【ミリマス】所恵美「『思わせぶりだぞこん畜生!』」back

【ミリマス】所恵美「『思わせぶりだぞこん畜生!』」


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1:
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「なあ、今日は少しぐらい遅くなっても大丈夫だろ?」と
プロデューサーに訊かれた時、所恵美の胸は小さな高鳴りを感じることになった。
その日、四月の十五日は恵美にとって特別な日。
いわゆる一つのバースデーであり、祝われるのは自分であり、
そして世界中の四月十五日生まれが誰かからの祝福を受ける日でもあった。
現に、恵美はオフと言う名の祝福を彼から貰っている。
おまけに一日プロデューサーを好きにしていいというおまけつき。
今だって彼の腕には二人で回ったショップの袋が鈴なりで、道行く人が恵美らを見れば、
正にショッピングを楽しむ彼女と荷物持ちの彼氏といった様子だった。
2:
そんな中、黄昏近づく頃合いに、プロデューサーが確認するように言ったのである。
「遅くなっても大丈夫だろ?」純な琴葉じゃありゃしない。
「遅くなって? ええ、まあ、少しだけなら大丈夫ですけど」なんて一度断りを入れた後で
「――あっ! も、もしかして今のは、"そういう意味"のことだったり?」とかなんとか復唱するほど抜けても無い。
「うん! ゼンゼン大丈夫」
「そっか。良かった」
返してすぐに微笑まれて、思わずプロデューサーから視線を逸らす恵美だった。
夕焼けに負けない程真っ赤になってるその頬は、この後に期待を寄せる証でもある。
……そりゃあ彼だって一応は男なのだ。驚かなかったと言えば嘘になるが、
普段は人畜無害な顔でいて、こんな風に自分を誘ってくるだなんて。
3:
「実は、予約はもう入れてあったりして。……都合がつかなきゃどうしようかと思っちゃったよ」
「そういうの、フツーは相手に確認しておくもんじゃない?」
「だけどほら、一応サプライズの体だったから」
「プロデューサーの行き当たりばったりってさ、仕事だけじゃないんだね?」
軽口をたたき合いながら歩く街並み狭まる距離。
互いの肩が触れ合うのも、全ては人波に隙間が少ないせいであり、
決して恵美の方からプロデューサーへと近づいて行ってるワケではない。
ただ、所恵美という少女は気遣いのできる女性なので、
自分たちがあまり横へ広がって道を占拠するのは他の通行人に悪いなー……とか、とか、考えた末に出来る形。
「で、予約とか言ってドコへ連れてってくれるワケ?」
尋ねるために開いた口。
別にアナタと二人ならドコへだって――なんて台詞は
ギリギリのところで閉じ込めると、恵美は視線を隣へ移す。
自然、顔は見上げるように。両手を後ろで組んでみたり。
ワクワクと膨らむその気持ちが、足音になって表れる。
4:
「この時間なんだ。わかるだろ? ……夕食をご馳走したくてね」
「それって例えばお寿司とか? お祝いだから焼肉かな?」
とはいえだ。恵美もそんなお店へ連れていかれるだなんて本気で思ってるワケではない。
あえて行き先の予想を外すことで、彼が「違う違う。今日連れて行くのは――」
と、得意気に発言できるようこの場を整えてあげてるのだ。
こういう時、女性は少しおバカを演じるぐらいでちょうどいい。
男は乗せてなんぼである。手綱を握ればこっちのもの。
けれども、プロデューサーは途端に「しまった」といった顔になって。
「……もしかして、恵美もそういうヤツのほうが好きなのか?」
「ちょっとちょっとアタシ"も"ってのはどういう事??
まさか、他の子の誕生日にもおんなじことしてあげてるんじゃ」
そう恵美から問い詰められたプロデューサーは、
「いや、まあ、実のところ」と申し訳なさそうに頭を下げてしまうのだった。
5:
これには恵美もガッカリである。
しかし、この失望は自分が彼の特別では無いという現実を突きつけられた事に対してではなく、
どうして正直に白状してしまうのかとやきもきする複雑な乙女心のせいであり、
プロデューサーも男ならば、「そんな事あるもんか!」と
力強い嘘で一日を騙し通して欲しかったという本音が生み出す心の棘。
「……まっ、らしいと言えばらしいけどさ」
「何か言ったか?」
「べっつに?」
こうして、当初よりは少々盛り下がってしまった気持ちのまま、
恵美はプロデューサーに連れられて今夜の食事処へと向かったのだ。
……どーせ安直な彼のことだ。きっとこのままお値段も手ごろな
フレンチレストランなんかに行き着くと、そこで誕生日を祝われるのだろう。
値段相応に美味しいコース料理を平らげれば、
食後のデザートの甘さがちょっぴりセンチな気持ちをやわらげて。
お店を出ればタクシーで家まで送られる――そう恵美は思っていたのだった。
それでも楽しんでいるよと振る舞う自信もあったのだ。
6:
「着いたぞ恵美。ここのレストランが美味しいんだ」
そうして二人が辿り着いたのは有名な高級ホテルのレストラン。
案内された個室で料理を挟んで向かい合い、
どう見てもお高い雰囲気の調度品に囲まれながら食事を始めること数十分。
「あっ、あ、アタシ、アタシ、もうダメ、もう無理、もう限界!!」
恵美のその手に握られた、使い慣れないナイフとフォークが
何もない空間で重なり合う度にカチャカチャとはしたない音が部屋に響く。
彼女が弱音を吐き吐き泣きつくと、プロデューサーは何を思ったか料理のお皿を引き寄せて。
「なんだ、上手く取れないのか?」
皿の上に盛られた魚料理を食べやすいよう切り分けると、フォークで突き刺し彼女の前へ。
7:
「ほら、口開けて」
「そ、そゆこと言ったんじゃないってば?!」
「平気平気。個室だからマナーも気にしなくっていいし」
確かに、その点については彼が言う通り有難いことであった。
お陰で恵美は自らがみっともなく狼狽えている姿を他人に見られることもなく――ではない!
そもそもアイドルとプロデューサーが個室に二人きりという状況が如何なものなのか?
いやいやいや、仕事の立場を抜きにしても付き合ってもいない男女がホテルのレストラン、その個室でディナーを楽しんでるなどと。
しかし、それはそれとして口の中に放り込まれた魚のあっさりさにウットリ。
締まった身が生む確かな歯ごたえ、それでいてほろほろと形を失くしていく、染み出すソースが舌をなぞり、
付け合わせの野菜と混然一体になった旨味はゆるゆる恵美の喉奥へと追いやられていくのであった。
「んんっ……美味しい、けど」
「だろ? なら、もう一口」
鼻先にフォークが出されるたびに無言で口を開ける姿は滑稽だが、
先にも言った通りここには誰の目も存在していないのだ。
結局、恵美は皿の上の料理をそんな調子で食べきると。
「……ご、ご馳走様」なんて口元を拭き拭き呟いた。
8:
「恵美、コースはまだ残ってるぞ」
「そりゃそうでしょ! アタシだってフレンチのなんたるかは知ってるつもり――じゃなくて!」
そうして彼女は咳払い。プロデューサーと向かい合うと詰問するように尋ねたのだ。
「正気? 本気? 疑っちゃうよ? こんなお店でディナーとかさ」
「おいおい、こんなお店とは随分だな。都内有数ホテルのレストランなのに」
「だからそれが信じられないって……。明らかにアタシ場違いだし、
誕生日を祝ってもらうにしたってもプロデューサーお金掛け過ぎだよ!」
するとプロデューサーは胸を叩き。
「心配ご無用、優待券を持って来てる!」
「えばるなっ!」
「……喜んでもらいたいだけなんだけどなぁ」
とはいえ、そんな恵美の意志とは関係なくディナーの時間は過ぎていった。
大人しい甘さの氷菓で口直しし、肉料理はこってりジューシーに、サラダとチーズで舌を整え、
空になったテーブルにデザートをお迎えする頃になってようやく、
彼女も普段の落ち着きを取り戻す程度にはこの場の雰囲気に馴染むことができたと言えるだろう。
9:
「……結局流されるままに食べてしまった」
「でも、ほら、言った通り美味しかったろう?」
「それは、文句無しにそうなんだけどさ」
曰く、誕生日のお客様にだけ特別に出されている物だという特製ケーキの甘さに頬を落としながら、
それでも恵美は納得がいかない様子でプロデューサーのことをねめつける。
「そりゃ、アタシだってプロデューサーのこと信頼してないワケじゃないよ?
けどいつもの二人の距離ってあるじゃん? いくら仲良いアタシ相手でもさ、準備も無いのに誕生日は高級ホテルのディナーなんて」
「嫌だったか? てっきり、恵美のことだからこういう雰囲気でお祝いする方が嬉しいかなって思ってたんだけども」
「よりけりだって言ってんの! ……もう、こういうトコに来るって初めから知ってたら、もっとちゃんとしたカッコだってできたのに」
「待てよ。ちゃんとした格好って、まさかドレスを着て来たとか言わないよな?」
そうしてだ。恵美はプロデューサーから「それでショッピングから始める気か?」と呆れたように訊き返された瞬間に、
堪らず手にしていたフォークを目の前のケーキに鋭く突き立てて見せたのである。
10:
「バカっ! こんなカジュアルシャツとズボンで入店するぐらいならそっちの方がマシに決まってんじゃん!!」
「だったら早く言ってくれればいいじゃないか! ――そうだ、預けた荷物の中に丁度いい感じの服があったから今からでも」
「んもう! もうっ、信じらんない?! 食べ終わる頃になって言うかなソレ?!!」
だが、だが、それでもである。
「大体、服装とかなんとか以前にアタシらアイドルとプロデューサーなんだしさ。こんな、その、なんて言うの?
……傍目に付き合ってるんじゃないか、とか、誤解されそうな場所でご飯とか。ホント、もう、信じらんないって言うか」
「何言ってるんだよ。だから個室なんじゃないか」
「……どゆこと?」
「ここなら誰にも見られないからあらぬ疑いはかけられない。それに俺は、こう見えて信用できる筋から
紹介してもらってここを利用してるワケだからさ。スタッフもその辺のことは心得てくれてるって言うか」
「え?……全然信じらんない」
「そこを信用してこその信頼だろ? 第一、今までだってそんなトラブルは一度も起きたことが――ハッ!?」
12:
――限界であった。
単にプロデューサーの失着と言ってしまえばそれまでだが、本日二度目となる異なる女性の影チラリ。
最早マナーもへったくれも知ったことじゃない! といった様子で恵美はテーブルの上に肘をつくと。
「へぇ? アタシってばなんだかその話に、スッゴクスッゴク興味あるな?」
言って、彼女は彼に語ったのだ。「そう言えばさ、こういうコース料理ってお喋りしながら楽しむものなんだっけ?
アタシ、ついさっきまで緊張でそれどころじゃなかったから、今ならとっても楽しく駄弁れそう」
「い、いやいやいや! 料理は殆ど食べ終わったし……」
「ダイジョブダイジョブ、ケーキがまだまだ残ってるから」
恵美がニッコリと微笑みかける。プロデューサーが冷や汗を垂らす。
今、彼女の手にしていたフォークはケーキの上で垂直な倒れないオブジェと化しており、夜はまだまだ更けきることない宵のうち。
「さっ、話し合おっか? トコトン」
13:
そうして「にゃはは」と笑うのだ。口だけを三日月のようにして笑うのだ。
だが窮鼠ここに来て猫を噛む。
追い詰められた事を悟ったプロデューサーは捕食者と成った恵美に対して一枚のカードを切って見せた。
「ま、待ってくれ恵美! 実はへっ、へっ、部屋を取ってあるんだ、部屋をっ! 恵美の為に部屋を一つ!!」
「……部屋?」
「そう、そうだよ! そうなんだ! ……部屋をね、一部屋、取ってある……。ここじゃほら、あんまり騒がしい話は出来ないだろう?」
まあしかし、普通は静かな話をするために部屋を用意するものであろう。
が、恵美はプロデューサーの告白で面食らったように赤くなると。
「部屋、部屋って……ウッソっ!? プロデューサーなんでそんなモン!」
「なんでってそれは、今日が恵美の誕生日だから特別に――」
「えっ、えぇっ!? アタシ聞いてない! そんな話も予定も知らないから!!」
「そりゃそうだ! だってサプライズなんだからっ!!」
15:
慌てふためく彼女の両手がプロデューサーによって握られる。
「恵美!」と彼から力強く自分の名を呼ばれ、目と目がセンチで見つめ合い、緊張する二人の顔の距離は近く。
「今は何も言わずに俺の言葉を信じてくれ。……きっと後悔はさせないから」
「う、ん」とだけ小さく返すのが精一杯。
唐突な接近に心音跳ね上がった恵美はその場の勢いに飲まれそうになった唇の向きをどうにかこうにか彼から逸らし。
「……信じる。けどさ、次はないよ?」
手を取り合った際のドタバタで倒れたフォークを拾い上げ、
その切っ先についた甘いクリームで感情の高まりを誤魔化したのだった。
16:
===
さて――それからしばらく経っての事。
場所は変わり、恵美がプロデューサーと共に訪れた部屋の中には「恵美、お誕生日おめでとうっ!」という祝福の言葉が溢れかえり、
続く景気の良いクラッカーの炸裂音が死んだ目をしていた彼女の瞳に僅かばかりの色をさした。
「なっ? 恵美の為に部屋を取ってあるって言っただろ」
さらに言えば、である。満面の得意顔で言うプロデューサーのその頬をだ。
仲間たちの目も気にせず思い切り引っぱたいてやることができればどれほど心晴れるものか?
……自問する恵美の腕が親友の琴葉によって引っ張られる。
「さ、恵美は主役なんだからこっちに来て――って、どうしたの?」
親友の言葉に目を向ければ、そこには心配そうにしてる琴葉。
17:
「……もしかしてこういうサプライズは迷惑だった?」
「まっ……まっさか?! ただちょっと驚いただけだってば?」
「そう? なら良かった。――ほらみんな、恵美が来たよ!」
ホッと安堵の表情を見せる彼女に導かれる形で恵美はプロデューサーが取っていた部屋
――なに、そこは高級でも大人のムードも無いカラオケボックスの一室だ――に用意されていた自分の席へと腰を下ろす。
そうして渡されたリモコンに手早く入力を済ませると、
記念すべきバースデーカラオケの一曲目を目の前のバカ男に向けて朗々と歌い上げるのだった。
それは煮え切らない恋人への恨みを歌ったヒット曲。
歌につけられたタイトルは――。
「『思わせぶりだぞこん畜生!』」
18:
===
以上おしまい。恵美ハッピーバースデー!
最後の曲、今回は架空の楽曲を用意しましたが、
皆さんでお好きな「このバカ!バカ!バカ?っ!」って感じの歌を恵美に歌わせてあげてください。
ちなみに、元は『ゲキテキ!ムテキ!恋したい!』が候補でした。明るい曲調に例の歌詞ってセンスが好き。
では、お読みいただきありがとうございました。
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