【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性Pback

【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P


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――朝、育の家の前
プロデューサー(以下P)「おはよう、育」
育「おはようPさん! もう、約束の時間より5分遅刻だよ」
P「ごめんごめん、ちょっと渋滞に巻き込まれちゃってね。育こそ、忘れ物はない?」
育「だいじょうぶ! お仕事の資料も、学校の荷物も、ちゃんと忘れずに持ってきたんだから」
P「オーケー。それじゃあ次は環を迎えに行くよ。ちょっと飛ばすから、シートベルトはちゃんと締めておいてね」
育「Pさん、交通ルールはちゃんと守らなきゃダメだよ」
P「もちろん。大事なアイドルを乗せてるんだもの。安全運転なら任せなさい。それじゃ、行くよ」
----------------------------------------------------------------------------
3: 以下、
先輩、お元気ですか。
私が正式に先輩から765プロのプロデューサーを引き継いでから、なんだかとても長い月日が経ったような気がします。
最初は先輩のいない日々を寂しがっていた765プロオールスターズのみんなも、今では後輩たちを引っ張る良き先導役になりました。
先輩が私に托してくれた39プロジェクトも、順調に進んでいます。
アイドルたちと一緒に成長できる日常は、忙しいですがとても充実したものになっています。先輩のおっしゃったとおりですね。
気が向いたらで構わないので、アイドルたちにもご一報ください。みんなきっと喜びますよ。
それでは、また。
4: 以下、
――その少し後、765プロライブ劇場
美咲「おはようございます、このみさん、莉緒さん」
このみ「おはよう美咲ちゃん、朝早くからご苦労さま。あら、テレビ観てたのね」
莉緒「そうそう。育ちゃんと環ちゃんが朝の子供向け情報番組にゲスト出演するの、今日だったわね」
美咲「はい。この次のコーナーで出番みたいですよ」
このみ「何をするのかしら。楽しみね」
お姉さんA『モニスタ、トレンドガールズ!』
お姉さんB『このコーナーでは毎週女の子たちが大注目するコンテンツを紹介するよ!』
お姉さんA『本日はゲストに来てもらっています! 今話題の人気アイドル、中谷育ちゃんと大神環ちゃんです!』
莉緒「イェーイ!」
このみ「待ってましたヒューヒュー!」
美咲(このみさんたち、きっと企画の内容知らないはずだし、びっくりするだろうなぁ…)
5: 以下、
莉緒「あら? なんか紹介だけされてVTRが始まっちゃったんだけど…」
このみ「女の子たちが注目するトレンドを紹介するコーナーだから、その流れで出てくるんじゃないかしら」
ナレーション『今巷のイケてるガールズたちに大人気なのが……そう、男装女子!』
このみ「えっ」
莉緒「」
美咲「どうやら『空猫珈琲店』での莉緒さんの名演が、ローティーンの女の子たちにも大好評みたいですよ♪」
莉緒「まさかこの企画、Pちゃんの持ち込みだったりしないわよね?」
このみ「そういえばあの“悠利くん”のイメージも、Pと莉緒ちゃんがそれぞれの思うイケメン像をすり合わせて形にしたんだっけ?」
莉緒「そうなのよ。あのときのPちゃんのノリの良さったらなかったわ」
ナレーション『今日は人気アイドルの二人が、漫画の中から飛び出してきた王子様に大変身するよ!』
このみ「育ちゃん、こういうの凝るタイプよ。環ちゃんはポテンシャル高いしバッチリ決めればきっとすごいことになるわ」
莉緒「桃子ちゃんがこの仕事パスした理由がなんとなくわかった気がするわ」
6: 以下、
お姉さんA『お待たせしました! それではお二人に登場していただきましょう、どうぞー!』
(BGMとして少女漫画原作映画の主題歌が流れる)
このみ・莉緒・美咲「かわいい??!!」
育『アイツのことなんて忘れさせてやる。だから……僕だけを見て』
美咲「育ちゃんは少女漫画の一途な男の子をイメージしたみたいですよ」
このみ「ああっ私たちのかわいい末っ子が、挑発的な眼差しで女の子に壁ドンしてる…」
莉緒「これは予想外だったわ。育ちゃんにこんな引き出しがあったなんて」
環『心配するな。お前のことは……必ず俺が守る』
美咲「環ちゃんはクールな役作りに苦労していましたが、Pさんが特撮のブルーをイメージしようとアドバイスしたら途端に上達して」
莉緒「あぁ?ん、私もこんなワイルドな男子に守られた?い」
このみ「莉緒ちゃん……それにしても二人とも末恐ろしいわね。Pもよくここに目を付けたものだわ」
莉緒「きっかけが私の男の子役っていうのは、セクシーレディとしてちょっと複雑だけどね」
7: 以下、
――収録後、テレビ局
P「おっ、二人ともお疲れ様」
環「おやぶ?ん! ねぇどうだった? たまき、ちゃんとブルーできてた?」
P「うん、最高だった。スタッフさんからも大好評で私も嬉しいよ」
環「くふふ?。いくもバッチリ決まってたね!」
育「ありがとう環ちゃん。男の子役は初めてだったから緊張したけど、とっても楽しかった!」
P「衣装も似合ってたよ。反響が良かったら、劇場のライブ衣装に取り入れてみても面白いかもしれないね」
環「それじゃあたまき、今度はブルーじゃなくてレッドみたいな格好がしたいぞ!」
P「オーケー、後で青羽さんにも伝えておくよ。育はこれから何かやってみたいお仕事とかある?」
育「わたし、もっとお芝居をやってみたい! トゥインクルリズムのときのけいけんを活かして、映画やドラマに出てみたいな」
育「男の子の格好をするのも楽しかったけど、わたしはやっぱりこの間の桃子ちゃんみたいな大人っぽい役がしたい!」
P「『屋根裏の道化師』のことね。ああいう大きな作品となるとオーディションや撮影もかなり大変だけど、頑張れそう?」
育「まかせて! わたし前に劇団にいたから演技には自信あるし、桃子ちゃんだってがんばってたんだから、わたしもがんばりたい!」
P「わかった。二人が楽しくお仕事できるように私も頑張るから、二人も学校での勉強しっかり頑張ってね」
育・環「はーい!」
8: 以下、
――数日後
桃子「おはようお姉ちゃん」
P「おはよう桃子。昨日ご所望してたオレンジジュース、冷蔵庫に冷やしてあるから飲みたければ飲んでね」カタカタ
桃子「なぁにお姉ちゃん、後輩ならそういうのは普通、コップに注いで持ってくるまでやってくれるものじゃないの?」
P「そうしたいけど今は手が離せない」カタカタ
桃子「そっか、なら仕方ないね。で、何してるの?」
P「営業のための書類作り。ほら、育がお芝居の仕事をしたがってるの、桃子も知ってるでしょう?」
桃子「うん……そっか。お姉ちゃんもちゃんとお仕事してるんだね。ちょっと感心したかも」
P「静香みたいなこと言わないの」
桃子「それで、育はどんなお仕事をするの?」
P「一応それらしいドラマや映画のオーディションをいくつかピックアップしてるから、まずはそこにエントリーできるよう調整中」
桃子「ふーん……だから育、次の定期公演をお休みするんだね」
P「そういうこと。今日からしばらく、以前通ってた劇団の先生に稽古をつけてもらうことになったよ」
9: 以下、
P「もしかして桃子ってば育に会えなくて寂しいの?」
桃子「べ、別にそんなこと言ってないじゃん。仕事の予定が埋まってるのはプロとして喜ばしいことでしょ」
P「さすが桃子ね。定期公演に一人欠員が出て色々バタバタしてるけど、まあそれも嬉しい悲鳴なわけだから」
桃子「あれ? その日は環が代わりに出るって話になってたはずじゃなかったの」
P「それが環に急な仕事のオファーが来ちゃってね。昆虫の生態を学ぶ教育番組のアシスタント。先方からのご指名なんて、またとない機会でしょ?」
桃子「そのオファーも、この間の朝番組がきっかけ?」
P「そうなの。元々は男の子を起用する予定だったみたいだけど、この間の環を見て、そういう固定観念は捨てようってことになったそうだよ」
桃子「ふーん。なら桃子、その日のスケジュールまだ空いてるし、レッスン時間さえ確保してもらえるなら出てあげてもいいけど?」
P「本当? ありがとう、助かるよ。なら早、今から始まるレッスンに参加してもらえるかな」
桃子「もちろん大丈夫だよ。なんたって桃子はプロなんだからね。じゃあ当日のメンバーで今日レッスンに来ている人を教えて」
P「えっと……紗代子、のり子、歩、昴、海美、エレナ、まつり、麗花――」
桃子「ちょ……わかったよ。それよりよりお姉ちゃんこそ、さっきから手が止まってるよ。ちゃんとお仕事してよね」
P「はーい」
パタン
10: 以下、
P「……」
P(育の希望は、桃子たちが出演したような大きな作品……育の演技の腕なら大舞台でも心配ないけど、問題はそこじゃない)
P(いくら最近特撮ドラマに主演した実績はあっても、知名度的にはまだ新進気鋭の事務所の新人アイドルでしかない…)
P(大手の子役とオーディションで渡り合うには技術だけでは厳しい。理想を言えば、これまでの仕事の人脈を活かして指名のオファーを獲れたらいいんだけど…)
P(それにしても、この映画――ただの偶然とはいえ、まさか主演が彼女だとは…)
P(……いけない。今はとにかく育の仕事のことを考えてあげなきゃ)カタカタ
11: 以下、
――翌日
のり子「桃子、お疲れ様?!」
昴「また明日なー!」
桃子「うん、また明日ね」
桃子(案の定、二日続けて地獄のレッスンになっちゃったな…。まあいいけど)
桃子(今日は育だけでなくお姉ちゃんもいなかった。美咲さんが、お姉ちゃんは朝からずっと外回りだって教えてくれたけど…)
ブルルル…
桃子(電話……育からだ)
桃子「もしもし?」
育『桃子ちゃん、聞いて聞いて! さっきPさんから電話があって、わたし映画のオーディションを受けることになったんだよ!』
桃子「本当? すごいじゃん。やったね」
育『うん! それで主演の女優さんがすごいんだよ。あの勝組劇代さんなんだ!』
桃子(勝組劇代――ハリウッド映画にも出演した若手トップ女優。須五井プロダクション俳優養成所が輩出した最高傑作…)
桃子(主演が彼女なら、須五井プロは子役にも自軍の有望株を起用したいはず。しかも映画の注目度が高いなら、どの事務所も必ずエースを送り込んでくる)
12: 以下、
桃子「ねぇ育、今の状況が大変だってこと、ちゃんとわかってる?」
育『もちろん! オーディションを受けに来る子はみんなすごい役者さんばかりだから、わたしもレッスンいっぱいがんばらなきゃ』
桃子「そう……わかってるならいいけど」
育『勝組さんきれいだし、かっこいいよね。大人の女の人って感じで』
桃子「そうだね。莉緒さんや歌織さんと同い年みたいだけど、良い意味でそんな風に見えないよね」
育『わたしもああいうすてきな演技ができたらいいなぁ』
桃子「……」
育『わっ、もう休けいおわっちゃう。ごめんね桃子ちゃん、レッスンがおわったらまたかけるね!』
桃子「え? うん、頑張ってね」
ピッ
桃子(育、本気なんだ。難しいオーディションなのに全然怖じ気づいてない……)
桃子(しかもオーディションの予定が決まってもお姉ちゃんが帰ってこないってことは……他にもまだ受けさせるつもりなのか)
桃子(もし今回が不合格だったとしても、諦めず別のオーディションを受けたいって言うに決まってる。育はそういう子だもんね)
13: 以下、
美咲「育ちゃんの最終オーディション、いよいよ今日ですね。なんだか私まで緊張してきました」
P「大丈夫。一次選考で同じブロックになった子の中では、育の実力は飛び抜けていました」
P「最終選考に残った4人のライバルたちはきっとみんな強力ですが、今の自分をしっかりアピールできればチャンスは十分ありますよ」
美咲「良い報告を楽しみに待っていますね」
P「ええ。それじゃあ劇場のこと、よろしくお願いしますね」
美咲「はい。いってらっしゃ?い」
14: 以下、
――オーディション会場、待合所
P「育、番号札が歪んでるよ」
育「え? あっほんとだ」
P「直してあげるからちょっとこっち向いて」
育「もう。これくらい一人でできるよ」
P「まあそう言わず。育が演技に集中できるようにするのも私の仕事なんだから。ね?」
育「うん。…ありがとうPさん」
P「よしっ、できた。エントリーナンバー5、ちゃんと見えてるね」
スタッフ「それではオーディションを始めます。エントリーナンバー1番から5番のみなさん、こちらにお願いします」
育「あっ、そろそろ行かないと……じゃあねPさん。わたし、がんばってくる!」
P「いってらっしゃい。いつもどおり、育らしく楽しんでおいで」
15: 以下、
助監督「えーでは3番の方、ありがとうございました」
助監督「監督、いかがでしたか?」
監督「……」ボンヤリ
助監督「か、監督?(小声)」
監督「え? ああ。上手だったんじゃないかな」ボンヤリ
脚本家(監督のやる気に火をつけるほどではなかったってところか。まあ突出したインパクトを感じなかったのは確かだ)
助監督「それでは次の方、どうぞ」
演美「4番、矢場杉児 童劇団所属、天斎演美です。よろしくお願いします」
脚本家「では母親と再会するラストシーン、どうぞ」
演美「お母さん……お母さん!」
監督「……!?!?!?!?」
演美「お母さん、会いたかった……うわぁぁぁん!!」
監督「これだッ!!!!!」ガタッ
助監督「えっ」
16: 以下、
監督「間違いない。私が求めていた演技はコレなんだよ。天斎さん、合格だ! 君たち、今すぐ打ち合わせを始めるぞ」
脚本家「えっ!? 今からですか?」
監督「当たり前だろう。これほどの人材、十年に一度出逢えるかわからん。出番も増やしたいから今すぐシナリオ修正しないと撮影に間に合わんぞ」
脚本家「ちょ、勝手に決めないでくださいよ……しょうがないなあ」
助監督「あの、オーディションはどうしますか……まだあと一人残ってますよ」
監督「もう時間がないのだよ! バイトでもなんでも、手の空いてる人間に任せておきなさい。さあ天斎さん、君も一緒に来てもらおうか」
演美「はい。ありがとうございます!」ペコリ
……パタン
育「えっ……どうしよう…」
1番「あーあ、あの子演技見てもらえなかったじゃん。ひどくない?」ヒソヒソ
2番「かわいそ。同情するわ」ヒソヒソ
3番「代わりに来るバイトって誰よ。まさか高校生だったりしないでしょうね。まあどうでもいいけど」ヒソヒソ
17: 以下、
――待合所
P(さっきからスタッフの人たちが妙に慌ただしい……何かあったんだろうか)
ガチャ
育「ありがとうございました…」
P「育――どうしたの。何があったの?」
育「わたしの前の番号の子が、その場で合格が決まって……わたし、監督さんたちに演技を見てもらえなかった」
P「なんですって…」
P(迂闊だった……あの監督、確かに偏屈で有名だったけど、まさか大きい事務所のホープ子役が集結したオーディションでもやらかすなんて)
P「ごめんなさい、育。こういうことは、本当はあってはならないことなの。すぐに社長の名前で正式に抗議するから――」
育「ううん、いいの。だって4番の子がいちばん上手だったのはまちがいないから……」
P「育……」
育「わたし、もっと上手くなりたい。今回のオーディションで、本当に演技が上手な子がたくさんいるってわかった。だからわたし、負けたくない!」
P「……そうだね。オーディションに参加できる作品は他にもある。まずは次のチャンスのためにできることをしよう」
育「うん!」
18: 以下、
――その後、765プロライブ劇場
美咲「……それは、大変でしたね」
P「ええ。育には辛い経験をさせちゃいました。抗議に関しては高木社長が任せてくれとおっしゃってくれたけど…」
美咲「育ちゃんの気持ちが切れていないのが幸いですね」
P「理不尽な経験を重ねて人は強くなるんだから我慢しろ――なんて昔の人だったら言うんでしょうけどね…」
美咲「Pさん、あまり気を落とさないでくださいね。ほら育ちゃんがよく言ってるじゃないですか。上を向かなきゃ上に行けないんだよって」
P「そうですね。…ホントにそう。私が育に励まされてばかりなんだから」
P「……よしっ、じゃ気を取り直して営業いってきます」
美咲「えっ!? この時間から外回りですか?」
P「以前春香たちがお世話になったドラマの制作会社さん、今日の日没後なら時間が取れるそうです。明日にするつもりだったけど、早い方がいいですからね」
美咲「あ、あのPさん、気をつけてくださいね――行っちゃった…」
19: 以下、
――数日後
ドドドドド… バタン!
海美「みんなああ! 大変だよおおお!!」
奈緒「だああっ!? そんなに慌ててどないしたんや海美! 心臓飛び出るかと思ったわ」
海美「とにかくホントに大変なんだってば!!」
琴葉「海美ちゃん落ち着いて。とりあえず、要点だけ先に言ってみて」
海美「隣の駅前に、他の事務所のアイドル劇場ができたんだよ!」
一同「ええ???っ!?」
……
瑞希「須五井プロダクション次世代アイドルシアター、近日始動……事務所のHPに特設サイトが作られています。イメージ画像もこちらに」
琴葉「確かにあの駅前には長らく工事中だった土地があったね……それがこのアイドル劇場だったんだ」
奈緒「なになに、『登壇予定のアイドルはこの10名!』――うわ、みんなテレビや雑誌で見たことのある顔ばっかりやで」
紗代子「収容人数もウチよりはるかに多いし、こんな劇場が近所にできたら……」
奈緒「私らの劇場、ちょっとマズいんとちゃうか…」
20: 以下、
海美「とにかくこのこと、Pにも早く知らせなきゃ!」
小鳥「大丈夫。その必要はないわ」
琴葉「小鳥さん、春香ちゃん――お、お帰りなさい。知らせる必要がないってことはつまり…」
小鳥「ええ。Pさんもこの劇場に関する情報は既に把握済みよ」
春香「私もさっきの現場からの帰りのタクシーで通りかかったとき見つけて、小鳥さんから教えてもらったばかりなの」
春香「だから……動揺する気持ちは私もみんなと同じだよ。でも私たちには私たちのお客さんが待ってる。今まで通り、できることをしようよ」
紗代子「春香さん……そうだよね。私たちにだって今まで頑張ってきた自負があるもの」
瑞希「はい。ライバルは強い方が燃えるという考え方もできます。負けていられないぞ……メラメラ」
春香「さあ、みんな揃ったところだし、レッスンの準備を始めようよ。私もすぐに着替えて向かうから」
海美「そうだ、私も着替えなきゃ! じゃあみんな、先にレッスンルームに行ってて」
奈緒「よっしゃ、なんか燃えてきた気がするわ」
21: 以下、
琴葉「それにしてもP、こんな大事なことをどうして黙ってたんだろう。どうやら美咲さんも知らなかったみたいだし…」
紗代子「私たちを動揺させないため、かな……知っていたのは小鳥さんと、あとは多分、社長くらいなのかな」
瑞希「それでもあれだけ大きな建物です。黙っていてもいずれ私たちも知ることになっていたでしょう」
奈緒「うーん、このタイミングでPさんがいてへんっちゅうのも間が悪いというかなんというか…」
琴葉「最近ずっと外回りばかりなのも、このことを知っていたからこそ、なのかもしれないね」
紗代子「育ちゃんのオーディション、早く良い結果が出るといいね」
22: 以下、
亜利沙「須五井プロといえば、日本を代表する大手プロダクションの一つです。抱えているタレントも俳優・子役・声優・アイドル・お笑いなど多岐に渡ります」
亜利沙「最大の特徴は、全国主要都市に各部門の養成所を設けていることです。各地の養成所から見出された精鋭たちが練習生として東京に集い、しのぎを削り合います」
恵美「ひゃーっ、せっかく養成所をパスしても、まだ競争を勝ち抜かなきゃならないの!?」
亜利沙「そうです。そしてこの精鋭たちの中から正式に事務所に登録されるタレントはごくわずか……つまり所属タレントは皆精鋭中の精鋭ということになります」
昴「なるほどな。ハリウッドクラスの実力者が現れるのもわけないってことか」
桃子「狭き門だけど、正式に須五井プロのタレントになれれば、厳しい競争を勝ち抜いた実力とタフさの証明になって、業界に顔が利くようになるの」
のり子「そっか。言ってみれば肩書き自体が称号になるってわけだね」
海美「それでありりん、このすっごいアイドルたちに勝つための作戦、何かないの?」
亜利沙「任せてください! ありさは既に須五井プロのアイドルちゃんたちの情報もリサーチ済みです」
昴「要注意バッターとかいないのか?」
亜利沙「そうですね、ありさ要チェックのアイドルちゃんは……このメンバー最年少、耳度志麻子ちゃんですね」
昴「耳年増??」
亜利沙「耳度志麻子ちゃんですよ! 間違えないでくださいね! 志麻子ちゃんは11歳。桃子ちゃんと同い年になります」
昴「すっげー……めちゃくちゃ大人びてるじゃないか。髪も長くてクルクルだし、とても小 学生には見えないや」
亜利沙「既にアイドル歌手として地盤を固めつつある志麻子ちゃんですが、最近ではお芝居のレッスンにも力を入れているそうです」
のり子「お芝居にも……ってことは、この先育とオーディションでかち合う可能性があるってこと?」
亜利沙「そうなります。一見育ちゃんとは全く異なる印象を持つ志麻子ちゃんですが――この写真を見てください」
23: 以下、
のり子「ショートボブで着物を着てる……すごい、さっきとはまるで別人だよ」
亜利沙「どんなイメージにコーディネートしても一目見ただけで只者ではないと思わせる絶対的オーラ。それが志麻子ちゃんの魅力です」
亜利沙「ただ知名度こそ抜群ですが、子役としての力はまだ未知数です。お芝居の仕事をするとなれば、必ずオーディションからの出場となるでしょう」
海美「それってつまり、育りんがオーディションでこの子に勝てたら心強いってことだよね?」
桃子「簡単に言うのは気が引けるけど……それができれば理想的なのは確かだね」
亜利沙「須五井プロのタレントよりも高いパフォーマンスを見せたとなれば、きっと業界全体が765プロに注目します」
桃子「大きな事務所だけど961プロと違って圧力をかけてくることもないだろうし、正々堂々真正面から戦うことになるよ」
海美「なら育りんがオーディションに集中できるようにみんなでサポートしようよ!」
昴「そうだな。育が定期公演に出られないときは、みんなでスケジュールを調整し合ってカバーしようぜ!」
のり子「もちろんアタシらも、何かの仕事で須五井プロの子と一緒になるときにはしっかりアピールしたいよね」
恵美「そんでもってレッスンと仕事以外の時間はしっかりリラックスしよ。気を張ってばかりいてもしょうがないもんね」
のり子「育があんなに頑張ってるんだもの。落ち込んでなんかいられないよ。ね、桃子!」
桃子「えっ…うん、そうだね」
桃子(一大事だと思ったけど、誰も落ち込んでないし、むしろ一体感が強くなったみたいで良かった)
桃子(それにしてもお姉ちゃん、須五井プロ劇場のこと知ってて黙ってたなんて……)
24: 以下、
――その頃、テレビ局
テレビ局員「765プロダクションさんですね。その節は大変お世話になりました」
P「いえ。改めて本日はよろしくお願いいたします」
テレビ局員「こちらこそ。早ですが、資料を拝見させていただきました。中谷育ちゃん、快活そうな可愛らしい子ですね」
P「ありがとうございます。こちらも台本を確認の上検討し、中谷が最も適任と考え推薦させていただきました」
テレビ局員「殺人犯として疑われた女性の心の拠り所となる存在、という役どころですね。確かに役のイメージにぴったりではあるんですが…」
テレビ局員「765さん、申し訳ないんですがこの役、周防桃子ちゃんに引き受けてもらえませんでしょうかね」
P「え? ええ。スケジュールさえこちらで調整すれば可能ですが……差し出がましいようですが、何か周防をご指名いただく理由があるのでしょうか?」
テレビ局員「いえね、765さんにお声掛けしているとスポンサーに伝えたところ、ならぜひ周防桃子ちゃんを起用して欲しいとの意見が出ましてね」
P「なるほど、そうでしたか」
テレビ局員「『屋根裏の道化師』私も拝見させてもらいましたよ。いやあ彼女の演技は実に見事でした。さすが子役としてキャリアを積んでいただけはある」
テレビ局員「クールな印象の子ですがあの演技力ならこういう明るい役もしっかり演じきってくれることでしょう。いかがですか? 引き受けてくださいますか?」
P(どうやら先方の意思は堅そうだ。これ以上強引に育を推す理由もないし、指名のオファーを逃す手もない。ここは受け入れよう)
P「かしこまりました。それでは周防桃子をそちらの二時間ドラマに起用させていただくということで、よろしくお願いいたします」
テレビ局員「ありがとうございます! いやあ良かった。オーディションの手間が一枠省けるとなると、スタッフも大助かりですよ」
P(刑事ドラマの主な客層は主婦と高齢者……『トゥインクルリズム』の客層と合致しない。宣伝材料としては乏しかったか)
P(とはいえ最近の桃子の評判は目覚ましいな。うちに来るまでは業界でも悪名高かったなんて嘘みたい。後で何かご褒美をあげなくちゃ)
25: 以下、
――帰り道
RRR…
P「社長か――もしもし、お疲れ様です」
高木「やあ君、営業は順調かね?」
P「はい。先ほど一つ新しい仕事が決まりました。詳細は追ってご報告します。――ところで、ご用件は?」
高木「そうそう。先日から始まった大神環くんの教育番組、当然君も観ているよね?」
P「ええ。昆虫マニアで知られる俳優さんがMCとして熱く語る姿が話題ですよね」
高木「そう! その俳優さんから直々のオファーがあってね、今度自身が主演するドラマにぜひ環くんをゲストとして起用したいそうなんだ」
P「本当ですか!? 願ってもみない大チャンスじゃないですか。本人もきっと喜びますよ。私も大歓迎です」
高木「君ならそう言ってくれると思ったよ。それじゃあ先方には承諾の方向で私の方から連絡を入れておくよ」
P「ありがとうございます。お手数をおかけしますが…」
高木「これくらい構わないよ。いやあ、39プロジェクト、実に順調で何よりだ」
P(あの名優にすっかり気に入られちゃうなんて、さすが環ね。この調子で、育にも早く良い報告ができれば…)
26: 以下、
高木「それと、さっき音無くんから連絡があったよ。……須五井プロダクションの劇場の件、アイドル諸君の耳にも入ったそうだ」
P「……そうですか」
高木「何というか、これも因果というものなのだろうかね」
P「どうあれ私は765プロのプロデューサーです。今後もすべきことを続けるまでです」
高木「そうか……それでは、今後ともよろしく頼むよ」
P「はい。お任せください」
ピッ
P「……」
P(因果、か。それによってアイドルたちが傷つくようなことだけは、絶対に起こさないようにしないと)
27: 以下、
――その翌日
育「おはようございます!」
P「おはよう育。早いのね」
育「だって劇場でのレッスン久しぶりなんだもん――あっPさん、エプロンつけてる! もしかして、お料理するの?」
P(どうしようか……育はこのところ毎日演技の個人レッスンばかりだったし、良い気分転換になるなら――)
P「ちょうど良かった。これからホットケーキを焼くんだけど、手伝ってもらえる?」
育「うん! 今日のレッスン、久しぶりに桃子ちゃんといっしょなんだよね。もしかして、そのホットケーキって桃子ちゃんのために?」
P「えっと……実はそれも理由の一つ。今日は春香がいないから、育に手伝ってもらえるなら心強いよ」
育「まかせて。おかあさんと一緒に何度も作ったことあるから、Pさんが失敗しそうになったらわたしが教えてあげるね!」
P「それじゃあ荷物を置いて制服を着替えたら台所に集合ね。育のエプロンだけど……このみさんのを借りようか」
28: 以下、
P「――よし。多めに作るからタネは二つのボウルに分けて混ぜよう。育はそっちのボウルをお願いね」
育「はーい。材料は量らなくていいの?」
P「ええ。パッケージの裏に書いてあるとおりに私が分けておいたから、卵と一緒にそのままボウルに入れちゃってね」
育「わたしが着替えてくる前にもう分けちゃったの? わたしだってそれくらいできるのに…」ムスッ
P「でも混ぜ方のコツがよくわからないから、育に教えてもらえると助かるな」
育「ホント? じゃあおかあさんがいつもやってる混ぜ方、Pさんにも教えてあげる!」
……
ガチャガチャ
P「じゃあ焼いてくよ。育はフライパンにバターを入れてくれる?」
育「うん!」
ジュー…
育「わぁ、とってもいい匂い。桃子ちゃん喜ぶだろうなぁ」
P「……」
29: 以下、
P(気分転換になればと思って誘ってしまったけど、考えるまでもない。こんなのあんまりだ)
P(元々は育にやってもらう予定だった仕事が桃子に決まって、その桃子のための激励のホットケーキを育に作らせるなんて)
P「……ねぇ、育……あのさ」
育「なぁに? Pさん」
P(育がそんなこと気にしない子だとわかっていて甘えているのは私――私が育の立場だったら、絶対耐えられない…)
育「あっPさん、早くひっくり返さないと! こげちゃうよ」
P「あっヤバ――ギリギリセーフ、かな…?」
育「もーう。ちょっとこげちゃってるよ。フライパンに火をつけたら、ちゃんと見てなきゃダメなんだからね」
P「ゴメン! この1枚は私が責任を持って食べるから。次は……ちゃんとできると思う」
育「しょうがないんだから。それでPさん、何を言おうとしてたの?」
P「ううん、何でもないの。気を取り直して次の分を焼きましょう」
P(そう、次こそは必ず……私ができることはそれしかない。ごめんなさい、育…)
30: 以下、
――数日後、次の映画のオーディション会場
育「……」ドキドキ
P(実際に撮影が進行中の現場のすぐそばの建物でオーディションするなんて、なかなかすごいな。スケジュールの都合だろうけど…)
監督「カットォ! ダメだよ。そこはもっと激情を爆発させなきゃ。もう一回!」
P(さすがに現場の声が漏れ聞こえてくる状況じゃ、育が緊張するのも無理ないな…)
P「ねぇ育、ジュースいらない? 私喉渇いちゃって。ついでだから育の分も買ってくるよ」
育「え? うん……じゃあアップルジュース」
P「わかった。すぐ買ってくるからここで待っててね」
P(えっと、自販機は……建物の外か)
31: 以下、
チャリン ピッ ゴトン
P(次は自分のコーヒーを…)
口先和瑠江「先輩――」
P(なっ……!?)
和瑠江「あら失礼。“元”先輩、でしたね」ニヤ
P(口先和瑠江……そうかこの子、この映画の出演者なのか)
和瑠江「こんなところで会うなんて偶然ですね。まさかまだ役者を続けてたとか? そんなわけないわね。だって今日この建物は子役オーディションにしか使ってないもの」
P「……っ」
和瑠江「スーツ姿に地味なバッグ……その格好、まさか子役のマネージャーにでもなったとか?」
和瑠江「アハハハ、傑作ね。須五井プロ黄金世代でただ一人練習生から昇格できなかった負け犬が、マネージャーに転身してまで業界にへばりつくとは。未練タラタラじゃない」
和瑠江「モラトリアムも大概にした方がいいわ。あなたみたいな無能な女は、早く田舎に帰ってそこそこの男とくっついた方がよっぽど幸せになれるわよ」
和瑠江「まあそれが嫌だっていうなら、私に止める権利なんてないけど……せいぜいこの大都会で野垂れ死なないよう気をつけて生きてくださいね。セ・ン・パ・イ」クスッ
32: 以下、
耳度志麻子「口先さん、撮影お疲れ様です。こちらにいらしたんですね。……あら、そちらの方はお知り合いですか?」
和瑠江「あら志麻子ちゃん――いいえ。知り合いに似ていると思ったのだけれど、気のせいだったわ。じゃ、私はそろそろ休憩が終わるから失礼するわ」
志麻子「はい。では後ほど」
志麻子「……ふう。どうやらうちの事務所の者が失礼を働いたようですね。申し訳ありません。謝罪させてください」
P「えっ? えっと、あなたは確か――」
志麻子「耳度志麻子といいます。本日はこちらのオーディションに出場するために参りました。どうぞよろしくお願いいたします」
P「あ、こちらこそ…(噂には聞いてたけど、めちゃくちゃ丁寧な応対をする子ね)」
志麻子「口先さんは大変素晴らしい女優さんなのですが、少々気弱な面がありまして、気持ちに余裕がないとああやって弱者に対してマウントを取ってしまうのです」
P(ええ熟知してますとも――と、この様子だとどうやら会話の全てまでは把握してないみたいね)
志麻子「ですから大手ではない事務所や制作会社のスタッフの方を傷つけるような真似を――」
P「いえ、お気になさらず。あなたこそもうすぐオーディションでしょう?」
志麻子「あっ、そうでした。おや? あなたの担当タレントの方はどちらに」
P「あ、えーっとね――」
33: 以下、
育「あっPさんここにいたんだね。もう、遅いから心配して探しちゃったじゃない」
P「ごめんごめん」
志麻子「なるほど、こちらの方が……初めまして。私、耳度志麻子と申します」
育「こんにちは。わたしは中谷育です! よろしくね」
志麻子「ええ。本日はお互い悔いの残らないよう、全力を出し尽くしましょうね。……ではまた後ほど」ペコリ
スタスタ
育「きれいな子……あの子もオーディションを受けるんだよね」
P(今回も主要キャストに須五井プロの俳優が複数いる。となればやはりライバル筆頭は彼女か)
P「確かに魅力的な子かもしれないけど、育には育だけが出せる個性がある。他の子のことは気にせず、いつもどおりしっかり自分をアピールしよう」
育「もちろんだよ。わたし、負けないからね!」
34: 以下、
――そして数日後
テレビ『あの超話題アイドル耳度志麻子ちゃんが、ついに映画出演決定! 意気込みを伺うべく、取材班は須五井プロ劇場に向かった!』
百合子「この映画って確かこの間、育ちゃんがオーディションを受けたっていう…」
亜利沙「ええ。映画出演効果もあって須五井プロ劇場はこけら落としから連日満員御礼の大盛況です。さすが実力者揃いだけあってパフォーマンスも至極のものでした」
百合子「…亜利沙さんがこんなに沈んだ顔でアイドルのことを語る姿、初めて見たかもしれません」
亜利沙「いくらライバルとはいえ、このありさが華々しい舞台の上で輝くアイドルちゃんを観てときめかないわけありません……ですがさすがに複雑ですよ」
百合子「育ちゃんが定期公演をお休みしている分、私たちみんなで育ちゃんの分も頑張らないと!って張り切っていたものの――」
亜利沙「その矢先にこのニュースですからね……昨晩の公演も一昨日よりお客さんが少なかったそうですし、みんなから不安の声があがっても不思議ではありません」
百合子「育ちゃん、今日この後劇場に来る予定だってホワイトボードに書いてありました。久しぶりに会いたいけど…」
亜利沙「ありさメモによると、まつりさんと同じ時間にレッスンですね。ありさたちはその時間、撮影所に出発してしまうので残念ながら会えませんね…」
百合子「まさかこんなに早く亜利沙さんとまたドラマで共演できるなんて思いませんでした。しかも深夜ドラマのゲスト怪人役だなんて」
亜利沙「『トゥインクルリズム』のスタッフさんが多く関わっている番組というご縁も手伝いましたからね」
百合子「それなら育ちゃんも一緒に出られたら良かったのに――って考えちゃうのは、欲張りなのかな」
亜利沙「Pさんのことですから、きっと育ちゃんも出演できるよう交渉したかもしれません。とはいえ、まるっきりキャストが被ってしまうのも不自然ですし」
百合子「考えても仕方ないですよね。それよりまずは自分の仕事に集中しないと。765プロ劇場の正念場だもの」
亜利沙「ええ。頑張りましょう百合子ちゃん!」
35: 以下、
――1時間後、レッスンルーム
育「えっと、まずはお母さんと公園で遊ぶシーンから――」
ガチャ
まつり「ほ? 育ちゃん、まだ予定の40分前なのですよ」
育「まつりさん…。うん、ダンスレッスンの前に、明日のオーディションの台本を確認しておきたかったから」
まつり「育ちゃんは勉強熱心で感心なのです。姫も見習わないとなのです」
育「えへへ。これくらい当然だよ」
まつり「でも姫はかよわいので、頑張ってばかりだと疲れてしまうのです。育ちゃんは疲れていないのです?」
育「平気だよ。いつもおかあさんや先生、それに劇場のみんなが一緒にいてくれて、いろんなことを教えてくれるから…」
育「だって一人じゃ解決できないときは、だれかをたよっていいんだよね?」
まつり「もちろんなのです。一人で頑張るのは大変でも、誰かと一緒ならとびきりわんだほー!なのです」
育「うん! まつりさんやみんなと一緒なら、わたしなんでもできちゃいそうな気がするよ」
育「でもね、最近いろんなオーディションを受けてみて、思ったことがあるんだ」
育「どんなにみんなが力をくれても、一人のアイドル、一人の役者さんとして審査されるときは、わたしは一人のわたしなんだって」
36: 以下、
まつり「ふむふむ……もう少し詳しく聞いてもいいのです?」
育「えっと……わたしね、この劇場のアイドルみんなのいいところ、たくさん知ってるよ。大好きなみんなのいいところを、わたしも見習いたいって思う」
育「だけどわたしはわたしだから。オーディションの審査員さんは、わたしがどういう役者さんなのかを見てる。Pさんも、いつもどおりの育らしさを見せようって言うもん」
育「…まつりさんは、美奈子さんのお友達が39プロジェクトのオーディションを受けに来ていたって話、知ってる?」
まつり「確かお友達みんなでオーディションを受けて、最終的に受かったのは美奈子ちゃんだけだったのですよね」
育「うん。たぶんそれと同じなんだって思うの。一人だけ受かったって知ったとき、美奈子さんはショックで合格の返事ができなかったんだって」
まつり「美奈子ちゃんは友達思いの優しい子ですからね」
育「だけど……たとえ一人でもそれが美奈子さん自身の夢だから、美奈子さんはアイドルになる道をえらんだんでしょ」
育「だからわたしも、何度不合格になったとしても、一人のわたしとして真剣にオーディションに向き合いたい」
育「映画に出てみたい、大人っぽい役がしたいっていう気持ちはずっと変わらないよ。そのためならわたし、これからだっていっぱいがんばれる!」
育「でもわたしをそういう役で使うかどうかは、審査員さんが決めることだから」
まつり「育ちゃんは本当に立派なのです。なら少し元気がないように見えたのは、きっと姫の思い過ごしだったのですね?」
育「ううん、気になることならあるよ。……Pさんのこと」
まつり「ほ?」
37: 以下、
育「前に麗花さんがね、わたしがお仕事で一人で困ってたときに『お仕事は楽しくやっていいんだよ』って教えてくれたことがあるの」
育「でも最近のPさんは、全然楽しそうじゃない気がする。わたしの前では笑ってくれるけど、なんかいつもとちがう感じがして…」
育「Pさん、わたしにお芝居のお仕事をさせるために、いっぱいがんばってくれてるはずだよ。それできっと、無理してるのかも」
育「ねぇまつりさん、わたしどうしたらいいと思う? まつりさんならPさんのこと、元気にしてあげられる?」
まつり「お姫様にはエスコートしてくれるナイト様が必要なのです。Pさんはまつりたちのためなら、たとえ火の中水の中なのです」
まつり「どうしてそんなに頑張れるのか。それはきっと、ナイト様であるPさん自身が、誰よりもお姫様を必要としているから……なのかもしれないのです」
育「どういうこと?」
まつり「育ちゃんが普段どおりわんだほー!なお姫様でいてくれれば、それだけでPさんはきっと元気になるのです」
育「ほんと?」
まつり「765プロのお姫様たちはみんなぱわほー!な魔法を使えるのです。育ちゃんもその一員なのですから、ね?」
育「うん……そうだね。ありがとうまつりさん! じゃあ……レッスンが始まるまで、わたしの演技見てもらってもいい?」
まつり「お安いご用なのです♪」
38: 以下、
――その夜
ガチャ
桃子「お姉ちゃん、ちょっといい?」
P「えっ桃子――どうしたのこんな時間まで。レッスンならとっくに終わったはずじゃ」
桃子「それはお姉ちゃんだって同じでしょ。帰ろうとしたけど、律子さんとロコさんが何かの書類を作ってるのを見かけて訊いてみたら――」
桃子「お姉ちゃんのお仕事を手伝ってるっていうから、桃子も手伝ってきたの」
P「そう……ごめんね。遅くさせちゃったから、私が車を出すよ。こんな時間に一人で帰らせるわけにはいかないもの」
桃子「いいよ。律子さんが送ってくれるって言ってたし、それにお姉ちゃんまだお仕事片付いてないんでしょ。まったく…」
P「それは、そうだけど…」
桃子「…ねぇお姉ちゃん、今までなんとなく訊いちゃいけない気がして訊かないようにしてたんだけど――もうそんなこと言ってられない」
桃子「お姉ちゃんって……昔、役者さんだったんでしょ?」
P「……どうしてそう思ったの?」
39: 以下、
桃子「そうなのかもって思ったのは、前に夜想令嬢の稽古を見学させてもらったとき」
桃子「千鶴さんも、莉緒さんも、恵美さんも、朋花さんも、昴さんも……みんな初めての通し稽古とは思えない立ち振る舞いだった」
桃子「まだ舞台監督さんともちゃんとすり合わせてないのに……あれはどう考えても、お姉ちゃんの教え方が良かったからだよ」
P「教えるのが上手いからといって経験者とは限らないでしょう。逆も然り」
桃子「もう屁理屈言わないで。ごまかしたところで、どのみち桃子は事実だって思ってるんだから。このまま黙ってるか本当のことを言うか、どっちかにして」
P「……ええ。その通りだよ。私は女優――いいえ正確には“女優を目指していた人”だった」
桃子「目指していたって……結局女優にはなれなかったってこと?」
P「切符は手に入れたし、列車にも乗り込めた。ただ目的の駅まで辿り着く力がなかった。それだけのことだよ」
P「それで進路に困っていたときに、大学の先輩――765プロの前のプロデューサーが誘ってくれて……後は桃子も知っているとおりだよ」
桃子「そう……なら、隠していたのはどうして?」
P「隠してたというか、夢を追いかけてる女の子を支える仕事を、夢を諦めた女がやってるっていうのもちょっと変な話でしょ。まあそんな感じで――」
桃子「弱いところを見せたくないからだね」
P「……言ってくれるね」
40: 以下、
桃子「初めて『デコレーション・ドリ?ミンッ♪』の歌詞を読んだとき……どうしてこんなに桃子の気持ちを言い当ててるんだろうって、不思議だった」
桃子「作詞家さんにそれとなく訊いたら、プロデューサーさんからの発注通りにイメージを膨らませただけなんだって教えてくれた」
桃子「まだ出逢ってそんなに経ってないのに、あそこまで桃子の心を見透かせたのは――お姉ちゃんが桃子に似てるからだよ」
桃子「だから桃子に隠し事したって無駄だよ。お姉ちゃんがもう限界に近いことくらい、桃子にはお見通しなんだから」
P「そこまでお見通しなら、私が必死になる理由もわかってるはずだよ。大丈夫、今が頑張り時なんだ。峠さえ越せばちゃんと休むから」
桃子「…桃子は、悔しいけど育みたいに強くないし、辛い目に遭ってもあんな風に振る舞えない。それはきっとお姉ちゃんも同じでしょ」
桃子「育はいつか必ず自分の夢を叶えるよ。誰が無理だと笑っても、絶対に……。でもそのためには、お姉ちゃんの力が必要なんだよ」
桃子「今ここでお姉ちゃんが潰れちゃったら、誰が育の夢を支えるの? いくらあの子が強くてもそれだけじゃどうしようもないって、お姉ちゃんならわかるでしょ」
桃子「桃子たちにはなんでも相談しろって言うくせに、何勝手に一人で背負い込んでるの? ……自分を大事にしないなら、許さないんだから」
パタン
P(桃子……)
P(…そうだよ。初めて出逢った面接で、あなたの目の奥から助けを求めるような色を感じて、かつての私にそっくりだと思った)
P(だから業界での悪評のせいであなたの獲得に消極的だった先輩を私が説得した)
P(意外に思うかもしれないけど、育のオーディションのときは、逆に私が説得されたんだよ)
41: 以下、
?回想?
先代P「なあ、今の子のこと、君はどう思った?」
P「中谷育ちゃんですか――歳の割に受け答えもしっかりしていて、笑顔も可愛らしい子でしたね」
P「ただ、10代前半では既に採用が決まっている箱崎星梨花ちゃんがいます。彼女と並んだときに見劣りしないかといえば、私は正直微妙だと思います」
先代P「それはどうかな? 習い事をたくさんしているみたいだし、基礎能力も高いと思うけどな」
P「幼くしてこういうオーディションに出てくる子は大概そういうものですよ。最終的に物を言うのは、一目で見る者を惹きつけられるインパクトかと」
先代P「俺は惹きつけられたぞ。というか、絶対にあの子を囲っておくべきだ。間違いなく大物になる。誰かの太陽になれる子だ」
P「太陽……ですか?」
先代P「一緒に過ごすようになればきっとわかるようになるさ。君も彼女と一緒に成長していけばいい」
P「……」
先輩が言っていた言葉の意味は、程なくして私にも理解できた。
育は日陰の奥にしまい込んでいた私の心の底にさえ、その光を届けてきた。
キャンディみたいにキラキラしているのかと思えば、ひとたび近づくと焼き尽くされそうになる。そんな強い光だ。
いつしか育は、私の太陽になっていた。
42: 以下、
――765プロ事務所
P「音無さん、遅くまでお疲れ様です。まだ事務所に明かりがついていたので驚きましたよ」
小鳥「お互いさまですよ。Pさんこそ、このところ働きづめじゃないですか。少しくらいご自分を労ってあげてくださいね」
P「ええ。今の仕事が一段落したら、そうさせていただきます。あっ例の舞台装置の発注関連の書類、仕上がったのでこちらに置いておきますね」
小鳥「まあこんなにたくさん…」
P「いえ。ほとんどロコや律子がまとめてくれたんです。私がやったのは文章の最後の仕上げ程度で。みんなにも気を遣わせてばかりで、申し訳ないですね」
小鳥「とりあえず掛けてください。今、お茶を淹れますね」
……
小鳥「どうぞ」コト
P「いただきます」
小鳥「……その鞄も、すっかりくたびれてきましたね」
P「確かに……。営業先の印象も良くないかもしれません。明日の帰りにでも新しいものに買い換えようかな」
小鳥「いえ、そういう意味で言ったんじゃありません。働き者の勲章だな、と思って。ウフフ」
43: 以下、
P「……育は、この鞄を大人っぽくてかっこいいって言ってくれました。私が、自分の夢に区切りを付けるために買ったこの鞄を」
小鳥「そうですか」
P「ガラじゃないってわかってるんです。こんなデキるキャリアウーマンぶったもの……」
P「私の本質なんて、夢見がちな小娘の成れの果てです。でもそのままじゃ誰かの夢を支える仕事なんてできるわけないと思った」
P「だからこの鞄を選んだんです。現実に負けてただ泣いているだけの駄々っ子を封じるために…」
P「そんな後ろ向きな理由で使っているものを……それを使っている私を……あの子はかっこいいって言ってくれたんです」
P「救われた気がしました。同時に改めて決意が湧きました。あの子の思いに報いたい、その夢を叶えるために戦えるかっこいい女になりたいと…」
小鳥「あなたは十分、戦っていると思いますよ」
P「いいえ、全然ダメですよ。…以前エンジェルスターズ18人全員での公演の日に、ファンの方がこんなことを話していたんです」
P「今日はエンジェルスターズみんなのライブなのに、どうして育ちゃんがいないんだろう――って」
P「その人たちは、育の所属チームを間違えて覚えていたみたいです。パーソナルカラーがイエローだから、仕方ないのかもしれませんが」
P「私のマーケティングの至らなさを痛感しました。『Princess Be Ambitious!!』のダンスを一生懸命練習する育の姿が浮かんで、情けなくて…」
44: 以下、
小鳥「育ちゃん、あの曲が大好きですものね」
P「はい。この歌詞みたいな強いお姫様になりたいっていつも言っています。それはまさに、私がプリンセススターズに托したテーマとも合致していて」
小鳥「ただ王子様に助けてもらうだけじゃない、新しい時代のお姫様像――ですね」
P「どうしてもあの子を、本物のお姫様にしてあげたい。育がお芝居の仕事をしたいと言い出したときは、その良い機会になると思いました」
P「なのに……なのに私は、門の狭いオーディションを受けさせるのが精一杯で、それ以外に何もしてあげられない…」
P「今後を考えれば、勝ち抜けなかった経験だって財産になるのはわかってます。だけどこのところ、この件では理不尽な目にばかり遭わせていて」
P「まさか私は、あの子にかつての自分と同じ思いをさせようとしているのか。あの子の未来を信じる純真な笑顔を、打ち砕くつもりなのか」
P「音無さん……私、今のままじゃ育にも、みんなにも顔向けできません。みんなの夢を支えるかっこいい女は、今ここにはいません」
小鳥「どうやらそのようですね。だけどそれも、“今は”ですよね」
P「はい。長話に付き合わせてしまってごめんなさい。けど……少しだけ肩の荷が下りた気がします」
小鳥「よく話してくださいました。だから今夜はもう少しだけ、弱い女のままでいてください。あなた自身のため、そしてあなたの愛するみんなのために」
P「やっぱり音無さんには敵わないな……先輩も昔は、こうやって甘えたりしてたんですか?」
小鳥「ウフフ、それはお姉さんの秘密ですよ。当然今夜のこともみんなには内緒にしておきますから、ね?」
P「わかりました……」グスッ
小鳥「いっぱい泣いたら、またいつものあなたに戻ります。だってあなたは、そういう人ですから」
45: 以下、
――翌朝
春香「Pさん、起きてください。Pさん」
P「ん……春香、律子、なんで――ってそうだ。私事務所に泊まって…」
律子「まったく……あの後気になって小鳥さんに連絡したらPさんが事務所に泊まるって聞いたので、朝一で様子を見に来て正解でしたよ」
春香「でもその様子だとちゃんと睡眠は取れたみたいで良かったです。ソファの上ですけど…」
律子「さあ、早く顔洗ってお化粧してきてください。仕事の準備は私がしておきますから」
春香「じゃあ私、朝ご飯作ってきますね」
……
春香「おまちどうさまです。ササッと作らなきゃってことで簡単になっちゃいましたけど」コト
P「ありがとう。…二人とも心配かけてごめんね。私が泊まってなきゃ、こんなに早く来ることもなかったでしょ」
律子「いいえ。今日は私も春香も定期公演の本番ですから、当初から朝練をする予定ではいたんですよ」
春香「私と律子さんはテレビ番組の収録が重なって、なかなかレッスンの時間を取れませんでしたから」
P「でも春香は家が遠いのに……まさか始発で来たんじゃない? 練習もいいけど、本番に響いたらそっちの方が心配だよ」
律子「確かに、春香はこのところちょっと張り切り気味かもしれませんね。まあ張り切っているといえば、全員なんですけど」
46: 以下、
P「そっか。みんな須五井プロ劇場の件を気にして…」
春香「…それは当然ですよ。みんなの大切な劇場のピンチに、何もしないわけにはいきませんから」
律子「まあ私の分析によると、このピンチは近いうちに解消されるはずですけどね」
春香「えっ、どうしてですか?」
律子「考えてもみて春香。須五井プロは少数精鋭がモットーの事務所。劇場に登壇するアイドルも既に売れっ子の10人のみ――みんな多忙な日々を過ごしているはず」
律子「そんな彼女たちが果たして、そう頻繁に集まって定期公演を行い続けることができるかしら?」
春香「――あっ、そっか!」
P「律子の言うとおりだよ。普通アイドル劇場っていう形態は多人数で回すもの……だけど須五井の方針なら練習生に正規タレントと同じ舞台を踏ませることは絶対ない」
P「私の見立てではあの劇場はそのうち、アイドル以外の舞台やライブにも使われる多目的ホールにリニューアルされるんじゃないかな」
春香「ちょっと待ってください。じゃあPさんはそれをわかっていて私たちに須五井プロ劇場のことを黙っていたんですか?」
P「ええ。ライバルとしては端から眼中になかったけど、相手は大手だし大々的な宣伝をするからその喧騒にみんなを置きたくなかったの」
P「私と因縁のある事務所でもあるし、それがバレた場合気にする子はとことん気にするだろうから」
律子「まあさすがの桃子もP殿が須五井プロの練習生だったってところまでは見抜けなかったみたいですけど」
47: 以下、
春香「うぅ……もう、みんなほんとに心配してたんですからね! 育ちゃんのオーディションのことと重なって、劇場の空気も重くなってたし」
P「春香……そっか、あなたを板挟みにしちゃったんだよね。本当にごめんなさい。私の過去は知ってても、須五井プロ劇場のことは知らなかったんだものね」
P「でもそれだけ春香がみんなのリーダーでいてくれてるってことだよね。ありがとう。先輩が今の春香のことを知ったら、きっと喜んでくれるよ」
春香「も、もう……そうやってすぐ乗せてくるんですから…」
律子「それで今日の育のオーディションですけど、手応えはありそうですか?」
P「手応えとなると正直今までで一番厳しいと思う。今度のは、不治の病に冒されて闘病の末亡くなってしまうという役どころ……育のイメージとはかなり離れている」
律子「ならどうして受けさせることにしたんですか? もっとも、イメージに近い役は既に片っ端からあたった後でしょうけど…」
P「オーディションでの課題が、なぜか発症前の元気な頃のシーンばかりなの。その課題に対してなら育の個性は抜群に活きる。その一点に賭けようと思って」
律子「どうやらそこに勝ち抜くヒントがありそうね……けど人事を尽くして天命を待つ、ですよ」
春香「私だって今まで色々ありましたし、育ちゃんならきっと大丈夫です。何かあっても、私たちみんなが味方ですから」
P「うん。二人の気持ちはしっかり受け取ったよ。今日の定期公演、くれぐれも怪我のないように頑張ってね」
48: 以下、
――オーディション会場
志麻子「あら、あなたは確か……中谷さんでしたっけ?」
育「耳度志麻子ちゃんだ! こんにちは。志麻子ちゃんもこのオーディション受けるんだね」
志麻子「ええ。キボンヌ国際映画祭で好評を得た飯花市撮男監督の最新作ですからね。出演が叶うとしたら名誉なことです。お互い頑張りましょうね」
P(飯花市監督は大規模スポンサーの絡む超大作は手がけない。でも国際映画祭にエントリーする作品に出演できれば役者にも箔が付く)
天斎演美の母「良いかしら演美ちゃん、1秒で泣いて100万人を泣かせるあなたの力なら必ず勝ち上がれるわ。平常心で臨みましょうね」
天斎演美「ええママ、わかっているわ。私は選ばれし者――この世界に感動をもたらすために生まれてきたのだから」
P(どおりでどこの事務所も絶対的エースを送り込んでくるわけだ。これは本当に厳しい戦いになりそうね)
育「Pさん、だいじょうぶ?」
P「育――ごめんごめん、私が緊張したってどうしようもないのにね」
49: 以下、
育「緊張してるなら、わたしが手をつないであげるね! わたしの初ライブのときもそうしてあげたでしょ? ほら、手を出して」
P「フフッ、そうだったね。ありがとう、育」
育「Pさんの手、指が長くてきれいだよね。おかあさんの手も好きだけど、わたしPさんの手も好きだよ」
P「ありがと。ほんと、育の手は柔らかくてあったかい――こんな風に、これからもたくさんの人の心をあたたかくしていこうね」
育「うん!」
P「育は緊張してない?」
育「えっと……ちょっと緊張してたけど、もう平気。それに志麻子ちゃんたちみたいなすごい子と一緒に競い合えるのが嬉しいから」
P「よし、それじゃあ行っておいで。精一杯楽しんできてね」
育「うん。いってきます!」
50: 以下、
――後日、765プロライブ劇場
RRR…
飯花市『もしもし、765プロダクションさんでしょうか。私、映画監督の飯花市撮男と申します』
P「えっ、飯花市監督――せ、先日はどうもお世話になりました」
飯花市『はい。単刀直入に言います。中谷育さん、合格です。これからの撮影どうぞよろしくお願いしますね』
P「合格……あ、ありがとうございます! こちらこそよろしくお願いいたします」
飯花市『楽しみにしていますよ。さしあたって何がご質問などありましたら、お答えします』
P「ええと、それじゃあ……どうして中谷を起用したいとお考えになったのですか」
飯花市『ああ、簡単な話です。彼女がイメージにピッタリの可愛らしい子だからですよ』
P「いえあの、そういうことではなくて…」
飯花市『言葉どおりですよ。この映画は実話を元にしたお話です。原作者であるご両親はこの病気のことを一人でも多くの人に知ってもらおうと小説を書いたそうです』
飯花市『親にとって子供に先立たれるのはとても辛いこと……シンプルに言って悲劇です。だからこそ娘役には笑顔のきらきらした子に演じて欲しかった』
P「それで、中谷を…」
飯花市『ぶっちゃけ、憎たらしい子が死んだって観てる人誰も悲しまないでしょ?』
P(まあそういうことなんだろうけどそこはオブラートに包んで欲しかったな)
51: 以下、
育「そっか……この役のモデルになった女の子がいたんだね」
P「うん。ちゃんとした治療法がまだないこの病気の研究が少しでも進むように――それがこの映画に携わっている全ての人の願いなんだ」
育「じゃあ、映画が少しでも多くの人に観てもらえたら……誰かが助かるかもしれない?」
P「今の頑張りがすぐ結果に結びつくわけではないけど、近い将来必ず道は拓ける。私はそう信じているよ」
育「わたしも信じたい! Pさん、わたし他の共演者さんやスタッフさんたちといっしょに、力を合わせていい映画を作るからね!」
P「遠くの誰かの希望になる――そういうの、育は得意だもんね」
育「うん! だってわたしは世界に輝く愛の結晶――」
P・育「――魔法少女トゥインクルリズム!」ビシッ
P「私もコレ、好きだよ。辛いことがあっても、これやると不思議と元気が出るんだよね。きっと育が使える本物の魔法みたいなものじゃないかな」
育「Pさんも、子供の頃は魔法少女好きだったの?」
P「もちろん。戦う女の子はみんなの憧れだもの。こう見えて私、語らせると長いんだからね」
52: 以下、
――映画公開当日
恵美「うぇぇ?ん、琴葉ぁ、エレナぁ……アタシやっぱ観るの無理だよ?」
エレナ「もー、メグミってばなんで映画観る前から泣いてるノ?」
恵美「だって映画の中とはいえ育が死んじゃうんだよ? 想像しただけで悲しすぎてもうダメだよ?!」
琴葉「『屋根裏の道化師』のときも一人殺されるたびに客席で頭抱えてたって言ってたね……でもせっかくの育ちゃんの晴れ舞台なんだから、ちゃんと観てあげなきゃ」
エレナ「しょうがない。悲しくなったらワタシがハグしてあげるヨ!」
このみ「あら、琴葉ちゃんたちもこの映画館だったのね」
琴葉「このみさん、莉緒さん」
莉緒「奇遇ね。…といいたいところだけど、確か上映館は都内だと3ヶ所だけだったわね」
このみ「まあ単館系映画だもの。それでもお客さんの入りは上々って感じね」
エレナ「イク、ライブのMCやブログでも映画のこといっぱい話してたからネ」
恵美「きっとファンのみんなも育の気持ちを受け取って、たくさん口コミしてくれたんじゃないかな。アタシも友達にいっぱい力説したよ!」
莉緒「おっと、あんまり話し込んでるとファンの人たちに見つかっちゃうかもしれないわね」
琴葉「そうですね。他のみんなもいずれ観に来るはずですし、目立たないように早めに入場しちゃいましょうか」
53: 以下、
――その頃、別の映画館
P(もうすぐ舞台挨拶が始まる…。主人公夫妻の娘役の育も、当然コメントを話すわけだけど――)
P(「できるだけ多くの人にこの映画の意義を伝えるにはどうすればいいか」劇場のみんなで案を出し合って色々考えてきた)
P(正直、今の段階では作品の注目度が低いだけに、ニュース記事もそう量を割いてはもらえないはず)
P(育がどれだけ一生懸命喋ったとしても、新聞や映画情報サイトの片隅に一行載るかどうか…)
司会「それでは飯花市監督、そして出演キャストの皆様に登場していただきましょう! みなさん盛大な拍手でお迎えください」パチパチパチ…
P(それでも今日ここに集まってくれたたくさんのお客さんたちがいる。育の言葉は、彼らの心に必ず届くはず……私も信じよう)
育「――みなさんこんにちは。木峰蔦恵役の中谷育です。最後まで映画を観ていただいて、ありがとうございます」ペコリ
育「えっと……わたしはこの映画のお仕事に入る前に、おかあさんたちと一緒に、蔦恵ちゃんの病気のことを勉強しました」
育「病気や入院中の治療のことについて知るたびに、蔦恵ちゃんはとっても辛い日々を過ごしていたんだなって感じました」
育「でも撮影が始まる少し前、蔦恵ちゃんのお父さんお母さんとお話しすることができて、少し考えが変わりました」
育「蔦恵ちゃんはわたしと同じで魔法少女アニメが大好きで、アイドルが出ている歌番組を毎週観ていた、そういう普通の女の子だったそうです」
育「お話を聞いていると、だんだん蔦恵ちゃんとお友達になれたみたいで嬉しくなりました」
育「魔法少女はみんなに希望を届けます。わたしは蔦恵ちゃんと一緒に、この病気で苦しむ人の希望になりたい――そう思って撮影をがんばりました」
育「映画を観てくれたみなさんにも、蔦恵ちゃんがとっても素敵な女の子だってこと、きっとわかってもらえたと思います」
育「蔦恵ちゃんはこれからもずっとわたしの大切なお友達です。みなさんも今日から蔦恵ちゃんとお友達になってもらえたら嬉しいです。ありがとうございました!」
54: 以下、
――12月16日
育「おはようございます、Pさん! ねぇ、今日は何の日か覚えてるよね?」
P「もちろん。お誕生日おめでとう、育。――はい、これ。プレゼントだよ。開けてみて」
育「――わぁっ、お仕事バッグだ! すごい、猫さんの刺繍が入ってる! かわいい?!」
P「前に書類が入るような大人のバッグが欲しいって言ってたよね。ちゃんとリクエストにお答えしましたよ」
育「ありがとうPさん! ……でもこのバッグ、いつもPさんが使ってるのと結構違うよね。刺繍はかわいいけど、ちょっと子供っぽいような」
P「そうかなぁ。だってそのバッグ、私も同じの持ってるよ? ほら」
育「ええっ!? いつものバッグはどうしちゃったの?」
P「大分くたびれてきてたから、育のプレゼントを探すついでに新しいのに買い換えようと思って。気に入ったからお揃いにしちゃった」
育「でもPさん、はずかしくないの? だっていつもの真っ黒のバッグの方が大人っぽいのに…」
P「こうやって自分の好きなものをワンポイントであしらうのも大人の嗜みなの。一つ大人になった育ならこのこだわりをわかってくれると思ったんだけどなぁ」
育「おとなのたしなみ……そうなんだ。そっか、風花さんも猫大好きだもんね」
P「そうそう。まあ私とお揃いがお気に召さないなら、プロデューサーの仕事では使わないようにするけど…」
育「ううん、おそろいでだいじょうぶ! わたし、いつかこのバッグが似合うような素敵な女の人になるからね!」
55: 以下、
P「さあ、行きましょう。みんなきっと誕生日パーティーが待ちきれなくてうずうずしてるだろうから」
育「それじゃあ……はい、Pさん」スッ
P「なぁに? 手を繋ぐの?」
育「まつりさんが言ってたよ。お姫様にはエスコートしてくれるナイト様がいるんだって」
P「エスコートって――わかった。お迎えに上がりました姫様。白馬ではありませんが、よろしいでしょうか」
育「平気だよ。だってお姫様は強いんだよ。自分でお馬さんに乗って、だれかを乗せちゃうんだから」
P「アハハ、そうだね」
迎えに来て欲しかったのは、私の方だった。かわいいドレスを纏いながら、白馬を駆って夢の大地を突き進む――そんなお姫様に。
こんな私だけれど、もしお姫様に何か困りごとがあっても今ならきっとちゃんと手を差し伸べられる。
だからこれからも、この手を繋いでいよう。
P「育、これからもよろしくね」
育「うん!」
おわり
元スレ
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