【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】back

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】


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2:
>>1
お手数おかけして申し訳ございません。ありがとうございます
4:
ざっくりになると思ってたんだけど思いの外書く事多くて若干後悔しながら振り返るこれまでの艦天
・川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!!
自称『理不尽無差別系怪異』の貞子(川д川←こいつ)が鎮守府に渦巻く呪力によってパワーアップ。筋肉は金玉を強打した
呪いの一つとして時雨が神隠しに遭い、代わりに送られてきたのは人の姿として顕現した『巫剣』、菊一文字則宗だった
貞子を筋肉式魔封波スープレックスによって炊飯ジャーに封印したものの、彼女を元の世界に戻し、時雨を連れ帰らねばならなくなったのだ
・【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】
貞子の呪いパワーを使って1889年の異世界、『銘治』時代へと訪れた筋肉、天龍、夕立、秋雲に菊一文字を加えた時雨を蛇の目でお迎え嬉しいな隊
出迎えたのは彼女と同じく新選組の局長と副長、長曾祢虎徹と和泉守兼定。そしてこの世界の異形、『禍憑』
クソザコナメクジの群れを残虐ファイトでぶち殺した一行は、巫剣を中心とした特殊組織『御華見衆』の上野支部、『めいじ館』を訪れる
割とあっさり時雨と再会できた筋肉少女隊は、めいじ館のボスである『流石 千母』に事情を説明。帰る為には銘治時代からの『神隠し』が必要であった
それには霊脈とかいう謎のアレからこうなんか吸い上げる柱である『禍要柱』。その特異型を見つけなければならない
菊一文字を送り届けた礼として、監視名目でめいじ館での長期滞在と協力を確約。実際ノゾミ・カナエ・タマエみたいな感じだった
とは言えタダでお世話になるのも悪いので、喋るカラスを操る巫剣『小烏丸』の提案もあり、筋肉一行はめいじ館の茶房で働く運びとなった
その他にも、監視役の『小夜左文字』や新米巫剣使いの『椎名 美琴』やらその愛刀の『城和泉正宗』との出会いもあり、筋肉はメイド服を着た
5:
・【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第二章【天華百剣】
相変わらずメイド服を着てる筋肉に、京都支部から戻ったソボロ助廣による特異型の調査報告が入る
他にもなんか御華見衆や巫剣の事やら教えて貰うものの、アホなんでよくわかってないままその活躍を実際に見学することに
巷を騒がせている禍魂を作り出す麻薬の砂糖、『桜禍糖』を摂取し、禍憑になりかけた中毒者を成敗する
しかし、現場での若の仕事振りに対して虎徹と城和泉が衝突。城和泉が放った一言により、虎徹はその場を後にする
なんやかんやあってお節介野郎の筋肉により、機嫌は直ったが代償として頭からゲロを被った(ご褒美)
翌日、巫剣使いとして伸び悩む若に対して筋肉流指導を施し、多少は吹っ切れて貰ったりした。そろそろあらすじ書くのも疲れてきたのである
その後、菊一文字則宗が夕立を巡って陸軍と衝突。『茂名大尉』と『三浦中尉』と出会い、なんとかその場を治めるが、彼らには桜禍糖を流通している容疑があった
表向きは協力関係にある陸軍と御華見衆。筋肉は小夜左文字の協力の下、茂名との姦t内通を謀り真相を探ろうぜ作戦を迂闊にも厨房でM字開脚並みにおっぴろげに話した
実際インリン・オブ・ジョイトイな作戦に小夜の許可と協力を得て部屋に自室に戻ると、筋肉を待っていた虎徹から世話を掛けた礼として切り込みを入れてしまったマスクを縫うと提案される
快諾はしたものの何か裏があると思った筋肉の割と直接的な問いかけに対して、彼女は主を失った過去と若が心配であるという想いを吐露するが
男として一人前になりたい若に対しての侮辱に他ならないと捉えてしまった筋肉は、女性に対するデリカシーや気を使えないクソ野郎なのでキツイ言葉を浴びせてしまう
結果として結構いい雰囲気になっていた二人は仲違いし、そこからお互い最低限の会話しかしなくなってしまう
そうこうしている内に茂名が頻繁に訪れる歓楽街へと足を運んだクソ野郎と時雨は、待ち構えていたかのように陸軍と接触
SAN値直葬な洋館に案内され、件の陸軍大尉に名ばかりの晩餐に招待されることとなる
茂名からは『手違いでこの世界へ連れてきたあなた方を返したい』と言われ、当初は時雨の艤装目当てだと考えていた脳みそ筋肉クソ野郎は考えを改める
陸軍の目的は『深海棲艦』であり、時雨及びデリカシー欠如ウジ虫野郎は偶然に巻き込まれただけだったのだ
「邪魔さえしなければ、無事に元の世界へ送り返す」と提案された物の、生来の義理堅さと不確定要素からそれを断り、館を後にしようとする
しかし部屋を出た瞬間、もう一人の容疑者とされる御華見衆に所属していない巫剣『北谷菜切』の襲撃に遭い、ナオルヨくん(爆発物)を使って辛くも脱出
当初は餌に使おうとした『未来の情報』を欲しがらなかったという疑問が残ったが、取り急ぎめいじ館に戻ろうとする二人の前に立ちはだかったのは、小夜を襲う城和泉正宗だった
・【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第三章【天華百剣】
巫剣が禍魂に犯されることで陥る暴走状態、通称『錆憑』になりかけていた城和泉を止めるため戦いを決意したクソ提督とクソガキのクソクソコンビ
『刃こぼれ』状態の小夜の助けもあり、なんとか援軍到着まで時間を稼ぐことに成功する
戦闘中に城和泉の記憶を何らかの力で追体験した筋肉は、自身の迂闊な行動によって若と城和泉が先手を打ち、敵の手に落ちた事を知る
現場の収拾を着けに現れた小烏丸と、女将の娘であり富士見支部『みやこ屋』の支部長でもある『流石 阿音』に後を任せ
陸軍兵に連行される形で、筋肉は単身本拠地へと乗り込んだ。頭とか色々どつかれても耐久力が高すぎるが故に気を失えないのは不憫だと思う
身体を拘束された筋肉を待ち構えていたのは、薄い本よろしくな薬責めであった。ようやく気を失い、牢獄へとぶち込まれてしまう
目を覚ますと、おなじく投獄されている三浦中尉の目の前でゲロを吐く筋肉。同じく茂名によって薬を流し込まれたと言う彼と一時的に協力体制を取る
しかし、会話をする中で違和感を覚えた筋肉。天龍、秋雲、そして巫剣の『抜丸』に救出された後も、疑惑を抱き続ける
決定打は抜丸が秘密裏に寄越した女将からの情報。疑惑を確信に変えた筋肉は、若の救出及び深海棲艦の討伐を果たすまで三浦を利用すると決めた
案内された司令室にて茂名と手練れの配下。そして人形のようにされた若と、彼を愛でる北谷菜切と対峙する
脊髄の赴くままに暴れ罵倒を繰り返し、夕立まで起用してなんとか若を連れ出した彼らを待ち構えていたのは
駆逐イ級と禍憑のハイブリット種、陸での戦闘に特化した獣棲艦であった。味方を救う為に砲撃の盾となった筋肉は死を覚悟するが
再度合流した天龍に間一髪救われ、ナオルヨくん(爆発物)に入っていた『高修復剤』によって全快する
後の伏線になりそうなアレはさて置き、禍憑と化した茂名との男魂ガチ○コバトルに一度は勝利するも、第二形態になったことで逆に追い詰められる。ズルじゃん
だが、艤装を背負った時雨の登場により、戦況は一変。筋肉一行は菊一文字則宗を始めとした巫剣と強力し、獣棲艦に捕らわれた夕立を救う
マッスル鎮守府総戦力及び、めいじ館の巫剣達の総力を合わせ、夕立によるトドメによって獣棲艦を撃破。茂名第二形態も、艤装装着済みの時雨によって一方的に惨殺される
一件落着に見えたが、姿をくらましていた三浦が再び姿を見せる。筋肉はこれまでの矛盾点、そして女将からの情報を突き付けた
今回の件もあってか、過去に起こった特異型による失踪事件の年月を調べると、その日時ピッタリに行方不明になっていた人物が見つかっていたのだ
それが三浦中尉本人であった。追い込まれた彼に対して投降を勧めるが、禍魂に犯されていた若が操られたことにより、事態は一変
「海で待つ」と言い残し、三浦は姿を消す。筋肉はこれまでにない濃い禍魂を若から流し込まれ(エッチな意味ではない)、暴走状態へと陥るのであった
6:
登場人物
・地獄の血みどろマッスル鎮守府
( T) 筋肉(マッスル)
Village Peopleの『Can't Stop The Music』のダンスを完全再現できる
その腰つきはストリップ・クラブのトップダンサーすら凌ぐという。敏感乳首日本代表
時雨(バカ)
邦ロック好き。サンボマスターが特に好きだが、最近はヤバイTシャツ屋さんがお気に入り
アホなんで入籍はノリでやるもんなのかなぁって思い始めてる。ええやんええやん
夕立(ビビり)
たまにどうしようもなく提督の『強いぞ、ガストン』完全再現を見たくなる(卵食う所が本当にしんどい)
一度、ルフゥの真似をして提督の首にベルトを巻き付けてぶら下がった時に失神させた経験を持つ
天龍(ポスト桓騎)
演習相手の鬼の二水戦を半殺しにして那珂ちゃんにドチャクソ怒られた時は流石に一週間大人しく過ごした
余所の天龍全ての憧れとして君臨していることを本人は知らない
秋雲(詐欺師)
「いやちゃんと秋雲らしくイラスト描いたりもしてんですよ。でもそれには先立つものがいるじゃん?」
と言いつつ、詐欺やら盗みやらで稼いだ金を全て廃課金に費やした。今も時折禁断症状に駆られる
・御華見衆
菊一文字則宗
時雨に代わってマッ鎮へと現れた神の剣士。夕立ガチ勢の女
小夜左文字
筋肉の監視役。復讐とアンパンガチ勢の女
城和泉正宗
めいじ館の巫剣使い『椎名 美琴』の愛刀。時雨曰くお節介なテンプレツンデレ
長曾根虎徹
新選組局長。筋肉と音楽性の違いで仲違いする
和泉守兼定
新選組副長。飴の有無で性格が激変する面白い巫剣
加州清光
巫剣界の沖田さん。多分アルターエゴのオルタとかそのうち出る
(*゚ー゚) 椎名 美琴
めいじ館の巫剣使い。ヤンデレ巫剣に付け狙われている
@#_、_@
(  ノ`) 流石 千母
めいじ館の女将にして御華見衆上野支部長。ママだぞ、オギャれよ

つおい
7:
―――――
―――

実に清々しさとは無縁の目覚めだった。全身を包む温もりと、若干の窮屈感
そして顔面にぶつかった肉肉しい何かの存在で『生きている』とだけは認識できた。生きてるゥー↑フゥー↑
あの時、若から俺に『乗り移った』禍魂の気配は感じず
同行していたウチの連中やめいじ館の『巫剣』達がなんとかしてくれたのだろうとわかった
ここで息苦しさに我慢が出来ず、顔に覆い被さる何かを手で確認する。何これ……せ、背中?
「はわわ、もっ、申し訳ありません!!
聞き覚えの無い若い女の声が耳元で響く。肉肉しいモノは取り除かれ、息苦しさは解消された
( T)「……」
「お、お目覚めになられましたか……?」
ベッドの傍には、零れ落ちそうな胸元の二つの脂肪を辛うじて支えてる、下半身にお脳が付いてる野郎がデザインしたかのような巫女服に身を包む青髪の女
なんとなくだが、今しがた俺の顔に押し当てられてたモノの正体がわかった気がした
https://tenkahyakken.jp/character/?page=235
( T)「……」
もう一度言う、『実に清々しさとは無縁の目覚め』だ
( T)「殺してくれ……」
「ええっ!?」
勘弁してほしい。ToLOVEるとは無縁の人生を送りたいんだ俺は
8:
艦これ × 天華百剣
『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 第四章
第四章 『A.D.1899』

9:
( T)「……」
『肉肉しい何か』の感触を掻き消すように、両手で顔を拭う
寝起きの眼に日の光が眩しい。窓の外を見ると、お天道様の位置はお昼時を示していた。世が世ならいいともの時間だ
身体をゆっくりと起こしてみる。痛みはあるが、大したことは無い。皹が入った筈の右腕も、問題なく動く
( T)「……」
上半身は包帯で覆いつくされている。鼻にツンと、消毒液のような臭いが届いた
所々、血の滲みがある。軽く触れて確かめてみるが、やはり痛みは軽い
時雨「スヤァ……」
蛍丸国俊「スゥー……」
ベッドの傍らでは、時雨と蛍ちゃんが頭を並べ、突っ伏して眠っている。珍しい組み合わせだな
( T)「……」
「あ、あの……?」
おっと、どうにもぼんやりしてしまう。おっぱい(青髪)は俺の額に乗せるつもりだったのだろう手拭いを握りしめながら、おずおずと話しかけてきた
どなたさんか気になる所だが、帯刀してるのを見るに恐らく巫剣の一人だろう。こいつらほんま誰一人としてまともな恰好せえへんな
( T)「悪いが、状況を詳しく説明できる奴を呼んでくれ」
「はっ、はい!!ただいま!!」
俺の要求に、背筋をピンと伸ばして答えると、慌ただしい足取りで部屋を後にする。めっちゃおっぱい揺れてた
そして廊下に出てすぐ、躓いたのか何なのか知らんが、盛大にすっ転ぶ音の後に
「うう……不運です……」
涙声で扶桑型二番艦みてーなセリフを呟いた。いやしかしおっぱいデカかったな
10:
「おやおや、桑名江が随分慌てて出て行ったから、もしやと思えば……」
入れ替わりで入室したのは黄色を基調にした振袖に白衣らしきマント……もう白衣でいいや。白衣を着た、やや小柄な少女
腰には色とりどりの……何……あれ……飴?まぁ飴でいいや。飴が入った小瓶をホルスターのように巻いている
虎徹の鮮やかな髪色とはやや異なり、落ち着いた金髪に牛のような大きな角の髪飾りが目立つ。それ日常生活の邪魔にならない?
https://tenkahyakken.jp/character/?page=163
「お目覚めかな、提督くん?」
( T)「あ、はい、おかげ様で……」
怒涛の新キャラ登場でみんな着いていけないだろうが安心してくれ。俺も着いていけない
みんなって誰だ。お前は誰だ俺の中の俺。陰に隠れたその姿見せろウォーォォー
( T)「あの……どちらさん?」
「フフ、まぁまぁ。私の事は後でもいいじゃないか」
( T)「良かねえけど……あの、え?」
小柄な背丈に見合わぬ色気の微笑みを携えながら、膝からベッドにギシリと乗り込む
雌豹のように四つん這いで此方にすり寄り、細い人差し指を俺の顎に絡めた
「禍憑化からの復帰もそうだけど、通常の人に比べて異常なほどの回復度……実に興味深い身体をしている」
( T)「あっ、はい……」
何こいつ怖い
「じっくりと……教えて貰いたいな?キミの身体の秘密を、隅から隅まで……」
( T)「……」
( T)「ムカデ人間の話するね」
「何だって?」
( T)「人の尻と口を繋げるクソ映画なんだけど」
「あ、もういい。私が悪かったよ」
バッサリと切り捨てると、女は表情を一転させふくれっ面を見せた
経験上、この手の女は男を揶揄って反応を楽しむタイプだ。まともに相手してらんねえ
11:
「ハァ……聞いていた通り、可愛げのない御方だね」
( T)「そりゃどうも。サッサとベッドから降りてくれ。誤解される前に」
城和泉正宗「あ……あ……アンタ達、何してんのよ!!」
( T)「ほらもうめんどくさい」
「おっと」
城和泉正宗「牛王吉光!!アンタ、誰が相手でも見境ないの!?」
牛王吉光「やだなぁ城和泉。人を尻軽みたいに」
城和泉正宗「誤解されるような態度を取るからでしょう!?」
ギャンギャンと吠える城和泉を見て、一先ず安堵の溜息を吐く
昨夜……昨夜?まぁ昨夜でいいや。禍魂に犯され『錆憑』一歩手前だったあの姿は無い
時雨「五月蠅いな……」
( T)「ほんとになぁ」
時雨「!!」
目を覚ました時雨は、俺の顔を見るなり寝ぼけ眼を見開かせる
何か言いたげに口をパクつかせ、結局出てきた言葉は
時雨「あ……う……もう一回死ね!!」
( T)「俺一回死んだの?」
なんか若干傷つくものだった
12:
秋雲「提督生き返ったってマ!!!!????」
夕立「でいどぐざああああああああああああああああ!!!!!!」ビャアアアアアアア!!!!
天龍「やーっと起きたか」
見慣れた連中も続々と入室してくる。顔の穴という穴から汁を垂れ流す夕立に飛びつかれ、息が詰まった
夕立「ゆうだぢもうでいどぐざんじんだがっでぇええええええ!!!!」ビャアアアアアアア!!!!!
(;T)「心配掛け……夕立、鼻垂れt裾で拭くな裾で拭くなコラ。天龍、俺どうなったの?禍憑化って?」
天龍「禍憑化っつーか……まぁオメーが一回酒飲まされて暴れた時程度に凶暴化したから、あの後半殺しにして連れ帰ったんだよ」
秋雲「ウチらが止めなかったら天龍ちゃん全殺しまで行ってたよマジで」
時雨「目が世界の果てまでイッテQだった」
( T)「わぁ、身内による命の危機。でもご迷惑掛けた分文句も言えない」
飲み込むほか無いのであった
桑名江「お連れしま……あ、あら?皆さんお揃いで……」
おっぱい(桑名江と言うらしい)に連れられ、続々とめいじ館のメンバーが入室する
@#_、_@
(  ノ`)「……」
(*゚‐゚)「……」
女将の巨体の陰に隠れるように、若も入ってきた
13:
( T)「若」
(*: ‐ )「申し訳ありませんッ!!」
『無事だったか』と声を掛けるより早く、若は床に膝と手と額を着けた
言わずもがな、『土下座』である。なんかこっちが悪いことしてる気分になった
(*: ‐ )「まっするさんを信頼せず、無断で事を起し捕虜として捕らえられる始末!!」
(*: ‐ )「め……面目次第もございません!!」
先ほどまでの騒ぎはどこへやら、室内がシンと静まり返る
城和泉も此方へ向き直り、深々と頭を下げた
( T)「やめろ。非は無断で行動した俺らにある。責めは受けても、謝罪を受ける謂れはない」
(*: ‐ )「ですが……」
( T)「この傷も、死にかけたのも、お前を危険に晒したのも、全部俺の不始末だ」
(*: ‐ )「……」
( T)「だから……俺からお前達に言えるのは、たった二言」
( T)「すまなかった。無事で何よりだ」
:(*: ‐ ):「ぐっ……ふぐぅ……」
やっべ泣かしちゃった
14:
(;T)「ご……ごめんて……顔上げて?」
時雨「提督はいつも締まらないなぁ」
天龍「ケジメが足んねーんじゃねーのか?小指納めとけよ」
秋雲「包丁とまな板使う?」
( T)「使わん。夕立ちょっとごめん」
抱きつく夕立を引っぺがして天龍に受け取って貰い、咳払いで神妙な空気を切り替える
若も涙を拭きながら立ち上がる。改めて状況を説明してもらおうと口を開いた瞬間
「コンコン、お邪魔します?」
間延びした声をノック代わりに、盆を持った女性が入室した
ちょっとほんまに意味わからん服装してるから説明がアレなんだけど俺の脳内イメージを(筋肉で)発信するので受け取ってほしい
https://tenkahyakken.jp/character/?page=12
おわかりいただけただろうか。とにかく、説明しづらいのだ
「おはようございます?。よくお休みになられましたでしょうか?」
(;T)「あ、はい、おかげさまで……どなた?」
「二日も眠りっぱなしでしたので、お腹もお空きになられたでしょう。どうぞ、召し上がってくださ?い」
どいつもこいつも自己紹介って言葉を知らんのか
それはそうと、手渡された盆にはおにぎr今二日って言った?????????
(;T)「二日!?」
「はい?。それでも、あの傷から二日で回復するのも驚きですが?」
@#_、_@
.(  ノ`)「……牛王の傷薬と、蛍の治癒能力のお陰でもあるね。礼を言いな大将」
なるほど、蛍ちゃんがここで寝ていたのはそういうワケか
それとめいじ館では見なかった面々も、女将が手を回してくれたらしい
( T)「助かった。ありがとう」
今度は俺が深々と、しかし謝罪ではなく『感謝』で頭を下げる番だった
15:
牛王吉光「まぁ、この貸しは今度しっぽりと返してもらうよ」
桑名江「し、しっぽり……?」
( T)「今なんかすげえ怖い日本語聞こえた」
@#_、_@
.(  ノ`)「からかうのもそこまでにしときな牛王。さて、食べながらでいい。状況を説明するよ」
( T)「お願いします」
時雨「美味しいよ」モグモグ
勝手に俺の飯を食ってる時雨の頭をどつき、食いかけのおにぎりを奪い取って口にする
具は不動行光ことゆきちゃんと夕立が共同で作った驚異的なまでに白飯に合うきんつばだった。食うたびにSAN値が可笑しくなる気がする
@#_、_@
.(  ノ`)「此方は御華見衆副指令の『丙子椒林剣』。此度の特殊禍憑出現における討伐作戦の参謀を務められている」
丙子椒林剣「はい?。ご紹介にあずかりました、丙子椒林剣と申します?」
スカートの裾を摘まみ上げ、恭しく一礼をする。副指令っつーことは、御華見衆の?2か
組織のトップも巫剣と聞いているし、ウチの世界と比べれば大分やりやすそうな組織だな。海軍は概ね上層部がクソ
( T)「マッスルでs……ん?討伐作戦?」
丙子椒林剣「ええ?。現在、東京湾沖に超巨大な『卵型』禍憑が出現中でして?」
東京湾沖。つまり『海』だ。三浦のボケと最後に交わした会話を思い出す
『海で会おう。無事で済んだらな』。舞台も駒も用意して、待ち構えてるって事か
@#_、_@
.(  ノ`)「現場指揮はみやこ屋支部長『流石阿音』。めいじ館からは新選組及び比較的傷の浅い人員を派遣している」
@#_、_@
.(  ノ`)「それと……海軍の協力の元、駆逐艦四隻による包囲及び監視を続けている。今のところ、そこに『ある』だけで目立った動きは無いそうだ」
この時代の海軍、そして駆逐艦。昭和生まれの時雨や夕立、秋雲と比べてもグレードは数段落ちているはず
それに……ああ、『海軍』。女将の双子の息子が、根性叩き直すために送り込まれていたんだっけ
16:
( T)「海なら『艦娘』の主戦場だ。すぐに俺たちも……」
丙子椒林剣「それには及びません?」
相変わらず間延びした、おっとりとした口調だ。だが、腰の『鞘』に手をかけたのは見逃さなかった
丙子椒林剣「お母さんとも相談した結果。あなた方には此方で待機してもらう運びとなりました?」
( T)「……」
僅かな殺気に、『お互い』触発されたのだろう。丙子は目を細める
先ほどとはまた違った沈黙が部屋を包む。副指令とやらは言葉を続けた
丙子椒林剣「本来ならば別世界のあなた方を危険に晒すのは我々としても好ましくありません?。無事に帰ってもらうのが一番ですから?」
( T)「お気遣いどうも。だが、深海棲艦は『本来ならば』俺らの世界の敵だ。協力して然るべきだと思うが?」
丙子椒林剣「確かにそうですが?……ええ、正直に申し上げますと、『これ以上の敵は手に負えません』ので?」
( T)「敵……?」
@#_、_@
.(  ノ`)「……禍衝化さ」
丙子椒林剣「はい?。ご存知の通り、提督様は人間でありながら禍憑を倒し、禍魂を祓える存在です?」
丙子椒林剣「ですが調査の結果、『禍魂』に取り入られた際、相反してそれを増幅させる力もお持ちのようでして?」
( T)「……」
どうも俺の身体は大分バグってるらしい。なんか悪いものでも食べたのだろうか?
しかしそんなこと、俺には関係ない。今度は『取り入られなければいい』だけの話なのだから
17:
( T)「俺が向こうでまた暴走すれば、詰みは避けられないと?」
丙子椒林剣「ご理解いただけますでしょうか??」
( T)「……俺ら無しで、三浦を倒せる保証は?」
丙子椒林剣「……尽力する他、ありません。みやこ屋……富士見支部からも援軍を要請してます」
ふい、と目を逸らしながら答えた。正直で助かる
( T)「参謀が聞いて呆れるな……俺んとこの副指令艦なら子猫の手すら容赦なく利用する」
丙子椒林剣「議論を重ねた結果ですので?。今一度確認しますが、ご理k」
( T)「するわけねえだろクソババア」
丙子椒林剣「」
.@#_、_@
.(;  ノ`)「」
(*;゚д゚)「」
今度こそ完全に空気が凍った
18:
( T)「三浦がわざわざ『海』を指定したのは、俺ら世界の敵である『深海棲艦』が確実に絡んでるからだ」
( T)「それをみすみす見逃す俺らじゃねえ。連中は、どこにいようと、誰が立ち塞がろうと、一匹残らずぶち殺す」
丙子椒林剣「……」
( T)「もはやお前らだけの問題じゃねえんだよ。『待機』?冗談じゃねえ。寝言ほざいてんじゃねえぞ」
( T)「副指令だかなんだか知らねえが、偉そうに指図してんじゃねえタコ。酔っ払いみてーな喋り方しやが……」
鯉口を切ってから、首筋に反りの無い『直刃』の剣が突き付けられるまで、その場にいた誰もが反応できなかった
当の副司令の顔は微笑みを携えたままだったが、目はドスンと据わっている
脊髄の赴くままに罵倒を繰り広げていた俺の軽口も閉じざるを得なかった。叢雲より怖い
( T)「……」
マスクを被っていて良かった。少なくとも、ビビってる表情を見られることは無い。チラリと天龍に目くばせをすると、渋い顔で首を横に振った
手練れの剣士集団をまとめ上げる組織の?2だけあるらしい。彼女ほどの腕前を以てしても、『抵抗は無理』だと
だからと言って、主張を変える気は毛頭ないが
( T)「随分とご丁寧な『お願い』だな」
丙子椒林剣「丁重な『お断り』には相応の対応を、と思いまして?」
( T)「言うじゃねえか。で、どうする気だよ?危険の種はサッサと取り除くか?」
丙子椒林剣「魅力的なご提案ですね?」
余裕があるように見せかけているが、実の所いっぱいいっぱいだ。彼女にはやると言ったらやる『凄み』がある
事実、若や城和泉、他の巫剣。どっかで隠れている小夜左文字。めいじ館のボスである女将や何かと直ぐに噛みつく時雨ですら
部屋を圧しこむプレッシャーで、誰一人として一発触発の流れを断ち切ろうとはしなかった
19:
丙子椒林剣「……確かに、あなた方が戦列に加わるのならば、これほど心強い援軍もございませんでしょう」
( T)「……」
丙子椒林剣「ですが、我々は協力関係にあった『陸軍』。それも、超大型禍憑を共に討伐した三浦中尉に反旗を翻されました」
巫剣と共闘し、死線を越え、若を救った。それでも尚、拭いきれない『疑心暗鬼』が原因か
丙子がここに訪れたのは、単純に俺らの拘束に来ただけではない。『推し量りに来た』のだ
丙子椒林剣「『言うは易し、行うは難し』と言いますが、あなた方は先ず『行動』で信頼を示しました」
丙子椒林剣「陸軍の企みを暴き、城和泉さん、小夜さんを救い、捕らわれた椎名くんを取り返し、未知の禍憑を撃破した」
丙子椒林剣「それでも……それでも、我々はもう一歩、あなた方を信じたいのです」
( T)「……お次は、『言葉』で信頼を示せ。と?」
丙子は口角をもう一つ上げて肯定する。さながら、『口説き落としてごらんなさい』と挑発されているようだ
勘弁しろよこちとらボキャ貧だぞ。女なんて大体ゴリ押しでしか落とした事ねーよしかも長続きしねーんだぞ
( T)「ハァ……」
丙子椒林剣「どうしました?まさか本当に報復と殺意だけが動機ではありませんよね?」
どうにも、こちらの胸中を見抜いているようで。頭と勘の良い女ってのはどうにも苦手だ
( T)「……理由なんざいくらでも挙げられる。時雨や俺らがここで世話になった恩返し、禍憑との戦闘で得られる経験値、単純に戦いを楽しみたいだけ」
( T)「だが、こんなもんツラツラと並べても、アンタを口説き落とす威力には程遠い」
丙子椒林剣「……では他に、何が?」
『他』。全体的な理由や、今に到るまでの要因を削ぎ落し、最後に残ったモノ
つまりは、『個人的理由』だ。ああ、俺はずっと、この時になるまで抱え込んでいた心残りが一つある
断ち切ろうとして突っぱね、結局はずるずると女々しく引きずっている、『戦う理由』が残ってるじゃねえか
20:
( T)「泣かせた女そのままに、手前はのうのうと朗報を待つ」
( T)「男がそんな格好悪い真似出来るか」
丙子椒林剣「……フフフ、『格好悪い』ですか」
天龍「今のザマを省みてもう一回同じセリフ言ってみろよ」
( T)「もう格好悪い」
丙子は剣を納めると、ポンと一つ柏手を打った
丙子椒林剣「はい、合格です?!!」
( T)「何が???????」
丙子椒林剣「一度禍憑化した貴方に助力を願う為に、試させて頂きました?」
( T)「なんで????????」
@#_、_@
.(  ノ`)「禍憑の元となる『禍魂』は、怒りや憎しみといった『負の感情』により増幅する。アンタの動機がそれ『のみ』だとしたら、戦場に送り込むのは危ないと判断したのさ」
丙子椒林剣「はい?。禍魂は巫剣やその使い手にすら入り込み、魂を侵す危険な代物ですので?」
( T)「それで一芝居打って、俺の本心を引き出したってことか」
丙子椒林剣「情熱的な台詞で感動いたしました?♪」
時雨「録音した」
( T)「直ぐに消せ」
出来れば人払いして欲しかった。こういう事があるからさぁ……
桑名江「お、お芝居だったのですか……?」
夕立「」
秋雲「夕立ちゃんが白目剥いて気絶してる!!」
何人かマジに受け取ってる奴もいるじゃねーか
21:
丙子椒林剣「ごめんなさいね?。七聖剣……総司令が『殺す気で探れ』と仰ったものですから?」
( T)「その七聖剣とやらに言っとけ。『病み上がりは労われ』ってな」
丙子椒林剣「フフ、わかりました?。ですが、女性に向かって『クソババア』とは感心しませんよ??」
そう言って軽く俺の鼻先を指で小突く。口調と態度は軽いものだったが、やはり目は据わったままだ
根に持ってる。ババア呼ばわりしたことを根に持ってる。次は確実に殺る気だ
(;T)「き……肝に銘じます……」
丙子椒林剣「よろしい。では、現時刻から『地獄の血みどろマッスル鎮守府部隊』の謹慎を解き、東京湾への出撃を許可します?」
許しは出た、状況開始だ。おにぎりを急いで茶で流し込み、手早く食事を済ませ
(#T)「フンハァ!!!!!!!!」バリバリィ!!!!!!
身体に巻き付く包帯を筋肉の隆起で破り取り、シーツを払いのける
窮屈感が無くなってとても清々しい。二日眠っていた為、若干の強張りはあるが、動いている内に解けるだろう
そう、とても清々しい。何も身に着けていないかのように清々しい。股間が涼しい。なんで俺はパンツを穿いてないんだ
城和泉正宗「ヒッ……」
桑名江「はわわわ……」
牛王吉光「おや、立派」
城和泉はおぞましい物を見たかのように髪を逆立たせ
桑名江は真っ赤になって顔を手で覆い
牛王吉光は品定めでもするかのように凝視する
信号機みてーな色合いの三人が三者三葉の反応を見せた所で、俺は気恥ずかしくなり
( T) スッ……
乳首を隠した
秋雲「ご立派ァ!!!!!!!!!」
時雨「隠すとこそこじゃないよ」
天龍「テメーの顔面と同じくらい汚ぇモン見せんな」
夕立「」
いつものしょっぱい反応がとても安心するのであった
24:
―――――
―――

(#T)「人の着替えシーンをジロジロ見てんじゃねーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」オギャアンス!!!!!!!!!
秋雲「でも、ねぇ?」
時雨「お互いプライバシーもクソも無いじゃないか」
天龍「生娘じゃねーんだしガタガタ抜かすなよ」
夕立「天龍ちゃん、もう提督さん汚いもの仕舞った?おめめ開けて大丈夫っぽい?」
(#T)「夕立を見習えーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
時雨「夕立が一番酷いこと言ってると僕ぁ思うんだけどなぁ」
艦娘監視の下、『いつもの服』に着替える。筋肉生着替えだぞお前ら料金発生すんぞオラ
銘治の服はお世辞にも戦闘向きとは言い難い。ジャケットにカーゴパンツ、ブーツでカジュアルにキメた
ウチの連中もいつもの制服兼戦闘服だ。学校行くみたいなノリでバケモノをぶっ殺しに行く感がなんかこうすごい
対深海凄艦用の防具も欲しかった所だが、嵩張るので持ってこなかったのが痛い。お土産が多かったから……
@#_、_@
(  ノ`)「済んだかい?」ガチャ
( T)「ええ、今しがた。いつでも出発できます」
めいじ館から東京湾までの移動手段の準備をしていた女将が部屋を覗く
辛うじて鉄道が配備されている時代だ。ヘリどころか自動車すら無く、自転車ですらクソ高い中、俺らは何に乗せられるのだろうか???もしかして走んの????
@#_、_@
(  ノ`)「いんや、準備はまだ終わっちゃいないようだね。全員着いてきな」
( T)「アッハイ」
やだ……男気溢れる台詞……惚れちゃう……いや人妻だったわいい歳したお子さんもいるんだった
25:
女将に連れられやって来たのはめいじ館地下。工房の隣にある備品保管庫だ
ここは御華見衆の雑務を担当する七香ちゃんが管理している
数々のよくわからん品が並ぶ棚を確認しながら帳簿を付ける姿を何度も目にしたものだ
@#_、_@
(  ノ`)「待たせたね七香。開けとくれ」
七香「はい!!」
緊張した面持ちで待機していた彼女は、色取り取りの背表紙が並ぶ本棚へ駆け寄る
そしてその内の三冊を入れ替え、少しの間を置いて右端の本をスッと押した
『カチリ』と歯車のハマった音の後に、本棚が微振動と共に開いていく
天龍「ワォ」
『隠し部屋』の天井の電球が灯ると、壁一面に飾り立てられた『金属』が鈍く光を反射する
鞘に収まった日本刀から始まり、弓や連弩、陸軍採用の単発式ライフルから海外製のレバーアクションライフルまでズラリと並ぶ
秋雲「こりゃ……テンション上がっちゃうね……」
時雨「僕も始めて見たよ。御華見衆は戦争でもおっぱじめる気なのかな?」
@#_、_@
(  ノ`)「ほとんどが押収品さ。やんちゃをする華族や富豪が後を絶たなくてね」
( T)「ほぉー……」
@#_、_@
(  ノ`)「好きなのを持って行きな。焼け石に水だが、無いよかマシだろうさ」
( T)「……これ横領になりません?」
@#_、_@
(  ノ`)「知らんぷりすりゃあいいのさ。そうだね七香?」
七香「その通り、です!!」フンス
七香ちゃんも何かに当てられて大分ハイになってるみたいだ
26:
@#_、_@
(  ノ`)「言っただろう?『我々御華見衆は貴殿らを全力で支援する』と」
そう言って女将はニヒルに口角を上げた。カッコよすぎておしっこ漏らすかと思った
( T)「では……聞いたかテメェら!!遠慮なく好きに掻っ攫って良いんだとよォ!!」
秋雲「マジ!!!???じゃあ売り上げから持ってくわ!!!!七香ちゃん金庫の鍵頂戴!?」
七香「差し上げません」
( T)「お前帰ったら不知火にドチャクソ指導してもらうからな」
秋雲「あ、やめて、心が死ぬ。艦娘は観る拷問に長時間耐えられるほど強くないの」
秋雲の冗談(半分マジ)はさて置き、楽しいウィンドウショッピングの始まりだ
時雨「とは言っても、鋼鉄製のクナイ補充してもね……」
( T)「文句言うな無いよかマシだろ。おっと、こいつぁ素敵だ……『ウィンチェスターM1887』。T-800も愛用したレバーアクションショットガンだ」
ターミネーター2での華麗な片手リロードは映画史に残るクールなワンシーンだ。禍憑に銃は効かないが、目くらましにはなるだろう
しかし、取ろうと伸ばした腕を七香ちゃんが止めた。チラリと伺うと、首を横に振る
七香「その銃は連射性に優れますが、耐久性と排莢に難があります。此方の方が宜しいかと」
(;T)「えっ、あっ、はい」
まさかこの子に割とマジな理由で引き止められるとは思わなかったんで、ちょっと狼狽えてしまった
代わりに彼女が持ち出したのは『サイドバイサイド』。銃身が横に二つ並んでいる水平二連式のショットガンだ
銃身は切り詰めてあり、片手での取り回しの良さと破壊力を押し上げている。『牙の旅商人』でガラミィも使ってた。連載再開はまだだろうか?
27:
七香「弾数は二発と少ないですが、単純な構造ゆえに不具合は殆どありません。信頼出来ますよ」
(;T)「あ、ああ……ありがとう……」
時雨「意外な一面だね……」
七香「あっ、ち、違います!!お、御華見衆の倉庫番として、保管する武器の性能はきちんと把握しとかなければと思いましてですね!!」
そういやこの子、クレイジーサイコエンジニアこと八宵の姉だったわ
太腿に吊り下げるホルスターを装着、予備の弾は六つ
これで鍵の書が無いと抜けない大剣を背負えば完璧ガラミィだよ牙の旅商人の連載再開はいつだ!!!!!!!!!!!ええ!!!!!!!!
秋雲「提督これ借りんね」サッ
( T)「スんな。何に使う?」
秋雲「汚ぇ花火かな」
俺のポケットからライターをスった秋雲には、前衛的なデザインのアクセサリーを腰にズラリと巻き付けている
何がとは言わないが、火を着けて少し待ったらドカンと弾ける筒だ。主成分はニトログリセリン
( T)「あー……頼むから俺が見える範囲で自爆すんのだけはやめてくれ。吐く」
秋雲「この秋雲さんが男塾みたいな真似すると思ってんの?」
( T)「無いわ。俺にも一本寄越せ。マグニフィセント・セブンごっこがしたい」
秋雲「機関銃が出てきたらね」
しかし何でも揃ってんな。G・Iジョーのストームシャドーが使ってたハンドスピナーみたいな手裏剣もひょっとしたらあるんじゃないか?
28:
夕立「夕立、これがいい」
夕立が手に取ったのは『脇差』だ。時代劇の侍が腰に差してる大小二本の刀の内、小さい方がそれ
( T)「三刀流でもすんの?」
天龍「山刀だけにってか」
夕立「夕立の刀、一本ダメになっちゃったから」
( T)「ハイブリッド棲艦の中にぶち込んだ奴か」
七香「回収後、一応修復を試みたんですが……」
( T)「気になさんな。帰ったら予備がたらふくある」
天龍「お前が振ったんだろ。ツッコめよ、おい」
地下だからだろうか。気温がちょっと下がってる気がする
( T)「お前はどうするんだ口からマヒャド女?」
天龍「厚意だけ受け取っとく。どの道、俺は『こいつ』以外使う気はねえ」ガンッ
( T)「れいとうパンチやめてください」
外部生産品である夕立の山刀とは違い、天龍の刀はれっきとした『艤装』だ。そこらの刀とはワケが違う
切れ味はともかく、重さと耐久度は段違いだ。確かにこいつは下手に武器を増やすより、馴染みの得物一本で勝負した方が強いだろう
29:
@#_、_@
(  ノ`)「ぼさっとしなさんな大将。アンタの図体に見合う物がある」
( T)「ほう」
女将に連れられ武器庫の奥へ踏み入る。出迎えたのはデンと鎮座する『具足』
飾り気のない朱を基調としたデザインで、細々と付いたキズが歴戦を思わせる
そして常人サイズじゃない。少なくとも、現代と比べて平均身長が小さい銘治の人間には合わないだろう
現代から顕れた筋肉の体現者たる俺や、その俺と並ぶ体形である『女将』の身体に合うであろう大きさだ
@#_、_@
(  ノ`)「アタシが現役だった頃に使っていた防具さ。埃を被るだけだったが、もう一度日の目を見る時が来るとはね」
( T)「現役『だった』?」
@#_、_@
(  ノ`)「人間五十年。年寄りに現場仕事は荷が重いさね。茶房の女将が身の丈に合ってる」
( T)「何を仰る。こっちの時代だと五十なんて現役バリバリの世代ですよ。なんなら六十越えても働かされる」
@#_、_@
(  ノ`)「そりゃ……六十?」
( T)「ええ、六十」
@#_、_@
(  ノ`)「……未来の日本は余程人手不足のようだね」
( T)「涙が出るほどにね。お借りしても?」
@#_、_@
(  ノ`)「勿論さ。ご注文はあるかい?」
( T)「ご注文?」
@#_、_@
(  ノ`)「部位ごとに切り離して使用できるのさ。アンタは体術が得意と聞いたからね。胴当てはむしろ妨げになるかもしれん」
( T)「確かに。では腕と足の防護をお願いします」
@#_、_@
(  ノ`)「はいよ。ちょいとジッとしてな」
注文した部位の防具を外していくと、俺の身体へと手慣れた様子で装着する。ちょっとくすぐったかった
固定はベルトを巻き付けて行っている。これは具足というより現代で言う『プロテクター』に近いのかもしれない
30:
@#_、_@
(  ノ`)「どうだい?動きづらくはないかい?」
( T)「問題無いです。関節も滑らかに動く。埃を被っていると言いましたが、小まめに手入れはされているようだ」
装甲は籠手に脛当て、手甲に抑えた。特にこの手甲は良い。顔面陥没どころか煎餅になるまでぶん殴れる
胴の守りは邪魔になるので除いた。そもそも、俺には筋肉があるので問題ない。後のフラグとかそんなんじゃない
@#_、_@
(  ノ`)「ライフル程度の銃弾なら軽く弾くが、禍憑相手には過信しないようにね。当然、『砲弾』なんて以ての外だ」
( T)「聞いていらしたのですか?」
@#_、_@
(  ノ`)「ある程度はね。詳しく聞きたい話もあるが……お前さんにも事情があるんだろう。掘り下げはしないよ」
( T)「心遣い感謝します……が、俺自身も把握しきれていない事態なので、説明しかねますね」
@#_、_@
(  ノ`)「ふぅん……ま、余りあのクソガキを心配させないことだね。この二日間ずっと付きっ切りだったんだよ?」
( T)「善処しますが、そりゃお互いさまって奴ですよ」
@#_、_@
(  ノ`)「ああ言えばこう言う所はあの子そっくりだね……さて、お次は武器だが……」
壁に掛けられている刀や槍の数々。恐らくは具足と同じくまめに手入れされているもので、どれも業物の類だろう
だが、俺は普通の武器の扱いがそれほど得意ではない。日本刀など繊細な技術を必要とする物なら尚更だ
筋肉を行使して力いっぱい叩きつければ、それこそ二振りも耐えきれずバキ折れてしまう
どちらかと言えば、最初に使った棍棒ように振り回してぶち殺せる頑丈な武器が……
( T)「……」
吸い込まれるように。部屋の片隅にある布に包まれた『長物』が目に入った
手招きをされたかのように。傍にいる女将すら気づかぬほど自然に近づいていく
魅了をされたかのように。『それ』を掴んで布を取り去った
31:
( T)「……女将」
@#_、_@
(  ノ`)「なん……ッ」
女将が息を飲む。対照的に俺は感嘆を吐く
全長およそ二メートルと少し。俺が禍憑に対して振るう『それ』とは半分に満たない長さだ
幅広で大きく反りの入った刃から、太い柄に到るまで全て鋼鉄製。しかし、掴んだ瞬間から掌が焼ける錯覚をするほど『熱い』
( T)「人が悪いですね女将」
『重い』。しかし、心地よい重さだ。一振りで禍憑の雁首を纏めて斬り飛ばせるだろう
軽く動かしただけで、刃が空気を裂くのを感じた。無骨な見た目にそぐわない、ある種の『雅』すら思わせる切れ味だ
実に、ああ実に―――
( T)「『俺好み』だ」
他の選択肢を全て奪い去るほどに。その『矛』は俺の心を鷲掴みにした
@#_、_@
(;  ノ`)「そいつを選んじまうか……」
( T)「構いませんよね?貴方はこう言った。『好きなのを持って行け』と」
意地の悪いセリフを吐いてしまったが、こちとら言質は握ってる。『No』とは言わせない
例え呪いの武器だろうがなんだろうがボク絶対これ使うもん!!やだやだ使うもん!!
@#_、_@
(;  ノ`)「アタシの一存で決めr……いや、むしろ……『それ』が選んだのだとしたら……」
いつもは落ち着きのある女将だが、この時ばかりはブツブツと独り言を呟きながら思考を巡らせる
そこには焦りが見受けられたが、逆に奇妙な『高揚感』すら感じられる。何の曰くがあるのだろうか?
32:
@#_、_@
(;  ノ`)「……有り得るかも知れない……だが、『再来』か……?」
( T)「?」
『うむむ』と唸った後、天井を仰ぎ、ふぅと溜息を吐く。そして
@#_、_@
(  ノ`)「その『菊華刀』は、虎徹の元主の形見だ」
矛の『曰く』を、突拍子もなく語った
( T)「ほう。菊華刀とは?」
@#_、_@
(  ノ`)「巫剣使いにそれぞれ支給される、『稜威』と『巫魂』を繋ぐ特殊な刀さ。形状は日本刀が多いが、例外もある」
一年前。超大型禍憑との戦闘で亡くなった虎徹の『元主』。虎徹のトラウマであり、俺達が仲違いするようになった原因だ
その形見と言うのなら、使用許可は女将ではなく虎徹に伺うのが筋だろう。だが、今のめいじ館に虎徹はいない
@#_、_@
(  ノ`)「二言は無い。アンタが『それ』だと思ったのなら、持って行っても良い。だが、一つ約束してくれ」
( T)「何をでしょう?」
@#_、_@
(  ノ`)「絶対に死ぬな。それも、『巫剣を庇うような真似をして』ね」

33:
女将の呟きの断片には『再来』という言葉があった。それは、虎徹が若に対して抱いていた懸念と同じものだ
つまりは、『元主と同じ死に方をしてはならない』ということ。何を意味するかは、付き合いの短い俺でも理解できる
禍憑を斬り祓う巫剣ですら、絶望に身を堕とす
『錆憑』になりかけた城和泉を、俺は既に目の当たりにしているのだ
虎徹がもう一度、同じ条件で誰かが死ぬのを目撃してしまえば……その先は想像に難くない
( T)「……」
俺は女将の言葉に直ぐに答えられなかった。死なない人間なんていねえし、そもそも殺し合いに行くんだから、そんな場面に遭遇してしまう可能性は高い
当然、死にに行く気はさらさらねぇし、虎徹が錆憑になっちまうなんて考えたくもねえ。だけど、『あり得ない話では無い』
( T)「……」
矛を掲げ、眺める。『刀』が魂を持ち、剣士として顕現するこの世界では、『そうでない武器』も、ある程度の『魂』って奴を持ち合わせているのかもしれない
俺達の世界だってそうだ。艦娘だって元は『艦』。人の手によって生まれ、人の手によって戦うモノに変わりない
改めて、『縁』を感じた。艦娘や巫剣、深海棲艦に禍憑、提督に巫剣使い。世界が違えど、似通う部分が多い
そう言った意味では、俺は『武器』や『兵器』の魂と近い存在なのかもしれない
現に、一目惚れしたこの矛は、虎徹が抱え込む苦悩を生んだ物の『一部』だ
俺はオカルトもファンタジーも嫌ってほど体験した。だからこそハッキリと断言出来る
矛は、彼女を救う為に『俺』を選び、呼び寄せたのだと
( T)「……」
なら、俺は呼びかけにこう返す他無い。矛に向けて、女将に向けて。そしてあの世の『元主』に向けて
( T)「『任せろ』」

34:
抜丸「お母様!!!!!」バッキャオン!!!!!!!!
( T)「嘘やん」
まさか天井まで抜丸ジャンプで突き破ってくるとは思わなかった
抜丸「て、提督さん!?起き上がられて……!!」
( T)「いやお前、天井」
@#_、_@
(  ノ`)「報告が先!!」
抜丸「はっ、はい!!」
( T)「えっ、天井は良いんですか女将?」
足から降りてきたのになんでいつもの真正面から見たグリコポーズの型抜きになってるんだ
抜丸「先ほど、東京湾にて監視を行っていた小烏丸先輩から巨大卵型禍憑に動き有りとご報告が!!海岸防衛線にて通常禍憑との戦闘も開始された模様!!」
抜丸「時を同じくして潜伏していた陸軍残党兵型禍憑が市井にて活動を再開!!ソボロ先生率いる警備隊が市民の避難誘導及び撃退を開始しました!!」
@#_、_@
(  ノ`)「何分前だい?」
抜丸「五分ほどです!!」
@#_、_@
(  ノ`)「なるほど。大将、アンタが起きてからどれくらい経った?」
( T)「十五分ほど」
@#_、_@
(  ノ`)「どう見る?」
( T)「どうとでも見れます。『準備を終え起動』、卵型らしく『孵化の完了』、あるいは……」
@#_、_@
(  ノ`)「あるいは?」
( T)「『勘づいた』か」
抜丸は首を傾げるが、女将は納得した表情で頷く
禍憑及び深海棲艦の運用には、御華見衆と俺達の存在は邪魔でしかない。だが、三浦はこう言った
『海で待つ』
35:
何度も殺せるチャンスはあった筈だ。俺は茂名に『桜禍糖』を飲まされ、三浦と共に『独房』に閉じ込められていた
幾ら人類最強を欲しいがままにする筋肉の体現者である俺でも、意識が無ければまな板の上の鯉も同然だ
それどころか奴は、茂名のいる場所まで案内し、その上『援護』まで行った。信じがたい事に、仲間すら撃ったのだ
そして、このタイミングの良い活動の開始。自意識過剰とも取られかねないが、俺には『待ちわびていた』かのように思えた
ここまで御ぜん立てされちゃあ、三浦本人の目的は茂名が言っていたそれとは大きくかけ離れていると考えざるを得ない
( T)「直ぐに出ます。移動手段は?」
@#_、_@
(  ノ`)「事態が事態だからね。ちょいと無茶苦茶だが、度は保証するよ」
( T)「徒歩じゃないだけでも十分です」
抜丸「あの……本当に、アレに乗るのでしょうか?」
@#_、_@
(  ノ`)「八宵と仏を信じる他無いね」
( T)「あっ、俺走って行きます」
@#_、_@
(  ノ`)「腹括りな大将。それに、多分アンタらの世界じゃ見慣れた乗り物のはずだよ」
いや、見たけど。最初に工房行った時にしこたま説明食らわされたけど
( T)「マジかぁ……」
まさかあのトンデモ発明家が作った冗談みてーな代物に乗ることになるとは
36:
―――――
―――

百十八年先。銘治時代からしてみれば俺らの世界はドラえもんが量産されてるようなもんだ
船はスクリューで動き、列車は時三百キロで走り、鉄の塊が空を飛び、十万円もする板でエ口動画が見れる。ああ、ついでに電話も
自動車なんて今や生活必需品の一つだ。最近は若者の車離れだのなんだの言われてるがな。いいから給料上げて税金減らせクソが
文明の利器が当たり前の時代にいる俺だ。そりゃ車の一つ二つ転がしたことがある
ただし、アクセル踏めば進んでブレーキ踏めば止まりエアコンもオーディオも完備され事故ればエアバッグが作動する、ある程度の安全と快適性が保証された既製品だ
だからこそだろうか。めいじ館の表でV8エンジンみてーな音を響かせる、辛うじて四輪車とも呼べん事もない乗り物を見た時
(;T)「マジかぁ……」
とてつもない不安が湧き上がってくるのは
時雨「提督何その矛かっkうっわダヴィンチちゃんは本当にバカだねえ」
( T)「フォウ君枠お前かよ。矛はお借りした。他の連中は?」
時雨「忘れ物がどうのこうの言ってたから多分う○こだよ」
( T)「忘れ物がどうのこうの言ってたなら忘れ物だろ……」
艤装を装着した時雨も言った通り、確かに真っ先にスピンクスメギド号連想したわ
八宵「待ってたよ提督さん!!やーっとこの子を奔らせることが出来るよ!!」
( T)「待てこれテストプレイしてないのか?」
八宵「天才発明家だから大丈夫!!」
( T)「そうかぁ。じゃあその自信に満ちた発言を目を逸らさずに言ってくれねえかなぁ」
どうしてこう腕と頭は良いのに常識がねえエンジニアってのは責任を丸投げにしがちなのだろうか
お前らに言ってんだぞ明石と夕張。特に乳首の感度を三千倍にしやがったバカの方
時雨「僕は艤装で走って行くとして、これ無理しても五人くらいしか乗れないよね?どうするの?」
@#_、_@
(  ノ`)「残りは小烏丸が手配した『アレ』に乗ってもらう」
( T)「アレ?」
@#_、_@
(  ノ`)「ほれ、来たよ」
37:
羽搏きの音と共に、頭上から大きな影が差す
砂埃を巻き上げながら、スピンクスメギド号(仮称)の傍に降り立ったのは
(;T)「うわぁ……」
体長三メートルはあろうかという巨大な『カラス』だった
時雨「エンペラークロウじゃん……」
(;T)「全長三千メートルになるやつじゃん……」
@#_、_@
(  ノ`)「アンタらの世界にもこんなのがいるのかい?」
時雨「いるわけな……いる。美味しかった」
@#_、_@
(  ノ`)「食った……?」
(;T)「諸事情で巨大な海老とタコに襲われた事がありまして」
@#_、_@
(  ノ`)「……デカいカラスがいるんなら、海老もタコもいるだろうね」
(;T)「このカラスは?」
@#_、_@
(  ノ`)「云十年前に小烏丸が見つけた雛が妖の類でね。これだけ大きくなってもまだ成長途中らしい」
(;T)「……刀が人の姿を成すなら、妖怪カラスもいるでしょうね」
\オギャーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!/
( T)「ん?」
夕立「」ブクブクブク
天龍「おい、なんだよそりゃあ」
秋雲「エンペラークロウじゃん!!」
忘れ物とやらを取りに行ってた夕立は案の定気絶した
38:
秋雲「やっべ!!わ、やっべ!!捗るわぁ!!美少女やクリーチャーだけじゃなくて巨大生物まで見れるなんて、銘治時代は資料の宝庫じゃけぇ!!」
( T)「神経図太いなぁ。忘れ物ってなんだよ」
天龍「ほらよ、ママからだ」
夕立が抱えていた包みを天龍が抜き取り、俺に渡す
結構な重みと、プラスチックがぶつかり合うような軽い音
( T)「こりゃ……」
中身を検めると、人数分の通信機とインカム。そして底にホルスターに収まった拳銃と予備弾倉が二つ
天龍「出発直前に叢雲が夕立の荷物の中に入れといたらしい」
( T)「マ……ママァ……」
時雨「うわキモ……」
天龍「本人が聞いたら腸を槍で掻きまわすだろうな……」
( T)「お前が先に言ったんだろ……」
とにかく、ありがたいサプライズプレゼントだ。遠距離で通話が出来るだけで戦略の幅が広がる
拳銃に関してはオマケ程度に入れといたんだろう。『SIG P220』。高精度の拳銃だが、装弾数が少ない
( T)「秋雲、これ持っとけ」
秋雲「んあ、あ、りょーかい」
SIGを秋雲に、通信機とインカムをそれぞれに配る
夕立はいっか……どうせバーサーカーになったら叫び声しか聞こえないし……
( T)「弾薬と燃料の残量は?」
時雨「燃料七割、機銃弾数五割、主砲九割、魚雷十割、ナオルヨくん一つ」
( T)「勝ったな」
時雨「ああ」
なんか異物が一個混ざってたけど気にしない方向で行こう
39:
( T)「よっこいしょ……夕立は暫く気絶させた方がいいな」
夕立を四輪車の助手席に乗せる。これシートベルトは?
( T)「天龍と秋雲、カラス乗って空飛んで行っていいぞ」
秋雲「マジ!!!!!!!!????????」
天龍「マジ……?」
( T)「いや夕立乗せてもいいんだよ?ただ、飛んでる間に目ぇ覚ましたら何が起こるか想像つくだろ?」
天龍「お前が乗れよ……」
( T)「筋肉ってな、脂肪より重いんだよ」
やや渋ってた天龍だったが、結局は折れた。対照的に秋雲はアトラクションを前にしたガキのようにはしゃぐ
妖カラスは慣れた様子で乗り込みやすく身を屈めた。このカラスは食えるのだろうか
天龍「これどこに捕まりゃいいんだよ……」
@#_、_@
(  ノ`)「何、人を乗せなれたカラスだ。多少不安定な姿勢をしても落とさず飛んでくれるだろうよ」
天龍「答えになってねーんスけど……?」
@#_、_@
(  ノ`)「行きな!!」
天龍「待っ、心の準備あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
/ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!\
/いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!\
二人も乗せているとは思えないほど力強く飛び立ったカラス
天龍のあんな叫び声を初めて聞いたので、多少面食らった。いや、まぁ、怖いよな……押し付けて良かった
時雨「……ホッとしてる?」
( T)「多少な」
本当に良かった
40:
( T)「さて……残りは?」
座席の残りは二……無茶して三つ。だが、カラスから四輪車に視点を戻した瞬間
小夜左文字「……」
音も無く席は一つ埋まった
( T)「よう小夜。調子は?」
小夜左文字「病み上がりの身体に鞭を打つくらい絶好調よ……」
( T)「心強いが強制はしねえぜ?」
小夜左文字「私の任務は貴方の監視及び護衛……任を解かれるまで、貴方の影として付きまとってやる……」
( T)「おはようからおやすみまでってか。ありがたくて涙が出るね」
相変わらず目つきの悪い少女だが、突き刺すような殺気はもはや感じられなかった
彼女は赤い瞳を横へと流す。促されるように、俺の視線も移った
小夜左文字「後はあの二人ね……」
( T)「……」
(*゚―゚)「……」
城和泉正宗「……」
めいじ館内から勇ましい表情で現れた二人
若はこの時代特有の学生服のような軍衣を身に着けており、軍帽に付いた『菊』の紋章が日光を反射し輝いていた
41:
(*゚―゚)「……」
真一文字に口を結んだ若は、俺に深々と頭を下げる
(*゚―゚)「どうか、僕らも戦列にお加え下さい」
( T)「……」
(*゚―゚)「厚かましいお願いなのも、どの面下げてと仰りたいお気持ちもわかります。ですが、僕らも戦える。足を引っ張るために、御華見衆に入ったんじゃない」
(*゚―゚)「汚名返上の……機会を頂けないでしょうか?」
ああ、クソ。真面目もここまで来ると疾患もいいとこだ
厚かましい?どの面下げて?冗談じゃねえ。俺は目にしている。若と城和泉が、戦士として戦う姿を
( T)「汚名返上?違うな、若」
(*゚―゚)「え……?」
返上する汚名も無く、名誉を挽回する必要がないのなら、こう言うべきだ
( T)「『男』を磨きに行こうぜ」
(*゚―゚)「ッ!!」
良い面構えだ
(*゚ー゚)「はい!!」
立派に男の顔じゃねえか
42:
時雨「今度暴走しても僕はもー助けないからねー」
城和泉正宗「余計なお世話!!二度とアンタの世話になんかなるもんですか!!」
べーっと舌を見せつけた城和泉と共に、若も後部座席に乗り込む
端の小夜が狭そうに眉を顰めた。ところでこれシートベルトは????
八宵「さぁ乗って乗って提督さん!!出発するよ!!」
( T)「お、すまんな今……八宵さん?」
八宵「何?時間ないんだから手短にしてよー?」
( T)「なんで運転席に乗ってんの?」
八宵「?」キョトン
( T)「え?なんか俺おかしなこと言った????」
想定では俺が運転する筈だったが、何故かハンドルを握って首を傾げている天才(変態)発明家
余りに自然に乗り込んでいるものだから、普段驚かす側の小夜の目が丸く見開かれていた
八宵「……造ったのは私なんだから、操縦するのは私じゃん?」
( T)「いや、そりゃ普通のドライブなら死ぬ覚悟決めて乗ってやってもいいけど、今からどこ行くかわかってる?」
八宵「いーじゃん連れてってよー!!こう見えて修羅場は結構潜ってるんだし!!」
( T)「お前に怪我されたら女将と姉に合わす顔がねーんだよ」
@#_、_@
(  ノ`)「構わないよ。七香も了承済みだ」
( T)「マジですか女将」
ちょっと放任主義が過ぎやしないかこの人
43:
丙子椒林剣「あら?、そちらの副指令は子猫の手も容赦なく利用すると仰ったのに、貴方はその限りでは無いようですね??」
揚げ足を取りながら、日本刀を携えたクソアマが現れる。俺こいつ嫌い
丙子椒林剣「ご安心を?。七香さんもしっかりと釘は刺していましたし、ちゃんとご自分の面倒は見れる子ですので?」
(;T)「つっても……」
丙子椒林剣「提督さんのお荷物も多いようですし、手綱を預けるくらいは任せても良いのではないでしょうか??」
そう言ってチラリと夕立を見る。シートベルトさえ……シートベルトさえあれば……
しかし丙子の言うことも一理ある。なんせこのデカい矛も携えている状況だ。誰かに任せても良いが、万が一もある
(;T)「ハァ……わかったよ」
八宵「やりぃ」
丙子椒林剣「八宵さん。くれぐれも、無茶をして提督さんや椎名くんを困らせないようにしてくださいね??」
八宵「き……肝に銘じます……」
丙子椒林剣「よろしい。ではお母さん、我々も」
@#_、_@
(  ノ`)「そうだね」
女将は丙子から日本刀を受け取り、腰に差す。それを見た時雨が怪訝な顔をした
時雨「ババアも来るの?」
@#_、_@
(  ノ`)「いんや、主戦場は若いのに任せるよ。アタシは街のゴミ掃除さ。ちょうど、『元愛刀』もここにいることだしね」
44:
愛刀。受け取った刀を指した言葉では無いのだろう。それは恐らく……
丙子椒林剣「ウフフ」
(;T)「ああ、そりゃ強いわ……」
初めてめいじ館を訪れた時、菊さんは女将を『傑物』と呼んだ
その言葉に間違いはないらしい。並び立つその姿の迫力たるやいなや。禍憑に同情を禁じ得ない
@#_、_@
(  ノ`)「引退したとはいえ、耄碌したつもりは無いよ。こっちは任せて存分に暴れな」
時雨「……フン、年寄りの冷や水だね。精々、腰をやらないように気を付けなよ」
城和泉正宗「ちょっとアナタねえ!!」
@#_、_@
(  ノ`)「いいさ城和泉。時雨」
時雨「何?」
@#_、_@
(  ノ`)「ご主人に、格好いいとこ見せつけてやんな」
時雨「っ!!そ、そんなんじゃないし!!バーカ!!バーカ!!行ってきます!!」
上手く返された時雨は、艤装のエンジンを吹き上げ走り出す
調子は狂わされっぱなしらしい。俺までちょっと恥ずかしいだろやめろや……
@#_、_@
(  ノ`)「フフン、可愛い娘だね大将?」
(;T)「あーまーそーっすねー……俺らも出ます。お気をつけて」
夕立を抱え上げ、助手席に座る。狭い。シートベルトはどこだ
@#_、_@
(  ノ`)「海軍の責任者には話を付けている。着いたら現場の巫剣を呼んで作戦本部に通して貰いな。それと、最後に一つ老婆心だ」
(;T)「はい?」
45:
@#_、_@
(  ノ`)「アンタの手にある『菊華刀』は、ただの刀じゃない。巫剣使いの稜威と巫剣の巫魂を繋ぐ生命線だ」
( T)「……」
@#_、_@
(  ノ`)「巫剣使いは菊華刀を通じ、巫剣を振るう。使い手と刀、力と力が合わされば、『きょう力』となる」
人と刀が『協力』し『強力』となる。提督と艦娘の間にはない、明確な繋がりによる力
しかし、それは若や女将のような、素質のある巫剣使いに限っての話の筈だが……
@#_、_@
(  ノ`)「言いたいことはわかるよ。だが大将、アンタも『人の姿をした武器』を扱う人間だ。そう違いは無いさ」
( T)「はぁ……」
@#_、_@
(  ノ`)「要は、『ここ』の問題だ。想い、肯定、そして確信。後は勢いに乗せりゃ出来ないことはない」
太鼓の音かと勘違いするほどに力強く胸を叩く。かっこよすぎて失禁するかと思った
( T)「勢い、ですか。得意分野だ」
@#_、_@
(  ノ`)「だろうね。さ、行きな!!小夜、しっかり面倒みてやんな!!」
小夜左文字「わかった……」
@#_、_@
(  ノ`)「城和泉!!今度はしくじるんじゃないよ!!」
城和泉正宗「と、当然よ!!」
@#_、_@
(  ノ`)「若!!」
(*゚ー゚)「はっ、はい!!」
@#_、_@
(  ノ`)「『男』になってきな」
(*゚ー゚)「っ……了解です!!」
46:
さて、助言と檄も頂いたところで
( T)「行くぞォ!!」デッデッデデデデッ カーン!!
出陣と行こうか
八宵「あいよぉ!!」ウォン!!!!
四輪車がガクンと揺れる
( T)そ「アウォ」
(*;゚ー゚)そ「ウエ」
早々に若干鞭打ちを喰らわされる羽目になった
八宵「あははははははは!!」
(;T)「ちょ、おま……」
八宵「さぁ奔れ奔れめいじ号ォォォ!!!!!!!!!!」ドルルルルルギャアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!
(;T)「おまーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
車輪が地面を空削りした後の急発進。まだ一分も経ってないのに幸先不安
ドライブ・ハイに陥った八宵を横目に、とりあえず十字だけは切っておいた。無宗教だけど
(;T)「遺書書いとくべきだったかなぁ!!!!」
カラスの乗車席を譲ったのを早後悔したのであった
47:
―――――
―――

八宵「はいどいたどいたァ!!未来が通るよォ!!」
飯屋の立て看板が弾け飛ぶ。そこらの犬が情けない鳴き声を上げて逃げる
往来の人々はなんだなんだと指を差し、恐怖の形相を浮かべて飛びのく
(;T)「おうぇっぷ気持ち悪ぃ!!」
ご機嫌な追加情報を教えよう。この車のタイヤはゴム製ではなく、言うならば馬車やなんやらに使われるようなむき出しの車輪だ
その上、衝撃を吸収するサスペンションもクソも無い。当然、各種メーターも無いので時何キロかは体感でしかわからない
まぁ……高で出す度くらい出てるんじゃねえかなぁ……舗装されてない道路で……
城和泉正宗「未来じゃこんな危ない乗り物が主流なの!!!????」
(;T)「んなワケねえだろこんなんに乗るくらいなら歩いて移動するわ!!!!!」
城和泉正宗「そうよねって危なーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!」
前方には両天秤の桶を担いだ魚屋かなんかのオッサンの姿
八宵「邪魔だってのォ!!」
それを華麗なハンドリングで躱そうとしたが
桶と接触し中に入ってた活きの良いウナギがドカンと弾けた
「うわっ、なんだァ!?」
どうみても接触事故です本当にありがとうございました
48:
(*;゚ー゚)「ごめっ、ごめんなさーーーーーい!!!!めいじ館に請求しておいてくださーーーーーい!!!」
(;T)そ「ちょっ、やだ!!どこに入り込んでんのよこのスケベウナギ!!」
(*;゚ー゚)「えっ!?まっするさん!?」
その内の一匹があろうことか俺の胸元に入り込んできやがった
確かにこの中じゃバストサイズ一位だけども。肉体的魅力もダントツだろうけども
(;T)「ああああああああああああ気ッ持ち悪ぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」
よくスケベイラストとかで胸元にウナギ挟んでるものとかあるけど、想像を絶する気持ち悪さだってわかってて描いてるのだろうか
いやそんなワケねえだろ誰が実際に生きたウナギを胸元に挟むんだよ上級者向けAVでも滅多に見ねえぞやんっそこは敏感な所ォ!!!
(;T)「乳首はやめろォォン!!アォン!!」
小夜左文字「……」
城和泉正宗「小夜の顔色が真っ青になってるんだけど!!」
八宵「えー!?何ー!?もっと度出すー!?」
(*;゚ー゚)「安全!!安全でお願いしますーーーーーーーーー!!!!!」
八宵「了解ィ!!!!!!」ウォン!!!!!!!!!!
アクセルを更に踏み込む。何が了解なのだろうか?
それよかこのウナギどうにかしねえと
(;T)「あ!!そこの『ますだや』に寄せろ!!」
八宵「なんでー!?」
(;T)「いいからァッスンッフゥン!!!!!」
小夜左文字「……ップ」
城和泉正宗「耐えて!!耐えて小夜ーーーーーーーーーー!!!!!!!」
49:
『ますだや』。俺と虎徹が一杯(いっぱい)やった大衆居酒屋だ
ちょうど席に案内してくれたお姉さんが顔を覗かせている。チャンスだ
(;T)「お姉さーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!」
「!? え、わ、私ですかァ!!!???」
サッと胸元に手を突っ込み、エラの部分に指を掛け、一気に引き抜いて
(;T)「皆さんでどうぞォ!!!!!!!!」
そのまま投げ渡した
「やだウナ……生暖か―――!!!!!!!」
悲鳴やらなんやらが後ろから聞こえて来たが事情を説明する暇は与えてくれない
とにかくあのウナギが美味しく戴かれる事を願っておこう。服の中なんかヌメヌメするゥ!!!!!!!
(;T)「えれぇ目に遭った……」
八宵「えれぇ目に遭ったのはあのお姉さんじゃないかなァ!!!!!」
( T)「お前全部終わったらウナギの樽にぶち込んでやるからな」
八宵「アハハ!!冗談が上手いんだからもー!!」
絶対ぶち込んでやる。一生物のトラウマ刻んでやる
50:
夕立「う……うるさいっぽ……」
( T)「当て身」ドスッ
夕立「い゙っ」ガクン!!
(*;゚―゚)そ「何してんですか!?」
( T)「いや……起きたら騒ぐし……」
小夜左文字「……う……」
城和泉正宗「出すの!?出すならせめて外に……」
小夜左文字「後ろ……!!」
申し訳程度に備え付けられたサイドミラーを見ると、奇妙な物体が複数、高で近づいていた
湯呑が乗った盆を携えた、人の等身ほどある大きさの市松人形だ。それが追ってきてるだけでも十分な恐怖だが
(;T)「あれ車輪ついてねえか!?」
下半身に一輪車が付いている。こういうのトランスフォーマーリベンジで見た気がする
こんな面白可笑しな人形、隣の発明家(バカ)が造る以外で目にすることなど考えられない
(*;゚―゚)「『運輪車(はこびわぐるま)』!!禍憑です!!」
(;T)「やっぱそうかよ!!」
すんなりと海へと行かせる気はないらしい
八宵「運輪車!?めいじ号に迎撃機能は備わってないよ!?」
( T)「それでも天才発明家かよ」
八宵「これだけ奔れる物造っただけでも天才だと思うけどォ!!」
( T)「ハァー……若、城和泉、さっそく出番だ」
目的は『妨害』『足止め』と見た。わざわざ降りて戦うなんて奴らの思うツボだろう
ここは巫魂の超能力と、それを操作できる稜威能力にご活躍願おう
51:
城和泉正宗「言われずとも!!主、合わせて!!」
(*゚―゚)「うん!!『火矢』!!」
城和泉が起こした炎が、若の稜威能力『言霊権威』によって幾十もの矢の形と成し、射出される。火の矢雨は猛追する運輪車に突き刺さり、炎上させた
まともに受けた幾つかの禍憑は、そのまま黒焦げになったり車輪が破損して走行が出来なくなったりしている
しかし、燃えながらも追随する奴もいる上に、無傷の後続が追い上げてきていた
城和泉正宗「しつこいわね……続けるわよ!!」
(*゚―゚)「『火矢』!!『投網』!!」
矢に続き、炎の網を射出。ケツまで迫った二体が巻き込まれ、燃え上がる
城和泉が錆憑になった時に痛感したが、巫魂の能力ってのは本当にヤバい。これに剣技が加わるってんだから末恐ろしいったらねえ
(*;゚―゚)「ッ!!八宵さん!!避けて!!」
八宵「わわわっ!!」
しかし連中もやられっぱなしではない。背中から野球ボール大の黒い塊が放たれる
地面に接触した瞬間、炸裂。車体が爆風に煽られ大きく揺れた
(;T)「また爆弾かよ好きだねえあいつらは!!」
八宵「提督さんも持って来てんでしょ!!ここで使わずいつ使うのさ!!」
(;T)「ああ全く使いどころだよ!!ただ残念ながら時雨が持って行った!!」
(*;゚ー゚)「もう一射来ます!!備えて!!」
放物線を描いて、爆弾の『群れ』が飛来する
弾着修正でもしたのだろうか、今度は車内に降り注ぐような軌道で向かってきた
城和泉正宗「間に合わな……ッ!!」
小夜左文字「間に合うッ……!!」
城和泉の炎の壁よりも早く、小夜の巫魂による防御壁が傘となって爆弾を防ぐ
上から叩きつけるような爆風により、車体がひと際軋んだ
52:
城和泉正宗「た、助かっ……」
(*;゚ー゚)「ってないよ!!まだ追って来てる!!」
城和泉正宗「そうよね防いだだけだものね!!八宵、引き離せないの!?」
八宵「これ以上は車体が火を噴……って、嘘でしょ嘘でしょ嘘でしょ!?」
前方に上がる土煙。白塗りの不気味なカラクリ人形が、雁首揃えて此方へ向かってくる
『挟み撃ち』。それも正面の方は『カミカゼ』覚悟で突っ込んでくる気満々らしい
( T)「スピード落とすなそのまま突っ込め!!」
八宵「ええ!?正気!?」
( T)「イカレてるに決まってんだろ!!若、覚えとけ!!」
(*;゚ー゚)「はい!?」
勿論、このスピードで運輪車の群れと突っ込めば全滅は必至だろう。回避するにはどうする?
ブレーキを踏むか?ハンドルを切るか?普通の事故回避方法ならそれが最善だろう
普通じゃない場合は?それも、バケモンとのカーチェイスの最中は?
(#T)「『道』ってのはなァ!!!!」
夕立(気絶)を抱えたまま、座席を立ってボンネット部に片足を着ける
運輪車の無表情で不細工な顔面の作りが目に見えてわかるほど近づいてくる。俺は『矛』をかざし―――
(#T)「こうやって切り開くんだよォォォオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」
大きく、『薙ぎ払った』
手の中へ伝わる木材を粉砕する感触。身体がバラバラになる苦痛で歪む、無表情『だった』顔
『まさかここまで斬られまい』とタカを括った禍憑の車輪に、お仲間の残骸が巻き込まれた瞬間
俺と矛の第一刀としては上々の滑り出しだ。驚くほどよく『馴染んでいる』
53:
(*;゚ー゚)「へっ……?」
バキ折れた木片、カチカチと口を鳴らしながら吹き飛ぶからくり人形の顔、重油のような禍魂が顔を掠めて通り過ぎる
『操縦者』を失ったスパイク付きの車輪が勢いよく転がり跳ね、サイドミラーをもぎ取っていった
八宵「むちゃく……ちゃあああああああああああああ!!!!????」
左車輪が残骸に乗り上げ、浮遊感が身体を包む。そのまま右側にゆっくりと車体が倒れようとしたが
(#T)「オラッ!!」
矛の柄で右側面の地面を短く、かつ強く突き、無理やり安定させる
車体は何度かのバウンドをした後、再び平行を保ったものの
八宵「やっば……」
無茶が祟ったのか。黒煙が噴き出し始め、見るからに度が落ちていった
( T)「……」
やっちまったなって思った
城和泉正宗「ちょっとぉ!!壊れちゃったじゃない!!」
( T)「この車、筋肉足りてない」
小夜左文字「計画性皆無の脳細胞筋肉野郎……!!」
( T)「叢雲みたいなこと言うな。オッサンは傷つきやすいんだ」
(*;゚ー゚)「二人とも、今はそれどころじゃ……ッ!!」
ガン、と車体のケツから強く押し出されるような衝撃
座席の角的な所にこう足の爪先をクンって引っ掛けてなかったら投げ出されてネギトロになるところだ
『ここが勝機』と言わんばかりに、後続の運輪車が体当たりを仕掛けてきている
54:
城和泉正宗「このっ……!!」
(*;゚ー゚)「ダメだ城和泉!!距離が近い!!」
城和泉と若の炎攻撃も、この間合いだと巻き添えを食らうらしい
後部座席から立ち上がって直接刀で攻撃する手もあるが、機動力は向こうに分がある。躱されて終いだろう
八宵「レストアする暇なんて与えてくれないよねぇ!!」
( T)「外来語ガバガバ銘治時代。仕方ねえ」
八宵「策があるの!?」
( T)「筋肉とコマンドーを信じろ」
八宵「今その筋肉の所為で絶体絶命なんだけど!!!!!こ、小窓!!!???」
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> (#T)「動けこのポンコツが!!動けってんだよ!!!!」 < バンバンバンバンバンバン!!!!!!!!!!!!!
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
八宵「トドメ刺す気!!!!!!??????小窓って何さ!!!!???」
めいじ号<ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!
八宵「嘘ォ!!!!!????」
( T)「この手に限る」
ありがとうメイトリックス。また会おうメイトリックス
私の頭の中のメイトリックス「もう会う事はないでしょう」
( T)そ「!?」
55:
勢いを取り戻しためいじ号は、さっきよりヤバめの振動とエンジン音を唸り上げながら加する
だが、ケツに食らいついた運輪車を引き剥がすに到らない。重量の差が響いたか
八宵「これじゃ数分も持たずにバラバラだよ!!」
(*;゚ー゚)「っ……僕らが降りて時間をッ!!」
(;T)「バカ言え降りた瞬間に挽肉にされんぞ!!他に手立ては……ッ!?」
「任せーーーーーーーーーーーや!!!!!!!」
(;T)そ「ッ!!」
ハツラツとした明るい声と共に、風を切りながら運輪車の集団を真横からまとめて貫く小柄な少女。津田越前守助廣ことつーちゃんだ
討ち漏らした数体がその背後から襲い掛かろうとしたが、『黒い球体』が強烈なスパイクを放ったかのように着弾し、弾き飛ばす。こっちはソボロ先生か
ソボロ助廣「ここは受け持ちます!!」
津田越前守助廣「ぶちかましたれぇ!!」
抜丸が言っていた警護隊か。なんて心強い助っ人だ
(*゚ー゚)「八宵さん!!」
八宵「あいよぉ!!」
加する。見る見る内に小さくなっていく二人の周りに、禍憑が集まり出すが、心配ないだろう
ここからでも、連中が切り刻まれ断末魔を上げる様が見て取れる
( T)「ハハ……うぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
その働きに、矛を掲げ雄たけびで応えた
夕立「んん……うるさ」
( T)「当て身」ドスッ!!
夕立「アヒッ」ガクンッ
(*;゚ー゚)そ「そこまでして起こしたくないんですか!?」
だってうるさいもん
56:
八宵「そのー……一難去った所、悪いんだけどぉ……」
( T)「なん……」
前に向き直ると、高揚が一気に冷めていく
それとは対照的に、めいじ号のボンネットから小さく火が付き始めていた。ゴールドフィンガー99かよ
( T)「わぁー……PUBGなら普通に乗り捨てるレベル」
城和泉正宗「壊れないわよね!?ねぇ!?」
八宵「海までギリギリってところかなぁ……」
小夜左文字「希望的観測を抜きに答えて……」
八宵「目前で爆発しちゃうかな☆」
そんな無理に笑い作って明るく言わんでも
城和泉正宗「どっ……どうすんのよ!!間に合わないどころか死んじゃうじゃない!?」
(*;゚ー゚)「落ち着いて城和泉!!ど、どこかで馬屋を……」
( T)「それも現実的じゃねえ。だが、手は残ってんだろ天才発明家の八宵ちゃんよ?」
八宵「こういう時だけ調子良いんだから!!あるにはあるけど最悪の場合爆発四散するよ!?」
( T)「マジかよスリル満点でショックサスペンスだな。恋かよ。構わん、やれ」
八宵「この人ぜーったい桜禍糖の影響残ってるよね!?支離滅裂なんだけど!!」
小夜左文字「多分、これが通常の状態……」
( T)「わかってんじゃねえか。折角の大ピンチだ。とことんまで楽しもうぜ。なぁ!!」
城和泉「……」
(*;゚ー゚)「ええー……」
小夜左文字「……ハァ」
ビックリするくらい誰も賛同してくれなかった。ウチのなら大体ノってくれるのに
57:
八宵「くぅ???????ッ、ああんもう!!こうなったらとことんやってやろうじゃん!!」
( T)「あ良かったノってくれた」
八宵「提督さんには教えてると思うんだけど、めいじ号は本来、巫魂を燃料に動く乗り物なんだよね!!」
( T)「ああ、延々と同じ話繰り返しやがったからなお前」
銘治に来て二日目の朝。時雨の艤装を確認するために八宵の工房を訪れた際
興味本位で彼女の発明品を見学し、四時間くらいずっと説明を受けていた
因みにその時、何故か俺はメイド服を着ていた。ってふざけんなお前ら何思い出させてんだ泣きたくなるだろほら泣くぞすぐ泣くぞ心は硝子で出来ている
城和泉正宗「巫魂って言われても、どうすればいいの!?」
八宵「提督さん、足下に手綱的な何かがある筈だから取ってもらえる!?」
( T)「お前こんな狭いのにマッチョに無理を……これ?」
八宵「それ私の足kわぁあ!?」
焦ってハンドルさばきをミスったのか、車体が急に大きく右にふら付き側頭部をドアフレームにぶつけた
痛い、泣きそう、頭は硝子で出来ている。夕立だけは何とか守れたが、後部座席はどうだろうか
小夜左文字「ウッ」
城和泉正宗「小夜の顔色がまた悪くなり始めたわよ!!」
あっダメそう
( T)「これか!!」
ワイヤーのような手触りの物を掴み、引きずり出す。うわ思いの外長く伸びたキッモ
確かに手綱のように両端が車体内部に繋がっているようだ。何に使う○これ?
八宵「城和泉さんに渡して!!」
( T)「えっ、はい」
城和泉正宗「えっ、えっ?私!?こんなもの御せないわよ!!」
( T)「馬感覚?」
58:
八宵「ごめん言い方が悪かったね!!それ手綱じゃなくてめいじ号に巫魂を送り込む補給管なんだ!!」
城和泉正宗「ど、どういうこと!?」
八宵「だーかーらー!!めいじ号は本来巫魂を燃料に動く乗り物なんだってば!!」
城和泉正宗「そ……え?それでどうやってこの危機を乗り越えるのよ!?」
八宵「城和泉さんの炎の巫魂をめいじ号に送り込んで、馬力を底上げしてぇ!!」
八宵「爆発する前に海に辿り着く!!」
(*;゚O゚)「……」
小夜左文字「ウ……オエ……」
城和泉正宗「は、待っ……ええええええええええ!!??」
まぁ、そうなるな。想像よりずっとゴリ押しじゃねーか
( T)「つまりはナイトラス・オキサイド・システムを巫魂で代用するってことか」
八宵「なんて!?」
( T)「ニトr……ワイルドスp……いやこの時代の人間に説明するの俺には無理」
『ボン』と小さくボンネットが爆ぜ、火と黒煙が大きく立ち上り始めるうわっ煙めっちゃこっち来る臭っせ
(;T)「ゴホッ、躊躇ってる場合じゃねえぞ城和泉!!このまま煙に燻されながら海目指すか!?」
城和泉正宗「ケホッ、あ、主……?」
(*;゚ー゚)「……八宵さんを信じよう、城和泉!!」
城和泉正宗「うぬぬ……くぅ????……わかったわよ!!」
相棒が頼むと一瞬で済むな。とは言え、賭けには変わりねえか
59:
城和泉正宗「行くわよ!!」
城和泉が手綱を握りしめ、意識を集中するかのように目を瞑る
彼女が握った位置から、手綱は無機質な灰色から温熱を感じさせるオレンジ色へと変化し、車体へと向かっていった
八宵「来た来た来た来たァッ!!」
八宵の目の色が変わり、巫魂を飲んだ車体に熱がこもり始める
アクセルを踏み込むとケツから殴られたような衝撃が起こり、前輪が浮き上がった。ウィリーである
(;T)「車でウィリーとかどんな古典手法……ッ!?」
古いアニメでしか見たこと無いような急発進表現に、舌を噛むと分かっててもツッコまずにはいられなかった
案の定、車体が沈むと共に歯のギロチンが舌の先を挟む。痛い、泣きそう、血も出るこれ
八宵「ぶっちぎれェ!!めいじ号ォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
大きな手で押しつぶされるようなGにより、身体が座席に押し付けられる
後部座席で若いのがなんか喚いてるようだが、俺自身気を回す余裕は無かった
ここで思い出していただきたい。この車は『シートベルト』ありませーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!
(;T)「あばばばばばばばば!!!!!!!!」
夕立と矛を持ちつつ吹き飛ばされないよう此方も精一杯だ。十字は切れないが、再び神に祈った
(;T)「どうか隣にいる運転初めての女の子が事故りませんようにーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
八宵「ヒィーーーーーーーーーーーーハハハハ!!!!!!!!」
(;T)「頼むーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
60:
―――――
―――

『奇跡』。陳腐かつ大変都合のよろしい言葉で、誰もが事あるごとに望む現象だ
良く目にする所といやぁ、代わり映えのしないお綺麗事を並べたJ-POPや、お涙頂戴のTV番組なんかだろう
努力に比例して出るのが『結果』っつーもんだ。俺自身の信条としてもそうだし、小娘共にも常々教えている
だから、あまり軽々しくこの言葉は使いたくはなかった。使いたくはなかったが
( T)「奇跡やんけ……」
流石にワイスピ並みの度で爆走夢歌する車を運転初めての女の子が転がして『海』が見えてきた時には呟かずにはいられなかった
神に祈りが届いたのだろうか。多分もう今年はガチャでSSR出ない。どうしてくれるんだお前マッスルショットで将軍様の新ユニット出たら責任取れんのか
八宵「ハハァ!!さっすが天才発明家の私!!」
これなら恐らく明石の方が頭マシだろう。ここまでブレーキ知らずの子……ブレーキ……ブr……
( T)「……これブレーキあるよな?」
我ながらアホな質問だ。あるに決まってんだろそんなもん
だが聞かずにはいられなかった。だって『前例』があるんだもん。クソ長い名前の飛行式カラス型炊飯器はブレーキなかったもん
八宵「アハハ!!提督さんったらおかしなこと聞いちゃって!!」
( T)「あ、あはは……そ、そうだよな。走るんだったら止まらなきゃ」
八宵「無いに決まってんじゃん!!」
俺は無事にめいじ館に戻ったら女将と姉と副司令にこいつの事をありのまま全て報告した後にウナギの樽にブチ込むことを固く決意した
61:
城和泉正宗「何!?問題!?」
( T)「ああ、大問題だ。この車まともに止められねえ」
城和泉正宗「」
城和泉は気が遠くなったのか、瞳のハイライトがぶっ消えて座席にへたり込む
隣の小夜は話を聞いているのか知らんが俯いたまま動かない。寝てんのだろうか。呑気かよ
八宵「勘違いしないでよ!!ちゃーんと止める方法はあるって!!」
( T)「お前が成人男性なら座席から突き落としてた」
八宵「可憐な女の子で良かった!!」
( T)「やかましいわ。で、方法ってのは?」
八宵「車輪の高出力に耐えられるブレーキの開発が間に合わなかったから、『落下傘方式』にしたんだ!!空力で度を緩めるってワケ!!」
『ドラッグシュート』か。カーレースや戦闘機の着陸時にも使用されるパラシュートを用いた空気のブレーキだ
確かに、巫魂を消費した未知の馬力には突貫で付けたブレーキよりも此方の方が信頼性がありそうだ
ただ、懸念が一つ
( T)「それって車のケツから出てくるんだよな?」
八宵「じゃなきゃ止めらんないじゃん!!」
( T)「さっき思いっきりクソ禍憑に体当たりされてたんだが、中身は無事なのか?」
八宵「ほら見て!!人影だよ!!」
( T)「なぁて」
八宵「黙ってないと舌噛むよぉ!!」
なんで決戦の地に赴く道中で何度も命を投げ出さねばならないのだろうか
そう言うもんなんだろうか?いや、俺ははっきり言い切れるこれ確実に人災
62:
(*;゚ー゚)「っ……人影じゃない!!禍憑です!!」
若の言う通り、肉眼でもはっきりとその『人影』は敵だと確認できた。遠近法かなんか知らんがありゃ人のサイズじゃねえ。茂名第二形態レベルの巨体だ
肥大した上半身にそれに見合わぬ絞られた下半身。片腕に到ってはなんかバイオ2の変貌した科学者みたいにバランスの悪い大きさをしている
こんなこと言いたくねえが、醜い筋肉だった。破壊と悪意によって作られたような身体つきだ。反吐が出る
( T)「車体はまだ保つか?」
八宵「見ての通り、いつお釈迦になってもおかしくない……うわあっ!?」
ボンネットの板金が弾け飛ぶ。後部座席の被害も鑑みた結果
(#T)「クソがッ!!」
避けはせず、裏拳で殴りつけて弾け飛ばす。手甲を装備してた為、裂傷などは皆無だ。女将が身につけていただけある
しかし安心していられない。ボンネット内部は轟々と火を燃え上がらせている。エンジン部と思わしき機関が断続的に弾けていた
( T)「今すぐ減しろ!!ハンドルは俺が切る!!」
カースタントの経験はないが、運転初めての女の子よりはまだマシだろう
片手で強引にハンドルを奪い、操縦する。こんな事なら鎮守府の無駄に広い敷地内で荒い運転の練習しとくんだった
八宵「りょ、了解!!みんな、掴まっててよ!!」
ハンドル中央、クラクションがある位置に備え付けられている露骨な『止』ボタンを拳でぶっ叩くと
車両後部からガコンと音がして風圧によって大きく布が広がる。空気を存分に飲み込んだその布は、ご想像通り『傘』の形を成した
( T)「うおっ!?」
途端に、ハンドルが左右に揺さぶられる。片手でなんとか操作するが、安定には至らない
素早くパラシュートを確認すると、案の定いくつか穴が空いていた。やってくれたなクソ禍憑が
63:
八宵「あがががががが」
( T)「一瞬持て」
八宵「うぇっ!?今!?」
安全な停止は期待できない。前方の禍憑もこちらに気づいた
なら緊急脱出しか手は無い。幸いにも乗客の半分以上は超人だ。着地くらいどうとでもなるだろう
( T)「夕立ちゃん起きてほら」
(*;゚―゚)「起こすんですか!?」
( T)「お前らも準備しとけ。小夜叩き起こせ」
若は巫剣二人に任せればいい。問題は隣にいる普通(異常)の女の子だ
俺がカバーしてもいいが、矛と夕立抱えてる状態だと危険が危ない。それなら
夕立「んん……首痛い……」
( T)「『変身』」
夕立「!!」
カバーできる奴を『増やせばいい』だけの話
64:
夕立「ガガキガガガァ!!!!!」
八宵「何事!?」
( T)「八宵持って車から脱出!!怪我させんなよ!!」
夕立「ガガガガガガガ!!!!!」
八宵「ちょっ、ウソ夕立ちゃうわああああああああああ!!!???」
獲物を掻っ攫う狼のように八宵に抱きついた夕立は、減する車から跳び降りた。まず二人
( T)「城和泉!!」
城和泉正宗「わかってるわよもう!!最っ悪!!小夜、主、跳ぶわよ!!」
小夜左文字「う……」
(*;゚―゚)「こ、心の準備……」
城和泉正宗「呑気なこと言ってんじゃ無いわよ!!せぇのっ!!」
若の襟を掴んで城和泉もまた跳び降りる。もう二人……あれ?小夜は?
小夜左文字「無理……動けない……」
と言いつつ、俺の首に腕を回す。着地人に任せる気満々だこれ
( T)「一番ヤバい降り方になるぞ!!」
小夜左文字「善処して……何があっても、復讐帳には書くけど……」
理不尽じゃね?まぁいい。禍憑も既に眼前まで迫っているし、この車も爆発秒読みだ
腕が届く限界までハンドルを握りつつ、小夜を背負って座席から立ち上がる。度は落ちているものの、ミスったら大怪我だなこりゃ
65:
( T)「せぇのっ!!」
ドアフレームに足を掛け跳躍。操縦者を失くした車は、ガタつきつつも禍憑へと向かう
歪な右腕を振り上げ、神風が如く突撃する車に備えている
( T)「小夜!!」
小夜左文字「わかってる……!!」
両手両脚を蹲るように曲げ、肘と膝を合わせ正中線を防御。合わせて、小夜の防御壁を展開させる
身体が地面に落ちるまでの僅かな間。臨界点はすぐさま訪れ
「ガァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
めいじ号は禍憑と衝突、爆発した
大小様々な金属パーツが爆風に巻き込まれ飛来する
防御壁に当たると、ギンッと金属特有の耳障りな音を立てて弾き跳んだ
( T)「っしゃあッ!!」
そんなアクション映画さながらのアクシデントにも僥倖はある。爆風は落下までの時間を少々稼いでくれた
防御壁を掴み、踏んづけて着地。スケボーの様に地面を滑って推進力を殺した
世が世ならAA化して>>2getとか言わされてたくらいのライディングだ。これもう今の子には通じねえか
( T)「小夜左文字様々だな」
動かない地面って最高。もう二度とブレーキの無い車には乗らない
66:
小夜左文字「八宵と貴方には後でたっぷり礼をしないといけないわ……」
( T)「怖いこと言うな俺は頑張った」
小夜左文字「あれのトドメは……必要ないみたいね……」
衝突事故に巻き込まれた禍憑は既に消し炭となって崩れ落ちている
巫魂を燃料にしてた影響だろう。面倒が省かれて助かる
(*゚―゚)「ご無事ですか!?」
( T)「ああ、この通りだ。夕立、ホーム!!」
<ガギギゴガギィィィ!!!!!
他の連中も目立つ怪我は無いが、城和泉は服の砂埃を払いながら苦い顔をしている
城和泉正宗「全く、あなた達と行動してたら命がいくつあっても足りないわ……」
( T)「俺の過失はだいぶ少ないと思うんだけどなぁ……」
夕立「ガ」
( T)「はいおかえり。八宵降ろして解除」
八宵「ぎゃふん!?」グシャン!!
抱える八宵を乱雑に落とすと、熊さんのお面を外す
元に戻った夕立は、辺りを見回してキョトンと首を傾げた
67:
夕立「ここどこ?」
( T)「もう海は目と鼻の先って辺り」
小夜左文字「記憶が無いって、幸せね……うっ」
フラッシュバックしたのか、小夜の頬がぷくりと膨らむと
小夜左文字「えれれれれれれれれ」ビタタタタタタ
腹の中に詰まっていたものをそのまま地面へと吐き出した
なんか俺らゲロばっか吐いてる気がする。気休め程度に背中は摩ってやった
(;T)「さ……先行っといてもらえる?」
(*;゚―゚)「あ、はい……」
城和泉正宗「とことん締まらないわね……」
事あるごとにオチが待ち構えている呪いにでも掛かってんのだろうか
71:
―――――
―――

不動行光「小夜さん、旦那!!」
湾港は結構ワチャワチャしていた。語彙力クソかよ。出迎えは不動行光だ
陸地への防衛線及び陣地こそ崩壊していないが、負傷者は無視できるような数じゃなかった
死にかけの禍憑がその辺に転がってるのを見るに、『一波』はなんとか持ちこたえたという所か
( T)「全員無事か?怪我は?」
不動行光「なんとか。それにしても皆さんが来るって聞いた時は驚きましたよ。旦那が運び込まれた時なんて絶対死んでるって思ってましたから!!」
( T)「俺そんなヤバかったの?」
小夜左文字「ヤバい」
マジで天龍は俺の事を殺す気だったらしい。意識さえまともだったら返り討ちにしてやったのに
( T)「他の連中は到着してる?」
不動行光「はい、順次。まさかあの大カラスに乗って来る方までいらっしゃるとは」アハハ
( T)「やっぱ巫剣でもキツいんだ……」
不動行光「作戦本部にてお待ちしてます。お二人が最後ですよ、急ぎましょう!!」
( T)「本当にごめ……待って先に確認しときたい」
不動行光「え、ちょっと!!」
沖合に小さく見える黒い『卵』。それを取り囲む数隻の駆逐艦
比較対象が無いため正確さに欠けるが、目測で凡そ百メートルちょいか。やだめっちゃでけえ
しかし『卵』と例えた物の、あの形は『蕾』に近い。複数の刃を外に向け円に並べたような凹凸がある
( T)「……」
『蕾』?
(;T)「蕾……!!」
小夜左文字「?」
72:
(;T)「ゆき!!」
不動行光「はっ、はい!?」
(;T)「責任者はアレが何かわかってんのか!?」
不動行光「あっと、えっと、はい!!恐らく!!」
(;T)「有能!!作戦本部は!?」
不動行光「此方です!!」
俺でもピンときたと言う事は、あいつらも同じだろう。それに、『海軍将校』も大体同じ答えが頭にある筈だ
あれがまんま『卵』なら、巨大怪獣を連想する。だが『蕾』ならば『花開く』。複数の花びらが
案内された天幕に転がり込むと、先ずはタバコの煙が出迎えた
うっかり矛を担いだまま入ったので上から破ける音が。やっちまった
 _、_
( ,_ノ` )「!! あんた……」
(#T)「後にしろ!!時雨!!」
その最奥に座っているやたら女将に似てるオッサンが口を開いたが、構ってる暇はない
時雨「遅いよ」
(#T)「悪ぃなちょいと立て込んでて!!直ぐに出てアレが開く前にブッ沈めろ!!」
時雨「了解ッ!!」
すぐさま時雨が入れ替わり出撃する。アレに大打撃を与えられるのはこいつしかいねえ
小夜左文字「何がマズイのかしら……?」
(#T)「ありゃ『艦』だ!!そうだろオッサン!!」
 _、_
(;,_ノ` )「ああ。あの『卵型』禍憑は複数の船の寄せ集めと推理した。あの特徴的な凹凸は船底だろう。とにかく、一度落ち着いてもらえぬか?」
73:
差し出されたタバコの箱。そして静まり返った天幕の空気を読み一呼吸置いた
( T)「申し訳ない……」
 _、_
( ,_ノ` )「姉と姪から話は聞いているよ提督殿。渋沢拓馬だ」
秋雲「略してシブタク」
( T)「マッスルです。そこのガキは後で海岸に埋めときますんで」
 _、_
(;,_ノ` )「話通りの御方らしい。火を」シュボッ
( T)「ああ、どうも」
銘治に来てから両切りタバコも吸いなれた。遠慮のないニコチンとタールが肺を満たす
改めて天幕の中を見渡す。時雨を除いたウチの連中に加え、今来たばっかの若と城和泉、ついでに八宵。渋沢さんに加え副官と思わしき将校。それと
( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「……」
顔そっくりの双子の一等兵
∬´_ゝ`)「お久しぶり」
小烏丸「本当に来よって。それに……」
阿音さんにも似てる。例の根性叩き直し中の息子達らしい
その傍らにいる小烏丸は眉間に皴を寄せてチラリと目くばせをする。その方向には
和泉守兼定「……」
長曾祢虎徹「……」
目を見開いて俺を。正確には俺の手の中にある『モノ』を見る新選組のトップ二人
(;T)「……」
小夜左文字「……」ドスッ
(;T)そ「アッフ」
気まずくなって目を逸らした俺の脇腹に、小夜の肘が刺さった
74:
和泉守兼定「貴様、冗談では……!!」
小烏丸「やめよ和泉守!!」
噛み付いてきたいずみーをピシャリと小烏丸が叱咤する
そしてコホンと一つ咳払いをして、場を改めた
小烏丸「各々思う所はあると思うが、今は目先の問題に集中せねばならぬ。そやつとて巫山戯てこの場に来たわけではあるまい」
和泉守兼定「クッ……」
いずみーは納得がいかないと言った表情だが、一先ずは矛を収める
一方虎徹は、驚愕から一転して怒りも悲しみも読み取れない無表情で顔を伏せた。そういう反応が一番怖い
小烏丸「さて、と。役者は揃うたし、手早く軍議にするかの。大佐殿」
 _、_
( ,_ノ` )「はい。戦況は見ての通り、海岸、浜辺から禍憑が発生。海軍、御華見衆連合隊による防衛線によって民間への被害をなんとか防いでいる」
 _、_
( ,_ノ` )「沖合の禍憑……仮称、『蕾』は微で浜辺へと進行。雷型駆逐艦による砲撃を行なったが、効力は薄い」
天龍「深海棲艦が混じってんだ。旧式の豆鉄砲じゃささくれ出来るくれーのダメージだろうぜ」
 _、_
( ,_ノ` )「む……」
帝国海軍としての矜持があるのだろう。天龍の無礼な物言いで眉間に皺を寄せた
しかし、アホの言い分は正しい。被害を減らす為にもここは折れて貰わねばならない
( T)「海上に展開している駆逐艦を全て引き上げさせてもらえませんか?」
 _、_
( ,_ノ` )「……」
この手、この時代の将校ってのは話の通じない連中ばかりだと思ってたが、どうやら違うらしい。二つ返事とはいかないが、顎に手を当て思案を始める
つっても、彼は女将と兄妹であり、すんなりと御華見衆との共同戦線を張っているあたり、その辺の理解は十分にあるのだろう
∬´_ゝ`)「確かに、被害を減らす分にはそれも手よね。叔父様的には納得いかないでしょうけども」
おいこの姪もだいぶ棘あるぞ
75:
 _、_
( ,_ノ` )「……いや、するべきでは無い」
『出来ない』ではなく、『するべきでは無い』ときたか
意地や面子で導いた答えでは無いらしい
( T)「と、言うと?」
 _、_
( ,_ノ` )「お前達が言うように、海軍の被害だけを鑑みればそれが最善なのだろう。しかし我々は軍人だ。無辜の民を前に下がるという選択肢はない」
 _、_
( ,_ノ` )「案山子も立てば威嚇になる。そこに在れば侵攻を妨げることもできよう。それに相手は未知の怪物、みすみす勝機を減らすこともあるまい」
( T)「ふむ……」
理に適っている。時雨を動かすにしても、遮蔽物があると無いとでは天地の差だ
それを口に出さなかったのは、虎徹の目に怒りが灯ったからだ
長曾祢虎徹「っ……」
あるいは、『悔しさ』か
( T)「……了解しました。我々からはこれ以上言うことはございません。御華見衆は?」
∬´_ゝ`)「右に同じ。その分、私達がしのぎを削ったらいいんだしね」
 _、_
( ,_ノ` )「すまんな。迷惑をかける」
大佐殿が頭を下げたその時、砲撃音が天幕を揺らす
時雨が攻撃を始めたらしい。インカムに指を当てて通話を行う
( T)「どうだ?」
時雨《割と脆そう。塊のままならすぐに終わるんだろうけど……うん、まぁ、そうだろうね》
( T)「ダメか」
時雨《ご想像の通りだよ。『開いた』》
砲撃に感化され、蕾が花を開いたらしい。『艦』の花びらを
76:
時雨《ひーふー……六隻分。大きさから推測するに駆逐級だね。砲から艦橋までドス黒くてキモいよ》
( T)「わかった。錯乱し続けろ。面倒だろうがヘイトをまとめて引き受けてやれ。得意だろ?」
時雨《一言多い!!》
この動きは海軍側も当然掴んでいる。大佐殿も無骨な通信機を使い指示を飛ばした
 _、_
( ,_ノ` )「海上の少女は味方だ!!主攻撃は彼女に任せて我々は航路の妨害に回れ!!」
立て続けに連続した砲撃音。海軍の迎撃も始まった
さて、海上戦。俺たちはどう動くべきか
時雨《提督、いた》
( T)「は?」
時雨《三浦とか言うクソ野郎!!こう、艦が展開し終わったところの中央に……なんて言うのあれ……めしべがあるとこに……》
( T)「天龍、めしべのあるとこってなんて名前だ?」
天龍「めしべはめしべだろ」
秋雲「柱頭じゃね?」
( T)「アホの癖に無駄な知識ばっかり蓄えやがって」
秋雲「一般常識って知ってる?」
( T)「時雨、その辺柱頭って言うらしいぞ」
時雨《へぇそうなんだどうでもいいや。とにかく、その中央部が禍魂で出来た陸みたいになってて、そこに三浦とクソビッチが立ってるんだよ》
77:
彼方の総大将も満を持して登場か。ついでになんだっけあいつ名前……
あっそうだ北谷(きたたに)なんとかだ。俺らの目標は定まった
 _、_
( ,_ノ` )「我々の報告と同じか?」
( T)「恐らくは」
城和泉正宗「あいつのいる場所に砲撃を集中させたら終わりじゃない?」
(*゚―゚)「でも、それは向こうもわかってる筈だよ。対策を練っていないわけがない」
城和泉正宗「……言ってみただけよ」
長曾祢虎徹「乗り込んで、直接ぶった斬るしかねえってことか。小烏丸、あの大カラス借りんぜ」
小烏丸「一人で乗り込む気か?」
長曾祢虎徹「三人も四人も乗っけられねえだろ。それに、今の俺は周りを気にする余裕はねえ」
小烏丸「待て!!奴に関しては不確定要素が多い!!許可は出せぬぞ!!」
長曾祢虎徹「いつから俺の主になったんだよ」
取りつく島もなく、虎徹は出口へと向かう
海上の移動手段が限られている今、あの大カラスはワープにも等しい乗り物だ。使わない手は無い
多くの人数を運べないという制限はある。だが、『二人』くらいなら乗せて飛べると言っていた
( T)「虎t……」
長曾祢虎徹「ッ!!」
言葉を失った。俺が言おうとしていたことは予想していたのだろう
その上で虎徹は、『出会った頃を越える殺意』を目線に乗せて俺へ向けた
(;T)「っ……」
長曾祢虎徹「……フン」
辛うじて出来たのが、天幕を払いのけて出ようとする虎徹を掴もうと伸ばした左手
それも直前で止まり、みすみす虎徹一人を死地に向かわせてしまう
和泉守兼定「……背負う覚悟も無く来たのなら、その矛を握る資格はない」
唯一、いずみーだけが。俺にキツい一言を残して後を追った
(;T)「……」
小夜左文字「脳筋意気地なし野郎!!」
(;T)そ「あっさっきより痛い!!」
今度は思いっきり脇腹を殴られる始末だ
78:
小烏丸「お主、それが何か知らずに持ってきたのか?」
( T)「知ってるよ。女将にも聞いた」
小烏丸「ハァ……文字通り虎の尾を踏みよったな。女将も迂闊な真似をしおって」
小烏丸「しかし、これで良いのかもな。お主が奴の前の主と同じ死を遂げれば、今度こそ錆は止められんじゃろうて」
( T)「……」
なんと意気地のねえ野郎だ。ほとほと手前のクソザコナメクジさに嫌気がさす
小烏丸の言い分に、少しでも安堵してしまった自分がいるのだから
∬´_ゝ`)「固まっている暇はないでしょ。私達は、海に出た人々を信じてこの場を死守しないと」
城和泉正宗「そう、ね……。行くわよ、主」
(*゚―゚)「……」
城和泉正宗「主?」
(*゚―゚)「大佐殿、海上への移動手段は残っていますか?」
自己嫌悪を終わらせたのは、若の力強い声であった
 _、_
( ,_ノ` )「予備の船艇があるが、装備は乗っていない。その分、度はあるが綱渡りになるぞ」
(*゚―゚)「構いません。最優先は首謀者、三浦の無力化。ここに戦力を注ぐ必要があります」
( T)「……」
(*゚―゚)「とは言え、阿音、小烏丸両名による防衛線の陣頭指揮は不可欠。僭越ながら、めいじ館所属巫剣使いである私と、愛刀たる城和泉正宗を標的の元へ輸送しては頂けないでしょうか?」
半人前と称されてはいるが、彼らの攻撃力は禍憑にとって脅威であると知っている。あのカーチェイスも、二人が居なければ詰んでいただろう
『一歩抜かれた』と、感じた。若は、今まさに『男』を見せている
 _、_
( ,_ノ` )「……阿音?」
∬´_ゝ`)「私はみやこ屋所属だから、別支部の隊員にどうこう言える立場じゃありませーん」
 _、_
( ,_ノ` )「……了解だ。すぐに手配しよう。同乗する者は?」
天龍「俺も行く。先陣切られたのは口惜しいが、砲火真っ只中を渡って行くのも滾るしな」
秋雲「遠ry 天龍「オメーも行くんだよ!!」 秋雲さん天龍ちゃんみたいに死にたがりの変態じゃないのに」
 _、_
( ,_ノ` )「……他は?」
ここまでお膳立てされているのに、俺の意気地はまだ動こうとしない
脊髄がこうも働かないとは。全くもってカッコ悪い野郎だ
夕立「ゆ、夕立も!!」
そんな中、誰よりも強く、臆病な彼女が手を上げた
79:
夕立「て、提督さんが動けないなら、夕立が代わりに戦うっぽい!!」
( T)「夕立……」
夕立「て、て、提督さんだって、怖くなる時があるんだもん!!ゆ、ゆゆ、夕立が動けなくなった時、提督さんはいつだって代わってくれたっぽい!!こ、こここ、今度は夕立が、提督さんの代わりになる!!」
勇ましいセリフとは裏腹に、身体も声もガタガタと震えていた
しかし、まぁ、なんとも逞しく育ってくれたものだ。塞ぎ込み始めた野郎を奮い立たせるオマケまでつけて
( T)「……」
ようやく、俺のエンジンも温まってきた
( T)「もう一人追加だ。微力だが、無いよかマシだろ」
『言』を『成す』時は来た
この矛と共に、虎徹のトラウマと三浦をぶっ殺す時が
小夜左文字「いえ、もう一人」
小夜も続けて手を上げる。此の期に及んで、彼女は『仕事』を優先したのだろう
∬´_ゝ`)「じゃあ予備も追加しときましょうか。兄也、弟也、あんたらもよ」
口を閉ざしていた双子があからさまに嫌な顔をした
根性鍛え直していた割には、乗り気では無いらしい
( ´_ゝ`)「いや……俺ら足手まといだろ常考……」
(´<_` )「しぃたんとそこの兄貴に任しとけば楽勝じゃね……?」
 _、_
( ,_ノ` )「命令だ。死んでこい」
(;´_ゝ`)「トホホ?、そりゃねえぜおじ者……」
(´<_`;)「短い命だったな兄者……」
大丈夫かこいつら
不動行光「皆さん!!禍憑、再び発生しました!!急ぎ対処を!!」
表で出張っていたゆきの警鐘に、場が一つに纏まる
 _、_
( ,_ノ` )「状況再開だ!!武運を祈る!!」
大佐殿の激励を受け、天幕を飛び出した
80:
―――――
―――

「ゴルルルガガガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
∬#´_ゝ`)「物量に怯まないで!!確実に一体ずつ対処を!!」
「隊列を乱さず撃ち続けろ!!奴らを一匹たりとも内陸にあげるんじゃあない!!」
御華見衆の指揮官と、現場指揮を執っている将校が声を張り上げた
単発式ライフルが火を噴き、迫撃砲音が鼓膜を貫く。漂う硝煙の中にうっすらと、血の臭いが混じっていた
天龍「入れ食いだな!!たまんねえぜ!!」
夕立「天龍ちゃんのそういうとこ、夕立ほんと気持ち悪いと思う」
天龍「オメー口の悪さがだんだん姉寄りになってんぞ!!」
海岸から断続的に現れる無数の禍憑は、飛び交う銃弾を異に返さず防衛線へと突っ込んでくる
中には軍服を身に纏い、ライフルを放つ禍憑もいた。人と違う点と言えば、頭から上がタコの触手になっている。ケツの穴が締まった
(;´_ゝ`)「ひゃー、お仲間撃ち抜いても意に反さずか。やっぱこえーな禍憑」
(´<_`;)「そうだな兄者。おしめをしてくるべきだった」
本当に大丈夫だろうかこいつら
それはさて置き、『物量』による遮二無二な特攻と、フレンドリーファイア上等な銃撃
指揮系統こそ見当たらないが、アレじゃ災害を相手にしているようなもんだ。めいじ館やみやこ屋の巫剣も戦果を挙げているが、ジリ貧だろう
「ガァア!!」
そして極めつけは、先ほどめいじ号で吹っ飛ばしたのと同種の大禍憑だ
身長三メートルほどの異形の怪物は、巫剣であろうとも一撃必殺とはいかないらしい
とは言っても無視も出来ず、対処は必須だ。その間、薄くなった戦列が
「止め、止めrうわあああああああああああああ!!!!!」
数の暴力によって押し込まれてしまう
81:
∬;´_ゝ`)「っ、小烏m (#T)「往くぞ天龍!!」 ええ!?」
天龍「応よ!!」
急がねばならないのは重々承知だが、此方も『準備運動』が済んでいない
(*゚ー゚)「城和泉!!」
城和泉正宗「任せて!!」
もう一か所、崩れ始めた個所には若たちがカバーに走る
(#T)「ぶァい!!!!!!!!!!矛の切れ、良し!!!!!!!!!」
天龍「ドォラァ!!!!!!!!こんな時まで漫画脳かよ!!!!!!!」
内部に入り始めた禍憑の群れをリーチに勝る矛でまとめて薙ぎ払う
体勢が崩れた所に、天龍が飛び蹴りをかまし大きく間合いを広げた
「な、何者だ!!」
( T)「なんだかんだと言われたら!!答えてあげるが世n 天龍「いいからとっとと隊列組み直せボケ!!!!!」
最後まで言わせてほしかった。下半身がオサラバしたクソザコ禍憑が足首を掴んだので、矛の柄頭で突き潰す
「グギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
禍憑の耳障りな悲鳴を乗せて、炎による熱風が頬を撫でた。若と城和泉も張り切っている
だが、俺達が防衛線を保ち続けるワケにはいかない。三浦を仕留めるまで自助努力をして貰わねばならないのだ
この一撃は、その為の『仕込み』に過ぎない
82:
(#T)「アゲるぞ若!!!!!」
(*;゚ー゚)そ「へぇっ!?何をですか!?天ぷら!?」
(#T)「揚げ物じゃねえ!!聞け!!!!野郎共ォ!!!!!!!」
寡兵が大群を打ち破る必須要素は大まかに三つある。『練度』、『策』、そして『士気』だ
練度については海軍兵と巫剣を、策に関しては阿音さん始めとする指揮官を信じる他無い
だが士気なら、俺達が手を加える余地がある
(#T)「殺せ!!!!!連中は人間じゃねえ!!家族もいねえ!!ただ人を襲い、喰らい、嗤うだけのバケモノだ!!」
(#T)「故に殺せ!!!!!そして愉しめ!!!!!!動いて向かってくるだけの的を、点数でも付けながらぶち抜いてやれ!!」
(#T)「殺せ!!!!!!殺せ!!!!!!今だけは神も仏もテメーの行いを見逃す!!!!!例え許されなくとも、民衆はお前らを英雄に祭り上げる!!」
檄のコツは、『ハッキリと良く通る声』と、殺しという本来ならば禁忌である筈の行いへの、第三者による肯定と許可
責任と罪を『上官』に負わせつつ、頭を徐々に狂わせてしまう。『ハイ』になりゃ、連中の頭からは『退却』の二文字が消える
ぽっと出の俺に対する説得力の足りなさは――――――
(#T)「こうやってなァッ!!!!!!!!」
力に物を言わせた『派手な演出』で補う。矛に裂かれ、ブチ撒かれた禍憑の腸が具足を汚した
逆境に置いて豪傑が敵に振るう暴力とは、兵にとっての『ヒーローショー』だ。盛り上がらないワケが無い
(#T)「この場を奴らの血と悲鳴で染め上げろ!!!!!クソ共に『人間』という種の恐ろしさを、存分に思い知らせてやれ!!!!!!」
(#T)「二度と歯向かおうなんて気が起きねえくらい、徹底的になぁ!!!!!!」
自論だが、感情とはガスのような燃料だ。充満させ、火花を一つ放てば
(#T)「皆殺しだァァッ!!!!!!!!!!!!!!」
「「「ォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」
『激情』という爆発を引き起こす。一丁上がりだ
83:
( T)「よし行こう行こうもうほっといても暫く大丈夫」
天龍「相変わらず口だけは回るよな」
( T)「脊髄も回っとるやろがい」
役を終えたらサッサと引く。そう、それこそスタイリッシュなオトコの嗜み
一行と再合流すると、阿音さんを筆頭にした流石家のお子さん達が興奮していた。えっ、何……キモ……
∬*´_ゝ`)「あなた凄いじゃない!!何?名のある武家の出身?」
( *´_ゝ`)「こてっさんに凄まれて萎縮した時はなんだこの見掛け倒しのオッサンって思ったけど、見直したぜ兄貴!!」
(´<_`* )「うむ、これには我らも流石と言わざるを得ないな!!」
( T)「おう、俺に対する第一印象がだいぶ低かったのは今わかった」
(*゚―゚)「ほわ……」
若も若で283プロの某アイドルのような呆けた声を上げている。他人事ちゃうぞ
( T)「お前もいずれ巫剣率いる立場だ。士気の上げ方の参考にでもしろ」
(*゚―゚)「は、はい!!心得ました!!」
城和泉正宗「丸っ切りそのまま見習わないでよね!?あんな乱暴なやり方、何度も通用しないわよ!?」
通用するもん
84:
小烏丸「思いもよらぬ巧妙な檄じゃったが、先を急ぐぞ!!」
( T)「もしかして俺ボンクラだと思われてる?」
秋雲「はいよっせ!!」
奇妙な返答及び掛け声と共に、秋雲がダイナマイトを禍憑の塊に投げつける
数秒の間の後に爆発し、奴らの身体が宙を舞った。夕立と小烏丸が短く悲鳴をあげる
小烏丸「お、おおお、おぬし何をやっとるんじゃ!?」
秋雲「え?支援。ねー提督。やっぱ秋雲、残るわ」
( T)「理由は?」
秋雲「提督のマジックも長く続くとは限らないし、一人でも手練れがいた方がいいんじゃね?って判断」
( T)「自己評価高い」
秋雲「なーに?秋雲さんじゃ役不足だっての?」
とんでもない。何せ、俺が手塩にかけて育てた艦娘だ
それに、厄介ごとには首を突っ込まない性格のこいつが、自主的に提案までしたのだ
( T)「血祭りにしてやれ」
秋雲「りょーかいっと」
やりたいようにやらせんのが、親心ってもんだろ
秋雲「ほいこれ。自決用に」
( T)「縁起でもねえ」
ダイナマイトを一本俺に投げ渡し
秋雲「さーって、たまには真面目に楽しんで来ますか!!」
ナイフとSIGを引き抜いて群れに向かい駆けた
85:
∬´_ゝ`)「ほーんと頼もしい御一行ねぇ。敵に回ったらと思うとゾッとするわ」
( T)「俺らは正義の味方じゃねえが、善き人の味方ではあるつもりだぜ?」
∬´_ゝ`)「対して変わんないわよ。行きましょう!!船はすぐそこよ!!」
阿音さんが指さす方角に停まる船に向かい、此方も駆け足で急ぐ。受け取ったダイナマイトはケツポケットに捻じ込んだ
秋雲が残った前線が一番の激戦区だったらしい。船の元にいる禍憑は少数だ。理由は明白だった。場を守る海軍兵に混じり、巫剣が三人も配備されていた
菊一文字則宗「夕立さん、提督さん!!」
夕立「菊ちゃん!!」
いずれも、見慣れた顔だ。菊一文字則宗、加州清光、そして紅葉狩兼光
紅葉狩兼光「おっちゃん動いて大丈夫なの!?小夜も!!」
( T)「大丈夫どころの話じゃない」
小夜左文字「赤髪猫野郎如きに心配されるほど、柔じゃないわ……」
前から思ってたけど、小夜ちゃん紅葉に当たりキツい
加州清光「これで全員ですか?秋雲さんは?」
( T)「あいつは残る。話は通ってるか?」
加州清光「手短にですが、はい。副長から『もし奴らが助太刀に来るなら手助けを』と」
完全に見限られてはいなかったらしい。いずみーには後で土下座しようと思った
86:
天龍「いずみーもあそこに行ったのか?」
加州清光「ええ、局長と共に三浦中尉の討伐に!!」
菊一文字則宗「僕は無茶だって言ったんですけどね。手強い相手だって知ってますから」
深海棲艦と禍憑のハイブリット。陸上戦にも対応出来る進化を遂げた奴らの脅威は
実際に戦った俺たちだからこそ痛いほどわかる。それに三浦のが従えているのは恐らくその上位種だ
駆逐級ですら、『攻撃をし続けただけ』の菊さんが大破状態……『刃こぼれ』まで追い込まれたのだから
( T)「俺の不甲斐なさの所為だ。数分前のテメーをぶん殴ってやりてえよ」
小夜左文字「殴られたいなら今すぐにでもやってあげる……」
( T)「ごめん嘘。マジ痛いからやめて?」
小烏丸「お笑いやっとる場合か!!早う行け!!」
小烏丸に急かされ、小型の船舶に乗り込む。大佐殿が仰っていた通り、砲などの装備は無い
荷が軽い分、度は期待ができそうだ。その場には、阿音さんと小烏丸、紅葉が残った
∬´_ゝ`)「頼りないと思うけど、いざとなったらそこのバカ二人の稜威を使いなさい。バカ二人、足引っ張んないでよ」
( ´_ゝ`)「やれやれ、巫剣使いとしての初陣なのに素っ気ないと思わないか弟者?」
(´<_` )「全くだな兄者。俺たちの流石な最強伝説はここから始まると言っても過言ではあるまいに」
∬´_ゝ`)「寝言ほざいてんじゃないわよ」
紅葉狩兼光「ここは僕らに任せて!!」
小烏丸「うむ、吉報を待っておるぞ」
(*゚ー゚)「はい!!必ず!!」
( T)「おーよ。出してくれ!!」
八宵「あいよぉ!!ヨーソロォ!!!!!」
( T)「」
(*;゚Д゚)「」
しばらく黙ってると思えばこいつよぉ
87:
( T)「おm 八宵「海兵さん早く出して出して出して!!!!!!!」ちょ、聞け」
降ろす間も無く、船は石炭を燃やし海岸から離れ始める
<しっかりねー
<頑張ってー!!
<言っとる場合か馬鹿者!!や、八宵ーーーーーー!!!!!!!
あの中で危機感覚えてんの小烏丸だけかよ
( T)「なんで着いて来ちゃうかなぁ……」
八宵「船といえば機械!!機械といえば天才発明家の私!!でしょ!?」
( T)「でしょ?じゃねーよこのスットコドッコイ」ギチギチギチギチ
八宵「いだいだだだだこめかみいたーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!」
何気に初めてめいじ館の奴を折檻したかもしれない
めいじ号に関して言えば、うん、同行は許しちゃったけどこれはちょっとシャレにならん
城和泉正宗「あんたバカァ!?死にたいの!?」
八宵「だってだってぇ……ここまで来たらもう一蓮托生じゃん……」
そら城和泉もアスカなるわ
八宵「でもでも!!パパッと弄ればこの船の度ハチャメチャに上げられるよ!!よーし、そうと決まれば……」
(*;゚ー゚) 小夜左文字「「やめて(ください)!!」」
失敗から何も学んでないらしい。爆破オチって言葉も知らないらしい
88:
( T)「悪い海兵さん。この子、割と頑丈な部屋に放り込んどいてくれないか」
「は、はぁ……」
八宵「やだやだ!!改造しーたーいー!!」
加州清光「お願いですから大人しくしといてくださ……ゲホォ!!」
屈強な海兵に引きずられ、八宵は船室へと連れて行かれた
無事に戻ったら七香ちゃんの爪の垢を煎じて飲ませようと思った
時雨《今出た船に乗ってる!?》
( T)「ああ」
時雨から再び通信が入る。今度はオープンチャンネルで、天龍の耳にも届いているらしい
( T)「若、耳につけろ」
(*゚―゚)「わっ、こ、こうですか?」
時雨《そこから戦場、見えるよね》
(*゚―゚)そ「時雨さんの声が聴こえる!!」
指示通りに投げ渡したインカムをつけた若は初々しい反応だ
タイムスリップ物でテレビ初めて見た人みたいだった
89:
時雨《六隻に分かれた禍魂駆逐艦も砲撃を始めてるんだけど……おおっと》
離れた場所で水柱が立った。時雨を狙った砲撃か
時雨《あいつら、『砲弾』を撃ってるわけじゃ無いみたいだよ》
天龍「じゃあ何をぶっ放してんだよ」
時雨《双眼鏡とかある?それで味方の艦を見て欲しいんだけど》
近場にいた海兵の首にぶら下がっていた双眼鏡を失敬し、覗く
海軍艦に、砲撃による損傷は見当たらない。海上に奔る魚雷線も無い
その代わり、紙にインクを垂らしたかのような『黒いシミ』が所々に広がっている
時雨《わかる?》
( T)「ああ……若、確認しろ」
(*゚―゚)「はい……あれは!!」
間違いない。『禍魂』だ。奴らは砲弾の代わりに禍魂を撃ち込んでいる
時雨《もう二隻くらい沈めたけど、アレほっといたらマズいよね?》
(*゚―゚)「完全に侵食されたら禍憑の船として襲ってくる……!!」
時雨《どうにか出来ない?》
( T)「わかった。俺らで対処する。お前は引き続き禍憑艦に攻撃し続けろ」
時雨《了解。オーバー!!》
90:
さて、問題発生だ。連中はとことん寄生気質らしい
いや、三浦の作戦か。砲弾で沈めるよりも取り込んで再利用とは
言っちゃアレだが、液体のように変幻自在な禍魂を有効に使った拿捕手段だ。思わず舌を巻く
( T)「どうする?若」
幾度となくアレとやり合ったが、本来俺たちにとっては専門外の分野だ
判断は若に任せるべきだろう。彼は迅に指示を下した
(*゚―゚)「放っておけません。隊を分けます!!人数に限りがありますので、侵食が薄い艦は帰港してもらい、陣地防衛隊の巫剣に対処を!!」
(*゚―゚)「逆に侵食が濃い艦には直接乗り込み、処置を施します!!海兵さん、本部及び各艦船に連絡を!!」
「了解!!聞いたな、急げ!!」
海兵隊も同じく、口答えの一つも溢さず行動に移す
対処法としては間違ってないのだろう。だが、三浦の手中でまんまと踊らされていることに変わりはない
菊一文字則宗「だとすると、必然的に島へ到達するのは提督さんを含めた鎮守府隊員になりますよ?」
奴のもう一つの狙いは人員分散。三浦を討つ戦力が必然的に減る
しつこいようだが、俺たち別世界の人間は禍憑を殺せるが、禍魂を祓えない
振り分けは重要だ。向こうには既に虎徹といずみーが乗り込んでいるが、それでも人数が多いに越したことはない
91:
「各艦より報告!!帰港可能艦船は二隻!!一隻は現在、敵対生物の侵攻により援軍求むとのこと!!」
「残り一隻は通信不能!!甲板に人影は確認できるが、時間の問題だ!!」
(*゚―゚)「ッ……!!」
対処すべきは二隻に絞られた。それでも、駆逐艦二隻だ
ここにいる巫剣は城和泉、菊さん、かしゅー、そして小夜
対し、巫剣使いは若と、ぺーぺー二人。実質七人で駆逐艦二隻を浄化しなければならない
しかし『可能最大数』としてその数だ。ここに三浦との戦闘を付け加えれば、ソロバンの勘定はまた変動する
若は今、頭の中で必死に割り当てる人数を弾いてる。だが、これでいいのか?
( T)「『兵は詭道なり』」
(*;゚ー゚)「はい?」
( T)「孫子、始計編曰く。『戦争に置ける勝利の決め手は、敵をだまし、欺き、敵の兵力を疲弊させる事』」
戦争の基本、兵法の観点から状況を見渡せば、俺達は『詭道』に嵌っている
それがわかっているなら、海軍を『見捨てる』という選択肢が追加される。ここにいる十人を丸々BETすれば、勝率が格段に上がるからだ
しかし、命を『護る』に重きを置いている御華見衆は非情になりきれないだろう。故に、双方の『落としどころ』を決めなければならない
( T)「大局を見据えろ。今ここで『最大の攻撃力』を受け身に回せば、戦況は三浦に大きく傾く」
(*;゚ー゚)「……」
( T)「必ずしも、『救う』ことだけが答えじゃない。俺らにはまだ切れるカードがある」
城和泉正宗「見捨てろって……!!」
(*゚ー゚)「ッ、城和泉!!」
ピンと来たようだな。そう、三浦が御華見衆を『正義の味方』だと捉えた上で、あの戦法を取っているならば
逆にこちらは、奴の思惑に文字通り『乗らなければいい』のだ
92:
(*゚ー゚)「提督さん!!時雨さんに通信を!!」
( T)「おう、なんて指示する?」
(*゚ー゚)「禍憑の侵攻が早い駆逐艦の全隊員に退艦指示!!全員が海に逃げ次第、やかに砲撃処理を!!」
人命優先、戦力確保、拿捕の阻止。これを踏まえ、『祓う』という手間を省けば『沈める』という選択肢が増える
人から物まで全てを救う必要など無い。海軍だって駆逐艦を惜しんで戦場に出てるワケではない。リスクは許容しているのだろう
( T)「時雨、聞いたな?拡声器を使え」
時雨《わかってるよ!!もう、どうせ足手まといになるんだから出てこなくてもよかったのに!!》
( T)「言い方」
加州清光「海へ逃げた方々はどうするおつもりですか!?」
(*゚―゚)「当然、救助します!!海兵さん!!全力で向かってください!!」
「承った!!」
天龍「待て、先に無線が通じる艦に寄せろ。この船で拾える人数は少しでも増やした方がいいだろ」
「なっ、しかし……」
天龍が言うことも最もだが、救助を優先したい海軍のジレンマも理解できる
数秒、数分のラグで救える命が減るかもしれない。だが
93:
( T)「早めにあの駆逐艦を使えれば、救助者はもっと増やせる。それに、禍魂を祓える巫剣がアレに乗れば、活動の幅も広がるはずだ」
「……致し方ない。了解した!!」
<死にたくなきゃサッサとその鉄製の棺桶から飛び降りて!!二分以内に沈めるよ!!ハリーハリーハリー!!!!!
もうちょい言い方なんとかならんかったんか。ハリー言うても伝わらんぞ
時雨《ごめん一艦そっち向いた!!なんとかして!!》
いつの間にか三隻まで減った禍魂艦の一つが、此方に狙いを定めている
しかし撃たれるものが『物理的』な砲弾でないのなら問題はない。なんせ、壁を張れる奴は二人もいるのだ
「砲撃、来るぞ!!」
(*゚―゚)「城和泉!!小夜さん!!」
城和泉正宗「了解よッ!!」
小夜左文字「ハァ……疲れる……」
連装砲六基による一斉射。計十二の黒い水玉が放たれる
船の回避行動、及び小夜の巫魂による防御壁の展開、並びに城和泉、若による炎弾の迎撃
夕立「ぽぃぃ!?」
船上へと降ってきたのは二つ。一つは防御壁に当たって弾け散り、もう一つは炎とぶつかって相殺された
残る水玉は水上にいくつもの水柱を立て、船を揺らす。転びそうになった夕立を菊さんが支えた
94:
( T)「近づけさせねえつもりか……時雨!!なんとかしろ!!」
時雨《僕の負担大きすぎるんだけど!!》
( T)「元の世界戻ったら遊びに連れてってやるから!!」
時雨《言ったね!!高いご飯奢ってもらうよ!!》
松屋とかでいいやろ
菊一文字則宗「っ……煩わしいですね。あの艦」
( T)「いや……そうでもない」
菊一文字則宗「何ですって?」
( T)「時雨に任しときゃ、アレは労せずとも全滅させられる……と思う」
それよか問題は、『禍魂に憑かれた駆逐艦』の方だ。双眼鏡で甲板上を確認する
退去こそ進んでるが、湧いて出た禍憑に妨げられている。怪我人もいるのだろう
時雨が設けた『二分』では全退去は難しいと見える。それに加え
( T)「舵切れ!!あの駆逐艦からガチの砲撃が来る!!」
『妨害』もされてしまうか
95:
第二次で活躍した駆逐艦とは違い、サイズも火力もだいぶ劣るとはいえ、『実弾』による砲撃だ
一発でも命中すれば救助どころか三浦の元にたどり着くことすら出来ない
( T)「小夜!!」
小夜左文字「やってみる……けど、防ぎきれるかどうかは賭けね……」
防御壁は張り直されている。だがやはり艦砲だと勝手は違うか
なんせ、鋼鉄の塊を沈めることを想定した兵器。守りきれるかどうかは彼女にとっても未知らしい
天龍「いや、弾さえ落とせれば後は俺がやる」
小夜左文字「……? どうするつもり?」
天龍「原寸大っつっても、深海棲艦の砲撃より威力は低いだろ。なら、こいつではたき落せる」
そう言って天龍は刀を抜いた。巫剣の持つ日本刀とは違い、無骨で重く、お世辞にも斬れ味は良いとは言えない
しかしこれでも『艤装』の一つ。耐久値は折り紙つきだ
天龍「問答してる暇はねえ!!来たぞ!!」
単装砲六門から放たれた砲弾。砲火と硝煙を巻き込んで、亜音で迫る
程なくして、一つが防御壁に衝突
小夜左文字「ッ!!」
ガラスに礫を当てたかのように、砕け散る。が
天龍「ぜぇいッ!!」
気合いと共に、横薙ぎの一閃。衝突音が耳を劈き、火花に目を眩ませる
刀を当てた天龍の身体から伝わった衝撃が、甲板を踏み砕き船を揺らす
そして海へと落下地点をずらされた砲弾が水柱を立て、土砂降りのように海水が降り注いだ
96:
天龍「いっ……つつつ……」
骨身に響いたのだろう。痺れた手を解す天龍
盾越しとはいえ禍憑棲艦の砲撃を受けて死にかけた身としては、その程度で済むのが羨ましくて仕方がなかった
天龍「どーだ!!これが世界水準越えの実力だ!!」
夕立「天龍ちゃんかっこいい!!」
天龍「だろ!!」
見慣れてる立場としては特に驚くべき……いや、絶技には変わりはないが
やはりこの時代の人間は、つーか巫剣ですら呆気に取られていた
加州清光「い、いいいい……今ので、なんとも無いんですか……?」
天龍「別に刀と身体ダメージが直結してるワケじゃねーしな」
菊一文字則宗「艦娘さんの頑丈さには目を張るものがありますよね……」
巫剣のように超常の力は扱えないが、タフで頑丈。艦娘の売りは引けを取らない
とは言え、この手が何度も使えるわけじゃ無い。早く沈めないと今度は狙いを海軍艦に向けられる可能性もある
( T)「時雨!!退避は済んだか!?」
時雨《粗方ね!!確認してる暇は無いよ!!》
(*゚―゚)「待っ……」
若が制止しようとしたが、下唇を噛んでせき止めた
これは戦争だ。時には非情の決断を下さねばならない。それが隊を率いる者の責任だ
(*゚―゚)「お願い、します!!」
時雨《了解ッ!!》
若の葛藤などいざ知らず、時雨は躊躇なく引き金を引いた
97:
深海棲艦と比べれば、原寸大の艦などデカい的。外すなと言う方が難しい
中央部に着弾した榴弾は、煎餅を砕くかのように容易く船体を断裂した
( T)「よぉし!!」
これで問題は一つ片付いた。依然として余裕など無いが
海に飛び込んだとは言え、危険地帯には変わりない。出来る限り早く、出来る限り多くを拾わねばならない
(*゚ー゚)「度、上がりませんか!?」
「これ以上は無理だ!!」
残った駆逐艦に近づき乗り込むのも、もう少々時間を要する
なんとも歯痒い。三浦へと到達する為の道のりが、こうも遠いとは
だが俺は、ここにいる俺たちは、この急展開ですっかり忘れていた
「いんや、上がるよ!!」
天才発明家を一人、この船に乗せていたのを
( T)そ「うおっ!?」
突如、ぐんと上がった船でその場にいた全員がバランスを崩した
水飛沫を掻き上げ、目に見えてグングンと駆逐艦に近づいていく
八宵「いったぁ?……頭打った……」
そして頭を抑えながらひょっこりと顔を覗かせた奴の仕業であると気づくのは一瞬だった
98:
城和泉正宗「弄ったの!?」
八宵「え、うん。タービンにちょっと手を加えたよ?」
(*;゚ー゚)「ば、爆発しませんよね!?」
八宵「しないってば!!たぶん!!」
最後の一言が無くても不安しか湧かない
(;T)「クソ、怪我の功名ってことで目ぇ瞑るしかねえ!!菊、かしゅー、アホ兄弟!!乗り込む準備しとけ!!」
八宵「酷くない!?」
(#T)「うるせえこのアホ!!後で海兵さんに俺と一緒にごめんなさいだからな!!」
小夜左文字「書いた……私は……復讐帳に……書いた……!!」
八宵「しぃく?ん……二人が苛める……」
(*;゚ー゚)「あの、ごめんなさい、二人のお怒りはごもっともなので……」
八宵「わぁん!!味方いなぁい!!」
いると思ってんのか
「すまない!!藁にもすがる気持ちで我々から頼んだのだ!!」
「どうか責めないでやってくれないか!!」
いたよ。海兵の総意かよ
( ´_ゝ`)「八宵ちゃん可愛いからな……」
(´<_` )「海軍は女日照りだし……」
オメーらもかよ。可愛いは正義じゃねーぞ
99:
時雨《提督、伝言》
やや沈んだ時雨の声が届く。伝言だと?
( T)「誰からだ」
時雨《救助待ちの海兵から。『我らは心配無用、其方の目的を優先されたし』って》
( T)「……」
時雨《確かに伝えたよ》
若と顔を見合わせる。退去したとはいえ、沈む艦のすぐ傍にいるのだ。出来る限り早く拾った方が良いに決まっている
それに、禍憑が現れないとも限らない。時雨に面倒を任せたとしても、彼女を狙った禍魂の放射に巻き込まれてしまう
(*;-ー-)「ぐっ……!!」
見捨てるわけじゃない、順序を入れ替えるだけだ。それでも、タイムロスによる犠牲は出てしまうだろう
まだ若い彼にそこまで背負わせてしまうのは酷か。代わりに俺が引き受けようとしたその時―――
(*;゚ー゚)「伝えてください……『覚悟と献身に感謝を。必ず首謀者を討つ』と」
時雨《了解。僕は残りを始末する》
城和泉正宗「あ、主……どういうこと!?」
事態を把握していない城和泉が若に掴みかかる。制止は後だ
( T)「航路変更だ!!駆逐艦への派兵が済み次第、島へ寄せろ!!救助はその後だ!!」
「なんだと!?正気か!?」
(#T)「俺の判断じゃねえ!!救助を待つ連中が腹括ったんだ!!てめえらも海軍なら屍踏み越えてでも突き進め!!」
「く……ああ、やってやるよ畜生が!!」
城和泉正宗「待ちなさいよ!!救える命を投げ出すって言うの!?」
(*; ー )「城和泉ッ!!!!!」
若の大きく荒げた声に、抵抗を見せていた城和泉が驚きに身体を弾ませ、口を閉ざす
(*;゚ー゚)「彼らは無力な市民じゃない……軍人だ!!国を守る、誇り高き兵士だ!!」
城和泉正宗「っ……」
(*;゚ー゚)「悔しいのはわかる。でも、目的を履き違えちゃいけない。課せられた使命は『元凶を討つ』ことだ!!」
絞り出すような声だった。若の唇の端から、つうと血が垂れる
瞳には不安をかき消すような『怒り』が灯り始めた
100:
城和泉正宗「……」
城和泉もまた触発されるかのように、噛みしめた歯からぎちりと音を立てる
無力感だろうか、自責だろうか。ともかく、これで彼らは『もう一段』レベルを上げた
怒りの矛先を、怨敵へと向ける『戦士』へと近づいたのだ
「到着するぞッ!!」
嘆かわしい事ばかりではない。少なくとも、八宵のお陰で船自体の力は上がっている
大きく舵を切って、駆逐艦に横付けされた。後は乗り込むだけだが、高低差がある。巫剣はともかく、人間は一息に飛び越せられる高さじゃない
小夜左文字「行って!!」
しかしそこは頼れる復讐ジャンキー小夜左文字。艦体に防御壁を階段のように設置した
加州清光「新選組一番隊隊長、加州清光!!出撃しますッ!!さぁさぁ行きますよ菊一さん兄也さん弟也さん!!」
( ´_ゝ`)「あいよっと。さて弟者。流石な活躍、披露してきますかね!!」
(´<_` )「うむ。時代に俺達兄弟の名、刻みつけてやろうぞ兄者!!」
加州は刀を、双子はそれぞれサーベルを引き抜き階段を駆け上がる
菊さんも続こうとしたが、一度躊躇い此方に向き直った
夕立「菊ちゃん……」
菊一文字則宗「フフ、大丈夫ですよ。加州さんや流石な双子だっているし、今度は無茶しません」
菊さんは拳を突き出し、力強くこう言った
菊一文字則宗「勝ちましょう!!皆さん!!」
その言葉と行為は、俺達を鼓舞し
夕立「っ、うん!!」
夕立に、勇気と安心感を与えた
101:
天龍「そんじゃ、俺も行くぜ」
( T)「マジか」
天龍「菊さんもかしゅーも長く戦えるタイプじゃねぇし、バカ共は初陣だろ?要役は必要だ」
天龍は俺の前へ一歩踏み出すと、裏拳で俺の(逞しすぎる)胸板をドンと殴った。普通に痛い
天龍「しっかりケリ着けて来いよ、色男」
( T)「うるせえはよ行け電探アメダス」
最後に小馬鹿にしたかのような鼻笑いを投げかけると、天龍も菊さんに続き駆逐艦へと乗り込む
途端に、甲板上から海軍兵の歓声と禍憑の悲鳴が響く。袈裟に断ち切られた汚泥色の上半身が転げ落ち、海へと落ちた
(*゚ー゚)「出してください!!」
すぐさま船は三浦がいる本拠地の島へと向かい発進する
すると頭上を、禍魂の砲弾が通り過ぎ―――
城和泉正宗「嘘……!!」
今し方、五人が乗り込んだ駆逐艦へと降り注いだ
(;T)「ッ……」
クソ、艦体が影になって見えてなかった。安否が気がかりだが……
天龍《問題ねえ!!行……k……》
(;T)「天龍、天龍!!」
天龍から辛うじて届いた通信は、ノイズによって掻き消える。禍魂による電波障害か
甲板上からは粘り気のある禍魂が零れ落ち、艦体を黒く染め上げ始めている
今度は活性化したであろう禍憑の、勝ち誇ったかのような嗤い声が辺りに響き渡った
102:
時雨《ああもう!!一瞬遅かった!!》
(;T)「過ぎた事だあいつらを信じろ!!残りは!!」
時雨《一隻!!終わったら僕も合流する!!》
(;T)「最後まで気ぃ抜くなよ!!」
時雨《耳が痛いよ、クソッ!!》
覆水、盆に還らず。俺達は無事を祈るほか無い
航路は予定通り、脇目も振らず島へと奔る
( T)「……」
褌を締め直す意味も込めて、矛を強く握る
すると、その様子を見ていたのであろう小夜がジャケットの裾を引いた
( T)「なんだ?」
小夜左文字「……もう、今しか伝えられない」
( T)「……」
真剣な眼差しに見据えられ、流石にふざけられなかった。今ふざけたら刺される。間違いない
小夜左文字「貴方、『稜威』が目覚めかけている」
( T)「おいふざけんなよお前俺がボケんの我慢したのに」
小夜左文字「冗談なんかじゃないわ……貴方の一番近くにいたのは、私だもの……」
103:
この期に及んで緊張をほぐす為に冗談を放ったわけじゃないのだろう
耳を疑うような内容だが、小夜の言葉、表情に嘲るような色は見当たらない
( T)「……根拠は?」
小夜左文字「一つ目は、錆憑になりかけてた城和泉と偶然にも『繋がった』事……これは貴方の背にいた私も感じた……」
城和泉の記憶が『憂いの篩』のように流れ込んできた時の話か。禍魂による共鳴だと思っていたが
小夜左文字「次に、貴方が禍魂に憑かれた時の暴走。過去にも、同じような例があるとお母さんが言ってた……」
小夜左文字「未熟な巫剣使いの中に入り込んだ禍魂が、稜威と反比例しあう事で……互いの影響を強めるんだとか……」
確かに、副司令を名乗るあのアマも似たようなことを言っていた
俺は禍憑を殺せる人間だが、相反して禍魂を増幅させる力を持つと
小夜左文字「禍魂に憑かれた分、稜威がそれに囚われまいと抵抗する事で……強制的にその力を釣り上げる……」
( T)「元々あった素質が、強引に目覚めてしまったと。そんで、その逆も然り」
小夜左文字「そう、だから……副司令は貴方を試した……禍魂に憑かれ、堕ちる人間かどうかを……」
( T)「……で、俺にどうしろって?」
小夜左文字「別にどうもしないわ……何事も無く復讐できれば、それで問題はない。ただ……」
小夜はジャケットの裾を放し、今度は矛の柄を握った
途端に、矛からじんわりと温もりが伝わってくる。無機質なものではなく、『生き物』の体温に近い熱が
それが、小夜の巫魂であることは何となく理解できた
小夜左文字「どうしようもなくなった時の……最後の賭けとして、頭に入れておいて……」
( T)「……わかった。よろしく頼む」
小夜左文字「ん……」
小夜がここまで付いてきたのは、女将の言いつけもあるが、『最後の手段』も兼ねているのだろう
俺はその稜威とやらの扱いは知らないし、そもそも自覚もない。訓練すれば勝手は違っただろうが、時間もない
都合よk……いや二回死にかけてるわ。都合もクソもねえわ。それくらい目覚めてくれねえと割に合わねえ
だが当てにはしない。この研鑽した筋肉で、あの野郎を絶対にぶち殺してy
104:
( T)「ッ!?」
ドン!!という衝突音と共に、船が大きく揺れ、度を急激に落とす。座礁か?
いや、ここは沖合だ。それに、この付近で訓練していた海軍兵がそんなヘマをするだろうか?
夕立「ば、爆発っぽいぃ!?」
( T)「おい八宵」
八宵「違うよ!!今のはボイラー部からじゃなくて船首からでしょ!?」
(*゚ー゚)「ッ!!下がって!!」
『びたり、びたり』。吸盤を貼り付けるかのような音と共に、いくつもの『腕』が這い上がってくる
「グルルルルルルル……」
海岸でも見た、触手頭の禍憑だ。野郎、海からでも御構い無しに湧いてきやがったか
城和泉正宗「あと少しで到着って時に!!」
(#T)「ああ全くとことんうぜえ野郎どもだ!!」
上半身を乗せてきやがった禍憑の顎を全力で蹴り飛ばし、続けて這い上がった奴をゴルフスイングの要領で斬りとばす
しかし、数が多い。ゾンビ映画のワンシーンのようにキリがない。これじゃ進退儘ならぬどころか、重量超えで沈没すらあり得る
(*゚ー゚)「もう少し、なのにッ!!」
距離にして百足らず。泳いでも到達する距離だが、飛び込みでもすりゃ海の中に引きずりこまれるのがオチだ
この縄張りを抜けないことには辿り着けない。ここまで来て、雑魚の群れごときに足止めされるとは!!
105:
小夜左文字「……仕方ない」
( T)「あ!?お前、何やって……!!」
小夜左文字「私の番が来ただけよ……!!」
小夜は防御壁を展開した。船を守るためじゃ無く、『道』を作るために
因幡の白うさぎに出てくるサメのように、均等に並んだ足場が島へと続いている
城和泉正宗「あなた一人残しては行けないわよ!!」
小夜左文字「いいから!!行って!!」
小夜の顔からは滝のような汗が流れ出し、並びの良い歯を砕けんばかりに噛み締めている
距離百足らずといっても、島まで届かせる壁を張るには壮絶な負荷が掛かるのだろう
押し寄せてくる禍憑に、刀を使う余裕など毛頭無いように見える
小夜左文字「共倒れより、マシ……!!」
( T)「っ……クソが!!若、城和泉!!行け!!」
(*゚ー゚)「はい!!城和泉!!」
城和泉正宗「し……死ぬんじゃないわよ!!絶対に!!」
小夜が身を削って作り上げた橋にすら妨害してくる禍憑を斬りはらい、二人を先行させる
俺か夕立が残るべきなのだろう。だが……
「あんたらも!!さぁ、早く!!」
「お嬢ちゃんは俺らが命を懸けて守るからよ!!」
八宵「工具って振り回したら痛いんだよぉ!!」
海兵達の身を呈した働きを、無下にするわけにもいかない
クソ、八宵までレンチ振り回して抵抗してやがる
夕立「っ、ぽぉい!!提督さん!!」
素面の状態で禍憑の塊を、夕立が海へと斬り払った
グズグズしている場合ではないと察している。俺が立ち止まってどうする!!
( T)「後は、任せた!!」
小夜左文字「フ、フフ……良い、復讐を……!!」
頼りにし続けた、小さな復讐者の心からの笑顔
それを見て湧いた力を脚に込め、架け橋を蹴って跳んだ
「グガアアアアアアアアアア!!!!!」
「さぁ!!帝国海軍の底力、見せてやれ!!」
禍憑の叫びと銃声が後ろ髪を引いたが、前を向き進み続けた
109:
―――――
―――

沖ノ鳥島をご存知だろうか。日本の排他的経済水域を広げる為に、コンクリートと鉄筋で埋め立てられた殺風景な無人島だ
教科書に載っているそのままの形を真っ黒に染め上げられたような場所を想像すれば間違いない
最後の橋を蹴って、島に踏み込んだ時には大きく、底の見えない穴に落ちるような錯覚を起こすほどだ
( T)「……」
( ゚д゚ )「来たか」
その中心部に、標的は立っていた。お前ブレイド2から来たのかよってくらいの黒衣と、同じく『漆黒』という言葉がよく似合う日本刀を握って
共謀者である北谷(きたたに)何とかも、恍惚の表情を浮かべながら頬に手を沿えている。勿論、俺たちを見ているわけではない。その視線は、奴の想い人にのみ向けられていた
(*゚ー゚)「北谷菜切……!!」
( T)「……」
そうだ北谷菜切(ちゃたんなきり)だった。読み方難しくて忘れてた
忌々しいほど無傷の連中に対して、少し離れた場所で先行隊である虎徹といずみーがいた
長曾祢虎徹「お前ら……!!」
反応を示したのは、倒れるいずみーを庇うように構えている虎徹だけだ
いずみーは死んではいないようだが、敵を前に立てないほどの重傷であるのは言うまでもない
虎徹に関しては目立った傷こそないが、服は所々破れ、大きく息を荒げている
『遅かった』と後悔はしまい。むしろ、『間に合った』と安堵するべきだろう
(*゚ー゚)「……スゥー」
緊張を押し殺し、若は自身の『菊華刀』を抜く
北谷の表情が一変して暗く沈んだが、彼は意に返さなかった
110:
(*゚ー゚)「御華見衆隊士、椎名美琴。並びに、愛刀『城和泉正宗』!!桜禍糖の製造、流通及び国家反逆の罪により、貴方を討ちに馳せ参じた!!」
(*゚ー゚)「御覚悟を!!」
『稜威』を繋いだのだろう。刀身から淡い光が放たれる
城和泉もまた、これまでの艱難辛苦を燃料にして闘気を放った
かっこいいじゃねえか。俺たちも続くとしよう
(#T)「よぉ!!殺しに来たぜ!!三浦ァ!!」
夕立「やっ、やややっ、八つ裂きにしてやるぅぅ……」
( T)「オーケーその調子だ獰猛さに磨きが掛ったぞ夕立」
マルチーズからポメラニアンになったくらいの上げ幅だが
いや小型犬って気性荒いんだぜ?実家の犬もそうだったし(チワワ)
111:
( ゚д゚ )「……フッ、四人か。道中で随分と数を減らしたようだな」
( T)「あー、おかげさんでな。テメーの虚仮威しに踊らされっぱなしだ」
( ゚д゚ )「ほう、虚仮威しと?」
( T)「稚拙な推理にお付き合い頂いてもよろしいかな?」
( ゚д゚ )「勿論」
虎徹が声を上げようとして、やめた。新選組の局長なだけある。息を整える時間を作っているのだと察したのだ
最も、三浦も『時間を稼がれている』とわかっているのだろう。その上で、奴は『余裕』を持っている
時間と、被った被害、相手の数に囚われていない。やはり、茂名が言った『目的』を重視していないようだ
( T)「蕾の演出、禍魂艦の派手さは確かに目を奪われた。だが、その行動には『無駄』が見受けられる」
( T)「一つは、艦の『脆さ』だ。大きさこそ時代を先取りしていたが、その割にはハイペースで沈められている。最も、俺の育てた可愛いバカが『強すぎる』ってのもあるだろうがな」
( T)「もしアレが実物に禍魂が乗り移ったものならば、もっと強化されている筈だ。実際、人や深海棲艦でそれは証明されている。つまり」
( T)「形を模しただけの『ガワ』だった。明かしてみれば何でもない、しょうもないタネだ」
三浦はさも楽しそうにクツクツと笑う。気の合う友人とカードゲームに興じているかのように
( T)「それがわかったのは、実弾ではなく『禍魂』を飛ばしていたのを見てだ。最初こそ上手い使い方だと思ったが、よくよく考えりゃ『効率が悪い』」
( ゚д゚ )「ほう?」
( T)「これも戦って知ったことだが、禍魂には修復力がある。一旦沈めて、海の底で実体のある禍憑艦として作り直せば、俺らや御華見衆も手を出しづらかったろうよ」
( T)「そうしなかったのは、戦力を救援に回し分散させる為。これはお前の作戦の内だろう。そして、『そもそも沈めるほどの破壊力は出せなかった』から」
禍憑を殺せる艦娘の実弾を防ぐ装甲が無い。つまり、敵艦の装甲を撃ち抜ける砲も実弾も無い
ブラフとリスク分散の為に作られただけの『ガワ』。だからこそ俺は、菊さんの『煩わしい』と言った評価をやんわりと否定したのだ
( T)「そうじゃなきゃ、わざわざ『拿捕』なんて面倒な手段取るかよ。ぶっ殺した方がよっぽど楽だからな」
( ゚д゚ )「フ、ハハッ!!いやはや、やはり貴様は楽しい男だ!!別世界から来たとは思えないほど禍魂に対して『理解』がある!!」
( T)「嬉しくねえ誉め言葉をどうも」
112:
城和泉正宗「……」
敵を前に気を急いているのか。張り詰めた弓につがえられた矢のように、すぐにでも飛び出してしまいそうだ
良くも悪くも愚直な城和泉らしい。だが、もうちょっと辛抱を……いや
( T)「お嬢さん」
城和泉正宗「!!」
指を鳴らして城和泉の意識を俺に向ける。付き合いは短いが、試す価値はある
ここで一つ、大人の『小賢しさ』を学んで貰おう
( T)「男の語らいに水を差すような真似はやめてくれや」
城和泉正宗「……ふざけないで」
( T)「テメーも剣士なら『口火』の切りどころを弁えたらどうだ?ええ?」
城和泉正宗「っ……?」
反論しようとした城和泉は、俺が鳴らした『指』を見て、鳴りを潜める
正確には、俺が指す『物』に、だ。三浦達からは見えない位置に、『それ』は差し込まれている
察しがついたのは及第点。だが、表情や閉口で『臭わせてしまった』のは頂けない
打ち合わせも訓練もしていないなら、こんな所か。苦し紛れでも誤魔化すしかねえ
( T)「失礼。話を遮ってしまった」
( ゚д゚ )「構わんよ。共に茂名と戦った仲だろう」
( T)「フン」
いけしゃあしゃあと。悪党の身振りがお上手なこって
113:
( ゚д゚ )「で、どうする?その程度の戦力で我らに立ち向かうのかね?」
( T)「見てわかんねーか?充分だろ」
( ゚д゚ )「これが『最後の好機』だとしても?」
( T)「……」
( ゚д゚ )「大方、察しはついているようだな」
三浦が剣先で地面をコツコツと叩くと、硬い筈の地面が渦潮のように蠢いた
その中から、まるでタケノコでも生やすかのように『青色』の柱が伸びてくる
長曾祢虎徹「特異型……!!」
俺たちが探し求めていた、元の世界に帰る手段
『特異型禍要柱』。その実物が、すぐ目の前に現れた
( ゚д゚ )「ここまで辿り着いた褒美と言ってはなんだが、今なら確実に元の世界へと帰れるだろう。貴様の部隊員を呼ぶ為に、しばし攻撃の手を止めて―――」
言い終わるまで待たなかった。夕立も、制止の声を上げなかった
茂名に提案された時から答えは変わっていない。俺たちにとって、当初の目的は既に『二の次』となっているからだ
( ゚д゚ )「……」
( T)「……」
投擲した矛に貫かれた特異型は、火花をいくつか散らした後に沈黙する
帰れるものか。御華見衆への恩を返さず、深海棲艦の息の根も止めず、おめおめと帰れるものか
( T)「夕立、言うたれ」
夕立「バカにすんなっぽい!!!!!!!!!!」
長く遠い帰路になろうとも、『ケリは着ける』
これが、俺たち『地獄の血みどろマッスル鎮守府』のやり方だ
114:
( ゚д゚ )「見事……」
失望など微塵も見受けられない。寧ろ、必死に高揚を押し殺しているように見える
( ゚д゚ )「御見事!!!!!!!私の望みは、今、叶えられた!!!!」
その些細な抵抗も、程なくして消え去った
俺の好きな言葉に『好敵手』というものがある。『好みの争い相手』。一見矛盾した言葉だが、競う者にとっては栄誉よりも価値のある存在だ
俺は拳を握った。間もない激突に備える為でもあったし、『合図』としても送れるからだ
( ゚д゚ )「では戦おう!!殺し合おう!!!!異世界より現れた、蛮勇の戦士よ!!!!!」
( ゚д゚ )「その矛を握るに値する奮闘を!!!!!!!私は期待する!!!!!!」
『好敵手』。困った存在だ
あれだけ殺したいと思ったのに。友や恩人を貶め、苦しめているのに
( T)「スゥー……」
俺は、こいつをどうしても『嫌いになれない』
(#T)「求められるがままに踊ってやるぜ!!三浦ァァァァアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」
口火は、文字通り『切られた』
115:
城和泉正宗「これで、いいのよね!?」
城和泉は問題なく俺の意図を読み取っていた。巫魂を操って、尻ポケットの『ダイナマイト』の導火線に火を付けていた
引き抜き、振りかぶって投擲。火は導火線の中程まで進んでいる。このまま素直に爆発するか?
俺はそうは思えなかった。変幻自在な禍魂を使えば、対処は幾らでも出来る
( ゚д゚ )「シッ!!」
三浦が刀を振るうと、ジャンプとかでよく見る翔ぶ斬撃が放たれる。BLEACHかよ
ブーメラン型のそれは寸分違わず導火線を切り、別たれた口火は空中で燃えカスとなる
想定済みだ。だからこそ俺は『第二の武器』を抜いていた
(#T)「『変身』ッ!!」
夕立への指示と共に、『ショットガン』を落下していくダイナマイトへとぶっ放す
狙いなど澄まさなくとも、飛距離と貫通力を犠牲に広範囲へのヒットと破壊力を得た散弾は
( ゚д゚ )「ッ!!」
細い筒にぶっ刺さり、誘爆を引き起こす。衝撃を伴う目眩しだ
夕立「ガゴゴゴガゴゴググガアアアア!!!!!!」
城和泉正宗「ハァアアアアアッ!!」
すかさず、夕立と城和泉が超人めいた素早さで追撃を狙う
北谷菜切「なまくらがッ!!」
城和泉正宗「くっ!?」
流石にあの恋愛脳も黙っちゃいねえか。城和泉一人に狙いを定め、短刀で斬りつける
咄嗟に受け止めはしたが、足は止まった。アレは任せといた方がいい
夕立「ガゴァアアア!!」
( ゚д゚ )「ハハハ!!」
夕立「ガ!?」
夕立の双刀は空振りに終わった。三浦の姿が一瞬にして消えたのだ
勢い余って地面を転がったが、立ち止まりはせず周囲をぐるりと駆け続ける
正体不明の敵に対して『停滞』は命取りだ。叩き込んだ甲斐があった。さて
116:
(#T)「よっこらマッスル!!」
俺も俺で矛を引き抜いて回収する。禍要柱はボロリと崩れ落ち、チリとなった
乱暴に扱ったが刃こぼれも曲がりもない。さすが御華見衆製だなんともないぜ
長曾祢虎徹「旦那ッ!!」
( T)そ「うおっ!?」
背後からギンッと耳に劈く金属音。背後に迫っていた三浦の刀を、虎徹が受け止めていた
夕立「ガゴァ!!」
(;゚д゚ )「ぐぬッ!!」
そこへ夕立の飛び蹴りにより、大きく後ろに下がる。あのトリックは連発して使えないらしい
(;T)そ「助かったぐえぇ苦しぃ!!!!!!」
長曾祢虎徹「何故来た!?」
礼を言うやいなや、虎徹は胸倉を掴み上げた。僅かに切れた額から、うっすらと血が流れている
長曾祢虎徹「関係ねえだろお前らには!!時雨を連れて、サッサと帰りゃよかった!!今それも不意にして、俺たちの敵と戦ってる!!」
長曾祢虎徹「何がしてえんだよお前!!矛すら、俺の苦しみすら持ちだして、何しに来やがった!!」
凄まじい剣幕だ。情けなくも膝まで震える。叢雲に怒られた時だってここまでビビらねえ
だが、もう俺も怯むわけにはいかねえ。小心者なりに意地があるんだよこっちにも
( T)「……お前と」
助けに来た?いや、おこがましい
戦いに来た?そんなもん見ればわかる
銘治で過ごした、俺や艦娘。確実に言える全員の総意は―――
( T)
いや違うな。慣れてもいねえのにかっこつけるから悪い方に向かう気がする
気まずさに乗せられて遠慮してたのがいけなかった。そうだよ、俺らしくねえじゃん
(#T)「来たらアカンのかこの野郎ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」ドドッド!!!!!
これだよ
117:
長曾祢虎徹「は……はぁぁ!!!!????」
一瞬呆気に取られていたが、怒りはすぐに再燃する
そうだ、これが俺のやり方だ。艦娘とも本音でぶつかり合って、喧嘩しあって、絆とやらを深めていったんだ
(#T)「つーかてめぇ局長かなんだか知らねえが一人でぐいぐい突っ込んでんじゃねえよボケが!!!!!!!!!迎えに行くこっちの身にもなれや!!!!!!!!!!」
長曾祢虎徹「言うに事欠いてそれかよアホ!!!!!!!!!なら俺が出る前に力づくで止めりゃ良かったじゃねえか!!!!!!!」
(#T)「力づくで止めないと無謀だって気がつかないんですか????????!!!!!?????」
長曾祢虎徹「あーあー悪かったよ!!!!!!小心者のアンタにゃ荷が重い仕事だったな!!!!!!!」
(#T)「ハァーーーーーーーーーーーー!!!!????俺の所為だって言うのーーーーーーーー!!!!????いずみーや若も苦労するわけだよあーーーーーーーあーーーーーーー!!!!!!!!」
( ゚д゚ )「痴話喧嘩とは余裕だな!!!!!」
(#T)「今大事な話してんだろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」ドグシャア!!!!!!!!
(;゚д゚ )・'.。゜「ガホッ!!!!!!!?????」
迫って来ていた三浦の腹を蹴り飛ばす。空気の読めない野郎だな死ねよ
(#T)「心配しなくてもすぐに殺してやっからちょっと待ってろカス野郎!!!!!!!!!!!」
城和泉正宗「今すぐ行動しなさいよこのバカーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
(#T)「いーや一回言って聞かせないとダメだもん!!!!!!!!」
長曾祢虎徹「だもんじゃねえよ気持ち悪いな!!!!!!」
(*;゚ー゚)「お二人とも、後になさってくださーーーーーーーーーーい!!!!!!!」
夕立「ガゴゴゴグガギゴゴゴガ!!!!!!!」
(;゚д゚ )「これほど早く調子を狂わせられるとは……っと!!」
118:
北谷菜切「中尉さん」
落ち着きがあるが、ドスの利いた声色に場が静まり返る
首筋に刃を添えられたかのような殺意とプレッシャーは、敵味方関係なく向けられた
夕立ですら攻めの手を止め、北谷菜切を警戒する程だ
北谷菜切「おふざけはここまでにしましょうね……?」
( ゚д゚ )「……君にそう言われては、な」
混乱(俺が起こしたんだけど)は収まり、三浦は刀を納める
チャンスではあるのだろうが、出方が見えない。城和泉も踏み込めずにいる
( ゚д゚ )「フゥ……虚仮威しもたった今、沈められたか」
奴の言葉とほぼ同じく、インカムから時雨の声が届く
時雨《ぶっ沈めたよ!!!!そっちに向かうね!!!!》
( T)「待て時雨、今は様子が……」
( ゚д゚ )「真打登場と行こうか!!!!」
大きく両手を広げ、柏手を一つ
それを合図に、地面から奴の身の丈を越える『腕』が生えた
長曾祢虎徹「なん……だ、ありゃ……?」
肘を曲げ手を着いて支えると、砲塔を携えた肩、続けて頭が露わになっていく
顔に目や鼻の類は無い。代わりに、剥き出しの歯が並ぶ大口が大半を占めていた
『俺らの世界』では未発達だった筈の下半身は、その巨体を支えるに相応した足腰を身につけている
例えるならば、砲と装甲を携えた『大猿』。ボス級深海棲艦が禍魂によって進化した姿
(;T)「戦艦棲姫……!!」
( ゚д゚ )「貴様の世界ではそう呼ぶのか。では、此方はこう名乗ろう」
主人のいない『独立艤装』。深海棲艦が不得手とする近接戦すら
その巨大な両拳でこなし、数多くの艦娘を肉塊へと変えた従者がーーー
( ゚д゚ )「『大禍憑・戦艦猿鬼』と」
ますます厄介な姿となって、立ち塞がった
119:
(;T)「俺らと同時期に送り込まれた深海棲艦がそれか……ハン、戦力としては全く身合わねえな。一ダース連れてこい」
北谷菜切「虚勢だけは一人前ですね、駄犬の飼い主さん?」
クソが。艤装さえ揃ってりゃ連れて来た連中だけでも一方的に終わらせられるってのに
それに時雨が沈めたガワと違ってこいつには『実体』がある。駆逐艦の砲撃だけで殺せる相手じゃない
北谷菜切「でも、貴方の大事な大事なバカ犬さんが沈められたら……フフッ」
(;T)「見えてるな時雨!!なんとか避けろ!!」
北谷菜切「その薄っぺらい余裕も、見せられなくなりますよねぇ!!!!!」
砲塔が時雨のいる方角へと向く。俺と夕立は駆け、城和泉が炎を放とうとしたが間に合わない
両肩の六門が一斉に火を噴いた。誰もが大口径の主砲音に耳を塞ぐ。一瞬の間を置いて、放たれた火の矢が深海猿鬼とやらに当たった
「縺斐′?偵▲繧峨i繧会ス?′縺オ縺√?縺!!!!!!!」
驚くべきことに、火傷を負ったかのように被弾した顔を手で覆い悲鳴を上げた
巫魂による攻撃だからか?いやそんな考察後でも良い。バケモノから上がる、死体を焼いたような臭いを伴う黒煙を抜けた
時雨が気がかりだが、ここで足を止めたら死ぬ。一気呵成にぶっ殺してやる
(#T)そ「死おぶあッ!!!!!!!!?????????」
大猿の爪先が迫り、反射的に柄で防御する。身体が宙に浮く直前に、奴の顔が目に入った
苦しむ『素振り』を見せながら、唯一表情というものが伝わる『口』が笑っているように見えたのだ
騙し討ちするだけのお脳はあるらしい。まんまとしてやられた
(;T)「ッッッ!!!!!」
長曾祢虎徹「旦那ッ!?」
島の端まで吹き飛び、海へ転げ落ちそうになった所を虎徹が腕を掴んで引き止める
(;T)「危っねえ、ポッケのタバコが湿気る所だ」
長曾祢虎徹「そんな場合じゃねえだろ!!時雨は!?」
(;T)「悪党の弾丸なんざ当たりゃしねえよ。無線は……クソ、通じねえな」
時雨の回線から返答はない
120:
長曾祢虎徹「そのお気楽さと肝の太さは見習いてえ所だな……どうする?」
怒る気も失せたと言いたげにため息をつき俺の身体を引き起こす
砲弾が撃ち込まれた場所では、水柱が崩れ落ちていた。時雨の姿は見えない
あの程度でくたばるようなクソガキじゃねえ。センチメンタルになるような場面でもなかった
しかし安否がわからない以上、俺の持つ切り札は深海猿鬼とやらにぶちかませない
( T)「殺すさ。皆殺しだ」
長曾祢虎徹「……小心者が聞いて呆れらぁ」
強烈な一撃を受けたにも関わらず、矛は曲がり一つない。これマジで欲しい持って帰りたい
夕立は蹴りを避けていた為、大猿の足元を駆けながら斬りつけていた
城和泉も、時雨が撃たれたという動揺は在りながらも続けざまに火を放つ
若はいずみーを庇いながら稜威能力を使い巫魂の火を操作していた
( T)「あいつらが攪乱してる内は砲撃も撃てねえだろ。その隙にお前と俺で『禍憑』の側面を叩く」
長曾祢虎徹「それが作戦か?」
( T)「ゴリ押しは立派な戦術だぜ?」
長曾祢虎徹「アンタらしいな。行くぜッ!!」
大猿に向かい、一歩踏み出した瞬間
(;T)そ「うぐっ……!!」
虎徹の拳が、鳩尾を打ち抜いた
121:
(;T)・'.。゜「ゴホッ……」
やっぱり胴当ても借りときゃよかった
待ち構えてりゃ別だが、不意に放たれた身体の芯まで響く戦艦並みの腹打ちは、俺の膝を折った
いや、これは只のパンチじゃねえ。身体に電気を流し込まれたような痺れは、虎徹の巫魂によるものか
長曾祢虎徹「悪い。やっぱり、耐えられそうにねえわ」
(;T)「おま……」
此の期に及んで、心傷が勝るか
倒れ込みそうになる身体を、矛で支える。虎徹は俺の顔に手を添えて、笑った
長曾祢虎徹「安心しろ。刺し違えてもお前らは家に帰す。絶対に」
(;T)「ふ……ざ……けんな……」
長曾祢虎徹「ごめんな」
今度こそ、引き止めようと伸ばした腕をすり抜け、虎徹は一人で大猿へ向かう
冗談じゃねえ、謝んじゃねえ、勝手な約束すんじゃねえ
戦いしか能のねえ俺に、『傍観』なんてカッコ悪い真似をさせるんじゃねえ!!
(#T)「動け俺の筋肉ゥゥゥ……!!」
時間はない。だが焦るな。一つずつだ
昏睡状態から目覚めたザ・ブライドのように、足の指から順番に
支える脚を矛を含めた『三本』から『二本』に
『這い』から『歩み』に、そして『走り』に変えろ
あの勘違いバカに文句言うまで、死なれてもらっちゃ困んだよ!!
122:
火の矢が止まる。北谷菜切が城和泉とつば競合いになっている
装甲の薄い大猿の肘裏に刀を突き刺していた夕立は、身の丈を覆うほどの手によって振りほどかれ、地面を転がった
三浦は戦闘など素知らぬふりをして、期待を込めた目で俺を見る。なんやねんあいつ
虎徹が雄叫びと共に跳躍し、大猿のツラへと叩き入れる
歴史に名高い名刀が、装甲の欠片を巻き上げた。大猿は痛みに悶え、震えた悲鳴をあげる
ただし、砕けたのは装甲までだ。刃は弾かれ、虎徹の身体は無防備に落ちていく
「繧ョ繧ャ蟄ヲ蜑イ!!!!!」
身体を仰け反らし、振り落とされる頭突き。大袈裟に放たれた攻撃ではないが、大きさとウエイトは段違いだ
腕で防御はしたが、地面へと強かに背中を打ちつけ、跳ねた
息を着かせず、大猿は跳ぶ。巨体で虎徹を押し潰すために
(#T)「クソッ……!!」
間に合うか。いいや、間に合わせる!!
調子は万全とは言い難いが、俺は俺の筋肉を信じる
城和泉正宗「虎徹ッ!!」
(*゚ー゚)「虎徹さん!!」
二人が同時に虎徹の名を呼んだ
《提督!!》
奇しくも、インカムから俺を呼ぶ声と同じくして
(#T)「撃てェッ!!!!!!!」
全くこいつはいつもいつも、人のことを調子付かせてくれる
お陰ですっかり『酔い』は醒めたぜ
123:
(#T)「よっこらマッスルーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
矛を手放し、虎徹と、落ちる巨体の間に身体を滑り込ませる
両腕を広げ、大猿の身体を受け止める。ついでに一発頭突きもかます
抵抗虚しく何トンあるか考えるのも嫌になる程の重量が全身にのし掛かった
背中を発端に、腰、脚へと重みによる軋みが走った。筋肉の悲鳴、いや
(#T)「ぬおおおおおおおおおおおおおお……!!!!!!!」
長曾祢虎徹「だ……旦那……?」
『歓声』だ。重いものを持ち上げるほど、楽しいことはない
そしてこの喜びは『一瞬』しか味わえない。海上から聞こえた砲撃音によって
「縺オ縺√∩繧翫?縺セ縺」縺。繧!!!!????」
大猿の右肩付近を撃ち抜く砲弾が炸裂、フッと重量が軽くなる
(#T)「どっせえええええええええいやああああああああ!!!!!!!」
そのままの勢いに任せ、放り投げた。全身に大きな亀裂が入ったかのような激痛が走る
地響きが脚を揺らし、巨体が転がった。三浦から大きな拍手を贈られる。この後じっくり時間かけて殺そうと思った
(#T)そ「おFucK!!!!!!!!!!」
ごくありふれた悪態を吐いたところで、痛みはちっとも治まらなかった
そして今ので十三歳未満の鑑賞について保護者の厳重な注意が必要な異世界冒険譚になった
いいか良い子の皆。いくら気になるからってママに「Fuckって何?」なんて聞いたり、Googleのセーフサーチをオフにして検索したりすんなよ?
時雨《ねぇ今、戦艦棲姫の艤装投げ飛ばさなかった?》
(#T)「投げたよ……」
時雨《えっ怖……》
心配させてそれかよこの野郎
124:
( T)「被害は?」
時雨《天下一武道会でダウンしたピッコロがカウントダウン中に不意打ちで悟空の胸に風穴開けたくらいのダメージだったけど》
( T)「死じゃん」
時雨《ナオルヨくん持ってたからね。タービン周りがまだちょっと調子悪いから、そっち向かうのに時間掛かっちゃうよ》
( T)「仙豆じゃん」
そういや元はアレ『携帯高修復剤』だった。爆弾の側面ばっか目立ってて忘れてたわ
いやなんで爆発機能も付けたんだよほんと気持ち悪いな技研の連中は死ね
( T)「急いで来なくてもいい。それより、デカブツを確実にブッ沈める準備はしとけ」
時雨《タイミングは?》
( T)「教える。頼むぜ」
不意の砲撃は大猿をよろめかせはしたが、元は弩級戦艦クラスの艤装だ。駆逐艦の火力じゃ決定打に欠ける
代わりに『禍憑』の側面には大打撃だったようで、破損個所から黒い靄が漏れていた
( T)「さて……無事?俺は無事じゃない」
長曾祢虎徹「どうして……」
( T)「……」
長曾祢虎徹「どうして俺なんか助けるんだよ!!!!!!巫剣より、よっぽど弱いお前らが!!!!!」
長曾祢虎徹「どうして見捨ててくれないんだ……どうして……!!」
お前らと来たか。俺と若と、そして元主に向けられた悲痛は、涙と共に流れ出た
これが虎徹が抱える苦悩の核だ。この中の誰かが打ち砕かねば、虎徹はいつまでも呪縛から逃れることは出来ない
御華見衆の誰かがその役目を果たせられるのがベストなのだろうが、死人に口は無いし、若が語るにはまだ未熟
( T)「どうもこうもあるかよ」
矛の柄を足裏で巻き上げ、手元へ蹴り上げる
虎徹は、元主が死んでから毎日毎日考え続けたのだろう。深みに嵌るほどに
だがそれほど難しい事じゃない。彼だって、若だって、そして俺だって。その行動に小難しい理屈など無いからだ
( T)「良い女の前じゃ、かっこつけちまうんだよ。男の子はな」
ただの、『雄の本能』だ
125:
長曾祢虎徹「は……?」
( T)「俺みてえな奴らは後先考えられる生き物じゃねえよ。おっ死んじまうこともあるだろうさ」
( T)「それに、自分勝手だ。残された人の気持ちよりも、自己満足を優先する」
「縺ゅ↑縺溘→縺薙s縺ウ縺ォ……!!」
夕立「グゴガガガガガ!!!!!!!!!!」
大猿が地面に左手を着いた。夕立がすかさず手首を斬りつけると、再び肘を折る
まだケアの余裕はある。ジャケットのポケットからハンカチを引き抜き、差し出した
( T)「『こんな良い女を救って死ぬのなら本望だ』ってな。悔いや苦痛じゃなく、自己陶酔と喜びの中で死ねるんだよ」
長曾祢虎徹「っ……バカなんじゃねえの……」
( T)「その通りだ。だから、笑って送り出してくれよ。そんで、心の奥隅にでも転がしてくれりゃ言う事はねえ」
長曾祢虎徹「やめろよ、っ、縁起でもねえから……」
( T)「おっと、生き急いじまったな……ハァ、最初からこう言えば良かった。つまり、お互い様だよ。お前は俺らに死んで欲しくねえし、俺らはお前に死んで欲しくねえ」
簡単だ。誰にだって根本には『思いやり』という感情がある。それを他者に制御など出来やしない
俺が虎徹と仲違いした時は『言葉足らず』だったし、彼女は彼女で過去のトラウマから感情を一方的に押し付けていた
こんなにも簡単な事で堂々巡りしていたなんて、今となってはちょっとばかし恥ずかしい。マスク被っててよかった
126:
( T)「お前の気持ちを弁えずに酷いこと言って本当にすまなかった。ぶん殴るなら今だぞ?」
長曾祢虎徹「フフッ……それは、後の楽しみに取っておくことにするよ」
( T)「ごめん手加減はして?」
長曾祢虎徹「いーや、思いっきりぶん殴る。乙女を泣かせた罪は重いぜ?」
( T)「心に沁みる教訓だな。戦えるか?」
長曾祢虎徹「勿論」
虎徹はハンカチを受け取ると、目元を拭いて鼻を豪快にかんだ
乙女らしからぬ所作だ。後で洗ってから返して欲しい
長曾祢虎徹「ありがとよ。幾らか気は晴れたぜ」
(;T)「そりゃ何よりだっ……!?」
長曾祢虎徹「旦那ッ!?」
無茶をしたツケが早回ってきた。再び亀裂のような激痛が走る
全身の筋肉が痙攣を起こし、足腰に力が入らない。顔からは脂汗が噴き出てくる
これからって時にこのザマとは、やっぱり格好つかねえ
127:
( ゚д゚ )「どうした!!それで終わりか!?まだ立てるだろう!!」
傍観に回ってるくせに偉そうな口を利く。それも、だいぶ期待を込めて
大層な舞台と強大な敵を用意して、弱った相手を前にこの態度。あいつの目的は大体読めてきた
(*#゚ー゚)「三浦ッ!!」
(#゚д゚ )「子供はすっこんでいろッ!!!!!」
見兼ねた若が斬り込んでいくが、一閃放つだけで弾き飛ばす
俺に向けるものとは違い、明らかな失望を浮かべながら
若は体勢を大きく崩したものの、素早く立ち直り構え直した
(#゚д゚ )「巫剣に頼り切った木偶の分際で、私の悦びを妨げるんじゃあないッ!!!!!」
(*;゚ー゚)「う……」
城和泉正宗「主ッ!!!!!」
北谷菜切「お兄様……!?」
城和泉、それと北谷が声を上げる。様子がおかしくなってきた
三浦は『殺る気』だ。北谷の望みは既に奴の勘定から弾かれているらしい
北谷菜切「お兄様ァ!!!」
城和泉との拮抗から逃れた北谷菜切は、今までにない恐怖を浮かべて三浦へと向かっていく
城和泉も同じく、主の危機を救う為に駆け出した
「縺代?繧翫¥縺!!!!!」
夕立「ゴギィッ!!??」
大猿が巨体に見合わぬ俊敏さで夕立を掴むと、二人に向かって振り投げる
北谷菜切「ッ!!」
城和泉正宗「きゃあッ!?」
北谷は間一髪、低頭して避けたが、城和泉は夕立と受け止めるような形で衝突する
低い姿勢、そして度を維持しながら、短刀を構えて三浦の側面から
北谷菜切「ああああああああッ!!!!」
突きを放った
128:
( ゚д゚ )「フン」
避けようとしなかった。刀を持つ右手を、ダラリと下ろしただけだ
しかし、刃は彼女へと向いている。迎撃が間に合うようには見えない。『何かない限り』
北谷菜切「ッ!?」
傍目に見ても彼女の突きは脇腹を刺す完璧な一撃のように見えた
ただ一つ、若にばかり気を取られていた彼女は、この土壇場で『躓く』というミスを犯してしまったのだ
その足元には、障害など無かった平らな地面に、狙いすましたかのようにちっぽけな『段差』があった
( ゚д゚ )「消えろ」
(*;゚ー゚)「待ッ……!!」
黒刀が、振り上げられた
北谷菜切「あがっ……ッ!!!!」
腰から肩にかけての斬り上げは、小柄な彼女を簡単に持ち上げ、飛ばす
突進の勢いもあって、三浦と若の頭上を大きく弧を描いていくと、そのまま
( ゚д゚ )「くだらん」
海へと落下した
129:
(*;゚Д゚)「北谷ッ!!!!」
重傷だ。自力で陸には上がれないだろう
若もそれはわかっていた。敵だということもちゃんと弁えてるだろう
それでも彼は刀と上着を放り投げ、海へと飛び込んだ
城和泉正宗「主……っ、やだ、美琴!!」
城和泉も脇目を振らず若を追った。瞬く間に、三人が陸地を降りた
三浦は妨害もせず、此方へと振り返る。イカレの目だ
( ゚д゚ )「さぁ、さぁ、さぁ!!!!邪魔者は消えた!!戦え、踊れ!!!!死力を尽くせ!!!!人の持つ可能性を、私に感じさせてくれ!!」
( ゚д゚ )「緋墨の一撃を防ぎ、愛刀を守り死んだ彼を越える奇跡を見せろ!!!」
(;T)「……キ○ガイが」
奴の望みはそれか。女将も言っていたが、三浦はかつて御華見衆と共に超大型禍憑の討伐を行った
そして、魅入られたのだ。人が命を燃やし尽くす一瞬の煌めきに
それをもう一度、目の当たりにしたいのだろう。わざわざ別世界から『役者』を引っ張ってきてまで
長曾祢虎徹「あの……野郎ッ!!!!」
当然、虎徹の逆鱗に触れる一言だ。主の死を、奴はただの『娯楽』として扱っているのだから
だが激情に任せた虎徹一人を向かわせられない。今度こそ、しっかりと肩を掴んで止めた
130:
(;T)「聞け……」
長曾祢虎徹「っ……なんだよ!!」
(;T)「手短に言うぞ。俺の稜威を使え……」
長曾祢虎徹「おまっ……本気で言ってんのか!?」
(;T)「小夜に聞いた……最後の手段だってな……俺はこの通り、足腰立たねえ役立たずだ……若と城和泉正宗がいない今、もう賭けに出るしかねえ……」
夕立は立ち上がっているが、大きく息を切らして様子を見ている
長い時間あいつを頼りにし続けられない。時雨を使う為にも、適切な場面で働かせなければならない
虎徹も俺の異変について話は聞いていたらしいが、元より自分でなんとかするつもりだったのだろう
長曾祢虎徹「……」
躊躇いが手に取るようにわかった
(;T)「『想い、肯定、そして確信。後は勢い』。女将はそう言った」
長曾祢虎徹「……そうか、母上殿は……」
(;T)「元主に比べりゃ付き合いも短いし、頼りもねえだろう。だが、この一時だけでいい。俺を奮い立たせてくれ」
長曾祢虎徹「……そんなに自分を卑下しねえでくれよ、旦那」
虎徹は一度、刀を鞘に納めると
左手で鞘を、右手で柄を握って身体の前に出し、鯉口を切り
長曾祢虎徹「良い男に尽くすのが、『刀』の本懐だ」
鍔を、打ち鳴らした
131:
某五歳児とその家族が戦国時代にタイムスリップしたアニメ映画で有名なその動作は
武士が、約束を交わし合う時に使われる。呼び名を、『金打』といった
菊華刀である矛から、腕を伝って暖かさが流れ込んで行く。燃料を補給したかのように、身体の痛みが和らぎ、力が漲った
虎徹も同じだろう。額の切り傷は塞がり、高揚感に身を震わせている
( T)「これが、『鞘入れ』か」
長曾祢虎徹「いや、稜威と巫魂を繋いだだけだ」
( T)「ちゃうんかい」
そうきっぱりと否定されると恥ずかしくなるじゃんか
長曾祢虎徹「だが、これだけでも充分だ。アンタにはどこまでも驚かされてばかりだぜ、旦那」
(;T)「やや反則な気もするがね……そりゃお相手も同じか」
深海棲艦だって禍魂で強化されたんだ。これで釣り合いは取れただろう
後は力をぶつけ合うだけ。ようやく、準備は整った
( T)「あれ言おうぜ。新選組がいつも使ってるあの言葉」
長曾祢虎徹「ハハッ、そりゃあいい。気を引き締め直すに持ってこいだ」
虎徹は刀を抜き、俺は矛を担いだ
深呼吸して、腹から声を張り上げた
長曾祢虎徹「御用ッ!!!!!」
(#T)「改めだァッ!!!!!!」
世を乱す罪人に向けて放つ、断罪の台詞を
132:
( ゚д゚ )「っ……最高だ!!もっと、もっと魅せろォォォオオオオオオオ!!!!!」
「繧ォ繝矩」溘∋縺溘>!!!!!!」
大猿が四足走行で駆け出し、飛び上がって右前足を振り上げる
互いにサイドステップで躱す。掌が地面へと叩きつけられると同時に
(#T)「ドラァッ!!!!!」
矛を掌の甲へと向けて振り下ろした。自前の筋肉に馬力も加わった事もあってか、刃は装甲を抜き肉に到達する
(#T)「虎徹ッ!!」
長曾祢虎徹「あいよっ!!」
すかさず虎徹が矛の峰に刀を叩きつける
さらに押し込まれた刃は、肉の先の骨を砕き地面へと到達した
(#T)「ふんぬ!!!!!」
包丁で食材を切る要領で引き抜くと、拳骨から先の四本指が切断
猿は獣らしく汚い断末魔をあげた。獣にスゴイシツレイ
133:
「縺?↓荳シ鬟溘∋縺溘>!!!!!!!」
ビンタの要領で左手が迫る。顔面どころか全身バキバキにされちまうようなサイズだ
しかし今の俺の筋肉をそんな雑に砕こうなどおこがましい。いや普通の状態でも砕かれない自信はあるけど
(#T)「オラッ!!」
身を丸めて、右肩からのタックルで受け止める。全身が若干押し込まれたが、吹き飛ばされずに踏みとどまった
長曾祢虎徹「ずああッ!!!!」
動きが止まった大猿の腹に上段斬り。そして股下まで斬り込んで行き、背後へと走り抜ける
臀部から股間にかけて一本の鋭い斬り傷が走った。タマが縮こまる
(#T)「夕立、来いッ!!」
装甲を斬り裂くだけでも上等だが、やはり浅い。右手と同じく追撃は必須だ
左手を押し退け、縦傷に沿って矛を突き刺し、押し込む。禍魂の混じった返り血がマスクへと染み付いた
夕立「ガゴガアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
小さくて可愛い方のバケモノは、跳躍し矛の柄へと乗って体重を掛ける
軽い分、振り斬るに到らなかった負荷は
(#T)「フンッ!!!!!!!!」
夕立「ギギィッ!!」
俺の筋力と、柄からの跳躍で補った
134:
突き刺した腹から股へと刃は滑り、勢い余って地面を打つ
再び上がろうとした大猿の叫び声は
夕立「ガァッ!!!!!」
「ッ!!!!!????」
顎下から突き上げた夕立のアッパーによって遮られた
艤装無しとは言え艦娘。それにいけいけドンドン状態の夕立。スプラッター映画さながらのダメージもあってか
「???z?n?f?X?R……」
勢いのない声と共に後ろへとフラついた
とは言っても、三メートルあるかないかだ。島の端まではまだ距離がある
『使えるもの』は全部使って、海に落とさねば必殺の一撃は喰らわせられない
(#T)「時雨!!大猿の正面に回って注意を引け!!その後、奴が撃ったタイミングに合わせてぶち当てろ!!」
時雨《難しい注文するね!!僕なら余裕だけど!!》
(#T)「一言多……っとぉ!?」
続けて斬りかかろうとした夕立の襟を掴んで引き、大猿のスレッジハンマーを避ける
地面を打つ轟音と風圧。そしていきなり行動を妨害された夕立の抗議を一身に受けたが、薄焼き煎餅になるよりはマシだった
135:
「縺ェ繧?◆繧薙○縺?§繧!!!!」
さて、仕掛けたはいいが時間の調節に細心の注意を払わねばいけない
時雨が砲撃をした後に、大猿の側面ないしは背後に回る時間は作らなければいけないのだ
(#T)「チッ!!」
続けざまに振り落とされた左拳。夕立を突き飛ばし、俺は反対側に跳んで避ける
手首を狙って矛を振ったが、お相手も学ぶらしい。手を素早く引いた為、空振りに終わった
長曾祢虎徹「後ろがお留守だぜ!!」
右膝裏を虎徹が叩き、片脚を着く。同時に、島の側の海面から水柱が立った
時雨の威嚇砲撃だ。いやが応にも、『深海棲艦』の側面は意識を『艦娘』に向ける
両肩の砲塔が、狙いを定めた。耳を塞ぎたい所だが、直撃を妨害する為にもそうはいかない
(#T)「死ィッ!!!!!!!!」
柄の底を右手で握り、リーチを伸ばす死ね!!!!!!オラ死ね!!!!!!
死んで欲しいという先走りな思いと共に、顔面に兜割りをぶちかました死ね!!!!!すぐ死ね!!!!!
「!?」
前歯が砕けると同時に、砲撃音が耳を劈く。硝煙が目に沁みたし砲火が服と肌を焦がした。常人なら吹き飛んで死ぬ
しかし筋肉がある上にバフ掛かってるので割と平気だった。無茶の甲斐もあってか、砲塔は上を向き、砲弾は見当違いの方向へと跳んでいく
(#T)そ「あっやべえそうだった逃げろ!!」
そして頭が良かったので直後になって思い出す。時雨にぶちかませと言ったことを
虎徹と同じく股下を抜けると、大猿の胸元ドンピシャに砲撃が当たった。あっぶねえ巻き込まれるとこだ
(#T)「よしッ!!」
大猿自身の砲撃反動に加え、時雨の後押し
狙い通り、大猿はよたよたと大きく後ろへと退がった。踏み潰されないよう、足を避けて再び正面へ回る
長曾祢虎徹「決めるか!?」
(#T)「急ぐな!!じっくり嬲るぞ!!」
長曾祢虎徹「ハハッ!!趣味が悪ぃぜ、旦那!!」
俺の隣へと立つ虎徹は、そう言いつつもイキイキとした笑顔だった
136:
「縺上o縺ェ縺斐≧縺後s縺ー繧!!!!!」
『追い詰められている』自覚はあるのだろう。手負いの獣らしく怒りの咆哮を上げる
右手から噴き出る血が硬質化し、歪な刃となって大きく薙ぎ払われた
長曾祢虎徹「旦那!!『俺』を頼む!!」
(#T)「なんて!!!!???」
虎徹はそれを避けずに刀身で受け止めた
長曾祢虎徹「重っ……!!」
(#T)「そういう事かよ!!」
重量差によって浮き上がった足を見て察しはつく。虎徹の身体を抱き止め、その場に留めた
刀は禍魂の刃に打ち勝ち、皹を走らせた。虎徹の身体からビリリと痺れが起こる
長曾祢虎徹「我慢しろよ旦那!!城和泉には劣るが、俺にも超常の力は使える!!」
(;T)「あっこれそうなの!?」
長曾祢虎徹「疾れ雷電ッ!!!!!」
刀身から紫電が発せられ、刃を伝って大猿の全身へと巡る
巫魂による超常の力は、相対する存在の禍憑を蝕み、焼いた
「???????????????イ!!!!!!」
刃は食い込んだ先から砕け、痛みにのたうち回る
俺も俺で結構痺れた。違う意味も含んで
137:
( T)「かっこいい……しゅき……」
長曾祢虎徹「へぁっ!?」
( T)「ウルトラマンかよ」
長曾祢虎徹「い、いきなり変なこと言うからだろ!!う、うるとら!?」
なんかワタワタし出した虎徹はさて置いて、次は俺の番だ
提督超人パワー95万(瞬間最大7000万)を誇る俺の残虐ファイトを見せてやる
「繧峨>縺ゅs繧後>縺ョ繧九!!!!!!!!」
狙いはまだ原型を留めてる左腕。掴みかかろうと迫ったそれを
(#T)「フン!!!!!」
中指と薬指の間から、矛を差し込んで斬り入れる
蓄積したダメージの所為か、それとも元々薄い箇所だったのか。装甲は呆気なく抜け、手を中程まで裂いた
(#T)「逃がさねえぜ!!」
柄を地面へと突き立て手放し、頼りの無くなった薬指と中指を両腕で抱え力を込め
(#T)「オッ……ラァァァァアアアアアアアアア!!!!!!」
一気に押し込んで肘の辺りまで裂いていく。自分で裂くから美味しいのってCMで子供も言ってた
傷ってのは鋭利なものよりも雑に出来たものの方が治りづらい。それに痛い
「繧√>縺溘s縺ヲ縺??縺九■繧?≧!!!!!!???」
嗜虐心に響く心地の良い悲鳴だ。股座がいきり勃tごめん嘘そこまでじゃない
138:
時雨《いつでもいけるよ!!》
(#T)「やれッ!!」
遊びの時間はこれで終わりだ。そろそろ目障りな存在には土俵から消えてもらおう
(#T)「押し出すぞ!!」
長曾祢虎徹「了解ッ!!」
切り返し、矛を抜き取る。両手がお釈迦になった大猿は、再び巨体で押し潰そうと膝を曲げた
同じ轍は踏むまい。すでに投了までの道筋は出来上がった
長曾祢虎徹「行くぜ旦那ァァァッ!!!!!」
(#T)「ルアアッ!!!!!」
俺は右、虎徹は左。両方から猿の胴に横薙ぎを放つ
重量が一気にのし掛かったが、身体の熱は脚を動かし続ける
長曾祢虎徹「これで……観念しやがれッ!!!!!」
(#T)「クソザコナメクジがァッ!!!!!」
土俵際は目前。一層力を込め、振り払う
追い込まれた大猿は、間抜けに両腕を振り回し落ちまいと堪えた。健気なもんだ涙が出るね
(#T)「オマケだ」
夕立「ゴガァ!!!!!」
勿論、これも嘘だ
139:
夕立「ギィッ!!!!!」
「!?」
顔面にブチかまされた夕立のドロップキックが決まり手となり、大猿はゆっくりと倒れ込んで
「繧ュ繝」繝励ユ繝ウ繝槭?繝吶Ν!!!!!?????」
海へと落下。TUNAMIのように押し寄せた海水を被ってしまう。見つめ合うと素直にお喋りできない案件
水面を叩いてもがく様は、さながら川に流れる河童みてーだ。情けないなそれでも深海棲艦かよ
( T)「はい危ないから退がr夕立ちゃん飛び込まない!!!!!!!!!!!」
夕立「ガ?」
二人を引き連れて、大きく退がる。大猿に向かって海中を走る数本の『線』に巻き込まれないようにだ
線は背ビレを立たせて獲物に迫る鮫のように大猿に食いつくと
時雨《大当たり》
海水を多量に巻き込んで大爆発を起こした
戦艦クラスと言えども、小さな身体に大きな『魚雷』には耐えきれまい。誰のセリフだっけかこれ
( T)「反応は?」
時雨《無いね、クリティカルだ。提督、僕に言うことは?》
( T)「さすが俺の懐刀」
時雨《ふふーん、ンフフ……》
ここは素直に調子に乗らせてやるか
140:
( T)「陸に上がって加勢して貰いたい所だが、若と城和泉が三浦に斬られた恋愛脳追って海に飛び込んだ。安否の確認を頼む」
時雨《ハァ????何やってんのさ……しょうがないなぁ……》
普段なら『見捨てればいいのに』とでも付け加えるだろうが、二人の性格を知っている以上、飲み込んだのだろう
大きく旋回して島の周囲を調べ始めてくれた。さて、こっちはこっちで大仕事だ
( T)「残りはお前だ。ハイクを詠め」
( -д- )「……」
深海棲艦は殺した。共謀者は奴が自ら斬り捨てた
たった一人残った首謀者は、刀を地面へと突き刺し、杖のように柄底に両手を添えた
( ゚д゚ )「自信作だったのだがね。役不足だったか?」
( T)「一ダース連れて来いって言っただろ」
( ゚д゚ )「フフ、一体だけでも精一杯だったのでね……これで、打ち止めだ」
あ良かったこれ以上出てこられたらどうしようかと思った
( T)「だが、まだまだ楽しませてくれんだろ?」
( ゚д゚ )「ああ。お互い、不完全燃焼だろうしな」
( T)「それじゃあ……語り合おうか。存分に」
矛を振るい、両手で構える。虎徹も霞の構えを取った
三浦は直ぐには動かなかった。地面から、いくつもの蔦のような禍魂が刀身を、脚を伝い身体を包み込んでいく
蔦は纏まり、一つの幹となった。蠢きながらギュウと締め上がると、一旦停止してから解かれ始めた
( T)「……」
犬、いや、狼を模した仮面と兜。羽根が折り重なったような肩鎧に、黒い蚯蚓の這う籠手
佩楯は苦悶の表情を浮かべる人の顔に覆いつくされ、足袋には猛禽類が如く鈎爪が生える
仮面の奥で光る瞳は青白い。深海棲艦が持つ色とそっくりだった
爪 ゚?〉「……三浦 孝一だ。手合わせ願おう」
ハッキリと言える事が一つあるとすれば、奴はヒーローより悪役の造形に心惹かれるタイプだ
141:
( T)「……解除」
夕立「ッ!?」
まだ戦えるのだろう。だがこの先、こいつの体力を鑑みる余裕はない
夕立「ハァッ、ハァッ、夕立、まだ……」
( T)「わかってる。いずみーを見てやってくれ」
夕立「ハッ、ハッ……りょうか、い……ぽい……」
俺達の他に、気を失ったままのいずみーも残っている。散々暴れてからなんだが、無事は確保し続けたい
夕立が離れて、此方の手駒は俺と虎徹のみ。互いに顔を見合わせて、一歩踏み出した
戦に臨むニンジャにとって、アイサツは神聖不可侵の行為。古事記にも書かれている。アイサツはされれば、返さねばならない
( T)「地獄の血みどろマッスル鎮守府司令官、マッスルだ」
長曾祢虎徹「御華見衆上野支部所属、特殊遊撃部隊『新選組』局長。長曾祢虎徹」
( T)「……」
一騎討ちの作法なんてしらねえ。この後なんて言えばええんやろか
助けを求めて虎徹の方を伺うと、呆れた様に鼻で笑った。『好きにやれ』ってことか
( T)「スゥー……」
(#T)「てめえの腸ブチ撒いて雑魚の餌にしてやるぁあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
俺なりの返答に対し、三浦は
爪 ゚?〉「ハッ、ハハハ!!応!!死力を尽くそうぞ!!」
禍々しい見た目に反し、朗らかに笑い返した
142:
長曾祢虎徹「あーあー、台無しd (#T)「あああああああああっしゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」旦那ァ!?」
今更出方を伺うなんて億劫な事はしねえ。勢いそのまま飛び出すのが一番だ
三浦との距離を一気に詰め、矛を振り上げる
爪 ゚?〉「ハハッ!!」
このまま振り下ろせば袈裟斬りになるが、こいつはブラフだ
狙いは柄底による刺突。左手を放し、槍投げの要領で喉元を突く
爪 ゚?〉「ッ!!」
柄は喉を捉え―――ず、ただ空を斬る。夕立の初撃を避けたのと同じく、姿を消した
後ろか?いや、俺の背後には虎徹が着いてきている。つまり、そこに現れるのは天敵である巫剣に背を向けるのと同じだ
では側面?ベストな判断だろう。この場合、矛で防御が出来る右側ではなくフリーな左側。だが予測さえしていれば致命傷は避けらrいいやわかんねえ凄みでなんとかしよう
(#T)「オラァッ!!!!!!」
柄を両手で握り直し、頭上に翳す。ギンッと響いた金属音と火花が散った
爪 ゚?〉「ほっ、見事だ!!」
答えは『真正面』からの上段斬り。裏の裏を掻いたって所か
重圧感は大猿よりも控えめ……と言いたいが、やはりラスボス。一撃かましただけでこの俺が抑え込まれている
力比べと行きたいが、俺のワガママに彼女を付き合わせられない。脱力することで黒刀に掛かる力の行き先を逸らし、その場から脱する
長曾祢虎徹「らァッ!!」
爪 ゚?〉「シッ!!」
間髪入れず虎徹が突きを放つが、刀身を叩き払われる。刀を返し、三浦を斬り上げようとするが
爪 ゚?〉「コォッ!!」
長曾祢虎徹「ぐふッ!?」
奴の前蹴りの度が勝った。軌道が外れた剣筋は、三浦の仮面にギリギリ掠らなかったが
爪; ?〉「ッ!?」
虎徹の持つ巫魂の紫電が、切っ先から顔面へと通電する
威力こそ大きなものでは無かったが、不意を突かれた三浦は仮面を手で覆い後ずさる
143:
(#T)「ここだァァァーーーーーーッ!!!!!」
この目くらまし、使わない理由は無い。今度は矛を振り上げ、刃が頭上に落ちるように『投げつける』
爪;゚?〉「くッ……!?」
スタンは一瞬。奴は俺が馬鹿正直に好機に乗ると予想したのだろう
ところがどっこい、矛を防いだ時の手ごたえの無さにもう一度面食らう事になる
こちとら長物振り回すのだけが能じゃねえんだよ。既に奴の背後を捉えている
組みついても良いが、禍魂の鎧はどのような挙動を起こすかわからん。ならここは……
(#T)「おっ……」
後頭部を掴み膝裏を蹴って体勢を崩し
(#T)「っしゃああああああああああああああああッ!!!!!!!!!」
顔面を力任せに地面へと叩きつける。筋肉は矛より強し(真理)
(#T)「あ!!!!!!!!???????」
頭蓋が砕ける感触は無い。逆に、泥に手を押し込んだかのような感触だ
実際、三浦の頭は地面へとめり込……いや、『沈んでいく』が正しい
そうだ、ここは禍魂の陸地。土俵そのものが、奴の味方だ
長曾祢虎徹「逃がすなよ旦那!!!!」
(;T)そ「いやっ、ちょ、なんかスルスル入っていって厳しい!!!!!」
この陸地は三浦だけを自由に通すらしい。俺の指先が地面に到達しても硬いままだ
その内掴むことも儘ならなくなり、完全に沈み切った。インクリングかよこの野郎
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