ある男の就職活動記back

ある男の就職活動記


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第一部:始動に至る病
今日も同じような日々が始まる。
午後2時に目を覚まし、PCの電源を入れトイレに立つ。
トイレから戻るなり2ちゃんとアダルトサイトをチェックする。
エアコンのスイッチを入れズボンを脱ぐ。
今日もうだるように暑い。
ここまではここニ週間まるで変わらない。
淀みなく流れるような動作。
抜く時間含めジャスト5分の出来事。
これが佐藤耕介の一日の始まりである。
【ちょっと変わったブラック企業】 俺が作った会社がブラックの典型みたいになってしまった
http://world-fusigi.net/archives/8831986.html
引用元: ・ある男の就職活動記
4: 以下、
この後は日によって違う。
まぁ違うと言っても2ちゃんで覗くスレが変わるか、
お気に入りのネトゲのコミュニティサイトを覗くか、
それぐらいの差である。
しかしこの日の佐藤は珍しく転職板を覗いていた。
抜いた後で賢くなったのかと言えばそうではない。
なんとなくである。きっかけはそんなもんだ。
6: 以下、
ただ今年8月で歳は24。もう若いと言っていられる年齢ではない。
その上高校を卒業以来まともに働いた記憶がない。
部屋から出なくなり早2年。今まで親の実家暮らしで世の中ではニートと呼ばれる存在だ。
焦っていたのも確かだし、もうそろそろヤバイと本気で考えてもいる。
分かってはいる頭では。こんな日々がずっと続かない事も、こんな生活が良くない事も。
しかし行動はしない。毎日同じように日々を消費し、無駄に時間を重ねていた。
そんな心の葛藤がなんとなく転職板に手を伸ばさせたのだろうか。
日々押しつぶされそうな不安、恐怖に押されるようにレスを開く。
8: 以下、
佐藤にとっては大きな前進であった。
今までずっと現実から逃げ続けていた。
ネットの上でさえ就職、転職という言葉を見ると吐き気がしてた。
胸に黒い渦が巻き、何とも言えない恐怖に心臓をツカマレルノダ。
怖くて仕方がなかった現実と、ようやく向き合うきっかけが出来たのだ。
9: 以下、
普通の人ならたかが転職板のレスを開いただけと笑うだろう。
現実問題何も前進もしていなければ、何も変わっていない。
しかし佐藤にとってはとても大きな前進であった。
なんとなく・・・その奥にある佐藤自身が出すSOS信号。
わずかながらもキャッチした。
ある夏の暑い日の事である。
10: 以下、
「まじかよ・・・」
思わず声を出してしまう。
想像以上に厳しい現実。
自分より学歴も職歴もある奴らが職にあぶれ、
その日を生き抜く為に必死になって就職活動をしている。
11: 以下、
正直まだ24という年齢が佐藤を甘えさせていた。
確かに学歴は底辺だろう、資格もない。
しかし若さという武器がある。
そんな風に甘えていたのだ。
その甘えが全て吹き飛んだ。
まだ猶予があると思っていた崖がもう背後まで迫っている。
気付けば片足が宙に浮いている。そんな状態だ。
13: 以下、
とりあえず「転職」でググってみる。
検索結果には求人サイトが並ぶ。
だが、どれを使えばいいのか皆目見当もつかない。
聞いたことがあるサイトがいくつかある。
(確かCMで聞いたことがある。)
そんな頼りない根拠で佐藤はあるサイトを使う事を決めた。
仮にそのサイトをRとしておこう。
15: 以下、
開くと会員登録をしなければならないようだ。
この時点で挫折しそうになる。
とことん面倒な事が嫌いなのだ。
その性分故今の状態を招いているともいえる。
今までの佐藤ならこの時点で諦めていただろう。
しかし今日の佐藤は違った。
目の当たりにした現実に突き動かされている。
一種の興奮状態だった。
16: 以下、
クーラーの音だけが響く部屋で一心不乱にキーボードを叩く。
名前、住所、学歴、職歴。。。
自分が作られていく。
自分の人生をなぞる。
ようやく最後の項目を入力し会員登録が終了した。
それだけで一仕事したような満足感が押し寄せる。
この勢いで行けば今年中にはニートを卒業出来るかもしれない。。。
早求人情報を探す事にした。
17: 以下、
職種、勤務地、雇用形態、従業員数に至るまで事細かに設定できるらしい。
ここまで便利になっているのかと感心した。
しかしその職種の項目で指がピタリと止まってしまった。
(職種・・・?そういや就職をしたいと考えてはみたものの
具体的な就職像は全く考えていたかったな・・・)
誤算であった。
改めて考えると特にやりたい仕事なんてないのだ。
18: 以下、
今まで全て選択を他人任せにしてきたツケが回ってきた。
誰かに指示されないとどうしていいか分からない。
涼しい部屋の中冷や汗が頬を伝う。
だがもうやるしかない。誰かは助けてはくれない。
今までずっとそうだったし、これからもそうだ。
佐藤の考えた挙句一個の妙案を捻り出す。
やりたくない仕事を消去すれば、残った仕事がやりたい仕事に違いない。
至って単純な思考である。
20: 以下、
まず辛い肉体労働は除外した。
溶接、左官、解体、塗装、俗に言うドカタという奴である。
もやしっ子の佐藤にとって、炎天下の中での労働など地獄である。
又働いている人達とウマが合うようには到底思えない。
いの一番に除外である。
次にパチンコ店、消費者金融等を除外した。
さすがに就職と言えどもどこでもいいって訳じゃない。
将来子供が生まれた場合胸を張って言える仕事がいい。
21: 以下、
次に除外したのは不動産関係の仕事だ。
いい噂を聞かない上に労働は過酷と聞く。
一発当てれば大きいがリスクが高すぎる。
次は外食産業を除外した。
24時間働ける自信はない。
過労死なんてしたらそれこそ本末転倒である。
22: 以下、
次に小売業を除外した。
店頭で声を張り上げ売る等到底出来そうにもない。
朝から晩まで、盆暮れ正月なんてない。
休みは不定期だし給料も安い。除外だ。
次に事務を除外した。
(特に何の資格もない俺なんて取らないだろう)
それに少しくらいは体を動かしたいという理由から除外した。
24: 以下、
そして最後に営業を除外した。
体育会系の上司にノルマを強制され、
取引先相手には接待と称した学芸会を強制される。
想像しただけでも吐き気がする。
そんなこんなで除外作業を繰り返した後愕然とする。
そして何もいなくなった。。。
選択できる項目が皆無であった。
25: 以下、
予想外の出来事に佐藤は放心した。
(俺が働ける環境はどこにもないのか)
絶望感が全身を襲う。
しばし呆然とした後、手は自然とアダルトサイトに伸びていた。
現実逃避である。分かってはいる。
どんなに嫌でもこの選択肢の中から選ばなければならない。
しかし体がこれ以上の思考を拒否していた。
(何も考えず煩悩の赴くまま女体を眺めていたい。)
そんな欲求が現実から目を背けさせた。
26: 以下、
「ふぅ・・・」
後悔だけが全身を覆う。
何も現実は変わらない。
汚い6畳の部屋にいるのは一匹の汚い男であった。
ニートの決心などこんなものである。
もしこの時携帯電話が鳴らなければ、
昨日と同じ日々が延々と続いていたはずだ。
現に佐藤はハーフパンツを履くと同時に
万年床に寝そべり目を瞑っていた。
27: 以下、
今考えるとこの偶然が佐藤を救った。
電話の相手は高校生時代同じクラスだった大野である。
3年振りの電話であった。
しかし話の内容は至って下らないものであった。
お互いの近況や暇な日にでも飲みにいこう。
そんな日常の会話。特に何があるわけでもない。
しかしその何気ない会話の中で大野が言った一言。
それが背けていた現実に引き戻した。
「最近仕事が忙しくて」
たったそれだけである。
28: 以下、
しかし佐藤にとってはこれ以上重い言葉はなかった。
同年代、しかも旧友に置いていかれる現実。
否応なしに現実に引き戻される一言。
電話を切った後胸に熱い気持が湧き出ているのを感じた。
これが覚悟というものであろうか。
佐藤は決心した。もう逃げ出さないと。
もう現実から目を背けないと。
蝉の声がうるさく響く
ある暑い夏の午後。
これが就職活動の第一歩だった。
   第一部完
19: 以下、
なんか最近のアカギ並に展開遅い
30: 以下、
ちょっと休憩(´・ω・`)
>>19
ごめんね遅くて。。。
一部は半分書き溜めてから投下したけど
文才のなさゆえ無駄に長文になってしまうw
29: 以下、
俺ニートだった時Webで登録したらえらいスカウトきたから
それで安心して半年またニート継続しちゃったwww
30: 以下、
>>29
ちょwwwwおまwww
でもスカウト一杯きたら余裕だと思うよねw
なんかいつでも就職できそうな幻想にとらわれるw
32: 以下、
>>30
そうなんだよ、いつでもできると思っててダラダラ年とっちゃう
>>27-28あたりなんて物凄い分かるんだよね
ニートってことが後ろめたくて恥ずかしいし
33: 以下、
>>32
ですよねー^^
ニートしてると時間経つのが早い早いw
31: 以下、
テレビやネットに煽られてのこのこと就職してしまう奴は負け組
働いたら負けなのだ。
33: 以下、
>>31
いやーどうだろうかw
働かない事に関してはどうこう言うつもりはないけど、
親が裕福じゃないなら働かざるを得ないキガス
34: 以下、
かまわん続けろ
35: 以下、
第二部:試行錯誤
決めたからにはやる。
やると決めたからにはやり通す。
佐藤が生まれて初めてした固い決意であった。
元々頭の回転が鈍いわけでもなければ、
運動音痴というわけでもなかった。
そこそこ優秀に何事も無難にこなしてきた。
まさかニートになっていようなどとは、
高校生時代には夢にも思わなかった。
まるで別次元の出来事だった。
36: 以下、
自分には関係のない事。
馬鹿と阿呆が落ちる成れの果て。
そんな風に考えていた。
携帯を切った後すぐさまさっきのサイトを開く。
決心が鈍らない内に行動しなければ。
しかし又先程の思考に戻る。
どんな仕事をすればいいのか分からない。
コレが一番の問題であった
37: 以下、
やりたい仕事だけをする。
確かにそれが理想だ。
したい事が仕事で、
それでお金を貰えるならばそれが一番いい。
だが世間はそんなに甘くない。
皆したくない仕事を嫌々しながら、
寿命を金に替えているのである。
何かを妥協しなければならない。
では絶対譲れないものは何だろうか。
38: 以下、
絶対譲れないものを書き出していく。
1・休日は土日
→平日休みだと不規則になりそれは嫌だ。
2・休日は年間100日以上
→普通なら120日以上だろうが贅沢は言えない。
3・スーツを着て仕事がしたい
→作業着や制服を着た職業は何か嫌だ。
4・要普免は不可
→単純に普通免許を所持していない。
39: 以下、
絶対譲れないのはこれくらいであろうか。
そりゃ昇給がしっかりあり、賞与が毎年それなりの額があって、
誰もが知ってるような大企業に勤めるのが理想ではある。
しかしそんなのは夢の又夢。
最低限この4つの項目を満たしているのならばいい。
そんな最低限のライン。
こう書き出して閃いた。
(スーツを着て土日休みの仕事と言ったら、
こりゃもう営業しかない)
一筋の光明が差した気がした。
今まで漠然とした就職活動に形が浮き上がってきた。
一つの道しるべ、進むべき道。確かな指標が出来た。
40: 以下、
早営業で検索をかけてみる。
ヒット数約400件
「よしっ」
思わず呟いていた。
しかし世の中はそんなに甘くない。
二言目には大卒以上、要普免、経験者募集の文字が躍る。
(高卒、職歴なし、普免なしの俺はお呼びじゃないってか)
タバコを手に取り、火をつけ大きく吐き出す。
煙はエアコンの風に吹かれ後方に流れ消えて行った。
41: 以下、
僅かな光明は雲に隠れ陰が覆う。
(どうする?進路変更するか?)
(まだだ。まだ諦めるな)
(でもどうするよ?)
(お前の条件に合う求人がきっとあるはずだ)
(本当か・・・?じゃあ続けてみよう)
内なる葛藤を経て続行を決めた。
第一希望は営業職。
これは変えない。変えてしまったらまた揺らいでしまう。
心元ない指標だが唯一自分を委ねられる。
佐藤は弱気になるのを恐れた。
42: 以下、
検索を続ける事早30分。
半ば諦めかけたその時、
一つの求人が目に留まる。
勤務地池袋
(自宅から一時間かからない距離だな)
職種 営業
そこには設立して5年若い人材を求めていた。
法人相手に光回線の勧誘や、
オフィス機器の見直しによる経費削減を提案。
今伸びているソリューション営業だと書いてある。
43: 以下、
休日も土日。
年間117日も休みがある。
仕事の成績によって歩合給が付くらしい。
なんと平均月10万前後は貰っていると書いてある。
その上残業も少なくするよう会社からの働きもあり、
遅くても夜8時には帰社しているとのこと。
(これはお宝求人だ)
希望が胸にこみ上げ出会えた奇跡に感謝した。
44: 以下、
迷う事なくレジュメを企業に送信する。
応募資格を見直したが
学歴不当、未経験歓迎の文字が心強い。
(こんな俺でもチャンスはある)
(どうか面接の機会を与えて下さい)
不安と希望が半分半分の中、
祈るような気持ちで送信した。
45: 以下、
大抵企業からの返信はすぐにはこない。
来たとしてもレジュメを受け取った事を確認するメールが来るくらいだ。
だがその時の佐藤はそんな事も知らずに5分経てば更新を続けていた。
メールが来ない事に落胆しながらも、
又5分経てば落ち着かなくなり更新ボタンを押す。
だが1時間くらい経った時であろうか、
なんと企業から送信が返ってきた。
心臓をバクバクさせながら、
そのメールを開く。
佐藤初めての企業との通信である。
46: 以下、
件名:ご応募いただきありがとうございます。
お送りいただいた貴殿のレジュメを拝見した結果、
貴殿には次のステップにお進みいただきたいと思います。
つきましては、下記の日程にて一次面接を行いますので、
お越しいただくことが可能かどうかのご連絡をいただいても
よろしいでしょうか。
 
 ・日時: ○月×日午後14:00?
 ・場所: 池袋本社ビル 2F
 ・持参物: 履歴書・職務経歴書、筆記用具
ご都合が悪い場合も、お気軽にご相談ください。
御連絡いただけることを心よりお待ちしております。
47: 以下、
「やったーーーーーーーーー」
気付いたらガッツポーズをしていた。
今までの非生産的な生活、
生きているのか死んでいるのか分からない日々。
そんな今までの自分とさよならをするんだ。
その第一歩を確かに佐藤は踏み出した。
   第二部完
49: 以下、
見てるよ
52: 以下、
続きが気になる
54: 以下、
>>1
貴様NHKだな!
56: 以下、
>>54
それどこかのコテ半の方ですか?
人違いですよw
57: 以下、
>>56
てめぇが日本引きこもり協会だって事ぐらいお見通しだ!
この俺を部屋から出そうなんて千年はやいわ!
55: 以下、
見てます
58: 以下、
第三部:社会の洗礼
「よっしゃーーー」
6畳の汚い部屋で佐藤は小躍りしていた。
初めに送った会社から面接の要望が来るなど、
まさに天にも昇る気持であった。
面接日時は三日後。
少々急だが早いに越したことはない。
佐藤は久し振りに履歴書を買い、
来るべき日に備えた。
59: 以下、
?三日後?
池袋に来るのは久し振りだった。
池袋どころか近所のコンビニくらいしか外出をしていない。
前日には髪も切り、スーツも親に頼み新調した。
母親は吃驚した表情をしながらも、
息子の豹変振りに歓喜した。
そして「気が変わらない内に」
と、その日の内にスーツを買い与えた。
夏真っ盛り。容赦なく太陽が肌を焦がす。
待ち行く人達を横目に地図を頼りに目的地へ進む。
60: 以下、
地図に示された場所は、
どこにでもあるような小さなビルだった。
築年数が大分経っているのか、
所々に蔦が絡まりヒビが入っている。
異常な音を出すエレベーターに乗り2階に下りた。
2階に着くと目の前のガラスには社名のロゴがデカデカと書いてあり、
その先に一つの電話機が置いてある。
そこには、
「採用面接の方は内線511を押してください」
と書いてある。
61: 以下、
久し振りの他人との会話にドキドキしながらも、
無事に来社目的を告げた。
(傍から見たらおれはどんな風に見えているのだろうか)
少し不安になり挙動不審になるのを必死で抑える。
しばらくその場で待つと30代前後の女性の人が現れた。
「私AB会社の原田と申します。佐藤様ですよね。こちらへどうぞ。」
そう言うと奥のコジンマリとした応接間に通された。
62: 以下、
佐藤くん、世の中の陰謀の99%は嘘なんだよ
63: 以下、
俺んトコの業界もマジで人がいねぇー!!
佐藤くんが応募してくれたら即採用するのに……
64: 以下、
小さな応接間はコの字に椅子が並び中央にテーブルが置いてある。
良く見ると先客が2名いた。
ぱっと見た感じここの会社の人ではなく、
俺と同じように面接に来ている人達らしかった。
「これで全員そろいましたね。」
そう言うと原田はコの字の中央に座り、
他の三名は原田を囲むように座るよう命じられた。
そして原田からの第一声が俺の今までの余裕を吹き飛ばした。
「本日はようこそお越しくださいました。本日一次面接は合同面接とさせて頂きます。」
65: 以下、
予想外だった。あまりに予想外すぎて一瞬で汗が額に浮かぶ。
ただでさえ他人と話す事だけで精一杯なのに、
他の面接者と合同だと余計に緊張する。
そんな俺の様子を知ってか知らずか
原田はくだけた調子で場を仕切る。
「緊張しないでね。上着は暑かったら脱いでいいから」
そう言うと率先して上着を脱ぎ腕を捲くり始めた。
今までの丁寧な言葉からいきなりのタメ口に違和感があったが、
予想外の合同面接にテンパっていてそれ所ではなかった。
66: 以下、
他の二名は原田に続くように上着を脱ぎ腕を捲くる。
ちなみに二人とも男だ。
ただでさえ狭い応接間が余計に狭く感じた。
俺はと言うと焦りとどうすればいいのか判断できずそのままでいた。
しかしその判断が結果的に俺を救う結果になるとは
その時は予想すらしていなかった。
67: 以下、
うおー気になる!
続けて続けて
68: 以下、
原田はメガネを掛けており、
パッと見は可愛く見えなくもない。
芸能人で言うなら辻あやの似だ。
(正確には芸能人ではないが。)
一人上着を脱がずにいると原田は気にせずに進めた。
「緊張しなくていいからね。ありのままの姿を見て判断するから」
その次の言葉があまりに意外で予想外の言葉が飛び出した。
面接の場では絶対に聞かないと思っていたあの単語。
日常で嫌と言うほど目に入れるあの単語をここで聞くことになろうとは。
原田は足を組むとこう切り出した。
「君たち2って知ってる?」
69: 以下、
けっこう面白いな
70: 以下、
ブラック臭ぷんぷんな面接官だな
71: 以下、
(いきなり何を言い出すんだ?)
正直驚いたのと同時になぜかニヤニヤしてしまった。
なんだろうこの感覚。
親戚にあった時のような照れくささと、
場に合わない違和感。
それがブレンドされて妙な気持ちになった。
一瞬で他の二人の顔色を伺う。
ここでの間違いは命取りになる。
二人ともポカーンとしながらも
「名前だけなら聞いたことがあります」
と答えていた。
俺もそれに習いそ知らぬ顔で
「なんですかそれ?」
とトボケル。
72: 以下、
とぼけたww
73: 以下、
原田は安堵した様子で、
「よく知らないならいいんだけどさ。」
「あそこってある事ない事書かれてるからさ」
「もしよく読んでる人がいたらそう言う偏見はよくないって思ってね」
そう言うとニッコリ笑い足を組みなおした。
その笑顔を絶やさぬままこう続ける。
「皆知ってるかな?うちの会社ね光通信の子会社なんだ。」
「光通信って言うのは東証一部に上場してる大企業で、
この業界の最大手なんだけさ。」
光通信・・・?
原田の笑顔が悪魔の顔に見えた。
74: 以下、
これは・・・
76: 以下、
まさかの…。
77: 以下、
(光通信の子会社とかやばいだろう。)
他の二人の顔を盗み見る。
二人とも歳は20代後半といった所か。
光通信という単語にはまったく反応がない。
逆に一部上々の言葉が出た途端目がギラついてやがる。
こいつら駄目だ。
完全にこの場は3対1
面接が始まる前に孤立。
四面楚歌。
78: 以下、
「じゃあさっそく始めようか。志望動機をじゃあ君から」
原田は先程の笑顔のまま俺を指差す。
流石にこの場で光通信の悪行に言及できるわけもなく、
半ば諦め半分に志望動機を語る。
もう来たときの情熱や夢、希望はそこにはなかった。
ただただこの時間が早く終わればいい。
ただそれだけを考えていた。
他の二人が熱く語れば語るほど
俺の心は冷め切っていった。
79: 以下、
何故もっと早くに気付かなかったのだろうか。
こんなうまい話があるわけないじゃないか。
あまりにニートの生活に慣れすぎていた。
ちょっと考えれば分かりそうなものなのに。
自分の軽率さと愚かな脳みそを呪った。
後はずっとうわの空だった。
他の二人は入社する気マンマンらしく、
鼻息を荒げいかに貢献できるかを熱く語っていた。
80: 以下、
ニートのままでいるのと、
この会社に入社するのと、
一体どちらが不幸なのだろうか?
そんな事を考えながら一刻も早く面接が終わるのを待った。
そんな俺の気持を踏みにじったのは、
笑顔の悪魔こと原田だった。
「今回の応募者は稀に見るヤル気ある子が来たわね。
あ!いい事思いついた。ちょっと待ってて。」
そう言うと原田は席を外ししばしの間3人は応接間に残された。
そして戻ってくるなり恐ろしい言葉を吐き出した。
「いま社長にOK貰ったんだけど、これから体験入社してみない?
普通ならしないんだけど、ヤル気があるから例外で認めてもらったの」
81: 以下、
ワロタw
82: 以下、
術中
83: 以下、
(何言ってるんだ?この悪魔は?)
今聞いた言葉が信じられなかった。
今一番聞きたくない言葉だった。
残りの二人を見ると、
「お願いシャッス!」
とか無駄に気合が入っている。
最悪だ。
この馬鹿二人が地獄に落ちるだけなら別にいい。
だが俺を巻き込まないでくれ。
84: 以下、
しかし予想外の事が起こる。
この後の最悪の展開を覚悟し、
一日だけなら我慢してやろうかと思った矢先。
悪魔こと原田は意味不明な質問をしてきた。
「じゃあその前に三人とも目を瞑ってもらえる?
目を瞑ったら質問に答えて欲しいの。」
三人は言われるがままに目を瞑った。
「じゃあ今から質問するから手を挙げて答えてね。
えーっと今までの話を聞いて君たちはこの会社に入社したいと思う?」
なんと天から蜘蛛の糸が垂れてきた。
ここで手を挙げなければ開放される。奇跡が起きた。
86: 以下、
目を瞑っていても気配は感じられる。
他の二名は手を挙げているのが服のすれる音で判断できた。
二人は入社する気マンマンだ。
・・・ここで手を挙げない勇気。
それがあればこの地獄から開放される。
ようやく家に帰れるんだ。
しかしここで手を挙げない度胸があればどんなに楽か。
そんな奴はニートになんぞになってない。
周りの空気、原田の言葉、
全てが入社するのを前提に話が進んでいる。
俺だけ手を挙げない事なんて出来なかった。
心で自分の小さい器を恨みながら。
しかし手はしっかりと垂直に伸びていた
87: 以下、
「よーしOK。三人とも目を開けていいよ。」
目を開けると意外にも困惑した表情の原田がいた。
てっきり三人が入社意思を示した事で上機嫌だと思ったからだ。
まゆをへの字に曲げ
「うーん」
と唸っている。
さっきまでの笑顔は無く考え込んでいる。
予想外の展開に困惑していると、
意を決めたのか原田はこう続けた。
88: 以下、
「本当ごめんね。とっても残念なんだけど佐藤君はここでお帰りです。」
は?
え?
何を言い出したかと思えば何を言ってるんだ?
正直あまりの出来事に頭が混乱した。
そんな俺をよそ目に原田は続ける
「せっかく入社したいって思って貰ったんだけどね。本当ごめんね。
佐藤君はお帰りって事はつまり・・・ここで不合格って事なんだよね」
89: 以下、
「初めに上着脱いでいいよって言った時佐藤君だけ脱がなかったでしょ?」
「営業ってねそういうんじゃ駄目なんだよねー。」
「固いよ君。そんなんじゃ営業でやっていけないよ。」
「君営業向いてないよ残念だけど。」
原田は困惑した表情で捲くし立てた。
他の二人の目の前でいきなりの不採用通知。
オマケに営業が向いていないとまで言ってくれるとは。
口をあんぐり開けなんて言えばいいか戸惑っていると
「出口はあっちだからごめんね」
原田はそう言うと出口を指差した。
不採用なのは願ったり敵ったりだがなんか釈然としないまま、
ヘラヘラと笑いながら
「今日はありがとうございました。失礼します」
そう言って応接間を出た。
90: 以下、
うん
91: 以下、
それは…人としてどうなんだ原田
92: 以下、
試合に負けて勝負に勝つとはこういう事を言うのだろうか。
ビルを出て空を見上げながらそんな事を考えた。
「君営業向いてないよ」
その言葉が胸の中を何度もこだましている。
空がゆっくり滲んでいく。
しばらく呆然とした後
タバコに火を付け歩き出した。
日が沈む赤茶けた池袋
佐藤始めての就職面接であった。
  第三部完
93: 以下、
なかなかお目にかかれない面接官だなこれは
佐藤くんついてたな!
95: 以下、
(゚Д゚)y─┛~~
これは実話だから困るw
名前や場所は架空だけどねw
98: 以下、
第四部:嘘
その後佐藤は何十という企業にレジュメを送った。
先日の一件が佐藤の心に火を付けたのだ。
「君営業向いてないよ」
そんな事言われたまま引き下がれない。
あの女を見返してやらないと気がすまない。
当初の目的とは若干ずれてはいるが、
就職したいという気持は今も変わっていない。
99: 以下、
だが高卒、職歴なしの佐藤は書類選考すら通らない。
落ちる。落ちる。落ちる。
その日丁度10通目の書類選考落選の通知を受け取った。
就職したいという気持ちは誰よりも強くある。
働きたくて仕方がないのだ。
しかし自分を見せる場すら与えられない。
世間ではニートは甘えだと切り捨てられる。
働かないのは働く気がないのだと言われる。
全てがニートの責任であるかのように。
101: 以下、
先日行った会社は甘い求人内容で危うく騙されかけた。
会社側は平気で嘘を付く。
そしてそれを悪いとも思っていない。
佐藤は考えた。
相手がそうならこちらも嘘を付くしかないと。
それは仕方の無い事だった。
人は佐藤を責めるだろう。
しかし佐藤にはそれしか方法がなかったのだ。
嘘を付くしかなかった。
それが唯一会社と対等に渡り合える手段だった。
佐藤は職歴を偽造した。
嘘を並べあたかも空白期間が無かったかのように。
102: 以下、
初めは罪悪感があった。
嘘を付いているという罪悪感。
しかし職歴を偽造する事によって
面接に呼ばれる回数は格段に増えた。
面接をこなすうち
佐藤自身が嘘を付いている事を忘れた。
これが本当の自分のように錯覚をした。
しかしこれでいいのだと佐藤は自分自身に言い聞かせた。
会社が嘘を付いている以上これで対等だ。
騙される奴が悪い。そう騙される奴が。
104: 以下、
空白期間があるからなー
105: 以下、
そんな中一つの企業を見つける。
海山物産。
レジュメを送った所面接に呼ばれた。
従業員数500人弱。
中小企業ながら条件は申し分ない。
面接は一週間後。
念入りに準備を進め時を待つ。
そう騙される奴が悪いのだ。
 第四部完
108: 以下、
呼んだ?
neet暦は3週間の佐藤ですがなにか?
今就職して約半年たちましたが
もうすでに辞めたいきもちでいっぱいです^^
120: 以下、
>>108
やめるな絶対!!
ニートに逆戻りになるぞw
109: 以下、
第五部:人を観る目
「田端さーんこれでいいですか?」
書類を片付けながら目をやると
新入社員の山本が不安な表情で一枚の紙を持っている。
「いいんじゃないかな。これで頼むよ」
一通り目を通すとその紙を山本に返した。
「ありがとうございます。」
そう言って山本は駆けていく。
(あんな頃が俺にもあったなー)
田端は海山物産に入社して5年になる。
初めは営業部に所属していたが
成績が認められ現在は人事部と総務部を兼任している。
海山物産は年に二回しか採用活動を行わない。
有難いことに退職者が少ない事や
よくも悪くも業績は安定している為だ。
その為人事部は採用時期以外は総務部に籍を置く事になっている。
110: 以下、
今回山本にお願いしたのは
秋の中途採用者を募集する文章だ。
通常ならば田端が外部の者と打ち合わせをするのだが、
今回は特別に任せてある。
この時期は毎年のようにR社に頼み募集を募る。
今年の募集人数は5人前後。
いい人材がいれば多く取るし、
いなければ2人しか取らない事もある。
この時期が田端にとって一番楽しい時期でもある。
人生を懸けて必死になって入社を希望する者達
それを自分のさじ加減一つでふるいにかける。
まるで神にでもなったような気分になる。
111: 以下、
形式上面接は2次面接まではある。
しかしそれはあくまでも形式上にすぎず、
役員面接はお飾りである。
よっぽどの事がない限り、
一次面接を通過した者は入社に至る。
つまり一次面接の合否の権限を持つ田端が
実質の決定者であり、
受かるも落ちるも田端の胸一つなのだ。
112: 以下、
今回書類選考の人数は72人。
例年より少し多い。
不況というご時世がこんな所で垣間見れる。
一次面接で呼ぶ予定人数は25人。
書類選考で落とされるのが47人。
つまり半分以上は書類選考の時点で落とされる。
出来る事ならなるべく多く一次面接に呼び、
希望を持たせ落としたいのが田端の本音である。
しかしながら筆記試験、交通費の支給、その他もろもろの経費を考えると
そういうわけにもいかないのが残念な所である。
113: 以下、
まずはざっくりと募集要項に満たない者を落とす。
あれだけ明確に応募資格を明記しておきながら
満たない者が応募してくるのが田端には理解できない。
数うちゃ当たるって奴か?
ロクに読まずに適当に出してるんだろうな。
そう思いながら選別作業を続ける。
今回は募集要項に満たない者が7人。
まぁいつも通りの人数である。
さてこれからが本番だ。
残りの40人を落とさないといけない。
ここ最近寝不足で腫れている目をギラつかせながら
自然と口元がほころんでくる。
(人事は俺の天職だな。)
そんな事を考えながらレジュメに目を通す。
114: 以下、
ある程度選別が終わり残り一人という所まできた。
年齢、学歴、職歴、資格を元に選別する。
志望動機はおまけだ。
さてと・・・タバコに火を付けながらじっくりと残り二枚のレジュメを眺める。
一人は一次選考に選ばれ、
一人はこの場で姿を消す。
この瞬間がたまらなく楽しい。
一人は高卒ながら同じ企業で5年勤めている。
24歳とまだ若く名前は佐藤と書いてある。
もう一人は大卒だが職をコロコロ変えている。
年齢は27。橋本という名前だ。
さてどちらにしたものか・・・。
116: 以下、
なんか読んでたらお腹痛くなってきた俺ニート
119: 以下、
>>116
何でだよwww
117: 以下、
普通ならば若くて職歴もしっかりしている佐藤を選ぶ。
だが田端は今まであえて逆の方を選んできた。
どうせ両方とも一次面接で姿を消す。
ならば年齢を重ねている分だけ橋本を残した方がおもしろい。
田端はそういう思考をする男だ。
だが、この時は違った。
気まぐれであろうか。
それとも山本と居たからだろうか。
昔を懐かしんだわけではない。
しかし佐藤を選んだ。
 第五部完
121: 以下、
第六部:狐と狸
「よしっ」
そう声を出すと佐藤はビルの中に入った。
「海山第一ビル」
海山物産。今日面接をする会社の自社ビルである。
嘘の職歴、志望動機等
何度もソラで言ってるうちに今ではペラペラだ。
今回も騙しとおせる自信はある。
今度こそ入社してやる。
今度こそ。。。
122: 以下、
えっと、このスレのタイトルって
「就職活動してるんだが、もう俺は限界かもしれない」
でいいんだよな?
124: 以下、
>>122
いいえある男の就職活動期です><
123: 以下、
正面の自動扉を通過すると
目の前には受付嬢がいた。
上下をピンクの制服で固め、
頭にはシルクハットのような帽子を被っている。
(ちゃんとした会社だな)
これが佐藤の海山物産に対する第一印象である。
「どのようなご用件でしょうか」
見入っていると受付嬢がたまらず声を掛けて来た。
「本日面接の予約をしております佐藤と申します」
淀みない。最初の頃とは別人である。
「かしこまりました。エレベータで3階にお願い致します」
受付嬢は微笑を湛え右手を45°に曲げ奥を指した。
「ありがとうございます」
そう言って佐藤はエレベーターに向かう。
我ながら成長したものだ。
126: 以下、
身につまされるな…('A`)
一回落とされるたびに凹んでなぁ
頭じゃ分かってるつもりなんだが…全然分かってないなw
所詮俺はチキン野郎だぜ…
127: 以下、
3階に着き扉が開くと長い机とその上に紙が乗っている。
エレベーターの前で待ち構えていた女性社員が
「本日はお忙しい中ありがとうございます」
そう言うと机の上の紙を取り俺を部屋へ案内した。
すこし奥に行った所にある部屋は大体40人前後が収容できる広さの部屋だった。
縦に10列横に2列の机が並ぶ。
机には両端に会社案内が置いてある。
「開いているお席にお掛け下さい」
そう言うと先程の紙を手渡してきた。
みると交通費立替書と書いてある。
(交通費まで出してくれるとは本当いい会社だな)
128: 以下、
時間より少し早く来たせいか、
先に席に座っている人は3人しかいない。
仕方なく前から二列目の席に座り会社案内を読んだ。
読んでいると続々と残りの者が到着したようで
一瞬のざわめきの後部屋は又静寂に包まれた。
時計が定刻を指した瞬間
前方左の扉が開き社員が姿を現した。
社員は一番前の席の左少し前にある演台に落ち着くと
そこのマイクで挨拶をした。
「本日はお忙しいなか誠にありがとうございます。
それではこれより海山物産の会社説明会及びに筆記試験、一次面接を始めます。」
129: 以下、
12時55分田端は会議室の扉を開けた。
そこは今日13時より中途採用の面接会場になっている。
中に入り演台に向かう。
その際険しい顔をしないように心がける。
面接者は弛緩した空気の中で本性を出す。
これが田端の持論である。
そして初めの挨拶をした後会場をゆっくり見渡す。
前に座っている奴程早く来た奴ら。
逆に後ろにいる奴ら程遅く来た奴ら。
一瞬の間に査定が終わる。
この時点から試験は始まっているのだ。
131: 以下、
佐藤は久し振りに緊張していた。
なぜならここまでしっかりした会社の面接を受けるのは初めてだからだ。
演台の社員は田端と名乗った。
精悍な顔つきだ。目つきが今までの面接官とは少し違う。
やさしい目をしている。しかしその奥では何かをしっかり見ていた。
「それではまずは会社案内の説明を始めます」
そう言うと部屋の電気は消え、
目の前の白い布の上に映像が流れてきた。
途中まではしっかり見ていた。
しかし途中から何を言っているのかさっぱりわからなくなった。
(ね、眠い・・・)
佐藤は必死で眠気を堪える為
持参したノートに落書きをする事で耐えた。
132: 以下、
田端は暗闇の中でも査定を怠らない。
一人一人をしっかり見ている。
映像にどれだけの集中力を持って見ているか。
どれだけ理解して見ているのか。
よそ見や居眠りは論外である。
気の無い表情で見ている者がいればその時点で不合格が決定する。
例え試験がどれだけできようとも、
例え面接でどれだけよく答えようとも。
この時点で不合格が決定するのだ。
一人気を引く男がいるな・・・
田端の視線はその男に注がれた。
一心不乱にノートにメモを取る男
最近じゃ珍しいタイプだ。
そう田端は思った。
133: 以下、
支援
134: 以下、
部屋が明るくなる。
拷問のような時間がようやく終わったのだ。
佐藤は何とか眠気から自分を守った。
「申し訳ありませんが、このまま筆記試験を続けさせて頂きます」
田端はそう言うと前から順番に試験問題を配り始めた。
SPIである。
佐藤には自信はあった。
今まで何十社と中途採用を受けて来た。
その中でかなりの経験を積んだのだ。
(出来る。出来る)
そう自分に言い聞かせた。
135: 以下、
SPI試験これは合否に直接関係してくる。
ある基準点に満たない者はそれだけで不合格である。
面接の印象がいくら良くてもだ。
だが田端が観るのは点数だけではない。
受験態度これも査定する。
肘をつきながらの回答、
消しゴムのカスを床に捨てる、
周りの迷惑になるような行為をする、
(過度なセキや貧乏揺すりなども入る)
そういった行為は減点の対象になる。
その減点分が試験の結果から引かれる事となる。
136: 以下、
wktk
138: 以下、
何とか埋められた。。。
佐藤は安堵した。
どんなに立派な会社だろうが、
試験内容にそこまでの差はない。
今までの経験がここで生きたのだ。
「では回答を回収致します」
「続きまして前の方より順番に面接をさせて頂きます。」
「面接は個人面接約10分前後となっておりますので、
呼ばれた方は面接会場までお越し下さい。」
佐藤の順番は4番目である。
かなり早い順番での面接に戸惑った。
(前の三人が面接を受けている間にシミュレーションしておかないとな)
時間はわずかしかない。
140: 以下、
141: 以下、
さぁてようやく面接の時間だ。
田端は気付かれないようにニヤリと笑った。
面接官も人である以上多少のブレはある。
後になるほど疲労は溜まるし、
予定調和にうんざりしてくる。
それ故面接は最初の方が有利である。
早ければ早い程比べる相手が少なくて済む。
極論最後の面接者は面接官一人と、
残り24人の面接者と勝負しなければならない。
田端もプロである。
期間は短いとはいえ今まで多くの人数を品定めしてきた。
3秒で印象は決まる。
まさにその言葉通りプロは一目見て相手のおおよそは判別が付く。
144: 以下、
最初の方は遅すぎる展開にうんざりしてたのに
wktkしてる俺が居るw
145: 以下、
二人目が会場に戻ってきた。
開始わずか5分である。
あまりにも早い。
佐藤は困惑した。5分の面接なんて聞いた事ないぞ。
当初の10分という時間でさえ異例。
それをさらに倍のスピードで終わるとは。
何か不穏な空気を感じた。
三人目が呼ばれ面接会場に消えた。
最悪あと5分後には俺が呼ばれるのか。
心臓の鼓動が早くなる。
(落ち着け、落ち着け)
だがその予想はあっけなく裏切られた。
三人目は戻ってきたわずか3分で。
149: 以下、
田端は込み上げる笑いを噛み殺した。
(見たか今の奴の顔・・・くく)
3分で終わる面接。
カップ麺が出来るかどうかの短時間。
そんな短い間で面接が終わるのには理由がある。
初めから獲る気などないのだ。
書類選考の時点で上位10名程度とその他に分類されている。
その他に分類されている者はただの数合わせにすぎない。
普通はそれでも形式上は面接をする。
しかしこの田端そんな事はおかまいない。
これが海山物産の伝統とでも言おうか。
代々受け継がれている通称「カップ面接」
時には相手を怒らせ、
時には相手を泣かせ、
そして強引に面接を終了させる。
面接官のエゴである。
150: 以下、
田端見てると就職したくないな…
でもwktk
151: 以下、
「佐藤様面接会場にお越し下さい」
ついに呼ばれた。
心臓が早鐘のように波打つ。
「はい!」
精一杯大きな声を出し自分を鼓舞する。
3分で終わる面接。
中では一体何が行われているのか。
不安と緊張で胃がキリキリ痛み出す。
面接の部屋の前に立ち深呼吸をする。
そして意を決してドアをノックする。
「どうぞお入り下さい」
152: 以下、
wktk
153: 以下、
扉を開けるとそこには長い机が一つ。
比較的狭い部屋だ。
机を挟んだ対面には面接官が立っている。
「失礼致します」
精一杯の声を出す。
机の前にある椅子の横に立つ。
緊張で足が震えているのが分かる。
佐藤は今まで何回と面接をしてきた。
ある程度の場数は踏んできたつもりである。
しかし予想外の先制攻撃を食らった。
面接官が名刺を出そうとしているではないか。
受付嬢がいるような会社の面接は名刺を出すのか・・・
正直今まで名刺を受け取った経験が佐藤には無かった。
それ故マナーを知らない。
どう受け取ればいいのか分からない。
一気に頭がパニックになった。
「・・・いします」
そう言って面接官は名刺を差し出してきた。
あまりにパニクってしまった為何て行ったのか聞き取れなかった。
痛恨のミス。
(落ち着くんだ)
154: 以下、
「失礼します佐藤と申します」
男はそう言って面接会場に入ってきた。
面接会場言うなれば田端の檻の中である。
一目観る、上から下まで一瞬で査定する。
まず靴が汚いな。まるで手入れがされていない。
Yシャツのサイズが合ってないんじゃないか?あん?
おいおいポケットの裏地が少し出てるぞ。
その髪はなんだ?耳に少しかかってるしもみ上げが長い。
顔は普通だなよくもなければ悪くも無い。
ただ随分緊張してるな足が震えているぞ。
一瞬でこれだけの事を思い席へ促す。
この時点でかなりのマイナス評価である。
155: 以下、
田端からみれば赤子同然だ。
社会のペーペー。
試しに名刺を渡してみる。
これは一種の意地悪である。
どう対応するのか笑顔の裏で楽しみにしている。
下手を打たないか。ミスを期待している。
思った通りどもった上に貰った名刺を手の中で丸めてやがる。
こいつは駄目だな。。。
「席へお掛け下さい」
あくまでも笑顔で、そんな事はオクビにも出さず。
156: 以下、
キッツイなw
早く終わって欲しい気もするが終わって欲しくない気もするw
157: 以下、
佐藤は席に座り自分に言い聞かせる。
落ち着くんだ。落ちても死ぬわけじゃない。
名刺のマナーはあれでよかったのだろうか。
最善は尽くした。あれが俺の精一杯。
面接官は柔和な表情で
「あまり緊張しないで下さいね」
と言った。
(そうだ緊張してどうなるリラックスだ。。。)
「さてでは時間もあまりないので志望動機をお聞かせください」
(来た・・・最初の難関これで面接の5割は決まるぞ・・・)
158: 以下、
何か高校の就職活動思い出した
159: 以下、
「はい。御社を志望した理由ですが、御社の企業理念に感銘を受けた為です。
営業職は未経験ですが、その分人より何倍も努力し御社に貢献出来る様
尽力致します。」
何かの定型文だろうか?なんでもかんでも企業理念に感銘だ共感だと
軽々しくいう輩が多くて困る。
田端はこういった模範解答をもっとも嫌うタイプの人間だった。
(こういう人間に一番効くのが何故の三回理論だな)
何故の三回理論これは田端オリジナルの理論である。
面接者の答えに対し三回疑問符を投げかけるのである。
薄っぺらい志望動機など一発で剥がれる。
「企業理念に感銘を何故受けたのですか?」
あくまでも表情は崩さない。笑顔の仮面は鉄より硬い。
161: 以下、
口下手なおれに質問責めは地獄だ…
162: 以下、
追い付いた
福本漫画みたいな空気だな
田端がカイジの利根川にみえる
163: 以下、
「はい。社員と共に成長し社会に貢献する。これが御社の企業理念ですが、
社会に貢献する為に社員が成長しなくてはいけないと感銘を受けました。」
はぁー目の前に面接者がいなければおもいっきりため息をついている所だ。
「何故社会に貢献しなければならないと思いますか?」
一瞬面接者の顔が驚愕の表情の後曇るのを田端は見逃さなかった。
予想外の質問、アクシデントに人はもろい。
目が泳いでいる。動揺が手に取るように分かる。
笑いたいのを必死に抑え答えを待つ。
「はい。社会とは私達を取り巻く環境であり、切ってもきりはなせない物だからです。」
もう何を言ってるのか良く分からない。
しかし田端は手を緩めない。
164: 以下、
「何故きってもきりはなせないとおもいますか?」
まだつっこむのか。
面接者の顔にはそう書いてあるのがありありと分かる。
驚きに少しの怒りが見え隠れしている。
(まだまだ小僧だなこんなもんか)
「えーとあのー・・」
必死に答えを模索する面接者に最後の通告がなされる。
「お答え頂かなくて結構です。これで本日の面接は終了です。」
例の笑顔のまま田端はそう告げた。
165: 以下、
ざわ…
166: 以下、
「本日はお忙しい中ありがとうございました。」
頭を下げ外に出る。
わずかな時間であったが佐藤にはひどく長く感じられた。
正直面接室を出れた事にホっとしている。
さっきまでの緊張が嘘のようである。
だが気が付くと手のひらが汗でびっしょり濡れている。
自分的には手ごたえはあった。
確かに短い時間ではあったが
内容はとても濃いものだと自負している。
筆記も問題なく出来た。
後は運を天に任せるのみだ。
佐藤は今回の面接に手ごたえを感じ
いい結果が返ってくるのを待った。
167: 以下、
そんなに早く見切りつけるもんなのか?
168: 以下、
>>167
甘くはないよ
リクナビで申し込んだ先で面接受けたけど、
面接官は一挙一動を観察してる
その面接官は俺にダメなところを指摘してくれたけどさ
見る目だけは確かだ
169: 以下、
今までずっと就職活動をしてきたが
きっとこの会社にめぐり合う為に他も落ちたのだろう
佐藤はそう考える事にした。
面接の結果がでるのが一週間後。
合格、不合格関わらず連絡がくる。
佐藤は一日千秋の思いでその日を待った。
余計な事は考えずただ結果だけを。
 第六部完
170: 以下、
やっぱ新卒と中途だと後者のほうがシビアな目で見られるのね・・
171: 以下、
おいいいぃぃぃぃぃwwwwww
続くのかw?
174: 以下、
志望動機がハッキリきまらないからいつもキョドる
面接こわすぎてオナラが止まらない
176: 以下、
最終章:騙された者
「田端さん先週の面接の結果ですけど送ってもいいですか?」
山本が不安そうに聞いてくる。
新入社員ならば致し方ないか。
「よろしく頼むよ間違えないでね」
山本にはこんな俺でも甘いもんだ。
先週の面接は何事もなく無事終わった。
もう合否も決めたしあとはメールが送信されるだけだ。
177: 以下、
当日佐藤は一日中PCの前でリロードを繰り返していた。
先週受けた海山物産の合否の連絡がくるのだ。
手ごたえは十分にあった。
落ちているはずは無い。
2次面接に進むんだ。
強く強くそう念じ掴んだマウスにも自然と力が入る
何百回目のクリックをしたのだろう。
見慣れた受信なしという表示が
未読メール一件という表示に変わった。
き・・・た・・
ついにきた・・
不安と期待が入り混じりながらクリックする。
件名:合否に結果に関するご連絡
178: 以下、
先日は、お忙しい中当社にお越しいただきありがとうございます。
慎重な選考の結果、下記の日時にて最終面接を実施いたしますので、
ご都合を調整してお越しくださいますようお願い申し上げます。
それでは、お待ちしております。
【日時】 
 ○月×日  16:30
【場所】
 海山物産第一ビル3階
179: 以下、
ほう
180: 以下、
山本間違えたwww
181: 以下、
「田端さん合否の連絡おくりました。ちゃんと確認済みです。」
山本の威勢のいい声が飛び込んでくる。
「どうもーご苦労さん。」
こっちもつい対抗意識を燃やしてしまう。
まだまだ俺も若いな。心の中で苦笑いをした。
先週の面接を思い出していた。
タバコに火を付け自分のもっとも楽しかった瞬間を。
あの佐藤とかいう小僧の最後の泣きそうな面
今思い出しても笑えるぜ。
しつこくなんでですか?って食い下がってきやがって
その心意気を他の事にぶつけろってんだ。
まぁあいつは落ちたから
残念ながら二度と見る事もないのが残念だがな。
タバコを胸一杯吸い込み満面の笑みで煙を吐き出した。
182: 以下、
YAMAMOTOwww
183: 以下、
(ノ∀`)
184: 以下、
田端はあの佐藤を思い出す事によって
また自分の過去を思い出していた。
そう俺にもあんな時代があった。
色んな会社に面接に行った。
どこもおれなんて拾ってはくれなかった。
もう死んじまおうかと思った時もあったよ。
それが今や嫁さん貰って子供も腹の中だ。
社内結婚とは言えいいカミサン貰ったもんだ。
炊事家事洗濯どれも嫌がらねぇ
ただ婿養子ってのが気に障るけどな。
この会社に拾われてなければおれの人生は全く違う人生だっただろう
あの時の人事のおっさんには今も感謝してる。
面接時名前を聞き忘れたのもいい思い出だ。
池袋のあの女にも感謝してる。
「営業は向いてない」だ?ありがとよ
全部俺の肥やしになってるぜ。
田端耕介は根元まですったタバコを灰皿に潰し帰社の準備を始めた。
 最終章完
185: 以下、
な、なんだってー!
188: 以下、
>>1乙
なかなか面白かったぜ
189: 以下、
乙でした
190: 以下、
Eラン文系大学留年した俺もなんとかなるかなぁ
ならないか
191: 以下、
予定よりすごく長くなってしまいました。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
ちなみにこの話はフィクションであり
実在する会社、人物、などなど全て架空のものであります。
192: 以下、
な、なんですと?!

193: 以下、
乙でした!
197: 以下、
おお、一気に読んだ
面白かった!
文体とテンポがいいな
最後はしょりすぎて不満だがwww
是非続きも書いてほしいくらいだ
194: 以下、
山本はが間違えて最終呼んでも、最終で落とせばいいのに…
195: 以下、
>>194
読解力ないな
198: 以下、
>>194
伏線はちょこちょこ入れたつもりです
佐藤の視点と田端の視点だと面接官が入場する時間が違ったり
佐藤視点の田端面接官は男という表記がなかったり
他の場面では全て面接官で統一していたり
名刺を受け取る際名前が聞こえていなかったり
田端視点では失礼しますの後佐藤と名乗っていたり
要は時間軸が田端と佐藤で別だったというオチです。
分かりにくく申し訳ありません
>>ALL
乙の言葉ありがとうございます。
長い文を書いた甲斐があるというものです。
ただ惜しむべきは途中で寝てしまった方や仕事に行かれた方です
自分の文才がないせいで無駄に長文になってしまったのをお許しください。
最後に全部フィクションと書きましたが
池袋の会社は本当ですw
ではまたどこかで(・∀・)ノシ
196: 以下、
楽しかったぜw乙
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