中野二乃「こんすいれいぷ」back

中野二乃「こんすいれいぷ」


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五等分の花嫁のssになります。R18。
不慣れなので無作法があったら申し訳ないです。
2: 以下、
「どういうことだ、これ」
 五つ子の家庭教師を始めてから、もうずいぶんと日が経った。途中、学年の切り替わりを挟む程度には。
 着任当初には非協力的だった面々が素直に教えを乞うてくれるようになったのは、純粋に嬉しく思う。そこにやり甲斐じみたなにかを感じ取れるようにもなった。
 二年の期末テストで無事全員が赤点回避を成し遂げ、俺のバイト先で祝賀会を開いたのが三月のこと。
 そして四月も暮れる今時分、俺は五つ子全員の卒業を請け負うという大役を、それなりの責任感でもって演じ切ってみせようと息巻いていたところなのだが。
「ここに来てストライキか?」
----------------------------------------------------------------------------
3: 以下、
 元々暮らしていた高級マンションを放り捨て、彼女たちが新生活の拠点としたアパート。今日はここで、付きっ切りで中間試験の対策をする予定を組んでいたのにも関わらず、部屋にいつもの活気はない。
 まあ、それも当然。
「みんなから遅れるって連絡をもらったわ。そのうち来ると思うから、しばらく待っててちょうだい」
 次女の二乃以外、そこには誰もいなかった。
 常に五人勢揃いが基本なので、部屋が広く感じられる。普段が狭過ぎるとも言えるが。
4: 以下、
「そういうのは俺に直接連絡するもんだろ」
「結果的に伝わったんだから同じじゃない。大丈夫よ。みんな、やる気を無くしたわけじゃないから」
「それにしたって意識が低い。先が思いやられるぞ」
 なにせ、全力で詰め込んでようやく赤点ラインを超えられるかどうかを争う連中なのだ、こいつらは。気を抜いていると、瞬く間に知能が元どおりになってしまいそうで恐ろしい。常に余裕がない状態だということを、今一度理解してもらう必要がある。
5: 以下、
「取り敢えず、座って休んでなさいよ」
 二乃に示された場所に腰を下ろす。ちゃんと刻限に間に合っているこいつを叱ったところで、得られるものはない。
 ……それにしても。
「…………」
 諸事情から、こいつと二人きりになるのは、非常に気まずい。
 可能な限りこのシチュエーションは避けて立ち回ってきたというのに、どうしてこう噛み合わせが悪いんだ。
 かたや告白した方、かたや告白された方。返事は不要と言われていても、向こうの気持ちがわかっている分、如何ともしがたい居心地の悪さはずっと抱えたままでいる。向こうがずっとケロっとしているというのも、俺がどう振る舞えばいいか分からなくさせる一因だ。
 それに、もしかしたら俺への興味なんかとうに失せていて、そのことを口にしていないだけという可能性もある。変に意識し過ぎるのは、それはそれでまずいことな気がする。
6: 以下、
「そうだ、せっかくあんたがいるんだから、私だけでも苦手なところを教わっておこうかしら」
「構わんが」
 意欲的に勉強してくれるのは助かる。モチベーション管理に関しては、正直俺じゃ完全に掌握できない。机の前に座らせる前段階をショートカット出来るなら、それはありがたいことだ。
 一番反抗的だった二乃をどうにか手懐けられたのが、この数ヶ月一番の功績だろうか。次いで全員の赤点回避。流石に逆か、これは。
 ともかく、勉強に集中していれば、雑念に囚われることはないはずだ。
 そう思って、二乃が広げたノートに目を落とす。
7: 以下、
「数学か」
「そ。点数的にも一番苦手だし」
 バツの付いた図形と方程式の問題。以前の授業で解いたものを二乃なりに復習しようと試みた形跡はあったが、それでも結局、答えにはたどり着けていない。
「略図描くからちょっと待ってろ」
 ペンを走らせて、直線と円の交差図を記す。比率が肝要だから、慣れていてもなかなか面倒な作業だ。
8: 以下、
「じゃあ今のうちに紅茶淹れるわね。砂糖は欲しい?」
「頼む」
「そう、助かるわ」
 助かる……? と一瞬クエスチョンが浮かんだが、言い間違いかなにかだろう。もしかしたら、糖分が脳の活動補助に役立つとか、そういう話かもしれない。
 なんにせよ、わざわざ聞くほどのことでもないので作図に戻る。それなりの具合に図が完成したのと、ティーカップが俺の目の前に置かれたのがほぼ同時。
「サンキュ」と短く礼を言って大きく一口煽ると、砂糖の甘い味と、苦い茶葉の味が、ゆっくり口内を満たした。
9: 以下、
「俺の分だけで良いのか?」
「……ああ、私はもう少し冷ましてから飲むわ」
「そうか?」
 二乃の分のカップが出されていなかったので不審に思う。まあ、ブルジョワな暮らしを送っていた奴だから、こだわりでもあるのだろうと考えることにした。
「じゃあ行くぞ。この類いの問題はだな、前に教えた、距離を求める、こうしき、を……」
 解説を始めたいのに、まるで呂律が回ってくれない。体に力が入ってくれない。ノートには意味をなさないぐにゃぐにゃの線が引かれて、上半身はとうとうテーブルに突っ伏す形になった。
「あんたさ、私の淹れた飲み物に警戒心なさ過ぎ」
「二乃、お前……」
「三回も同じ手に引っかかってどうするのよ」
「また、薬……」
 目だけをどうにか動かして、彼女に抗議の意思を示す。
 でもなんで、今更。
 それなりに打ち解けて、ある程度の信頼を勝ち取ったつもりでいたのに。
「よいしょっと」
「…………」
 二乃の腕に支えられるようにして、その場で横にさせられる。抵抗しようにも、体に変な痺れが走って、指先一本まともに動かせなかった。
「おやすみ、フータロー」
 二乃が見せる、どこか妖艶にすら思える微笑。
 それを脳裏に強く焼き付けて、俺の意識は途絶した。
10: 以下、
「…………ん」
 目を開く。あれからどれだけ時間が経ったかは判然としないが、まだ体には強い倦怠感が残っている。前と同じ薬なのだとしたらこんな症状は初めてだから、もしかするとそこまで長く眠っていたわけではないのかもしれない。
「あ、起きた? やっぱり三回目にもなるとちょっと抗体出来るのね」
「二乃……」
 少し離れたところから聞こえる、二乃の声。
 無理して首を動かし、そちらに視線を向けてみると。
「なっ! なんでそんな格好してんだお前!」
「なんでって、汗は流したかったし」
「論点ずらしてんじゃねえよ二乃!」
「あら」
 言って、笑って、一歩ずつゆっくりこちらに近寄ってくる彼女は。
 どういうわけか、全身を上気させながら、そのしなやかな肢体をバスタオル一枚だけで覆っていて。
「今回は分かってくれるのね。嬉しいわ」
「お前、まだ根に持ってたのかよ」
「当然。まだ許してないわよ」
 春休み、混浴温泉でバッティングした彼女を見分けられなかったことについて咎められる。無理を言うな。顔が同じ奴が五人もいるのに、髪型やアクセサリーを取っ払った状態でそれが誰か当てろなんて。
11: 以下、
「ていうか待て。それ以上こっちに寄るな」
「どうして?」
「どうしてもだ!」
「良いじゃない。私の裸見るのなんて慣れたものでしょ?」
 俺で遊んでいるのか、言葉からは楽しげな雰囲気を感じる。どうにか抗いたいけれど、体がどうしようもなくポンコツなので、俺はもう流されるしかなくなっている。
12: 以下、
「それとも、照れてる?」
「なんで俺が照れなきゃならないんだよ」
「そう、なら良かった」
「……おい!」
 すぐそばで膝を折り、床に手をつき、顔をギリギリまで俺に近づける二乃。
 この距離になると、今使ってきたばかりだろうシャンプーの匂いがかなり強烈に鼻腔をくすぐってきて、もどかしい気持ちにさせられる。
「照れないんでしょ?」
 身じろぎしたらお互いの唇が触れてしまいそうな距離で、二乃が挑発的な視線を送ってくる。
 平均よりかなり大きい方であろう胸部は重力とバスタオルによる締め付けとで派手に強調され、俺の眼前に深い谷間を作っていた。
13: 以下、
「それとこれとは話が違う。いいから早くどいてくれ」
「私のお願いを聞いてくれたら、従ってあげなくもないけど」
「なんだよ、お願いって」
「ほら、ここ」
「…………」
 二乃は、自分の唇を指差して、
「キスしてくれたら、解放したげる」
 と、いたずらっぽく微笑んだ。
「冗談は成績だけにしろ」
「あら、本気よ」
「笑えねえよ」
「笑わせるつもりなんかないもの」
 更に二乃の顔が近づく。垂れてきた髪の毛が俺の耳を撫ぜて、温かくて甘い吐息が口許をくすぐってくる。
「しましょ、キス」
「どうしてそうなる……」
「私がしたいからよ。あんたと、二人で」
「…………」
「好きな男の子と、ちょっぴり冒険してみたいじゃない」
「……………………」
「あ、顔赤くなった」
「うるせえ」
「逆に、ここまでやらないと赤面もさせられないってのがすごいけど」
「……おいっ」
「気持ちよかった?」
 二乃の人差し指が、俺のへそあたりから顎までを、触れるか触れないかギリギリの力加減でなぞってくる。未知の快感に情けない声をあげそうになるのを堪え、抗議した。
14: 以下、
「そうじゃねえよ。今すぐやめろ、こんなこと」
「どうして?」
「どうしてもだ」
「なら、手っ取り早く終わらせてよ」
 目をつぶって、唇をすぼめる二乃。
 そこから彼女は、ウインクの要領で器用に片目だけ開けて言う。
「ちょっと動けば、解放してあげるわよ」
「取引になってない」
「あら、なんで?」
「俺に利がないだろ」
「私と合法的にキスできるのは?」
「利になるもんか、そんなの」
「……今のはちょっと傷ついたわね」
「知るか。薬盛ってくる奴をどうして気遣わなきゃならん」
「む」
 俺の必死な抵抗に、眉をひそめる二乃。
「あんた、キスしなかったら自分がどうなるかは考えないの?」
「どうせこのまま外に放り出すとかだろ」
「……あら、呆れた」
「何に」
「その程度の危機管理で今ここにいることに」
「……ちょっと待て。本格的に何するつもりなんだよ」
「逆レ○プ」
「…………」
「逆レ○プするって言ったのよ」
15: 以下、
 開き直ったかのように飄々と答える二乃の姿は、いっそかっこよく見える程だった。
 が、飛び出した単語のインパクトが余りにも強過ぎて、こちらはもう閉口する他なく。
「あんた、ずっと私のこと避けてるから。ここらで一度、絶対に忘れられない思い出ってやつ、作っておきたくて」
「馬鹿も休み休み……」
「もうおそーい」
「……んっ!」
 危険を察知してどうにか躱そうとしたものの、あえなくそれが不発に終わった俺は、二乃に唇を塞がれていた。
「んっ……んむ……」
 一ミリの隙間もなく繋がった状態で、俺の口内は二乃に徹底的に陵辱されている。
 歯の付け根を端から端まで無遠慮に検分してくる舌をどうにか押し返すべく、俺も舌を伸ばしてみるが、それが結果としてお互いの舌を絡み合わせる形を作ってしまった。
 感じたことのない快感に背が震えるが、それを気取られては思う壺だ。
16: 以下、
「あ、あら、乗り気じゃない」
「ちげぇよ!」
 一旦口を離した二乃に文句を言うが、言い終わるや否や、再び口の中に彼女の唾液が混じってくる。歯磨きでもしたのか、ほのかにミントが香ってきてむせそうだ。
 時折聞こえてくる唇の交わり合いから生じる淫靡な水音や、彼女の荒い呼吸音は出来るだけ聞かないようにして、今はただ、ひたすら時間が過ぎ去るのを待つ。無と一体化する。
 そして、ようやく満足したのか、二乃がゆっくりと俺から顔を離した。
17: 以下、
「ご馳走さま」
「…………」
「私、初めてだったんだけど。あんたもそう?」
「…………」
「そ。なら嬉しいわ」
「なんも言ってねえぞ」
「否定しないってことはそうなんでしょう?」
「……まあとにかく、これで解放してくれるんだろ。全部忘れてやるからさっさと服着ろ」
「は?」
「え?」
 心底不思議そうに首を傾げる二乃に、俺も追従して眉を下げる。おかしい。約束が違う。
18: 以下、
「キスしたら解放してくれるんじゃないのかよ」
「キス『してくれたら』ね」
「はぁ?」
「あんた、私のされるがままだったじゃない。あんなのカウントするわけないでしょ」
「……おい待て、ちょっと待て」
「ん?」
「じゃあ、これから俺はどうなるんだ?」
「言ったじゃない」
 二乃が、バスタオルの結束部分に手をやって、解く。
 出るところは出過ぎて、引っ込むところは引っ込み過ぎた、あまりに刺激の強過ぎる裸体が露わになる。
「逆レ○プ、確定ね」
19: 以下、
 俺の否やを待つでもなく、二乃の手が下半身に伸びた。無論、俺の、だ。
「ま、待て!」
「あら、口ではごちゃごちゃ言ってても体は正直ってやつかしら、これ」
 制服のスラックス越しに、体の中で一番デリケートな部分を優しく撫でられる。そんな経験はもちろん初めてなので、思わず身をよじってしまった。
「邪魔ね、これ」
「おい、待て待て待て待て!」
「あんたも、制服が汚れたら困るでしょ? クリーニングに出す替えはあるの?」
「そういう問題じゃねえよ!」
 俺の声なんかにはまるで耳を傾けず、二乃はベルト部分をかちゃかちゃいじって、ファスナーを下ろし、そのまま引き下げた。あまりに情けない光景すぎて目を覆いたくなるが、抵抗を止めるわけにもいかない。
「わ、おっき……」
「さっさと元に戻せ! ってかお前がまず隠せ!」
「何よ、二人とも恥ずかしい場所見せ合ってるんだからおあいこじゃない」
「どういう理屈だそれは!」
「それとも何よ、触りたいの?」
「小 学生から国語やり直せ!」
「仕方ないわね……」
 本当に、これは会話になっているのかと不安になる。二乃は一度こちらの下半身を放棄して、俺に覆い被さるような四つん這いの姿勢をとった。
 そうすると、嫌でも目が向かってしまう。
 大きいながらに形の良い双丘が自重に耐えかねて垂れ下がり、俺の胸部に触れる、その場所に。
「どう、私、体には結構自信あるんだけど」
「聞いてねえよ!」
「柔らかいでしょ」
「…………」
20: 以下、
 歯を食いしばって、得体の知れない何かに耐える。そうでもしないと、自身の底に渦巻く黒々とした欲望に負けてしまいそうだったから。
「……ほんと堅物よね、あんた」
「マジで勘弁してくれ……」
「嫌よ。ここまで来たら、もう何が何でも犯すから」
「お前……ふぐっ」
 言い切る前に二乃の胸が顔に覆いかぶさってきた。その質量とボリューム感に窒息しかけ、なんとか息を吸おうともがくと、自然、その柔らかさを大いに堪能することになってしまう。
 唇に押し付けられた突起部分に誤って舌を這わせると、二乃の口から甘い喘ぎが漏れた。それが演技と分かっていても、男の性として、反応してしまう部分はある。自分の流されやすさに辟易しながら、それでもどうにか首を捻って、彼女の攻勢から逃れた。
 荒れた呼吸を少しでも整えようと息を吸うが、変に気を張ってしまって上手く行かない。なんて厄日なのだろうと顔を歪める。
21: 以下、
「おっきいでしょ、私の」
「知るか」
「私以外の女の子を知らないから?」
「深読みやめろ」
「もう、強情なのはいいけどさ」
 そこで再度、二乃の手が俺の下半身へと這う。
 そこには、もう誤魔化せないくらいに怒張したブツが控えていて。
 二乃はそれに優しく触れると、静かに一度、上下に擦ってきた。
「……ッ!」
「出したいんでしょ」
「……違う」
「いいわよ、強がらなくて。ちゃんと最後まで全部してあげるから」
「……離してくれ」
「手がいい?」
 今度は、指の先が亀頭をつまんだ。とてつもない快感に、腰が反る。
「それとも胸?」
 今度は、乳頭と鈴口とでキスをさせる。あまりに暴力的な絵面に屈して、硬さを増したのが分かる。
「それとも……」
「あっ……」
 耐えてきたのに、とうとうみっともなく喘いでしまった。視線の先では、二乃が小さな口で、俺の先端を咥えこんでいる。
「これが良いんだ」
「そこでしゃべんな。くすぐったい」
「ふぅーっ」
 吐息を浴びせられて、また腰が跳ねた。なぜ自分で弱点を教えてしまったのか。
「じゃ、舐めてあげるから。遠慮なく出して良いわよ」
「やめ……っ!」
22: 以下、
 言葉だけでの制止に今さらなんの力も無く、彼女の舌が余すことなく陰茎をぺろぺろと舐めあげ、時には鈴口を掘り返し、唇は圧を加えるように全体を吸い上げてくる。
 手は根元に添えられていて、それもまた、撫でるように絶えず動いていた。
 そこまでされてこういう行為に耐性のない俺が堪え切れるはずもなく、たぶん、精通してから今までで数えても一番の量の精液を、二乃の口の中にぶちまけた。
 彼女はそれを全て飲み下して軽く咳き込みながら、勝ち誇った顔で俺を見下ろしてくる。
「気持ちよかった?」
「…………」
「よかったんだ」
 無言は肯定とみなすというルールがまかり通ってしまっている。だが、実際これに関してはどうやったって否定できない。射精してしまったという事実が、それから、未だ屹立が収まらないという事実が、全てを裏付けしてしまっている。
 実際に、気絶するほどの快感が全身を走っていた。だが、それを認めるのは癪なので、努めて口を噤み続ける。
23: 以下、
「ね、フータロー」
「…………」
「お願い、ここ、触って」
「おい……」
 だらりと垂れ下げていた手が、二乃の導きによって、彼女の秘部へと導かれる。
 目線を逸らしていても分かってしまう薄い茂みと、濡れそぼる花弁。そこから滴る温かな雫が、俺の指先を濡らしていく。
「んぅ……」
「…………」
 二乃は悩ましげに吐息を漏らしながら、俺の手を介して自慰行為に近いことを始めた。
 つぼみの部分を刺激したり、唇の部分を撫でてみたり、それから、穴に潜らせてみたり。
 その間、絶えず漏れ出る粘性の液体が、俺の掌を余すことなく濡らしていった。
24: 以下、
「フータローの舐めてたら、興奮しちゃって」
 洪水のように次から次へと愛液がこぼれて、床に小さな水たまりを作る。
 特有の匂いが頭をくらつかせて、ただでさえ鈍る思考に靄をかけてくる。
「最近ずっとフータローのこと考えながら一人でしてて、いつのまにか妄想じゃ我慢出来なくなっちゃったのよ」
 他人のネタなんて知ったこっちゃない。妄想に俺を巻き込むな。言いたいことはいくらでもあって、なんならそろそろ自由を取り戻しつつある体で、逃げ出してしまうという方法もあるにはあったが。
 ここまで来たらもう、性欲に抗えなかった。
 目の前には、あまりに魅力的な女体。そして自分は、いかに興味なさげに繕っても性欲旺盛なティーンエイジャー。
 こうなってしまえば、選択肢らしい選択肢など存在すらしなかった。
 とにかく、あらゆる欲求不満を二乃の体にぶつける以外、ない。
26: 以下、
「イっちゃいそ……」
「……どこがいいんだ」
「……下の、浅いとこ」
 オーダー通りの場所を攻めると、程なくして二乃の全身が軽い痙攣を起こした。次いで、俺の指に収縮と拡張が繰り返される感覚が伝わってくる。
「すっごいよかった……」
 体重を俺に預けながら、二乃がほーっと息を吐き出す。柔らかな胸の感触が、俺の心拍数を加させた。
27: 以下、
「ね、挿れて」
「それは流石に……」
「手でいじり合うの、効率悪いわよ。死んじゃうくらい気持ちよくしてあげるから、フータローも私を死んじゃうくらい気持ちよくして?」
「どこで覚えてくるんだそういうの」
「独学」
 首にキスをされるが、今までが今までなので、もう大して驚きもしない。この短時間で、価値観が大きく塗り替えられてしまったのを感じる。
「生でいいから、早く。もう、切なくて」
「まずいだろ」
「うちのパパは医者よ?」
「最低か?」
「……まあ、今日は大丈夫な日だから」
「神話だぞそれ」
「うるさいわね。とにかく、大丈夫なものは大丈夫なの」
 また、指先で裏筋を撫でられる。これをされてしまうともう、止める方向に舵は切れそうになくて。
28: 以下、
「今は、後のこと考えてる場合じゃないでしょ?」
「そうでもないと思うが」
「うるさい。さっさと挿れなさいよ童貞」
「処女にだけは言われたくない台詞だ」
 そのまま勢いで押し倒す。下は剥き身の床だから、痛くさせないように留意しつつ。
「布団敷かなくていいのか?」
「私、これから毎日その布団で寝るのよ? 思い出すたび濡れちゃうでしょ」
「それを言ったらこの家でやってること自体アウトだろ」
 今後は図書館なんかの公共施設をメインに家庭教師をしていく必要がありそうだった。そうでなければ、こいつらにマンションに戻ってもらうか。
「じゃ、せめてタオル。私が巻いてたバスタオル、そこにあるでしょ」
「これか」
 掴んで引き寄せ、背中を浮かせた二乃の後ろに滑り込ませる。これで多少はマシになるか。痛みにしても、汚れにしても。
「フータロー、手」
「手がどうした」
「こっち。繋いで」
「……お前、妙なとこロマンチストだよな」
「いいじゃない。一生に一度よ、こんな機会」
 渋々と彼女の指一本一本に絡み合わせて、ぎっちりと繋ぐ。普段の勝気な印象と違ってずいぶんと細く繊細だ。それこそ、ちょっと力を込めたら折れてしまいそうなほど。
 だが、別に、俺が遠慮する必要もないだろう。なんたって強制性行仕掛けられてんのはこっちなんだ。法改正で男の方も声を上げられるようになったのだし、ここは好き勝手やらせてもらう。
29: 以下、
「……ぁ、すご」
「急にしおらしくなんの止めろ」
「だって、こんなの、なんて言えばいいのよ」
「知るかよ。黙っとけ」
「そんなこと言って、あんたも必死なんでしょ。なに、もう限界?」
「抜かせ」
「あっ、まっ、ごめ、もうちょいゆっくり」
「止めろって言って止めなかったの……どこの……っ、どいつだ……」
「謝る……から。あれっきりだから、こんなの、私、保たない……」
 その後はもう会話する余力なんてなくなって、必死に快楽と戦いながら、不器用な抽送を繰り返すだけだった。時折漏れ出す二乃の甘ったるい喘ぎに射精感を加させられながら、それでもどうにか土壇場で堪えて、極限まで性を貪る。俯瞰すれば、獣のように見えただろうか。
 とにかくそれくらいの忘我だった。ここまで欲に忠実になったのは、いつぶりだろうか。
 結局、我慢なんていつまでもは続かない。どこかで妥協するたびに二乃の中に精を残して、その度に体位を変えてもう一度。そのもう一度を腰が砕けるまで続けて、疲れ果てて床に平べったく伏せる。
30: 以下、
 そして、そのまま数分。
「……シャワー貸してくれ」
「うん……」
 冷えた頭で回顧する記憶は、もはやただの地獄で。
 その場のノリに任せるとロクなことにならないという教訓を得て、熱いシャワーで反省を……。
「なんでお前も入るんだよ」
「だって、私もべちゃべちゃだし」
「…………」
 べちゃべちゃにした張本人として、文句を言う筋合いはなかった。シャワーを二乃の頭上から浴びせて、目に見えてやばそうなところは綺麗にする。
「ほんと、あんたとは風呂場で縁があるわね」
「今回に関してはお前から入って来てるしノーカンだろ」
「せっかくだから体でも洗ってあげよっか?」
「もう勘弁」
 どこを洗われるか知らんが、ここでまたムラっと来たら終わりな気がする。
「結局他の連中は来なかったけど、お前どんな仕込みしたんだ」
「フータローは遅れるから図書館に集まって自習しててって」
「全方位に嘘ついたのか……」
「これから行けば嘘にならないでしょ」
「それにしたって、お前が俺に薬盛って犯そうとしてきた罪は消えないぞ」
「ノリノリだったのに?」
「気のせいだ」
「またおっきくなってるのに?」
「…………」
31: 以下、
 これはもう、いよいよ本格的に『分からせ』てやらなければならないと、二乃の腰を引っ掴んだその時のこと。
『これ、二人の靴。なんでここにいるんだろ』
『二乃ー!上杉さーん!』
『事情があるんじゃないですか? それが何かは分かりませんけど』
『今頃二人でよそ様にはお見せできないことやってたりして』
「……おい」
「どうしよどうしよどうしよ……」
「取り敢えず服着て、あとはアドリブで誤魔化すしかねえ……」
「……あ」
「なんだよ」
「……血のついたタオル、リビングに置きっ放し」
「…………」
「…………」
 明確な詰みを食らって、俺は仕方なく、シャワーを浴び直すことにした。
 さあ、俺の家庭教師業務の明日はどっちだ。
32: 以下、
「……って、なに現実逃避してんのよ!」
「いや、こうなったらもうどうしようもないだろ。なんとかする方法が思いつかん」
「諦めないで! 賢いんだから!」
「いや、言って逆レされたんだし、俺は被害者なんだよ。お前がその旨を自供してくれれば万事解決だ」
「誰がそんな話信じると思う?」
「しかし事実だ。信じてもらうしかない」
「ここまできたら共犯じゃない。また川に落ちたことにでもして、どうにかするしかないわ」
「靴、乾いてた。その言い訳は無理があると思う」
「そうだぞ二乃。誤魔化すにしてももうちょいマシな……」
33: 以下、
 ここで硬直。明らかに二人の会話ではなくなった。
 温水で血の巡りは良くなっているはずなのに、顔色をどんどん悪くする二乃。彼女が眺める先には、首に巻いたヘッドフォンが印象的な女の子が一人。
「み、三玖……」
「……フータロー、それ、隠して」
 目を逸らされる。とりあえず近くにあったタオルを腰に巻いて、オーダーは満たした。
「えっちしてたの?」
「……いや、これは事故で」
「してたんだ」
 目が怖い。淡々と告げられるせいで否定できる空気でもなかった。
「私たちが勉強してる中、二人で気持ちいいことしてたんだ」
「待って三玖、事情があるのよ」
「聞きたくない」
 そりゃあ聞いても仕方ない。そんな折り入った事情なんてものは存在しないのだから。
「……聞きたくない、けど。この後で言うこと聞いてくれるなら、助けてあげる」
「本当か?」
 なんでかんで、三玖は話が分かる奴だ。持つべきものは賢明な判断を下せる友人。
「フータロー、次は私ね。二乃よりいっぱいしてくれるって約束するなら、ここで手伝ったげる」
「……は?」
「えっち。私ともして。二乃だけずるい」
「ちょ、三玖、なによそれ!」
「嫌ならいいよ。その時はここにみんな呼ぶだけ」
「……うぅ」
「どうする、フータロー?」
「……………………」
 目線で牽制してくる三玖。全裸でぷるぷる震えている二乃。そして、ヒューズの飛んだ頭で必死に黙考する俺。
 ……しかし、こんなのはもう事実上の一択で。
「……よろしく頼む」
「ん、任せて」
 踵を返し、リビングの方へ行く三玖。答えた俺を見る二乃の目は、心なしか険しく。
「……浮気者」
「レ○プ魔が言っていい台詞じゃないってことだけは確かだな」
 ともあれ、この場はなんとかなりそうだ。これからのことに目を瞑れば、だけど。
 ……いや、ほんとに。俺の家庭教師業務の明日はどっちだ?
34: 以下、
おしまい
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1543718702/
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