動に付き添うことにしたのでしたとさ。
 蘭は家を出発すると、とりあえず駅まで行って電車に乗って、ただ西を目指していった。
 お盆も高校野球も終わった晩夏の車内。平日の昼下がりだから人も少なくて、ガラガラの車内で肩を並べてあたしたちは車窓からの風景をただ黙って眺める。
 中央線で八王子を超えると緑の割合がどんどん多くなっていって、高尾駅で電車を乗り換えてからは「本当に新宿から1時間で来れる場所なの?」って具合な山の中を電車は走り続けていた。
 そして山梨のある駅で降りてから、風の吹くまま気の向くまま炎天下の中を30分ほど歩き続けたのがちょうどいま、という感じだった。
44: 以下、
「ほらほら、蘭?。あそこの木陰にベンチがあるから休んでいきなよ」
「ベンチ……」
 のったりと、まるでゾンビみたいな動きで視線を彷徨わせた蘭は、ベンチの方へ顔を向けて小さく声を出す。そしてのそのそとそこまで歩いていって、大きなため息を吐き出しながら腰を下ろす。
「そーそー、休憩は大事だよ」
 あたしもそんなことを言いながら、フワリと蘭の隣に腰かけた。
「…………」
「…………」
 それからしばらく、言葉もなくただ緑の多い夏の情景を眺める。
 車通りのない田舎の道路。蝉の求愛の声が響き、頭上に茂った木の葉っぱはサワサワささめいていた。吹き抜ける温い風には夏の緑の匂いが混じっていて、どこか懐かしい気持ちが胸をくすぐったような気がする。
 日本のどこにでもある夏の景色。その一角のここだけを切り取ったみたいに、蘭以外の人は誰もいない。
「モカ……」
 また急にこんなことしだして、なんて思っていると、蘭があたしの名前を呼んだ。「ん?」て応えたけど、蘭は黙り込んでしまう。
 それから再び言葉がなくなる。聞こえるのは夏の音たちと、たまに通りがかる車の排気音。
 ふと見上げた空に大きな入道雲があって、きっとあの中には昔見た映画のお城があるんだろーな、とあたしは考えていた。
45: 以下、

 雲が遠い。
 あの雲まで行くにはどれくらい歩けばいいんだろう。そんなことを思って、少しだけ胸が苦しくなった。その気持ちが声になって、身体から零れ落ちたような気がした。
 変な気持ちを誤魔化すために、今日も空が高いな、とわざとらしく思った。
46: 以下、

 ベンチで空を眺めたあと、蘭はまた立ち上がって歩きだした。ただただ西の方へ、太陽が沈みゆく方へ向かって足を進める。
「どこまで行くのさ?」
 晩夏とはいえまだまだ陽の長い太陽。それが傾いて、光に朱が差してきたころに、もう一度あたしは蘭にそう尋ねる。
「……どこまで行くんだろ」
 蘭はそう呟くだけだった。それから途中に見つけたコンビニで買ったお茶を二口飲んで、はぁ、と息を吐き出す。ずっと歩き詰めだったから疲れているみたいだ。
「なんだかモカちゃん、眠くなってきたなぁ。もう日も暮れるし、そろそろ帰った方がいいと思うよ??」
「でも、行かないと」
「……そっかぁ」
 蘭は西日を見つめてまっすぐに歩き続ける。眩しくないのかな、なんてちょっと思った。
 そうして蘭と一緒に西へ西へと足を進める。コンビニでアイスを買ったり、小さな公園で休憩したり、日本三奇橋の一つの上で黄昏たりしながら。
 なんだか夏を久しぶりに感じたような気がして、一心不乱な蘭と一緒にこのままどこか遠くへ行けたらいいのにな、なんて思っちゃった。でもまぁ、リアリストのモカちゃんはそんなの出来っこないって分かってるんだけど。
47: 以下、

 このままずっと遠くに行ってみたい。そんなことをふと思った。
 太陽はいつしか彼方の稜線に顔を沈めようとしていて、真向かいになった朱い夕陽が目に染みた。
 このままずっと歩いて行ったら何があるんだろうか。何かあるんだろうか。
 少しだけ考えて、きっと何もないんだってすぐに分かって、途方もなくなって、寂しくて、足が止まった。
 カナカナと鳴くひぐらしの声が頭の中で反響する。いつかの記憶も反響する。あれは冬のことだったっけ。考えたくないのに考えてしまって、しばらくその場から動けなくなってしまった。
48: 以下、

「そりゃ疲れるに決まってるよ」
 立ち止まった蘭が歩きだすのを待って、そしてしばらく頼りなく足を前に進めて見つけたバス停のベンチに乱暴に腰を下ろすのを見て、あたしは呆れたように口を動かす。
「…………」
 蘭は俯いて、自分の靴の先をただジッと見ていた。ここまで歩いてきた自分の足を褒めてあげてるのかな。いや、そんな訳ないか。
「はぁー……本当、どこだろうね、ここ」
「……モカ」
「んー?」
「…………」
「ふぅ、やれやれ……困った蘭ちゃんですなぁ」
 蘭と同じようにベンチに座って、あたしは西の空を見上げてみる。もう陽はほとんど沈みかけていた。
 それから東の空へ目を移した。入道雲はもうどこにも見当たらないけど、暗くなった空には雲がいくつか浮かんでいた。
49: 以下、
「雲が高いねぇ」
「…………」
 返事はない。蘭は俯いたまま何も言わない。
「でもさ、夜の雲って、地表の光が照らしだしてるんだって。だから目にはっきり見えるのは低い雲なんだよ」
「…………」
「これぞ108個あるモカちゃんマメ知識のうちの一つなのだった」
「モカ」
「なにー?」
 蘭が呟きを落とす。あたしは空を見上げたまま言葉を返す。
 返したけど、でも返ってこないよね、と思って、ものすごく寂しくなった。じわりと少しだけ雲が滲んだ。
50: 以下、

 何をやっているんだろう、という気持ちしかなかった。
 夏の終わり方が知りたかった。それを知ればもしかしたら、って思った。だから西へ西へ、太陽を先回りするようにして進んできた。でも気付けば太陽に追い越されていて、もう空は暗くて、雲だって遠くて、あたしはどこにも行けないって嫌でも思い知らされた。
 スマートフォンのマップの現在地。山梨県の東の方。今日自分が動いた距離をマップで見ると、ちょっとの距離しか動いていない。はるか上空から日本を見下ろすように縮尺を小さくすれば、何時間もかけた辿った旅路だって僅かな点でしかない。
 ……電車を使って、それから自分の足で歩き続けたって、これしか動けないんだ。そう思ってしまうと、涙が零れそうだった。
 自分が情けなくて、いつまでも過去に縋る自分がみっともなくて、でもそれでもどこか遠くへ行けばまたあの姿が見えるような気がして、だけどそんなのただの夢物語でしかないってすぐに理解してしまって悲しくなる。
「モカ」
 返事になんて返ってきやしないのに、これが何度目かなんて数え切れない呟きを落とす。もう何をしたって、どこに行ったって二度と会えない、遠い遠い大切な人の名前。
51: 以下、

「まあね、蘭の気持ちは分かるよ。あたしだってさ、きっと蘭が……ううん、蘭だけじゃないや。ひーちゃん、つぐ、トモちん……誰がいっちゃったってさ、きっと同じようなことをするよ」
 空が遠いなぁ、なんて他人事みたいに思いながら、あたしは届かない声を発する。
「でもさ、蘭。そろそろちゃんとね、前を向いて行かなきゃいけないと思うよ、あたしは。そりゃあ嬉しいよ。嬉しい。蘭がずーっとモカちゃんを覚えててくれて、会いたいって思ってくれるの。もうあたしはお化けだけどさ、でも蘭の中でなら生き続けてるんだーって思うと嬉しい。でも、寂しいよ、それは」
 聞こえていないだろうけど、それでも言葉を紡ぎ続ける。
「やっぱり、蘭にはちゃんと前を見て歩いてもらいたいなって。いつまでもいつまでも後ろ向きに歩いてないでさ、ちゃーんと陽がのぼる方に歩いて行ってほしいなって、そう思うんだ」
 本当はこのまま蘭とずっと一緒にどこまでも行けたらいいのにな。そう思いながら、やっぱりリアリストなあたしの口をつく言葉はこんなものだ。
「もうさ、モカちゃんはいないんだから」
52: 以下、

 大切な人が亡くなった。
 それは人生の中で何度か絶対に経験しなくてはいけないことだろう。
 でもきっとそういう悲しい話は歳をとってからのことだし、その頃にはあたしたちだって大人だし、割り切り方とかそんなものをずる賢くおぼえていて、自分の心をどうにか整理して生きてくことが出来るんだと思う。
 だけど今のあたしたちはまだ子供だった。
 交通事故だとか、そんなものはきっと漫画やドラマやニュース番組の中だけで目にするもので、身近な人間がそういう憂き目に遭うことなんて1ミリだって考えてなんかいなかった。
 だからあたしは、モカがいなくなった半年前からずっと、こうして無駄なことをし続けているんだ。
53: 以下、
 何かがあればきっとモカに会える。
 例えば春になれば、夏になれば、秋になれば、冬になれば、日が暮れれば、雪が降れば、桜が舞えば、歳をとれば、大学にいけば、就職すれば、飛行機に乗れば、どこか遠くへ行けば、あの夕陽を眺めれば……。
 一言で言えばそれはくだらない現実逃避だ。今でもあたしはまだ、モカに会えるんじゃないか、なんて絶対に叶わない幻想を引きずっているだけなんだ。
 大人ではないけれど、もう子供でもない。だから知っている。もうモカに会うことも、一緒にギターを弾くことも、寄り道してパンを食べることも、全部出来ないんだって。
 それでも、無駄なことだとしても、こうしてモカの影を探し続けないと、あたしの中のモカがどんどん薄れていってしまうような気がしてならなかった。それが嫌で嫌でたまらなかった。
 だからあたしは、どこにも存在しないであろうモカの幻影をこんな風に追いかけ続けている。
 そうしていればいつかまた会えるような気がして嬉しくなって、でも日が沈むころにはどうしようもない徒労と一緒に痛感させられる。
 もう大切な幼馴染の姿を見ることも、声を聞くことも出来ないんだって。
「モカ……」
 靴のつま先を眺める視界がぐにゃりと歪んだ。鼻がツンとして、身体の奥底から生じた熱いものが喉につっかえて、上手に息が出来なくなる。
54: 以下、

「泣かないでよー、蘭?」
 俯いた蘭が肩を震わせる。その姿を見るとあたしまで悲しくなって、寂しくなって、涙が出そうになる。
「モカ……」
 何かに縋るような頼りない声。「らしくないよー」と返した自分の声も震えているような気がした。
「もうさ、四十九日もとっくに終わって、お盆も終わったんだから。もうすぐあたしは空の高い高ーいところまで戻るんだから。たぶん」
 そう声をかけるけど、やっぱり蘭は俯いてぐすぐすと言うだけ。そんな姿が最期のお別れだと、きっとあたしもおちおち眠ってられなくなるよ。
「……だからさ、もういいんだよ、蘭」
 聞こえてないんだろうなー、と思いながら、あたしは蘭の震える肩に手を置く。触れないから添えるって方が正しいのかもだけど。
55: 以下、
「空が高いよ。本当に不思議だよねぇ。もうさ、あそこにモカちゃんはいかなくちゃなんだ」
「モカ……モカっ……」
 ついに蘭からはすすり泣くような声が漏れ始めてしまった。それがとっても嬉しかった。こんなモカちゃんなんかのために親友がまだ泣いてくれることがホントのホントに嬉しい。
 だけど、いない人のために流す涙ってきっともったいないよ。
「だーかーらー、いいんだって。みんなが死ぬほど泣いてくれて、蘭だってこんなにさ、ずっとあたしのこと考えてくれてさ……だからもういいんだよ。あたしはもう、やまぶきベーカリーのパンが食べられないくらいしか思い残すことはないんだよ」
 届かないだろうけど、この先の言葉だけは絶対に聞こえて欲しいな。そう願いながら、あたしは隣に座る蘭の肩に手を回して、触れないけど、万感の思いを込めて、そっと抱きしめる。
「もういいんだよ。だからさ……蘭もさ、もういいんだよ」
 もうこの世にいないあたしなんかのために、こんなに頑張らなくたって。
 そう続けたところで、フワリと身体が浮くような感覚がした。
 ああ、もうお別れなのかな。もう少し蘭と話してたかったな。そう思いながら、なんだかものすごく眠たくなった。
 心地のいい夜風があたしを撫ぜていって、それに身を任せて目を瞑った。
56: 以下、

「……っ!」
 ふと、声が聞こえた様な気がした。
 空にはもう一番星が煌めていて、虫たちの静かな鳴き声がこだましている。その中を吹き抜けたゆるい夜風にのって、懐かしい声が聞こえた様な気がした。
 辺りをキョロキョロ見回すけど、当然誰もいない。車も何も通らない田舎の道路だった。
 でも確かに聞こえたような気がして、あたしはベンチを蹴り飛ばす勢いで立ち上がる。
「モカ……?」
 声に出しつつ、誰かに肩を優しく抱かれているような感覚がした。ふんわりと焼き上げた菓子パンみたいな甘い香りが鼻腔をくすぐった気がした。
『蘭もさ、もういいんだよ。……あたしなんかのために、こんなに頑張らなくたって』
 と、珍しく真面目で、優し気な調子の声が聞こえた気がした。
 けれどそれらはすぐに夏の夜風にさらわれて、肩を抱かれたような温もりも、甘い香りも、優しい声も、全部が全部、蜃気楼のように消えてしまった。
 それが寂しかった。
 でもどうしてだか、モカに優しく背中を押されたような気がした。
57: 以下、

 一周忌、なんて言葉は聞きたくもないし聞き慣れたくもない言葉だったけれど、気が付けばそういう言葉とも向き合わなければいけないような季節になっていたし、あたしもそれをある程度割り切って受け入れられるくらいには、あの夏の頃よりはきっと大人になったんだろう。
 家を出て、肺に冬の空気を吸い込んだあたしは、商店街へ足を向ける。
 足取りは軽いワケがないけれど、さりとて鎖につながれたような重苦しいものでもない。
 午前9時の冬の街を歩き、みんなとの待ち合わせにしている羽沢珈琲店へ向かう前に、あたしはやまぶきベーカリーへ寄り道をした。モカへのパンを買っていくためだ。
 きっとあの日の声は幻聴だと思うけれど、でもきっとモカのことだから、幽霊になったってこう言うだろうことは想像に難くなかった。
『あたしはもう、やまぶきベーカリーのパンが食べられないくらいしか思い残すことはないんだよ』
 店内にただよう焼き上がったパンの甘い香りからやけにその姿が鮮明に思い浮かべられて、少しだけ笑った。
 おわり
58: 以下、
参考にしました
ヨルシカ 雲と幽霊
https://youtu.be/JJaCwW4HyVs
個体の方、モカちゃんが好きな方、本当にごめんなさい。
59: 以下、
美竹蘭「は?」
※キャラ崩壊してます
60: 以下、
――青葉家 モカの部屋――
青葉モカ「…………」
美竹蘭「…………」
モカ「……ねぇ、蘭?」
蘭「なに?」
モカ「あのさ、流石に冬とはいえ、ちょーっと暑いなぁってモカちゃんは思うんだよね」
蘭「それが?」
モカ「いやねぇ? そろそろさ、離れてくれないかなーって」
蘭「やだ」ギュウ
モカ「そっかー」
蘭「うん」
61: 以下、
モカ「…………」
蘭「…………」
モカ「ねぇ、蘭?」
蘭「なに」
モカ「なんで急にこんなべったり抱き着いてきたの?」
蘭「別に」
モカ「別にじゃ分かんないよー」
蘭「……モカが悪い」
モカ「えぇ、羽丘女子学園いい子選手権準決勝まで勝ち進んだモカちゃんが悪いのー?」
蘭「そうやってふざけるモカが100%悪い」
モカ「そっかー」
蘭「うん」ギュー
62: 以下、
モカ「…………」
蘭「…………」
モカ「ねぇ、蘭」
蘭「なに」
モカ「もしかして、怒ってたりする?」
蘭「なんで」
モカ「んーん、なんとなく」
蘭「……まぁ」
モカ「ほーほー、なるほどねぇ。それもモカちゃんが悪い系?」
蘭「モカが悪い系」
モカ「そっかぁー」
蘭「うん」ギュッ
63: 以下、
モカ「…………」
蘭「…………」
モカ「ねぇ、蘭ちゃんさま?」
蘭「なに」
モカ「言っちゃあなんだけど、さっきのは作り話だよ?」
蘭「それが?」
モカ「いやねぇ、前にさ、みんなで考えたじゃん? 漫画のストーリー」
蘭「考えたね」
モカ「モカちゃん、あの時真面目にふざけてたからさー? 今度は普通に考えたんだよ?」
蘭「それがあの話?」
64: 以下、
モカ「そーそー。セカイ系? っていうのが流行ってるーって聞いたんだ」
蘭「それでモカがいない世界の話なんて考えたわけ?」
モカ「そーだよー」
蘭「一応聞くけど、なんでモカがいない世界なの」
モカ「それはほら、ドラマチックに人が死ぬストーリーって売れるじゃないですか? だから――」
蘭「あたしはハッピーエンド以外認めない」
モカ「ぶー、最後まで聞いてよー蘭?」
蘭「やだ。最期とか言わないで」
モカ「たぶんそれ字が違うんじゃないかなぁ、蘭の言ってるのとあたしの言ってるので」
蘭「同じだから」
モカ「絶対違うよ?」
蘭「あたしにとっては同じだから」
モカ「そっかぁー」
蘭「うん」ギュゥゥ
65: 以下、
モカ「…………」
蘭「…………」
モカ「ねぇ、蘭?」
蘭「なに」
モカ「モカちゃんの作り話を聞いて蘭が怒ったっていうのは分かったけどさ」
蘭「別に怒ってないし」
モカ「怒ってる時の反応だよー、それ」
蘭「モカが悪いから。あたしは悪くないから」
モカ「あーうん、ごめん?」
蘭「別に」
モカ「それはそれとしてさ、本当にそろそろ離れてくれない? 流石にモカちゃん苦しいんだ」
蘭「絶対嫌だけど」
モカ「よーし、それじゃあ質問を変えちゃおう。甘えんぼ蘭ちゃんはどうすれば離れてくれるかなぁ?」
蘭「甘えん坊じゃないし」
モカ「蘭ー、ちょっと自分の行動振り返りなって。もう1時間近くこのままだよー? ずっと抱っこちゃん人形になってるよー?」
蘭「だからそれはモカが悪いから」
モカ「……そっかぁ」
蘭「うん」ギュー
66: 以下、
モカ「…………」
蘭「…………」
モカ「よっし、じゃあこーしよー」
蘭「うん?」
モカ「今度はちゃーんとハッピーエンドの話を考えるからさ、それで今日のところは離れてくれないかな?」
蘭「…………」
モカ「あ、これはもう一押し必要な感じですなぁ。えーっと、じゃあ……今日はウチに泊っていっていいから」
蘭「……まぁ、そこまで言うなら」スッ
モカ「ふぃー暑かったぁ……暖房つけないでおけばよかった」
蘭「まったく、モカはいつもそういうとこ抜けてるよね」
モカ「蘭? 今さらクール気取っても遅いと思うよ?」
蘭「別にそういうんじゃないし。……そういえばさっきの話だけどさ」
67: 以下、
モカ「うん?」
蘭「だから――、って何か言いかけてたよね」
モカ「ああ、甘えんぼ蘭ちゃんに遮られたあの続きだね」
蘭「甘えん坊じゃないから」
モカ「どの口がそー言うのか」
蘭「……まぁそれは今はいいでしょ。なんでモカがいない世界なんて考えたの?」
モカ「んーほら、やっぱりさ、友達とかと永遠に会えなくなる話ってとっても悲しいじゃーん?」
蘭「うん」ジリ...ジリ...
モカ「……めんごめんご、今のもモカちゃんが悪かったからジリジリ距離つめてこないでほしいなぁ、蘭」
蘭「詰めてないよ。で? 悲しい話だからどうしたの?」
モカ「あーうん。悲しい話って、そーいう嫌な目に誰かが遭うことになるでしょ?」
蘭「まぁ、そうだね。悲しい話だからね」
68: 以下、
モカ「そしたらさ、やっぱり、蘭とかつぐとかひーちゃんとかトモちんにはさ、お話の中でもそんな目に遭ってもらいたくないなーって」
蘭「…………」
モカ「だから、それならあたしがそーいう役目になればいいかなぁ……みたいに思ったんだよね」
蘭「…………」
モカ「やー、やっぱりみんなにはどこでも幸せに笑ってて欲しいからさー」
蘭「……モカ……」
モカ「んー……? あれ、モカちゃんまた何か地雷踏んだ気がするなぁ……」
蘭「…………」ジリジリジリ...
69: 以下、
モカ「蘭ちゃんさまー? どうして無言でじりじり近付いてくるんでしょーか?」
蘭「モカっ」ガバァ
モカ「うきゃー、やっぱり?……」
蘭「ほんっっとにモカはそうやって……」ギュー
モカ「はぁぁ……暖房、消し忘れたぁ……。蘭ー、だから暑いってー」
蘭「知らない」
モカ「あーもー、分かりましたよー。モカちゃんが悪かったから、もう好きなだけ抱き着いてていーよ」
蘭「言われなくたって」
モカ「……果たして甘えんぼ蘭ちゃんはいつ気が済むのでしょうか」
蘭「甘えん坊じゃない」
モカ「ちょっと鏡見てみなよ、蘭」
蘭「やだ」
モカ「……あー、これは長期戦になりそうですなぁ……」
そしてそう思った通り、翌朝まで蘭ちゃんにべったり抱き着かれたりなんだりするモカちゃんでしたとさ
おわり
70: 以下、
ドラマチックに人が死ぬストーリーって売れるじゃないですか。
花の散り際にすら値がつくのも嫌になりました。
そんなアレでした。すいませんでした。
元スレ
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【悲報】福井県の幸福度日本一、実は「嫁の犠牲」の下に成り立っていることが判明・・・地元紙が問題提起

【くま】札幌市の住宅街を歩き回っていたクマ、猟友会により射殺される

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元木昌彦さん「表現の不自由展は言論の自由度が低いこの国にふさわしい終わり方をした。津田の涙で終わらせてしまってはいけない」

【極画像】マクド、最終奥義発動wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

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DHCテレビ「どこが『嫌韓的』『歴史を歪曲』か具体的に指摘してみろ」 韓国メディアらに反論

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