【たぬき】塩見周子「きつねと夜啼きそば」back

【たぬき】塩見周子「きつねと夜啼きそば」


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1:
 モバマスより塩見周子と小早川紗枝(きつね)のSSです。
 独自解釈、ファンタジー要素、一部アイドルの人外設定などありますためご注意ください。
 前作です↓
【たぬき】早坂美玲「ウチの七日間妖怪戦争」
 最初のです↓
【モバマス】小日向美穂「こひなたぬき」
2:
 ―― 金曜 21時 事務所
周子「おーなーかーすーいーたーん」
紗枝「はぁ?……今日の収録はえらかったわぁ」
P「お疲れさん。寮には遅くなるって連絡しといたから」
周子「あぁーそっかぁー……響子ママに今日晩ご飯いいって言っちゃったやーん」
P「ママて」
紗枝「でもその分、うちら気張りましたさかいに……」チラッ
周子「なんか、ご褒美あってもええんとちゃうー?」チラチラッ
P「任せろ最初からそのつもりだ」
P「今夜は奢ってやるから好きなもん頼め!」キリッ
周子「よっしゃ! さっすがあたしのプロデューサーさん!」
紗枝「言うてみるもんやわ?♪」
周子(かくしてあたしらは、プロデューサーさん行きつけの店で晩ご飯を食べることになった)
周子(――んだけど、なかなか思うように事は運ばないもので……)
3:
 ―― 街中
P「って、うわーしまった。今日ここ臨時休業じゃん」
周子「なんかあったんかねぇ」
紗枝「あら?」
P「うわすっげえ行列! こんなん前まで無かったよな!?」
周子「そういやあそこ昨日テレビで紹介されてなかった?」
紗枝「まぁ?」
P「え? 閉店!? 嘘だろ!?」
周子「『店主高齢につき?』……あー隠居しちゃったんやね」
紗枝「ほぉ?」
P「万策尽きた」グッタリ
周子「ええー!? ちょっと待ってよ、んじゃあたしの腹の虫はどうすんのさー!」ブーブー
4:
紗枝「みぃんな入れへんとは、悪い巡り合わせもあるもんどすなぁ」
P「うーん……かといってファミレスってのもあまりに芸がない……」
周子「もうこの際牛丼でもいい気がしてきてるよあたし」
P「待て待て、仮にもアイドルが揃って牛丼ってのもアレだ」
紗枝「んー……」
紗枝「せや」ピコーン
紗枝「お二人はん。ここはひとつ、うちの知り合いがやってはるお蕎麦屋さんはどうどすやろ?」
5:
P「紗枝の?」
周子「知り合いが?」
紗枝「せやせや。この時間やったら、まだ開けてはるんやないかなぁ」
P「意外だな。そば屋の知り合いがいるのか」
紗枝「うちかて、自分のこみゅにてーいうもんがあるんどす?」
周子(言えてない)
P(かわいい)
P「それじゃお言葉に甘えてみようかな。案内してくれるか?」
周子「こっから遠いの?」
紗枝「はて、遠いような、近いような?……」
紗枝「ま、行ってみればわかりますやろ。うちについて来よし?」コンコン
6:
 〇
 本当に、遠いような近いような、だった。
 前を歩く紗枝ちゃんに続いて、あたしとプロデューサーさんは夜道を進む。
 こんこんと飛ぶように、等間隔に光る街灯を渡っていく狐。
 いつの間にか大きく黒い耳と尻尾が出ていて。
 やがて街の喧騒は遠くなり、どこからか水音が聞こえてくる
 ゆるやかな坂を下りきった先にお堀があって、水面に星の光を湛えていた。
「着きましたえ?」
 見ればお堀のほとりに提灯が揺れて、そこで昔ながらの屋台そば屋が煌々と火を焚いていた。
7:
 〇
P「お?……」
周子「なんていうか、レトロ通り越して時代的というか……」
紗枝「うふふっ、なかなか趣がありますやろ?」
紗枝「大将、おばんどす?。小早川の狐どすえ?」
大将「へえ、お久しゅう」
P(周子、これは……)
周子(まあ人間じゃないパターンやろねぇ)
紗枝「あ、なんやいらんこと考えてへん?」
周子「うっ図星」
紗枝「もぉ。うちの知り合いいうたかて、なんでも物の怪や思われたら困りますわぁ」
紗枝「まあ大将は貉(むじな)やいう話なんやけど」
P「結局人外なんじゃねーか!」
9:
大将「で、なんにしやすか」
P「うーん。俺は海老天を」
周子「にしん……は無いか。んじゃ、月見お願いしまーす」
紗枝「きつねそば、おたの申します?♪」
 チャッチャッチャ
 ヘイオマチ
P「お、来た来た。いただきまーす」ツルンッ
P「ん……うまい! お上品ではないからこそ気楽な、だしと醤油が香る昔ながらの二八そば……」ハフハフ
P「アツアツのつゆが熱帯夜に逆に染みるぜ。それでこの海老天が……」ジャクッ
P「おう?……つゆを吸った衣と、ぷりぷりの身がまた……」
周子「おいしそーじゃん。それあたしに分ける気ない?」
P「一尾しか乗ってないだろ流石に遠慮しろ」
P「……てか、それ溶かさんの?」
周子「え? 黄身のこと? なに言ってんのプロデューサーさん」
周子「お月さんてのは最後につゆと一緒につるんっと頂くもんでしょーよ」
P「ヘビみたいな食い方するんだな」
周子「なんとでも言い。ん?、おいし?♪」
10:
P「いやーしかし、いいなぁこの昔のファストフード感」ハフハフ
周子「立ち食いそばとはまた違う情緒があるねぇ。ロケーションのおかげかな」ツルツル
P「ちょっとした夜食感というか……これならもう一杯いけちゃいそうだ」
周子「紗枝ちゃんは……」
紗枝「ふぅ、ふぅっ」
紗枝「つるつる……つるんっ」
紗枝「おあげさん……♪」
紗枝「はむっ。ん??」モムモム
P(ペース超ゆったり)
周子(かわいい)
12:
P「で、熱い天ぷらそばってのはこの、底に残った衣の欠片を……」
P「七味の効いたつゆごと、ぐぐーっと……これがたまらんのよ」プハー!
周子「ぐっへっへ、お月さんもずいぶん温まってきたねぇ」
周子「ほーれ白い雲がかかってきて……けどこのシューコちゃんの目を欺けはしないのだ」
周子「さぁて一息に――ちゅるんっ、ごっくんっ?」
P「なんなの直前までのロールプレイ」
周子「ヘビみたいって言うから寄せたろ思って」プハー!
紗枝「ふはー。おつゆの味が染みるわぁ?♪」
13:
P「しかしあれだな、まだ入るな」
周子「あれこれ動いたからねぇ。あたしもイケそう」
紗枝「つるつる、はふはふー」
P「お品書きを……おっ結構あるじゃん。屋台そばなのにすげぇ」
周子「へぇ一品ものもあるんや。……そだ、お酒飲んじゃえば?」
P「酒? どうした急に」
周子「いやぁほら、今日って金曜じゃん? 花金フライデーじゃん。花盛りWeekendじゃん」
P「お向かいさんとこの名曲持ってくんのやめなさい!」
周子「まあまあ。で、両手に花なんはいいけど、もうちょいリラックスしてくれても?っていうか?」
紗枝「はむはむ。つるんっ?」 ←まだ食べてる
14:
周子「あたしらは細かいこと気にしないし、たまには一杯やってのんびりして欲しいわけさ」
P「んー……まあ確かに今日は上がりだが……」
紗枝「ちゅるんっ。うちもええと思いますえ?」
紗枝「誰も気にしまへんよって。周子はんもこう言うてはりますし、他におるんは狐と貉や」
P「そうか? 確かに、うまそうなつまみもあるっぽいしな」
P「あ、大将。このギンギーって何です?」
大将「ギンギー料理」
P「……材料は?」
大将「ギンギー」
P「……ま、まあともかく、お言葉に甘えて飲ませて貰おうかな」
P「じゃあ大将、冷酒とマグロぶつ、あと鴨の燻製を」
15:
 〇
 ヘイオマチィ
P「お、うまい。新鮮なマグロだな」
周子「どれどれ……んおっ、ほんとだ!」
P「綺麗に切ってるのもいいけど、こう大雑把にぶつ切りしてるのもいいよな。食い応えがあって」
周子「そうそう、お醤油をざぶんとくぐらせて……んーまぐろ食べてるって感じ?!」ホクホク
P「さて、鴨の燻製の方は、と。いい色が出てるなー」パクッ
P「う、うまい! 鶏肉より旨味が濃くて噛み応えがある……」
P「燻製にしてるから、味が更にぎゅっと濃縮されてる感じだな!」
周子「どれどれ……おお濃厚……!」
周子「脂身の部分もいいねーこれ。ぷりぷりしてて、肉のとこよりトロッとしてる感じ」
P「そして追って頂く冷酒が……」クイッ
P「ウマイ!」テーレッテレー
周子「どれどれ」
P「どれどれじゃねーよ」
周子「ちっ、流れで誤魔化せなかった……」
16:
周子「お酒なー。あたしはあと二年かー」
P「その時になったら奢ってやるよ」
周子「おっマジか。めっさ高いとこ今から調べとこ」
P「手加減して!?」
周子「にしても……そうか。プロデューサーさんはあたしの成人も祝ってくれるんや」
P「? 当たり前だろ。アイドルやってりゃ二年なんてすぐだぞ」
周子「二年後も……か。んっふふ♪」
P「なんだよ急に笑って」
周子「なんでもー。燻製もいっちょ貰うね」ヒョイッ
P「最後の一切れー!?」
周子(京都にいた頃は、二年後どころか二ヶ月先のことも考えてなかったけど)
周子(いやぁ人は変わるもんやねぇ。どなたさんのおかげなのやら。重畳重畳♪)
17:
紗枝「――ぷはぁ」コトッ
P「お、食ったか」
周子「どう紗枝ちゃん、おつまみ分けてもらう?」
紗枝「せっかくやけど、それには及びまへん。ひとつ、しばらくぶりに頂きたいもんがありましてなぁ」
紗枝「大将はん?。ねずてん、ありますやろか?」
大将「あるよ」
P「……ねずてん?」
紗枝「鼠の天麩羅のことどす♪」
周子「ネズミ!?」
18:
 ジュワワー
 ヘイオマチィ
P「こ、これが……ねずてん……?」
周子「ほぼ丸揚げやん……」
紗枝「これこれ♪ 人間はんのお店では、こればっかりは出してくれへんでな?」ウキウキ
P「そりゃそうだろ……」
周子「だってネズミだもの……」
紗枝「ちゃあんと清潔にしたもん使とるし、おいしいんやけどなぁ。ではでは」ツマミ
P「あっ」
紗枝「ひとくちでぇ……」ヒョイッ
周子「あっあっあっ」
紗枝「あ???????んっ」
P・周子「「あっああっあああっ」」
紗枝「――はぁんむっ?」カプッ
P・周子「「食べた!!」」
紗枝「ん?っ? こればっかりはやめられへんな??」シャクッジュワァッ
19:
周子「……思い出した。狐の大好物ってもともとネズミの天ぷらなんだって」
P「マジかよ」
周子「でもそれだとお稲荷さんにお供えする時長持ちしないのと、殺生が禁じられてたかどうだかで……」
周子「それで代用品におあげさんなんだって。父さんが言ってた」
P「ほぉ?……」
周子「すっかり慣れてたけど、紗枝ちゃんもれっきとした狐なんやなぁ」
P「うーん……」
周子「プロデューサーさん?」
P「紗枝、それうまいのか?」
紗枝「それはもう、うち小まい頃から大好きだったんよ?」
P「よかったら、一つ食わせてくれないか?」
周子「ちょ」
P「男は度胸! なんでも試してみるものさ! 大将とっくりもう一本!」タンッ
周子「うわー酔ってきてんなー」
20:
紗枝「んー、ほんまやったら独り占めしたいとこやけど……ほかならぬプロデューサーはんの頼みやったら」
紗枝「お塩をぱぱっと振りかけてー……はぁい、あ?んどすえ?」
P「あーん」
P「はむっ、はふほふ、熱っ……」
周子「……」ドキドキ
P「うまい!!」
周子「マジで!?」
P「肉がジューシーでホクホクしてて、塩が旨味を最高に引き上げてる……」
P「鶏? 豚? いやどれにも似てないな。食感はチキンに似てるけど、より淡白で噛めば噛むほど味が出る」
P「しかも骨ごとサクサクいけるとは! やわらかい肉とスナックめいた骨が一緒になって食感が楽しい」
P「頭を落としてるんだな。モツも綺麗に抜いて下ごしらえしてるから、えぐみや臭みが全く無いんだ」
P「丁寧な職人芸……一匹まるまる頂ける、こんなうまい肉の天ぷらがあったとは……」
周子「……あたしネズミ料理の食レポしてる人間生まれて初めて見たわ」
紗枝「周子はんもおひとついかがどすか??」
周子「えぇ?? あたしもぉ?? うそぉ?ん?」
周子「もらうわ」キリッ
 ンマーイ!
21:
紗枝「ままま、もう一杯?」トクトク
P「おっとっとすいませんね……」
周子「現役アイドルに挟まれてお酌されるなんて、そうそう体験できないよ??」
P「ちげぇねぇ」グビグビ
周子「おっ、いい飲みっぷりじゃーん♪ 大将ー、もう一本お願ーい」
大将「あいよ」
P「おお、すまんすまん。いやー飲んだなぁ……」
周子「いい気分になってきたっぽいじゃん。いつもこんなペースなん?」
P「いつも飲むのは楓さんと茄子さんとちひろさんだぞ」
周子「ごめん愚問だったわ」
P「まあせっかくだから甘えさせてくれ……。大将、鮎の塩焼きください」
大将「あいよ」
22:
 〇
 ?しばらくして?
周子「うりうり吐いちゃいなよぉ、どの子が本命なんだよぉ?」グリグリ
紗枝「ほれほれ?往生しいや?」コンコン
P「うぐぐぐ……俺は、そんな目でアイドルを見たことは……」ベロンベロン
周子「う?っそだぁぁ??。可愛い女の子をたっくさんプロデュースしとるんやろー?」
周子「結婚したい子とかー、カノジョにしたい子とかー、仕事の上ではそういうオトコとしての視点も不可欠やろがーい」
紗枝「やろが?い♪」コンコーン
P「ん????」グビグビ
P「そういう、お前、そういうのはなぁ。そんななぁ、私情みたいなのはなぁ。無いです。ありません」
周子「まーまー、一個人の見解でいいからさー。どうなのさそっちから見てうちのアイドルはー」
P「見解……それはうちのアイドルをどう見ているかという意味でよろしいか?」ギラッ
周子「えっあっはい」
P「よーしわかったわかりました。ちょっと長くなるぞーいいかーいいなーよし」
紗枝「あららぁ」
23:
P「――であるからしてお嫁さんにしたいアイドルナンバーワンは信頼と実績の響子がいるわけだけどそれに留まらず家庭的という意味では例えば美嘉それに新進気鋭のまゆも全く引けを取っていないわけであって」
P「もうすごいよね。完璧だわ。あんな子らを嫁に貰えたらそりゃ人生もうゴールインと考えているファンがどれほどいることかという――」
紗枝(プロデューサーはんは、酔ってまうとあれやなぁ)
周子(『うちのアイドル超可愛い』モードに入るんやな……)
P「――もちろんそれに留まらず色んな方面の魅力を持つアイドルは沢山いて、お嫁さんではなく多彩な距離感やポジションを持ってて、もう凄い。みんな凄い」
P「かわいかったりかっこよかったりパッションだったりとだな、それぞれの持つ個性が遺憾なく発揮されていて、俺はそのほんの手助けをさせてもらっているに過ぎず――」
周子「大将、おみずおみず」
大将「あいよ」
P「――で、美穂のな、たぬき要素がだ、アイドル活動そのものに関わってるか? という話で」
P「ないっ! 正体は全然関係ないのだ! つまり美穂は、ただ自分自身の努力と可愛さだけでここまでの人気を勝ち取ったんだ!」
P「個性派アイドルがたくさんいる中での、可愛い一本のストロングスタイル! これに惚れずして何に惚れる!?」
紗枝「ふむふむ?」
P「キュートという意味では紗枝もかわいいよね、ほんとかわいい」
紗枝「こん?」ピンッ
24:
P「上から下まで絵に描いたようなはんなり京美人……一目見たらハッてなる……」
P「もふもふ耳と尻尾も可愛い要素に満ち満ちているが、美穂と同じくきつね部分はアイドル活動に持っていったりはしない」
P「あくまで本人の雅な所作、歌や舞い、トークでファンを獲得している……すごい……えらい……」
P「あとプライベートではちょっとお茶目だったりするところも大変いいと思う……」
紗枝「うふふ、なんやもぉお上手なんやからぁ。そないおだてたかて、なーんも出まへんえ? おあがりやす?」ヒョイ
P「やったー天ぷら出た!」
周子「ははぁ……職業倫理の塊っていうか、アイドルバカっていうか……」
周子「ま、それもプロデューサーさんらしいのかもしんないけどね」
P「いや自分は傍観者ですーみたいな顔してるけどお前も超素敵だからな?」
周子「んぉ」
25:
P「だってスカウトしたの俺だもん。この眼は節穴じゃないぞ」
周子「いやいや、ここであたしに矛先向けるのはどうなん?」
P「その黒い瞳はどうだよ。綺麗すぎか? 目が合うたびドキッとするわ」
周子「あー、えっとね? 飲みすぎなんやからその辺に」
P「スカウトした時は黒い髪だったけど、今の髪色になってから更に瞳とのコントラストが凄い。美白だし。モノクロ映画のめちゃくちゃ綺麗なフィルム見てるみたい」
周子「ちょっとちょっと――」
P「紗枝とはまた違う京美人っていうの? シュッとしてて洒脱で、見てて憧れるよな。かっこいいっていうか綺麗っていうか」
周子「ちょっ、紗枝ちゃん、見てないでさ」
紗枝「あらぁ?」ニヤニヤニヤ
P「あとなー、色々やっぱり世話になってるしなー。なんかヘンテコなこと起こった時とかさ。お前のアシストにどれだけ助けられたか、この機会だからはっきり」
周子「ていや!!」チョップ
P「グワーッ!?」
26:
周子「あーびっくりした! もうなんなんさっきから! 酔ってるんか!」
紗枝「酔ってはるやないの?」
P「ククク……照れる周子ちゃんも可愛いぜ……」
周子「無敵かこの人!?」
紗枝「まぁまぁプロデューサーはん。周子はんも恥ずかしがってはるし、その辺で堪忍したっておくれやす?」
P「照れ周子かわいくない?」
紗枝「はいな。えろうかいらしなぁとうちも思います?♪」
周子「挟み撃ちしてくんのやめーや! もう! 大将お茶!」
大将「あいよ」
27:
 〇
P「むぅ……」ウトウト
周子「とんだ流れ弾だわ……あーなんか顔あっつい」
紗枝「そないなこと言うて、まんざらでもなかったんちゃいます?」ニヤニヤ
楓「普段こういうこと言いませんものね、この人」
P「…………周子、紗枝」
周子「うい」
紗枝「はいな?」
P「楓さんが見える。夢か? 飲み過ぎた?」
楓「夢でもVRでもない、りあーるの楓ですよ♪」
28:
周子「びっくりしたわ。どしたの今日は、たまたま通りがかったとか?」
楓「ええ。瑞樹さんや茄子ちゃん達と飲んでたんですけど、こっちの方から面白そうな気配がしたから……」
楓「二次会に行く途中で、ちょっと寄ってみたんです」
紗枝「自由自在どすなぁ」
P「……頭がクラクラする……」
楓「あらいけない。くらくらするなら、楽?にしててください」
P「うぅ……」
楓「……ふふっ♪ これほど酔ってるのを見るのはいつぶりかしら」
周子「楓さん達と飲む時はこんなんじゃないの?」
楓「それが自制しちゃうんですよ。私や茄子ちゃんが大体えらいことになっちゃうから」
周子「なっちゃうんかい」
29:
楓「せっかくなので私も……大将、私もこの人と同じお酒を常温で。それとギンギーとマタデーをお願いしますね」
大将「あいよ」
楓「あ、ズンドコベロンチョあります?」
大将「新鮮なのが入ってるよ」
楓「じゃあそれ刺身で♪」
紗枝「今夜はずいぶん珍しいもん置いてはりますなぁ」
周子「なにがなにやらわからんわもう」
P「ぐむむ……」ウトウト
30:
周子「そういえば楓さんってさ、プロデューサーさんと一番付き合い長いんでしょ?」
楓「ええ。部署立ち上げ以来になるでしょうか」
紗枝「うちらはまだ新参の方やさかい、もう沢山のあいどるがおらはったけど……」
紗枝「はじめの頃いうんは、どないな感じやったかなぁ思うんどす」
楓「そうねぇ……」
楓「私がいて、この人とちひろさんがいて。芳乃ちゃんが来て、茄子ちゃんが入って、美嘉ちゃん、みくちゃん、こずえちゃん……」
楓「でもPさんは、最初からこんな感じでしたよ」
P「楓さん」
楓「はい、楓です♪」
P「長い話になるでしょ。聞いて楽しいもんでもなし」
周子「ありゃ、NG?」
楓「そうみたいです。私にとっては楽しい思い出なんだけど――」プルルルル
楓「あ、お呼びがかかってしまいました。そろそろここはお開きかしら」
31:
周子「プロデューサーさーん、しっかりしなってー」
P「むむむん……」グデグデ
楓「ふふっ、本当に珍しい……。一枚撮っておきましょう」パシャー
紗枝「このままじゃあきまへんなぁ。大将、いっぺん気付けにやってみておくれやす」
周子「気付けに? それって……」
大将「へぇ、気付けになるってぇのは……」
大将「こんな顔のことですかい?」ノッペラボウ
周子「ぶっ!!」
P「」チーン
楓「あら気絶」
紗枝「あやや……やりすぎてもうた」
32:
 〇
周子「……どうする? あたしプロデューサーさんち知らないよ」
楓「引き受けましょうか? 夜が明けますけど」
周子「それはやめといた方がいい気がする」
紗枝「ん??……」
紗枝「寮で寝かしておけばええんとちゃいます?」
33:
 〇
 ―― 翌朝 女子寮
 チュン チュン
P「…………」
P「…………なんで?」
芳乃「お目覚めでしてー?」
まゆ「朝ごはんできましたよぉっ?」
みく「もーPチャン! お酒はほどほどにしなきゃダメでしょー!」
響子「お味噌汁、しじみにしておいたんです。ちょっとでも楽になればいいんだけど……」
P「え!? あれ!? ナニコレ!?」
周子「おはよーさーん……ああやっとお目覚めかぁ」
紗枝「ゆうべのこと、忘れはったんどすか?」
P「ゆうべ……ああそうか、俺はついつい飲み過ぎて……」
こずえ「くー……」
P「こずえがくっついてるし」
34:
美穂「……みんな、おはよぉ……」ムニャムニャ
P「あ」
美穂「」
美穂「ぽこ」ヘタッ
周子「あ、腰抜かした」
美穂「ぷっぷろっぷろっぷっ、プロデューサーさん!!?」
美穂「ななななんでっここにっ、やだ私まだ寝癖ついてっ、ぽこーっ!!」
P「待て落ち着け美穂! 俺もなにがなんだかわからない!」
菜帆「ほんとに覚えてないみたいですね?」
周子「あたしら一生懸命ここまで運んだのにねー」
紗枝「酔ってもうて前後不覚のプロデューサーはんをな?」
P「そんなに」
35:
周子「じゃあアレは覚えてないの? 酔った勢いでまゆちゃんに抱き着いたやつ」
まゆ「素敵な瞬間でした……?」
菜帆「私達でお風呂に入れてあげたこと、お忘れですか??」
小梅「私とあの子と、スリラーを踊ったことは……?」
輝子「一緒にマタンゴごっこもしたな……フフ……」
P「ん? さては俺死んだ方がいいやつだな? こずえ介錯頼む」
こずえ「しをうけいれたまえよー……」
芳乃「ご心配なくー。ただの冗談ですゆえー」
こずえ「すべてながいよるのゆめー……」
まゆ「うふふっ。本当にそうしてくれてもいいんですよ?」
美穂「か、顔洗ってきましたっ!」ピューッ
みく「寝癖はなんとかなったけど耳と尻尾出てるにゃ!」
美穂「ぽこーっ!?」ワタワタワタ
36:
 〇
P(なんやかんやあって女子寮を出た)
P(不覚だった……まさかあんなに飲み過ぎてしまうとは。途中楓さんもいた気がするし)
P(大丈夫だよな? 出るとこ誰かに見られてないよな?)
P「……ふぅ。とりあえず、家帰ってシャワー浴びよ……」
 カサカサッ
P「ん? なんだこれ、服のすそに葉っぱが一枚……」
 ポンッ!
P「んお!? 封筒になった!?」
P「……中になんか入ってる」ガサガサ
37:
 『いつもお世話様です 褒めてくれておおきに?/周子』(隅にキスマーク)
 『今後トモ不相變御厚情之程偏奉願候/紗枝』(達筆筆文字)
P「ん、なんだ? オマケもあるな」
P「マッサージ券て」
P「…………これからもがんばるかぁ」グッ
38:
 〇
 ―― 女子寮
周子「お酒かぁ」
紗枝「あら、気にならはります?」
周子「んー、どうだろ。身近に恐ろしい酒豪が少なくとも二人いるわけだし、ぶっちゃけおっかないわ」
周子「でも、飲まなきゃ出ない本音ってのもあると思えば、嗜むに越したことはないのかなーって」
紗枝「うふふ。周子はんがかいらしいいうこととか、どすなぁ」
周子「ていや」チョップ
紗枝「こんっ♪」
周子(ま……ともあれ、二年先。もうちょっとしっかり考えてみるかぁ)
 ?オワリ?
3

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