少年「かんむす?」【艦これ】back

少年「かんむす?」【艦これ】


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SS初投稿
軽い独自設定あり
書き溜めあり
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
2: 1 2018/06/28(木) 13:52:06.08 ID:6AUUn40c0
「あ?あ、暇だなあ」
夏の午後。
照りつける日差しを浴びながら、少年は縁側から足を投げ出して、そうつぶやいた。
「夏休みに入ったらみんな内地のほうに行っちゃったからなあ」
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3: 1 2018/06/28(木) 13:52:51.48 ID:6AUUn40c0
深海棲艦の出現から数年、海が近いこの街は、住民たちが少なくなり道路は閑散としていた。
街に唯一残っていた学校も来年には廃校になり、
少年も内地の学校に転校することになっていた。
「お母さん!ちょっと散歩してくるね!」
暇を持て余しすぎた少年はガバっと起き上がり、玄関へと走る。
「夕飯には帰ってくるのよー!」
母の言葉に返事することなく、少年は外へと駆けていった。
4: 1 2018/06/28(木) 13:53:28.05 ID:6AUUn40c0
この街の近くには海軍鎮守府がある。
今日も演習をしているのだろう、銃撃の音がパパパパ、と遠くから聞こえた。
「うんうん、銃の音だ。やっぱかっこいいよなあ」
たたた、と音に耳を傾けながら走っていた少年は、
道の角からふと現れた影にぶつかってしまった。
「きゃっ」
小さな悲鳴と、どすん、という音。
「うわあっ」
少年がしりもちをつく。
「いたたぁ…。ご、ごめんなさい!」
少年はあわてて立ち上がり、ぶつかった相手に謝る
5: 1 2018/06/28(木) 13:54:18.14 ID:6AUUn40c0
「痛いわねえ、ちゃんと前を向いて走りなさいよっ」
少女だった。
長く青みがかった銀髪が、さらさらと音を立てるように見えて。
少女だった。
ややほっそりとした脚が、ワンピース型のセーラー服から見えて。
少年は、見惚れていた。
「ちょっと、なにぼうっっと見てるのよ。
 ぶつかってきた犯人さんは、女性を起き上がらせてくれないのかしら」
言われてはっとした少年は、少女に手を伸ばした。
「ご、ごめんなさい!銃の音がかっこよくて、聞き入っちゃってて…」
「銃の音、ね。近くに鎮守府があるものね。そっか、ここら辺まで聴こえるのね」
少女は海のほうを見る。
その横顔はとても綺麗だった。
6: 1 2018/06/28(木) 13:55:15.06 ID:6AUUn40c0
「ねえ、ここら辺の学校の子?」
少年はふと思い、訊いた。
「え?あぁ、そうね…。まぁ、そんなところかしら。転校…してきたのよ」
「へえ、めずらしいね!ここら辺の学校は、大体もう閉校しちゃったってお母さんに聞いたよ?」
「あ?そうなの…ま、まぁ、いろいろあってね、この街に引っ越してきたのよ」
少女は、微妙な顔で返した。
「ふ?ん、そうなんだあ。いろいろ大変だねえ」
少年は少し大人ぶりながら、無邪気に笑った。
「そうだ、僕と友達になってよ!」
「え?」
少年のいきなりの申し出に、戸惑う少女。
7: 1 2018/06/28(木) 13:55:43.91 ID:6AUUn40c0
「ここら辺の僕と同じ歳くらいの子は、みんな内地に行っちゃって。
 今、この街に住んでる子供といったら、僕くらいなもんさ。
 だから、君も僕と友達になっておいたほうがいいよ!」
少年以外にも、この街には子供はまだいる。
だがとても数が少なく、少年がそう思うのも仕方のないことであった。
「そうなのね。じゃあ、お友達になっておこうかしら。
 でも、私のことは、お姉さんとお呼びなさい」
「え?なんで?」
「あのねえ、どう見ても私のほうが年上でしょう?
 年上の女性に「君」なんて失礼なことよ」
「な、なるほどぉ」
少し勉強になった少年であった。
8: 1 2018/06/28(木) 13:56:10.43 ID:6AUUn40c0
「っと…ちょっと話しすぎちゃった。
 
 もう行くわね」
少女は思い出したかのように、歩き出そうとした。
「ちょ、ちょっとまって!お姉さん!」
それを少年は呼び止める。
「なあに?」
「また、会えるよね?」
「そうね、また会えると思うわ」
「じゃあ、あの海が見える公園で、またお話しよう!」
少年が指さす方向、ここから少し歩くある公園が見える。
少女はそれを確認すると、
「ええ、わかったわ。また明日、公園で会いましょう」
少女はそう言うと、海のほうへ歩いていった。
少年はそれを見送りながら、鎮守府のほうだなあと、ふと思った。
9: 1 2018/06/28(木) 13:56:37.96 ID:6AUUn40c0
翌日も、少年と少女は海が見える公園で、
二人ベンチに座りながら、おしゃべりをした。
主に少年の話題が中心ではあったが、とても楽しい時間を過ごした。
少年は少女のことを聞きたかったが、うまくはぐらかされてしまった。
お互い、名前もまだ知らない友達だった。
そんな日が何日か続いた日の夕方、
街に警報が鳴り響いた。
どうやら、街の近海で深海棲艦が現れたらしい。
深海棲艦が陸に上がることは今までなかったが、
街の住民は建物の外に出ないように、という内容の警報のようだ。
10: 1 2018/06/28(木) 13:57:10.80 ID:6AUUn40c0
お姉さんは大丈夫だろうか。
少年はいてもたってもいられず、家から飛び出した。
「ちょっと!!どこにいくの!!!」
母の制止も聞かず、少年は街を駆け抜けた。
少年は、母の言うことを聞かない子供であった。
「はあっ…はあっ…」
どれくらい走っただろう。
街はいつも以上に静かで、人っ子一人歩いていなかった。
それもそうだろう。
警報が出ているのだ。外に出ている少年のほうがおかしいというものである。
11: 1 2018/06/28(木) 13:57:39.69 ID:6AUUn40c0
「お姉さん、大丈夫だよね、そりゃそうか、家の中にいるよね」
走りつかれて、少年は海が見える公園のベンチで休んでいた。
気づけば警報も解除されたようだった。
今は何時だろうか。すっかり辺りは暗くなり、ぽつんぽつんと街灯の光があるだけだった。
「ちょっと!!なにしてんの!?」
いきなり後ろから声をかけられ、びくっとする少年。
「だめじゃない!さっきまで警報がなってたんだから!
 警報が止んだからって、まだ何があるかわからないのよ!?」
振り返ると、少女がいた。
「お、お姉さん!」
「あ、あんた!なにしてんのよ!」
12: 1 2018/06/28(木) 13:58:30.24 ID:6AUUn40c0
どうやら、少女も少年とは気づかずに声をかけていたらしい。
「僕、お姉さんが心配だったから…」
少年はうつむきながら言った。
怒られると思ったのだろう。
「私が心配?なんで…」
「お姉さん、この街に引っ越してきたばっかりだったから、
 警報に驚いているかと思って…」
「ああ、そんなこと…平気よ、慣れっこなの」
「慣れっこ…?なんで…」
少年が疑問に思いか顔を上げると、初めて少女の体が目に入った。
「な…お、お姉さん!!」
少女の服は血にまみれていた。
セーラー服がやぶけ、そこから覗く細い腕も、スカートから伸びる細い脚も、
切り傷や痣などでボロボロであった。
13: 1 2018/06/28(木) 13:59:01.21 ID:6AUUn40c0
「お姉さん!!大丈夫なの!?」
「あぁ、これ?大したことないわ、いつものことよ」
「いつものことって、どういう…」
「見つけた!!!」
少年と少女以外の声が、公園に響く。
声の方向を見ると、少年の母であった。
すごい剣幕で迫ってくる。
ぐい、と少年の腕をつかむと、
「さあ、帰るわよ!!」
と家のほうへと少年を引っ張っていった。
それを少女は、悲しそうな目で見ていた。
14: 1 2018/06/28(木) 13:59:43.12 ID:6AUUn40c0
公園をでて家までの帰路の途中、
「お母さん、離してよ…っ」
しばらく引っ張られていたが、さすがに腕が腕が痛くなってきた少年。
母は腕を離すと少年のほうに向き直り、
「あのね、今後一切、あの子と会うのは許しません」
と言った。
「な、なんで!?」
「あの子はね、艦娘なのよ」
「か、かんむす?」
「そう、海軍の艦娘。だから、今後関わっちゃ…あ、ちょ、ちょっと!!」
少年は母の言うことを最後まで聞かず、走り出した。
少年は、母の言うことを聞かない子供であったから。
15: 1 2018/06/28(木) 14:00:12.79 ID:6AUUn40c0
少年は公園まで戻ってきたが、少女はもういなかった。
「いない…」
少年は、鎮守府に向かって走り出した。
街の外れに鎮守府はあった。
少年自体、初めて来るところである。
門の周りを、中を伺いながらうろちょろしていると、
怪しんだ門番が声をかけてきた。
16: 1 2018/06/28(木) 14:00:43.00 ID:6AUUn40c0
「ぼく、こんな遅くにここで何をしているんだい」
「あ…いや……っっ!!」
「あっ、待ちなさい!!」
少年は逃げようとしたが、大人に走りで勝てるわけもなく、
あっけなく捕まってしまった。
「は、離せー!!お姉ちゃんに会いにきただけなんだ!!」
ずるずると連行される少年。いや、鎮守府からしたら、保護した、といったほうがいいだろう。
むすっとした表情で応接間に連れて行かれる少年。
黒い革製の高そうなソファに座っていると、がちゃりとドアが開いた。
17: 1 2018/06/28(木) 14:01:08.74 ID:6AUUn40c0
「おや、ずいぶんと小さいお客人だね」
白い軍服を着た、初老の男が入ってきた。
「大淀、彼にジュースを出してやってくれ」
初老の男は、連れ添ってきた眼鏡の女性、大淀に言った。
「さてさて、初めまして坊や。私は、この鎮守府の提督だよ」
提督と名乗った男は、こちらに向き直りにこりと言った。
「坊や、どうして門の前をうろうろしてたんだい?」
「お、お姉ちゃんに会いにきたんだ…。かんむすだって聞いて、ここにいるかなって…」
「艦娘のお姉ちゃん、か。名前はわからないのかい」
提督の問いに、ジュースを持ちながらふるふると首を横に振る少年。
「やれやれ、それじゃあ探すのは難しいなあ」
提督の言葉に、がくりと肩を落とす少年。
18: 1 2018/06/28(木) 14:02:05.40 ID:6AUUn40c0
「提督」
大淀が提督に声をかけた。
「この子の親御さんと連絡が取れました。今から迎えに来る、とのことです」
「そうかい、良かった良かった。
 
 良かったな坊や、君の親が迎えに来てくれるそうだよ。
 その、お姉さんを探してやれなくて、悪いとは思うがね」
「大丈夫です…ご迷惑をおかけしました…ごめんなさい」
「ちゃんと謝れるなら、上等だ。君は立派な大人になれるな」
提督はカカカと笑い、
「では、しばらく待っていてくれたまえ」
そういうと大淀と共に部屋から出て行った。
19: 1 2018/06/28(木) 14:02:36.19 ID:6AUUn40c0
提督が出てしばらく、がちゃりと再びドアが開いた。
「やっぱり、あんただったのね」
部屋に入ってきたのは、少女だった。
「ちょっと鎮守府が騒がしくなって、
 『男の子がお姉ちゃん探してる』って私の姉妹が言ってて、
 もしかしてって思ったから来たけど、
 あんた、なにしてんのよ」
「お姉ちゃんに会いにきたんだ。
 ねえ、お姉ちゃんって、艦娘なの?」
しんとする部屋。
そして、少女が口を開く。
20: 1 2018/06/28(木) 14:03:02.76 ID:6AUUn40c0
「……そうよ。
 私は、艦娘」
少女は続ける。
「艦娘はね、深海棲艦と海で戦ってるのよ。
 戦争をしているの。だから、怪我も慣れっこ」
「そんな…」
「あんた、お母さんに、私に会うんじゃないって言われたんじゃない?」
「どうしてそれを…」
「わかるわよ、艦娘だもの」
そう言って、少女は袖をまくって見せた。
「ほら、怪我、治ってるでしょ?」
少女の言うとおり、少女の身体には傷ひとつ残っていなかった。
21: 1 2018/06/28(木) 14:03:32.46 ID:6AUUn40c0
「艦娘はね、人間じゃないのよ。
 
 どれだけひどい怪我をしても、お風呂に入ればハイ元通り。
 それに、人間が扱えない兵器を扱える。
 海に浮いていられる。
 歳をとらない。ふふっ、これだけはちょっと良いかもね。
 いつまでも若くしていられるのよ?」
くすくす、と少女は笑い、
「私たち艦娘はね、化け物なのよ。
 撤退するところを誤らなければ、不死身。
 そりゃあ、一般の人から怖がられても仕方ないと思うわ。
 でも、私は艦娘を辞めない、戦うのを辞めないの」
「どうして…?」
少年が訊く。
22: 1 2018/06/28(木) 14:04:04.97 ID:6AUUn40c0
「そうねえ。どうしてかしらね。
 
 辞めちゃいけないって思うの。
 
 あなたを守りたいからかしらね」
少女は冗談ぽく笑う
23: 1 2018/06/28(木) 14:04:32.79 ID:6AUUn40c0
少年は、思った。
ああ、僕はこの人が好きになってしまったんだな、と。
たった数日、公園で話をしただけだった。
いや、出会ったときから、一目ぼれだったのかもしれない。
24: 1 2018/06/28(木) 14:05:09.31 ID:6AUUn40c0
「来年から、内地のほうに行くのでしょう?
 
 安心なさい、内地は安全よ。
 海は、あなたは、私が守るから。
 あなたは、友達、だもの」
ふと少女が悲しそうに、言い聞かせるように笑った。
がちゃりと部屋のドアが開いた。
「坊や、親御さんが迎えに来たよ」
提督が部屋に入ってきて言った。
少年が、鎮守府の門まで来ると、確かに車が来ていた。
25: 1 2018/06/28(木) 14:05:36.89 ID:6AUUn40c0
「ご迷惑をおかけしました」
横で母が頭を下げる。
目の前には、提督と少女。
「いえいえ、別に構わないですよ」
提督は、優しく笑った。
「ほら、行くよ」
と母に手を引っ張られる少年。
が、少年は手を振りほどき、少女のところまで行くと、
「お姉ちゃんは、僕が守るよ」
と言った。
26: 1 2018/06/28(木) 14:06:04.32 ID:6AUUn40c0
「僕は、まだ子供だけど。
 お姉ちゃんを守れるように強くなるから。
 強くなって、また戻ってくるから。
 だから……待ってて…!」
お互いに、もう会えない予感がしていた。
少年は涙を零しながら言った。
「あんた、泣き虫ねぇ…。
 
 私を守るなら、まず泣き虫を治してらっしゃいな」
少女も、涙を零していた。
27: 1 2018/06/28(木) 14:06:32.47 ID:6AUUn40c0
「お姉ちゃん、まだ、名前を聞いてなかったよ」
本当の別れのとき、少年はふと思い出して少女に訊いた。
「そうだったわね。艦娘だってばれちゃったわけだし、
 
 ごまかす必要もないわね。
 私の名前はね、叢雲、よ」
「むらくも、お姉ちゃん…」
少年は刻み込むように、その名を呟いた。
「あんたの名前も、聞いてなかったんだけど?」
少女、叢雲が言う。
「僕の名前はね―――」
28: 1 2018/06/28(木) 14:07:01.90 ID:6AUUn40c0
――――く
――ぃとく
「提督!!」
「ん!?あ、あぁ、なんだい?」
大淀の声ではっと気がつく。青年は昔を思い出してぼうっとしていたようだった。
「提督、着きましたよ」
「…そうか」
29: 1 2018/06/28(木) 14:07:29.39 ID:6AUUn40c0
鎮守府門前。
海辺の街。
向こうに行けば、海の見える公園がある。
門には、この鎮守府の提督がいた。
「やあ坊や、久しいね」
「はっ、この度はこの鎮守府に推薦していただき、誠にありがとうございます!」
青年は、提督に敬礼をした。
少年は、青年となって、白い軍服を身にまとっていた。
「今日からは、君がこの鎮守府の提督だ。
 さあ、引き継ぎを済ましてしまおう。
 老人はさっさと隠居したいんだ」
提督はそう言って笑う。
30: 1 2018/06/28(木) 14:07:56.57 ID:6AUUn40c0
「また、ご冗談を…」
「冗談ではないぞ?
 しかしまぁ、自分で言うのもなんだが
 うちの艦隊は優秀でな」
鎮守府の中を歩きながら話す。
「存じております。
 そのような鎮守府の提督になれること、大変光栄に思って…」
「あぁあ、いいんだよそういう堅苦しいのは」
「いや、しかし…」
「ほれ、ずっと君を待ってた子が、この執務室にいるぞ」
執務室の前。
31: 1 2018/06/28(木) 14:08:27.50 ID:6AUUn40c0
がちゃりとドアを開ける。
そこには、昔と変わらない姿の、叢雲がいた。
「お姉ちゃん…」
「ちょっと、お姉ちゃんはやめなさいな。
 
 今ではもうあんたのほうが年上でしょう」
ふふっ、と二人が笑う。
32: 1 2018/06/28(木) 14:08:53.70 ID:6AUUn40c0
「叢雲、遅くなったね」
「ほんとにね、待ちくたびれちゃったわ、もう」
「すまないな」
「ふふっ、いいのよ。ちゃんときてくれたから」
「あぁ、強くなって、君を守りにきたよ」
「えぇ、待ってたわ!!」
33: 1 2018/06/28(木) 14:09:28.24 ID:6AUUn40c0
「ちょっと!泣き虫が治ってないじゃない、まったくもうっ」
34: 1 2018/06/28(木) 14:10:14.25 ID:6AUUn40c0
終わり
ありがとうございました。
HTML依頼出してきます
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1530161449/
ねんどろいど 艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 阿武隈改二 ノンスケール ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア
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